説明

EGFR阻害剤を用いる処置のための患者を選択する方法

本発明は癌診断法および治療に関し、診断、予後または予測に役立つ癌細胞の変化の検出に関する。具体的には、本発明は、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するか否かを検出および分析する方法を提供する。本方法では、癌試料からの組織切片を免疫組織化学および酵素的金属組織学に基づいたアッセイに供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌診断法および治療に関し、具体的には、診断、予後および/または予測に役立ち、EGFR阻害剤を用いる処置に応答する癌患者を選択するために使用することができる、癌細胞の変化の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮増殖因子受容体(EGFR)は、細胞の増殖、分化および生存に重要な役割を果たす増殖因子受容体に属するI型チロシンキナーゼファミリーのメンバーである。これらの受容体の活性化は、典型的には、特異的リガンドの結合によって起こり、その結果、受容体ファミリーメンバー間のヘテロ二量体化またはホモ二量体化、続いてチロシンキナーゼドメインの自己リン酸化がもたらされる。この活性化により、細胞増殖(ras/raf/MAPキナーゼ経路)および生存(PI3キナーゼ/Akt経路)の両方に関与する細胞内シグナル伝達経路のカスケードが誘発される。このファミリーのメンバーは、EGFRおよびHER2を含めて、細胞形質転換に直接関係している。
【0003】
EGFRシグナル伝達経路は、結腸直腸癌(CRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部癌および神経膠腫などいくつかの癌で活性化されている。活性化は、EGFRタンパク質の活性化変異または典型的にはEGFR遺伝子コピー数の増加によるEGFRの過剰発現を含む、複数のメカニズムにより起こり得る。EGFRタンパク質の発現は、免疫組織化学により半定量的に評価することができる。遺伝子コピー数は、in situハイブリダイゼーションを含むいくつかの方法により評価することができ、遺伝子変異は直接シークエンシングを含むいくつかの方法により検出することができる。
【0004】
臨床使用されるEGFR抗体(例えば、セツキシマブ(ERBITUX(商標))およびパニツムマブ(VECTIBIX(商標)))は、EGFRの細胞外ドメインに結合する。この受容体ドメインはリガンド結合部位を含み、これらの抗体はリガンド結合を阻止し、それによってEGFRシグナル伝達を妨害すると考えられる。このようなEGFR抗体の治療有用性の結果、その後の多くの研究がEGFRの細胞外ドメインに特異的な抗体(または他の結合分子)の生成に着目した(例えば、米国特許第5,459,061号明細書、同第5,558,864号明細書、同第5,891,996号明細書、同第6,217,866号明細書、同第6,235,883号明細書、同第6,699,473号明細書および同7060808号明細書;欧州特許第0359282号明細書および同第0667165号明細書を参照されたい)。
【0005】
選別されていないCRC患者の約10〜20%が抗EGFR抗体療法に応答する。CRCでは、他の多くの癌の場合のように、腫瘍の診断に役立つ特徴も免疫組織化学により評価されるEGFR発現の程度も、セツキシマブ、マツズマブ(hMab425)またはパニツムマブなどの抗EGFR抗体に対する臨床応答と相関するとは思われていない。したがって、現在、処置を受けるほとんどの患者は、望ましくない副作用を伴いかつ効果のない治療のリスクに晒されている。
【0006】
KRAS遺伝子の変異状態から、抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブおよびパニツムマブに対する応答を予測することができる(Allegra,2009)。EGFRの下流のシグナル伝達分子であるKRASの活性化変異を保有する腫瘍については、抗EGFR治療の恩恵を受けない(Linardou,2008)。一方、KRAS野生型(WT)患者では、細胞傷害性処置にセツキシマブを加えると、細胞傷害性療法単独と比較して、応答率が16〜24%改善する。KRAS WT患者の約40%が、併用療法に非応答であり(Bokemeyer,2009;Van Cutsem,2009)、それより著しく多くの割合の患者が、EGFR抗体単独療法に非応答である(Amado,2008)。
【0007】
KRAS変異に加えて、EGFRの下流にある他の分子の変化、具体的には、BRAF遺伝子変異、PIK3CA変異およびPTEN腫瘍サプレッサータンパク質の発現消失は、抗EGFR処置に対する抵抗性と関連すると思われる(Laurent−Puig,2009;Siena,2009)。したがって、BRAF検査が、NCCN Clinical Guidelines in Oncology for Colon Cancer and Rectal Cancer(Engstrom,2009)に最近含まれた。しかしながら、これらの検査の組合せでも、非応答KRAS WT患者の中の少数派のみを同定している可能性が高い(Laurent−Puig,2009)。
【0008】
これまでの研究では、免疫組織化学(IHC)により評価されたEGFRタンパク質発現レベルは、抗EGFR抗体処置に対する応答と相関していない(Cunningham,2004;Saltz,2004;Chung,2005)。その代り、EGFR遺伝子コピー数(GCN)の増加が、KRAS WT患者間の良好な応答と関連することが一部の研究で示されている(Sartore−Bianchi,2007;Cappuzzo,2008;Lievre,2006;Moroni,2005)。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法が、これまでの研究の大部分で使用されている(Moroni,2005;Cappuzzo,2008;Personeni,2008;Scartozzi,2009;Sartore−Bianchi,2007)。FISHの結果は解釈するのが難しく、分析法およびスコアリングシステムの標準化がなされていないことが、EGFR GCN評価が臨床診療にまだ組み込まれていない理由の一部と考えられる。実際、現在のNCCN結腸直腸癌ガイドラインは、日常的なEGFR検査を推奨せず、EGFR検査結果に基づいて、患者に対し、セツキシマブまたはパニツムマブの治療を考慮または除外すべきではないと述べている(Engstrom,2009)。
【0009】
要約すると、抗EGFRモノクローナル抗体に対する患者の応答差を説明し、抗EGFR抗体療法から恩恵を受けるかまたはそれに応答する可能性のある結腸直腸癌患者などの癌患者を同定する戦略を開発する必要がある。
【0010】
米国特許第2008/0090233号明細書(Garciaら)は、EGFR阻害剤の治療的投与から恩恵を受けるかまたは恩恵を受けないと予測される癌患者を選択する方法について記載している。この方法は、EGFR遺伝子およびHER2遺伝子の増幅および多染色体性のレベルを検出することに基づいている。遺伝子コピー数を検出するためのアッセイは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に基づいている。
【0011】
米国特許第2009/0269344号明細書(Sienaら)は、EGFRを過剰発現する癌を罹患する患者が抗EGFR抗体の投与に正に応答するか否かを検出および分析するin vitroの方法について開示している。この方法は、患者から入手した腫瘍細胞内のEGFR遺伝子コピー数を測定するステップと、前記患者の腫瘍細胞がEGFR遺伝子コピー数の増幅を示す場合、前記抗EGFR抗体を投与するために前記患者を選択するステップとを含む。遺伝子コピー数を検出するためのアッセイは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に基づいている。
【0012】
Hanawaら(2006)は、食道癌試料において、IHCを用いてEGFRタンパク質発現を、FISHを用いてEGFR遺伝子コピー数を分析した。
【0013】
Hemmingsら(2009)は、結腸直腸癌試料において、IHCを使用してEGFRタンパク質発現を分析した。彼らはまた、CISHを使用してEGFRの遺伝子コピー数を検出した。
【0014】
Shollら(2009)は、肺腺癌試料において、IHCを使用してEGFRタンパク質を検出した。彼らはまた、FISHおよびCISHを使用してEGFR遺伝子コピー数を検出し、FISHの分析結果とCISHの結果との相関を示した。
【0015】
Gaiserら(2009)は、膠芽腫患者において、SISH法とFISH法との間の一致を検討し、EGFR IHCを使用してEGFRタンパク質を検出した。
【0016】
Miyanagaら(2008)は、IHCを使用してEGFRタンパク質発現を検出し、CISH法を使用してEGFR遺伝子コピー数を分析した。
【0017】
しかしながら、前述の従来技術文献はいずれも、EGFR GCNおよびEGFR IHCを検出してEGFR阻害剤処置のための癌患者を選択するための酵素的金属組織学的方法(enzymatic metallography method)(例えばSISH)について開示していない。さらに、引用した従来技術は、腫瘍試料におけるEGFRの最高発現領域をIHCにより決定し、次いで酵素的金属組織学において前記最高発現領域を使用してEGFR遺伝子または染色体7の遺伝子コピー数を決定することが有利となることを教示していない。このアプローチにより、結果の信頼性が高くなるため、EGFR GCN評価が臨床診療の一部となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、好ましくは銀in situハイブリダイゼーション(SISH)による、最高EGFR免疫反応性領域の上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子コピー数(GCN)分析が、単一の診断検査として、またはKRAS変異の有無の判定とEGFR GCNを組み合わせて、癌、好ましくは結腸直腸癌における抗EGFR治療の効果を予測し、抗EGFR処置に対する応答者および非応答者を選別することを実証する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一態様では、本発明は、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するかまたは非応答であるかを検出および分析する方法であって、
− 前記患者から得られた腫瘍試料由来の組織切片において、
(i)前記組織切片におけるEGFRタンパク質の発現レベルを免疫組織化学(IHC)により決定し、かつ
(ii)EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルを酵素的金属組織学により決定するステップであって、
前記腫瘍試料由来の組織切片におけるEGFRの最高発現領域を、染色強度に基づいてIHCにより決定し、腫瘍試料における前記最高発現領域を酵素的金属組織学で使用して、EGFR遺伝子または染色体7の遺伝子コピー数を決定するステップと、
− 前記患者の腫瘍試料がEGFRタンパク質の発現およびEGFR遺伝子または染色体7のコピー数の増幅を示す場合に、前記EGFR阻害剤を用いる処置のために前記患者を選択するステップと
を含む方法に関する。
【0020】
一実施形態では、前記腫瘍試料からの同じ組織切片をIHCおよび酵素的金属組織学において使用する。
【0021】
一実施形態では、前記腫瘍試料からの連続組織切片をIHCおよび酵素的金属組織学において使用する。
【0022】
一実施形態では、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルは、核に対するEGFR遺伝子または染色体7の数の比として決定する。
【0023】
一実施形態では、酵素的金属組織学は、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)分析である。
【0024】
一実施形態では、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが、EGFR阻害剤を用いる処置に対する応答と相関するEGFR遺伝子コピー数の閾値または染色体7のコピー数の閾値と統計的に同等またはそれ以上の場合に、その患者はEGFR阻害剤を用いる処置のために選択される。
【0025】
一実施形態では、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが、EGFR阻害剤を用いる処置に対する応答と相関するEGFR遺伝子コピー数の閾値または染色体7のコピー数の閾値より統計的に低い場合に、その患者はEGFR阻害剤を用いる処置のためには選択されない。
【0026】
一実施形態では、核中のEGFR遺伝子コピー数レベルが4.0以上かまたは染色体7のコピー数レベルが4.5以上である場合に、その患者はEGFR阻害剤を用いる処置のために選択される。
【0027】
一実施形態では、癌は、結腸直腸癌、肺癌、頭頸部癌または神経膠腫である。
【0028】
一実施形態では、IHCは抗EGFR抗体を用いて実施する。この抗体のEGFR染色強度および染色パターンは、EGFRの細胞内エピトープに対する抗EGFR抗体5B7と同じであることが好ましい。
【0029】
一実施形態では、抗体はEGFRの細胞内ドメインに結合する。
【0030】
一実施形態では、抗体はクローン5B7または3C6である。
【0031】
一実施形態では、EGFR阻害剤は抗体またはキナーゼ阻害剤である。
【0032】
一実施形態では、抗体はセツキシマブ(mAb c225)、マツズマブ(mAb h425)またはパニツムマブ(mAb ABX)である。
【0033】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤はエルロチニブまたはゲフィチニブである。
