説明

DNAチップ装置、遺伝子チェック方法及び装置

【課題】電流検出後の情報処理を多角的に実行できるDNAチップ装置等を提供する。
【解決手段】検出用DNAを保持するための電極12と、電極上で検出用DNAと被検出用DNAとによるハイブリダイゼーションを生じるとき、ハイブリダイゼーションに対応する電流を電極から検出するためのハイブリッドDNA検出部14と、検出された電流を積分して電圧に変換し、得られたアナログ電圧信号を出力する積分回路16b,16cと、出力されたアナログ電圧信号を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換して出力するウインドコンパレータ16dとを備えたDNAチップ装置10である。このDNAチップ装置10は、デジタル電圧信号を出力するので、例えば遺伝子チェック方法及び装置等の応用システムに容易に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を検出してハイブリダイゼーションを判定するDNAチップ装置、遺伝子チェック方法及び装置に係り、特に、検出した電流をデジタルデータ化するDNAチップ装置、遺伝子チェック方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物学、医学分野での遺伝子解析等において、特定の配列を有するDNAを検出するためのDNAチップが開発されている。この種のDNAチップにおいては、従来から電気化学的にチップ上でDNAを合成させるものがある。基板上でのDNAの合成方法は、例えば、特許文献1に詳しい。
【0003】
従来のDNA配列のハイブリダイゼーション検出にはスキャナーと呼ばれる装置が用いられる。スキャナーでは、DNAに蛍光物質を付けたプローブの写真を撮影し、その色の状態からハイブリダイゼーションを検出している。
【0004】
しかしながら、蛍光物質を写真撮影する方法では、大規模な装置が必要であり、簡単に検出結果を知ることができない。また、蛍光の内部消光のために一定量以上の蛍光物質をプローブとして導入することは困難である、などの欠点も有している。
【0005】
そこで、最近ではDNAのハイブリダイゼーションの状態を、酵素反応等を利用して電流を計測し、電流値から判断する電流計測型のDNAチップが考えられている。ところが、この種のDNAチップで計測される電流は数nA程度の微小電流である。そのため、電流計測型のDNAチップでは、積分回路等を用い、ある時間積算した電流値を電圧値に変換して計測し、判断時に再度電圧値を逆変換して得られる電流値からハイブリダイゼーションの状態を判断している。
【特許文献1】特表2000−514802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電流計測型のDNAチップは、本発明者の検討によれば、電流値からハイブリダイゼーションの状態を判定した段階で処理が終了するので、この電流値を更に処理したり、各種システムに用いるというように、電流検出後の情報処理を多角的に実行しにくい状況にある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、電流検出後の情報処理を多角的に実行し得るDNAチップ装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、電流検出後の情報処理を多角的に実行可能なDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に対応する発明は、検出用DNAを保持するための電極と、前記電極上で前記検出用DNAと被検出用DNAとによるハイブリダイゼーションが生じるとき、このハイブリダイゼーションに対応する電流を前記電極から検出するための電流検出回路と、前記電流検出回路により検出された電流を積分して電圧に変換し、得られたアナログ電圧信号を出力する積分手段と、前記積分手段から出力されたアナログ電圧信号を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換するデジタル信号変換手段と、このデジタル電圧信号を出力するデジタル信号出力手段とを備えたDNAチップ装置である。
【0010】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応するDNAチップ装置において、前記デジタル信号変換手段は、前記アナログ電圧信号と前記しきい値電圧とを比較し、この比較結果に対応して前記デジタル電圧信号を得るための比較器を備えたDNAチップ装置である。
【0011】
