説明

EUV光源の消耗品交換時期判定方法

【課題】 EUV光源内部にある複数の消耗品個々の適切な交換時期を判定し、露光装置のランニングコストを低減する
【解決手段】 EUV光源100の状態を表すパラメータを検出する検出手段109、301により得られた値を、消耗品106、107と同数設定した閾値と比較する。検出手段により得られた値がいずれの閾値以上であるかまたは以下であるかによって、いずれの消耗品を交換するかの判断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の露光光源等に用いられるEUV光源の内部の消耗品を交換する時期を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体メモリや論理回路などの微細な半導体素子を製造するための焼き付け(リソグラフィ)方法として、紫外線を用いた縮小投影露光が行われてきた。縮小投影露光において転写できる最小の寸法は、転写に用いる光の波長に比例し、投影光学系の開口数に反比例する。このため微細な回路パターンを転写するためには用いる光の短波長化が進められ、水銀ランプi線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)と用いられる紫外光の波長は短くなってきた。
【0003】
しかし半導体素子は急速に微細化しており、紫外光を用いたリソグラフィでは限界がある。そこで0.1μmを下回るような非常に微細な回路パターンを効率よく焼き付けるために、紫外線よりも更に波長が短い波長10〜15nm程度の極端紫外光(EUV光)を用いた縮小投影露光装置が開発されている。
【0004】
EUV光源としては、例えばレーザプラズマ(LPP)方式とディスチャージ(DPP)方式の光源が用いられる。
【0005】
LPP方式のEUV光源では、真空容器中に置かれたターゲット材に高強度のパルスレーザ光を照射し、高温のプラズマを発生させ、これから放射される、例えば波長13nm程度のEUV光を利用するものである。ターゲット材としては、金属薄膜、不活性ガス、液滴などが用いられ、ガスジェット等の手段で真空容器内に供給される。ターゲットから放射されるEUV光の平均強度を高くするためにはパルスレーザの繰り返し周波数は高い方が良く、通常、数kHzの繰り返し周波数で運転される。ターゲットから放射されるEUV光を効率よく利用するために集光ミラーが設けられている。また、EUV光とともにデブリと呼ばれる飛散粒子を発生してしまい、それが光学素子を汚染、損傷し、反射率の低下を引き起こす。その影響を緩和するために、He等の不活性ガスをバッファガスとして流す方法が検討されている。
【0006】
一方、DPP方式のEUV光源は、電極間に高電圧をかけて、キセノン等のガスを流して放電させることでプラズマを生成し、EUV光を発生させる。
【0007】
照明光学系は、複数の多層膜または斜入射ミラーとオプティカルインテグレータ等から構成される。オプティカルインテグレータはマスクを均一に所定の開口数で照明する役割を持っている。照明系から供給されたEUV光は原版であるレチクルで反射され、4〜6枚の多層膜ミラーからなる投影光学系で1/4程度に縮小されて、レジストを塗布されたウエハに照射される。レチクル及びウエハは、それぞれレチクルステージ及びウエハステージに保持され、アライメント光学系で精密に位置合わせされ、フォーカス検出光学系で精密にフォーカスされた状態で、投影光学系に対し、縮小倍率に比例した速度比で同期して走査される。このようにして、レチクルの縮小投影像がウエハ上に結像した状態でそれらを同期走査するという動作が繰り返される(ステップ・アンド・スキャン)。こうして、ウエハ全面にレチクルの転写パターンが転写される。
【0008】
以上のようなEUV光露光装置において、光源からEUV光の発光を繰り返し行ううちに、(1)電極の破損、劣化、(2)デブリなどの飛散粒子によるミラーの反射率の低下によりEUV光源から照射されるEUV光量の低下が生じる。
EUV光源の寿命判定、光源を構成している各部品の寿命判定については、EUV光の発光パルス数が所定の数に達したら消耗品を交換する方法が知られている。また、特許文献1に開示されているように、EUV光の強度計測を行い、EUV光強度が所定の値を下回ったら消耗品を交換する方法も知られている。
【特許文献1】特開2003−224053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、一般に、EUV光源は、寿命の異なる2つ以上の消耗品から成り、各々の消耗品はある程度寿命のばらつきを有している。例えば、LPP方式はレーザロッドと集光ミラー、DPP方式は電極と集光ミラーという寿命の異なる2つ以上の消耗品から成る。したがって、光源を寿命と判定した時に光源内部のすべての消耗品交換を常に同時に行うことは本来交換を必要としない部品も交換することになる。一方、光源内部の消耗品を別々に交換することは装置の停止時間を増加させることになる。
本発明は、上述の従来例における問題点を解消することを課題とする。
すなわち、本発明は、EUV光源内部の寿命の異なる複数の消耗品の最適な交換時期を判定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、EUV光源の状態を表すパラメータを検出する検出工程と、その計測結果に基づいて、EUV光源内部にある2つ以上の消耗品の交換時期を判定する判定工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの測定値から複数の消耗品の交換あるいは保守点検を最適な時期に行うことができるようになる。これにより、本発明を適用した露光装置ではランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい第1の実施の形態において、EUV光源の状態を表すパラメータは、EUV光強度である。
