説明

GM−CSF受容体に対する結合構造要素

顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFRα)受容体のα鎖に対する結合構造要素、特に抗体分子。炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、喘息、アレルギー反応、多発性硬化症、骨髄性白血病およびアテローム性動脈硬化症の治療における本結合構造要素の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子受容体α鎖(GM-CSFRα)に対する結合構造要素に関し、特に抗GMCSFRα抗体分子に関する。本発明はまた、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患および多発性硬化症を含む、GMCSFRαを介した炎症性疾患、呼吸器疾患および自己免疫疾患の治療におけるこれらの結合構造要素の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
GM-CSFは、好中球、好酸球、マクロファージおよびそれらの前駆細胞を含む広範囲の造血細胞型の生存、増殖および/または分化を促進するI型炎症性サイトカインである。GM-CSF受容体は、ヘマトポエチン受容体スーパーファミリーのメンバーである。それはαおよびβサブユニットからなるヘテロ二量体である。そのαサブユニットはGM-CSFに高度に特異的であるのに対して、βサブユニットはIL3およびIL5を含む他のサイトカイン受容体に共用されている。このことはβ受容体サブユニットのより広い組織分布に反映されている。αサブユニットであるGM-CSFRαは、主として骨髄系細胞および非ヘマトポエチン細胞(non-haematopoietic cell)上、例えば好中球、マクロファージ、好酸球、樹状細胞、内皮細胞および呼吸上皮細胞上に発現する。完全長GM-CSFRαは、I型サイトカイン受容体ファミリーに属する400アミノ酸のI型膜糖タンパク質であり、22アミノ酸のシグナルペプチド(位置1-22)、298アミノ酸の細胞外ドメイン(位置23-320)、位置321-345の膜貫通ドメインおよび短い55アミノ酸の細胞内ドメインからなる。シグナルペプチドが切断されて378アミノ酸のタンパク質であるGM-CSFRαの成熟体を生じる。ヒトおよびマウスGM-CSFRαのcDNAクローンは入手可能であり、受容体サブユニットはタンパク質レベルで36%の一致を示す。GM-CSFはαサブユニット単独(Kd1〜5nM)に比較的低い親和性で結合できるが、βサブユニット単独には全然結合できない。しかしながら、αサブユニットとβサブユニットの両方が存在すると、親和性の高いリガンド・受容体複合体(Kd=約100pM)が生成する。GM-CSFによる情報伝達は、GM-CSFがGM-CSFRα鎖に最初に結合し、ついでより大きなサブユニットである共通β鎖と架橋して高親和性相互作用を生じることにより起こり、これによりJAK-STAT経路がリン酸化される。GMCSFへのGM-CSFRの結合は引用文献[1]に概説されている。この相互作用は、チロシンリン酸化およびMAPキナーゼ経路活性化によっても情報伝達を起こすことができる。
【0003】
病理学的に、GM-CSFは炎症性疾患、呼吸器疾患および自己免疫疾患を悪化させるのに役割を果たしていることが示されている。従って、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合の中和は、GM-CSFRを介した疾患および状態の治療への治療的アプローチである。
Nicolaら[2]は、2B7-17-Aまたは“2B7”と呼ばれるヒトGM-CSFRαに対するマウス抗体を記載したが、これはヒトGM-CSFRαに対して比較的高親和性を有し、いくつかの異なるバイオアッセイにおいてヒトGM-CSFの生物学的作用の強力な阻害剤であることを報告した。抗体2B7はChemiconからMAB1037として市販されており、MAB1037の製品データシートは、抗体2B7がGM-CSFの生物学的作用の強力な阻害剤であることを注記している。2B7はWO94/09149においても開示された。
【発明の開示】
【0004】
ナイーブファージscFvライブラリーからの選択、ランダム突然変異誘発ならびに適切に設計された生化学的および生物学的アッセイの組み合わせを用いることにより(以下の実験の部参照)、我々は、ヒトGM-CSFRαに結合し、ヒトGM-CSFのその受容体における作用を阻害する極めて強力な抗体分子を同定した。本明細書に記載の結果は、我々の抗体が、公知の抗GM-CSFRα抗体2B7と比較してGM-CSFRαの異なる領域またはエピトープに結合することを示しており、驚いたことに、種々の生物学的アッセイにおいて示されるように2B7よりもより強力であることを示している。
よって、本発明は、ヒトGM-CSFRαに結合し、ヒトGM-CSFのGM-CSFRαへの結合を阻害する結合構造要素に関する。本発明の結合構造要素はGM-CSFRのアンタゴニストであり得る。本結合構造要素は、GM-CSFRを介するGM-CSFによる情報伝達の競合的可逆的阻害因子であり得る。
【0005】
本明細書に記載の実験およびさらに裏づける技術文献により示されるように、本発明の抗体および他の結合構造要素は、GM-CSFRαに結合し中和するのに特に有益であり、従って、炎症性疾患および自己免疫疾患を含むGM-CSFRαに媒介される疾患の治療に有用である。例えば、細胞系アッセイにおいて、本発明の抗体は、天然GM-CSFがその受容体に結合することにより引き起こされるサイトカイン(例えばIL-6およびTNFα)放出を阻害することができることを我々は明らかにした。下記にさらに詳細に説明されるように、GM-CSFRαへの結合を遮断することによるGM-CSF作用の阻害は、関節リウマチ(RA)、喘息、煙が引き起こす気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー反応、多発性硬化症(MS)、骨髄性白血病およびアテローム性動脈硬化症などの疾患を治療するための治療的アプローチである。
【0006】
本発明記載の結合構造要素は、一般にGM-CSFRαの細胞外ドメインに結合する。好ましくは、本発明の結合構造要素は、Tyr-Leu-Asp-Phe-Gln(YLDFQ)(配列番号201、成熟ヒトGM-CSFRα(配列番号206)の位置226-230)の少なくとも1つの残基に結合する。本結合構造要素は、ヒトGM-CSFRαのYLDFQ配列における少なくとも1つの残基に結合することができ、例えば本結合構造要素は、YLDFQ配列の1つ、2つ、3つまたは4つの残基に結合することができる。従って、本結合構造要素は、この配列内の1以上の残基を認識することができ、場合により本結合構造要素は、さらなる隣接する残基またはGM-CSFRαの細胞外ドメインにおける構造的に隣接した残基にも結合することができる。
【0007】
結合は任意の適切な方法により測定でき、本明細書の他の部分で詳細に説明されているように、例えば、ペプチド結合スキャン(peptide-binding scan)を使用することができ、例えばPEPSCANベースのエンザイムイムノアッセイ(ELISA)などを使用することができる。ペプチド結合スキャン、例えばPEPSCAN Systemにより得られるものにより、結合構造要素への結合について、抗原由来の短いオーバーラップペプチドが系統的にスクリーニングされる。ペプチドアレイを作製するために、支持体表面にペプチドを共有結合させることができる。簡潔に言えば、ペプチド結合スキャン(例えば“PEPSCAN”)は、本結合構造要素が結合する1組のペプチドであって、配列番号206のフラグメント(例えば配列番号206の約15連続残基のペプチド)に対応するアミノ酸配列を有する該ペプチドを同定(例えばELISAを用いて)し、本結合構造要素により結合される残基のフットプリントであって、オーバーラップペプチドに共通している残基を含む該フットプリントを決定するためにペプチドをアラインメントすることを含む。本発明によれば、ペプチド結合スキャンまたはPEPSCANにより同定されたフットプリントは、配列番号206の位置226-230に対応するYLDFQの少なくとも1つの残基を含むことができる。フットプリントは、YLDFQの1、2、3、4またはすべての残基を含むことができる。本発明記載の結合構造要素は、例えば、本明細書記載のペプチド結合スキャンまたはPEPSCAN法により測定されるように、配列番号206の位置226-230に対応する残基YLDFQの1以上、好ましくはすべてを含む、配列番号206のペプチドフラグメント(例えば15残基の)に結合することができる。従って、本発明の結合構造要素は、配列番号206の15連続残基のアミノ酸配列を有するペプチドであって、前記15残基配列が配列番号206の位置226-230におけるYLDFQの少なくとも1つの残基を含むかまたは配列番号206の位置226-230におけるYLDFQと少なくとも部分的にオーバーラップする前記ペプチドと結合することができる。結合を測定するための適切なペプチド結合スキャン法の詳細は、本明細書の他の部分で詳細に説明される。抗体が結合する残基を決定するために使用できるおよび/またはペプチド結合スキャン(例えばPEPSCAN)結果を確認するために使用できる当該分野で公知の他の方法は、部位特異的突然変異誘発、水素重水素交換、質量分析法、NMRおよびX線結晶学を含む。
【0008】
よって、本発明の結合構造要素は、好ましくはGM-CSFRαを中和する。中和は、GM-CSFRαの生物活性の低下または阻害、例えばGM-CSFのGM-CSFRαへの結合またはGM-CSFRαによる情報伝達、例えばGM-CSFRα媒介性反応により測定される情報伝達の低下または阻害を意味する。生物活性における低下または阻害は部分的または全体的であり得る。抗体がGM-CSFRαを中和する程度をその中和能と呼ぶ。効力は、当業者に公知のおよび/または本明細書で説明もしくは引用した1以上のアッセイを用いて測定または評価することができる。例えば、本結合構造要素は、以下のアッセイ:
・生化学的リガンド結合アッセイ
・TF-1増殖アッセイ
・ヒト顆粒球形態変化アッセイ
・カニクイザル非ヒト霊長類顆粒球形態変化アッセイ
・単球TNFα放出アッセイ
・顆粒球生存アッセイ
・コロニー形成アッセイ(血球前駆細胞のin vitro GM-CSF媒介分化の阻害)
・例えばヒトGM-CSFRを発現するトランスジェニック骨髄を有するキメラマウスにおけるin vivo GM-CSF生物活性の阻害
・末梢血単核細胞サイトカイン放出アッセイ
の1以上において中和活性を有することができる。
【0009】
特記しない限り、効力は通常IC50値(pM)で表す。機能アッセイにおいて、IC50は、その最大の50%だけ生物学的反応を低下させる濃度である。リガンド結合研究において、IC50は最大特異的結合レベルの50%だけ受容体結合を低下させる濃度である。IC50は、%最大生物学的反応(例えば、増殖アッセイにおける3Hチミジン取り込み(cpm)として測定できる細胞増殖、形態変化アッセイにおける形態変化、TNFα放出アッセイにおけるTNFα放出、生存アッセイにおける生存性、コロニー形成アッセイにおけるコロニー数または生物活性試験における、ヒトGM-CSFRを発現しているトランスジェニック骨髄を有するキメラマウスにおける脾臓質量の増加もしくは循環単球の減少により示される)または結合構造要素濃度のlogの関数としての%特異的受容体結合をプロットし、Prism(GraphPad)などのソフトウェアプログラムを用いてデータをシグモイド関数にフィットさせ、IC50値を得ることにより算出できる。
IC50値は複数個の測定値の平均値を表すことができる。従って、例えば、3連実験の結果からIC50値を得ることができ、ついで平均IC50値を算出できる。
【0010】
TF-1増殖アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は通常1500pM未満のIC50を有する。例えば、IC50は<300、<60、<10または<1.5pMであることができ、例えば約1.0pMであり得る。IC50は通常少なくとも0.5または1.0nMである。公知のマウス抗体2B7は本アッセイにおいて約1600pMのIC50を有していた。本明細書において使用したTF-1増殖アッセイには、最終濃度7pMのヒトGM-CSFを用いた。このように、TF-1増殖アッセイにおけるIC50中和能は、7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるTF-1細胞の増殖を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくは、アッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
本発明の結合構造要素は、TF-1増殖アッセイにおいて-6、-7、-8、-9、-10、-10.5または-11より大きな負のpA2を有することができる。例えば、pA2は約-10.5または-11であり得る。pA2値の計算および有意性は、実験の部においてアッセイ方法および材料の項目で詳細に説明されている。
【0011】
ヒト顆粒球形態変化アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は、通常、100pM未満のIC50、例えば50pM未満または30、25、20、15もしくは10pM未満のIC50を有する。通常、IC50は少なくとも5、6または7pMである。それに引き換え公知のマウス抗体2B7は作用が弱く、本アッセイにおけるIC50測定値は477pMであった。本明細書において用いたヒト顆粒球形態変化アッセイには、最終濃度7pMのヒトGM-CSFを用いた。このように、ヒト顆粒球形態変化アッセイにおけるIC50中和能は、7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるヒト顆粒球の形態変化を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくはアッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
カニクイザル顆粒球形態変化アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は、通常20pM未満のIC50を有し、一般的には10、5または2.5pM未満のIC50を有する。IC50は少なくとも0.5、1または1.5pMであり得る。公知のマウス抗体2B7は、本アッセイにおいて試験するとき、26pMのIC50を有していた。本明細書において用いたカニクイザル顆粒球形態変化アッセイには、最終濃度7pMのヒトGM-CSFを用いた。このように、カニクイザル顆粒球形態変化アッセイにおけるIC50中和能は、7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるカニクイザル顆粒球の形態変化を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくはアッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
本発明の結合構造要素は、ヒトおよび/またはカニクイザル形態変化アッセイにおいて-6、-7、-8、-9、-10、-10.5または-11より大きな負のpA2を有することができる。好ましくはpA2は約-10または-11である。
【0012】
単球TNFα放出アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は、通常150pM未満のIC50を有し、一般的には110pM未満、例えば100pM未満のIC50を有する。IC50は、少なくとも30または40pMであり得る。本明細書において用いた単球TNFα放出アッセイには最終濃度1nMのヒトGM-CSFを用いた。従って、単球TNFα放出アッセイにおけるIC50中和能は、1nMヒトGM-CSFで刺激されるヒト単球からのTNFα放出を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくはアッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
【0013】
顆粒球生存アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は、通常1000pM未満のIC50を有し、一般的には850pM未満のIC50を有する。IC50は、500、250、150、100、50、30、20または10pM未満であり得る。IC50は少なくとも5pMであり得る。本アッセイにおいて、公知のマウス抗体2B7は83nMの濃度まで不活性である。本明細書において用いた顆粒球生存アッセイには最終濃度7pMのヒトGM-CSFを用いた。従って、顆粒球生存アッセイにおけるIC50中和能は、7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるヒト顆粒球の生存を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくはアッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
【0014】
コロニー形成アッセイにおいて、本発明の結合構造要素は、5μg/ml未満、2.5μg/ml未満、1μg/ml未満または0.3μg/ml未満のIC50を有することができる。好ましくは、IC50は0.25μg/ml以下、例えば0.1μg/ml未満である。IC50は少なくとも0.05μg/mlであり得る。公知のマウス抗体2B7は、本アッセイにおいて10μg/mlの濃度(67nM)までほとんど活性を示さない。本明細書において用いたコロニー形成アッセイには、最終濃度10ng/mlのヒトGM-CSFを用いた。従って、コロニー形成アッセイにおけるIC50中和能は、10ng/mlヒトGM-CSFにより引き起こされるコロニー形成を阻害する結合構造要素の能力を表す。さらに詳しくはアッセイ方法および材料セクションを参照のこと。
【0015】
本発明の結合構造要素は、ヒトGM-CSFで処理された、ヒトGM-CSFRを発現しているトランスジェニック骨髄を有するキメラマウスにおける脾臓質量の増加を阻害する能力および/またはGM-CSFにより引き起こされる循環単球の減少を阻害する能力を用量依存的に示し得る。脾臓質量増加阻害のIC50は、5mg/kg未満、2.5mg/kg未満、2mg/kg未満、1mg/kg未満または0.75mg/kg未満であり得る。いくつかの実施形態において、IC50は少なくとも0.5mg/kgであり得る。
【0016】
さらに、例えば表面プラズモン共鳴により、例えばBIAcoreを用いて、ヒトGM-CSFRαに対する結合構造要素の結合キネティクスおよび親和性を測定できる。本発明の結合構造要素は、通常5nM未満のKDを有し、より好ましくは4、3、2または1nM未満のKDを有する。好ましくは、KDは0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.15nM未満である。
【0017】
本発明の結合構造要素は、通常、ヒトGM-CSFRαに加えて、非ヒト霊長類GM-CSFRα、例えばカニクイザルGM-CSFRαに結合する。ヒトおよびマウスGM-CSF受容体間の相同性は低い(おおよそ36%)ので、本発明の結合構造要素は一般にマウス受容体と結合または交差反応しない。
通常、本発明の結合構造要素は、以下にさらに詳しく説明するように、抗体分子、例えば全長抗体または抗体フラグメントを含む。好ましくは、本発明の抗体分子はヒト抗体分子である。
本発明の結合構造要素は、通常抗体VHおよび/またはVLドメインを含む。結合構造要素のVHドメインおよびVLドメインもまた本発明の一部として提供される。VHおよびVLドメインのそれぞれの内部には、相補性決定領域(“CDR”)およびフレームワーク領域(“FR”)が存在する。VHドメインは1組のHCDRを含み、VLドメインは1組のL CDRを含む。抗体分子は、一般的にはVH CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VHドメインを含む。抗体分子は、代わりにあるいは同様に、VL CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VLドメインを含むことができる。VHまたはVLドメインフレームワークは、次の構造:
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
中のCDRにより散在させられた4つのフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0018】
本発明による抗体VHおよびVLドメイン、FRならびにCDRの例は、本開示の一部を形成する添付の配列表に記載されている。本明細書に記載のすべてのVHおよびVL配列、CDR配列、CDRの組ならびにHCDRの組およびL CDRの組は、本発明の側面および実施形態を表す。従って、本発明の一側面は、本発明による結合構造要素のVHドメインである。“1組のCDR”は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む。従って、1組のHCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3を意味し、1組のL CDRはL CDR1、L CDR2およびL CDR3を意味する。特記しない限り、“1組のCDR”はHCDRおよびL CDRを含む。典型的には、本発明の結合構造要素はモノクローナル抗体(mAb)である。
【0019】
実験の部にさらに詳しく記載されているように、我々はGM-CSFRαに結合する抗体分子のパネルを同定した。我々はまた、受容体結合および中和能に特に重要な相補性決定領域(CDR)内の特定の残基を同定した。CDRは主として結合構造要素の結合および特異性の決定に関与するため、本明細書の他の部分でさらに詳しく記載されているように、本明細書で定義する適切な残基を有する1以上のCDRを用い、任意の適切なフレームワーク、例えば抗体VHおよび/またはVLドメインフレームワークあるいは非抗体タンパク質足場(scaffold)中に組み込むことができる。例えば、1以上のCDRまたは抗体の1組のCDRをフレームワーク(例えばヒトフレームワーク)に移植して抗体分子または異なる抗体分子を得ることができる。例えば、抗体分子は本明細書に記載のCDRおよびヒト生殖系列遺伝子セグメント配列のフレームワーク領域を含むことができる。抗体には、フレームワーク内の1以上の残基を代えて、最も類似するヒト生殖系列フレームワークにおける等価位置の残基に合わせる生殖系列化(germlining)を行うことができる、フレームワーク内の1組のCDRを与えることができる。従って、抗体フレームワーク領域は、好ましくは生殖系列および/またはヒト抗体フレームワーク領域である。
【0020】
我々は、実験セクションに記載した方法に従って候補抗体のどの残基が抗原認識に重要であるかの調査を行い、ついで生物学的アッセイにおいて親抗体クローンよりも少なくとも5倍高い能力を示す160クローンの配列分析を行った。その結果、抗原結合性に寄与する以下の位置が示された:VLドメインにおけるKabat残基27A、27B、27C、32、51、52、53、90、92および96ならびにVHドメインにおけるKabat残基17、34、54、57、95、97、99および100B。本発明の好ましい実施形態において、これらのKabat残基の1以上は、添付の配列表に配列が開示された番号1、2および4〜20の抗体クローンの1以上に関する位置に存在するKabat残基である。種々の実施形態において、前記残基は、抗体3における前記位置に存在する残基と同じであることもでき、異なることもできる。
我々の分析により、受容体結合に特に強い影響を有する、CDRにおける4残基の位置が示された:H97、H100B、L90およびL92(Kabat番号付け)。好ましくは、VH CDR3のH97はSである。全160クローンにおいてこの位置にセリン残基が観察されたので、このことはセリン残基が抗原認識に重要な残基であることを示している。
【0021】
好ましくは、VH CDR3は以下の残基:
Kabat残基H95におけるV、N、AまたはL、最も好ましくはV;
Kabat残基H99におけるS、F、H、P、TまたはW、最も好ましくはS;
Kabat残基H100BにおけるA、T、P、S、VまたはH、最も好ましくはAまたはT
の1以上を含む。
