説明

EP2受容体アゴニスト



式(iv)または式(iii)から選択される化合物:(iv)(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RSS]または(iii)(1R,2S)−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RSR];またはその塩、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグ、およびEP受容体のアゴニズムにより緩和される疾患におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AH13205の特定の立体異性体である(±)−トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸およびEP受容体アゴニストとしてのその使用に関する。本発明はまた、これらの立体異性体を含んでなる医薬組成物、ならびに種々の疾患を治療するためのこれらの立体異性体および組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタノイドはプロスタグランジン(PG)およびトロンボキサン(Tx)を含み、それらの受容体は、天然に存在する5つのプロスタノイドである、PGD、PGE、PGF2α、PGI2およびTxAのそれぞれに対する感受性に基づき、異なる5つのクラス(DP、EP、FP、IPおよびTP)に分類される(Coleman, R.A., Prostanoid Receptors. IUPHAR compendium of receptor characterisation and classification, 第2版, 338-353, ISBN 0-9533510-3-3, 2000)。EP受容体(その内因性リガンドはPGEである)は、EP、EP、EP、およびEPと呼ばれる4つのサブタイプに分類されている。これらの4つのタイプのEP受容体はクローニングされ、分子・薬理レベルの両方で明らかにされている(Coleman, R.A., 2000)。
【0003】
EPアゴニストは、限定するものではないが、月経困難症(WO03/037433)、早期産(GB2293101)、緑内障(WO03/040126)、高眼圧症(WO03/040126)、免疫疾患(WO03/037433)、骨粗鬆症(WO98/27976,WO01/46140)、喘息(WO03/037433)、アレルギー(WO03/037433)、骨疾患(WO02/24647)、骨折治療(WO98/27976、WO02/24647)、受精能(Breyer, R.M., et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 905, 221-231 (2000))、男性の性機能不全(WO00/40248)、女性の性機能不全(US6,562,868)、歯周疾患(WO00/31084)、胃潰瘍(US5,576,347)および腎疾患(WO98/34916)を含む多くの疾患の治療に有用であることが示されている。
【0004】
優れた選択性を有する公知のEPアゴニストの1つはブタプロスト:
【化1】

【0005】
である。AH13205である(±)−トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸はEPアゴニストとして知られる(例えば、 Hillock, C.J. and Crankshaw, D.J., European Journal of Pharmacology, 378, 99-108 (1999)を参照)。
【0006】
これはまた、7−{2−[4−(1−ヒドロキシ−ヘキシル)−フェニル]−5−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタン酸(帰属のためのフォントを加えてある)と呼ぶこともでき、下記の構造:
【化2】

【0007】
を有する。この構造は3つの不斉炭素原子を有し、従って8つの可能な立体異性体を有する。シクロペンタノン上の基がトランス配置である場合、主要な立体異性体である4つの立体異性体を生じさせ、基がシス配置である場合、少ないほうの4つの立体異性体を生じさせる。
【0008】
主要な4つの立体異性体は下記の構造:
【化3】

【0009】
を有する。本出願人は、主要な4つの立体異性体をそれぞれ分離し、それらの活性を測定することができた。しかしながら、これらの立体異性体の分離の最初の試みは成功しなかった。
【0010】
種々の市販の固定相を用いるキラルHPLCにより、酸形の全ての立体異性体の混合物について試みたが、成功しなかった。
【0011】
種々の市販の固定相および移動層を用いるキラルHPLCにより、以下の実施例で製造されるエステルの2つの混合物について、多数の分離の試みを実施したが、この方法は、よくても分析レベルで成功したに過ぎず、分取スケールでの分離は成功しなかった。
【0012】
しかしながら、最終的に、以下の実施例2に記載されているように、エステルでの立体異性体を分離する試みが成功した。
【0013】
本発明者らはまた、関心のある立体異性体の立体選択的合成経路の発明を行った。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
第1の側面において、本発明は以下の1つから選択される化合物:
【化4】

【0015】
を提供する。
【0016】
第2の側面において、本発明は、少なくとも90重量%が以下の形の1つから選択される、トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸:
【化5】

【0017】
を提供する。
【0018】
トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸の少なくとも95、97、99、99.5または99.9重量%が、示された4つの形の1つであることが好ましい。
【0019】
第3の側面において、本発明は、少なくとも80重量%が以下の形の1つ:
【化6】

【0020】
である、2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸を提供する。
【0021】
2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸の少なくとも90、95、97、99、99.5または99.9重量%が、示された4つの形の1つであることが好ましい。
【0022】
第4の側面において、本発明は以下の形の1つから選択される化合物:
【化7】

【0023】
を提供する。
【0024】
第5の側面において、本発明は、少なくとも90重量%が以下の形の1つ:
【化8】

【0025】
から選択される、トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸を提供する。
【0026】
第6の側面において、本発明は、少なくとも80重量%が以下の形の1つ:
【化9】

