DNAおよびタンパク質分子の結合のための炭素電極表面
核酸ハイブリダイゼーションを検出するアッセイを実施するための方法が開示される。特に、核酸ハイブリダイゼーション検出に適する炭素電極の製造が記載される。いくつかの好ましい実施態様において、炭素電極のマイクロアレイを、フォトリソグラフィーを用いて構築する。フォトリソグラフィー法の最終工程は、はんだマスク306をアルカリ溶液によって現像することからなる。アルカリ溶液は炭素表面304を酸化して、表面カルボン酸基を作る。表面カルボン酸基をEDCまたはDCCおよびNHSと反応させて、NHSエステルを作る。Neutrアビジン(登録商標)の電極表面への固定化は表面NHSエステル基との反応により達成される。次に、ビオチニル化プローブDNA分子を、ビオチン基と固定化Neutrアビジン(登録商標)との結合を介して電極に結合する。得られた電極を用いて、プローブDNAと相補的標的DNAとのハイブリダイゼーションを検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は本明細書にその全体を引用して援用される2003年12月15日出願の米国仮出願第60/530,065号および2004年10月20日出願の米国仮出願第60/620,374号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は核酸およびタンパク質の結合を高める電極表面の修飾に関する。より具体的には、本発明は核酸ハイブリダイゼーションの検出に用いられる電極の製造および調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
試料中の標的核酸配列の存在を検出する一つの方法は、標的配列に相補的なプローブ核酸配列を電極の表面上または表面近くに固定化することである。標的核酸配列が存在し、条件が好ましい場合、標的配列は相補プローブ配列とハイブリダイズするだろう。次に、電極の電気化学的特性が変えられて、標識およびプローブ核酸のハイブリダイゼーションの電気化学的検出を可能とするだろう。
【0004】
核酸ハイブリダイゼーションの電気化学的検出は酸化還元種の存在によって促進できる。例えば、プローブおよび標的核酸に対する酸化還元活性対イオンを用いることができる。電極表面近くの酸化還元活性対イオンの濃度は、ハイブリダイゼーションが存在しない場合よりも核酸がハイブリダイズする場合の方が高くなるだろう。濃度のこの増加は、酸化還元活性対イオンの酸化または還元に対する電気化学的応答に反映されよう。そのような電気化学的定量技術は特に本明細書にその全体を引用して援用されるA.B. Steel et al., Electrochemical Quantification of DNA Immobilized on Gold, Anal. Chem. 70:4670-77(1998)に記載されている。この文献において、Steelらは、表面に固定されたDNAと相互作用する種としてのコバルト(III)トリスビピリジルおよびルテニウム(III)ヘキサアミンの使用を記載する。
【0005】
電極製造の現在の方法は、酸化還元活性種の存在下に核酸ハイブリダイゼーションの正確な検出に干渉するバックグランドシグナルをもたらす。したがって、核酸ハイブリダイゼーションのさらに正確で精密な検出を提供する電極およびシステムに対して、満たされていない要求が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの特徴は、製造された電極のアレイを準備し、そして製造中の電極の表面に形成された化学種を利用して電極の少なくとも一つにプローブ分子を結合することを含む、センサーのアレイを作製する方法である。
【0007】
発明のもう一つの特徴は、電極を製造し;製造工程中に形成される電極の表面上の化学種を利用することにより、プローブ分子を電極に結合させ;そしてプローブ分子を試料と接触させることを含む、試料のアッセイを行う方法である。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、電極上にカルボキシル基を形成させる減法処理技術を用いて製造した炭素電極を準備し;プローブにハイブリダイズすることのできる標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料にプローブを接触させる際に、ハイブリダイゼーションが電気化学的に検出されるように、プローブポリヌクレオチドを、カルボキシル基を用いて電極に結合することを含む、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0009】
本発明のもう一つの特徴は、炭素を含む表面を準備し;該表面をアルカリ溶液にさらし;該表面を、EDCまたはDCCおよびNHSで処理して、表面結合中間部分を形成し;そして中間部分を生体分子に接触させて、生体分子を該表面へ結合することを含む、生体分子を表面に結合させる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一部の実施態様は核酸の分析方法に関する。一部の好ましい実施態様において、核酸はDNAを含む。しかし、DNAを言及することは、請求の範囲で必要とされていないかぎり、他の核酸または核酸アナローグ(例えば、RNA、PNA)が本発明の実施に用いることができないことを意図するものではない。
【0011】
ルテニウム系対イオンは、ハイブリダイゼーションを検出する目的のために、ポリヌクレオチドを定量するのに特に有利である。ルテニウム電流測定およびこの目的のための複合体Ru(NH3)63+およびRu(NH3)5ピリジン3+の利用が、本明細書にその全体を引用して援用される2002年11月6日出願の米国特許出願第60/424656号、2003年4月24日出願の米国特許出願第10/424542号および2003年5月2日出願の米国特許出願第10/429291号に開示されている。
【0012】
核酸ハイブリダイゼーションの検出に用いられる電極物質は、金、炭素またはそれ以外の一部の導電性物質であってよい。炭素電極は、上記米国特許出願第10/429291号で議論されたように、炭素電極でのRu(NH3)63+の還元が二原子酸素の還元電位と重複しない点で金よりも利点がある。
【0013】
電極のマイクロアレイが形成できるように電極をマイクロ形成することが望ましい。先行技術で知られているマイクロ形成処理技術は加法または減法のいずれかである。加法処理において、電極材料100を、図1Aに示されるように誘電層102に置く。図1Bは、次に、電極上部の領域106が露出された状態で残されるように、誘電層104を基板と電極上に選択的に析出(被着)させることを示す。この選択的な層形成は、誘電層をスクリーン印刷した後にUV硬化または熱硬化により達成することができる。もしくは、基板と電極を、商標Kaptonのポリイミドフィルム等の適当な材料からなるプレドリルド被覆物を用いて積層することができる。加法処理は、電極の大きさが減法処理と同じように正確に調節できないという欠点を有する。
【0014】
減法処理では、電極材料200を、図2Aに示されるように誘電基板202に置く。図2Bは、次に、電極材料200と誘電基板を誘電層204で被覆することを示す。次に、誘電層204の一部を図2Cに示されるように選択的に除去する。誘電層の除去を、フォトリソグラフィーまたは回路板または半導体作製の他の適当な技術を使用して達成する。
【0015】
米国特許第5,632,957号は、半導体に、絶縁酸化物、次に従来のリトグラフ技術によりパターン化された金属電極材料、ガラス被覆物および窒化物層がそれぞれ被覆される減法過程を開示する。窒化物層とガラス被覆物は、電極を露出させるパターン化電極上の領域でエッチングされた。次に、金属層に結合させ、DNA捕捉プローブのための結合層として役立つアミノプロピルシラン(APS)で、電極を処理した。米国特許第5,632,957号は本明細書にその全体を引用して援用される。
【0016】
製作過程が電極アレイを生産するのが好ましい一方で、単一電極を含むいかなる数の電極も本方法を用いて作製することができる。電極は、試料の電気化学的アッセイを行う際に使用できるように官能化することができる。好ましくは、アッセイは標的核酸配列が存在するかどうか検出する。さらに、一部のアッセイは存在する標的の量を検出することもできる。
【0017】
本発明の一実施態様は、電極製造におけるフォトリソグラフィー技術の使用を提供する。しかし、当分野で公知の適当な微細加工の技術を使用してよく、特に意図される技術としてイオンビームエッチングとレーザアブレーションが挙げられる。そのような技術は、多様な表面官能基および吸着種の生成により電極表面の汚染をしばしばもたらす。本発明のいくつかの実施態様が、核酸、タンパク質および他の分子を電極に結合させるために生産された表面機能基を使用する。
【0018】
いくつかの好ましい実施態様において、電極材料は炭素を含む。有利には、電極はガラス質炭素、炭素繊維、グラファイト、炭素ペーストまたはどのような導電性の炭素インクであってもよい。しかし、金属、導電性ポリマーまたは複合物等の他の導電性材料を使用してもよい。図3A-3Dは電極製造法の一例を示す。この方法は積層銅箔を有する基板から始める。例えば、基板はFR-4などのファイバーグラス基板でもよい。図3Aにおいて、銅トレース300が基板302上に定められる。銅トレース300は、最初に、銅積層を、当業者に公知の浸漬、スプレー、ロール塗、積層または他の操作によりフォトレジスト化合物で被覆することにより定めてもよい。次に、銅トレース300に望ましい位置が、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト上に定められる。アルカリ溶液の使用等によりフォトレジストの露出していない領域を除去する。銅のエッチングは、除去されたフォトレジストにより露出した銅を除去する。当業者に公知な、あるいは容易に明らかなどのような操作も、フォトレジストを除去し、銅をエッチングするために用いてよい。最後に、強アルカリ溶液、有機溶媒、または当業者に公知な、あるいは容易に明らかな他の技術を用いて残留フォトレジストを除去する。
【0019】
