説明

GIS上のポリゴンデータ編集方法

【課題】 効率的且つ精度の高いGIS上のポリゴンデータの編集方法の提供
【解決手段】 ポリゴン地図データにおいて各ポリゴンと対応するポイントをポリゴン内に設け、当該ポイントにユニークな文字データを関連付ける第1の手段と、ポリゴン属性データにおいて前記ユニークな文字データを主キーとして作成する第2の手段と、前記ポリゴン地図データと前記ポリゴン属性データを前記ユニークな文字データにより照合し、相互データの同一性を検査する第3の手段からなるGIS上のポリゴンデータ編集方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的且つ精度の高いGIS上のポリゴンデータの編集作業を行うための方法に関し、より具体的には、ポイントインポリゴンの手法を用いたGIS上のポリゴンデータ編集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、地形・地質・植生・気候など自然的条件界、行政界・建物・産業・人口などの社会的条件界、道路・鉄道・上下水道などの社会基盤施設等の地理的に表現可能な情報(以下、「空間情報」という)を、コンピュータで統合的に管理・加工・解析し、視覚的に表現することにより高度な分析や迅速な意思決定等を支援するシステムとして地理情報システム(Geographic Information System、以下「GIS」という)が脚光を浴びている。
【0003】
既存の汎用GIS用ソフトウェアには作図機能を備えたものもあるが、作業効率が悪いために作図作業には汎用のCADソフトウェアを使用して作業を行い、作成した図形を変換ツールにより変換後、汎用GIS用ソフトウェア側で属性を付加し、地図情報との関連付けを行っている。
【0004】
地形図等の地図データは多くの業者から市場に供給されており、これらをベースとしてGISデータを作成することが一般的になっているが、定期的に更新されるGISデータを効率的にシステムに反映する必要が生じていた。
【0005】
そこで、地形図等の地図データが更新された場合であっても、簡単に旧GISデータと同期させることができる地理情報の処理方法が提言されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−175849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今、空間情報利活用のニーズが、官民を問わず急激に立ち上がり始めている中、従来型の定期データ更新(年一回等)に代わり、リアルタイムなGISデータの更新ニーズが顕在化してきている。
【0007】
GISデータの更新に際しては、ポリゴンデータと属性の対応付けを正確に行う必要がある。そのためGISでは、ポリゴンに識別番号を付することが多く、識別番号の付与は、対話処理で行うこととなるが、対象となるポリゴン数が増えると対話処理による操作ミスが発生し、精度が高いデータを作成する事が困難になるという問題がある。
また、地図データと属性データに不整合が生じた際には、地図データと属性データを突き合わせながらデータの整合性を確認する必要があり、データ更新に多大な労力を要するという問題がある。
【0008】
更に、作成したポリゴンデータを活用するために、ポリゴンの中心にグラフ、文字記号等を表示するニーズがあるが、ポリゴンの中心座標を算出するのは容易ではなく、ポリゴンデータの充分な活用が図られていなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、効率的且つ精度の高いGIS上のポリゴンデータの編集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、ポリゴンと注記又はシンボルを効率的に関連付け、ポリゴンデータ内に注記又はシンボルのポイントを設けることで、ポリゴン地図データ作成作業とポリゴン属性データ作成作業を並行して行うことを可能としたことにある。
関連づけの例としては、大字ポリゴンと地番、筆ポリゴンと地番、家屋ポリゴンと家屋番号などがある。これにより、ポリゴンデータを識別番号毎に呼び出して検査することなく、文字データとして作成したものを検査することでポリゴンデータを検査することができるようになった。
【0011】
本発明の、第2の特徴は、ポリゴンデータと一対一に対応する注記又はシンボルのポイントが、対応するポリゴン内に唯一所属することを、ポイントインポリゴンの手法を用いて確認することで、作成したポリゴン地図データの検査を行うことである。
