説明

Gタンパク質に結合する受容体(RCPG)とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの内の1つとの相互作用の検出方法

本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に特異的なリガンド(アゴニスト又はアンタゴニスト)の検出方法であって、以下のステップ:
1)ドナー/アクセプター対のメンバーで標識された受容体を当該ドナー/アクセプター対の他のメンバーで標識されたGタンパク質のGα又はGβγサブユニットと接触させ;
2)前記ドナーと前記アクセプターとの近接効果による伝達を測定する、
を含む、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー/アクセプター対の2つのメンバー間の近接効果による伝達によりそのGタンパク質共役受容体(GPCR)とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの内の1つとの相互作用の検出する方法、及び特に新規薬剤、及びオーファン受容体の同定のスクリーニングの如き活用に関する。
【0002】
本明細書中において、「近接効果による伝達」なる表現は、FRETシグナル{HTRF(登録商標)技術、CIS BIO INTERNATIONAL}、一重項酸素の伝達{Alphascreen(登録商標)技術、PerkinElmer、例えば、Beaudetら、Genomu Res.,2001 Apr.11(4)、600−8を参照のこと。}、電子伝達{SPA技術、Amersham Biosciences、例えば、Udenfriendら、Anal.Biochem.,1987,Mar.,161(2),494−500を参照のこと。}により特徴付けられるエネルギー伝達を意味する。
【0003】
一般的にFRET技術と呼ばれる蛍光発光非放射エネルギーのための技術において、TR−FRET技術(時間分解蛍光共鳴エネルギー伝達)は、均質媒質における時間分解蛍光の測定を可能とする。希土類キレート又はクリプテートでのこの技術、特にG.Mathisら(特に、「Homogeneous time resolved fluorescence energy transfer using rare earth cryptates as a tool for probing molecular」、Spectrochimica Acta Part A 57(2001)2197−2211を参照のこと。)により開発された当該技術の使用は、生体外診断の分野及び製薬産業におけるハイスループットのスクリーニングの分野において、既にいくつかの適用を許容されている多くの有利点を有する。
【0004】
この技術は、HTRF(登録商標)(均質時間分解蛍光)の名としても知られ、第1ドナー蛍光化合物、及び第2アクセプター蛍光化合物を使用する。
【0005】
ドナーの波長での光励起後、エネルギー伝達は、当該ドナーとアクセプターが互いに近接するならば、それらの間に生ずる。このエネルギー伝達は、蛍光光度計を用いて測定され得るアクセプターによる光の放出(FRETシグナル)により特徴付けられる。
【0006】
特にGタンパク質に結合する7回膜貫通型ドメインを有する受容体である受容体(以後GPCRという)は、多数の病理経路に関する。GPCRは、細胞の外から内での情報の認識、及び伝達に関与する。これらのタンパク質は、主な治療標的を示し、そして現在の薬剤の50%超は、これらの受容体又はそれらの伝達カスケードを標的とする。
【0007】
リガンドの存在下におけるGPCRの活性化の機構を、付随の図1に図式的に示す。
【0008】
GPCRへのアゴニストリガンドの結合は、その三次構造を変更し、そして順々に、GPCRに結合するGタンパク質を活性化する。当該Gタンパク質の活性化は、その場合に依存し、cAMP又はIPの如き二次細胞内伝達物質を産生するエフェクターの活性又は阻害を引き起こす。
【0009】
本明細書中において、「オーファン受容体」なる表現は、そのDNA配列がGPCRの配列と一致するがその特異的天然リガンドがわからないことを提示する膜貫通型受容体を意味する。
【0010】
シグナル伝達経路(二次伝達物質、及びエフェクター)の特徴、及び「オーファン受容体」と呼ばれるGPCRのためのリガンドの同定は、これらのGPCRの生理学的役割を理解する上で、並びに新たな薬剤の製造のために、非常に重要である。
【背景技術】
【0011】
様々な方法が、GPCRの活性化経路の構成成分の内の1つを使用する受容体/Gタンパク質相互作用の検出のために、特に特異的リガンドの検出のために存在する。
【0012】
例えば、リガンド検出のためのある方法は、非加水分解性放射性GTPの誘導体、すなわちGPCRが活性化したときにGαタンパク質に結合する[35S]GTPγを使用する。当該GTP類似体の結合のための速度パラメータは、Gタンパク質の型に依存する。この放射性方法は、ハイスループットでの薬剤のスクリーニングのためには適さない。
【0013】
他の慣習的方法は、活性化された三量体Gタンパク質のサブユニットによるエフェクターの活性に基づく。
【0014】
図1に示されるように、エフェクターの活性化、及びcAMP又はIPの如き二次伝達物質の産生は、GPCR及びGタンパク質の刺激の後に産生される。それ故、この方法は、GPCRの活性化経路の下流を産生する物質に関する。
【0015】
ハイスループットでの薬剤のスクリーニングに適した方法は、酵素活性の測定に基づく組換え系を使用し、当該酵素活性はβガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼの活性の如き酵素活性であってその発現はGPCRの活性化により産生される二次伝達物質により制御される。これらは、GPCRの活性を測定する間接的方法であり、当該GPCR活性経路の下流を産生する物質にも関する。
【0016】
リガンドの検出のための別の方法は、アレスチン−GFPの転移に焦点を当てる。
【0017】