この場合、前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短いとすると、閾値1を閾値2よりも小さく設定し、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。
そして、この判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときを消耗品2の交換時期と判定する。
あるいは、前記判定後消耗品1を交換しても閾値2を上回らないときには、次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2の双方の交換時期と判定するようにしてもよい。
【0013】
本発明の好ましい第2及び第3の実施の形態は、3つ以上の消耗品がある場合のものである。この場合、消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとして、閾値を小さな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定する。
そして、第2の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。また、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときを消耗品2の交換時期と判定する。さらに、該判定後消耗品2を交換してもEUV光強度が閾値3を上回らないときを消耗品3の交換時期と判定する。同様の操作を消耗品の数だけ行うことで、3つ以上の消耗品の寿命を判定する。
【0014】
第3の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。また、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときは次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2の交換時期と判定する。また、該判定後消耗品1と消耗品2を交換してもEUV光強度が閾値3を上回らないときは次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2と消耗品3の交換時期と判定する。同様の操作を消耗品の数だけ行うことで、3つ以上の消耗品の寿命を判定する。
【0015】
本発明の好ましい第4の実施の形態において、前記EUV光源はDPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするようにEUV光源内電極の印加電圧を制御する制御手段を有するものである。また、前記EUV光源の状態を表すパラメータはEUV光源内電極の印加電圧である。
【0016】
本発明の好ましい第5の実施の形態において、前記EUV光源はLPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするように該EUV光源のレーザ強度を制御する制御手段を有するものである。また、前記EUV光源の状態を表すパラメータは該EUV光源のレーザロッドの印加電圧である。
【0017】
本発明の好ましい第6の実施の形態において、前記EUV光源はLPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするように該EUV光源のレーザ強度を制御する制御手段を有するものである。また、前記EUV光源の状態を表すパラメータはEUV光源のレーザ強度である。
【0018】
本発明の好ましい第7及び第8の実施の形態は、第4〜6の実施形態におけるEUV光源に適用されるものである。この場合、前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短いとすると、閾値1を閾値2よりも大きく設定する。
そして、第7の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときを消耗品2の交換時期と判定する。
【0019】
また、第8の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。また、判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときには、次に前記パラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2の双方の交換時期と判定する。
【0020】
本発明の好ましい第9及び第10の実施の形態は、EUV光源が第4〜6の実施形態に係るものであり、かつEUV光源内部の消耗品が3つ以上ある場合のものである。この場合、消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとすると、閾値を小さな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定する。
そして、第9の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。また、該判定後消耗品1を交換してもパラメータ値が閾値2を下回らないときを消耗品2の交換時期と判定する。さらに、該判定後消耗品2を交換してもパラメータ値が閾値3を下回らないときを消耗品3の交換時期と判定する。同様の操作を消耗品の数だけ行うことで、3つ以上の消耗品の寿命を判定する。
【0021】
