EGFRおよびKRAS変異
本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)およびKRASにおける変異ならびに上記変異を検出するための方法ならびに化学療法および/またはキナーゼ阻害剤治療等の抗癌療法に対して感受性である腫瘍を同定するための予後予測方法に関する。この方法は、腫瘍試料における変異EGFR遺伝子もしくは変異EGFRタンパク質および/または変異KRAS遺伝子もしくは変異KRASタンパク質の存在を決定することを含む。この変異は、EGFRのエキソン18〜21に位置し、それによって、変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在は、腫瘍が治療に対して感受性であることを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌診断法および癌療法ならびに、特に、特徴および/または予後兆候となる変異の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
上皮成長因子受容体(EGFR)は、成長因子受容体の1型チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、これら成長因子受容体は、細胞の成長、分化、および生存に重要な役割を果たしている。これらの受容体の活性化は、通常、特異的なリガンド結合を介して起こり、受容体ファミリーメンバー間でのヘテロ二量体化またはホモ二量体化をもたらし、続いて、チロシンキナーゼドメインが自己リン酸化する。この活性化は、細胞の増殖(ras/raf/MAPキナーゼ経路)および生存(PI3キナーゼ/Akt経路)の両方に関係がある細胞内シグナル伝達経路のカスケードを引き起こす。EGFRおよびHER2を含むこのファミリーのメンバーは細胞形質転換に直接関連した。
【0003】
多くのヒト悪性腫瘍は、EGFRの異常もしくは過剰発現および/またはその特異的なリガンド、たとえば形質転換成長因子αの過剰発現に関連する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。EGFR過剰発現は、NSCLCを含む多くのヒト癌における有害な予後と関連した。いくつかの事例では、腫瘍EGFRの過剰発現は、化学療法抵抗性および予後不良の両方と関連した。(非特許文献4;非特許文献5)。これらの観察は、EGFR受容体の活性化および続く下流のシグナル伝達を有効に阻害する作用物質がNSCLCを含む様々なヒト癌における臨床活性を有するかもしれないということ示唆する。
【0004】
キナゾリン誘導体であるTarceva(商標)(エルロチニブとしても知られている;OSI−774)は、経口的に活性な、効力のある、選択的なEGFRチロシンキナーゼの阻害剤である。エルロチニブは、in vitro酵素アッセイにおいて2nM(0.786mg/mL)のIC50でヒトEGFRチロシンキナーゼを阻害する。この阻害は、EGFRチロシンキナーゼに対して選択的であり、G1での細胞周期停止をもたらし、可逆的である。マウスにおけるエルロチニブの経口投与により、ヒト異種移植片におけるEGFR自己リン酸化が>70%低下することが実証され、ヌードマウスにおけるHN5異種移植片およびA431異種移植片の著しい成長阻害が実証された。in vivoアッセイ系における単一作用物質の活性の他に、可能性として考えられる相互作用を決定するために多くの化学療法の作用物質と組み合わせてエルロチニブを評価した。エルロチニブならびにパクリタキセル、シスプラチン、ゲムシタビン、およびドキソルビシンの間に付加的な相互作用があった。
【0005】
肺癌は、米国の男性および女性の両者にとっての癌関連死の主な原因である。2000年には、164,000例の新たな症例が診断され、157,000人の患者がこの疾患で死ぬであろうと推定された(非特許文献6)。これらの患者の約75%が非小細胞の組織像を有し、その大多数が、手術不能な第IIIB期または第IV期の疾患を示していたであろう。より限局性の疾患を提示時に有するそれらの患者(第I期〜IIIA期)については、アジュバント化学療法もしくはネオアジュバント化学療法および/またはアジュバント放射線療法もしくはネオアジュバント放射線療法を伴うまたは伴わない標準的な手術療法後の再発が一般的である。これらの発見は、〜12%の非小細胞肺癌(NSCLC)における最大5年の生存をもたらし、この疾患における未だ対処されていない医療の必要性を強調するのに役立っている。
【0006】
白金化合物であるシスプラチンは、局所進行NSCLCまたは転移NSCLCの処置における臨床的有用性を示した最初の化学療法作用物質であった。無作為臨床試験は、最善の支持療法(Rappら1988年)と比較して、反応率、生存の質、および生存が改善されたことを実証した。しかしながら、この改善の大きさは中程度であり、数週間に限られた。その後、多くのより新しい化学療法作用物質を、単一の作用物質としておよび第1選択の状況で白金塩と組み合わせて評価した。これらの研究からの結論として、その最新の「二重」化学療法は、15%〜20%の反応率、3〜4か月の疾患進行の期間の中央値、および7〜8か月の生存の中央値を達成しているように思われる。シスプラチンで得られた結果に関した併用療法での効力における中程度の改善により、これらの療法が、進行NSCLCおよび良好な全身状態を有する患者に対する医療の標準として確立された(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。
【非特許文献1】Gullick,Br Med Bull 1991年,47:87〜98頁
【非特許文献2】ModijtahediおよびDean,Int J Oncol 1994年,4:277〜96頁
【非特許文献3】Salomonら,Crit Rev Oncol Hematol 1995年;19:183〜232頁
【非特許文献4】Leiら,Anticancer Res 1999年;19:221〜8頁
【非特許文献5】Vealeら,Br J Cancer 1993年;68:162〜5頁
【非特許文献6】Greenleeら,CA Cancer J Clin 2001年,51:15〜36頁
【非特許文献7】Non−Small Cell Lung Cancer Cooperative Group, Br Med J 1995年,311:899〜909頁
【非特許文献8】American Society of Clinical Oncology, J Clin Oncol 1997年,15:2996〜3018頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の態様によれば、治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、上述の腫瘍の試料における変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在を決定することを含み、上述の変異は、EGFRのエキソン18〜21に位置し、それによって、変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在は、腫瘍が治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。
【0008】
本発明の他の態様では、哺乳動物における腫瘍を治療するための方法であって、上述の腫瘍におけるEGFR変異の存在を同定することおよび抗癌剤で上述の哺乳動物を治療することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様では、試料におけるEGFR変異を同定するための方法であって、上述の試料からの核酸を、変異EGFRタンパク質をコードする核酸または変異を含むその断片に特異的にハイブリダイズすることができるプローブと接触させることおよびハイブリダイゼーションを検出することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様では、変異EGFRタンパク質をコードする核酸または変異を含むその断片に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブを提供する。
【0011】
本発明の他の態様では、試料における変異EGFR遺伝子を検出するための方法であって、上述のEGFR遺伝子のキナーゼドメインに対応する上述の試料の核酸または変異を含むと思われるその断片から増幅することおよび増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型EGFR遺伝子またはその断片の電気泳動移動度と比較することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明の他の態様では、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、(i)上述の腫瘍の試料における野性型KRASタンパク質または野性型KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、野性型KRASタンパク質または野性型KRAS遺伝子の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す、または(ii)上述の腫瘍の試料における変異KRASタンパク質または変異KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、変異KRASタンパク質または変異KRAS遺伝子の非存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示すことを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
腫瘍形成に関連する変異現象が上皮成長因子受容体(EGFR)で起こることは本発明の発見である。異常なEGFR活性が様々な癌と関連していることが以前より知られていたが、EGFRキナーゼドメイン領域(KDR)における変異が存在し、いくつかの癌に関連する異常なシグナル伝達活性を引き起こすことは知られていなかった。驚いたことに、EGFR KDR変異を有する腫瘍を患う患者は、野性型EGFRを有する患者よりも良好な予後を有している。EGFR遺伝子のKDR変異は、挿入および欠失等の再配列ならびに点変異を含み得る。
【0014】
トリビュート(Tribute)と称される無作為二重盲検第III相臨床試験に参加した約250人の患者からの試料を、EGFRのエキソン18〜21で起きている変異について配列決定した。トリビュートは、米国における約150箇所の施設の、組織学的に確認したNSCLCを有する、前に化学療法を受けたことがない1,079人の患者について、エルロチニブ+化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル)を化学療法のみと比較して調査した。患者は、パクリタキセル(200mg/m2、3時間、i.v.注入)、次に、エルロチニブありまたはなしで(経口で100mg/日、耐性のある患者については150mg/日まで段階的に上昇)、カルボプラチン(AUC=6mg/ml×分、15〜30分間注入、カルバートの式を使用)を受けた。トリビュート試験から収集した約250人の患者からの腫瘍試料、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロック、または未染色スライドは、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション後にDNA抽出したところ腫瘍細胞で豊富であった。エキソン18〜21をネステッドPCRにより増幅し、蛍光ダイターミネーター化学を使用して各PCR産物から双方向の配列を得た。配列決定から発見した変異を表1に示す。
【0015】
【表1−1】
【0016】
【表1−2】
変異に対するヌクレオチドの番号付けは図2a〜2dに示す参照配列に基づく。
【0017】
EGFR変異および野性型EGFRを有する腫瘍を有する患者の臨床結果を反応(完全+部分)、利益(反応+安定)、および進行に従って分析した。「完全反応」(CR)を、すべての標的病変の消失と定義し、「部分反応」(PR)を、ベースライン長径和を基準として、標的病変の最長径の和の少なくとも30%の減少と定義し、「進行」(PD)を、治療の開始または1つまたは複数の新しい病変の出現から記録された最小の最長径の和を基準として、標的病変の最長径の和の少なくとも20%の増加と定義し、「安定」(SD)を、治療の開始からの最小の最長径の和を基準として、部分反応とみなすには縮小が十分ではなく、進行とみなすには増加が十分ではないと定義する固形癌反応評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)という基準を使用して病変を評価した。
【0018】
分析の結果を表2にまとめる。
【0019】
【表2】
臨床結果の分析により、EGFRのエキソン18〜21における変異を発現する腫瘍を有する患者は、野性型EGFRを発現する腫瘍を有する患者よりも良好な予後を有していることが明らかにされた。変異体EGFR患者は、化学療法または化学療法およびエルロチニブで治療すると、より大きな反応率、利益率、および生存を示した。これらの結果は、エキソン18〜21のいずれかまたはすべてにおけるEGFR変異を腫瘍が有している患者が、腫瘍が上記変異を有していない患者よりも、より良好な予後を有するというような結果を予測するのに有用である。
【0020】
したがって、本発明は、腫瘍を有する患者の予後を決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において、エキソン18〜21(またはエキソン18〜21に対応するアミノ酸配列)における1つまたは複数のEGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の1つまたは複数のEGFR変異の存在は、上述の1つまたは複数のEGFR変異の非存在と比較して、より良好な予後を示す方法を提供する。「予後」により、反応および/または利益および/または生存が意味される。「EGFR変異」は、一方の対立遺伝子(ヘテロ接合)または両方の対立遺伝子(ホモ接合)に見つけられる、野性型EGFRタンパク質または野性型EGFR核酸とそれぞれ異なるアミノ酸配列または核酸配列を意味し、体細胞系列または生殖細胞系列であってもよい。特定の実施形態では、上述の変異は、EGFRのキナーゼドメイン領域(KDR)中に見つけられる。他の特定の実施形態では、変異は、表1に示すように、アミノ酸の置換、欠失、または挿入である。一実施形態では、アミノ酸変異は1つまたは複数の次のものである:
【0021】
【数1】
他の特定の実施形態では、変異は、表1に示すように、核酸の点変異、欠失、または挿入である。一実施形態では、核酸変異は1つまたは複数の次のものである。
【0022】
【数2】
エルロチニブでの治療に対する抵抗性を示したH1975腫瘍細胞株からのEGFRエキソン18〜21を配列決定し、L858R変異と組み合わさった変異T790Mを含むことがわかった。したがって、本発明は、腫瘍を有する患者の予後を決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において、T790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述のT790M EGFR変異の存在は、上述のT790M EGFR変異の非存在と比較して、より不良な予後を示す方法をさらに提供する。さらに、化学療法と組み合わせても組み合わせなくてもエルロチニブまたはゲフィチニブ等のEGFR阻害剤の療法に対して反応性が低い腫瘍を有する患者を同定するための方法であって、患者の腫瘍におけるT790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、患者が、上述のT790M EGFR変異を有していない腫瘍を有する患者と比較して、上述の療法に対する反応が低いことを示す方法を提供する。さらに、化学療法と組み合わせても組み合わせなくてもキナーゼドメイン結合阻害剤(たとえばエルロチニブまたはゲフィチニブ)等のEGFR阻害剤での治療に対する抵抗性のある腫瘍を同定するための方法であって、腫瘍の試料におけるT790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、腫瘍が、上述の治療に対して抵抗性があることを示す方法を提供する。変異の決定は、タンパク質レベルまたは核酸レベル(ゲノムDNAまたはmRNA)であり、本明細書中に記載される技術等の技術を使用して達成されることが理解される。特定の実施形態では、上述のEGFR阻害剤はEGFRキナーゼドメインにおいてATPと競合する。特定の実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0023】
他の態様では、T790M変異体のEGFRタンパク質もしくはEGFR遺伝子を含む腫瘍を有する患者を治療するための(またはT790M変異体のEGFRタンパク質もしくはEGFR遺伝子を含む腫瘍を治療するための)方法であって、上述のT790M変異体のEGFRに結合するおよび/またはそのシグナル伝達を阻害する第1の化合物を、野性型EGFRまたは活性化変異を含むEGFRに結合するおよび/またはそのシグナル伝達を阻害する第2の化合物と組み合わせて、上述の患者に同時投与すること(または上述の腫瘍と接触させること)を含む方法を提供する。特定の実施形態では、上述の活性化変異は、表1(T790M以外)に記載された1つまたは複数の活性化変異である。特定の実施形態では、上述の第1の化合物および第2の化合物は連続してまたは同時に投与される。特定の実施形態では、上述の第2の化合物はエルロチニブである。
