説明

DNA構築物並びに融合タンパク質の発酵的製造方法

【課題】E.コリにおける標的タンパク質の廉価な製造を可能にし、加えて前記の従来技術の欠点のないDNA構築物を提供する。
【解決手段】シグナルペプチドをコードする核酸配列と、それと機能的に結合されているキャリヤータンパク質をコードする遺伝子と、それと開裂可能な配列Sをコードする遺伝子を介して結合されている標的タンパク質をコードする遺伝子とからなる、E.コリにおける標的タンパク質の廉価な製造を可能にするDNA構築物であって、キャリヤータンパク質をコードする遺伝子がE.コリ由来のspy遺伝子であることを特徴とするDNA構築物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA構築物並びに該構築物を使用した融合タンパク質の発酵的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えタンパク質医薬("バイオロジクス")に関する市場は、近年に大きく成長している。タンパク質を基礎とする医薬作用物質に関して生産費用が依然として非常に高いことに基づき、効率化されたことで廉価となった製造のための方法及び系が絶え間なく探求されている。タンパク質の生産体としては、種々の微生物、例えば細菌、酵母等の糸状菌又は植物細胞もしくは動物細胞も使用することができる。それらの非常に良好に調査された遺伝学及び生態学と、短い発生時間と、簡単な取り扱いとに基づき、もちろん目下、グラム陰性の腸内細菌であるエシェリキア・コリ(E.コリ)が、組み換えタンパク質の生産のために最も頻繁に使用される生物である。
【0003】
E.コリにおける組み換えタンパク質の製造に際して、しばしば該細胞の細胞質内での"封入体"形成の問題に悩まされている。前記困難は、しばしば、該細胞が、その都度生産されるべき組み換えタンパク質(以下に標的タンパク質とも呼称する)を、細胞質内に蓄えずに、能動的にペリプラズムへと、理想的にはその上さらに培養培地にまで分泌するように生産系を設計することによって回避することができる。このことは、細胞からの標的タンパク質をまず、細胞質性の前駆体−融合タンパク質として合成する(図1A及び図1B)によって達成でき、その際、シグナルペプチド(SP)は、分泌過程の間にペリプラズムにおいてインビボで開裂されて、融合タンパク質を生成する(図1C及び図1D)。E.コリにおいては、シグナルペプチドの輸送と開裂をSec系が担っている。原則的に、標的タンパク質の細胞外生産の場合に、E.コリの細胞質もしくは細胞外のタンパク質のシグナルペプチドが使用される。前記のE.コリ固有のタンパク質は、Sec経路を介して分泌される。例えば、ここでE.コリのタンパク質のシグナルペプチドとして、PhoA、OmpA、StII、Lpp及びMalEが挙げられる。Sec系の場合に、該タンパク質は折り畳まれていない状態で細胞質膜を通って輸送され、引き続きペリプラズムで折り畳まれる。それに対して、TAT系(双方アルギニン転座(win rginine ranslocation))を用いると、既に細胞質内で折り畳まれたタンパク質をペリプラズムへと分泌させることができるが、その際、特殊なシグナルペプチドが必要となる(例えばタンパク質TorA又はTapのシグナルペプチド)。ChoiとLeeとによる概要文献(2004年、Appl.Microbiol.Biotechnol.64,625−635)において、組み換えタンパク質の分泌的かつ細胞外の生産についての先行技術が代表的な例をもとに表されている。
【0004】
ペリプラズム又は培養培地中での標的タンパク質の集積は、細胞内生産に対して以下の利点を有する:
とりわけ
1)分泌された標的タンパク質のN末端アミノ酸残基が必ずしもメチオニンである必要がなく、産物の天然の開始メチオニンと同一であってよいこと、
2)ペリプラズム内でのプロテアーゼ活性が細胞質内よりも明らかに低いこと、
3)ペリプラズムあるいは培養培地からのタンパク質の精製が、細胞質からよりも容易であること、それというのもそこでは不純物の少ない宿主タンパク質が含まれているからである、
4)場合により必要とされるジスルフィド結合の形成が、ペリプラズムの酸化的条件下で可能であること
である。
【0005】
多くの場合に、例えば特にタンパク質分解に対して感受性であるか又は"封入体"の形成傾向にある組み換えタンパク質もしくはペプチドの分泌的生産の場合には、組み換えタンパク質をシグナルペプチドに直接的に結合させずに、更なるタンパク質、つまりキャリヤータンパク質のC末端へと結合させる(図1A:前駆体−融合タンパク質及び図1C:融合タンパク質を参照のこと)ことが合理的であり、あるいは効率的な生産のためにはむしろ必要条件である。分泌可能な融合タンパク質の部分として、しばしば、標的タンパク質の発酵培地中での可溶性を高めることができる。同様に、キャリヤータンパク質への結合と、全ての前駆体−融合タンパク質が細胞質から迅速に排出されることによって、タンパク質分解に感受性の標的タンパク質あるいは標的ペプチドを、細胞内分解から保護することができる。分解に対して感受性の遺伝子産物を保護し、それにより安定化させるためには、標的タンパク質のC末端にキャリヤータンパク質を融合させる可能性もある(図1B:前駆体−融合タンパク質及び図1D:融合タンパク質を参照のこと)。そのための一例は、タンパク質であるグルタチオンS−トランスフェラーゼであり、それは標的タンパク質としての組み換えプロテアーゼインヒビターの分泌に際して、キャリヤータンパク質としても、二量体化ドメインとしても使用される(Tudyka及びSkerra著、1997年、Protein Science 6,2180−2187)。
【0006】
標的タンパク質とは、以下で、組み換えタンパク質、タンパク質断片又はペプチドを表し、それは細胞外又はペリプラズムで、50mg/lより高い収率で生産されることが望ましい。
【0007】
前駆体−融合タンパク質とは、以下で、キャリヤータンパク質と標的タンパク質とシグナルペプチド(SP)とからなるタンパク質を表す。キャリヤータンパク質と標的タンパク質は、酵素的又は化学的に開裂可能な配列Sによって互いに結合されている。該シグナルペプチドは、細胞質膜を通過する融合タンパク質の移動のために必要である。前記のシグナルペプチドは、ペリプラズムへの分泌過程の間に融合タンパク質から分離され、それによって融合タンパク質が生成する。
【0008】
融合タンパク質とは、以下で、キャリヤータンパク質と標的タンパク質とからなるタンパク質を表す。キャリヤータンパク質と標的タンパク質は、酵素的又は化学的に開裂可能な配列Sによって互いに結合されている。
【0009】
キャリヤータンパク質とは、前駆体−融合タンパク質もしくは融合タンパク質の部分であって、標的タンパク質の安定化のために使用される部分を表す。
【0010】
シグナルペプチドの前駆体−融合タンパク質からの開裂の後に、該融合タンパク質は、ペリプラズム又は培養培地中に集積される。有利には、標的タンパク質は、アミノ酸配列である開裂可能な配列Sを介してキャリヤータンパク質と結合されており(図1を参照のこと)、そこで後続工程において標的タンパク質を、インビトロで、酵素的もしくは化学的に開裂させて、こうして遊離させることができる。
【0011】
キャリヤータンパク質としては、例えばE.コリ−タンパク質であるYebF(Zhang他著、2006年、Nature Biotechnology 24,100−104及びWO2006017929号A1)が、タンパク質の細胞外生産のために記載されている。
【0012】
YebF−タンパク質は、118個のアミノ酸の一次構造を有し、かつ10.8kDaの分子量を有しており、今までで最小のキャリヤータンパク質であって、E.コリにおけるタンパク質の異種発現のために記載されている。キャリヤータンパク質としてYebF−タンパク質を使用する場合の欠点は、該タンパク質が、全体で3個のシステイン残基を有し、その中の2個が該タンパク質の成熟部分に局在化されていることである。これらの2個のシステイン残基は、その際、ペリプラズムの酸化性環境で標的タンパク質とジスルフィド結合を形成することがあり、それによって標的タンパク質の折り畳み不全となりうるからである。このことは、最悪の場合には役に立たない標的タンパク質をもたらす。誤ったジスルフィド結合の形成は、標的タンパク質とYebF−タンパク質との開裂前にも後にも可能性がある。