図3Bに示されるように、炭素電極304が銅トレース300に電気的に接続されるように、炭素電極304のアレイを基板302上にスクリーン印刷することができる。当業者に公知のどのような操作も、電極材料304を基板302と銅トレース300に析出(被着)させるために用いてもよい。好ましくは、電極材料304は直接、銅トレース300と接触する。もしくは、電極304と銅トレース300との電気的接続を形成するためにさらなる導電性材料を使用してもよい。図3Cにおいて、誘電層306を、基板302、炭素電極304および銅トレース300上に被覆する。いくつかの有利な実施態様において、誘電層は液体写真画像性(photoimageable(LPI))はんだマスクである。
【0020】
いくつかの実施態様において、基板302と銅トレース300の部分を、炭素電極スクリーン印刷前に、フォトリソグラフィーによりはんだマスクで被覆することができる。一般的に、はんだマスク処理は、はんだマスクによる被覆を行い、マスクを硬化させ、フォトリソグラフィーで領域を定め、マスクを現像して、最終的に再び硬化させることを含む。
【0021】
最終的な製造工程を図3Dに示す。LPIはんだマスクが使用される場合、炭素電極304上のはんだマスク306の領域がフォトリソグラフィーにより定められる。はんだマスク306を現像すると、炭素電極304が露出する。もしくは、誘電層306は、フォトレジストなどのマスク層で最初にそれを被覆することで定めてもよい。次に、炭素電極304の上の領域を、マスク層上にフォトリソグラフィーで定めた後、未露出マスクを除去し、誘電層306をエッチングする。どのような操作が用いられようと、得られる電極アレイ構造物は、銅トレース300と基板302を試料への露出から保護しながら、電極304の炭素表面を露出されたままにする。本発明の利点は、銅トレース300と除去される誘電層306の領域を定めるためにフォトリソグラフィーを使用することにより、電極の寸法を正確に制御できるということである。
【0022】
図3A-3Dは一つの好ましい微細加工を示すが、当業者に公知の他の製作過程を使用してもよい。
【0023】
このタイプの微細加工の技術で、はんだマスクの現像が露出炭素の表面を酸化させ、カルボン酸基等の汚染表面種を作ることが今回発見された。これらのカルボン酸基は電極の電気化学的特性を変える。その上、カルボン酸基は溶液中の種と相互作用するだろう。
【0024】
図4のボルタンモグラムは、Ru(NH3)63+還元に対する表面カルボン酸基の効果を示す。ボルタンモグラムの分析溶液は5mMルテニウム(III)ヘキサアミン、トリス緩衝液、および支持電解質としてのNaClを含む。参照電極はAg/AgClであった。溶液中の塩化物の濃度は10mMであった。ボルタンモグラムに示されるように、炭素の表面がカルボン酸基を含むと、Ru(NH3)63+の還元は、未酸化炭素表面が使用されている場合よりも、負の電位でピークを有する高い電流を発生する。したがって、酸化された炭素の表面は、核酸ハイブリダイゼーションの測定に干渉しうる高いバックグラウンド信号を作りだす。この高い電流は、図5に示されるように、負電荷の脱プロトン化されたカルボン酸基と正電荷のRu(NH3)63+との引力による。そのような引力は、吸着Ru(NH3)63+種をもたらし、電極表面の近くのRu(NH3)63+濃度の、容積溶液濃度に対する増加をもたらしうる。したがって、Ru(NH3)63+の還元中、Ru(NH3)63+と電極との間に検出電荷移動の増加が観察される。
【0025】
この問題を解決する一つのアプローチは加法微細加工技術を使用することによって電極の汚染を避けることにあろう。しかし、本発明のいくつかの実施態様では、減法技術が、加法技術の代わり、またはそれに加えて使用することができる。よって、減法の技術で提供された寸法の制御が実現できる。さらに、本発明のいくつかの実施態様が、汚染表面を利用して、核酸、タンパク質および他の分子を電極の表面に結合させるために使用できる官能基を提供する。フォトリソグラフィーまたは他の微細加工技術後の電極表面への分子の結合は、製造過程の結果として自然に作り出された表面官能基または吸着種を用いて行ってよい。いくつかの好ましい実施態様において、カルボン酸基が利用される。
【0026】
いくつかの有利な実施態様は、問題の核酸配列に相補的な核酸プローブ配列を電極に結合させるために炭素電極の表面上のカルボン酸基を使用する。いくつかの実施態様において、プローブ配列を、プローブ配列に結合させる化学的反応性リンカー基により直接電極の表面に結合させる。リンカー基は、直接炭素電極の表面のカルボン酸基または他の基と反応するようなものであってよい。もしくは、表面基を、まず、リンカー基との反応に適する別の化学種に変換する。
【0027】
好ましくは、アビジン等のタンパク質または他のリンカーを、表面の官能基を利用して電極の表面に結合する。次に、アビジンを、アビジンとビオチンとの非共有相互作用によりビオチン部分により官能化された、プローブ核酸配列の電極への結合を容易にできる。電極表面へのタンパク質の結合は、表面官能基とタンパク質上の適切な反応基との直接的な反応により達成されよう。もしくは、表面の官能基を、まず、タンパク質の結合前に別の化学種に変換する。結合タンパク質層は、液体溶液中のイオンをバルク溶液から電極表面に移らせるために十分多孔性でなければならない。
【0028】
アビジン等のタンパク質または他のリンカーの使用は、ある実施態様に有利であろう。これらの実施態様において、タンパク質リンカーの使用は、電極とその表面の使用においてさらなる柔軟性を提供し、異なるプローブ核酸配列によるプローブ核酸配列の置換を可能にする。例えば、プローブ核酸配列を、電極に結合させたアビジンと核酸に結合させたビオチンとの相互作用によって電極に結合させる場合、ビオチニル化核酸を除去して、異なるビオチニル核酸と置換することにより、同一の官能化電極表面を、異なる核酸分析アッセイに使用することができる。さらに、この実施態様は、核酸の共有結合が望ましくない他のどの状況においても有利であろう。
【0029】
酸化炭素上に形成される官能基は、核酸を炭素表面に結合させるために既に使用されている。また、従来技術において結合に使用される化学的反応等を本発明で使用することもできる。しかしながら、これらの従来技術操作は、少なくとも一つの実施態様では、結合基が製造法により作られる本発明とは対照的に、表面種を形成するために炭素の電気化学的または化学的な前処理を必要とした。例えば、米国特許第5,312,527号は、電気化学的にカルボン酸基を炭素電極上に作った後、1(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチル-カルボジイミドとナトリウムN-ヒロドキシスルホスクシンイミドによる処理を行って、カルボン酸基のN-ヒロドキシスルホスクシンイミドエステルを電極表面に残すことを記載する。次に、ポリヌクレオチドプローブを活性化炭素表面と反応させて、プローブの電極への結合を導いた。同様の操作は米国特許第6,221,586号に記載されている。もしくは、米国特許第6,207,369号はクロム酸溶液中で炭素フィブリル複合体電極を酸化することを開示する。次に、酸化した電極を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)またはN,N’-ジシクロヘキシル-カルボジイミド(DCC)とN-ヒドロキシスクシンアミド(NHS)と反応した。活性化電極のストレプトアビジンとの反応により、ストレプトアビジンの電極への固定化を行った。ビオチン標識オリゴヌクレオチドによる処理は、ビオチン部分のストレプトアビジンへの結合、よって、電極へのオリゴヌクレオチドの固定化をもたらした。米国特許第6,180,356号は、炭素電極表面へのルテニウム含有の薄いフィルムの電気重合を開示する。その薄いフィルムは、EDCまたはDCCおよびNHSと反応した表面カルボキシル基を含んだ。アミンリンカーを含むプローブDNAが、処理電極との反応により固定化された。米国特許第5,312,527号、同第6,221,586号、同第6,207, 369号および同第6,180,356号を本明細書にその全体を引用して援用される。
【0030】
所望とされる部分の結合のために製造工程により電極の表面に自然に形成された官能基または吸着種を利用することにより、本発明のいくつかの実施態様は汚染に関連した問題を回避している。同時に、本発明のいくつかの実施態様は核酸結合前に別々に電気化学的または化学的に炭素表面を活性化する必要がない。
【0031】
一つの好ましい実施態様を図6に示す。リソグラフィーを使用する炭素電極アレイの微細加工の後、酸化炭素電極の表面上のカルボン酸基を、EDCやDCC等のカルボジイミドおよびNHSによる処理でNHSエステルへ変換する。次に、NHSエステル基を、炭素電極表面へのアビジンの結合をもたらすアビジン分子と反応させる。次に、ビオチニル化DNA捕捉プローブをアビジンとビオチンとの結合を経て電極に結合させる。得られた電極を用いて、試料液中でのDNA捕捉プローブと相補的な標的DNAとのハイブリダイゼーションを検出することができる。
【0032】
上記操作において、電極は、必要ならPBS塩水等の食塩水によって洗浄してよい。アビジンタンパク質はリン酸緩衝液等の緩衝液中に提供できる。未反応NHSエステルはリン酸ナトリウム溶液で非活性化できる。ビオチニル化プローブはTris/LiCl溶液中に提供することができる。StabilCoatTM等のタンパク質安定化試薬を使用することは望ましいであろう。
【0033】
ここで使用される「アビジン」はビオチン結合性タンパク質をいい、その中でも、糖タンパク質アビジン、非グリコシル化ストレプトアビジンタンパク質、Molecular Probesから入手可能なNeutrアビジンTM等、炭水化物を除去するために処理されたタンパク質、およびMolecular Probesから入手可能なCaptアビジンTM等、ビオチン結合部位中のチロシン残基の選択的ニトロ化を有するタンパク質が挙げられる。
【0034】
好ましく、検出は、試料液に還元可能なイオン種(例えばRu(NH3)63+)を含ませることにより容易になる。Ru(NH3)63+のRu(NH3)62+への還元を電流測定または他の電気化学的技術により検出することができる。還元電流は、プローブDNAが標的DNAとハイブリダイズする場合に、DNAがハイブリダイズしない場合よりも高くなるだろう。この還元電流の増加は、DNAハイブリダイゼーションの際、電極表面近くのRu(NH3)63+濃度の増加のためである。正電荷のRu(NH3)63+はDNAの陰電荷リン酸塩骨格に引き付けられる。DNAがハイブリダイズされるとき、さらに陰電荷のリン酸塩骨格は電極の近くにあり、さらに引き付けられたRu(NH3)63+をもたらすであろう。当業者は、どのような適当な酸化還元活性対イオンまたは対イオンの組み合わせも、Ru(NH3)63+、例えばRu(NH3)5ピリジン3+、他のルテニウム複合体、または他の還元可能なイオン種等で代用してよいことを理解するであろう。
