説明

EUVマスクブランクスの検査方法、EUVフォトマスクの製造方法、及びパターン形成方法

【課題】EUVマスクブランクス中の微細な位相欠陥を感度良く且つ簡易に検出する検査方法を提供する。
【解決手段】反射光学系を有するEUV露光装置に、チップパターンを有するEUVマスクブランクスと、下層膜、中間層膜及びネガ型レジスト膜が形成された基板とを設置する。EUV光露光によりネガ型レジスト膜にチップパターンを転写した後、当該ネガ型レジスト膜をマスクとして中間層膜をエッチングしてチップパターンを転写し、その後、当該中間層膜をマスクとして下層膜をエッチングしてチップパターンを転写する。下層膜の2箇所以上の領域に転写されたチップパターンを比較することによって、EUVマスクブランクスの欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置等の製造工程におけるリソグラフィ技術に関し、特に、極端紫外光リソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography )用反射型EUVマスクブランクスの検査方法、当該検査方法を用いたEUVフォトマスクの製造方法、及び当該製造方法を用いて形成されたEUVフォトマスクによるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、極端紫外光リソグラフィ用反射型EUVマスクブランクスを「EUVマスクブランクス」、極端紫外光リソグラフィ用反射型フォトマスクを「EUVフォトマスク」と称する場合がある。ここで、EUVは、Extreme Ultraviolet (極端紫外)の略語である。
【0003】
「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」を説明するに当たっての前提事項は次の通りである。通常、フォトマスクは縮小投影型の露光装置で使用されるため、マスク上のパターン寸法を議論する場合には露光装置の縮小倍率を考慮しなければならない。しかし、本明細書では、混乱を避けるため、形成しようとする所望のパターン(例えばレジストパターン)と対応させてマスク上のパターン寸法を説明する場合、特に断らない限り、当該寸法を縮小倍率で換算した値を用いる。具体的には、M分の1の縮小投影システムにおいて幅(M×32)nmのマスクパターンによって幅32nmのレジストパターンを形成した場合には、マスクパターン幅及びレジストパターン幅は共に32nmであるとする。また、欠陥サイズの記載についても同様の扱いとする。
【0004】
また、本明細書では、特に断らない限り、NAは「露光装置における縮小投影光学系のレンズの開口数」を表し、σは「露光装置における照明系のコヒーレンスファクタ」を表すものとする。
【0005】
従来、半導体装置などの半導体デバイスは、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を縮小光学系を通して照射し、回路パターンを半導体ウエハ(以下、単にウエハと称する)上に転写する光リソグラフィ工程を繰り返すことによって、大量生産されている。
【0006】
また、半導体集積回路を構成する半導体素子の微細化に伴って、配線等のパターンの寸法の微細化が求められている。微細なパターンを形成するためには、波長の短い光を用いたリソグラフィ技術が不可欠である。特に、32nm以下の幅を有するパターンの形成においては、波長が13.6nmである極端紫外光(EUV光)を用いたリソグラフィ技術が非常に期待されている。
【0007】
ところで、クリプトンフロライド(KrF)エキシマレーザ(波長が248nm)又はアルゴンフロライド(ArF)エキシマレーザ(波長が193nm)を用いたフォトリソグラフィでは、合成石英からなるレンズ(合成石英レンズ)を含む屈折光学系を使用している。しかし、EUV光は、これらのエキシマレーザからの出力光よりも波長が短い。そのため、合成石英レンズでのEUV光の吸収が大きくなり、また、EUV光の波長では合成石英レンズの屈折率が1に近くなる。よって、EUVリソグラフィでは、前述の屈折光学系を使用することができないので、反射光学系(反射型フォトマスクと反射型ミラーとにより構成される光学系)が用いられている。現在、主流となっている反射型フォトマスクでは、熱膨張率の低いガラス基板上に多層膜(EUV光の高反射領域)が形成されていると共に、当該多層膜上にEUV光吸収膜からなるマスクパターン(EUV光の低反射領域)が形成されている。多層膜は、光学定数(屈折率又は吸収率)の異なる2種類の薄膜が交互に積層された構造を有しており、例えば40層対のMo(モリブデン)/Si(シリコン)多層膜等が用いられている。尚、n層対のMo/Si多層膜とは、本明細書では、Mo膜(下層)とSi膜(上層)とが交互にn回積層された多層膜を意味する。このように、EUVリソグラフィでは、多層膜による反射(ブラッグ反射)を利用した多層膜反射基板がEUVマスクブランクスとして使用されている。
【0008】
EUVリソグラフィにおける大きな技術的課題の一つに、前述の反射型フォトマスクにおける欠陥の低減がある。
【0009】
図5は、従来の反射型フォトマスクの断面構造をマスク欠陥と共に示した図である。図5に示すように、熱膨張率の低いガラス基板100上に、EUV光を反射する40層対のMo/Si多層膜101が形成されていると共に、当該多層膜101上にEUV光吸収膜からなるマスクパターン102が形成されている。一般的に反射型フォトマスクで発生する欠陥は、多層膜101上で生じるパターン欠陥103と、多層膜101中又は多層膜101とガラス基板100との界面で生じる位相欠陥104とに大別することができる。
【0010】
図5に示すように、パターン欠陥103とは、多層膜101表面上にマスクパターン102を形成する際に発生する残渣や欠けといった、主に反射光の強度変化を引き起こす欠陥(光強度変化型欠陥)である。一方、位相欠陥104とは、多層膜101中又は多層膜101とガラス基板100との界面で生じた異物によって発生する、位相変調を引き起こす欠陥(位相変化型欠陥)である。図5に示す反射型フォトマスクでは、露光光の波長が13.6nmと極めて短いために、多層膜101中において極小異物が発生した場合でも、当該異物のサイズが露光光の波長の数分の1程度あれば、位相変調が発生してしまう。よって、従来のKrF用やArF用の透過型マスクでは問題にならなかったサイズの欠陥が位相欠陥となり、転写形成されたレジストパターンの寸法変動を引き起こす。非特許文献1(10ページ)には、32nm以下の幅を有するレジストパターン形成時に、マスク上の多層膜中に幅8nm、高さ0.5nmの位相欠陥が存在すると、転写パターンに5%程度の寸法変動が生じることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−114200号公報
【特許文献2】特開平11−354404号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】寺澤他、2010年半導体計測シンポジウム「EUVリソグラフィにおける検査計測の課題」、2010年3月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の位相欠陥、特に、レジストパターンに寸法変動をもたらし、最終的にはデバイス特性に悪影響を与えて歩留まりを低下させる致命欠陥をEUVマスクブランクス作製時の段階で無くすことは必要不可欠である。
