説明

GCS阻害性ピペリジン誘導体

【目的】本発明は、グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)の阻害剤として有用な新規のピペリジン誘導体、その調製方法及び医薬品、特にGCS媒介病態の治療および予防でのその使用を提供する。
【構成】化合物3,4,5-ピペリジントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-1-[(4-(ペンチルオキシ)フェニル)メチル] -、(2S, 3S, 4R, 5S) 及び薬学的に許容されるその塩及びプロドラッグにより達成される。この化合物は、糖脂質蓄積症、糖脂質蓄積に付随する疾患、糖脂質合成が異常である癌、細胞表面糖脂質を受容体として使用する微生物によって引き起こされる感染症、グルコシルセラミドの合成が本質的に重要である感染症、過剰の糖脂質合成が起こる疾患、神経細胞障害、神経細胞傷害の治療での使用に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミドシンターゼ(GCS;UDP−グルコース:セラミドグルコシルトランスフェラーゼ、UDP−グルコース:N−アシルスフィンゴシンD−グルコシルトランスフェラーゼ、EC2.4.1.80)の阻害剤として有用な新規のピペリジン誘導体、その調製方法及び医薬品、特にGCS媒介病態の治療および予防でのその使用に関する。この化合物は、糖脂質蓄積症、糖脂質蓄積に付随する疾患、糖脂質合成が異常である癌、細胞表面糖脂質を受容体として使用する微生物によって引き起こされる感染症、グルコシルセラミドの合成が本質的に重要である感染症、過剰の糖脂質合成が起こる疾患、神経細胞障害、神経細胞傷害の治療での使用に見られる。
【背景技術】
【0002】
GCSは、ウリジン2リン酸−グルコース及びセラミドの糖脂質、グルコシルセラミドへの組み立ての触媒作用をする細胞内酵素である。セラミドレベルの調節におけるGCSの役割が探求されてきた。その理由は、この分子がアポトーシスによる細胞死を誘発することができるからである(非特許文献1参照。)。コレステロール/糖脂質「rafts」、特殊な透過性の細胞表面膜ドメイン及び様々な情報伝達現象に関係すると見られる機能性を維持する際のGCSの役割も研究されてきた(非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】J.Biol.Chem.、2000年、第275巻(10)、7138〜43頁
【非特許文献2】Nature、1997年、第387号(6633)、569〜72頁
【0004】
GCSはある種のヒトの疾患を治療するための標的であると考えられている。グルコシルセラミド及び構造的に関連する糖脂質は、必須糖脂質分解酵素の1つが変異することが原因で起こる遺伝性疾患を有する患者のリソソーム中に蓄積する(例えば、ゴーシェ病、テイザックス病、サンドホフ病、GM1ガングリオシド蓄積症及びファブリ病)。糖脂質の蓄積は、ニーマン−ピック病C型、ムコ多糖症、ムコリピドーシスIV型などの遺伝性蓄積症を有するある種の組織(例えば神経細胞組織)では副次的な影響としても起こる(非特許文献3参照。)及びα−マンノース症(非特許文献4参照。)。GCS阻害剤を適用して、異常細胞の状態で糖脂質合成速度を低下させ、それによって蓄積される糖脂質がより少なくなるようにすることができる。これは基質剥脱(deprivation)と称される治療アプローチである。研究によれば、GCS阻害剤を、糖脂質蓄積障害の細胞及び動物モデルで見られる糖脂質蓄積を減少させるために使用できることが実証されている(非特許文献5、非特許文献6及び非特許文献7参照。)。さらに、臨床試験によって、N−ブチルデオキシノジリマイシン(NB−DNJ)などのGCS阻害剤は、ゴーシェ病のヒト患者を治療するのに有用であることが示されている(非特許文献8参照)。GCS阻害剤としてのイミノ糖NB−DNJの使用はEP−A−0698012に開示されている(特許文献1参照。)。EP−A−0536402及びEP−A−0698012は、デオキシガラクトノジリマイシンのN−アルキル誘導体、例えばN−ブチルデオキシガラクトノジリマイシン(NB−DGJ)も糖脂質蓄積障害の治療に有用であることを開示している(特許文献2及び3参照。)。EP−A−0698012はマンノース(NB−DMJ)、フコース(NB−DFJ)及びN−アセチルグルコサミン(NB−NAG)の対応するN−ブチル誘導体は糖脂質生合成の阻害剤としては作用しないことも開示している(特許文献4参照)。
【0005】
【非特許文献3】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1998年、5月26日、第95巻(11)、6373〜8頁
【非特許文献4】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1991年、12月15日、第88巻(24)、11330〜4頁
【非特許文献5】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1999年、第96巻(11)、6388〜93頁
【非特許文献6】Science、1997年、第276巻(5311)、428〜31頁
【非特許文献7】J.Clin.Invest.、2000年、第105巻(11)、1563〜71頁
【非特許文献8】Lancet、2000年、第355巻(9214)、1481〜5頁
【特許文献1】欧州特許出願公開第0698012号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0536402号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0698012号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0698012号明細書
【0006】