【0013】
他のキャリヤータンパク質は、E.コリのOmpF−タンパク質である。JeongとLeeとは、OmpF−β−エンドルフィン−融合タンパク質を、E.コリ株BL21(DE3)(2002年、Appl.Environ.Microbiol.68,4979−85)の派生物を用いて細胞外産生することを記載している。362個のアミノ酸の一次構造と、そこから得られる36kDaの分子量とをもって、OmpF−キャリヤータンパク質は、キャリヤータンパク質YebFよりもかなり大きく、かつ重たい。このことは、E.コリ細胞が、標的タンパク質の産生に際して、YebFの代わりにOmpFをキャリヤータンパク質として使用すると、明らかに代謝的により高い負荷がかかることを意味する。前記のJeongとLeeによる刊行物において、このことは特に明らかである:5.6g/lの融合タンパク質の生産力で、0.33g/lのβ−エンドルフィンしか得られない。
【0014】
他のキャリヤータンパク質は、E.コリのHlyA−タンパク質のC末端断片である。E.コリ由来の溶血素(HlyA−タンパク質)は、110kDaの分子量を有する小孔形成性の外毒素であり、それは病原性E.コリ株で存在し、例えば尿路感染を引き起こす。HlyA−タンパク質は、固有の溶血素輸送系を介して、内膜と外膜を通じて細胞から排出される。融合タンパク質の製造のために、該タンパク質の23kDaの分子量を有する218個のアミノ酸のC末端ドメインが用いられる。該ドメインは、両方の膜を通過する移動のために必要である。ヒトのインターロイキン−6は、HlyA−キャリヤータンパク質を用いて細胞外で培養上清において生産することができる。その収率は、70μg/lと極めて低い(Li他著、2002年、Gene 25,437−447)。しかしながら毒性のE.コリ−タンパク質の断片として、前記断片は、医薬品に有効なタンパク質の製造のためには不適である。
【0015】
更に、真核性タンパク質である薬用蛭由来のヒルジンは、標的タンパク質の細胞外産生のためのキャリヤータンパク質として知られている。ヒルジンは、トロンビンインヒビターであり、極めて高い親和性(Ki=20fM)でプロテアーゼのトロンビンに結合する。65個のアミノ酸からなる該ペプチドは、その6個のシステイン残基で3個の内部ジスルフィド結合を形成する。キャリヤータンパク質のヒルジンは、E.コリにおける標的タンパク質の細胞外産生のために、細菌性シグナルペプチドと融合される。シグナルペプチドとしては、例えばE.コリ−タンパク質であるPhoAもしくはOmpC(EP1364029号B1)の配列又はα−シクロデキストリン−グリコシルトランスフェラーゼ(EP0448093号B1)のシグナルペプチドも使用される。そのトロンビンインヒビターとしての生物学的活性に基づき、ヒルジンは、医薬タンパク質の生産のために不適である。それというのも標的タンパク質の生産工程において、キャリヤータンパク質であるヒルジンによる汚染が存在しないことを保証せねばならないからである。このことは、標的タンパク質の精製工程を非常に費用のかかるものにし、それにより高価なものとなる。
【特許文献1】WO2006017929号A1
【特許文献2】EP0448093号B1
【非特許文献1】ChoiとLee著、2004年、Appl.Microbiol.Biotechnol.64,625−635
【非特許文献2】Tudyka及びSkerra著、1997年、Protein Science 6,2180−2187
【非特許文献3】Zhang他著、2006年、Nature Biotechnology 24,100−104
【非特許文献4】JeongとLee著、2002年、Appl.Environ.Microbiol.68,4979−85
【非特許文献5】Li他著、2002年、Gene 25,437−447
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、E.コリにおける標的タンパク質の廉価な製造を可能にし、加えて前記の従来技術の欠点のないDNA構築物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題は、シグナルペプチドをコードする核酸配列であってキャリヤータンパク質をコードする遺伝子と機能的に結合され、かつ開裂可能な配列Sをコードする遺伝子を介して標的タンパク質をコードする遺伝子と結合されている核酸配列からなるDNA構築物であって、キャリヤータンパク質をコードする遺伝子がE.コリ由来のspy遺伝子であることを特徴とするDNA構築物によって解決される。
【0018】
そのspy遺伝子は、配列番号1によって特徴付けられ、もしくは縮重された遺伝子コードによって引き起こされた類似配列であってSpyタンパク質をコードする配列によって特徴付けられる。
【0019】
Spyタンパク質は、配列番号2によってコードされたペリプラズム性タンパク質である。この配列は、ペリプラズム中での分泌とそのシグナル配列の開裂の後に存在するような成熟Spyタンパク質に相当する。Spyタンパク質の形成は、スフェロプラストの製造において誘導される(Hagenmaier他著のJ.Bacteriol.179,2073−2076)。また、E.コリ細胞のインドール処理は、Spyタンパク質形成を誘導する(Garbe他著、2000年、Arch.Microbiol.173,78−82)。従来技術のキャリヤータンパク質と比較して、キャリヤータンパク質としての該Spyタンパク質は、以下の利点を有する:
a)小さい細胞外性のE.コリ−タンパク質であること、
b)システイン残基を有さないこと、
c)非病原性E.コリ株に由来すること、
d)真核生物中で活性を有さない真核生物由来のキャリヤータンパク質であること、
e)組み換え標的タンパク質の産生を、高い収率で、その活性を保持しつつ培養上清中で廉価で可能にすること
である。
【0020】
シグナルペプチドの核酸配列は、有利には、組み換えタンパク質の細胞外製造のために有効であると示されたシグナルペプチドをコードする配列である。有利には、E.コリ遺伝子のシグナルペプチドをコードする核酸配列であるompA、phoA、ompT、lpp、phoE、ompF、lamB、ompC及びmalE並びにE.コリ由来のspy遺伝子のシグナルペプチドをコードする核酸配列(配列番号3)である。特に、E.コリ由来のspy遺伝子のシグナルペプチドをコードする核酸配列が好ましい。
【0021】
標的タンパク質をコードする核酸配列は、組み換えタンパク質、タンパク質断片又はペプチドをコードする。
【0022】
有利には、該核酸配列は、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキン受容体アンタゴニスト、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、白血病抑制因子、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子、成長ホルモン、プロインスリン、インスリン様成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、組み換え成長因子、肝細胞成長因子、骨形成因子、神経成長因子、CNTF(毛様体神経栄養因子)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子、ニューロトロフィン、血管新生阻害剤、プロウロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター、血液凝固因子、プロテインC、グルコセレブロシダーゼ、スーパーオキシド−ジスムターゼ、レニン、リゾチームP450、プロキモシン、トリプシンインヒビター、エラスターゼインヒビター、リポコルチン、レプチン、イムノグロブリン、単鎖抗体、補体成分、血清アルブミン、低酸素症に誘発されるストレスタンパク質、プロテインキナーゼ、癌原遺伝子産物、転写因子、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ及びウイルス構成タンパク質の群から選択される標的タンパク質をコードする。