【0027】
である、2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸を提供する。
【0028】
上記の6つの側面はまた、記載されている化合物の塩、溶媒和物、化学的に保護された形態およびプロドラッグにも関する。
【0029】
本発明の第7の側面は、以下のステップ:
(a)1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オンを塩化(−)−DIPで不斉還元して、(S)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(S−BPH)を製造すること;
(b)S−BPHを変換して(S)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンにすること;
(c)(S)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンをtert−ブチルリチウムで処理し、ついでペンチニル銅:ヘキサメチルリン酸トリアミド(1:2)で処理し、ついで2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オンと縮合して、トランスおよびシス−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルのジアステレオマー混合物を製造すること;
(d)t−ブチルジメチルシリル基を脱保護して、トランスおよびシス−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルのジアステレオマー混合物を得ること;
(e)移動層に100%エタノールを用い、キラル固定相に、3−アミノプロピルトリエトキシシランのベンゼン溶液で処理した、大孔径シリカゲル担体上に吸着させたアミローストリス(3,5−ジメチルフェニル−カルバメートを用いるHPLCにジアステレオマー混合物をかけること;
(f)溶離液中の分画として、単一の立体異性体をほぼ単離すること;
を含んでなる、化合物の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の第8の側面は、以下のステップ:
(a)塩化(+)−DIPで1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オンを不斉還元して、(R)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(R−BPH)を製造すること;
(b)R−BPHを(R)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンに変換すること:
(c)(R)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンをtert−ブチルリチウムで処理し、ついでペンチニル銅:ヘキサメチルリン酸トリアミド(1:2)で処理し、ついで2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オンと縮合して、トランスおよびシス−2−{4−[1−(R)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルのジアステレオマー混合物を製造すること;
(d)t−ブチルジメチルシリル基を脱保護して、トランスおよびシス−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルのジアステレオマー混合物を得ること;
(e)移動層に100%エタノールを用い、キラル固定相に3−アミノプロピルトリエトキシシランのベンゼン溶液で処理した、大孔径シリカゲル担体上に吸着させたアミローストリス(3,5−ジメチルフェニル−カルバメートを用いるHPLCにジアステレオマー混合物をかけること
(f)溶離液中の分画として、単一の立体異性体をほぼ単離すること;
を含んでなる、化合物の製造方法を提供する。
【0031】
第7および第8の側面において、”ほぼ”という用語は、製造された化合物の少なくとも90重量%が、化合物の単一立体異性体であることを意味する。好ましくは、製造された化合物の95、97、99、99.5または99.9重量%が、化合物の単一立体異性体である。
【0032】
本発明の第9の側面は、以下のステップ:
(a)有機銅試薬および有機リチウム試薬の存在下で1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンを5−オキソ−シクロペンテンカルボン酸{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステルに不斉付加させて1,2−トランス生成物を得ること;
(b)3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)−アミノ]−2−ボルニル基をメタノールと反応させることによりメチル基に変換して、2−{4−[1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステルを得ること;
(c)塩基の存在下、2−{4−[1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステルを7−ブロモヘプタン酸エチルで処理して、1−メトキシカルボニル−2−{4−[1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸エチルエステルを得ること;
(d)C1位のメチルエステル基を除去し、LiIの2,4,6−コリジン溶液でカルボエトキシ基を加水分解すること;
(e)tert−ブチルジメチルシリルヒドロキシル−保護基を除去すること;
を含んでなる化合物の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の第10の側面は、以下のステップ:
(a)有機銅試薬および有機リチウム試薬の存在下、(S)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサンを5−オキソ−シクロペンテンカルボン酸(1R,2S,3R,4S)−{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステルに不斉付加させて、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1R,2S,3R,4S)−{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステルを得ること;
(b)3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)−アミノ]−2−ボルニル基をメタノールと反応させてメチル基に変換させて、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、メチルエステルを得ること;
(c)塩基の存在下、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸チルエステルを7−ブロモヘプタン酸エチルで処理して、(2S)−1−メトキシカルボニル−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸エチルエステルを得ること;
(d)C1位のメチルエステル基を除去し、LiIの2,4,6−コリジン溶液で(6−カルボエトキシ)ヘキシルエステル基を加水分解して(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸を得ること;
(e)tert−ブチルジメチルシリルオキシヒドロキシル−保護基を除去すること;
を含んでなる化合物の製造方法を提供する。
【0034】
本発明の第11の側面は、第7から第10までの側面のいずれか1つの方法により得られるか、または得ることが可能な化合物を提供する。本発明の第12の側面は、以下の一般合成セクションに記載の1以上のステップを含んでなる、本発明の第1から第6までの側面のいずれか1つに記載の化合物の製造方法を提供する。
【0035】
本発明のさらなる側面は、治療方法における使用のための、第1から第6までの側面のいずれか1つの化合物、もしくは第7から第10までもしくは第12の側面のいずれか1つの方法により製造される(あるいは製造可能な)化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0036】
本発明の他の側面は、薬学的に許容される担体または希釈剤とともに、第1から第6までの側面のいずれか1つの化合物、もしくは第7から第10までもしくは第12の側面のいずれか1つの方法により製造される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0037】
本発明のさらなる側面は、EP受容体のアゴニズムにより緩和される疾患の治療のための医薬の製造における、第1から第6までの側面のいずれか1つの化合物、もしくは第7から第10までもしくは第12の側面のいずれか1つの方法により製造される(あるいは製造可能な)化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0038】
本発明の他の側面は、以下に述べる方法による、本発明の化合物または関連中間体の合成方法を提供する。
【0039】
本発明の他の側面は、第1から第6までの側面のいずれか1つの化合物、もしくは第7から第10までもしくは第12の側面のいずれか1つの方法により製造される(あるいは製造可能な)化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を治療を必要とする患者の投与することを含んでなる、EP受容体のアゴニズムにより緩和されることができる疾患の治療方法を提供する。
【0040】
EP受容体のアゴニズムにより治療されることができる疾患は上記で説明したが、とりわけ、月経困難症、早期産、緑内障、骨粗鬆症、喘息、アレルギー、骨疾患、骨折治療、不妊症、男性の性機能不全、女性の性機能不全、歯周疾患、胃潰瘍および腎疾患を含む。
【0041】
EP受容体アゴニストは、T細胞活性化および炎症性サイトカインの放出を抑制できることが知られているが、ヒトT細胞におけるこれらの効果に関与するEP受容体はいまだに明らかにされていない。本発明者らは、EPアゴニストがヒトT細胞活性化(増殖)を抑制し、インターロイキン2(IL−2)腫瘍壊死因子(TNFα)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)を含む複数の炎症性サイトカインの放出を抑制することを見いだした。この活性プロフィールにより、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、リウマチ様関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、強皮症、多発性硬化症、I型糖尿病、および移植片拒絶(とりわけ乾癬)を含む、免疫および炎症性疾患の治療にEP受容体アゴニストが有用であることが強く示唆される(Griffiths, C., Current Drugs Targets - Inflammation & Allergy, 3, 157-161, (2004); Lebwohl, M., Lancet, 361, 1197-1204 (2003); Salim, A. & Emerson, R., Curr. Opin. Investig. Drugs, 2(11), 1546-8 (2001))。従って、EP受容体のアゴニズムにより緩和されることができるさらなる疾患は乾癬である。
【0042】
さらに、本発明者らはまた、EP受容体アゴニストが、炎症性サイトカインであるTNFαのヒト単球および肺胞マクロファージからの放出を抑制することも示した。この活性のプロフィールは、EP受容体アゴニストが免疫および炎症性疾患、特に炎症性肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患、急性呼吸窮迫症候群、肺線維症および嚢胞性線維症を含むがこれらに限定されない)の治療に有用であるという考えにさらなる証拠を提供するものである。
【0043】
さらに、本発明の側面は、IL−2、TNFαおよび/またはIFNγ産生抑制により緩和される疾患を治療するためのEPアゴニストの使用およびIL−2産生抑制により緩和される疾患の治療のための医薬の製造におけるEPアゴニストの使用に関する。
【0044】
本発明はまた、第1から第3の側面の化合物、または第4、第5、第6、第7もしくは第9の側面の方法により製造される(あるいは製造可能な)化合物の有効量を細胞に接触させることを含んでなる、in vitroまたはin vivoでのEP受容体の刺激方法および/またはIL−2、TNFαおよび/またはIFNγ産生抑制方法を提供する。
【0045】
一部の実施形態において、前述の化合物は、他の3つのEP受容体(すなわちEP、EPおよびEP)と比較して、EP受容体に対して選択性を示すことができる。この選択性により、特定の疾患の治療における可能な利点を有する本発明の化合物の効果のターゲッティングが可能となる。
【0046】
定義
他の形態を含む
特記しない限り、これらの置換基の公知のイオン、塩、溶媒和物および保護体を上記に含む。例えば、カルボン酸(−COOH)への言及は、そのアニオン(カルボキシレート)(−COO)、塩または溶媒和物ばかりでなく、通常の保護体もまた含む。同様に、ヒドロキシル基への言及はまた、そのアニオン(−O)、塩または溶媒和物ばかりでなく、ヒドロキシル基の通常の保護体もまた含む。
【0047】
塩、溶媒和物および保護体
対応する活性化合物の塩(例えば、薬学的に許容される塩)を製造、精製、および/または取り扱いすることが好都合であるか、または所望される場合がある。薬学的に許容される塩の例は、Berge, et al., J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977) に詳細に説明されている。
【0048】
例えば、化合物が陰イオン性であるか、または陰イオンになることができる官能基(例えば−COOHは−COOになることができる)を有している場合、適切なカチオンと塩を形成することができる。適切な無機カチオンの例は、限定するものではないが、NaおよびKなどのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土塁カチオン、ならびにAl3+などの他のカチオンを含む。適切な有機カチオンの例は、限定するものではないが、アンモニウムイオン(すなわちNH)および置換アンモニウムイオン(例えばNH、NH、NHR、NR)を含む。一部の適切な置換アンモニウムイオンの例には、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミンに加えて、リジンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものがある。通常の四級アンモニウムイオンの例には、N(CHがある。
【0049】
対応する活性化合物の溶媒和物を製造、精製、および/または取り扱いすることが好都合であるか、または所望される場合がある。本明細書においては、”溶媒和物”という用語は、通常の意味において、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)および溶媒の錯体を指すために用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などの水和物として好都合に呼ぶことができる。
【0050】
活性化合物を化学的に保護された形態で製造、精製、および/または取り扱いすることが好都合であるか、または所望される場合がある。”化学的に保護された形態(chemically protected form)”という用語は、本明細書においては通常の化学的な意味で用いられ、1以上の反応性官能基が、特定の条件下(例えばpH、温度、放射線、溶媒など)で望ましくない化学反応から保護されている化合物に関する。実際、保護しなければ特定の条件下で反応性である官能基を可逆的に非反応性にするために、公知の化学的方法が用いられている。化学的に保護された形態において、1以上の反応性官能基が保護基または保護化基(遮蔽基もしくはマスキング基または遮断基もしくはブロッキング基としても知られる)の形である。反応性官能基を保護することにより、保護基に影響を与えることなく、他の保護されていない反応性官能基に関する反応を行うことができる。通常は次のステップにおいて、分子の残りの部分に実質的に影響を与えることなく、保護基を除去することができる。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(T. Green and P. Wuts; 3rd Edition; John Wiley and Sons、1999) を参照のこと。
【0051】
かかるさまざまな”保護化”、”ブロッキング”、または”マスキング”法は、有機合成において公知であり、広く使用されている。例えば、特定の条件下で共に反応性であると思われる2つの非等価な反応性官能基を有する化合物を誘導体化して官能基の1つを”保護化”し、それにより非反応性にすることができ、このように保護化された場合、該化合物は実質的に1つの反応性官能基のみを有する反応剤として使用できる。所望される反応(他の官能基が関わる)が完了した後、保護基を”脱保護”して元の官能基に戻すことができる。
【0052】
例えば、ヒドロキシ基はエーテル(−OR)またはエステル(−OC(=O)R)(例えば:t−ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルまたはt−ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(−OC(=O)CH,−OAc))として保護できる。
【0053】
例えば、カルボン酸基はエステル(例えば:C1−7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t−ブチルエステル);C1−7ハロアルキルエステル(例えば、C1−7トリハロアルキルエステル);トリC1−7アルキルシリル−C1−7アルキルエステル;もしくはC5−20アリール−C1−7アルキルエステル(例えばベンジルエステル;ニトロベンジルエステル);またはアミド(例えばメチルアミド)として保護できる。
【0054】
プロドラッグ
活性化合物をプロドラッグの形で製造、精製、および/または取り扱いすることが好都合であるか、または所望される場合がある。本明細書においては、”プロドラッグ”という用語は、代謝(例えば、in vivoで)された場合、所望の活性化合物を生成する化合物に関する。一般的に、プロドラッグは不活性であるか、または該活性化合物より活性が低いが、好都合な取り扱い、投与または代謝特性を提供できる。
【0055】
特記しない限り、特定の化合物に言及する場合、そのプロドラッグもまた含む。
【0056】
例えば、プロドラッグの一部は活性化合物のエステル(例えば、生理学的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝中に、エステル基(−C(=O)OR)は切断されて活性薬物を生成する。かかるエステルは、適切な場合には、親化合物中に存在する他のいずれかの反応性基を前もって保護し、親化合物中のいずれかのカルボン酸基(−C(=O)OH)などをエステル化し、ついで必要に応じて脱保護して合成することができる。
【0057】
かかる代謝的に不安定なエステルの例は、Rが:C1−7アルキル(例えば、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−nBu、−sBu、−iBu、−tBu);C1−7アミノアルキル(例えば、アミノエチル;2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル;2−(4−モルホリノ)エチル);C1−7ヒドロキシもしくはポリヒドロキシアルキル(例えば2−ヒドロキシエチル、2.3−ジヒドロキシプロピル(グリセリル))およびアシルオキシ−C1−7アルキル(例えば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1−アセトキシエチル;1−(1−メトキシ−1−メチル)エチル−カルボニルオキシエチル;1−(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ−カルボニルオキシメチル;1−イソプロポキシ−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシル−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;ならびに1−(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル);である式−C(=O)ORのものを含む。
【0058】
あるいはまた、プロドラッグの一部は酵素的に活性化されて活性化合物を生成するか、またはさらなる化学反応により活性化合物を生成する化合物を生成する(例えば、ADEPT、GDEPT、LIDEPTなど)。例えば、プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシド抱合体であることができ、あるいはまたアミノ酸エステル誘導体であることができる。
【0059】
治療
本明細書においては、疾患の治療という文脈における”治療”という用語は、一般に、所望される治療効果が達成される、例えば疾患の抑制などの、ヒトまたは動物(例えば獣医治療)のいずれかの治療に関し、進行の抑制、進行の停止、疾患の改善、および疾患の治癒を含む。予防的処置(すなわち予防)としての治療もまた含む。
【0060】
本明細書においては、”治療的に有効な量”という用語は、所望される治療処方計画に基づき投与された場合、妥当な便益/リスク比につりあった所望される治療効果を発揮するのに有効な、活性化合物、または活性化合物を含んでなる物質、組成物もしくは製剤の量に関する。適切な投与量範囲は、一般的に0.01〜20mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜10mg/kg/日であるが、眼局所投与の場合、約0.00001〜1mg/日まで投与量を下げることもできる。
【0061】
組成物およびその投与
いずれの適切な投与経路および投与手段のためにも組成物を製剤化することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬、眼内および舌下を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、鞘内および硬膜外を含む)投与に適した製剤中に使用されるものを含む。製剤は単位製剤で好都合に提供することができ、製薬学業界に公知のいずれの方法によっても製造できる。かかる方法は、活性成分と1以上の補助成分を構成する担体とを混合するステップを含む。一般に、活性成分と液体担体もしくは微細固体担体または両方とを均一かつ緊密に混合し、ついで必要に応じて製品を成形することにより製剤を製造する。
【0062】
固体組成物に関しては、通常の無毒の固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。上記で定義した活性化合物は、担体として例えばポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセリドなどを用いて、座剤として製剤化できる。投与用液体医薬組成物は、例えば、上記で定義した活性化合物と所望による医薬アジュバントとを例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール、ポリオキソールエステルなどの担体中に溶解、分散などし、それによって溶液または懸濁液を調製することにより製造できる。必要に応じて、投与用医薬組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなど)の、少量の無毒の補助物質を含むこともできる。かかる製剤の実際の製造方法は公知であり、当業者には明白であろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th edition, pub. Lippincott, Williams & Wilkins, 2000 を参照のこと。投与される組成物または製剤は、いずれにしても、治療対象者の症状を緩和するのに有効な量で活性化合物(単数または複数)を含有する。
【0063】
0.25〜95%の活性成分と無毒の担体からなる残りの部分とを合わせて含有する製剤または組成物を製造できる。
【0064】
経口投与に関しては、薬学的に許容される無毒の組成物は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどの、通常使用される賦形剤のいずれかを混合して製造される。かかる組成物は、溶液、サスペンジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末剤、持続放出製剤などの形をとる。かかる組成物は、1%〜95%、さらに好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の活性成分を含有できる。
【0065】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射により特徴付けられる。注射剤は、溶液もしくはサスペンジョンのいずれかの通常の製剤、注射の前に溶液もしくはサスペンジョンにするのに適した固体製剤、またはエマルジョン製剤で製造できる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。加えて、必要に応じて、投与用医薬組成物はまた、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウムなどの、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤などの少量の無毒の補助物質を含有することができる。
【0066】
かかる非経口組成物に含有される活性化合物のパーセンテージは、化合物の活性および対象における必要性ばかりでなく、その特定の性質によって主に決まる。しかしながら、溶液中に0.1%〜10%のパーセンテージの活性成分が使用可能であり、組成物が固体で、前記パーセンテージに後で希釈される場合は、さらに高濃度が可能である。好ましくは、組成物は、溶液中に0.2〜2%の活性成分を含有する。
【0067】
経皮投与に適した製剤は、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム剤、ローション、およびオイルばかりでなく、パッチ、ばんそうこう、包帯、ドレッシング、デポー剤、およびリザーバーを含む。
【0068】
軟膏は、一般的に、活性化合物およびパラフィン系または水混和性軟膏基剤から製造される。
【0069】
クリーム剤は、一般的に、活性化合物および水中油型クリーム基剤から製造される。必要に応じて、クリーム基剤の水層は、例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物などの、少なくとも約30重量%の多価アルコール(すなわち、2以上のヒドロキシル基を有するアルコール)を含むことができる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の患部を介する活性化合物の吸収または透過を促進する化合物を含むことができる。かかる皮膚透過促進剤の例は、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体を含む。経膣投与に適した製剤は、活性化合物に加えて当該技術分野で適切として知られる担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提供されることができる。
【0070】
眼局所投与用点眼剤は、好ましくは、0.001〜20%の活性成分と、水もしくは生理食塩水などの公知の担体および下記のような他の添加剤とからなる残りの部分を含有する。
【0071】
典型的な眼用組成物は:
(a)抗菌性保存剤(適切な防腐剤は塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、オナマー(onamer)、もしくは当業者に公知の他の薬剤を含む。かかる防腐剤は一般的に約0.001%〜約1.0重量%の濃度で用いられる);
(b)可溶化剤(ポリソルベート20、60および80;プルロニックF−68、F−84およびP−103;チロキサポール;クレモフォア;ドデシル硫酸ナトリウム;グリセロール;PEG400;プロピレングリコール;シクロデキストリン;または当業者に公知の他の薬剤など。かかる補助溶剤は一般的に約0.01%〜約2重量%の濃度で用いられる);ならびに
(c)増粘剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたは他の当業者に公知の薬剤など。かかる薬剤は、一般的に、約0.01%〜約2重量%の濃度で用いられる);
を含むことができる。
【0072】
’不活性成分’と呼ばれることもある他の随意の成分は、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム(一水和物および/または無水)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、トロメタミン、ホウ酸、マンニトール、エデト酸二ナトリウム、pH調節用水酸化ナトリウムおよび/または塩酸ならびに精製水を含む。
【0073】
プロスタグランジンを含有する眼用製剤は、特に、米国特許第5,889,052号;米国特許第4,599,353号;米国特許第6,011,062号;米国特許第6,235,781号;米国特許第5,849,792号;米国特許第5,631,287号に記載されている(本願に参照として取り入れる)。
【0074】
一般的合成方法
式1の化合物:
【化10】