ヒト悪性腫瘍の治療にGCS阻害剤を使用することが提案されている。腫瘍は一般に正常組織中に存在する/存在しない異常な量の糖脂質を合成することができる。さらに、糖脂質、又は特にガングリオシドは腫瘍細胞から流れ落ちて細胞外液スペース及び血流中に放出される。腫瘍から流れ落ち細胞表面に結合した腫瘍ガングリオシドの両方は、細胞−細胞接触又は付着(非特許文献9参照。)、細胞運動性(非特許文献10参照。)、成長因子情報伝達現象(非特許文献11参照。)、腫瘍刺激による血管形成(非特許文献12参照。)及び腫瘍特異的免疫性応答(非特許文献13参照。)などの腫瘍宿主細胞相互作用に影響を及ぼす可能性がある。これらのすべての現象は腫瘍の発生と進行に影響を及ぼす可能性がある。糖脂質、特にグルコシルセラミドは多剤耐性(MDR)腫瘍細胞で蓄積することが知られており(非特許文献14参照。)、GCS阻害剤を用いたin vitroでのこれらの細胞の治療によってMDR表現型を逆転させることができる(非特許文献15;非特許文献16)。
【0007】
【非特許文献9】Methods Enzymol.、2000年、第312巻、447〜58頁
【非特許文献10】Mol.Chem.Neuropathol.、1995年、第24巻(2−3)、121〜35頁
【非特許文献11】J.Biol.Chem.、2000年、第275巻(44)、34213〜23頁
【非特許文献12】Acta.Oncol.、1997年、第36巻(4)、383〜7頁
【非特許文献13】J.Immunol.、1999年10月1日、第163巻(7)、3718〜26頁
【非特許文献14】Anticancer Res.、1998年、第18巻(1B)、475〜80頁
【非特許文献15】J.Biol.Chem.、1997年、第272巻(3)、1682〜7頁
【非特許文献16】Br.J.Cancer、1999年、第81巻(3)、423〜30頁
【0008】
細胞表面糖脂質も感染症において役割を有しており、病原菌(非特許文献17参照。)、菌類(非特許文献18参照。)及びウイルス(非特許文献19参照。)の結合のための受容体として働く。さらに、細胞の表面上の糖脂質は細菌性毒素(非特許文献20参照。)、例えばコレラ毒素(ガングリオシドGM1)のBサブユニット及びベロ毒素(グロボトリアオシルセラミドGB3)によって結合される(非特許文献21参照。)。
【0009】
【非特許文献17】APMIS、1990年12月、第98巻(12)、1053〜60頁、Review
【非特許文献18】Infect.Immun.、1990年7月、第58巻(7)、2085〜90頁
【非特許文献19】FEBS Lett.、1984年5月7日、第170巻(1)、15〜8頁
【非特許文献20】Methods Enzymol.、2000年、第312巻、459〜73頁
【非特許文献21】J.Infect.Dis.、2001年、suppl.70〜73、183頁
【0010】
GCS阻害剤の使用は、糖脂質合成異常に付随する多くの他の臨床的徴候にも適している。ヒト大動脈のアテローム硬化型損傷は、大動脈の影響を受けていない領域より高いガングリオシド含有量を有しており、アテローム硬化型患者の血清ガングリオシド濃度は、正常な個体より高い(非特許文献22参照。)。多発性嚢胞腎疾患を有する患者の腎臓から得られる組織は、グルコシルセラミドとラクトシルセラミドの両方を高レベルで含有している(非特許文献23参照。)。糖尿病の動物モデルでの腎臓肥大は糖脂質合成の増大と関連している(非特許文献24参照。)。
【0011】
【非特許文献22】Lipids、1994年、第29巻(1)、1〜5頁
【非特許文献23】J.Lipid.Res.、1996年6月、第37巻(6)、1334〜44頁
【非特許文献24】J.Clin.Invest.、1993年3月、第91巻(3)、797〜803頁
【0012】
糖脂質代謝はアルツハイマー病及び癲癇などの神経細胞障害でも重要な役割を果たす。例えば、ニーマン−ピック病C(NPC)患者の神経細胞はアルツハイマー病に見られる形態を暗示させる原線維変化を呈する。
【0013】
アミロイドβタンパクによるGM1ガングリオシド結合が、線維性ポリマーの生成を支援する高次構造上の変化を誘発する。このタンパク質原線維の沈着はアルツハイマー病の初期現象である(非特許文献25、26参照。)。したがって、GCS阻害剤、例えばNB−DNJなどの薬剤を使用してGM1の合成を低減させることによって、アルツハイマー病で見られる線維生成を阻害できる可能性がある。
【非特許文献25】Yanagisawaら、1995年、Nat.Med.1、1062〜6頁
【非特許文献26】Choo−Smithら、1997年、Biol.Chem.、第272巻、22987〜90頁
【0014】
その一方、予備的な臨床試験によれば、パーキンソン病、脳卒中及び脊髄損傷に見られる神経変性のプロセスは、GM1ガングリオシドで患者を治療することによって改善されるようであることが示されている(非特許文献27、28、29参照)。グルコシルセラミド合成阻害剤を併用投与することによって、この治療の過程でのより強力な制御性を臨床医に提供することが可能である。NB−DNJのようなGCS阻害剤は、神経細胞糖脂質合成を阻止することによって、患者特異的不一致を制限することになる。さらに、グルコシルセラミド合成を阻害することは、投与された糖脂質の他の、多分、非生産的な形態への代謝を制限することになる。したがって、GCS阻害剤を用いたグルコシルセラミド合成を調節する能力は、広範囲の神経細胞障害の治療に有用である。
【0015】
【非特許文献27】Alter、(1998年)、Ann.NY Acad.Sci.、845、391〜4011頁
【非特許文献28】Schneider、1998年、Ann.NY.Acad.Sci.;845、363〜73頁
【非特許文献29】Geisler、(1998年)、Ann.NY.Acad.Sci.、845、374〜81頁
【0016】
さらに、イミノ糖は雄性の不妊を可逆的に誘発させることができ、したがって、雄性用避妊薬として使用できることも示されている。また、GCS阻害剤は肥満の治療にも使用することができる。
【0017】
炎症性若しくは免疫性応答のいくつかの側面における糖脂質の役割も提案されている。チオグリコレートでもたらされる刺激などの炎症性刺激の後には、マウスの腹膜マクロファージのガングリオシドプロファイルは、休止マクロファージでの単純なプロファイル(主要3種)から、活性化され動員されたマクロファージでのより複雑なプロファイル(14種超)に変化する(非特許文献30、31、32参照)。さらに、in vivoで炎症性物質、例えば細菌内毒素を投与すると、糖脂質の新規合成の鍵である2つの酵素、セリンパルミトイルトランスフェラーゼとグルコシルセラミドシンターゼの発現が増大する結果となる(非特許文献33、34参照)。