アレスチンは、GPCRへのリガンドの結合により誘発される活性経路を止める調節機構に関する。それは細胞内における受容体の内在化経路を誘発することを可能とし、そしてそのステップは、細胞膜における受容体の分解又はリサイクルのために必要である。NORAK BIOSCIにより開発された技術(Transfluor)は、細胞内で発現される蛍光タンパク質(GFP)と融合するアレスチン(アレスチン−GFP)を使用する。通常条件下、アレスチン−GFPはサイトゾルに分配される。GPCRの活性化後、アレスチン−GFPは、膜に存在するGPCRと相互作用し、そしてアゴニストにより刺激されるだろう。それ故、その細胞分布は変更されるだろう。それは、サイトゾルから離れ、原形質膜に再分布され(転移現象)、そして内在化現象(細胞表面からの受容体の消失)に関与する。時間とともに、その受容体に結合するアレスチン−GFPの蛍光発光は、特定の受容体のエンドサイトーシスの現象を示す細胞で内部小胞(エンドソーム)付近にも測定され得る。アレスチン−GFPの分布におけるこれらの変化は、顕微鏡使用、及び画像処理技術により達成される。これらの理由により、この技術は、ハイスループット・スクリーニング(HTS)に好適なものではない。
【0018】
Janetopoulosら{Science(2001)291:2408−2411;Methods(2002)27:366−373}による最近の研究は、D.discoideumにおいて、Gα−CFPとGβ−YEPサブユニットとの間のFRETシグナルを視覚化することを可能としている。AzpiazuとGautam{JBC(2004)279(26):27709−27718}の研究は、CHO細胞に発現されるムスカリン様受容体M2及びM3の刺激のためのモデルにおいて、Gα−CFPとGβ−YEPとのFRETシグナルにおける変化の似たような結果を示す。Berlot team{JBC(2004)279(29):30279−30286}は、蛍光タンパク質(YFP)の断片で標識されたGβとGγとの相互作用を生体内でかつ顕微鏡により示している。Gβγの結合は当該YFPタンパク質の蛍光発光を元の状態に戻す。
【0019】
これらの観察結果は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化がFRET技術により分析され得ることを提示する。これらの技術は、Gタンパク質のサブユニット間のFRETの測定により受容体の活性化を間接的に示すが、それ自身、着目の受容体と結合するGタンパク質のサブユニットのいずれかとの間の特異的FRETシグナルにより測定されるGPCRの活性化の状態を少しも示さず、かつ直接的に示さない。
【0020】
他の方法は、分子生物学により第3細胞内ループ及びC末端部分の各々のレベルで蛍光タンパク質(CFP及びYEP)をGPCRに挿入すること、FRETシグナルの変化により受容体の活性化を測定することにある。この方法は、Vilardagaら{Nat.Biochenol.(2003)21:807−812;国際特許公開第2004/057333号}に記載されている。それは、GPCR−Gタンパク質相互作用、及びGPCRの活性化後のこれらの相互作用の調節を直接的に考慮しない。
【0021】
他の方法は、FRET技術によりGPCRのオリゴマー化を検出することにある(米国特許第6824990B1号)。
【0022】
これらの方法の内、FRETシグナルを測定することにより、着目の受容体であるGPCR受容体の早期活性化の状態、及び結合するGタンパク質のサブユニットのいずれかを説明することができるものは無い。
【発明の開示】
【0023】
本発明の概要
受容体とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの内の1つとの近接効果の伝達に基づく蛍光シグナルを測定することにより活性経路の初期段階でGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を検出することが可能であることを、驚くべきことに見出した。
【0024】
近接効果の伝達のためのシグナルの測定は、与えられたGPCR/Gα対又はRCPG/Gβγ対の活性化状態に基づく。着目のGPCR、及び対応するGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの内の1つから必ずなる唯一の対により産生されることより、このシグナルは高い特異性を有する。近接効果の伝達のためのこのシグナルは、受容体が薬剤(アゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニスト又はアロステリック調節剤)により特異的に刺激されたときに、陽性に又は陰性に調節され得る。
【0025】
本発明は、着目のGPCRの活性化のための経路における初期変化を考慮するので、反応の特異性の観点からも有利であることを提示する。既に知られた方法と異なり、GPCRのシグナル経路のかなり上流に位置するので、潜在的薬剤の非存在又は存在下において、GPCR/Gタンパク質間の密接な相互作用を考慮する。
【0026】
それ故、本発明の本質は、受容体とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの1つとの相互作用の検出方法であって、以下のステップ:
1)ドナー/アクセプター対のメンバーで標識された受容体を当該ドナー/アクセプター対の他のメンバーで標識されたGタンパク質のGα又はGβγサブユニットと、生体媒質中で接触させ;
2)前記ドナーと前記アクセプターとの近接効果による伝達を測定する、
を含む、前記方法である。
【0027】
受容体とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの1つとの相互作用を検出することを可能とする本発明の方法は、以下の
1)受容体/Gタンパク質の結合の立証;
2)受容体特性の研究;
3)受容体に対するアゴニスト又はアンタゴニストリガンドの検出、及び新規薬剤のスクリーニング;
4)オーファン受容体の同定、
に特に好適である。
【0028】
標識された受容体をGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの1つと接触させることは、様々な方法により実施され得、例えば、当該受容体、一方ではGα又はGβγサブユニットの1つをコードする核酸を細胞内に共発現させることにより、あるいは当該受容体、一方では当該Gタンパク質のサブユニットをコードするサブユニットを形成するサブユニットをコードする核酸の異種発現により得られた機能的GPCR(GPCRを形成するサブユニット、及びGタンパク質のサブユニットを含む)を再構成することにより、あるいは人工原形質膜における組織抽出液からの精製の後に(例えば、Florioら JBC 1985,Vol.260 No.8,3477〜3483頁;Haga K.ら JBC 1986,Vol.261 No.22,10103〜10140頁;Devesa F.ら 2002 Eur.J.Biochem,269,5163〜5174頁;Stenlundら Anal.Biochem.2003,316,243−250、及びPark PSH.2004 FEBS Letters,567,344−348を参照のこと。)実施され得る。