【0034】
一実施形態では、本方法は、前記腫瘍試料におけるKRAS変異の有無を判定するステップをさらに含む。
【0035】
一実施形態では、本方法は、腫瘍試料における変異したEGFR遺伝子またはEGFRタンパク質の有無を判定するステップをさらに含む。
【0036】
一実施形態では、組織切片はスライドガラス上に作製する。
【0037】
一実施形態では、組織切片の厚さは5μm以下である。
【0038】
一実施形態では、ステップ(i)および(ii)は自動処理装置を用いて実施する。
【0039】
一態様では、本発明は、癌患者を処置する方法であって、前記患者から腫瘍試料を入手するステップと、請求項1に記載の方法により前記試料を分析するステップと、前記患者がEGFR阻害剤を用いる処置のために選択された場合に、前記患者に前記EGFR阻害剤を投与するステップとを含む方法に関する。
【0040】
一態様では、本発明は、請求項1に記載の方法を実施するための手段を含むアッセイキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、EGFRタンパク質発現レベルおよびEGFR SISHを示す図である。クローン5B7(A)および3C6を用いたEGFR IHC。免疫反応性の腫瘍内変動に留意されたい(B)。遺伝子クラスターを示すEGFR SISH(C)および対応するChr−7 SISH(D)。GCN≧4.0のEGFR SISH(E)および対応するChr−7 SISH(F)。正常結腸直腸組織内のEGFR SISH(G)およびChr−7 SISH(H)。スケールバー:0.05mm(A〜B)、0.02mm(C〜H)。
【図2】図2は、KRAS変異状態、EGFR GCNおよび染色体7のコピー数レベルを有する患者の腫瘍応答を示す図である。PR=部分寛解、SD=不変、PD=増悪。
【図3】図3は、KRAS変異状態、EGFR GCNおよび染色体7のコピー数レベルを有する患者のKaplan Meierダイヤグラムを示す図である。(A)KRAS変異状態および(B)EGFR GCNに応じた、抗EGFR処置患者における無増悪生存期間(PFS)。EGFR GCN(C)および染色体7(Chr−7)数(D)に応じた、KRAS WT患者におけるPFS。(E)KRAS WT/EGFR GCN≧4.0、KRAS WT/EGFR GCN<4.0およびKRAS MUTを有する患者のPFSの比較。(F)EGFR GCNに応じた、KRAS WT患者におけるOS。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
本明細書で使用する用語「上皮増殖因子受容体」(「EGFR」)は、上皮増殖因子(EGF)を結合し、それによって活性化される膜ポリペプチドをコードする遺伝子を指す。EGFRはまた、文献では、ERBB、ERBB1およびHER1としても知られている。代表的なEGFRはヒト上皮増殖因子受容体である(Ullrichら(1984)Nature 309:418−425;Genbank受託番号NP_005219.2;完全コード領域AY588246.1を参照されたい)。EGFリガンドの結合はEGFRを活性化する(例えば、細胞内の分裂促進的シグナル伝達の活性化、EGFRの自己リン酸化をもたらす)。当業者は、EGFに加えて他のリガンドも、EGFRに結合しそれを活性化できることを認識している。そのようなリガンドの例としては、これらに限定されないが、アンフィレギュリン、エピレギュリン、TGF−α、ベータセルリンおよびヘパリン結合EGF(HB−EGF)が挙げられる。ヒトEGFRの細胞内ドメインは、EGFRの膜貫通ドメインに隣接するアミノ酸からCOOH末端までのポリペプチド配列を含む。細胞内ドメインは、とりわけ、チロシンキナーゼドメインを含む。
【0043】
本明細書で使用する「EGFR遺伝子」は、EGFR遺伝子産物、例えばEGFR mRNA、EGFRポリペプチドなどをコードする核酸を指す。
【0044】
本明細書で使用する「EGFR阻害剤」は、EGFRの活性化を直接的または間接的に阻害することができる任意の薬剤を指す。EGFR阻害剤は、EGFRに結合し、その活性化を阻害する薬剤を含む。EGFR阻害剤は、EGFRに結合し、EGFRの活性化を阻害する抗体、およびEGFRの活性化を阻害する小分子チロシンキナーゼ阻害剤または「キナーゼ阻害剤」を含む。EGFRに対する抗体は、IgG;IgM;IgA;EGFR結合能を保持する抗体断片、例えばFv、Fab、F(ab)、単一鎖抗体など;キメラ抗体;等を含む。EGFRの小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR選択的チロシンキナーゼ阻害剤を含む。EGFRの小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、約50Da〜約10,000Daの範囲の分子量を有することができる。
【0045】
本明細書で使用する用語「k−ras」および「KRAS」は、互換的に使用され、この出願時点でNCBI Entrez Geneデータベース中で受託番号NM_004985.3(Entrez Geneデータベース、NCBI)として特定されるKRAS遺伝子および/またはその発現産物を指す。「KRAS」はまた、文献中でKRAS1、KRAS2、RASK2、KI−RAS、K−RAS4A、K−RAS4Bまたはp21としても特定される。
【0046】
本明細書で使用する用語「活性化KRAS変異」または「KRAS変異は活性化変異である」は、k−rasがコードするタンパク質の構成的活性化をもたらす、すなわち、そのk−rasタンパク質が、受容体結合リガンドがない状態でそのシグナル伝達経路の下流にある分子を活性化する、k−ras遺伝子中の変異を指す。例えば、このk−rasタンパク質は、EGFRに結合するEGF、アンフィレギュリンまたはエピレギュリンがない状態で下流のシグナル伝達を活性化することができる。
【0047】
本明細書で使用する用語「腫瘍」は、悪性または良性にかかわらず、任意の新生細胞の成長および増殖ならびに前癌性および癌性の細胞および組織を指す。
【0048】
用語「癌」および「癌性」は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴の一部とする、哺乳類における生理学的状態を指すかまたは描写する。癌の例としては、これらに限定されないが、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、甲状腺癌、腎癌、カルシノーマ、黒色腫、脳腫瘍、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、直腸癌および食道癌が挙げられる。代表的な実施形態では、癌は結腸直腸癌である。
【0049】
本明細書で使用する用語「処置」、「処置する」などは、効果を得る目的で薬剤を投与することまたは手技(例えば放射線、外科手術等)を行なうことを指す。この効果は、癌などの疾患またはその症候を完全にまたは部分的に防止する点で予防的である場合も、および/または疾患またはその疾患の症候を部分的にまたは完全に緩解させる点で治療的である場合もある。本明細書で使用する「処置」は、哺乳類における、特にヒトにおける、癌などの疾患に対するいずれの処置も包含し、(a)疾患に罹患する可能性があるが、それに罹患しているとまだ診断されていない患者にその疾患またはその疾患の症候が起こるのを防止すること(例えば一次疾患と関連するかまたは一次疾患が原因となっている可能性がある疾患を含む)、(b)疾患を抑制すること、すなわち、その進行を阻止すること、および(c)疾患を軽減すること、すなわち疾患を緩解させることまたはその増悪を阻止することを含む。
【0050】
EGFR阻害剤処置に対する患者応答に関連して本明細書で使用する場合、用語「応答する」、「有益な応答」、「有益な患者応答」および「臨床的に有益な応答」、「臨床的有益性」などは互換的に使用され、薬物に対する好ましくない応答、すなわち有害事象に対するものとしての好ましい患者応答を指す。個々の患者において、いくつかの臨床的パラメーターを用いて有益な応答を示すことができる。臨床的パラメーターには、検出可能な腫瘍の消失(完全寛解、CR)、腫瘍サイズおよび/または癌細胞数の減少(部分寛解、PR)、腫瘍成長停止(不変、SD)、腫瘍の退縮または拒絶をもたらす可能性のある抗腫瘍免疫応答の増強;腫瘍に関連した1つまたは複数の症候のある程度の軽減;処置に続く生存期間の増加;および/または処置に続く所与の時点での死亡率の減少が含まれる。腫瘍サイズおよび/または癌細胞数および/または腫瘍転移の継続的な増加は、処置に対する有益な応答が欠如していることを示す。
【0051】
集団においては、薬物の臨床的有益性、すなわちその効果は、1つまたは複数のエンドポイントに基づいて評価することができる。例えば、奏効率(ORR)の分析では、薬物処置の後にCRまたはPRになる患者を応答者と分類する。疾病管理(DC)の分析では、薬物処置の後にCR,PRまたはSDになる患者を応答者と分類する。
【0052】
本明細書で使用する用語「無増悪生存期間」は、患者の処置から癌の増悪または患者の死のいずれでも最初に起こるまでの期間を指す。
【0053】
本明細書で使用する用語「応答者」または「応答性」は、EGFRを発現する癌に罹患し、かつEGFR阻害剤を用いた処置の後に有益な臨床応答を示す患者を指す。
【0054】
本明細書で使用する用語「非応答者」または「非応答性」は、EGFRを発現する癌に罹患し、かつEGFR阻害剤を用いた処置の後に有益な臨床応答を示さない患者を指す。
【0055】
本明細書で使用する用語「腫瘍試料」は、癌患者から得られた腫瘍材料を含む試料を意味する。この用語は、臨床試料、例えば外科的切除により得られた組織、および例えばコア生検または細針生検などの生検により得られた組織を包含する。この用語はまた、原発腫瘍以外の部位から得られた腫瘍細胞、例えば末梢循環腫瘍細胞を含む試料も包含する。この用語は、患者の腫瘍細胞の子孫となる細胞、例えば原発腫瘍細胞または末梢循環腫瘍細胞由来の細胞培養物試料を包含する。この用語は、in vivoで腫瘍細胞から流出したタンパク質または核酸物質を含む可能性のある試料、例えば骨髄、血液、血漿、血清などを包含する。この用語はまた、調達した後に腫瘍細胞を濃縮したか、さもなければ操作した試料、および患者の腫瘍材料から得られるポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む試料を包含する。
【0056】
特定の実施形態では、EGFR遺伝子コピー数または染色体7のコピー数レベルの閾値を確立することができ、患者の腫瘍試料中のEGFR遺伝子コピー数または染色体7のコピー数レベルを「閾値」と比較することができる。
【0057】
癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するか否かを検出および分析するなどの診断検査および/または予後検査の感度および特異度は、検査の分析上の「質」に依存するだけでなく、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際上、受信者動作特性曲線または「ROC」曲線は、典型的には、「正常」集団および「疾患」集団における変量値対その相対度数をプロットすることによって、かつ/または処置前、処置期間および/もしくは処置後の被験体から得られる結果を比較することによって計算される。
【0058】
一部の実施形態では、EGFR阻害剤を用いる処置に対する患者応答を表わすROC曲線を、目的関数を定義するために使用することができる。例えば、目的関数を、ROC曲線の下面積を反映したものとすることができる。EGFR阻害剤を用いて処置した患者において、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルに関しての曲線下面積を最大化することにより、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するか否かを最大化することができる。他の一部の実施形態では、特定の値より大きな曲線下面積を与えるようにROC曲線を拘束することができる。曲線下面積が0.5のROC曲線は、完全な不確定性を示し、一方、曲線下面積1.0は、2つのセットが完全に分離されることを反映する。したがって、0.75などの最小許容値を拘束として使用することができる。
【0059】
他の実施形態では、ROC曲線の勾配が1に等しい点の使用、感度および特異度の積が最大になる点の使用などの他の特徴、またはこれらのROC曲線の特徴の2つ以上の組合せを、目的関数を定義するために使用することができる。
【0060】
一部の実施形態では、腫瘍試料におけるEGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが閾値に比べて増加していると、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答することを示す。一部の実施形態では、腫瘍試料におけるEGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが閾値に比べて減少していると、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に非応答であることを示す。
【0061】
用語「遺伝子コピー数」は、ゲノム当たりの遺伝子数として通常定義される。用語「EGFR遺伝子コピー数」は、核に対するEGFR遺伝子数の比を意味する。非腫瘍形成性細胞または非新生細胞では、EGFR遺伝子コピー数は2以下である。非腫瘍形成性起源または非腫瘍性起源の組織切片では、in situハイブリダイゼーションを用いて検出する場合、GCNは2以下である。
【0062】