好ましくは、VH CDR1におけるKabat残基H34はIである。好ましくは、VH CDR2はKabat残基H54におけるEおよび/またはKabat残基H57におけるIを含む。
【0022】
本結合構造要素が抗体VHドメインを含む場合、VHドメインフレームワークにおけるKabat残基H17は、好ましくはSである。Kabat残基H94は、好ましくはIまたはその保存的置換(例えばL、V、AまたはM)である。通常H94はIである。
好ましくは、VL CDR3は以下の残基:
Kabat残基L90におけるS、TまたはM、最も好ましくはSまたはT;
Kabat残基L92におけるD、E、Q、S、MまたはT、最も好ましくはDまたはE;
Kabat残基L96におけるA、P、S、T、I、L、MまたはV、最も好ましくはS、P、IまたはV、特別にはS
の1以上を含む。
【0023】
VL CDR3におけるKabat残基L95Aは、好ましくはSである。
好ましくは、VL CDR1は以下の残基:
Kabat残基27AにおけるS;
Kabat残基27BにおけるN;
Kabat残基27CにおけるI;
Kabat残基32におけるD
の1以上を含む。
好ましくは、VL CDR2は以下の残基:
Kabat残基51におけるN;
Kabat残基52におけるN;
Kabat残基53K
の1以上を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明の結合構造要素は、VHおよびVL CDRから選択される1以上のCDR、すなわち配列表に示される抗体1、2または4〜20のいずれかまたは親抗体3のVH CDR1、2および/または3ならびに/またはVL CDR1、2および/または3を含む。好ましい実施形態において、本発明の結合構造要素は、以下の抗体分子:抗体1(配列番号5);抗体2(配列番号15);抗体3(配列番号25);抗体4(配列番号35);抗体5(配列番号45);抗体6(配列番号55);抗体7(配列番号65);抗体8(配列番号75);抗体9(配列番号85);抗体10(配列番号95);抗体11(配列番号105);抗体12(配列番号115);抗体13(配列番号125);抗体14(配列番号135);抗体15(配列番号145);抗体16(配列番号155);抗体17(配列番号165);抗体18(配列番号175);抗体19(配列番号185);抗体20(配列番号195)のいずれかのVH CDR3を含む。好ましくは、本結合構造要素はさらに、配列番号3または配列番号173のVH CDR1および/または配列番号4のVH CDR2を含む。好ましくは、配列番号175のVH CDR3を含む結合構造要素は、配列番号173のVH CDR1を含むが、代わりに配列番号3のVH CDR1を含むこともできる。
【0025】
好ましくは、本結合構造要素は、以下の抗体:抗体1(配列番号3〜5);抗体2(配列番号13〜15);抗体3(配列番号23〜25);抗体4(配列番号33〜35);抗体5(配列番号43〜45);抗体6(配列番号53〜55);抗体7(配列番号63〜65);抗体8(配列番号73〜75);抗体9(配列番号83〜85);抗体10(配列番号93〜95);抗体11(配列番号103〜105);抗体12(配列番号113〜115);抗体13(配列番号123〜125);抗体14(配列番号133〜135);抗体15(配列番号143〜145);抗体16(配列番号153〜155);抗体17(配列番号163〜165);抗体18(配列番号173〜175);抗体19(配列番号183〜185);抗体20(配列番号193〜195)の1つの1組のVH CDRを含む。場合により、本結合構造要素はまた、これらの抗体の1つの1組のVL CDRを含むことができ、該VL CDRはVH CDRと同じまたは異なる抗体であり得る。一般に、VHドメインはVLドメインと対になって抗体抗原結合部位を形成するが、いくつかの実施形態において、VHまたはVLドメインを単独で使用して抗原と結合させることができる。L鎖の無差別な対形成(promiscuity)は当該技術分野で確立されており、VHおよびVLドメインは本明細書に記載のクローンと同じクローン由来である必要性はない。
【0026】
結合構造要素は、開示された1組のHおよび/またはL CDR内で、1以上の置換、例えば10以下、例えば1、2、3、4または5の置換を有する抗体1〜20のいずれかの1組のHおよび/またはL CDRを含むことができる。好ましい置換は、VLドメインにおけるKabat残基27A、27B、27C、32、51、52、53、90、92および96ならびにVHドメインにおけるKabat残基34、54、57、95、97、99および100B以外のKabat残基における置換である。これらの位置で置換がなされる場合、置換は、好ましくは、その位置で好ましい残基であるとして本明細書に記載されている残基に対するものである。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明の結合構造要素は、ヒト生殖系列フレームワーク、例えばH鎖VH1またはVH3ファミリー由来のヒト生殖系列フレームワークにおいて1組のHCDRを含むVHドメインを有する単離されたヒト抗体分子である。好ましい実施形態において、単離されたヒト抗体分子は、ヒト生殖系列フレームワークVH1 DP5またはVH3 DP47における1組のHCDRを含むVHドメインを有する。従って、VHドメインフレームワーク領域は、ヒト生殖系列遺伝子セグメントVH1 DP5またはVH3 DP47のフレームワーク領域を含むことができる。VH FR1のアミノ酸配列は配列番号251であり得る。VH FR2のアミノ酸配列は配列番号252であり得る。VH FR3のアミノ酸配列は配列番号253であり得る。VH FR4のアミノ酸配列は配列番号254であり得る。
【0028】
通常、本結合構造要素はまた中の1組のLCDR、好ましくはヒト生殖系列フレームワーク、例えばL鎖Vλ 1またはVλ 6ファミリー由来のヒト生殖系列フレームワーク中に1組のLCDRを含むVLドメインも有する。好ましい実施形態において、単離されたヒト抗体分子は、ヒト生殖系列フレームワークVλ 1 DPL8またはVλ 1 DPL3またはVλ 6_6a中に1組のLCDRを含むVLドメインを有する。従って、VLドメインフレームワークはヒト生殖系列遺伝子セグメントVλ 1 DPL8、Vλ 1 DPL3またはVλ 6_6aのフレームワーク領域を含むことができる。VLドメインFR4は、ヒト生殖系列遺伝子セグメントJL2のフレームワーク領域を含むことができる。VL FR1のアミノ酸配列は配列番号255であり得る。VL FR2のアミノ酸配列は配列番号256であり得る。VL FR3のアミノ酸配列は257であり得る。VL FR4のアミノ酸配列は配列番号258であり得る。
非生殖系列抗体は、同じCDRを有するが生殖系列抗体と比較して異なるフレームワークを有する。
【0029】
本発明の結合構造要素は、本明細書に記載の任意の結合構造要素、例えば抗体3または抗体1、2もしくは4〜20のいずれかとGM-CSFRαへの結合を競合することができる。従って、結合構造要素は、抗体1、2または4〜20のいずれかのVHドメインおよびVLドメインを含む抗体分子とGM-CSFRαへの結合を競合する事ができる。結合構造要素間の競合は、例えば、1つの結合構造要素へレポーター分子のタグをつけることによりin vitroで容易にアッセイできる。このタグは1以上の他のタグなし結合構造要素の存在下で検出できるため、同じエピトープまたはオーバーラップするエピトープと結合する結合構造要素の同定が可能になる。
競合は、例えばELISAを用いて測定できる。ELISAにおいて、例えばGM-CSFRαの細胞外ドメインまたは細胞外ドメインのペプチドがプレートに固定化され、1以上の他のタグなし結合構造要素と共に最初にタグをつけた結合構造要素がプレートに添加される。タグをつけた結合構造要素により生じるシグナルの低下により、タグをつけた結合構造要素と競合するタグなし結合構造要素の存在が認められる。同様に、表面プラズモン共鳴アッセイを用いて結合構造要素間の競合を測定できる。
競合試験において、抗原のペプチドフラグメント、特に関心のあるエピトープまたは結合領域を含むかまたは本質的にそれらからなるペプチドを使用することができる。エピトープまたは標的配列を有し、1以上のアミノ酸をいずれかの末端に加えたペプチドを使用できる。本発明による結合構造要素は、抗原に対するそれらの結合が所定の配列を有するかまたは含むペプチドにより阻害されるものであり得る。
ペプチドに結合する結合構造要素は、例えばペプチド(単数または複数)を用いるパンニングによりファージディスプレイライブラリーから単離することができる。
【0030】
本発明はまた、上記のように、競合アッセイにおける抗原レベルを測定するための結合構造要素の使用を提供する。すなわち、本発明により与えられる結合構造要素を用いることによる、競合アッセイにおけるサンプル中の抗原レベルを測定する方法を提供する。このことは、結合抗原と非結合抗原の物理的分離を必要としない場合に可能となる。本結合構造要素にレポーター分子を結合させることにより、結合で物理的または光学的変化が生じることは、1つの可能性である。レポーター分子は、検出可能で、かつ好ましくは測定可能なシグナルを直接または間接に生じることができる。レポーター分子の結合は直接的または間接的なものであることができ、共有結合による(例えばペプチド結合による)か、または非共有結合によるものであり得る。ペプチド結合による結合は、抗体およびレポーター分子をコードする遺伝子融合の組換え発現の結果として生じさせることができる。
【0031】
本発明はまた、例えばバイオセンサーシステムにおいて本発明による結合構造要素を用いることによる、抗原レベルの直接測定を提供する。
本発明は、本明細書記載の結合構造要素のGM-CSFRαへの結合を引き起こすまたは可能にすることを含む方法を提供する。このような結合は、例えば結合構造要素または、結合構造要素をコードする核酸の投与後にin vivoで生じさせることができ、あるいはこのような結合は、例えばELISA、ウェスタンブロット法、免疫細胞化学、免疫沈降、アフィニティークロマトグラフィーまたは細胞系アッセイ、例えばTF-1アッセイにおいてin vitroで生じさせることができる。
GM-CSFRαへの結合構造要素の結合量は測定できる。定量は試験サンプル中の抗原量に関連したものであることができ、これらの量は診断関心事または予後関心事であろう。
【0032】
本発明の任意の側面または実施形態による結合構造要素または抗体分子を含むキットもまた、本発明の一側面として提供される。本発明のキットにおいて、本結合構造要素または抗体分子は、例えば以下にさらに説明するように、サンプル中でその反応性が測定可能になるように標識化することができる。キットの成分は、一般に滅菌されており、シールバイアルまたは他の容器中に入れられる。抗体分子が有用な診断解析または他の方法にキットを使用できる。キットは、方法、例えば本発明記載の方法における成分の使用説明書を含むことができる。このような方法を援助するまたは実施することを可能にする補助材料を、本発明のキット内に含むことができる。
【0033】
サンプル中の抗体の反応性は、任意の適切な手段により測定できる。ラジオイムノアッセイ(RIA)は1つの可能性である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)に混合し、抗体に結合させる。結合抗原は非結合抗原から物理的に分離され、抗体に結合した放射性抗原の量が測定される。試験サンプル中に抗原の量が多いほど、抗体に結合する放射性抗原の量は少ない。レポーター分子に結合されている抗原またはアナログを用いる非放射性抗原で、競合結合アッセイを使用することもできる。レポーター分子は、スペクトル的に分離された吸収または放出特性を有する蛍光色素、蛍光体またはレーザー色素であり得る。適切な蛍光色素はフルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリンおよびテキサスレッドを含む。適切な発色色素はジアミノベンジジンを含む。他のレポーターは、着色され磁性または常磁性であるラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子または微粒子物質および、検出可能シグナルを直接または間接に、視覚化、電子的検出または他の手段で記録することを可能にする生物学的または化学的活性成分を含む。これらの分子は、例えば、発色または変色する反応を触媒するかまたは電気的性質の変化をもたらす酵素であり得る。それらは分子的に励起され、エネルギー状態間の電子遷移により特徴的な吸収または発色スペクトルをもたらすことができる。それらはバイオセンサーと共に用いる化合物を含むことができる。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出システムを使用することができる。
個々の抗体-レポーター結合体により生成されるシグナルは、サンプル(標準および試験)中の関連する抗体結合の定量化可能な絶対データまたは相対データを導くために用いることができる。
【0034】
さらなる側面において、本発明は、本発明記載の結合構造要素、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする配列を含む単離された核酸を提供する。核酸はDNAおよび/またはRNAを含むことができ、全合成されたものであることもでき、部分合成されたものであることもできる。本明細書に記載のヌクレオチド配列は、特定の配列を有するDNA分子を含み、特記しない限り、UがTに置換された特定の配列を有するRNA分子を含む。好ましい側面において、本発明はCDRまたは1組のCDRまたはVHドメインまたはVLドメインまたは抗体抗原結合部位または抗体分子、例えば本明細書で定義する本発明のscFvまたはIgG1またはIgG4をコードする核酸を提供する。本発明はまた、上記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形の構築物を提供する。
【0035】
さらなる側面は、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞または本発明の核酸を含む宿主細胞である。このような宿主細胞はin vitroであることもでき、培地中であることもできる。このような宿主細胞はin vivoであり得る。宿主細胞のin vivoでの存在は、“イントラボディ(細胞内発現抗体;intrabodies)”または細胞内抗体として本発明の結合構造要素の細胞内発現を可能にする。細胞内発現抗体は遺伝子治療に使用できる。
【0036】
よりさらなる側面は、このような核酸の宿主細胞への導入を含む方法を提供する。導入には任意の利用可能な技術を用いることができる。真核細胞に対しては、適切な技術は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクションおよび、レトロウイルスまたは他のウイルス、例えばワクシニアまたは(昆虫細胞に対しては)バキュロウイルスを用いる形質導入を含むことができる。宿主細胞、特に真核細胞に導入する核酸は、ウイルスベースまたはプラスミドベースシステムを使用することができる。プラスミドシステムはエピソーム的に維持することができ、あるいは宿主細胞または人工染色体に組込むこともできる。組込みは、単数または複数の遺伝子座における1以上のコピーのランダムまたは標的組込みのいずれかによることができる。細菌細胞に対しては、適切な技術は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いるトランスフェクションを含むことができる。
導入に続いて、例えば遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすかまたは可能にすることができる。
【0037】
一実施形態において、本発明の核酸は宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込まれる。組込みは、標準法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列の封入により促進される。
本発明はまた、上記の結合構造要素またはポリペプチドを発現させるために発現系において上記の構築物を用いることを含む方法を提供する。従って、本発明の結合構造要素、VHドメインおよび/またはVLドメインの製造方法は、本発明のさらなる側面である。この方法は前記結合構造要素、VHドメインおよび/またはVLドメインの産生をもたらす条件下で前記核酸を発現させ、それからそれを回収することを含むことができる。このような方法は、前記結合構造要素または抗体ドメインを産生させる条件下で宿主細胞を培養することを含むことができる。
本製造方法は、生成物の単離および/または精製のステップを含むことができる。本製造方法は、薬学的に許容される賦形剤などの少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物中に生成物を処方することを含むことができる。
【0038】
種々の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムは公知である。適切な宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母およびバキュロウイルス発現系およびトランスジェニック植物および動物を含む。原核細胞内での抗体および抗体フラグメントの発現は、当該技術分野で確立されている[3]。一般的な好ましい細菌宿主は大腸菌(E. coli)である。
培養下の真核細胞における発現もまた、結合構造要素の製造の選択肢の1つとして当業者に利用可能である[4、5、6]。異種ポリペプチドの発現のために当該技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、新生仔ハムスター腎臓細胞、NS0マウスメラノーマ細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト胚性網膜細胞等々を含む。
必要に応じてプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を含む適切な調節配列を含む適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、例えばファージミドあるいはウイルス、例えばファージであり得る[7]。例えば核酸構築物の製造、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現ならびにタンパク質の分析における、核酸の操作のための多くの公知の技術およびプロトコルは、Ausubelら[8]に詳細に説明されている。
【0039】
本発明は、抗原に結合する事ができる1以上の結合構造要素の製造方法であって、本発明記載の結合構造要素のライブラリーと前記抗原とを接触させ、前記抗原と結合できるライブラリーの1以上の結合構造要素を選択することを含む前記方法を提供する。
ライブラリーは、粒子または分子複合体、例えば複製可能な遺伝子パッケージ、例えば酵母、細菌もしくはバクテリオファージ(例えばT7)粒子または共有ディスプレイ、リボソームディスプレイもしくは他のin vitroディスプレイ系であって、各粒子または分子複合体がその上にディスプレイされた抗体VH可変ドメインおよび場合により存在する場合はディスプレイされたVLドメインをコードする核酸を含む前記粒子または分子複合体上にディスプレイされることができる。バクテリオファージまたは他のライブラリー粒子または分子複合体上にディスプレイされた抗原に結合できる結合構造要素の選択後、前記選択された結合構造要素をディスプレイしているバクテリオファージまたは他の粒子または分子複合体から核酸を取り出すことができる。このような核酸は、前記選択された結合構造要素をディスプレイするバクテリオファージまたは他の粒子または分子複合体から取り出した核酸配列を有する核酸からの発現による、結合構造要素または抗体VHもしくはVL可変ドメインのその後の製造に使用できる。
【0040】
前記選択された結合構造要素の抗体VH可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体VH可変ドメインは、このようなVHドメインを含む結合構造要素と同様に単離形で提供できる。
前記選択された結合構造要素の抗体VL可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体VL可変ドメインは、このようなVLドメインを含む結合構造要素と同様に単離形で提供できる。
GM-CSFRαに結合する能力をさらに試験することができる。同様に、抗体1〜20(例えばscFvフォーマットおよび/またはIgGフォーマット、例えばIgG1またはIgG4で)のいずれかとGM-CSFRαへの結合を競合する能力もまた試験する事ができる。GM-CSFRαを中和する能力を試験することができる。
【0041】
本明細書にアミノ酸配列が記載されたものを含む、本発明のVHおよびVLドメインならびにCDRの変種は、配列の改変または変異およびスクリーニングの方法を用いて製造することができ、GM-CSFRαに対する結合構造要素に用いることができる。構造/特性-活性相関への多変量データ解析技術の適用における計算化学のリード化合物に従って[9]、抗体の定量的活性-特性相関は、公知の数学的手法、例えば統計的回帰、パターン認識および分類などを用いて導くことができる[10、11、12、13、14、15]。抗体の特性は、抗体配列、機能構造および3次元構造の経験的モデルおよび理論モデル(例えば、接触残基の予測または物理化学的特性の算出)から導くことができ、単一または組み合わせでこれらの特性を考慮することができる。
VHドメインおよびVLドメインからなる抗体抗原結合部位は、ポリペプチドの6個のループ、すなわちL鎖可変ドメイン(VL)からの3個およびH鎖可変ドメイン(VH)からの3個から形成される。公知の原子構造の抗体の分析により、配列と抗体結合部位の3次元構造間との相関が解明されている[16、17]。VHドメインにおける第3領域(ループ)を除き、結合部位ループは少数の主鎖配座である正準構造(canonical structure)の1つを有することをこれらの相関は示唆している。特定のループにおいて形成される正準構造は、そのサイズおよび、そのループおよびレームワーク領域の両方における重要部位での特定の残基の存在により決定されることが示されている[16、17]。
【0042】
配列-構造相関のこの研究は、配列が既知ではあるが、そのCDRループの3次元構造の維持に重要であり、従って結合を維持するのに重要な3次元構造が未知である抗体における残基の予測に使用できる。これらの予測は、リード化合物の最適化実験からのアウトプットと予測とを比較することにより確証することができる。構造的アプローチにおいて、自由に利用できるパッケージまたは例えばWAM[19]などの市販のパッケージを用いて抗体分子[18]のモデルを作製できる。ついで、Insight II(Accelerys, Inc.) またはDeep View [20]などのタンパク質の視覚化および分析ソフトウェアパッケージを用いて、CDRの各位置における可能な置換を評価できる。次いでこの情報を、活性に対して最小の効果または有益な効果を与えると思われる置換を行うために使用できる。
CDR、抗体VHまたはVLドメインおよび結合構造要素のアミノ酸配列における置換を行うために必要とされる技術は、一般に当該技術分野で利用可能である。活性に対して最小の効果または有益な効果を有すると予測できるまたは予測できない置換を有する変種配列を作製し、GM-CSFRαに結合および/またはGM-CSFRαを中和する能力ならびに/または任意の他の望ましい特性を試験することができる。
【0043】
本明細書に配列が具体的に開示されているVHおよびVLドメインのいずれかの可変ドメインのアミノ酸配列変種を、先に述べたように本発明に従って使用できる。特定の変種は、1以上のアミノ酸配列の改変(アミノ酸残基の付加、欠失、置換および/または挿入)を含むことができ、約20未満の改変、約15未満の改変、約10未満の改変または約5未満の改変であることができ、5、4、3、2または1の改変であり得る。1以上のフレームワーク領域および/または1以上のCDRにおいて改変を行うことができる。
