説明

GDF−8モジュレート物質の検出

生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質、例えば、GDF−8阻害物質の存在を検出するための方法を含む、ヒトを含む動物においてGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が、本出願で提供される。特に、生体試料中のGDF−8モジュレート物質の存在および/または量を評価する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年3月23日に出願された米国仮出願番号第60/664,400号の利益を主張し、その内容は出典明示により完全に本明細書の一部とされる。
本発明はGDF−8モジュレート物質の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
ミオスタチンとしても知られる、増殖・分化因子−8(GDF−8)は、骨格筋量の負の調節因子である分泌蛋白質である。GDF−8の阻害剤は、筋成長を増進するため、骨格筋減少症、悪液質および筋ジストロフィーを含む様々な状態の処置に潜在的な利益をもたらす。
【0003】
GDF−8は、構造的に関係する成長因子であるトランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−β)スーパーファミリーの一員である。このスーパーファミリーのメンバーは、生理学的に重要な成長−調節および形態形成の特徴を有する(Kingsleyら、Genes Dev. 8:133-146 (1994);Hoodlessら、Curr. Topics Microbiol. Immunol. 228:235-272 (1998))。同様に、これらは共通の構造構成を共有しており、分泌のための短ペプチドシグナルおよび非常に保存された蛋白質分解の開裂部位により生物活性のあるカルボキシ−末端部分から分離されるアミノ−末端部分を含む。
【0004】
ヒトGDF−8は、アミノ−末端プロペプチド部分とカルボキシ−末端の成熟部分を含む、375個のアミノ酸からなる前駆蛋白質として合成される。プロペプチドは、成熟GDF−8からArg−266で切り離される。成熟GDF−8蛋白質は、ジスルフィド結合されたホモ二量体として活性を有する。蛋白質分解過程に続いて、2つのGDF−8プロペプチドは、GDF−8の成熟ドメイン二量体と非共有結合で複合体形成し、潜在的に不活性な状態でGDF−8を維持すると考えられる(Leeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:9306-9311 (2001);Thiesら、Growth Factors 18:251-259 (2001))。他の蛋白質もまた、成熟GDF−8と結合し、その生物活性を阻害することが知られている。このような阻害性の蛋白質には、フォリスタチンおよびGASP−1を含むフォリスタチン関連蛋白質が含まれる(Gamerら、Dev. Biol. 208:222-232 (1999));米国特許公報第2003-0180306-A1号;米国特許公報第2003-0162714-A1号)。
【0005】
様々な種から推定されるアミノ酸配列のアライメントは、GDF−8が進化を通じて非常に保存されていることを示す(McPherronら、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 94:12457-12461 (1997))。実際に、ヒト、マウス、ラット、ブタ、およびニワトリのGDF−8配列は、そのカルボキシ−末端領域で100%一致し、また、ヒヒ、ウシ、およびヒツジにおいては、この領域はわずかに3アミノ酸異なるのみである。ゼブラフィッシュのGDF−8は、より以前から分岐しているが、そのカルボキシ−末端領域はヒト配列と88%も一致する。
【0006】
GDF−8は、骨格筋量の負の調節因子であるため、GDF−8の生物活性を調節する因子を包含する治療方法を究明し開発することは、大きな関心事である。例えば、GDF−8遺伝子に変異を有するマウスおよび畜牛は、体重と筋量に顕著な増加が見られる(McPherronら、Nature 387:83-90 (1997);Zhuら、FEBS Letters 474:71-75 (2000);Grobetら、Nature Genet. 17:71-74 (1997))。マウスモノクローナルGDF−8モジュレート抗体の投与は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のmdxマウスモデルにおいて、筋肉変性および血清中クレアチンキナーゼ濃度を低下させる一方で、mdxマウスの体重、筋量、筋サイズおよび絶対的な筋力を増大させる(Bodanovichら、Nature 420:418-421 (2002))。さらに、GDF−8の薬理学的阻害は、生体のC57BL/6およびBALB/cマウスにおいて、筋サイズおよび握力の増大をもたらす(Whittemoreら、BBRC 300:965-971 (2003))。
【0007】
多くの重大な生物過程を調節するその重要な機能により、GDF−8は、多くの障害の治療介入の望ましい標的である。GDF−8活性を阻害する治療物質は、筋組織の増加が治療上有利となるであろうヒトまたは動物の障害を処置するために用いることがでるであろうし、GDF−8活性をモジュレートする物質は、脂肪組織、グルコース恒常性または骨低下と関連する障害を処置するのに用いることができるであろう。さらに、正常な個体に投与されたGDF−8阻害剤は、例えば、その個体の筋量を増加させるであろう。
【0008】
1つのGDF−8阻害物質は、完全なヒト抗体のMYO−029であり、これは、米国特許公報第2004-0142382号にさらに詳しく記載されている。MYO−029は、高親和力で成熟GDF−8を結合して、試験管内(インビトロ)および生体内(インビボ)でGDF−8活性を阻害することができ、そして、骨格筋量の負の調節因子と関係するGDF−8活性を阻害することができる。MYO−029をマウスに投与した場合、増加する筋量を促進する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
GDF−8モジュレート物質は、種々の治療への応用に有用であり、かくして、個体の生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出および/または定量する方法が望まれる。ヒト血清中の治療上のGDF−8モジュレート物質レベルの測定は、治療上重要である。このような方法は、例えば、治療の進行を追跡すること、試薬の薬物動力学もしくは生物学的利用能を評価すること、個体の生体試料中の試薬のレベルを測定すること、および/またはGDF−8活性をモジュレートする試薬の投与を検出することを可能にする。
【0010】
さらに、治療に応用するために開発されたGDF−8活性の阻害剤が筋量を増加させるために、運動性の向上を目的とした乱用の標的となり得る。治療以外の目的でのGDF−8モジュレート物質の違法な使用の危険性は、この薬物が治療として利用できるようになるほど高まる。個体の運動能力を向上させるために、または家畜動物の成長速度もしくは食材としての特徴を向上させるために投与される薬物は、多くの場合、規制および/または禁止される。従って、適法な医薬適用性のあるGDF−8モジュレート物質の乱用を検出する能力は、ますます重要になる。従って、運動による、または食材としての動物におけるGDF−8阻害物質の使用を検出するための方法、例えば、個体におけるGDF−8モジュレート物質の使用をモニタする方法を開発することが望まれる。
【0011】
GDF−8モジュレート物質、MYO−029の事前の薬物動力学研究には、MYO−029抗体に放射性同位体、125Iを直接標識化することが含まれる。しかしながら、直接検出は、例えば、GDF−8モジュレート物質が投与される個体に潜在的に危険性もしくは毒性のある物質を導入する可能性があり得るので、扱いにくく、また不都合である(米国特許公報第2004/0142382-A1号)。生体試料中でGDF−8モジュレート物質を検出する改良方法が必要である。
【0012】
従って、GDF−8モジュレート物質の治療をモニタし、もしくは評価し、または乱用を検出するため、生体試料中のGDF−8モジュレート物質の存在を検出するアッセイおよび方法、並びに、生体試料中のGDF−8モジュレート物質をモニタおよび/または定量する方法を開発することは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つまたはそれ以上のGDF−8活性をモジュレートすることができる、生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法を、本明細書に記載する。具体的には、生体試料中のGDF−8阻害物質を検出するための方法を提供する。これらの方法は、複雑な生体試料、例えば、血清、血液、血漿または尿などにおける、低レベルのGDF−8モジュレート物質を検出する。本方法は、種々のGDF−8物質を検出するのに用いることができ、例えば、無症候性の、症候性のまたは健康な個体に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1つの実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供され、前記方法は:(a)試験されるべき個体からの生体試料を、GDF−8活性についての試験管内アッセイに加えること;(b)GDF−8活性のモジュレーションを検出すること;および(c)生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションを、対照生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションと比較し、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の存在を検出することを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、試験管内のアッセイは、(a)成熟したGDF−8蛋白質二量体であるGDF−8蛋白質を、反応容器の表面と接触させる工程;(b)生体試料を、反応容器に加える工程;(c)検出試薬を加える工程;および(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の複合体を検出し、それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する工程を含む。1つの実施形態において、GDF−8蛋白質は、ビオチン部分を含み、そのビオチン部分を介して表面と接触する。さらなる実施形態において、GDF−8はリジン残基でビオチン化され、そのビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比は、約5:1より小さく、および/またはビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比は、約0.5:1から約4:1の間にある。本方法の他の実施形態において、GDF−8蛋白質を加える前に、アビジンまたはストレプトアビジンが、反応容器の表面に吸着される。
【0016】
さらなる実施形態において、試験管内アッセイは、(a)可溶性のGDF−8受容体を、反応容器の表面と接触させる工程;(b)生体試料を、反応容器に添加する工程;(c)標識化GDF−8蛋白質を、反応容器に加える工程;および(d)生体試料の存在下と不在下の表面と会合した標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量を検出し、生体試料の存在下での標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量における減少により、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する工程を含む。1つの実施形態において、本方法は、反応容器に試料を加える前に、標識化GDF−8蛋白質と共に生体試料をインキュベートする工程をさらに含む。
【0017】
さらなる付加的な実施形態において、本方法は、(a)GDF−8−応答調節因子およびレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物を有する宿主細胞を、反応容器に供する工程;(b)生体試料を反応容器に加える工程;および(c)生体試料の存在下および不在下で、細胞内でレポーター遺伝子の発現を検出し、それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する工程を含む、細胞に基づく試験管内レポーター遺伝子アッセイを包含する。
【0018】
ある実施形態において、本方法は、個体からの生体試料によるGDF−8活性のモジュレーションを、それぞれが既知濃度のGDF−8モジュレート物質を含む複数の対照試料と比較することにより定量して、生体試料中のGDF−8モジュレート物質のレベルを定量することさらに含む。他の好ましい実施形態において、生体試料は、GDF−8モジュレート物質が投与されている、または投与された疑いのある個体からの試料を含む。他の実施形態において、生体試料は、血清、血液、血漿、生検標本、組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、ミルク、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液、または粘液から選択される。
【0019】
本明細書で提供される方法は、例えば:GDF−8と特異的に結合する抗体;GDF−8結合パートナーと特異的に結合する抗体;GDF−8受容体;ActRIIB蛋白質;フォリスタチン−ドメインを含有する蛋白質;フォリスタチン蛋白質;GASP−1蛋白質;GDF−8蛋白質;GDF−8プロペプチド;非−蛋白質阻害物質(proteinacious inhibitor);または小分子から選択されるGDF−8モジュレート物質を検出するために用いることができる。ある実施形態において、GDF−8モジュレート物質は、GDF−8阻害物質である。他の実施形態において、該物質は、GDF−8蛋白質と特異的に結合する抗体である。1つの好ましい実施形態において、GDF−8モジュレート物質は、GDF−8と特異的に結合するヒト中和抗体、MYO−029である。
【0020】
さらなる実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供され、前記方法は、(a)成熟GDF−8蛋白質を反応容器の表面と接触させること;(b)生体試料を反応容器に加えること;(c)検出試薬を反応容器に加えること;および(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の複合体を検出し、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。本方法の好ましい実施形態において、成熟GDF−8蛋白質は、ビオチン部分を含み、そのビオチン部分を介して表面と接触する。さらなる実施形態において、ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比は、約5:1より小さいか、またはビオチン部分の成熟GDF−8蛋白質に対するモル比は、約0.5:1から約4:1の間である。
【0021】
GDF−8モジュレート物質、例えばGDF−8阻害剤は、本明細書で提示される方法により検出することができ、それらはまた、本発明の方法に用いることもできる。従って、幾つかの実施形態において、検出試薬は、GDF−8阻害物質である。ある実施形態において、検出試薬は、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体または標識化GDF−8蛋白質から選択される。さらなる実施形態において、検出試薬は、ヒトの免疫グロブリンを含む、免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合する抗体である。
【0022】
他の実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供され、前記方法は、(a)GDF−8蛋白質またはGDF−8蛋白質と特異的に結合する蛋白質から選択される捕捉物質を、反応容器の表面と接触させること;(b)生体試料を反応容器に加えること;(c)検出試薬を反応容器に加えること;および(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体を検出し、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。
【0023】
さらに、生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供され、前記方法は、(a)GDF−8受容体を、少なくとも第一および第二の反応容器と接触させること;(b)生体試料およびGDF−8蛋白質を、第一の反応容器に加えること;(c)対照試料およびGDF−8蛋白質を、第二の反応容器に加えること;(d)検出標識を、第一および第二の反応容器に加えること;および(e)第一の反応容器中の検出可能な標識信号を第二の反応容器中の信号と比較し、それにより生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。
【0024】
別の実施形態において、ヒト生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供される。この実施形態は、(a)生体試料を、GDF−8活性についての試験管内アッセイに加えること;(b)GDF−8活性のモジュレーションを検出すること;および(c)候補体からの試験生体試料の存在下でのGDF−8活性のモジュレーションを、対照生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションと比較し、それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質の存在を検出することを含む。
【0025】
好ましい実施形態において、(a)5:1より小さいビオチンのGDF−8二量体に対する平均の比を有する、ビオチン化された成熟GDF−8蛋白質の二量体を、反応容器の表面に接触させること;(b)生体試料を反応容器に加えること;(c)ヒト免疫グロブリンと特異的に結合する標識化抗体を、反応容器に加えること;および(d)反応容器の表面と会合したMYO−029/ビオチン化GDF−8蛋白質の複合体を検出し、それにより、生体試料中の外因性のMYO−029を検出することを含む、生体試料中のMYO−029を検出するための方法が記載される。
【0026】
本発明のさらなる対象および利点を、以下の詳細な説明部分に記載し、それにより幾分、本発明は明確になるであろう、または本発明の実地により理解することがでよう。本発明の対象および利点は、添付する請求の範囲に特に指摘される要素および組み合わせにより、理解され、達成することができよう。
【0027】
上記の要約おyび以下の詳しい記載は、特許請求する本発明を制限するものではない。
【0028】
(配列の簡単な説明)
GDF−8、MYO−029および関連するscFv断片、VおよびVドメイン、ならびに相補性決定領域(CDR)のDNAおよびアミノ酸(AA)配列を、配列表に記載し、表1に一覧として列挙する。
【表1】

【0029】
(詳しい記載)
本発明は、ヒトを含む動物においてGDF−8モジュレート物質を検出するための方法に関し、この方法は、少なくとも1つのGDF−8活性をモジュレーションすることによるいくつかの利益をもたらす。外因性のGDF−8モジュレート物質、例えば、GDF−8阻害物質の存在を検出する方法が、本明細書で提供される。特に、GDF−8阻害物質が投与されている、または投与された疑いのある個体からの生体試料中のGDF−8阻害物質の存在および/または量を評価する方法が提供される。
【0030】
GDF−8モジュレート物質が個体に投与された場合、GDF−8モジュレート物質を検出する方法は、生体試料中のその物質の存在および/または量を決定するのに有用である。この方法はまた、例えば、治療計画を評価するのに、試薬の投薬量を調整するのに、または試薬の薬物動力学または生物学的利用能を評価することを可能にし得る。
【0031】
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳しい説明を通じて記載する。
【0032】
用語「GDF−8」は、特異的な成長・分化因子−8を意味する。この用語は、全長で未処理のGDF−8である前駆体型、並びに翻訳後の切断により生じる成熟型およびプロペプチド型を示す。「不活性」と特に記載しない限り、「GDF−8蛋白質」は、1つまたはそれ以上のGDF−8の生物活性を保持する。この用語はまた、本明細書で論じられるように、改変された配列を含む、成熟GDF−8と関係する少なくとも1つの生物活性を保持するGDF−8の断片および変異型のすべてを意味する。成熟ヒトGDF−8のアミノ酸配列は、配列番号:1で示され、その前駆体の全長ヒトGDF−8配列は、配列番号:2で示される。本発明は、限定されるものではないが、ヒト、ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、七面鳥、ヒヒ、およびサカナを含む全ての脊椎動物種のGDF−8に関する(配列情報に関しては、例えば、McPherronら、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 94:12457-12461 (1997)を参照のこと)。
【0033】
用語「成熟GDF−8」は、GDF−8前駆蛋白質のカルボキシ−末端部分を意味する。条件に応じて、成熟GDF−8は、例えば、単量体、ホモ二量体および/またはGDF−8の潜在的な複合体として存在し得る。生物学的な活性型の成熟GDF−8は、「活性GDF−8」とも称される。この用語はまた、本明細書で論じられるように、成熟GDF−8と関係する少なくとも1つの生物活性を保持するGDF−8の断片および改変された配列を含む変異型のすべてを意味する。
【0034】
