説明

DMFC(直接メタノール型燃料電池)型燃料電池装置およびその操作

液体メタノールが酸化して二酸化炭素と水になるDMFC型燃料電池でより高い出力密度を達成するために、メタノールは第一ステップ(1)で第一の望ましい陽極反応(a)に前記第一反応のために最適化された触媒を使用して暴露され、第一ステップからの反応生成物は、第二の望ましい陽極反応(b)が前記反応のために最適化された触媒を使用して実行される第二ステップ(2)に誘導され、および、第二ステップからの反応生成物は、第三の望ましい陽極反応(c)が前記第三の反応のために最適化された触媒を使用して実行される第三ステップ(3)に誘導される。三つの反応ステップは、燃料電池装置のフロー的に直列接続された三つのセル(1、2、3)に適切に行われ、および異なるステップへの酸化剤の供給は、陽極および陰極側での反応がそれぞれのステップで互いに化学量論的に均衡を保つよう適切に調節される。従って、反応は生産性を高めるためより確実に精製および調節される。過酸化水素が酸化剤として使用されることが好ましい。二つのそのような燃料電池装置をフロー的に直列接続することにより、液体エタノールが燃料として使用されることが可能である。第一装置では、エタノールが二酸化炭素とメタノールに酸化され、および第二装置ではメタノールが二酸化炭素と水に酸化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族、短鎖、水溶性の一般化学式RCH2OHの液体アルコール、一般化学式RCHOのアルデヒド、または一般化学式RCOOHの酸であり、式中RはH、CH3、C2H5またはC3H7を表し、酸化して二酸化炭素および水になる、直接メタノール型燃料電池の方法に関する。
【0002】
本発明はまた、陽極反応のための陽極と触媒を有する陽極側、陰極反応のための陰極および触媒を有する陰極側、および陽極と陰極を互いに分ける中間膜から構成される、DMFC型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0003】
直接メタノールによって作動される燃料電池は、例として、http://www.wpi.edu/Pubs/ETD/Available/etd-051205- 151955/unrestricted/A.Hacquard.pdf.にて刊行された、Alexandre Hacquardによる『直接メタノール型燃料電池(DMFC)性能の改良と理解(ワーチェスター工芸研究所の教授に提出された論文)』などに既知である。達成できる利点のうち言及されうるものは、燃料が液体で、それゆえ迅速な燃料供給が可能であること、コンパクト設計が可能な燃料電池、および低コストで生成が可能なメタノールの両点、および燃料電池は非常に異なる安定した、または携帯用/移動式用途のため設計されることが可能であるという点である。DMFC型の燃料電池はさらに、水および二酸化炭素のみを放出し、硫黄または窒素の酸化物は形成されない、環境に優しいものである。
【0004】
DMFC型燃料電池の最も大きな欠点として知られることは、陽極でのメタノールの電気化学的酸化が遅いことによる出力密度が非常に低いこと、およびメタノールがPEM膜(ポリマー電解質膜)を通ってメタノールが酸化する陰極へ移動できることである。これは結果として、燃料の損失だけでなく、陰極で使用される白金触媒が効率を下げる要因となる酸化炭素によって汚染されることも引き起こす。反応の複雑性によって、満足のいく生産性を達成するのが難しくなる。さらに膜の陽極から陰極へプロトン(ヒドロキソニウム・イオン)を輸送する能力は限られており、および、水素が水素分子に対し2つのプロトンを形成する水素燃料電池の環境と異なり、メタノール分子がそれぞれ通過する6つのプロトンを発生させるため、容易に超過してしまう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主目的は、DMFC型燃料電池でより高い出力密度を達成することであり、すなわち、一定の大きさの燃料電池および出力を与えられる燃料電池からのより高い出力が、より少ない空間消費でなされなければならない。
【0006】
序文の上記方法では、この目的は本発明による下記の方法によって達成される。前記酸から開始する場合、二酸化炭素、前記酸より炭素原子が一つ少ないアルコール、またはRがHを表す場合は水を形成するための望ましい陽極反応の反応ステップに酸を暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放する。前記アルデヒドから開始する場合、前の反応ステップで、前記酸の形成のための望ましい陽極反応にアルデヒドを暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放する。前記アルコールから開始する場合、同じく前の反応ステップで、前記アルデヒドの形成のための望ましい陽極反応にアルコールを暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放する。および、前記酸より炭素原子が一つ少ない形成されたアルコールがメタノールでない場合、形成されたアルコールがメタノールになるまで上記の一連の反応ステップに暴露、その後、メタノールを一連の反応ステップに暴露する。