第10の実施の形態では、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定する。また、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2の交換時期と判定する。さらに、該判定後消耗品1と消耗品2を交換してもパラメータ値が閾値3を下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2と消耗品3の交換時期と判定する。以下、同様にして、消耗品1〜消耗品n‐1を交換してもパラメータ値が閾値nを下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1〜消耗品nの交換時期と判定する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
[第1実施例]
図1は本発明の一実施例に係るEUV露光装置の概略構成を示す図である。図示のように本実施例のEUV露光装置は、EUV光源100、照明光学系300、レチクルステージ400、投影光学系500、ウエハステージ600、アライメント光学系700、及び真空系などで構成される。レチクルステージ400は原版としての反射型レチクル401を搭載し、ウエハステージ600は露光対象基板であるウエハを搭載する。真空系は真空容器200及び真空源である不図示の真空ポンプ等を備える。EUV光源100はここではDPP方式のものを用いている。
【0023】
以下、本露光装置の照明光学系に関し、EUV光源100側を上流側とし、またレチクル401側を下流側として説明を行う。
ここでのEUV光源はDPP方式を用いて説明するが、特にLPP方式でも問題はない。また、オプティカルインテグレータ310以降の下流側の構成及び作用については特許文献1と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0024】
EUV光源100は真空チャンバ108隔壁の中にプラズマを生成させる機構である電極106と集光ミラー107がある。EUV光は、ターゲット材105にキセノンを用いたDPP光源100内に配置されている集光ミラー(斜入射ミラー)107を介して、下流側の集光点102(以後I.F.とする)に集光する。I.F.102の近傍にはアパーチャ304が配置されている。このアパーチャ304で仕切られた各部屋は、図示していないがポンプで排気を行う。光源の真空チャンバ108と照明光学系のチャンバ200はアパーチャ304のみで内部がつながっている。このようにすることにより、光源100と照明光学系300間の真空度を高め、照明光学系側への飛散粒子の流入を抑えることができる。
【0025】
本実施例のEUV光源ではEUVエネルギ検出器301により得られたEUV光量を基にして、電極106や集光ミラー107が劣化してもエネルギが一定になるよう、EUV光源内電極106の印加電圧の制御を行っている。EUV光源内部品の劣化に応じてEUV光量を稼ぐために高い印加電圧が必要となるため、EUV光源内電極の印加電圧はEUV光源内部品の消耗を反映している。本実施例では、ウエハ露光時の電極106への印加電圧をモニタし、印加電圧を所定の閾値と比較して消電耗品の交換時期を判断する。閾値は消耗品の数と同数設定される。但し、消耗品ごとの寿命の長さの順番は予め決められている。寿命の長さの順番を決めるためには、例えば、内部消耗品が劣化し印加電圧が高くなったときに、消耗品を交換して回復の幅が大きいものから寿命が短いと判断する方法がある。
【0026】
DPP光源の消耗品は電極と集光ミラーの2つであるため、閾値1と閾値2が設定される。電極と集光ミラーとでは、電極のほうが寿命が短いことが知られている。光源自体または光源内に配置されている消耗品がすべて新しく交換された時に、印加電圧検出器ユニット109を用いて得られたEUV光源内電極の印加電圧が、a[V]であるとする。このa[V]を基に電極の交換の判断に用いる閾値1を1.25×a[V]、集光ミラーの交換の判断に用いる閾値2を1.20×a[V]と設定する。ここではそれぞれ初期からの印加電圧が25%増、20%増となる値を閾値1、閾値2としたが、この値は変更可能である。
【0027】
第1実施例の、EUV光源の累積発光時間と、電極と集光ミラーの消耗度、光源の印加電圧比の関係を図2に示す。電極の消耗度とは、電極以外のすべての消耗品が新品であるときに、新しい電極を電圧vで印加したときに発生するEUV光量と比較して、時間t使用した後に同等の光量を得るために必要とする印加電圧の比率V1である。また、集光ミラーの消耗度とは、集光ミラー以外のすべての消耗品が新品であるときに、新品の集光ミラーを電圧vで印加したときに発生するEUV光量と比較して、時間t使用した後に同等の光量を得るために必要となる印加電圧の比率V2である。このとき、すべての消耗品が新しいときのEUV光源の印加電圧に対して、時間t使用した後の印加電圧比Vは、V=V1×V2で与えられる。
【0028】
第1実施例のEUV光源の消耗品交換時期判定のフローチャートを図3に示す。印加電圧検出器ユニット109はEUV光源100に対して発光のトリガが入ると印加電圧をモニタし、発光していないときにはモニタしない(ステップ1)。このとき得られた電圧値をc[V]とする。ステップ2においては、ステップ1で得られた値c[V]と閾値1の1.25×a[V]との比較を行い、cが1.25×a以下の場合には、ステップ1に戻って再び印加電圧をモニタする。ステップ2において、cが1.25×aより大きければ(図2の時間t1)電極106が寿命に達したと判定し、不図示のディスプレイ上に電極106の交換を要求するメッセージを表示する(ステップ3)。
【0029】