【0075】
(式中、
【化11】

【0076】
は、各キラル中心で確定した立体化学構造を示し、ペンタノン上の基は互いにトランス位にある)は、各キラル中心で同じ立体化学構造を有する式2の化合物:
【化12】

【0077】
(式中、R’はC1−7アルキル基(例えばメチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)、ペンチル(C)、ヘキシル(C)、ヘプチル(C)などの1〜7炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子の1つから水素原子1つを除去して得られる一価の部分を表す)から、標準法を用いて二重結合を還元し、酸およびアルコールを脱保護する(例えば、還元は、常温・常圧で酢酸エチルなどの溶媒中、水素、パラジウム/カーボンで実施できる)ことにより合成できる。特に好ましいアルコール保護基は、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などのシリル基であり、これは例えば酸水溶液および補助溶剤で除去でき、またこの条件により、酸基も脱保護できる。これらの反応はいずれの順序によっても実施できる。二重結合は、シスもしくはトランス配置、またはこれらの混合物のいずれであることもできる。
【0078】
式2の化合物は、2つの不斉中心のいずれにおいても同一の立体化学構造を有する式3のエノラート:
【化13】

【0079】
を、式4の化合物:
【化14】

【0080】
(式中、Xはハロゲン化物またはメシレートなどの脱離基であり、R’は式2に記載のものである)により、LiOi−Prなどの強塩基の存在下、室温でトラップすることにより合成できる。
【0081】
式3の4つのエノラートは、シクロペント−2−エノン(式5):
【化15】

【0082】
と、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式6の化合物:
【化16】

【0083】
とを、遷移金属触媒(好ましくはRh(I))の存在下、BINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)などのキラルリガンドの存在下で反応させることにより製造できる。S−BINAPを用いれば、式3aのエノラート:
【化17】

【0084】
が得られ、R−BINAPを用いれば、式3bのエノラート:
【化18】

【0085】
が得られる。
【0086】
式5および式6の化合物の反応の前に、式6の化合物は、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式7の化合物:
【化19】

【0087】
とClTi(Oi−Pr)とを反応させることによりその場で製造できる。この反応は、一般に、Hayashi, T., et al., JACS, 124, 12102-12103 (2002) に記載の方法に従って実施できる(例えば、テトラヒドロフラン中、3%の触媒の存在下、不活性雰囲気下で、20℃、1時間、1.6当量の式6の化合物を式5の化合物と反応させる)。
【0088】
式7の化合物は、キラル中心で同じ立体化学構造を有する、対応する式8のブロモ化合物:
【化20】

【0089】
を、溶媒(例えばTHF)中、アルキルリチウムで処理することにより製造できる。
【0090】
式8の化合物は、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式9の化合物:
【化21】

【0091】
を、例えばTBDMSClと反応させるなど、キラル中心の立体化学構造を保持する標準的な条件を用いて保護することにより製造される。
【0092】
化合物9の単一の立体異性体は、式10の化合物:
【化22】

【0093】
から、エナンチオ選択的還元(例えば Brown, H.C., et al. J. Am. Chem. Soc., 110, 1539-1546 (1988)を参照のこと)か、または化合物9のラセミ体に還元し、ついで光学分割することのいずれかにより製造できる。
【0094】
式4の化合物は、例えばSuzuki, M., et al., J.Am.Chem.Soc., 107, 3348-3349 (1985) などの、天然プロスタグランジンの合成中に見られ、種々の経路により合成できる。
【0095】
Taber, D.F., et al., J. Org. Chem., 62, 194-198 (1997) により開示された経路に基づく1つの経路を以下に示す。
【化23】

【0096】
他の可能な方法は、プロパルギルアルコールに対して異なるアルキル化剤を用いる(下記に示す)が、アルキル化剤の製造にはさらなるステップを必要とする。この例には、ブロモ酪酸のオルトエステルのアルキル化がある(Patterson, J.W., et al., Synthesis, 1985, 337-338)。5−ヘキシン酸のオルトエステルをBuLi/ホルムアルデヒドと反応させて同じ中間体を得ている(Syn. Comms. 1989, p.1509)。さらなる可能な経路には、5−ヘキシン酸(Aldrichより市販)と塩基およびホルムアルデヒドとを直接反応させることを含む。
【化24】

【0097】
式1の4つの化合物への代替経路の1つは、不斉中心が同じ立体化学構造を有する式11の化合物:
【化25】

【0098】
から、最初に水素化ナトリウムと反応させ、ついでカリウムアミドまたはブチルリチウムなどの強塩基と反応させてジアニオン(Weiler, L., J.Am.Chem.Soc., 92, 6702-6704 (1970) および Modern Synthetic Reactions, 第2版 1972, H.O. House, p. 553などを参照のこと)を合成し、ついでこれをハロペンタン酸エステルと反応させて置換エステルを得ることができ(Huckin, S.N. and Weiler, L., Can.J.Chem., 52, 2157 (1974))、ついでこれを加水分解し、例えばコリジン中、ヨウ化リチウムで処理するか、またはDMSO中シアン化ナトリウムで処理するなどの標準的な条件で脱炭酸(Modern Synthetic Reactions, 第2版 1972, H.O. House, p. 511-517 を参照のこと)して得ることができる経路である。ハロペンタン酸エステルをさらに反応性の高い式4のハロゲン化アリルなどのアルキル化剤と置き換え、ついで二重結合を還元することが必要な場合もある。
【0099】
式11の化合物は、2つの不斉中心のそれぞれで同じ立体化学構造を有する式12の化合物:
【化26】

【0100】
と、トルエンまたはTHFなどの溶媒中、穏やかに加熱しながら、炭酸ジメチルおよび、水素化ナトリウムなどの塩基とを反応させることにより合成できる。
【0101】
式12の化合物は、シクロペント−2−エノン(式5):
【化27】

【0102】
と、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式13の化合物:
【化28】

【0103】
とを、遷移金属触媒(好ましくはRh(I))の存在下、キラルリガンド(好ましくはBINAP)の存在下で、ボロン酸付加(Takaya, Y., et al., J.Am.Chem.Soc., 120, 5579-5580 (1998) and Hayashi, T., Synlett, SI, 879-887 (2001)を参照のこと)させることにより合成できる。適切な条件は、ジオキサン水溶液中、60℃、20時間での、触媒(3%)およびキラルリガンドの使用を含む。
【0104】
既知の化学反応例と同様に、S−BINAPの使用により式12aの化合物:
【化29】

【0105】
が得られる一方、R−BINAPの使用により、式12bの化合物:
【化30】

【0106】
が得られる。
【0107】
式13の化合物は、標準法により、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式8の化合物から製造できる。この方法は、最初、溶媒(例えばTHF)中、リチウム交換反応試薬(例えばt−ブチルリチウム)により、適切な温度(ブチルリチウム/THFの場合は−78℃)で処理し、ついで適切なホウ素試薬(例えばB(Oi−Pr))で処理し、ついで加水分解(例えば水酸化カリウムによる)することを含む(Thompson, W.J. and Gaudino, J., J. Org. Chem., 49, 5237-5243 (1984))。
【0108】
式13の化合物から、不斉中心が同じ立体化学構造を有する式11の化合物への代替経路の1つは、式13の化合物と、式14のメチルカルボキシ置換シクロペント−2−エノン:
【化31】