【0014】
EUV光吸収膜からなるマスクパターンを形成する前段階でのEUVマスクブランクス欠陥の検査方法は、検査に使用する光の波長によって大きく2種類の方法に分けられる。第1の方法は、可視光や紫外線のレーザ光をEUVマスクブランクスに対して斜めから照射した際の乱反射光から異物を検出する方法であり、第2の方法は、マスクパターンの転写に用いるEUV光と同じ13.6nmの波長を持つEUV光を用いて欠陥を検出する方法である。
【0015】
しかし、第1の方法では、EUVマスクブランクスの多層膜表面の外部形状の変化のみを検出しているため、多層膜中の位相欠陥を全く検出できないという問題がある。
【0016】
一方、第2の方法として代表的な方法は、特許文献1に開示されている、EUV光照射での暗視野反射像をX線CCD(Charge Coupled Device )で検出する方法である。しかし、特許文献1に開示されている方法は、比較的高い欠陥検出感度を有しているものの、前述の位相欠陥の検出に関しては十分な検出感度を有していない。その理由は、多層膜中の微細な位相欠陥を検出するに際して、検査に用いるEUV光の集光光学系のレンズの収差、又はCCDなどのEUV光検出装置における散乱電子のブラー(ぼけ)等が障害となるためである。また、特許文献1に開示されている方法で用いられている検査装置の視野領域は0.8mm径程度であり、100cm2 以上あるEUVフォトマスクの多層膜の全面を検査するためには視野領域を順次走査する必要があり、欠陥検査に膨大な時間を要するという問題もある。
【0017】
以上に述べたような、第1及び第2の方法の問題点を解決する方法として、特許文献2に開示されている方法が知られている。図6(a)〜(c)は、特許文献2に開示されている方法を説明するための図である。尚、図6(a)及び(b)は、EUVマスクブランクスの断面構成を示しており、図6(c)は、被露光基板となるウエハの平面構成を模式的に示している。
【0018】
特許文献2に開示されている方法においては、まず、図6(a)に示すように、ガラス基板200上にMo/Si多層膜201を形成した後、図6(b)に示すように、当該多層膜201上に容易に剥離可能なレジストパターン(ラインアンドスペースパターン)202を形成する。レジストパターン202は、EUV光吸収膜からなるマスクパターンとして機能する。
【0019】
次に、レジストパターン202が形成されたEUVマスクブランクスに対してEUV光を所定の光学系を経由して照射し、EUVマスクブランクスにより反射された光を、図6(c)に示すように、ウエハ203上に塗布されたレジストに照射した後、当該レジストを現像する。これによって、レジストパターン202が転写されてなるレジストパターン(転写後レジストパターン)204が各チップ領域に形成される。
【0020】
次に、隣接するチップ領域の間で転写後レジストパターン204を互いに比較することによって、EUVマスクブランクスにおける欠陥の有無を判別する。
【0021】
特許文献2に開示されている方法においては、容易に剥離可能なレジストパターン202におけるラインアンドスペースの寸法(具体的にはラインパターンのピッチ(つまりスペースパターンのピッチ))は、考慮しなければいけない最小欠陥の大きさ、つまり、検査するEUVマスクブランクスが最終的にEUVフォトマスクとして用いられる時の最小パターン寸法に依存すると定義されている。例えば、考慮しなければならない最小欠陥の大きさを、非特許文献1に開示されているようにマスク上で8nmの幅とした場合、容易に剥離可能なレジストパターン202におけるラインアンドスペースの寸法は8nmよりも小さい寸法となる。
【0022】
しかしながら、現行の開口数NAが0.25、コヒ−レンスファクタσが0.5のEUV露光装置での解像限界はウエハ上で27nm程度であることから、前述のレジストパターン202を用いて、8nmよりも小さい寸法、例えば6nmの寸法を持つラインアンドスペースパターン(レジストパターン203)をウエハ204上に転写することはできない。従って、特許文献2に開示されている方法では、考慮しなければならない小さいサイズの位相欠陥を検出することができない。
【0023】
以上に述べたように、従来の技術では、EUVマスクブランクス中の微細な位相欠陥を感度良く且つ簡易に検出することはできない。
【0024】
前記に鑑み、本発明は、EUVマスクブランクス中の微細な位相欠陥を感度良く且つ簡易に検出する検査方法を提供することを第1の目的とし、当該検査方法により抽出された無欠陥ブランクスを用いたEUVフォトマスクの製造方法を提供することを第2の目的とし、当該製造方法により形成されたEUVフォトマスクを用いたパターン形成方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記の第1の目的を達成するために、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法は、アライメントマークを含むチップパターンを有するEUVマスクブランクスを準備する工程と、下層膜、中間層膜及びネガ型レジスト膜が下から順に形成された第1の基板を準備する工程と、反射光学系を有するEUV露光装置に前記EUVマスクブランクスと前記第1の基板とを設置する工程と、前記第1の基板上に形成された前記ネガ型レジスト膜にEUV光を前記EUVマスクブランクスを経由して照射した後、前記ネガ型レジスト膜を現像することによって、前記ネガ型レジスト膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、前記チップパターンが転写された前記ネガ型レジスト膜をエッチングマスクとして前記中間層膜をドライエッチングすることによって、前記中間層膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、前記チップパターンが転写された前記中間層膜をエッチングマスクとして前記下層膜をドライエッチングすることによって、前記下層膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、前記下層膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に転写された前記チップパターンを互いに比較することによって、前記EUVマスクブランクスの欠陥を検出する工程とを備えている。
【0026】
尚、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記EUV露光装置の前記反射光学系は低収差光学系(例えば、理想球面波と実際の波面とのずれを示す波面収差が0.7nm(RMS(Root Mean Square)により算出)以下となる光学系)であることが好ましい。また、前記第1の基板はウエハであってもよい。