用語「GDF−8プロペプチド」は、GDF−8前駆蛋白質のアミノ−末端部分を意味する。このGDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8上のプロペプチド結合ドメインと結合し得る。GDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8ホモ二量体と複合体を形成する。2つのGDF−8プロペプチドが、ホモ二量体の成熟GDF−8の2分子と会合し、潜在的な複合体と称される、不活性な四量体の複合体を形成すると考えられる。この潜在的な複合体は、1つまたはそれ以上のGDF−8プロペプチドに換えて、または加えて他のGDF阻害物質を含んでいてもよい。
【0035】
用語「GDF−8活性」は、活性GDF−8蛋白質と関係する生理学上の成長調節活性または形態形成活性を意味する。例えば、活性GDF−8は、骨格筋量の負の調節因子である。活性GDF−8はまた、筋肉に特異的な酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生をモジュレートし、筋芽細胞増殖を刺激し、および前脂肪細胞の脂肪細胞への分化をモジュレートすることもできる。「GDF−8活性」には、「GDF−8結合活性」が含まる。例えば、成熟GDF−8は、GDF−8のプロペプチド部分と、ActRIIBと、GDF−8受容体と、アクチビンと、フォリスタチンと、フォリスタチンドメインを含有する蛋白質と、GASP−1と、および他の蛋白質と特異的に結合する。GDF−8阻害物質、例えば抗体もしくはその一部は、1つまたはそれ以上のその結合活性を低下させることができる。生体内および試験管内でGDF−8活性を測定するための例示的な手順を以下に記載する。
【0036】
用語「GDF−8モジュレート物質」には、GDF−8または医薬上許容されるその誘導体の活性、発現、プロセッシングまたは分泌をモジュレートし得るすべての物質が含まれる。1つまたはそれ以上のGDF−8活性を増大させる物質、および1つまたはそれ以上のGDF−8活性を低下させる物質は、この用語に包含される。用語「GDF−8阻害物質」には、GDF−8または医薬上許容されるその誘導体の活性、発現、プロセッシングまたは分泌に影響を及ぼすことができるすべての物質が含まれる。GDF−8阻害物質は、1つまたはそれ以上のGDF−8活性と関係する活性を低下させる。ある実施形態において、GDF−8阻害物質は、限定されるものではないが、受容体(例えば、ActRIIB)、フォリスタチン−ドメインを含有する蛋白質(例えば、フォリスタチン、FLRG、GASP−1、GASP−2)またはGDF−8プロペプチドおよびその変異体や誘導体などのGDF−8蛋白質を含む、1つまたはそれ以上のその生理学的な結合パートナーに対するGDF−8の結合に影響を及ぼし得る。そのようなGDF−8阻害物質には、例えば、GDF−8と特異的に結合する抗体(MYO−029、MYO−028、MYO−022、JA−16ならびにその断片および誘導体を含む)、GDF−8受容体と特異的に結合する抗体、モジュレートされた可溶性の受容体(受容体融合蛋白質、例えばActRIIB−Fc融合体を含む)、またはGDF−8と特異的に結合する他の蛋白質(例えば、GDF−8プロペプチド、GDF−8プロペプチドの変異体および誘導体、フォリスタチン、フォリスタチンドメインを含有する蛋白質、およびこれらの蛋白質のFc融合体)、GDF−8受容体と結合する蛋白質およびこれらの蛋白質のFc融合体、ならびに模倣体が含まれる。非蛋白質性阻害物質(例えば、核酸)もまた、用語GDF−8阻害物質に包含される。GDF−8阻害物質には、GDF−8を特異的に阻害する、蛋白質、抗体、ペプチド、ペプチド模倣体、リボザイム、抗−センスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、siRNA(例えば、RNAi)および他の小分子が含まれる。そのような阻害物質は、GDF−8の生物活性を「阻害」、「低下」または「中和」すると記載され、より詳しくは以下に記載される。
【0037】
GDF−8阻害物質は、少なくとも1つのGDF−8生物活性、例えば活性GDF−8蛋白質に関係する生理学的な、成長調節活性または形態形成活性を「阻害」、「中和」または「低下」させるであろう。例えば、GDF−8は、骨格筋成長の負の調節因子である。GDF−8阻害物質は、筋量を増加させ、筋力を増大させ、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)のレベルをモジュレートし、筋芽細胞の増殖を刺激し、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化をモジュレートし、脂肪の蓄積を減少させ、血清トリグリセリドレベルを低下させ、血清コレステロールレベルを低下させ、グルコース代謝をモジュレートし、および/または高血糖を減少させることができる。
【0038】
用語「阻害する」、「阻害」およびその同語源語は、GDF−8阻害物質が不在の場合のGDF−8活性に比べて、1つまたはそれ以上のGDF−8活性がGDF−8阻害物質により低下されることを示す。この活性の低下は、好ましくは少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上である。ある実施形態において、GDF−8の活性は、ここで開示される阻害物質の1つまたはそれ以上から影響を受けて、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%または88%、より好ましくは、少なくとも90%、92%、94%、96%、98%または99%、さらにより好ましくは、少なくとも95%から100%低下される。用語「中和する」、「中和」およびその同語源語は、少なくとも80%、85%、90%または95%までの1つまたはそれ以上のGDF−8活性を低下させることを意味する。GDF−8活性の阻害は、例えば、Thiesら、Growth Factors 18:251-259 (2001)において記載されるように、pGL3(CAGA)12レポーター遺伝子アッセイ(RGA)または以下で示されるActRIIB受容体アッセイにおいて測定することができる。
【0039】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、抗原結合部位を有するすべてのポリペプチド、例えば、免疫グロブリンもしくはその断片であり、供給源、生物種、精製方法および特徴に関わらず抗原結合部位を有するすべてのポリペプチドを包含する。非限定的な例として、用語「抗体」は、合成抗体、ヒト、オラウータン、サル、霊長類、マウス、ラット、ヤギ、イヌ、ヒツジおよびニワトリの抗体を含む。この用語には、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、多特異的抗体、非特異抗体、変異抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体、およびCDRグラフト抗体が含まれる。本発明の目的に関し、「抗体」はまた、特に記載しない限り(例えば、「完全な」という語を示した場合)、抗体断片が含まれる。抗体断片の例としては、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAbおよび抗原結合機能を保持する他の抗体断片が含まれる。典型的には、そのような断片は、抗原結合ドメインを含む。当業者には認められるように、そのような分子、例えば「ヒト」抗体はいずれも、その免疫原性を低下させ、その親和力を高め、その特異性を改変し、または他の目的のため作り出すことができる(例えば、生殖細胞系)。
【0040】
抗体は、例えば、従来のハイブリドーマ技術(Kohlerら、Nature 256:495-499 (1975))、組み換えDNA方法(米国特許第4,816,567号明細書)、または抗体ライブラリーを用いたファージディスプレイ技術(Clacksonら、Nature 352:624-628 (1991);Marksら、J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991))を介して作製することができる。他の様々な抗体産生技術については、Antibody Engineering(Borrebaeckら、Oxford University Press 1995)およびAntibodies:A Laboratory Manual(Harlowら、編、Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)を参照のこと。
【0041】
用語「抗原−結合ドメイン」は、抗原に特異的に結合する領域または抗原の一部もしくは全部に補完的な領域を含む、抗体分子の一部分を意味する。抗原が大きい場合、抗体は、その抗原の特定の部分とのみ結合することができる。「エピトープ」または「抗原決定基」は抗体の抗原結合ドメインとの特異的な相互作用に関係する抗原分子の一部である。抗原結合ドメインは、1つまたはそれ以上の抗体の可変領域により提供され得る(例えば、Vドメインを含むFd抗体断片)。ある実施形態において、抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(V)および抗体の重鎖可変領域(V)を含む(米国特許第5,565,332号明細書)。
【0042】
用語「特異的な結合」、「特異的に結合する」またはその類似語は、2つまたはそれ以上の分子が、生理学的な条件もしくはアッセイ条件下で測定でき、そして選択的な複合体を形成することを意味する。抗体または他の阻害物質は、結合が実質的に阻害されず、一方で非特異的な結合が阻害されるような適当な選択条件下にある場合、ある蛋白質に「特異的に結合する」ことを示す。特異的な結合は、比較的高い親和力により特徴付けられ、化合物または蛋白質に選択的であり得る。非特異的な結合は、通常、低い親和力である。典型的に、結合は、その親和性定数Kaが少なくとも約10−1、または好ましくは少なくとも約10、10、10または1010−1である場合、特異的と考えられる。特定の方法は、特異的な結合のために高親和力を要求するが、他の方法、例えば表面プラズモン共鳴アッセイは、安定な複合体とならない、低親和力相互作用も検出することができる。必要に応じて、非特異的な結合は、結合条件を変えることにより、特異的な結合に実質的に影響を及ぼすことなく低下させることができる。そのよな条件は、当業者に周知であり、当業者は慣用技術を用い、適当な条件を選び出すことができる。通常、その条件は、結合パートナーの濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、無関係の分子(例えば、浄化剤、界面活性剤、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して定められる。例示的な結合条件を以下に記載する。
【0043】
用語「単離された」は、その天然の環境から実質的に切り離された分子を意味する。例えば、単離された蛋白質は、細胞物質または誘導された細胞もしくは組織供給源に由来する他の蛋白質を実質的に含まない。この用語は、単離された蛋白質が、治療組成物として投与されるのに十分に純粋、または少なくとも70%〜80%(w/w)純粋、より好ましくは少なくとも80%〜90%(w/w)純粋、さらにより好ましくは90−95%純粋;そして、最も好ましくは,少なくとも95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%(w/w)純粋な調製物を意味する。
【0044】
用語「個体」は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類または魚類を含む、すべての脊椎動物を意味する。用語、哺乳類には、ヒト、ヒト以外の霊長類、サル、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシなどを含む、雄もしくは雌のように分類されるすべての動物が含まれる。哺乳類以外の動物の例としては、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、サカナ、サケ、ナマズ、バス、カエルおよびマスが挙げられる。個体は、ヒト、運動選手または家畜化動物、牧畜、動物園の動物、スポーツ用の動物、レース用の動物もしくはペット動物から選択されてよい。
【0045】
用語「有効な用量」または「有効量」は、GDF−8に関係する障害に罹患した個体を含む個体の臨床症状を緩和するのに十分な、または所望の生物学的な結果(例えば、筋量、筋力および/または骨密度の増大)を達成するのに十分な投薬量または投薬レベルを意味する。そのような量は、例えば、骨格筋量および骨密度の負の調節に関係するGDF−8の活性を低下させるのに十分であるべきである。治療結果および臨床症状には、体脂肪の減少、筋量の増加、改善された心臓血管指標、または改善されたグルコース代謝調節が含まれ得る。GDF−8阻害物質は、例えば、筋量を増加させ、筋力を増大させ、体重を増加させ、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)のレベルをモジュレートし、および/または筋芽細胞の増殖を刺激することができる。好ましい実施形態において、GDF−8阻害物質は、GDF−8に関係する障害の臨床所見を軽減する。GDF−8モジュレート物質は、例えば、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化に影響を及ぼし、脂肪の蓄積もしくは体脂肪含有量を減少させ、血清トリグリセリドレベルを低下させ、血清コレステロールレベルを低下させ、グルコース代謝をモジュレートし、骨密度をモジュレートし、個体における筋肉の脂肪に対する割合を変化させ、および/または高血糖を低下させることができる。GDF−8阻害物質はまた、筋量を増加させるために、運動能力を向上させるために、または筋肉の成長を含め、成長を増進もしくは加速させるために、個体に投与することができる。その有効な量は、次の章で記載されるように決定され得る。GDF−8阻害物質の「治療上有効な量」は、個体に単回または複数回の用量投与で、障害または再発性障害を処置する、予防する、治癒する、遅延する、その重篤度を軽減する、または少なくとも1つの症状を改善する、あるいは、その処置を行わない場合に期待される対象の生存を越えて、その生存を延長するのに有効な量を意味する。
【0046】
「GDF−8に関係する障害」は、対象がGDF−8モジュレート、例えばGDF−8阻害物質の投与により利益を得るであろう障害または状態である。GDF−8に関係する障害には、内科的疾患、例えば、筋肉に関係する障害、神経筋障害、脂肪組織障害、代謝性障害または骨に関係する障害が含まれる。
【0047】
GDF−8阻害物質の投与は、その阻害物質が症状のもしくは障害の改善および/または予防を含み、障害を処置するために個体に投与される場合に、「治療的」であり得る。治療上の使用には、内科的疾患を有する個体、または最終的に障害に罹患し得る個体に対して、障害または再発性障害を処置し、予防し、治癒し、遅延し、その重篤度を軽減し、または少なくとも1つの症状を改善する、あるいは、その処置を行わない場合に期待される対象の生存を越えて、その生存を延長するために、GDF−8阻害物質を投与することを含む。GDF−8阻害物質はまた、筋量を増加させ、運動能力を改善させ、または筋成長を含む成長を増進もしくは促進するために、個体に投与できる。GDF−8に関係する内科的疾患の存在または危険性がない場合に、個体にGDF−8阻害物質を投与することに関し、前記能力を向上させる方法は、本明細書で定義されるように、一般に「治療ではない」と考えられる。
【0048】
「生体試料」は、個体から集められた生物学的物質、例えば、細胞、組織、器官、体液および他の臨床材料および試料である。例示的な生体試料には、血清、血液および血漿が挙げられる。
【0049】
用語「反応容器」は、GDF−8モジュレート物質と抗体との間の結合が生じ、検出され得る容器を意味する。「表面」は、いずれかの固体(例えば、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、硫酸デキストラン、または処理されたポリプロピレン)の外側であり、そこに、GDF−8モジュレート物質が直接的にもしくは間接的に「接触」、「固定化」または「被覆」され得る。「反応容器の表面」は、その容器自体の一部であってもよいし、または該表面は反応容器中にあってもよい。例えばポリスチレンなどの表面は、化学処理もしくは放射線処理して、その表面の結合特性を変化させることができる。低結合、媒体結合、高結合、アミン化、および活性化表面は、この用語に含まれる。GDF−8モジュレート物質は、例えば、その表面に物理的な吸着もしくは共有結合により、表面を直接被覆させることができるし、あるいは、例えば、表面に直接被覆された基質もしくはその一部との相互作用を通じて間接的に被覆させてもよい。
【0050】
本明細書で用いられる用語「捕捉物質」は、免疫学的検定に用いられ、標的蛋白質、例えばGDF−8モジュレート物質またはGDF−8自体と特異的に結合する蛋白質などの分子を意味する。本方法に適切な捕捉剤は、GDF−8モジュレート物質および/またはGDF−8蛋白質と特異的に結合する。例えば、捕捉物質は、成熟GDF−8二量体を含むGDF−8蛋白質、またはGDF−8蛋白質と特異的に結合する蛋白質であってよい。同様に、捕捉物質は、GDF−8モジュレート物質またはGDF−8モジュレート物質と特異的に結合する蛋白質であってよい。
【0051】
「検出試薬」は、GDF−8モジュレート物質または複合体の検出を可能にする蛋白質または小分子である。好ましい実施形態において、検出試薬は、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する。検出試薬は、検出可能な標識を含んでいてもよい。検出試薬はまた、それ自体が検出可能な標識を含む物質により検出される。本明細書で提供される方法により検出されるGDF−8モジュレート物質は、例えば、他のGDF−8モジュレート物質を検出する方法に用いることもできる。
【0052】
用語「標識」は、その化学的性質により、分子の相互作用の検出を可能にする検出できる識別可能な信号を発する分子を意味する。抗体を含む蛋白質が、直接的に(例えば、発色団、蛍光団、または放射性同位体の手段により)または間接的に(例えば、発色、ルミネセンスまたは蛍光発光を生じさせる反応を触媒する手段により)検出できる分子と共有結合によりもしくは非共有結合により結合されている場合、該蛋白質は検出可能な標識を有する。
【0053】
1つまたはそれ以上のGDF−8活性をモジュレートすることができる、生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出する方法が、本明細書に記載される。具体的には、生体試料中のGDF-8阻害物質を検出する方法が提供される。GDF−8に関係する障害に罹患しているまたは発症する危険性のある個体の生体試料中の、またはそれを潜在的に乱用している健康な個体の試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の検出を包含する方法を提供される。本明細書で提供される技術はまた、例えば、GDF−8に関係する障害を診断するため、特定の内因性のGDF−8モジュレート物質を検出すること、または定量することもできる。
【0054】
これらの方法は、特に、複雑な生体試料、例えば血清、血液または血漿中の低レベルのGDF−8モジュレート物質を検出することに適している。本方法は、種々のGDF−8モジュレート物質を検出するために用いてもよいし、また例えば非−症候性の、症候性の、または健康な個体に用いてもよい。
【0055】
外因性のGDF−8モジュレート物質
本明細書で提供されるGDF−8モジュレート物質は、GDF−8または医薬上許容されるその誘導体の活性、発現、プロセッシングまたは分泌をモジュレートすることができる。GDF−8モジュレート物質は、1つまたはそれ以上のGDF−8活性を増大もしくは低下させることができる。1つまたはそれ以上のGDF−8活性を低下させる物質は、GDF−8阻害物質である。GDF−8阻害物質が、筋量を増加させるために、および筋肉に関連する障害もしくは状態を処置するために投与されるが、GDF−8阻害物質を含むGDF−8モジュレーターは、例えば、脂肪細胞障害、グルコース代謝に関連する障害、または骨疾患を処置するのに用いることができる。天然の成熟GDF−8二量体が、本明細書で記載されるように、GDF−8モジュレート物質の定義には含まれない。しかしながら、天然GDF−8の改変型、およびGDF−8活性をモジュレートするGDF−8の変異型およびモジュレート型は、用語GDF−8モジュレート物質の意味に含まれる。この応用例には、ミオスタチン(GDF−8)の検出は含まれない。
【0056】
GDF−8モジュレート物質の生物学的誘導体、例えば、物質を個体に投与した後の生体試料中に存在する物質のモディファイ型は、この用語に包含される。ある実施形態において、GDF−8モジュレート物質を検出する方法は、GDF−8モジュレート物質の1つまたはそれ以上の生物学的な誘導体、代謝産物、または代謝生成物の存在を評価することにより、生体試料中のGDF−8モジュレート物質の存在を検出する方法を含む。
【0057】
GDF−8モジュレート物質が、生体試料または生物学的物質を得る生体の外部から導入され、産生される場合、GDF−8モジュレート物質は「外因性」である。外因性のGDF−8モジュレート物質は、例えば、個体に該物質を投与することにより、個体に直接導入してもよいし、または生体に間接的に導入してもよい。外因性のGDF−8モジュレート物質は、例えばそれが前駆体型で投与された場合、またはそれが動物もしくはその祖先に導入されたDNAまたはRNAから、その生体内で合成された蛋白質である場合、間接的に生体に導入される。
【0058】