【0018】
【非特許文献30】Ryan、J.L.ら、Yale J.Biol.Med.、1985年、第58巻(2)、125〜31頁
【非特許文献31】Yohe、H.C.ら、Biochim.Biophys.Acta.、1985年、第818巻(1)、81〜6頁
【非特許文献32】Yohe,H.C.ら、Immunol.、1991年、第146巻(6)、1900〜8頁
【非特許文献33】Memon,R.A.ら、J.Biol.Chem.、1999年、第274巻(28)、19707〜13頁
【非特許文献34】Memon,R.A.ら、J.Lipid.Res.、2001年、第42巻(3)、452〜9頁
【0019】
糖脂質のそうした役割は、炎症性刺激への高感受性若しくは低感受性応答をもたらす遺伝的欠陥を有する動物での糖脂質発現の変化の実証によってさらに支持されている。トール様受容体4変異を有し、細菌内毒素に対して低応答的であるC3H/HeJマウスにおける内毒素治療では、動員されたマクロファージには、正常なマウスの動員マクロファージで見られる主要ガングリオシドであるガングリオシドGMlbが欠けていることが分かった(非特許文献35、36参照。)。
【0020】
【非特許文献35】Yohe,H.C.ら、Immunol.、1991年、第146巻(6)、1900〜8頁
【非特許文献36】Yohe,H.C.ら、Immunol.、1986年、第137巻(12)、3921〜7頁
【0021】
したがって、GCS阻害剤は、炎症性疾患及びこれらに限定されないが、関節リウマチ、クローン病、喘息及び敗血症を含むマクロファージ動員及び活性化に付随する他の障害の治療に有用である。
【0022】
国際特許出願WO02/055498はGCS阻害剤として有用なピペリジン誘導体を開示している(特許文献5参照。)。
【0023】
【特許文献5】国際公開第02/055498号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
広範囲の疾患におけるGCSの重要さを考慮すると、この酵素の機能を調節するための手段を提供する新たなツールを開発することは極めて重要である。こうした目的で、本発明者らは、GCSの触媒活性を阻害するのに有用な新規の化合物を合成した。
【0025】
本発明の化合物は、非リソソーム−β−グルコセレブロシダーゼ活性に関して、既知のヒドロキシル化されたピペリジン誘導体を上回る、GCSに対する効力及び/又は選択性を改善した。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、化合物3, 4, 5-ピペリジントリオール、2- (ヒドロキシメチル)-l-[ (4- (ペンチルオキシ) フェニル) メチル] -、(2S, 3S, 4R, 5S) 及び薬学的に許容されるその塩及びプロドラッグを提供する。
【0027】
本明細書に記載した通り、本発明のすべての側面について、本発明の化合物について述べていることは薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグを包含する。
【0028】
本明細書に記載した通り、本発明の化合物をGCSの阻害剤のために使用することができる。このため、別の側面では、本発明は医薬での本発明の化合物の使用を提供する。
【0029】
本発明の化合物の適当な薬学的に許容される塩には、これらに限定されないが、塩酸塩、硫酸、燐酸塩、二燐酸塩、臭化水素酸塩及び硝酸塩などの無機酸との塩、又はリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パルミチン酸塩、サルチル酸塩及びステアリン酸塩などの有機酸との塩が含まれる。
【0030】
本発明の化合物の適当なプロドラッグには、これらに限定されないが、C1〜6アルキルエステルなどの薬学的に許容されるエステルが含まれる。
【0031】
本発明の化合物は水性溶媒及び有機溶媒などの溶媒から結晶化又は再結晶化させることができる。このような場合、溶媒和が形成されることがある。本発明は、化学量論的な水和物を含む溶媒和物、並びに凍結乾燥などの方法で製造することができる様々な量の水を含有する化合物をその範囲に含む。
【0032】
本発明の化合物は医薬組成物での使用を目的としているので、実質的に純粋な形で、例えば少なくとも60%の純度、より適当には少なくとも75%の純度、好ましくは少なくとも85%の純度、特に少なくとも98%の純度(%は重量ベースである)で提供されることが好ましいことは容易に理解されよう。医薬組成物で使用するより高純度の形態物のために、化合物の低純度の調製物を用いることができる。これらの化合物のより低い純度の調製物は、少なくとも1%、より適当には少なくとも5%、例えば10〜59%の本発明の化合物又はその薬学的に許容される誘導体を含むべきである。
【0033】
本発明の化合物は、既知の又は市販の出発物質から、当技術分野で認められている手順によって調製することができる。出発物質が市販から入手できない場合、それらの合成を本明細書で説明する、又はそれらを当技術分野で知られている手順で調製することができる。
【0034】
とりわけ、本発明の化合物は、(a)式(II)の化合物を:
【化4】

NaBHCN又は酢酸-メタノール又はHCl-メタノール中で(ポリスチリルメチル)トリメチルアンモニウムシアノボロヒドリドなどの担持試薬を用い、又はジクロロメタンなどの溶媒中でNaBH(OAc)を用いて4-(ペンチルオキシ)-ベンズアルデヒドと反応させるか、又は
(b)式(III):
【化5】

(式中、Pは同一又は異なっていてもよく,ヒドロキシ保護基、例えばベンジル(Bn)である。)の化合物の脱保護を含む方法で調製することができる。PがCHPhの場合、脱保護はアルコール例えばエタノールなどの適当な溶媒中に水素ガスとPdCl 又はパラジウム担持炭素などの触媒を存在させて実施される。PがCHPhの場合、これらの条件下で窒素置換基も離脱されて、式(II)の化合物を得ることができることを理解されよう。したがって、本発明のの化合物は上記方法a)を用いて作製することが好ましい。
【0035】
式(II)の化合物は既知であり、例えばTet. Lett.、1997年、第38巻 (45)、8009-12頁参照。
【0036】
