説明

FPC製造用クッションシート

【課題】クイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用される熱伝導率を高めたシリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けたFPC製造用クッションシートを提供する。
【解決手段】FPC(フレキシブルプリント基板)製造工程中のクイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用するクッションシートであって、熱伝導率が0.4W/mK以上の熱伝導性シリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けてなるFPC製造用クッションシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPC(フレキシブルプリント基板)製造工程中のクイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用するクッションシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FPC(Flexible Printed Circuits):フレキシブルプリント基板の製造工程中には、カバーレイフィルムや補強板の圧着貼り合わせ工程がある。この工程は、熱硬化型のエポキシ接着剤などにより当該部材の貼り付けを行うものであり、均一加圧下での加熱が必要となる。現在、この加熱プレスでの圧着貼り合わせ工程には、代表的な二つの方式がある。一つは、クイックプレス方式であり、プレス板の上下にクッションシートを取り付けたプレス成形機を、常時所定の温度に加熱しておき、FPCを1面でプレス成形機にセットして圧着貼り合わせを行う方法である。もう一つは、室温付近のプレス成形機に、複数のFPCをクッションシートを介して重ねてセットし、加圧・昇温後、冷却して圧着貼り合わせを行う多段プレス方式である。現在、生産性が良好であることや、微調整が可能であることなどの理由から、クイックプレス方式が主流になってきている。
【0003】
いずれの方法においても、クッションシートは、FPCを貼り合わせる際に用いられ、接着剤を均一の厚さに保持する効果や、加圧時にFPCパターンの凹凸と接着剤の流れに起因する製品の変形や断線を防止する効果を持つ極めて重要な部品である。
【0004】
最近の傾向として、小型で高集積を目的として基板を複数積層したいわゆる多層FPCの需要が増加している。この多層FPCでは、圧着貼り合わせ工程で熱が伝わり難くなるため、従来のゴム材料からなるクッションシートでは熱伝導性が十分ではなく、成形サイクルを長くするか、設定温度や圧力を高くして対応している。成形サイクルを長くすると、当然のことながら生産性が悪くなる。高温高圧に設定すると、FPCの変形等が発生しやすくなり歩留まりが低下するという問題と、クッションシート自体の熱劣化が促進され、その寿命が短くなるという問題が発生する。
【0005】
この貼り合わせ工程において、接着剤の硬化温度は100℃以上と高いため、各部材の熱抵抗を考えると、クッションシートの温度は200℃近くまで上昇する場合がある。従って、クッションシートには耐熱性が要求されるため、現在では主に、シリコーンゴムとフッ素ゴムが使用されている。
【0006】
一般的に、フッ素ゴムは耐熱性に優れるものの、ゴム硬度の柔らかいものを作ることが困難であり、比較的硬いものしか準備できない。従って、十分なクッション性が得られない場合があった。また、フッ素ゴムは、各種フィラーへの濡れ性が非常に悪いため、限られたカーボンブラック以外の充填が難しく、熱伝導性を付与し難いという欠点があった。更にフッ素ゴムの場合、FPC貼り合わせ工程で、クッションシートとFPCの間に挟んで使用する保護フィルムとの離型が悪いことも問題とされている。
【0007】
その他、弾性体を使用しない圧着貼り合わせ方法も検討されているが、品質の安定化が難しく、実用化されていないのが現状である。
【0008】
なお、本発明に関連する公知文献としては、下記のものがあるが、いずれも熱伝導性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開平2−310990号公報
【特許文献2】特開平4−201441号公報
【特許文献3】特開平4−201442号公報
【特許文献4】特開平4−201443号公報
【特許文献5】特開平4−350992号公報
【特許文献6】特開平4−351546号公報
【特許文献7】特開2003−170300号公報
【特許文献8】特開2003−170458号公報
【特許文献9】特開2002−368387号公報
【特許文献10】特開2002−335064号公報
【特許文献11】特開2002−144484号公報
【特許文献12】特開2007−098816号公報
【特許文献13】特開2005−002148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、クイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用される熱伝導率を高めたシリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けたFPC製造用クッションシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、クイックプレス方式において、成形サイクルを短くし、生産性を向上する方法を鋭意検討した結果、従来、クッション材として使用していたシリコーンゴム層の材質を、熱伝導率が0.4W/mK以上の熱伝導性のシリコーンゴム層とすることで、良好な結果が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、FPC製造工程中のクイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用するクッションシートであって、熱伝導率が0.4W/mK以上の熱伝導性シリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けてなるFPC製造用クッションシートを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のFPC製造用クッションシートは、熱伝導性に優れ、クッション性も良好であるため、プレス成形機からFPCへの熱伝達が良好になる。