外因性のGDF−8モジュレート物質は、本明細書で開示される方法および当分野で既知の方法に従って、内因性の因子に存在しないGDF−8物質の特徴を巧みに利用する方法により、内因性のGDF−8モジュレート物質と区別できる。例えば、GDF−8モジュレート物質は、その構造、親和力または活性により同定することができる。例えば、MYO−029、MYO−028、MYO−022、JA−16およびGDF−8蛋白質と特異的に結合する他のモノクローナル抗体は、特定のアミノ酸配列を含み、GDF−8の区別可能なエピトープを1つまたはそれ以上の認識する。これらの物質は、GDF−8モジュレート物質により特異的に結合される標識化ペプチドエピトープ、例えばビオチン化ペプチドの添加により同定することができる。例えば、MYO−029に対するペプチドエピトープは、米国特許公報第2004/0142382 A1号に開示されており、本明細書で提供される方法により検出される外因性のMYO−029物質を同定するのに用いることができる。同様に、JA−16のペプチドエピトープは、米国特許公報第2003/0138422 A1号に記載されている。抗−イディオタイプ抗体は、例えば、外因性の抗体物質を区別するために用いることもできる。また、外因性のGDF−8モジュレート物質に特異的な抗体は、周知の免疫感作またはファージディスプレイ技術により作製することができる。MYO−029特異抗体は、本明細書で提供され、例えば実施例5において、これを作製する方法が示される。
【0059】
さらに、外因で投与される物質は、蛍光分析(例えば、米国特許第6,680,207号明細書を参照のこと)を用いることで、その天然の対応物質から区別できる。加えて、外因性のGDF−8モジュレート物質は、米国特許第6,573,055号明細書に記載の方法により、例えば、元の細胞型に基づく糖付加パターンの違いを認識して、内因性の因子から区別できる。組み換え技術により産生される生物学的産物、例えば、抗体治療蛋白質(MYO−029、MYO−028、MYO−022またはJA−16を含む)または他の糖付加蛋白質は、蛋白質が産生される細胞系または培養条件に応じて、炭化水素側鎖、糖鎖構造または糖ペプチドを含むであろう。また、外因性のGDF−8モジュレート物質の際立った特徴の検出を可能にするモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ペプチド、ヌクレオチドまたは他の物質は、外因性の物質を同定するのに用い得る。
【0060】
GDF−8モジュレート物質は、有効量の試薬の投与を含む試薬の投与後に、本発明の方法により検出される。試薬は、疾病症状の重篤度および進行に応じて、約2.5mg/kgを含み、約50ng/kg〜約20mg/kgの投薬量で投与されてよく、200mg/kgであってもよい。医師は、GDF−8蛋白質の活性を低下させ、所望の生物学的結果を達成するのに、例えば骨格筋量を増加させるのに、力を増大させるのに、またはGDF−8に関連する疾病の1つまたはそれ以上の症状を軽減させるのに十分な投薬量を選択しよう。一般に、治療上の有効量は、対象の年齢、体重、身体状態および性別、ならびに対象の病状の重篤度に応じて変更し得る。投薬量は、医師により決定されるであろうし、また細胞培養もしくは実験動物の標準的な医薬手順を用いた毒性分析および治療効果分析(例えば、LD50、ED50、治療指標)により決定されてもよく、処置の観察効果を適切なものとするため、必要に応じて調整され得る。適当な有効用量は、次の例示的な範囲:約50ng/kg〜約20mg/kg、約2.5mg/kg〜約50mg/kg、約1μg/kg〜約20mg/kg、約1μg/kg〜約10mg/kg、約1μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約1mg/kg、約10μg/kg〜約100μg/kg、約100μg/kg〜約1mg/kgおよび約500μg/kg〜約5mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kgまたは約5mg/kg〜約200mg/kgから、処置する臨床医により選択される。単回投与を用いてもよいし、または投薬は、連続的、周期的または断続的であってよい。投薬は、例えば、毎日、週二回、毎週、隔週、毎月または隔月の間隔で与えられてよい。検出されるべきGDF−8モジュレート物質は、例えば局所、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、膣内、皮下または経皮手段を介して投与される。
【0061】
種々のGDF−8モジュレート物質、例えばGDF−8阻害物質は、GDF−8モジュレート物質を検出する本発明の方法に用いることができるため、既知のGDF−8阻害物質は、特許請求する方法の記載の後に、さらに詳しく記載される。さらに、当業者には認められるように、GDF−8モジュレート物質を検出するために用いられる検出試薬は、その試薬の構造によって変更される。従って、GDF−8阻害物質を含む、既知のGDF−8モジュレート物質を検出するためのさらなる方法が提供され、また、その詳しい記載から明らかになろう。
【0062】
本発明は、GDF−8モジュレート物質の存在を検出するための方法、より具体的には、個体の生体試料中のGDF−8阻害物質を含むGDF−8モジュレート物質のレベルを定量する方法に関する。本方法は、GDF−8モジュレート物質を用いた治療の経過を評価することに、試薬の薬物動力学または生物学的利用能を評価することに、個体の生体試料中の試薬レベルを測定することに、および/またはGDF−8活性をモジュレートする試薬の個体への投与を検出することに特に適している。1つの実施形態において、本方法は、生体試料中のMYO−029、GDF−8と特異的に結合する中和抗体の存在を検出する。
【0063】
候補体の認定
GDF−8に関係する障害に関して、GDF−8モジュレート物質を用いた処置を受けている個体は、その個体の生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するために本明細書中で提供される方法の候補体である。さらに、GDF−8に関係する障害に罹患した個体、またはGDF−8に関係する障害または筋肉関連障害を発症する危険性のある個体は、本明細書で提供される方法の候補体であり得る。
【0064】
ある実施形態において、例えば有効量でGDF−8モジュレート物質を受けていると認定された個体は、本明細書に記載の方法の候補体であろう。GDF−8モジュレート物質を用いた治療を受けている個体は、治療期間中にGDF−8モジュレート物質のレベルが変化し、それにより、治療の効果に不利な影響を被り得る。さらに、GDF−8モジュレート物質の投与に関係する薬物クリアランスまたは生物学的利用能における個体差を検出し、制御することが望ましい場合があり得るため、GDF−8モジュレート物質を用いたGDF−8に関係する障害の処置の前に、GDF−8モジュレート物質投与について適切な候補体が、本明細書で提供される方法を用いて認定される。
【0065】
筋肉関連障害を有する、または発症する危険性のある個体は、本明細書で提供される方法についての候補体である。GDF−8活性の阻害は、筋肉関連障害に罹患した個体を含む個体において筋組織を増大させる。多くの障害、例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮症、器官萎縮症(organ atrophy)、虚弱症、鬱血性閉塞性肺疾患、心不全、骨格筋減少症、悪液質、および他の疾病および病状により生じる筋肉の疲労症候群は、機能的に損なわれた筋組織に関係している。
【0066】
筋肉関連障害には、例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、骨格筋減少症、悪液質、筋肉の疲労、筋萎縮症、または疲労、萎縮または衰弱を含む筋肉変性が含まれる。筋ジストロフィーには、例えば、偽肥大性肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型肢帯筋ジストロフィーおよび肢帯型筋ジストロフィーが含まれる。例示的な筋ジストロフィーには、デュシェンヌ型の筋ジストロフィー(Leyden-Mobius)、ベッカー型筋ジストロフィー、エメリ・ドレフェス(Emery Dreifuss)型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、強直性脊椎症候群、ウールリッヒ型症候群、福山型筋ジストロフィー、ウォーカー・ワークブルグ症候群、筋・眼・脳病、顔面肩甲上腕型(Landouzy-Dejerine型)筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、筋硬直性ジストロフィー(スタイナート病)、先天性筋緊張症、およびガウアーズ病が挙げられる。例えば、心臓血管疾患、器官萎縮症、臓器不全、癌、後天性免疫不全症候群(AIDS)、床上安静、不動化、長期にわたる不使用、または他の疾病など、他の疾病もしくは病状と関係するまたは派生的な筋肉変性もまた、この用語に含まれる。
【0067】
心血管障害と関係する筋肉喪失または筋肉疲労を有する個体もまた、本明細書で提供される方法の候補体である。心血管障害の例には、冠状動脈疾患(アテローム性動脈硬化症)、アンギナ(急性アンギナおよび不安定狭心症を含む)、心臓発作、卒中(虚血性卒中を含む)、高血圧に関係する心臓血管疾患、心不全、鬱血性心不全、冠状動脈疾患、高血圧、高脂血症、末梢動脈疾患および末梢血管疾患もまた挙げられる。インスリン代謝障害の例には、異常なグルコース恒常性、2型糖尿病、前糖尿病、耐糖能異常、脂質異常症、メタボリック症候群(例えば、X症候群)および外傷、例えば火傷または窒素平衡失調症(nitrogen imbalance)により誘発されるインスリン抵抗性が挙げられる。
【0068】
脂肪組織、メタボリックもしくは骨に関係する障害または状態に罹患している、またはその危険性のある個体は、特許請求する方法の候補体でもある。前記障害または状態は、異常なグルコース恒常性に関係するもの、例えば、2 糖尿病の発症、耐糖能異常、メタボリック症候群(例えば、X症候群)、例えば火傷または窒素平衡失調症により誘発されるインスリン抵抗性、および脂肪組織障害(例えば、肥満症)が挙げられる (Kimら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 281:902-906 (2001))。例えば、GDF−8は、脂肪細胞(Id)への前脂肪細胞の分化をモジュレートし、間葉前駆細胞および前脂肪細胞からの脂肪細胞形成を阻害する(Rebbapragadaら、Mol. Cell Bio. 23:7230-7242 (2003))。脂肪の蓄積は、GDF−8ノックアウトマウスおよびGDF−8蛋白質を全身投与された野生型の生体マウスの両方で減少した(McPherronら、J. Clinical Invest. 109:595-601 (2002);Zimmersら、Science 296:1486-1488 (2002))。骨量の減少と関係する障害または状態には、骨粗鬆症および骨減少症が含まれ、特に、早期および/または閉経後の女性において、グルココルチコイド−誘導骨粗鬆症、骨減少症、骨関節症、および骨粗鬆症に関係する骨折が含まれる。加えて、低い骨量により特徴付けられるメタボリック性の骨疾患および障害には、例えば、慢性的なグルココルチコイド治療、早産児性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、二次性副甲状腺機能亢進病、栄養欠乏症、および神経性無食欲症が含まれる。
【0069】
さらに、筋量の増大、例えば、筋肉細胞サイズの増大(肥大)または筋肉細胞数の増加(過形成)を示す個体は、GDF−8モジュレート物質を検出する方法の候補体であろう。この増大は、哺乳動物または他の動物の1型および/または2型の筋肉繊維であり得る。筋量の増大を測定する方法は、当分野で周知である。例えば、筋肉は、GDF−8モジュレート物質の投与前後に、標準技術、例えば水中での計量を用いて測定できる。筋サイズの増大は、重量増加の少なくとも約5%、10%、20%またはそれ以上で明らかにされ得る。例えば、磁気共鳴影像法(MRI)または二重エネルギーX線吸収(DEXA)技術を含む、他の非侵襲技術を用いてもよい。プロのスポーツ選手を含む運動選手は、本方法の候補体である。
【0070】
運動能力の向上を理由に、GDF−8モジュレート物質、例えば、MYO−029を摂取している、または摂取した疑いのある個体は、本方法の候補体である。他の実施形態において、例えば、ウシまたは他の家畜動物などの個体は、その動物の生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の投与を検出することが望ましい場合、本明細書で提供される方法の候補体である。例えば、外因性の試薬は、成長または筋組織量を増大させるため(または、肉の脂肪含有量を下げるため)家畜動物に投与され得る。
【0071】
第一の実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する方法が提供され、前記方法は、個体からの試験生体試料を、GDF−8活性についての試験管内アッセイに加え、GDF−8活性のモジュレーションを検出し、そして試験生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションを、対照生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションと比較して、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の存在を検出することを含む。ある実施形態において、本方法は、生体試料中のGDF−8モジュレート物質のレベルを、それぞれ既知濃度のGDF−8モジュレート物質を含む複数の対照試料と比較することにより定量することをさらに含む。
【0072】
ある実施形態において、試験管内アッセイは、活性なGDF−8蛋白質と関係する1つまたはそれ以上の生理学的な成長調節活性または形態形成活性を測定する。GDF−8活性のモジュレーションを検出するための試験管内アッセイは、当分野で周知であり、細胞に基づくアッセイもしくは無細胞アッセイ(例えば、転写、複製または細胞周期停止を測定するアッセイ)、または結合アッセイ(例えば、免疫学的検定、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降、または放射免疫アッセイ)から選択され得る。例えば、活性なGDF−8は、骨格筋量の負の調節因子であり、筋肉に特異的な酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生をモジュレートし、筋芽細胞増殖を刺激し、および前脂肪細胞の脂肪細胞への分化をモジュレートする。幾つかの方法において、BMP−11モジュレート物質からGDF−8モジュレート物質の選択が行われる。GDF−8活性についての細胞に基づくアッセイおよび無細胞アッセイは、当分野で既知であり、以下に記載される。
【0073】
生体試料、例えば試験生体試料は、少なくとも1体の個体からの生物学的な物質を含む。好ましい実施形態において、個体は、GDF−8モジュレート物質を用いた治療を受ける。他の好ましい実施形態において、個体は、GDF−8モジュレート物質投与の候補体である。さらなる実施形態において、個体は、哺乳類、鳥類、爬虫類または魚類である。特定の実施形態において、生体試料は、血清、血液、血漿、生検標本、組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、ミルク、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液または粘液から選択される。好ましい実施形態において、生体試料は液体でる。幾つかの好ましい実施形態において、生体試料は、血液、血清または血漿から選択される。特定の実施形態において、生体試料は、血清、例えばヒト、霊長類、サル、ラット、またはマウスの血清である。
【0074】
他の実施形態において、生体試料は、個体または個体群から単離され、試験に先立って選択的に試験されてもよい。例えば、生体試料は、集められて、または適切な希釈剤で希釈された後に用いてもよい。希釈は、アッセイに関するマトリックス干渉を低下および/またはなくすために最適化される。希釈剤は、特に制限されるものではないが、血清を含んでいてもよく、例えばヒト血清、脱イオン水、または約pH5〜約pH9、好ましくは約pH6.5〜約pH8.5の範囲で緩衝作用を有する様々な緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液またはホウ酸緩衝液)が挙げられる。幾つかの好ましい実施形態において、希釈剤は、正常なヒト血清を含む。希釈剤は、例えば、試験生体試料の増加する希釈液のマトリックス効果による変動を軽減するため、一定の濃度の対照生体試料を含んでいてもよい。
【0075】
希釈緩衝液は、試験生体試料に対応させるため、例えば、試料マトリクスのバックグラウンド効果または干渉を調節するため選択された対照生体試料を一定量含んでいてもよい。1つの実施形態において、ヒト血清の試験試料は、THST緩衝液(300μL/ウェル)(1.0mM グリシン、0.5M NaClおよび0.05%v/v/Tween20(登録商標)(J.T. Baker)を含む50mM トリス−HCl、pH8.0)中で1:8倍に希釈され、8倍を超える試験試料の希釈液は、12.5%のヒト血清を含むTHSTで調製される。また、試料は、約2、4、8、16、32、64もしくは128倍、またはそれ以上希釈されてよい。他の実施形態において、試験試料は、1:1.5または1:1.6で連続希釈され、希釈の直線性およびマトリクス効果の検証を可能にするデータ点の範囲を得る。好ましい生体試料マトリクスについて、希釈は、マトリクス干渉およびアッセイ感受性が最適となる条件が選択され得る。
【0076】
幾つかの実施形態において、試料は、周知の方法を用いて分画され、濃縮されてもよく、次に、本明細書で提供されるGDF−8モジュレート物質を検出するための方法に加えられる。分画(精製を含む)または濃縮は、マトリクス干渉がアッセイにおいてGDF−8モジュレート物質の検出を制限する場合に用い得る。分画および濃縮技術は、制限されるものではないが、遠心分離法、硫酸アンモニウム沈殿法、ポリエチレングリコール沈殿法、トリクロロ酢酸(TCA)沈殿法、親和性技術(例えば、特異的な結合パートナー、例えば抗体、すなわち、例えば、抗−ヒトFc抗体、プロテインAまたはプロテインGと結合された樹脂を用いた免疫沈澱法)、クロマトグラフィー技術、および他の分離技術が含まれる。好ましい実施形態において、生体試料は、GDF−8モジュレート物質の検出前には分画され、濃縮されない。
【0077】
生体試料はまた、天然の個体から集められてもよく、またはGDF−8モジュレート物質の投与前、その間、もしくはその後に採取してもよい。例えば、試料は、GDF−8モジュレート物質の投与後1日、2日、4日、6日、8日、10日、12日、15日、20日、25日、30日またはそれ以降の日に個体から得てもよい。試料はまた、GDF−8モジュレート物質の投与後、1週、2週、3週、4週、6週、8週、10週、12週、16週またはそれ以降の週に得てもよい。試料採取の時期は、GDF−8モジュレート物質の検出を高めるため、または物質の改変された生物学的利用能を検出するため、最適化され得る。
【0078】
本明細書で提供される方法により検出されるGDF−8モジュレート物質は、GDF−8蛋白質と特異的に結合する抗体であってよく、好ましい実施形態において、GDF−8モジュレート物質は、MYO−029である。ある実施形態において、検出されるGDF−8モジュレート物質は:抗体、GDF−8と特異的に結合する抗体;GDF−8結合パートナーGDF−8受容体、ActRIIB蛋白質、フォリスタチンドメインを含有する蛋白質、フォリスタチン蛋白質、GASP−1蛋白質、GDF−8蛋白質、GDF−8プロペプチド、非−蛋白質阻害物質、および小分子から選択される(さらなる詳細は以上に記載される)。
【0079】
当業者には容易に認められるように、GDF−8モジュレート物質は、試験管内アッセイに基づいて選択された検出試薬および検出されたGDF−8モジュレート物質を用いて検出することができる(以下を参照のこと)。試験管内アッセイがレポーター遺伝子アッセイである場合、検出試薬は、好ましくはレポーター遺伝子産物、例えば酵素またはエピトープタグなどの標識を含む蛋白質である。適切な酵素には、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼ、ブドウ糖酸化酵素(β−ガラクトシダーゼ)、および、例えば発色、ルミネセンスまたは蛍光発光を生成する反応を触媒することができる他の蛋白質が含まれる。試験管内アッセイが、結合アッセイ、例えば、酵素免疫測定吸着法(ELISA)である場合、検出試薬は、捕捉蛋白質と本明細書で提供される方法により検出されるGDF−8モジュレート物質を含む複合体中の捕捉蛋白質とを区別して会合するであろう。検出試薬は、蛋白質であってよく、例えば、GDF−8モジュレート物質と、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体:捕捉蛋白質の複合体であってよい。別には、検出試薬は、GDF−8モジュレート物質の捕捉蛋白質に対する結合に影響を与える蛋白質であってよい。
【0080】
レポーター遺伝子アッセイ
ある態様において、試験管内アッセイは、レポーター遺伝子アッセイ(RGA)である(Thiesら、Growth Factors 18:251-259 (2001)を参照のこと)。ある実施形態において、RGAは、(a)GDF−8−応答調節因子およびレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物を有する宿主細胞を、反応容器に供すること;(b)生体試料を反応容器に加えること;および(c)生体試料の存在下および不在下で、細胞内でレポーター遺伝子の発現を検出し、それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。ある実施形態において、本方法は、レポーター遺伝子の存在下で発色、ルミネセンスまたは蛍光が変化する基質を加える工程をさらに含む。
【0081】
宿主細胞は、真核細胞、例えば、ヒト、哺乳類または他の動物由来の細胞であってよい。好ましい実施形態において、宿主細胞は、真核細胞系、哺乳類の細胞系、または横紋筋肉腫を含む癌細胞系などの細胞系である。レポーター遺伝子構築物は、トランスフェクション、電気穿孔法などを含む当分野で既知の手段により、一過性にもしくは安定に宿主細胞に導入されてよい。レポーター遺伝子構築物は、調節エレメントと作動可能に組み合わされた、GDF−8応答調節因子(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列)およびレポーター遺伝子を含む(例えば、米国特許公報第2003/0138422号およびそこに記載される文献を参照のこと)。