【0035】
当業者に公知の適当な方法により標的DNAをプローブと接触させてよい。好ましくは、標的分子の数は、それぞれのプローブDNA分子が標的DNA分子にハイブリダイゼーションされる機会を最大にするためにプローブ分子の数よりも多くする。標的DNA配列がプローブ配列に相補的な場合、それらの分子はハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションが実際に起こるかどうかは、温度、pH、またはハイブリダイズする多様な分子を変性できる種の存在等、多様なストリンジェンシー因子により影響されるだろう。したがって、所望のレベルのストリンジェンシーを得るためにアッセイ条件を調節することが望ましいであろう。最大のストレンジェンシーとは、完全に相補的なDNA分子はハイブリダイズするが、他のすべてのものはそうならない条件であろう。理想的な条件は、一般的に、「非相補」分子間のハイブリダイゼーションの数(偽陽性)を最小とし、かつ適当な相補的な標的分子の存在にもかかわらずハイブリダイゼーションしないままでいるプローブの数(偽陰性)を最小にするバランスをとる条件であろう。標的DNA分子の量および/または大きさを増加させることが、偽陰性を最少にするために有用でありうる技術の例である。
【0036】
どのような適当な電気化学の技術も使用してよいが、電流測定が好ましい技術である。電流測定検出中に測定される電流は、電極表面近くの(NH3)63+の量に関連しうるが、これは次に標的DNA分子およびプローブ骨格上のリン酸基の量と関連しうる。DNAリン酸基の定量により、ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAの区別が可能となり、プローブで調べられたDNAがプローブ配列と相補的であるかどうか、つまり問題の標的を含むかどうかを決定できる。
【0037】
ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAとの測定可能な区別を、プローブDNAよりも実質的に長い標的DNAを用いることによりさらに深みのあるものとすることができる。さらに長いプローブDNAは、実質的により多くのRu(NH3)63+を蓄積するだろう。よって、プローブが標的にハイブリダイズする場合、電気化学的応答は、短い標的分子が使用される場合よりも高いだろう。標的DNAを延長するために好ましい技術はローリングサークル増幅(RCA)である。さらに長い標的DNA分子を作り、次に試料溶液に導入できる。もしくは、鎖がプローブ鎖にハイブリダイズした後に標的DNA分子の長さを増加させることができる。この二番目の技術はしばしば「オンチップ」増幅と呼ばれる。オンチップ増幅の好ましい方法は、頭−尾結合の重合とRCAである。オンチップ増幅は、特に本明細書にその全体を引用して援用される2003年5月2日に出願された特許出願中の米国特許出願第10/429293号にさらに詳しく論じられている。
【0038】
ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAとの間の信号コントラストを増加させるための別の技術は、プローブ分子に引き付けられるRu(NH3)63+の測定還元電流への寄与を制限することである。特に、これは、プローブとRu(NH3)63+との間の電気的引力を制限することにより行うことができる。例えば、プルーブを、該プルーブが負荷電骨格を含まないように構築する場合、該プルーブは対イオンを引き付けない。したがって、より多くの検出可能な信号は標的のDNAに関連する対イオンによるものであろう。ハイブリダイゼーションが起こらなかった場合、対イオン引力に関与する標的分子が存在しないので、検出可能な信号はある程度まで低くなるだろう。
【0039】
負電荷骨格のないプローブとして、ペプチド核酸(PNA)、ホスホトリエステル、メチルホスホネートを挙げることができる。これらの核酸アナログ(類似体)は公知である。
【0040】
特に、PNAは、Nielsen, "DNA analogues with nonphosphodiester backbones," Annu Rev Biophys Biomol Struct, 1995; 24: 167-83; Nielsen et al., "An introduction to peptide nucleic acid," Curr Issues Mol Biol, 1999; 1(1-2): 89-104;およびRay et al. "Peptide nucleic acid (PNA): its medical and biotechnical applications and promise for the future," FASEB J., 2000 Jun; 14(9): 1041-60(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0041】
ホスホトリエステルは、Sung et al., "Synthesis of the human insulin gene. Part II. Further improvements in the modified phosphotriester method and the synthesis of seventeen deoxyribooligonucleotide fragments constituting human insulin chains B and mini-CDNA," Nucleic Acids Res, 1979 Dec 20; 7(8): 2199-212; van Boom et al.," Synthesis of oligonucleotides with sequences identical with or analogous to the 3'-end of 16S ribosomal RNA of Escherichia coli: preparation of m-6-2-A-C-C-U-C-C and A-C-C-U-C-m-4-2C via phosphotriester intermediates," Nucleic Acids Res, 1977 Mar; 4(3): 747- 59; およびMarcus-Sekura et al.," Comparative inhibition of chloramphenicol acetyltransferase gene expression by antisense oligonucleotide analogues having alkyl phosphotriester, methylphosphonate and phosphorothioate linkages," Nucleic Acids Res, 1987 Jul 24; 15(14): 5749-63(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0042】
メチルホスホネートは、米国特許第4,469,863号(Ts'o etal.) ; Lin et al., "Use of EDTA derivatization to characterize interactions between oligodeoxyribonucleoside methylphophonates and nucleic acids," Biochemistry, 1989, Feb 7; 28 (3): 1054-61; Vyazovkina et al., "Synthesis of specific diastereomers of a DNA methylphosphonate heptamer, d(CpCpApApApCpA), and stability of base pairing with the normal DNA octamer d(TPGPTPTPTPGPGPC), "Nucleic Acids Res, 1994 Jun 25; 22(12): 2404-9; Le Bec et al., "Stereospecific Grignard-Activated Solid Phase Synthesis of DNA Methylphosphonate Dimers," J Org Chem, 1996 Jan 26; 61(2): 510-513; Vyazovkina et al., "Synthesis of specific diastereomers of a DNA methylphosphonate heptamer, d(CpCpApApApCpA), and stability of base pairing with the normal DNA octamer d(TPGPTPTPTPGPGPC)," Nucleic Acids Res, 1994 Jun 25; 22(12): 2404-9; Kibler-Herzog et al.," Duplex stabilities of phosphorothioate, methylphosphonate, and RNA analogs of two DNA 14-mers," Nucleic Acids Res, 1991 Jun 11; 19(11): 2979-86; Disney et al.," Targeting a Pneumocystis carinii group I intron with methylphosphonate oligonucleotides : backbone charge is not required for binding or reactivity," Biochemistry, 2000 Jun 13; 39(23): 6991-7000; Ferguson et al.," Application of free-energy decomposition to determine the relative stability of R and S oligodeoxyribonucleotide methylphosphonates," Antisense Res Dev, 1991 Fall; 1(3): 243-54; Thiviyanathan etal., "Structure of hybrid backbone methylphosphonate DNA heteroduplexes: effect of R and S stereochemistry," Biochemistry, 2002 Jan 22; 41(3): 827-38; Reynolds et al., "Synthesis and thermodynamics of oligonucleotides containing chirally pure R(P)methylphosphonate linkages," Nucleic Acids Res, 1996 Nov 15; 24(22): 4584-91; Hardwidge et al.,"Charge neutralization and DNA bending by the Escherichia coli catabolite activator protein," Nucleic Acids Res, 2002 May 1; 30(9): 1879-85;およびOkonogi et al., "Phosphate backbone neutralization increases duplex DNA flexibility: A model for protein binding," PNAS U.S.A., 2002 Apr 2; 99 (7): 4156-60(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0043】