請求項3に対応する発明は、基板と、前記基板上に配置された電極と、前記基板上に形成され、入力された合成用電流により、前記電極上に検出用DNAを合成する検出用DNA合成手段と、前記基板上に形成され、前記検出用DNAと被検出用DNAのハイブリダイゼーションによるハイブリッドDNAを検出可能とするリガンドと酵素との反応により生じた電流を前記電極から検出することにより、ハイブリッドDNAを検出するハイブリッドDNA検出手段と、前記電極、前記検出用DNA合成手段及び前記ハイブリッドDNA検出手段からなり、前記基板上の複数の領域に区画された複数のユニットセルと、前記基板上に形成され、前記各ユニットセルのうち、選択したユニットセルの検出用DNA合成手段に前記合成用電流を入力する入力制御手段と、前記基板上に形成され、前記選択したユニットセルのハイブリッドDNA検出手段により検出された電流を出力制御する出力制御手段とを備えたDNAチップ装置であって、前記出力制御手段は、前記ハイブリッドDNA検出手段により検出された電流を積分して電圧に変換し、得られたアナログ電圧信号を出力する積分手段と、前記積分手段から出力されたアナログ電圧信号を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換するデジタル信号変換手段と、このデジタル電圧信号を出力するデジタル信号出力手段とを備えたDNAチップ装置である。
【0012】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に対応するDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック方法であって、チェック対象の遺伝子情報を選択する遺伝子情報選択ステップと、前記選択された遺伝子情報に関連する検出用DNAを前記電極上に保持するDNAチップ装置を準備するチップ準備ステップと、提供された試料から被検出用DNAを取出す取出ステップと、前記被検出用DNAを前記準備したDNAチップ装置上の検出用DNAと反応させるための反応ステップと、前記反応ステップの後、検出される電流に基づいて得られる前記デジタル電圧信号に基づいて、前記反応が陽性か陰性かを判定する判定ステップと、この判定結果を出力する判定結果出力ステップとを備えた遺伝子チェック方法である。
【0013】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に対応するDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック装置であって、チェック対象の遺伝子情報を選択する遺伝子情報選択手段と、前記選択された遺伝子情報に関連する検出用DNAを前記電極上に保持するDNAチップ装置を準備するチップ準備手段と、提供された試料から被検出用DNAを取出す取出手段と、前記被検出用DNAを前記準備したDNAチップ装置上の検出用DNAと反応させるための反応手段と、前記反応の後、検出される電流に基づいて得られる前記デジタル電圧信号に基づいて、前記反応が陽性か陰性かを判定する判定手段と、この判定結果を出力する判定結果出力手段とを備えた遺伝子チェック装置である。
【0014】
<作用>
従って、請求項1,3に対応する発明は以上のような手段を講じたことにより、DNAチップにより検出される電流を積分する積分回路と、積分により得られた電圧をデジタル電圧信号に変換するデジタル信号変換手段とを備えているので、電流検出後の情報処理を多角的に実行することができるDNAチップ装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する作用に加え、デジタル信号変換手段として比較器を用いているので、DNAチップにより検出される電流を容易にしきい値電圧に応じてデジタルデータ化することができ、簡易診断機の作成等、その後の情報処理を多角的に実施することを可能とするDNAチップ装置を提供することができる。
【0016】
請求項4,5に対応する発明は、チェック対象の遺伝子情報に対応した検出用DNAとユーザ等から提供された試料から取出した被検出用DNAをハイブリダイゼーションさせて遺伝子チェックをしているので、請求項1〜3に対応する作用に加え、簡易に遺伝子情報をチェックできる遺伝子チェック方法及び装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、電流検出後の情報処理を多角的に実行できるDNAチップ装置を提供できる。また、電流検出後の情報処理を多角的に実行可能なDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック方法及び装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るDNAチップ装置の構成を示す模式図であり、図2は同装置におけるユニットセルの構成を示す模式図である。
