説明

ES細胞の識別マーカー

【課題】
ある細胞、胚性幹細胞が存在するかどうか、および未分化細胞が多能性または未分化性を有するかどうかのマーカーとして使用することができる遺伝子を入手すること。
【解決手段】
本発明は、Psbp遺伝子という多能性を有する場合であれば未分化状態に従来より正確に発現するタンパク質を発見し本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、胚性幹細胞と、胚性癌腫細胞とを識別することができるマーカーを生産する方法であって、
A)細胞に由来する成分を提供する工程;B)該成分をゲルシフトアッセイに供し、Oct4に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトが見られるが、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分が由来する細胞を選択する工程;およびC)B)工程で選択された細胞から、該Oct4に特異的な因子に特異的な複合体を取り出す工程、を包含する、方法を提供する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
胚性幹細胞と、胚性癌腫細胞とを識別することができるマーカーを生産する方法であって、
A)細胞に由来する成分を提供する工程;
B)該成分をゲルシフトアッセイに供し、Oct4に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトが見られるが、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分が由来する細胞を選択する工程;および
C)B)工程で選択された細胞から、該Oct4に特異的な因子に特異的な複合体を取り出す工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記複合体からSoxエレメントに特異的に結合する成分を取り出す工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取り出す工程は、Octamer/Sox結合配列を有するDNAとキャリアとの複合体と、前記細胞に由来する成分とを接触させることを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアは、ラテックスまたはフェライトビーズを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、R1胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複合体がNanogのSoxエレメントに結合するかどうかを判定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Soxエレメントは、核酸配列としてTACAATGを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Sox2に特異的な因子は核酸配列としてTACAATGを含む核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記Oct4に特異的な因子は、抗Oct4抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記Sox2に特異的な因子は、抗Sox2抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複合体から、Sox2でもOct4でもない分子を分離する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記SoxでもOct4でもない分子の分離は、電気泳動、免疫学的手段、クロマトグラフィー、DNAタンパク質アフィニティー解析、マススペクトトメトリー解析からなる群より選択される1以上の手段を用いて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞に由来成分の提供は、核抽出物を提供することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記因子は、標識されているかまたは標識され得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記因子は、放射標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分を選択する工程は、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトする成分と比較することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトする成分は、胚性癌腫細胞に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記胚性癌腫細胞は、F9細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法によって調製される、タンパク質複合体。
【請求項22】
請求項4に記載の方法によって調製される、タンパク質。
【請求項23】
請求項22に記載のタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項24】
請求項13に記載の方法によって調製される、タンパク質。
【請求項25】
請求項24に記載のタンパク質をコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項26】
胚性幹細胞と、胚性癌腫細胞とを識別することができるマーカー。
【請求項27】
前記マーカーは、Oct4エレメントには結合しない、請求項26に記載のマーカー。
【請求項28】
前記マーカーは、Soxエレメントに結合する、請求項26に記載のマーカー。
【請求項29】
前記マーカーは:
A)細胞に由来する成分を提供する工程;
B)該成分をゲルシフトアッセイに供し、Oct4に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトが見られるが、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分が由来する細胞を選択する工程;および
C)B)工程で選択された細胞から、Oct4に特異的な因子に特異的な複合体を取り出す工程、
を包含する、方法によって調製される、請求項26に記載のマーカー。
【請求項30】
前記マーカーは:
A)細胞に由来する成分を提供する工程;
B)該成分をゲルシフトアッセイに供し、Oct4に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトが見られるが、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分が由来する細胞を選択する工程;
C)B)工程で選択された細胞から、Oct4に特異的な因子に特異的な複合体を取り出す工程;および