【0023】
特に好ましくは、該核酸配列は、インターフェロン及びペプチドの群から選択される標的タンパク質をコードする。
【0024】
キャリヤータンパク質と標的タンパク質との共有結合のための開裂可能な配列Sは、有利には、翻訳された融合タンパク質において、標的タンパク質とキャリヤータンパク質との酵素分解が可能である核酸配列である。従来技術において、相応の配列が知られており、該配列は、融合タンパク質の開裂を、化学的に(例えばブロモシアン、ヒドロキシルアミン、N−ブロモスクシンイミド又は酸加水分解)又は特異的なプロテアーゼ(例えば第Xa因子、エンテロキナーゼ、フリン、Igase、セリン−エンドプロテイナーゼKex、Genenase I又はPreScission(商標)プロテアーゼ)によって酵素的に可能とする。
【0025】
翻訳された融合タンパク質において、標的タンパク質の酵素的開裂を、有利にはプロテアーゼによって可能にする核酸配列が好ましい。特に、翻訳された融合タンパク質において、標的タンパク質の開裂を、真核性のプロテアーゼ第Xa因子によって可能にする核酸配列が好ましい。
【0026】
本発明によるDNA構築物の製造のために、Spyタンパク質、標的タンパク質、シグナルペプチド並びに開裂可能な配列Sをコードする核酸配列を、任意の時間的順序で標的タンパク質を遊離するために、プラスミド中にクローニングを行う。標的タンパク質とSpyタンパク質の方位は、その際、図1A及び図1Bに示されるように変更可能である。
【0027】
spy遺伝子のクローニングは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による特異的増幅によって、配列番号1から誘導できる特異的なオリゴヌクレオチドを使用して行われ、その際、生ずるPCR断片は、適切なライゲーションによってプラスミド中に導入することができる。
【0028】
プラスミドとしては、あらゆる使用可能なかつ遺伝子工学的に入手できるDNA分子であって、染色体外で微生物において複製され、かつ分泌マーカーを含むDNA分子を使用することができる。ここで例えば、E.コリにおいて高い細胞性コピー数を有するプラスミド(例えばpUCシリーズのプラスミド、pQEシリーズのプラスミド、pBluescriptシリーズのプラスミド)、E.コリにおいて中程度のコピー数を有するプラスミド(例えばpBRシリーズのプラスミド、pACYCシリーズのプラスミド)又はE.コリにおいて低いコピー数を有するプラスミド(例えばpSC101又はpBeloBAC11)を使用することができる。有利には、E.コリにおいて高い細胞性コピー数を有するプラスミドが使用される。有利には、融合タンパク質の製造のための要素、例えばシグナルペプチドをコードする核酸配列と、キャリヤータンパク質と標的タンパク質との分離を可能にする開裂可能な配列Sとを既に含むプラスミドが使用される。これらの融合タンパク質の製造のための要素がまだプラスミドに存在しない場合には、これらの要素は、当業者に公知のクローニング技術によって、個々の要素が互いに機能的に結合されるようにプラスミド中に導入される。引き続き、本発明による構築物を、プラスミドから、例えば好適な制限エンドヌクレアーゼによって切り出すことができる。しかしながら好ましくは、本発明によるDNA構築物を含むプラスミドは、微生物の形質転換のために使用される。
【0029】
従って、本発明は、本発明によるDNA構築物を含むプラスミドにも関する。
【0030】
例えばエレクトロポレーション法又は熱ショック法のような形質転換法によって、本発明によるプラスミドは、微生物株の細胞中に導入される。プラスミドを有するクローンは、引き続き選択される。その選択は、規定の抗生物質に対する耐性を媒介する、プラスミドに存在する分泌マーカーをもとに行われる。有利には、アンピシリン又はテトラサイクリンに対する耐性を媒介する選択マーカーが使用される。特に有利には、テトラサイクリンに対する耐性を媒介する選択マーカーが使用される。
【0031】
プラスミド中でのクローニングの代わりに、本発明によるDNA構築物を、組み換え標的タンパク質の生産のために使用される微生物株の染色体中に組み込むこともできる。組み込み法としては、有利にはテンペレートバクテリオファージを用いた公知の系、組み込みプラスミド又は相同組み換えによる組み込みが用いられる。
【0032】
従って、本発明は、融合タンパク質を分泌する微生物株の製造方法において、腸内細菌科由来の微生物株中に本発明によるDNA構築物を導入することを特徴とする方法にも関する。有利には、本発明によるDNA構築物は、その際、本発明によるプラスミドの形態で使用される。
【0033】
有利には、エシェリキア・コリ(大腸菌)の種の菌株(例えばE.コリW3110 ATCC 27325)が使用される。特に有利には、組み換え融合タンパク質の細胞外生産のためのE.コリ株であって、E.コリW3110と比較して、少なくとも2倍だけ組み換え融合タンパク質の分泌能力が改善された菌株が使用される。
【0034】
それは、有利には以下のE.コリ株である:
a)BLR;Ray他(2002年);Novagen(Merck Biosciences GmbH,65796 Bad Soden,ドイツ)から購入できる
b)K802=CGSC5610;Yang他(1998年);大腸菌ストックセンター(E.coli Genetic Stock Center)CGSC(830 Kline Biology Tower,MCD Biology Department,266 Whitney Ave.,PO box 208103、エール大学、ニューヘイブン、米国)から購入できる
c)WCM105:EP0338410号B1に従って製造できる
d)MM28=CGSC5892;Nagahari他(1985年);大腸菌ストックセンター(E.coli Genetic Stock Center)CGSC(830 Kline Biology Tower,MCD Biology Department,266 Whitney Ave.,PO box 208103、エール大学、ニューヘイブン、米国)から購入できる
e)RV308=ATCC31608;EP0677109号B1;LGC Promochem(Mercatorstr.51,46485 Wesel,ドイツ)から購入できる
f)RR1:ATCC31434;Nagahari他(1985年);LGC Promochem(Mercatorstr.51,46485 Wesel,ドイツ)から購入できる
g)KG1005 ompT:Wadensten他(1991年)に従って製造できる
である。
【0035】
更に、本発明は、本方法により製造される微生物株に関する。これらの微生物株は、本発明によるDNA構築物又は本発明によるプラスミドを含むことを特徴とする。
【0036】
本発明による微生物株は、Spyタンパク質と、標的タンパク質と、開裂可能な配列(S)とからなる融合タンパク質の細胞外産生を可能にする。従って、本発明は、同様に、Spyタンパク質と、標的タンパク質と、開裂可能な配列(S)とからなる融合タンパク質に関する。
【0037】
細胞外産生とは、本発明の範囲においては、微生物細胞の細胞質外部に50mg/l以上の組み換え融合タンパク質が集積していることを表す。培養培地中で50mg/l以上の組み換え融合タンパク質が集積していることが好ましい。
【0038】