【0024】
本発明の他の態様では、T790M変異を含む変異体EGFRタンパク質のシグナル伝達を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、リン酸化基質およびATPの存在下で上述の変異体EGFRを試験化合物と接触させることおよび上述の基質のリン酸化の量の変化を検出することを含み、それによって、対照と比較したまたは試験化合物非存在下での基質のリン酸化と比較した上述の基質のリン酸化の低下は、上述の試験化合物が、変異体EGFRのシグナル伝達の阻害剤であることを示す方法を提供する。一実施形態では、上述の方法は、in vitro、EGFまたはTGF−アルファ等の上述の変異体EGFRに対するリガンドの存在下で行われる。
【0025】
特定の実施形態では、試験化合物の阻害活性は、in vitroで、外来基質(たとえば、Lys3−ガストリンまたはポリGluTyr(4:1)ランダム共重合体)(I. Posnerら,J. Biol. Chem.267(29),20638〜47頁(1992))の上皮成長因子受容体キナーゼによるチロシンに対するリン酸化の試験化合物による阻害の対照に対する量により決定することができる。精製した可溶性ヒトT790M変異体EGFR(96ng)を、微量遠心チューブ中で、リン酸化バッファー+バナジン酸(PBV:50mM HEPES,pH7.4;125mM NaCl;24mM MgCl2;100μM オルトバナジン酸ナトリウム)中のEGF(2μg/ml)と共に全容量10μlで20〜30分間室温でプレインキュベートする。試験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させ、PBV中に希釈し、10μlを、変異体EGFR/EGF混合物と混合し、10〜30分間30℃でインキュベートする。リン酸化反応を、20μl 33P−ATP/基質混合物(120μM Lys3−ガストリン(アミノ酸に対する単一文字コードでの配列、KKKGPWLEEEEEAYGWLDF−配列番号38)、50mM Hepes pH7.4、40μM ATP、2μCi γ−[33P]−ATP)の変異体EGFR/EGF混合物への添加により開始し、20分間室温でインキュベートする。反応を、10μl停止液(0.5M EDTA、pH8;2mM ATP)および6μl 2N HClの添加により停止する。チューブを、14,000RPM、4℃で10分間遠心分離する。各チューブからの上清35μlを2.5cmの円のワットマン(Whatman)P81紙上にピペットで移し、1回の洗浄当たり1リットルの5%酢酸中で4回大量洗浄し、次いで風乾する。これは、洗浄で遊離ATPを失った紙への基質の結合をもたらす。取り込まれた[33P]を、液体シンチレーションカウンターで測定する。基質(たとえばlys3−ガストリン)非存在下での取り込みはバックグラウンドとしてすべての値から差し引き、試験化合物が存在しない対照に対して、阻害百分率を算出する。様々な用量の試験化合物で実行した上記アッセイにより、T790M変異体のEGFRキナーゼ活性のin vitro阻害についてのおおよそのIC50値の決定が可能になる。
【0026】
本発明の他の態様では、治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、上述の腫瘍の試料における変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在を決定することを含み、上述の変異は、EGFRのエキソン18〜21に位置し、それによって、変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在は、腫瘍が抗癌剤での治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。特定の実施形態では、抗癌剤は、細胞障害性または細胞増殖抑止剤であってもよい化学療法剤である。腫瘍は、神経芽細胞腫、直腸癌、結腸癌、家族性大腸腺腫症の癌、および遺伝性非ポリポーシス大腸癌等の腸癌、食道癌、唇癌、喉頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、骨髄甲状腺癌、乳頭甲状腺癌、腎癌、腎実質癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛膜癌、膵癌、前立腺癌、精巣癌、乳癌、泌尿器癌、黒色腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽細胞腫、および末梢性神経外胚葉腫瘍等の脳腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、肝細胞癌、胆嚢癌、気管支癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、ユーイング肉腫、ならびに形質細胞腫を含む。特定の腫瘍は、脳、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、乳房、肺、外陰、甲状腺、結腸直腸、食道、肝癌、肉腫、神経膠芽腫、頭頚部、白血病、およびリンパ性悪性腫瘍といった腫瘍を含む。
【0027】
特定の化学療法剤は、(i)シタラビン、フルダラビン、5−フルオロ−2’−デオキシウイリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、またはメトトレキサート等の代謝拮抗剤、(ii)ブレオマイシン等のDNA断片化剤、(iii)クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、またはナイトロジェンマスタード等のDNA架橋剤、(iv)アドリアマイシン(ドキソルビシン)またはミトキサントロン等の挿入剤、(v)L−アスパラギナーゼ、シクロヘキシミド、ピューロマイシン、またはジフテリア毒素等のタンパク質合成阻害剤、(Vi)カンプトテシンまたはトポテカン等のトポイソメラーゼI毒、(vii)エトポシド(VP−16)またはテニポシド等のトポイソメラーゼII毒;(viii)コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、またはビンクリスチン等の微小管制御剤、(ix)フラボピリドール、スタウロスポリン、STI571(CPG 57148B)、またはUCN−01(7−ヒドロキシスタウロスポリン)等のキナーゼ阻害剤、(x)チオプラチン(thioplatin)、PS−341、フェニル酪酸、ET−18−OCH3、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L−739749、L−744832)等の様々な治験薬ならびにケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸、およびそれらの誘導体等のポリフェノール、(xi)グルココルチコイドまたはフェンレチニド等のホルモン、ならびに(xii)タモキシフェン、フィナステリド、またはLHRH拮抗剤等のホルモン拮抗剤を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、化学療法化合物は、1つまたは複数のゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、ダウナルビシン(daunarubicin)、パクリテキセル、タキソテール、およびマイトマイシンCである。特定の実施形態では、化学療法化合物は、1つまたは複数のゲムシタビン、シスプラチン、およびパクリタキセルである。他の実施形態では、治療薬はEGFRの阻害剤である。一実施形態では、EGFR阻害剤は、Erbitutux(商標)(セツキシマブ、イムクローン システムズ社(Imclone Systems Inc.))およびABX−EGF(パニツムマブ、アブジェニックス社(Abgenix,Inc.))等の抗体である。他の実施形態では、EGFR阻害剤は、Tarceva(商標)(エルロチニブ、OSIファーマシューティカルズ社(OSI Pharmaceuticals))、Iressa(商標)(ゲフィチニブ、アストラゼネカ社(Astra−Zeneca))、Dvirら,J Cell Biol.,113:857〜865頁(1991年)により記載されるチロホスチン、米国特許第5679683号に開示される三環系ピリミジン化合物、およびPanekら,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 283,1433〜1444頁(1997年)に開示される化合物6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチルアイニノエトキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド(2,3−d)ピリミジン−7−1)(6−(2,6−dichlorophenyl)−2−(4−(2−diethylaininoethoxy)phenylamino)−8−methyl−8H−pyrido(2,3−d)pyrimidin−7−one)(PD166285として知られている)等のATPと競合する低分子である。
【0028】
本発明の他の態様では、試料におけるEGFR変異を同定するための方法であって、上述の試料からの核酸を、変異EGFRタンパク質または変異を含むその断片をコードする核酸に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させることおよび上述のハイブリダイゼーションを検出することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、上述のプローブを、放射性同位体(3H、32P、33P等)、蛍光剤(ローダミン蛍光等)、または色素剤等で検出可能に標識する。特定の実施形態では、プローブはアンチセンスオリゴマー、たとえばPNA、モルホリノホスホロアミダート、LNA、または2’−アルコキシアルコキシである。プローブは、約8ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドまたは約10ヌクレオチド〜約75ヌクレオチドまたは約15ヌクレオチド〜約50ヌクレオチドまたは約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチドであってもよい。他の態様では、本発明の上述のプローブは、試料におけるEGFR変異を同定するためのキットであって、上述のキットは、EGFR遺伝子における変異の部位に特異的にハイブリダイズするまたは特異的にハイブリダイズして近接するオリゴヌクレオチドを含むキットにおいて提供される。キットは、キットを使用したハイブリダイゼーション試験の結果に基づき、EGFR阻害剤で、EGFR変異を含む腫瘍を有する患者を治療するための使用説明書をさらに含む。
【0029】
本発明の他の態様では、試料における変異EGFR遺伝子を検出するための方法であって、上述のEGFR遺伝子のキナーゼドメインに対応する上述の試料の核酸またはエキソン18〜21または変異を含むと思われるそれらの断片から増幅することおよび増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型EGFR遺伝子またはその断片の電気泳動移動度と比較することを含む方法を提供する。移動度の差異は、増幅した核酸配列における変異の存在を示す。電気泳動移動度はポリアクリルアミドゲル上で決定してもよい。
【0030】
あるいは、増幅したEGFR遺伝子または核酸断片は、変異の検出のために、酵素による変異検出(EMD)を使用して分析してもよい(Del Titoら,Clinical Chemistry 44:731〜739頁,1998年)。EMDは、点変異、挿入、および欠失に起因する塩基対のミスマッチにより引き起こされる構造的な変形を検出し、切断するまで二本鎖DNAに沿ってスキャンするバクテリオファージ リゾルベース T4 エンドヌクレアーゼVIIを使用する。リゾルベース切断により形成された2つの短い断片のたとえばゲル電気泳動による検出は変異の存在を示す。EMD法の有用性は、PCR反応から直接アッセイされた点変異、欠失、および挿入を同定するための単一プロトコールであり、試料精製の必要性をなくし、ハイブリダイゼーション時間を短縮し、シグナル対ノイズ比を上昇させる。正常なDNAを20倍超まで含む混合試料およびサイズが4kbまでの断片をアッセイすることができる。しかしながら、EMDスキャニングは、変異陽性試料において起こる特定の塩基の変化を同定せず、必要であれば変異の識別に対するさらなる配列決定手順を必要とする。CEL I酵素は、米国特許第5869245号で実証されるように、リゾルベース T4 エンドヌクレアーゼVIIと同様に使用することができる。
【0031】
本発明のEGFR変異を検出するための他の簡易なキットは、血色素症を引き起こすHFE遺伝子、TFR2遺伝子、およびFPN1遺伝子における多重変異の検出のための血色素症StripAssay(商標)(ウィーンラボ社製(Viennalab)http://www.bamburghmarrsh.com/pdf/4220.pdf)に類似する逆ハイブリダイゼーション試験ストリップである。上記アッセイは、PCRによる増幅後の配列特異的ハイブリダイゼーションに基づく。単一変異アッセイについては、マイクロプレートベースの検出システムを用いてもよいのに対して、多重変異アッセイについては、テストストリップを「マクロアレイ」として使用してもよい。キットは、試料の準備、増幅、および変異検出のための使用する準備ができている試薬を含んでいてもよい。多重増幅プロトコールは利便性を提供し、非常にわずかな容量の試料の試験を可能にする。簡単なStripAssay方式を使用して、20個以上の変異に対する試験を5時間未満で高価な装置なしで完了することが可能である。DNAを試料から単離し、EGFR遺伝子(またはエキソン18〜21またはKDRまたはそれらのセグメント)を、in vitroで、好ましくは単一(「多重」)増幅反応で増幅し(たとえばPCR)、ビオチン標識する。PCR産物は、プローブが平行なラインまたはバンドとして固定されたテストストリップ等の固体担体上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブ(野性型および変異体特異的)に選択的にハイブリダイズする。結合したビオチン化単位複製配列を、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよび発色基質を使用して検出する。上記アッセイは、表1の変異のすべてまたは任意のサブセットを検出することができる。特定の変異体プローブバンドに関して、3つのシグナルパターンのうちの1つが可能である:(i)正常EGFRを示す野性型プローブに対してのみのバンド(ii)ヘテロ接合遺伝子型を示す野性型および変異体プローブの両方に対するバンド(iii)ホモ接合変異体EGFR遺伝子型を示す変異体プローブに対してのみのバンド。したがって、本発明のEGFR変異を検出するための方法であって、核酸を試料から単離すること、EGFR遺伝子またはその断片(たとえば、KDRまたはエキソン18〜21以下のもの)を、増幅した核酸がリガンドを含むように増幅すること、増幅したEGFR遺伝子または断片を、リガンドに対する検出可能な結合パートナーを含むプローブと接触させること、プローブは、EGFR突然変異体に特異的にハイブリダイズすることができ、次いで、上述の増幅したEGFR遺伝子または断片への上述のプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態では、リガンドはビオチンであり、結合パートナーはアビジンまたはストレプトアビジンを含む。特定の実施形態では、結合パートナーは、発色基質で検出可能なストレプトアビジン−アルカリである。特定の実施形態では、プローブは、たとえばテストストリップ上に固定されており、異なる変異に対して相補的なプローブは互いに分離する。あるいは、増幅した核酸を放射性同位体で標識し、その場合には、プローブはリガンドを含む必要はない。
【0032】
腫瘍試料を、KRAS(p21aと称される)における変異についても分析した。エキソン1において検知された特定の変異は、化学療法およびエルロチニブ療法を含む化学療法に対する予後不良と関連するG12C、G12A、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13Dである。したがって、本発明は、エルロチニブまたは化学療法と組み合わせたエルロチニブ等のEGFR阻害剤の療法に対して反応性でない患者を同定するための方法であって、KRAS変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、患者が、上述の療法に対して反応しないことを示す方法をさらに提供する。あるいは、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、(i)上述の腫瘍の試料における野性型KRASタンパク質もしくは野性型KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、野性型KRASタンパク質もしくは野性型KRAS遺伝子の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す、または(ii)上述の腫瘍の試料における変異KRASタンパク質もしくは変異KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、変異KRASタンパク質もしくは変異KRAS遺伝子の非存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。特定の実施形態では、KRAS変異は活性化変異である。特定の実施形態では、変異は、KRASのエキソン1にある。他の実施形態では、KRAS変異は、G12C、G12A、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13Dのうちの少なくとも1つである。あるいは、変異体KRASを含む腫瘍を有する個人は、EGFR阻害剤での治療の前、後、または間のいずれかにKRAS阻害剤でも治療する場合、EGFR阻害剤で治療してもよい。KRAS変異の存在を決定するための方法は、本明細書中に詳細に記載した、EGFR変異を同定するために使用する方法と類似する。