好ましくは、改変は機能喪失をもたらさず、従ってこのように改変されたアミノ酸配列を含む結合構造要素は、好ましくは、GM-CSFRαに結合する能力および/またはGM-CSFRαを中和する能力を保持している。より好ましくは、結合構造要素は、例えば本明細書記載のアッセイで測定するとき、改変がなされていない結合構造要素と同じ定量的な結合および/または中和能力を保持している。最も好ましくは、例えば本明細書記載のアッセイで測定するとき、改変がなされていない結合構造要素と比較して、このように改変されたアミノ酸配列を含む結合構造要素は、改善されたGM-CSFRαに結合する能力またはGM-CSFRαを中和する能力を有する。
【0044】
改変は、天然に存在しないまたは非標準アミノ酸での1以上のアミノ酸残基の置換、天然に存在しないまたは非標準形への1以上のアミノ酸残基の修飾または配列への1以上の天然に存在しないまたは非標準アミノ酸の挿入を含むことができる。本発明の配列における改変の好ましい数および位置は、本明細書の他の部分で説明する。天然に存在するアミノ酸は、それらの標準1文字コードによりG、A、V、L、I、M、P、F、W、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D、Eとして識別される20個の“標準”L-アミノ酸を含む。非標準アミノ酸は、ポリペプチド主鎖に導入することができる任意の他の残基または既存のアミノ酸残基の修飾により得られる任意の他の残基を含む。非標準アミノ酸は天然に存在するものであることも天然に存在しないものであることもできる。天然に存在する非標準アミノ酸のいくつかは当該技術分野で公知であり、例えば4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジン、3-メチルヒスチジン、N-アセチルセリンなどが存在する[21]。N-α位で誘導体化されたアミノ酸残基は、アミノ酸配列のN末端にのみ位置できる。本発明においては、通常、アミノ酸はl-アミノ酸であるが、いくつかの実施形態において、アミノ酸はD-アミノ酸であり得る。従って、改変は、L-アミノ酸のD-アミノ酸への修飾またはL-アミノ酸のD-アミノ酸での置換を含むことができる。アミノ酸のメチル化体、アセチル化体および/またはリン酸化体もまた公知であり、本発明におけるアミノ酸は、このような修飾を受けることができる。
【0045】
本発明の抗体ドメインおよび結合構造要素におけるアミノ酸配列は、前述の非天然アミノ酸または非標準アミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態において、合成中にアミノ酸配列に非標準アミノ酸(例えばd-アミノ酸)を導入することができ、一方他の実施形態において、アミノ酸配列の合成後に、“元の”標準アミノ酸の修飾または置換により非標準アミノ酸を導入することができる。非標準および/または天然に存在しないアミノ酸の使用は、構造的および機能的多様性を増し、従って、本発明の結合構造要素における望ましいGM-CSFRα結合および中和特性を達成する潜在性を増すことができる。さらに、動物への投与後にL-アミノ酸を有するポリペプチドがin vivo分解するために、D-アミノ酸およびアナログは、標準L-アミノ酸と比較して優れた薬物動態学的プロフィールを有することが示されている。
上で述べたように、本明細書に実質的に記載されたCDRアミノ酸配列は、好ましくはヒト抗体可変領域またはその実質的な部分におけるCDRとして含まれる。本明細書に実質的に記載されたHCDR3配列は、本発明の好ましい実施形態を表し、これらのそれぞれがヒトH鎖可変ドメインまたはその実質的な部分にHCDR3として含まれることが好ましい。
【0046】
本発明において用いられる可変ドメインは、任意の生殖系列または再構成ヒト可変ドメインから得るかまたは誘導することもできるし、あるいは公知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列または実際の配列に基づく合成可変ドメインであることもできる。本発明のCDR配列(例えばCDR3)は、組換えDNA技術を用いて、CDR(例えばCDR3)を欠く可変ドメインのレパートリーに導入することができる。
例えば、Marksら(1992)[22]は、可変ドメイン領域に対するまたは可変ドメイン領域の5'末端に隣接したコンセンサスプライマーをヒトVH遺伝子の第3フレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共に用いてCDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーを得る、抗体可変領域のレパートリーの製造方法を記載している。Marksらは、さらに、このレパートリーと特定の抗体のCDR3とを組み合わせる方法を記載している。類似の技術を用い、本発明のCDR3由来配列を、CDR3を欠くVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルし、シャッフルした全VHまたはVLドメインをコグネイトVLまたはVHドメインと組み合わせて本発明の結合構造要素を得ることができる。ついで、適切な宿主システム、例えばWO92/01047または引用文献[23]を含む以下の多数の文献のいずれかのファージディスプレイ系でレパートリーをディスプレイすることができ、それにより適切な結合構造要素を選択することができる。レパートリーは、104を超える個々の要素、例えば106〜108または1010要素の任意のものからなることができる。他の適切な宿主系は、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイおよび共有ディスプレイを含む。類似のシャフリングまたはコンビナトリアル技術はStemmer (1994) [24]によっても開示されており、彼は、β-ラクタマーゼ遺伝子に関連する技術を記載しているが、そのアプローチは抗体の作製にも使用しうることも観察している。
【0047】
さらなる代替手段は、1以上の選択されたVHおよび/またはVL遺伝子のランダム突然変異誘発を用いて全可変ドメイン内に変異を生じさせることにより、本発明のCDR由来配列を含む新規VHまたはVL領域を製造することである。このような技術はグラムら(1992)[25]により記載されており、彼らは変異導入PCR法を用いた。好ましい実施形態において、1組のHCDRおよび/またはL CDR内で1個または2個のアミノ酸置換が行われる。使用しうるもうひとつの方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域への直接突然変異誘発である[26、27]。
本発明のさらなる側面は、GM-CSFRα抗原の抗体抗原結合部位を得る方法であって、本明細書に記載のVHドメインのアミノ酸配列における1以上のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入により、VHドメインのアミノ酸配列変種であるVHドメインを得、場合によりこのようにして得られたVHドメインを1以上のVLドメインと組み合わせ、VHドメインまたはVH/VL組み合わせ(単数または複数)を試験して、場合により1以上のより好ましい特性、好ましくはGM-CSFRα活性を中和する能力を有する、結合構造要素またはGM-CSFRα抗原の抗体抗原結合部位を同定する前記方法を提供する。前記VLドメインは、本明細書に実質的に記載されたアミノ酸配列を有することができる。
本明細書に記載のVLドメインの1以上の配列変種が1以上のVHドメインと組み合わされる類似の方法を用いることができる。
【0048】
本発明のさらなる側面は、GM-CSFRα抗原に対する結合構造要素の製造方法であって、
(a)置換すべきCDR3を含むかまたはCDR3をコードする領域を欠くVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供すること
(b)前記レパートリーとVH CDR3について本明細書に実質的に記載されたアミノ酸配列をコードするドナー核酸を組み合わせて前記ドナー核酸をレパートリー内のCDR3領域に挿入し、それによりVHドメインをコードする核酸の産物レパートリーを得ること;
(c)前記産物レパートリーの核酸を発現させること;
(d)GM-CSFRαに対する結合構造要素を選択すること;
(e)前記結合構造要素またはそれをコードする核酸を回収すること、
を含む前記方法を提供する。
さらに、類似の方法を用いて本発明のVL CDR3と、置換されるCDR3を含むかまたはCDR3をコードする領域を欠くVLドメインをコードする核酸のレパートリーとを組み合わせることができる。
同様に、1以上または全3CDRをVHまたはVLドメインのレパートリーに移植し、次いでそれをGM-CSFRαに対する結合構造要素(単数または複数)に関してスクリーニングすることができる。
【0049】
好ましい実施形態において、抗体1(配列番号3〜5);抗体2(配列番号13〜15);抗体4(配列番号33〜35);抗体5(配列番号43〜45);抗体6(配列番号53〜55);抗体7(配列番号63〜65);抗体8(配列番号73〜75);抗体9(配列番号83〜85);抗体10(配列番号93〜95);抗体11(配列番号103〜105);抗体12(配列番号113〜115);抗体13(配列番号123〜125);抗体14(配列番号133〜135);抗体15(配列番号143〜145);抗体16(配列番号153〜155);抗体17(配列番号163〜165);抗体18(配列番号173〜175);抗体19(配列番号183〜185)もしくは抗体20(配列番号193〜195);または場合により抗体3(配列番号23〜25)の1以上のHCDR1、HCDR2およびHCDR3、例えば1組のHCDRを用いることができ、および/または抗体1(配列番号8〜10);抗体2(配列番号18〜20);抗体4(配列番号38〜40);抗体5(配列番号48〜50);抗体6(配列番号58〜60);抗体7(配列番号68〜70);抗体8(配列番号78〜80);抗体9(配列番号88〜90);抗体10(配列番号98〜100);抗体11(配列番号108〜110);抗体12(配列番号118〜120);抗体13(配列番号128〜130);抗体14(配列番号138〜140);抗体15(配列番号148〜150);抗体16(配列番号158〜160);抗体17(配列番号168〜170);抗体18(配列番号178〜180);抗体19(配列番号188〜190)もしくは抗体20(配列番号198〜200);または場合により抗体3(配列番号28〜30)の1以上のL CDR1、L CDR2およびL CDR3例えば1組のL CDRを使用することができる。
【0050】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的な部分は、それらの介在するフレームワーク領域と共に、少なくともその3つのCDR領域を含む。好ましくは、前記部分は、第1および第4フレームワーク領域の一方または両方の少なくとも約50%であって、第1フレームワーク領域のC末端50%および第4フレームワーク領域のN末端50%である前記50%もまた含む。可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端におけるさらなる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域と通常関連するものでないことができる。例えば、組換えDNA技術により製造される本発明の結合構造要素の構築は、クローニングまたは他の操作ステップを容易にするために導入されたリンカーによりコードされるNまたはC末端残基の導入をもたらすことができる。他の操作ステップは、抗体定常領域、他の可変ドメイン(例えばダイアボディの製造における)または本明細書の他の部分で詳細に述べたような検出可能/機能標識を含むさらなるタンパク質配列への、本発明の可変ドメインを結合させるためのリンカーの導入を含む。
【0051】
本発明の好ましい側面において、一対のVHおよびVLドメインを含む結合構造要素が好ましいが、VHまたはVLドメイン配列のいずれかに基づく単一の結合ドメインは本発明のさらなる側面を形成する。単一の免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインは、標的抗原に結合できることは公知である。例えば、本明細書の他の部分でのdAbの説明を参照のこと。
単一の結合ドメインのいずれかの場合は、GM-CSFRαに結合できる2ドメイン結合構造要素を形成することができる相補的ドメインをスクリーニングするためにこれらのドメインを使用することができる。このことは、WO92/01047に開示されているように、いわゆる階層的二元コンビナトリアルアプローチを用いるファージディスプレイスクリーニング法により達成できる。この方法において、HまたはL鎖クローンのいずれかを含む各コロニーを、他の鎖(LまたはH)をコードするクローンの全ライブラリーを感染するために用い、前記引用または[22]に記載されているように、ファージディスプレイ法技術に従って得られた2本鎖結合構造要素が選択される。
【0052】
本発明のさらなる側面は、本発明の結合構造要素および少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物、例えば結合構造要素および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。このような組成物は、療法によって人体または動物体を治療する方法を含む、GM-CSFRαを阻害または中和する方法に使用できる。
本発明は、抗GM-CSFRα抗体分子を含む異成分調製物を提供する。例えば、このような調製物は、完全長H鎖および、C末端リジンを欠くH鎖であって、種々の程度のグリコシル化および/または誘導体化アミノ酸、たとえばN末端グルタミン酸の環化によりピログルタミン酸残基を形成する誘導体化アミノ酸を有する前記H鎖の混合物であり得る。
【0053】
本発明の側面は、本明細書に記載の結合構造要素の投与を含む治療方法、このような結合構造要素を含む医薬組成物および医薬の製造、例えば本結合構造要素と薬学的に許容される賦形剤を配合することを含む医薬または医薬組成物の製造方法におけるこのような結合構造要素の使用を含む。
抗GM-CSFRα治療薬は、経口(例えばナノボディ)、注射(例えば、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内または筋肉内)、吸入、膀胱内経路(膀胱への点滴)または局所(例えば眼内、鼻腔内、直腸、創傷内、皮膚上)で投与することができる。治療薬は、特に減少していく投与量の本結合構造要素を用いてパルス注入により投与することができる。疾患に特に配慮し、あるいは効力を最適化するかまたは副作用を最小化する必要性に応じて、治療薬の物理化学的性質により投与経路を決定することができる。抗GM-CSFRα治療薬は医院での使用に限定されないことが想定されるので、無針装置を用いる皮下注射もまた好ましい。
【0054】
本組成物は、単独で、あるいは他の治療と組み合わせて、治療される状態に応じて同時または順次のいずれかで投与することができる。著しい相乗効果を得るために、組み合わせ療法、特に抗GM-CSFRα結合構造要素と1以上の他の医薬の組み合わせを用いることができる。以下の1以上との組み合わせで、または以下の1以上に加えて本発明記載の結合構造要素を使用することができる:NSAID(例えばcox阻害剤、例えばセレコキシブおよび他の同様なcox2阻害剤)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)および疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)例えばヒュミラ(アダリムマブ)、メトトレキサート、アラバ、エンブレル(エタネルセプト)、レミケード(インフリキシマブ)、キネレット(アナキンラ)、リツキサン(リツキシマブ)、オレンシア(アバタセプト)、金塩、抗マラリア剤、スルファサラジン、d-ペニシラミン、シクロスポリンA、ジクロフェナク、シクロホスファミドおよびアザチオプリン。
本発明に従って、提供される組成物を個体に投与することができる。投与は、好ましくは“治療的有効量”で行われ、これは患者に便益をもたらすのに十分な量である。このような便益は、少なくとも、少なくとも1つの症状の改善であり得る。投与の実際量ならびに投与の速度および時間的経過は、治療をうけるものの性質と重篤度に左右される。治療の処方、例えば投与量の決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、症状の重篤度および/または治療を受ける疾患の進行によって決めることができる。抗体の適切な投与量は当該分野で公知である[28、29]。投与される医薬のタイプに応じた、本明細書またはDoctor's Desk Reference(2003)に示される特定の投与量を用いることができる。本発明の結合構造要素の治療的有効量または適切な投与量は、動物モデルにおけるin vitro活性およびin vivo活性を比較することにより決定できる。マウスおよび他の試験動物における有効量のヒトへの外挿法は公知である。正確な投与量は、抗体が診断用であるか治療用であるかということ、治療される領域のサイズおよび位置、抗体の正確な性質(例えば全長抗体、フラグメントまたはダイアボディ)および抗体に結合している任意の検出可能な標識または他の分子の性質を含む多くの要素によって決まる。典型的な抗体投与量は、全身投与で100μg〜1gであり、局所投与で1μg〜1mgである。一般的には、抗体は全長抗体であり、好ましくはIgG1、IgG2であり、より好ましくはIgG4である。これは成人患者の1回の治療のための投与量であり、これは小児および乳児に比例的に調整することができ、分子量に比例させて他の抗体フォーマットに適用することもできる。治療は、医師の判断に応じて1日1回、週2回、週1回または月1回の間隔で繰り返すことができる。本発明の好ましい実施形態において、治療は定期的であり、投与の間の期間は約2週間以上であり、好ましくは約3週間以上であり、より好ましくは約4週間以上であり、あるいは1ヶ月に1回である。本発明の他の好ましい実施形態において、治療薬は術前および/または術後に投与することができ、より好ましくは、外科治療の解剖学的位置に直接に投与または適用することができる。
【0055】
本発明の結合構造要素は、通例医薬組成物の形で投与できる。本発明の結合構造要素は本結合構造要素に加えて少なくとも1つの成分を含むことができる。従って、本発明記載の医薬組成物および本発明記載の使用のための医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤または当業者に公知の他の材料を含むことができる。このような材料は無毒でなければならず、活性成分の効力を妨げてはならない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路によって決まり、投与経路は経口または注射経路であることができ、例えば静脈内であり得る。医薬経口投与用組成物は、錠剤、カプセル、粉末、液体または半固体形であり得る。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含むことができる。液体医薬組成物は、一般に水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理的食塩水、デキストロースもしくは他の糖質溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含むことができる。静脈内注射または苦痛部位への注射のために、活性成分はパイロジェンフリーであり、適切なpH、等浸透圧および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形で用いられる。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張ビヒクルを用いて適切な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤を含むことができる。本発明の結合構造要素は、分子の物理化学的性質および送達経路に応じて、液体、半固体または固体製剤で製剤化することができる。製剤は、賦形剤または賦形剤の組み合わせ、例えば糖類、アミノ酸および界面活性剤を含むことができる。液剤は、広範囲の抗体濃度およびpHを含むことができる。固形製剤は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥または超臨界流体技術による乾燥により製造できる。抗GM-CSFRα製剤は、対象とする送達経路によって決まる。例えば、肺送達製剤は、吸入により肺深部への侵入を確かにする物理的特性を有する粒子からなることができる。局所製剤は、医薬が活性部位にとどまる時間を長くさせる粘度改質剤を含むことができる。特定の実施形態において、本結合構造要素は、本結合構造要素の急速な放出を防ぐ担体を用いて製造でき、例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む徐放性製剤がある。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを用いることができる。このような製剤の製造のための多くの方法は当業者に公知である。例えば、Robinson, 1978 [30]を参照のこと。
【0056】
本発明記載の結合構造要素は、人体または動物体の治療方法または診断、例えば本発明の結合構造要素の有効量をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者における疾患または障害の治療方法(予防的処置を含むことができる)に使用することができる。本発明に従って治療可能な状態は、GM-CSFRαが役割を果たす任意のものを含む。以下に要約するように、公表された技術文献は、多くの疾患および状態におけるGM-CSFの役割を指摘している。GM-CSFはGM-CSFRαに特異的に結合するため、GM-CSFの病理学的および/または症候性効果は、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害することにより無効にすることができる。従って、実験の部に本明細書記載の抗体分子に関して提供されたin vivoおよびin vitroの薬理学的データに加えて公表された証拠は、本発明の結合構造要素が、自己免疫および/または炎症状態・疾病・疾患、例えば関節リウマチ、喘息、アレルギー反応、多発性硬化症、骨髄性白血病およびアテローム性動脈硬化症の治療に使用できることを示している。これらの状態に関する公表された証拠を以下に概説する。
【0057】
喘息およびアレルギー反応
気管支喘息は、気道過敏性、粘液過剰産生、線維症およびIgEレベル上昇により特徴付けられる、よくある肺の持続性炎症性疾患である。気道過敏性(AHR)は、非特異的刺激に対する気道の過剰な収縮である。AHRおよび粘液過剰産生は共に、一過性の気道閉塞に関与すると考えられており、それにより喘息発作(急性増悪)の息切れの特徴が引き起こされ、これはこの疾患に関連する死亡率に関与している(英国においては年間におよそ2000名死亡)。
喘息においては、GM-CSFおよびその受容体は、タンパク質およびmRNAレベルの両方で上方制御されていることが最近の研究で明らかにされている。さらにまた、発現量は疾患の重症度に相関している。非喘息被験者と比較して喘息患者からの気管支肺胞洗浄(BAL)液、BAL細胞、痰、気管支上皮細胞および抗原によって刺激された末梢血単核細胞におけるGM-CSFの産生増加が測定されている[31、32]。さらにまた、アレルゲンチャレンジ後のGM-CSFの気道発現レベルは、組織の好酸球増加症の程度および遅発型喘息反応の重篤度に関連していることが示されている[33]。より最近の研究は、内因性または非アトピー性喘息と上方制御されたGM-CSFR発現を結びつけ、肺機能データと発現レベルを関連付けた[34]。卵白アルブミンによる感作およびチャレンジのマウスモデルにおいて、卵白アルブミンチャレンジ前の鼻腔内投与による、ヤギポリクローナル抗体を用いるGM-CSFの活性の中和は、気道過敏性を予防し、好酸球の浸潤および気道への粘液分泌を共に低下させた[35]。同様に、ディーゼル排気微粒子の鼻腔内投与により始まるアレルギー性呼吸器疾患のマウスモデルにおいて、ヤギポリクローナル抗体の鼻腔内投与によるGM-CSFの中和は、再び、メタコリンに対する気道過剰反応性を予防し、BAL好酸球数を低下させ、気道上皮上の粘液産生杯状細胞の発現もまた低下させた[36]。
【0058】