もしくは、荷電核酸および非荷電核酸アナログの両方を含むプローブを組み立ててもよい。同様に、純粋なDNAプローブを、非荷電アナログを含むプローブと並んでアッセイに使用することができる。しかし、ハイブリダイズされたプローブDNAとハイブリダイズされないプローブDNAとを見分ける精度は、一般的に、プローブと標的との間の電荷コントラストに応じて高まるであろう。したがって、一般に、未荷電核酸アナログから全体的に作られるプローブの排他的使用により、ハイダイズされた分子とハイブリダイズされない分子との最も大きい信号コントラストがチップ上で可能となるであろう。一般に、メチルホスホネートを含むプローブが好ましい。ホスホトリエステルを含むプローブは、水媒体に一般に可溶性でないために、それほど好ましくはない。
【0044】
本発明の好ましい実施態様はポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法であるが、ここで開示された技術と方法は他の電極に基づくセンサーを作製するために用いることもできる。例えば、発明された技術により、ヌクレオチド以外のプローブ分子を電極表面に結合させることにより、多様な化学種の存在または量、または物理的な状態を検出するセンサーを構築してもよい。そのようなセンサーは、液体、固体または気体の媒体中で使用することができる。さらに、発明のいくつかの実施態様は、電気化学以外の技術を含めた電極系技術の使用も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】電極製造における加法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)の選択的な析出を行う。
【図1B】電極製造における加法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)の選択的な析出を行う。
【図2A】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図2B】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図2C】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図3A】電極製造法を示す。
【図3B】電極製造法を示す。
【図3C】電極製造法を示す。
【図3D】電極製造法を示す。
【図4】5μMルテニウム(III)ヘキサアミン存在下での酸化および未酸化の炭素電極の矩形波ボルタンモグラムを示す。
【図5】炭素電極表面上のカルボン酸基と、ルテニウム(III)ヘキサアミンとの相互作用を示す。
【図6】炭素電極上へのDNAプローブの固定化を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は本明細書にその全体を引用して援用される2003年12月15日出願の米国仮出願第60/530,065号および2004年10月20日出願の米国仮出願第60/620,374号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は核酸およびタンパク質の結合を高める電極表面の修飾に関する。より具体的には、本発明は核酸ハイブリダイゼーションの検出に用いられる電極の製造および調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
試料中の標的核酸配列の存在を検出する一つの方法は、標的配列に相補的なプローブ核酸配列を電極の表面上または表面近くに固定化することである。標的核酸配列が存在し、条件が好ましい場合、標的配列は相補プローブ配列とハイブリダイズするだろう。次に、電極の電気化学的特性が変えられて、標識およびプローブ核酸のハイブリダイゼーションの電気化学的検出を可能とするだろう。
【0004】
核酸ハイブリダイゼーションの電気化学的検出は酸化還元種の存在によって促進できる。例えば、プローブおよび標的核酸に対する酸化還元活性対イオンを用いることができる。電極表面近くの酸化還元活性対イオンの濃度は、ハイブリダイゼーションが存在しない場合よりも核酸がハイブリダイズする場合の方が高くなるだろう。濃度のこの増加は、酸化還元活性対イオンの酸化または還元に対する電気化学的応答に反映されよう。そのような電気化学的定量技術は特に本明細書にその全体を引用して援用されるA.B. Steel et al., Electrochemical Quantification of DNA Immobilized on Gold, Anal. Chem. 70:4670-77(1998)に記載されている。この文献において、Steelらは、表面に固定されたDNAと相互作用する種としてのコバルト(III)トリスビピリジルおよびルテニウム(III)ヘキサアミンの使用を記載する。
【0005】
電極製造の現在の方法は、酸化還元活性種の存在下に核酸ハイブリダイゼーションの正確な検出に干渉するバックグランドシグナルをもたらす。したがって、核酸ハイブリダイゼーションのさらに正確で精密な検出を提供する電極およびシステムに対して、満たされていない要求が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの特徴は、製造された電極のアレイを準備し、そして製造中の電極の表面に形成された化学種を利用して電極の少なくとも一つにプローブ分子を結合することを含む、センサーのアレイを作製する方法である。
【0007】
発明のもう一つの特徴は、電極を製造し;製造工程中に形成される電極の表面上の化学種を利用することにより、プローブ分子を電極に結合させ;そしてプローブ分子を試料と接触させることを含む、試料のアッセイを行う方法である。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、電極上にカルボキシル基を形成させる減法処理技術を用いて製造した炭素電極を準備し;プローブにハイブリダイズすることのできる標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料にプローブを接触させる際に、ハイブリダイゼーションが電気化学的に検出されるように、プローブポリヌクレオチドを、カルボキシル基を用いて電極に結合することを含む、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0009】
本発明のもう一つの特徴は、炭素を含む表面を準備し;該表面をアルカリ溶液にさらし;該表面を、EDCまたはDCCおよびNHSで処理して、表面結合中間部分を形成し;そして中間部分を生体分子に接触させて、生体分子を該表面へ結合することを含む、生体分子を表面に結合させる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一部の実施態様は核酸の分析方法に関する。一部の好ましい実施態様において、核酸はDNAを含む。しかし、DNAを言及することは、請求の範囲で必要とされていないかぎり、他の核酸または核酸アナローグ(例えば、RNA、PNA)が本発明の実施に用いることができないことを意図するものではない。
【0011】
ルテニウム系対イオンは、ハイブリダイゼーションを検出する目的のために、ポリヌクレオチドを定量するのに特に有利である。ルテニウム電流測定およびこの目的のための複合体Ru(NH3)63+およびRu(NH3)5ピリジン3+の利用が、本明細書にその全体を引用して援用される2002年11月6日出願の米国特許出願第60/424656号、2003年4月24日出願の米国特許出願第10/424542号および2003年5月2日出願の米国特許出願第10/429291号に開示されている。
【0012】
核酸ハイブリダイゼーションの検出に用いられる電極物質は、金、炭素またはそれ以外の一部の導電性物質であってよい。炭素電極は、上記米国特許出願第10/429291号で議論されたように、炭素電極でのRu(NH3)63+の還元が二原子酸素の還元電位と重複しない点で金よりも利点がある。
【0013】
電極のマイクロアレイが形成できるように電極をマイクロ形成することが望ましい。先行技術で知られているマイクロ形成処理技術は加法または減法のいずれかである。加法処理において、電極材料100を、図1Aに示されるように誘電層102に置く。図1Bは、次に、電極上部の領域106が露出された状態で残されるように、誘電層104を基板と電極上に選択的に析出(被着)させることを示す。この選択的な層形成は、誘電層をスクリーン印刷した後にUV硬化または熱硬化により達成することができる。もしくは、基板と電極を、商標Kaptonのポリイミドフィルム等の適当な材料からなるプレドリルド被覆物を用いて積層することができる。加法処理は、電極の大きさが減法処理と同じように正確に調節できないという欠点を有する。
【0014】
減法処理では、電極材料200を、図2Aに示されるように誘電基板202に置く。図2Bは、次に、電極材料200と誘電基板を誘電層204で被覆することを示す。次に、誘電層204の一部を図2Cに示されるように選択的に除去する。誘電層の除去を、フォトリソグラフィーまたは回路板または半導体作製の他の適当な技術を使用して達成する。