従って、本発明はまた、微生物株による融合タンパク質の発酵的製造方法において、本発明による微生物株を、発酵培地中で培養し、その際、本発明による融合タンパク質を産生させ、そして発酵培地を該微生物株の細胞による発酵後に分離することを特徴とする方法に関する。
【0039】
ペリプラズムもしくは培養培地からの融合タンパク質の精製は、公知の方法に従って、例えば培地の遠心分離により細胞を分離し、場合により細胞を分解し、濾過し、引き続きクロマトグラフィー的精製により分離し、タンパク質を複合体化又は沈殿させることによって行うことができる。
【0040】
発酵培地の分離後に、標的タンパク質を細胞のペリプラズムから精製し、その際、まずキャリヤータンパク質を化学的もしくは酵素的に標的タンパク質から分離し、そして引き続き標的タンパク質を精製する方法が好ましい。
【0041】
特に、発酵培地の分離後に、標的タンパク質を発酵培地から精製できる方法が好ましい。その際、まず、キャリヤータンパク質を、化学的もしくは酵素的に標的タンパク質から、既に挙げたようにして分離する。引き続き、標的タンパク質を、公知の方法に従って精製することができる。
【0042】
本発明による融合タンパク質の製造方法は、培養上清中での融合タンパク質の廉価でかつ効率的な生産を可能にする。
【0043】
本発明による融合タンパク質の生産のための細菌株の発酵は、有利には完全培地又は最少塩培地中で行われる。これらの培地は、文献から公知である。
【0044】
炭素源としては、原則的に、あらゆる使用可能な糖類、糖アルコール、有機酸もしくはそれらの塩、デンプン加水分解物、糖蜜もしくは別の物質を使用することができる。その際、有利にはグルコース又はグリセリンが使用される。また、多くの種々異なる炭素源の組み合わされた投入も可能である。窒素源としては、尿素、アンモニア及びそれらの塩、硝酸塩並びに別のN源を用いることができる。可能な窒素源には、また、複合アミノ酸混合物、例えば酵母エキス、ペプトン、麦芽エキス、大豆ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー及びNZアミン(例えばKerry Bio−Science,Chicago,USA)が該当する。
【0045】
更に、培地に更なる成分、例えばビタミン、塩、酵母エキス、アミノ酸及び微量元素を添加することができ、それによって細胞増殖は向上する。
【0046】
該微生物株のインキュベートは、有利には好気性培養条件下で、16〜150時間にわたって、かつその都度の微生物株に最適な増殖温度の範囲で行われる。
【0047】
最適な温度範囲としては、15〜55℃が好ましい。特に、30〜37℃の温度が好ましい。
【0048】
該微生物株の培養は、振盪フラスコ又は発酵器において行われ、その際、容量に関する制限は与えられない。その培養は、回分法で、半回分法又は連続法で実施することができる。
【0049】
更に、本発明は、E.コリ由来のSpyタンパク質を、E.コリにおける標的タンパク質の発現に際してのキャリヤータンパク質として用いる使用に関する。
【0050】
そのキャリヤータンパク質としてのSpyタンパク質の使用は、公知のキャリヤータンパク質を使用するのに対して、以下の利点を有する:
a)融合タンパク質が安定化されること、
b)標的タンパク質の誤った折り畳みが回避されること、
c)標的タンパク質の高い細胞外収率が可能となること
である。
【0051】
以下の実施例は、本発明を更に説明するために役立つものである。
【実施例】
【0052】
実施例1:プラスミドpKP689の構築
a)spy遺伝子の増幅
E.コリ由来のspy遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して、通常の当業者に公知の作業に従って増幅させた。鋳型として、E.コリ野生株W3110(ATCC27325)の染色体DNAを使用した。プライマーとして、オリゴヌクレオチドであるspy−fw(配列番号4)(配列5′−GGAATTCTGAAAGGAAGGATATAGAATATG−3′)とspy−rev(配列番号5)(5′−GCTCTAGATTTACGTTAGTGGTGATCA−3′)を使用した。
【0053】
PCRで得られる約651塩基対の長さを有するDNA断片を、引き続きQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen、Hilden)のDNA吸着カラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0054】
b)プラスミドベクターpEX2200へのspy遺伝子のクローニング
該PCR断片に、プライマーのspy−fwとspy−revを介して、制限エンドヌクレアーゼEcoRIとXbaIについての2箇所の切断部位を挿入した。精製されたPCR断片を、制限エンドヌクレアーゼEcoRI(ロシュ,マンハイム在)及びXbaI(ロシュ,マンハイム在)を用いて、製造元によって指示される条件下で切断し、アガロースゲルを介して分離し、次いでQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって製造元の指示に従ってアガロースゲルから単離した。spy遺伝子のクローニングのために、ベクターpEX2200を、制限エンドヌクレアーゼEcoRIとXbaIによって、製造元(ロシュ,マンハイム在)によって示される条件下で切断した。そのプラスミドを引き続き、アルカリ性ホスファターゼ(ロシュ,マンハイム在)での処理によって5′末端で脱リン酸化させ、次いで同様にそのPCR断片をQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって精製した。該PCR断片と切断されかつ脱リン酸化されたベクターとのライゲーションを、製造元の指示に従ってT4−DNA−リガーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して行った。該ライゲーションバッチによる菌株W3110(ATCC27325)のE.コリ細胞の形質転換は、エレクトロポレーションによって当業者に公知のように実施した。形質転換バッチを、LB−テトラサイクリン−寒天プレート(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母エキス、5g/lのNaCl、15g/lの寒天、20mg/lのテトラサイクリン)上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。所望の形質転換体を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Hilden)によるプラスミド単離の後に、制限分析によって同定し、そして欠陥が無いことを配列分析によって確認した。前記のようにして得られたプラスミドpKP689(図2)では、spy遺伝子は、誘導可能なtac−プロモーターの制御下にある。更なる実施例の構成に使用されたプラスミドpKP689は、2006年6月26日にDSMZ(ドイツ微生物細胞培養収集館(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH),D−38142 Braunschweig)で、番号DSM18381としてブタペスト条約に従って寄託された。
【0055】
ペプチドT1249は、HIVが宿主細胞膜と融合するのを抑制する融合インヒビターである。該ペプチドは、その活性形においてC末端でアミノ化され、かつN末端でアセチル化されている。実施例2〜6において、未修飾のT1249ペプチドの産生が記載されている。
【0056】
実施例2:T1249のクローニング
a)ベクターpCMT203の予備調製