従って、成形サイクルを短くし、生産性を向上することができる。また、設定温度を低くできるため、電力削減、クッションシート自体の熱劣化低減による長寿命化により、コスト削減にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のFPC製造用クッションシートは、FPC製造工程中のクイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用するクッションシートであって、熱伝導率が0.4W/mK以上の熱伝導性シリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けてなるものである。
【0014】
本発明のFPC製造用クッションシートに使用される熱伝導性シリコーンゴムは、熱伝導率が0.4W/mK以上、好ましくは0.6〜5.0W/mKであれば特に限定されるものではない。なお、本発明において、熱伝導率は、ASTM E 1530 保護熱流計法により測定される。
【0015】
このような熱伝導性シリコーンゴムとしては、(A)平均重合度が100以上のオルガノポリシロキサン100質量部、(B)カーボンブラック0〜100質量部、(C)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ0〜100質量部、(D)金属、前記(C)成分以外の金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物から選択される少なくとも一種の熱伝導性粉末0〜1,600質量部、及び(E)硬化剤を含有してなるシリコーンゴム組成物の硬化物であることが好ましい。また、熱伝導率0.4W/mK以上を確保するためには、(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計が50〜1,600質量部であることが必要である。
【0016】
(A)成分である平均重合度100以上のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものが好ましい。
1aSiO(4-a)/2
(式中、R1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の正数である。)
【0017】
ここで、上記式中のR1は置換又は非置換の一価炭化水素基を表す。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基などのアラルキル基、あるいはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基等が挙げられる。本発明においては、(A)成分がオイル状の場合には、一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を含んだものであることが好ましい。生ゴム状の場合には、R1の0.001〜5モル%、特に0.01〜1モル%がアルケニル基であることが好ましい。
【0018】
上記オルガノポリシロキサンの平均重合度は100以上であり、好ましくは150〜20,000、更に好ましくは3,000〜20,000である。重合度が100より小さいと硬化後の機械的強度が劣り、脆くなる場合がある。重合度が20,000より大きいと加工性が悪くなる場合がある。なお、平均重合度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定データにより、ポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算することで求められる値である。
【0019】
(B)成分のカーボンブラックは、シリコーンゴム層の耐熱性及び熱伝導性を向上させるだけでなく、機械的強度を向上させるとともに、シリコーンゴムシートを導電化して帯電防止性を付与するものである。
【0020】
一般に、シリコーンゴムの耐熱性は、組成物中のpH、水分あるいは不純物の影響を受けるために、添加剤の選定には十分注意する必要がある。カーボンブラックは、シリコーンゴムの耐熱性を向上させることができるが、その不純物及び揮発分を考慮する必要がある。カーボンブラックの揮発分は、表面に化学的に吸着している酸素化合物(カルボキシル、キノン、ラクトン、ヒドロキシル等の酸性成分)の質量に該当するが、加熱することによりこの酸素化合物が表面から気化するため、シリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与える。従って、揮発分が少ないものを使用することが好ましく、具体的には、水以外の揮発分が1.0質量%以下、更には揮発分が0.5質量%以下のカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0021】
ここで、本発明における揮発分の測定方法は、JIS K 6221の“ゴム用カーボンブラック試験方法”に記載されている方法を用いる。具体的には、るつぼの中にカーボンブラックを規定量入れ、950℃で7分間加熱した後の揮発減量を測定するものである。
