説明

HAZの排除及び低減によって合金鋼溶接継手の寿命を延長する方法

【課題】溶接後熱処理を避け、かつ熱影響域を低減又は排除するために、塗布及び熱処理技術を使用して金属片を互いに溶接する方法を提供する。
【解決手段】一実施形態では、本発明は、第1のニッケルベース金属充填材を用いて、第1の金属片の表面をその後の溶接から第1の金属片の熱影響域を隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、少なくとも第1の金属片の熱影響域を熱処理する段階と、第1のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第2のニッケルベース金属充填材を用いて、第2の金属片の表面をその後の溶接から第2の金属片の熱影響域を隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、少なくとも第2の金属片の熱影響域を熱処理する段階と、第1及び第2のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第3のニッケルベース金属充填材を用いて、熱処理された第1の塗布表面を熱処理された第2の塗布表面に溶接する段階とを含む、2つの金属片を互いに溶接する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に溶接に関する。より具体的には、本発明は、溶接後熱処理を避け、かつ熱影響域を低減又は排除するために、塗布及び熱処理技術を使用して金属片を互いに溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接の費用を増大し、溶接した構成要素の破損をもたらす溶接の2つの側面があり、それらは、熱影響域(HAZ)及びHAZによって呈示される問題に対処するのに使用される溶接後熱処理(PWHT)の存在である。当業技術で公知のように、溶接部からの熱は、溶接部に隣接する金属にHAZを生成する。このHAZの生成は、HAZにおける金属の脆弱化を引き起こすノッチ効果又は結晶粒成長の発生のような悪影響を与える冶金効果を有する。以前に使用の合金及び鋼に比較して高温圧力用途に対するより大きな強度をもたらすために、例えば2−12重量%のクロム含量の新しい合金が開発されているが、これらの材料から生成された構成要素の使用寿命を制限する破損が、HAZにおける溶接部に隣接して発生する傾向がある。更に、溶接部を強化し、HAZの効果を低減する充填材料を開発する試みは、依然として不十分である。
【0003】
HAZにおける冶金特性を改善するのに使用される別の方法は、PWHTである。「米国機械学会(ASME)ボイラー及び圧力容器規定」は、低合金鋼配管及び圧力容器の溶接の適用が、溶接HAZにおける堅牢性、引っ張り、及び硬度特性を達成するためにPWHTを受けるように要求している。しかし、PWHTは、実行にかなりの時間を要する高価な処理になる傾向がある。PWHTでは、典型的に、材料に対する第1の変態温度のすぐ下の温度まで溶接された金属片を加熱することが必要である。2%クロムを含有する高温材料のASME必須PWHTでは、材料を材料厚の各インチに対して1時間にわたって1350°Fに保持することが必要である。材料の温度を保持温度に上昇させ、室温に冷却して戻すことができるランプ速度は、厳密に制御され、完了に数時間を要する。設定、材料を温度まで上げるための時間、保持時間、及び冷却時間を含むこの材料から製造された2”厚パイプに対する典型的なPWHT作業は、24時間を要する可能性がある。複数の溶接部を有する構成要素は、いくつかのPWHT作業を要する場合がある。
【0004】
構成要素の作製者は、一般的に、そのようなPWHTをいくつかの溶接継手を同時に焼き戻すことを可能にする大オーブンで実行する。オーブンの物理的サイズは、明らかに焼き戻すことができる構成要素のサイズを制限する。従って、一部のPWHT手順は、現地又は現場で実行されるべきである。これらの場合では、部品は、互いに溶接され、次に、PWHTが行われる現地に移送される。このような大きな構成要素のPWHTは、一般的に、抵抗パッド又は誘導加熱処理機器を利用して実行される。従って、一度にPWHTを受けることができる溶接継手の数は、電力及びPWHT機器の利用可能性によって制限される。大きな建設作業に対しては、PWHTの計画も重要な仕事になる。
【0005】
更に、作製工場の構成要素をオーブン、貯蔵庫、他の製作区域、又は現場に単に移動させることが、溶接部及びHAZ区域の破損をもたらす可能性がある。現場での構成要素の組立は、満足できるPWHTを達成するための付加的な問題を呈示する。例えば、風及び煙突効果からの外部及び内部の流れの両方を含む構成要素の周りの気流の流れのために、材料が、PWHT中に必要な特性を得るための十分な温度に達しない可能性がある。材料の強度は、PWHT作業の高温によって大きく低減されるので、構成要素をサポートする特別な配慮もPWHT作業中に要求される。
【0006】
PWHTを用いてさえも、依然として破損が溶接部の近く又はHAZにおいて発生する。従って、HAZの影響を低減し、かつPWHTの必要性を排除する溶接方法の改善の必要性が存在する。
【0007】
【非特許文献1】米国機械学会(ASME)ボイラー及び圧力容器規定
【発明の開示】
【0008】
本発明は、第1の塗布表面を生成するために、第1のニッケルベース金属充填材を用いて、第1の金属片の表面をその後の溶接から第1の金属片の熱影響域を隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、熱処理された第1の塗布表面を生成するために、第1の金属片の表面を塗布した後で少なくとも第1の金属片の熱影響域を熱処理する段階と、第2の塗布表面を生成するために、第1のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第2のニッケルベース金属充填材を用いて、第2の金属片の表面をその後の溶接から第2の金属片の熱影響域を隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、熱処理された第2の塗布表面を生成するために、第2の金属片の表面を塗布した後で少なくとも第2の金属片の熱影響域を熱処理する段階と、第1及び第2のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第3のニッケルベース金属充填材を用いて、熱処理された第1の塗布表面を熱処理された第2の塗布表面に溶接する段階とを含む、2つの金属片を互いに溶接する方法を提供する。