式(III)の化合物は、式(IV):
【化6】

(式中、Lは同一又は異なっていてもよく、メシルなどの離脱基であり、Pは式(III)で定義されたとおりである)の化合物を、4-(ペンチルオキシ)ベンジルアミンと、そのまま、又はテトラヒドロフランなどの溶媒中で反応させることによって調製することができる。
【0037】
化合物(IVa)(式中、L はメシルであり、Pはベンジルである)は、2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-D-ガラクチトールを、ピリジンなどの塩基の存在下で塩化メシルと反応させることによって調製することができる。
【化7】

【0038】
本明細書に記載したとおりのいかなる新規の中間体も本発明の範囲内にある。従って、本発明の更なる側面によれば、上記に定義した式(III)の化合物が提供される。
【0039】
本発明の化合物の合成中、中間化合物の不安定な官能基、例えば、ヒドロキシ基は保護することができる。各種の不安定な官能基を保護する方法や結果として得られる保護された誘導体を開列させる方法の総括的な考察が、例えば「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」、T. W. Greene 及びP. G. M. Wuts、(Wiley-Interscience、New York、第2版、1991年)に示されている.
【0040】
本発明の化合物を調製する更なる詳細は実施例で提供される。
【0041】
本発明の薬学的に有効な化合物は、本発明の化合物(「活性成分」)を当該技術分野でよく知られている通常の手順に従って標準的な薬剤担体、賦形剤又は希釈剤を混合して調製された通常の投薬形で投与することができる。これらの手順は、所望の調合に適するときにその成分を混合、顆粒化及び圧縮又は溶解することを含む。
【0042】
更なる側面によれば、本発明は、一種以上の薬学的に許容できる担体、賦形剤及び/又は希釈剤と共に本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
活性成分又は医薬組成物は、治療される疾患のために別の治療と同時に、別々に又は引き続いて投与することができる。
【0044】
活性成分又は医薬組成物は、薬物投与に通常用いられるいずれの経路によっても被検者に投与することができる。例えばこれらをヒトを含む哺乳動物への経口(頬側、舌下を含む)、局所(経皮を含む)、経鼻(吸入を含む)、経直腸、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を含む)投与のために適合させることができる。どんな場合でも、最も適切な投与の経路は、個々の化合物若しくは医薬組成物、被検者及び疾患の性質や重篤度及び対象の体調に依存することになる。このような組成物は製薬学の技術分野で知られている任意の方法、例えば活性成分を担体、賦形剤及び/又は希釈剤と一緒にすることによって調製することができる。
【0045】
経口投与のために適合させた医薬組成物は、カプセル剤又は錠剤;粉剤又は顆粒剤;液剤又は水性又は非水性液体中の懸濁剤;食用発泡体又は起泡剤;又は水中油型液状乳剤又は油中水型液状乳剤などの離散的な単位として提供することができる。
【0046】
経口投与のための錠剤及びカプセル剤は、単位投与の提供形態でよく、結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント又はポリビニルピロリドン;増量剤、例えばラクトース、砂糖、とうもろこしデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン;錠剤用滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ;崩壊剤、例えばじゃがいもデンプン;又はラウリル硫酸ナトリウムなどの許容される湿潤剤などの通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は通常の薬剤の慣行でよく知られている方法によってコーティングされていてよい。経口液体調合物は、例えば水性若しくは油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ又はエリキシルの形態でよい、又は水又は他の適切な媒体で使用前に再溶解する乾燥品として提供してもよい。係る液体調合物は、懸濁化剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水素化食用油脂、乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアカシア;非水性媒体(食用油を含んでもよい)、例えばアーモンドオイル、グリセリンなどの油性エステル、プロピレングリコール又はエチルアルコール;保存剤、例えばメチル若しくはプロピルp−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸、及び望むなら、通常の香味剤又は着色剤などの通常の添加剤を含むことができる。
【0047】
局所投与に合わせた医薬組成物は、軟膏、クリーム剤、懸濁剤、ローション、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、含浸包帯剤、スプレー剤、エアロゾル剤又は油剤として製剤することができ、保存剤、薬物の浸透を助ける溶媒、及び軟膏やクリーム剤の緩和薬などの適切な通常の添加剤を含むことができる。このような施用には眼若しくは他の外部組織、例えば口や皮膚への施用も含まれ、組成物は局所用の軟膏又はクリーム剤として施用することが好ましい。軟膏として製剤する場合、活性成分はパラフィン性又は水混和性のいずれかの軟膏ベースを用いることができる。或いは、活性成分を、水中油型クリーム剤ベース又は油中水型ベースを用いたクリーム剤で製剤することができる。組成物はクリーム剤若しくは軟膏ベース、及びローション用のエタノール若しくはオレイルアルコールなどの相溶性の通常の担体も含むことができる。
【0048】
眼への局所投与に適合させた医薬組成物には、活性成分が適切な担体、特に水性溶媒中に溶解又は懸濁されている点眼剤が含まれる。
【0049】
口内への局所投与に適合させた医薬組成物には、トローチ剤、香錠及びうがい薬が含まれる。
【0050】