【0109】
との、遷移金属触媒(好ましくはRh(I))の存在下、キラルリガンド(好ましくはBINAP)の存在下でのボロン酸付加による反応である。適切な条件は、ジオキサン水溶液中、60℃、20時間での、触媒(3%)およびキラルリガンドの使用(すなわち、化合物5と式13の化合物とのカップリングに用いる反応条件と同様)を含む。
【0110】
式1の4つの化合物へのさらなる1つの代替経路は、不斉中心が同じ立体化学構造を有する式15の化合物:
【化32】

【0111】
から、例えばDMF中、水素化ナトリウムなどの強塩基を反応させてモノアニオンを得、ついでこれをハロヘプタン酸エステルと反応させて置換ケトエステルを得ることができ、ついでこれを加水分解し、例えばコリジン中、ヨウ化リチウムで処理するか、またはDMSO中、シアン化ナトリウムで処理するなどの標準的な条件を使用して脱炭酸することができる経路である(Modern Synthetic Reactions, 第2版 1972, H.O. House, p. 511-517 を参照のこと)。シクロペンタノン上のトランス配置は、立体障害によって起こる。
【0112】
式15の化合物は、キラル中心で同じ立体化学構造を有する式13の化合物と、式16のメチルカルボキシ置換シクロペント−2−エノン:
【化33】

【0113】
(Funk, R.L., et al., J.Am.Chem.Soc, 115, 8849-8850 (1993)) とを、遷移金属触媒(好ましくはRh(I))の存在下、キラルリガンド(好ましくはBINAP)の存在下でカップリングさせることにより合成できる。適切な条件は、ジオキサン水溶液中、60℃、20時間での、触媒(3%)およびキラルリガンドの使用(すなわち、化合物5と式13の化合物とのカップリングに使用する反応条件と同様)を含む。
【0114】
あるいはまた、(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(式17)の立体選択的合成は、以下の一般合成経路により達成されることができる。
【化34】

【0115】
式17の化合物は、4−ヘキシル−フェニル側鎖上の−OH基がアルコール保護基で保護されている化合物18から製造できる。
【化35】

【0116】
前述のように、特に好ましいアルコール保護基は、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などのシリル基であり、これは、例えば酸水溶液および補助溶剤(例えばTHF)により除去できる。
【0117】
式18の化合物は、カルボキシメチル基を除去し、ヘプタン酸エステルを加水分解することにより、式19の化合物から製造できる。これは、例えば、ヨウ化リチウムおよび2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン)を用いて反応させることにより達成できる。
【化36】

【0118】
化合物19は、式20の化合物にヘプチル−エチルエステル側鎖を付加させることにより合成できる。
【化37】

【0119】
これは、−COMe基に隣接した水素原子を除去するために適切な塩基を用いて式20の化合物を処理することにより達成できる。この反応のための好ましい塩基は、NaHの無水溶媒(DMEなど)溶液である。
【0120】
続いて、得られた化合物に7位が活性化されたヘプタン酸エチルを付加させることにより式19の化合物を得る。ヘプタン酸エチルは、7位でハロゲン原子により活性化されていることが好ましい。このハロゲン原子は、臭素原子であることがさらに好ましい。活性化ヘプタン酸エチルの付加中に触媒を含有することが必要とされる場合もある。かかる触媒は、好ましくはヨウ化ナトリウムである。
【0121】
式20の化合物は、エステル交換反応により式21の化合物から製造できる。
【化38】

【0122】
化合物20のメチルエステルの合成は、密閉容器中で、化合物21をメタノールと共に加熱することにより達成できる。
【0123】
式21の化合物は、式22の不飽和カルボニル化合物への1,4−付加により製造できる。
【化39】

【0124】
これは、式23の有機金属試薬を銅(I)化合物と反応させ、ついで式22の化合物を付加させることにより達成できる。
【化40】

【0125】
ここで式23中のMは、銅よりも電気陰性度が低い元素を表す。好ましくはMはLi、MgX、BRおよびZnXであり、ここでXはハロゲン原子を表す。
【0126】
式22と式23の化合物のカップリング反応に用いる銅(I)試薬は、好ましくは陰イオン性クプラートであり、さらに好ましくはLiCu−(2−Th)CN(リチウム2−チエニルシアノクプラートとして知られる)である。
【0127】
式23の化合物は、式24のハロゲン化物の標準的な有機金属生成反応により製造できる。
【化41】

【0128】
式24において、Xはハロゲン原子であり、好ましくはIまたはBrである。
【0129】
式22の化合物は、Tetrahedron 1996, 52, 971-986 に記載の方法により、容易に入手できる出発物質から製造できる。
【0130】
頭字語
便宜上、多くの化学基は、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、iso−プロピル(iPr)、n−ブチル(nBu)、sec−ブチル(sBu)、iso−ブチル(iBu)、tert−ブチル(tBu)、n−ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、テトラヒドロピラニル(THP)およびアセチル(Ac)を含む(これに限定するものではない)公知の略語を用いて表される。
【0131】
便宜上、多くの化学化合物は、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(i−PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルもしくはジエチルエーテル(EtO)、酢酸(酢酸)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、アセトニトリル(ACN)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)、1.2−ジメトキシエタン(DME)およびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む(これに限定するものではない)公知の略語を用いて表される。
【0132】
選択性
他のEP受容体(すなわちEP、EP、EP)に対する、EP受容体アゴニストの選択性は、EPのKi(以下を参照)を他のEP受容体のKi(以下を参照)により割ることにより数量化できる。得られる逆比は、好ましくは10以上であり、さらに好ましくは100以上である。
【実施例】
【0133】
(実施例)
NMRスペクトルは、Bruker AV300またはBruker DPX400のいずれかで測定した。マススペクトルはWaters ZMDシングル四重極質量分析計で測定した。旋光度はPerkin Elmer旋光計341で測定した。
【0134】
実施例1:AH13205のメチルエステルの4立体異性体をそれぞれが含む2つの混合物の合成
(a)(i)1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オン(1)の合成
【化42】

【0135】
AlCl(83g)およびブロモベンゼン(200mL)の混合物に、氷冷下、撹拌しながら、窒素雰囲気下で、30分にわたって塩化ヘキサノイル(75mL)を滴下した。ついで混合物を80℃(外部)で1.5時間加熱したところ、溶液は深紅色に変化していた。ついで混合物を冷却し、600mLの氷水中に注ぎ、次にDCM(800mL)で抽出した。ついで有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)し、減圧下で濃縮した。ついで濃縮物をイソヘキサン(1L)で処理し、終夜フリーザー中に放置したところ、結晶化が起こった。わずかにオフホワイトの固体を濾過し、さらに冷ヘキサンで洗浄して表題化合物(84g)を得た。nmrおよびtlcにより、十分に純粋であることが確認された。1H NMR (CDCl3, δ): 0.95 (3H, t); 1.4 (4H, m); 1.75 (2H, m); 2.95 (2H, t); 7.6 (2h, d); 7.85 (2H, d)
(a)(ii)(S)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(S−BPH)(2a)の合成
【化43】

【0136】
−25℃に冷却した塩化(−)−DIP[B−クロロジイソピノカンフェニルボラン](13.5g)の無水THF(20ml)溶液に、温度を−20℃以下に保ちながら5〜10分かけて1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オン(10g)の無水THF(20ml)溶液を加えた。混合物をさらに6時間、−25℃に維持し、ついで激しく撹拌しているジエタノールアミン(12ml)およびトリエチルアミン(10ml)の混合物のエーテル(250ml)溶液中に加えた。混合物を終夜撹拌し、希塩酸、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣をジクロロメタンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ついでヘプタンから再結晶して化合物2a(4.5g;m.p.70〜71℃)を得た。
【0137】
[α]24=−26.5(c=4.00;CHCl
1H NMR (CDCl3, δ): 0.85 (3H, t); 1.2-1.9 (9H, m); 4.6 (1H, t); 7.15 (2H, d); 7.45 (2H, d).
HPLC(Chiracel OD 250 x 4.6mm,溶離液ヘキサン:IPA(99:1),流速0.5ml/min,λ=254nm): 44分(100%e.e.).
(a)(iii)(R)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(R−BPH)(2b)の合成
【化44】

【0138】
実施例1(a)(ii)に記載の方法と同様な方法により、塩化(+)−DIP[B−クロロジイソピノカンフェニルボラン](13.5g)および1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オン(10g)から化合物2b(4g;m.p.70〜71℃)を製造した。
【0139】
[α]24=+27.3(c=4.06;CHCl
m/z(EIMS):256,258
1H NMR (CDCl3, δ): 0.85 (3H, t); 1.2-1.9 (9H, m); 4.6 (1H, t); 7.15 (2H, d); 7.45 (2H, d).
HPLC(Chiracel OD 250 x 4.6mm,溶離液 ヘキサン: IPA(99:1),流速0.5ml/min,λ=254nm): 47分(100%e.e.).
化合物2aおよび2bの絶対立体化学構造を、Brown, H.C., et al. J. Am. Chem. Soc., 110, 1539-1546 (1998) に記載されている、長鎖芳香族ケトンを還元する文献方法から類推して帰属した。これらのアルコールは、キラルHPLCにより本質的にホモキラルであることが示された。
【0140】
(a)(iv)(S)−(−)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(S−BPH)(2a)の代替合成
【化45】

【0141】
BH・THF(1M THF溶液,234mL,234mmol)を窒素雰囲気下で撹拌し、−10℃に冷却し、ついで(R)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン(24mL,24mmol)で処理した。20分撹拌後、1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オン(1)(48.3g)のTHF(379mL)溶液を1時間にわたって加え、ついでさらに20分間撹拌した後、MeOH(100mL)で注意深くクエンチした(Hが発生する)。MeOHは、−10℃ではゆっくり反応するので、RTでクエンチすることが望ましい。ついで混合物を減圧下で濃縮し、次にMeOH(300mL)に再度溶解してHCl(2M EtO溶液,40mL)で処理した。溶液を5分間撹拌し、ついで減圧下で濃縮し、EtOで粉末化して、濾過により固体を除いた。母液を再度減圧下で濃縮し、ついで−10℃でヘキサン(480mL,10倍量)で再結晶して、表題化合物をふわふわした白色固体(20.7g)で得た。
【0142】
(b)(i)(S)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(3a)の合成
【化46】

【0143】
S−BPH(2a)(10g)、塩化tert−ブチルジメチルシリル(7g)およびイミダゾール(3.7g)の混合物を無水ジメチルホルムアミド(100ml)中で、16時間撹拌した。混合物を石油エーテルと水の間で分配し、2層を分離した。有機層を水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテルによりカラムクロマトグラフィーにかけ、化合物3a(14.5g)をオイルで得た。
【0144】
m/z (EIMS): 370, 372
1H NMR (CDCl3, δ): -0.2 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.85 (3H, t); 1.25 (6H, m) 1.55 (2H, m); 4.6 (1H, m); 7.1 (2H, d); 7.4 (2H, d).
(b)(ii)(R)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(3b)の合成
【化47】

【0145】
実施例1(b)(i)に記載の方法と同様な方法で、R−BPH(2b)(12.5g)から化合物3b(18.5g)を製造した。
【0146】
m/z (EIMS): 370, 372
1H NMR (CDCl3, δ): -0.2 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.85 (3H, t); 1.25 (6H, m) 1.55 (2H, m); 4.6 (1H, m); 7.1 (2H, d); 7.4 (2H, d).
(c)2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オン(5)の合成
【化48】