【0029】
有利に、使用されたGPCRが既知の受容体であるとき、接触させることは、第一に、当該受容体の活性化を誘発するGPCRのための天然リガンドの存在下で実施され、次いで、潜在的薬剤又は上記受容体の活性を調節することが可能な他の試験分子の存在下で実施される。
【0030】
GPCRがオーファン受容体であるとき、接触は、もし相互作用があるのならば当該オーファン受容体を同定することを可能とさせ得る既知の受容体のための天然リガンドの存在下で、実施される。
【0031】
上記オーファン受容体の活性を調節することが可能な潜在的薬剤又は他の試験化合物の検出は、既知の受容体について上記されるように実施される。
【0032】
本発明の方法に使用されるドナー/アクセプター対のメンバーは、測定することが所望される近接効果による伝達の方法に従って選択される。
【0033】
それ故、もし近接効果による伝達が蛍光発光によるエネルギーの伝達であるならば、当該ドナー/アクセプター対はエネルギーを供与する蛍光色素分子、及びエネルギーを受容する蛍光色素分子からなる。
【0034】
本発明の目的のための適切な蛍光色素分子は、蛍光タンパク質又は有機蛍光色素分子から選択された蛍光色素分子である。これらの蛍光色素分子の例は、ローダミン、シアニン、スクアライン、ジフルオロボラジアザインダセン誘導体の如きBODIPYとして知られる蛍光色素分子、蛍光色素、AlexaFluorとして知られる化合物、希土類金属キレート、希土類金属クリプテート、量子ドット型のナノ結晶、緑色蛍光タンパク質(GFP)の如き蛍光タンパク質又はその変異体、サンゴから抽出される蛍光タンパク質、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンの如きフィコビリタンパク質、特にXL665として知られるフィコビリタンパク質、又は国際特許公開第2003/104685号に記載される蛍光色素化合物である。当業者は、FRET又はTR−FRETの測定のための好適なドナー/アクセプター対を選択することができる。
【0035】
一重項酸素の伝達の場合、Perkin Elmer社により販売されるAlphascreen(登録商標)技術に関する試薬は、例えば、ドナー/アクセプター対のために使用されるだろう(Beaudetら、Genome Res.,2001 Apr.11(4),600−8を参照のこと。)
【0036】
もし近接効果による伝達が電子の移動であるならば、Anal.Biochem.,1987,Mar.,161(2),494−500に記載のものは、ドナー/アクセプター対として使用されるだろう。
【0037】
本発明の方法に使用される受容体は、有利に、既知のGPCRであり、例えば、ムスカリン様受容体、バソプレシン受容体、GABA(ガンマ−アミノ酪酸)受容体、又はその機能を特徴付けることが望まれるGPCR、つまりはオーファン受容体である。
【0038】
これらの受容体をコードするDNA配列は、当業者に知られた(Sambrookら 下記を参照のこと)又は商業的に入手可能な(Invitrogen)慣習的分子生物学技術に従い、PCRにより増幅され得る。
【0039】
本発明の方法において使用されるGα及びGβγサブユニットは、Gi、Gs、Gq又はG12/G13、G14、G15又はG16サブユニット、あるいはGqx型構造(Xは主にs、i、oとなり得る。)を有するキメラGタンパク質となり得(Conklinら、Nature,1993,v363 274−6頁:Milligan and Rees Trends Pharmacol Sci.,1999,v20 118−24頁を参照のこと。)、その配列、及び特性は当業者に知られている。
【0040】
サブユニットをコードするDNA配列は、当業者に知られた(Sambrookら 下記を参照のこと)又は商業的に入手可能な(Invitrogen)慣習的分子生物学技術に従い、PCRにより増幅され得る。
【0041】
受容体の、及びGα又はGβγサブユニットの内の1つの標識は、当業者によく知られた技術{例えば、Janetopoulosら、Methods(2002)27:366−373、及びVilardagaら、Nat.Biotechnol.(2003)21:807−812}に従い1又は複数の共有結合により直接的に、あるいは標識/抗標識抗体、抗原/抗体、アビジン又はストレプトアビジン/ビオチン、ハプテン/抗体型の結合パートナーを経由した間接的のいずれかで実施される。
【0042】
近接効果の伝達のためのシグナルの測定は、当業者によく知られ、及び上記の例に記載された慣習的方法に従って実施される。
【0043】
例えば、様々なFRETシグナルは、ハイスループット・スクリーニング(RUBYSTAR、BMG labtech)において特徴付けられる、研究所において当業者に一般的に使用される慣習的な蛍光検出器により定量的に測定され得る。様々なFRETシグナルの測定はGPCRの活性状態又は非活性状態を直接的に説明することを可能とし、それ故、ハイスループット・スクリーニングにおいてこれらの受容体の機能を調節する分子を検索する好適な解決法を与える。
【0044】
有利に、本発明のステップ1)は、細胞を、受容体をコードする核酸で、及びGタンパク質のGα又はGβγサブユニットをコードする核酸でトランスフェクトすることにより実施され、ここで当該受容体、及びGα又はGβγサブユニットは、一方がドナー/アクセプター対のメンバーと、もう一方が当該ドナー/アクセプター対の第2メンバーと結合する。
【0045】
異なる態様の1つにおいて、本発明のステップ1)は、受容体をコードする核酸、及びGタンパク質のGα又はGβγサブユニットをコードする核酸でトランスフェクトされた細胞の調製品を試験物質と接触させることにあり、ここで当該受容体、及び当該Gα又はGβγサブユニットは、一方がドナー/アクセプター対のメンバーと結合し、他方がドナー/アクセプター対の第2メンバーと結合する。
【0046】
有利に、本発明の方法のステップ2)は、以下のように実施される:
1)前記ドナーとアクセプターとの近接効果による伝達が、リガンド、前記受容体に対する薬剤、及び試験分子の無い条件下で測定され(基礎シグナル);
2)受容体の活性化を誘発するだろう前記GPCRに特異的なリガンドの存在下で得られたシグナル(参照シグナル)が、場合により前記基礎シグナルと比較され、