プラスミドベクターpCMT203(EP0448093号B1の実施例6に従って製造できる)を、T1249のDNAのクローニングのために、制限エンドヌクレアーゼSfuI及びPstIを用いて製造元(ロシュ,マンハイム在)によって示された条件下で切断した。そのプラスミドを引き続き、アルカリ性ホスファターゼ(ロシュ,マンハイム在)での処理によって5′末端で脱リン酸化させ、次いで同様にそのPCR断片をQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって精製した。
【0057】
b)T1249のDNA断片のリン酸化
ペプチドT1249のための核酸配列を、オリゴヌクレオチドを用いて合成的に製造した。オリゴヌクレオチドのT1(配列番号6)と、T2(配列番号7)と、T3(配列番号8)と、T4(配列番号9)と、T5(配列番号10)とを、ポリヌクレオチド−キナーゼ(ロシュ,マンハイム在)を用いて製造元の指示に従ってリン酸化した。
【0058】
c)ライゲーション
リン酸化されたT1249のDNA断片と切断されかつ脱リン酸化されたベクターとのライゲーションを、製造元の指示に従ってT4−DNA−リガーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して行った。該ライゲーションバッチによる菌株W3110(ATCC27325)のE.コリ細胞の形質転換は、エレクトロポレーションによって当業者に公知のように実施した。形質転換バッチを、LB−テトラサイクリン−寒天プレート(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母エキス、5g/lのNaCl、15g/lの寒天、20mg/lのテトラサイクリン)上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。
【0059】
所望の形質転換体を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Hilden)によるプラスミド単離の後に、制限分析によって同定し、そして欠陥が無いことを配列分析によって確認した。前記のようにして得られたプラスミドpT1249fusにおいて、T1249のDNAを、プロテアーゼの第Xa因子によって開裂可能なDNA配列によって、ヒルジン断片から隔離した。
【0060】
実施例3:pT1249の構築
a)ベクターpBaBIFN1の予備調製
プラスミドベクターpBaBIFN1(ブタペスト条約に従ってDSMZ(ドイツ微生物細胞培養収集館、D−38142 Braunschweig)で番号DSM18343として寄託された菌株DH5α/pBaBIFN1から単離できる)を、T1249のDNAのクローニングのために、制限エンドヌクレアーゼBglII及びXbaIによって製造元(ロシュ,マンハイム在)によって示された条件下で切断した。そのプラスミドを引き続き、アルカリ性ホスファターゼ(ロシュ,マンハイム在)での処理によって5′末端で脱リン酸化させ、次いで同様にそのPCR断片をQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって精製した。
【0061】
b)T1249のDNA断片のリン酸化
ペプチドT1249のための核酸配列を、オリゴヌクレオチドを用いて合成的に製造した。オリゴヌクレオチドのT6(配列番号11)と、T7(配列番号12)と、T8(配列番号13)と、T9(配列番号14)と、T10(配列番号15)とを、ポリヌクレオチド−キナーゼ(ロシュ,マンハイム在)を用いて製造元の指示に従ってリン酸化した。
【0062】
c)ライゲーション
リン酸化されたT1249のDNA断片と切断されかつ脱リン酸化されたベクターとのライゲーションを、製造元の指示に従ってT4−DNA−リガーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して行った。該ライゲーションバッチによる菌株W3110(ATCC27325)のE.コリ細胞の形質転換は、エレクトロポレーションによって当業者に公知のように実施した。形質転換バッチを、LB−テトラサイクリン−寒天プレート(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母エキス、5g/lのNaCl、15g/lの寒天、20mg/lのテトラサイクリン)上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。
【0063】
所望の形質転換体を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Hilden)によるプラスミド単離の後に、制限分析によって同定し、そして欠陥が無いことを配列分析によって確認した。
【0064】
プラスミドpT1249のプラスミド地図を、図3に示す。
【0065】
実施例4:spy−T1249融合物の構築
a)spy遺伝子の増幅
spy遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ、マンハイム在)を使用して、通常の当業者に公知の作業に従って増幅させた。鋳型として、プラスミドpKP689を使用した。プライマーとして、オリゴヌクレオチドのpJF118−seqfw(配列番号16)(配列5′−CATCGGCTCGTATAATGTGTGG−3′)とspy−T1249fus(配列番号17)(配列5′−CAACGACCTTCGATAGTACTTTCAGCAGTTGCAGGCATTTTACC−3′)とを使用した。
【0066】
PCRで得られる約586塩基対の長さを有するDNA断片を、引き続きQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen、Hilden)のDNA吸着カラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0067】
b)T1249遺伝子の増幅
T1249遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ、マンハイム在)を使用して、通常の当業者に公知の作業に従って増幅させた。鋳型として、プラスミドpT1249fusを使用した。プライマーとして、オリゴヌクレオチドのT1249−fus2(配列番号18)(配列5′−AGTACTATCGAAGGTCGTTGGCAGGAATG−3′)とT1249−BfrI(配列番号19)(配列5′−TAGACCGCTTAAGTCAGAACCATTCCCACAGGC−3′)とを使用した。PCRで得られる約151塩基対の長さを有するDNA断片を、引き続きQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen、Hilden)のDNA吸着カラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0068】
c)spy遺伝子とT1249遺伝子との融合
spy遺伝子とT1249遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ、マンハイム在)を使用して、通常の当業者に公知の作業に従って増幅させた。鋳型として、同時に、精製された実施例4a及び実施例4b(上記参照)からのPCR断片を使用した。プライマーとして、オリゴヌクレオチドのpJF118−seqfw(配列番号16)(配列5′−CATCGGCTCGTATAATGTGTGG−3′)とT1249−BfrI(配列番号19)(配列5′−TAGACCGCTTAAGTCAGAACCATTCCCACAGGC−3′)とを使用した。PCRで得られる約717塩基対の長さを有するDNA断片を、引き続きQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen、Hilden)のDNA吸着カラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0069】
d)spy−T1249の融合物のプラスミドベクターpKP689へのクローニング