D)該複合体からSoxエレメントに特異的に結合する成分を取り出す工程、
を包含する、方法によって調製される、請求項26に記載のマーカー。
【請求項31】
Nanog/Stm1の転写を促進する活性を有する、請求項26に記載のマーカー。
【請求項32】
前記転写の促進は、Oct4との相互作用に起因する、請求項31に記載のマーカー。
【請求項33】
多分化能の有無を判定すること能力を有する、請求項26に記載のマーカー。
【請求項34】
前記多分化能は、前記胚性幹細胞にあるが、前記胚性癌腫細胞にはない能力を包含する、請求項26に記載のマーカー。
【請求項35】
Oct4との相互作用は、Sox2よりも強いことを特徴とする、請求項26に記載のマーカー。
【請求項36】
タンパク質である、請求項26に記載のマーカー。
【請求項37】
タンパク質複合体である、請求項26に記載のマーカー。
【請求項38】
識別可能な標識で標識される、請求項26に記載のマーカー。
【請求項39】
請求項26に記載のマーカーに対して特異的な因子。
【請求項40】
前記因子は、抗体である、請求項39に記載の因子。
【請求項41】
請求項26に記載の因子がタンパク質であり、該タンパク質をコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項42】
請求項41に記載の核酸分子を含む、核酸カセット。
【請求項43】
請求項41に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項44】
請求項41に記載の核酸分子を含む、細胞。
【請求項45】
請求項41に記載の核酸分子で形質転換される、細胞。
【請求項46】
請求項41に記載の核酸分子を含む、組織。
【請求項47】
請求項41に記載の核酸分子を含む、臓器。
【請求項48】
請求項41に記載の核酸分子を含む、生物体。
【請求項49】
請求項41に記載の核酸分子がmRNAとして発現される、細胞。
【請求項50】
請求項41に記載の核酸分子にストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体をコードする核酸分子。
【請求項51】
前記生物学的活性は、Soxエレメントとの相互作用、Oct4との相互作用およびSox2との競合作用からなる群より選択される、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項52】
少なくとも10の連続するヌクレオチド長を有する、請求項49に記載の核酸分子。
【請求項53】
請求項50に記載の核酸分子に対して特異的な因子。
【請求項54】
前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項53に記載の因子。
【請求項55】
前記因子は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長を有する核酸分子である、請求項53に記載の因子。
【請求項56】
前記因子は、核酸分子であり、プライマーとして使用される、請求項53に記載の因子。
【請求項57】
前記因子は、プローブとして使用される、請求項53に記載の因子。
【請求項58】
前記因子は、標識されているかまたは標識され得る、請求項53に記載の因子。
【請求項59】
前記標識は、蛍光、リン光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応からなる群より選択される技法を利用する、請求項58に記載の因子。
【請求項60】
(i)請求項26に記載のマーカーがポリペプチドであり、該マーカーのアミノ酸配列または該アミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(ii)(i)の配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体、種相同体である、ポリペプチド;
を含む、ポリペプチド。
【請求項61】
少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する、請求項60に記載のポリペプチド。
【請求項62】
請求項60に記載のポリペプチドに対して特異的に結合する、因子。
【請求項63】
前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項62に記載の因子。
【請求項64】
前記因子は、抗体またはその誘導体である、請求項62に記載の因子。
【請求項65】
前記因子は、プローブとして使用される、請求項62に記載の因子。
【請求項66】
前記因子は、標識されているかまたは標識され得る、請求項62に記載の因子。
【請求項67】
前記標識は、蛍光、リン光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応からなる群より選択される技法を利用する、請求項66に記載の因子。
【請求項68】
細胞の未分化状態を判定するための組成物であって、該組成物は、
Psbp遺伝子またはPSBP遺伝子産物に特異的に反応する因子を含む、組成物。
【請求項69】
前記PSBP遺伝子は、請求項41に記載される核酸分子を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記細胞は、幹細胞である、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記細胞は、胚性癌腫細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、単能性幹細胞、および組織幹細胞を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
前記細胞は、遺伝子改変されたものかまたは遺伝子改変されていないものである、請求項68に記載の組成物。
【請求項73】
細胞の未分化状態を判定する方法であって、
(I)判定されるべき細胞を提供する工程;
(II)Psbp遺伝子またはPSBP遺伝子産物に特異的に反応する因子を、該細胞に接触させる工程;および
(III)該因子と該Psbp遺伝子またはPSBP遺伝子産物との特異的反応を検出することによって、該PSBP遺伝子が該細胞において発現しているかどうかを確認する工程、
を包含し、ここで、該細胞における該PSBP遺伝子の発現は、細胞が未分化状態にあることを示す、方法。
【請求項74】
前記PSBP遺伝子は、請求項41に記載される核酸分子を含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項75】
前記未分化状態は、全能性を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
さらに、他の幹細胞マーカーが発現しているかどうかを確認する工程を包含する、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記他の幹細胞マーカーは、Oct4および/またはNanog/Stm1を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記Nanog/Stm1遺伝子は、配列番号1に示される配列を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