用語「EGFR遺伝子コピー数の増加または増幅」は、(EGFR阻害剤または抗EGFR抗体の処置に応答するまたは応答性の)患者に関連した腫瘍の細胞における上に定義した比が、同じ起源の非新生細胞に関連した腫瘍の細胞における特定の比または閾値と比較して高いかまたは増幅していることを意味する。この比または閾値(EGFR遺伝子数/核)は、2または3または4または5または6または7を超えるものであることが好ましい。特に、厚さが5μmの組織切片でISHを実施する場合には、前記の比または閾値は4以上であることが好ましい。特定の実施形態では、用語「EGFR遺伝子コピー数の増加または増幅」は、非腫瘍形成性細胞または非新生細胞のEGFR遺伝子コピー数より大きなGCNを意味する。厚さが6、7または8μmなど5μmを超える組織では、EGFR GCNまたは閾値は、4.5、5、5.5、6、6.5または7以上など4を超える値になることがある。厚さが5μm未満、例えば4μmの組織切片では、EGFR GCNまたは閾値は、3.5、3または2.5など4未満になることがある。組織切片の厚さは、3、4、5、6、7または8μm、またはこれらの値に基づいて、3〜5μm、4〜6μmまたは5〜8μmなどの任意の範囲にあることが好ましい。
【0063】
一部の実施形態では、4以上のEGFR遺伝子コピー数により、EGFR阻害剤を用いる処置に応答する可能性が高い癌患者が同定される。
【0064】
EGFR遺伝子コピー数の「増加または増幅」に適用可能なこれら前述の値によれば、EGFR阻害剤または抗EGFR抗体を用いる処置に応答しない、もしくは効果的に応答しない、もしくは正に応答しない、または非応答である患者の腫瘍細胞が示す相対的に減少した、または低い、または非増幅のコピー数についての比の値は、2未満である。一実施形態では、前記の比または閾値は4未満である。一部の実施形態では、4未満のEGFR遺伝子コピー数により、癌を罹患し、かつEGFR阻害剤を用いる処置に非応答である可能性が高い患者が同定される。
【0065】
用語「染色体7のコピー数」は、核当たりの染色体7の数を意味する。本発明によれば、この数は4.5以上であることが好ましい。非腫瘍形成性細胞または非新生細胞では、EGFR遺伝子コピー数は2以下である。非腫瘍形成性起源または非新生起源の組織切片では、in situハイブリダイゼーションを用いて検出する場合、GCNは2以下である。
【0066】
用語「染色体7のコピー数の増加または増幅」は、(EGFR阻害剤または抗EGFR抗体の処置に応答する)患者に関連した腫瘍の細胞における上に定義した比または閾値が、同じ起源の非新生細胞に関連した腫瘍の細胞における特定の比と比較して高いかまたは増幅していることを意味する。この比または閾値(染色体7の数/核)は、2または3または4または5または6または7を超えるものであることが好ましい。特に、厚さが5μmの組織切片でISHを実施する場合には、前記の比または閾値は4.5以上であることが好ましい。厚さが6、7または8μmなど5μmを超える組織では、染色体7のコピー数または閾値は、5、5.5、6、6.5または7以上など4.5を超える値になることがある。厚さが5μm未満、例えば4μmの組織切片では、染色体7のコピー数または閾値は、4、3.5、3または2.5など4.5未満になることがある。組織切片の厚さは、3、4、5、6、7または8μm、またはこれらの値に基づいて、3〜5μm、4〜6μmまたは5〜8μmなどの任意の範囲にあることが好ましい。
【0067】
一部の実施形態では、4.5以上の染色体7のコピー数レベルにより、EGFR阻害剤を用いる処置に応答する可能性が高い癌患者が同定される。
【0068】
染色体7のコピー数の「増加または増幅」に適用可能なこれら前述の値によれば、EGFR阻害剤または抗EGFR抗体を用いる処置に応答しない、もしくは効果的に応答しない、もしくは正に応答しない、または非応答である患者の腫瘍細胞が示す相対的に減少した、または低い、または非増幅のコピー数についての比の値は、2未満である。一実施形態では、前記の比または閾値は4.5未満である。一部の実施形態では、4.5未満の染色体7のコピー数レベルにより、EGFR阻害剤を用いる処置に非応答である可能性が高い癌患者が同定される。
【0069】
理論に拘束されるものではないが、EGFR阻害剤を用いる処置に応答する可能性が高い癌患者を同定するための閾値は、応答性患者と非応答性患者を分類するのに十分なEGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルである。
【0070】
「プローブ」(オリゴヌクレオチドプローブまたはポリヌクレオチドプローブまたはDNAプローブ)は、典型的には、長さが約50〜100ヌクレオチドから数百ヌクレオチド、数千ヌクレオチドまでの範囲にある核酸分子である。したがって、プローブは、50〜数千ヌクレオチドの範囲の任意の整数の長さを含む、本明細書に記載のアッセイで使用するのに適切な任意の長さとすることができる。典型的には、このような分子を使用して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標的核酸配列にハイブリダイズさせることにより、試料中の標的核酸配列を同定する。ハイブリダイゼーション条件は、上記に詳細に記載した。
【0071】
用語「酵素的金属組織学」は、本明細書では、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼが、金属源および活性化剤の存在下で、前記金属源からの金属を選択的に沈着させて局所的に黒く着色する染色法を指す(Hainfieldら,2002,Proceedings:Microscopy and Microanalysis 2002,Cambridge University Press,New York,page916を参照されたい)。これらの沈着物を形成させるのに好ましい金属は金および銀である。酵素的金属組織学は、例えばin situハイブリダイゼーション検出にとって、極めて高感度な手法である。
【0072】
本明細書の目的のために、腫瘍試料の「組織切片」は、腫瘍試料の単一部分または単一断片、例えば腫瘍試料からカットされた組織または細胞の薄いスライスを指す。複数の腫瘍試料切片を取って本発明による分析に供することもあることを理解されたい。一部の実施形態では、腫瘍試料の同じ組織切片をIHCおよび酵素的金属組織学の両方で分析する。一部の実施形態では、腫瘍試料からの連続組織切片をIHCおよび酵素的金属組織学を用いて分析する。
【0073】
「自動処理装置」は、IHCおよび/または酵素的金属組織学を自動的に実施することができる装置を意味する。このような装置は、複数の基板ホルダ、温度制御装置、温度プログラミング、湿室、液体および緩衝液用の容器などを含み得る。代表的な自動処理装置には、Ventana Medical SystemsのDISCOVERY(登録商標)XT、NexES(登録商標)IHCまたはBENCHMARK(登録商標)が含まれる。
【0074】
本発明によれば、「EGFR阻害剤」は、いずれの上皮増殖因子受容体(EGFR)も含むEGFRの発現および/または生物活性を阻害する(阻止する、低下させる、アンタゴナイズする、減少させる、リバースする)任意の薬剤である。したがって、阻害剤としては、これらに限定されないが、薬物/化合物/ペプチドの設計物または選択物、抗体またはその抗原結合断片、タンパク質、ペプチド、核酸(リボザイム、アンチセンス、RNAiおよびアプタマーを含む)、またはEGFRの発現および/または生物活性を阻害する他のいずれの薬剤も挙げることができる。例えば、EGFRの公知阻害剤としては、薬物であるゲフィチニブ(ZD1839,Iressa(登録商標),AstraZeneca,UK)およびエルロチニブ(OSI774,Tarceva(登録商標),Genentech,USA)、およびモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Erbitux(登録商標),Imclone,Bristol−Myers Squibb)が挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの特定の薬剤に限定されるものではなく、このような薬剤またはこれらの薬剤と実質的に同様の生物活性を有する薬剤のアゴニスト(下記に記載)を含むことができる。EGFRなどのタンパク質の生物活性または生物作用は、in vivoで(すなわちタンパク質の天然の生理的環境下で)またはin vitroで(すなわち実験室条件下で)測定されるかまたは観察されるように、天然に存在する形態のタンパク質により示されるかまたは実行される任意の機能を指す。EGFRの生物活性としては、これらに限定されないが、EGFへの結合、受容体ホモ二量体化またはヘテロ二量体化、チロシンキナーゼ活性、および細胞のホメオスタシスおよび分化と関係する下流の活性が挙げられる。
【0075】
チロシンキナーゼ阻害剤は、腫瘍細胞などの細胞の受容体型チロシンキナーゼおよび/または非受容体型チロシンキナーゼを標的とする治療薬または薬物のクラスを表わす。特定の実例では、チロシンキナーゼ阻害剤は、抗体ベース(例えば、抗チロシンキナーゼモノクローナル抗体等)またはポリヌクレオチドベース(例えば、チロシンキナーゼアンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉リボ核酸等)形態の標的治療である。チロシンキナーゼ阻害剤は、酵素のATP結合部位に結合することにより標的チロシンキナーゼを阻害する小分子であることが好ましい。小分子チロシンキナーゼ阻害剤の例としては、これらに限定されないが、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標);SU11248)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標);OSI−1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、イマチニブ(Gleevec(登録商標);ST1571)、ダサチニブ(BMS−354825)、レフルノミド(SU10)、バンデタニブ(Zactima;ZD6474(登録商標))、それらの医薬的に許容される塩、それらの誘導体、それらのアナログおよびそれらの組合せが挙げられる。本発明での使用に適したチロシンキナーゼ阻害剤のさらなる例としては、キナゾリン(例えば、PD153035、4−(3−クロロアニリノ)キナゾリン等)、ピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン(例えば、CGP59326、CGP60261、CGP62706等)、ピラゾロピリミジン、4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、クルクミン(ジフェルロイルメタン)、4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルイミド、ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン、キノキサリン(例えば、米国特許第5,804,396号明細書を参照されたい)、トリホスチン(tryphostin)(例えば、米国特許第5,804,396号明細書を参照されたい)、PD0183805、PKI−166、EKB−569、IMC−1C11、Affinitac(登録商標)(LY900003;ISIS3521)、および以下のPCT公開番号、国際公開第99/09016号パンフレット、国際公開第98/43960号パンフレット、国際公開第97/38983号パンフレット、国際公開第99/06378号パンフレット、国際公開第99/06396号パンフレット、国際公開第96/30347号パンフレット、国際公開第96/33978号パンフレット、国際公開第96/33979号パンフレットおよび国際公開第96/33980号パンフレットに記載されているチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0076】
好ましいEGFR阻害剤は抗EGFR抗体であり、最も好ましくは上述および以下の抗EGFR抗体である:免疫学的に有効な断片(Fab、Fv)および免疫コンジュゲート、特に免疫サイトカインを含む、マウスバージョン、キメラバージョンまたはヒト化バージョンのセツキシマブ、パニツムマブおよびマツズマブ。
【0077】
用語「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合するかまたは免疫学的に反応する免疫グロブリン分子(またはその組合せ)を指し、またはこれらに限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体および四重特異性抗体)、単鎖Fv抗体(scFv)、そのポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチド、および例えばFab′、F(ab′)、Fab、Fv、rIgGまたは相補性決定領域(CDR)断片を含む抗体の抗原結合断片を含む、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子改変抗体ならびに他の改変形態の抗体を含む。
【0078】
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一である、すなわちその集団を構成する個々の抗体が、少量存在する可能性のある天然に起こり得る変異を除いて同一である、抗体集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに合成することができる点で有利である。モノクローナル抗体の作製方法には、KohlerおよびMilstein(1975,Nature 256,495)、および「Monoclonal Antibody Technology,The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas」(1985,Burdonら,Eds,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Volume 13,Elsevier Science Publishers,Amsterdam)に記載のハイブリドーマ法が含まれ、または周知の組換えDNA法により作製可能である。さらに、モノクローナル抗体は、例えば、Clacksonら,Nature,352:624−628(1991)およびMarksら,J.Mol.Biol.,222:58,1−597(1991)に記載の手法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0079】