精製された実施例4c(上記参照)からのPCR断片を、制限エンドヌクレアーゼEcoRI(ロシュ,マンハイム在)及びBfrI(ロシュ,マンハイム在)を用いて、製造元によって指示される条件下で切断し、アガロースゲルを介して分離し、次いでQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって製造元の指示に従ってアガロースゲルから単離した。spy−T1249の融合物のクローニングのために、ベクターpKP689を、制限エンドヌクレアーゼEcoRIとBfrIによって、製造元(ロシュ,マンハイム在)によって示される条件下で切断した。該プラスミドの大きい方の部分(約6053塩基対)を、アガロースゲルを介してプラスミドの残部から分離し、次いでQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって製造元の指示に従ってアガロースゲルから単離した。そのDNA断片を引き続き、アルカリ性ホスファターゼ(ロシュ,マンハイム在)での処理によって5′末端で脱リン酸化させ、次いで同様にそのPCR断片をQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって精製した。該PCR断片と切断されかつ脱リン酸化されたDNA断片とのライゲーションを、製造元の指示に従ってT4−DNA−リガーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して行った。該ライゲーションバッチによる菌株W3110(ATCC27325)のE.コリ細胞の形質転換は、エレクトロポレーションによって当業者に公知のように実施した。形質転換バッチを、LB−テトラサイクリン−寒天プレート(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母エキス、5g/lのNaCl、15g/lの寒天、20mg/lのテトラサイクリン)上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。所望の形質転換体を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Hilden)によるプラスミド単離の後に、制限分析によって同定し、そして欠陥が無いことを配列分析によって確認した。前記のようにして得られたプラスミドpKP700(図4)では、spy−T1249の融合物は、誘導可能なtac−プロモーターの制御下にある。
【0070】
実施例5:未修飾のT1249−ペプチドの培養上清への分泌
培養上清中でのSpy−T1249−融合タンパク質の分泌を、培養上清中での未修飾のT1249−ペプチドの分泌と比較した。このために、両方の微生物株WCM105/pKP700とWCM105/pT1249とを、10mlのLB培地で、100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で、10g/lのグルコースと一緒に30℃で培養した。E.コリ菌株WCM105は、EP0338410号B1に従って製造できる。
【0071】
OD600が0.5になったら、T1249もしくは融合タンパク質の産生を、イソプロピルチオガラクトシド(0.5mM)の添加によって誘導した。培養上清において、24時間後、48時間後、そして72時間後に、形成されかつ分泌されたT1249もしくは融合タンパク質の量を、該タンパク質もしくはペプチドをSDSゲルにおいて分離し、クーマシー染色による検出によって調査した。その結果を、図6に表す。明らかに確認できることは、spy−T1249−融合タンパク質が培養上清中に集積されることである(ゲル中の楕円形の印を参照)。Spy−ペプチドは、培養上清中には集積されない(ゲル中の点線の楕円形の印を参照)。
【0072】
実施例6:未修飾のT1249−ペプチドの産生
未修飾のT1249−ペプチドの産生を、微生物株WCM105/pT1249とWCM105/pKP700とにおいて調査した。そのために、それらの菌株を、10mlのLB培地で、100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で、10g/lのグルコースと一緒に30℃で培養した。OD600が0.5になったら、未修飾のT1249−ペプチドの産生を、イソプロピルチオガラクトシド(0.5mM)の添加によって誘導した。
【0073】
培養上清において、24時間後、48時間後、そして72時間後に、形成された未修飾のT1249−ペプチドの量を、AQUA法(Gerber他著、2003年、PNAS 100,6940−6945;Hochleitner他著、2005年、J.Biol.Chem.280,2536−2542)によって検出した。
【0074】
未修飾のT1249−ペプチドの配列からの参照ペプチドであって、このペプチドのトリプシン分解産物に相当する3種のペプチド(配列番号22、配列番号23及び配列番号24)を選択した。これらのペプチドを合成し、その絶対量を秤量によって測定した。次いで、それらの参照ペプチドを、アセチル−N−オキシスクシンイミドの重水素化されたもの(D3−アセチル−N−オキシスクシンイミド)で誘導体化した。その発酵上清を、6Mのグアニジウム塩酸で変性させ、還元(DTT)させ、そしてアルキル化(ヨードアセトアミド)し、そしてトリプシンで消化した。その消化物を、アセチル−N−オキシスクシンイミドで誘導体化させた。参照ペプチドの定義された量を添加し、そして次いで該消化物を、HPLCによって分離した。回収されたフラクションを、質量分光分析法によって調査した。参照ペプチドと、消化物に由来するペプチドとのアイソトープ対を観察した。これらのアイソトープ対は、3ダルトンの質量差を有していた。消化物からのペプチドと参照ペプチドとの強度比から、T1249ペプチドの絶対量を測定することができた。
【0075】
菌株WCM105/pKP700を使用した場合には、AQUA法による検出前に第Xa因子による消化を実施して、未修飾のT1249ペプチドをキャリヤータンパク質から分離した。50μlのバッチは、10μlの5×バッファー(250mMのトリス(pH8.0);0.5MのNaCl、5mMのCaCl2)と、15μlの培養上清と、1μlの第Xa因子(5μg/μl;Sigma、Taufkirchen、カタログ番号F9302)と、24μlのH2Oとから成っていた。第Xa因子による消化は、22℃で16時間にわたり実施した。
【0076】
第1表において、未修飾のT1249−ペプチドの定量化された収率を列記する。
【0077】
第1表
【表1】

【0078】
実施例7:spy−インターフェロンα2bの融合物の構築
a)インターフェロンα2b遺伝子の増幅
インターフェロンα2b遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Taq−DNAポリメラーゼ(ロシュ、マンハイム在)を使用して、通常の当業者に公知の作業に従って増幅させた。鋳型として、プラスミドpBaBIFN1(DSM18343から単離できる)を使用した。プライマーとして、オリゴヌクレオチドのIFNa2b−fw(配列番号20)(配列5′−P[1]−ACTATCGAAGGTCGTTGTGACTTACCTCAGACC−3′([1]オリゴヌクレオチドは、5′末端でリン酸化されている))とIFNa2b−rev(配列番号21)(配列5′−ACCTCTTAAGCTATTATTCTTTGGAACGCAAG−3′)とを使用した。
【0079】
PCRで得られる約526塩基対の長さを有するDNA断片を、引き続きQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen、Hilden)のDNA吸着カラムを用いて製造元の指示に従って精製した。
【0080】
b)プラスミドベクターpKP700へのインターフェロンα2b遺伝子のクローニング