【0147】
市販されているこの既知化合物は、Bagli, J. et al., J. Org. Chem., 1972, 37, 2132-2138 および Bernady, K.F., J.Org. Chem., 1980 45, 4702-4715 の方法により、エチル2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチルから3ステップで製造した。
【0148】
(d)(i)2−{4−[1−(R)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(約3:1のトランス:シス混合物))(6b)の合成
【化49】

【0149】
(R)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(3b)(7.2g)の無水ジエチルエーテル(100ml)溶液に、温度を−60℃以上にならないようにして、−78℃でtert−ブチルリチウム(1.5Mヘキサン溶液;28ml)を滴下した。混合物を−78℃でさらに3時間放置した。銅(1)ペンチン(2.5g)の無水ジエチルエーテル(56ml)スラリーをヘキサメチルリン酸トリアミド(8ml)で処理し、混合物を室温で数分間撹拌し、溶液を生成させた。ついでこの用事調製した溶液を−78℃でアリールリチウム溶液に滴下し、さらに1時間放置し、これに2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オン(5)(4g)の無水ジエチルエーテル(40ml)溶液を加えた。反応混合物を−78℃に15分間維持し、ついで−25℃〜−10℃にさらに1時間維持した。冷混合物を希塩酸とエーテル間ですばやく分配し、有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣をジクロロメタン:石油エーテル(2:1)、ついで酢酸エチル:石油エーテル(3:17)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、トランス:シス異性体混合物(約3:1)で化合物6b(7.2g)を得た。
【0150】
1H NMR (CDCl3, δ) トランス-ジアステレオマー: -0.25 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 2.95 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.15 (2H, d); 7.25 (2H, d).
1H NMR (CDCl3, δ) シス-ジアステレオマー: -0.27 (3H, s); -0.02 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 3.55 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.0 (2H, d); 7.15 (2H, d).
(d)(ii)2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(トランス:シス混合物(約3:1))(6a)
【化50】

【0151】
表題化合物およびそのジアステレオ異性体ならびに約30%のそれらのシス−異性体(6a)(7.3g)を、実施例1(d)(i)に記載の方法と同様な方法で、(S)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(3a)(7.2g)および2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オン(5)(4g)から製造した。
【0152】
1H NMR (CDCl3, δ) トランスジアステレオマー: -0.25 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 2.95 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.15 (2H, d); 7.25 (2H, d).
1H NMR (CDCl3, δ) シスジアステレオマー: -0.27 (3H, s); -0.02 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 3.55 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.0 (2H, d); 7.15 (2H, d).
(d)(iii)2−{4−[1−(R)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(トランス:シス混合物(約3:1))(6b)の代替合成
【化51】

【0153】
(R)−1−(4−ブロモフェニル)−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(3b)(0.8g)、マグネシウム屑(0.11g)、ヨウ素の結晶1つおよび1,2−ジブロモエタン(5μl)と無水THF(4ml)の混合物を加熱還流して反応を開始し、ついで2時間35℃に維持してグリニャール溶液を調整した。塩化リチウム(0.125g)および臭化銅(1)・ジメチルスルフィド錯体(0.61g)を無水THF(4.5ml)中、数分間撹拌し、ついで−78℃に冷却し、その後グリニャール溶液を滴下した。得られた混合物を−78℃で5分間維持し、ついで塩化トリメチルシリル(0.38ml)を加え、さらに2−(6−カルボメトキシへキシル)シクロペント−2−エン−1−オン(0.18g)の無水THF(1.5ml)溶液を加えた。混合物を−78℃で15分間維持し、0℃で30分間維持し、ついで1時間室温まで加温した。混合物を−20℃まで再度冷却し、その後希塩酸(4ml)を加え、2分間激しく撹拌した。冷混合物を石油エーテルおよび飽和塩化アンモニウム溶液間で分配し、2層を分離した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテル:酢酸エチル(4:1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、化合物6b(0.20g)をシスおよびトランス異性体の混合物として分離した。
【0154】
1H NMR (CDCl3, δ) トランスジアステレオマー: -0.25 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 2.95 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.15 (2H, d); 7.25 (2H, d).
1H NMR (CDCl3, δ) シスジアステレオマー: -0.27 (3H, s); -0.02 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.8-2.0 (22H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 3.55 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.6 (1H, m); 7.0 (2H, d); 7.15 (2H, d).
(e)(i)トランスおよびシス−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(7a)(混合物1)の合成
【化52】

【0155】
A:(1S,2R)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[SRS]
B:(1R,2R)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RRS]
C:(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RSS]
D:(1S,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[SSS]
2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(6a)(0.2g;トランス:シス(約3:1)混合物)をTHF(3.5ml)および希塩酸(2M;1ml)の混合物中、25℃で20時間撹拌した。反応混合物をブラインに加え、ジクロロメタンで2度抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテル:酢酸エチル(3:1)、ついでジクロロメタン:メタノール(200:3)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、7a(混合物1)(0.095g)をオイル(トランス:シス(約95:5)混合物)で得た。
【0156】
m/z (EIMS): 402
IH NMR (CDCl3, δ) トランスジアステレオマーのみ: 0.8-2.0 (23H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 2.95 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.65 (1H, t); 7.25 (2H, d); 7.35 (2H, d).
(e)(ii)トランスおよびシス−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(7b)(混合物2)
【化53】

【0157】
E:(1S,2R)−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[SRR]
F:(1R,2R)−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RRR]
G:(1R,2S)−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[RSR]
H:(1S,2S)−2−[4−(1−(R)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステル[SSR]
実施例1(e)(i)に記載の方法と類似の方法により、2−{4−[1−(R)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマー(0.3g;トランス:シス(約3:1)混合物)(6b)から化合物7b(0.15g;トランス:シス(約95:5)混合物))を製造した。
【0158】
m/z(EIMS):402
H NMR(CDCl,δ)トランス異性体のみ: 0.8-2.0 (23H, m); 2.2-2.6 (6H, m); 2.95 (1H, m); 3.65 (3H, s); 4.65 (1H, t); 7.25 (2H, d); 7.35 (2H, d).
実施例2:トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸メチルエステルジアステレオマーの分離
移動層に100%エタノールを用いるキラル固定相(ChiralPak AD, Daicel Chemical Industries, Japan)により、エステル混合物1または2のいずれかの90mgのサンプルをHPLCにかけて、長さ25cm、内径2cmのカラムを用い、約1時間で完全に分離することができた。いずれかの混合物の1gのサンプルを、90mg量で連続11回分離した(流速:4ml/min;検出:230nm)。ついで回収したエステルを以下のように加水分解して酸にした。メチルエステル(0.45g)のテトラヒドロフラン/水(4:1v/v)(40ml)溶液に、1M水酸化リチウム水(1.37ml,1.2当量)を滴下し、溶液を周囲温度で終夜撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、水で希釈し、pH〜1に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、30℃、減圧下で濃縮して、酸をオイルで得た。メチルエステルの各混合物(1g)から出発した酸の回収量は、混合物1ピーク1から0.392g、混合物1ピーク2から0.427g、混合物2ピーク1から0.433g、そして混合物2ピーク2から0.381gであった。
【0159】
表示されたメチルエステルピークのそれぞれから誘導される酸について旋光度を記録した。本明細書においては、明確にするために、分離ピークから得られた酸を、以後、混合物m酸ピークmと呼ぶ。
【0160】
混合物1酸、ピーク1
[α]25−422.4(365nm)、−142.9(436nm)、−57.3(546nm)、−47.9(578nm)、−45.1(589nm)
(c=0.6275,CHCl;光路長100mm)
混合物1酸、ピーク2
[α]25+314.9(365nm)、+80.6(436nm)、+22.7(546nm)、+17.3(578nm)、+16.0(589nm)(c=1.365,CHCl;光路長100mm)
混合物2酸、ピーク1
[α]25−299.4(365nm)、−77.8(436nm)、−22.2(546nm)、−16.9(578nm)、−15.5(589nm)
(c=0.81,CHCl;光路長100mm)
混合物2酸、ピーク2
[α]25+422.6(365nm)、+140.6(436nm)、+55.5(546nm)、+45.9(578nm)、+42.9(589nm)
(c=0.885,CHCl;光路長100mm)
化学的純度は、NMRおよびLC−MSにより測定した。キラル純度は、下記のように、キラルHPLCにより測定した。H NMR(CDCl)により酸の構造を確認したが、微量のメチルエステルの存在が示された。残留酢酸エチルと共に、シス異性体と推定される低レベルの不純物がいつも存在した。
【0161】
13C NMRは、エステルのジアステレオマー間の微小な差を示した。混合物1酸ピーク1および混合物2酸ピーク2は、混合物1酸ピーク2および混合物2酸ピーク1と同様に、エナンチオマーであることが示された。これは、上記の各化合物の旋光度データに対応する。
【0162】
実施例3:分離メチルエステルの加水分解
0.45gのメチルエステル(実施例2において分離)を40mlのTHF水溶液(4:1v/v)に溶解し、1.37mlの1M水酸化リチウム溶液(1.2当量)を滴下し、ついで溶液を周囲温度で終夜撹拌した。ついで、反応をLC−MSで検査したところ、一般的に、混じりけのない遊離酸の生成が認められ、残存するエステルは微量であった。反応物を減圧下で濃縮してTHFを除去し、水をさらに加えた。撹拌溶液に1M塩酸を滴下してpH〜1にし、ついで溶液を酢酸エチルで分配した。水層を除去し、酢酸エチル層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で留去した。残留したオイルを目方を量ったバイアルに少量の酢酸エチルで移し、窒素気流で溶媒を除去した。ついでサンプルを乾燥ピストルにいれ、30℃/1mbarで終夜ポンプを使った。
【0163】
H NMR(CDCl)により、生成物の構造が遊離酸であることを確認したが、一般的に微量のメチルエステルの存在が示された。シス異性体と推定される低レベルの不純物が、残留酢酸エチルと同様に常に存在した。
【0164】
4つの分離酸異性体のそれぞれの少量サンプルを再エステル化し、ついで分析用キラルHPLCによりエステルを分析することにより生成物のキラル純度を評価した。約5mgの酸をエーテルに溶解し、用事調製したジアゾメタンのエーテル溶液で黄色が消えなくなるまで処理した。周囲温度で30分間放置後、溶液に窒素を吹き付けて溶媒を除去し、キラルHPLCのために、エタノールに再度溶解した。分析用ChiralPak ADカラム(25cmx0.46cm)、固定相として100%エタノール、流速0.25ml/min、周囲温度でUV検出(230nm)という条件で分析を行った。各異性体についての典型的な保持時間は:混合物1酸、ピーク1:23.5min;混合物1酸、ピーク2:56min;混合物2酸、ピーク1:23.7min;混合物2酸、ピーク2:35minであった。各サンプルのキラル純度は、本質的に100%であった。
【0165】
実施例4:トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸の4つの立体異性体の絶対立体化学構造の帰属
円二色性を用い、酸側鎖−シクロペンタノン結合の絶対配置を帰属することにより、AH13205立体異性体の絶対立体化学構造を決定した。AH−13205の4つの立体異性体(全て、シクロペンタノン上で2つの側鎖がトランス−配置を有する)を分離した(混合物1酸、ピーク1;混合物1酸、ピーク2;混合物2酸、ピーク1および混合物2酸、ピーク2)。これらは室温でオイルである。
【0166】
絶対配置の帰属に役立てるために、標準物質もまた分析した。標準物質はプロスタグランジンE(PGE)、(S)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(S−BPH)および(R)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(R−BPH)である(以下に示す)。
【化54】