経皮投与に適合させた医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期間密接な接触を保つための別々のパッチとして提供することができる。例えば、Pharmaceutical Research、第3巻(6)、318頁、(1986年)に概略が記載されているイオン泳動によって、活性成分をパッチから送達することができる。
【0051】
経鼻投与に適合させた、担体が固体である医薬組成物には、鼻に近接して保持された粉剤の容器から鼻道を通過する迅速な吸入によって投与される、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する粗粒が含まれる。経鼻スプレー剤として又は経鼻液滴剤としての投与のために担体が液体である適切な組成物には、活性成分の水性若しくは油液剤が含まれる。
【0052】
吸入による投与に適合させた医薬組成物には、様々な種類の計量投与式加圧型のエアロゾル剤、噴霧器又は吸入器の手段によって発生させることができる微粒子状のダスト又はミストが含まれる。
【0053】
経直腸投与に適合させた医薬組成物は、座剤又は浣腸として提供できる。座剤は通常の座剤ベース、例えばココアバター又は他のグリセリドを含むことになる。
【0054】
経膣投与に適合させた医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー組成物として提供することができる。
【0055】
非経口投与に適合させた医薬組成物には、水性及び非水性の殺菌性注射液剤を含むことができる。これらには、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び当該レシピエントの血液と等張性の調合をもたらす溶質;懸濁化剤及び増粘剤を含む水性及び非水性の殺菌性懸濁剤が含まれる。組成物は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提供することができ、注射用の無菌性液体担体、例えば水を使用直前に加えるだけでよい凍結乾燥(ライオフィライズした)状態で貯蔵することができる。即応性の注射用液剤及び懸濁剤は無菌性粉剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0056】
非経口投与のためには、流体単位剤形を、活性成分及び無菌性媒体例えば水を用いて調製する。用いる媒体及び濃度に応じて、活性成分は媒体中に懸濁しても溶解してもよい。液剤を調製する場合、適切なバイアル又はアンプルに充填し密封する前に、活性成分を、注射用に水に溶解し、濾過して殺菌することができる。
【0057】
有利には、局所麻酔剤、保存剤及び緩衝剤などの薬剤を媒体中に溶解させることができる。安定性を向上させるためには、バイアル中に充填した後、組成物を凍結させ、真空下で水を除去することができる。次いで乾燥した凍結乾燥粉末をバイアル中に密封し、使用前に液体に戻すために、付随する注射用の水のバイアルを供給することができる。活性成分が、媒体中に溶解ではなく懸濁していて、濾過による殺菌を行うことができないこと以外は、非経口懸濁剤を実質的に同様の方法で調製することができる。活性成分は無菌性媒体中に懸濁させる前に酸化エチレンに曝露させて殺菌することができる。界面活性剤又は湿潤剤を組成物中に含有させて活性成分の均一な分散を容易にすることが有利である。
【0058】
本発明による医薬組成物は経口投与に適合させることが好ましい。
【0059】
これまで述べた個々の成分に加えて、該組成物は、当該の種類の調合物に関係する当技術分野で一般的な他の薬剤を含むこともでき、例えば経口投与に適しているものは香味剤を含むことができることを理解すべきである。本発明の化合物に加えて、該組成物は治療的に活性な薬剤も含むことができる。そうした担体は調合物の約1%〜約98%存在することができる。より一般的には、調合物の最大で約80%を形成することになる。
【0060】
該組成物は、投与の方法により、0.1重量%以上、例えば10〜60重量%の活性物質を含むことができる。
【0061】
医薬組成物は、所定量の用量当たりの活性成分を含む単位投与形態で提供することができる。そうした単位は、治療されている状態、投与経路及び患者の年齢、体重及び状態に応じて、例えば、0.1mg/kg〜750mg/kg、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kgを含むことができる。好ましい単位投与組成物は日量投与若しくはサブ−用量、又は適切なその分画量の活性成分を含むものである。
【0062】
当分野の技術者は、活性成分の個別の投与量の最適量及び間隔は、治療されている状態の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、並びに治療を受けている個々の対象によって決定されることになり、そうした最適条件は通常の技術で決定できることを認識されよう。当分野の技術者は、治療の最適コース、すなわち、規定された日数での、投与される活性成分の一日当たりの投与の回数は、当分野の技術者によって、治療判定試験の通常のコースを用いて確認できることも理解されよう。
【0063】
本発明の化合物を上記の投与量範囲で投与しても、毒物学的影響は示されていない。
【0064】
本発明の化合物はグルコシルセラミドシンターゼを阻害することができる点で有用である。したがって、本発明の化合物をゴーシェ病、サンドホフ病、テイザックス病、ファブリ病、GM1ガングリオシド蓄積症などの様々な糖脂質蓄積症の治療で使用することができる。さらに、こうした化合物は、ニーマン−ピック病、ムコ多糖症(MPS I、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS VI及びMPS VII好ましくはMPS I)、ムコリピドーシスIV型及びα−マンノース症など糖脂質蓄積が起こる病態の治療にも用途を見出すことができる。
【0065】
本発明の化合物は、脳腫瘍、神経芽細胞腫、悪性黒色腫、腎臓の腺癌及び一般的な多剤耐性癌などの糖脂質合成が異常である癌の治療にも使用できる。
【0066】
本発明の化合物は、感染性生物体それ自体又は感染性生物体によって生成される毒素のための受容体として細胞表面糖脂質を用いる感染性微生物によって引き起こされる疾患の治療にも使用することができる(例えば、宿主細胞上に/内部に付着及び/又は湿潤のため)。