3)薬剤、又は前記受容体の活性を調節することが可能な化学分子の存在下で得られたシグナルが、前記基礎シグナル、及び前記参照シグナルと比較される。
【0047】
本発明の方法の好ましい異なる態様において、ドナー/アクセプター対は、ドナー蛍光色素分子及びアクセプター蛍光色素分子からなる対であり、そして測定されたシグナルは、ドナー蛍光色素分子の励起波長で測定媒体の光励起後に放出されたFRETシグナルである。
【0048】
本発明の対象は、GPCRをコードする核酸配列、及び対応するGタンパク質のGα又はGβγサブユニットをコードする核酸配列でトランスフェクトされた細胞でもある、ここで、当該GPCR受容体、及びGα又はGβγサブユニットは、一方がドナー蛍光色素分子と、他方がアクセプター蛍光色素分子と結合する。
【0049】
本発明の対象は、当業者によく知られた慣習的方法により得られた上記のようなトランスフェクトされた細胞の膜画分でもある。
【0050】
最後に、本発明の対象は、上記のようなトランスフェクトされた細胞の調製品、及びFRETシグナルを測定するために必要な手段を含むキットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明の詳細な説明
本発明は、FRET技術に関するさらなる詳細について記載するが、結果として、この1つの技術に本出願を制限することはない。
【0052】
a)トランスフェクトされた細胞の製造
本明細書中において、「トランスフェクトされた細胞の調製品」なる表現は、トランスフェクトされた細胞自体、当業者に知られた及び実施例1に示された方法により透過処理されたトランスフェクトされた細胞、トランスフェクトされた細胞の膜画分又は再構成により得られた膜画分、Gαサブユニット及びGβγサブユニット、並びに人工原形質膜における受容体を意味する。
【0053】
細胞は、安定的にトランスフェクトされ得る、換言すると、受容体、あるいはGα又はGβγサブユニットの受容体をコードする配列は、当該細胞のゲノムDNAに一体化される。
【0054】
細胞は、受容体をコードする核酸配列、及びGα又はGβγサブユニットの内の1つをコードする核酸配列を含むプラスミド型発現ベクターを用いても一過性にトランスフェクトされ得る。
【0055】
当業者によく知られる、細胞をトランスフェクトするための技術は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;第2版;Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)による説明中の例に記載される。使用される細胞は真核細胞であり、例えば、HEK293又はCOS細胞である。
【0056】
トランスフェクションは、人工原形質膜における異種発現によっても実施され得る。
【0057】
最後に、本発明は、トランスフェクトされた細胞の膜画分に関して実施され得、その製造は当業者の一般的知識の範囲内であり、低浸透圧緩衝液、超音波処理、ポリトロンを使用して細胞を壊すこと、及び着目の膜画分を回収することのステップを本質的に含む。これらの膜画分は、分画遠心法のさらなるステップにより又は勾配沈降によりさらに豊富となり得る。
【0058】
b)蛍光色素分子
本発明のために好適なドナー又はアクセプター蛍光色素分子は、ローダミン、シアニン、スクアライン、BODIPYとして知られる蛍光色素分子、蛍光色素、AlexaFluorとして知られる蛍光色素分子、希土類金属キレート、希土類金属クリプテート、量子ドット、緑色蛍光タンパク質(GFP)の如き蛍光タンパク質又はその変異体、サンゴから抽出される蛍光タンパク質、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンの如きフィコビリタンパク質、特にXL665として知られるフィコシビリタンパク質から選択される、蛍光物質である。
【0059】
ドナー蛍光色素分子は、与えられた波長で放出されるとき、アクセプター蛍光色素分子へエネルギーを伝達する上記蛍光色素分子のいずれかとなり得る。
【0060】
アクセプター蛍光色素分子は、ドナー蛍光色素分子からのエネルギー伝達の間、FRETシグナルを放出することが可能な蛍光色素分子のいずれかとなり得る。
【0061】
FRETシグナルを得るためのドナー/アクセプター蛍光色素分子対の選択は、当業者の可能性の範囲内である。一般的に、FRETを生じさせるために、当該アクセプターの励起スペクトルは、少なくとも部分的に当該ドナー化合物の放出スペクトルを覆う必要があり、そして当該ドナー及びアクセプター化合物の遷移双極子は平行でなければならない。
【0062】
FRET現象を研究するために使用され得るドナー/アクセプター対は、特に、Joseph R.Lakowicz(Principles of fluorescence spectroscopy,第2版 338)による説明に記載され、当業者に参考となっている。
【0063】
好ましくは、ドナー蛍光色素分子は、希土類金属、特にテルビウム又はユーロピウムの複合体である。
【0064】
有利に、希土類金属複合体は、キレート又はクリプテート、好ましくはピリジンユニットを有するクリプテートである。
【0065】
希土類金属キレートは、特に、米国特許第4761481号、同第5032677号、同第5055578号、同第5106957号、同第5116989号、同第4761481号、同第4801722号、同第4794191号、同第4637988号、同第4670572号、同第4837169号、同第4859777号に記載される。他のキレートは、テルピリジンの如き非アデンテート(nonadentate)リガンドからなる(欧州特許第403593号、米国特許第5324825号、同第5202423号、同第5316909号)。
【0066】
希土類金属クリプテートは、特に、欧州特許第0180492号、同第0601113号、及び国際特許公開第WO01/96877号に記載される。
【0067】
これらのクリプテートの間で、特に最も好ましいものは、場合によりカルボキシレートユニットで置換される、トリスビピリジンユニットを有するクリプテート、又は以下の化学式のピリジン・ビスビピリジン・クリプテートである。
【化1】

【0068】
ドナー蛍光色素分子が希土類金属複合体であるとき、当該アクセプター蛍光色素分子は有利にシアニン又はアロフィコシアニンから選択され、場合により、架橋される。
【0069】
c)蛍光色素分子の結合
上記のように、蛍光色素分子は受容体、あるいはGα又はGβγサブユニットと、1又は複数の共有結合による直接的か、標識/抗標識抗体、抗原/抗体、アビジン又はストレプトアビジン/ビオチン、ハプテン/抗体型の結合パートナーを経由する間接的かのいずれかで結合される。