【0015】
米国特許第5,632,957号は、半導体に、絶縁酸化物、次に従来のリトグラフ技術によりパターン化された金属電極材料、ガラス被覆物および窒化物層がそれぞれ被覆される減法過程を開示する。窒化物層とガラス被覆物は、電極を露出させるパターン化電極上の領域でエッチングされた。次に、金属層に結合させ、DNA捕捉プローブのための結合層として役立つアミノプロピルシラン(APS)で、電極を処理した。米国特許第5,632,957号は本明細書にその全体を引用して援用される。
【0016】
製作過程が電極アレイを生産するのが好ましい一方で、単一電極を含むいかなる数の電極も本方法を用いて作製することができる。電極は、試料の電気化学的アッセイを行う際に使用できるように官能化することができる。好ましくは、アッセイは標的核酸配列が存在するかどうか検出する。さらに、一部のアッセイは存在する標的の量を検出することもできる。
【0017】
本発明の一実施態様は、電極製造におけるフォトリソグラフィー技術の使用を提供する。しかし、当分野で公知の適当な微細加工の技術を使用してよく、特に意図される技術としてイオンビームエッチングとレーザアブレーションが挙げられる。そのような技術は、多様な表面官能基および吸着種の生成により電極表面の汚染をしばしばもたらす。本発明のいくつかの実施態様が、核酸、タンパク質および他の分子を電極に結合させるために生産された表面機能基を使用する。
【0018】
いくつかの好ましい実施態様において、電極材料は炭素を含む。有利には、電極はガラス質炭素、炭素繊維、グラファイト、炭素ペーストまたはどのような導電性の炭素インクであってもよい。しかし、金属、導電性ポリマーまたは複合物等の他の導電性材料を使用してもよい。図3A-3Dは電極製造法の一例を示す。この方法は積層銅箔を有する基板から始める。例えば、基板はFR-4などのファイバーグラス基板でもよい。図3Aにおいて、銅トレース300が基板302上に定められる。銅トレース300は、最初に、銅積層を、当業者に公知の浸漬、スプレー、ロール塗、積層または他の操作によりフォトレジスト化合物で被覆することにより定めてもよい。次に、銅トレース300に望ましい位置が、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト上に定められる。アルカリ溶液の使用等によりフォトレジストの露出していない領域を除去する。銅のエッチングは、除去されたフォトレジストにより露出した銅を除去する。当業者に公知な、あるいは容易に明らかなどのような操作も、フォトレジストを除去し、銅をエッチングするために用いてよい。最後に、強アルカリ溶液、有機溶媒、または当業者に公知な、あるいは容易に明らかな他の技術を用いて残留フォトレジストを除去する。
【0019】
図3Bに示されるように、炭素電極304が銅トレース300に電気的に接続されるように、炭素電極304のアレイを基板302上にスクリーン印刷することができる。当業者に公知のどのような操作も、電極材料304を基板302と銅トレース300に析出(被着)させるために用いてもよい。好ましくは、電極材料304は直接、銅トレース300と接触する。もしくは、電極304と銅トレース300との電気的接続を形成するためにさらなる導電性材料を使用してもよい。図3Cにおいて、誘電層306を、基板302、炭素電極304および銅トレース300上に被覆する。いくつかの有利な実施態様において、誘電層は液体写真画像性(photoimageable(LPI))はんだマスクである。
【0020】
いくつかの実施態様において、基板302と銅トレース300の部分を、炭素電極スクリーン印刷前に、フォトリソグラフィーによりはんだマスクで被覆することができる。一般的に、はんだマスク処理は、はんだマスクによる被覆を行い、マスクを硬化させ、フォトリソグラフィーで領域を定め、マスクを現像して、最終的に再び硬化させることを含む。
【0021】
最終的な製造工程を図3Dに示す。LPIはんだマスクが使用される場合、炭素電極304上のはんだマスク306の領域がフォトリソグラフィーにより定められる。はんだマスク306を現像すると、炭素電極304が露出する。もしくは、誘電層306は、フォトレジストなどのマスク層で最初にそれを被覆することで定めてもよい。次に、炭素電極304の上の領域を、マスク層上にフォトリソグラフィーで定めた後、未露出マスクを除去し、誘電層306をエッチングする。どのような操作が用いられようと、得られる電極アレイ構造物は、銅トレース300と基板302を試料への露出から保護しながら、電極304の炭素表面を露出されたままにする。本発明の利点は、銅トレース300と除去される誘電層306の領域を定めるためにフォトリソグラフィーを使用することにより、電極の寸法を正確に制御できるということである。
【0022】
図3A-3Dは一つの好ましい微細加工を示すが、当業者に公知の他の製作過程を使用してもよい。
【0023】
このタイプの微細加工の技術で、はんだマスクの現像が露出炭素の表面を酸化させ、カルボン酸基等の汚染表面種を作ることが今回発見された。これらのカルボン酸基は電極の電気化学的特性を変える。その上、カルボン酸基は溶液中の種と相互作用するだろう。
【0024】
図4のボルタンモグラムは、Ru(NH3)63+還元に対する表面カルボン酸基の効果を示す。ボルタンモグラムの分析溶液は5mMルテニウム(III)ヘキサアミン、トリス緩衝液、および支持電解質としてのNaClを含む。参照電極はAg/AgClであった。溶液中の塩化物の濃度は10mMであった。ボルタンモグラムに示されるように、炭素の表面がカルボン酸基を含むと、Ru(NH3)63+の還元は、未酸化炭素表面が使用されている場合よりも、負の電位でピークを有する高い電流を発生する。したがって、酸化された炭素の表面は、核酸ハイブリダイゼーションの測定に干渉しうる高いバックグラウンド信号を作りだす。この高い電流は、図5に示されるように、負電荷の脱プロトン化されたカルボン酸基と正電荷のRu(NH3)63+との引力による。そのような引力は、吸着Ru(NH3)63+種をもたらし、電極表面の近くのRu(NH3)63+濃度の、容積溶液濃度に対する増加をもたらしうる。したがって、Ru(NH3)63+の還元中、Ru(NH3)63+と電極との間に検出電荷移動の増加が観察される。
【0025】
この問題を解決する一つのアプローチは加法微細加工技術を使用することによって電極の汚染を避けることにあろう。しかし、本発明のいくつかの実施態様では、減法技術が、加法技術の代わり、またはそれに加えて使用することができる。よって、減法の技術で提供された寸法の制御が実現できる。さらに、本発明のいくつかの実施態様が、汚染表面を利用して、核酸、タンパク質および他の分子を電極の表面に結合させるために使用できる官能基を提供する。フォトリソグラフィーまたは他の微細加工技術後の電極表面への分子の結合は、製造過程の結果として自然に作り出された表面官能基または吸着種を用いて行ってよい。いくつかの好ましい実施態様において、カルボン酸基が利用される。
【0026】
いくつかの有利な実施態様は、問題の核酸配列に相補的な核酸プローブ配列を電極に結合させるために炭素電極の表面上のカルボン酸基を使用する。いくつかの実施態様において、プローブ配列を、プローブ配列に結合させる化学的反応性リンカー基により直接電極の表面に結合させる。リンカー基は、直接炭素電極の表面のカルボン酸基または他の基と反応するようなものであってよい。もしくは、表面基を、まず、リンカー基との反応に適する別の化学種に変換する。
【0027】
好ましくは、アビジン等のタンパク質または他のリンカーを、表面の官能基を利用して電極の表面に結合する。次に、アビジンを、アビジンとビオチンとの非共有相互作用によりビオチン部分により官能化された、プローブ核酸配列の電極への結合を容易にできる。電極表面へのタンパク質の結合は、表面官能基とタンパク質上の適切な反応基との直接的な反応により達成されよう。もしくは、表面の官能基を、まず、タンパク質の結合前に別の化学種に変換する。結合タンパク質層は、液体溶液中のイオンをバルク溶液から電極表面に移らせるために十分多孔性でなければならない。
【0028】
アビジン等のタンパク質または他のリンカーの使用は、ある実施態様に有利であろう。これらの実施態様において、タンパク質リンカーの使用は、電極とその表面の使用においてさらなる柔軟性を提供し、異なるプローブ核酸配列によるプローブ核酸配列の置換を可能にする。例えば、プローブ核酸配列を、電極に結合させたアビジンと核酸に結合させたビオチンとの相互作用によって電極に結合させる場合、ビオチニル化核酸を除去して、異なるビオチニル核酸と置換することにより、同一の官能化電極表面を、異なる核酸分析アッセイに使用することができる。さらに、この実施態様は、核酸の共有結合が望ましくない他のどの状況においても有利であろう。
【0029】
酸化炭素上に形成される官能基は、核酸を炭素表面に結合させるために既に使用されている。また、従来技術において結合に使用される化学的反応等を本発明で使用することもできる。しかしながら、これらの従来技術操作は、少なくとも一つの実施態様では、結合基が製造法により作られる本発明とは対照的に、表面種を形成するために炭素の電気化学的または化学的な前処理を必要とした。例えば、米国特許第5,312,527号は、電気化学的にカルボン酸基を炭素電極上に作った後、1(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチル-カルボジイミドとナトリウムN-ヒロドキシスルホスクシンイミドによる処理を行って、カルボン酸基のN-ヒロドキシスルホスクシンイミドエステルを電極表面に残すことを記載する。次に、ポリヌクレオチドプローブを活性化炭素表面と反応させて、プローブの電極への結合を導いた。同様の操作は米国特許第6,221,586号に記載されている。もしくは、米国特許第6,207,369号はクロム酸溶液中で炭素フィブリル複合体電極を酸化することを開示する。次に、酸化した電極を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)またはN,N’-ジシクロヘキシル-カルボジイミド(DCC)とN-ヒドロキシスクシンアミド(NHS)と反応した。活性化電極のストレプトアビジンとの反応により、ストレプトアビジンの電極への固定化を行った。ビオチン標識オリゴヌクレオチドによる処理は、ビオチン部分のストレプトアビジンへの結合、よって、電極へのオリゴヌクレオチドの固定化をもたらした。米国特許第6,180,356号は、炭素電極表面へのルテニウム含有の薄いフィルムの電気重合を開示する。その薄いフィルムは、EDCまたはDCCおよびNHSと反応した表面カルボキシル基を含んだ。アミンリンカーを含むプローブDNAが、処理電極との反応により固定化された。米国特許第5,312,527号、同第6,221,586号、同第6,207, 369号および同第6,180,356号を本明細書にその全体を引用して援用される。