【0007】
したがって、序文で言及された燃料電池装置の目的は、脂肪族、短鎖、水溶性の、一般化学式RCH2OHの液体アルコール、一般化学式RCHOのアルデヒド、または一般化学式RCOOHの酸で、式中RはH、CH3、C2H5またはC3H7を表すものを燃料として使用するよう適合され、および、装置は複数の陽極反応を実行するためフロー的に直列接続されるよう複数のセルに分けられ、セルはそれぞれ、セルの中で行われる反応ステップのために最適化された触媒を有する装置による、本発明によって達成される。
【0008】
そのように方法および燃料電池装置を複数のステップに分けることにより、生産性を上昇するために反応が精製および調節されることが可能であり、その結果、高い出力密度が生じる。フロー的な直列の接続は、異なる反応生成物が望ましくない方法で互いに反応するリスク、および反応が間違った方向に実行されるリスクを減少させる。
【0009】
方法は適切に、
陽極反応、
RCH2OH → RCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
で、この反応(a)のために最適化された触媒を使用して、アルコールが酸化してアルデヒドになる。
陽極反応、
RCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
で、この反応(b)のために最適化された触媒を使用して、アルデヒドは酸を形成するよう酸化される。
および、陽極反応、
RCOOH + H2O → CO2 + ROH + 2 H+ + 2 e- (c)
で、この反応(a)のために最適化された触媒を使用して、酸は二酸化炭素とアルコール、またはRがHを表すときは水を、それぞれ形成するよう酸化される。
【0010】
したがって、アルコールをアルデヒドに酸化する陽極反応のための触媒として、触媒は、60〜94%のAg、5〜30%のTeかつ/またRu、およびとの結合1〜10%のPt単体またはAuかつ/またTiO2を、好ましくは約90:9:1の比率で含有する触媒を使用し、アルデヒドを酸に酸化する陽極反応のための触媒として、SiO2およびTiO2のAgとの結合、および酸をアルコールに、またはRがHを示す場合は水に酸化する陽極反応のための触媒として、Ag単体またはTiO2かつ/またTeとの結合を使用することが適切である。
このように、メタノールのより良い利用および出力密度の上昇のため、望ましい反応が精製および調節されることが可能である。
【0011】
空気中の酸素のような酸素が陽極の酸化剤として使用されることは可能であるが、炭粉末(カーボンブラック)、アントラキノン、およびAg触媒とともに適切に、過酸化水素がそれぞれのステップで下記の陰極反応(d)のために使用されることが好ましい。
H2O2 + 2 H+ + 2 e- → 2 H2O (d)
【0012】
空気の代わりに酸化剤として過酸化水素を使用することにより、堆積流量がずっと少なくなるという利点を達成する。さらに、空気の場合はE0 = 1.227 Vであるのに対し、過酸化水素の場合はE0 = 1.766 Vである。したがって、酸化剤として過酸化水素の使用することにより、高い電圧とそれによって高い出力が生じるのである。
【0013】
三つの反応ステップは、燃料電池装置の中でフロー的に直列接続された三つのセルに適切に行われ、および異なるステップへの酸化剤の供給は、陽極および陰極側の反応がそれぞれのステップで互いに化学両論的に均衡を保つよう適切に調節される。従って生産性の上昇のため、反応はより確実に精製および調節されることが可能である。
【0014】
燃料電池装置は、陽極側の第一セルが下記の陽極反応(a)
RCH2OH → RCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
を行うため、60〜94%のAg、5〜30%のTeかつ/またRu、1〜10%のおよびPt単体またはAuかつ/またTiO2との結合を、好ましくは約90:9:1の比率で含有する触媒を有し、
第二セルが下記の陽極反応(b)
RCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
を行うため、SiO2およびTiO2のAgとの結合の触媒を有し、
および、第三セルが下記の陽極反応(c)
RCOOH + H2O → CO2 + ROH + 2 H+ + 2 e- (c)
を行うため、Ag単体またはTiO2かつ/またTeとの結合の触媒を有することが好ましい。
【0015】
適切に、全ての電池は液体の酸化剤を使用するよう設計され、および陰極側の全ての電池は、
下記の陰極反応(d)
H2O2 + 2 H+ + 2 e- → 2 H2O (d)