【0022】
カーボンブラックは、その製造方法により、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等に分類される。本発明においては、これらのどのカーボンブラックを使用してもよいが、揮発分が1.0質量%以下のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックや導電性カーボンブラック等が好適である(例えば特開平1−272667号公報の第3頁、第36〜40行目)。
【0023】
比表面積が大きいカーボンブラックほど耐熱性を向上させ、高温時の機械的強度の低下を抑制する効果が大きいため、本発明においては、BET比表面積が30m2/g以上のカーボンブラックが好ましく、特に50m2/g以上のものが好ましく、更には100m2/g以上のものを使用することが好ましい。なお、BET比表面積の上限は1,000m2/g以下、特に500m2/g以下であることが好ましい。
【0024】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜100質量部であることが好ましく、0〜70質量部であることがより好ましく、0〜50質量部であることが更に好ましい。100質量部より多いとシリコーンゴム組成物の可塑度が高くなりすぎて成形性が悪くなったり、硬化後のゴムが硬くなりすぎる場合がある。なお、配合する場合は、(A)成分100質量部に対して1質量部以上配合することが好ましい。
【0025】
(C)成分のBET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカは、シリコーンゴムの補強成分として使われるものである。この微粉末シリカは、親水性のものでも疎水性のものでもよいが、補強性の面からはBET比表面積が50〜800m2/gであることが好ましく、特に100〜500m2/gのものがよい。比表面積が50m2/g未満では、補強効果が十分得られない。
【0026】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜100質量部であることが好ましく、0〜70質量部であることがより好ましく、0〜50質量部であることが更に好ましい。100質量部より多いとシリコーンゴム組成物の可塑度が高くなりすぎて成形性が悪くなったり、硬化後のゴムが硬くなりすぎる場合がある。なお、配合する場合は、(A)成分100質量部に対して1質量部以上配合することが好ましい。
【0027】
(D)成分は、金属、(C)成分以外の金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物から選択される少なくとも1種の熱伝導性粉末であり、本発明のシリコーンゴムシートに熱伝導性を付与するものである。これらの具体例としては、金属では銀、銅、鉄、金属珪素、ニッケル、アルミニウムなど、金属酸化物では酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化鉄など、金属窒化物では窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素など、金属炭化物では炭化珪素、炭化ホウ素などが例示される。
【0028】
この熱伝導性粉末の平均粒径は、特に制限されるものではないが、0.1〜100μmであることが好ましく、更には0.5〜50μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では、相対的に粉末の比表面積が大きくなるため、高充填が困難となり、熱伝導率が十分ではなくなるとともに、硬化後のゴムが硬くなりすぎる場合がある。平均粒径が100μmより大きいと、硬化後のゴムが脆くなるとともに、表面に凹凸ができ易くなるため好ましくない。なお、本発明において、平均粒径はレーザー回折法による体積基準の累積平均径である。具体的には、例えば日機装株式会社製の粒度分析計であるマイクロトラックなどにより測定することができる。
熱伝導性粉末の粒子形状は、球状、楕円状、扁平状、角張った不定形、丸みを帯びた不定形、針状などあるが、本発明においては、特に限定されるものではない。
【0029】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜1,600質量部であることが好ましく、特に0〜1,000質量部の範囲で使用することが好ましい。1,600質量部より多いと配合が困難になる上、成形加工性が悪くなる。なお、配合する場合は、(A)成分100質量部に対して10質量部以上配合することが好ましい。
【0030】
また、本発明における(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計配合量は、(A)成分100質量部に対して50〜1,600質量部であることが好ましく、100〜1,200質量部であることがより好ましく、120〜800質量部であることが更に好ましい。(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計配合量が少なすぎると熱伝導性が十分ではない場合があり、多すぎると配合が困難になる上、加工性が悪くなる場合がある。
【0031】