【0070】
蛍光色素分子の直接的結合は、以下の:
1)上記受容体、上記Gαサブユニット又はGβγサブユニットと蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現すること;
2)上記受容体、上記Gαサブユニット又はGβγサブユニットと、不可逆酵素活性(一般的に自殺酵素と呼ばれる)を有するタンパク質であって、GPCR、Gαサブユニット又はGβγサブユニット上の蛍光色素分子を伝達する当該タンパク質との融合タンパク質を発現すること;
3)インテインでスプライシングすること、
により、実施され得る。
【0071】
インテインでスプライシングすることによる結合技術は、例えば、The Journal of Biological Chemistry, Vol.273,No.26,15887−15890頁,26 June 1988、及びJ.Am.Chem.Soc.2003,125,7180−7181に記載される。
【0072】
蛍光色素分子の間接的結合は、以下の:
1)「リガンド−受容体」対又は「標識/抗標識」対を経由すること;
2)「天然」Gαサブユニット又はGβγサブユニット受容体を発現すること;この場合、蛍光化合物は、上記受容体Gαサブユニット又はGβγサブユニットを特異的に認識する抗体と結合する;あるいは、
3)蛍光タンパク質に結合する、又は上記GPCR、Gαサブユニット若しくはGβγサブユニット上の蛍光色素分子を伝達する自殺酵素に結合するGαサブユニット又はGβγサブユニット受容体を発現すること;
4)様々なTAGを有するGαサブユニット又はGβγサブユニット受容体を発現すること;この場合、蛍光化合物は上記TAGに対して特異的に作用する抗体と結合する、
により実施され得る。
【0073】
蛍光色素分子を結合するこれらの直接的及び間接的方法は、当業者によく知られた組換えDNA技術を使用する。
【0074】
GPCR、Gαサブユニット又はGβサブユニットと不可逆的酵素活性を有するタンパク質との融合タンパク質を発現することによる蛍光色素分子の直接結合は、不可逆的酵素活性を有するタンパク質として、O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)(国際特許公開第WO02/083937号を参照のこと。)又は脱ハロゲン酵素を有利に使用する。
【0075】
この場合、細胞は、GPCRをコードする核酸で、Gαサブユニット又はGβγサブユニットをコードする核酸で、及び不可逆的酵素活性を有する上記タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトされる。次いで、それらは、酵素活性を有する上記タンパク質に特異的な基質にさらされ、そして、受容体又はGα若しくはGβγサブユニットの内の1つに結合することが望まれる蛍光色素分子に共有結合される。
【0076】
「リガンド−受容体」又は「標識/抗標識」対を用いる蛍光色素分子の間接的結合において、融合タンパク質は、受容体、Gαサブユニット又はGβγサブユニットと標識と呼ばれるペプチド配列との間で発現される、この場合、蛍光化合物は、当該標識を特異的に認識する抗体と結合する。下記の「Myc」又は「FLAG」標識の如き、分子生物学において通常使用されるペプチド配列を使用する。
【0077】
用語「リガンド−受容体対」は、例えば、以下の2つの結合パートナーを意味する:ハプテン/抗体;DNP/抗DNP抗体、ここでDNPはジニトロフェノールを示す;GST/抗GST抗体、ここでGSTはグルタチオンS−トランスフェラーゼを示す;ビオチン/アビジン;6HIS/抗6HIS抗体、ここで6HISは6つのヒスチジンからなるペプチドである;Myc/抗Myc抗体、ここでMycはヒトMycタンパク質の410〜419アミノ酸からなるペプチドである;FLAG(登録商標)/抗FLAG(登録商標)抗体、ここでFLAG(登録商標)はDYKDDDDKの8アミノ酸を有するペプチドである;HA/HA抗体、ここでHAはYPYDVPDYAの9アミノ酸からなるインフルエンザの血球凝集素のエピトープである。他の対も使用され得る。
【0078】
「標識/抗標識」と一般的に呼ばれる対のDNA配列は、当業者によく知られる。これらの配列は、プラスミドに組み込まれるか、PCRにより着目のタンパク質をコードするDNAと融合される。
【0079】
d)FRETシグナルの測定
FRETシグナルは様々な方法:ドナーだけにより、ドナーとアクセプターにより放出される蛍光発光の測定、あるいはFRETに起因する媒体中に伝送される光の偏光における偏差の測定で測定され得る。ドナーの値での存続期間における偏差を観察することによりFRETの測定を組み入れることも可能であり、それは、希土類金属複合体の如き長い蛍光発光の存続期間を有するドナーの使用(特にプレートリーダーの如き単純な装置に関する)により促進される。
【0080】
好ましくは、時間分解されたFRETシグナル(TR−FRETシグナル)が測定されるだろう。
【0081】
FRETシグナル又はTR−FRETシグナルの測定の対象に関して、以下の文献を参照することにより本出願の明細書に援用する:
Mathis G.「Rare Earth Cryptates and Homogeneous Fluoroimmunoassays with Human Sera」,Clin.Chem.(1993)39,No.9,1953−1959;
Mathis G.「Probing Molecular Interactions With Homogeneous Techniques Based on Rare Earth Cryptates and Fluorescence Energy Transfer」,Clin.Chem.(1995)41,No.9,1391−1397;
H.Bazinら「Time resolved amplification of cryptate emission,a versatile technology to probe biomolecular interactions」,Reviews in Molecular Biotechnology(2002)82,233−250;及び
EP第321353号;同第232348号;同第539477号;同第539435号;同第569496号;同第1161685号;同第1166119号;国際特許公開第WO20044013348号。
【0082】