の液体酸化剤としての過酸化水素使用のため、炭粉末(カーボンブラック)、アントラキノン、およびAgとフェノール樹脂の触媒を有する。
【0016】
酸化剤として空気の代わりに過酸化水素を使用する利点については、上記に論じた。
【0017】
膜は、陽極側でも陰極側でも触媒のための担体を構成することが好ましい。このように、コンパクトな設計および高い出力密度が達成される。
【0018】
陽極、陰極および膜は、互いに接着される、厚さ1mm以下の一つの平面を有する薄いプレートによって形成され、および、膜に直面する側の陽極と陰極が、基本的にプレートの側全体に最適化された液体が流入する表面構造が備わることが適切である。
【0019】
また、表面構造は波形の断面を有する通路から成ることが適切である。そのような通路によって、容易に望ましい流入パターンを達成することが可能である。
【0020】
薄い陽極および陰極のプレートは、厚さが0.6mm〜0.1mm、好ましくは0.3mmのシートメタルから成り、および通路は2mm〜3mmの幅、および0.5mm〜0.05mmの深さを有することが、適切である。このように燃料電池装置の寸法は減少されることが可能で、より良いメタノールの利用および出力密度の上昇のため、同時に望ましい反応が調節されることが可能である。
【0021】
好ましくは、膜はプロトン/ヒドロキソニウム・イオンが通過できるよう適切にドープされたガラスから成る。実際には、ガラス膜はセルの反応物に可溶性がなく、およびゆえにこれらによる反応のないものである。さらに、他のイオンに対して透過性のないものである。
【0022】
第一の好適な実施例では、燃料電池装置はメタノールによって駆動されるよう設計され、および三つのフロー的に直列接続された電池から構成される。第一セルはメタノールが酸化してホルムアルデヒドになり、第二セルはホルムアルデヒドが酸化してギ酸になり、および第三セルはギ酸が酸化して二酸化炭素と水になる。
【0023】
第二の好適な実施例では、燃料電池装置はエタノールによって駆動されるよう設計され、およびフロー的に直列接続された六つの電池から構成される。第一セルはエタノールが酸化してアセトアルデヒドに、第二のアセトアルデヒドは酢酸に、第三の酢酸は二酸化炭素とメタノールになる。第四セルはメタノールが酸化してホルムアルデヒドに、第五のホルムアルデヒドはギ酸に、第六のギ酸は二酸化炭素と水に、前述のように酸化される。自動車の実施例に使用される場合に、そのような燃料電池装置はエタノール操作とメタノール操作間で切り替えが容易であるという利点があり、利用可能なかつ/またその時に最も適切な燃料の使用が可能である。
【0024】
当然ながら、第一アルコールを炭素原子が一つ少ない第二アルコールに段階的に酸化する三つの群を有するセルの装置は、開始材料として、いずれの脂肪族、短鎖、可溶性の液体アルコール、アルデヒド、または酸の使用に広げることが可能である。必要に応じて十分に可能性のある例として、例えば10個のうちの第一セルは酪酸が酸化してプロピルアルコールと水になり、次のセルはプロピルアルコールが酸化してプロピオンアルデヒドになり、次にプロピオンアルデヒドが酸化してプロピオン酸になり、次にプロピオン酸が酸化して二酸化炭素とエタノールになり、その後、前述したようにエタノールの二酸化炭素と水への酸化される残り六つのセルに続く。
【図面の簡単な説明】
【0025】
続いて、本発明は好適な実施例および同封の図の参照によりより詳細に説明される。
【0026】
【図1】液体メタノールが燃料セルの中で二酸化炭素と水を形成するために段階的に酸化される、DMFC型の燃料電池装置の好適な実施例を示す、原理フローチャートである。
【図2】電極、中間膜、および流入通路の好適な配置を示す、図1による燃料電池装置の断面図である。
【図3】それぞれの装置内に反応体が誘導されることのできる、いくつかの異なる流入パターンの平面図である。
【図4】それぞれの装置内に反応体が誘導されることのできる、いくつかの異なる流入パターンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の原理フローチャートは、本発明によるDMFC型燃料電池装置の好適な実施例を示す。燃料電池装置では、脂肪族、短鎖、水溶性の、メタノールなど一般化学式RCH2OHの液体開始アルコールが、二酸化炭素と開始アルコールより炭素原子が一つ少ないアルコール、または開始アルコールが単一炭素原子を含む場合は水を形成するため、燃料電池の中で酸化される。図示された燃料電池装置は、フロー的に直列接続された三つの燃料セル1、2および3から構成され、分けられた三つのステップに段階的な酸化を行うため、燃料電池はそれぞれ、陽極11、陰極12、およびこれらを互いに分ける膜13から構成される。
【0028】