誘導性免疫寛容のマウスモデルにおいてアレルギー反応におけるGM-CSFの役割がさらに研究された。前感作をせずに噴霧卵白アルブミンの1日量を繰り返し暴露したマウスは、卵白アルブミンに対する免疫寛容を成立させ、気道の好酸球炎症を誘発できない。アデノウイルス構築物によるGM-CSFの肺発現は、これらの動物の反応を変化させ、BALへの好酸球の流入、表現型上のアレルギー既往歴の誘発および関連した杯状細胞過形成に有利に働く。この典型的なTh2反応の誘発は、IL-5の血清およびBAL濃度ならびに血清IL-4の上昇によりさらに証明される。MHC II KOマウスを用いるこのモデルにおけるさらなる研究は、GM-CSFが気道における抗原提示細胞とT細胞間の相互作用を調節し、それによって卵白アルブミンに対するT細胞媒介性反応を促進することを示唆している[37]。意義深いことには、Th2反応の強力な活性化剤としてのGM-CSFの活性は、IL-13および/またはIL-4を欠くマウスにおいても明らかにでき、このことは、GM-CSFの活性の中和がこれらのサイトカインの活性とは異なる代替治療経路を与えることを示している。
同様な所見が他のマウスモデルにおいて得られており、この所見において、ブタクサへの繰り返しの鼻腔内暴露により、Th2タイプの感作が引き起こされ、抗原への再暴露により軽度の気道炎症が引き起こされる[38]。ブタクサと共に抗GM-CSF抗体を投与することにより、おそらくは内因性GM-CSFによる阻害により、Th2関連サイトカイン産生を低下させた。それに引き換え、組換えGM-CSFの複数回の同時投与またはGM-CSF導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの1回の送達のいずれかによる、GM-CSFに富む気道微小環境へのブタクサの送達は、かなり亢進した好酸球性気道炎症およびブタクサ特異的Th2記憶反応を引き起こした。
【0059】
関節リウマチ(RA)
RAは先進国の人工のおおよそ1%が侵されている慢性炎症性および破壊性関節疾患である。RAは、滑膜の過形成および炎症、滑液内の炎症ならびに通例著しい能力障害を引き起こす、周囲骨および軟骨の進行性破壊を特徴とする。
RAの原因はまだ分かっていないが、RAの進行におけるGM-CSFの役割の証拠が蓄積されつつある。RAは、T細胞媒介性で抗原特異的プロセスにより始めれら、促進されると考えられている。手短に言えば、感受性宿主における未確認の抗原の存在により、T細胞サイトカインの産生を引き起こすT細胞応答が開始され、結果として好中球、マクロファージおよびB細胞を含む炎症細胞が動員されると考えられる。
リウマチ様関節において多くの炎症誘発性および抗炎症性サイトカインが産生される。さらに、疾患進行、再活性化およびサイレンシングは、関節内のサイトカイン産生の動的変動により媒介される。特に、TNF-αおよびIL-1は、RAの病因においてきわめて重要な役割を発揮すると考えられ、この疾患のために開発された、または開発中の新規な療法の多くはこれら2つの炎症誘発性サイトカインの活性を阻害することを期待するものである。
【0060】
げっ歯類モデルにおける最近の研究は、RAの発症および進行におけるGM-CSFの中心的かつ必須的役割を示唆した。外因性組換えGM-CSFの投与は、2つの異なるマウスモデルであるRAコラーゲン誘発関節炎(CIA)[39]および単関節炎モデル[40]において病状を促進する。これに加えて、GM-CSFノックアウト(GM-CSF-/-)マウスはCIAの発症に抵抗性であり、滑液中に見いだされるIL-1および腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルは、野生型マウス[41、42]と比較して低下したことが明らかにされた。同様に、GM-CSF-/-マウスにおけるメチル化ウシ血清アルブミンおよびIL-1の関節内注射を用いる単関節炎の誘導は、野生型マウスと比較して疾患の重症度の抑制がもたらされる[43]。
さらにまた、マウス抗GM-CSF mAbの投与により、CIAおよび単関節炎モデルにおける疾患の重症度は著しく改善される。CIAモデルにおいて、mAb処理は既存の疾患の進行、組織変化の治療に有効であり、関節IL-1およびTNF-αレベルを著しく低下させた。加えて、関節炎発症前のmAb処理により、CIA疾患の重症度は低下した[44、43]。
【0061】
多くの研究により、関節炎の滑液およびヒト組織由来の膜生検サンプルに存在するサイトカインおよび受容体のレベルが分析されている。27名のRA患者、13名の健常志願者および14名の骨粗鬆症患者の循環単核細胞のGM-CSFRレベルが、PE-標識GM-CSFを用いて評価された[45]。この研究において、健常対照(20%)および骨粗鬆症の調査を受けている患者(25%)と比較して、RA患者(53%)において受容体陽性細胞が2倍検出され、このことは局所に産生されたGM-CSFに反応して単球がプライミングされうることを示唆している。SF細胞のin situハイブリダイゼーションを用いるRA患者[46]からのサイトカイン遺伝子発現により、GM-CSF、IL-1、TNF-aおよびIL-6の上昇したレベルが明らかとなった。さらにまた、正常ボランティアからの単離されたおよび培養された線維芽細胞由来滑膜細胞により、IL-1αIL-1β、TNF-αおよびTNF-βに応じて、GM-CSFの上昇したタンパク質レベルが明らかとなった[47]。RA患者におけるGM-CSFの血清レベルの定量[48]により、対照群(174pg/ml、n=43)と比較して、重症(366pg/ml、n=26)および中程度(376pg/ml、n=58)RA患者において、タンパク質レベルの上昇が示され、さらに、RA患者のSFにおいてGM-CSFは著しく上昇していることも示された(1300pg/ml)。
以前に、好中球減少症の治療を受けている患者における組換えGM-CSFの投与はRAの増悪を引き起こしうることが観察された[49]。組換えGM-CSF投与後のFelty症候群患者に関して同様な所見が得られた[50]。
【0062】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする疾病状態として定義される。慢性気流制限は、通例進行性であり、有害な粒子またはガスに対する肺の異常は炎症反応と関連している。この気流制限は、末梢気道病変(閉塞性気管支炎)および実質の破壊(気腫)の組み合わせで引き起こされ、相対的な寄与は、ヒトによって異なる。結果として生じるCOPDの特徴的な症状は、咳、喀痰および激しい活動時の呼吸困難である。COPDは重大なヒトの健康問題であり、米国では慢性罹患率・死亡率の原因の4番目である。この疾患は、現在のところ、βアゴニストを含む気管支拡張薬の有り無しで、経口または吸入コルチコステロイドなどの喘息のために最初開発された医薬で治療される。しかしながら、これらの医薬のどれもCOPDの進行を抑制しないことが示されている[51]。例えば、喘息において好酸球炎症を著しく抑制するコルチコステロイドは、主に好中球により媒介されるCOPDにおいて見られる炎症には効果を有さないと推定される[52]。従って、この疾患の病態生理学の基礎をなす炎症過程を特異的に標的とする、COPDの新規な治療薬の開発が求められている。GM-CSFは、好中球およびマクロファージ機能におけるその役割とは別に、COPDの病因において重要な役割を果たすことができる。
【0063】
定量PCRを用いる研究において、年齢を合わせたCOPD痰において、非閉塞性喫煙者の痰と比較してGMCSFコピー数が著しく上昇する事が示された[53]。さらにまた、たばこの煙によって引き起こされる肺炎症のげっ歯類モデルにおいて、煙暴露の2日、4時間および1時間前に鼻腔内をGM-CSFに対する抗体で処理した動物は、チャレンジ5日後、イソタイプコントロール抗体と比較してBALからの好中球、マクロファージおよびMMP-9レベルの著しい減少を示した[54]。これらの研究は、一連のCOPD重篤度を示す患者から誘発された痰におけるGM-CSFレベルを研究する我々自身の所見によっても支持される。これらの研究において、疾患の重症度にかかわらず、試験されたCOPD患者の痰のおおよそ40%においてGM-CSFは上昇し、GMCSFレベルは場合によっては500pg/mlに迫ることを我々は示した。非喫煙および喫煙にマッチした対照患者においてGMCSFは上昇しないと思われた。GM-CSFは、煙によって引き起こされる気道炎症およびCOPDにおいて重要なメディエーターの1つである可能性をこれらのデータは示唆している。
【0064】
多発性硬化症(MS)
GM-CSFは、自己免疫疾患である多発性硬化症に関連付けられてきた。げっ歯動物にミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗原を投与することにより、麻痺などのMSをもたらしうる、中枢神経系炎症および脱髄などのMSの表現型の多くを示すヒト多発性硬化症のモデルを誘発することができる。GM-CSFヌルマウスにおいて、MOGはEAE表現型を誘発する事ができなかった[55]。さらにまた、これらのマウスにおいてはMOG抗原に対するT細胞増殖が低下し、Th1サイトカインであるIL-6およびIFN-γの産生が低下していることが示された。抗原チャレンジと同時のGM-CSF中和抗体の投与は、疾患の発症を予防し、治療10日後に障害の低下が認められた。疾患の発症後に投与した場合、治療の20日以内にマウスは完全に回復した[55]。
【0065】
白血病
GM-CSFは、骨髄性白血病である若年型慢性骨髄性白血病(JCML)にも関連付けられてきた。この状態は、主として4歳未満の患者を襲う脊髄増殖性疾患である。in vitroのJCML末梢血顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU-GM)は、低い細胞密度での自発的増殖を示し、これは他の脊髄増殖性疾患では記載されていない所見である。さらにまた、これらの培養物からの単球の枯渇は、この増殖を終わらせた。続いて、この自発的増殖が単球由来サイトカインであるGM-CSFに対するJCML前駆細胞の過敏性により媒介されることが明らかにされた[56、57、58、59、60、61]。JCML患者におけるGM-CSFの過剰産生または上昇したレベルというよりはむしろ、JCML前駆細胞の過敏性は、GM-CSFに誘導されるRas情報伝達経路の脱制御によるものと推定される[62]。結合研究および機能アッセイの両方においてGM-CSFの活性に拮抗するGM-CSFアナログ(E21R)を用いる最新の研究は、GM-CSFの活性を阻害することにより、JCMLの重症複合免疫不全/非肥満糖尿病(SCID/NOD)マウス異種移植モデルにおけるJCML細胞量を著しく低下させることができることが示している[63]。移植時にE21Rの予防的全身投与を行うことにより、骨髄におけるJCML前駆細胞の樹立が予防され、移植の4週間後にE21Rを投与することにより、JCMLの寛解が引き起こされ、細胞量は減少した。さらにまた、正常ヒト骨髄およびJCML骨髄で同時移植したSCID/NODマウスにE21Rを投与することにより、JCML量の低下が見られたが、正常骨髄細胞は影響を受けなかった。
【0066】
アテローム性動脈硬化症
虚血性心疾患は、世界的に最も共通した死因である。ここ数年、動脈壁における脂質蓄積と提携して生じる炎症性細胞集積を伴う炎症は、アテローム性動脈硬化症の病因の重要な役割を果たしているという概念は強まった。
ひとたび動脈壁に常在すれば、単球およびマクロファージなどの炎症細胞は局所炎症反応に関与し、局所炎症反応を永続化する。これらのマクロファージは、一連のリポタンパク質に対してスカベンジャー受容体も発現し、それにより「泡沫細胞」への細胞分化に寄与する。これらの病変の古典的特徴である脂質コアの発症に寄与するのは、これらの「泡沫細胞」の死である。これらのアテローム斑内で炎症が継続するので、これらの活性化した炎症細胞は平滑筋細胞(SMC)増殖およびプラークの線維症を促進する線維形成性メディエーターおよび増殖因子を放出する。線維症の促進に加えて、これらの細胞はまた、線維性プラークの弱体化に寄与し、それにより線維性プラークを破壊しやすくするマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などのタンパク質分解酵素を放出する。ひとたび破裂したこれらのプラークは、血管中に細胞残屑および凝固因子、たとえば組織因子を放出し、凝固カスケードを刺激して血栓を形成させる。結果として生じた動脈血栓症は、心筋虚血または梗塞形成をもたらす。
【0067】
近年、GM-CSFは、アテローム性動脈硬化症における疾患進行の多くの側面に関連付けられてきた。コレステロール食ウサギのアテローム病変において、GM-CSFはマクロファージと共局在化していることが見いだされ、内皮細胞およびSMCにも弱い程度に共局在化していることが見いだされた[64]。さらにまた、GM-CSF発現はヒトアテローム硬化性血管のマクロファージ集積部位ならびに内側SMCおよび内皮細胞内で増強されていることもまた示された[65]。GM-CSFレベルにおけるこの増加の原因は、一部は、アテローム病変の形成および発病中の単球/マクロファージと内皮細胞との直接細胞-細胞接触に帰される[66]。アテローム病変における他の重要な要素は、‘泡沫細胞’、すなわち表面上のスカベンジャー受容体により酸化型低密度リポタンパク質(LDL)を取り込んだマクロファージである。in vitroにおいて、このOx-LDLの取り込みは、GM-CSF依存性機構によりマクロファージの増殖をさらに刺激することができる[67]。
【0068】
アテローム性動脈硬化症は慢性の炎症過程であるため、グルココルチコイドなどの抗炎症薬が研究されてきた。抗炎症性グルココルチコイドであるデキサメタゾンは、種々の実験動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を抑制する[68、69、70、71]。これらの効力は、SMC移動[72]および増殖[73]の阻害ならびに循環単球および白血球の走化性の低下に帰されてきた[74]。最近の研究により、ox-LDLはマウス腹膜マクロファージからのGM-CSF放出を誘発する事ができることを示している[75]。さらにまた、デキサメタゾンの投与後に、このGM-CSF放出は用量依存的に阻害されたが、このことは、デキサメタゾンの抗炎症性効果はox-LDLで引き起こされるGM-CSF産生の阻害により媒介されることを示唆している。GM-CSFはアテローム性動脈硬化症において中心的役割を果たすと推定されるため、グルココルチコイドの代替物はこの適応においてGM-CSF活性を阻害すると考えられる。
【0069】
用語
本明細書においては、“および/または”は、2つの特定の特徴または成分のそれぞれの特定の開示が、もう一方の有り無しで解釈されるべきである。例えば“Aおよび/またはB”は、それぞれが個別に本明細書に記載されている場合と同様に、(i)A、(ii)Bのいずれかならびに(iii)AおよびBのぞれぞれの開示として解釈されるべきである。
【0070】
GM-CSFRαおよびGM-CSF
GM-CSFRαは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子に対する受容体のα鎖である。ヒトGM-CSFRαの完全長配列は、アクセッション番号S06945(gi:106355)[76]として寄託されており、本明細書においては配列番号202として記載されている。ヒトGM-CSFRαの成熟体、すなわちシグナルペプチドが切断されたものは、本明細書においては配列番号206として記載されている。特記しない限り、本明細書におけるGM-CSFRαへの言及は、ヒトまたはヒト以外の霊長類(例えばカニクイザル)い、通常はヒトGM-CSFRαのことを言う。GM-CSFRαは天然に存在するGM-CSFRαであることもでき、組換えGM-CSFRαであることもできる。
ヒトGM-CSF受容体αの298アミノ酸の細胞外ドメインは、アミノ酸配列配列番号205を有する。
特記しない限り、本明細書におけるGM-CSFへの言及は、ヒトまたはヒト以外の霊長類(例えばカニクイザル)GM-CSFのことを言い、通常ヒトGM-CSFのことを言う。GM-CSFは、通常成熟GM-CSF受容体α鎖(配列番号206)の細胞外ドメイン(配列番号205)に結合する。本明細書の他の部分で記載のように、この結合は、本発明の結合構造要素により阻害される。
天然に存在するGM-CSFRαのスプライシング変種は同定されている。例えば文献を参照のこと[77、78]。これらのスプライシング変種において、細胞外ドメインは高度に保存されている。本発明の結合構造要素は、GM-CSFRαの1以上のスプライシング変種に結合できる場合もあり、結合できない場合もあり、GM-CSFのGM-CSFRαの1以上のスプライシング変種への結合を阻害できる場合もあり、阻害できない場合もある。
【0071】
結合構造要素
結合構造要素は、互いに結合する1対の分子の構成員を意味する。結合ペアの構成員は天然由来であることもでき、あるいは全合成的または部分合成的に作製することもできる。分子対の構成員の1つは、その表面または空洞上に領域を有し、この領域は分子対の他の構成員の特定の空間および極性構造に結合し、従ってこれらに相補的である。結合対タイプの例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質である。本発明は、抗原-抗体型反応に関する。
結合構造要素は、通常、抗原結合部位を有する分子を含む。例えば、結合構造要素は抗原結合部位を含む抗体分子または非抗体タンパク質であり得る。抗原結合部位は、フィブロネクチンまたはシトクロムBなどの非抗体タンパク質骨格上のCDRの配置による[80,81,82]かまたはタンパク質骨格内のループのアミノ酸残基を無作為化または変異させて望ましい標的に対する結合を付与することにより提供できる。タンパク質における新規結合部位を操作するための骨格については詳細に概説されている[82]。抗体模倣体のためのタンパク質骨格は、国際公開番号WO/0034784に開示されており、そこにおいて発明者は少なくとも1つの無作為化させたループを有するフィブロネクチンタイプIIIドメインを含むタンパク質(抗体模倣体)を記載している。1以上のCDR、例えば1組のHCDRを移植するための適切な骨格は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーにより提供されることができる。この骨格はヒトまたはヒト以外のタンパク質であり得る。
【0072】
非抗体タンパク質骨格の利点は、それが、少なくとも一部の抗体分子よりも小さいおよび/または製造が容易である骨格分子における抗原結合部位を提供できることである。結合構造要素小さいサイズは、有用な生理学的特性、例えば細胞に入る能力、組織内に深く浸透するもしくは他の構造内の標的に到達する能力、または標的抗原のタンパク質空洞内に結合する能力などを付与することができる。
非抗体タンパク質骨格における抗原結合部位の使用は引用文献[79]に概説されている。安定な主鎖および1以上の可変ループを有するタンパク質であって、ループ(単数または複数)のアミノ酸配列が特異的または無作為に変異されて標的抗原に結合するための抗原結合部位を生じる前記タンパク質が典型的である。このようなタンパク質は、黄色ブドウ球菌由来プロテインA、トランスフェリン、テトラネクチン、フィブロネクチン(例えば10thフィブロネクチンタイプIIIドメイン)およびリポカリンのIgG-結合ドメインを含む。他のアプローチは、サイクロチド(cyclotide)(分子内ジスルフィド結合を有する小さなタンパク質)に基づく合成“ミクロボディ(Microbodies)”(Selecore GmbH)を含む。
【0073】
抗体配列および/または抗原結合部位に加えて、本発明記載の結合構造要素は、他のアミノ酸、例えば折りたたまれたドメインなどのペプチドもしくはポリペプチドを形成するアミノ酸または抗原に結合する能力に加えて他の機能的特徴を分子に与えるアミノ酸を含むことができる。本発明の結合構造要素は、検出可能な標識を含むこともでき、毒素または標的部分または酵素(例えばペプチジル結合またはリンカーを介して)に結合されていることもできる、例えば、結合構造要素は抗原結合部位だけでなく触媒部位(例えば酵素ドメイン内に)も含むことができ、ここで抗原結合部位は抗原に結合し、それにより抗原を触媒部位を導く。触媒部位は、例えば切断により、抗原の生物学的機能を阻害することができる。
前述のように、CDRはフィブロネクチンまたはシトクロムBなどの骨格に含まれることができるが[80、81、82]、本発明のCDRまたは1組のCDRを保持する構造は、一般に抗体H鎖もしくはL鎖配列またはそれらの実質的な部分であり、該構造中、CDRまたは1組のCDRは、再構成免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変領域のCDRまたは1組のCDRに対応する位置に位置する。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、(Kabatら、1987 [98]およびその最新版 、現在インターネットで入手できる(http://immuno.bme.nwu.edu または 任意の検索エンジンを用いて“Kabat”を検索されたい)を参照することにより決定できる。
【0074】
本発明の結合構造要素は、抗体定常領域またはその部分、好ましくはヒト抗体定常領域またはその部分を含むことができる。例えば、VLドメインは、そのC末端で、ヒトCκまたはCλ鎖、好ましくはCλ鎖を含む抗体L鎖定常ドメインに結合していることができる。同様に、VHドメインに基づく結合構造要素は、そのC末端で、任意の抗体イソタイプ、例えばIgG、IgA、IgEおよびIgMならびにイソタイプサブクラスのいずれか、特にIgG1、IgG2およびIgG4由来の免疫グロブリンH鎖の全部または一部(例えばCH1ドメイン)に結合していることができる。IgG1、IgG2またはIgG4は好ましい。IgG4は補体に結合せず、エフェクター機能を発揮しないので好ましい。これらの特性を有し、可変領域を安定させる任意の合成または他の定常領域変種は、本発明の実施形態に使用するのにも好ましい。
【0075】
本発明の結合構造要素は、検出可能標識または機能標識で標識することができる。検出可能な標識は131Iまたは99Tcなどの放射性標識を含み、これらは抗体イメージングの分野で公知の従来の化学を用いて本発明の抗体に結合させることができる。標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識も含む。標識は、特定のコグネイト検出可能部分、例えば標識アビジンへの結合により検出できるビオチンなどの化学的部分をさらに含む。従って、本発明の結合構造要素または抗体分子は、場合によりペプチドなどのリンカーにより結合された本結合構造要素および標識を含む結合体の形であり得る。本結合構造要素は、例えば酵素(例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)または、限定するものではないが、ビオチン、蛍光色素、緑色蛍光タンパク質を含む蛍光標識で標識されることができる。さらにまた、標識は、シュードモナス外毒素(PEまたはその細胞毒性フラグメントもしくは変異体)、ジフテリア毒素(その細胞毒性フラグメントもしくは変異体)、ボツリヌス毒素A〜F、リシンまたはその細胞毒性フラグメント、アブリンまたはその細胞毒性フラグメント、サポリンまたはその細胞毒性フラグメント、アメリカヤマゴボウ抗ウイルス毒素またはその細胞毒性フラグメントおよびブリオジン1またはその細胞毒性フラグメントの群から選択される毒素部分などの毒素部分を含むことができる。本結合構造要素が抗体分子を含む場合、標識結合構造要素を免疫コンジュゲートと呼ぶことができる。
【0076】
抗体分子
抗体分子は、天然のものであれ、部分もしくは全合成的に製造されるものであれ、免疫グロブリンを意味する。この用語はまた、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質も含む。抗体抗原結合部位を含む抗体フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fab’-SH、scFv、Fv、dAb、Fdなどの分子およびダイアボディである。
モノクローナル抗体および他の抗体を利用し、組換えDNA技術を用いて、元の抗体の特異性を保持している他の抗体またはキメラ分子を製造することは可能である。このような技術は、異なる免疫グロブリンの定常領域または定常領域+フレームワーク領域に、抗体の免疫グロブリン可変領域またはCDRをコードするDNAを導入することを含むことができる。例えば、EP-A-184187、GB2188638AまたはEP-A-239400および多数の以下の文献を参照のこと。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞は遺伝的変異または他の変化を受けることができ、それらは産生される抗体の標的結合を変えることも、変えないこともできる。