【0027】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記EUVマスクブランクスを準備する工程は、ガラス基板上に、相対的に屈折率が高い層と相対的に屈折率が低い層とが交互に複数回積層された多層膜を形成する工程と、前記多層膜が形成された前記ガラス基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に露光光を選択的に照射した後、前記レジスト膜を現像することによって、前記チップパターンを形成する工程とを含んでいてもよい。ここで、前記ガラス基板の熱膨張率又は熱収縮率は低い(例えば熱膨張率は0〜0.05×10-7/℃であり、熱収縮率は−0.05×10-7/℃〜0である)ことが好ましい。また、前記多層膜は、例えばMo/Si多層膜であってもよい。また、前記相対的に屈折率が高い層は、Mo、Cr、Ni、Ru又はWから構成されており、前記相対的に屈折率が低い層は、Si、Be、B又はCから構成されていてもよい。すなわち、前記相対的に屈折率が高い層としては、相対的に重い元素からなる膜を用い、前記相対的に屈折率が低い層としては、相対的に軽い元素からなる膜を用いてもよい。また、前記露光光は、電子線、g線、i線、KrFエキシマレーザ光又はArFエキシマレーザ光であってもよい。すなわち、前記EUVマスクブランクスに欠陥検査用の前記アライメントマークを形成する工程においては、電子線描画装置を用いて描画を行ってもよいし、又は、g線、i線、KrFエキシマレーザ若しくはArFエキシマレーザなどを光源とする露光装置を用いて露光を行ってもよい。また、前記アライメントマークを形成する際に使用する前記レジスト膜を構成するレジストは、露光された領域が架橋するネガ型タイプであってもよいし、又は、露光された領域が溶解するポジ型タイプであってもよい。
【0028】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記第1の基板上に形成される前記ネガ型レジスト膜を構成するレジストは、EUVマスクブランクスの多層膜中の位相欠陥を転写できるように、薄膜形成が可能な材料であり、高感度な材料であり、且つ高コントラスト性能を有する材料であることが好ましい。また、以上のような材料であれば、ネガ型タイプのフォトレジストに限らず、ポジ型タイプのフォトレジストをネガ現像液と組み合わせて、EUV光が照射された部分が残るネガ現像プロセスを適用してもよい。
【0029】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記第1の基板上に前記下層膜、前記中間層膜及び前記ネガ型レジスト膜を順次形成するプロセス、つまり多層レジストプロセスの適用を前提とした。しかし、位相欠陥が転写されたパターンの有無によって必要な検査コントラストが得られ、それにより、位相欠陥が十分に検出可能であるならば、前述の多層レジストプロセスに代えて、前記第1の基板上に、例えば有機材料からなる下層膜のみを介してネガ型レジスト膜を形成するプロセス、つまり単層レジストプロセスを適用することも可能である。
【0030】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記ネガ型レジスト膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程において、前記少なくとも2箇所の異なる領域毎に、露光量及びフォーカス位置の少なくとも一方を変化させて露光を行ってもよい。すなわち、前記ネガ型レジスト膜の各チップ領域に前記チップパターンを転写する際に、全てのチップ領域について露光量及びフォーカス位置等の露光条件を同一に設定するのではなく、各チップ毎に露光条件を変化させてもよい。ここで、前記露光量を最適露光量を基準として−2%以上で且つ+2%以下の範囲内で変化させてもよい。例えば、露光量を最適露光量を基準として±1%又は±2%変化させて露光を実施してもよい。また、前記フォーカス位置を最適フォーカス位置を基準として−0.02μm以上で且つ+0.02μm以下の範囲内で変化させてもよい。例えば、フォーカス位置を最適フォーカス位置を基準として±0.01μm又は±0.02μmと変化させて露光を実施してもよい。
【0031】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記チップパターンが転写された前記ネガ型レジスト膜をエッチングマスクとして前記中間層膜をドライエッチングすることによって、前記中間層膜に前記チップパターンを転写する工程、及び、前記チップパターンが転写された前記中間層膜をエッチングマスクとして前記下層膜をドライエッチングすることによって、前記下層膜に前記チップパターンを転写する工程では、前記チップパターンが転写された前記ネガ型レジスト膜つまりフォトレジストパターンのうち位相欠陥が転写されてなるパターンの幅が非常に小さいことを考慮して、前記中間層膜及び前記下層膜をドライエッチングする際に、前記パターンの転写幅が拡大するように、オーバーエッチング条件を適用したり、又はエッチングガスを含むエッチングプロセスを変更したりすることが望ましい。
【0032】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記ネガ型レジスト膜の厚さは、5nm以上で且つ15nm以下であってもよい。このようにすると、EUVマスクブランクスの多層膜中の位相欠陥をネガ型レジスト膜に確実に転写することができる。
【0033】
また、本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法において、前記中間層膜は、Siを含むポリマーから構成されていてもよい。このようにすると、位相欠陥が転写されたパターンの有無によって必要な検査コントラストが得られるので、位相欠陥を確実に検出することが可能となる。
【0034】
前記の第2の目的を達成するために、本発明に係るEUVフォトマスクの製造方法は、前述の本発明に係るEUVマスクブランクスの検査方法を行うことによって、無欠陥EUVマスクブランクスを抽出する工程と、前記無欠陥EUVマスクブランクス上にEUV光吸収膜からなるマスクパターンを形成する工程と、ポジ型レジスト膜が形成された第2の基板を準備する工程と、反射光学系を有するEUV露光装置に、前記マスクパターンが形成された前記無欠陥EUVマスクブランクスと前記第2の基板とを設置する工程と、前記第2の基板上に形成された前記ポジ型レジスト膜にEUV光を、前記マスクパターンが形成された前記無欠陥EUVマスクブランクスを経由して照射した後、前記ポジ型レジスト膜を現像することによって、前記ポジ型レジスト膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記マスクパターンを転写する工程と、前記ポジ型レジスト膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に転写された前記マスクパターンを互いに比較することによって、前記マスクパターンの欠陥を検出する工程と、前記欠陥が検出された前記マスクパターンを修正する工程とを備えている。
【0035】