セル1での第一ステップは、メタノールなどの開始アルコールは、アルコールをアルデヒドに酸化しおよびプロトンと電子を解放するため、この第一反応のために最適化された触媒を使用して第一の望ましい陽極反応に暴露される。第一ステップからの反応生成物はセル2の第二ステップに誘導される。第二の望ましい陽極反応は、アルデヒドを酸に酸化しおよびプロトンと電子を開放するため、この第二の反応のために最適化された触媒を使用して行われる。第二ステップからの反応生成物はセル3の第三ステップに誘導される。第三の望ましい陽極反応は、酸を二酸化炭素と開始アルコールより炭素原子が一つ少ないアルコールに、または開始アルコールが単一炭素原子を含有する場合は水に酸化し、およびプロトンと電子を開放するため、この第三の反応のために最適化された触媒を使用して行われる。
【0029】
陽極側では、開始アルコールRCH2OHは、反応、
RCH2OH → RCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
式中のRはH, CH3, C2H5 or C3H7を表す、によって、この反応(a)のために最適化された触媒を使用して、酸化してアルデヒドになる。適切な触媒の含有は、60〜94%のAg、5〜30%のTeかつ/またRu、および1〜10%のPt単体またはAuかつ/またTiO2との結合が、90:9:1の比率であることが好ましい。
第二ステップでは、反応、
RCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
によって、この反応(b)のために最適化された触媒を使用して、得られたアルデヒドが酸化して酸になる。適切な触媒は、SiO2およびTiO2のAgとの結合である。
および第三ステップでは、反応、
RCOOH + H2O → CO2 + ROH + 2 H+ + 2 e- (c)
によって、この反応(b)のために最適化された触媒を使用して、得られた酸が酸化して二酸化炭素と前記酸より炭素原子が一つ少ないアルコール、またはRがHを表す場合には水になる。適切な触媒は、Ag単体またはTiO2かつ/またTeとの結合である。
【0030】
アルコールの二酸化炭素と水への酸化をいくつかのステップに分けることにより、それぞれのステップのために最適化された触媒によって、アルコールはより利用性が高くなるよう、そして出力密度が上昇するよう、望ましい反応が精製および調節されることが可能である。下記にアルコールがメタノールである場合を説明する。
【0031】
アセトアルデヒドへのメタノールの酸化のため、E0 ≒ 0.9 V、をギ酸へのアセトアルデヒドの酸化のため、E0 ≒ 0.4 V、および二酸化炭素へのギ酸の酸化のため、E0 ≒ 0.2 V、およびこれらをまとめて低負荷で約1.5〜1.6Vを与える。変換が良好な場合は、真ん中のセル2から熱が引き出されることが可能である。
【0032】
図1に示される実施例では、炭粉末(カーボンブラック)、アントラキノン、およびAgとフェノール樹脂の触媒を使用する反応、
H2O2 + 2 H+ + 2 e- → 2 H2O (d)
によって、水を形成するため、新しく供給された過酸化水素がそれぞれのステップの陰極側で還元される。異なるステップへの酸化剤の供給は、陽極および陰極側での反応がそれぞれのステップで互いに化学量論的に均衡を保つよう適切に調節される。従って、生産高が上昇できるように、反応がより確実に精製されることが可能であり、および従来の、図示されない調節装置によって調節されることが可能である。酸化剤として空気中の酸素などの酸素を使用することは可能であるが、推奨されない。空気の代わりに過酸化水素を使用することにより、流量がずっと少なくて済むという利点が得られる。加えて、空気の場合はE0 = 1.227 Vであるのに対し、過酸化水素の場合はE0 = 1.766 Vである。従って、過酸化水素を酸化剤として使用すると、結果として高い電圧が、またそれによってより高い出力が生じる結果となる。膜13の両側に液体の相を有することは、更なる利点となる。
【0033】
アントラキノン(CAS番号84‐65‐1)は融点286℃を有し、および水およびアルコールに溶性で、ニトロベンゼンおよびアニリンには不溶性の結晶性粉末である。触媒は炭粉末(カーボンブラック)、アントラキノン、および銀とフェノール樹脂などの混合によって生成され、コーティングに形成された後、乾燥されることができる。コーティングはその後支持から外され、圧砕または細かく粉砕され、得られた粉末が適切な溶剤でスラリー化された後望ましい場所に塗布され、その後溶剤は蒸発されることができる。
【0034】
三つの燃料セル1、2および3はまた、直列に電気接続される。二つの電子は、球状に示される負荷15を経由してステップ1の陽極11からステップ3の陰極12へ進む。 二つの電子はステップ3の陽極11からステップ2の陰極12に進む。および、二つの電子はステップ2の陽極11からステップ1の陰極12に進む。すべての三つのセル1、3および3の中で、形成されたプロトン/ヒドロキソニウム・イオンは陽極11から膜13を通って陰極12に進む。
【0035】