【0067】
本発明の化合物は、グルコシルセラミドの合成が必須のプロセス又は重要なプロセスである、感染性微生物、例えば病原性真菌クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)によって引き起こされる疾患の治療にも使用することができる。
【0068】
本発明の化合物は、これらに限定されないが、アテローム性動脈硬化症、多発性嚢胞腎疾患及び糖尿病性腎臓肥大などの過剰な糖脂質合成を起こす疾患の治療にも使用できる。
【0069】
本発明の化合物は、アルツハイマー病及び癲癇などの神経細胞障害、及びパーキンソン病などの神経細胞変性疾患治療にも使用できる。
【0070】
本発明の化合物は、脊髄損傷又は脳卒中などの神経細胞傷害の治療にも使用できる。
【0071】
本発明の化合物は肥満の治療にも使用できる。
【0072】
本発明の化合物は、これらに限定されないが、関節リウマチ、クローン病、喘息及び敗血症を含むマクロファージ動員及び活性化に関連する炎症性疾患若しくは障害の治療にも使用できる。
【0073】
従って、追加の側面において、、本発明は以下のものを提供する。
(i)グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤としての使用のための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0074】
(ii)糖脂質蓄積症治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。治療することができる糖脂質蓄積症の例には、これらに限定されないが、ゴーシェ病、サンドホフ病、テイザックス病、ファブリ病又はGM1ガングリオシド蓄積症が含まれる。
【0075】
(iii)ニーマン−ピック病A型及びC型の治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。
【0076】
(iv)ムコ多糖症I型、ムコ多糖症IIIA型、ムコ多糖症IIIB型、ムコ多糖症VI型又はムコ多糖症VII型の治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。好ましくは、該化合物はムコ多糖症I型の治療に使用される。
【0077】
(v)α−マンノース症又はムコリピドーシスIV型の治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。
【0078】
(vi)これらに限定されないが、脳癌、神経細胞癌、神経芽(細胞)腫、腎臓の腺癌、悪性黒色腫、多発性骨髄腫及び多剤耐性癌を含む糖脂質合成が異常である癌の治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。
【0079】
(vii)アルツハイマー病、癲癇又は脳卒中の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0080】
(viii)パーキンソン病の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0081】
(ix)脊髄損傷の治療の医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0082】
(x)生物体自身か又は生物体によって生成される毒素のための受容体として、細胞の表面上の糖脂質を利用する感染性微生物によって引き起こされる疾患の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0083】
(xi)グルコシルセラミドの合成が、必須又は重要なプロセスである、これらに限定されないが、クリプトコッカスネオフォルマンスによる感染症に関連する病理などの感染性微生物、例えば病原性菌類によって引き起こされる疾患の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0084】
(xii)これらに限定されないが、多発性嚢胞腎疾患、糖尿病性腎臓肥大及びアテローム性動脈硬化症を含む異常な糖脂質合成に関連する疾患の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0085】
(xiii)GM1ガングリオシドなどのガングリオシドの投与によって治療できる病態の治療用の医薬品製造における本発明の化合物の使用。そうした病態の例はパーキンソン病、脳卒中及び脊髄損傷である。
【0086】
(xiv)雄哺乳動物の不妊を可逆的に付与するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0087】
(xv)肥満の治療のための医薬品、例えば食欲抑制剤の製造における本発明の化合物の使用。
【0088】
(xvi)これらに限定されないが、関節リウマチ、クローン病、喘息及び敗血症を含むマクロファージ動員及び活性化に関連する炎症性疾患又は障害の治療で使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0089】
(xvii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、ゴーシェ病、サンドホフ病、テイザックス病又はGM1ガングリオシド蓄積症などの糖脂質蓄積症を治療するための方法。
【0090】
(xviii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、ニーマン−ピック病、A型及びC型を治療するための方法。
【0091】
(xix)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症IIIA型、ムコ多糖症IIIB型、ムコ多糖症VI型又はムコ多糖症VII型を治療するための方法。
【0092】
(xx)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、α−マンノース症又はムコリピドーシスIV型を治療するための方法。
【0093】
(xxi)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、これらに限定されないが、脳癌、神経細胞癌、腎臓の腺癌、悪性黒色腫、多発性骨髄腫及び多剤耐性癌を含む糖脂質合成が異常である癌を治療するための方法。