(E)成分の硬化剤は、通常シリコーンゴムの硬化に使用されている公知の硬化剤の中から適宜選択することができる。これらの硬化剤の例としては、ラジカル反応に使用されるジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、(A)成分のオルガノポリシロキサンがアルケニル基を2個以上有する場合に対しては、付加反応硬化剤として、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒とからなるもの、(A)成分のオルガノポリシロキサンがシラノール基を2個以上含有する場合に対しては、縮合反応硬化剤として、アルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、プロペノキシ基などの加水分解性の基を2個以上有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。本発明においては、ラジカル反応及び/又は付加反応で硬化させることが好ましい。
【0032】
これらの硬化剤の添加量は通常のシリコーンゴムの場合と同様にすればよいが、例えば、ラジカル反応の場合には有機過酸化物を(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、付加反応の場合にはオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基が(A)成分のアルケニル基に対して0.5〜5モルとなる量及び白金系触媒が1〜1,000ppmとなる量使用することが好ましい。また、有機過酸化物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金系触媒を同時に添加して、ラジカル反応と付加反応の二つの反応により硬化させることもできるが、このときのそれぞれの硬化剤の添加量は上記に準じて添加することが好ましい。
【0033】
本発明においては、任意であるが、上記シリコーンゴム組成物に、酸化セリウム粉末((F)成分)を必要に応じて添加することにより、耐熱性を向上させることができる。該酸化セリウムの添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲である。添加量が5質量部を超えると反対に耐熱性が低下してくる場合がある。また、この酸化セリウム粉末としては、BET比表面積が50m2/g以上という比較的大きな比表面積を有するものを用いることが好ましい。
【0034】
上記シリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてクレイ、炭酸カルシウム、けいそう土、二酸化チタン等の充填剤、低分子シロキサンエステル、シラノール等の分散剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の接着付与剤、難燃性を付与させる白金族金属系触媒、ゴムコンパウンドのグリーン強度を上げるテトラフルオロポリエチレン粒子などを、その他の成分として添加してもよい。
【0035】
なお、上記シリコーンゴム組成物の調製は、上記各成分をプラネタリーミキサー、ニーダー、二本ロール、三本ロール、バンバリーミキサー等の混合機を用いて混練りすればよいが、硬化剤は使用する直前に添加することが好ましい。
ここで、上記シリコーンゴム組成物を硬化する際の硬化条件は適宜選定されるものであるが、加熱硬化条件としては、60〜200℃、特に80〜180℃で1〜60分間、特に5〜30分間とすることが好ましい。
【0036】
本発明のFPC製造用クッションシートの金属板は、熱伝導率、コスト、入手のし易さの面から鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、又はそれらの合金であることが好ましい。
【0037】
FPC製造用クッションシートの金属板の厚さは0.02〜10mmであることが好ましい。0.02mmよりも薄いとFPC製造用クッションシート製造時の扱いが困難になるとともに、出来上がったFPC製造用クッションシートでの補強効果が十分ではなくなるおそれがある。10mmよりも厚いと質量が重過ぎて取り扱いが悪くなる場合がある。
また、熱伝導性シリコーンゴムの厚さは、0.05〜10mm、特に0.1〜10mmであることが好ましい。0.05mmよりも薄いとクッション効果が不十分となり、均一な圧着ができなくなるおそれがある。10mmよりも厚いと熱の伝達が十分でなくなるおそれがある。
【0038】
本発明のFPC製造用クッションシートの製造方法としては、下記のような方法が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
上記で得られたシリコーンゴム組成物を金属板と積層成形する方法としては、硬化剤までを配合したシリコーンゴム組成物をカレンダー成形機あるいは押出し機等で所定の厚さに分出してから金属板に重ねてプレス硬化させる方法や、液状のシリコーンゴム組成物あるいはトルエン等の溶剤に溶解して液状化したシリコーンゴム組成物を金属板上にコーティングしてから硬化させる方法等が挙げられる。熱伝導性シリコーンゴム層と金属板との接着をより強固にするため、必要に応じて金属板表面にプライマー処理をしてもよい。
【0040】
本発明のFPC製造用クッションシートは、熱伝導性シリコーンゴム層を金属板の少なくとも片面に設けたものであって、金属板の片面のみに熱伝導性シリコーンゴム層を設けてもよいし、金属板の両面に熱伝導性シリコーンゴム層を設けてもよい。金属板の両面に熱伝導性シリコーンゴム層を設ける場合、それらの材質は同じであっても、異なっていてもよい。また、そのそれぞれの熱伝導性シリコーンゴム層の厚さは、同じであっても、異なっていてもよい。ただし、金属板の両面にシリコーンゴム層を設ける場合、プレス機に接触する面のシリコーンゴム層は、主にプレス機のプレス板とFPC製造用クッションシートの接触熱抵抗を低減する役割を目的とするため、薄いほうが望ましい。具体的には、0.05〜0.5mmの厚さであることが望ましい。一方、FPCに面するシリコーンゴム層には、熱伝導とともにクッション性が要求されるため、ある程度の厚さが必要となる。具体的には、0.1〜10mmの厚さであることが望ましい。