図2は、電極11、12、中間膜13および流入通路16の好適な配置を示した、図1による燃料電池装置の断面図である。陽極11、陰極12、および膜13は、パッケージまたはパイル(堆積)を形成するために互いに接着された薄いプレートまたはシートによって形成される。接着は接続ロッド(図示せず)などによって機械的に行われることが可能であるが、好ましくはシリコーンタイプなどの適合する接着剤(図示せず)の接着がプレート/シートを保持するために使用される。 膜13と陽極11の間、および膜13と陰極12の間には、基本的にプレートの側全体に最適化された液体を流入させるよう、表面構造16が配置される。さらに図2から、直列の電気接続は、ステップ1の陰極12から成るプレートはステップ2の陽極11のプレートに接触する表面に導電し、およびステップ2の陰極12から成るプレートはステップ3の陽極11のプレートに接触する表面を導電するよう実行されることが明らかである。分けられた燃料セル1、2、3の間の、図1に示される流入ラインは、プレートのパッケージ/パイルに形成されるフロー接続によって構成され、また図2に示される外部に位置するフロー接続によっても構成される。
【0036】
膜13は従来のNafionTMのPEM膜によって構成されることが可能であるが、好適な実施例では、膜は片側の膜からもう一方へプロトン/ヒドロキソニウム・イオンを移動できるようドープされた薄いガラスプレートから構成されることが好ましい。ガラスは、ソーダ石灰ガラスおよび緑色ガラスのような、廉価なグレードのガラスによって構成されうることが、有利である。そのようなガラスが薄く作られると、その弾力性および機械的負荷に対する特定の耐性が上昇される。ガラスのドープ剤として様々な異なる材料が考えられるが、塩化銀形状の銀の使用が廉価であるという理由で好ましい。薄いガラス同様ドープ剤は、プロトン/ヒドロキソニウム・イオンが膜を通って移動するのを促進する。さらに、ガラスは他のイオンおよびメタノールなどの分子の通過を止め、および伝導性がない、つまり陰極からの電子は膜を通って陽極に通過することができない。従って、陽極11から陰極12へのメタノールが移動することはなく、これはメタノールの移動、および陰極12での一酸化炭素の形成がないことによる燃料ロスがないことを意味し、さもなければ選択的に使用される白金触媒の効率を減少させることが可能である。
【0037】
図2に示される実施例では、陽極11、陰極12および膜13は1mm以下の厚さである。陽極11も陰極12も、一つの表面および、基本的にプレートの側全体に最適化された液体を流入させる前記表面構造16を有する。中間膜13が平面であるのと同様に、プレートは陽極11上にも陰極12上にも配置される。 図1に示される燃料電池装置の、セル1の陰極12の平面側は次に、セル2の陽極11の平面側に接触して接する。燃料セル1、2、3は、隣接するプレート上の表面構造12に面する平面側を逆もまた同様に有し、または、両側に表面構造16が備わる膜13に面する、平面側のある陽極11および陰極12を有する陽極11、膜13、そして陰極12を有しうることが、容易に理解される。
【0038】
陽極11も陰極12も、ステンレス鋼などの導電性および反応に耐性のある、厚さ0.6mm〜0.1mm、好ましくは0.3mmの素材の薄い金属シートから構成されることが適切である。陽極11および陰極12の表面構造と同様に、膜13のいずれの表面構造16も波形断面の通路16によって形成されることが可能である。通路16は2mm〜3mm幅の、および0.5mm〜0.05mmの深さを有することが適切である。ガラス膜13の表面構造16はいずれも例としてエッチングによって作られ、および陽極および陰極のプレート11、12の表面構造16は、耐衝撃性成形とも呼ばれる断熱成形によって作られる。そのような成形の一例は、米国特許番号6,821,471に開示される。断熱成形によって製造される望ましい表面構造または流量パターンのプレートは、チップカッティング除去によって得られる流入パターンの波形プレートのコストの、10分の1ほどである。
【0039】
図3および4は、基本的にプレートの側全体に最適化された液体の流入させる、いくつかの異なる表面構造または流入パターン16を示す。図3では、平行の通路は、表面構造の全体がチェックパターンに配置されたショルダーから構成され、および通路16は格子のようなパターンに配置されるように、側面に沿って繰り返し穿孔される。最後に図4は、平行に走る蛇行形状通路16もまた使用できることを示す。いずれの場合でも、異なる可能な通路は入口から出口まで均等な長さになるようにしなければならない。
【0040】
ガラスプレート13は一つの平面側を有し、および平面側は燃料電池またはリアクターの陽極反応または陰極反応に必須な触媒が適切に備わることが好ましく、および、触媒は膜の片面のガラス表面で結合されることが好ましい。従って、ガラスプレート13のもう一方の側も平面であることが適切であり、および陰極反応を行うのに不可欠な触媒は膜のもう一方のガラス面で結合される。図2から明らかなように、両面に触媒の層14が備わる二つの膜13がさらに示される。一つの平面側および一つの表面構造の側を有する同様の薄いプレート形の電極11、12のある燃料セル1、2、3のコンパクトパイル構造は促進され、それにより、高い出力密度が達成されることが可能である。