【0030】
所望とされる部分の結合のために製造工程により電極の表面に自然に形成された官能基または吸着種を利用することにより、本発明のいくつかの実施態様は汚染に関連した問題を回避している。同時に、本発明のいくつかの実施態様は核酸結合前に別々に電気化学的または化学的に炭素表面を活性化する必要がない。
【0031】
一つの好ましい実施態様を図6に示す。リソグラフィーを使用する炭素電極アレイの微細加工の後、酸化炭素電極の表面上のカルボン酸基を、EDCやDCC等のカルボジイミドおよびNHSによる処理でNHSエステルへ変換する。次に、NHSエステル基を、炭素電極表面へのアビジンの結合をもたらすアビジン分子と反応させる。次に、ビオチニル化DNA捕捉プローブをアビジンとビオチンとの結合を経て電極に結合させる。得られた電極を用いて、試料液中でのDNA捕捉プローブと相補的な標的DNAとのハイブリダイゼーションを検出することができる。
【0032】
上記操作において、電極は、必要ならPBS塩水等の食塩水によって洗浄してよい。アビジンタンパク質はリン酸緩衝液等の緩衝液中に提供できる。未反応NHSエステルはリン酸ナトリウム溶液で非活性化できる。ビオチニル化プローブはTris/LiCl溶液中に提供することができる。StabilCoatTM等のタンパク質安定化試薬を使用することは望ましいであろう。
【0033】
ここで使用される「アビジン」はビオチン結合性タンパク質をいい、その中でも、糖タンパク質アビジン、非グリコシル化ストレプトアビジンタンパク質、Molecular Probesから入手可能なNeutrアビジンTM等、炭水化物を除去するために処理されたタンパク質、およびMolecular Probesから入手可能なCaptアビジンTM等、ビオチン結合部位中のチロシン残基の選択的ニトロ化を有するタンパク質が挙げられる。
【0034】
好ましく、検出は、試料液に還元可能なイオン種(例えばRu(NH3)63+)を含ませることにより容易になる。Ru(NH3)63+のRu(NH3)62+への還元を電流測定または他の電気化学的技術により検出することができる。還元電流は、プローブDNAが標的DNAとハイブリダイズする場合に、DNAがハイブリダイズしない場合よりも高くなるだろう。この還元電流の増加は、DNAハイブリダイゼーションの際、電極表面近くのRu(NH3)63+濃度の増加のためである。正電荷のRu(NH3)63+はDNAの陰電荷リン酸塩骨格に引き付けられる。DNAがハイブリダイズされるとき、さらに陰電荷のリン酸塩骨格は電極の近くにあり、さらに引き付けられたRu(NH3)63+をもたらすであろう。当業者は、どのような適当な酸化還元活性対イオンまたは対イオンの組み合わせも、Ru(NH3)63+、例えばRu(NH3)5ピリジン3+、他のルテニウム複合体、または他の還元可能なイオン種等で代用してよいことを理解するであろう。
【0035】
当業者に公知の適当な方法により標的DNAをプローブと接触させてよい。好ましくは、標的分子の数は、それぞれのプローブDNA分子が標的DNA分子にハイブリダイゼーションされる機会を最大にするためにプローブ分子の数よりも多くする。標的DNA配列がプローブ配列に相補的な場合、それらの分子はハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションが実際に起こるかどうかは、温度、pH、またはハイブリダイズする多様な分子を変性できる種の存在等、多様なストリンジェンシー因子により影響されるだろう。したがって、所望のレベルのストリンジェンシーを得るためにアッセイ条件を調節することが望ましいであろう。最大のストレンジェンシーとは、完全に相補的なDNA分子はハイブリダイズするが、他のすべてのものはそうならない条件であろう。理想的な条件は、一般的に、「非相補」分子間のハイブリダイゼーションの数(偽陽性)を最小とし、かつ適当な相補的な標的分子の存在にもかかわらずハイブリダイゼーションしないままでいるプローブの数(偽陰性)を最小にするバランスをとる条件であろう。標的DNA分子の量および/または大きさを増加させることが、偽陰性を最少にするために有用でありうる技術の例である。
【0036】
どのような適当な電気化学の技術も使用してよいが、電流測定が好ましい技術である。電流測定検出中に測定される電流は、電極表面近くの(NH3)63+の量に関連しうるが、これは次に標的DNA分子およびプローブ骨格上のリン酸基の量と関連しうる。DNAリン酸基の定量により、ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAの区別が可能となり、プローブで調べられたDNAがプローブ配列と相補的であるかどうか、つまり問題の標的を含むかどうかを決定できる。
【0037】
ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAとの測定可能な区別を、プローブDNAよりも実質的に長い標的DNAを用いることによりさらに深みのあるものとすることができる。さらに長いプローブDNAは、実質的により多くのRu(NH3)63+を蓄積するだろう。よって、プローブが標的にハイブリダイズする場合、電気化学的応答は、短い標的分子が使用される場合よりも高いだろう。標的DNAを延長するために好ましい技術はローリングサークル増幅(RCA)である。さらに長い標的DNA分子を作り、次に試料溶液に導入できる。もしくは、鎖がプローブ鎖にハイブリダイズした後に標的DNA分子の長さを増加させることができる。この二番目の技術はしばしば「オンチップ」増幅と呼ばれる。オンチップ増幅の好ましい方法は、頭−尾結合の重合とRCAである。オンチップ増幅は、特に本明細書にその全体を引用して援用される2003年5月2日に出願された特許出願中の米国特許出願第10/429293号にさらに詳しく論じられている。
【0038】
ハイブリダイズされたDNAとハイブリダイズされないDNAとの間の信号コントラストを増加させるための別の技術は、プローブ分子に引き付けられるRu(NH3)63+の測定還元電流への寄与を制限することである。特に、これは、プローブとRu(NH3)63+との間の電気的引力を制限することにより行うことができる。例えば、プルーブを、該プルーブが負荷電骨格を含まないように構築する場合、該プルーブは対イオンを引き付けない。したがって、より多くの検出可能な信号は標的のDNAに関連する対イオンによるものであろう。ハイブリダイゼーションが起こらなかった場合、対イオン引力に関与する標的分子が存在しないので、検出可能な信号はある程度まで低くなるだろう。
【0039】
負電荷骨格のないプローブとして、ペプチド核酸(PNA)、ホスホトリエステル、メチルホスホネートを挙げることができる。これらの核酸アナログ(類似体)は公知である。
【0040】
特に、PNAは、Nielsen, "DNA analogues with nonphosphodiester backbones," Annu Rev Biophys Biomol Struct, 1995; 24: 167-83; Nielsen et al., "An introduction to peptide nucleic acid," Curr Issues Mol Biol, 1999; 1(1-2): 89-104;およびRay et al. "Peptide nucleic acid (PNA): its medical and biotechnical applications and promise for the future," FASEB J., 2000 Jun; 14(9): 1041-60(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0041】
ホスホトリエステルは、Sung et al., "Synthesis of the human insulin gene. Part II. Further improvements in the modified phosphotriester method and the synthesis of seventeen deoxyribooligonucleotide fragments constituting human insulin chains B and mini-CDNA," Nucleic Acids Res, 1979 Dec 20; 7(8): 2199-212; van Boom et al.," Synthesis of oligonucleotides with sequences identical with or analogous to the 3'-end of 16S ribosomal RNA of Escherichia coli: preparation of m-6-2-A-C-C-U-C-C and A-C-C-U-C-m-4-2C via phosphotriester intermediates," Nucleic Acids Res, 1977 Mar; 4(3): 747- 59; およびMarcus-Sekura et al.," Comparative inhibition of chloramphenicol acetyltransferase gene expression by antisense oligonucleotide analogues having alkyl phosphotriester, methylphosphonate and phosphorothioate linkages," Nucleic Acids Res, 1987 Jul 24; 15(14): 5749-63(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0042】