なお、当該検査を行う上での前提条件としては、文字データがその文字を表示するための原点座標をポリゴン内に有することが必要となる。すなわち、原点座標がポイントインポリゴンにおけるポイントとなる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、ポリゴンの中心にグラフ、文字、記号等を表示するために必要なポリゴンの中心座標の算出を、ポイントインポリゴンの手法により、自動算出することにある。
【0013】
すなわち、請求項1の発明は、ポリゴン地図データにおいて各ポリゴンと対応するポイントをポリゴン内に設け、当該ポイントにユニークな文字データを関連付ける第1の手段と、ポリゴン属性データにおいて前記ユニークな文字データを主キーとして作成する第2の手段と、前記ポリゴン地図データと前記ポリゴン属性データを前記ユニークな文字データにより照合し、相互データの同一性を検査する第3の手段からなるGIS上のポリゴンデータ編集方法である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1の手段において、前記ポイントが同一ポリゴン内に唯一であること、前記ポイントがポリゴン内に必ず存在すること、及び前記文字データに重複がないことを検査することを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1の手段における検査は、ポイントインポリゴンの手法により行うことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記ポイントポリゴンの手法は、前記ポイントから引いた半直線とポリゴン枠線との交点座標の最小有効桁数より1桁小さい任意の値を、当該交点座標に加算することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、更に、前記ポリゴン地図データにおいて各ポリゴンにユニークなポリゴンIDを付与する第4の手段と、前記ポリゴン属性データにおいて前記ポリゴン地図データと主キーが一致する属性データに前記ポリゴンIDを関連付ける第5の手段とを有することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、更に、前記ポリゴン地図データにおいて前記ユニークな文字データと、前記ポリゴンIDとを出力する第6の手段を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、ポリゴンの縦横長を比較し、長い方の中心を基準座標とし、当該基準座標の中心点からポリゴン長手方向と垂直にX軸又はY軸に平行な直線を引き、当該平行な直線とポリゴンを構成する線分との交点を算出し、算出した交点の座標を昇順又は降順に並べ替え、並べ替えた座標の順番でペアを構成し、各ペアが構成する線分のうち、最も長い線分の中心をポリゴンの中心とするポリゴンデータ編集方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地図データと属性データの作成・更新作業を並行して行うことが可能となるため、GISにおけるポリゴンデータ更新作業を大幅に効率化することができる。
【0021】
また、地図データと属性データの関連付けが出力結果から一瞥することができるため、作成・更新したポリゴンデータの検査を容易に行うことが可能となる。
【0022】
また、ポリゴンの中心にグラフ、文字記号等を表示するためのポリゴンの中心座標を自動算出することができるため、ポリゴンデータの活用が図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
1.GISにおけるポリゴンデータの作成
本発明に係るポリゴンデータの作成は、図1に示す手順で行う。以下、図1に示す手順について説明する。
【0024】
(1)ポリゴン地図データの作成
ポリゴン地図データに地番図を関連付ける際に、注記を筆内(ポリゴン内)に入力し、注記ポイントを作成する。この作業を行うことにより、各ポリゴンと注記原点が一対一で対応するので、ポイントインポリゴンによる検査を行うことが可能となる。
図2は、各ポリゴンに地番を注記した様子を示したものである。左上のポリンゴンをみると分かるように、「101-1」という数字が地番を示しており、その左にある点が注記ポイントである。
地番図を関連付けたポリゴン地図データの検査では、次の3つの項目を後述するポイントインポリゴンの手法によりチェックする。これによりエラーのあるポリゴンが自動抽出される。
(i)一つのポリゴン内に複数の注記ポイントがあるもの(複数地番)
(ii)ポリゴン内に注記ポイントが存在しないもの(無番地)
(iii)注記の地番に重複があるもの(重複地番)
【0025】
(2)ポリゴン属性データの作成
GISにおいては、地図データに属性情報を関連付けることができるため、ポリゴンデータの作成にあたっては、同時に属性データを作成する必要がある。