【0041】
上記のように、第二ステップのために最適化された触媒はSiO2、TiO2 およびAgによって構成されることが適切である。膜13がガラスから成る場合、SiO2はすでにガラスから構成されており、これはTiO2 およびAgのみが別々に適用される必要があることを意味する。
【0042】
触媒が適切にガラスの表面で結合されることにより、高い出力密度を与えるコンパクト設計が維持されると同時に、機械的損傷から保護される。結合はレーザーなど適切な不活性雰囲気で行われ、および触媒範囲を広げるため、触媒粒子は結合前にボールミルで粉砕するなど自然に非常に細かくされなければならない。
【0043】
もちろん、触媒は一つまたは両方の電極11、12によって運ばれなければならない。また、少なくとも一つのアントラキノンおよび銀を含むような触媒は、炭素繊維フェルトなどの、図示されていない中間の分離担体でアレンジされることが可能である。しかしそのようなアレンジは、結合が鈍化するので、この変形は考えられうるが好ましいとはいえない。
【0044】
上記の触媒はRがHをあらわす特定の場合のみならず、RがCH3、C2H5、またはC3H7を表す場合にもまた、反応に適合する触媒が使用されることが可能である。
【0045】
上記から明らかなように、同封の図面の参照とともに、第一の好適な実施例の燃料電池装置は、メタノールによって駆動するよう設計され、およびフロー的に直列接続された三つのセルから構成され、第一セルはメタノールが酸化してホルムアルデヒドになり、第二セルはホルムアルデヒドが酸化してギ酸になり、および第三セルはギ酸が酸化して二酸化炭素と水になる。
【0046】
第二の、しかし図示されない実施例では、燃料電池装置はエタノールによって駆動するよう設計され、フロー的に直列接続された六つのセルから構成される。第一セルはエタノールが酸化してアセトアルデヒドになり、第二セルはアセトアルデヒドが酸化して酢酸になり、第三セルは酢酸が酸化して二酸化炭素とメタノールになり、第四セルはメタノールが酸化してホルムアルデヒドになり、第五セルはホルムアルデヒドが酸化してギ酸になり、および第六セルはギ酸が酸化して二酸化炭素と水になる。自動車の実施例に使用する場合、そのような燃料電池装置はエタノール操作とメタノール操作間の切り替えが容易であるという利点があり、利用可能なかつ/またその時に最も適切な燃料の使用が可能である。
【0047】
当然ながら、第一アルコールを炭素原子が一つ少ない第二アルコールに段階的に酸化する三つの群を有するセルの装置は、開始材料として、いずれの脂肪族、短鎖、可溶性の液体アルコール、アルデヒド、または酸の使用に広げることが可能である。必要に応じて十分に可能性のある例として、例えば10個のうちの第一セルは酪酸が酸化してプロピルアルコールと水になり、次のセルはプロピルアルコールが酸化してプロピオンアルデヒドになり、次にプロピオンアルデヒドが酸化してプロピオン酸になり、次にプロピオン酸が酸化して二酸化炭素とエタノールになり、その後、前述したようにエタノールの二酸化炭素と水への酸化される残り六つのセルに続く。この方法では、燃料電池の燃料として、本文で前記に検討されなかった化合物を使用することも可能性である。おそらく、上記のアルコール、アルデヒド、および酸の群の分野に入らない、適切な陽極反応によって触媒を利用して最後にその群となるように酸化されることのできる化合物を開始剤として選択することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1.セル
2.セル
3.セル
11.陽極
11.陽極
11.陽極
11.陽極
12.陰極
12.陰極
12.陰極
12.陰極
13.膜
14.層
15.負荷
16.表面構造、通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族、短鎖、水溶性、一般化学式RCH2OHの液体アルコール、一般化学式RCHOのアルデヒド、または一般化学式RCOOHの酸で、RはH、CH3、C2H5またはC3H7を表し、酸化して二酸化炭素と水になるDMFC型燃料電池装置の操作の方法において、
・前記酸から開始する場合、二酸化炭素、前記酸より炭素原子が一つ少ないアルコール、またはRがHを表す場合は水を形成するための望ましい陽極反応の反応ステップに酸を暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放し、
・前記アルデヒドから開始する場合、前の反応ステップで、前記酸の形成のための望ましい陽極反応にアルデヒドを暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放し、
・前記アルコールから開始する場合、同じく前の反応ステップで、前記アルデヒドの形成のための望ましい陽極反応にアルコールを暴露、およびこの反応のために最適化された触媒を用いてプロトンおよび電子を開放し、および、