本発明は好ましくは結腸癌または結腸直腸癌に関するものであるが、EGFRを発現または過剰発現し、異なるEGFR遺伝子コピー数を有する患者に発生する他の癌および腫瘍に主として適用可能である。
【0080】
KRASの検出
上記に言及したように、k−ras遺伝子に活性化変異(「KRAS変異」)が存在すると、EGFR阻害剤、特に抗EGFR抗体に対する応答が低下することが示される。活性化KRAS変異の有無は、EGFR GCNのアッセイと一緒にアッセイすることができる。
【0081】
活性化KRAS変異の検出は、EGFR GCNまたは染色体7のコピー数および免疫組織化学によるEGFRタンパク質発現の測定と一緒に実行することができる。ここで「と一緒に」は、同じ試料または異なる試料で、同じ時間にもしくは異なる時間にかつ/または同じ場所でもしくは異なる場所でを含む。例えば、活性化KRAS変異の有無を、ある試料(例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチドを含む試料、または患者の癌細胞を含む試料)において検出することができ、かつEGFR GCNまたは染色体7のコピー数を、同じ試料において、実質的に同じ時間および同じ場所で(例えば同じ研究室の中で)検出することができる。別の例として、KRAS変異の有無を、第1の試料(例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチドを含む試料または腫瘍試料)において、第1の時間に検出することができ、かつEGFR GCNまたは染色体7のコピー数を、第2の試料(例えば、患者の腫瘍から得られた、スライドガラス上の腫瘍試料の組織切片)において、第2の時間に検出することができるが、第1および第2の試料は同じ場所でアッセイされる。別の例として、KRAS変異の有無を、第1の試料(例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチドを含む試料または腫瘍試料)において、第1の時間に検出することができ、かつEGFR GCNまたは染色体7のコピー数を、第2の試料(例えば、患者の腫瘍から得られた、スライドガラス上の腫瘍試料の組織切片)において、第2の時間に検出することができるが、第1および第2の試料は異なる場所でアッセイされる。一実施形態では、KRAS変異の存在およびEGFR遺伝子の低コピー数または染色体7の低コピー数により、パニツムマブなどのEGFR阻害剤の治療に応答する可能性が低い患者が示される。
【0082】
あるいは、癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するかまたは非応答であるかを検出および分析する方法であって、前記患者から得られた腫瘍試料由来の組織切片において、(i)前記組織切片におけるEGFRタンパク質の発現レベルを免疫組織化学(IHC)により決定し、かつ(ii)EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルを酵素的金属組織学により決定するステップであって、前記腫瘍試料由来の組織切片におけるEGFRの最高発現領域を、染色強度に基づいてIHCにより決定し、腫瘍試料における前記最高発現領域を酵素的金属組織学で使用して、EGFR遺伝子または染色体7の遺伝子コピー数を決定するステップと、前記患者の腫瘍試料がEGFRタンパク質の発現およびEGFR遺伝子または染色体7のコピー数の増幅を示す場合に、前記EGFR阻害剤を用いる処置のために前記患者を選択するステップとを含む方法を提供する。さらに、本方法は、前記腫瘍試料におけるKRAS変異の有無を判定するステップを含み、このステップにより、野生型KRASのタンパク質または遺伝子の存在およびEGFR遺伝子コピー数または染色体7のコピー数の増加があると、EGFR阻害剤を用いた処置にこの腫瘍は感受性が高いことが示される。変異KRASのタンパク質もしくは遺伝子の存在および/またはEGFR遺伝子の低コピー数もしくは染色体7の低コピー数により、EGFR阻害剤を用いた処置にこの腫瘍は感受性がないこと、またはEGFR阻害剤を用いた処置にこの患者は応答しないことが示される。特定の実施形態では、KRAS変異は活性化変異である。
【0083】
患者由来の腫瘍試料または患者由来の癌細胞から得られた試料におけるKRAS変異の検出は、患者に存在する癌細胞の核酸にあるKRAS変異の検出を含む。患者癌細胞のすべてがKRAS変異を含むことは必然ではないがあり得ることであり、例えば腫瘍がKRAS変異状態に関して不均一である可能性がある。例えば、KRAS変異は、試料および/または患者に存在する癌細胞の100%未満、95%未満、80%未満、70%未満、50%未満または25%未満に存在する可能性がある。試料中の癌細胞にいずれの割合で活性化KRAS変異が存在しても、患者がEGFR阻害剤処置に応答する可能性が低いことを示すことになる。
【0084】
癌細胞のk−ras遺伝子における活性化KRAS変異の存在は、EGFR阻害剤処置に対する臨床的に有益な応答と負に相関している。代表的な活性化変異は、例えば国際公開第2006/086777号パンフレットおよび国際公開第2007/001868号パンフレットに記載されている。
【0085】
例として、活性化KRAS変異には、1)k−rasヌクレオチド配列(例えばGenBank受託番号NM_033360.2に示されるヌクレオチド配列)の位置216でのG→T変異、2)k−rasヌクレオチド配列の位置216でのG→A変異、3)k−rasヌクレオチド配列の位置216でのG→C変異、4)k−rasヌクレオチド配列の位置215でのG→T変異、5)k−rasヌクレオチド配列の位置215でのG→A変異、6)k−rasヌクレオチド配列の位置215でのG→C変異、および7)k−rasヌクレオチド配列の位置219でのG→A変異が含まれる。
【0086】
活性化KRAS変異の検出は、様々な方法のいずれを使用しても実行することができる(以下を参照されたい)。核酸試料における配列変異(遺伝子多型および変異)を検出するための数多くの方法が、当技術分野で公知であり、活性化KRAS変異を検出するために使用することができる。そのような方法には、核酸のde novoシークエンシングに基づいた方法および核酸配列中の標的位置で配列変異体(例えば公知変異体)を検出するように設計された方法が含まれる。各変異体に差動的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブまたはプライマーとして使用して配列変異体を検出する。標的変異体に対する配列特異的プローブのハイブリダイゼーションの選択性を高めるための多くの手法が開発されている。配列特異的プローブのハイブリダイゼーションの程度は、多くの場合、その後のポリメラーゼ連鎖反応で形成される生成物量の検出および/または定量に基づいて検出する。
【0087】
染色体7の検出
本発明によるin situハイブリダイゼーションのための適切なプローブは、染色体の動原体に関連した反復性DNAと、好ましくは染色体7とハイブリダイズする(すなわち、二本鎖を形成する)。ヒト染色体の動原体は、アルファサテライトDNAと呼ばれる、約171塩基対の単量体反復長から構成される長い縦列反復DNAの複合体ファミリーを含有する。
【0088】
染色体プローブは、典型的には、長さが約25〜約100000ヌクレオチドである。より長いプローブは、典型的には、長さが約100〜約500ヌクレオチドの小断片を含む。動原体DNAおよび遺伝子座特異的DNAとハイブリダイズするプローブは、例えば、Vysis,Inc.(Downers Grove,Ill.)、Molecular Probes,Inc.(Eugene,Oreg.)、またはCytocell(Oxfordshire,UK)から市販されている。あるいは、プローブは、染色体またはゲノムDNAから標準手法により非商業的に作製することができる。例えば、使用できるDNA供給源としては、ゲノムDNA、クローン化DNA配列、宿主の正常染色体組に加えて1つのヒト染色体またはその一部を含有する体細胞ハイブリッド、およびフローサイトメトリーまたは顕微解剖により精製された染色体が挙げられる。目的領域は、クローニングを通して、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による部位特異的増幅により単離することができる。
【0089】
染色体プローブは、典型的には、フルオロフォアを用いて直接標識する。フルオロフォアにより、二次検出分子がなくてもプローブが視覚化可能になる。フルオロフォアをヌクレオチドに共有結合させた後、そのヌクレオチドを、ニックトランスレーション、ランダムプライミングおよびPCR標識などの標準手法を用いてプローブに直接組み込むことができる。あるいは、リンカーを用いてプローブ内のデオキシシチジンヌクレオチドをアミノ基転移させることができる。次いで、アミノ基転移されたデオキシシチジンヌクレオチドにフルオロフォアを共有結合させる。プローブはまた、ビオチンまたはジゴキシゲニン(digoxygenin)を用いて間接的に標識することができ、プローブの視覚化のために二次検出分子またはさらなる処理が必要である。例えば、ビオチンを用いて間接的に標識したプローブは、検出可能なマーカーに結合したアビジンにより検出することができる。例えば、アビジンは、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素マーカーに結合することができる。酵素マーカーは、その酵素の基質および/または触媒を使用して、標準熱量測定反応で検出することができる。アルカリホスファターゼの触媒には、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファートおよびニトロブルーテトラゾリウムが含まれる。ジアミノベンゾアートは、西洋ワサビペルオキシダーゼの触媒として使用することができる。好ましい実施形態では、酵素法は酵素的金属組織学であり、最も好ましくは銀in situハイブリダイゼーションである。
【0090】
異常細胞は、細胞における染色体7プローブのハイブリダイゼーションパターン(例えば各プローブに対するシグナル数)の検討およびシグナル数の記録により評価されるように、染色体7の多染色体性すなわち染色体7のコピー数の増幅を特徴とする。好ましい実施形態では、染色体7の増幅したコピー数もしくは染色体7のコピー数の比、または閾値は、4.5を超える。例えば、染色体7の増幅したレベルに対する閾値のカットオフは、細胞当たり4.0を超えるシグナルに設定することができ、好ましい実施形態では、増幅したレベルまたは比に対するカットオフすなわち閾値は、細胞当たり約3.5〜5.5のシグナルに設定することができる。しかしながら、パラフィン包埋検体の薄切(典型的には4〜6μm)は、細胞当たりのSISHシグナル数を、インタクトな核における実際のコピー数より幾分低下させるような細胞核の薄切をもたらす。したがって、染色体7の増幅したレベル、すなわち多染色体性に対する閾値およびコピーの消失を、応答または生存との関連を最適に反映するように経験的に設定する。染色体7の増幅したコピー数すなわち多染色体性に対する実際的なカットオフすなわち閾値は、CEN 7のコピー数を実際には3つまたは5つ有する細胞がカットオフすなわち閾値以下になる可能性があるとしても、この値が応答または生存と良好な相関を与えるため、細胞当たり約4のCEN 7シグナルに設定することができる。この場合、「正常」範囲に、染色体7の低い増幅レベルすなわち低い多染色体性が含まれてもよく、「多染色体性」の範囲を、より高レベルの多染色体性のみを含むものとすることができる。細胞におけるEGFRプローブのハイブリダイゼーションパターンを検討することによってEGFRコピー数を評価する場合も、適切なカットオフすなわち閾値を決定する際に、上記の染色体7について記載したものと同じ修正を適用することができる。
【0091】
変異EGFRの検出
変異したEGFR遺伝子または遺伝子産物は、腫瘍から、または尿、唾液もしくは血清などの他の体内試料から検出することができる。腫瘍試料中の変異したKRASまたはEGFRの遺伝子または遺伝子産物の検出のために説明したものと同じ技術を、変異EGFRを検出する際に他の体内試料に適用することができる。野生型EGFR遺伝子の変化はまた、野生型EGFRタンパク質の変化をスクリーニングすることにより検出することができる。例えば、組織をスクリーニングするために、EGFRと免疫反応するモノクローナル抗体を使用することができる。同族抗原がない場合、EGFR変異が示唆される。また、変異対立遺伝子の産物に特異的な抗体は、変異EGFR遺伝子産物を検出するために使用されよう。このような免疫学的アッセイは、当技術分野で知られている任意の好都合な形式で行うことができる。これらのアッセイには、ウェスタンブロット、免疫組織化学アッセイおよびELISAアッセイが含まれる。変化したEGFRタンパク質を検出するためのいずれの手段も、野生型EGFR遺伝子の変化を検出するために使用することができる。さらに、酵素的または化学的切断によってミスマッチを検出するためにDNAプローブを使用することができる。あるいは、ミスマッチした二本鎖の電気泳動度がマッチした二本鎖に比べてシフトしていることにより、ミスマッチを検出することができる。リボプローブまたはDNAプローブのいずれかを用いて、変異を含有する可能性のある細胞mRNAまたはDNAを、ハイブリダイゼーション前にPCRを使用して増幅することができる。EGFR遺伝子のDNA変化はまた、特にその変化が欠失および挿入など全体の再編成になる場合に、サザンハイブリダイゼーションを使用して検出することができる。ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅したEGFR遺伝子のDNA配列はまた、対立遺伝子特異的プローブを使用してスクリーニングすることができる。これらのプローブは核酸オリゴマーであり、そのそれぞれは、公知変異を保有するEGFR遺伝子配列領域を含有する。一連の対立遺伝子特異的プローブの使用により、PCR増幅産物をスクリーニングして、EGFR遺伝子における以前に同定された変異の存在を同定することができる。