尚、本発明に係るEUVフォトマスクの製造方法において、前記EUV露光装置の前記反射光学系は低収差光学系であることが好ましい。また、前記第2の基板はウエハであってもよい。
【0036】
また、本発明に係るEUVフォトマスクの製造方法において、前記EUV光吸収膜はTaBNから構成されていてもよい。
【0037】
前記の第3の目的を達成するために、本発明に係るパターン形成方法は、半導体基板上に形成されたEUV用ポジ型レジスト膜にEUV光を、前述の本発明に係るEUVフォトマスクの製造方法を用いて形成されたEUVフォトマスクを経由して照射する工程と、前記EUV光が照射された前記EUV用ポジ型レジスト膜を現像してEUV用ポジ型レジストパターンを形成する工程とを備えている。
【0038】
本発明に係るパターン形成方法によると、EUVフォトマスク起因のリピート欠陥が無い所望のレジストパターンを形成することができる。
【0039】
尚、本発明に係るパターン形成方法において、前述の本発明に係るEUVフォトマスクの製造方法を用いて形成されたEUVフォトマスクは、所望の集積回路パターンを有していてもよい。また、前記EUV光の露光には、低収差の反射光学系を有するEUV露光装置を用いてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によると、EUVマスクブランクス中の微細な位相欠陥を感度良く且つ簡易に検出する検査方法を提供することができる。また、当該検査方法により抽出された無欠陥EUVマスクブランクスを用いたEUVフォトマスクの製造方法を提供することができる。さらに、当該製造方法により形成されたEUVフォトマスクを用いたパターン形成方法を提供することができ、それにより、歩留まり低下のない半導体装置の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(a)〜(c)は、実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法の各工程を示す図である。
【図2】図2は、実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法の一工程を示す図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法の各工程を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係るEUVフォトマスクの製造方法のフローチャートである。
【図5】図5は、従来の反射型フォトマスクの断面構造をマスク欠陥と共に示した図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、従来のEUVマスクブランクスの検査方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(前提事項)
以下、本発明に係る実施形態を説明するに当たっての前提事項について説明する。
【0043】
通常、フォトマスクは縮小投影型の露光装置で使用されるため、マスク上のパターン寸法を議論する場合には露光装置の縮小倍率を考慮しなければならない。しかし、以下の実施形態を説明する際には、混乱を避けるため、形成しようとする所望のパターン(例えばレジストパターン)と対応させてマスク上のパターン寸法を説明する場合、特に断らない限り、当該寸法を縮小倍率で換算した値を用いる。具体的には、M分の1の縮小投影システムにおいて幅(M×32)nmのマスクパターンによって幅32nmのレジストパターンを形成した場合には、マスクパターン幅及びレジストパターン幅は共に32nmであるとする。また、欠陥サイズの記載についても同様の扱いとする。
【0044】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図1(a)〜(c)、図2及び図3(a)〜(c)は、本実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法の各工程を示す図である。尚、図1(a)及び(b)は、EUVマスクブランクスの断面構成を示しており、図1(c)及び図3(a)、(b)は、被露光基板となるウエハの断面構成を示しており、図3(c)は、当該ウエハの平面構成を模式的に示しており、図2は、EUV露光装置の概略構成を模式的に示している。
【0046】
まず、図1(a)に示すように、熱膨張率又は熱収縮率の低い(例えば熱膨張率は0〜0.05×10-7/℃であり、熱収縮率は−0.05×10-7/℃〜0である)ガラスからなる基板1上に、例えばマグネトロンスパッタ法により、多層膜2を積層する。ここで、多層膜2は、例えば40層対のMo/Si多層膜であり、当該多層膜中におけるMo膜及びSi膜のそれぞれの厚さは例えば2.8nm及び4.0nmである。また、多層膜2は、例えば前述のMo膜等のように相対的に屈折率が高い層(以下、高屈折率層という)と、例えば前述のSi膜等のように相対的に屈折率が低い層(以下、低屈折率層という)とが交互に複数回積層された多層膜であることが好ましい。高屈折率層としては、前述のMo膜の他に、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)又はW(タングステン)などの比較的重い元素からなる膜を用いてもよい。また、低屈折率層としては、前述のSi膜の他に、Be(ベリリウム)、B(ホウ素)又はC(炭素)などの比較的軽い元素からなる膜を用いてもよい。以下、図1(a)に示す工程で多層膜2が設けられた基板1をEUVマスクブランクス3と称する。
【0047】
次に、図1(b)に示すように、EUVマスクブランクス3上に、例えば電子線用のレジストを塗布した後、当該レジストに対して、例えば電子線描画法を用いて電子線を選択的に照射した後、当該レジストを現像することによって、所望のアライメントマーク4を含むチップパターンを形成する。アライメントマーク4は、EUV露光装置を用いてEUVマスクブランクス3のチップパターンを被露光材料に転写する際に、当該EUV露光装置においてEUVマスクブランクス3をアライメントして設置するために用いられる。また、アライメントマーク4は、EUV露光装置の転写有効エリア(転写対象の集積回路パターンの配置領域)の外側に形成されている。また、アライメントマーク4自体は、前述のように、EUV露光装置内でのアライメントに用いられるが、EUVマスクブランクス3のチップパターンがウエハ上に転写されてなるパターンに対して欠陥検査を行う際には、アライメントマーク4がウエハ上に転写されてなるマークは、欠陥検査装置に当該ウエハをアライメントして設置するために用いられる。尚、アライメントマーク4を形成する工程においては、電子線描画装置を用いて描画を行ってもよいし、又は、g線、i線、KrFエキシマレーザ若しくはArFエキシマレーザなどを光源とする露光装置を用いて露光を行ってもよい。また、アライメントマーク4を形成する際に使用するレジストは、露光された領域が架橋するネガ型タイプであってもよいし、又は、露光された領域が溶解するポジ型タイプであってもよい。
【0048】