【0041】
このようにして得られた本発明のFPC製造用クッションシートを使用することにより、プレス成形機からFPCへの熱伝達が良好になるため、成形サイクルを短くし、生産性を向上することができる。また、設定温度を低くできるため、電力削減、クッションシート自体の長寿命化により、コスト削減にも繋がる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、(B)成分のカーボンブラックの平均粒径は、電子顕微鏡により写真を撮影し、その写真により一次粒子径を測定する方法、いわゆる電子顕微鏡法により求めた粒子径の算術平均値を言う。なお、カーボンブラックは、通常は一次粒子が凝集した凝集粒を形成して存在するが、ここで言う平均粒子径は凝集粒の平均粒径ではなく、一次粒子の平均粒子径を言う。また、(D)成分の熱伝導性粉末の平均粒径は、レーザー回折法による体積基準の累積平均径である。
【0043】
[実施例1〜5、比較例1,2]
(評価用クッションシートの製造)
【0044】
《熱伝導性シリコーンゴム組成物の作製》
以下の原材料を準備した。
・オルガノポリシロキサン:
(a−1)ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなる平均重合度8,000の、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルビニルポリシロキサン
(a−2)ジメチルシロキサン単位99.5モル%、メチルビニルシロキサン単位0.5モル%からなる平均重合度8,000の、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルビニルポリシロキサン
(a−3)平均重合度750の、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
(a−4)ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルビニルシロキサン単位5モル%からなる平均重合度200の、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルビニルポリシロキサン
【0045】
・カーボンブラック:
(b−1)平均粒径が35nm、水以外の揮発分0.10質量%、BET比表面積69m2/gのアセチレンブラック
・微粉末シリカ:
(c−1)BET比表面積110m2/gの疎水性シリカ(商品名:AerosilR−972、Degussa株式会社製)
・熱伝導性粉末:
(d−1)平均粒径が4μmの結晶性二酸化ケイ素粉末
(d−2)平均粒径が11μmの金属珪素粉末
(d−3)平均粒径2.5μmのアルミニウム粉末
【0046】
・硬化剤:
(e−1)2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン:50質量%、ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなる平均重合度8,000の、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルビニルポリシロキサン:50質量%のペースト
(e−2)塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1質量%)
(e−3)下記式(1):
【化1】

で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン
(e−4)下記式(2):
【化2】

で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン
【0047】
・その他の成分:
(f−1)BET比表面積が140m2/gの酸化セリウム粉末
(f−2)エチニルシクロヘキサノールの50質量%トルエン溶液
【0048】
以下の方法で、熱伝導性シリコーンゴム層のベースコンパウンドを作製した。
ベースコンパウンド1:
表1に示す原料を、加圧ニーダーを用いて加熱せずに均一に混練りしてベースコンパウンド1を得た。
ベースコンパウンド2〜4:
表1に示す原料を、加圧ニーダーを用いて均一に混練りし、更に150℃で2時間熱処理混合後、冷却してベースコンパウンド2〜4を得た。
ベースコンパウンド5:
表1に示す原料を、プラネタリーミキサーを用いて室温で均一に混合してベースコンパウンド5を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
上記ベースコンパウンドを使用して、下記の方法によりゴム組成物1〜5を作製した。
ゴム組成物1〜4:
上記で得られたベースコンパウンド100質量部に、下記表2に示したe−1〜3の硬化剤、f−1:酸化セリウム粉末とf−2:制御剤を二本ロールにて均一に混練し、硬化性の熱伝導性シリコーンゴム組成物であるゴム組成物1〜4を得た。
ゴム組成物5:
上記で得られたベースコンパウンド100質量部に、下記表2に示したe−2,4の硬化剤、f−1:酸化セリウム粉末とf−2:制御剤をプラネタリーミキサーにて均一に混練し、硬化性の熱伝導性シリコーンゴム組成物であるゴム組成物5を得た。
【0051】
《熱伝導性シリコーンゴムの各種物性測定》
得られたゴム組成物を用いて物性及び熱伝導率を下記方法により測定した。ゴム組成物の配合とその物性測定結果を表2に示した。
【0052】
[硬さ(デュロメータタイプA)、切断時伸び、引張り強さ]
上記ゴム組成物を150℃、10分間、加熱プレス成形して、2mm厚のシートを作製した。更に、そのシートを200℃、4時間熱処理し、JIS K 6249に準拠して測定した。
【0053】
[熱伝導率]