最後に、エネルギー伝達の測定の選択は、ドナー及びアクセプター蛍光色素分子の偏光の特性を使用して、改良され得ることに留意すべきである。
【0083】
それ故、ドナー及びアクセプター蛍光色素分子の偏光の特性が使用されるとき、手順は以下のように実施される:
(i)波長λ1で偏光された光線で測定媒体が励起される、ここでλ1は前記ドナー蛍光色素分子が励起される波長である;及び
(ii)放出された蛍光発光が、励起光の偏光平面と異なる偏光平面における波長λ3で測定される、ここでλ3は光が前記アクセプター蛍光色素分子から放出される波長である。
【0084】
励起光の偏光平面と異なる平面(換言すると非平行)におけるアクセプター蛍光色素分子の放出波長で放出されたシグナルの測定は、高い偏光解消種により放出されるシグナル、特にエネルギーの伝達に使用されるアクセプターのためのシグナルの測定を促進することを可能とする。当該測定が実施される平面は、好ましくは、励起光の偏光平面と直交する平面である。他の平面における測定もまた適し得る。
【0085】
好ましい態様において、偏光特性を使用する技術は、以下のステップをさらに含む:
(iii)波長λ2で放出される蛍光発光の測定、ここでλ2は、光がドナー蛍光色素分子から放出される波長である;及び
(iv)波長λ2でドナー蛍光色素分子により放出されるシグナルにより、波長λ3でアクセプター蛍光色素分子により放出されるシグナルの回収。
【0086】
この回収は、例えば、波長λ3で測定される蛍光発光の強度対波長λ2で測定される蛍光発光の強度の比率の計算にある。
【0087】
蛍光発光の測定がドナーの放出波長(λ2)で実施される場合、この測定は、平行又は異なる平面、好ましくは励起光の平面と直交する平面において実施され得る。
【0088】
第2態様において、エネルギーの伝達に起因する偏光の変化を測定するための方法において、ドナー及びアクセプター蛍光色素分子の偏光特性が使用され、エネルギー伝達の測定の選択性を改良する。上記第1方法のように、この方法は測定の選択性を改善することを可能とし、そしてそれ故、検出が望まれるエネルギー伝達現象にさらによく関係するだろう。
【0089】
この第2態様は、以下のステップ:
(i)波長λ1で、偏光光線により測定媒体を励起し、ここでλ1は上記ドナー蛍光色素分子を励起する波長である;
(ii)前記励起光の平面と平行な平面において波長λ2で放出される蛍光発光の総強度(It//λ2を測定し、ここでλ2は、光がドナー蛍光色素分子から放出される波長である;
(iii)前記励起光の偏光平面と異なる平面において波長λ2で放出される総蛍光発光強度(Itλ2を測定し;
(iv)前記励起光の平面と平行な平面において波長λ3で放出される蛍光発光の総強度(It//λ3を測定し、ここでλ3は、光がアクセプター蛍光色素分子から放出される波長である;
(v)前記励起光の偏光平面と異なる平面において波長λ3で放出される総蛍光発光強度(Itλ3を測定し;
(vi)以下の式:
【化2】

{式中、
Aは、励起光の平面と平行な平面における、ドナーのみにより波長λ2と波長λ3で放出された蛍光発光の比例定数を示し、
Bは、励起光の平面と異なる平面における、ドナーのみにより波長λ2と波長λ3で放出された蛍光発光の比例定数を示し、
n=1又は2であり、ここで、n=1のとき偏光の測定が生じるといわれ、n=2のとき異方性が関与し、
Gは、平行、及び直交平面において検出の感受性における差分を正すことを可能とする因子であり、この因子は、製造業者により提供されるか、既知の偏光物質の偏光を測定することによって当業者により容易に決定され得るかのいずれかである。特定の態様において、Gは0.1〜2であり、好ましくは0.8〜1.2であり、特にG=1である。}
により、前記ドナー蛍光色素分子とアクセプター蛍光色素分子との間のエネルギーの伝達に起因する偏光Pを計算し;そして
(vii)計算されたP値と、エネルギー伝達の生じない対照測定媒体で得られた値とを比較する、ここでPの低減はエネルギー伝達を示す、
を含む。
【0090】
好ましい態様において、A、及びBは、以下の方法:
A=(Id//λ3/(Id//λ2
B=(Idλ3/(Idλ2
{式中、(Id//λ3、(Id//λ2、(Idλ3、(Idλ2は、上記ドナー蛍光色素分子を含むがアクセプター蛍光色素分子を含まない測定媒体による、励起光の偏光平面と平行又は異なる平面における、波長λ2又はλ3で放出される蛍光発光の強度に対応する}に従って計算される。
【0091】
記載された第1方法のように、励起光の偏光平面と異なる平面において実施された測定は、当該励起光の偏光平面と直交する平面において好ましくは実施される。選択された平面が励起光の偏光平面と平行な平面でない限り、他の平面における測定も適し得る。
【0092】
それ故、本発明の方法は、ドナー化合物とアクセプター化合物間のエネルギー伝達現象の測定の選択性を改良することを可能とする。このことは、当該ドナーと当該アクセプターとのスペクトル選択性が最適条件ではない場合に有利となる。その場合とは、換言すると、以下の:
・当該ドナーと当該アクセプターの発光スペクトルが重なっている場合であり、本発明の方法は5nm<λ3−λ2<100nmの場合に特に効果的である、ここでλ3−λ2は、波長λ3とλ2との差異を示す;
・アクセプターの直接的非励振励起が、ドナーの励起波長(λ1)で可能である場合、
である。
【0093】
好ましい態様において、ドナー、及びアクセプター蛍光色素分子は、高い偏光を有し、特に50mP超、好ましくは100mP超である。本来のその偏光が50mP未満であるドナー、及びアクセプター化合物は、担体分子(有機分子、タンパク質、ペプチド、抗体又は下記のような他の分子)に結合又は吸収され得、そしてそれは、蛍光色素分子の視覚的偏光を増大する効果を有し、そして本発明の方法においてそれを使用することを可能とする。
【0094】
好ましい他の態様において、ドナー、及びアクセプター蛍光色素分子は、ドナーの励起波長λ1での励起後、ドナーの放出波長λ2でアクセプターの放出が検出されないように選択される。
【0095】
本発明は、例証によりさらに詳細に記載されるだろうが、以下の実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1
機能的受容体GABAを形成する2つのサブユニットGBとGBのC末端部分、GB1のE916残基の後、及びGB2のE793残基の後に標識(Mycタグ:EQKLISEEDL)を、並びにGoタンパク質のαサブユニット中のV93とE94残基の間に標識(FLAGタグ:DYKDDDDK)を、PCRによりに挿入した。
【0097】