ユーザが電極106を交換すると(ステップ4)、再び印加電圧をモニタする(ステップ5)。このとき得られた電圧値をd[V]とする。ステップ6では、ステップ5において得られた電圧値dを閾値2の1.20×a[V]と比較し、dが1.20×a以下の場合にはステップ1に戻り、再び印加電圧をモニタする。ステップ6において、dが1.20×aより大きければ(図2の時間t2)集光ミラー107が寿命に達したと判定し、前記ディスプレイ上に集光ミラー107の交換を要求するメッセージを表示する(ステップ7)。ユーザが集光ミラー107を交換する(ステップ8)と、ステップ1に戻る。
【0030】
上記では、DPP方式のEUV光源の印加電圧をモニタする方法について述べたが、LPP方式のEUV光源についても、電極106をレーザロッドに置き換え、レーザロッドの印加電圧またはレーザ強度をモニタすることで、同様の効果が得られる。
【0031】
[第2実施例]
EUV光源の印加電圧は一定で、EUV光強度が消耗品の劣化と伴に減少する露光装置については、印加電圧検出器ユニット109の代わりにEUVエネルギ検出器301で得られたEUV光強度をモニタする。そして、上記方法において、閾値1が閾値2よりも大きいように設定し、かつステップ2とステップ6の不等号を反転すればよい。
【0032】
EUV光源100の累積発光時間と、電極と集光ミラーの消耗度、EUV光強度の関係を図4に示す。ここでの電極の消耗度とは、電極以外のすべての消耗品が新品であるときに、新しい電極を用いたときのEUV光強度と比較して、時間t使用した後に得られるEUV光強度の比率V1である。また、集光ミラーの消耗度とは、集光ミラー以外のすべての消耗品が新品であるときに、新しい集光ミラーを用いたときのEUV光強度と比較して、時間t使用した後に得られるEUV強度の比率V2である。このとき、すべての消耗品が新しいときのEUV光強度に対して、時間t使用した後のEUV光強度比は、V=V1×V2で与えられる。
電極をレーザロッドに置き換えることで、LPP方式のEUV光源についても同様の効果が得られる。
【0033】
[第3実施例]
本実施例においては、光源の消耗品の交換時期以外の説明は第1実施例と同様であるため省略する。
光源自体または光源内に配置されている消耗品がすべて新しく交換された時に、印加電圧検出器ユニット109(図1)を使用して得られた印加電圧が、a[V]であるとき、閾値1を1.25×a[V]、集光ミラーの交換の判断に用いる閾値2を1.17×a[V]と設定する。ここではそれぞれ初期からの印加電圧が25%増、17%増となる値を閾値1、閾値2としたが、この値は変更可能である。
【0034】
第3実施例の、EUV光源の累積発光時間と、電極と集光ミラーの消耗度、光源の印加電圧比の関係を図5に示す。
第3実施例のEUV光源の消耗品交換時期判定のフローチャートを図6に示す。印加電圧検出器ユニット109はEUV光源に対して発光のトリガが入ると印加電圧をモニタし、発光していないときにはモニタしない(ステップ1)。このとき得られた電圧値をc[V]とする。ステップ2では、ステップ1で得られた値c[V]と閾値1の1.25×a[V]との比較を行い、cが1.25×a以下の場合には、ステップ1に戻って印加電圧をモニタする。ステップ2においてcが1.25×aより大きければ電極が寿命に達したと判定し、ディスプレイ(不図示)上に電極の交換を要求するメッセージを表示する。
【0035】
ユーザが電極を交換すると(ステップ4)、再び印加電圧をモニタする(ステップ5)。このとき得られた電圧値をd[V]とする。ステップ5において得られた電圧値dを閾値2の1.17×a[V]と比較し、dが1.17×aより大きければ集光ミラーの寿命が近いと判定する(ステップ6)。dが1.17×a以下の場合にはステップ1に戻る。
dが1.17×aより大きいときは、再び印加電圧をモニタし得られた電圧をe[V]とする(ステップ7)。e[V]を閾値1の1.25×a[V]と比較し、eが1.25×aより大きければ電極と集光ミラーが寿命に達したと判定し(ステップ8)、前記ディスプレイ上に電極106と集光ミラー107の交換を要求するメッセージを表示する(ステップ9)。ユーザが電極と集光ミラーを交換すると(ステップ8)、ステップ1に戻る。
ステップ8においてeが1.17×a以下の場合にはステップ7に戻って再び印加電圧をモニタする。
【0036】
上記では、DPP方式のEUV光源の印加電圧をモニタする方法について述べたが、LPP方式のEUV光源についても、電極をレーザロッドに置き換え、レーザロッドの印加電圧またはレーザ強度をモニタすることで、同様の効果が得られる。
【0037】
[第4実施例]
また、EUV光源の印加電圧は一定でEUV光強度が消耗品の劣化に伴ない減少する露光装置については、印加電圧検出器ユニット109の代わりにEUVエネルギ検出器301で得られたEUV光強度をモニタし、上記方法を閾値1が閾値2よりも大きいように設定し、図6のステップ2、ステップ6、ステップ8の不等号を反転すればよい。
電極をレーザロッドに置き換えることで、LPP方式のEUV光源についても同様の効果が得られる。
【0038】
なお、上述の第1〜第4実施例においては、パラメータが閾値と比較され、交換が必要と判断されたときの消耗品の交換は自動的に行われてもよい。
以上のように、EUV露光装置において、EUV光源の状態を表すパラメータをモニタすることにより、寿命の異なる複数の消耗品の寿命を個別に判断し、交換することができる。これにより露光装置のランニングコストを低減することができる。
【0039】
[第5実施例]
第5実施例においては、光源の消耗品の交換時期以外の説明は第1実施例と同様であるため省略する。
EUV光源の消耗品がn個あるときに、閾値を閾値1から閾値nまでn個設定する。このとき、閾値mは閾値m−1よりも大きいように設定する(但し、m=2、3、・・・、n)。