多くの方法で抗体を改変できるので、用語“抗体分子”は、抗体抗原結合部位を有する任意の結合構造要素または物質を含むとして解釈されるべきである。従って、この用語は、天然のものであれ、全合成もしくは部分合成のものであれ、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む抗体フラグメントおよび誘導体を含む。従って、他のポリペプチドに融合させた、抗体抗原結合部位または等価物を含むキメラ分子は含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現は、EP-A-0120694およびEP-A-0125023ならびに多数の以下の文献に記載されている。
【0077】
抗体エンジニアリングの分野で利用可能なさらなる技術により、ヒトおよびヒト化抗体の単離が可能になった。ヒトおよびヒト化抗体は本発明の好ましい実施形態であり、任意の適切な方法を用いて製造できる。例えば、ヒトハイブリドーマを作製できる[83]。結合構造要素を製造するための他の確立された技術であるファージディスプレイ法は、引用文献[83]およびWO92/01047(さらに以下で説明する)などの多くの出版物に詳細に説明されている。マウス抗体遺伝子が不活性化されマウス免疫系の他の成分が無傷のままの、ヒト抗体遺伝子に機能的に置き換えられたトランスジェニックマウスを、ヒト抗体の単離に用いることができる[84]。ヒト化抗体は、当該技術分野で公知の技術、例えばWO91/09967、US5,585,089、EP592106、US565,332およびWO93/17105などに開示されている技術を用いて製造できる。さらにまたWO2004/006955は、非ヒト抗体の可変領域のCDR配列の正準CDR構造タイプとヒト抗体配列のライブラリーからの対応するCDRの正準CDR構造タイプ、例えば生殖系列抗体遺伝子セグメントとを比較することにより、ヒト抗体遺伝子から可変領域フレームワーク配列を選択することに基づく、抗体をヒト化する方法を記載している。非ヒトCDRと同様な正準CDR構造タイプを有するヒト抗体可変領域は、ヒト抗体配列のサブセット要素を形成し、それらからヒトフレームワーク配列が選択される。これらのサブセット要素を、ヒトおよび非ヒトCDR配列間のアミノ酸類似性によりさらに順位付けすることができる。WO2004/006955の方法において、第1順位のヒト配列を選択してフレームワーク配列を提供し、選択されたサブセット要素ヒトフレームワークを用いて非ヒトCDRカウンターパートでヒトCDR配列と機能的に置き換えるキメラ抗体を構築し、それによって、非ヒトおよびヒト抗体間のフレームワーク配列を比較する必要なしに高親和性および低免疫原性のヒト化抗体が提供される。この方法により製造されたキメラ抗体もまた開示されている。
【0078】
合成抗体分子は、オリゴヌクレオチドを合成し、適切な発現ベクター内に組み込むことにより作製される遺伝子から発現することにより製造できる[85、86]。
完全な抗体のフラグメントは、抗原に結合する機能を発揮できることが明らかにされた。結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)1つの抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)VHまたはVLドメインからなるdAbフラグメント[87、88、89];(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの結合されたFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab')2フラグメント;(vii)VHドメインおよびVLドメインがペプチドリンカーにより結合され、それにより2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することが可能となる一本鎖Fv分子(scFv)[90、91];(viii)2重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)および(ix)遺伝子融合により構築される多価または多重特異的フラグメントである"ダイアボディ"(WO94/13804;[92])である。Fv、scFvまたはダイアボディ分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の導入により安定化できる[93]。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディもまた製造できる[94]。
【0079】
dAb(ドメイン抗体)は、小さな抗体のモノマーの抗原結合性フラグメント、すなわち抗体H鎖またはL鎖の可変領域である[89]。VH dAbは、ラクダ科動物(例えばラクダ、ラマ)に天然に存在し、ラクダ科動物に標的抗原で免疫性を与え、抗原特異的B細胞を単離し、個別のB細胞からdAb遺伝子を直接にクローニングすることにより製造できる。dAbはまた、細胞培養で産生しうる。dAbの小さなサイズ、優れた溶解性および温度安定性は、dAbを特に生理学的に有用であり、選択および親和性成熟に適したものにしている。本発明の結合構造要素は、本明細書に実質的に記載されたVHまたはVLドメインを含むdAbであることもでき、あるいは本明細書に実質的に記載された1組のCDRを含むVHまたはVLドメインであることのできる。“実質的に記載されたように”は、関連するCDRまたは本発明のVHもしくはVLドメインが、配列が本明細書に記載された特定の領域と同じまたは極めて類似していることを意味する。“極めて類似性の高い”とは、CDRおよび/またはVHもしくはVLドメインにおいて、1〜5、好ましくは1〜4、例えば1〜3または1もしくは2もしくは3もしくは4個のアミノ酸置換をすることができることを考慮している。
【0080】
二重特異性抗体が用いられる場合、これらは種々の方法[95]で製造できる従来の二重特異性抗体、例えば化学合成によりまたはハイブリッドハイブリドーマから製造できるものであることができ、あるいは上記の二重特異性抗体フラグメントのいずれかであることもできる。二重特異性抗体の例は、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインを利用でき、短い柔軟なペプチドにより直接に結合されたBiTE(登録商標)技術のものを含む。この技術は、短い1つのポリペプチド鎖上に2つの抗体を結びつける。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインの実を用い、Fc領域なしで構築できるので、抗イデイオタイプ反応の効果を抑制する可能性がある。
【0081】
2重特異性完全抗体とは対照的に、2重特異性ダイアボディも、容易に構築でき、大腸菌で容易に発現できるため、極めて有用であり得る。適切な結合特異性のダイアボディ(および多くの他のポリペプチド、例えば抗体フラグメント)は、ライブラリーからのファージディスプレイ(WO94/13804)を用いて容易に選択できる。ダイアボディの1つのアームが例えばGM-CSFRαに向けて不変に保たれる場合、他のアームが変えられたライブラリーを作製でき、適切な標的結合の抗体を選択できる。ノブと穴(knobs-into-holes)工学[96]により、2重特異性全長抗体を製造できる。
【0082】
抗原結合部位
抗原結合部位は、標的抗原に結合し、かつ標的抗原の全部または一部に相補的な分子の一部のことをいう。抗体分子において、抗原結合部位は抗体抗原結合部位と呼ばれ、標的抗原に結合し、かつ標的抗原の全部または一部に相補的な抗体の一部を含む。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合でき、その部分はエピトープと呼ばれる。抗体抗原結合部位は、1以上の抗体可変領域により提供されうる。好ましくは、抗体抗原結合部位は抗体L鎖可変領域(VL)および抗体H鎖可変領域(VH)を含む。
【0083】
Kabat番号付け
本明細書において、抗体配列の残基は、一般にKabatら、1971[97]によるKabat番号付けを用いて言及している。同様に引用文献[98、99]を参照のこと。
【0084】
単離された
これは、本発明の結合構造要素またはこのような結合構造要素をコードする核酸が一般に本発明に記載のものである状態のことを言う。単離された要素および単離された核酸は、このような製剤がin vitroまたはin vivoで実施された組換えDNA技術によるものである場合、天然に付随する他のポリペプチドまたは核酸などの物質であって、それらの自然環境またはそれらが調製された環境(例えば細胞培養)において見いだされる物質を含まないかまたは実質的に含まない。本要素および核酸は希釈剤またはアジュバントと共に配合できるが、なお実用的には単離されている。例えば本結合要素は、イムノアッセイに使用するマイクロタイタープレートをコートするために使用する場合、通常ゼラチンまたは他の担体と混合され、診断または治療に使用される場合、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合される。結合構造要素は、天然にまたは異種真核細胞(例えばCHOまたはNS0(ECACC85110503))細胞システムによりグリコシル化されていることができ、あるいは(例えば原核細胞内での発現により産生される場合)グリコシル化されていないこともできる。
【0085】
実験の部
背景
ヒト抗体フラグメントは、繊維状バクテリオファージの表面にディスプレイされたレパートリーからin vitroで選択できる。この方法はファージディスプレイ法として知られ、ヒト抗体フラグメントを誘導する手段を提供する。この方法はヒト抗ヒト特異性を単離するために使用でき、特定の親和特性の抗体を誘導するのに合わせることができる。
【0086】
短いペプチドリンカーにより結合されたH鎖可変(VH)およびL鎖可変(VL)ドメインのみからなる抗体フラグメントは、抗原結合性を決定するために必要なすべての情報を含んでいる。このようなフラグメントは、一本鎖Fv(scFv)として知られている。ファージ表面にディスプレイされるとき、scFvは正しく折りたたまれ、かつ抗原に結合していることが示されている。この方法でヒトscFvの大きなレパートリーが構築され、薬剤候補としての開発のために個々のクローンを単離できる供給元を提供してきた。ついで、候補scFvは治療への適用のための全IgG(一般的にはヒトIgG)分子として再フォーマットされる。
【0087】
概要
ヒトGM-CSFRαに結合するファージの集団を濃縮するために、ヒト脾臓リンパ球由来のscFvファージディスプレイライブラリーの選択を行った。我々は、特徴を選択したscFv抗体を単離し、これらのscFvをIgG4に変換した。種々のアッセイを用い、抗体のパネルを単離し、最適化し生殖系列化して治療抗体の適切な仕様を有するIgG4を製造した。
【0088】
配列表において抗体1、2および4〜20として配列が示される19抗体クローンは親抗体から誘導された。親は配列表において抗体3で示され、本明細書においては28G5とも呼ばれている。実験の部に記載されているように、一連の生物学的アッセイにおいて19クローンは特に優れた特性を示すとして選択され、抗体番号1、2および4〜20と呼んだ。
関節リウマチなどの疾患の炎症性の性質を反映するようにバイオアッセイを設計した。例えば、好中球のその活性部位への動員に必要な形態変化、単球による炎症促進因子の放出および特定のシグナルに応じての炎症性細胞型の生存性増大などである。本抗体はこれらのアッセイにおいて強力な中和活性を示す。用いたアッセイ法の詳細なプロトコルは、"アッセイ材料および方法"と題する以下のセクションで提供されている。
【0089】
抗体リード化合物の単離
選択のために、大きな一本鎖FV(scFv)ヒト抗体ライブラリーを用いた。これは20名の健常ドナーからの脾臓リンパ球由来であり、ファージミドベクターにクローニングした。HEK293T細胞における受容体の精製タグ付き可溶性細胞外ドメインの過剰発現由来の精製GMCSF-Rαに対する一連の繰り返し選択サイクルにおいてファージディスプレイライブラリーからGM-CSFRαを認識するScFvを単離した。これは、本質的にVaughanら[102]に記載されているようにして行った。手短に言えば、ファージライブラリーへのビオチン化受容体の暴露に続いて、ファージに結合したタンパク質を、ストレプトアビジンを被覆した磁気ビーズで捕獲し、非結合ファージを洗い流した。ついでVaughanらによる記載に従って結合したファージをレスキュー(rescue)し、ついでこの選択プロセスを繰り返した。抗原濃度を減少させて選択を3ラウンド繰り返した。選択ラウンドのアウトプットからのscFvの代表的な部分をDNA配列決定にかけた。
【0090】
ファージディスプレイライブラリーからのこれらの最初の選択に続いて、精製GM-CSFRα細胞外ドメインに対するGM-CSFの結合を阻害することができるscFv抗体を発現しているファージを同定するために設計されたリガンド結合アッセイにおいて、特異なscFvのパネルを同定した。リガンド結合アッセイにおけるこれらのscFvの中和能は0.65〜3.3nMであった。
生化学的リガンド結合アッセイにおいて活性であった抗体を、GM-CSFで刺激されたTF-1細胞の増殖を阻害する抗体の能力をアッセイすることにより中和能を測定するTF-1増殖アッセイにおける生物活性について評価した。TF-1は、赤白血病患者から樹立されたヒト前骨髄性細胞株である。この細胞株は生存および増殖に関して因子依存性であり、ヒトGM-CSFでルーチンに維持される。GM-CSF依存性増殖の阻害は、分裂している細胞の新しく合成されたDNA中へのトリチウム化チミジンの取り込みの減少を測定することにより測定した。本アッセイにおいて、前記scFvのすべてが適度の効力を示し、IC50値は約180〜1200nMであった。
【0091】
最も強力なscFvクローンを、ヒトγ4H鎖定常ドメインおよびヒトλL鎖定常ドメインを有するヒトIgG4抗体分子として再構成した。Persic ら[100]に記載に従い、少しの改変を加えて、全IgG4抗体としての抗体の発現を可能にするために、最も強力なscFvクローンに対してベクターを構築した。HEK-EBNA293細胞との使用を容易にし、エピゾームの複製を可能にするために、oriPフラグメントをベクターに含めた。発現ベクターpEU8.1(+)の分泌リーダー配列とヒトγ4定常ドメインの間のポリリンカーにVH可変ドメインをクローニングした。発現ベクターpEU4.1(-)の分泌リーダー配列とヒトλ定常ドメインの間のポリリンカーにVL可変ドメインをクローニングした。HEK-EBNA293細胞を、H鎖およびL鎖を発現する構築物で同時トランスフェクトし、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて、馴化培地から全長抗体を精製した。精製抗体調製品を無菌濾過し、評価するまでリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中4℃で保存した。BCA法(Pierce)を用い、280nmでの吸光度を測定してタンパク質濃度を測定した。
TF-1増殖アッセイにおいて、再フォーマットしたIgGを公知のマウス抗体2B7と比較した。本アッセイにおいて、前記IgG4は活性を保持または獲得し、IC50値は6〜約1600nMであった。
【0092】
炎症性疾患において、作用部位への好中球の動員には好中球の形態変化が必要である。GM-CSFへの顆粒球の暴露後に血液から単離された顆粒球の形態の変化を測定するために蛍光表示式細胞分取(FACS)を用いてこの生物学的反応をまねするためにヒト顆粒球形態変化アッセイが設計された。GM-CSFへの好中球の形態変化反応を阻害する抗GM-CSFRαIgG4抗体の能力を評価した。選択されたクローンのIC50値は約15〜350nMであった。代表的な抗体である28G5は、カニクイザル顆粒球形態変化アッセイにおいてカニクイザルGMCSF-Rを中和し、IC50は約5nMであった。公知のマウス抗体2B7もまた、カニクイザル受容体へのGM-CSFの結合からもたらされる生物学的反応を中和することができた。
ついで本抗体の受容体結合親和性をBIAcoreを用いて測定し、32〜377nMのKD計算値を得た。
【0093】
最適化
28G5の効力を改善する目的で最適化プログラムを開始した。VHまたはVL CDR3のランダム変異導入を行った抗体ライブラリーを作製した。全CDRを包含するために2つの6アミノ酸ブロックにおいて各CDR3をランダム化し、ライブラリーH1(VH CDR3における6aaのN末端ブロック)、H2(VH CDR3における6aaのC末端ブロック)、L1(VL CDR3における6aaのN末端ブロック)およびL2(VL CDR3における6aaのC末端ブロック)を作製した。得られたライブラリーを、ヒトGM-CSFRαへの結合に関して繰り返し選択サイクルにかけた。次に、この選択プロセスから単離されたクローンを、変異H鎖CDR3および変異L鎖CDR3の両方を有するscFvを含む組み合わせたファージライブラリーを構築するために用いた。これらのライブラリーも同じ選択手順にかけた。
最適化プロセスの各段階において、28G5および受容体を用いるエピトープ競合アッセイを用いて、GM-CSF受容体への28G5IgG4の結合を阻害することができるscFvを同定し、ついでTF-1増殖アッセイにおいて下記のように評価した。
28G5のH鎖CDR3配列のランダム変異導入後に、TF-1アッセイにおいて適度の中和能を有するscFvのパネルが同定された。大部分の効力改良はVH CDR3の3'末端がランダム化された場合に得られた。
28G5のL鎖CDR3配列のランダム変異導入後に、TF-1アッセイにおいて適度の中和能を有するscFvのパネルを同定した。すべての効力改良はVL CDR3の3’末端がランダム化された場合に得られた。
【0094】
H鎖およびL鎖CDR3のランダム変異導入ライブラリーの組み合わせ後に、TF-1増殖アッセイにおいて親scFv28G5以上に改善された効力を有するscFvsのパネルが同定された。親28G5の>60000倍の効力改良を有するScFvが単離された。ライブラリーのすべての組み合わせは改善されたscFv、すなわちH1/L1、H1/L2、H2/L1、H2/L2をもたらした。L1ライブラリーからは改善されたscFvは単離されなかったので、このことは特に興味が持たれる。
28G5の最適化中に同定した19scFvのパネルを再フォーマットし、前述の方法を用いてIgG4として発現した。このパネルは、抗体クローン1、2および4〜20から構成された。このパネルにおける最も強力なクローンのいくつかは、組み合わせたHおよびL CDR3変異ライブラリーから得られた。このパネルにおけるIgG4抗体を、TF-1増殖アッセイにおいてそれらの活性に関して評価し、公知のマウス抗体2B7と比較した。本アッセイにおいて、すべての最適化したIgG4は2B7よりも強力であった。この場合、2B7は約1.6nMのIC50計算値を有し、一方で前記クローンは約1pm〜約1100pMのIC50計算値を有していた。データを以下の表1に示すが、概略は次のとおりである:
IC50<1500pM (抗体1、2および4〜20)
IC50<300pM (抗体1、2、4〜12および14〜20)
IC50<60pM (抗体1、2、4〜6、8〜11、14および16〜20)
IC50<10pM (抗体1、5、6、11および20)。
【0095】
図3は、TF-1増殖アッセイにおいて、公知の抗体2B7と比較した、本発明の2つの代表的抗体である抗体1および抗体6のアンタゴニスト能を示す。
BIAcore 2000 System (Pharmacia Biosensor)を用いて、リード化合物を最適化したIgG4のいくつかと組換え精製タグ付きGM-CSF受容体細胞外ドメインとの相互作用の速度論的パラメータを評価した。抗体の親和性は大きく改善され、KD計算値は0.127nM〜約5nMであった。データを表2に示す。結合速度および解離速度の両方において改良が得られた。GM-CSFRαの可溶性細胞外ドメインに対するIgG4の親和性とそれらのTF-1アッセイにおける性能との間の相関は大変よく、ピアソン係数は0.85(p<0.0001)であった。比較として、2B7のKDを別に算出し、約7nMであることが示された。
28G5の最適化中に同定されたIgG4抗体をヒト顆粒球形態変化アッセイで評価し、公知のマウス抗体2B7と比較した。本アッセイで評価した抗体のすべて(抗体1、2、5、6、9〜11、16および20)は大変強力であり、7.8〜90pMのIC50を有していた。これらの中で、抗体1、2、5、6、9、16および20は50pM未満のIC50を有し、抗体1、2、6、16および20は25pM未満のIC50を有していた。我々の抗体は2B7よりも強力であった。2B7は477pMのIC50を有していた。データを表3に示す。図4は、ヒト顆粒球形態変化アッセイにおける、公知の抗体2B7と比較した、本発明の2つの代表的抗体である抗体1および抗体6のアンタゴニスト能を示す。
28G5の最適化中に同定されたIgG4抗体をカニクイザル顆粒球形態変化アッセイで評価した。前記抗体のすべてはカニクイザル受容体ばかりでなくヒト受容体でのGM-CSFの活性を中和することができ、前記抗体のすべては2B7よりも強力であった。2B7が26pMのIC50を有していたのに対し、本パネルからの代表的抗体(抗体6、抗体1および抗体2)は、それぞれ1.73、2.03および3.2pMのIC50値を有していた。
【0096】
28G5の最適化中に同定されたIgG4のパネルを、単球TNFα放出アッセイにおけるそれらの中和能に関して評価した。本アッセイは、GM-CSFで処理したとき、ヒト単球からの炎症促進因子であるTNFαの放出を阻害する能力を試験する。抗体1、2、5、6、9および10を試験し、すべてが本アッセイにおいて活性であり、その受容体部位でのGM-CSFの作用を完全に中和できた(約43〜139のIC50)。一方、333nMの濃度での2B7は、GM-CSFにより引き起こされるTNFα放出の50%阻害を達成できたのみであり、このことは、本アッセイにおいてこの抗体が部分阻害剤であるにすぎないことを示唆している。図5は、単球TNFα放出アッセイにおける、公知の抗体2B7と比較した本発明の2つの代表的抗体のアンタゴニスト能を示す。データを表4に示すが、概略は次のとおりである:
<150pM (抗体番号1、2、5、6、9&10)
<110pM (抗体番号1、2、5、6&9)
<100pM (抗体番号1、5、6&9)。
【0097】
炎症性疾患の顕著な特徴は、特定のシグナルに応じての炎症性細胞型の生存性増大である。顆粒球はGM-CSFの存在下でより長く生存できるので、28G5の最適化中に単離されたIgG4抗体のこの反応を阻害する能力を顆粒球生存アッセイで評価した。リード化合物の最適化からの抗GM-CSFRα IgG4のすべてが本アッセイにおいて活性であり、代表的中和能(IC50)は7.0〜843.7pMであった。このことは公知のマウス抗体2B7とは対照的であり、2B7は83nMの濃度まで完全に不活性であった。図6は、顆粒球生存アッセイにおける、公知の抗体2B7と比較しての、本発明の2つの代表的抗体である抗体1および抗体6のアンタゴニスト能を示す。
【0098】
図3〜6に示すように、これらのデータは、公知のマウス抗体2B7と比較して我々の抗体がかなり異なる特性を有していることを示している。例えば、本発明の代表的抗体は、顆粒球生存アッセイおよびTF-1増殖アッセイにおける、7pM GM-CSFで刺激される顆粒球生存およびTF-1増殖をそれぞれ阻害したが、一方、2B7は顆粒球生存を阻害しなかったが、TF-1増殖を阻害した(我々の抗体よりもより低い程度ではあったが)。このデータは、本発明の結合構造要素が、公知の抗GM-CSFRα抗体と比較してより高い親和性とGM-CSF-Rを介した種々の生物学的作用を阻害する改善された能力を有していることを示している。
導き出された28G5およびその誘導体のアミノ酸配列を、VBASEデータベースにおける公知のヒト生殖系列配列に対してアラインメントし、配列類似性により最も近い生殖系列を同定した。28G5およびその誘導体のVHドメインに対して最も近い生殖系列はVH1 DP5であると同定された。28G5VHは、フレームワーク領域内でVH1-24(DP5)生殖系列からの14変異を有する。VLドメインに対する最も近い生殖系列は、Vλ 1VL1-e(DPL8)であり、これはフレームワーク領域内で、生殖系列からの5変異のみを有する。28G5およびその誘導体のフレームワーク領域は部位特異的突然変異誘発により生殖系列に復帰され、天然ヒト抗体に完全に一致した。1つを除くすべてのアミノ酸を生殖系列に変換でき、抗体効力においてわずかの変化だけが認められた。H鎖の位置94(Kabat番号付けを用いて、Kabatら1971)におけるアミノ酸イソロイシンは、活性の完全な消失なしには生殖系列トレオニンと交換できなかった。従って、生殖系列からのこの単一の変異は抗体フレームワーク領域中に維持された。