該PCR断片において、プライマーIFNa2b−revを介して、制限エンドヌクレアーゼBfrIについての末端切断部位を挿入した。精製されたPCR断片を、制限エンドヌクレアーゼBfrI(ロシュ,マンハイム在)を用いて、製造元によって指示される条件下で切断し、アガロースゲルを介して分離し、次いでQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって製造元の指示に従ってアガロースゲルから単離した。
【0081】
spy遺伝子のクローニングのために、ベクターpKP700を、制限エンドヌクレアーゼScaIとBfrIによって、製造元(ロシュ,マンハイム在)によって示される条件下で切断した。そのプラスミドを引き続き、アルカリ性ホスファターゼ(ロシュ,マンハイム在)での処理によって5′末端で脱リン酸化させ、次いで同様にそのPCR断片をQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen,Hilden)によって精製した。該PCR断片と切断されかつ脱リン酸化されたベクターとのライゲーションを、製造元の指示に従ってT4−DNA−リガーゼ(ロシュ,マンハイム在)を使用して行った。該ライゲーションバッチによる菌株W3110(ATCC27325)のE.コリ細胞の形質転換は、エレクトロポレーションによって当業者に公知のように実施した。形質転換バッチを、LB−テトラサイクリン−寒天プレート(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母エキス、5g/lのNaCl、15g/lの寒天、20mg/lのテトラサイクリン)上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。所望の形質転換体を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Hilden)によるプラスミド単離の後に、制限分析によって同定し、そして欠陥が無いことを配列分析によって確認した。前記のようにして得られたプラスミドpEX−spy−IFNa2b(図5)では、インターフェロンα2b遺伝子は、誘導可能なtac−プロモーターの制御下にある。
【0082】
実施例8:インターフェロンα2bの産生
得られた菌株におけるインターフェロンα2bの産生を調査した。そのために、それらの菌株を、10mlのLB培地で、100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で、10g/lのグルコースと一緒に30℃で培養した。OD600が0.5になったら、インターフェロンα2bの産生を、イソプロピルチオガラクトシド(0.5mM)の添加によって誘導した。培養上清において、24時間後、48時間後、そして72時間後に、形成されかつ分泌されたインターフェロンα2bの量を、SDSゲル中でのタンパク質の分離と、抗インターフェロン特異抗体でのイムノブロットにおける検出とによって検出した。菌株WCM105/pEX−spy−IFNa2bを使用した場合に、SDSゲルの前に、第Xa因子による消化を実施して、インターフェロンα2bをキャリヤータンパク質から分離した。50μlのバッチは、10μlの5×バッファー(250mMのトリス(pH8.0);0.5MのNaCl、5mMのCaCl2)と、15μlの培養上清と、1μlの第Xa因子(5μg/μl;Sigma、Taufkirchen、カタログ番号F9302)と、24μlのH2Oとから成っていた。第Xa因子による消化は、22℃で16時間にわたり実施した。
【0083】
5μl(菌株WCM105/pBaBIFN1)もしくは16.5μl(菌株WCM105/pEX−spy−IFNa2b)の上清ごとに、サンプルバッファー(2×トリスSDSサンプルバッファー(Invitrogen,Karlsruhe):0.125Mのトリス塩酸(pH6.8);4%(w/v)のSDS;20%(v/v)のグリセリン;0.005%(v/v)のブロモフェノールブルー;5%(v/v)のβ−メルカプトエタノール)を混合した。更に、定義された量のインターフェロンα2bを、スタンダードとして一緒に施与した。タンパク質の変性は、5分間にわたり100℃に加熱することによって実施した。氷上で2分間冷却し、引き続き遠心分離した。それらのタンパク質を、電気泳動によって、12%のNuPAGE(登録商標)Bis−Tris−Gel(Invitrogen,Karlsruhe)中で、1×MES含有ランニングバッファー(Invitrogen,Karlsruhe)を用いて分離した(電気泳動パラメータ:200Vで40分間)。イムノブロットによる検出と定量化を、以下の仕様に従って実施した:
a)湿式ブロッティング法での転写
モジュール:Amersham:Hoefer TE 22 Mini Tank Transfer Unit、コード番号:80−6204−26。
【0084】
メンブレン:ニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell;BA85;硝酸セルロース(E);0.45(孔サイズ))
Whatmanフィルタとニトロセルロースメンブレンを、適切な大きさに切断し、そして発泡物品(スポンジ)で転写バッファー(Invitrogen,Karlsruhe)に気泡なく染み込ませた。
【0085】
積層の構成:黒い格子(schwarzes Gitter)、カソードとの接続、各3mm厚を有する2つのスポンジ、Whatmanペーパー、SDSポリアクリルアミドゲル、ニトロセルロースメンブレン、Whatmanペーパー、6mm厚を有する1つのスポンジ、白い格子(weisses Gitter)、アノードとの接続
転写条件:I=200mAの一定の電流強度、U=無制限、運転時間=60分
b)プレハイブリダイゼーション
25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー中で該メンブレンをインキュベートする;
20℃で30分間振り動かす
c)一次抗体のハイブリダイゼーション
0.15μg/ml(→3.75μg)の抗ヒトIFNα抗体(Biozol(Eching)を経由したPepro Tech EC;カタログ番号500−P32A)と一緒に25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー中で該メンブレンをインキュベートする;
20℃で90分間又は一晩振り動かす。
【0086】
d)洗浄
1×PBSで20℃において10秒間振り動かす;バッファーを捨てる;
1×PBSで20℃で2回15分振り動かす;バッファーを捨てる。
【0087】
e)二次抗体のハイブリダイゼーション
25ml(1:1000希釈)のヤギ抗ウサギIgGセイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(HRP)(Biozol(Eching)を経由したSouthern Biotech;カタログ番号4050−05)を有する25mlのプレハイブリダイゼーションバッファー中で該メンブレンをインキュベート;20℃で60分間振り動かす。
【0088】
f)洗浄
1×PBSで20℃において10秒間振り動かす;バッファーを捨てる;
1×PBSで20℃で2回15分振り動かす;バッファーを捨てる。
【0089】
g)化学発光を介した検出
Lumi−Lightウェスタンブロッティング基質(ロシュ,マンハイム在)を準備:Lumi−Lightルミノール/エンハンサー溶液とLumi−Light安定ペルオキシド溶液とを1:1の比率で混合:ニトロセルロースメンブレン当たり3ml。
【0090】
ブロットを20℃でLumi−Lightウェスタンブロッティング基質と一緒にインキュベート、過剰の水気を切り、メンブレンをラップフィルムで覆って、直ちにX線フィルム(Kodak、X−OMAT)を載せ、2分間暴露し、現像し、そして固定する。シグナルが弱い場合に、暴露をより長時間にわたり繰り返す。
【0091】
h)バッファー