【0020】
DNAチップ装置10は、複数のユニットセル11、入力制御部15及び出力制御部16が基板17上に形成されている。
【0021】
ここで、ユニットセル11は、図2に示すように、電極12、検出用DNA合成部13、ハイブリッドDNA検出部14とそれらを接続する配線層18を備えている。
【0022】
電極12は表面上にあらかじめ核酸を配置しており、検出用DNA合成部13から電流が入力されると、核酸から検出用DNAを合成する。また、合成された検出用DNAと被検出用DNAのハイブリダイゼーションによるハイブリッドDNAを検出可能とするリガンドと酵素との反応による2次電流をハイブリッドDNA検出部14へ出力する。
【0023】
検出用DNA合成部13は、入力制御部15から電流が入力されると、電極12の上にあらかじめ配置された核酸から検出用DNAを合成する。
【0024】
ハイブリッドDNA検出部14は、電極12からリガンドと酵素との反応による2次電流を検出し、出力制御部16へ出力する。
【0025】
入力制御部15は、複数のユニットセル11のうち選択したユニットセルの検出用DNA合成部13に電流を入力する。
【0026】
出力制御部16は、ユニットセル11のハイブリッドDNA検出部14において検出された2次電流を出力制御するものであり、2次電流の値を、デジタル電圧信号に変換(以下、デジタルデータ化ともいう)して出力する。デジタルデータ化は、デジタル化するための電圧の閾値V0とV1(V0<V1)が設定されたウインドコンパレータ等の比較器を用いることで実行する。具体的には出力制御部16は、図3に示すように、電圧変換部16a、オペアンプ16b、コンデンサ16c及びウインドコンパレータ16dを備えている。
【0027】
ここで、電圧変換部16aは、電極12及びハイブリッドDNA検出部14からの検出電流を電圧値に変換し、この電圧値を積分回路に送出するものである。
【0028】
積分回路は、オペアンプ16bとコンデンサ16cからなり、電圧変換部16aから受けた電圧値を積分した電圧値Voutをウインドコンパレータ16dに入力する。
【0029】
ウインドコンパレータ16dは、2つの基準電圧(V0,V1)が図示しない設定部により設定されており、オペアンプ16bにより出力される電圧Voutが2つの基準電圧V0からV1の範囲内にあるときをオン状態(H;ハイレベル)、範囲内に無いときをオフ状態(L;ロウレベル)としてデジタル化したデータVdigitalを出力する。なお、各基準電圧V0,V1は、ハイブリダイゼーションの陽性、陰性を判定するためのしきい値電圧に相当する。
【0030】
基板17は、DNAチップ装置10を構成する電気回路の基板であり、各電気回路を配線層18で接続している。
【0031】
配線層18は、基板17上の電気・電子部品間を相互に接続する。
【0032】
次に、以上のように構成されたDNAチップの動作を図4を用いて説明する。
【0033】
図示しない制御部は、基板17の上の複数のユニットセルのうち検出用DNAを合成させるユニットセル11を選択し、その結果を入力制御部15に入力する(S1)。入力制御部15は、選択したユニットセル11の検出用DNA合成部13に電流を入力する(S2)。入力された電流により検出用DNA合成部13は、電極12の上にあらかじめ配置された核酸から検出用DNAを合成する(S3)。このDNA合成の方法については、特許文献1の第45〜47頁に記載の「合成工程」に詳しい。
【0034】
次に、この電極12の上の検出用DNAと、あらかじめ特定の酵素と反応するリガンドに浸しておいた被検出用DNAをハイブリダイゼーションさせる。これを洗浄すると、リガンドによりハイブリットDNAだけが電極12の上に残る。これに酵素を反応させると数nA程度の微小な2次電流が生じる。この2次電流をハイブリッドDNA検出部14で検出し(S4)、出力制御部16に出力する(S5)。これにより2次電流の電流値から、ハイブリッドDNAの生成量を図示しない測定部で測定する(S6)。
このように、DNAチップ装置10は、特定の配列を有するDNAを検出する。ここで、DNAチップ装置10では、出力制御部16において、電極12からの検出電流を電圧変換部16aで電圧値に変換させた後、オペアンプ16b及びコンデンサ16cからなる積分回路により積分した電圧値をウインドコンパレータ16dに入力する。このウインドコンパレータ16dは、積分された電圧値を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換し、デジタル化したデータVdigitalを出力している。
【0035】