【0167】
サンプルを室温で保存し、100%エタノールに溶解し、分析の前に表1に示す濃度に希釈した。
【表1】

【0168】
PGE、R−BPHおよびS−BPHの分析には光路長1.0cmの石英キュベットを用いた。4つのAH13205立体異性体の分析には光路長0.1cmの石英キュベットを用いた。エタノールの容量は、Gilsonマイクロピペットを用いて測定したが、これらは用事にすばやくキャリブレーションする。
【0169】
機器のキャリブレーションおよび判定基準
波長精度キャリブレーション基準は満たされていた。0.06%(w/v)d−10−カンファースルホン酸アンモニウム(ACS)水溶液の分析により、シグナル強度が仕様書の範囲内であることが確認されたので、スケールファクターを必要としなかった。各サンプルのスペクトルから対応する水の基準値を差し引き、吸収バンドの外側の、360〜400nm領域におけるスペクトルをゼロにした。
【0170】
結果
全てのサンプルについて、UVおよびCDの単一分析を行った。標準品であるPGEおよびR−/S−BPHの、UVおよびCDの基準値を差し引いてゼロにしたデータを図1a、1b、2aおよび2bに示す。AH13205の4つの立体異性体についてのデータを図3aおよび3bに示す。結果を表2にまとめる。
【表2】

【0171】
立体異性体サンプル(混合物1酸、ピーク1;混合物1酸、ピーク2;混合物2酸、ピーク1および混合物2酸、ピーク2)は、2〜3の重要な遷移を示す。1つは〜290nmのn→→π遷移によるものであり、もう1つは約260nmの芳香環π→π遷移によるものであり、もう1つはこの領域よりも低波長側の遷移によるものである。分子のn→π部分に関するモデルとしてPGEを用い、π→π部分のモデルとしてR−/S−BPHを用いた。π→π吸光度は弱く、n→πバンドの分析に影響しないことが見いだされた。
【0172】
PGEの誘起CDは、カルボニルに対してα位の酸基鎖により支配されていると予想される。標準的なオクタント則を用いる分析により、この鎖は-z、+yおよび-xオクタント中に存在し、従って-xyzは(すなわち予想されるCD曲線は)負である。これは実験的に認めれらた(表2)。混合物1酸、ピーク1および混合物2酸、ピーク1サンプルは負のCD曲線を示し、従って側鎖結合部位でPGEと同じ絶対立体化学構造を有する。混合物1酸、ピーク2および混合物2酸、ピーク2サンプルは正のCD曲線を示し、従って、この結合部位でPGEと反対の絶対立体化学構造を有する。
【0173】
PGEとのパターンマッチングおよびオクタント則相関関係の両方により、混合物1酸、ピーク1および混合物2酸、ピーク1サンプルは、シクロペンタノンへの酸側鎖の結合部位である、カルボニルに対するα位の炭素で、PGEと同じ絶対配置を有することが示された。混合物1酸、ピーク2および混合物2酸、ピーク2サンプルは、この部位でPGEと反対の配置を有する。これらの結果を表3に示す。
【表3】

【0174】
これらのCD研究による絶対立体化学構造の決定は、化合物(22)を用いる関連立体選択的合成の文献からの結果と比較して予測される、化合物17[RSS]について記載された立体選択的合成により予測される結果と一致する。4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル側鎖のヘキシル鎖の1位における立体化学構造は、出発物質から既知なので、表3における帰属によりそれぞれの異性体の立体化学構造を決定することができる。これらの結果を以下に示す。
【化55】

【0175】
実施例5:(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(混合物1酸ピーク1)の製造
(a)(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸(1R,2S,3R,4S)−{3−N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステル(25)の製造
【化56】

【0176】
(S)−l−(4−ブロモフェニル)−l−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキサン(1.8g)の無水THF(24ml)溶液に、−78℃で、温度を−65℃以下に保ちながらtert−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液;5.6ml)を加えた。−78℃で2時間撹拌後、リチウム−2−チエニルシアノクプラート(0.25M THF溶液;19.2ml)を加え、混合物を−78℃で1時間放置した。ついで5−オキソ−シクロペンテンカルボン酸(1R,2S,3R,4S)−{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステル(1.7g)の無水THF(15ml)溶液を得られた混合物に加え、−78℃で75分間放置した。
【0177】
ついで飽和塩化アンモニウム溶液(15ml)を加え、さらに1時間かけて混合物を10〜15℃まで暖めた。飽和塩化アンモニウム溶液をさらに加え、混合物を酢酸エチルで2度抽出した。合わせた有機抽出物を塩化アンモニウム溶液で洗浄し、次にブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテル:ジエチルエーテル(3:1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸(1R,2S,3R,4S)−{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステル(1.8g)をフォームで得た。
【0178】
1H NMR (CDC13, δ): (ケトおよびエノール形の混合物) -0.3, -0.15, -0.1, 0.0, 0.1, 0.35, 0.45, 0.55 (8s); 0.75-2.8 (c); 3.7 (m), 4.1 (m); 4.55 (m); 5.25 (dd); 5.5-5.8 (2 br s); 6.8(d); 6.95-7.5 (c); 11.0 (enol proton, s).
マススペクトル (m/z) ES+: 836.6 (M+Na)+
(b)(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル(26)の製造
【化57】

【0179】
(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸(1R,2S,3R,4S)−{3−[N−ベンゼンスルホニル−N−(3,5−ジメチルフェニル)アミノ]−2−ボルニル}エステル(l.lg)の無水メタノール(60ml)溶液を、密閉管中、150℃で3時間加熱した。減圧下で溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタン:石油エーテル(2:l)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル(390mg)をオイルで得た。
【0180】
1H NMR (CDC13, δ):ケト形 -0.2 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.85 (3H, t); 1.1-1.7 (8H, c); 1.95 (1H, c); 2.5 (3H, c); 3.35 (1H, d); 3.7 (3H, s); 3.8 (1H, m); 4.6 (1H, t); 7.15 (2H,d); 7.25 (2H,d).
マススペクトル (m/z) ES+: 611.6 (M+Na)+
(c)(2S)−1−メトキシカルボニル−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸エチルエステル(27)の製造
【化58】

【0181】
(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル(390mg)の無水DME(3.5ml)溶液に水素化ナトリウム(60%油分散液;39mg)を加えた。1時間放置後、7−ブロモヘプタン酸エチル(0.3ml)および触媒量のヨウ化ナトリウムを加え、混合物を20時間加熱還流した。
【0182】
冷却後、混合物を塩化アンモニウム溶液に加え、ジクロロメタンで2度抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を無水クロロホルム(10ml)に溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物の結晶を数個加えた。1時間撹拌後、炭酸水素ナトリウム溶液を加え、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を0〜5%ジエチルエーテル/ジクロロメタンでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、(2S)−1−メトキシカルボニル−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸エチルエステル(290mg)をオイルで得た。
【0183】
1H NMR (CDCl3, δ): -0.2 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.85 (3H, t); 1.1-1.8 (20H, c); 2.0 (1H, c); 2.3 (4H, c); 2.6 (2H, c); 3.4 (3H, s); 3.45 (1H, m); 4.15 (2H, q); 4.6 (1H, t); 7.15 (2H,d); 7.25 (2H,d).
マススペクトル (m/z) ES+: 455.4 (M+Na)+
(d)(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(28)の製造
【化59】

【0184】
(2S)−1−メトキシカルボニル−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸エチルエステル(290mg)およびヨウ化リチウム水和物(650mg)と2,4,6−コリジン(4ml)の混合物を3時間加熱還流した。冷却後、混合物を酢酸エチルに加え、希塩酸、ブラインで2度洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテル:酢酸エチル(4:1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(190mg)をオイルで得た。
【0185】
1H NMR (CDC13, δ): -0.2 (3H, s); 0.0 (3H, s); 0.85 (9H, s); 0.85 (3H, t); 1.0-2.3 (24H, c); 2.45 (1H, c); 2.9 (1H, m); 4.6 (1H, t); 7.15 (2H, d); 7.25 (2H, d).
マススペクトル (m/z) ES+: 525.4 (M+Na)+
(e)(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(混合物1酸ピーク1)の製造
【化60】

【0186】
(1R,2S)−2−{4−[1−(S)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ヘキシル]フェニル}−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(190mg)のTHF(4ml)溶液および2M塩酸(1.1ml)を30℃で20時間撹拌した。混合物を水に加え、ジクロロメタンで2度抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去した。残渣を石油エーテル:酢酸エチル(5:2)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、(1R,2S)−2−[4−(1−(S)−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸(115mg)をオイルで得た。
【0187】
1H NMR (CDCl3, δ): 0.85 (3H, t); 1.0-2.3 (24H, c); 2.45 (1H, c); 2.9 (1H, m); 4.6 (1H, t); 7.25 (2H, d); 7.35 (2H, d).
マススペクトル (m/z)ES-: 387.3 (M-H)-
[α]25 -416.0 (365nm), -139.5 (436nm), -54.9 (546nm), -45.6 (578nm), -42.4 (589nm) (c=0.51, CHCl3; 光路長 100mm)
実施例6:EP結合とアゴニズム
化合物がヒトEP受容体に結合する能力と全ての他のEP受容体に対する化合物の選択性は、ヒトEP受容体で安定的にトランスフェクトした細胞株を用い、放射性リガンド競合置換結合実験により明らかにすることができる。EP受容体を刺激する化合物の能力は、ヒトリンパ球、単球またはヒト子宮筋層における第二メッセンジャーであるcAMPの機能アッセイにより明らかにできる。
【0188】
試験の詳細
ヒトEP受容体に対する結合能
ヒトEP受容体cDNAで安定的にトランスフェクトした細胞から膜を調製した。要約すれば、細胞を集密状態まで培養し、培養フラスコからこすり落とし、遠心分離(800g,8分,4℃)した。細胞を10mM Tris−HCl、1mM EDTA・2Na、250mMショ糖、1mM PMSF、0.3mMインドメタシンを含有する氷冷したホモジナイズ用緩衝液(pH7.4)で2度洗浄し、前述同様に再度遠心分離した。上澄みを氷上で保存し、ペレットを再度ホモジナイズし、再度遠心分離した。上澄みをプールし、40000g、4℃で10分間遠心分離した。得られた膜ペレットを、使用するまで−80℃で保存した。
【0189】
アッセイのために、ヒトEP、EP、EPまたはEP受容体を発現している膜を、アッセイ緩衝液、放射性標識[H]PGEおよび0.1〜10000nM濃度の化合物を含有するを含有するミリポア(MHVBN45)プレート中でインキュベートした。平衡に達するまで、適切な温度と適切な時間でインキュベーションを行った。10uMPGEの存在下で、非特異的結合を測定した。適切な洗浄用緩衝液を用い、真空マニホールド濾過により、結合放射性標識と遊離放射性標識とを分離し、シンチレーション計数により結合放射性標識を測定した。それぞれの緩衝液の成分を以下の表4に示す。
【0190】
各受容体に対する各化合物の親和性すなわちpKiは、Cheng-Prusoff式:
【数1】