【0092】
遺伝子産物をアッセイする方法
本開示の方法および組成物については、他に指示がない限り、当技術分野内の分子生物学(組換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学および生化学の従来手法を使用することになる。代表的な手法は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,2nd edition(Sambrookら,1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,ed.,1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,ed.,1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」,4.sup.th edition(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.,Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら.,eds.,1987);および「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullisら,eds.,1994)などの文献に詳細に説明されている。
【0093】
遺伝子発現プロファイリングの方法には、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づいた方法、ポリヌクレオチドのシークエンシングに基づいた方法およびプロテオミクスベースの方法が含まれる。試料中のmRNA発現を定量するための当技術分野で公知の代表的な方法には、ノーザンブロッティングおよびin situハイブリダイゼーション(Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999));RNAseプロテクションアッセイ(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));および逆転写PCT(RT−PCR)などのPCRベースの方法((Weisら,Trends in Genetics 8:263−264(1992))が含まれる。DNA二本鎖、RNA二本鎖およびDNA‐RNAハイブリッド二本鎖またはDNA−タンパク質二本鎖を含む配列特異的二本鎖を認識することができる抗体を使用することができる。
【0094】
マイクロアレイ
KRASおよびEGFRなどの目的遺伝子の発現レベルはまた、マイクロアレイ手法を使用して評価することができる。この方法では、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を基板上に配置する。次いで、配置した配列を、検査試料のmRNAから生成した、検出可能に標識したcDNAと特異的ハイブリダイゼーションに適した条件下で接触させる。RT−PCR法と同様に、mRNAの供給源は、典型的には、腫瘍試料から、場合によっては内部標準として同じ患者の正常組織または細胞株から単離した全RNAである。mRNAは、例えば、凍結した組織試料またはアーカイブ保管パラフィン包埋および固定(例えば、ホルマリン固定)の組織試料から抽出することができる。
【0095】
ハイブリダイゼーション法
好ましい実施形態では、EGFRなどの遺伝子または染色体7のコピー数の検出を、ハイブリダイゼーション法を使用して行う。核酸ハイブリダイゼーションは、単純に、プローブおよびその相補的な標的が相補的塩基対合によって安定なハイブリッド二本鎖を形成できる条件下で、プローブ(例えば、オリゴヌクレオチドまたはより大きなポリヌクレオチド)と標的核酸を接触させることを含む。本明細書で使用するハイブリダイゼーション条件は、核酸分子を使用して類似の核酸分子を同定する標準ハイブリダイゼーション条件を指す。そのような標準条件は、例えばSambrookら.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Labs Press,1989の中に開示されている。Sambrookらの同書は、その内容全体を参照によって本明細書に組み込むものとする(具体的には9.31〜9.62ページを参照されたい)。さらに、ヌクレオチドの様々なミスマッチ度を許容するハイブリダイゼーションを達成するために適切なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を計算する式が当業者には周知である。
【0096】
低いストリンジェンシー条件(例えば、低温および/または高塩濃度)下では、アニーリングする配列の相補性が完全でない場合でも、ハイブリッド二本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNAまたはRNA:DNA)が形成することになる。したがって、ハイブリダイゼーションの特異性は、低いストリンジェンシーでは低下する。逆に、高いストリンジェンシー(例えば、高温または低塩濃度)では、ハイブリダイゼーションの成功には、ミスマッチがより少ないことが必要である。
【0097】
ハイブリダイズした核酸は、試料核酸に結合した1つまたは複数の標識の検出により検出する。標識は、当業者に周知のいくつかの手段のうちのいずれによっても組み込むことができる。免疫組織化学的方法では、上記および下記に記載のものと同じ検出方法を使用することができる。
【0098】
多くの従来の検出方法は酵素を利用する。高感度の検出に一般に使用される酵素基質のタイプは、典型的には比色性、放射性または蛍光性である。従来の比色基質では、発色基質に対する酵素作用で新たな色(すなわちスペクトル吸収の変化)が生成する。このタイプの検出は、生成するクロモゲンが光学顕微鏡検査により、または分光装置により容易に検出されるという点で有利である。また、検出のための設備費は、他の方法よりも一般に少額である。例えば病理学では、西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素が3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)基質に作用して生成する茶色の場合、生検切片の観察のための簡単な明視野光学顕微鏡のみが必要である。西洋ワサビペルオキシダーゼと一緒に使用できる他のクロモゲンとしては、これらに限定されないが、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)およびBajoran Purpleが挙げられる。アルカリホスファターゼと一緒に使用できる他のクロモゲンとしては、これらに限定されないが、Fast RedおよびFerangi Blueが挙げられる。数多くのクロモゲンが当業者には入手可能であり、Thermo Fisher Scientificなどの会社が提供するカタログを通して商業的に入手可能である。
【0099】
検出方法に使用される様々な標識としては、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド(Texas red)、ローダミンなど)、および酵素(例えば、LacZ、CAT、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、および一般に検出可能な酵素として使用される他の酵素)、またはストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチン、もしくは例えばウサギIgGおよび抗ウサギIgGを含む抗原/抗体複合体など、複合体を形成することができる結合対のメンバー;フルオロフォア;金もしくは銀の粒子または粒子ドットなど光散乱物質またはプラズモン共鳴物質;または放射標識;および例えば6th Edition of the Molecular Probes Handbook by Richard P.Hoaglandに記載されている、当業者に周知の他の任意のシグナル生成標識を用いて標識されたプローブが挙げられる。
【0100】
EGFR遺伝子および/または染色体7などにハイブリダイズする核酸は、最も好ましくは銀in situハイブリダイゼーション(SISH)アッセイに関連して、金属標識または「酵素的金属組織学」により検出することが好ましい。SISHアッセイは、例えば実施例の項目で説明する。
【0101】
本明細書で使用する「酵素的金属組織学」または「酵素的金属組織学的方法」は、酵素の近傍における金属(ゼロ酸化状態の金属元素)の堆積または蓄積として定義される。典型的には、金属の蓄積または沈着は、酵素から約1ミクロンの距離内で開始することになるが、酵素から0.005、0.01、0.1、5、10、50、100、1000ミクロンで沈着が開始することもある。当然、金属沈着が継続するにつれて、金属蓄積がこの範囲を超えて拡大する可能性がある。金属は、銀、金、鉄、水銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム、コバルト、イリジウムイオンまたはそれらの混合物が好ましい。
【0102】
好ましい実施形態では、酵素的金属組織学は、ペルオキシダーゼおよび活性化剤の存在下における銀金属の沈着を、in situ、ハイブリダイゼーション(ISH)検出に対して、高解像度および最小バックグラウンドの組合せで高感度にすることができ、かつ油浸の必要性もなく従来の明視野顕微鏡で視覚化することを可能にする。このようなアッセイを、本明細書では、「銀in situハイブリダイゼーション」(SISH)と名付ける(例えば米国特許出願公開第20080299555A1号明細書を参照されたい)。具体的には、酵素的金属組織学は、油浸の必要性もなく従来の明視野顕微鏡を用いて染色体中の標的遺伝子の1コピーを検出できるようにする。SISHはまた、個々の遺伝子コピーに対する別個の金属沈着ドットなどのシグナルを個々に数え上げることができる解像度で遺伝子コピーの検出を可能にする。好ましい実施形態では、本発明は、核内ヒト染色体7のEGFR遺伝子の少なくとも2、3、4、5、6、7、8または9コピーを、別個の金属沈着ドットとして検出することを可能にする。
【0103】
本発明による腫瘍細胞の遺伝子および染色体のコピー数を、例えばSISHアッセイで核において測定することができ、またタンパク質発現を、例えば免疫組織化学アッセイで腫瘍細胞の核、細胞質および/または膜において評価することができる。両方の検査、例えばSISHおよび免疫組織化学、ならびに他の検出方法は、原発腫瘍、転移性腫瘍、局所再発腫瘍または他の腫瘍状態において実施することができる。腫瘍検体は、新鮮、凍結、固定または他の保存状態であってもよい。
【0104】
ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子のヌクレオチド配列は、当技術分野で周知であり、例えばGenBank受託番号AY588246(参照によって本明細書に組み込まれる)により見つけることができる。ヌクレオチドプローブも、当技術分野で周知であり、EGFR遺伝子の検出用プローブとして使用するために入手することができる。例えば、EGFRおよび染色体7動原体の配列を両方とも検出するためのそのようなプローブが入手可能である(例えば、LSI EGFR SpectrumOrange/CEP 7 SpectrumGreenプローブ(Vysis,Abbott Laboratories))。
【0105】
KRAS変異の非存在または野生型KRASの存在を示し、かつ増幅したレベルもしくは高いEGFR遺伝子コピー数またはEGFRのコピー数の増加(例えば遺伝子増幅および/または多染色体性)、あるいは染色体7のコピー数レベルの増加を有する患者は、EGFR阻害剤治療に対する高い応答率、低率の増悪、増悪までの長い期間および高率の長期生存を示す可能性が高くなる。染色体7の多染色体性またはEGFR遺伝子コピー数の全体的な増加が大きいほど、アウトカムの予測は良好になる。
【0106】
免疫化学的方法
免疫化学的(本明細書では「免疫学的」、「免疫組織化学的」とも呼ばれる)方法もまた、遺伝子の発現レベルを検出するのに適しており、本明細書に開示した方法に適用される。目的遺伝子の遺伝子産物に特異的に結合する抗体(例えばモノクローナル抗体)は、このような方法において使用することができる。抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素を用いて、抗体自体を直接標識化することにより検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な標識二次抗体と併せて使用することができる。免疫化学的プロトコールおよびキットは当技術分野で周知であり、市販されている。代表的な適切な免疫化学的方法としては、酵素結合免疫吸着測定法、ラジオイムノアッセイ、タンパク質ブロット法(「ウェスタン」ブロット法とも呼ばれる)およびエンザイムイムノアッセイが含まれる。一実施形態では、腫瘍試料におけるEGFRタンパク質を、好ましくは抗EGFRモノクローナル抗体を用いる免疫組織化学(IHC)により測定する。
【0107】
タンパク質の検出