【0040】
第5実施例のEUV光源の消耗品交換時期判定のフローチャートを図7に示す。初期値として変数iを1に設定する(ステップ1)。印加電圧検出器ユニット109はEUV光源に対して発光のトリガが入ると印加電圧をモニタし、発光していないときにはモニタしない(ステップ2)。このとき得られた電圧値をc[V]とする。ステップ2で得られた値c[V]と閾値iとの比較を行い、cが閾値iより大きければ消耗品iが寿命に達したと判定し(ステップ3)、ディスプレイ上に消耗品iの交換を要求するメッセージを表示する(ステップ4)。ステップ3においてcが閾値i以下の場合には、ステップ1に戻って再び印加電圧をモニタする。ユーザが電極を交換すると(ステップ5)、iをインクリメントし(ステップ6)、iが消耗品の総数nを超えていなければステップ2に戻り、超えていればステップ1に戻る。
【0041】
上記の方法は、LPP方式のEUV光源についても、レーザロッドの印加電圧またはレーザ強度をモニタすることで、同様の効果が得られる。
【0042】
[第6実施例]
また、EUV光源の印加電圧は一定でEUV光強度が消耗品の劣化に伴い減少する露光装置については、印加電圧検出器ユニット109の代わりにEUVエネルギ検出器301で得られたEUV光強度をモニタし、上記方法を閾値mが閾値m−1よりも大きいように設定し、図7のステップ3の不等号を反転すればよい(但し、m=2、3、・・・、n)。
【0043】
[第7実施例]
第7実施例においては、光源の消耗品の交換時期以外の説明は第1実施例と同様であるため省略する。
EUV光源の消耗品がn個あるときに、閾値を閾値1から閾値nまでn個設定する。このとき、閾値mは閾値m−1よりも大きいように設定する(但し、m=2、3、・・・、n)。
【0044】
第7実施例のEUV光源の消耗品交換時期判定のフローチャートを図8に示す。初期値として変数iを1に設定する(ステップ1)。印加電圧検出器ユニット109はEUV光源に対して発光のトリガが入ると印加電圧をモニタし、発光していないときにはモニタしない。このとき得られた電圧値をc[V]とする(ステップ2)。ステップ2で得られた値c[V]と閾値iとの比較を行い、cが閾値iよりも大きいならばステップ4に進み、cが閾値i以下ならばステップ1に戻る(ステップ3)。ステップ3においてcが閾値Iより大きいとき、次回発光時の印加電圧をモニタし(ステップ4)、印加電圧が閾値1を越えるとディスプレイ上に消耗品1から消耗品(i−1)までi−1個の消耗品の交換を要求するメッセージを表示する(ステップ6)。但し、i−1=0のときは、消耗品1のみを交換する。消耗品1から消耗品(i−1)までの消耗品が交換されるとiをインクリメントし、ステップ2に戻る。
【0045】
上記の方法は、LPP方式のEUV光源についても、レーザロッドの印加電圧またはレーザ強度をモニタすることで、同様の効果が得られる。
【0046】
[第8実施例]
また、EUV光源の印加電圧は一定でEUV光強度が消耗品の劣化に伴い減少する露光装置については、印加電圧検出器ユニット109の代わりにEUVエネルギ検出器301で得られたEUV光強度をモニタする。そして、上記方法を閾値mが閾値m−1よりも大きいように設定し、図8のステップ3とステップ5の不等号を反転すればよい(但し、m=2、3、・・・、n)。
【0047】
上述の第1〜第8実施例によれば、EUV露光装置において、EUV光源の状態を表すパラメータをモニタすることにより、寿命の異なる複数の消耗品の寿命を個別に判断し、交換することができる。これにより露光装置のランニングコストを低減することができる。
【0048】
[デバイス製造の実施例]
次に、図9及び図10を参照して、上述の露光装置を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図9は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造方法を例に説明する。
ステップS1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップS2(マスク製作)では設計した回路パターンに基づいてマスク(レチクル)を製作する。ステップS3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップS4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、マスクとウエハを用いて、上記の露光装置によりリソグラフィ技術を利用してウエハ上に実際の回路を形成する。ステップS5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップS4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程である。ステップS5は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。ステップS6(検査)では、ステップS5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、それが出荷(ステップS7)される。
【0049】