【0191】
を用いて、50%放射性リガンド置換をもたらす濃度(IC50)から算出した。この方法は、Kenakin, T.P., Pharmacologic analysis of drug receptor interaction. (Raven Press, New York 第2版)に記載の方法に従って行った。
【表4】

【0192】
シクラーゼ産生に対する化合物の効果
シクラーゼ産生に対する化合物の効果の測定、すなわち、EP受容体に対する化合物の有効機能の測定のためのin vitroアッセイを以下に説明する。
【0193】
細胞刺激
ヒトEP受容体を安定的に発現するHEK細胞をこれらのアッセイに用いた。96ウェル・ポリ−L−リジンコートプレート上、50,000細胞/ウェルの密度でHEK−EP細胞を培養し、加湿95%O/5%CO中、37℃でコンフルエンスに達するまで増殖させた。培地には、10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、100ng/mlストレプトマイシン、2.5μg/mlファンギゾン、2mMグルタミン、250μg/mlジェネティシンおよび200μg/mlゼオシンを添加したDMEMを用いた。
【0194】
コンフルエンスに達したとき、無添加のDMEMを用いて培地を洗い流し、ついで175μlのアッセイ緩衝液(1mM3−イソブチル−1−メチルキサンチンおよび3μMインドメタシンを含有するDMEM)を各ウェルに加えた。これを1時間インキュベートし、細胞を最終濃度10-9M〜10-5Mの試験化合物(3連で)で15分間刺激した。25μlの1M塩酸を添加して、このアッセイを停止した。ついでプレートを最低12時間、あるいは放射性リガンド置換アッセイに用いるときまで凍結した。
【0195】
放射性リガンド置換アッセイ
37℃でプレートをすばやく解凍し、25μlの1M水酸化ナトリウムで中和した。30μlの上澄みを、0.1%ポリエチレンイミンでコートした96ウェルミリポア(MAFNOB)プレートに移した。これらの上澄みを90μlのcAMPアッセイ緩衝液(50mMトリス,5mMEDTA,pH7.0)の添加により希釈した。cAMP標準曲線(10−11M〜10−5M)を作成した。15μlの3’:5’−cAMP−依存性プロテインキナーゼ(最終濃度8μg/ウェル)、15μlの[H]−cAMP(最終濃度2nM/ウェル)を各ウェルに加えた。
【0196】
氷上でプレートを2時間インキュベートし、ついで停止緩衝液として氷冷水を用い、減圧濾過により結合放射性標識と遊離放射性標識とを分離し、ミリポアマニホールドで回収した。フィルタープレートを終夜乾燥し、ついで50μlのMicroscintを加えた。Microbeta Triluxシンチレーションカウンターを用いて放射能を測定した。標準曲線からcAMPの集積を算出し、その数値をpモルcAMP/ウェルとしてプロットした。
【0197】
ヒト子宮筋層活性に対する化合物の効果
ヒト組織中のEP受容体に対する試験化合物の親和性を測定するための、ヒト子宮筋層の平滑筋を用いるin vitro機能アッセイを以下に説明する。
【0198】
外科的に切除した子宮のサンプルからヒト子宮筋層の切片を調製した。ついで子宮筋層の縦走筋細片(2mm(幅)x10mm(奥行き))を切り出し、酸素化(95%O/5%CO)クレブス液を含有する器官チャンバー中、37℃で、ステンレススチールフック間につるした。クレブス液の組成には以下を用いた:NaCl(118.2mM)、KCl(4.69mM)、MgSO・7HO(1.18mM)、KHPO(1.19mM)、グルコース(11.1mM)、NaHCO(25.0mM)、CaCl・6HO(2.5mM)、インドメタシン3x10−6M。
【0199】
25mNに相当する張力下に組織をおいて室温で終夜放置した。次の日、組織を37℃に維持し、洗浄し、15mNの張力下におき、ついで少なくとも30分間平衡化した。MacLabインターフェースを介してアップルマッキントッシュコンピューターに連結したアイソメトリックトランスデューサーを用いて反応を記録した。60分後、ヒト子宮筋層の筋肉切片を、並列白金線電極およびMultistim D330パルス刺激装置を用いて、電機的に刺激した(パルス幅15ms,15V、0.5〜40Hzで100秒毎に10秒間)。電気刺激を受けると、ヒト子宮筋層の平滑筋の細片は反応して急速に収縮した。電気刺激に対する反応が安定化(刺激応答の差が10%以下)したら、細片を増加する濃度の試験化合物(1x10−7〜1x10−4M,各濃度で少なくとも15分間インキュベート)にさらした。実験の終了時にニトロプルシド・ナトリウム(SNP,平滑筋弛緩を引き起こす一酸化窒素供与体)(1x10−4M)を加えて、標準緩和反応を起こさせた。化合物の親和性を測定するために、最大反応(SNPにより引き起こされる標準反応のパーセンテージとして算出)の最大の2分の1の効果を引き起こすために必要な試験化合物の濃度(EC50)を算出した。
【0200】
結果
ヒトEP受容体に対する結合能
これらの試験において、AH−13205の4つの分離立体異性体の親和性を測定した。結果を図4に示す(データは、4つの実験に関して、平均値±標準誤差で示してある)。混合物1のピークで単離された立体異性体が最も強力であり、pKi7.1を示した。結合試験の完全な結果を表5にpKi値で示す。
【表5】

【0201】
この表から、混合物2酸ピーク1が立体異性体の中で最も選択性が優れていることがわかる。
【0202】
cAMP産生に対する化合物の効果
これらの試験において、ヒトEP受容体刺激により介在されるcAMP産生に対する、分離立体異性体およびAH−13205の効果を評価した。全ての化合物は、同じ最大反応を示したが、それらの有効性は、図5および表6に示すように異なる(データは、4つの実験に関して、平均値±標準誤差で示してある)。
【表6】

【0203】
ヒト子宮筋層活性に対する化合物の効果
AH−13205の適用により、ヒト子宮筋層における、電気的に誘発された収縮が抑制されることが示された。ポイントA、BおよびCはAH−13205の量を増加させて添加したポイントに該当する(10−6、10−5および10−4M)(図6)。AH−13205を含有するビヒクルはなんら効果を示さないので、効果の有効性はプロスタグランジンEP受容体との相互作用に基づいている(図7)。
【0204】
2つの最も強力な立体異性体(混合物1酸ピーク1および混合物2酸ピーク1)の効果を調べ、AH−13205の効果と比較した。混合物1酸ピーク1、混合物2酸ピーク1およびAH13205は全て、濃度依存的にEFS誘発反応を抑制した。pEC50は、5.9±0.2(n=7)、5.3±0.1(n=6)および5.3±0.2(n=7)(図8)であった。観察された最大阻害作用間に有意差は無く、EFS誘発収縮抑制は、56±5%(混合物1酸ピーク1)、57±2%(混合物2酸ピーク1)および49±5%(AH−13205)であった。SNPは、化合物に加えてさらに抑制を引き起こし、対照EFS反応の60〜70%と同等であった。SNP阻害作用は、60〜80分の洗浄期間の後に相殺されたが、試験化合物の阻害作用は相殺されなかった。
【0205】
さらに、βアドレナリン受容体アゴニストであるテルブタリンの、子宮筋層のEFS誘発収縮に対する効果を研究し、EFS誘発収縮に対して有意な阻害作用を示さないことが明らかとなった(10−4M(n=7ドナー)で対照EFS誘発収縮の98±5%)
実施例7:IL−2、TNFαおよびIFN−γ産生の阻害
リンパ球は、異種抗原に対する特定の免疫反応および自己免疫疾患の症状発現に関与する単核白血球である。Tリンパ球は、CD3−T細胞受容体複合体による抗原刺激に反応して、リンパ球の活性化および増殖の重要な因子であるIL−2を産生し、この反応に関与する経路はNF−ATである。この反応は、T細胞上のCD3分子に選択性を有する選択的モノクローナル抗体を用いてin vitroで明らかにできる。この反応をモデルとし、末梢血から単離された抗CD3刺激T細胞により産生されるIL−2に対する試験化合物の効果を測定するために、リンパ球アッセイをデザインした。このアッセイは、T細胞の反応を刺激するために、96−ウェルプレートに固定化された抗CD3モノクローナル抗体(OKT3,25ng/ml)の準最適量を用いた。細胞培養上澄み中に放出されるIL−2レベルは、標準的なサンドイッチELISAを用いて定量化した。同様に、TNFαおよびIFN−γなどの他のサイトカインもまた同じアッセイで測定できる。このアッセイは、抗CD3抗体に反応して起こるリンパ球増殖が見られ、その故に免疫モジュレーター化合物の効果が試験できる、72時間時点まで延ばすことができる。
【0206】
単球は、炎症反応に関与する末梢単核食細胞である。単球によるTNFα産生は、炎症反応において重要な役割を果たし、そのレベルが抑制されないでいると、かなりな組織損傷の原因となりうる。活性化単球によるTNFα分泌の阻害により、炎症性疾患の治療のための魅力的な治療法を提供できる。
【0207】
単球によるTNFα放出の、微生物による最も強力な引き金の1つはリポ多糖(LPS)であり、この反応はNF−KB経路によって起こる。ヒト末梢血単球によるLPS誘発TNFα分泌に対する試験化合物の効果を測定するために、96ウェルin vitroアッセイを確立した。アッセイ上澄み中のTNFαレベルを通常のサンドイッチELISAを用いて定量した。
【0208】
試験の詳細
健常志願者からのヒト末梢血単核細胞を、Ficoll-Hypaque密度遠心分離およびプラスチックへの接着により全血から分離した。非接着性リンパ球分画を、リンパ球アッセイをセットアップするために用い、ついで接着性単球を剥離し、次に単球アッセイに用いた。
【0209】
リンパ球アッセイ
ついでリンパ球を、25ng/mlで抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)によりプレコートした96−ウェルプレートに塗布し、直ちに、実験計画に記載の対応するウェルに試験化合物(混合物1酸ピーク1;混合物2酸ピーク1;AH−13205ラセミ体;PGE)の適切な希釈液を加えた。37℃、5%CO/空気で24時間、プレートをインキュベートし、インキュベーション期間の終了時に上澄みをELISA分析のために回収した。製造業者による使用説明書に従って、ProteoPlex16ウェルヒトサイトカインアレイアッセイキットを用いてIFN−γレベルを評価した。
【0210】
固定化抗CD3モノクローナル抗体により促進されるリンパ球増殖の促進のために、試験化合物の存在下または非存在下で、細胞を72時間培養するという条件下で、IL−2放出の測定と同様な方法でアッセイをセットアップした。増殖アッセイの終了の4時間前に、細胞増殖アッセイキットのフォーマット中の、Promega製の新規テトラゾリウム化合物溶液を、製造者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。ついで残りの4時間、インキュベーター中にプレートを戻しいれ、製造者の使用説明書に従って、490nmの吸収波長で分光光度計(SpectraMax, Molecular Devices)を用いて、比色反応を測定した。
【0211】
単球アッセイ
単球アッセイのために、細胞を96−ウェルプレート上にプレーティングし、37℃/5%COで1時間試験化合物(混合物1酸ピーク1;混合物2酸ピーク1;AH−13205ラセミ体)を用いて前処理し、ついでLPS(100ng/ml)を加えて反応を開始した。プレートを24時間インキュベートし、ELISAによるTNFα産生の産生のために上澄みを回収した。
【0212】
マクロファージアッセイ
ヒト肺実質を小片に切断し、氷冷したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でかん流して汚染血液および粘液を除去した。ついで組織を、培地ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミンおよびDNase(0.25mg/ml)を加えた最小必須培地の存在下で、はさみで切り刻んだ。切り刻んだ組織をゆっくり振盪してマクロファージを追い出した。ついで滅菌フィルター(孔径150μm)を用いて組織を除去し、粗製細胞浮遊液を得た。得られた細胞浮遊液を遠心分離して細胞ペレットを回収した。汚染している赤血球を赤血球溶解緩衝液で減らし、残りの細胞を遠心分離によりPBSで2度洗浄した。ついで、製造者の使用説明書に従って、VarioMacTM SeparatorおよびMiltenyi Biotec Ltd製のそれぞれの正の選択試薬およびカラムを用い、CD14−分子を有する細胞のための正の選択法を用いて、この細胞標品から肺胞マクロファージを精製した。
【0213】
アッセイのために、10%ウシ胎児血清、L−グルタミンおよび抗生物質を添加したRPMI1640からなる完全培地中に肺胞マクロファージを再懸濁した。次いで細胞を24ウェルプレート(4x105細胞/ウェル)にプレーティングし、37℃、5%CO/空気で終夜インキュベートし、細胞接着させた。ついで使い終わった培地をプレートから除き、プレートを短時間新しい培地で洗浄し、試験化合物溶液を加えた。細胞を30分間試験化合物でインキュベートし、ついで大腸菌LPS(1μg/ml)を加えた。加湿インキュベータ中、37℃、5%CO/空気で24時間、アッセイプレートをインキュベートした。培養上澄み中への細胞によるTNFαの放出を、製造者の使用説明書に従って、R + D Systems(欧州)製のELISAキット(DuoSet(登録商標)ヒトTNFα ELISA Development System)を用いて定量化した。内因性プロスタグランジンEの見込まれる放出を抑制するための全ての処理に、3μMインドメタシンを含有させた。
【0214】
結果
リンパ球アッセイ
図9に、4つのドナー(1つのドナーのみで試験した混合物2酸ピーク1の場合を除く)の平均として得た3つの試験化合物によるIL−2産生結果を示す。これらの結果を表7にまとめる。
【表7】