【0033】
KRAS変異を呈していたことがわかった、IHCによりEGFRについて陽性に染色された腫瘍の患者は、化学療法と組み合わせてエルロチニブで治療した場合、化学療法のみで治療した患者と比較して、生存が非常に短かったことがさらに観察された。以下の表3および4にこれらの結果をまとめる。したがって、EGFR阻害剤のみまたは化学療法剤と組み合わせたいずれかの、エルロチニブ等のEGFR阻害剤の治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、上述の患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの両方の存在は、患者が、EGFR阻害剤のみまたは化学療法と組み合わせたいずれかの上述のEGFR阻害剤療法に対して反応しないことを示す方法を提供する。この文脈では、「非反応性」は、患者が、RECIST基準による反応を有さないであろうまたは化学療法のみで治療した同様の患者(腫瘍にKRAS変異およびEGFRの存在を有する)よりも生存が低下することを意味する。上述のEGFRは、変異体EGFRまたは野性型EGFRのいずれであってもよく、本明細書中に記載する技術を含むがこれらに限定されない任意の技術により決定してもよい。KRAS変異は、KRASタンパク質またはKRAS核酸における変異のことを言い、EGFR変異を検出するための手順と類似する手順を使用して検出される。一実施形態では、EGFRの存在は免疫組織化学(IHC)により決定する。他の実施形態では、EGFRの存在は、正常細胞と比較して上昇したレベルのEGFR核酸の蛍光in situハイブリダイゼーション検出により決定する。他の実施形態では、EGFRは野性型EGFRである。他の実施形態では、EGFRは変異体EGFRである。特定の実施形態では、非反応は、RECIST基準による完全反応(CR)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、RECIST基準による部分反応(PR)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、RECIST基準による安定(SD)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、生存期間の低下である。
【0034】
あるいは、腫瘍が、EGFR阻害剤のみまたは化学療法剤と組み合わせたいずれかの、EGFR阻害剤での治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において変異体KRASタンパク質または変異体KRAS核酸およびEGFRの存在を決定することを含み、それによって、変異体KRASタンパク質または変異体KRAS核酸およびEGFRの両方の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す方法を提供する。この文脈では、「反応する」は、腫瘍のサイズまたは容積が縮小するであろうまたはサイズまたは容積の増加率が低下することを意味する。特定の実施形態では、EGFR阻害剤での上述の治療は、化学療法での治療より前、と同時、またはの続きとなる。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
本発明の診断方法および予後予測方法によれば、野性型EGFR遺伝子の変化が検出される。本発明による野性型遺伝子の変化は、挿入、逆位、欠失、および/または点変異等の変異の形態をすべて包含する。体細胞変異は、ある種の組織でのみ、たとえば腫瘍組織で起こり、生殖細胞系列において遺伝しない変異である。生殖細胞系列変異は、任意の体の組織中に見つけることができる。単一の対立遺伝子のみが体細胞性変異している場合、早期の腫瘍性の状態を示す。しかしながら、両方の対立遺伝子が変異している場合、末期の腫瘍性の状態を示す。したがって、EGFR変異の発見は、本明細書中に記載する診断のおよび予後予測の指標となる。
【0037】
腫瘍組織で見つけられたEGFR変異は、野性型EGFRに比べて、シグナル伝達活性の上昇をもたらし、癌性状態につながる可能性がある。野性型EGFR遺伝子の変化を検出するために、腫瘍の試料または生検材料を、当技術分野でよく知られており腫瘍の特定の型および部位に適切な方法により得る。たとえば、肺癌病変の試料を、切除、気管支鏡、細針吸引、もしくは気管支擦過によりまたは痰、胸水、もしくは血液から得てもよい。腫瘍細胞についての組織標本を豊富にするための手段は当技術分野で知られている。たとえば、組織を、パラフィン切片またはクリオスタット切片から単離してもよい。癌細胞を、正常細胞から、フローサイトメトリーまたはレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより分離してもよい。腫瘍を正常細胞から分離するためのこれらの技術および他の技術は当技術分野でよく知られている。腫瘍組織が正常細胞と高度に混入している場合、変異の検出はより困難となる。
【0038】
点変異の検出は、EGFR対立遺伝子(複数可)の分子クローニングおよび当技術分野でよく知られている技術を使用してその対立遺伝子(複数可)を配列決定することにより達成してもよい。あるいは、腫瘍組織からのゲノムDNA調製物から遺伝子配列を直接増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することができる。次いで、増幅した配列のDNA配列を決定し、変異をDNA配列から同定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応は当技術分野でよく知られており、Saikiら,Science 239:487頁,1988年、米国特許第4683203号、および米国特許第4683195号に記載されている。
【0039】
EGFRエキソン18〜21のPCR増幅に使用することができる特異的なプライマー対は次のものを含む。
【0040】
【数3】
K−Rasエキソン1のPCR増幅に使用することができる特異的なプライマー対は次のものを含む。
【0041】
【数4】
当技術分野で知られているリガーゼ連鎖反応はEGFR配列を増幅するために使用することができる。Wuら,Genomics,4巻,560〜569頁(1989年)を参照。さらに、対立遺伝子特異的PCRとして知られている技術を使用することができる。(RuanoおよびKidd,Nucleic Acids Research,17巻,8392頁,1989年を参照)。この技術によれば、それらの3’末端で特定のEGFR突然変異体にハイブリダイズするプライマーを使用する。特定のEGFR突然変異体が存在しない場合、増幅産物は観察されない。欧州特許出願公開第0332435号およびNewtonら,Nucleic Acids Research,17巻,7頁,1989年に開示されるように、増幅不応性変異系(ARMS)を使用することができる。遺伝子の挿入および欠失は、クローニング、配列決定、および増幅により検出することもできる。さらに、遺伝子または周囲のマーカー遺伝子に対する制限断片長多型(RFLP)プローブを、対立遺伝子の変化または多型断片における挿入を調べるために使用することができる。一本鎖高次構造多型(SSCP)解析を、対立遺伝子の塩基変化変異形を検出するために使用することもできる。(Oritaら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻,2766〜2770頁,1989年,およびGenomics,5巻,874〜879頁,1989年)。当技術分野で知られている挿入および欠失を検出するための他の技術を使用することができる。
【0042】
野性型遺伝子の変化を、遺伝子の野性型発現産物の変化に基づき検出することもできる。上記発現産物は、EGFR mRNAおよびEGFRタンパク質産物の両方を含む。mRNAの増幅および配列決定によりまたはmRNAから作製したcDNAの分子クローニングを介して点変異を検出してもよい。当技術分野でよく知られているDNA配列決定技術を使用してクローニングしたcDNAの配列を決定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介してcDNAを配列決定することもできる。
【0043】
本発明によれば、ミスマッチ塩基対は、100%相補的ではないハイブリダイズした核酸二重鎖である。完全な相補性の非存在は、欠失、挿入、逆位、置換、またはフレームシフト変異によるものであってもよい。遺伝子またはそのmRNA産物における点変異を検出するためにミスマッチ検出を使用することができる。これらの技術は配列決定よりも感度が低いが、多くの腫瘍試料に対して行うのに、より簡易である。ミスマッチ切断技術の例は、Winterら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82巻,7575頁,1985年およびMeyersら,Science,230巻,1242頁,1985年に詳細に記載されるRNase保護法である。本発明の実行において、方法は、ヒト野性型EGFR遺伝子コード配列(またはエキソン18〜21またはそのKDR)に対して相補的な標識リボプローブの使用を含む。リボプローブおよび腫瘍組織から単離したmRNAまたはDNAを共にアニールし(ハイブリダイズし)、続いて、二重鎖RNA構造におけるいくつかのミスマッチ塩基対を検出することができる酵素RNase Aで消化する。ミスマッチ塩基対がRNase Aにより検出されると、二重鎖RNA構造はミスマッチ塩基対の部位で切断される。したがって、アニールしたRNA調製物を電気泳動ゲルマトリックス上で分離する場合、ミスマッチ塩基対がRNase Aにより検出され、切断されていれば、リボプローブおよびmRNAまたはDNAについての完全長二重鎖RNAより小さいRNA産物が見られるであろう。リボプローブは、完全長のEGFR mRNAまたはEGFR遺伝子である必要はないが、エキソン18〜21またはEGFR KDRまたはそれらのセグメントとすることができる。リボプローブがEGFR mRNAまたはEGFR遺伝子のセグメントのみを含む場合、多くのこれらのプローブを使用して、ミスマッチ塩基対に対する全mRNA配列をスクリーニングすることが望ましいであろう。
【0044】
同様の方法で、DNAプローブを使用して、酵素による切断または化学的切断によってミスマッチ塩基対を検出することができる。たとえば、Cottonら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85巻,4397頁,1988年およびShenkら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,72巻,989頁,1975年を参照。あるいは、マッチした二重鎖に比べた、ミスマッチした二重鎖の電気泳動移動度のシフトによりミスマッチ塩基対を検出することができる。たとえば、Cariello,Human Genetics,42巻,726頁,1988年を参照。リボプローブまたはDNAプローブのいずれかを用い、変異を含むかもしれない細胞mRNAまたは細胞DNAを、PCRを使用して、ハイブリダイゼーションの前に増幅することができる。特に変化が欠失および挿入等の全体の再配列である場合、EGFR遺伝子のDNAの変化を、サザンハイブリダイゼーションを使用して検出することもできる。
【0045】
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅したEGFR遺伝子のDNA配列はまた、対立遺伝子特異的プローブを使用してスクリーニングしてもよい。これらのプローブは、それぞれが知られている変異を含むEGFR遺伝子配列の領域を含む核酸オリゴマーである。たとえば、あるオリゴマーは、EGFR遺伝子配列の一部に対応する、長さが約30のヌクレオチドであってもよい。一連の上記対立遺伝子特異的プローブの使用により、PCR増幅産物をスクリーニングして、EGFR遺伝子における前に同定した変異の存在を識別することができる。増幅したEGFR配列と対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションをたとえばナイロンフィルター上で行うことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での特定のプローブへのハイブリダイゼーションは、対立遺伝子特異的プローブにおける変異と同様の腫瘍組織における変異の存在を示す。
【0046】
ポリメラーゼ連鎖反応の使用により増幅したEGFR遺伝子のDNA配列については、変異を質量分析技術によりスクリーニングしてもよい。変異を有する遺伝子の増幅された領域は変異のない同一の領域とは異なる質量スペックシグネチャを有するであろう。
【0047】
野性型EGFRタンパク質の変化をスクリーニングすることにより野性型EGFR遺伝子の変化を検出することができる。たとえば、EGFRと免疫反応性のモノクローナル抗体を使用して組織をスクリーニングすることができる。関連する抗原の非存在はEGFR変異を示すであろう。変異体対立遺伝子の産物に特異的な抗体を使用して、変異体EGFR遺伝子産物を検出することもできる。抗体を、ファージディスプレイライブラリーから同定してもよい。上記免疫学的アッセイは、当技術分野で知られている任意の好都合な方式で行うことができる。これらは、ウエスタンブロット、免疫組織化学アッセイ、およびELISAアッセイを含む。変化したEGFRタンパク質を検出するための任意の手段を使用して、野性型EGFR遺伝子の変化を検出することができる。
【0048】
変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物は、腫瘍からまたは尿、痰、もしくは血清等の他の体の試料から検出することができる。腫瘍試料における変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物の検出のための上記に取り上げた同様の技術は、他の体の試料に用いることができる。癌細胞は腫瘍から脱落し、上記体の試料中に出現する。上記体の試料をスクリーニングすることにより、簡易な早期診断を多数の型の癌に対して達成することができる。さらに、化学療法または放射線療法の経過は、上記体の試料を変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物について試験することにより、より容易に監視することができる。
【0049】
本発明の診断の方法は、EGFRが、腫瘍形成における役割を有する任意の腫瘍、たとえば肺、乳房、結腸、神経膠腫、膀胱、肝臓、胃、および前立腺に適用可能である。本発明の診断方法は、臨床医が治療の適切なコースを決めることができるように臨床医にとって有用となる。たとえば、両方のEGFR対立遺伝子の変化を呈する腫瘍は、一方のEGFR対立遺伝子のみの変化を呈する腫瘍よりも集中的な治療上の投与計画を示唆する可能性がある。
【0050】
本発明のプライマー対は、ポリメラーゼ連鎖反応を使用する、特定のEGFR対立遺伝子のヌクレオチド配列の決定に有用である。一本鎖DNAプライマーの対は、EGFR遺伝子自体のDNA合成の増幅を準備をするために、EGFR遺伝子におけるまたはEGFR遺伝子を包囲する配列にアニールすることができる。これらのプライマーのセットは、EGFRエキソン18〜21のヌクレオチドのすべての合成を可能にする。対立遺伝子特異的プライマーもまた使用することができる。上記プライマーは特定のEGFR変異体対立遺伝子にのみアニールし、したがって、鋳型としての変異体対立遺伝子の存在下でのみ産物を増幅するであろう。続く増幅した配列のクローニングを促進するために、プライマーは、それらの末端に追加した制限酵素部位配列を有していてもよい。したがって、プライマーのヌクレオチドはすべて、制限酵素部位を形成するのに必要な少数のヌクレオチド以外は、EGFRエキソン18〜21またはそれらに近接する配列に由来する。上記酵素および部位は当技術分野でよく知られている。プライマー自体は、当技術分野でよく知られている技術を使用して合成することができる。一般に、プライマーは、市販されているオリゴヌクレオチド合成機を使用して作製することができる。特定のプライマーの設計は、十分に、当技術分野の技術の範囲内である。
【0051】