【0094】
(xxii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、アルツハイマー病、癲癇又は脳卒中を治療するための方法。
【0095】
(xxiii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、パーキンソン病を治療するための方法。
【0096】
(xxiv)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、脊髄損傷を治療するための方法。
【0097】
(xxv)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、生物体自身のため又は生物体によって生成される毒素のための受容体として細胞の表面上の糖脂質を利用する感染性微生物によって引き起こされる疾患を治療するための方法。
【0098】
(xxvi)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、これに限定されないが、クリプトコッカスネオフォルマンス感染症に関連する病理などの、グルコシルセラミドの合成が必須又は重要なプロセスである、感染性微生物、例えば病原性菌類によって引き起こされる疾患を治療するための方法。
【0099】
(xxvii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、これらに限定されないが、多発性嚢胞腎疾患、糖尿病性腎臓肥大及びアテローム性動脈硬化症を含む異常な糖脂質合成に関連する疾患を治療するための方法。
【0100】
(xxviii)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、GM1ガングリオシドなどのガングリオシドの投与によって治療できる病態を治療するための方法。このような病態の例はパーキンソン病、脳卒中及び脊髄損傷である。
【0101】
(xxix)本発明の化合物の有効量を雄哺乳動物に投与するステップを含む、前記雄哺乳動物の不妊を可逆的に付与する方法。
【0102】
(xxx)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、肥満を治療するための方法。
【0103】
(xxxi)本発明の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、これらに限定されないが、関節リウマチ、クローン病、喘息及び敗血症を含むマクロファージ動員及び活性化に関連する炎症性疾患又は障害を治療するための方法。
【0104】
本発明はまた、上記疾患及び病態を治療するための本発明の化合物の使用を提供する。
【0105】
これらに限定されないが、本明細書で引用した特許及び特許出願を含むすべての出版物を、各個別の出版物が具体的かつ個別的に示されて、完全に示されているように参照により本明細書に挿入されているかのように参照により本明細書に挿入される。
【0106】
本発明を以下の実施例を参照して説明する。これらは単に例示的なものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではない。
【0107】
実施例1 3,4,5-ピペリジントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-1- [(4- (ペンチルオキシ) フェニル) メチル]-、(2S, 3S, 4R, 5S)
【化8】

【0108】
3,4,5-ピペリジントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-、(2S, 3S, 4R, 5S) (50 mg, 0.31 mmol)及び10%酢酸中の(ポリスチリルメチル)トリメチルアンモニウムシアノボロヒドリド (178 mg, 0.78 mmol)をメタノール (2 ml)中に含む混合物に、4- (ペンチルオキシ)ベンズアルデヒド(146 mg, 0.76 mmol)を加え、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を10%塩酸水溶液で予め洗浄しておいた酸性のDowex 50X4-200樹脂(3 g)のプラグを用いて精製した。樹脂をメタノール(25 ml)で溶出させてすべての非塩基性副生成物を取り除いた。次いで、2: 2: 1のメタノール/水/水酸化アンモニウムの溶液(100 ml)を用いて所望の化合物を溶出させた。得られた溶液を少体積(1 ml)に濃縮し、凍結乾燥して白色固体の表題化合物を得た (30 mg, 29%)。H NMR (d4-メタノール) δ 0.94 (3H, t, J= 6.8Hz)、1. 45 (4H, m)、1. 78 (2H, m), 2.52 (1H dd, J= 6.4, 12. 0Hz)、2.65 (1H dd, J= 3.4, 12. 0Hz)、2.75 (1H, m)、3.52-4. 05 (9H, m)、6.72 (2H, d, J= 8.7 Hz)、7.35 (2H, d, J= 8.7 Hz). MS m/z 340.1 (M+H) +。
【0109】
生物学的アッセイ
本発明の化合物を、以下のアッセイでその生物活性について試験することができる。
【0110】
GCSの阻害
GCSの阻害についてのアッセイは、基本的にはPlattら、J.Biol.Chem.、(1994年)、第269巻、27108頁に記載のように実施した。酵素源は昆虫の細胞中で発現させたヒト組み換えGCSである。
【0111】
非リソソーム−β−グルコセレブロシダーゼの阻害
非リソソーム−β−グルコセレブロシダーゼの阻害についてのアッセイは基本的にはH.S.Overkleeftら、J.Biol.Chem.、(1998年)第273巻、26522〜26527頁に記載のようにして実施した。異なっている点は以下の点、すなわち酵素源として、脾臓膜懸濁物の代わりにMCF7(ヒト乳癌細胞系)の全細胞抽出物を用いたこと、基質として3Mmの代わりに5Mmの4−MU β−グルコシドを用いたこと、及びMcIlvaine緩衝剤の代わりに0.2Mクエン酸塩/リン酸塩(pH5.8)を用いたことである。