次に、図1(c)に示すように、例えばウエハ等の被露光基板5上に下層膜形成用材料として例えばノボラック樹脂材料を塗布して、例えば厚さ25nm程度の下層膜6を形成した後、例えば200度の温度で90秒間のベークを行って、下層膜6に含まれているポリマーを熱架橋させる。次に、ポリマーが架橋された下層膜6上に、例えばポリマーに対してSiを20質量%の割合で含む中間膜形成用材料を塗布した後、例えば220度の温度で60秒間のベークを行って、厚さが例えば5nm程度の中間層膜7を形成する。次に、中間層膜7上にネガ型フォトレジスト形成用材料を塗布した後、例えば100度の温度で60秒間のベークを行って、例えば厚さ10nm程度のネガ型フォトレジスト膜8を形成する。
【0049】
尚、下層膜6の材料としては、ノボラック樹脂に限らず、炭素(C)を主成分とし、フェニル基又はナフチル基などの芳香環を有する有機材料を使用することができる。
【0050】
また、下層膜6、中間層膜7及びネガ型フォトレジスト膜8の各厚さは、パターニングされたネガ型フォトレジスト膜8をエッチングマスクとして中間層膜7をエッチング加工することができると共に、パターニングされた中間層膜7をエッチングマスクとして下層膜6をエッチング加工することができる厚さであれば、前述の厚さに限定されるものではない。同様に、中間層膜7におけるSi含有率も20質量%に限られるものではない。
【0051】
また、ネガ型フォトレジスト膜8を構成するレジストは、EUVマスクブランクス3の多層膜2中の位相欠陥を転写できるように、例えば厚さ10nm程度の薄膜の形成が可能な材料であり、高感度な材料であり、且つ高コントラストでパターニングできる性能を有する材料であることが好ましい。また、以上のような材料であれば、ネガ型タイプのフォトレジストに限らず、ポジ型タイプのフォトレジストをネガ現像液と組み合わせて、EUV光が照射された部分が残るネガ現像プロセスを適用してもよい。但し、EUVマスクブランクス3の多層膜2中の位相欠陥を確実に転写するためには、特に、5〜15nm程度の厚さを有するネガ型フォトレジスト膜を用いることが有効である。
【0052】
また、図1(c)に示す工程では、被露光基板5上に下層膜6、中間層膜7及びネガ型フォトレジスト膜8を順次形成するプロセス、つまり多層レジストプロセスの適用を前提とした。しかし、位相欠陥が転写されたパターンの有無によって必要な検査コントラストが得られ、それにより、位相欠陥が十分に検出可能であるならば、前述の多層レジストプロセスに代えて、被露光基板5上に、例えば有機材料からなる下層膜のみを介してネガ型フォトレジスト膜を形成するプロセス、つまり単層レジストプロセスを適用することも可能である。
【0053】
次に、図2に示すように、低収差(例えば、理想球面波と実際の波面とのずれを示す波面収差が0.7nm(RMSにより算出)以下)の反射光学系10を有し、NA(開口数)が例えば0.25、σ(コヒーレンスファクタ)が例えば0.5のEUV露光装置9にEUVマスクブランクス3と被露光基板5とを設置する。次に、被露光基板5上に形成されたネガ型フォトレジスト膜8の少なくとも2箇所の異なる領域(以下、チップ領域と称する)に対して、EUVマスクブランクス3を経由してEUV光によるステップアンドリピート露光を行う。次に、例えば110度の温度で60秒間ベークを行った後、例えばアルカリ現像液を用いて20秒間現像を行う。これにより、図3(a)に示すように、ネガ型フォトレジスト膜8にチップパターン11が転写される。尚、EUVマスクブランクス3の多層膜2に位相欠陥が生じていた場合、チップパターン11は、当該位相欠陥に起因するパターンを含む。
【0054】
尚、EUVマスクブランクス3の多層膜2中の位相欠陥をネガ型フォトレジスト膜8に確実に転写するためには、光学コントラストを低下させないように、低収差の反射光学系10を有するEUV露光装置9を用いることが好ましい。また、EUV露光装置9としては、実際に電子デバイスの量産に適用しているEUV露光装置を用い、且つ当該量産に適用しているNA及び照明条件等で露光を実施することが好ましい。
【0055】
また、前述のステップアンドリピート露光においては、ネガ型フォトレジスト膜8の各チップ領域に対して同一の露光条件、例えば同一の露光量及びフォーカス位置を用いて露光を行ってもよいし、又は、各チップ領域毎に露光条件、例えば露光量及びフォーカス位置の少なくとも一方を変化させて露光を行ってもよい。後者の場合、光学コントラストの変化に伴いチップパターン11が変形するため、後述する欠陥検査工程で位相欠陥の検出を容易に行うことができる。ここで、露光量については、最適露光量を基準として例えば−2%以上で且つ+2%以下の範囲内で変化させてもよい。具体的には、露光量を最適露光量を基準として±1%又は±2%変化させて露光を実施してもよい。また、フォーカス位置については、最適フォーカス位置を基準として−0.02μm以上で且つ+0.02μm以下の範囲内で変化させてもよい。具体的には、フォーカス位置を最適フォーカス位置を基準として±0.01μm又は±0.02μmと変化させて露光を実施してもよい。
【0056】
次に、図3(b)に示すように、EUVマスクブランクス3の多層膜2中の位相欠陥の転写パターンを含むチップパターン11が転写されたネガ型フォトレジスト膜8をエッチングマスクとして、例えば炭素(C)とフッ素(F)とを主成分とするCF系エッチングガスを用いて中間層膜7をドライエッチングする。これにより、中間層膜7にチップパターン11が転写される。次に、チップパターン11が転写された中間層膜7をエッチングマスクとして、例えば酸素(O2 )を主成分とするO2 系エッチングガスを用いて下層膜6をドライエッチングする。これにより、下層膜6にチップパターン11が転写される。尚、ネガ型フォトレジスト膜8については、中間層膜7のエッチング後にアッシング等により除去してもよいし、又は、O2 系エッチングガスを用いた下層膜6のエッチング中に除去してもよい。
【0057】
ここで、下層膜6におけるチップパターン11の形状は、ネガ型フォトレジスト膜8におけるチップパターン11の形状と同じであるが、ネガ型フォトレジスト膜8の厚さが例えば10nmであるのに対して、下層膜6の厚さは例えば25nmと厚い。従って、後述する欠陥検査工程において、ネガ型フォトレジスト膜8におけるチップパターン11ではなく、下層膜6におけるチップパターン11を対象とすることにより、検査コントラストが向上するため、位相欠陥の検出及び位相欠陥位置の特定を容易に行うことができる。
【0058】
尚、チップパターン11が転写されたネガ型フォトレジスト膜8をエッチングマスクとして中間層膜7をドライエッチングする工程、及び、チップパターン11が転写された中間層膜7をエッチングマスクとして下層膜6をドライエッチングする工程では、チップパターン11のうち位相欠陥が転写されてなるパターンの幅が例えば最小8nm程度と非常に小さい。従って、中間層膜7及び下層膜6をドライエッチングする際に、位相欠陥が転写されてなるパターンの転写幅が拡大するように、オーバーエッチング条件を適用したり、又は、エッチングガスを含むエッチングプロセスを変更したりすることが望ましい。
【0059】