【0099】
抗GM-CSFRα抗体の2つである抗体6および抗体1の完全pA2分析をTF-1増殖アッセイにおいて行った。この系においてこれらの抗体は極めて強力なアンタゴニストであることをこのデータは裏付けている。pA2計算値は、それぞれ-11.3±0.2および-11.0±0.2である(図1)。
抗GM-CSFRα抗体の1つである抗体6の完全pA2分析をヒトおよびカニクイザル顆粒球形態変化アッセイにおいて行った。これらの系においてこの抗体は極めて強力なアンタゴニストであることをこのデータは裏付けている。ヒトおよびカニクイザルアッセイにおけるpA2計算値はそれぞれ-10.58および-10.78である(図2)。
GM-CSFは、半固体寒天アッセイにおいて、造血前駆細胞の顆粒球およびマクロファージコロニーへの分化を促進する。従って、親和性成熟抗体6および抗体1、親mAb抗体3(28G5)ならびに陰性対照(CAT001)を、コロニー形成アッセイにおいて、末梢血由来の前駆細胞を用いるこのGM-CSF比活性に拮抗するそれらの能力を評価した。親和性成熟代表的mAbは共に、ヒトGM-CSFに媒介されるin vitro造血コロニー形成の強力な阻害剤であったことを図7に示すデータは明らかにしている。
親和性成熟mAbに関しては、おおよそのIC50値は0.08μg/ml(抗体6)および0.25μg/ml(抗体1)であった。興味あることに、公知のマウス抗体2B7は、本アッセイにおいて66nMの濃度までほとんど阻害活性を有さないと思われた。
【0100】
対照実験において、予想されたように、SCF+IL-3+G-CSFの組み合わせに媒介されるコロニー形成に対してこの親和性成熟mAbは効果を示さず、サイトカインの非存在下でコロニー形成はごくわずかであった(<4コロニー/培養)。huGM-CSFRα特異的mAb拮抗活性のin vivo分析については、トランスジェニックhuGM-CSFR発現が骨髄由来造血細胞に限定され、それにより内因性受容体の発現プロフィールにより似ているキメラ動物を作製するために、ヒトGM-CSFRのαおよびβ鎖の療法を発現しているトランスジェニック(Tg)マウスからの野生型マウスへの骨髄の移植を用いることができる。これらのTgキメラマウスにおいて、huGM-CSFの投与は脾臓質量の増加と循環血液単球のマージナリゼーション(marginalisation)を引き起こす。親和性成熟抗体6および陰性対照mAb CAT001を、これらのGM-CSF媒介in vivo反応に拮抗するそれらの能力に関して評価した。用量応答分析に関して、500ng huGM-CSFを1日2回4日間、6群の5匹のTgキメラマウスの皮下に投与し(1〜4日目)、第7番目の対照群である5匹の動物にPBSのみを投与した。6群のうち4群のhuGM-CSF投与動物に、D.0に、16mg/kg、5.3mg/kg、1.78mg/kgまたは0.59mg/kgで試験mAb(抗体6)を投与し、5番目の群のhuGM-CSF投与動物にD.0に16mg/kgで対照CAT001を投与した。図8に示される結果は、対照PBSと比較して、huGM-CSFの投与は、著しい脾臓質量の増加および循環血液単球の減少を引き起こしたことを明らかにしている。予想されたように、16mg/kg対照CAT001の投与は、脾臓質量の増加または血液単球の減少のいずれにも効果を示さなかった。対照的に、試験mAb抗体6の投与後に明らかな用量応答効果が示された(16mg/kgでこの抗体は脾臓質量の増加をなくし、mAb0.59mg/kgでは、効果は明らかではあったが大きく低下したので)。IC50は、およそ0.59mg/kg〜1.78mg/kgと思われる。GM-CSFにより引き起こされる循環単球の減少に関して、同様な結果が観察された。試験mAb抗体6の16mg/kgでの投与は減少をなくし、一方でmAbの0.59mg/kgでの投与はこの反応に関してほんの少ししか影響を示さなかった。これらのデータは、抗GM-CSFRα抗体がin vivoでのヒトGM-CSFRαのアンタゴニストであることを示している。
【0101】
これらの抗GM-CSFRa抗体の抗炎症性をさらに調べるために、末梢血単核細胞サイトカイン放出アッセイで抗体6を評価した。本アッセイにおいて、ドナーに応じてTNFαおよびIL-6は内因的に放出されうる。本アッセイにおいて、GM-CSFはまた細胞により外因的に加えられるよりもむしろ内因的に産生され、従って本アッセイにおいて観察される結果は、天然内因性GM-CSFのその受容体への結合の生物学的作用の阻害を表す。
図9に示すように、抗体6の投与後、これらの両方のサイトカインは用量依存的に阻害された。これらの抗体は天然GM-CSFの活性を阻害することができ、GM-CSFによる情報伝達を阻害することにより、IL-6およびTNFaなどの重要な炎症性サイトカインを阻害する事ができることをこれらのデータは示している。IL-6およびTNFaは共に多くの炎症性徴候、例えば関節リウマチに関係していると考えられている。
さらにまた、抗体6でのこの結果に基づいて、抗体1〜20のそれぞれは、抗体1〜20のすべてがGM-CSFRaの同じ領域に結合すると考えられることから、本アッセイにおいて同様に阻害を示すと予期することができる。
【0102】
抗原認識にとって重要な残基のマッピングおよび配列分析
どの位置が通常リガンド結合のために保存され、どの位置が抗体中でリガンド結合活性を維持するにもかかわらず可変であるかを同定するするために、我々は、生殖系列抗体6scFv配列における残基の位置の可変性を測定した。
抗原結合性に寄与する位置は、VLドメインにおけるKabat残基27A、27B、27C、32、51、52、53、90、92および96であり、VHドメインにおけるKabat残基17、34、54、57、95、97、99および100Bであると推定された。
抗原結合性に重要と推定される7つの位置(H95、H97、H99、H100B、L90、L92およびL96)を同定した。次いで我々は、28G5抗体最適化プロセス中に単離された160変種の配列のこれらの位置における残基を分析し、そのすべてはTF-1増殖アッセイにおいて最小5倍の効力改善を示した。
これらの位置のそれぞれおよびL95Aにおいて観察された種々のアミノ酸(可能な20の中から)を以下の表5のデータに要約する。28G5および/または抗体6に存在するアミノ酸に位置が強く保存されている場合、これはこれらのアミノ酸が抗原を結合させるために重要であるよい証拠である。例えば、以下の位置における残基は強く保存されている:H97、H100B、L90、L92。
【0103】
方法
親和性成熟および生殖系列抗体6scFvをコードするDNA配列を、本質的に引用文献[101]に記載されているようにしてリボソームディスプレイフォーマットに変換した。ランダム点変異を含む変種574D04配列のライブラリーを作製するために、製造業者のプロトコル(BD Bioscience)中の変異率の高い条件(1,000bpにつき7.2変異)を用いて抗体6配列に変異導入PCR法を行った。このライブラリーをリボソーム上で発現させ、精製タグ付きGM-CSFRαと共にインキュベートし、結合を生じさせた。タグをつけたGM-CSFRαに結合できる変種を捕捉し、タンパク質G(Dynal)を被覆した常磁性ビーズを用いて除去した。集団中に残った非結合変種を、引用文献[102]に記載されている大きなヒト抗体ファージディスプレイライブラリーから前もって誘導され、抗体6scFvに結合する事が知られている4つのビオチン化抗イディオタイプ抗体のプールに加えた。ビオチン化抗イディオタイプ抗体に結合している変種をストレプトアビジンビーズで捕捉し、非結合変種を洗い流した。引用文献[101]の一般的方法に従って、リボソームディスプレイによる選択のこのプロセスをさらに2ラウンド繰り返した。
【0104】
選択アウトプットからの変種の代表的な部分をファージミドベクターにクローニングし、Edwards BM et al (2003) Journal of Molecular Biology Vol 334:103に記載されている方法と同じ方法を用いて、scFv変種をファージ上に発現させ、ELISAで試験した。精製タグ付きGM-CSFRαへの結合を示さなかったそれらの変種を、選択に用いる4つの抗イディオタイプ抗体のプールへの結合に関して試験した。抗イディオタイプ結合アッセイにおいて、抗体6scFv以上の結合を示す変種の配列を決定し、配列を分析して高頻度の変異を示す位置を見いだした。
【0105】
VH鎖には486配列、VL鎖には451配列を用いた変種集団の平均変異率はVHまたはVL鎖に対して3.05アミノ酸であることが見いだされた。変異のホットスポットに関してそれらを分析し、scFvに沿って、変異の頻度をそれらの位置と関連させてプロットした。VHおよびVLについて少なくとも1つのCDR変異を有し、かつVHおよびVLについて4未満の変異を有するクローンに対して焦点を合わせて分析を行った。123VHおよび148VL配列のこのパネルから、5%以上の変異頻度を有するものとしてホットスポットを定義した。
リボソームディスプレイのネガティブ選択法を用いて、抗原結合性に重要な推定上の位置として抗体6のVH CDR3およびVL CDR3内の7つの位置を明らかにした。ついで全VH CDR3およびVL CDR3配列を無作為化しより高い親和性に関して選択する28G5抗体最適化プロセス中に単離された160配列変種について分析を行った。すべての配列(抗体6を含めて)は、TF-1増殖アッセイにおいて最小5倍の効力改善を示した。
【0106】
線状エピトープの決定
我々は、それぞれがGM-CSFR-αの細胞外部分からのアミノ酸配列の短い領域に相当する2442ペプチドに対して、PEPSCAN法を用いて抗体6および公知の抗体2B7をスクリーニングした。すべてのペプチドに対する各抗体の結合シグナルを平均して平均バックグラウンドシグナルを得、各ペプチドに関してシグナル/バックグラウンド比を算出した。抗体6および2B7の両方に対して、4倍以上のシグナル/バックグラウンド比を特異的な正のシグナルとして数えた。特異的な正のシグナルを与えるペプチドの配列を保存された結合モチーフに関して分析し、抗体6は、成熟ヒトGM-CSFRαの残基226-230に対応するYLDFQモチーフに選択的に結合し、2B7抗体は成熟ヒトGM-CSFRαの残基278-281に対応するDVRIモチーフに選択的に結合する事が見出された。成熟受容体に対するアミノ酸配列の番号付けは配列番号206に記載されている。
【0107】
PEPSCAN法(ペプチド結合スキャン)
GMCSF由来の配列を有する大部分オーバーラップする15-mer合成ペプチドを合成し、前述の[103]ように、クレジットカードフォーマットミニPEPSCANカード(3ulウェルの455ウェルプレート)を用いてスクリーニングした。PEPSCANベースのエンザイムイムノアッセイ(ELISA)で、各ペプチドへの抗体の結合を試験した。共有結合されたペプチドを含有する455ウェルクレジットカードフォーマットポリプロピレンカードをサンプルと共にインキュベートした(例えば5%ウマ血清(v/v)および5%卵白アルブミン(w/v))および1%Tween80を含むPBS溶液、あるいは軽いブロッキング条件では、4%ウマ血清(v/v)および1%Tween80を含むPBS溶液に1/1000に希釈した、10ug/mlの抗体または血清(4℃、終夜))。洗浄後、ペプチドを抗抗体ペルオキシダーゼと共にインキュベートし(希釈度1/1000、例えばウサギ-抗マウスペルオキシダーゼ、Dako)(1時間、25℃)、続いて、洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホナート(ABTS)および2ul/ml 3%H2O2を加えた。1時間後、発色を測定した。CCD-カメラおよび画像処理システムによりELISAの発色を定量した。セットアップは、CCD-カメラおよび55mmレンズ(Sony CCD ビデオカメラ XC-77RR, Nikon マイクロニッコール 55 mm f/2.8レンズ )、カメラアダプター (Sony Camara adaptor DC-77RR)および画像処理ソフトウェアパッケージ Optimas 、バージョン 6.5 (Media Cybernetics, Sylver Spring, MD 20910, U.S.A.)からなる。Optimasはコンピュータシステムを用いる。
【0108】
アッセイ材料および方法
生化学的リガンド結合アッセイ
精製scFv調製品は、WO01/66754[104]に記載されているように製造した。精製scFv調製品のタンパク質濃度は、BCA法[105]を用いて測定した。PBSで2.5μg/mlに希釈した抗ヒトIgG4を、50μl/ウェルで、終夜4℃でFluoronunc(登録商標)96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングした。PBS/0.1%ツイーン20 300μl/ウェルでプレートを3回洗浄し、ついで3%BSAを含むPBS溶液300μl/ウェルを用いて、室温で1時間ブロッキングした。プレートをPBS/0.1%ツイーン20 300μl/ウェルで再度3回洗浄し、1%BSA/PBSで62.5ng/mlに希釈したヒトGM-CSFRα50μlを各ウェルに加え、室温1時間プレートをインキュベートした。前述のように3回洗浄した後、サンプル物質25μlを各ウェルに加え、ついで1%BSA/PBSで2nMに希釈したビオチン化GM-CSF25μlを加えた。全結合を明らかにするために、緩衝液のみをサンプル物質として用いた。非特異的結合を明らかにするために、1%BSAで100nMに希釈した非標識GM-CSFをサンプル物質として用いた。プレートを室温で1時間インキュベートし、ついで前述のように3回洗浄した。DELFIA(登録商標)アッセイ緩衝液で100ng/mlに希釈したユーロピウム標識ストレプトアビジン(PerkinElmer)50μlをプレートの各ウェルに加え、室温で30〜60分インキュベートし、ついでDELFIA(登録商標)洗浄用緩衝液で7回洗浄した。DELFIA(登録商標)エンハンスメント溶液50μl/ウェルをプレートに加え、プレートリーダーを用いて615nmでサンプルを読み取った。
【0109】
TF-1増殖アッセイ
R&D Systemsから入手し、RPMI1640、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウムおよび4ng/ml GM-CSFで継続的に維持したTF-1細胞を、アッセイ培地(RPMI1640、5%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム)で3回洗浄することにより飢餓状態におき、アッセイ培地に再懸濁し、37℃、5%CO2で7〜24時間インキュベートした。ついで細胞をアッセイ培地に1x105/mlで再懸濁し、96ウェル平底組織培養プレートの各ウェルに100μl加えた。アッセイ培地に希釈する前に、原液サンプルを無菌濾過することにより試験サンプルを調製した。ついで細胞の各ウェルに試験物質50μlを加え、これらを37℃、5%CO2で45〜60分間インキュベートした。ついで、アッセイ培地でEC80値に希釈したGM-CSF(またはGM-CSFのいくつかのバッチに対して0.4ng/ml)50μlを各ウェルに加え、加湿チャンバー中、37℃、5%CO2で16時間プレートをインキュベートした。これは最終濃度7pMのGM-CSFに相当する。細胞の増殖を測定するために、アッセイ培地で5.0μCi/mlに希釈した3H-チミジン20μlをプレートの各ウェルに加え、37℃、5%CO2で4時間±30分プレートをインキュベートした。ついでプレートハーベスターを用いて、96ウェルGF/C Unifilter(登録商標)プレート上に細胞を採取し、洗浄した。フィルタープレートの各ウェルにMicroScint20(登録商標)50μl加えた後、プレートをシールしてトップカウントプレートリーダーでカウントした。
【0110】
ヒト顆粒球形態変化アッセイ
ヒトバフィーコート(輸血管理室からのヒト血液パック)を、等容量の3%デキストランT-500を含む0.9%NaCl溶液に混合した。ついでこの混合物を、界面が形成されるまで直立位置でインキュベートした。上層を採取し、ヒストパック1.077密度勾配の上部に層状に重ね、ついで400gで40分間遠心分離し、ブレーキを用いずに止まらせた。この勾配の上層を除き、顆粒球ペレットを残した。ペレット中に残っている赤血球を、細胞を20mlの氷水に30秒間再懸濁することにより溶解し、続いて氷冷した1.8%塩化ナトリウムを直ちに加えた。ついで細胞を1200rpmで再ペレット化し、アッセイ培地(RPMI1640、10%FBS、100u/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、25mM HEPES)に1x106/mlで再懸濁した。ついで96ウェル平底組織培養プレートの各ウェルに細胞100μlを加えた。原液サンプルを無菌濾過し、必要に応じてアッセイ培地で希釈して、試験サンプルを調製した。
【0111】
ついで、リード化合物の単離のために、細胞に試験サンプル50μlを加え、37℃、5%CO2で45〜60分間プレートをインキュベートした。これは最終濃度7pMのGM-CSFに相当する。ついで、アッセイ培地で0.4ng/mlに希釈したGM-CSF50μlを各ウェルに加え、加湿チャンバー中、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。
リード化合物の最適化のために、濾過し、アッセイ培地で希釈したIgG4を、アッセイ培地で0.4ng/mlに希釈した等容量の GM-CSFを混合した。これは最終濃度 7 pMの GM-CSFに相当する。ついで抗体/GM-CSF混合物100μlを各ウェルに加えた。ついでこれを、加湿 チャンバー中、37℃、 5% CO2で3時間インキュベートした。
冷ホルムアルデヒドを最終濃度1.25%まで加え、細胞を終夜4℃で固定した。フローサイトメトリーにより2000〜5000イベント/ウェルを分析した。ついで各サンプルに関する前方散乱(FSC)の幾何平均をCellQuestを用いて導いた。幾何平均を算出するとき、無関係な集団(例えば死細胞/破片)を除外するために細胞をゲートで制御した。
【0112】
カニクイザル顆粒球形態変化アッセイ
GM-CSFでの刺激後にカニクイザル顆粒球の形態変化を測定するアッセイで抗体を評価した。カニクイザル全血から顆粒球を精製し、本質的にヒト顆粒球形態変化アッセイに記載されているようにしてアッセイを行った。
【0113】
バイオセンサー分析を用いる結合親和性データ
scFvおよびIgG4と組換え受容体との相互作用の速度論的パラメータを評価するためにBIAcore 2000 System (Pharmacia Biosensor)を用いた。このバイオセンサーは、表面プラズモン共鳴の光学効果を利用して、検体分子とデキストランマトリックスに共有結合したリガンド分子との相互作用から生じる表面濃度の変化を調べる。典型的には、自由溶液中の検体種は結合リガンド上を経過し、任意の結合は局所SPRシグナルの増加として検出される。これに続いて、洗浄の期間があり、洗浄中、検体種の解離はSPRシグナルの減少として観察され、その後残った検体はリガンドから取り除かれ、この手順がいくつかの異なる検体濃度で繰り返される。結合リガンドの絶対結合能または速度論プロフィールのいずれもが大きく変わらないことを確かめるために、通例、実験中一連の対照が用いられる。検体サンプルの主な希釈剤および解離相溶媒として、典型的には、hepes緩衝生理食塩水(HBS-EP)が用いられる。実験データは、時間に対する共鳴単位(resonance unit)(SPRシグナルに直接に対応する)で記録される。共鳴単位は、結合した検体のサイズおよび量に直接に比例する。ついで、解離相(解離速度単位s-1)および会合相(会合速度単位M-1s-1)に速度定数を帰属するためにBIAevaluationソフトウェアパッケージを用いることができる。ついでこれらの図から会合および解離親和定数の算出が可能となる。
【0114】
IgG4がアミンによりプロテインA表面に非共有結合的に捕獲される単一のアッセイを用いてIgG4の親和性を測定した。ついで、組換え精製タグ付きGM-CSF受容体細胞外ドメインの一連の100〜6.25nM希釈液をIgG4上に順次通過させた。濃度(Bradford)および予測される翻訳後非修飾成熟ポリペプチド質量(39.7kDa)を用いて受容体のモル濃度を算出した。2つの異なるデータセットのそれぞれを同一フォーマットで分析した。会合および解離速度の同時広域計算にあわせた1:1 langmuirモデルを用い、Rmax値を広域に合わせて対照セル補正データにフィッティング処理を行った。全体の実験中に安定に残っている捕捉された量を確認するために、各サイクル中に捕捉されたIgG4レベルを評価した。さらに、ベースラインドリフトの補正が必要かどうかを決定するために、IgG4の解離速度を評価した。しかしながら、両方のプロテインA相互作用は、十分に再現性があり、安定であることが判明した。データの妥当性は算出されたχ2およびT値(パラメータ値/オフセット)により制約され、それぞれ<2および>100でなければならなかった。
【0115】
精製タグ付きGM-CSFRα細胞外ドメインの産生
マウスIL-3シグナル配列を含むヒトGM-CSF受容体α細胞外ドメイン(配列番号205、成熟GM-CSF Rのアミノ酸1-298を示す)をコードする配列を組み込み、N末端精製タグを組み込んだpEFBOS発現ベクター[106]を用いて、組換えN末端タグをつけたGM-CSF受容体細胞外ドメイン(ECD)ポリペプチドを製造した。標準手順を用い、pEFBOSベクターを用いてCHO細胞内でタグをつけたECDポリペプチドを発現させた。このポリペプチドは、精製GM-CSFRα細胞外ドメインまたはGM-CSFRαの可溶性細胞外ドメインとも呼ぶことができる。
任意の適切な精製タグを用いることができ、例えばFlagペプチド(DYKDDDE-配列番号204)、Fc、ビオチンまたはHisタグを用いることができる。任意の適切な技術を用いて精製を行うことができ、例えばFlagタグをつけたECDポリペプチド(配列番号203)はM2アフィニティークロマトグラフィーカラムで精製し、FLAGペプチドで溶出することができる。
【0116】
単球TNFα放出アッセイ
単球の精製(Monocyte Isolation Kit - Miltenyi Biotec - 130-053-301):
ヒストパック1.077密度勾配(Sigma、Cat. No.1077-1)の上部にヒトバフィーコート(輸血管理室からのヒト血液パック)を層状に重ね、400xgで40分間細胞を遠心分離した。遠心機を停止するとき、ブレーキをかけなかった。ついで界面からPBMC細胞を採取した。細胞をPBSで洗浄し、300xgで10分間ペレット化し、ついで氷水20mlで15秒間再縣濁することにより残った赤血球を溶解し、次に直ちに氷冷した1.8%NaClを加えた。ついで1200rpmで5分間細胞をペレット化し、MACS緩衝液(PBS、2mM EDTA)600μlに再懸濁した。キットで提供されるFc阻止試薬200μlを細胞に加え、混合した後、ハプテン-抗体カクテル(キットでも提供される)200μlを加え、混合した。ついで4℃で15分間細胞をインキュベートし、次にMACS緩衝液50mlで2回洗浄した。細胞ペレットをMACS緩衝液600μlに再懸濁し、ついでFc阻止試薬200μlを加え、混合し、次にMACS抗ハプテンマイクロビーズ200μlを加え、混合した。細胞を4℃で45分間インキュベートし、ついでMACS緩衝液50mlで洗浄し、MACS緩衝液500μlに再懸濁した。MACS緩衝液3mlで洗浄して単一のカラム(Miltenyi Biotec130-042-401)を調製し、ついで細胞浮遊液をカラムに加えた。濃縮単球画分として溶出液を回収した。カラムをMACS緩衝液2x3mlで洗浄し、溶出液を回収した。標準的なフローサイトメトリー法を用い、抗CD14-PEで染色することにより単球の純度をチェックした。最後に、アッセイ培地(RPMI1640、10%FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)に4x106/mlで細胞を再懸濁した。