上記ゴム組成物を150℃、10分間、加熱プレス成形して、φ50mm、厚さ9mmの円板を作製した。更に、その円板を200℃、4時間熱処理し、ASTM E 1530に準拠して測定した。
【0054】
【表2】

【0055】
《FPCクッションシートの作製》
以下の工程にて、本発明の実施例1〜4と比較例1,2のFPCクッションシートを作製した。各構成を表3,4に示した。
(1)500×500mmの金属板準備
(2)アセトンにて表面脱脂
(3)プライマー塗布
(4)上記ゴム組成物1〜3をPETフィルム上に所定の厚さにカレンダー成形
(両面シリコーン層の場合には、両面ともに成形)
(5)金属板に貼り合わせ
(両面シリコーン層の場合には、両面とも貼り合わせ)
(6)加熱プレス成形:150℃、30分間
(7)PETフィルムを剥がして加熱処理:200℃、4時間
【0056】
以下の工程にて、本発明の実施例5のFPCクッションシートを作製した。各構成を表4に示した。
(1)500×500mmの金属板準備
(2)アセトンにて表面脱脂
(3)プライマー塗布
(4)上記ゴム組成物5を金属板上にバーコーターにてシリコーン層1を所定の厚さに塗布
(5)そのままHAV加硫:150℃、30分間
(6)金属板のもう一方の面にプライマー塗布
(7)上記ゴム組成物5を金属板上にバーコーターにてシリコーン層2を所定の厚さに塗布
(8)そのままHAV加硫:150℃、30分間
(9)加熱処理:200℃、4時間
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
《FPCクッションシートの評価》
500×500mmのプレス板面を持つプレス成形機の上側板面に、実施例1又は比較例1のFPCクッションシートをシリコーン層1がプレス成形機の板面と反対側の面に向くようにセットし、プレス成形機の下側板面に実施例2〜5又は比較例2のFPCクッションシートをセットして下記に示す方法により熱伝導性の評価を行った。
【0060】
[熱伝導性の評価]
下側プレス板上にセットしたFPCクッションシートのシリコーン層1の表面中央部にφ50μmの熱電対をセットし、プレス成形機の設定温度を200℃として、1MPaの圧力で240秒間プレスしたときの温度上昇を測定した。結果を図1のグラフに示した。
【0061】
本発明の実施例である熱伝導率が0.4W/mK以上のシリコーンゴム層を配置したFPCクッションシートを使用することにより、比較例に示した従来から使用されてきた熱伝導率の低いシリコーンゴム層を配置したFPCクッションシートよりも格段に昇温速度が速く、最高到達温度が高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例におけるFPCクッションシートの熱伝導評価結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPC(フレキシブルプリント基板)製造工程中のクイックプレス圧着貼り合わせ工程で使用するクッションシートであって、熱伝導率が0.4W/mK以上の熱伝導性シリコーンゴム層を少なくとも金属板の片面に設けてなるFPC製造用クッションシート。
【請求項2】
熱伝導性シリコーンゴムが、(A)平均重合度が100以上のオルガノポリシロキサン100質量部、(B)カーボンブラック0〜100質量部、(C)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ0〜100質量部、(D)金属、前記(C)成分以外の金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物から選択される少なくとも一種の熱伝導性粉末0〜1,600質量部(ただし、(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計が50〜1,600質量部)、及び(E)硬化剤を含有してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化物である請求項1記載のFPC製造用クッションシート。
【請求項3】
(D)成分が、銀、銅、鉄、金属珪素、ニッケル、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化鉄、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、炭化ホウ素から選ばれる少なくとも一種である請求項2記載のFPC製造用クッションシート。
【請求項4】
前記熱伝導性シリコーンゴム組成物が、更に、(F)酸化セリウム粉末を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有する請求項2又は3記載のFPC製造用クッションシート。
【請求項5】
金属板が、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、又はそれらの合金からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のFPC製造用クッションシート。
【請求項6】
金属板の厚さが0.02〜10mm、熱伝導性シリコーンゴム層の厚さが0.05〜10mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のFPC製造用クッションシート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−305817(P2008−305817A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148777(P2007−148777)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】