本発明により提供された核酸プローブは多くの目的に有用である。核酸プローブは、ゲノムDNAへのサザンハイブリダイゼーションおよび既に上記に取り上げた点変異を検出するためのRNase保護法に使用することができる。プローブを使用して、PCR増幅産物を検出することができる。他の技術を使用してEGFR遺伝子またはEGFR mRNAとのミスマッチ塩基対を検出するためにプローブを使用してもよい。ミスマッチ塩基対は、酵素(たとえばS1ヌクレアーゼ)、化学物質(たとえばヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジン)、または完全にマッチしたハイブリッドと比較したミスマッチしたハイブリッドの電気泳動移動度の変化を利用して検出することができる。これらの技術は当技術分野で知られている。Novackら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83巻,586頁,1986年を参照。一般に、キナーゼドメインに対するプローブおよびそれらのセグメントも企図されるが、一般に、プローブは、EGFRエキソン18〜21配列に対して相補的である。全体の一連の核酸プローブは、野性型EGFR遺伝子の変化を検出するためのキットを構成するために使用してもよい。キットは、EGFR遺伝子の全エキソン18〜21配列に対するハイブリダイゼーションを可能にする。プローブは、互いに重複または隣接していてもよい。
【0052】
リボプローブを、mRNAとのミスマッチを検出するために使用する場合、リボプローブはEGFR遺伝子のmRNAに相補的である。したがって、リボプローブは、センス鎖に相補的であるので、EGFRタンパク質をコードしないという点でアンチセンスプローブである。一般に、リボプローブは、放射性物質、比色定量物質、蛍光定量的物質で標識され、これは、当技術分野で知られている任意の手段により達成することができる。リボプローブを、DNAとのミスマッチを検出するために使用する場合、リボプローブは、極性のセンスまたはアンチセンスとすることができる。同様に、DNAプローブもまたミスマッチを検出するために使用してもよい。
【0053】
EGFR遺伝子の変異についてヒトの任意の組織を試験することにより癌に対する素因を確認することができる。たとえば、生殖細胞系列EGFR変異が遺伝した人は癌になりやすいと思われる。これは、体の任意の組織からのDNAを試験することにより決定することができる。たとえば、血液を取り出し、DNAを、血液の細胞から抽出することができる。さらに、出生前診断は、EGFR遺伝子の変異について、胎児の細胞、胎盤の細胞、または羊水を試験することにより達成することができる。野性型EGFR対立遺伝子の変化は、たとえば点変異によるものまたは欠失によるもののいずれにせよ、上記に取り上げた任意の手段により検出することができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
スライド標本−脱パラフィンおよび染色
以下の溶液中に切片を沈めた。
【0055】
新鮮なキシレン(切片を脱パラフィンするため)−5分間
新鮮なキシレン−5分間
100%エタノール−15秒間
95%エタノール−15秒間
70%エタノール−15秒間
脱イオン水−15秒間
マイヤーのヘマトキシリン−30秒間
脱イオン水−すすぎ(×2)−15秒間
70%エタノール−15秒間
エオシンY−5秒間
95%エタノール−15秒間
95%エタノール−15秒間
100%エタノール−15秒間
100%エタノール−15秒間
キシレン(切片の脱水を確実にするため)−60秒間
キシレンを完全に除去するために約2分間風乾するまたはエアガンを静かに使用した。
【0056】
次いで、組織についてLCMの準備をした。
【0057】
(実施例2)
レーザーキャプチャーマイクロダイセクションおよびDNA抽出
材料:
PixCell II LCMシステム
CapSure HS LCMキャップまたはCapSure Macro LCMキャップ
ExtractSure装置(HSのみ)
カミソリ刀(工場で殺菌)
0.5mlチューブ
0.2mlチューブ
PicoPure DNA抽出キット
65℃インキュベータ
手順:
収集する組織の領域上にCapSureキャップを配置した
2.所望の領域一帯をレーザー処理した
キャップを組織から持ち上げた。
【0058】
PicoPure消化バッファー20μlをプロテイナーゼKと共に0.5mlチューブ中に分注した。
【0059】
キャップを、切り分けた材料と共にチューブ中に置き、密封した。
【0060】
消化バッファーがキャップを覆うようにチューブを逆にした。
【0061】
65℃で24時間インキュベートした。
【0062】
キャップと共にチューブを回転させ、チューブの底の消化された物質を収集した。
【0063】
消化物を、0.2mlストリップチューブに移した。
【0064】
95℃、10分間、蓋を加熱したサーモサイクラー中でプロテイナーゼKを不活性化した。
【0065】
10.50μl PCR反応において1〜2μlの試料を使用した。クリーンアップは必要ではなかった。
【0066】
(実施例3)
PCR増幅
PCRプライマー:
プライマー対を、配列決定する各エキソン用に設計した(EGFRエキソン18、19、20、および21)。使用したプライマー配列は以下のとおりであった。
【0067】
【数5】
最初のPCR産物のネステッド増幅を、最初のPCR産物内に位置するイントロン特異的プライマー対を使用して行った。これらのネステッドプライマー対はM13f配列およびM13rev配列のタグ付きである。
PCRの第1ラウンド:
PCR反応:
DNA 0.5〜30ng
プライマー 250nM/各外側のプライマー
dNTP 各0.2mM(ロシュ社(Roche)カタログ#1581295)
MgCl2 1.5mM(15mM 10×バッファー)
酵素 1.5U/RX拡張高忠実度Taq(ロシュ社 カタログ#1759078)
50μl反応容量
サーモサイクラー条件:
95℃、3分間
94℃、30秒間、35回の繰り返し
58℃、30秒間
72℃、1分間
72℃、8分間
4℃、常時
PCRの第2ラウンド:
PCR反応:
DNA 第1ラウンドPCR反応からの1μl
プライマー 250nM/各内側のプライマー
dNTP 各0.2mM(ロシュ社(Roche)カタログ#1581295)
MgCl2 1.5mM(15mM 10×バッファー)
酵素 1.5U/RX拡張高忠実度Taq(ロシュ社 カタログ#1759078)
50μl反応容量
サーモサイクラー条件:
95℃、3分間
94℃、30秒間、30回の繰り返し
58℃、30秒間
72℃、1分間
72℃、8分間
4℃、常時
PCR産物の単離:
PCR反応産物を、E−ゲル2%アガロースゲル(インビトロジェン社、カタログ#G6018−02)上で品質管理のために走らせた。PCR産物を、Qiaquick 96 PCR精製キット(キアゲン社(Qiagen)、カタログ#28181)を直接使用して精製したまたはゲルを必要に応じて精製した。ゲル精製については、PCR産物をE−ゲルから切除し、DNAを、Qiaquick 96 PCR精製キットを使用し、ゲル抽出プロトコール(キアゲン社、カタログ#28181)を用いて精製した。
【0068】
(実施例4)
配列決定
標識PCR産物に対するネステッド配列決定プライマーまたは標準的なM13f配列決定プライマーおよびM13rev配列決定プライマーを使用して、精製したPCR産物を配列決定した。配列は以下のとおりであった。
【0069】
【数6】
精製したPCR産物は、BigDyeターミネーターキット(ABI社、フォスターシティ、CA)を使用し、メーカーの使用説明書に従って、希釈し、サイクルシーケンスした。
反応混合物:
DNA 5μl(25〜100ng PCR産物)
水 6μl
.25OD/100μlに水で希釈したプライマー 1μl(m13fプライマーまたはm13rプライマーまたは配列特異的プライマー)
BigDye v3.1 2μl
希釈バッファー 6μl(ABI社製5×希釈バッファーの均等物)
サイクルシーケンシング:
条件:
96℃、2.5分間−最初の変性
96℃、10秒間
50℃、5秒間
60℃、4分間
全サイクルを25〜50回繰り返した
反応のクリーンアップ:
次のものを使用して、取り込まれなかったヌクレオチド除去した。
【0070】
8%セファデックス
エッジバイオシステム社製(Edge BioSystem)96ウェルブロック中500μl
回転@750g、2分間
解析:
反応産物を、ABI3700またはAB13730の配列決定機で電気泳動にかけた。
【0071】
Sequencher(ジーンコード社(Gene Codes,Corp))等の市販されている分析プログラムを使用し、カスタムツールを用いて電気泳動図を変異について分析した。
【0072】
(実施例5)
用量反応
本研究で使用したヒト上皮成長因子受容体(EGFR)野性型および変異体の構築物は、内在性EGFRシグナル配列に取って代わる単純ヘルペスウイルスシグナル配列gDのN末端におけるエピトープタグ付きである(Schaeferら1999年J. Biol. Chem.274,859〜866頁)。Cos7細胞を、12ウェルディッシュ中、正常増殖培地に、トランスフェクション前の24時間接種した。細胞を、ウェル当たり0.25ugで発現プラスミドDNA(pRK5.gD.EGFR野性型、pRK5.gD.EGFR.L858R、またはpRK5.gD.EGFR.del(E746−S752))を用い、LipofectAMlNE 2000を使用して、メーカー推奨のプロトコール(インビトロジェン社)に従ってトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間、細胞は、6時間、無血清DMEM中で血清不足であった。刺激前の1時間、トランスフェクトした細胞を、示した濃度のエルロチニブでプレインキュベートした。トランスフェクトした細胞を1nM TGFαで10分間刺激した。細胞を、ウェル中で、還元ラエムリ(Laemmli)バッファーを使用して直接溶解した。成長因子刺激によるEGFR受容体活性化の指標である受容体自己リン酸化をウェスタンブロッティングにより、HRP結合抗ホスホチロシン抗体(オンコジーンサイエンス社製(Oncogene Science)、AB−4)を使用して検出した。トランスフェクション効率をgDエピトープタグ(5B6)に対する抗体特異性を使用して評価した。受容体活性化のレベルをオートラジオグラムからNIH画像ソフトウェアを使用して評価した。次いで、4パラメータフィット機能を使用してIC50を算出したグラフを生成するためにこれらのデータを使用した。以下に結果により示すように、エルロチニブは、変異を含むEGFRに対して、野性型EGFRと比較して、より大きな親和性を有している。
【0073】
【数7】
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、野性型EGFR1(配列番号1)のアミノ酸配列を示し、このアミノ酸配列において、シグナル配列は残基1〜24であり、細胞外ドメインは残基24〜645を含み、膜貫通ドメインは残基646〜668を含み、細胞質ドメインは残基669〜1210を含む。チロシンキナーゼドメイン領域は残基718〜964であり、トレオニンリン酸化部位は残基678である。
【図2】図2a〜2dは、野性型EGFRのcDNA配列(配列番号2)であり、エキソン18は、ヌクレオチド2308〜2430に対応し、エキソン19は、ヌクレオチド2431〜2529に対応し、エキソン20は、ヌクレオチド2530〜2715に対応し、エキソン21は、2716〜2871に対応する。
【図3】図3は、EGFRの細胞外(上)および細胞内(下)領域の図示である。
【図4】図4は、野性型EGFR(実線)および変異体EGFR(破線)を発現するNSCLC腫瘍を有する患者の進行に対する時間を示すカプラン−マイアー曲線である。
【図5】図5は、野性型EGFR(実線)および変異体EGFR(破線)を発現するNSCLC腫瘍を有する患者の生存を示すカプラン−マイアー曲線である。
【図6】図6は、一時的にトランスフェクトされたCOS7細胞における様々な濃度のエルロチニブでの野性型EGFRおよび変異体EGFR(L858Rおよびdel746−752)の自己リン酸化の阻害を示すオートラジオグラフである。
【図7】図7は、一時的にトランスフェクトされたCOS7細胞における様々な濃度のエルロチニブでの野性型EGFRおよび変異体EGFR(L858Rおよびdel746−752)の自己リン酸化の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、EGFR遺伝子配列およびEGFRタンパク質配列のエキソン18および19における変異を示す。アミノ酸およびヌクレオチドの変更ならびに挿入は太字の下線を引いたフォントであり、欠失をダッシュ(−)で示す。
【図9】図9は、EGFR遺伝子配列およびEGFRタンパク質配列のエキソン20および21における変異を示す。アミノ酸およびヌクレオチドの変更ならびに挿入は太字の下線を引いたフォントであり、欠失をダッシュ(−)で示す。
【図10】記載なし。
【図11】記載なし。
【図12】記載なし。
【図13】記載なし。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌診断法および癌療法ならびに、特に、特徴および/または予後兆候となる変異の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
上皮成長因子受容体(EGFR)は、成長因子受容体の1型チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、これら成長因子受容体は、細胞の成長、分化、および生存に重要な役割を果たしている。これらの受容体の活性化は、通常、特異的なリガンド結合を介して起こり、受容体ファミリーメンバー間でのヘテロ二量体化またはホモ二量体化をもたらし、続いて、チロシンキナーゼドメインが自己リン酸化する。この活性化は、細胞の増殖(ras/raf/MAPキナーゼ経路)および生存(PI3キナーゼ/Akt経路)の両方に関係がある細胞内シグナル伝達経路のカスケードを引き起こす。EGFRおよびHER2を含むこのファミリーのメンバーは細胞形質転換に直接関連した。
【0003】
多くのヒト悪性腫瘍は、EGFRの異常もしくは過剰発現および/またはその特異的なリガンド、たとえば形質転換成長因子αの過剰発現に関連する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。EGFR過剰発現は、NSCLCを含む多くのヒト癌における有害な予後と関連した。いくつかの事例では、腫瘍EGFRの過剰発現は、化学療法抵抗性および予後不良の両方と関連した。(非特許文献4;非特許文献5)。これらの観察は、EGFR受容体の活性化および続く下流のシグナル伝達を有効に阻害する作用物質がNSCLCを含む様々なヒト癌における臨床活性を有するかもしれないということ示唆する。
【0004】
キナゾリン誘導体であるTarceva(商標)(エルロチニブとしても知られている;OSI−774)は、経口的に活性な、効力のある、選択的なEGFRチロシンキナーゼの阻害剤である。エルロチニブは、in vitro酵素アッセイにおいて2nM(0.786mg/mL)のIC50でヒトEGFRチロシンキナーゼを阻害する。この阻害は、EGFRチロシンキナーゼに対して選択的であり、G1での細胞周期停止をもたらし、可逆的である。マウスにおけるエルロチニブの経口投与により、ヒト異種移植片におけるEGFR自己リン酸化が>70%低下することが実証され、ヌードマウスにおけるHN5異種移植片およびA431異種移植片の著しい成長阻害が実証された。in vivoアッセイ系における単一作用物質の活性の他に、可能性として考えられる相互作用を決定するために多くの化学療法の作用物質と組み合わせてエルロチニブを評価した。エルロチニブならびにパクリタキセル、シスプラチン、ゲムシタビン、およびドキソルビシンの間に付加的な相互作用があった。
【0005】
肺癌は、米国の男性および女性の両者にとっての癌関連死の主な原因である。2000年には、164,000例の新たな症例が診断され、157,000人の患者がこの疾患で死ぬであろうと推定された(非特許文献6)。これらの患者の約75%が非小細胞の組織像を有し、その大多数が、手術不能な第IIIB期または第IV期の疾患を示していたであろう。より限局性の疾患を提示時に有するそれらの患者(第I期〜IIIA期)については、アジュバント化学療法もしくはネオアジュバント化学療法および/またはアジュバント放射線療法もしくはネオアジュバント放射線療法を伴うまたは伴わない標準的な手術療法後の再発が一般的である。これらの発見は、〜12%の非小細胞肺癌(NSCLC)における最大5年の生存をもたらし、この疾患における未だ対処されていない医療の必要性を強調するのに役立っている。
【0006】
白金化合物であるシスプラチンは、局所進行NSCLCまたは転移NSCLCの処置における臨床的有用性を示した最初の化学療法作用物質であった。無作為臨床試験は、最善の支持療法(Rappら1988年)と比較して、反応率、生存の質、および生存が改善されたことを実証した。しかしながら、この改善の大きさは中程度であり、数週間に限られた。その後、多くのより新しい化学療法作用物質を、単一の作用物質としておよび第1選択の状況で白金塩と組み合わせて評価した。これらの研究からの結論として、その最新の「二重」化学療法は、15%〜20%の反応率、3〜4か月の疾患進行の期間の中央値、および7〜8か月の生存の中央値を達成しているように思われる。シスプラチンで得られた結果に関した併用療法での効力における中程度の改善により、これらの療法が、進行NSCLCおよび良好な全身状態を有する患者に対する医療の標準として確立された(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。
【非特許文献1】Gullick,Br Med Bull 1991年,47:87〜98頁
【非特許文献2】ModijtahediおよびDean,Int J Oncol 1994年,4:277〜96頁