【0117】
単球の刺激:
Costar96ウェル平底組織培養プレートの各ウェルに細胞50μlを加えた。150μg/ml rhIFNγ(R&D systyems)25μlを全ウェルに加えた。濾過し、アッセイ培地で希釈したIgG4をアッセイ培地で56ng/ml(4nM)に希釈した等容量のGM-CSFと混合した。これは最終濃度1nMのGM-CSFに相当する。ついで抗体/GM-CSF混合物75μlを各ウェルに加えた。対照には、GM-CSFのみのウェルまたはGM-CSFおよび抗体なしのウェルを用いた。ついで、加湿チャンバー中、37℃、5%CO2で18時間プレートをインキュベートした。ついで上清を採取し、ELISAによりTNF-αレベルを試験した。
【0118】
TNFα ELISA (R&D Systems ELISA Development System DY210):
PBS中4μg/mlの捕捉用抗体100μlを用い、Fluoronunc Immunosorb ELISAプレートを室温で終夜被覆した。ついでプレートをPBS/0.1%ツイーンで3回洗浄し、3%Marvelを含むPBS溶液300μl/ウェルを用い、室温で1時間ブロックした。PBS/0.1%ツイーンでプレートを3回洗浄した。アッセイプレートからの上清100μlをELISAプレートに移し、アッセイ培地で希釈したTNF-αの滴定を対照ウェルに加えた。室温で2時間プレートをインキュベートし、ついでPBS/0.1%ツイーンで4〜5回洗浄した。1%Marvel/PBSで300ng/mlに希釈した検出抗体100μlをプレートの各ウェルに加え、プレートを室温でさらに2時間インキュベートし、ついでPBS/0.1%ツイーンで4〜5回洗浄した。ストレプトアビジン-ユーロピウム(PerkinElmer1244-360)をDELFIAアッセイ緩衝液 (PerkinElmer 4002-0010)で1:1000に希釈し、100μl/ウェルで加え、ついで室温で45分間インキュベートした。ついでプレートをDELFIA洗浄用緩衝液で7回洗浄し、ついでエンハンスメント溶液(PerkinElmer4001-0010)100μl/ウェルを加え、プレートリーダーにより615nmで読み取った。
【0119】
顆粒球生存アッセイ
好中球活性化アッセイ(形態変化アッセイ)のために記載したようにヒトバフィーコートから細胞を精製し、アッセイ培地(RPMI-1640 Glutamax、10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)で洗浄し、アッセイ培地に1x106/mlで再懸濁した。Costar96ウェル平底組織培養プレートの各ウェルに細胞100μlを加えた。濾過した抗体原液をアッセイ培地で希釈し、0.4ng/mlの等容量のGM-CSFで混合した。これは最終濃度7pMのGM-CSFに相当する。対照ウェルは培地単独またはGM-CSF単独を含んでいた。ついでプレート上の各ウェルに試験サンプル/GM-CSF混合物100μlを加え、加湿チャンバー中、37℃/5%CO2で68時間細胞をインキュベートした。各ウェルにAlamarBlue20μlを加え、加湿チャンバー中、37℃/5%CO2でさらに24時間プレートをインキュベートした。ついでプレートリーダーを用い、560nmおよび590nmでプレートを読み取った。
【0120】
TF-1増殖アッセイならびにヒトおよびカニクイザル顆粒球形態変化アッセイにおける抗GM-CSFRα抗体のpA2分析
競合的アンタゴニストの親和性を定量するための主な薬理学的ツールはシルド(Schild)分析である。このアプローチを用いることにより、機能アッセイにおけるアンタゴニストの親和性を予測するためのシステムに独立した手段である。この方法は、アンタゴニスト濃度およびその親和性は、アゴニスト反応の拮抗作用を決定するという概念に基づいている。拮抗作用は定量でき、アンタゴニストの濃度は既知であるため、アンタゴニストの親和性は定量できる。この拮抗作用は、用量比(DR)と呼ばれる、アンタゴニストのありなしで測定したアゴニストの等活性濃度(equiactive concentration)の比を測定することにより定量される。
【0121】
単一濃度の結合構造要素の存在下でのアゴニストのEC50に対する本結合構造要素の非存在下でのアゴニスト(一般的にはGM-CSF)のEC50の比を取ることにより用量比を算出できる。ついでlog(DR-1)として表される用量比をlog[結合構造要素]に対する線状回帰に用いてシルド回帰を行うことができる。従って、結合構造要素のすべての濃度に対して対応するDR値が存在し、これらはlog[結合構造要素]に対するlog(DR-1)の回帰としてプロットされる。拮抗作用が競合的であれば、シルド方程式に従ってlog(DR-1)およびlog[結合構造要素]間に線状相関が存在する。シルド方程式は次のとおりである。
Log(DR-1)=log[A]-log KA
これらの条件下で、縦座標に関するゼロの値は、x軸の切片を与え、ここでlog[a]=log KAである。従って、log(DR-1)=0を生じる結合構造要素の濃度は、本結合構造要素受容体複合体の平衡解離定数であるlog KAに等しい。これは、受容体を含むすべての細胞システムに対して正確であるべき、結合構造要素親和性の定量化と独立したシステムである。
【0122】
KA値は対数プロットから得られるため、それらは対数正規分布に従う。この特定の濃度の負の対数は、経験的にpA2と呼ばれ、アゴニスト用量応答曲線の2倍シフトを生じるアンタゴニストの濃度のことである。アンタゴニスト能は、以下の方程式からの用量比に対して単一の値を生じるアンタゴニストの単一の濃度からのpA2を算出することにより定量できる
pA2=log(DR-1)-log[a]
(式中、[a]は、もとの最大未満の応答を誘発するアゴニスト濃度を2倍にするのを必要にさせるアンタゴニストのモル濃度であり、DR(用量比)は、アンタゴニストのありなしで測定される、アゴニストの等活性濃度の比を測定することにより定量される)。
pA2は用量応答アッセイデータから算出できる。
【0123】
コロニー形成アッセイにおける血球前駆細胞のin vitroでのGM-CSF媒介分化の阻害
標準的な臨床管理の一部として前駆細胞動員およびアフェレーシスを受けたドナーから造血前駆細胞に富む末梢血単核細胞を得た。サンプルは同定せず、細胞は、使用前に冷凍保存はしなかった。最終濃度10ng/mlのヒトGM-CSFの存在下で、半固体寒天[107]中、5x104単核細胞を培養した。試験親和性成熟ヒトmAbsおよび公知のマウス抗体2B7を寒天培地に10、5、1、0.5、0.1または0.05μg/mlの最終濃度で加えた。親ヒトmAb28G5およびイソタイプ適合陰性対照ヒトmAbであるCAT001を単一濃度10μg/mlで評価した。対照目的で、mAbについても、SCF、IL-3およびG-CSFの組み合わせで刺激されるコロニー形成を遮断するそれらの能力(Crokerら、2004)ならびにサイトカインの非存在下でのコロニー形成に対するそれらの影響を評価した。37℃、大気中10%C02で14日間インキュベートした後、コロニー形成(>40細胞の凝集体)を評価した。グルタルアルデヒドでコロニーを固定し、35Xの倍率で解剖顕微鏡を用いて計数した。
【0124】
ヒトGM-CSFRαβトランスジェニックマウスにおけるin vivoGM-CSF生物活性の阻害
MHCクラスIプロモーターの調節下にあるヒトGM-CSFRのαおよびβ鎖の両方を発現しているトランスジェニック(Tg)マウスが作製され、huGM-CSFの投与に対するin vivo脾臓および血球反応が記載されている[108]。huGM-CSFRα特異的mAb拮抗活性のin vivo分析のために、Tgマウスから野生型マウスマウスへの骨髄移植を、トランスジェニックhuGM-CSFRαβ発現が骨髄由来造血細胞に限定され、それにより内因性受容体の発現プロフィールと良く似るキメラ動物を作製するために使用できる。これらのhuGM-CSFRαβTgキメラマウスにおいて、huGM-CSFの投与により脾臓質量の増加と循環血液単球のマージナリゼーションが引き起こされる。
【0125】
Tgキメラマウスの作製:
ドナーTgマウスから大腿骨および脛骨を取り除き、無菌PBS+3%仔牛胎児血清(FCS)で骨髄を流し出した。ついで23G針で骨髄間質を抜き取り、単一の細胞浮遊液を得、ついで冷PBS+3%FCSで細胞を1回洗浄し、ステンレススチールメッシュを通過させた。ついで0.168M塩化アンモニウム緩衝液中での溶菌により赤血球を除去し、次にリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)+3%FCSで2回以上細胞を洗浄し、ついで再度ステンレススチールメッシュを通過させた。さらに死細胞および細胞残滓を取り除くために、FCSクッションで懸濁液を遠心分離した。生存細胞をペレットで回収し、PBSで1回洗浄し、2.5x107/mlでPBSに再懸濁した。5〜8週齢レシピエントC57/BL6マウスを、3時間離して550Radで2回、致死量放射線照射した。0.2ml細胞浮遊液(すなわち5x106細胞/マウス)をレシピエントマウスに静脈内(i.v)注射し、続いて、フード付ボックス内で0.02Mネオマイシンを含む飲料水で3週間飼育した。6週間後に、huGMCSFRαおよびβ鎖に特異的なmAbを用いて、末梢血のFACS分析により再構成を評価した。
【0126】
GM-CSF処理およびそれに続くTgキメラマウスの分析:
Tgキメラマウスに、1日2回4日間皮下(s.c)経路でhuGM-CSF500ngを投与した。5匹のマウスの抗体拮抗活性群の分析のために、GM-CSF処理の開始の1日前に腹腔内(i.p)経路で特定の投与量のmAb(以下を参照)を投与した。5日目に、ADVIA(登録商標)Hematology System(Bayer Diagnostics)を用いて、循環白血球集団、特に血液単球の分析のために0.2mlの血液を採血した。ついで動物を犠牲にし、脾臓を除去して質量を測定した。
【0127】
ヒトのヒト末梢血単核細胞から内因的に発現されるヒトTNFaおよびIL-6の阻害
ヒトバフィーコート(輸血管理室からのヒト血液パック)をヒストパック1.077密度勾配(Sigma、Cat No.1077-1)の上部に層状に重ね、400xgで40分間細胞を遠心分離した。遠心機を止めるとき、ブレーキをかけなかった。界面からPBMC細胞を採取した。細胞をPBSで洗浄し、300xgで10分間ペレット化し、残った赤血球を氷水20mlに15秒間再縣濁することにより溶解し、ついで氷冷した1.6%NaClを直ちに加えた。ついで1200rpmで5分間細胞をペレット化し、10%FBS/RPMIおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含む10mlに再懸濁した。ついで5x106/mlに細胞を希釈した。各ウェルに細胞110μlを分配し(5.5x105/ウェル)、37℃、5%CO2で1時間細胞を沈殿させた。単一の最終濃度対照として以下の試薬を加えた:PHA(5μg/ml)、LPS(25μg/ml)、GM-CSF(10ng/ml)およびイソタイプ対照(50μg/ml)。抗体6を加えて、5倍希釈系列で最終出発濃度50μg/mlにした。ついで37℃、5%CO2で72時間プレートをインキュベートした。72時間後、上清を採取し、以下のR&D ELISA キット(hTNF-a R&D Duoset ELISA development system DY210 および hIL-6 R&D Duoset ELISA development system DY206)を用いて、TNFa およびIL-6のレベルを算出した。ELISAは供給業者の推奨に従って行った。
【0128】
表1.28G5の最適化から単離されたIgG4非生殖系列抗体による、GM-CSFにより引き起こされるTF-1細胞増殖の阻害。増加する濃度のIgG4抗体の存在下、単一濃度のGM-CSFでTF-1細胞の増殖を引き起こした。トリチウム化チミジンの取り込みを測定し、抗体のIC50値を算出した。データはn≧3を表す。SEM(標本平均の標準誤差)を示す。
【0129】

【0130】
表2.8G5の最適化中に単離された抗GM-CSFRαIgG4非生殖系列抗体の速度論的解析。プロテインAを被覆したチップの表面にIgG4抗体を固定化し、一連の精製タグ付きGM-CSFRαECD希釈液をIgG4上に通過させた。物質移動を考慮したLangmuir 1:1同時ka kdを用いてデータにフィッティング処理を行った。
【0131】

抗体9および11のデータは2相性であった。
【0132】
表3.28G5の最適化中単離されたIgG4非生殖系列抗体による、ヒト顆粒球のGM-CSFにより引き起こされる形態変化の阻害。増加する濃度のIgG4抗体の存在下、単一濃度のGM-CSFでヒト顆粒球を処理した。フローサイトメトリーを用いて顆粒球の形態変化を測定し、抗体のIC50値を算出した。
【0133】

【0134】
表4.GM-CSFにより引き起こされる単球からのTNFα放出の阻害。増加する濃度のIgG4非生殖系列抗体の存在下、単一濃度のGM-CSFでヒト単球を処理した。ELISAでTNFαの放出を測定し、抗体のIC50値を算出した。
【0135】

【0136】
【表1】

【0137】
配列表の鍵
添付の配列表において、親クローンおよび最適化したパネルからの19クローンを含む20抗体クローンについて核酸およびアミノ酸(“PRT”)配列を記載した。抗体は、Ab1からAb20まで番号付けした。親クローンは抗体3であり、配列番号21〜30および配列番号211〜212で表される。
以下のリストにより、示された分子の配列が記載されている配列番号が識別される(nt=ヌクレオチド配列;aa=アミノ酸配列)。
1 抗体 01 VH nt
2 抗体 01 VH aa
3 抗体 01 VH CDR1 aa
4 抗体 01 VH CDR2 aa
5 抗体 01 VH CDR3 aa
6 抗体 01 VL nt
7 抗体 01 VL aa
8 抗体 01 VL CDR1 aa
9 抗体 01 VL CDR2 aa
10 抗体 01 VL CDR3 aa
11 抗体 02 VH nt
12 抗体 02 VH aa
13 抗体 02 VH CDR1 aa
14 抗体 02 VH CDR2 aa
15 抗体 02 VH CDR3 aa
16 抗体 02 VL nt
17 抗体 02 VL aa
18 抗体 02 VL CDR1 aa
19 抗体 02 VL CDR2 aa
20 抗体 02 VL CDR3 aa
21 抗体 03 VH nt
22 抗体 03 VH aa
23 抗体 03 VH CDR1 aa
24 抗体 03 VH CDR2 aa
25 抗体 03 VH CDR3 aa
26 抗体 03 VL nt
27 抗体 03 VL aa
28 抗体 03 VL CDR1 aa
29 抗体 03 VL CDR2 aa
30 抗体 03 VL CDR3 aa
31 抗体 04 VH nt
32 抗体 04 VH aa
33 抗体 04 VH CDR1 aa
34 抗体 04 VH CDR2 aa
35 抗体 04 VH CDR3 aa
36 抗体 04 VL nt
37 抗体 04 VL aa
38 抗体 04 VL CDR1 aa
39 抗体 04 VL CDR2 aa
40 抗体 04 VL CDR3 aa
41 抗体 05 VH nt
42 抗体 05 VH aa
43 抗体 05 VH CDR1 aa
44 抗体 05 VH CDR2 aa
45 抗体 05 VH CDR3 aa
46 抗体 05 VL nt
47 抗体 05 VL aa
48 抗体 05 VL CDR1 aa
49 抗体 05 VL CDR2 aa
50 抗体 05 VL CDR3 aa
51 抗体 06 VH nt
52 抗体 06 VH aa
53 抗体 06 VH CDR1 aa
54 抗体 06 VH CDR2 aa
55 抗体 06 VH CDR3 aa
56 抗体 06 VL nt
57 抗体 06 VL aa
58 抗体 06 VL CDR1 aa
59 抗体 06 VL CDR2 aa
60 抗体 06 VL CDR3 aa
61 抗体 07 VH nt
62 抗体 07 VH aa
63 抗体 07 VH CDR1 aa
64 抗体 07 VH CDR2 aa
65 抗体 07 VH CDR3 aa
66 抗体 07 VL nt
67 抗体 07 VL aa
68 抗体 07 VL CDR1 aa
69 抗体 07 VL CDR2 aa
70 抗体 07 VL CDR3 aa
71 抗体 08 VH nt
72 抗体 08 VH aa
73 抗体 08 VH CDR1 aa
74 抗体 08 VH CDR2 aa
75 抗体 08 VH CDR3 aa
76 抗体 08 VL nt
77 抗体 08 VL aa
78 抗体 08 VL CDR1 aa
79 抗体 08 VL CDR2 aa
80 抗体 08 VL CDR3 aa
81 抗体 09 VH nt
82 抗体 09 VH aa
83 抗体 09 VH CDR1 aa
84 抗体 09 VH CDR2 aa
85 抗体 09 VH CDR3 aa
86 抗体 09 VL nt
87 抗体 09 VL aa
88 抗体 09 VL CDR1 aa
89 抗体 09 VL CDR2 aa
90 抗体 09 VL CDR3 aa
91 抗体 10 VH nt
92 抗体 10 VH aa
93 抗体 10 VH CDR1 aa
94 抗体 10 VH CDR2 aa
95 抗体 10 VH CDR3 aa
96 抗体 10 VL nt
97 抗体 10 VL aa
98 抗体 10 VL CDR1 aa
99 抗体 10 VL CDR2 aa
100 抗体 10 VL CDR3 aa
101 抗体 11 VH nt
102 抗体 11 VH aa
103 抗体 11 VH CDR1 aa
104 抗体 11 VH CDR2 aa
105 抗体 11 VH CDR3 aa
106 抗体 11 VL nt
107 抗体 11 VL aa
108 抗体 11 VL CDR1 aa
109 抗体 11 VL CDR2 aa
110 抗体 11 VL CDR3 aa
111 抗体 12 VH nt
112 抗体 12 VH aa
113 抗体 12 VH CDR1 aa
114 抗体 12 VH CDR2 aa
115 抗体 12 VH CDR3 aa
116 抗体 12 VL nt
117 抗体 12 VL aa
118 抗体 12 VL CDR1 aa
119 抗体 12 VL CDR2 aa
120 抗体 12 VL CDR3 aa
121 抗体 13 VH nt
122 抗体 13 VH aa
123 抗体 13 VH CDR1 aa
124 抗体 13 VH CDR2 aa
125 抗体 13 VH CDR3 aa
126 抗体 13 VL nt
127 抗体 13 VL aa
128 抗体 13 VL CDR1 aa
129 抗体 13 VL CDR2 aa
130 抗体 13 VL CDR3 aa
131 抗体 14 VH nt
132 抗体 14 VH aa
133 抗体 14 VH CDR1 aa
134 抗体 14 VH CDR2 aa
135 抗体 14 VH CDR3 aa
136 抗体 14 VL nt
137 抗体 14 VL aa
138 抗体 14 VL CDR1 aa
139 抗体 14 VL CDR2 aa
140 抗体 14 VL CDR3 aa
141 抗体 15 VH nt
142 抗体 15 VH aa
143 抗体 15 VH CDR1 aa
144 抗体 15 VH CDR2 aa
145 抗体 15 VH CDR3 aa
146 抗体 15 VL nt
147 抗体 15 VL aa
148 抗体 15 VL CDR1 aa
149 抗体 15 VL CDR2 aa
150 抗体 15 VL CDR3 aa
151 抗体 16 VH nt
152 抗体 16 VH aa
153 抗体 16 VH CDR1 aa
154 抗体 16 VH CDR2 aa
155 抗体 16 VH CDR3 aa
156 抗体 16 VL nt
157 抗体 16 VL aa
158 抗体 16 VL CDR1 aa
159 抗体 16 VL CDR2 aa
160 抗体 16 VL CDR3 aa
161 抗体 17 VH nt
162 抗体 17 VH aa
163 抗体 17 VH CDR1 aa
164 抗体 17 VH CDR2 aa
165 抗体 17 VH CDR3 aa
166 抗体 17 VL nt
167 抗体 17 VL aa
168 抗体 17 VL CDR1 aa
169 抗体 17 VL CDR2 aa
170 抗体 17 VL CDR3 aa
171 抗体 18 VH nt
172 抗体 18 VH aa
173 抗体 18 VH CDR1 aa
174 抗体 18 VH CDR2 aa
175 抗体 18 VH CDR3 aa
176 抗体 18 VL nt
177 抗体 18 VL aa
178 抗体 18 VL CDR1 aa
179 抗体 18 VL CDR2 aa
180 抗体 18 VL CDR3 aa
181 抗体 19 VH nt
182 抗体 19 VH aa
183 抗体 19 VH CDR1 aa
184 抗体 19 VH CDR2 aa
185 抗体 19 VH CDR3 aa
186 抗体 19 VL nt
187 抗体 19 VL aa
188 抗体 19 VL CDR1 aa
189 抗体 19 VL CDR2 aa
190 抗体 19 VL CDR3 aa
191 抗体 20 VH nt
192 抗体 20 VH aa
193 抗体 20 VH CDR1 aa
194 抗体 20 VH CDR2 aa
195 抗体 20 VH CDR3 aa
196 抗体 20 VL nt
197 抗体 20 VL aa
198 抗体 20 VL CDR1 aa
199 抗体 20 VL CDR2 aa
200 抗体 20 VL CDR3 aa
201 GM-CSFRα 線状 残基 配列
202 ヒト GM-CSFRαの完全長 アミノ酸配列
203 FLAGタグをつけた ヒト GM-CSFRα 細胞外ドメイン
204 FLAG ペプチド
205 ヒト GM-CSFRα 細胞外ドメインのアミノ酸配列
206 成熟 GM-CSFRα
207 抗体 1 VL nt
208 抗体 1 VL aa
209 抗体 2 VL nt
210 抗体 2 VL aa
211 抗体 3 VL nt
212 抗体 3 VL aa
213 抗体 4 VL nt
214 抗体 4 VL aa
215 抗体 5 VL nt
216 抗体 5 VL aa
217 抗体 6 VL nt
218 抗体 6 VL aa
219 抗体 7 VL nt
220 抗体 7 VL aa
221 抗体 8 VL nt
222 抗体 8 VL aa
223 抗体 9 VL nt
224 抗体 9 VL aa
225 抗体 10 VL nt
226 抗体 10 VL aa
227 抗体 11 VL nt
228 抗体 11 VL aa
229 抗体 12 VL nt
230 抗体 12 VL aa
231 抗体 13 VL nt
232 抗体 13 VL aa
233 抗体 14 VL nt
234 抗体 14 VL aa
235 抗体 15 VL nt
236 抗体 15 VL aa
237 抗体 16 VL nt
238 抗体 16 VL aa
239 抗体 17 VL nt
240 抗体 17 VL aa
241 抗体 18 VL nt
242 抗体 18 VL aa
243 抗体 19 VL nt
244 抗体 19 VL aa
245 抗体 20 VL nt
246 抗体 20 VL aa
247 抗体 6 VH nt
248 抗体 6 VH aa
249 抗体 6 VL nt
250 抗体 6 VL aa
251 VH FR1 aa
252 VH FR2 aa
253 VH FR3 aa
254 VH FR4 aa
255 VL FR1 aa
256 VL FR2 aa
257 VL FR3 aa
258 VL FR4 aa
【0138】
抗体1〜20のVLドメインヌクレオチド配列は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186および196において3'末端に示されるgcgコドンを含まない。それに対応して、VLドメインのアミノ酸配列は、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187および197において、それぞれC末端Ala残基(残基113)を含まない。Ala113残基および対応するgcgコドンは抗体1〜20において発現されなかった。記載された配列と生殖系列遺伝子セグメント、特にJL2との比較は、Ala残基および対応するgcgコドンはVLドメインの一部を形成しないことを示している。