1mFの電気容量のための260ボルトでの電気ショックである一実験条件あたり、1000万個の細胞の比率でのエレクトロポレーション(BioRadエレクトロポレーター)によりトランスフェクトされたHEK293細胞において、様々なコンストラクトを一過性発現させる。次いで、当該細胞を、10%ウシ胎仔血清を含む完全DMEM培地中で二次培養する。次いで、当該細胞を96ウェルプレートに100000細胞個/ウェルの比率で分配する。
【0098】
エレクトロポレーションの24時間後、PBS緩衝液でリンスした後、次いで、当該細胞を、AlexaFluor647(分子プローブ)(アクセプター)で、及びユーロピウムクリプテート(ピリジンビスピリジン PBP)(ドナー)で各々標識された抗Myc抗体(最終3nM)及び抗FLAG抗体(最終1nM)の混合物とともに(平衡状態に達するために)4℃で少なくとも5時間インキュベートする。当該抗体を含む反応培地は、5mMのHEPES、11mMのEGTA、2mMのMgCl、10mMのNaCl、120mMのKCl、1mMのCaCl、pH7.3、トリトン(Triton)×100の0.01%である。この培地は、細胞内媒体と比較して等浸透圧組成物を有する。低いトリトン×100濃度は、細胞の制御された透過性をもたらし、あらかじめ細胞を固定する必要なしに抗体が細胞内エピトープに達することを可能とする。
【0099】
得られた結果を添付の図2に示す。
【0100】
GB又はGBのC末端でのMycタグとGo−FLAGタンパク質との間の△665シグナル(バックグラウンド・ノイズに対して補正されたアクセプターの665nmでの放出)により示されるFRETシグナルの測定は、当該2つのタンパク質間の特異的相互作用を示す。FRETシグナルは、蛍光発光リーダー(Rubystar)に関して定量的に測定され得る。
【0101】
比較目的で、FRETシグナルも、実験時点と同じ最終プラスミド量でトランスフェクトされた細胞について測定した。この条件下、モック(mock)と呼ばれるプラスミドは、GB1、GB2又はGoタンパク質のいずれのコード配列も含まない。
【0102】
実施例2
SNAPタグ、及びHaloタグ酵素のコード配列を、GB又はGBサブユニットのC末端に、及びGoタンパク質のGβγサブユニットにおいて同定されたループに、各々、分子生物学により挿入した。これらのコンストラクトを、実施例1に記載のように一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞に発現させた。
【0103】
トランスフェクションから24時間後、各々、アクセプター蛍光色素分子(A)で標識された、及びドナー蛍光色素分子(D)で標識されたSNAPタグ、及びHaloタグ酵素に特異的な物質の5μMを含む培地と共に、当該細胞を30分間、37℃、5%CO2でインキュベーター内でインキュベートした。洗浄後、当該細胞を30分間、37℃、5%CO2でインキュベーター内において培地内に再度インキュベートし、その後シグナルの検出を実施する。
【0104】
SNAPタグとHaloタグの酵素活性の結果は、着目の機能性GPCR、Goタンパク質のGβγサブユニットの各々へのドナー及びアクセプター蛍光色素分子の共有結合である。当該シグナルの測定は、蛍光発光リーダー(RudyStar)定量的に実施され、又は落射蛍光顕微鏡を用いて定性的かつ半定量的に実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、リガンドの存在下におけるGPCRの活性化の機構を図式的に示した図である。
【図2】図2は、GB又はGBのC末端でのMycタグとGo−FLAGタンパク質との間の△665シグナル(バックグラウンド・ノイズに対して補正されたアクセプターの665nmでの放出)により示されるFRETシグナルの測定を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)とGタンパク質のGα又はGβγサブユニットの1つとの相互作用の検出方法であって、以下のステップ:
1)ドナー/アクセプター対のメンバーで標識された受容体を当該ドナー/アクセプター対の他のメンバーで標識されたGタンパク質のGα又はGβγサブユニットと接触させ;
2)前記ドナーと前記アクセプターとの近接効果による伝達を測定する、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記接触が、受容体をコードする核酸、及びGタンパク質のGα又はGβサブユニットをコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることにより実施され、当該受容体及び当該Gα又はGβサブユニットが、一方はドナー/アクセプター対のメンバーと、もう一方は当該ドナー/アクセプター対の第2メンバーと結合することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が、GPCRの天然リガンドの存在下、又は潜在的薬剤若しくは試験分子の存在下のいずれかで実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記近接効果による伝達の測定が実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、当該測定が以下のステップ:
1)前記ドナーとアクセプターとの近接効果による伝達が、前記リガンド、前記受容体に対する薬剤、及び前記試験分子の無い条件下で測定され(基礎シグナル);
2)前記受容体の活性化を誘発するだろうGPCRに特異的なリガンドの存在下で得られたシグナル(参照シグナル)が、場合により前記基礎シグナルと比較され;
3)薬剤、又は前記受容体の活性を調節することが可能な化学分子の存在下で得られたシグナルが、前記基礎シグナル、及び前記参照シグナルと比較される、
により実施される、上記方法。
【請求項5】