【0112】
表1はヒトGCS及び非リソソーム−β−グルコセレブロシダーゼ酵素に対する本発明の化合物についてのIC50データを示す。
【0113】
【表1】

グルコシルセラミド(GlcCer)欠乏の測定によるGCS阻害に対する細胞ベースのIC50の推定
ヒト乳房上皮細胞(MCF−7)を、本発明の化合物の濃度を変えて(0;0.01;0.05;0.25;1.25及び6.25μM)5〜7日間培養した。細胞を収集し、全細胞脂質を抽出した。当該分野の技術者に知られている方法で中性糖脂質をDIPE/1−ブタノール/生理食塩水懸濁物中で分配させて分離した。次いで、中性糖脂質抽出物を、当該分野の技術者に知られている方法によって、無極性TLC条件(クロロホルム:メタノール:0.2%CaCl;65:35:8)を用いて高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)で分離した。GlcCerのバンドが観察された。TLCプレートを直ちにスキャンした。次いで、Scion Imageソフトウェアを用いてGlcCer標準に対するサンプル中のGlcCerを定量した。これによって、GCS阻害に対する本発明の化合物についての細胞ベースのIC50の計算が可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物3, 4, 5-ピペリジントリオール、 2- (ヒドロキシメチル)-1-[ (4- (ペンチルオキシ) フェニル) メチル] -、 (2S, 3S, 4R, 5S)又は薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグ。
【請求項2】
医薬での使用のための請求項1記載の化合物。
【請求項3】
1種又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤と一緒に、請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項4】
(a)式(II)の化合物:
【化1】

をNaBHCN又は酢酸-メタノール又はHCl-メタノール中で担持試薬を用い、又は溶媒中でNaBH(OAc)を用いて4-(ペンチルオキシ)-ベンズアルデヒドと反応させるか、又は
(b)式(III)の化合物:
【化2】

(式中、Pは同一又は異なっていてもよく、ヒドロキシ保護基である。)の脱保護を含む請求項1記載の化合物の調製のための方法。
【請求項5】
グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項6】
糖脂質蓄積症の治療用の医薬品製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項7】
前記糖脂質蓄積症がゴーシェ病、サンドホフ病、テイザックス病、ファブリ病又はGM1ガングリオシド蓄積症である請求項6記載の使用。
【請求項8】
ニーマン−ピック病C型、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症IIIA型、ムコ多糖症IIIB型、ムコ多糖症VI型、又はムコ多糖症VII型、α−マンノース症又はムコリピドーシスIV型の治療用の医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項9】
糖脂質合成が異常である癌の治療用の医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項10】
糖脂質合成が異常である前記癌が脳癌、神経細胞癌、神経芽細胞腫、腎臓の腺癌、悪性黒色腫、多発性骨髄腫又は多剤耐性癌から選択される請求項9記載の使用。
【請求項11】
アルツハイマー病、癲癇、脳卒中、パーキンソン病又は脊髄損傷の治療用の医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項12】
細胞の表面上の糖脂質を生物体自身又は生物体によって生成される毒素のどちらかのための受容体として利用する感染性微生物、或いはグルコシルセラミドの合成がそのために必須又は重要なプロセスである感染性微生物によって引き起こされる疾患の治療に使用するための医薬品の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項13】
異常な糖脂質合成に関連する疾患の治療に使用するための医薬品の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
異常な糖脂質合成に関連する疾患が多発性嚢胞腎疾患、糖尿病性腎臓肥大又はアテローム性動脈硬化症から選択される請求項13記載の使用。
【請求項15】
GM1ガングリオシドなどのガングリオシドの投与によって治療可能である病態の治療のための医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項16】
雄の哺乳動物を可逆的に繁殖不能にするのに使用するための医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項17】
肥満の治療用の医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項18】
マクロファージ動員及び活性化に関連する炎症性疾患若しくは障害の治療用の医薬品製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項19】
マクロファージ動員及び活性化に関連する前記炎症性疾患若しくは障害が関節リウマチ、クローン病、喘息又は敗血症から選択される請求項18記載の使用。
【請求項20】
式(III)の化合物:
【化3】

式中、Pは同一又は異なっていてもよく、ヒドロキシ保護基である。

【公表番号】特表2006−527252(P2006−527252A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516390(P2006−516390)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002450
【国際公開番号】WO2004/111001
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】