【非特許文献3】Salomonら,Crit Rev Oncol Hematol 1995年;19:183〜232頁
【非特許文献4】Leiら,Anticancer Res 1999年;19:221〜8頁
【非特許文献5】Vealeら,Br J Cancer 1993年;68:162〜5頁
【非特許文献6】Greenleeら,CA Cancer J Clin 2001年,51:15〜36頁
【非特許文献7】Non−Small Cell Lung Cancer Cooperative Group, Br Med J 1995年,311:899〜909頁
【非特許文献8】American Society of Clinical Oncology, J Clin Oncol 1997年,15:2996〜3018頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の態様によれば、治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、上述の腫瘍の試料における変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在を決定することを含み、上述の変異は、EGFRのエキソン18〜21に位置し、それによって、変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在は、腫瘍が治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。
【0008】
本発明の他の態様では、哺乳動物における腫瘍を治療するための方法であって、上述の腫瘍におけるEGFR変異の存在を同定することおよび抗癌剤で上述の哺乳動物を治療することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様では、試料におけるEGFR変異を同定するための方法であって、上述の試料からの核酸を、変異EGFRタンパク質をコードする核酸または変異を含むその断片に特異的にハイブリダイズすることができるプローブと接触させることおよびハイブリダイゼーションを検出することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様では、変異EGFRタンパク質をコードする核酸または変異を含むその断片に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブを提供する。
【0011】
本発明の他の態様では、試料における変異EGFR遺伝子を検出するための方法であって、上述のEGFR遺伝子のキナーゼドメインに対応する上述の試料の核酸または変異を含むと思われるその断片から増幅することおよび増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型EGFR遺伝子またはその断片の電気泳動移動度と比較することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明の他の態様では、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、(i)上述の腫瘍の試料における野性型KRASタンパク質または野性型KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、野性型KRASタンパク質または野性型KRAS遺伝子の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す、または(ii)上述の腫瘍の試料における変異KRASタンパク質または変異KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、変異KRASタンパク質または変異KRAS遺伝子の非存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示すことを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
腫瘍形成に関連する変異現象が上皮成長因子受容体(EGFR)で起こることは本発明の発見である。異常なEGFR活性が様々な癌と関連していることが以前より知られていたが、EGFRキナーゼドメイン領域(KDR)における変異が存在し、いくつかの癌に関連する異常なシグナル伝達活性を引き起こすことは知られていなかった。驚いたことに、EGFR KDR変異を有する腫瘍を患う患者は、野性型EGFRを有する患者よりも良好な予後を有している。EGFR遺伝子のKDR変異は、挿入および欠失等の再配列ならびに点変異を含み得る。
【0014】
トリビュート(Tribute)と称される無作為二重盲検第III相臨床試験に参加した約250人の患者からの試料を、EGFRのエキソン18〜21で起きている変異について配列決定した。トリビュートは、米国における約150箇所の施設の、組織学的に確認したNSCLCを有する、前に化学療法を受けたことがない1,079人の患者について、エルロチニブ+化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル)を化学療法のみと比較して調査した。患者は、パクリタキセル(200mg/m2、3時間、i.v.注入)、次に、エルロチニブありまたはなしで(経口で100mg/日、耐性のある患者については150mg/日まで段階的に上昇)、カルボプラチン(AUC=6mg/ml×分、15〜30分間注入、カルバートの式を使用)を受けた。トリビュート試験から収集した約250人の患者からの腫瘍試料、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロック、または未染色スライドは、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション後にDNA抽出したところ腫瘍細胞で豊富であった。エキソン18〜21をネステッドPCRにより増幅し、蛍光ダイターミネーター化学を使用して各PCR産物から双方向の配列を得た。配列決定から発見した変異を表1に示す。
【0015】
【表1−1】
【0016】
【表1−2】
変異に対するヌクレオチドの番号付けは図2a〜2dに示す参照配列に基づく。
【0017】
EGFR変異および野性型EGFRを有する腫瘍を有する患者の臨床結果を反応(完全+部分)、利益(反応+安定)、および進行に従って分析した。「完全反応」(CR)を、すべての標的病変の消失と定義し、「部分反応」(PR)を、ベースライン長径和を基準として、標的病変の最長径の和の少なくとも30%の減少と定義し、「進行」(PD)を、治療の開始または1つまたは複数の新しい病変の出現から記録された最小の最長径の和を基準として、標的病変の最長径の和の少なくとも20%の増加と定義し、「安定」(SD)を、治療の開始からの最小の最長径の和を基準として、部分反応とみなすには縮小が十分ではなく、進行とみなすには増加が十分ではないと定義する固形癌反応評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)という基準を使用して病変を評価した。
【0018】
分析の結果を表2にまとめる。
【0019】
【表2】
臨床結果の分析により、EGFRのエキソン18〜21における変異を発現する腫瘍を有する患者は、野性型EGFRを発現する腫瘍を有する患者よりも良好な予後を有していることが明らかにされた。変異体EGFR患者は、化学療法または化学療法およびエルロチニブで治療すると、より大きな反応率、利益率、および生存を示した。これらの結果は、エキソン18〜21のいずれかまたはすべてにおけるEGFR変異を腫瘍が有している患者が、腫瘍が上記変異を有していない患者よりも、より良好な予後を有するというような結果を予測するのに有用である。
【0020】
したがって、本発明は、腫瘍を有する患者の予後を決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において、エキソン18〜21(またはエキソン18〜21に対応するアミノ酸配列)における1つまたは複数のEGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の1つまたは複数のEGFR変異の存在は、上述の1つまたは複数のEGFR変異の非存在と比較して、より良好な予後を示す方法を提供する。「予後」により、反応および/または利益および/または生存が意味される。「EGFR変異」は、一方の対立遺伝子(ヘテロ接合)または両方の対立遺伝子(ホモ接合)に見つけられる、野性型EGFRタンパク質または野性型EGFR核酸とそれぞれ異なるアミノ酸配列または核酸配列を意味し、体細胞系列または生殖細胞系列であってもよい。特定の実施形態では、上述の変異は、EGFRのキナーゼドメイン領域(KDR)中に見つけられる。他の特定の実施形態では、変異は、表1に示すように、アミノ酸の置換、欠失、または挿入である。一実施形態では、アミノ酸変異は1つまたは複数の次のものである:
【0021】
【数1】
他の特定の実施形態では、変異は、表1に示すように、核酸の点変異、欠失、または挿入である。一実施形態では、核酸変異は1つまたは複数の次のものである。
【0022】
【数2】
エルロチニブでの治療に対する抵抗性を示したH1975腫瘍細胞株からのEGFRエキソン18〜21を配列決定し、L858R変異と組み合わさった変異T790Mを含むことがわかった。したがって、本発明は、腫瘍を有する患者の予後を決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において、T790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述のT790M EGFR変異の存在は、上述のT790M EGFR変異の非存在と比較して、より不良な予後を示す方法をさらに提供する。さらに、化学療法と組み合わせても組み合わせなくてもエルロチニブまたはゲフィチニブ等のEGFR阻害剤の療法に対して反応性が低い腫瘍を有する患者を同定するための方法であって、患者の腫瘍におけるT790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、患者が、上述のT790M EGFR変異を有していない腫瘍を有する患者と比較して、上述の療法に対する反応が低いことを示す方法を提供する。さらに、化学療法と組み合わせても組み合わせなくてもキナーゼドメイン結合阻害剤(たとえばエルロチニブまたはゲフィチニブ)等のEGFR阻害剤での治療に対する抵抗性のある腫瘍を同定するための方法であって、腫瘍の試料におけるT790M EGFR変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、腫瘍が、上述の治療に対して抵抗性があることを示す方法を提供する。変異の決定は、タンパク質レベルまたは核酸レベル(ゲノムDNAまたはmRNA)であり、本明細書中に記載される技術等の技術を使用して達成されることが理解される。特定の実施形態では、上述のEGFR阻害剤はEGFRキナーゼドメインにおいてATPと競合する。特定の実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0023】
他の態様では、T790M変異体のEGFRタンパク質もしくはEGFR遺伝子を含む腫瘍を有する患者を治療するための(またはT790M変異体のEGFRタンパク質もしくはEGFR遺伝子を含む腫瘍を治療するための)方法であって、上述のT790M変異体のEGFRに結合するおよび/またはそのシグナル伝達を阻害する第1の化合物を、野性型EGFRまたは活性化変異を含むEGFRに結合するおよび/またはそのシグナル伝達を阻害する第2の化合物と組み合わせて、上述の患者に同時投与すること(または上述の腫瘍と接触させること)を含む方法を提供する。特定の実施形態では、上述の活性化変異は、表1(T790M以外)に記載された1つまたは複数の活性化変異である。特定の実施形態では、上述の第1の化合物および第2の化合物は連続してまたは同時に投与される。特定の実施形態では、上述の第2の化合物はエルロチニブである。
【0024】
本発明の他の態様では、T790M変異を含む変異体EGFRタンパク質のシグナル伝達を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、リン酸化基質およびATPの存在下で上述の変異体EGFRを試験化合物と接触させることおよび上述の基質のリン酸化の量の変化を検出することを含み、それによって、対照と比較したまたは試験化合物非存在下での基質のリン酸化と比較した上述の基質のリン酸化の低下は、上述の試験化合物が、変異体EGFRのシグナル伝達の阻害剤であることを示す方法を提供する。一実施形態では、上述の方法は、in vitro、EGFまたはTGF−アルファ等の上述の変異体EGFRに対するリガンドの存在下で行われる。
【0025】
特定の実施形態では、試験化合物の阻害活性は、in vitroで、外来基質(たとえば、Lys3−ガストリンまたはポリGluTyr(4:1)ランダム共重合体)(I. Posnerら,J. Biol. Chem.267(29),20638〜47頁(1992))の上皮成長因子受容体キナーゼによるチロシンに対するリン酸化の試験化合物による阻害の対照に対する量により決定することができる。精製した可溶性ヒトT790M変異体EGFR(96ng)を、微量遠心チューブ中で、リン酸化バッファー+バナジン酸(PBV:50mM HEPES,pH7.4;125mM NaCl;24mM MgCl2;100μM オルトバナジン酸ナトリウム)中のEGF(2μg/ml)と共に全容量10μlで20〜30分間室温でプレインキュベートする。試験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させ、PBV中に希釈し、10μlを、変異体EGFR/EGF混合物と混合し、10〜30分間30℃でインキュベートする。リン酸化反応を、20μl 33P−ATP/基質混合物(120μM Lys3−ガストリン(アミノ酸に対する単一文字コードでの配列、KKKGPWLEEEEEAYGWLDF−配列番号38)、50mM Hepes pH7.4、40μM ATP、2μCi γ−[33P]−ATP)の変異体EGFR/EGF混合物への添加により開始し、20分間室温でインキュベートする。反応を、10μl停止液(0.5M EDTA、pH8;2mM ATP)および6μl 2N HClの添加により停止する。チューブを、14,000RPM、4℃で10分間遠心分離する。各チューブからの上清35μlを2.5cmの円のワットマン(Whatman)P81紙上にピペットで移し、1回の洗浄当たり1リットルの5%酢酸中で4回大量洗浄し、次いで風乾する。これは、洗浄で遊離ATPを失った紙への基質の結合をもたらす。取り込まれた[33P]を、液体シンチレーションカウンターで測定する。基質(たとえばlys3−ガストリン)非存在下での取り込みはバックグラウンドとしてすべての値から差し引き、試験化合物が存在しない対照に対して、阻害百分率を算出する。様々な用量の試験化合物で実行した上記アッセイにより、T790M変異体のEGFRキナーゼ活性のin vitro阻害についてのおおよそのIC50値の決定が可能になる。
【0026】
本発明の他の態様では、治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、上述の腫瘍の試料における変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在を決定することを含み、上述の変異は、EGFRのエキソン18〜21に位置し、それによって、変異EGFR遺伝子または変異EGFRタンパク質の存在は、腫瘍が抗癌剤での治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。特定の実施形態では、抗癌剤は、細胞障害性または細胞増殖抑止剤であってもよい化学療法剤である。腫瘍は、神経芽細胞腫、直腸癌、結腸癌、家族性大腸腺腫症の癌、および遺伝性非ポリポーシス大腸癌等の腸癌、食道癌、唇癌、喉頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、骨髄甲状腺癌、乳頭甲状腺癌、腎癌、腎実質癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛膜癌、膵癌、前立腺癌、精巣癌、乳癌、泌尿器癌、黒色腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽細胞腫、および末梢性神経外胚葉腫瘍等の脳腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、肝細胞癌、胆嚢癌、気管支癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、ユーイング肉腫、ならびに形質細胞腫を含む。特定の腫瘍は、脳、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、乳房、肺、外陰、甲状腺、結腸直腸、食道、肝癌、肉腫、神経膠芽腫、頭頚部、白血病、およびリンパ性悪性腫瘍といった腫瘍を含む。
【0027】