【0082】
例えば、GDF−8の活性を明らかにするため、ルシフェラーゼを発現するレポーターベクターpGL3(CAGA)12を用いた、レポーター遺伝子アッセイが開発された。このアッセイに加えられるGDF−8蛋白質の量は、レポーター構築物の最大活性の40%、50%、60%、70%、80%または90%を生じるのに十分な量が選択される。例えば、GDF−8蛋白質は、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150または200ng/mLで加えられる。一定量のGDF−8蛋白質を用いて、GDF−8モジュレート物質を滴定し、GDF−8活性のモジュレーションの対照となる滴定を調製する。例えば、MYO−029などのGDF−8モジュレート物質は、例えば0.05、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500または1,000ng/mLから選択される濃度で試験できる。好ましい実施形態において、GDF−8モジュレート物質滴定は、このアッセイの直線性のある阻害範囲に及ぶ。
【0083】
その後、細胞を、10ng/mLのGDF−8で処理する、もしくは処理しない、また、グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリンおよび1mg/mLのウシ血清アルブミンを含むMcCoyの5A培地中の試験生体試料で、37℃で6時間処理する、もしくは処理しない。ある実施形態において、既知のGDF−8モジュレート物質対象は、約10pM〜50μMの濃度を用いて平行して行われる。例示的な濃度には、10pM、50pM、100pM、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、1μM、5μM、10μMおよび50μMのGDF−8モジュレート物質が含まれる。好ましい実施形態において、試験試料中のGDF−8モジュレート物質の量は、既知量の試薬を用いた対象摘定と比較され、それにより定量される。レポーター遺伝子蛋白質、例えば基質の比色性分子、蛍光性分子またはルミネセンス分子への変換を触媒する酵素は、周知技術を用いて標的細胞中で定量され得る。
【0084】
結合アッセイ
ある実施形態において、試験管内アッセイは、GDF−8結合活性を測定する。試験管内アッセイは、GDF−8蛋白質と結合するGDF−8モジュレート物質、またはGDF−8結合パートナーと結合する物質、例えば、GDF−8と特異的に結合する蛋白質を検出することができる。例えば、成熟GDF−8は、GDF−8のプロペプチド領域と、ActRIIBと、GDF−8受容体と、フォリスタチンと、フォリスタチンドメインを含有する蛋白質と、GASP−1と、および他の蛋白質と特異的に結合する。特定の実施形態において、GDF−8モジュレート物質、例えば、抗体またはその一部は、1つまたはそれ以上のこれらの結合活性を減少させ、この結合における効果を検出する。ある実施形態において、例えば、GDF−8モジュレート物質のGDF−8蛋白質に対する特異的な結合が検出される。幾つかの実施形態において、試験管内結合アッセイのための捕捉蛋白質は、GDF−8蛋白質、またはGDF−8と特異的に結合する蛋白質から選択される。ある実施形態において、GDF−8モジュレート物質の捕捉蛋白質に対する結合は、ELISAで測定される。幾つかの実施形態において、捕捉蛋白質の第二の蛋白質(例えば、GDF−8)に対する結合は、試験生体試料の存在下または不在下で測定される。結合は、検出試薬を用いて観察することができる。ある好ましい実施形態において、検出は、表面プラズモン共鳴技術を含み、例えば、表面プラズモン分光法(SPS)を用いた表面プラズモン蛍光分光法(SPFS)を含んでいてよい。SPS反射能に加えて、標識化分子、例えば、蛍光標識化検出試薬の蛍光強度を検出することで、SPS検出に関係する特定の実施形態で、その感度は改善される。標準的なSPS手順もまた含まれる。幾つかの実施形態において、直接結合アッセイ形式、ブリッジ形式(GDF−8モジュレート物質が、固相のGDF−8および例えば液相のビオチン化GDF−8を同時に結合する場合)または競合形式のアッセイを含むELISAが、行われる。
【0085】
結合アッセイにおいて、検出試薬は、例えば、外因性のGDF−8モジュレート物質を認識して結合するであろうし、また、単独で用いてもよいし、あるいは、例えばGDF−8の阻害物質を検出するために利用され得る特定の用量応答信号を生成する他の試薬と組み合わせて用いてもよい。ある実施形態において、GDF−8モジュレート物質を検出するために用いられる検出試薬は、特定のGDF−8モジュレート物質またはGDF−8モジュレート物質の基に対して特異的である。例えば、好ましい実施形態において、ヒト免疫グロブリン配列と特異的に結合する抗体は、ヒト抗体に基づくGDF−8モジュレート物質、MYO−029を検出するために用いられる。
【0086】
特定の実施例において(例えば、実施例1を参照のこと)、好ましい検出試薬は、マウスの抗−IgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体であるが;しかしながら、一般的にヒトIgG、もしくはラムダ軽鎖を有するヒトIgG1、または特異的にMYO−029のアイソタイプまたはアロタイプを認識し、結合することができるいずれの試薬も、MYO−029の検出を基礎として使用し得る。
【0087】
他の実施形態において、例えば、試験管内アッセイが、競合結合を測定する場合(例えば、競合ELISA)、検出試薬は、ビオチン化成熟GDF−8二量体を含む標識化GDF−8蛋白質であってよい。標識化GDF−8蛋白質はまた、例えば、1つまたはそれ以上のGDF−8結合部分を含むGDF−8モジュレート物質を検出するための検出試薬(例えば、MYO−029抗体)であってよい。
【0088】
他の実施形態において、検出試薬は、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、検出試薬は、成熟GDF−8と特異的に結合する抗体、例えば、MYO−029、MYO−028、MYO−022またはJA−16である。GDF−8モジュレート物質がヒト抗体である実施形態において、検出試薬は、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体、例えば、マウス抗−ヒトFc抗体を含む抗−ヒトIgであってよい。ELISAの場合、複合体は、酵素標識で検出されよう。
【0089】
免疫学的検定
1つの実施形態において、本発明は、GDF−8蛋白質、例えば成熟GDF−8二量体または他の捕捉物質を、反応容器の表面に接触させ、生体試料を加え、そして検出試薬を加えて、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む、結合アッセイを含む。
【0090】
より具体的には、本発明は、生体試料、例えば血清中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する方法を含み、前記方法は、(a)捕捉物質を反応容器の表面と接触させる工程、(b)生体試料を反応容器に加える工程、(c)検出試薬を反応容器に加える工程、(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体を検出する工程を含む。
【0091】
(a)工程にいおて、捕捉蛋白質、例えばGDF−8蛋白質は、固体反応容器の表面に、共有結合または非共有結合のいずれかにより固定化されている。固体表面は、典型的にはガラス、またはポリマー、例えばセルロース、硫酸デキストラン、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルもしくはポリプロピレンであり、それらは、磁性体ビーズもしくは常磁性体ビーズを含む、ビーズの形態であってもよい。表面上へのリガンドの固定化は、共有結合によって、または非共有的相互作用、例えば、物理的吸着によって達成され得る。共有結合の方法には、架橋剤、例えば、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンイソシアネート、スルホ含有試薬、ペプチド、アルキル化剤、または類似の試薬を用いてカップリングすることが含まれる。好ましい実施形態において、GDF−8は、成熟GDF−8二量体である。他の好ましい態様において、成熟GDF−8蛋白質はビオチン化されており、反応容器の表面は、(例えば、吸着を介して)アビジンまたはストレプトアビジンで被覆されている。ある実施形態において、本明細書中で提供される方法は、少なくとも1つのGDF−8活性を保持するビオチン化された成熟GDF−8二量体の使用を含む。
【0092】
これらの方法は、ビオチン化された成熟GDF−8が、反応容器の表面に吸着された成熟GDF−8蛋白質よりも、より有効な捕捉物質であるという知見によるものである。さらに、成熟GDF−8は、第一級アミン基、例えばリジン残基のビオチン化に対して当初予想されたよりも感度がよかった。アミン特異的なビオチン化試薬を用いてビオチン化したハイパービオチン化GDF−8は、ビオチンを含まないGDF−8と比較して、活性が損なわれるか、または不活性化される。成熟GDF−8二量体あたり、アミン基に組み込まれるビオチン分子の数は、GDF−8活性を保持した調製に重要であることが見出された。例えば、MYO−029およびActRIIB結合活性は、ハイパービオチン化調製物では低下した。従って、GDF−8二量体のモルあたりの5個以下のビオチンの分子を有するアミンビオチン化された成熟GDF−8調製物が好ましい。別の実施形態において、蛋白質は、スルフヒドリル、カルボキシルおよび/または炭水化物にてビオチン化され得る。非特異的に結合するか、光活性化により反応する光反応性ビオチン化合物もまた利用できる。
【0093】
本明細書で提供される特定の実施形態において、潜在的な複合体としてのGDF−8は、アミン特異的ビオチン化試薬によりビオチン化され、次に、成熟GDF−8をその複合体から単離する。この方法では、成熟GDF−8二量体に組み込まれるビオチンの量は、例えば、受容体結合部位を不活性化することを避けて、生物活性を保持するよう最適化される。GDF−8蛋白質はまた、スルフヒドリル特異的ビオチン化試薬を用いて、表面のシステイン残基(または、表面のチオール基)をビオンチン化してもよい。加えて、例えば、反応性アルデヒドを生成するための酸化前処理およびビオチンヒドラジド試薬の使用を含む、炭水化物をビオチン化する方法は、当分野で既知であり、最適にモディファイされた形式の成熟GDF−8蛋白質を含む、本明細書で記載される蛋白質について最適化され得る。さらに、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基を介したビオチン化を可能にするカルボキシル反応ビオチン化試薬および反応を用いてもよい。当業者には明らかなように、ビオチンのGDF−8二量体に対する最適なモル比は、ビオチン化手順および用いられる試薬により変更し得る。例えば、当業者であれば、本明細書に記載される方法を既知のビオチン化手順と組み合わせて用い、活性なビオチン化GDF−8の調製を最適化し、少なくとも1つのGDF−8活性を有する、ビオチンのGDF−8二量体に対する種々の最適なモル比のビオチン化成熟GDF−8蛋白質を生成する方法は認められよう。
【0094】
幾つかの実施形態において、成熟GDF−8蛋白質は、アミン特異的ビオチン化試薬を用いてビオチン化される。例えば、GDF−8調製物は、リジン残基および/またはアミノ末端でビオチン化され得る。機能的な、成熟GDF−8蛋白質は、例えば実施例3に記載されるように、潜在的な複合体の一部としてビオチン化することができ、続いて、成熟GDF−8をその複合体から単離してもよい。別の調製法においては、潜在的な複合体中のGDF−8蛋白質は、米国特許公報第2004/0142382 A1号に記載の実施例1に従って、生成され、単離される。次に、潜在的な複合体は周知の技術を用いて、および/または本明細書で記載されるように、ビオチン化される。
【0095】
様々なビオチン化試薬は、GDF−8の潜在的な複合体を含む蛋白質の効率的な標識化を可能にする。反応におけるビオチン誘導体のGDF−8の潜在的な複合体に対するモル比は、約10、15、20、40または80対1であり、試薬組成および濃度、反応時間、および温度は、反応中に組み込まれるビオチンの量を調整するために変更し得る。例えば、塩および他の試薬は、最適化されてもよい。ある実施形態において、成熟GDF−8二量体は、ビオチン化反応中に成熟二量体を不活性化することを避けるため、GDF−8のアミノ末端プロペプチド部分と関係してビオチン化される。
【0096】
ビオチン誘導体は、周知であり、当分野で利用可能である。ビオチンのモディフィケーションは、様々なスペーサーアーム、安定性に作用するモディフィケーションおよび/または、例えば、ビオチン部分の開裂を可能にする反応基が含まれる。水溶性のスルホスクシンイミジルエステルを含む、ビオチンのスクシンイミジルエステルおよびその誘導体は、例えばリジン残基におけるGDF−8のビオチン化に使用することができる。組み込まれたビオチンの量を定量するため、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、質量分析法などを含む周知の分析法およびサイジング技術が用いられる。加えて、例えば比色アッセイまたは蛍光アッセイによりビオチンを定量する商業的なキットを利用することができる(例えば、HABA(2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン)−安息香酸を利用するEZTMビオチン定量キット(Biotin Quantitation Kit)、Pierceを参照のこと)。
【0097】
さらなる例示的なビオチン化手順は、15モルまたは20モルのEZ−リンク・スルホ−NHS−ビオチン(Pierce、カタログ番号21217)対1モルのGDF−8複合体の割合で、2時間、2〜8℃で、GDF−8の潜在的な複合体をビオチン化することを含む(例えば、米国特許公報第2004/0142382 A1号に記載の実施例3を参照のこと)。この反応は、0.5% TFAを用いてpHを下げることにより停止させ、次いで、複合体を、C4ジュピター250×4.6mmカラム(Phenomenex)を用いたクロマトグラフィーにかけ、成熟GDF−8をGDF−8プロペプチドから分離することができる。TFA/CHCN勾配を用いて溶出されたビオチン化した成熟GDF−8画分を集め、濃縮し、MicroBCA(登録商標)プロテインアッセイ・リージェント・キット(Pierce、カタログ番号23235)により定量するか、または他の周知の単離および濃縮技術を用いる。
【0098】
好ましい実施形態において、試験管内結合アッセイは、ビオチン化GDF−8蛋白質捕捉物質を含み、GDF−8蛋白質は、そのビオチン部分と反応容器の表面上のアビジンとの相互作用を通じて、GDF−8蛋白質を反応容器の表面と接触させる。幾つかの実施形態において、ビオチン部分の成熟GDF−8蛋白質に対するモル比は、約0.5:1から約4:1の間である。他の実施形態において、ビオチンのGDF−8二量体に対する平均の比は、約5:1以下、約2:1以下、または約1:1以下である。ビオチンの成熟GDF−8蛋白質に対する割合は、大部分の分子は約1:1のモル比であるが、活性なGDF−8調製物においては0から3のモル比の混合物であることが測定された。ビオチンの成熟GDF−8蛋白質に対する比率の形式は、例えば、約1、2、3、4または5以下であろう。幾つかの実施形態において、ビオチン化成熟GDF−8調製物は、成熟GDF−8二量体のモルあたり約1、2、3、4または5モル以下のビオチンが含まれる。ビオチンの成熟GDF−8蛋白質に対する平均もしくは中央の比率は、例えば、約0.5、0.75、1、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8または9以下であろう。他の検出物質および捕捉物質は、ビオチン化により標識化されていてもよい。例えば、ビオチン化MYO−029は、少なくとも(または多くても)、例えば、10:1、20:1もしくはそれ以上の割合まででビオチン化され得る。場合により、他の捕捉物質を用いてもよい。
【0099】
捕捉物質を反応容器の表面に接触させた後、反応容器を洗浄して、結合しなかった捕捉物質を取り除き、その後、生体試料を加える。幾つかの実施形態において、反応容器は、約5〜約9のpHの緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、または酢酸緩衝液で洗浄される。要すれば、浄化剤濃度またはイオン強度を加えてもよい。例えば、標的と特異的に結合しない蛋白質など、少なくとも1種のブロッキング試薬を含む緩衝液を反応容器に加えるブロッキング工程を用いて、非特異的な相互作用を最小にする。他の実施形態において、浄化剤、例えば、イオン性浄化剤もしくは非イオン性浄化剤を加えてもよい。ブロッキング緩衝液は、例えば、血清、ウシ血清アルブミン、ミルク、カゼイン、ゼラチンおよび/または非イオン浄化剤を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、反応容器は、pH約5〜約9の間の緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液または酢酸緩衝液を用いて洗浄される。
【0100】
(b)工程において、生体試料が反応容器に加えられる。本発明の幾つかの好ましい実施形態において、生体試料は、血液、血清および血漿から選択される。生体試料は、回収された状態で、または適切な希釈剤で希釈された後に用いることができる。希釈剤は、特に、制限されないが、脱イオン水および約pH5〜約pH9の範囲で、好ましくは約pH6.5〜約pH8.5の範囲で緩衝作用を有する様々な緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液またはホウ酸緩衝液)が含まれる。
【0101】
試験されるべき試料の一部を、固定化された捕捉物質と接触させ、十分な時間(例えば、2〜120分)、適切な条件下(例えば、23℃)でインキュベートし、試料中に存在するGDF−8モジュレート物質の固定化された蛋白質、例えば、ビオチン化された成熟GDF−8二量体に対して結合させる。GDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の反応は、特に制限されないが、従来の免疫学的検定で慣用的に使用される条件下で行われ得る。典型的な手順としては、検出試薬とGDF−8モジュレート物質を含む反応系を、45℃を超えない、好ましくは約4℃から約40℃の間、より好ましくは約20℃から約40℃の間の穏やかな温度で、または約0.5時間から約24時間の間、好ましくは約1時間から約2時間の間、インキュベートすること、または維持することを含む。溶媒は、反応に干渉しない限り特に制限されず、従って、限定されるものではないが、約pH5から約pH9の間の緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液および酢酸緩衝液が含まれる。浄化剤が存在していてもよい。
【0102】
(c)工程は、検出試薬を反応容器に加えることを含む。インキュベーション期間に続いて、固定化されたGDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体は、幾つかの実施形態で、(c)工程の前に結合していない溶質を取り除くため、緩衝液で洗浄される。他の実施形態において、同時定量が行われ、それにより(b)および(c)工程が同時に行われる。
【0103】
(c)工程を(b)工程の後に行う場合、典型的な手順として、検出試薬とGDF−8モジュレート物質を含む反応系を、45℃を超えない、好ましくは約4℃から約40℃の間、より好ましくは約25℃から約40℃の間の穏やかな温度で、約0.5時間から約40時間、好ましくは約1時間から約20時間、インキュベートすること、または維持することを含む。溶媒は、反応に干渉しない限り特に制限されず、従って、限定されるものではないが、約pH5から約pH9の間の緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液および酢酸緩衝液が含まれる。
【0104】
検出試薬は、上記のように、検出可能な標識で標識化されていてもよい。検出試薬は、生体試料中に存在し得る本質的に全ての外因性のGDF−8モジュレート物質を結合するよう過剰であることが好ましい。検出は、定性的であっても、定量的であってもよい。幾つかの実施形態において、検出試薬は、機器の助けを借りない様々な手段により容易に検出し得る標識を含んでいよう。検出試薬はまた、機器を用いて検出されてもよい。例えば、表面プラズモン共鳴法においては、GDF−8モジュレート物質の捕捉物質に対する結合は、例えば、標識を加えることなく検出される。
【0105】
検出試薬は、例えば外因性のGDF−8モジュレート物質と特異的に結合することにより固定される。1つの実施形態において、検出試薬は、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合された抗−ヒトIgG抗体である。試料中の外因性試薬の存在または不在は、標識の活性を測定することにより評価されるが、これは、検出試薬を測定するために用いられる標識の種類に依存し得る。
【0106】
幾つかの実施形態において、「直接」標識は、補助的な試薬を加えることなく、検出可能な信号を自発的に生成できる、特異的結合メンバーと結合された、または会合されたいずれかの分子であってよい。幾つかの例において、放射同位体(例えば、125I、H、14C)、重金属、発色団(例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、1−N−(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシl−4−ピペリジル)−5−N−(アスパルテート)−2,4−ジニトロベンゼン)、色素(例えば、フィコシアニン、フィコエリトリン、テキサスレッド、o−フタルアルデヒド)、化学発光分子、生物発光分子を含む、発光性分子、コロイド金粒子、コロイド銀粒子、他のコロイド金属粒子、ユーロピウム、ポリスチレン色素粒子、わずかな着色性粒子、例えば色素ゾルおよび着色ラテックス粒子が挙げられる。そのような物質の多くは、当業者には周知である。