本発明の一実施形態では、本方法は、EGFRを含むタンパク質の発現を検出するステップを含む。タンパク質発現は、生検により得られた腫瘍試料または腫瘍細胞材料などの適切な組織において、検出することができる。例えば、患者の固定化可能な腫瘍生検試料を、検出すべきタンパク質に選択的に結合する抗体、抗体断片またはアプタマーと接触させて、抗体、その断片またはアプタマーがそのタンパク質に結合したか否かを判定することができる。タンパク質発現は、当技術分野で標準の様々な方法を使用して測定することができ、それらの方法としては、これらに限定されないが、ウェスタンブロット、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光分極、リン光、免疫組織化学的分析、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡検査、蛍光標識細胞分取(FACS)およびフローサイトメトリーが挙げられる。好ましい実施形態では、免疫組織化学的(IHC)分析をタンパク質発現の検出のために使用する。タンパク質発現を検出するためのIHC法および好ましい評価基準は、例えば、Hirschら,J.Clin.Oncol.2003,21:3798−3807に詳細に記載されており、また実施例にも記載がある。
【0108】
タンパク質発現を評価するための好ましいが非限定的な方法では、免疫組織化学の結果の評価として以下のプロトコールを使用する。本発明の一態様では、陽性細胞の強度および割合に基づいて、EGFR発現をスコア化することができる。ただし、本明細書で提供したガイダンスがあれば、他のスコアリングシステムも当業者には明らかである。強度スコアは、実施例に記載のように定義することができる。EGFR阻害剤処置に応答および非応答の患者を分離するためのカットオフレベル、すなわち閾値を定義するために統計分析を使用する。例えば1つまたは多数のスコアリングポイントによるカットオフスコア、すなわち閾値スコアを低下させるかまたは上昇させることによって、このスコアリングシステムを修正または操作することができる。
【0109】
本発明の実施形態では、IHCによる測定からEGFRタンパク質の発現レベルの増加を示す腫瘍試料領域または腫瘍細胞について、EGFR遺伝子コピー数および/または染色体7の増幅を分析する。本発明の特定の目的は、試料におけるEGFRタンパク質の最高発現領域に対して遺伝子コピー数をカウントするようにユーザを導くことである。用語「最高発現」は、試料において最高の相対的IHC染色強度を示す試料の領域を指す。強度は、4等級の半定量スコアリング(0、1+、2+、3+)を使用して評価し、ここで、0はEGFR IHCの陰性結果を表わし、3+は染色強度が上皮基底層の染色と同様である結果を表わす。1+および2+のレベルは、無染色(0)と最高染色(3+)の間の中間の染色結果を表わす。したがって、本方法の性能特性により、0から3+までの4つの染色強度レベルが視覚化可能になる。本発明では、染色強度が判定される細胞コンパートメントは、細胞膜、細胞質、または細胞膜および細胞質の両方を併せたものを含む。この態様では、本発明のスコアリングシステム、すなわち染色強度の評価は、例えば腫瘍細胞膜のみをスコア化する(Dako EGFR pharmDxTM,Interpretation Manual)Dako EGFR pharmDxTMの説明とは異なる。
【0110】
最高染色強度を示す領域は、試料に応じて1+、2+または3+の染色強度レベルを有する領域になり得る。本発明の方法は、試料におけるIHC染色結果が不均一である、すなわちその試料が2つ以上の異なるレベルの染色を示す場合に、特に有利である。そのような場合には、本方法では、次の酵素的金属組織学ステップを実施するようにユーザを導いて、EGFR遺伝子または染色体7のコピー数を、腫瘍試料におけるEGFRタンパク質の最高発現領域(好ましくは2+または3+)でカウントする。少なくとも20の腫瘍細胞を酵素的金属組織学で分析することが好ましい。
【0111】
本発明者らは、EGFRタンパク質の発現ならびにEGFR遺伝子コピー数および/または染色体7のコピー数の検出を、対応するかまたは同じ腫瘍試料領域または腫瘍細胞で実施し、患者が処置に応答することを示唆する結果が得られた場合、その患者がEGFR阻害剤の投与に対してより応答的であることを見出した。
【0112】
具体的には、EGFR遺伝子コピー数および/または染色体7のコピー数の検出を、増加したレベルのEGFRタンパク質を発現する(例えば、実施例で示すスコアリング法を使用して)同じ腫瘍試料領域または同じ腫瘍細胞で評価する場合、増幅したレベルのEGFRコピー数および/または染色体7の増幅したコピー数がある腫瘍細胞を有する患者は、低レベルのEGFRタンパク質および低レベルのEGFR遺伝子コピー数および/または低レベルの染色体7のコピー数を発現する患者に比較して、EGFR阻害剤を用いて処置されるとより良好なアウトカム(例えば、良好な応答時間、遅い増悪速度、長期の生存期間および応答)を示す。
【0113】
KRAS変異を、上記のプロトコールのいずれかを用いるEGFRコピー数および/または染色体7のコピー数の検出と組み合わせて、EGFR阻害剤処置に応答する患者を検出する能力を高めることができる。例えば、本発明者らは、EGFRタンパク質の発現、EGFR遺伝子コピー数の増幅および/または染色体7の多染色体性(すなわちの染色体7のコピー数の増幅)に加えて野生型遺伝子KRAS遺伝子を有する患者は、EGFR阻害剤治療に応答する可能性が高いことを本明細書で実証する。さらに、EGFRタンパク質の発現およびEGFRの低GCNおよび/または染色体7の低コピー数に加えて変異KRAS遺伝子を有する患者は、EGFR阻害剤治療に非応答である可能性が高い。
【0114】
より具体的には、本発明者らは、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)により検出された、EGFR遺伝子コピー数の増幅および/または染色体7のコピー数の増幅、およびIHCによるEGFRタンパク質の発現が、抗EGFR抗体療法に対する応答と顕著に相関することを実証した。腫瘍試料におけるEGFR遺伝子コピー数の増幅および/または染色体7のコピー数の増幅および/またはEGFRタンパク質の高発現を有する患者は、抗EGFR抗体処置に対して応答的であった、すなわち応答、増悪までの時間および生存に関して顕著な改善があった。具体的には、EGFR遺伝子コピー数および/または染色体7のコピー数の評価が、EGFRタンパク質の発現と、i)同じ腫瘍細胞、またはii)同じ腫瘍領域(例えば隣接した組織スライド)において検出される場合。逆に、EGFR遺伝子コピー数の増加および/または染色体7の多染色体性が実証されなかった患者は、抗EGFR抗体処置に抵抗性であった。
【0115】
上記の遺伝子および染色体ならびに検出プロトコールの様々な組合せにより、EGFR阻害剤を用いる治療に応答すると予測される患者(および不良応答者と予測される患者)を同定する能力を増強または改善することができることは本明細書における本発明の説明から当業者には明らかであろう。したがって、EGFR、KRASおよび染色体7の使用、検出プロトコールならびに検出手法のいかなる組合せも、本発明に包含される。さらに、本発明は、同じ結果を達成するために他の手法を使用することができるので、本明細書に記載の検出手法(例えばSISHおよびIHC)に限定されるものではない。例として、以下の特定の組合せが、EGFR阻害剤に対する応答性を予測するのに特に有用であると本発明者らにより実証されている:(1)SISHを使用する、EGFR遺伝子コピー数および染色体7のコピー数の検出;(2)IHCを使用するEGFRタンパク質発現の検出およびSISHを使用するEGFR遺伝子コピー数の検出の組合せ;(3)IHCを使用するEGFRタンパク質発現の検出およびSISHを使用する染色体7のコピー数の検出の組合せ;(4)KRAS遺伝子における変異の有無の検出、IHCを使用するEGFRタンパク質発現の検出、およびSISHを使用するEGFR遺伝子コピー数の検出の組合せ;ならびに(5)KRAS遺伝子における変異の有無の検出、IHCを使用するEGFRタンパク質発現の検出、およびSISHを使用する染色体7のコピー数の組合せ。
【0116】
キット
本発明の実施形態は、本発明の任意の方法を実施するためのアッセイキットを含む。アッセイキットは、以下の成分の任意の1つまたは複数を含むことができる:(a)KRAS変異の有無を腫瘍試料においてin vitroで判定するための手段;上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅レベルおよび/または上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子の多染色体性レベルを腫瘍試料において検出するための手段;(c)EGFRタンパク質の発現を腫瘍試料において検出するための手段。
【0117】
さらに、アッセイキットは1つまたは複数の対照を含むことが好ましい。対照には、(i)KRAS変異のための所定の対照を含む情報;(ii)EGFR遺伝子コピー数のための所定の対照を含む情報;(iii)EGFR阻害剤感度または抵抗性のレベルを含む情報(例えば、EGFR阻害剤に対する感度またはEGFR阻害剤に対する抵抗性またはEGFR免疫組織化学と相関しているEGFR遺伝子増幅および/または多染色体性の所定の対照レベル)が含まれる。
【0118】
他の実施形態では、EGFR結合分子(例えば、モノクローナル抗体(クローン5B7など)またはその断片)に対する陽性または陰性対照として役立つ可能性のある1つまたは複数の組織または細胞の調製物(例えば異種移植片、細胞ペレットまたは凝固細胞)がマウントされた対照スライドガラスを、別個の適切な容器で提供することができる。一部の実例では、A431細胞、DU145細胞および/またはCaski細胞(またはそれらを用いて調製した異種移植片)が陽性対照として役立つ可能性がある。他の実例では、MCF−7細胞(またはそれを用いて調製した異種移植片)が陰性対照として役立つ可能性がある。他の実施形態では、EGFR遺伝子コピー数分析に対する陽性または陰性対照として役立つ可能性のある1つまたは複数の組織または細胞の調製物(例えば異種移植片、細胞ペレットまたは凝固細胞)がマウントされた対照スライドガラスを提供することができる。
【0119】
一実施形態では、KRAS変異を検出するための手段は、一般に、本発明の方法で使用することができる任意のタイプの試薬とすることができる。このような検出手段には、これらに限定されないが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でKRAS遺伝子にハイブリダイズするプローブまたはプライマーが含まれる。KRAS遺伝子の核酸配列は、当技術分野で周知であり、このような検出試薬を生成するために使用することができる。in situハイブリダイゼーションを実施するための試薬、ポリメラーゼ連鎖反応を実施するための試薬など、このような検出手段を使用してアッセイを実施するために有用なさらなる試薬もまた含むことができる。
【0120】
一実施形態では、EGFR遺伝子増幅および/または多染色体性を検出するための手段は、一般に、本発明の方法で使用することができる任意のタイプの試薬とすることができる。このような検出手段としては、これらに限定されないが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でEGFR遺伝子または染色体7(EGFRが位置する染色体)の一部にハイブリダイズするプローブまたはプライマーが挙げられる。EGFR遺伝子の核酸配列は、当技術分野で周知であり、このような検出試薬を生成するために使用することができる。in situハイブリダイゼーションを実施するための試薬、蛍光マーカーを検出するための試薬、ポリメラーゼ連鎖反応を実施するための試薬など、このような検出手段を使用してアッセイを実施するために有用なさらなる試薬もまた含むことができる。
【0121】
別の実施形態では、EGFRタンパク質発現を検出するための手段は、一般に、本発明の方法で使用することができる任意のタイプの試薬とすることができる。このような検出手段としては、これらに限定されないが、抗体およびその抗原結合断片、ペプチド、結合パートナー、アプタマー、酵素および小分子などが挙げられる。免疫組織化学または他の結合アッセイを実施するための試薬など、このような検出手段を使用してアッセイを実施するために有用なさらなる試薬もまた含むことができる。このようなキットの一実施形態では、少なくとも1つのEGFR抗体(例えば、モノクローナル抗体(クローン5B7など)またはその断片)の適切な量を、1つまたは複数の容器で提供する。
【0122】
本発明のアッセイキットの検出手段は、検出可能なタグまたは検出可能な標識に関連させることができる。そのようなタグは、目的の遺伝子またはタンパク質を検出するために使用する試薬の検出を可能にする任意の適切なタグとすることができ、これらに限定されないが、分光学的、光化学的、電気的、光学的または化学的な手段により検出可能な任意の組成物または標識を含む。本発明の有用な標識および方法には、標識ストレプトアビジンコンジュゲートを用いる染色ためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads.TM.)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般に使用される他の酵素)、ならびにコロイド金もしくは色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズなどの比色標識またはSISHなどの酵素的金属組織学を実施するための手段が含まれる。
【0123】
他のキット実施形態は、二次抗体(例えば、ヤギ抗ウサギ抗体またはウサギ抗マウス抗体)などのEGFRを結合する分子を検出するための手段を含む。一部のそのような実例では、検出可能な成分を用いて二次抗体を直接標識する(本開示に別記されているとおり)。他の実例では、一次または二次(もしくは高次)抗体に、ハプテン(ビオチン、DNPおよび/またはFITCなど)を結合させる。このハプテンは、検出可能に標識した同族ハプテン結合分子(例えば、ストレプトアビジン(SA)−西洋ワサビペルオキシダーゼ、SA−アルカリホスファターゼおよび/またはSA−QDot(商標))により検出可能である。一部のキット実施形態は、比色試薬の発色のために酵素を用いて標識した一次または二次(もしくは高次)抗体と一緒に使用するように、適切な容器に比色試薬(例えば、DABおよび/またはAEC)を含むことができる。