図10は、ステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップS11(酸化)では、ウエハの表面を酸化させる。ステップS12(CVD)では、ウエハの表面に絶縁膜を形成する。ステップS13(電極形成)では、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS14(イオン打ち込み)では、ウエハにイオンを打ち込む。ステップS15(レジスト処理)では、ウエハに感光剤を塗布する。ステップS16(露光)では、露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに露光する。ステップS17(現像)では、露光したウエハを現像する。ステップS18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップS19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例に係るEUV露光装置の概要図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る、露光時間と、EUV光源の印加電圧比と消耗品の消耗度の関係を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る、EUV光源の消耗品交換のためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施例に係る、露光時間と、EUV光強度比と消耗品の消耗度の関係図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る、露光時間と、EUV光源の印加電圧比と消耗品の消耗度の関係図である。
【図6】本発明の第3実施例に係るEUV光源の消耗品交換のためのフローチャートである。
【図7】本発明の第5実施例に係るEUV光源の消耗品交換のためのフローチャートである。
【図8】本発明の第7実施例に係るEUV光源の消耗品交換のためのフローチャートである。
【図9】露光装置を使用したデバイス製造の実施例を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示すフローチャートのステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
100 DPP光源(EUV光源)
102 集光点
105 ターゲット材
106 電極
107 集光ミラー(斜入射ミラー)
108 真空チャンバ
109 印加電圧検出器ユニット
301 EUVエネルギ検出器
304 アパーチャ
310 オプティカルインテグレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマから放射された光を集光させるEUV光源の消耗品の交換時期を判定する方法であって、
前記EUV光源の状態を表すパラメータを計測する検出工程と、
前記検出工程により得られた計測結果に基づいて、前記EUV光源内部にある2つ以上の消耗品の交換時期を判定する判定工程と
を備えることを特徴とするEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項2】
前記EUV光源の状態を表すパラメータが、EUV光強度であることを特徴とする請求項1に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項3】
前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短い場合に、閾値1を閾値2よりも小さく設定し、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときを消耗品2の交換時期と判定することを特徴とする請求項2に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項4】
前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短い場合に、閾値1を閾値2よりも小さく設定し、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、判定後消耗品1を交換しても閾値2を上回らないときには、次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2の双方の交換時期と判定することを特徴とする請求項2に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項5】
前記判定工程は、3つ以上の消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとした場合に、閾値を小さな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定し、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときを消耗品2の交換時期と判定し、該判定後消耗品2を交換してもEUV光強度が閾値3を上回らないときを消耗品3の交換時期と判定し、・・・消耗品n‐1を交換してもEUV光強度が閾値nを上回らないときを消耗品nの交換時期と判定することを特徴とする請求項2に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項6】
前記判定工程は、3つ以上の消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとした場合に、閾値を小さな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定し、前記検出工程により得られたEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を上回らないときは次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2の交換時期と判定し、該判定後消耗品1と消耗品2を交換してもEUV光強度が閾値3を上回らないときは次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1と消耗品2と消耗品3の交換時期と判定し、・・・消耗品1〜消耗品n‐1を交換してもEUV光強度が閾値nを上回らないときは次にEUV光強度が閾値1を下回ったときを消耗品1〜消耗品nの交換時期と判定することを特徴とする請求項2に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項7】