【0107】
幾つかの実施形態において、標識は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、ブドウ糖酸化酵素またはβ−ガラクトシダーゼなどの酵素である。特定の酵素に用いられる基質は、一般に、対応する酵素の存在下で、色、蛍光またはルミネセンスの検出可能な変化を生成することについて選択される。酵素は、一般に、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸架橋により検出試薬に連結される。ある実施形態において、検出試薬は、例えばGDF−8モジュレート物質と特異的に結合するモノクローナル抗体、またはモジュレート物質を含む複合体またはGDF−8蛋白質と特異的に結合するモノクローナル抗体などの、ペルオキシダーゼ結合抗体がある。しかしながら、容易に理解されるように、多種多様な連結技術が存在し、様々な検出試薬(上掲)に応用できることは、当業者であれば容易に利用できる。
【0108】
好ましい実施形態において、酵素標識された抗体を、GDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体に加え、結合させる。過剰量の試薬は洗い流し、次に、適当な基質を含む溶液を反応容器に加える。基質は、酵素による分解反応を受けて、試料中に存在する物質の量の指標となる分光学的に測定できる変化を生じることとなる。
【0109】
可溶性の基質(例えば、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)、o−フェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノ−ジ[3−エチル−ベンズチアゾリン]スルホナート(ABTS)、パラニトロフェニルホスフェート、ルミノール、ポリフェノール、アクリジネステルおよびルシフェリン)と共にインキュベートした場合、ペルオキシダーゼは、基質に分光学的に検出できる発色性もしくは蛍光性の変化を生じさせる。典型的には、基質を用いた一定のインキュベーション期間の後に、反応を停止させ(例えば、酸性化することにより)、その結果は、光学密度(吸光度)またはルミネセンスを測定することにより定量される。吸光度の結果は、発色反応の直線性のある範囲のOD値と比較でき、ルミネセンス免疫学的検定は、相対発光量(RLU)で測定される。さらに別には、結合し、特定の用量応答シグナルを生成することとなる試薬のいずれかの組み合わせを用いてもよい(例えば、放射標識試薬、酵素/基質試薬、または例えばビオチン/アビジンを利用した検出増幅系)。
【0110】
さらに別の実施形態において、標識は、ビオチン、ハプテンまたはエピトープタグ(例えば、ヒスチジン−タグ、HA−タグ(血球凝集素ペプチド)、マルトース結合蛋白質、AviTag(登録商標)、またはグルタチオン−S−トランスフェラーぜ)であり、それらは、GDF−8モジュレート物質複合体と会合した標識と相互作用する、標識化された検出試薬を加えることによって検出することができる。ビオチン標識(「ビオチン化」)検出試薬は、アビジン−酵素、例えば、アビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と相互作用させ、次にそのアビジン−酵素結合体と適切な発色基質または蛍光発生基質と共にインキュベートすることを通じて検出され得る。
【0111】
(d)工程において、反応容器の表面と会合しているGDF−8モジュレート物質の複合体は、標識の信号の定性的もしくは定量的評価により検出される。標識は、例えば、蛍光もしくはルミネセンスにより直接的に、あるいは、基質の添加を介して間接的に測定され得る。標識はまた、さらなる試薬とのインキュベーションに続いて測定することもできる。
【0112】
標識がビオチンである実施形態においては、アビジン結合酵素(酵素は、幾つかの好ましい実施形態においては、西洋ワサビペルオキシダーゼである)が、次の工程で加えられる。アビジン結合体は、固定化された検出試薬と結合する。過剰なアビジン結合体は、洗い流す。次いで、酵素の基質を加え、例えば発色、蛍光、ルミネセンスに測定可能な変化を生じさせる。幾つかの実施形態において、西洋ワサビペルオキシダーゼの基質は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンである。
【0113】
他の実施形態において、本方法は、フォリスタチンと、生体試料中の様々なGDF−8結合受容体と、アクチビンと、GDF−8プロペプチドと、または他のGDF−8モジュレート物質と特異的に結合するGDF−8モジュレート物質を有する複雑な生体試料における検出を可能にする。ある実施形態において、GDF−8と特異的に結合する蛋白質(例えば、上記の表から選択される)は、捕捉物質であり、捕捉物質は反応容器の表面に固定化される。好ましい実施形態において、本方法は、成熟GDF−8と1つまたはそれ以上の特異的な結合パートナー(以下を参照のこと)との相互作用と競合するもしくは干渉することに基づき、個体からの生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の検出が可能となる。
【0114】
(c)および(d)工程の検出試薬は、幾つかの実施形態において、抗体、例えば実施例1に記載されるように、マウスの抗−ヒトIg抗体である。好ましい実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する方法は、(a)成熟GDF−8蛋白質を反応容器の表面と接触させること;(b)生体試料を、反応容器に加えること;(c)検出試薬を反応容器に加えること;および(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の複合体を検出することを含む。好ましい態様において、成熟GDF−8蛋白質は、ビオチン部分を含み、そのビオチン部分を介して表面と接触する。好ましい態様において、ビオチン部分の成熟GDF−8蛋白質に対するモル比は、約0.5:1から4:1の間である。さらに好ましい態様において、GDF−8モジュレート物質は、MYO−029である。
【0115】
さらなる実施形態において、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する方法は、(a)GDF−8蛋白質またはGDF−8蛋白質と特異的に結合する蛋白質から選択される捕捉物質を、反応容器の表面と接触させること;(b)生体試料を反応容器に加えること;(c)検出試薬を反応容器に加えること;および(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体を検出し、それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。さらなる別の実施形態において、生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法が提供され、前記方法は、(a)GDF−8受容体を、第一および第二の反応容器と接触させること;(b)生体試料およびGDF−8蛋白質を、(a)工程の第一の反応容器に加えること;(c)対照試料およびGDF−8蛋白質を、(a)工程の第二の反応容器に加えること;(d)検出可能な標識を、第一および第二の反応容器に加えること;および(e)第一の反応容器中の検出可能な標識信号を第二の反応容器中の信号と比較し、それにより生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む。
【0116】
競合ELISA
本発明のさらなる実施形態において、試験管内免疫学的検定は、競合ELISAである。本明細書により提供される1つの方法において、免疫学的検定には、(a)可溶性のGDF−8受容体を反応容器の表面と接触させる工程;(b)生体試料を反応容器に加える工程;(c)標識化GDF−8蛋白質を反応容器に加える工程;および(d)生体試料の存在下および不在下で、該表面と会合している標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量を検出し、生体試料存在下での標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量の減少により、その生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出する工程を含む。ある実施形態において、本方法は、生体試料を反応容器に加える前に、生体試料を標識化GDF−8蛋白質と共にインキュベートする工程をさらに含む。さらなる実施形態において、例えば、上記のようにビオチン化されたGDF−8蛋白質を、検出試薬として用いてもよい。
【0117】
GDF−8阻害剤
GDF−8阻害物質を含むGDF−8モジュレート物質は、本明細書で提供される方法により検出することができる。GDF−8モジュレート物質は、例えば、結合アッセイにおいて検出試薬として、本方法で用いることもできる。GDF−8阻害物質は、GDF−8自体と相互作用することができる。あるいは、阻害物質は、GDF−8受容体(例えば、ActRIIB)または他の結合パートナーと相互作用することができるし、または間接的に作用することもできる。GDF−8阻害物質は、GDF−8モジュレート物質の部分集合であり、抗体(例えばGDF−8および/またはGDF−8受容体に対するもの)、可溶性の受容体、他の蛋白質(GDF−8および/またはGDF−8受容体と結合するものを含む)、モディファイされた形式のGDF−8もしくはその断片、プロペプチド、ペプチド、およびこれらのすべての阻害物質の模倣体が含まれる。非蛋白質性の阻害物質には、例えば核酸が含まれる。
【0118】
当業者であれば、いずれの蛋白質の配列中のあるアミノ酸が、その蛋白質の活性に不都合な影響を及ぼすことなく他のアミノ酸に置換されていてもよいことは理解されよう。従って、様々な変更が、その生物活性または有用性を大きく損なうことなく、本発明のGDF−8モジュレート物質およびGDF−8阻害物質のアミノ酸配列、またはそれをコードするDNA配列に生じていてもよいと考えられる。そのような変更は、限定されるものではないが、欠失、挿入、切断および置換が含まれ得る。
【0119】
アミノ酸の一次配列またはヌクレオチドに基づく試薬もしくは阻害物質は、参照配列と異なっていてもよい。例えば、ヌクレオチド配列は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関して、「強い厳格な」または「強い厳格性」の条件の下、関連する配列と結合することができる。そのような条件は、当業者には知られており、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology,」John Wiley&Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6において見出すことができる。当分野で記載されるように、水溶性および非水溶性の条件の両方を用いることができる。強い厳格なハイブリダイゼーション条件の1つの例として、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次に、50℃での0.2×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中での少なくとも1回の洗浄がある。強い厳格なハイブリダイゼーション条件の他の例には、約45℃(または50℃、60℃もしくは65℃)、6×SSC中でのハイブリダイゼーション、次に、約55℃、60℃もしくは65℃、0.2×SSC、1%SDS中での少なくとも1回の洗浄がある。強い厳格な条件には、65℃、0.5M リン酸ナトリウム、7%SDS中でのハイブリダイゼーション、次に、65℃、0.2×SSC、1%SDSでの少なくとも1回の洗浄である。
【0120】
当業者であれば、蛋白質性のGDF−8モジュレート物質またはGDF−8阻害物質は、その生物学的な特徴を変えない、多くの保存的な変更をそのアミノ酸配列に含んでいてもよいことは認められよう。保存的なアミノ酸のモディフィケーションは、アミノ酸側鎖置換の関連する類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。例示的な保存的置換は、当業者には周知であり、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが含まれる。さらに、蛋白質性のGDF−8モジュレート物質またはGDF−8阻害物質の機能断片が、本明細書で提供される。そのような断片は、GDF−8と特異的に結合し、および/またはGDF−8活性を阻害し得ることが期待される。本発明の実施形態において、GDF−8モジュレート物質またはその機能断片は、単量体型、活性な二量体型、またはGDF−8の潜在的な複合体中で複合体形成している、成熟GDF−8またはその断片と特異的に結合する。
【0121】
アミノ酸配列または核酸配列に言及する場合、成句「実質的に同一」または「実質的に類似」は、例えば、本発明のGDF−8阻害物質の対応するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、開示された配列と比較して、同一であろうし、またはわずかな差(保存的なアミノ酸置換を通じて)しかないことを意味する。本発明のヌクレオチドおよびポリペプチドは、例えば、開示される核酸分子およびポリペプチドに対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するものを含む。
【0122】
ポリペプチドについては、少なくとも20個、30個、50個、100個またはそれ以上のアミノ酸が、元のポリペプチドと、その元のポリペプチドと実質的に同一の変異型のポリペプチドとの間で比較されよう。核酸については、少なくとも50個、100個、150個、300個またはそれ以上のヌクレオチドが、元の核酸と、その元の核酸と実質的に同一の変異型の核酸との間で比較されよう。あるいは、比較は、元のアミノ酸配列または核酸配列の少なくとも60%、70%、80%、90%で行うことができる。従って、変異型は、ある領域もしくは領域群で実質的に同一であるが、他の領域では互いに異なっていてもよい。2つの配列間の同一性(パーセント)は、標準的なアライメントアルゴリズム、例えば、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)にて記載されるベイシック・ローカル・アライメントツール(Basic Local Alignment Tool)(BLAST)、またはMeyersら、Comput. Appl. Biosci. 4:11-17 (1988)のアルゴリズムにより決定される。
【0123】
用語「変異型」は、提供されるGDF−8阻害物質(同様に、GDF−8自体)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列と実質的に同一もしくは類似するヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をそれぞれ意味する。変異型は、天然のものであってもよく、例えば、天然のヒトおよびヒト以外のヌクレオチド配列であってよく、または、それらは人工的に作製されてもよい。変異型の例には、mRNAの択一的なスプライシングにより生じるものがあり、3’および5’スプライス変異型、点突然変異および他の突然変異、または蛋白質の蛋白質分解物が挙げられる。変異型は、他の核酸(または適当な挿入もしくは欠失を有するものを、最適にアライメントする場合には、その相補鎖)またはアミノ酸配列と、それぞれ実質的に同一のもしくは類似の、核酸分子またはその断片、およびアミノ酸配列およびその断片が挙げられる。1つの実施形態において、本発明の核酸分子または蛋白質と、他の核酸分子または蛋白質との間に、最適にアライメントした場合、それぞれ少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性がある。あるいは、全エピトープが、相同でない分子中に挿入されていてもよい。加えて、変異型は、本明細書中で論じられるように、GDF−8活性を示すか、またはGDF−8活性を阻害する蛋白質またはポリペプチドが含まれる。
【0124】
GDF−8阻害物質は、糖付加、ペグ化(pegylated)、または別の非蛋白質性のポリマーと連結されていてもよい。本発明のGDF−8阻害物質は、改変されたグリコシル化パターン(すなわち、元のまたは天然のグリコシル化パターンから改変されている)を有するようモディファイされていてもよい。本明細書で用いられる「改変された」は、1つまたはそれ以上のモディファイされた炭化水素部分を有すること、および/または元の阻害物質の変更された1つまたはそれ以上のグリコシル化部位を含むことを意味する。グリコシル化部位をGDF−8阻害物質に加えることは、当分野で周知のグリコシル化部位の共通配列を含むようアミノ酸配列を改変することによって達成することができる。多くの炭水化物成分を増加させる他の手段には、阻害物質のアミノ酸配列にグリコシドを化学的にもしくは酵素的にカップリングさせることによる手段がある。これらの方法は、国際公開第87/05330号パンフレットおよびAplinら、Crit. Rev. Biochem. 22:259-306 (1981)に記載されている。受容体に存在するいずれかの炭化水素成分の除去は、Hakimuddinら、Arch. Biochem. Biophys. 259:52 (1987);Edgeら、Anal. Biochem. 118:131(1981);およびThotakuraら、Meth. Enzymol. 138:350 (1987)により記載されるように、化学的にもしくは酵素的に行うことができる。
【0125】
1.抗体
GDF−8活性を阻害する抗体は、本明細書で提供されるGDF−8モジュレート物質の目的の範囲内にある。抗体は、慣用のハイブリドーマ技術(Kohlerら、Nature, 256:495-499 (1975))、組み換えDNA方法(米国特許第4,816,567号明細書)、または抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ技術(Clackson ら、Nature, 352:624-628 (1991);Marksら、J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))により作製することができる。他の様々な抗体産生技術については、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, (Harlowら、編、Cold Spring Harbor Laboratory 1988);およびAntibody Engineering(第2版)(Borrebaeck編、Oxford University Press 1995)を参照のこと。抗体は、完全にヒトのものであってもよいし、ヒト化されていてもよい。ある実施形態において、抗体は、次の章で記載されるように改変されたもしくは変異されたFc領域を有していてもよい。
【0126】
本発明に関する抗体の親和力は、10−1〜1011−1の間であろうし、例えば10−1〜1010−1の間であろう。本発明の抗体は、試験管内もしくは生体内でGDF−8活性を阻害し得る。開示された抗体は、骨格筋量および骨密度の負の調節と関係するGDF−8活性を阻害し得るし、および/またはGDF−8のクリアランスもしくは生物学的利用能に影響を及ぼし得る。
【0127】
2.GDF−8に対する抗体
GDF−8モジュレート物質である抗体は、GDF−8蛋白質自体と結合することができる。特定の実施形態において、GDF−8蛋白質またはGDF−8/GDF−8受容体の複合体と特異的に結合する。そのような抗体は、高親和力で成熟GDF−8を結合することができ、成熟蛋白質が単量体型であっても、活性な二量体型であっても、あるいは、GDF−8の潜在的な複合体にて複合体形成しているても、成熟蛋白質を結合することができる。好ましい実施形態にいおいて、GDF−8蛋白質と結合する抗体は、中和抗体である。ある実施形態において、GDF−8抗体は、例えば、競合結合アッセイにおいて測定した場合、GDF−8のその受容体に対する結合を阻害する。GDF−8配列に対する抗体は、例えば米国特許第5,827,733号および第6,096,506号において論じられている。
【0128】
A.MYO−029、MYO−028およびMYO−022
MYO−029、MYO−028およびMYO−022抗体は、本発明の方法に用いることができ、これらの抗体は、米国特許公報第2004/0142382-A1号にさらに詳しく記載されており、その対応する部分、例えば配列、構造、断片、結合、生物活性および抗原エピトープ情報を含む部分は出典明示により本明細書の一部とされる。例えば、MYO−029を含む、特定の中和抗体の特徴は、米国特許公報第2004/0142382-A1の54−90段落、および請求項1〜42に記載されている。これらの抗体は、高親和力で成熟GDF−8を結合することができ、例えば、ActRIIB結合の阻害およびレポーター遺伝子アッセイにより示されるように、試験管内および生体内でGDF−8活性を阻害すること、ならびに骨格筋量および骨密度の負の調節と関係するGDF−8活性を阻害することができる。
【0129】
MYO−029、MYO−028およびMYO−022抗体、これらのscFv断片、VおよびVドメイン、およびCDRのDNAおよびアミノ酸(AA)配列は、配列表(MYO-029) および米国特許公報第2004/0142382-A1号(MYO−029、MYO−028およびMYO−022)に記載されている。VおよびVドメインを除く重鎖および軽鎖の配列は、MYO−029、MYO−028およびMYO−022と同一である。1つの好ましい実施形態において、MYO−029の配列は、配列番号:3〜20に記載されている。
【0130】
B.JA−16
JA−16抗体は、配列番号:1に記載される成熟GDF−8蛋白質と結合し、L-A Whittemoreら、Biochem. and Biophys. Res. Commun. 300:965-971 (2003)ならびに米国特許公報第2003/0138422-A1号にさらに詳しく記載され、それぞれの対応部分(例えば、配列、構造、断片、結合、生物活性および抗原エピトープ)は出典明示により本明細書中の一部とされる。具体的には、米国特許公報第2003/0138422-A1号に記載の抗体阻害物質は、例えば、56〜70段落、93〜110段落、および請求項1〜54に記載されている。