特定の化学療法剤は、(i)シタラビン、フルダラビン、5−フルオロ−2’−デオキシウイリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、またはメトトレキサート等の代謝拮抗剤、(ii)ブレオマイシン等のDNA断片化剤、(iii)クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、またはナイトロジェンマスタード等のDNA架橋剤、(iv)アドリアマイシン(ドキソルビシン)またはミトキサントロン等の挿入剤、(v)L−アスパラギナーゼ、シクロヘキシミド、ピューロマイシン、またはジフテリア毒素等のタンパク質合成阻害剤、(Vi)カンプトテシンまたはトポテカン等のトポイソメラーゼI毒、(vii)エトポシド(VP−16)またはテニポシド等のトポイソメラーゼII毒;(viii)コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、またはビンクリスチン等の微小管制御剤、(ix)フラボピリドール、スタウロスポリン、STI571(CPG 57148B)、またはUCN−01(7−ヒドロキシスタウロスポリン)等のキナーゼ阻害剤、(x)チオプラチン(thioplatin)、PS−341、フェニル酪酸、ET−18−OCH3、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L−739749、L−744832)等の様々な治験薬ならびにケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸、およびそれらの誘導体等のポリフェノール、(xi)グルココルチコイドまたはフェンレチニド等のホルモン、ならびに(xii)タモキシフェン、フィナステリド、またはLHRH拮抗剤等のホルモン拮抗剤を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、化学療法化合物は、1つまたは複数のゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、ダウナルビシン(daunarubicin)、パクリテキセル、タキソテール、およびマイトマイシンCである。特定の実施形態では、化学療法化合物は、1つまたは複数のゲムシタビン、シスプラチン、およびパクリタキセルである。他の実施形態では、治療薬はEGFRの阻害剤である。一実施形態では、EGFR阻害剤は、Erbitutux(商標)(セツキシマブ、イムクローン システムズ社(Imclone Systems Inc.))およびABX−EGF(パニツムマブ、アブジェニックス社(Abgenix,Inc.))等の抗体である。他の実施形態では、EGFR阻害剤は、Tarceva(商標)(エルロチニブ、OSIファーマシューティカルズ社(OSI Pharmaceuticals))、Iressa(商標)(ゲフィチニブ、アストラゼネカ社(Astra−Zeneca))、Dvirら,J Cell Biol.,113:857〜865頁(1991年)により記載されるチロホスチン、米国特許第5679683号に開示される三環系ピリミジン化合物、およびPanekら,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 283,1433〜1444頁(1997年)に開示される化合物6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチルアイニノエトキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド(2,3−d)ピリミジン−7−1)(6−(2,6−dichlorophenyl)−2−(4−(2−diethylaininoethoxy)phenylamino)−8−methyl−8H−pyrido(2,3−d)pyrimidin−7−one)(PD166285として知られている)等のATPと競合する低分子である。
【0028】
本発明の他の態様では、試料におけるEGFR変異を同定するための方法であって、上述の試料からの核酸を、変異EGFRタンパク質または変異を含むその断片をコードする核酸に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させることおよび上述のハイブリダイゼーションを検出することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、上述のプローブを、放射性同位体(3H、32P、33P等)、蛍光剤(ローダミン蛍光等)、または色素剤等で検出可能に標識する。特定の実施形態では、プローブはアンチセンスオリゴマー、たとえばPNA、モルホリノホスホロアミダート、LNA、または2’−アルコキシアルコキシである。プローブは、約8ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドまたは約10ヌクレオチド〜約75ヌクレオチドまたは約15ヌクレオチド〜約50ヌクレオチドまたは約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチドであってもよい。他の態様では、本発明の上述のプローブは、試料におけるEGFR変異を同定するためのキットであって、上述のキットは、EGFR遺伝子における変異の部位に特異的にハイブリダイズするまたは特異的にハイブリダイズして近接するオリゴヌクレオチドを含むキットにおいて提供される。キットは、キットを使用したハイブリダイゼーション試験の結果に基づき、EGFR阻害剤で、EGFR変異を含む腫瘍を有する患者を治療するための使用説明書をさらに含む。
【0029】
本発明の他の態様では、試料における変異EGFR遺伝子を検出するための方法であって、上述のEGFR遺伝子のキナーゼドメインに対応する上述の試料の核酸またはエキソン18〜21または変異を含むと思われるそれらの断片から増幅することおよび増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型EGFR遺伝子またはその断片の電気泳動移動度と比較することを含む方法を提供する。移動度の差異は、増幅した核酸配列における変異の存在を示す。電気泳動移動度はポリアクリルアミドゲル上で決定してもよい。
【0030】
あるいは、増幅したEGFR遺伝子または核酸断片は、変異の検出のために、酵素による変異検出(EMD)を使用して分析してもよい(Del Titoら,Clinical Chemistry 44:731〜739頁,1998年)。EMDは、点変異、挿入、および欠失に起因する塩基対のミスマッチにより引き起こされる構造的な変形を検出し、切断するまで二本鎖DNAに沿ってスキャンするバクテリオファージ リゾルベース T4 エンドヌクレアーゼVIIを使用する。リゾルベース切断により形成された2つの短い断片のたとえばゲル電気泳動による検出は変異の存在を示す。EMD法の有用性は、PCR反応から直接アッセイされた点変異、欠失、および挿入を同定するための単一プロトコールであり、試料精製の必要性をなくし、ハイブリダイゼーション時間を短縮し、シグナル対ノイズ比を上昇させる。正常なDNAを20倍超まで含む混合試料およびサイズが4kbまでの断片をアッセイすることができる。しかしながら、EMDスキャニングは、変異陽性試料において起こる特定の塩基の変化を同定せず、必要であれば変異の識別に対するさらなる配列決定手順を必要とする。CEL I酵素は、米国特許第5869245号で実証されるように、リゾルベース T4 エンドヌクレアーゼVIIと同様に使用することができる。
【0031】
本発明のEGFR変異を検出するための他の簡易なキットは、血色素症を引き起こすHFE遺伝子、TFR2遺伝子、およびFPN1遺伝子における多重変異の検出のための血色素症StripAssay(商標)(ウィーンラボ社製(Viennalab)http://www.bamburghmarrsh.com/pdf/4220.pdf)に類似する逆ハイブリダイゼーション試験ストリップである。上記アッセイは、PCRによる増幅後の配列特異的ハイブリダイゼーションに基づく。単一変異アッセイについては、マイクロプレートベースの検出システムを用いてもよいのに対して、多重変異アッセイについては、テストストリップを「マクロアレイ」として使用してもよい。キットは、試料の準備、増幅、および変異検出のための使用する準備ができている試薬を含んでいてもよい。多重増幅プロトコールは利便性を提供し、非常にわずかな容量の試料の試験を可能にする。簡単なStripAssay方式を使用して、20個以上の変異に対する試験を5時間未満で高価な装置なしで完了することが可能である。DNAを試料から単離し、EGFR遺伝子(またはエキソン18〜21またはKDRまたはそれらのセグメント)を、in vitroで、好ましくは単一(「多重」)増幅反応で増幅し(たとえばPCR)、ビオチン標識する。PCR産物は、プローブが平行なラインまたはバンドとして固定されたテストストリップ等の固体担体上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブ(野性型および変異体特異的)に選択的にハイブリダイズする。結合したビオチン化単位複製配列を、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよび発色基質を使用して検出する。上記アッセイは、表1の変異のすべてまたは任意のサブセットを検出することができる。特定の変異体プローブバンドに関して、3つのシグナルパターンのうちの1つが可能である:(i)正常EGFRを示す野性型プローブに対してのみのバンド(ii)ヘテロ接合遺伝子型を示す野性型および変異体プローブの両方に対するバンド(iii)ホモ接合変異体EGFR遺伝子型を示す変異体プローブに対してのみのバンド。したがって、本発明のEGFR変異を検出するための方法であって、核酸を試料から単離すること、EGFR遺伝子またはその断片(たとえば、KDRまたはエキソン18〜21以下のもの)を、増幅した核酸がリガンドを含むように増幅すること、増幅したEGFR遺伝子または断片を、リガンドに対する検出可能な結合パートナーを含むプローブと接触させること、プローブは、EGFR突然変異体に特異的にハイブリダイズすることができ、次いで、上述の増幅したEGFR遺伝子または断片への上述のプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態では、リガンドはビオチンであり、結合パートナーはアビジンまたはストレプトアビジンを含む。特定の実施形態では、結合パートナーは、発色基質で検出可能なストレプトアビジン−アルカリである。特定の実施形態では、プローブは、たとえばテストストリップ上に固定されており、異なる変異に対して相補的なプローブは互いに分離する。あるいは、増幅した核酸を放射性同位体で標識し、その場合には、プローブはリガンドを含む必要はない。
【0032】
腫瘍試料を、KRAS(p21aと称される)における変異についても分析した。エキソン1において検知された特定の変異は、化学療法およびエルロチニブ療法を含む化学療法に対する予後不良と関連するG12C、G12A、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13Dである。したがって、本発明は、エルロチニブまたは化学療法と組み合わせたエルロチニブ等のEGFR阻害剤の療法に対して反応性でない患者を同定するための方法であって、KRAS変異の存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の変異の存在は、患者が、上述の療法に対して反応しないことを示す方法をさらに提供する。あるいは、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であるヒト対象における腫瘍を同定するための方法であって、(i)上述の腫瘍の試料における野性型KRASタンパク質もしくは野性型KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、野性型KRASタンパク質もしくは野性型KRAS遺伝子の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す、または(ii)上述の腫瘍の試料における変異KRASタンパク質もしくは変異KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、変異KRASタンパク質もしくは変異KRAS遺伝子の非存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して感受性であることを示す方法を提供する。特定の実施形態では、KRAS変異は活性化変異である。特定の実施形態では、変異は、KRASのエキソン1にある。他の実施形態では、KRAS変異は、G12C、G12A、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13Dのうちの少なくとも1つである。あるいは、変異体KRASを含む腫瘍を有する個人は、EGFR阻害剤での治療の前、後、または間のいずれかにKRAS阻害剤でも治療する場合、EGFR阻害剤で治療してもよい。KRAS変異の存在を決定するための方法は、本明細書中に詳細に記載した、EGFR変異を同定するために使用する方法と類似する。
【0033】
KRAS変異を呈していたことがわかった、IHCによりEGFRについて陽性に染色された腫瘍の患者は、化学療法と組み合わせてエルロチニブで治療した場合、化学療法のみで治療した患者と比較して、生存が非常に短かったことがさらに観察された。以下の表3および4にこれらの結果をまとめる。したがって、EGFR阻害剤のみまたは化学療法剤と組み合わせたいずれかの、エルロチニブ等のEGFR阻害剤の治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、上述の患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、上述の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの両方の存在は、患者が、EGFR阻害剤のみまたは化学療法と組み合わせたいずれかの上述のEGFR阻害剤療法に対して反応しないことを示す方法を提供する。この文脈では、「非反応性」は、患者が、RECIST基準による反応を有さないであろうまたは化学療法のみで治療した同様の患者(腫瘍にKRAS変異およびEGFRの存在を有する)よりも生存が低下することを意味する。上述のEGFRは、変異体EGFRまたは野性型EGFRのいずれであってもよく、本明細書中に記載する技術を含むがこれらに限定されない任意の技術により決定してもよい。KRAS変異は、KRASタンパク質またはKRAS核酸における変異のことを言い、EGFR変異を検出するための手順と類似する手順を使用して検出される。一実施形態では、EGFRの存在は免疫組織化学(IHC)により決定する。他の実施形態では、EGFRの存在は、正常細胞と比較して上昇したレベルのEGFR核酸の蛍光in situハイブリダイゼーション検出により決定する。他の実施形態では、EGFRは野性型EGFRである。他の実施形態では、EGFRは変異体EGFRである。特定の実施形態では、非反応は、RECIST基準による完全反応(CR)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、RECIST基準による部分反応(PR)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、RECIST基準による安定(SD)の非存在である。他の実施形態では、非反応は、生存期間の低下である。
【0034】
あるいは、腫瘍が、EGFR阻害剤のみまたは化学療法剤と組み合わせたいずれかの、EGFR阻害剤での治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、上述の腫瘍の試料において変異体KRASタンパク質または変異体KRAS核酸およびEGFRの存在を決定することを含み、それによって、変異体KRASタンパク質または変異体KRAS核酸およびEGFRの両方の存在は、腫瘍が、EGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す方法を提供する。この文脈では、「反応する」は、腫瘍のサイズまたは容積が縮小するであろうまたはサイズまたは容積の増加率が低下することを意味する。特定の実施形態では、EGFR阻害剤での上述の治療は、化学療法での治療より前、と同時、またはの続きとなる。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
本発明の診断方法および予後予測方法によれば、野性型EGFR遺伝子の変化が検出される。本発明による野性型遺伝子の変化は、挿入、逆位、欠失、および/または点変異等の変異の形態をすべて包含する。体細胞変異は、ある種の組織でのみ、たとえば腫瘍組織で起こり、生殖細胞系列において遺伝しない変異である。生殖細胞系列変異は、任意の体の組織中に見つけることができる。単一の対立遺伝子のみが体細胞性変異している場合、早期の腫瘍性の状態を示す。しかしながら、両方の対立遺伝子が変異している場合、末期の腫瘍性の状態を示す。したがって、EGFR変異の発見は、本明細書中に記載する診断のおよび予後予測の指標となる。
【0037】
腫瘍組織で見つけられたEGFR変異は、野性型EGFRに比べて、シグナル伝達活性の上昇をもたらし、癌性状態につながる可能性がある。野性型EGFR遺伝子の変化を検出するために、腫瘍の試料または生検材料を、当技術分野でよく知られており腫瘍の特定の型および部位に適切な方法により得る。たとえば、肺癌病変の試料を、切除、気管支鏡、細針吸引、もしくは気管支擦過によりまたは痰、胸水、もしくは血液から得てもよい。腫瘍細胞についての組織標本を豊富にするための手段は当技術分野で知られている。たとえば、組織を、パラフィン切片またはクリオスタット切片から単離してもよい。癌細胞を、正常細胞から、フローサイトメトリーまたはレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより分離してもよい。腫瘍を正常細胞から分離するためのこれらの技術および他の技術は当技術分野でよく知られている。腫瘍組織が正常細胞と高度に混入している場合、変異の検出はより困難となる。