メチルホスホネートは、米国特許第4,469,863号(Ts'o etal.) ; Lin et al., "Use of EDTA derivatization to characterize interactions between oligodeoxyribonucleoside methylphophonates and nucleic acids," Biochemistry, 1989, Feb 7; 28 (3): 1054-61; Vyazovkina et al., "Synthesis of specific diastereomers of a DNA methylphosphonate heptamer, d(CpCpApApApCpA), and stability of base pairing with the normal DNA octamer d(TPGPTPTPTPGPGPC), "Nucleic Acids Res, 1994 Jun 25; 22(12): 2404-9; Le Bec et al., "Stereospecific Grignard-Activated Solid Phase Synthesis of DNA Methylphosphonate Dimers," J Org Chem, 1996 Jan 26; 61(2): 510-513; Vyazovkina et al., "Synthesis of specific diastereomers of a DNA methylphosphonate heptamer, d(CpCpApApApCpA), and stability of base pairing with the normal DNA octamer d(TPGPTPTPTPGPGPC)," Nucleic Acids Res, 1994 Jun 25; 22(12): 2404-9; Kibler-Herzog et al.," Duplex stabilities of phosphorothioate, methylphosphonate, and RNA analogs of two DNA 14-mers," Nucleic Acids Res, 1991 Jun 11; 19(11): 2979-86; Disney et al.," Targeting a Pneumocystis carinii group I intron with methylphosphonate oligonucleotides : backbone charge is not required for binding or reactivity," Biochemistry, 2000 Jun 13; 39(23): 6991-7000; Ferguson et al.," Application of free-energy decomposition to determine the relative stability of R and S oligodeoxyribonucleotide methylphosphonates," Antisense Res Dev, 1991 Fall; 1(3): 243-54; Thiviyanathan etal., "Structure of hybrid backbone methylphosphonate DNA heteroduplexes: effect of R and S stereochemistry," Biochemistry, 2002 Jan 22; 41(3): 827-38; Reynolds et al., "Synthesis and thermodynamics of oligonucleotides containing chirally pure R(P)methylphosphonate linkages," Nucleic Acids Res, 1996 Nov 15; 24(22): 4584-91; Hardwidge et al.,"Charge neutralization and DNA bending by the Escherichia coli catabolite activator protein," Nucleic Acids Res, 2002 May 1; 30(9): 1879-85;およびOkonogi et al., "Phosphate backbone neutralization increases duplex DNA flexibility: A model for protein binding," PNAS U.S.A., 2002 Apr 2; 99 (7): 4156-60(これらの全てが本明細書に引用して援用される)で議論されている。
【0043】
もしくは、荷電核酸および非荷電核酸アナログの両方を含むプローブを組み立ててもよい。同様に、純粋なDNAプローブを、非荷電アナログを含むプローブと並んでアッセイに使用することができる。しかし、ハイブリダイズされたプローブDNAとハイブリダイズされないプローブDNAとを見分ける精度は、一般的に、プローブと標的との間の電荷コントラストに応じて高まるであろう。したがって、一般に、未荷電核酸アナログから全体的に作られるプローブの排他的使用により、ハイダイズされた分子とハイブリダイズされない分子との最も大きい信号コントラストがチップ上で可能となるであろう。一般に、メチルホスホネートを含むプローブが好ましい。ホスホトリエステルを含むプローブは、水媒体に一般に可溶性でないために、それほど好ましくはない。
【0044】
本発明の好ましい実施態様はポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法であるが、ここで開示された技術と方法は他の電極に基づくセンサーを作製するために用いることもできる。例えば、発明された技術により、ヌクレオチド以外のプローブ分子を電極表面に結合させることにより、多様な化学種の存在または量、または物理的な状態を検出するセンサーを構築してもよい。そのようなセンサーは、液体、固体または気体の媒体中で使用することができる。さらに、発明のいくつかの実施態様は、電気化学以外の技術を含めた電極系技術の使用も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】電極製造における加法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)の選択的な析出を行う。
【図1B】電極製造における加法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)の選択的な析出を行う。
【図2A】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図2B】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図2C】減法処理技術を示す。電極材料を基板(A)に置いた後、誘電層(B)を設け、最後に誘電層(C)の一部領域を除去する。
【図3A】電極製造法を示す。
【図3B】電極製造法を示す。
【図3C】電極製造法を示す。
【図3D】電極製造法を示す。
【図4】5μMルテニウム(III)ヘキサアミン存在下での酸化および未酸化の炭素電極の矩形波ボルタンモグラムを示す。
【図5】炭素電極表面上のカルボン酸基と、ルテニウム(III)ヘキサアミンとの相互作用を示す。
【図6】炭素電極上へのDNAプローブの固定化を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造された電極のアレイを準備し、そして製造中の電極の表面に形成された化学種を利用して電極の少なくとも一つにプローブ分子を結合することを含む、センサーのアレイを作製する方法。
【請求項2】
製造がフォトリソグラフィーの使用を含めた請求項1の方法。
【請求項3】
電極が炭素を含む請求項1の方法。
【請求項4】
電極の表面に形成された化学種がカルボキシル基である請求項3の方法。
【請求項5】
プローブ分子を結合させる工程の前に、カルボキシル基がEDCまたはDCCおよびNHSで処理される請求項4の方法。
【請求項6】
プローブ分子を結合させる工程の前に、電極がタンパク質で処理されて、プローブ分子を電極に結合させる請求項5の方法。
【請求項7】
タンパク質がアビジンを含む請求項6の方法。
【請求項8】
プローブ分子がビオチン部分を含み、プローブ分子が、ビオチン部分とタンパク質との間での結合により電極に結合する請求項7の方法。
【請求項9】
プローブ分子が核酸を含む請求項1の方法。
【請求項10】
センサーのアレイが、核酸を含む標的分子とプローブ分子とのハイブリダイゼーションを検出するために用いられる請求項9の方法。
【請求項11】
ハイブリダイゼーションの検出が電気化学的技術を含む請求項10の方法。
【請求項12】
電気化学的技術が電流測定である請求項11の方法。
【請求項13】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項11の方法。
【請求項14】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項13の方法。
【請求項15】
電極を製造し;
製造工程中に形成される電極の表面上の化学種を利用することにより、プローブ分子を電極に結合させ;そして
プローブ分子を試料と接触させることを含む、試料のアッセイを行う方法。
【請求項16】
電気化学的技術を用いて試料をアッセイする工程をさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
電気化学的技術が電流測定である請求項16の方法。
【請求項18】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項16の方法。
【請求項19】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項18の方法。
【請求項20】
フォトリソグラフィーが製造工程中に用いられる請求項15の方法。
【請求項21】
銅の積層基板が製造工程中に用いられる請求項20の方法。
【請求項22】
製造工程がフォトリソグラフィーと銅のエッチングとを使用して基板上に銅のトレースを定めることを含む請求項21の方法。
【請求項23】
製造工程が基板上への電極材料のスクリーン印刷をさらに含む請求項22の方法。
【請求項24】
製造工程が、電極材料をLPIはんだマスクを用いて被覆することをさらに含む請求項23の方法。
【請求項25】
製造工程が、フォトリソグラフィーにより電極材料上に領域を定めて、アルカリ溶液を使ってLPIはんだマスクを現像することをさらに含む請求項24の方法。
【請求項26】