【0124】
一実施形態では、キットは、開示方法におけるキット含有物の使用方法を開示する説明書を含む。この説明書は、電子的形態(例えば、コンピュータディスケットまたはコンパクトディスク)で記載されていることも、または視覚的(例えば、ビデオファイル)になっていることもある。キットはまた、キットがそのために設計された特定の用途を容易にするために追加の成分を含むこともある。したがって、例えば、キットは、特定の方法を実施するために日常的に使用する緩衝液および他の試薬をさらに含むことがある。このようなキットおよび適切な含有物は、当業者には周知である。
【0125】
以下の実施例をある特定の特徴および/または実施形態を説明するために提供する。これらの実施例は、記載の特定の特徴または実施形態に本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0126】
実施例1
患者および方法
患者および倫理
この遡及研究には、一連の転移または局所進行結腸直腸癌患者74人が含まれ、そのうちの49人が、Turku University Hospitalで抗EGFR治療を用いて処置された。患者の51パーセントは、診断時に転移性疾患にすでに罹患していた。診断時の患者年齢の中央値は60歳(35〜73の範囲)であった。患者の特徴および処置を表1に示す。処置患者の44人/49人(90%)に対して処置応答を信頼性高く評価することができた。処置患者の10人は、KRAS検査の適中率が確定する前に抗EGFR治療が施されたという事実によりKRAS遺伝子に変異を有していた。抗EGFR処置に対する応答は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)(Eisenhauer,2009)に従ってコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴イメージング(MRI)により評価した。この研究はヘルシンキ宣言に従って実施した。National Authority for Medico−Legal Affairsの認証の下で、臨床データを検索し、組織試料を集め分析した。
【0127】
実施例2
KRAS分析
CRC細胞を少なくとも30%含むホルマリン固定されたパラフィン包埋試料を選択し、DxS K−RAS変異キット(DxS Ltd,Manchester,UK)を用いて、コドン12および13内のKRAS点変異を分析した。
【0128】
実施例3
IHC
EGFRに対する2つのモノクローナル抗体(VentanaMedical Systems/Roche Diagnostics,Tucson AZ)を用いて、3μm切片を染色した。EGFR(クローン3C6)mABはヒトEGFRの細胞外ドメインに向けられたものであり、EGFR mAb(クローン5B7)はヒトEGFRの内部ドメインに対するものである。染色は、ultraVIEW Universal DAB Detection Kit(Ventana/Roche)を使用して、BenchMark XT(Ventana/Roche)で実施した。EGFR IHCでは、臨床情報を知らされていない3人の観察者(OC,JS,ML)が独立してスコア化した。3つのスコアリングパラメーター、すなわち、最高染色強度(腫瘍領域の少なくとも10%を包含する)、最頻染色強度、および染色の局在(膜質、細胞質、またはその両方)を記録した。4つのカテゴリの染色強度、すなわち、0(陰性)、+(1+、弱)、++(2+、中程度)および+++(3+、強/最高、上皮基底層の強度に類似)を使用した。不一致の場合には、コンセンサススコアを使用した。
【0129】
実施例4
SISH
EGFR遺伝子は、EGFR DNAプローブ(Ventana/Roche)を用いて5μm切片から検出し、染色体7は、Chromosome 7 Probe(Ventana/Roche)を用いて並列切片から検出した。in situハイブリダイゼーションは、ultraVIEW SISH Detection Kit(Ventana/Roche)を使用して、BenchMark XTで実施した。各腫瘍について、最高IHC応答領域からEGFR遺伝子コピー数(GCN、遺伝子コピー数/細胞)および染色体7数(染色体コピー数/細胞)を、2人の観察者(ML,JS)が分析した。40の腫瘍細胞をEGFR SISHスライドから、20の腫瘍細胞をChr−7 SISHスライドからそれぞれ分析した。各腫瘍について、EGFR遺伝子の平均コピー数/細胞、Chr−7の平均コピー数/細胞、およびEGFR/Chr−7のコピー数比により評価した。
【0130】
EGFR GCN(コピー/細胞)およびChr−7数に対する最適なカットオフ値を、処置に対する応答(臨床的有益性対増悪)に関して生成した受信者動作特性(ROC)の分析を用いて決定し、それぞれ、4.0(感度94.7%、特異度78.6%、AUC 89.8)および4.5(感度84.0%、特異度78.6%、AUC 85.2)に設定した。
【0131】
実施例5
FISH
Vysis EGFR/CEP 7 FISH Probe Kit(Abbott Molecular Inc.,USA)を用いるFISH分析を、EGFR SISHの結果に基づいて選択した9つの試料(クラスターを有する3つの試料、4つを超えるコピーを有する3つの試料、正常な2つのコピーを有する3つの試料)について、標準プロトコールを使用して実施した。
【0132】
実施例6
統計
統計分析は、SAS9.1およびEnterprise Guide3.0プログラムを用いて実施した。度数分布表データを、χ−検定またはフィッシャー直接確率検定を用いて分析した。相関が得られた場合は、スピアマンの相関係数を計算した。SISHにより評価されるEGFR GCNおよびChr−7数に対するカットオフ値は、ROC曲線を用いて決定した。一変量生存期間分析のためにカプランマイアー検定およびログランク検定を使用した。抗EGFR治療(n=44)を用いて処置した患者に関する無増悪生存期間(PFS)を分析する場合は、生存期間は抗EGFR処置の開始から疾患増悪までの期間で計算した。全生存期間(OS)を評価する場合は、生存期間は抗EGFR治療の開始から死亡までの期間で計算した。多変量生存期間分析は、コックス比例ハザードモデルを使用して実施した。統計的検定はすべて両側検定であった。P値が0.05未満の場合を、統計的に有意と見なした。
【0133】
実施例7
結果
2つの異なる抗EGFR抗体、クローン5B7およびクローン3C6により、EGFRタンパク質の発現レベルおよび細胞内局在を検討した。全体的に、IHC反応性の強度および細胞内局在は、両方の抗体についてかなりの腫瘍内変動を示した(図1)。したがって、次のパラメーター:局在、最高強度および最頻強度を決定した。2つの異なる抗体を用いて得られた結果は、使用したパラメーターにかかわらず互いに相関した(p<0.0001、スピアマン)。最高強度領域は、腫瘍の大多数において中程度(++すなわち2+)としてスコア化され、10分の1の腫瘍のみが強い強度(+++すなわち3+)領域を示した。最頻EGFR染色強度は両方の抗体について低いものであった(+すなわち1+)。それぞれの染色強度(最高および最頻)ならびにそれらの細胞内局在の度数を表2に示す。
【0134】
平均EGFR GCNは5.6(中央値5.7)、平均Chr−7数は5.4(中央値5.5)であった。46の腫瘍(65%)が、カットオフ値(≧4.0)を超えるEGFR GCNを有し、25の腫瘍(35%)がカットオフ値未満であった。技術的問題により、症例の3/74(4%)においてSISHによるEGFR GCN分析を実施することができなかった。Chr−7数は、腫瘍の46/74(62%)において4.5以上であり、残りの28(38%)において4.5未満であった。最高のEGFR/Chr−7遺伝子コピー数比は1.7(平均値1.0、中央値1.0)であった。選択した9腫瘍のFISHの結果は、SISHの結果と相関した。
【0135】
EGFR GCNおよびChr−7数の増加は、5B7抗体により分析したEGFR IHCと正に相関した(スピアマン、両側に対してp=0.01)(表3)。染色強度(IHC)を0および+(1+)と++(2+)および+++(3+)のカテゴリに二分した場合も、相関は依然として統計的に有意であった。3C6反応性とChr−7数の増加との間に統計的に有意な相関(スピアマン、p=0.04)が認められたが、3C6反応性とEGFR GCNとの間には相関は観察されなかった。EGFR IHC(5B7抗体および3C6抗体)の細胞内局在は、EGFR GCNまたはChr−7数と相関しなかった。KRASの変異状態は、EGFRおよびChr−7のSISHの結果ともEGFR IHCの結果とも相関しなかった。
【0136】
抗EGFR治療に対する目標応答(完全寛解(CR)+部分寛解(PR))はKRAS WT患者の24%が達成し、臨床的有益性(CR+PR+不変(SD))は59%が達成した(図2A)。応答期間の中央値は17.8週であった(図3)。KRAS変異(MT)患者の群では、目標応答は認められず、3人の患者がSDを示した(図2B)。高いEGFR GCN(≧4.0)を有する患者は25%のみが、抗EGFR治療に応答しなかったが(PD)(図2C)、低いEGFR GCNを有する患者は大多数(88%)が非応答者であった(図2D)。これに比較して、KRAS WT患者は41%(14/34)が処置に応答しなかった(図2A)。高いEGFR GCN(≧4.0)を有するKRAS WT患者では、KRAS WT集団全体(図2A)よりも、目標応答率は高く(32%、7/22)、臨床的有益性の観察度数も多かった(86%)(図2E)。PFS期間の中央値は、ほとんど2倍の34週になった(図3)。対照的に、低いEGFR GCN(<4.0)を有するKRAS WT患者については、応答期間の中央値はわずか11週であり、目標応答は1人の患者(8%)のみが達成した(図2F)。4.0未満のEGFR GCNを有するKRAS WT患者のPFS期間は、変異KRASを有する患者と類似しており、それらの患者は大多数(92%)が抗EGFR治療にまったく応答しなかった(図2Fおよび3)。高いChr−7数(≧4.5)もまた、KRAS WT患者における抗EGFR処置応答の改善と統計的に有意に関連していた(図2G)。
【0137】
5人のKRAS WT患者に第一選択処置として抗EGFR薬物が投与され、患者の4人(80%)が目標応答を示した。興味深いことには、4人の患者全員がEGFR GCN≧4.0であった。5人目のKRAS WT患者は、EGFR GCNが4.0未満であり、治療中に増悪した。したがって、第一選択処置として抗EGFR治療を受けた5人のKRAS WT患者を除外して、別個に統計分析を実施した。応答率の改善が、高いEGFR GCN(≧4.0)を有するKRAS WT患者群で依然として認められ、目標応答は患者の17%(3/18)、不変は67%(12/18)、増悪は17%(3/18)で観察された。低いEGFR GCN(<4.0)を有する患者では、PDは、症例の91%(10/11)で認められた(フィッシャー直接確率検定、p=0.00009)。
【0138】
処置集団全体では、EGFR GCNおよびChr−7数は、両方ともROC曲線に基づいたカットオフ値4.0を使用した場合、PFSの改善と有意に関連した(表4)。PFSの有意な増加はまた、KRAS MT患者間ではなくKRAS WT患者内に認められた。興味深いことには、4.0未満のEGFR GCNを有するKRAS WT患者のPFSは、KRAS変異を有する患者と変わらなかった。KRAS WT/EGFR GCN≧4.0のPFS期間の中央値は、KRAS WT/EGFR GCN<4.0の患者のわずか11週に比較して、34週であった。同様に、高いChr−7数(≧4.5)を有するKRAS WT患者は、低いChr−7数を有する患者よりも長いPFS期間中央値を示した、すなわち32週対11週。第二選択またはそれ以降の抗EGFR治療で処置された患者のみを分析した場合、高いEGFR GCNを有するKRAS WT患者集団において、PFSは依然として統計的に有意に長かった(ログランク検定、p<0.0001)。応答、PFSおよびOSの期間およびp値を表4に要約する。
【0139】
抗EGFR処置患者群全体におけるPFSの改善に関連した他の要因は、腫瘍分化度(ログランク検定、p=0.008)およびKRAS遺伝子変異の非存在(ログランク検定、p=0.03)であった。
【0140】
EGFR GCN≧4.0は、処置集団全体(ログランク検定、p=0.02)およびKRAS WT患者の亜群(ログランク検定、p=0.03)におけるOSの改善と統計的に有意に関連した。KRAS MT患者間では、そのような関連は見出されなかった。Chr−7数はOSと関連しなかった。KRAS WT/EGFR GCN≧4.0の腫瘍を有する患者のOS期間の中央値は、カットオフ値未満のKRAS WT/EGFR GCNを有する患者の17週と比較して、50週であった。長いOS期間中央値は、低いChr−7数を有する患者と比較して、カットオフ値を超えるChr−7数を有するKRAS WT患者間でも観察された、すなわち46週対19週。第一選択で抗EGFR治療を用いて処置された患者を除外した場合、EGFR GCN≧4.0を有する患者において、OSは依然として有意に高かった(ログランク検定、p=0.001)。
【0141】
一変量生存期間分析において、抗EGFR処置患者群のPFSおよびOSと有意に関連した変量に対してコックスの多変量解析法を用いてP値を計算した。PFSの多変量解析には、EGFR GCN、Chr−7数、腫瘍分化度およびKRAS状態が含まれた。EGFR GCN(p=0.01、HR 0.11、95%CI 0.02〜0.62)および腫瘍分化度(p=0.01、HR 0.48、95%CI 0.26〜0.83)は、PFSの独立予測因子であることが判明したが、KRAS遺伝子状態については、統計的に有意な適中率が観察されなかった(p=0.09、HR 0.48、95%CI 0.26〜0.83)。KRAS WT患者を別個に分析した場合、EGFR GCN(p=0.007、HR 0.06、95%CI 0.008〜0.45)および腫瘍分化度(p=0.046、HR 0.45、95%CI 0.22〜1.0)は、独立してPFSを予測した。