【0038】
点変異の検出は、EGFR対立遺伝子(複数可)の分子クローニングおよび当技術分野でよく知られている技術を使用してその対立遺伝子(複数可)を配列決定することにより達成してもよい。あるいは、腫瘍組織からのゲノムDNA調製物から遺伝子配列を直接増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することができる。次いで、増幅した配列のDNA配列を決定し、変異をDNA配列から同定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応は当技術分野でよく知られており、Saikiら,Science 239:487頁,1988年、米国特許第4683203号、および米国特許第4683195号に記載されている。
【0039】
EGFRエキソン18〜21のPCR増幅に使用することができる特異的なプライマー対は次のものを含む。
【0040】
【数3】
K−Rasエキソン1のPCR増幅に使用することができる特異的なプライマー対は次のものを含む。
【0041】
【数4】
当技術分野で知られているリガーゼ連鎖反応はEGFR配列を増幅するために使用することができる。Wuら,Genomics,4巻,560〜569頁(1989年)を参照。さらに、対立遺伝子特異的PCRとして知られている技術を使用することができる。(RuanoおよびKidd,Nucleic Acids Research,17巻,8392頁,1989年を参照)。この技術によれば、それらの3’末端で特定のEGFR突然変異体にハイブリダイズするプライマーを使用する。特定のEGFR突然変異体が存在しない場合、増幅産物は観察されない。欧州特許出願公開第0332435号およびNewtonら,Nucleic Acids Research,17巻,7頁,1989年に開示されるように、増幅不応性変異系(ARMS)を使用することができる。遺伝子の挿入および欠失は、クローニング、配列決定、および増幅により検出することもできる。さらに、遺伝子または周囲のマーカー遺伝子に対する制限断片長多型(RFLP)プローブを、対立遺伝子の変化または多型断片における挿入を調べるために使用することができる。一本鎖高次構造多型(SSCP)解析を、対立遺伝子の塩基変化変異形を検出するために使用することもできる。(Oritaら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻,2766〜2770頁,1989年,およびGenomics,5巻,874〜879頁,1989年)。当技術分野で知られている挿入および欠失を検出するための他の技術を使用することができる。
【0042】
野性型遺伝子の変化を、遺伝子の野性型発現産物の変化に基づき検出することもできる。上記発現産物は、EGFR mRNAおよびEGFRタンパク質産物の両方を含む。mRNAの増幅および配列決定によりまたはmRNAから作製したcDNAの分子クローニングを介して点変異を検出してもよい。当技術分野でよく知られているDNA配列決定技術を使用してクローニングしたcDNAの配列を決定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介してcDNAを配列決定することもできる。
【0043】
本発明によれば、ミスマッチ塩基対は、100%相補的ではないハイブリダイズした核酸二重鎖である。完全な相補性の非存在は、欠失、挿入、逆位、置換、またはフレームシフト変異によるものであってもよい。遺伝子またはそのmRNA産物における点変異を検出するためにミスマッチ検出を使用することができる。これらの技術は配列決定よりも感度が低いが、多くの腫瘍試料に対して行うのに、より簡易である。ミスマッチ切断技術の例は、Winterら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82巻,7575頁,1985年およびMeyersら,Science,230巻,1242頁,1985年に詳細に記載されるRNase保護法である。本発明の実行において、方法は、ヒト野性型EGFR遺伝子コード配列(またはエキソン18〜21またはそのKDR)に対して相補的な標識リボプローブの使用を含む。リボプローブおよび腫瘍組織から単離したmRNAまたはDNAを共にアニールし(ハイブリダイズし)、続いて、二重鎖RNA構造におけるいくつかのミスマッチ塩基対を検出することができる酵素RNase Aで消化する。ミスマッチ塩基対がRNase Aにより検出されると、二重鎖RNA構造はミスマッチ塩基対の部位で切断される。したがって、アニールしたRNA調製物を電気泳動ゲルマトリックス上で分離する場合、ミスマッチ塩基対がRNase Aにより検出され、切断されていれば、リボプローブおよびmRNAまたはDNAについての完全長二重鎖RNAより小さいRNA産物が見られるであろう。リボプローブは、完全長のEGFR mRNAまたはEGFR遺伝子である必要はないが、エキソン18〜21またはEGFR KDRまたはそれらのセグメントとすることができる。リボプローブがEGFR mRNAまたはEGFR遺伝子のセグメントのみを含む場合、多くのこれらのプローブを使用して、ミスマッチ塩基対に対する全mRNA配列をスクリーニングすることが望ましいであろう。
【0044】
同様の方法で、DNAプローブを使用して、酵素による切断または化学的切断によってミスマッチ塩基対を検出することができる。たとえば、Cottonら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85巻,4397頁,1988年およびShenkら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,72巻,989頁,1975年を参照。あるいは、マッチした二重鎖に比べた、ミスマッチした二重鎖の電気泳動移動度のシフトによりミスマッチ塩基対を検出することができる。たとえば、Cariello,Human Genetics,42巻,726頁,1988年を参照。リボプローブまたはDNAプローブのいずれかを用い、変異を含むかもしれない細胞mRNAまたは細胞DNAを、PCRを使用して、ハイブリダイゼーションの前に増幅することができる。特に変化が欠失および挿入等の全体の再配列である場合、EGFR遺伝子のDNAの変化を、サザンハイブリダイゼーションを使用して検出することもできる。
【0045】
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅したEGFR遺伝子のDNA配列はまた、対立遺伝子特異的プローブを使用してスクリーニングしてもよい。これらのプローブは、それぞれが知られている変異を含むEGFR遺伝子配列の領域を含む核酸オリゴマーである。たとえば、あるオリゴマーは、EGFR遺伝子配列の一部に対応する、長さが約30のヌクレオチドであってもよい。一連の上記対立遺伝子特異的プローブの使用により、PCR増幅産物をスクリーニングして、EGFR遺伝子における前に同定した変異の存在を識別することができる。増幅したEGFR配列と対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションをたとえばナイロンフィルター上で行うことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での特定のプローブへのハイブリダイゼーションは、対立遺伝子特異的プローブにおける変異と同様の腫瘍組織における変異の存在を示す。
【0046】
ポリメラーゼ連鎖反応の使用により増幅したEGFR遺伝子のDNA配列については、変異を質量分析技術によりスクリーニングしてもよい。変異を有する遺伝子の増幅された領域は変異のない同一の領域とは異なる質量スペックシグネチャを有するであろう。
【0047】
野性型EGFRタンパク質の変化をスクリーニングすることにより野性型EGFR遺伝子の変化を検出することができる。たとえば、EGFRと免疫反応性のモノクローナル抗体を使用して組織をスクリーニングすることができる。関連する抗原の非存在はEGFR変異を示すであろう。変異体対立遺伝子の産物に特異的な抗体を使用して、変異体EGFR遺伝子産物を検出することもできる。抗体を、ファージディスプレイライブラリーから同定してもよい。上記免疫学的アッセイは、当技術分野で知られている任意の好都合な方式で行うことができる。これらは、ウエスタンブロット、免疫組織化学アッセイ、およびELISAアッセイを含む。変化したEGFRタンパク質を検出するための任意の手段を使用して、野性型EGFR遺伝子の変化を検出することができる。
【0048】
変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物は、腫瘍からまたは尿、痰、もしくは血清等の他の体の試料から検出することができる。腫瘍試料における変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物の検出のための上記に取り上げた同様の技術は、他の体の試料に用いることができる。癌細胞は腫瘍から脱落し、上記体の試料中に出現する。上記体の試料をスクリーニングすることにより、簡易な早期診断を多数の型の癌に対して達成することができる。さらに、化学療法または放射線療法の経過は、上記体の試料を変異体EGFR遺伝子または変異体EGFR遺伝子産物について試験することにより、より容易に監視することができる。
【0049】
本発明の診断の方法は、EGFRが、腫瘍形成における役割を有する任意の腫瘍、たとえば肺、乳房、結腸、神経膠腫、膀胱、肝臓、胃、および前立腺に適用可能である。本発明の診断方法は、臨床医が治療の適切なコースを決めることができるように臨床医にとって有用となる。たとえば、両方のEGFR対立遺伝子の変化を呈する腫瘍は、一方のEGFR対立遺伝子のみの変化を呈する腫瘍よりも集中的な治療上の投与計画を示唆する可能性がある。
【0050】
本発明のプライマー対は、ポリメラーゼ連鎖反応を使用する、特定のEGFR対立遺伝子のヌクレオチド配列の決定に有用である。一本鎖DNAプライマーの対は、EGFR遺伝子自体のDNA合成の増幅を準備をするために、EGFR遺伝子におけるまたはEGFR遺伝子を包囲する配列にアニールすることができる。これらのプライマーのセットは、EGFRエキソン18〜21のヌクレオチドのすべての合成を可能にする。対立遺伝子特異的プライマーもまた使用することができる。上記プライマーは特定のEGFR変異体対立遺伝子にのみアニールし、したがって、鋳型としての変異体対立遺伝子の存在下でのみ産物を増幅するであろう。続く増幅した配列のクローニングを促進するために、プライマーは、それらの末端に追加した制限酵素部位配列を有していてもよい。したがって、プライマーのヌクレオチドはすべて、制限酵素部位を形成するのに必要な少数のヌクレオチド以外は、EGFRエキソン18〜21またはそれらに近接する配列に由来する。上記酵素および部位は当技術分野でよく知られている。プライマー自体は、当技術分野でよく知られている技術を使用して合成することができる。一般に、プライマーは、市販されているオリゴヌクレオチド合成機を使用して作製することができる。特定のプライマーの設計は、十分に、当技術分野の技術の範囲内である。
【0051】
本発明により提供された核酸プローブは多くの目的に有用である。核酸プローブは、ゲノムDNAへのサザンハイブリダイゼーションおよび既に上記に取り上げた点変異を検出するためのRNase保護法に使用することができる。プローブを使用して、PCR増幅産物を検出することができる。他の技術を使用してEGFR遺伝子またはEGFR mRNAとのミスマッチ塩基対を検出するためにプローブを使用してもよい。ミスマッチ塩基対は、酵素(たとえばS1ヌクレアーゼ)、化学物質(たとえばヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジン)、または完全にマッチしたハイブリッドと比較したミスマッチしたハイブリッドの電気泳動移動度の変化を利用して検出することができる。これらの技術は当技術分野で知られている。Novackら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83巻,586頁,1986年を参照。一般に、キナーゼドメインに対するプローブおよびそれらのセグメントも企図されるが、一般に、プローブは、EGFRエキソン18〜21配列に対して相補的である。全体の一連の核酸プローブは、野性型EGFR遺伝子の変化を検出するためのキットを構成するために使用してもよい。キットは、EGFR遺伝子の全エキソン18〜21配列に対するハイブリダイゼーションを可能にする。プローブは、互いに重複または隣接していてもよい。
【0052】
リボプローブを、mRNAとのミスマッチを検出するために使用する場合、リボプローブはEGFR遺伝子のmRNAに相補的である。したがって、リボプローブは、センス鎖に相補的であるので、EGFRタンパク質をコードしないという点でアンチセンスプローブである。一般に、リボプローブは、放射性物質、比色定量物質、蛍光定量的物質で標識され、これは、当技術分野で知られている任意の手段により達成することができる。リボプローブを、DNAとのミスマッチを検出するために使用する場合、リボプローブは、極性のセンスまたはアンチセンスとすることができる。同様に、DNAプローブもまたミスマッチを検出するために使用してもよい。
【0053】
EGFR遺伝子の変異についてヒトの任意の組織を試験することにより癌に対する素因を確認することができる。たとえば、生殖細胞系列EGFR変異が遺伝した人は癌になりやすいと思われる。これは、体の任意の組織からのDNAを試験することにより決定することができる。たとえば、血液を取り出し、DNAを、血液の細胞から抽出することができる。さらに、出生前診断は、EGFR遺伝子の変異について、胎児の細胞、胎盤の細胞、または羊水を試験することにより達成することができる。野性型EGFR対立遺伝子の変化は、たとえば点変異によるものまたは欠失によるもののいずれにせよ、上記に取り上げた任意の手段により検出することができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
スライド標本−脱パラフィンおよび染色
以下の溶液中に切片を沈めた。
【0055】
新鮮なキシレン(切片を脱パラフィンするため)−5分間
新鮮なキシレン−5分間
100%エタノール−15秒間
95%エタノール−15秒間
70%エタノール−15秒間
脱イオン水−15秒間
マイヤーのヘマトキシリン−30秒間
脱イオン水−すすぎ(×2)−15秒間
70%エタノール−15秒間
エオシンY−5秒間
95%エタノール−15秒間
95%エタノール−15秒間
100%エタノール−15秒間
100%エタノール−15秒間
キシレン(切片の脱水を確実にするため)−60秒間
キシレンを完全に除去するために約2分間風乾するまたはエアガンを静かに使用した。
【0056】
次いで、組織についてLCMの準備をした。
【0057】
(実施例2)
レーザーキャプチャーマイクロダイセクションおよびDNA抽出
材料:
PixCell II LCMシステム
CapSure HS LCMキャップまたはCapSure Macro LCMキャップ
ExtractSure装置(HSのみ)
カミソリ刀(工場で殺菌)
0.5mlチューブ
0.2mlチューブ
PicoPure DNA抽出キット
65℃インキュベータ
手順:
収集する組織の領域上にCapSureキャップを配置した
2.所望の領域一帯をレーザー処理した
キャップを組織から持ち上げた。
【0058】
PicoPure消化バッファー20μlをプロテイナーゼKと共に0.5mlチューブ中に分注した。
【0059】
キャップを、切り分けた材料と共にチューブ中に置き、密封した。
【0060】
消化バッファーがキャップを覆うようにチューブを逆にした。
【0061】
65℃で24時間インキュベートした。
【0062】
キャップと共にチューブを回転させ、チューブの底の消化された物質を収集した。
【0063】
消化物を、0.2mlストリップチューブに移した。
【0064】
95℃、10分間、蓋を加熱したサーモサイクラー中でプロテイナーゼKを不活性化した。
【0065】
10.50μl PCR反応において1〜2μlの試料を使用した。クリーンアップは必要ではなかった。
【0066】
(実施例3)
PCR増幅
PCRプライマー:
プライマー対を、配列決定する各エキソン用に設計した(EGFRエキソン18、19、20、および21)。使用したプライマー配列は以下のとおりであった。
【0067】
【数5】
最初のPCR産物のネステッド増幅を、最初のPCR産物内に位置するイントロン特異的プライマー対を使用して行った。これらのネステッドプライマー対はM13f配列およびM13rev配列のタグ付きである。
PCRの第1ラウンド:
PCR反応:
DNA 0.5〜30ng
プライマー 250nM/各外側のプライマー
dNTP 各0.2mM(ロシュ社(Roche)カタログ#1581295)
MgCl2 1.5mM(15mM 10×バッファー)
酵素 1.5U/RX拡張高忠実度Taq(ロシュ社 カタログ#1759078)
50μl反応容量
サーモサイクラー条件:
95℃、3分間
94℃、30秒間、35回の繰り返し
58℃、30秒間
72℃、1分間
72℃、8分間