【0131】
3.GDF−8受容体に対する抗体
GDF−8受容体と結合する抗体は、本発明の方法を用いて検出されるGDF−8モジュレート物質の範囲内にある。これらの抗体は、GDF−8のその受容体に対する結合に影響を及ぼすか、またはそれらはGDF−8の結合の後にその受容体の活性を阻害し得る。抗体は、完全な受容体蛋白質に対して、または細胞外ドメインのみに対して作製できる。抗体は、ActRIIB、ActRIIB変異型、およびGDF−8の他の受容体に対して作製できる(例えば、米国特許公報第2004/0223966-A1号;米国特許公報第2004/0077053-A1号;国際公開第00/43781号パンフレットを参照のこと)。
【0132】
4.モディファイされた可溶性受容体
モディファイされた可溶性GDF−8受容体は、それ自体がGDF−8モジュレート物質であり、それらは、他のGDF−8モジュレート物質を検出するため、本発明で用いることができる。適切な受容体は、GDF−8受容体の細胞外ドメインの全部または一部、例えば、当分野で既知のアッセイウェル中でGDF−8と結合するActRIIBまたはActRIIAの細胞外ドメインの全部または一部が含まれ得る(Leeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:9306-9311 (2001))。アクチビンII型受容体は、非常に保存されており、その組み換え体の可溶型は、例えば、Attisanoら、Mol. and Cell Biol. 16:1066 (1996);Woodruff, Pharmacology 55:953 (1998);およびR&D Systems、カタログ番号339−R( ヒトActRIIB−Fcキメラ)にて提供される。GDF−8受容体の構造および機能特性、ならびにその活性についてのアッセイは、例えば、米国特許第6,656,475号明細書および第6,696,260号明細書、および米国特許公報第2004/0077053-A1号にて提供される。さらに、アクチビンII型受容体を含むアクチビン受容体は、例えばその細胞外リガンド結合ドメインを記載する、米国特許第6,835,544号明細書において提供される。
【0133】
そのような受容体は、組み換え技術により産生されてもよいし、または完全な受容体を化学的にもしくは酵素的に分解して調製してもよい。本方法のモディファイされた可溶性の受容体は、GDF−8の活性を低下させ、体内で天然のGDF−8受容体を活性化し、またはGDF−8活性を阻害する。ActRIIB受容体の細胞外ドメイン、特定の断片およびこの受容体の変異型の記載を含むActRIIB受容体の配列は、例えば、米国特許第6,656,475号明細書に記載されている。
【0134】
A.受容体融合体
本発明のモディファイされた可溶性の受容体は、他の蛋白質または他の単の一部との融合によりより安定化させることができる。増大された安定性は、低用量または低頻度の投与を可能にし、治療に有利である。少なくとも免疫グロブリンの一部、例えば、抗体の定常領域、場合により、免疫グロブリンのFc断片との融合は、本発明のモディファイされた可溶性受容体または他の蛋白質の安定性を増大させ得る(例えば、Spiekermannら、J. Exp. Med. 96:303-310 (2002を参照のこと))。
【0135】
B.ActRIIBのFc融合体
米国特許公報第2004/0223966-A1号(その対応部分は出典明示により本明細書の一部とされる)にさらに詳しく記載される、ActRIIBのFc融合体の阻害物質は、GDF−8を結合し、試験管内および生体内でその活性を阻害する、モディファイされたアクチビンII型受容体ActRIIBを含む。特に、ActRIIB融合ポリペプチドは、骨格筋量および骨密度の負の調節に関係するGDF−8活性を阻害する。治療的使用に適したものとされた、本明細書で提供される方法のActRIIB融合ポリペプチドは、可溶性であり、例えば、延長された循環半減期および/または改善された蛋白質分解からの保護などの薬物動力学的特徴を備える。
【0136】
ActRIIB融合ポリペプチドは、例えば、GDF−8モジュレート物質を検出するための本発明の方法に用いることができる。これらのポリペプチドは、ActRIIBの細胞外ドメインから誘導された第一のアミノ酸配列と、安定化部分もしくは第二のアミノ酸配列を含む。第一のアミノ酸配列は、ActRIIB細胞外ドメインの全部または一部から誘導され、特異的にGDF−8を結合することができる。幾つかの実施形態において、そのようなActRIIB細胞外ドメインの一部はまた、BMP−11および/またはアクチビン、または他の成長因子を特異的に結合する。ある実施形態において、ActRIIBは、その短い配列が特異的にGDF−8を結合できる限り、完全な受容体の断片もしくは切断型である。
【0137】
安定化部分は、抗体の定常領域、特にFc領域から誘導されたアミノ酸配列、または該配列の変異型であってもよい。幾つかの実施形態において、アミノ酸配列は、IgGのFc部分から誘導される。関連する実施形態において、Fc部分は、IgG1、IgG4または他のIgGイソタイプであるIgGから誘導される。特定の実施形態において、第二のアミノ酸配列は、ヒトIgGのFc部分を含み、そのヒトIgGのFc部分は、そのFc部分のエフェクター機能を最小にするためモディファイされる。そのようなモディフィケーションには、Fc受容体結合性などのエフェクター機能を改変し得る(Lundら、J. Immun., 147:2657-2662 (1991);およびMorganら、Immunology, 86:319-324 (1995))、または定常領域が誘導された種を変更し得る、特定のアミノ酸残基の変更を含む。抗体は、その重鎖のC2領域に、エフェクター機能、すなわちFc受容体結合性および補体活性化を低下させる変異を有していてもよい。例えば、抗体は、米国特許第5,624,821号明細書および第5,648,260号明細書に記載される変異を有していてもよい。IgGまたはIgGの重鎖において、例えば、IgGまたはIgGの全長の配列中234番と237番のアミノ酸に対応するアミノ酸残基に、そのような変異が生じていてもよい。抗体はまた、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合を安定化させる変異、例えば、Angalら、Mol. Immunol. 30:105-108 (1993)で開示されるようにIgGのヒンジ領域中の変異を有していてもよい。
【0138】
ある実施形態において、安定化部分は、受容体配列のC末端もしくはN末端と、リンカー配列により、またはリンカー配列によらずに連結されている。リンカー配列により伸びる長さおよびその配列、および連結される配列に対する方向性は変更し得る。リンカーは、2個、10個、20個、30個またはそれ以上のアミノ酸を含み、所望の特徴、例えば安定性、その長さや立体的距離、免疫原性などに基づいて選択される。ある実施形態において、リンカーは、蛋白質分解部位、例えば、エンテロキナーゼ開裂部位、またはその融合蛋白質の精製、検出もしくはモディフィケーションに有用な他の機能的配列を含んでいてよい。当業者であれば、様々な融合蛋白質を作り出すため、本明細書で記載される当該技術を、他のタンパク質性GDF−8モジュレート物質に容易に応用できよう。
【0139】
5.他の蛋白質
GDF−8活性を阻害する他の蛋白質は、本明細書で提供される方法で検出され得る。そのような蛋白質は、GDF−8自体と相互作用し、その活性を阻害し、またはその受容体と結合することができる。あるいは、阻害物質は、GDF−8受容体(例えば、ActRIIB)と相互作用することができ、そのため、阻害物質がGDF−8とその受容体との結合を阻害し得る場合、または阻害物質がGDF−8の結合後に受容体の活性を阻害する場合、本発明の検出方法に有用であり得る。もちろん、阻害物質は、GDF−8およびその受容体の両方と相互作用できる。阻害物質はまた、他の様式、例えばGDF−8プロペプチドを開裂して不活性にさせる金属プロテアーゼを阻害することにより、GDF−8活性に影響を及ぼし得る(例えば、米国特許公報第2004/0138118-A1を参照のこと)。
【0140】
A.GDF−8に特異的に結合する蛋白質
GDF−8に結合し、その活性を阻害するか、またはそのクリアランスに影響を与える蛋白質は、本発明の方法に使用することが可能である。幾つかの蛋白質が知られているが、さらなる蛋白質は、種々のアッセイ、例えば、本明細書に記載されるActRIIB結合アッセイ、免疫学的検定またはレポーター遺伝子アッセイを用いて単離することができる。蛋白質試料は、蛋白質のライブラリーからスクリーニングし得る。
【0141】
B.GDF−8プロペプチド
GDF−8プロペプチドは、GDF−8の阻害物質として使用することができる。天然のGDF−8プロペプチドは、生体内での半減期が短かく、それにより、そのGDF−8活性の薬理学的阻害剤としての効果が低下するため、GDF−8プロペプチド阻害物質には、改良された薬物動力学的特徴、特に増大された循環半減期を有するGDF−8プロペプチドのモディファイ型および安定化型が含まれる。米国特許公報第2003/0104406-A1を参照のこと(対応する部分は、出典明示により本明細書の一部とされる)。
【0142】
そのようなモディファイされたGDF−8プロペプチドには、GDF−8プロペプチドとIgG分子のFc領域とを含む融合蛋白質(安定化蛋白質として)が含まれる。これらのGDF阻害物質には、GDFプロペプチド(例えば、配列番号:5または11に記載の配列)、またはGDFプロペプチドの1つまたはそれ以上の生物学的活性を保持する該プロペプチドの断片もしくは変異型を含み得る。本発明の方法に用いられるGDF−8プロペプチドは、合成されて産生されてもよく、天然の(ネイティブ)GDF−8プロペプチドから誘導されてもよく、または遺伝子工学の分野で既知の様々な試薬、宿主細胞および方法のいずれかを用いて、組み換え技術により産生されてもよい。1つの実施形態において、モディファイされたGDF−8プロペプチドは、IgG分子またはその断片と共有結合により連結されたヒトGDF−8プロペプチドを含む。GDF−8プロペプチドはまた、IgG分子のFc領域と直接連結されてもよく、またはリンカーペプチドを介してIgG分子のFc領域と連結されていてもよい。さらにGDF−8のプロペプチドを含む、GDF−8と結合する蛋白質は、国際公開第00/43781号パンフレットにて示される。
【0143】
C.フォリスタチンおよびフォリスタチンドメインを含有する蛋白質
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む蛋白質は、増殖・分化因子−8(GDF−8)のレベルまたは活性をモジュレートし、そして、GDF−8のレベルまたは活性のモジュレーションに関係する障害を処置するために用いることができる。フォリスタチン自体およびフォリスタチンドメインを含有する蛋白質の両方は(米国特許公報第2003/0162714-A1号および第2003/0180306-A1号に記載され、これらの対応する部分は、出展明示により本明細書の一部とされる)、本発明に用いることができる(Leeら、Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 98:9306-9311 (2001)もまた参照のこと)。これらの蛋白質のヒトまたは動物への投与は、本発明の方法を用いて検出することができる。
【0144】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む蛋白質は、GDF−8を結合し、阻害するであろう。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを有する蛋白質の例としては、限定されるものではないが、フォリスタチン、フォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)、FRP(flik、tsc36)、アグリン(agrin)、オステオネクチン(SPARC、BM40)、ヘビン(hevin)(SC1、mast9、QR1)、IGFBP7(mac25)、およびU19878が含まれる。GASP1およびGASP2は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む蛋白質の他の例である。
【0145】
フォリスタチンドメインは、上記のように、システインに富む繰り返しにより特徴付けられる、アミノ酸ドメインまたはアミノ酸ドメインをコードする核酸ドメインとして定義される。フォリスタチンドメインは、典型的に65〜90アミノ酸長を有し、10個の保存されたシステイン残基およびカザル(Kazal)セリンプロテアーゼ阻害ドメインを含む。一般に、システイン残基間のループ領域は、フォリスタチンドメインの配列の多様性を示すが、幾分かの保存性が見られる。4番目と5番目のシステイン間のループは、わずか1個または2個のアミノ酸からなり、通常小さい。7番目と8番目のシステイン間のループ中のアミノ酸は、一般に非常によく保存されており、(G,A)−(S,N)−(S,N,T)−(D,N)−(G,N)、続いて(T,S)−Yモチーフの共通配列を有する。9番目と10番目のシステイン間の領域は、一般に、別のアミノ酸に隔てられた2個の疎水性の残基(具体的には、V、IまたはL)を含むモチーフからなる。
【0146】
フォリスタチンドメインを含有する蛋白質は、少なくとも1つの、場合により1つ以上のフォリスタチンドメインを含むであろう。この用語はまた、天然の蛋白質に関係する既知の生物学的活性、特にGDF−8結合活性に関係するものを保持し、その配列が保存的なもしくは非保存的な変化でアミノ酸がモディファイされている配列を含む、該蛋白質のすべての変異型(断片;置換、付加もしくは欠失変異を有する蛋白質;および融合蛋白質)を意味する。これらの蛋白質は、天然もしくは合成のいずれを起源として誘導されたものであってもよい。蛋白質は、ヒトのものであってもよく、または限定されるものではないが、ウシ、ニワトリ、ネズミ、ラット、ブタ、ヒツジ, 七面鳥、ヒヒ、およびサカナを含む動物供給源から誘導されたものであってもよい。
【0147】
GDF−8を結合し得る、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む蛋白質は、様々な方法を用いて単離することができる。例えば、1つの方法は、GDF−8を用いた親和力精製に使用できる。加えて、cDNAライブラリーを弱い厳格なスクリーニング法を用いてもよいし、またはフォリスタチンドメインに対するプローブを用いたデジェネレイト(degenerate)PCR技術を用いてもよい。ゲノムデータがより利用しやすくなれば、多くの配列特性および分析プログラム、例えば、MotifSearch(Genetics Computer Group, Madison, WI)、ProfileSearch(GCG)およびBLAST(NCBI)を用いた類似検索を用い、既知のフォリスタチンドメインと高い相同性を有する新たな蛋白質を見つけ出すことが可能となろう。
【0148】
D.GDF−8受容体に結合する蛋白質
GDF−8受容体(例えば、ActRIIB)と結合し、GDF−8のその受容体に対する結合およびその受容体自体の活性を阻害する蛋白質は、GDF−8モジュレート物質を検出するための本発明の方法に適している。そのような蛋白質は、スクリーニング技術および本明細書に記載されるActRIIB結合アッセイまたはレポーター遺伝子アッセイを用いて単離することができる。蛋白質試料は、蛋白質ライブラリーからスクリーニングし得る。
【0149】
E.GDF−8またはGDF−8受容体と結合するいずれかの蛋白質の融合体
GDF−8またはGDF−8受容体と結合するいずれかの蛋白質の融合蛋白質は、他の蛋白質もしくは他の蛋白質の一部との融合によりより安定化させ得る。安定性を増大させるためのGDF−8モジュレート物質のモディフィケーションは、それらを低用量でまたは少ない頻度で投与できるため、治療に関して利点がある。少なくとも免疫グロブリン、例えば定常領域、場合により免疫グロブリンのFc断片との融合は、これらの蛋白質の安定性を増大させ得る。そのような融合蛋白質の調製は、当分野で周知であり、容易に実施することができる(例えば、Gerburg Spiekermann (2002) J. Exp. Med., 96:303-310を参照のこと)。
【0150】
GDF−8プロペプチドFc融合阻害物質(米国特許公報第2003/0104406-A1号により詳しく記載され、その対応部分は出典明示により本明細書の一部とされる)は、IgG分子のFc領域またはその断片と共有結合で連結されたGDF−8前駆蛋白質のアミノ−末端ドメインから開裂されるポリペプチドを含む。
【0151】
GDF−8プロペプチドFc融合阻害物質は、ヒトGDF−8プロペプチドまたはGDF−8プロペプチドの変異体と、IgG1、IgG4または低下されたエフェクター機能のためにモディファイされたIgG1のFc領域とを含む。GDF−8プロペプチドは、安定化するモディフィケーションを含んでモディファイされ得る。
【0152】
F.GDF−8の潜在的な複合体のプロテアーゼ活性化の阻害物質
GDF−8の潜在的な複合体のプロテアーゼ活性化の阻害物質は、米国特許公報第2004/0138118 A1号に記載されている(その対応部分は出典明示により本明細書の一部とされる)。特定のプロテアーゼは、遊離している場合または成熟GDF−8二量体と会合している場合に、プロペプチドを開裂させて、成熟GDF−8二量体に結合できなくせ、その活性を阻害する。このように、プロテアーゼは、小さな潜在的複合体(成熟GDF−8と関係し、プロペプチドにより阻害される)を、活性なGDF−8に変換できる。プロペプチドはひとたび開裂されると、成熟GDF−8二量体に結合し、不活性化することができなくなる。GDF−8の小さい潜在的な複合体のプロテアーゼ活性化の阻害物質は、成熟GDF−8二量体に対するプロペプチド結合特性を増大させ、GDF−8活性を阻害するであろう。これらの阻害物質は、プロテアーゼと拮抗的に結合し、自然な潜在的な複合体を結合することを防ぐか、または、それらも成熟GDF−8二量体に結合し、不活性な阻害物質−成熟二量体複合体を形成してもよい。
【0153】
金属プロテアーゼは、BMP−1/TLDファミリーの金属プロテーゼに代表され、それらは、少なくとも4個の哺乳類の蛋白質、BMP−1(Wozneyら、Science 242:1528-1534, 1988)、哺乳類のTolloid(トロイド)(mTLD;Takaharaら、J.Biol. Chem. 269:32572-32578, 1994)、哺乳類のTolloid様−1(mTLL-1;Takaharaら、Genomics 34:157-165, 1996)および哺乳類のTolloid様−2(mTLL-2;Scottら、Devel. Biol. 213:283-300, 1999)が含まれる(それぞれ、出典明示により本明細書の一部とされる)。
【0154】
抗体、核酸およびペプチドに基づく試薬を含む、様々な金属プロテアーゼ阻害物質、GDF−8モジュレート物質は、米国特許公報第2004/0138118 A1号に記載されている(出典明示により本明細書の一部とされる)。GDF−8の小さい潜在的プロテアーゼ活性化の阻害物質、例えば金属プロテアーゼ活性を阻害する物質には、あらゆる形式の分子、例えば、ペプチド、ペプチド誘導体、例えばペプチドヒドロキシマートもしくはフォスフィン酸ペプチド、またはペプトイドが含まれてよく、米国特許公報第2004/0138118 A1号(米国特許公報第2005/0043232 A1もまた参照のこと)に記載のスクリーニングアッセイを通じて同定し得る。
【0155】
GDF−8の小さい潜在的な複合体のプロテアーゼ活性化を阻害する具体的な物質は、金属プロテアーゼ酵素に対してプロペプチドGDF−8と競合するペプチドが含まれる。これらのペプチドは、プロペプチドの一部、プロペプチド部分を含む全長のGDF−8プロペプチドの一部、金属プロテアーゼの開裂部分に突然変異を有するGDF−8プロペプチド誘導体が含まれ得る。上掲の米国特許公報に記載されるように、1つの実施形態において、GDF−8のペプチド部分の誘導体は、GDF−8プロペプチドに相当するペプチドである。この実施形態の1つの態様において、ペプチド試薬に関し、誘導体は、金属プロテアーゼが改変された開裂活性を有するよう、開裂部位にもしくはその十分近傍に、突然変異、例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入を有するプロペプチドである。誘導体またはモディファイされたペプチドは、生物学的環境に存在し得るプロテアーゼ、酸化剤、もしくは他の反応性の物質に対する改善された安定性を含み、例えば上記のモディフィケーションを含み得る。
【0156】
金属プロテアーゼ酵素に対する阻害性の抗体、ならびに該ペプチドおよび抗体に基づくGDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体はまた、本発明に用いることができ、当分野で既知の技術により容易に作製することができる。
【0157】
ペプチド試薬は、野生型もしくは変異型のGDF−8モジュレート物質配列またはその誘導体を含む、約10、20、30、40または50アミノ酸残基長、またはそれ以上の長さであり得る。例えば、P1部位(金属プロテアーゼ開裂部位のすぐ上流)またはP1‘部位(金属プロテアーゼ開列部位のすぐ下流)に1つまたはそれ以上のアミノ酸交換を有するペプチドは変化し得る。あるGDF−8モジュレート物質において、P1’部位でのアスパラギン酸のアラニンへの置換(配列番号:2の76番目に相当する)は、野生型のGDF−8プロペプチド配列に関する10、20、30、40および50アミノ酸長のプロペプチドに含まれる(米国特許公報第2004/0138118 A1)。
【0158】
そのようなGDF−8モジュレート物質は、例えば、本明細書で記載するように、レポーター遺伝子アッセイ、GDF−8捕捉もしくは競合結合ELISAにおいて、検出および/または同定することができる。GDF−8の潜在的な複合体の金属プロテアーゼ活性化をモジュレートするGDF−8モジュレート物質を検出し得る例示的な検出試薬は、限定されるものではないが、プロペプチドに基づく試薬、および金属プロテアーゼBMP−1/TLDファミリーの1つまたはそれ以上の金属プロテアーゼの基質結合部分を含む金属プロテアーゼ配列と結合する試薬、成熟GDF−8蛋白質、またはその一部に対する抗体が含まれ、これらは、競合アッセイに用いることができよう。