プリハイブリダイゼーションバッファー:1×PBS中の5%(w/v)の脱脂粉乳;
10×PBS:100mMのNaH2PO4;1.5MのNaCl、NaOHでpH7.5、0.5%のTriton100;
1×PBS:10×PBSを、完全脱塩水で1:10希釈したもの
i)定量化
定量的評価は、Biorad社製のGS−800 Calibrated Densitometerでスキャンすることによって、Quantity One 1−D分析ソフト(Biorad,Muenchen)を用いて、プロットされたスタンダードと比較することによって実施した。
【0092】
第2表に、定量化されたインターフェロンα2bの収率を列記する。
【0093】
第2表
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、以下のA)(シグナルペプチド(SP)とキャリヤータンパク質とから構成され、該タンパク質に化学的もしくは酵素的に開裂可能な配列(S)を介して組み換え標的タンパク質が結合されている前駆体−融合タンパク質)、B)(シグナルペプチド(SP)と組み換え標的タンパク質とから構成され、該タンパク質に化学的もしくは酵素的に開裂可能な配列(S)を介してキャリヤータンパク質が結合されている前駆体−融合タンパク質)、C)(キャリヤータンパク質から構成され、該タンパク質に化学的もしくは酵素的に開裂可能な配列(S)を介して組み換え標的タンパク質が結合されている融合タンパク質)、D)(組み換え標的タンパク質から構成され、該タンパク質に化学的もしくは酵素的に開裂可能な配列(S)を介してキャリヤータンパク質が結合されている融合タンパク質)の概略図を示している。
【図2】図2は、プラスミドpKP689を示している。
【図3】図3は、プラスミドpT1249を示している。
【図4】図4は、プラスミドpKP700を示している。
【図5】図5は、プラスミドpEX−spy−IFNa2bを示している。
【図6】図6は、クーマシー染色によって着色された実施例5からのSDSゲルを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シグナルペプチドをコードする核酸配列と、それと機能的に結合されているキャリヤータンパク質をコードする遺伝子と、それと開裂可能な配列Sをコードする遺伝子を介して結合されている標的タンパク質をコードする遺伝子とからなる、E.コリにおける標的タンパク質の廉価な製造を可能にするDNA構築物であって、キャリヤータンパク質をコードする遺伝子がE.コリ由来のspy遺伝子であることを特徴とするDNA構築物。
【請求項2】
請求項1記載のDNA構築物であって、spy遺伝子が、配列番号1を有するか、あるいは縮重された遺伝子コードによって引き起こされた類似配列であってSpyタンパク質をコードする配列を有することを特徴とするDNA構築物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のDNA構築物であって、シグナルペプチドをコードする核酸配列が、E.コリ遺伝子のシグナルペプチドをコードする核酸配列であるompA、phoA、ompT、lpp、phoE、ompF、lamB、ompC、malE、spyの群から選択されることを特徴とするDNA構築物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載のDNA構築物であって、標的タンパク質のための核酸配列が、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキン受容体アンタゴニスト、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、白血病抑制因子、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子、成長ホルモン、インスリン様成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、組み換え成長因子、肝細胞成長因子、骨形成因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子、血管新生阻害剤、組織プラスミノゲンアクチベーター、血液凝固因子、トリプシンインヒビター、エラスターゼインヒビター、イムノグロブリン、単鎖抗体、補体成分、低酸素症に誘発されるストレスタンパク質、プロテインキナーゼ、癌原遺伝子産物、転写因子、ウイルス構成タンパク質、プロインスリン、プロウロキナーゼ、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ニューロトロフィン、プロテインC、グルコセレブロシダーゼ、スーパーオキシド−ジスムターゼ、レニン、リゾチーム、P450、プロキモシン、リポコルチン、レプチン、血清アルブミン、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ及びCNTF(毛様体神経栄養因子)の群から選択されることを特徴とするDNA構築物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のDNA構築物であって、開裂可能な配列Sが、翻訳された融合タンパク質において、標的タンパク質とキャリヤータンパク質との化学的もしくは酵素的な分解を可能にすることを特徴とするDNA構築物。
【請求項6】
請求項5記載のDNA構築物であって、開裂可能な配列Sが、融合タンパク質の開裂をプロテアーゼによって酵素的に可能にすることを特徴とするDNA構築物。
【請求項7】
請求項6記載のDNA構築物であって、開裂可能な配列Sが、標的タンパク質の開裂を真核性のプロテアーゼである第Xa因子によって可能にすることを特徴とするDNA構築物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のDNA構築物を含むプラスミド。
【請求項9】
融合タンパク質を分泌する微生物株の製造方法において、腸内細菌科からの微生物株に、請求項1から7までのいずれか1項記載のDNA構築物又は請求項8記載のプラスミドを導入することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項記載のDNA構築物又は請求項8記載のプラスミドを含む微生物株。
【請求項11】
Spyタンパク質と、標的タンパク質と、開裂可能な配列(S)とからなる融合タンパク質。
【請求項12】
融合タンパク質を微生物株によって発酵的に製造する方法において、請求項10記載の微生物株を発酵培地中で培養し、その際、請求項11記載の融合タンパク質が形成され、その発酵培地を、該微生物株の細胞による発酵後に分離することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、発酵培地の分離後に、標的タンパク質を細胞のペリプラズムから精製し、その際、まずキャリヤータンパク質を化学的もしくは酵素的に標的タンパク質から分離し、そして引き続き標的タンパク質を精製することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、発酵培地の分離後に、標的タンパク質を発酵培地から精製し、その際、まずキャリヤータンパク質を化学的もしくは酵素的に標的タンパク質から分離し、そして引き続き標的タンパク質を精製することを特徴とする方法。
【請求項15】
E.コリ由来のSpyタンパク質を、E.コリにおける標的タンパク質の発現に際してのキャリヤータンパク質として用いる使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−104462(P2008−104462A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278064(P2007−278064)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】