4℃、常時
PCRの第2ラウンド:
PCR反応:
DNA 第1ラウンドPCR反応からの1μl
プライマー 250nM/各内側のプライマー
dNTP 各0.2mM(ロシュ社(Roche)カタログ#1581295)
MgCl2 1.5mM(15mM 10×バッファー)
酵素 1.5U/RX拡張高忠実度Taq(ロシュ社 カタログ#1759078)
50μl反応容量
サーモサイクラー条件:
95℃、3分間
94℃、30秒間、30回の繰り返し
58℃、30秒間
72℃、1分間
72℃、8分間
4℃、常時
PCR産物の単離:
PCR反応産物を、E−ゲル2%アガロースゲル(インビトロジェン社、カタログ#G6018−02)上で品質管理のために走らせた。PCR産物を、Qiaquick 96 PCR精製キット(キアゲン社(Qiagen)、カタログ#28181)を直接使用して精製したまたはゲルを必要に応じて精製した。ゲル精製については、PCR産物をE−ゲルから切除し、DNAを、Qiaquick 96 PCR精製キットを使用し、ゲル抽出プロトコール(キアゲン社、カタログ#28181)を用いて精製した。
【0068】
(実施例4)
配列決定
標識PCR産物に対するネステッド配列決定プライマーまたは標準的なM13f配列決定プライマーおよびM13rev配列決定プライマーを使用して、精製したPCR産物を配列決定した。配列は以下のとおりであった。
【0069】
【数6】
精製したPCR産物は、BigDyeターミネーターキット(ABI社、フォスターシティ、CA)を使用し、メーカーの使用説明書に従って、希釈し、サイクルシーケンスした。
反応混合物:
DNA 5μl(25〜100ng PCR産物)
水 6μl
.25OD/100μlに水で希釈したプライマー 1μl(m13fプライマーまたはm13rプライマーまたは配列特異的プライマー)
BigDye v3.1 2μl
希釈バッファー 6μl(ABI社製5×希釈バッファーの均等物)
サイクルシーケンシング:
条件:
96℃、2.5分間−最初の変性
96℃、10秒間
50℃、5秒間
60℃、4分間
全サイクルを25〜50回繰り返した
反応のクリーンアップ:
次のものを使用して、取り込まれなかったヌクレオチド除去した。
【0070】
8%セファデックス
エッジバイオシステム社製(Edge BioSystem)96ウェルブロック中500μl
回転@750g、2分間
解析:
反応産物を、ABI3700またはAB13730の配列決定機で電気泳動にかけた。
【0071】
Sequencher(ジーンコード社(Gene Codes,Corp))等の市販されている分析プログラムを使用し、カスタムツールを用いて電気泳動図を変異について分析した。
【0072】
(実施例5)
用量反応
本研究で使用したヒト上皮成長因子受容体(EGFR)野性型および変異体の構築物は、内在性EGFRシグナル配列に取って代わる単純ヘルペスウイルスシグナル配列gDのN末端におけるエピトープタグ付きである(Schaeferら1999年J. Biol. Chem.274,859〜866頁)。Cos7細胞を、12ウェルディッシュ中、正常増殖培地に、トランスフェクション前の24時間接種した。細胞を、ウェル当たり0.25ugで発現プラスミドDNA(pRK5.gD.EGFR野性型、pRK5.gD.EGFR.L858R、またはpRK5.gD.EGFR.del(E746−S752))を用い、LipofectAMlNE 2000を使用して、メーカー推奨のプロトコール(インビトロジェン社)に従ってトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間、細胞は、6時間、無血清DMEM中で血清不足であった。刺激前の1時間、トランスフェクトした細胞を、示した濃度のエルロチニブでプレインキュベートした。トランスフェクトした細胞を1nM TGFαで10分間刺激した。細胞を、ウェル中で、還元ラエムリ(Laemmli)バッファーを使用して直接溶解した。成長因子刺激によるEGFR受容体活性化の指標である受容体自己リン酸化をウェスタンブロッティングにより、HRP結合抗ホスホチロシン抗体(オンコジーンサイエンス社製(Oncogene Science)、AB−4)を使用して検出した。トランスフェクション効率をgDエピトープタグ(5B6)に対する抗体特異性を使用して評価した。受容体活性化のレベルをオートラジオグラムからNIH画像ソフトウェアを使用して評価した。次いで、4パラメータフィット機能を使用してIC50を算出したグラフを生成するためにこれらのデータを使用した。以下に結果により示すように、エルロチニブは、変異を含むEGFRに対して、野性型EGFRと比較して、より大きな親和性を有している。
【0073】
【数7】
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、野性型EGFR1(配列番号1)のアミノ酸配列を示し、このアミノ酸配列において、シグナル配列は残基1〜24であり、細胞外ドメインは残基24〜645を含み、膜貫通ドメインは残基646〜668を含み、細胞質ドメインは残基669〜1210を含む。チロシンキナーゼドメイン領域は残基718〜964であり、トレオニンリン酸化部位は残基678である。
【図2】図2a〜2dは、野性型EGFRのcDNA配列(配列番号2)であり、エキソン18は、ヌクレオチド2308〜2430に対応し、エキソン19は、ヌクレオチド2431〜2529に対応し、エキソン20は、ヌクレオチド2530〜2715に対応し、エキソン21は、2716〜2871に対応する。
【図3】図3は、EGFRの細胞外(上)および細胞内(下)領域の図示である。
【図4】図4は、野性型EGFR(実線)および変異体EGFR(破線)を発現するNSCLC腫瘍を有する患者の進行に対する時間を示すカプラン−マイアー曲線である。
【図5】図5は、野性型EGFR(実線)および変異体EGFR(破線)を発現するNSCLC腫瘍を有する患者の生存を示すカプラン−マイアー曲線である。
【図6】図6は、一時的にトランスフェクトされたCOS7細胞における様々な濃度のエルロチニブでの野性型EGFRおよび変異体EGFR(L858Rおよびdel746−752)の自己リン酸化の阻害を示すオートラジオグラフである。
【図7】図7は、一時的にトランスフェクトされたCOS7細胞における様々な濃度のエルロチニブでの野性型EGFRおよび変異体EGFR(L858Rおよびdel746−752)の自己リン酸化の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、EGFR遺伝子配列およびEGFRタンパク質配列のエキソン18および19における変異を示す。アミノ酸およびヌクレオチドの変更ならびに挿入は太字の下線を引いたフォントであり、欠失をダッシュ(−)で示す。
【図9】図9は、EGFR遺伝子配列およびEGFRタンパク質配列のエキソン20および21における変異を示す。アミノ酸およびヌクレオチドの変更ならびに挿入は太字の下線を引いたフォントであり、欠失をダッシュ(−)で示す。
【図10】記載なし。
【図11】記載なし。
【図12】記載なし。
【図13】記載なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFR阻害剤での治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、該患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、KRAS変異とEGFRとの両方の存在が、患者が該EGFR阻害剤の治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項2】
化学療法剤と組み合わせたEGFR阻害剤での治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、該患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、該腫瘍におけるKRAS変異とEGFRとの両方の存在が、患者が化学療法と組み合わせた該EGFR阻害剤の治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項3】
腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、該腫瘍の試料においてEGFRタンパク質またはEGFR遺伝子および変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、EGFRタンパク質またはEGFR遺伝子と変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子との両方の存在は、該腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項4】
腫瘍が化学療法剤と組み合わせたEGFRでの治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、該腫瘍の試料においてEGFRおよび変異体KRASの存在を決定することを含み、それによって、EGFRタンパク質またはEGFR遺伝子と変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子との両方の存在が、該腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項5】
前記KRAS変異が活性化変異である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記KRAS変異が、G12C;G12A;G12D;G12R;G12S;G12V;G13C;およびG13Dの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記EGFR阻害剤が、1つまたは複数のセツキシマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、またはゲフィチニブである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法剤が、1つまたは複数のシタラビン、フルダラビン、5−フルオロ−2’−デオキシウイリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ブレオマイシン、クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、トポテカン、テニポシド、コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはタモキシフェンである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記化学療法剤が、カルボプラチンおよび/またはパクリタキセルである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記EGFRが野性型EGFRである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記EGFRが変異EGFRである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
EGFRの存在が免疫組織化学により決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記KRAS変異の存在が、前記腫瘍由来のKRAS核酸または変異を含むと思われるその断片を増幅し、該増幅した核酸を配列決定することにより決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記KRAS変異の存在が、前記腫瘍由来のKRAS核酸または変異を含むと思われるその断片を増幅し、増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型KRAS核酸または野性型KRAS断片の電気泳動移動度と比較することにより決定される請求項1に記載の方法。
【請求項1】
EGFR阻害剤での治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、該患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、KRAS変異とEGFRとの両方の存在が、患者が該EGFR阻害剤の治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項2】
化学療法剤と組み合わせたEGFR阻害剤での治療に対して非反応性である患者を同定するための方法であって、該患者の腫瘍におけるKRAS変異およびEGFRの存在または非存在を決定することを含み、それによって、該腫瘍におけるKRAS変異とEGFRとの両方の存在が、患者が化学療法と組み合わせた該EGFR阻害剤の治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項3】
腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、該腫瘍の試料においてEGFRタンパク質またはEGFR遺伝子および変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子の存在を決定することを含み、それによって、EGFRタンパク質またはEGFR遺伝子と変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子との両方の存在は、該腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項4】
腫瘍が化学療法剤と組み合わせたEGFRでの治療に対して反応するかどうかを決定するための方法であって、該腫瘍の試料においてEGFRおよび変異体KRASの存在を決定することを含み、それによって、EGFRタンパク質またはEGFR遺伝子と変異体KRASタンパク質または変異体KRAS遺伝子との両方の存在が、該腫瘍がEGFR阻害剤での治療に対して反応しないことを示す、方法。
【請求項5】
前記KRAS変異が活性化変異である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記KRAS変異が、G12C;G12A;G12D;G12R;G12S;G12V;G13C;およびG13Dの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記EGFR阻害剤が、1つまたは複数のセツキシマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、またはゲフィチニブである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法剤が、1つまたは複数のシタラビン、フルダラビン、5−フルオロ−2’−デオキシウイリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ブレオマイシン、クロラムブチル、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、トポテカン、テニポシド、コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはタモキシフェンである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記化学療法剤が、カルボプラチンおよび/またはパクリタキセルである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記EGFRが野性型EGFRである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記EGFRが変異EGFRである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
EGFRの存在が免疫組織化学により決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記KRAS変異の存在が、前記腫瘍由来のKRAS核酸または変異を含むと思われるその断片を増幅し、該増幅した核酸を配列決定することにより決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記KRAS変異の存在が、前記腫瘍由来のKRAS核酸または変異を含むと思われるその断片を増幅し、増幅した核酸の電気泳動移動度を、対応する野性型KRAS核酸または野性型KRAS断片の電気泳動移動度と比較することにより決定される請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−546421(P2008−546421A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519347(P2008−519347)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/023230
【国際公開番号】WO2007/001868
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/023230
【国際公開番号】WO2007/001868
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
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