すなわち、上述したような構成のDNAチップ装置10であれば、出力制御部16に比較器を用いることで出力データをデジタル化しているので、ハイブリッドDNAを電流検知する際に、デジタル信号処理をすることが可能となる。そのため、DNAチップを組み込んだシステムを容易に製作することが可能となる。
【0036】
換言すると、DNAチップ装置10では、検出される電流を積分する積分回路と、積分により得られた電圧をデジタル電圧信号としてのデジタルデータVdigitalに変換するウインドコンパレータ16dとを備え、デジタルデータVdigitalを出力することにより、電流検出後の情報処理を多角的に実行することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
図5は本発明の第2の実施形態に係るDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック装置の構成を示す模式図である。なお、既に説明した部分と同一部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する。
【0038】
この遺伝子チェック装置は、前述したDNAチップ装置10を用いるものであり、選択部20、取出部30、設定部40、判定部50、出力部60および制御部70を備えている。なお、「遺伝子チェック」とは、ユーザの被検出用DNAと特定の性質を有する検出用DNAとのハイブリダイゼーションから、ユーザを診断することを意味する。
【0039】
選択部20は、ユーザがチェックしたいチェック対象の遺伝子情報を選択するものである。ユーザがチェックしたい遺伝子情報を選択すると、それに対応した検出用DNAが電極12上に合成される。遺伝子情報の選択は、例えば、肥満になりやすい遺伝子情報を有しているか等の項目を選択する。
【0040】
取出部30は、ユーザから提供される試料から被検出用DNAを取り出すものである。例えば、髪の毛、注射からの血液といった試料が提供されると、この試料から遠心分離器等を用いてDNAを取り出す。
【0041】
設定部40は、出力制御部16に閾値を設定する。ここでは、ウインドコンパレータ16dに2つの基準電圧(V0,V1)を設定している。
【0042】
判定部50は、デジタルデータ化された出力データVdigitalに基き、取出部30により取出された被検出用DNAが選択部20により選択された遺伝子情報に対応する検出用DNAとハイブリダイゼーションを生じたか否かを判定するものである。すなわち、出力される電圧Voutを電流に変換した場合に、図6に示すように、電流値が陽陰性のスレッシュホールド電流値Ithより低ければ、ハイブリダイゼーションは生じておらず、スレッシュホールド電流値Ithより高ければハイブリダイゼーションが生じたと判定する。判定の際には、図7に示すように、データ溜込回路51と最終判定回路52を用いる。
【0043】
データ溜込回路51は、ある一定時間での電圧値のデジタル出力を定常状態として判定できるまでデータを溜め込むものであり、例えばDNAチップ装置10からデジタルデータVdigitalを受けている間、制御部70から受けるクロック信号CLKをカウントするカウンタとして実現可能となっている。なお、データを溜め込む理由は、ハイブリダイゼーションの反応が定常状態に達するまでに時間がかかるためと、複数のデータから判定することで定常状態ではあるが個々のデータのばらつきの影響を抑えるためである。このデータ溜込回路51で溜め込んだデータ(例、カウンタ値)に基づき、最終判定回路52で基準値と比較することにより、取出部30により取出された被検出用DNAが選択部20により選択された遺伝子情報に対応する検出用DNAとハイブリダイゼーションを生じたか否かを判定する。なお、データの溜め込みは、制御部70よりクロック信号CLKを入力して、同期化させて実行している。
【0044】
出力部60は、判定部50により判定された結果を出力するものである。液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0045】
制御部70は、遺伝子チェック装置全体を制御するものであり、他の処理装置とデータの授受等を実行する。
【0046】
次に、以上のように構成されたDNAチップを用いた遺伝子チェック装置の動作を図8を用いて説明する。
【0047】
始めに、ユーザはチェックしたい遺伝子情報を選択する。遺伝子情報が選択されると、選択された遺伝子情報に対応する検出用DNAが電極12上に合成される(T1)。次に、ユーザから提供された試料から被検出用DNAを取出部30により取出す(T2)。取出部30により取出された被検出用DNAは、選択部20により選択された検出用DNAとハイブリダイゼーションが生じるか否かが電流検知により判定される。ハイブリダイゼーションが生じれば選択された遺伝子情報を有していると判定され、生じなければ有していないと判定される(T3)。判定処理が完了したら、出力部60において、遺伝子チェック項目に該当するか否かを出力する(T4)。