【0215】
これらの結果は、EPアゴニストがOKT3活性化T細胞により濃度依存的にIL−2産生を抑制することを示している。このアッセイにおける有効性の順序は、試験化合物のそれぞれのEC50値によればPGE>混合物1酸ピーク1>AH13205(ラセミ体)である。図10に、3つのEP受容体アゴニストによる、3〜5ドナーの平均として得たIL−2産生結果を示す。これらの結果を表8にまとめる。
【表8】

【0216】
これらの結果は、EPアゴニストが、OKT3活性化T細胞により濃度依存的にIL−2産生を抑制することを示している。このアッセイにおける有効性の順序は、試験化合物のそれぞれのEC50値によれば、PGE>ブタプロスト>混合物1酸ピーク1である。
【0217】
図11に、混合物1酸ピーク1による2つのドナーのインターフェロンガンマ放出結果を示す。これらの結果は、EPアゴニストがインターフェロンガンマ放出を濃度依存的に抑制することを示している。
【0218】
図12に、3つのEP受容体アゴニストによる3つのドナーの平均として得たTNFα産生結果を示す。これらの結果を表9にまとめる。
【表9】

【0219】
これらの結果は、EPアゴニストがリンパ球によるTNFα産生を濃度依存的に抑制することを示す。このアッセイにおける有効性の順序は、試験化合物のそれぞれのEC50値によれば、PGE>ブタプロスト>混合物1酸ピーク1である。
【0220】
図13に、3つのEP受容体アゴニストによる、3つのドナーの平均として得たリンパ球増殖結果を示す。これらの結果を表10にまとめる。
【表10】

【0221】
これらの結果は、EPアゴニストがリンパ球増殖を濃度依存的に抑制することを示している。このアッセイにおける有効性の順序は、試験化合物のそれぞれのEC50値によれば、PGE>ブタプロスト>混合物1酸ピーク1である。
【0222】
単球アッセイ
図14に、3つのドナーの平均として得た結果を示す。これらの結果を表11にまとめる。
【表11】

【0223】
これらの結果は、EPアゴニストがLPS刺激単球によりTNFα産生を濃度依存的に抑制することを示している。それぞれのEC50値に基づく有効性の順序は、混合物1酸ピーク1>混合物2酸ピーク1>AH13205(ラセミ体)である。
【0224】
マクロファージアッセイ
図15に、3つのドナーの平均として得た結果を示す。これらの結果を表12に示す。
【表12】

【0225】
これらの結果は、EPアゴニストがマクロファージによりTNFα産生を濃度依存的に抑制することを示す。それぞれのEC50値に基づく有効性の順序は、PGE>混合物1酸ピーク1である。
【0226】
図の凡例
【表13】

【0227】

【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】図1aは、1.0cm光路長キュベットを用いた、エタノール中のプロスタグランジンE(PGE)(0.7mg/mL)のCDスペクトルである。図1bは、1.0cm光路長キュベットを用いた、エタノール中のPGE(0.7mg/mL)のUVスペクトルである。
【図2】図2aは、1.0cm光路長キュベットを用いた、エタノール中の(R)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(R−BPH)(図の実線)(0.7mg/mL)および(S)−1−(4−ブロモフェニル)ヘキセン−1−オール(S−BPH)(図の点線)(0.7mg/mL)のCDスペクトルである。図2bは、1.0cm光路長キュベットを用いた、エタノール中のR−BPH(図の実線)(0.7mg/mL)およびS−BPH(図の点線)(0.7mg/mL)のUVスペクトルである(この図においては、実線と点線がほぼお互いに重なりあっていることに注意)。
【図3】図3aは、0.1cm光路長キュベットを用いた、エタノール中の実施例4(化合物A,C,EおよびG)の4つのトランス−立体異性体(全て19mg/mL)のそれぞれのCDスペクトルである。
【図4】図4は、ヒトEP受容体に対する結合能アッセイにおける、複数の濃度の5つの試験化合物で置換されたときの[H]PGEパーセンテージ変化である。
【図5】図5は、ヒトEP受容体刺激アッセイにおける、5つの試験化合物で刺激されたときのcAMP濃度変化である。
【図6】図6は、ヒト子宮筋層活性に対する、AH13205の効果である。
【図7】図7は、ヒト子宮筋層活性アッセイにおける、AH13205の複数の濃度および送達ビヒクルまたは送達ビヒクル単独による、電場刺激(EFS)誘発収縮の阻害%変化である。
【図8】図8は、ヒト子宮筋層活性アッセイにおける、3つの試験化合物の複数の濃度による対照電場刺激(EFS)誘発収縮の%変化である。
【図9】図9は、リンパ球アッセイにおける、4つの試験化合物の複数の濃度による、IL−2産生変化である。
【図10】図10は、リンパ球アッセイにおける、3つのEP受容体アゴニストの複数の濃度によるIL−2産生変化である。
【図11】図11は、リンパ球アッセイにおける、3つのEP受容体アゴニストの複数の濃度による、インターフェロンガンマ放出変化である。
【図12】図12は、リンパ球アッセイにおける、3つのEP受容体アゴニストによるTNFα産生変化である。
【図13】図13は、リンパ球アッセイにおける、3つのEP受容体アゴニストによる細胞増殖変化である。
【図14】図14は、単球アッセイにおける、3つの試験化合物によるTNFα産生変化である。
【図15】図15は、肺胞マクロファージアッセイにおける、2つの試験化合物によるTNFα産生変化である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の1つから選択される化合物:
【化1】

またはその塩、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
少なくとも90重量%が以下の形の1つ:
【化2】

またはその塩、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグから選択される、(トランス−2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸。
【請求項3】
少なくとも80重量%が以下の形の1つ:
【化3】

またはその塩、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグである、2−[4−(1−ヒドロキシヘキシル)フェニル]−5−オキソ−シクロペンタンヘプタン酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
【請求項5】
治療方法における使用のための、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
薬学的に許容される担体または希釈剤とともに、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
EP受容体のアゴニズムにより緩和される疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
EP受容体のアゴニズムにより緩和される疾患が、緑内障、月経困難症および早期産からなるグループから選択される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
EP受容体のアゴニズムにより緩和されることができる疾患の治療方法であって、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含んでなる該方法。
【請求項10】
EP受容体のアゴニズムにより緩和される疾患が、緑内障、月経困難症および早期産からなるグループから選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(i)ヒトT細胞活性化(増殖);
(ii)IL−2の放出;
(iii)TNFαの放出;または
(iv)IFNγの放出;
の阻害により緩和される疾患の治療のための医薬の製造における、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
乾癬の治療のための医薬の製造における、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
炎症性肺疾患の治療のための医薬の製造における、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項14】
EP受容体アゴニストが請求項1〜3のいずれか1つの化合物である、請求項11〜13のいずれか1つに記載の使用。
【請求項15】
(i)ヒトT細胞活性化(増殖);
(ii)IL−2の放出;
(iii)TNFαの放出;または
(iv)IFNγの放出;
の阻害により緩和されることができる疾患の治療方法であって、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含んでなる該方法。
【請求項16】
乾癬の治療方法であって、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含んでなる該方法。
【請求項17】
炎症性肺疾患の治療方法であって、EP受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、治療を必要とする患者の投与することを含んでなる該方法。
【請求項18】
EP受容体アゴニストが請求項1〜3のいずれか1つの化合物である、請求項15〜17のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−515467(P2007−515467A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546323(P2006−546323)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005421
【国際公開番号】WO2005/061449
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(501025148)アステランド ユーケイ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】