本発明においては、地番を主キー(属性キー)とすることにより、地図データと属性データの関連づけを行うことができるため、地図データの作成・検査作業と並行して、属性データを作成することができる。図3は、属性データ作成項目の一例である。
属性データについても、地図データと同様に、作成後に複数地番、無番地、重複地番についての検査が行われる。
【0026】
(3)照合検査
作成した属性データの地番を属性キーとして、地図データのポリゴンに関連付けた注記との間でマッチングを行い、照合検査を実施する。照合検査では、次の2つのチェックを行い、エラーが生じた際には各データを参照し、データの修正を行う。
(i)属性データにあって地図データにないデータがないこと
(ii) 地図データにあって属性データないデータがないこと
【0027】
(4)PID(ポリゴンID)の付番
一定のルールでユニークなPIDを作成し、ポリンゴンに付番する。このPIDにより各ポリゴンは、GIS上で一意に扱われることとなる。図4は、地図データ上でポリゴンにPIDを割り当てる際のイメージ図であり、図面左上のポリゴンから、順にPIDが割り当てられている。属性データへのPIDの付番は、先に作成した属性キーにより地図データと対応付けることで、高速かつ確実にPIDを割り当てることが可能となる。
【0028】
(5)属性キーの検査
地番図を出力すると、各ポリゴンと、地番、PIDの関連を一瞥して把握することができるため、データ作成根拠(地番素図等)をもとに、地図データと属性データの関連づけが正しく行われていることの検査を容易に行うことができる。
【0029】
2.ポイントポリゴン
ポイントインポリゴンとは、ポリゴン内に検査点が存在するかの判定のことであり、図5に示すとおりの手順で行われる。まず、検査対象の点からX軸又はY軸と並行に半直線をとる(ステップ11)。その半直線とポリゴンの枠線との交点の個数を数える(ステップ12)。そして、その交点の数が偶数なら外部の点と、奇数なら内部の点と判定する(ステップ13〜15)。
例えば、図6の例では、点Aとポリゴンとの交点の個数は2個であり偶数であることから、点Aはポリゴンの外側にあることが分かり、点Bとポリゴンとの交点の個数は1個であり奇数であることから、点Bはポリゴンの内側にあることが分かる。
【0030】
しかしながら、図7に示すような特種なケースの場合には、上記ロジックのみで検査点がポリゴン内に存在するかを検証することができない。そこで、各点、線分の座標値が少数位以下の桁を固定値で持つことに着目し、固定桁+1桁の数値を点に加算し、再検査を行い、その存在位置を確定させることとした。
なお、ポリゴンの頂点に存在する場合は、別途の方法(線分距離0等)で識別する。
【0031】
3.ポリゴン中心座標の算出方法
本発明に係るポリゴン中心座標の算出方法は、まずポリゴンの縦横長を比較し、長い方の中心を基準座標に採用する。次に基準座標の中心点からポリゴン長手方向と垂直となるようにX軸又はY軸に平行な直線を引き、当該平行な直線とポリゴンを構成する線分との交点を算出する。算出した交点の座標を昇順もしくは降順に並べ替え、並べ替えた座標の順番によるペアを構成する(交点は偶数となるため、余りは生じない)。各ペアの中心は、ポリゴン内部に存在することとなり、各ペアが構成する線分のうち、最も長い線分の中心がポリゴンの中心である。
【0032】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0033】
実施例1は、本発明に係るポイントインポリゴンの具体例である。本実施例における前提条件は、以下のとおりである。
(前提条件)
実施例1においては、対照となるシステムがその有効桁数を少数点以下第3位としているものとし、半直線を検査対象となる交点からY軸に平行に引くものとする。また検査対象の交点のX座標は、123.112とする。
【0034】
従来のポイントポリゴンの手法では、X座標123.112とポリゴンを構成する線分との交差回数のみを計算することとなる。しかしながら、ポリゴンを構成する線分にX座標が123.112を有する場合には、検査対象の交点がポリゴンを構成する線分上に存在することとなる。
実施例1の手法によれば、123.112を直接検証せず有効桁数より1桁多い値を加えた123.1121(特別加算する値は、0.001〜0.009までのどの値でも良い)を新検査対象点する。新検査対象点は、ポリゴンを構成する線分上に存在することはないため、ポイントポリゴンにおけるエラーの発生を回避することが可能となる。
なお、半直線は任意の方向に引いてもよいが、X軸又はY軸に平行とすれば、半直線の方程式のX値、Y値のいずれかに特別加算をすればよいので便利である。
【実施例2】
【0035】
実施例2は、本発明に係るポリゴン中心座標の算出方法の具体例である。