前記EUV光源がDPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするようにEUV光源内電極の印加電圧を制御する制御手段を有し、前記EUV光源の状態を表すパラメータがEUV光源内電極の印加電圧であることを特徴とする請求項1に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項8】
前記EUV光源がLPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするように該EUV光源のレーザ強度を制御する制御手段を有し、前記EUV光源の状態を表すパラメータが該EUV光源のレーザロッドの印加電圧であることを特徴とする請求項1に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項9】
前記EUV光源がLPP方式のEUV光源であって、該EUV光源のEUV光強度を一定にするように該EUV光源のレーザ強度を制御する制御手段を有し、前記EUV光源の状態を表すパラメータがEUV光源のレーザ強度であることを特徴とする請求項1に記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項10】
前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短い場合に、閾値1を閾値2よりも大きく設定し、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときを消耗品2の交換時期と判定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項11】
前記判定工程は、消耗品1の寿命が消耗品2よりも短い場合に、閾値1を閾値2よりも大きく設定し、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときには、次に前記パラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2の双方の交換時期と判定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項12】
前記判定工程は、3つ以上の消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとした場合に、閾値を大きな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定し、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、該判定後消耗品1を交換してもパラメータ値が閾値2を下回らないときを消耗品2の交換時期と判定し、該判定後消耗品2を交換してもパラメータ値が閾値3を下回らないときを消耗品3の交換時期と判定し、・・・消耗品n‐1を交換してもパラメータ値が閾値nを下回らないときを消耗品nの交換時期と判定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項13】
前記判定工程は、3つ以上の消耗品を寿命の短いものから順に消耗品1、消耗品2、・・・、消耗品nとした場合に、閾値を大きな方から順に閾値1、閾値2、・・・、閾値nと設定し、前記検出工程により得られたEUV光源の状態を表すパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1の交換時期と判定し、該判定後消耗品1を交換してもEUV光強度が閾値2を下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2の交換時期と判定し、該判定後消耗品1と消耗品2を交換してもパラメータ値が閾値3を下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1と消耗品2と消耗品3の交換時期と判定し、・・・消耗品1〜消耗品n‐1を交換してもパラメータ値が閾値nを下回らないときは次にパラメータ値が閾値1を上回ったときを消耗品1〜消耗品nの交換時期と判定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のEUV光源の消耗品交換時期判定方法。
【請求項14】
露光光源としてのEUV光源と、請求項1〜13にいずれか1つに記載の検出工程を実行する検出手段と、請求項1〜13にいずれか1つに記載の判定工程を実行する判定手段とを備えることを特徴とする露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、露光した前記基板を現像する工程とを有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−311109(P2007−311109A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137685(P2006−137685)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】