次に、図3(c)に示すように、下層膜6の少なくとも2箇所の異なるチップ領域に転写されたチップパターン11を互いに比較することによって、EUVマスクブランクス3の欠陥を検出する。具体的には、EUVマスクブランクス3の同一領域を経由したEUV光の露光により異なるチップ領域に転写されたチップパターン11同士において同じ位置に欠陥が検出された場合、位相欠陥が検出されたものとする。
【0060】
ところで、パターン欠陥検査方法としては、例えば、設計データ比較法(Die to Database法)と、隣接パターン比較法(Die to Die法)とが知られている。設計データ比較法は、検査装置により回路パターンのスキャンを行い、当該スキャンにより得られた検出画像と、当該スキャン箇所に対応する設計データ(参照画像)とを比較する方法である。隣接パターン比較法は、隣接する2個のチップ領域の同一パターンを比較し、不一致部分を発見したときに欠陥が存在すると判定する方法である。隣接パターン比較法においては、例えば、光学系によって拡大したパターンの257nm波長の検査光での光学像をCCD(Charge Coupled Device )センサ上に結像させることにより得られた光学的な画像データを電気的な画像データに変換して、隣接する2個のチップ領域の画像データの比較を行っている。隣接パターン比較法は、隣接する2個のチップ領域内の同一箇所に形成されたパターンに同一欠陥が存在する確率は極めて小さいという仮定を前提としている。本実施形態では、図3(c)に示す工程で用いるパターン欠陥検査方法として、例えば隣接パターン比較法を用いることにより、EUVマスクブランクス3の多層膜2中に生じた例えば幅8nm以上の位相欠陥の検出を行う。
【0061】
以下、本発明の一実施形態に係るEUVフォトマスクの製造方法、具体的には、前述の本実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法を用いたEUVフォトマスクの製造方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0062】
まず、ステップS1において、前述の図1(a)に示す工程を実施する。すなわち、例えば熱膨張率の低いガラスからなる基板1上に、例えばマグネトロンスパッタ法により、多層膜2を積層する。ここで、多層膜2は、例えば40層対のMo/Si多層膜であり、当該多層膜中におけるMo膜及びSi膜のそれぞれの厚さは例えば2.8nm及び4.0nmである。以下、図1(a)に示す工程で多層膜2が設けられた基板1をEUVマスクブランクス3と称する。
【0063】
次に、ステップS2において、前述の図1(b)に示す工程を実施する。すなわち、EUVマスクブランクス3上に、例えば電子線用のレジストを塗布した後、当該レジストに対して、例えば電子線描画法を用いて電子線を選択的に照射した後、当該レジストを現像することによって、所望のアライメントマーク4を含むチップパターンを形成する。アライメントマーク4は、EUV露光装置を用いてEUVマスクブランクス3のチップパターンを被露光材料に転写する際に、当該EUV露光装置においてEUVマスクブランクス3をアライメントして設置するために用いられる。また、アライメントマーク4は、EUV露光装置の転写有効エリア(転写対象の集積回路パターンの配置領域)の外側に形成されている。また、アライメントマーク4自体は、前述のように、EUV露光装置内でのアライメントに用いられるが、EUVマスクブランクス3のチップパターンがウエハ上に転写されてなるパターンに対して欠陥検査を行う際には、アライメントマーク4がウエハ上に転写されてなるマークは、欠陥検査装置に当該ウエハをアライメントして設置するために用いられる。
【0064】
次に、ステップS3において、前述の図1(c)に示す工程を実施する。すなわち、例えばウエハ等の被露光基板5上に下層膜形成用材料として例えばノボラック樹脂材料を塗布して、厚さが例えば25nm程度の下層膜6を形成した後、例えば200度の温度で90秒間ベークを行って、下層膜6に含まれているポリマーを熱架橋させる。次に、ポリマーが架橋された下層膜6上に、例えばポリマーに対してSiを20質量%の割合で含む中間膜形成用材料を塗布した後、例えば220度の温度で60秒間のベークを行って、例えば厚さ5nm程度の中間層膜7を形成する。次に、中間層膜7上にネガ型フォトレジスト形成用材料を塗布した後、例えば100度の温度で60秒間ベークを行って、例えば厚さ10nm程度のネガ型フォトレジスト膜8を形成する。
【0065】
次に、ステップS4において、前述の図2に示す工程を実施する。すなわち、低収差の反射光学系10を有し、NA(開口数)が例えば0.25、σ(コヒーレンスファクタ)が例えば0.5のEUV露光装置9にEUVマスクブランクス3と被露光基板5とを設置する。次に、被露光基板5上に形成されたネガ型フォトレジスト膜8の少なくとも2箇所の異なる領域(以下、チップ領域と称する)に対して、EUVマスクブランクス3を経由してEUV光によるステップアンドリピート露光を行う。次に、例えば110度の温度で60秒間ベークを行った後、例えばアルカリ現像液を用いて20秒間現像を行う。これにより、図3(a)に示すように、ネガ型フォトレジスト膜8にチップパターン11が転写される。尚、EUVマスクブランクス3の多層膜2に位相欠陥が生じていた場合、チップパターン11は、当該位相欠陥に起因するパターンを含む。
【0066】
次に、ステップS5において、前述の図3(b)に示す工程を実施する。すなわち、EUVマスクブランクス3の多層膜2中の位相欠陥の転写パターンを含むチップパターン11が転写されたネガ型フォトレジスト膜8をエッチングマスクとして、例えば炭素(C)とフッ素(F)とを主成分とするCF系エッチングガスを用いて中間層膜7をドライエッチングする。これにより、中間層膜7にチップパターン11が転写される。次に、チップパターン11が転写された中間層膜7をエッチングマスクとして、例えば酸素(O2 )を主成分とするO2 系エッチングガスを用いて下層膜6をドライエッチングする。これにより、下層膜6にチップパターン11が転写される。尚、ネガ型フォトレジスト膜8については、中間層膜7のエッチング後にアッシング等により除去してもよいし、又は、O2 系エッチングガスを用いた下層膜6のエッチング中に除去してもよい。
【0067】
ここで、下層膜6におけるチップパターン11の形状は、ネガ型フォトレジスト膜8におけるチップパターン11の形状と同じであるが、ネガ型フォトレジスト膜8の厚さが例えば10nmであるのに対して、下層膜6の厚さは例えば25nmと厚い。従って、後述する欠陥検査工程において、ネガ型フォトレジスト膜8におけるチップパターン11ではなく、下層膜6におけるチップパターン11を対象とすることにより、検査コントラストが向上するため、位相欠陥の検出及び位相欠陥位置の特定を容易に行うことができる。
【0068】
次に、ステップS6において、前述の図3(c)に示す工程を実施する。すなわち、下層膜6の少なくとも2箇所の異なるチップ領域に転写されたチップパターン11を互いに比較することによって、EUVマスクブランクス3の欠陥を検出する。具体的には、EUVマスクブランクス3の同一領域を経由したEUV光の露光により異なるチップ領域に転写されたチップパターン11同士において同じ位置に欠陥が検出された場合、位相欠陥が検出されたものとする。本実施形態では、ステップS6で用いるパターン欠陥検査方法として、例えば隣接パターン比較法を用いる。隣接パターン比較法とは、隣接する2個のチップ領域の同一パターンを比較し、不一致部分を発見したときに欠陥が存在すると判定する方法である。