未分化状態の細胞を調製する方法であって、
(I)未分化状態の細胞を含むかまたは含むと予測されるサンプルを提供する工程;
(II)Psbp遺伝子またはPSBP遺伝子産物に特異的に反応する因子を、該サンプルに接触させる工程;
(III)該PSBP遺伝子が該サンプル中の細胞において発現しているかどうかを確認する工程;および
(IV)該PSBP遺伝子が発現している細胞を分離または濃縮する工程、
を包含する、方法。
【請求項80】
前記PSBP遺伝子は、請求項41に記載される核酸分子を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記未分化状態は、全能性を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
細胞の分化状態を判定するキットであって、
(a)Psbp遺伝子またはPSBP遺伝子産物に特異的に反応する因子;および
(b)該PSBP遺伝子が該細胞において発現しているかどうかを確認するための手段、
を備える、キット。
【請求項83】
前記PSBP遺伝子は、請求項41に記載される核酸分子を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
前記分化状態は、多能性を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項85】
前記分化状態は、全能性を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項86】
さらに、他の幹細胞マーカーが発現しているかどうかを確認する手段を備える、請求項82に記載のキット。
【請求項87】
前記他の幹細胞マーカーは、Oct4および/またはStm1遺伝子を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項88】
試料中の胚性幹細胞の存在を検出する方法であって、
A)細胞に由来する成分を提供する工程;
B)該成分をOct4に特異的な因子およびSox2に特異的な因子を用いてゲルシフトアッセイに供する工程であって、該Oct4に特異的な因子ではスーパーシフトが見られるが、該Sox2に特異的な因子ではスーパーシフトしないことは、胚性幹細胞であることの指標である、工程、
を包含する、方法。
【請求項89】
前記胚性幹細胞は、胚性癌腫細胞から識別される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞は、R1胚性幹細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記Oct4に特異的な因子は、抗Oct4抗体である、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記Sox2に特異的な因子は、抗Sox2抗体である、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
Sox2が発現しているかどうかを確認する工程であって、該Sox2が発現していないことは、前記試料中に胚性幹細胞が含まれていることをさらに確証付ける、工程をさらに包含する、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞に由来成分の提供は、核抽出物を提供することを包含する、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記因子は、標識されているかまたは標識され得ることを特徴とする、請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記因子は、放射標識される、請求項88に記載の方法。
【請求項97】
前記Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトしない成分を選択する工程は、Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトする成分と比較することを包含する、請求項88に記載の方法。
【請求項98】
前記Sox2に特異的な因子を用いた場合にスーパーシフトする成分は、胚性癌腫細胞に由来する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記胚性癌腫細胞は、F9細胞である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
試料中の多分化能の状態を検出する方法であって、
A)細胞に由来する成分を提供する工程;
B)該成分をOct4に特異的な因子およびSox2に特異的な因子を用いてゲルシフトアッセイに供する工程であって、該Oct4に特異的な因子ではスーパーシフトが見られるが、該Sox2に特異的な因子ではスーパーシフトしないことは、多分化能を有することの指標である、工程、
を包含する、方法。
【請求項101】
Sox2の発現量を測定し、該Sox2の発現量と前記Sox2に特異的な因子でスーパーシフトしない量とを比較して、該Sox2に特異的な因子でスーパーシフトしない量の該Sox2に対する相対比が多いことは、前記試料に含まれる細胞の多分化能が高いことの指標である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記因子は、抗体を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
試料中の胚性幹細胞の存在を検出するためのキットであって、
A)細胞に由来する成分をOct4に特異的な因子およびSox2に特異的な因子を用いてゲルシフトアッセイに供する手段;
B)該Oct4に特異的な因子ではスーパーシフトが見られるが、該Sox2に特異的な因子ではスーパーシフトしないことは、胚性幹細胞であることの指標であることを示す、指示書、
を備える、キット。
【請求項104】
試料中の多分化能の状態を検出するためのキットであって、
A)細胞に由来する成分をOct4に特異的な因子およびSox2に特異的な因子を用いてゲルシフトアッセイに供するための手段、
B)該Oct4に特異的な因子ではスーパーシフトが見られるが、該Sox2に特異的な因子ではスーパーシフトしないことは、多分化能を有することの指標であることを示す、指示書、
を備える、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−42663(P2006−42663A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227154(P2004−227154)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(503341675)株式会社リプロセル (13)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】