・前記酸より炭素原子が一つ少ない形成されたアルコールがメタノールでない場合、形成されたアルコールがメタノールになるまで上記の一連の反応ステップにアルコールを暴露、その後、メタノールを一連の反応ステップに暴露することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アルコールは前記陽極反応、
RCH2OH → RCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
で、この反応(a)のために最適化された触媒を使用して、アルデヒドを形成するよう酸化され、
前記アルデヒドは前記陽極反応、
RCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
で、この反応(b)のために最適化された触媒を使用して、酸を形成するよう酸化され、および、
前記酸は前記陽極反応、
RCOOH + H2O → CO2 + ROH + 2 H+ + 2 e- (c)
で、この反応(a)のために最適化された触媒を使用して、二酸化炭素とアルコール、またはRがHを表すときは水を、それぞれ形成するよう酸化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコールをアルデヒドに酸化する陽極反応の触媒として、60〜94%のAg、5〜30%のTeかつ/またRu、および1〜10%のPt単体またはAuかつ/またTiO2との結合で、好ましくは約90:9:1の比率で含有する触媒が使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルデヒドを酸に酸化する陽極反応の触媒として、SiO2およびTiO2のAgとの結合が使用されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
酸を二酸化炭素とアルコール、または水に酸化する陽極反応の触媒として、それぞれ、Ag単体またはTiO2かつ/またTeとの結合が使用される、請求項2から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
陰極(12)での酸化剤として、空気中の酸素などの酸素が使用されることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
陰極(12)での酸化剤として、過酸化水素が使用されることを特徴とする、請求項2から5に記載の方法。
【請求項8】
前記過酸化水素は、それぞれのステップ(1、2、3)で以下の陰極反応(d)
H2O2 + 2 H+ + 2 e- → 2 H2O (d)
のために、炭粉末、アントラキノン、およびAgの触媒との結合で使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応ステップは、燃料電池装置でフロー的に直列接続されるセル(1、2、3)で行われることを特徴とする、請求項2から8いずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記異なるステップ(1、2、3)への酸化剤の供給は、前記陽極および前記陰極側の反応がそれぞれの分かれたステップで、互いに化学量論的に均衡を保つよう調節されることを特徴とする、請求項2から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
陽極(11)と前記陽極反応のための触媒を有する陽極側、陰極(12)と前記陰極反応のための触媒を有する陰極側、及び前記陽極と前記陰極を互いに分ける中間膜(13)から構成され、脂肪族、短鎖、水溶性、一般化学式RCH2OHの液体アルコール、一般化学式RCHOのアルデヒド、または一般化学式RCOOHの酸で、RはH、CH3、C2H5またはC3H7を表す燃料を使用するのに適合し、および、複数ステップの陽極反応を実行するためフロー的に直列接続される複数のセルに分けられ、各セルの陽極側および陰極側はセルに行われる反応ステップのために最適化された触媒を有することを特徴とする、DMFC型燃料電池装置。
【請求項12】
前記陽極側の第一セル(1)は、60〜94%のAg、5〜30%のTeかつ/またRu、および1〜10%のPt単体またはAuかつ/またTiO2との結合で、好ましくは約90:9:1の比率で含有する触媒を、下記の陽極反応(a)、
RCH2OH → RCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
を行うために有し、フロー的に続く前記第二のセル(2)は、SiO2およびTiO2とAgとの結合の触媒を、下記の陽極反応(b)、
RCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
を行うために有し、および、第二セルの後にフロー的に続く第三のセル(3)はAg 単体またはTiO2かつ/またTeとの結合の触媒を、下記の陽極反応(c)、
RCOOH + H2O → CO2 + ROH + 2 H+ + 2 e- (c)