【0069】
次に、ステップS7において、ステップS6の欠陥検査の結果判定を行い、欠陥が有ると判定された場合には、EUVマスクブランクス3の修正は困難であるため、ステップS8において、EUVマスクブランクス3の廃棄処分を行う。一方、ステップS7において、欠陥が無いと判定された場合には、ステップS9以降の工程に進む。
【0070】
以上に説明したステップS1〜S7を複数のEUVマスクブランクスに対して繰り返し行うことによって、言い換えると、前述の本実施形態に係るEUVマスクブランクスの検査方法を複数のEUVマスクブランクスに対して繰り返し行うことによって、欠陥の無いEUVマスクブランクス(以下、無欠陥EUVマスクブランクスと称する)を抽出することができる。
【0071】
次に、ステップS9において、無欠陥EUVマスクブランクス上に、例えばマグネトロンスパッタ法を用いて、例えばTaBNからなる厚さ70nm程度のEUV光吸収膜を形成する。次に、前記EUV光吸収膜上に例えば電子線用レジストを塗布した後、当該レジストにおけるEUV露光装置の転写有効エリア(転写対象の集積回路パターンの配置領域)に対して、例えば電子線描画法を用いて電子線を選択的に照射し、その後、当該レジストを現像する。これにより、所望の集積回路を形成するためのレジストパターンとして、例えば、最小サイズが27nm程度のラインアンドスペースパターンを形成する。次に、前記レジストパターンをエッチングマスクとして、例えば塩素(Cl2 )を主成分とするCl2 系エッチングガスを用いて前記EUV光吸収膜を構成するTaBNをドライエッチングする。これにより、所望の集積回路を形成するためのマスクパターンとして、例えば、最小サイズが27nm程度のラインアンドスペースパターンが形成される。以下、ステップS9で前記マスクパターンが設けられた無欠陥EUVマスクブランクスをEUVフォトマスクと称する。
【0072】
次に、ステップS10において、例えばウエハ等の基板上に、下地膜形成用材料として、例えば有機材料を塗布した後、例えば220度の温度で60秒間のベークを行うことにより、例えば厚さ20nm程度の有機下地膜を形成する。次に、前記有機下地膜上にポジ型フォトレジスト形成用材料を塗布した後、例えば110度の温度で60秒間のベークを行って、例えば厚さ50nm程度のポジ型フォトレジスト膜を形成する。
【0073】
次に、ステップS11において、低収差の反射光学系を有し、NA(開口数)が例えば0.25、σ(コヒーレンスファクタ)が例えば0.5のEUV露光装置に、前記EUVフォトマスクと、前記ポジ型フォトレジスト膜が設けられた前記基板とを設置する。次に、前記基板上に形成された前記ポジ型フォトレジスト膜の少なくとも2箇所の異なる領域(以下、チップ領域と称する)に対して、前記EUVフォトマスクを経由してEUV光によるステップアンドリピート露光を行う。次に、例えば110度の温度で60秒間ベークを行った後、例えばアルカリ現像液を用いて20秒間現像を行う。これにより、前記ポジ型フォトレジスト膜の少なくとも2箇所の異なるチップ領域に前記マスクパターン(所望の集積回路パターン)が転写される。
【0074】
次に、ステップS12において、前記ポジ型フォトレジスト膜の少なくとも2箇所の異なるチップ領域に転写された前記マスクパターンを互いに比較することによって、前記マスクパターンの欠陥を検出する。具体的には、パターン欠陥検査方法として、例えば隣接パターン比較法を用いて、異なるチップ領域に転写された前記マスクパターン同士において同じ位置に欠陥が検出された場合、欠陥が検出されたものとする。ステップS12の欠陥検査で欠陥が検出された場合、当該欠陥は位相欠陥ではなく、前記EUVフォトマスクの多層膜表面上に前記マスクパターンを形成する際に発生した残渣や欠け等のパターン欠陥のみと考えられるので、ステップS13において、例えばFIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)を用いて前記マスクパターンの修正を行う。一方、ステップS12の欠陥検査で欠陥が検出されなかった場合、ステップS14において、欠陥の無いEUVフォトマスク(以下、無欠陥EUVフォトマスク)が実現される。
【0075】
以上に説明したように、ステップS1〜S14を実施することによって、無欠陥EUVマスクブランクス及び無欠陥EUVフォトマスクを作製することができる。
【0076】
以下、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法、具体的には、前述の本実施形態に係るEUVフォトマスクの製造方法によって得られたEUVフォトマスクを用いたパターン形成方法について説明する。
【0077】
まず、例えばシリコンウエハ等の半導体基板上に、例えば有機材料からなる厚さ20nm程度の下層膜を形成した後、例えば205度の温度で60秒間ベークを行う。その後、前記下層膜上にEUV用ポジ型フォトレジスト形成用材料を塗布した後、例えば110度の温度で60秒間プリベークを行って、例えば厚さ50nm程度のポジ型フォトレジスト膜を形成する。
【0078】
尚、本実施形態において、前記下層膜は、従来技術のArFリソグラフィの場合のように下地基板からの露光光の反射を防止するために設けているのではなく、EUV光が照射された際に下地基板から発生する2次電子の影響を低減するために設けている。
【0079】
次に、前述のステップS1〜S14を実施することによって得られた無欠陥EUVフォトマスク、例えば、所望の集積回路を形成するためのマスクパターンとして、最小サイズが27nm程度のラインアンドスペースパターンが搭載された無欠陥EUVフォトマスクと、前記ポジ型フォトレジスト膜が設けられた前記半導体基板とをEUV露光装置に設置する。ここで、EUV露光装置のNA及びσはそれぞれ、例えば0.25及び0.5である。次に、前記半導体基板上に形成された前記ポジ型フォトレジスト膜に対して、前記無欠陥EUVフォトマスクを経由して、例えば波長13.6nmのEUV光による露光を行う。次に、例えば110度の温度で60秒間PEB(Post Exposure Bake)を行った後、例えば2.38質量%のTMAH(tetramethyl ammonium hydroxide)溶液などのアルカリ溶液を用いて現像処理を行う。
【0080】
以上のようにして形成されたレジストパターン、つまり、集積回路パターンの上面を電子顕微鏡を用いて観察し、当該集積回路パターンのうちの最小サイズパターンの寸法を計測したところ、54nmピッチで27nmサイズのラインアンドスペースパターンが形成されていることが確認できた。さらに、前記ポジ型フォトレジスト膜の少なくとも2箇所の異なるチップ領域に転写された前記集積回路パターンに対して、例えば隣接パターン比較法を用いてパターン欠陥検査を実施したところ、EUVフォトマスク起因のリピート欠陥はウエハ当り0個であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上に説明したように、本発明は、半導体集積回路装置等の製造工程におけるリソグラフィ技術、特に、EUVリソグラフィ用のマスクブランクス検査方法、当該検査方法を用いたEUVフォトマスク製造方法、及び当該製造方法を用いて形成されたEUVフォトマスクによるパターン形成方法に関し、微細パターン形成に適用する場合等に特に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 多層膜