アルカリ溶液の使用が電極の表面上に化学種を形成させる請求項25の方法。
【請求項27】
電極が炭素を含む請求項15の方法。
【請求項28】
試料が標的分子を含む請求項15の方法。
【請求項29】
アッセイが、標的分子がプローブ分子にハイブリダイズしたかどうかを検出する請求項28の方法。
【請求項30】
標的分子とプローブ分子が核酸を含む請求項29の方法。
【請求項31】
プローブ分子核酸配列の少なくとも一部と、標的分子核酸配列の少なくとも一部とが相補的である請求項30の方法。
【請求項32】
電極の表面上の化学種がカルボキシル基である請求項15の方法。
【請求項33】
プローブ分子を結合する工程前に、電極がEDCまたはDCCおよびNHSにさらされる請求項32の方法。
【請求項34】
プローブ分子を結合する工程前に、アビジン部分が電極の表面に結合する請求項33の方法。
【請求項35】
プローブ分子がビオチン部分を含み、プローブ分子が、アビジンとビオチン部分との間での結合により電極に結合する請求項34の方法。
【請求項36】
電極上にカルボキシル基を形成させる減法処理技術を用いて製造した炭素電極を準備し;
プローブにハイブリダイズすることのできる標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料にプローブを接触させる際に、ハイブリダイゼーションが電気化学的に検出されるように、プローブポリヌクレオチドを、カルボキシル基を用いて電極に結合させることを含む、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項37】
プローブポリヌクレオチドを電極に結合させる工程が、
カルボキシル基をEDCまたはDCCおよびNHSと反応させて、NHSエステルを形成し;
NHSエステルをアビジン部分と反応させて、アビジンを電極に結合させ;そして
アビジンを、標的ポリヌクレオチドに結合するビオチン部分と反応させることを含む、請求項36の方法。
【請求項38】
減法処理技術がフォトリソグラフィーを含む請求項36の方法。
【請求項39】
減法処理技術がアルカリ溶液による処理を含み、該アルカリ溶液が、炭素電極上でカルボキシル基を形成させる請求項38の方法。
【請求項40】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項36の方法。
【請求項41】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項40の方法。
【請求項42】
炭素を含む表面を準備し;
該表面をアルカリ溶液にさらし;
該表面を、EDCまたはDCCおよびNHSで処理して、表面結合中間部分を形成し;そして
中間部分を生体分子に接触させて、生体分子を該表面へ結合させることを含む、生体分子を表面に結合させる方法。
【請求項43】
該表面が電極である請求項42の方法。
【請求項44】
生体分子がDNAを含む請求項42の方法。
【請求項45】
アルカリ溶液が水酸化ナトリウムを含む請求項42の方法。
【請求項46】
生体分子がアビジンを含む請求項42の方法。
【請求項47】
ビオチン部分からなる核酸が生体分子にさらされて、核酸をその表面に結合させる請求項46の方法。
【請求項1】
製造された電極のアレイを準備し、そして製造中の電極の表面に形成された化学種を利用して電極の少なくとも一つにプローブ分子を結合することを含む、センサーのアレイを作製する方法。
【請求項2】
製造がフォトリソグラフィーの使用を含めた請求項1の方法。
【請求項3】
電極が炭素を含む請求項1の方法。
【請求項4】
電極の表面に形成された化学種がカルボキシル基である請求項3の方法。
【請求項5】
プローブ分子を結合させる工程の前に、カルボキシル基がEDCまたはDCCおよびNHSで処理される請求項4の方法。
【請求項6】
プローブ分子を結合させる工程の前に、電極がタンパク質で処理されて、プローブ分子を電極に結合させる請求項5の方法。
【請求項7】
タンパク質がアビジンを含む請求項6の方法。
【請求項8】
プローブ分子がビオチン部分を含み、プローブ分子が、ビオチン部分とタンパク質との間での結合により電極に結合する請求項7の方法。
【請求項9】
プローブ分子が核酸を含む請求項1の方法。
【請求項10】
センサーのアレイが、核酸を含む標的分子とプローブ分子とのハイブリダイゼーションを検出するために用いられる請求項9の方法。
【請求項11】
ハイブリダイゼーションの検出が電気化学的技術を含む請求項10の方法。
【請求項12】
電気化学的技術が電流測定である請求項11の方法。
【請求項13】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項11の方法。
【請求項14】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項13の方法。
【請求項15】
電極を製造し;
製造工程中に形成される電極の表面上の化学種を利用することにより、プローブ分子を電極に結合させ;そして
プローブ分子を試料と接触させることを含む、試料のアッセイを行う方法。
【請求項16】
電気化学的技術を用いて試料をアッセイする工程をさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
電気化学的技術が電流測定である請求項16の方法。
【請求項18】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項16の方法。
【請求項19】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項18の方法。
【請求項20】
フォトリソグラフィーが製造工程中に用いられる請求項15の方法。
【請求項21】
銅の積層基板が製造工程中に用いられる請求項20の方法。
【請求項22】
製造工程がフォトリソグラフィーと銅のエッチングとを使用して基板上に銅のトレースを定めることを含む請求項21の方法。
【請求項23】
製造工程が基板上への電極材料のスクリーン印刷をさらに含む請求項22の方法。
【請求項24】
製造工程が、電極材料をLPIはんだマスクを用いて被覆することをさらに含む請求項23の方法。
【請求項25】
製造工程が、フォトリソグラフィーにより電極材料上に領域を定めて、アルカリ溶液を使ってLPIはんだマスクを現像することをさらに含む請求項24の方法。
【請求項26】
アルカリ溶液の使用が電極の表面上に化学種を形成させる請求項25の方法。
【請求項27】
電極が炭素を含む請求項15の方法。
【請求項28】
試料が標的分子を含む請求項15の方法。
【請求項29】
アッセイが、標的分子がプローブ分子にハイブリダイズしたかどうかを検出する請求項28の方法。
【請求項30】
標的分子とプローブ分子が核酸を含む請求項29の方法。
【請求項31】
プローブ分子核酸配列の少なくとも一部と、標的分子核酸配列の少なくとも一部とが相補的である請求項30の方法。
【請求項32】
電極の表面上の化学種がカルボキシル基である請求項15の方法。
【請求項33】
プローブ分子を結合する工程前に、電極がEDCまたはDCCおよびNHSにさらされる請求項32の方法。
【請求項34】
プローブ分子を結合する工程前に、アビジン部分が電極の表面に結合する請求項33の方法。
【請求項35】
プローブ分子がビオチン部分を含み、プローブ分子が、アビジンとビオチン部分との間での結合により電極に結合する請求項34の方法。
【請求項36】
電極上にカルボキシル基を形成させる減法処理技術を用いて製造した炭素電極を準備し;
プローブにハイブリダイズすることのできる標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料にプローブを接触させる際に、ハイブリダイゼーションが電気化学的に検出されるように、プローブポリヌクレオチドを、カルボキシル基を用いて電極に結合させることを含む、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項37】
プローブポリヌクレオチドを電極に結合させる工程が、
カルボキシル基をEDCまたはDCCおよびNHSと反応させて、NHSエステルを形成し;
NHSエステルをアビジン部分と反応させて、アビジンを電極に結合させ;そして
アビジンを、標的ポリヌクレオチドに結合するビオチン部分と反応させることを含む、請求項36の方法。
【請求項38】
減法処理技術がフォトリソグラフィーを含む請求項36の方法。
【請求項39】
減法処理技術がアルカリ溶液による処理を含み、該アルカリ溶液が、炭素電極上でカルボキシル基を形成させる請求項38の方法。
【請求項40】
プローブ分子を、電極との電子移動が可能な種と接触させる工程をさらに含む請求項36の方法。
【請求項41】
電子移動が可能な種がルテニウムを含む請求項40の方法。
【請求項42】
炭素を含む表面を準備し;
該表面をアルカリ溶液にさらし;
該表面を、EDCまたはDCCおよびNHSで処理して、表面結合中間部分を形成し;そして
中間部分を生体分子に接触させて、生体分子を該表面へ結合させることを含む、生体分子を表面に結合させる方法。
【請求項43】
該表面が電極である請求項42の方法。
【請求項44】
生体分子がDNAを含む請求項42の方法。
【請求項45】
アルカリ溶液が水酸化ナトリウムを含む請求項42の方法。
【請求項46】
生体分子がアビジンを含む請求項42の方法。
【請求項47】
ビオチン部分からなる核酸が生体分子にさらされて、核酸をその表面に結合させる請求項46の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2007−514174(P2007−514174A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545360(P2006−545360)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/042039
【国際公開番号】WO2005/059181
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/042039
【国際公開番号】WO2005/059181
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)
【Fターム(参考)】
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