【0159】
6.GDF−8阻害物質の模倣体
本発明の方法に使用されるGDF−8阻害物質の模倣体は、本明細書に記載される方法により検出することもできる。これらGDF−8阻害物質の合成類似物、特に、長い半減期を有するか、または分解系により容易に分解され難いよう改良された試験管内の特徴を有するものはいずれも、有用である。
【0160】
GDF−8に対する抗体、GDF−8受容体、モディファイされた可溶性の受容体および受容体融合体に対する抗体、およびGDF−8、例えば、GDF−8プロペプチド、成熟GDF−8プロペプチド、フォリスタチンおよびフォリスタチンドメインを含有する蛋白質と結合する他の蛋白質、ならびにそれらのFc融合体の模倣体はすべて、本発明に用いることができる。
【0161】
これらの模倣体は、GDF−8の活性を阻害する場合、特に、それらが、GDF−8のその受容体に対する結合を阻害する場合、本発明において有効であろう。本発明の最も有効な模倣体は、GDF−8またはGDF−8/GDF−8受容体の複合体と特異的に結合する特徴を有するであろう。そのような模倣体は、高親和力で成熟GDF−8と結合することができ、そして、その成熟蛋白質が単量体型であっても、活性な二量体型であっても、またはGDF−8の潜在的な複合体にて複合化していても、その成熟蛋白質と結合することができるであろう。本発明の模倣体は、例えば、ActRIIB 結合の阻害およびレポーター遺伝子アッセイにより示されるように、試験管内および生体内でGDF−8活性を阻害することができる。さらに、開示される模倣体は、骨格筋量および骨密度の負の調節と関係するGDF−8活性を阻害し得る。
【0162】
7.非蛋白質性阻害物質
非蛋白質性阻害物質には、例えば、核酸が含まれる。
A.核酸
用語「非蛋白質性」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)を意味し、要すれば、リボ核酸(RNA)またはペプチド核酸(PNA)を意味する。この用語は、核酸類似物、および一本鎖もしくは二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を含むものであると理解されるべきである。ポリヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、プラスミドDNAもしくはその断片、ウイルスDNAもしくはRNA、アンチセンスRNAなどが含まれる。用語「プラスミドDNA」は、環状の二本鎖DNAを意味する。本明細書で用いられる「アンチセンス」は、配列の相補性のため、mRNAのコード領域および/または非コード領域の一部とハイブリダイズすることができ、それによりmRNAからの翻訳を干渉する核酸を意味する。用語「siRNA」および「RNAi」は、mRNAの分解を誘導し、それにより、遺伝子発現を「サイレンシング」する能力を有する二本鎖RNAである核酸を意味する。典型的には、siRNAは、15−50ヌクレオチド長であり、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。
【0163】
GDF−8活性を阻害することができる核酸は、例えば、本明細書で提供される方法により検出することができる。そのような阻害物質は、GDF−8自体と相互作用する蛋白質をコードし得る。あるいは、そのような阻害物質は、GDF−8蛋白質またはGDF−8受容体(例えば、ActRIIB)と相互作用することができる蛋白質をコードし、本発明のGDF−8阻害物質を発現し得る。別法としては、アンチセンス核酸は、GDF−8またはGDF−8受容体(例えば、ActRIIB)産生を阻害するために用いることができる。アンチセンス配列は、相補的なコード配列と相互作用して機能を損なわせ、GDF−8またはGDF−8受容体の産生を阻害するよう作用し得る。
【0164】
本発明に使用するための核酸は、例えば、上記のActRIIB結合アッセイおよびレポーター遺伝子アッセイを用いて同定される。ヌクレオチドに基づくGDF−8モジュレート物質についての検出試薬は、例えば、相補的なヌクレオチドまたは該物質と特異的に結合する抗体が含まれよう。
【0165】
本発明の開示内容は、GDF−8蛋白質と結合することができるGDF−8モジュレート物質を検出することについての好ましい実施例を示すが、他のGDF−8活性をモジュレートするGDF−8モジュレート物質は、本発明の方法を用いて検出することができることは認められる。同様に、本発明の開示内容は、診断もしくは治療調製物の生体内投与に関連して、ヒトおよび他の哺乳動物において、GDF−8モジュレート物質レベルを検出することおよび/またはモニタすることに関するが、この方法論は、他の応用およびその種のものに使用するために適用できることは認められよう。
【0166】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施例を提供する。当業者であれば、本発明の精神または範囲を変えることなく実施することができる、多くの改良および改変が認められよう。そのような改良および改変は、本発明の範囲内に含まれる。実施例は、本発明をいかようにも限定するものではない。
【0167】
(実施例)
実施例1
ヒト血清試料中のMYO−029を検出するため、ELISAを以下のように行った。最初に、ストレプトアビジン被覆用溶液(100μL/ウェル)(0.1M炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中のイムノピュア・ストレプトアビジン(Pierce)5μg/mL)を96ウェルプレート(高結合性の平底マイクロタイター)(Costar、カタログ番号3590)のウェルに加えることで、ストレプトアビジンを吸着させた。このプレートを、シール性フィルムで覆い、2〜8℃で一晩インキュベートした。自動のプレート洗浄機を用いて、プレートを、THST緩衝液(300μL/ウェル)(1.0mMグリシン、0.5M NaClおよび0.05%v/v/Tween20(登録商標)(J.T. Baker)を含む、50mM トリス−HCl、pH8.0)で、2回目の洗浄後にプレートの向きを換えて4回(4×)洗浄した。ブロックのため、200μLのブロッキング緩衝液(PBS(Dulbeccos)中、1%ウシアルブミン(Sigma)、0.02%アジ化ナトリウム)を、各ウェルに加えた。プレートを、シール性フィルムで覆い、室温で1〜2時間インキュベートした後、上記のように洗浄した。ビオチン化GDF−8溶液(ビオチン:GDF−8のモル比、0:1から3:1の間)(100μL/ウェル)(THST緩衝液中、0.5μg/mL)を、プレートのウェルそれぞれに加えた。プレートをシールし、振盪しながら室温で2時間±15分間インキュベートした。
【0168】
MYO−029の較正標準を、THST緩衝液中に90.0、60.0、40.0、26.7、17.8、11.9、7.90、5.27および3.51ng/mLで調製した。MYO−029の実際に使用する較正溶液は、正常なヒト血清(Bioreclamation, Inc.)中、1080ng/mL MYO−029にて調製した。最初に、1080ng/mLの保存液を、アッセイ緩衝液(THST緩衝液+4%脱脂粉乳)に8倍に希釈し、次に、得られた135ng/mLの標準液の1.5倍希釈系列を、THST+4%脱脂粉乳+12.5%正常ヒト血清で調製し、較正標準濃度を得た。3.51ng/mL〜135ng/mLの範囲に及ぶよう調製されたMYO−029較正標準は、100%ヒト血清中28.1から1080ng/mLに等しい。ヒト血清について、決定された最小希釈比は1:8であった。MYO−029の品質管理基準は、THST+4%脱脂粉乳+12.5%正常ヒト血清中、135、270および540ng/mLで二重に別々に調製した。
【0169】
試験試料を、THST緩衝液+4%脱脂粉乳を用いて8倍に希釈した(40μLの試料と280μLの緩衝液)。8倍より高い希釈物は、最初に、THST緩衝液+4%脱脂粉乳に1:8で希釈し、次に、THST緩衝液+4%脱脂粉乳+12.5%ヒト血清でさらに希釈した。
【0170】
固定化されたビオチン化GDF−8を含むプレートを、THST緩衝液(300μL/ウェル)で、2回目の洗浄後にプレートの向きを換えて4回(4×)洗浄した。THST緩衝液+4%脱脂粉乳+12.5%正常ヒト血清(100μL/ウェル)の二重ブランクおよび二重の品質管理試料(100μL/ウェル)を含み、較正標準(上記)を、プレートに二重に加えた(100μL/ウェル)。試験試料(100μL/ウェル)を、残りのプレートのウェルに二重に加えた。
【0171】
プレートをシール性フィルムで覆い、プレート振盪器上、室温で2時間±10分間インキュベートした。結合していない蛋白質を取り除くため、プレートを、THST緩衝液(300μL/ウェル)で、2回目の洗浄後にプレートの向きを換えて4回(4×)洗浄した。
【0172】
マウス抗−ヒトIgG−HRP溶液(100μL/ウェル)(Southern Biotechnology Associates, Inc.)を、各バッチで決定された実際に使用される希釈率で加えた。例えば、THST中、検出試薬1:60,000希釈が、ある抗−ヒトIgG−HRPロットに関しては最適であった。プレートを、プレート振盪器上、室温で1時間±10分間インキュベートし、次いで、THST緩衝液(300μL/ウェル)で、2回目の洗浄後にプレートの向きを換えて4回(4×)洗浄した
【0173】
固定化された検出試薬を検出するため、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質溶液(100μL/ウェル)(BioFX Laboratories)を、プレートの各ウェルに加えた。プレートを、暗所、室温で、約9〜12分間インキュベートし、次に、0.18M 硫酸(100μL/ウェル)を、基質の添加と同じ順序でプレートの各ウェルに加えた。光学密度は、波長450nmで記録した。
【0174】
品質管理および試験試料濃度は、ドラッグ・メタボリズム・ラボラトリー・マネージメント・システム(Drug Metabolism Laboratory Information Management System)(Watson)、バージョン7.0.1.を使用し、4−変数ロジスティック関数を用いてフィットし、標準曲線からの補完により決定した。試料濃度は、以下の式:
【化1】

[式中、y=シグナル(OD);x=濃度;a=濃度ゼロでのシグナル;d=無限濃度のシグナル;c=aとdとの間の、およその中間点のシグナルとなる濃度;b=cでの、もしくはc付近の傾き]を用いて決定した。品質管理曲線および標準曲線の例示的なデータを、表1に示す。これらのデータでは、試料濃度は、高Q1,2の平均についてはy=1.827;x=67.8186;a=0.101805;d=3.74133;c=72.8445;b=1.45512を用いて計算された。
【0175】
希釈要素を記入し、試験試料の最終濃度を決定した。較正標準の分散(CV)は、12.5%ヒト血清中、7.90−90.0ng/mLの範囲にわたって7.5%かもしくはそれ以下であり、外因性のMYO−029の定量分析の場合、100%ヒト血清中、約720〜60ng/mLであった。
【0176】
マウス、ラット、サルおよびラビット血清試料を含む、ヒト以外の血清試料については、わずかな変更を加えてアッセイを行った。これらのデータは、複数のバックグラウンドマトリックス中でのMYO−029の免疫学的検定の感受性および特異性を示す。ヒト、マウス、ラット、サルおよびラビットの実用的な血清希釈レベルは、少なくとも1:8、1:4、1:4、1:8および1:4のそれぞれで決定した。
【表2】

【0177】
実施例2
希釈の直線性:本方法の希釈の直線性を、MYO−029をスパイクしたヒト血清試料を11個の異なる希釈物を分析することにより評価した。最初に、54000ng/mLの試料を、THST緩衝液+4%脱脂粉乳で1:8に希釈し、続いて、THST緩衝液+4%脱脂粉乳+12.5%ヒト血清にて連続希釈(1:2)した。希釈は、アッセイ範囲以上、範囲内、範囲以下で行った。希釈の偏りは、アッセイの定量範囲、9.7%〜0.4%内にある試料の偏りを用いて決定した。偏りに傾向は見られなかった。観察された濃度は、期待されたものよりも小さく、阻止帯(ポロゾーン)効果の証拠はなかった。
【0178】
特異性:試料マトリクス(または、マトリクス効果)による潜在的な非特異的な干渉を、10個の異なるヒト血清ロット(個々のドナー)を用い、MYO−029のスパイク濃度0、135、および540ng/mLでのスパイク/回復実験により調べた。内因性ミオスタチン(GDF−8)による干渉は、0、1、2、10および1000ng/mLのGDF−8を、MYO−029(132、265、および529ng/mL)を含む確認試料にスパイクすることで評価した。内因性のGDF−8のレベルは、1ng/mLよりも低いと考えられる。MYO−029をスパイクした、またしていない個々の血清試料についての結果は、表2に示す。スパイク濃度、540ng/mLでは、10個の血清中9個が、期待された濃度の20%以内の平均観察濃度を示した。1番の血清の再分析で、その値は、期待された濃度の15%以内であった。スパイク濃度、135ng/mLでは、10個の血清中8個は、期待された濃度の20%以内の平均観察濃度を示した。3番の血清の再分析で、その値は、期待された濃度の15%以内であった。1番の血清で観察された高いパーセントの偏りは、再分析により、その値は期待される濃度の20%より大きいままであることが確認された。MYO−029を加えない場合、10個の血清全てで、MYO−029の観察濃度は計測の検出限界以下であった(すなわち、100%ヒト血清中、63.2ng/mL未満)。データは、有意なマトリックス効果がないことを示す。
【表3】

【0179】
さらに、GDF−8存在下でのMYO−029の回復の結果は二重に行い、定量した。MYO−029を検出するELISAの技能の影響は、MYO−029試料を0、1、2もしくは10ng/mLのGDF−8と共にインキュベートした場合、観察されなかった。観察された濃度は、期待された値の20%以内にあった。MYO−029試料を、1000ng/mLのGDF−8と共にインキュベートした場合、MYO−029の観察される濃度は、期待される濃度の40%であった(偏り)。しかしながら、GDF−8は<1ng/mLで存在し得るため、このデータは、循環GDF−8がアッセイの感度を乱すものではないことを示す。2mg/mLのMYO−029をラットに皮下投与する実験では、MYO−029は、以下のように検出され、定量された。
【表4】

【0180】
この実験では、以下の曲線変数を得た:最小値=0.117195;最大値=3.73079;傾き=1.53126;Ed50=58.7133;およびR−二乗=9988。
【0181】
実施例3
GDF−8は、次のようにビオチン化した。全長のGDF−8を、GDF−8の潜在的な複合体型を与える、フェドバッチCHO細胞培養生物反応器プロセスで発現させた。この細胞培養液回収物は、通常のフロー微視孔濾過を用いて不純物を取り除き、次に、濃縮して接線流(tangential flow)限外ろ過を用いて通過ろ過(diafilter)した。保持液のプールを、Ni2+−NTA固定化された金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)に通じ、そこにGDFF−8複合体を補足させた。溶出は、50mM NaHPO、300mM NaCl、20−500mM イミダゾール線形勾配を5カラム容量で行った。次に、得られたピークを、透析により緩衝液−交換を行い、IMAC−によるイミダゾールを取り除き、ビオチン化反応のための適当な緩衝液に置換した。
【0182】
次に、潜在的な複合体調製物をビオチン化した。反応には、標的スルホ−NHS−LC−ビオチンのGDF−8複合体に対するモル比は14:1を用いた。試薬の基質に対する割合は、10:1、15:1および20:1もまた試した。例えば、固体ビオチン試薬(EZ−リンク・スルホ−NHS−ビオチン、Pierce Biotechnology)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に200g/Lで溶解した後、それをGDF−8複合体試料に加えた。反応は、100mM NaHPO、150mM NaCl、pH7.2中、1.5g/Lよりも低いGDF−8複合体濃度を用い、4℃で120分間行った。この反応混合物を、反応の開始時に穏やかに混合し、反応の間、光を遮断した。この反応は、0.5%(v/v)エタノールアミンまたは5.0%(v/v)1000mM トリスを加えることにより停止させた。
【0183】
次に、このビオチン化GDF−8複合体を、透析により緩衝液交換して、低pH、高カオトロピック濃度の緩衝液(6000mM ウレア、300mM NaCl、50mM HPO、pH=2.5)にした。複合体の解離は、低pHでのプロトン化により生じる。この緩衝液中で、複合体を、プロペプチドおよび成熟した二量体に解離し、可溶化する。また、遊離ビオチンも透析の間に取り除かれる。次に、保持液のプールを、高速サイズ排除クロマトグラフィーにかけ、GDF−8の成熟二量体型を、プロペプチドおよび残存する単量体から分離した。
【0184】
ビオチン化されたGDF−8の成熟二量体型を含む画分を、0〜90%(v/v)CHCN、0.1%(v/v)CFCOH、pH=2.0を用いた5カラム容量での線形勾配によるブチル高速逆相クロマトグラフィーでさらに処理した。この工程のピークを、透析して緩衝液交換し、低pHフォーミュレーション緩衝液(0.1%(v/v)CFCOH、pH=2.0)とした。
【0185】
ビオチン化された成熟GDF−8二量体は、機能、例えばその活性の維持について、結合アッセイおよびレポーター遺伝子アッセイで評価された。ビオチン化成熟GDF−8蛋白質はまた、逆相高速液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化四極子飛行時間型質量分析法(RP−HPLC/ESI−QTOF−MS)により測定され、その調製物は、約0−3のモル比の、大部分の分子は1:1の混合物を含んだ。当業者に周知の条件調節により、高い標的モル比は9:1と高い測定結果を示した。
【0186】
MYO−029は、同様のアッセイを用いてビオチン化され、本明細書に記載の方法に用いることができる。重要なことは、単離されたMYO−029を希釈し、緩衝液交換した後、ビオチン化することである。反応条件および保存条件は、2、3個のパラメータを除き、GDF−8の場合と同じである。MYO−029の濃度値は、10〜24g/Lの範囲にある。ビオチン化反応における標的スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce)のMYO−029に対するモル比は、40:1であり、測定されるモル比は、8−11であった。これは、アビジン:HABA A600nm分光アッセイ(イムノピュアアビジンおよびHABA, Pierce)により測定される。次に、透析を用いて、この試薬を緩衝液交換し低塩濃度、通常のpHフォーミュレーション緩衝液(137mM NaCl、1mM KCl、8mM NaHPO、3mM KHPO、pH=7.2)にした。
【0187】
実施例4
本明細書で提供される方法の1つの実施形態において、GDF−8モジュレート物質は、競合結合ELISAを用いて検出される。このアッセイはでは、GDF−8のActRIIB(または他のGDF−8結合パートナー、例えばGDF−8受容体)に対する結合を阻害する物質が、同定および定量される。このアッセイには、捕捉物質としてのGDF−8パートナーを表面に接触させる工程、生体試料の存在下および不在下でGDF−8を加える工程、および複合体形成を検出する工程を含む。
【0188】
ある実施形態において、GDF−8の潜在的な複合体は、20分子のEZ−リンク・スルホ−NHS−ビオチン(Pierce)に対して1分子のGDF−8の割合で、氷上で2時間ビオチン化した。この反応は、0.5%TFAを用いてpHを下げることにより停止させ、複合体を、Cジュピター(Jupiter)250×4.6mmカラム(Phenomenex)を用いたクロマトグラフィーにかけ、成熟GDF−8をGDF−8プロペプチドから分離した。TFA/CHCN勾配を用いて溶出したビオチン化成熟GDF−8画分を集め、濃縮し、そしてマイクロBCAプロテインアッセイ・リージェントキット(Pierce)により定量した。
【0189】
組み換えActRIIB−Fcキメラ(R&D Systems)を、96ウェル平底アッセイプレート(Costar)に、0.2M 炭酸ナトリウム緩衝液中1μg/mLで4℃、一晩かけて被覆させた。次に、標準的なELISAプロトコルに従って、プレートを、1mg/mLのウシ血清アルブミンを用いてブロッキングし、洗浄した。GDF−8阻害物質(例えば、10−11M〜10−7Mの濃度範囲)を含むもしくは含まない、種々の濃度(例えば、10ng/mL)のビオチン化GDF−8の一部、100μlを、ブロックしたELISAプレオートに加え、1時間インキュベートして、洗浄し、そして結合したGDF−8の量を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA-HRP, BD PharMingen)に続いて、TMB(KPL, Gaithersburg, MD、カタログ番号50−76−04)を添加して検出した。測色測定は、マイクロプレートリーダーにて450nmで行うことができる。
【0190】
実施例5 レポーター遺伝子アッセイ
GDF−8の生物活性に関し、GDF−8モジュレート物質は、細胞に基づくレポーター遺伝子アッセイ(RGA)で検出される。