発現されたscFvおよびIgG配列において、位置112におけるGly残基は存在しなかった。しかしながら、この残基はVLドメインのフレームワーク4領域を形成するヒト生殖系列jセグメント配列、例えばJL2には存在しない。Gly残基はVLドメインの一部ではないと考えられる。
【0139】
IgGのL鎖を発現するために、VLドメインをコードするエクソン1、CLドメインをコードするエクソン2およびエクソン1とエクソン2を分離しているイントロンを含む、抗体L鎖をコードするヌクレオチド配列を得た。通常、細胞のmRNAプロセシング機構によりイントロンが除去され、エクソン1の3'末端とエクソン2の5'末端が結合される。従って、前記ヌクレオチド配列を有するDNAがRNAで発現されたとき、エクソン1とエクソン2が継ぎ合わされた。スプライスしたRNAの翻訳により、VLおよびCLドメインを含むポリペプチドが産生される。スプライシング後、位置112におけるGlyは、VLドメインフレームワーク4配列の最後の塩基(g)およびCLドメインの最初の2つの塩基(gt)によりコードされる。
抗体1〜20のVLドメイン配列は前述の配列番号186〜246である。VLドメインヌクレオチド配列は最後のコドンとしてctaで終了し、Leuは対応するVLドメインのアミノ酸配列における最後のアミノ酸残基である。
配列番号51、52、56、57、216および217に示される生殖系列VHおよびVLドメイン配列に加えて、抗体6の非生殖系列VHおよびVLドメイン配列を配列番号247〜250に示す。
【0140】
引用文献
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【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】TF-1増殖アッセイにおける、2つの抗GM-CSFRα抗体のpA2分析である。増加する濃度の2つの最適化したIgG4(抗体6(図1A)および抗体1(図1B))の存在下、増加する濃度のGM-CSFでTF-1細胞の増殖をそれぞれ誘導した。グラフ1Aおよびグラフ1Bに示したデータに関して、トリチウム化チミジンの取り込みを測定し、抗体の各濃度におけるGM-CSFのEC50を算出した。ついでグラフ1Cおよびグラフ1Dに示すデータに関して用量比を算出し、シルド回帰により分析してpA2値を得た。
【図2】顆粒球形態変化アッセイにおける抗GM-CSFRα抗体(抗体6)のpA2分析である。増加する濃度のIgG4の存在下、増加する濃度のGM-CSFでヒト(グラフ2Aおよび2C)またはカニクイザル(2Bおよび2D)顆粒球を処理した。フローサイトメトリーを用いて顆粒球の形態変化を測定し、抗体の各濃度におけるGM-CSFのEC50を算出した(グラフ2Aおよびグラフ2B)。ついで用量比を算出し、シルド回帰により分析してpA2値を得た(グラフ2Cおよびグラフ2D)。
【図3】7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるTF-1細胞の増殖を測定するアッセイにおける、IgG4としての2つの抗体(それぞれ抗体1および6)のアンタゴニスト能である。陽性対照IgG42B7およびイソタイプ対照IgG4のデータもまた示されている。データは、同一実験内の3連測定の平均値と標準偏差バーを示す。
【図4】7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるヒト顆粒球の形態変化を測定するアッセイにおける、IgG4としての2つの抗体(それぞれ抗体1および6)のアンタゴニスト能である。対照IgG42B7およびイソタイプ対照IgG4のデータもまた示されている。データは、同一実験内の3連測定の平均値と標準偏差バーを示す。
【図5】1nMヒトGM-CSFで刺激されたヒト単球からのTNFα放出を測定するアッセイにおける、IgG4としての2つの抗体(それぞれ抗体1および6)のアンタゴニスト能である。対照抗体2B7およびイソタイプ対照IgG4のデータもまた示されている。データは、同一実験内の3連測定の平均値と標準偏差バーを示す。
【図6】7pMヒトGM-CSFにより引き起こされるヒト顆粒球生存を測定するアッセイにおける、IgG4としての2つの抗体(それぞれ抗体1および6)のアンタゴニスト能である。対照抗体2B7およびイソタイプ対照IgG4のデータもまた示されている。データは、同一実験内の3連測定の平均値と標準偏差バーを示す。
【図7】親和性成熟ヒトmAb抗体1および抗体6は、ヒト造血前駆細胞のGM-CSFによる分化を阻害するが、親ヒトmAb 28G5(抗体3)または公知のマウス抗体2B7はそれを阻害しない。アフェレーシスサンプルからの5x104解凍単核細胞を10ng/ml GM-CSFの存在下、半固体寒天中で、示した濃度のmAb存在下で培養した。14日目にコロニーを計数した。グラフは、μg/mlでのmAb濃度に対するコロニー数を示す。
【図8】huGM-CSFR Tgキメラマウスにおける親和性成熟mAbの効力の用量反応分析である。5匹のTgキメラマウスの各群を1日2回4日間(D.1-D.4)皮下に500ng huGM-CSF(またはPBS)で処理し、D.0において、対照(CAT001)または試験mAb(抗体6)のいずれかを示された濃度で処理した。D.5において、脾臓質量を評価した。
【図9】ヒト末梢血単核細胞内因性サイトカイン放出アッセイにおける抗体6の効力の用量応答分析である。抗体のありなしで1x106細胞を72時間培養し、上清にIL-6およびTNFa ELISAを行った。データは、同一実験内での2連測定の平均阻害と標準偏差バーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGM-CSFRαに対する単離された結合構造要素であって、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害し、配列番号206に示すヒトGM-CSFRαの位置226-230のTyr-Leu-Asp-Phe-Glnの少なくとも1つの残基に結合する前記結合構造要素。
【請求項2】
表面プラズモン共鳴アッセイにおいて5nM以下の親和性(KD)でヒトGM-CSFRα細胞外ドメインに結合する、請求項1記載の結合構造要素。
【請求項3】
抗体分子を含む、請求項1または請求項2記載の結合構造要素。
【請求項4】
1組の相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VHドメインであって、前記1組の相補性決定領域が、アミノ酸配列配列番号3または配列番号173を有するCDR1、アミノ酸配列配列番号4を有するCDR2ならびに配列番号5;配列番号15;配列番号25;配列番号35;配列番号45;配列番号55;配列番号65;配列番号75;配列番号85;配列番号95;配列番号105;配列番号115;配列番号125;配列番号135;配列番号145;配列番号155;配列番号165;配列番号175;配列番号185;および配列番号195;からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含むかあるいは1個または2個のアミノ酸置換を有する前記1組のCDR配列を含む前記抗体VHドメインを含む、請求項3記載の結合構造要素。
【請求項5】
相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含み、VH CDR3におけるKabat残基H97がSである抗体VHドメインを含む、請求項3または請求項4記載の結合構造要素。
【請求項6】
VH CDR3が以下の残基:
Kabat残基H95におけるV、N、AまたはL;
Kabat残基H99におけるS、F、H、P、TまたはW;
Kabat残基H100BにおけるA、T、P、S、VまたはH
の1以上をさらに含む、請求項5記載の結合構造要素。
【請求項7】
Kabat残基H95がVである、請求項6記載の結合構造要素。
【請求項8】
Kabat残基H99がSである、請求項6または請求項7記載の結合構造要素。
【請求項9】
Kabat残基H100BがAまたはTである、請求項6〜8のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項10】
VH CDR3が、配列番号5、配列番号15、配列番号35、配列番号45、配列番号55、配列番号65、配列番号75、配列番号85、配列番号95、配列番号105、配列番号115、配列番号125、配列番号135、配列番号145、配列番号155、配列番号165、配列番号175、配列番号185および配列番号195からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項6のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項11】
VH CDR1におけるKabat残基H34がIである、請求項5〜10のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項12】
VH CDR1がアミノ酸配列配列番号3を有する、請求項5〜11のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項13】
VH CDR2がKabat残基H54におけるEおよび/またはKabat残基H57におけるIを含む、請求項5〜12のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項14】
VH CDR2がアミノ酸配列配列番号4を有する、請求項5〜13のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項15】
VHドメインフレームワークにおけるKabat残基H17がSである、請求項5〜14のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項16】
相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VLドメインを含む、請求項5〜15のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項17】
VL CDR3が以下の残基:
Kabat残基L90におけるS、TまたはM;
Kabat残基L92におけるD、E、Q、S、MまたはT;
Kabat残基L96におけるS、P、IまたはV
の1以上を含む、請求項16記載の結合構造要素。
【請求項18】
Kabat残基L90がSである、請求項17記載の結合構造要素。
【請求項19】
Kabat残基L92がDまたはEである、請求項17または請求項18記載の結合構造要素。
【請求項20】
Kabat残基L95AがSである、請求項17〜19のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項21】
Kabat残基L96がSである、請求項17〜20のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項22】
VL CDR3が配列番号10、配列番号20、配列番号40、配列番号50、配列番号60、配列番号70、配列番号80、配列番号90、配列番号100、配列番号110、配列番号120、配列番号130、配列番号140、配列番号150、配列番号160、配列番号170、配列番号180、配列番号190および配列番号200からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項16または17のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項23】
VL CDR1が、以下の残基:
Kabat残基27AにおけるS;
Kabat残基27BにおけるN;
Kabat残基27CにおけるI;
Kabat残基32におけるD;
の1以上を含む、請求項16〜22のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項24】
VL CDR1がアミノ酸配列配列番号8を有する、請求項16〜23のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項25】
VL CDR2が以下の残基:
Kabat残基51におけるN;
Kabat残基52におけるN;
Kabat残基53におけるK
の1以上を含む、請求項16〜24のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項26】
VL CDR2がアミノ酸配列配列番号9を有する、請求項16〜25のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項27】
Kabat残基H94がIである抗体VHドメインを含む、請求項3〜26のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項28】
ヒトGM-CSFRαに対する単離された結合構造要素であって、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害し、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて5nM以下の親和性(KD)でヒトGM-CSFRα細胞外ドメインに結合する、前記結合構造要素。
【請求項29】
抗体分子を含む、請求項28記載の結合構造要素。
【請求項30】
ヒトGM-CSFRαに対する単離された結合構造要素であって、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害し、ヒトGM-CSFRαの細胞外ドメインとの結合に関して、以下:
VHドメイン配列番号2およびVLドメイン配列番号7;
VHドメイン配列番号12およびVLドメイン配列番号17;
VHドメイン配列番号22およびVLドメイン配列番号27;
VHドメイン配列番号32およびVLドメイン配列番号37;
VHドメイン配列番号42およびVLドメイン配列番号47;
VHドメイン配列番号52およびVLドメイン配列番号57;
VHドメイン配列番号62およびVLドメイン配列番号67;
VHドメイン配列番号72およびVLドメイン配列番号77;
VHドメイン配列番号82およびVLドメイン配列番号87;
VHドメイン配列番号92およびVLドメイン配列番号97;
VHドメイン配列番号102およびVLドメイン配列番号107;
VHドメイン配列番号112およびVLドメイン配列番号117;
VHドメイン配列番号122およびVLドメイン配列番号127;
VHドメイン配列番号132およびVLドメイン配列番号137;
VHドメイン配列番号142およびVLドメイン配列番号147;
VHドメイン配列番号152およびVLドメイン配列番号157;
VHドメイン配列番号162およびVLドメイン配列番号167;
VHドメイン配列番号172およびVLドメイン配列番号177;
VHドメイン配列番号182およびVLドメイン配列番号187;または
VHドメイン配列番号192およびVLドメイン配列番号197
から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを有する抗体分子と競合するヒト抗体分子またはヒト化抗体分子を含む前記結合構造要素。
【請求項31】
ヒトGM-CSFRαに対する単離された結合構造要素であって、GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害し、1組の相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VHドメインを含む抗体分子を含み、前記1組の相補性決定領域がアミノ酸配列配列番号3または配列番号173を有するHCDR1、アミノ酸配列配列番号4を有するHCDR2ならびに配列番号5;配列番号15;配列番号25;配列番号35;配列番号45;配列番号55;配列番号65;配列番号75;配列番号85;配列番号95;配列番号105;配列番号115;配列番号125;配列番号135;配列番号145;配列番号155;配列番号165;配列番号175;配列番号185;および配列番号195からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含む、前記結合構造要素。
【請求項32】
抗体分子がヒト抗体分子またはヒト化抗体分子である、請求項3〜27のいずれかまたは請求項29〜31のいずれかに記載の結合構造要素。
【請求項33】
VHドメインフレームワークがヒト生殖系列のVH1 DP5またはVH3 DP47フレームワークである、請求項32記載の結合構造要素。
【請求項34】
VLドメインフレームワークがヒト生殖系列のVλ 1 DPL8、Vλ 1 DPL3またはVλ 6_6aフレームワークであるVLドメインを含む、請求項32または請求項33記載の結合構造要素。
【請求項35】
GM-CSFRαへのGM-CSFの結合を阻害し、配列番号52で示されるVHドメインのアミノ酸配列を有するVHドメインまたは1個もしくは2個のアミノ酸改変を有するそれらの変種および配列番号57で示されるVLドメインのアミノ酸配列を有するVLドメインまたは1個もしくは2個のアミノ酸改変を有するそれらの変種を含み、前記アミノ酸改変が置換、挿入および欠失からなる群から選択される、ヒトGM-CSFRαに対する単離された抗体分子。
【請求項36】
抗体分子がIgG4である、請求項3〜27もしくは29〜34のいずれかに記載の結合構造要素または請求項35記載の抗体分子。
【請求項37】
表面プラズモン共鳴アッセイにおいて1nM以下の親和性(KD)でヒトGM-CSFRα細胞外ドメインに結合する、請求項1〜36のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項38】
表面プラズモン共鳴アッセイにおいて0.5nM以下の親和性(KD)でヒトGM-CSFRα細胞外ドメインに結合する、請求項37記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項39】
7pMヒトGM-CSFを用いるTF-1細胞増殖アッセイにおいて60pM以下のIC50中和能を有する、前記請求項のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項40】
7pMヒトGM-CSFを用いるTF-1細胞増殖アッセイにおいて10pM以下のIC50中和能を有する、請求項38記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項41】
7pMヒトGM-CSFを用いるヒト顆粒球形態変化アッセイにおいて50pM以下のIC50中和能を有する、前記請求項のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項42】
7pMヒトGM-CSFを用いるヒト顆粒球形態変化アッセイにおいて25pM以下のIC50中和能を有する、請求項41記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項43】
1nMヒトGM-CSFを用いる単球TNFα放出アッセイにおいて100pM以下のIC50中和能を有する、請求項1〜42のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項45】
請求項1〜43のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子。
【請求項46】
請求項43記載の核酸分子を含むin vitroの宿主細胞。
【請求項47】
請求項46記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項1〜43のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子を製造する方法。
【請求項48】
結合構造要素を精製することをさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
ヒトGM-CSFRαに対する抗体分子を製造する方法において、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む親VHドメインのアミノ酸配列における1以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換により、親VHドメインのアミノ酸配列変種であるVHドメインを得ることを含む前記方法であって、ここで
親VH CDR1はアミノ酸配列配列番号3を有し;
親VH CDR2はアミノ酸配列配列番号4を有し;
親VH CDR3は配列番号5;配列番号15;配列番号25;配列番号35;配列番号45;配列番号55;配列番号65;配列番号75;配列番号85;配列番号95;配列番号105;配列番号115;配列番号125;配列番号135;配列番号145;配列番号155;配列番号165;配列番号185;および配列番号195からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;あるいは、
親VH CDR1はアミノ酸配列配列番号173を有し、親VH CDR2はアミノ酸配列配列番号174を有し、親VH CDR3はアミノ酸配列配列番号175を有し;
場合によりこのように得られたVHドメインと1以上のVLドメインとを組み合わせて1以上のVH/VL組み合わせを得;
VHドメインまたは1つの若しくは複数のVH/VL組み合わせを試験してヒトGM-CSFRαに対する抗体分子を同定する前記方法。
【請求項50】
前記1以上のVLドメインが、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む親VLドメインのアミノ酸配列における1以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換によって得られ;
親VL CDR1はアミノ酸配列配列番号8を有し;
親VL CDR2はアミノ酸配列配列番号9を有し;
親VL CDR3は、配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50、配列番号60、配列番号70、配列番号80、配列番号90、配列番号100、配列番号110、配列番号120、配列番号130、配列番号140、配列番号150、配列番号160、配列番号170、配列番号180、配列番号190および配列番号200からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
ヒトGM-CSFRαへのヒトGM-CSFの結合を阻害する抗体分子の能力を試験することを含む、請求項49または請求項50記載の方法。
【請求項52】
抗体分子組成物を製造する方法であって、請求項49〜51のいずれかに記載の方法を用いて抗体分子を得、少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物に抗体分子を処方することを含む前記方法。
【請求項53】
炎症性、呼吸器または自己免疫状態または疾患の治療薬の製造における、請求項1〜43のいずれかに記載の結合構造要素または抗体分子の使用。
【請求項54】
状態または疾患が、関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、多発性硬化症、骨髄性白血病またはアテローム性動脈硬化症である、請求項53記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533020(P2009−533020A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502208(P2009−502208)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001108
【国際公開番号】WO2007/110631
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508098350)メドイミューン・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【出願人】(508288696)ゼニス オペレイションズ プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】