【0048】
次に、以上にように構成されたDNAチップを用いた遺伝子チェック装置の利用例として遺伝子チェックゲーム装置を説明する。これは、遺伝子情報の中の肥満遺伝子やある一定の病気になりやすい遺伝子等を、ゲームセンターやコンビニエンスストア等でゲーム感覚でチェックできるゲーム装置(簡易診断機)である。
【0049】
図9は遺伝子チェックゲーム装置の外観を示す図である。なお、構造や動作については、上述した説明と同様であるので重複した説明を省略し、ここでは利用時における動作とディスプレイとの対応関係を主に説明する。
【0050】
遺伝子チェックゲーム装置80は、例えばディスプレイ81、選択ボタン82、挿入口83を備えている。
【0051】
ここで、ディスプレイ81は、ユーザに動作指示を与えるとともに、処理の判定結果を表示するものである。ここでは、液晶ディスプレイ等を用いている。
【0052】
選択ボタン82は、ユーザがチェックしたい遺伝子情報を選択するものである。遺伝子チェックゲーム装置80では、例えば、「1.肥満になりやすか?」「2.風邪をひきやすいか?」「3.肝臓は丈夫か?」等の項目をディスプレイ81に表示してユーザに質問し、それぞれの項目に1対1に対応するボタンを押下させることで、肥満になりやすい遺伝子情報、風邪を引きやすい遺伝子情報、丈夫な肝臓である遺伝子情報等を選択させる。
【0053】
挿入口83は、ユーザからDNAを取り出すものである。例えば、ユーザは髪の毛を一本挿入口に入れる。
【0054】
次に、上記のように構成された遺伝子チェックゲーム装置の動作を、図10に示すディスプレイ81の画面表示とともに説明する。
【0055】
まず、ディスプレイの初期画面には「1.肥満になりやすいか?」「2.風邪を引きやすいか?」「3.肝臓は丈夫か?」等のチェック項目が表示される(図10(a))。ユーザがチェックしたい項目の番号の選択ボタン82を押下して、チェックしたい項目を選択する。
【0056】
項目が選択されると、遺伝子チェックゲーム80は、内蔵された検出用DNA合成部13に、選択された項目に対応する検出用DNAを合成する。
【0057】
次に、ディスプレイ81には、「髪の毛を一本挿入口に入れてください。」等の指示が表示される(図10(b))。ユーザが髪の毛を挿入口83に挿入すると、内蔵された遠心分離機等により、被検出用DNAが抽出される。続いて、検出用DNAとハイブリダイゼーションを生じるか否かの処理が開始される。
【0058】
ディスプレイ81には、「処理中です・・・」等の表示がされ(図10(c))、ユーザに処理中であることを教える。処理が終わると、処理結果がディスプレイ81上に表示される。例えば、チェック項目として「3.肝臓は丈夫か?」等を選択していた際に、肝臓が丈夫だと判定された場合には、「あなたの肝臓は丈夫です。」等の表示がされる(図10(d))。
【0059】
上述したように本実施形態によれば、デジタルデータVdigitalを出力するDNAチップ装置10を用い、ユーザが遺伝子チェックしたい項目に対応した検出用DNAとユーザから取出した被検出用DNAをハイブリダイゼーションさせて遺伝子チェックをしているので、第1の実施形態の効果に加え、簡易に遺伝子情報をチェックして診断することができる遺伝子チェック方法及び装置を提供することができる。
【0060】
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るDNAチップ装置の構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係るユニットセルの構成を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係る出力制御部の構成を示す模式図である。
【図4】同実施形態にかかるDNAチップ装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック装置の構成を示す模式図である。
【図6】同実施形態に係るハイブリダイゼーションの判定方法を説明するための図である。
【図7】同実施形態に係る判定部の構成を示す模式図である。
【図8】同実施形態に係る遺伝子チェック装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】同実施形態を応用した遺伝子チェックゲーム装置の外観を示す図である。
【図10】同実施形態を応用した遺伝子チェックゲーム装置の画面遷移を示した図である。