ヒト横紋筋肉腫細胞系A204を用い、そのA204(ATCC HTB−82)を、周知の技術を用いて、レポーター遺伝子構築物、pGL3(CAGA)12(米国特許公報第2003/0138422 A1号および第2004/0142382 A1号に記載される)を安定にトランスフェクトした。あるいは、A204細胞を、FuGENE.TM.6トランスフェクション試薬(Boehringer Manheim, Germany)を用いて、pGL3(CAGA)12を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションに続き、細胞を96ウェルプレート中、2mM グルタミン、100U/mLストレプトマイシン、100μg/mLペニシリンおよび10%ウシ胎児血清を含むMcCoyの5A培地で16時間培養した。細胞を、グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリンおよび10%ウシ胎児血清を含むMcCoyの5A培地中、一定量(75ng/mL)の成熟GDF−8蛋白質を用いて、または用いずに、また対照については37℃で6時間、陽性対照希釈系列で処理した。場合により、GDF−8の量は、ルシフェラーゼシグナルの最大の約80%が得られる量が選択される。MYO−029をGDF−8と共に室温で1時間予めインキュベートし、次に、その蛋白質をRGAに加えた。MYO−029は、GDF−8モジュレート物質の陽性対照滴定を生じるよう、0.1pM〜10nMの範囲の濃度でアッセイした。ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を用いて、標的細胞で定量した。このアッセイで、75ng/mLのGDF−8は、80%の活性化を示したが、400ng/mLのMYO−029は、レポーター遺伝子構築物の80%の阻害を示した。
【0191】
併発反応について、細胞は、75ng/mLの成熟GDF−8を用いる、また用いない、および試験生体試料を用いる、また用いずに処理した。ヒト血清は、MYO−029処置を受けている個体から得て、緩衝液中で1:5、1:10、1:15、1:20および1:40に希釈した。1:10よりも低い希釈に関しては、試験試料血清をさらに10%ヒト血清(Bioreclamation, Inc.)を含む緩衝液で希釈した。
【0192】
実施例6:MYO−029に対する抗体
MYO−029の抗原結合部位に対する抗体を含む、MYO−029に対する中和抗体は、以下のように作製した:ラビットを、完全なMYO−029またはMYO−029結合部位を含むMYO−029蛋白質部分のいずれかを用いて免疫した。ヒト抗体の定常領域に対するラビットの強い免疫応答の発生を防ぐため、蛋白質分解消化を行わせてMYO−029抗体のFc部分を取り除いた。2匹のラビットを、完全MYO−029もしくは消化されたMYO−029のいずれかを用いて免疫した。出血液を、リガンド結合アッセイを用いて、中和活性について試験した。この手順により、中和抗体を産生した。4匹の動物は、すべて優れた抗体力価の結果を示し、陽性対照ラビット血清は、4匹の動物すべてから出血液を集めて産生した。
【0193】
本開示内容において言及される、全ての刊行物、特許および生物配列は、完全に出典明示により一部とされる。その範囲で、出典明示により一部とされる物質が、本明細書に反するか、または不一致であれば、本明細書が、そのような物質のいずれについても代わって適用されよう。本明細書中で引用されるいかなる引例も、本発明の先行技術と認めるものではない。
【0194】
特に示さない限り、成分量、細胞培養、処置条件、および特許請求の範囲を含む、詳細な説明中に用いられるその他の記載を表す全ての数字は、用語「約」により、あらゆる事例で変更されるものと理解されるべきである。従って、そうではないと特に記載しない限り、数に関するパラメータは、およそのものであり、本発明により得られると考えられる所望の特徴に応じて変更し得る。特に記載しない限り、一連の要素に付随する、用語「少なくとも」は、一連の要素それぞれを言及すると理解されるべきである。当業者であれば、本明細書に記載される発明の具体的な実施形態と均等なものを、一般以上の実験を要することなく、認められるであろうし、または認めることができる。そのような均等物は、添付する特許請求の範囲に包含されるものである。
【0195】
詳細な説明中の実施例は、本発明の実施の例示を提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。当業者であれば、多くの他の実施形態が本発明に包含されることは容易に認められる。本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の詳細および実施を考慮することで認められよう。詳細な説明および実施例は、添付の特許請求の範囲で示される発明の本来的な範囲および意図の単なる例と考えられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法であって、
(a)試験されるべき個体からの生体試料を、GDF−8活性についての試験管内アッセイに加えること;
(b)GDF−8活性のモジュレーションを検出すること;および
(c)生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションを、対照生体試料存在下でのGDF−8活性のモジュレーションと比較し;
それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質の存在を検出することを含む、方法。
【請求項2】
個体からの生体試料によるGDF−8活性のモジュレーションを、それぞれが既知濃度のGDF−8モジュレート物質を含む複数の対照試料と比較することにより、生体試料中のGDF−8モジュレート物質のレベルを定量することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体試料が、GDF−8モジュレート物質が投与されているか、または投与された疑いのある個体からの試料を含むところの、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
個体が、哺乳類、鳥類、爬虫類または魚類であるところの、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
個体が哺乳類であるところの、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
哺乳類がヒトであるところの、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生体試料が、血清、血液、血漿、生検標本、組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、ミルク、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液または粘液から選択されるところの、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
生体試料が、血清、血液または血漿から選択されるところ、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
GDF−8モジュレート物質が、GDF−8蛋白質と特異的に結合する抗体であるところの、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
GDF−8モジュレート物質が、MYO−029であるところの、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
試験管内アッセイが、免疫学的検定であるところの、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
免疫学的検定が、
(a)成熟GDF−8蛋白質二量体であるGDF−8蛋白質を、反応容器の表面と接触させること;
(b)生体試料を、反応容器に加えること;
(c)検出試薬を加えること;および
(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の複合体を検出することを含むところの、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
GDF−8蛋白質が、ビオチン部分を含み、そのビオチン部分を介して該表面と接触するところの、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が約5:1より小さく、成熟GDF−8二量体が潜在的なGDF−8複合体の一部としてビオチン化されているところの、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が、約0.5:1から約4:1の間であるところの、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
GDF−8蛋白質の添加前に、アビジンまたはストレプトアビジンが反応容器の表面に吸着されるところの、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
免疫学的検定が、
(a)可溶性のGDF−8受容体を、反応容器の表面と接触させること;
(b)生体試料を、反応容器に加えること;
(c)標識化GDF−8蛋白質を、反応容器に加えること;および
(d)生体試料の存在下および不在下の表面と会合した標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量を検出し、生体試料存在下での標識化GDF−8蛋白質/GDF−8受容体の複合体の量の減少により、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するところの、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
生体試料を反応容器に加える前に、生体試料を標識化GDF−8蛋白質と共にインキュベートする工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
標識化GDF−8蛋白質が、ビオチン部分を含むところの、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が、約5:1より小さいとところの、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が、約0.5:1から約4:1の間であるところの、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
試験管内アッセイが、細胞に基づくレポーター遺伝子アッセイであるところの、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(a)GDF−8−応答調節因子およびレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物を有する宿主細胞を、反応容器に供すること;
(b)生体試料を反応容器に加えること;および
(c)生体試料の存在下および不在下で、細胞内のレポーター遺伝子の発現を検出し、
それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
レポーター遺伝子の存在下で、色、ルミネセンスまたは蛍光を変化させる基質を加えることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
GDF−8モジュレート物質が、
(a)GDF−8と特異的に結合する抗体;
(b)GDF−8結合パートナーと特異的に結合する抗体;
(c)GDF−8受容体;
(d)ActRIIB蛋白質;
(e)フォリスタチン−ドメインを含有する蛋白質;
(f)フォリスタチン蛋白質;
(g)GASP−1蛋白質;
(h)GDF−8蛋白質;
(i)GDF−8プロペプチド;
(j)非−蛋白質性阻害物質;または
(k)小分子
から選択されるところの、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
GDF−8モジュレート物質が、GDF−8と特異的に結合する抗体であるところの、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
GDF−8モジュレート物質が、MYO−029であるところの、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法であって、
(a)成熟GDF−8蛋白質を反応容器の表面と接触させること;
(b)生体試料を反応容器に加えること;
(c)検出試薬を反応容器に加えること;および
(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/GDF−8蛋白質の複合体を検出し、
それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む、方法。
【請求項29】
成熟GDF−8蛋白質が、ビオチン部分を有し、そのビオチン部分を介して該表面と接触するところの、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が、約5:1より小さいところの、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ビオチン部分の成熟GDF−8蛋白質に対するモル比が、約0.5:1から約4:1までの間であるところの、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
GDF−8蛋白質の添加前に、アビジンまたはストレプトアビジンが反応容器の表面に吸着されるところの、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
GDF−8モジュレート物質が、GDF−8と特異的に結合する抗体であるところの、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
抗体がモノクローナル抗体であるところの、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗体がMYO−029であるところの、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
検出試薬が、GDF−8モジュレート物質と特異的に結合する抗体または標識化GDF−8蛋白質から選択されるところの、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
検出試薬が、免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合する抗体であるところの、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
免疫グロブリンが、ヒト免疫グロブリンであるところの、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
試験生体試料によるGDF−8活性のモジュレーションを、それぞれが既知濃度のGDF−8モジュレート物質を含む複数の対照試料と比較することにより、生体試料中のGDF−8モジュレート物質のレベルを定量することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
外因性のGDF−8モジュレート物質を同定することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
生体試料が、GDF−8モジュレート物質が投与されている、または投与された疑いのある個体からの試料を含むところの、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
生体試料が、哺乳類、鳥類、爬虫類または魚類からのものであるところの、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
生体試料が哺乳類からのものであるところの、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類がヒトであるところの、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
生体試料が、血清、血液、血漿、生検標本、組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、ミルク、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液または粘液から選択されるところの、請求項28に記載の方法。
【請求項46】
生体試料が、血清、血液または血漿から選択されるところの、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法であって、
(a)GDF−8蛋白質またはGDF−8蛋白質と特異的に結合する蛋白質から選択される捕捉物質を、反応容器の表面と接触させること;
(b)生体試料を反応容器に加えること;
(c)検出試薬を反応容器に加えること;および
(d)反応容器の表面と会合したGDF−8モジュレート物質/捕捉物質の複合体を検出し、
それにより、生体試料中の外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む、方法。
【請求項48】
捕捉物質が、ビオチン部分を含む成熟GDF−8蛋白質であるところの、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ビオチン部分のGDF−8蛋白質に対するモル比が、約5:1より小さいところの、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビオチン部分の成熟GDF−8蛋白質に対するモル比が、約0.5:1から約4:1までの間であるところの、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
捕捉物質が、
(a)GDF−8と特異的に結合する抗体;
(b)可溶性のGDF−8受容体;
(c)ActRIIB蛋白質;
(d)フォリスタチン−ドメインを含有する蛋白質;
(e)フォリスタチン蛋白質;
(f)GASP−1蛋白質;および
(g)GDF−8プロペプチド
から選択される、GDF−8蛋白質と特異的に結合する蛋白質であるところの、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法であって、
(a)GDF−8受容体を、少なくとも第一および第二の反応容器の表面と接触させること;
(b)生体試料およびGDF−8蛋白質を、(a)工程の第一の反応容器に加えること;
(c)対照試料およびGDF−8蛋白質を、(a)工程の第二の反応容器に加えること;
(d)検出標識を、第一および第二の反応容器に加えること;および
(e)第一の反応容器中の検出可能な標識信号を第二の反応容器中の信号と比較し、
それにより生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む、方法。
【請求項53】
ヒト生体試料中のGDF−8モジュレート物質を検出するための方法であって、
(a)GDF−8モジュレート物質の投与のための、ヒトの候補体を同定すること;
(b)候補体からの生体試料を準備すること;
(c)生体試料を、GDF−8活性についての試験管内アッセイに加えること;
(d)GDF−8活性のモジュレーションを検出すること;および
(e)候補体からの試験生体試料の存在下のGDF−8活性のモジュレーションを、対照生体試料存在下のGDF−8活性のモジュレーションと比較し、
それにより、外因性のGDF−8モジュレート物質を検出することを含む、方法。
【請求項54】
生体試料中のMYO−029を検出するための方法であって、
(a)5:1より小さいビオチンのGDF−8二量体に対する平均の比を有する、ビオチン化された成熟GDF−8蛋白質の二量体を、反応容器の表面に接触させること;
(b)生体試料を反応容器に加えること;
(c)ヒト免疫グロブリンと特異的に結合する標識化抗体を、反応容器に加えること;および
(d)反応容器の表面と会合したMYO−029/ビオチン化GDF−8蛋白質の複合体を検出し、
それにより、生体試料中のMYO−029を検出することを含む、方法。
【請求項55】
標識が、酵素、エピトープタグ、放射性標識、ビオチン、色素、蛍光タグ標識またはルミネセンス標識から選択されるところの、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ビオチンのGDF−8二量体に対する比が、約0.5:1から4:1であるところの、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
生体試料が、GDF−8モジュレート物質が投与されている、または投与された疑いのある個体からの試料を含むところの、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
個体が、哺乳類、鳥類、爬虫類または魚類であるところの、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
個体が哺乳類であるところの、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
哺乳類がヒトであるところの、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
生体試料が、血清、血液、血漿、生検標本、組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、脳脊髄液、羊水、ミルク、初乳、乳腺分泌液、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液または粘液から選択されるところの、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
生体試料が、血清、血液または血漿から選択されるところの、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
標識化抗体が、ヒト免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合するところの、請求項54に記載の方法。

【公表番号】特表2008−537488(P2008−537488A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503214(P2008−503214)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/010723
【国際公開番号】WO2006/102574
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】