なお、ポリゴンの中心座標とは、ポリゴンの内部にあり、概ね見た目の中心である座標のことを指すものとする。
【0036】
ポリゴン中心座標の算出方法を、図8を用いて説明する。
(1)ポリゴンの縦横を比較し、長い方の中心を基準座標に採用する。本実施例では、YLと比べXLの方が長いため、XLの中心点を基準座標とする。
(2)基準座標の中心点からY軸に平行な直線Lを引く。
(3)上記直線Lとポリゴンを構成する線分との交点A〜Dを算出する。
(4)算出した交点の座標を昇順もしくは降順に並べ替える。
(5)並べ替えた座標の順番によるペアを構成する。各ペアの中心は、ポリゴン内部に存在することとなるため、各ペアが構成する線分のうち、最も長い線分の中心をポリゴンの中心とする。本実施例では、A−BとC−Dがペアとなり、線分A−Bと比べ線分C−Dが長いため、中心座標は線分C−Dの中心であるSとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るポリゴンデータの作成手順である。
【図2】本発明に係るポリゴン地図データ作成作業のイメージである。
【図3】本発明に係るポリゴン属性データ作成作業のイメージである。
【図4】ポリゴンへのPID割り当てのイメージである。
【図5】ポイントインポリゴンの判定処理の流れ図である。
【図6】ポリゴンの内側と外側に検査点が存在する場合の例である。
【図7】ポリゴンの線上に検査点が存在する場合の例である。
【図8】ポリゴンの中心座標の算出方法の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリゴン地図データにおいて各ポリゴンと対応するポイントをポリゴン内に設け、当該ポイントにユニークな文字データを関連付ける第1の手段と、
ポリゴン属性データにおいて前記ユニークな文字データを主キーとして作成する第2の手段と、
前記ポリゴン地図データと前記ポリゴン属性データを前記ユニークな文字データにより照合し、相互データの同一性を検査する第3の手段からなるGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項2】
前記第1の手段において、前記ポイントが同一ポリゴン内に唯一であること、前記ポイントがポリゴン内に必ず存在すること、及び前記文字データに重複がないことを検査することを特徴とする請求項1のGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項3】
前記第1の手段における検査は、ポイントインポリゴンの手法により行うことを特徴とする請求項2のGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項4】
前記ポイントポリゴンの手法は、前記ポイントから引いた半直線とポリゴン枠線との交点座標の最小有効桁数より1桁小さい任意の値を、当該交点座標に加算することを特徴とする請求項3のGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項5】
更に、前記ポリゴン地図データにおいて各ポリゴンにユニークなポリゴンIDを付与する第4の手段と、
前記ポリゴン属性データにおいて前記ポリゴン地図データと主キーが一致する属性データに前記ポリゴンIDを関連付ける第5の手段とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかのGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項6】
更に、前記ポリゴン地図データにおいて前記ユニークな文字データと、前記ポリゴンIDとを出力する第6の手段を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのGIS上のポリゴンデータ編集方法。
【請求項7】
ポリゴンの縦横長を比較し、長い方の中心を基準座標とし、当該基準座標の中心点からポリゴン長手方向と垂直にX軸又はY軸に平行な直線を引き、当該平行な直線とポリゴンを構成する線分との交点を算出し、算出した交点の座標を昇順又は降順に並べ替え、並べ替えた座標の順番でペアを構成し、各ペアが構成する線分のうち、最も長い線分の中心をポリゴンの中心とするポリゴンデータ編集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−30717(P2006−30717A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210918(P2004−210918)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(502271494)株式会社五星 (3)
【Fターム(参考)】