【符号の説明】
【0062】
16b・・・オペアンプ、18・・・配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出用DNAを保持するための電極と、
前記電極上で前記検出用DNAと被検出用DNAとによるハイブリダイゼーションが生じるとき、このハイブリダイゼーションに対応する電流を前記電極から検出するための電流検出回路と、
前記電流検出回路により検出された電流を積分して電圧に変換し、得られたアナログ電圧信号を出力する積分手段と、
前記積分手段から出力されたアナログ電圧信号を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換するデジタル信号変換手段と、
このデジタル電圧信号を出力するデジタル信号出力手段と
を備えたことを特徴とするDNAチップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のDNAチップ装置において、
前記デジタル信号変換手段は、前記アナログ電圧信号と前記しきい値電圧とを比較し、この比較結果に対応して前記デジタル電圧信号を得るための比較器を備えたことを特徴とするDNAチップ装置。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に配置された電極と、
前記基板上に形成され、入力された合成用電流により、前記電極上に検出用DNAを合成する検出用DNA合成手段と、
前記基板上に形成され、前記検出用DNAと被検出用DNAのハイブリダイゼーションによるハイブリッドDNAを検出可能とするリガンドと酵素との反応により生じた電流を前記電極から検出することにより、ハイブリッドDNAを検出するハイブリッドDNA検出手段と、
前記電極、前記検出用DNA合成手段及び前記ハイブリッドDNA検出手段からなり、前記基板上の複数の領域に区画された複数のユニットセルと、
前記基板上に形成され、前記各ユニットセルのうち、選択したユニットセルの検出用DNA合成手段に前記合成用電流を入力する入力制御手段と、
前記基板上に形成され、前記選択したユニットセルのハイブリッドDNA検出手段により検出された電流を出力制御する出力制御手段と
を備えたDNAチップ装置であって、
前記出力制御手段は、
前記ハイブリッドDNA検出手段により検出された電流を積分して電圧に変換し、得られたアナログ電圧信号を出力する積分手段と、
前記積分手段から出力されたアナログ電圧信号を、予め設定された陽陰性のしきい値電圧に基づいてデジタル電圧信号に変換するデジタル信号変換手段と、
このデジタル電圧信号を出力するデジタル信号出力手段と
を備えたことを特徴とするDNAチップ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック方法であって、
チェック対象の遺伝子情報を選択する遺伝子情報選択ステップと、
前記選択された遺伝子情報に関連する検出用DNAを前記電極上に保持するDNAチップ装置を準備するチップ準備ステップと、
提供された試料から被検出用DNAを取出す取出ステップと、
前記被検出用DNAを前記準備したDNAチップ装置上の検出用DNAと反応させるための反応ステップと、
前記反応ステップの後、検出される電流に基づいて得られる前記デジタル電圧信号に基づいて、前記反応が陽性か陰性かを判定する判定ステップと、
この判定結果を出力する判定結果出力ステップと
を備えたことを特徴とする遺伝子チェック方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のDNAチップ装置を用いた遺伝子チェック装置であって、
チェック対象の遺伝子情報を選択する遺伝子情報選択手段と、
前記選択された遺伝子情報に関連する検出用DNAを前記電極上に保持するDNAチップ装置を準備するチップ準備手段と、
提供された試料から被検出用DNAを取出す取出手段と、
前記被検出用DNAを前記準備したDNAチップ装置上の検出用DNAと反応させるための反応手段と、
前記反応の後、検出される電流に基づいて得られる前記デジタル電圧信号に基づいて、前記反応が陽性か陰性かを判定する判定手段と、
この判定結果を出力する判定結果出力手段と
を備えたことを特徴とする遺伝子チェック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−78265(P2006−78265A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261169(P2004−261169)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】