【0142】
方法論的な困難および再現性の問題が、臨床における予測マーカーとしてのEGFR GCNの使用をこれまで妨げてきた。例えば自動処理装置を用いた完全自動SISH手法は、手動で実施するFISHおよびCISHと比較して、いくつかの利点を提供する。自動化は再現性を改善し、また、SISHは、FISHと比較して、分析した組織の形態学的な同定を可能にし、解釈を容易にする。
【0143】
長年の間、EGFR標的治療に対する応答の予測因子としてEGFR IHCを使用する試みがあったが不成功であった(Cappuzzo,2008;Martin,2009)。さらに、EGFR IHCとEGFR GCNとの間の相関は乏しかった(Frattini,2007;Spindler,2006;Shia,2005)。腫瘍組織の保存期間、一次抗体の選択および標準評価基準の欠如など、多くの理由がこれを説明するために提案されてきた(Martin,2009)。ヒトEGFRの内部ドメインに向けられた、本研究の抗EGFR(クローン5B7)抗体は、EGFR GCNおよびChr−7数と統計的に有意な相関を示した。また、ヒトEGFRの細胞外ドメインに向けられた抗EGFR(クローン3C6)も、Chr−7と統計的に有意な相関を示した。我々の知る限りでは、これまでの刊行物には、EGFR IHCとEGFR GCN/Chr−7数との間にこのような良好な相関を示すものはない。5B7抗体は、EGFRの機能的に活性な細胞内ドメインを検出するが、他の市販抗体のすべては、EGFRの外部ドメインに結合する。しかしながら、IHCスコアリング法がある役割を果たし得る態様では、最高強度評価がEGFR GCNと最良の相関を示す。典型的には、IHCは、EGFR増幅が見出される対応領域で一定の強い膜質染色を示した。その結果、IHCは、処置応答を予測しないが、SISH分析を導くのに、すなわち最高程度のEGFR GCNを示す腫瘍領域を示すのに有用である。したがって、本方法は、不均一なEGFR IHC染色パターンを示すEGFRタンパク質発現癌試料について特に有用である。
【0144】
注目すべきことに、抗EGFR処置患者の7/44(15.9%)において弱い(+)EGFRタンパク質免疫反応性(IHC、5B7抗体)と共に高いEGFR GCN(≧4.0)を観察した。臨床的有益性がこれらの患者すべてに達成され、57.1%に部分寛解が得られた。これらの患者の中で1人のKRAS変異患者が、処置に対してSD応答を示した。これらの所見は、乳癌におけるHER−2増幅の検出とは矛盾しており、そこでは陰性(−)および低い(+)HER−2タンパク質発現(IHC)は低いGCNを示し、in situハイブリダイゼーションによるさらなる分析を排除する。
【0145】
現在は、進行したCRC患者をKRAS状態に対してスクリーニングして、KRAS WT腫瘍を有する患者のみを抗EGFR治療を用いて処置する。この選抜は絶対的ではなく、KRAS WT腫瘍を有する患者の約半分は、抗EGFRモノクローナル抗体を結局は無駄に投与されることになる。BRAF変異は非応答性のごく一部を説明することができるが(Engstrom,2009)、さらなる予測マーカーの探索が実行可能である。予測検査の改善は医療費を削減し、同時に、EGFR標的治療に起因する有害な副作用に患者をさらすリスクを最小にするであろう。我々の結果は、4.0未満のEGFR GCNまたは4.5未満のChr−7数を有するKRAS WT患者にセツキシマブおよびパニツムマブを投与すべきではないことを示唆する。
【0146】
実施例8
頭頸部癌研究の概要
頭頸部癌細胞はEGFRを発現することが多く、その存在は不良アウトカムに関連する。抗EGFR抗体処置は、白金含有治療にかかわらず増悪する頭頸部の再発性または転移性扁平上皮癌に有効である(Vermorkenら 2007;Baselgaら 2005)。
【0147】
第一選択治療では、細胞傷害性薬剤単独に比較して、細胞傷害性薬剤にセツキシマブを加えると、応答率が改善する(Burtnessら、2005;Bourhisら、2006)。
【0148】
最近の研究では、抗EGFR抗体処置に対する応答を予測するマーカーを同定することができなかった(Khambata−Fordら 2010)。
【0149】
頭頸部癌について本発明の有用性を実証するために、例えば、抗EGFR治療を用いてまたは上記参考文献に記載された任意の臨床設定で処置された70〜100人の一連の頭頸部癌患者について、遡及研究を実施する。処置患者の処置応答を評価する。KRAS遺伝子変異分析、EGFR遺伝子変異分析、抗EGFRタンパク質IHCおよびEGFRタンパク質レベルのスコアリング、SISH、ならびに統計分析を上記実施例に記載のように実施する。
【0150】
実施例9
肺癌研究の概要
NSCLCでは、EGFR受容体シグナル伝達が、EGFRの活性化変異または過剰発現のいずれかにより活性化されていることが多く、したがって、患者の中には、抗EGFR抗体または抗EGFR小分子化合物の処置の恩恵を受ける者もいる。抗EGFR治療に対する応答を予測する方法を確立する必要がある(Coateら 2009)。
【0151】
頭頸部癌について本発明の有用性を実証するために、例えば、抗EGFR治療を用いてまたは上記に記載された臨床設定に従って処置された70〜100人の一連の肺癌患者について、遡及研究を実施する。処置患者の処置応答を評価する。KRAS遺伝子変異分析、EGFR遺伝子変異分析、抗EGFRタンパク質IHCおよびEGFRタンパク質レベルのスコアリング、SISH、ならびに統計分析を上記実施例に記載のように実施する。
【0152】
実施例10
神経膠腫研究の概要
EGFRは多形性神経膠芽腫の40%〜60%で過剰発現しており、EGFR遺伝子増幅が変異体3(EGFRvIII)と呼ばれる変異EGFRと関連していることが多く、この変異体では、エキソン2〜7の欠失により、リガンド結合がなくても構成的に活性な受容体が生成する(Nishikawaら 1994)。再発の神経膠腫および多形性神経膠芽腫における抗EGFR処置の有用性を評価する試験が進行中である。
【0153】
頭頸部癌について本発明の有用性を実証するために、例えば、抗EGFR治療を用いて処置された70〜100人の一連の神経膠腫患者について、遡及研究を実施する。処置患者の処置応答を評価する。KRAS遺伝子変異分析、EGFR遺伝子変異分析、抗EGFRタンパク質IHCおよびEGFRタンパク質レベルのスコアリング、SISH、ならびに統計分析を上記実施例に記載のように実施する。
【0154】
参考文献
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【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者がEGFR阻害剤を用いる処置に応答するかまたは非応答であるかを検出および分析する方法において、
− 前記患者から得られた腫瘍試料由来の組織切片で、
(i)前記組織切片でのEGFRタンパク質の発現レベルを免疫組織化学(IHC)により決定し、かつ
(ii)EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルを酵素的金属組織学により決定するステップであって、
前記腫瘍試料由来の組織切片におけるEGFRの最高発現領域を、染色強度に基づいてIHCにより決定し、前記腫瘍試料における前記最高発現領域を酵素的金属組織学で使用して、EGFR遺伝子または染色体7の遺伝子コピー数を決定するステップと、
− 前記患者の前記腫瘍試料がEGFRタンパク質の発現およびEGFR遺伝子または染色体7のコピー数の増幅を示す場合に、前記EGFR阻害剤を用いる処置のために前記患者を選択するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記腫瘍試料からの同じ組織切片が、IHCおよび酵素的金属組織学において使用されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記腫瘍試料からの連続組織切片が、IHCおよび酵素的金属組織学において使用されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが、核に対するEGFR遺伝子または染色体7の数の比として決定されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記酵素的金属組織学が、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)分析であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが、前記EGFR阻害剤を用いる処置に対する応答と相関するEGFR遺伝子コピー数の閾値または染色体7のコピー数の閾値と統計的に同等またはそれを上回る場合に、前記患者が前記EGFR阻害剤を用いる処置のために選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、EGFR遺伝子コピー数レベルまたは染色体7のコピー数レベルが、前記EGFR阻害剤を用いる処置に対する応答と相関するEGFR遺伝子コピー数の閾値または染色体7のコピー数の閾値より統計的に低い場合に、前記患者が前記EGFR阻害剤を用いる処置のために選択されないことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項4または6に記載の方法において、核中のEGFR遺伝子コピー数レベルが4.0以上かまたは染色体7のコピー数レベルが4.5以上の場合に、前記患者が前記EGFR阻害剤を用いる処置のために選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、頭頸部癌または神経膠腫であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、IHCが抗EGFR抗体を用いて実施されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記抗体が、前記EGFRの細胞内ドメインに結合することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記抗体が、クローン5B7または3C6であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記EGFR阻害剤が、抗体またはキナーゼ阻害剤であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記抗体が、セツキシマブ(mAb c225)、マツズマブ(mAb h425)またはパニツムマブ(mAb ABX)であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記キナーゼ阻害剤が、エルロチニブまたはゲフィチニブであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記腫瘍試料におけるKRAS変異の有無を判定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記腫瘍試料における変異したEGFR遺伝子またはEGFRタンパク質の有無を判定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記組織切片が、スライドガラス上に作製されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記組織切片の厚さが、5μm以下であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、ステップ(i)および(ii)が、自動処理装置を用いて実施されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法において、前記酵素的金属組織学が、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)分析であり、かつ前記癌が、結腸直腸癌であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法において、染色レベルが、腫瘍試料の細胞における膜質、細胞質ならびに/または細胞質および膜質の組合せの染色に基づいて決定されることを特徴とする方法。
【請求項23】
癌患者を処置する方法において、前記患者から腫瘍試料を入手するステップと、請求項1に記載の方法により前記試料を分析するステップと、前記患者がEGFR阻害剤を用いる処置のために選択された場合に、前記患者に前記EGFR阻害剤を投与するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法を実施するための手段を含むアッセイキット。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521487(P2013−521487A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555456(P2012−555456)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/FI2011/050194
【国際公開番号】WO2011/107664
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512227133)
【出願人】(512227144)
【出願人】(512227155)
【出願人】(512227166)
【出願人】(512227177)
【出願人】(512227188)
【Fターム(参考)】