を行うために有することを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池装置。
【請求項13】
すべてのセル(1、2、3)は液体酸化剤を使用するよう設計されることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池装置。
【請求項14】
前記陰極側のすべてのセル(1、2、3)は、以下の陰極反応(d)、
H2O2 + 2 H+ + 2 e- → 2 H2O (d)
の液体酸化剤として過酸化水素を使用するために、炭粉末、アントラキノン、およびAgの触媒を有することを特徴とする、請求項13に記載の燃料電池装置。
【請求項15】
前記膜(13)は、前記陽極側かつ/また前記陰極側の前記触媒のための担体を構成することを特徴とする、請求項11から14のいずれか一つに記載の燃料電池装置。
【請求項16】
前記陽極(11)、前記陰極(12)、および前記膜(13)は、互いに接着された、厚さ1mm未満で平面側のある薄いプレートから構成され、前記膜(13)の両側は平面であり、および前記陽極(11)と前記陰極(12)はそれぞれ一つの平面側を有し、および前記膜(13)に面するそれぞれの反対側に、基本的にプレートの側全体に最適化された液体を流入させる表面構造(16)が備わることを特徴とする、請求項11から15のいずれか一つに記載の燃料電池装置。
【請求項17】
前記表面構造(16)は、波形の断面を有する通路から構成されることを特徴とする、請求項16に記載の燃料電池装置。
【請求項18】
前記陽極および前記陰極の薄いプレート(11、12)は、0.6mmから0.1mm、好ましくは0.3mmの厚さのシートメタルで構成され、および前記通路(16)は2mmから3mmの幅、および0.5mmから0.05mmの深さを有することを特徴とする、請求項17に記載の燃料電池装置。
【請求項19】
前記膜(13)はガラスから成る、請求項11から18のいずれか一つに記載の燃料電池装置。
【請求項20】
前記ガラスはプロトン/ヒドロキソニウム・イオンが通過できるようドープされることを特徴とする、請求項19に記載の燃料電池装置。
【請求項21】
フロー的に直列接続される三つのセルから構成され、第一セル(1)は以下の陽極反応(a)、
CH3OH → HCHO + 2 H+ + 2 e- (a)
を行うために最適化された触媒を有し、
フロー的に続く第二セル(2)は以下の陽極反応(b)、
HCHO + H2O → RCOOH + 2 H+ + 2 e- (b)
を行うために最適化された触媒を有し、
および第二セルの後にフロー的に続く第三セル(3)は以下の陽極反応(c)
HCOOH + H2O → CO2 + H2O + 2 H+ + 2 e- (c)
を行うために最適化された触媒を有することを特徴とする、燃料として液体メタノールを使用するための、請求項11から20のいずれか一つに記載の燃料電池装置。
【請求項22】
フロー的に直列接続される六つのセルから構成され、第一セルは以下の陽極反応(a)、
C2H5OH → CH3CHO + 2 H+ + 2 e- (a)
を行うために最適化された触媒を有し、
フロー的に続く第二セルは以下の陽極反応(b)、
CH3CHO + H2O → CH3COOH + 2 H+ + 2 e- (b)
を行うために最適化された触媒を有し、
前記第二セルの後にフロー的に続く第三セルは以下の陽極反応(c)
CH3COOH + H2O → CO2 + CH3OH + 2 H+ + 2 e- (c)
を行うために最適化された触媒を有し、
前記第三セルの後にフロー的に続く第四セルは以下の陽極反応(d)、
CH3OH → HCHO + 2 H+ + 2 e- (d)
を行うために最適化された触媒を有し、
前記第四セルの後にフロー的に続く第五セルは以下の陽極反応(e)、
HCHO + H2O → HCOOH + 2 H+ + 2 e- (e)
を行うために最適化された触媒を有し、
および前記第五セルの後にフロー的に続く第六セルは以下の陽極反応(f)、
HCOOH + H2O → CO2 +H2O + 2 H+ + 2 e- (f)
を行うために最適化された触媒を有することを特徴とする、燃料として液体エタノールを使用するための、請求項11から20のいずれか一つに記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−540525(P2009−540525A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515353(P2009−515353)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050419
【国際公開番号】WO2007/145587
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504344978)モルフィック テクノロジーズ アクティエボラグ (ピーユービーエル) (14)
【Fターム(参考)】