前記ドナー/アクセプター対のメンバーが蛍光色素分子であること、前記近接伝達が蛍光エネルギーの伝達であること、及び前記エネルギー伝達の測定が前記ドナーとアクセプターとの間の伝達から生ずる蛍光シグナル(FRETシグナル)を測定することにより実施されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナー蛍光色素分子、及び前記アクセプター蛍光色素分子が、ローダミン、シアニン、スクアライン、BODIPYとして知られる蛍光色素分子、蛍光色素、AlexaFluorとして知られる化合物、希土類金属キレート、希土類金属クリプテート、量子ドット、緑色蛍光タンパク質(GFP)の如き蛍光タンパク質又はその変異体、サンゴから抽出される蛍光タンパク質、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンの如きフィコビリタンパク質、特にXL665として知られるフィコビリタンパク質から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー蛍光色素分子が、希土類金属複合体である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記希土類金属複合体が、テルビウム又はユウロピウム錯体であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記希土類金属複合体が、キレート又はクリプテートである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記希土類金属複合体が、ピリジンユニットを有するクリプテートである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クリプテートが、ピリジンユニットを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクセプター蛍光色素分子が、アロフィコシアニン、シアニン、ローダミン、スクアライン、BODIPY、蛍光色素、Alexasから選択される、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アクセプター蛍光色素分子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体の1つ、黄色蛍光タンパク質(YFP)又は青色蛍光タンパク質(CEP)、サンゴから抽出された蛍光タンパク質である、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記GPCR受容体又は前記Gα若しくGβサブユニットと、前記ドナー蛍光色素分子又は前記アクセプター蛍光色素分子との結合が、共有結合による直接結合又は間接結合である、請求項5〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記共有結合による結合が、不可逆(自殺)酵素活性を有するタンパク質配列との融合により又はインテインを用いたスプライシングにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記GPCR受容体、前記Gαサブユニット又は前記Gβγサブユニットが、GPCRに対する細胞外又は細胞内標識、及びGαサブユニット又はGβγサブユニットに対する細胞内標識と呼ばれるペプチド配列を融合として含み、かつ、前記間接結合による結合が、前記GPCR受容体、前記Gαサブユニット又は前記Gβγサブユニットにより運ばれる標識を特異的に認識する抗体により実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
GPCRをコードする核酸、及び対応するGタンパク質のGα又はGβγサブユニットをコードする核酸で安定的に又は一過性にトランスフェクトされた細胞の調製品であって、前記GPCR受容体、及び前記Gα又は前記Gβγサブユニットが、一方はドナー蛍光色素分子、もう一方がアクセプター蛍光色素分子と結合する、前記調製品。
【請求項18】
前記ドナー蛍光色素分子が、希土類金属複合体である、請求項17に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項19】
前記希土類金属複合体が、テルビウム又はユウロピウム錯体である、請求項18に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項20】
前記希土類金属複合体が、キレート又はクリプテートである、請求項18又は19に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項21】
前記希土類金属クリプテートが、ピリジンユニットを有するクリプテートである、請求項20に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項22】
前記アクセプター蛍光色素分子が、アロフィコシアニン、シアニン、ローダミン、スクアライン、BODIPY、蛍光色素、Alexasから選択される、請求項17〜21のいずれか1項に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項23】
前記アクセプター蛍光色素分子が、黄色蛍光タンパク質(YEP)又は緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項22に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項24】
前記GPCR受容体、又は前記Gα若しくは前記Gβγサブユニットと、前記ドナー蛍光色素分子又は前記アクセプター蛍光色素分子との結合が、共有結合による直接結合である、請求項23に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項25】
前記共有結合による結合が融合により実施される、請求項24に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。
【請求項26】
前記GPCR受容体が細胞外又は細胞内標識を含み、かつ前記共有結合による結合が前記受容体の細胞外又は細胞内標識を認識する抗体を用いて実施される、請求項25に記載のトランスフェクトされた細胞の調製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−534917(P2008−534917A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554620(P2007−554620)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050127
【国際公開番号】WO2006/085040
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507179726)シ ビオ アンテルナショナル (9)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】