3 EUVマスクブランクス
4 アライメントマーク
5 被露光基板
6 下層膜
7 中間層膜
8 ネガ型フォトレジスト膜
9 EUV露光装置
10 反射光学系
11 チップパターン
100 ガラス基板
101 多層膜
102 マスクパターン
103 パターン欠陥
104 位相欠陥
200 ガラス基板
201 Mo/Si多層膜
202 レジストパターン
203 ウエハ
204 転写後レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメントマークを含むチップパターンを有するEUVマスクブランクスを準備する工程と、
下層膜、中間層膜及びネガ型レジスト膜が下から順に形成された第1の基板を準備する工程と、
反射光学系を有するEUV露光装置に前記EUVマスクブランクスと前記第1の基板とを設置する工程と、
前記第1の基板上に形成された前記ネガ型レジスト膜にEUV光を前記EUVマスクブランクスを経由して照射した後、前記ネガ型レジスト膜を現像することによって、前記ネガ型レジスト膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、
前記チップパターンが転写された前記ネガ型レジスト膜をエッチングマスクとして前記中間層膜をドライエッチングすることによって、前記中間層膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、
前記チップパターンが転写された前記中間層膜をエッチングマスクとして前記下層膜をドライエッチングすることによって、前記下層膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程と、
前記下層膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に転写された前記チップパターンを互いに比較することによって、前記EUVマスクブランクスの欠陥を検出する工程とを備えていることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記EUVマスクブランクスを準備する工程は、
ガラス基板上に、相対的に屈折率が高い層と相対的に屈折率が低い層とが交互に複数回積層された多層膜を形成する工程と、
前記多層膜が形成された前記ガラス基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に露光光を選択的に照射した後、前記レジスト膜を現像することによって、前記チップパターンを形成する工程とを含むことを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記相対的に屈折率が高い層は、Mo、Cr、Ni、Ru又はWからなり、
前記相対的に屈折率が低い層は、Si、Be、B又はCからなることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記露光光は、電子線、g線、i線、KrFエキシマレーザ光又はArFエキシマレーザ光であることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記ネガ型レジスト膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に前記チップパターンを転写する工程において、前記少なくとも2箇所の異なる領域毎に、露光量及びフォーカス位置の少なくとも一方を変化させて露光を行うことを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記露光量を最適露光量を基準として−2%以上で且つ+2%以下の範囲内で変化させることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項7】
請求項5に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記フォーカス位置を最適フォーカス位置を基準として−0.02μm以上で且つ+0.02μm以下の範囲内で変化させることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記ネガ型レジスト膜の厚さは、5nm以上で且つ15nm以下であることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のEUVマスクブランクスの検査方法において、
前記中間層膜は、Siを含むポリマーからなることを特徴とするEUVマスクブランクスの検査方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のEUVマスクブランクスの検査方法を行うことによって、無欠陥EUVマスクブランクスを抽出する工程と、
前記無欠陥EUVマスクブランクス上にEUV光吸収膜からなるマスクパターンを形成する工程と、
ポジ型レジスト膜が形成された第2の基板を準備する工程と、
反射光学系を有するEUV露光装置に、前記マスクパターンが形成された前記無欠陥EUVマスクブランクスと前記第2の基板とを設置する工程と、
前記第2の基板上に形成された前記ポジ型レジスト膜にEUV光を、前記マスクパターンが形成された前記無欠陥EUVマスクブランクスを経由して照射した後、前記ポジ型レジスト膜を現像することによって、前記ポジ型レジスト膜の少なくとも2箇所の異なる領域に前記マスクパターンを転写する工程と、
前記ポジ型レジスト膜の前記少なくとも2箇所の異なる領域に転写された前記マスクパターンを互いに比較することによって、前記マスクパターンの欠陥を検出する工程と、
前記欠陥が検出された前記マスクパターンを修正する工程とを備えていることを特徴とするEUVフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のEUVフォトマスクの製造方法において、
前記EUV光吸収膜はTaBNからなることを特徴とするEUVフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
半導体基板上に形成されたEUV用ポジ型レジスト膜にEUV光を、請求項10又は11に記載のEUVフォトマスクの製造方法を用いて形成されたEUVフォトマスクを経由して照射する工程と、
前記EUV光が照射された前記EUV用ポジ型レジスト膜を現像してEUV用ポジ型レジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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