【0009】
本発明の方法を使用して、同種及び異種金属の両方を溶接することができる。好ましくは、本発明の方法は、マルテンサイトステンレス鋼をフェライトステンレス鋼、オーステナイトステンレス鋼、又は別のマルテンサイトステンレス鋼のいずれかに溶接するのに使用される。
【0010】
本発明の方法は、従属構成要素片を工場又は現場のいずれかで溶接後熱処理の必要なく互いに溶接することを考慮するものである。これは、機器のより良い利用及び労力計画の改善をもたらし、同時に現地組立に要する時間の量を低減する。本明細書に説明する本発明の方法は、低合金配管及び/又は圧力容器材料を接合するのに必要な費用及び時間を実質的に低減するのに利用することができ、かつ様々な異なる溶接工程に適用される。
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴及び恩典は、添付図面と共に好ましい実施形態を詳細に示す以下の説明から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、溶接中にHAZの形成により生じる影響を低減又は排除し、かつPWHTの必要性を排除する溶接方法の改善を提供する。一般的に、本発明は、ニッケルベース充填材料を用いる塗布技術の使用により、次に、HAZを焼き戻すか又は焼き均しを通してHAZを排除するPWHTにより、溶接される第1の金属片を調製する方法を提供する。第2の金属片も同様又は同一の方式で調製される。2つの金属片は、次に、工場又は現場のいずれかでPWHTの必要なく互いに溶接される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による処理流れ図である。処理100は、2つの金属片を互いに溶接する方法である。互いに溶接される金属片は、同種又は異種金属とすることができることを認めるべきである。例えば、12重量%未満のクロムを有する低合金フェライト鋼を互いに溶接することができる。また、フェライト鋼のような12重量%未満のクロムを有する低合金鋼をオーステナイトステンレス鋼のような12重量%又はそれ多くのクロムを有するステンレス鋼に接合することができる。好ましい実施形態では、本発明を使用して、マルテンサイトステンレス鋼をフェライトステンレス鋼、オーステナイトステンレス鋼、又は別のマルテンサイトステンレス鋼のいずれかに接合する。別の好ましい実施形態は、9Cr合金の他の9Cr合金、他のフェライト合金、又はオーステナイト合金への接合を含み、ここで、9Cr合金は、例えば、純粋9Cr、P91、P92などを含むことができる。
【0014】
用語「低合金」鋼の使用は、クロム、モリブデン、コバルト、コロンビウム、チタンなどのような元素が硬化度及び強度を増大するために添加されていることを除き、約1.65%未満のマンガン、約0.60%未満のシリコン又は約0.60%未満の銅を有する鋼である炭素鋼に類似の鋼を意味することを認めるべきである。低合金鋼の例は、1と1/4Cr−1/2Mo(T11又はP11)、2と1/4Cr−1Mo(T22又はP22)、及びフェライト及びマルテンサイト鋼のような様々な他のASTM型合金鋼を含む。用語「フェライト」の使用は、室温で主にフェライト微小構造を示し、熱処理で硬化可能でない鋼を意味する。用語「ステンレス」の使用は、最低10重量%アルミニウムを含有し、例えば、オーステナイトステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、マルテンサイトステンレス鋼、及び析出硬化ステンレス鋼を含む合金鉄を意味する。用語「オーステナイト」ステンレス鋼の使用は、例えば、304、316,321、及び347を含む300シリーズステンレス鋼のような、室温でオーステナイト構造をもたらすようにニッケル又はマンガン及び窒素を用いて合金にしたステンレス鋼を意味する。用語「マルテンサイト」ステンレス鋼の使用は、例えば、410、420,及び440を含む400シリーズステンレス鋼のような、室温で主にマルテンサイト微小構造を示し、かつ熱処理によって硬化可能である炭素を追加したステンレス鋼を意味する。430又は446鋼のようなフェライトステンレス鋼は、最低10重量%のクロムを含有し、フェライト及びカーバイドの室温微小構造を有する。典型的に、これらの合金は、熱処理によって硬化しない。
【0015】
第1の段階102では、互いに溶接される金属片の各々が、溶接のために調製される。「金属片」への参照は、溶接されるあらゆる金属片を意味することを認めるべきである。例えば、金属片は、機器の望ましい最終構成要素又は部分を形成するために、別の従属構成要素部品に溶接される従属構成要素部品とすることができる。従って、用語「金属片」の使用は、溶接されるあらゆる種類又は形状の金属を一般的に網羅するものとする。この段階102で行われる調製は、金属片を溶接用に調製するために金属片に対して実行される様々な処理段階又は手順を含むことができる。例えば、金属片、又は金属片の特定の表面は、旋盤を用いて特定の形状に機械加工することができる。金属片の表面は、研磨することもでき、これは、多くの場合に、金属除去のためのアーク削り又は空気アークの後に実行される。精密作業に対して電気放電機械加工を使用することもできるが、この処理は、一般的に遅い処理である。
【0016】
次の段階104では、別の金属片に後で溶接される各金属片の各表面は、ニッケルベース充填材を用いて塗布される。具体的には、ニッケルベース充填材は、後で互いに溶接されることになる金属の各片の特定の表面に溶接される。各金属片の表面へのこのニッケルベース充填材の付加は、「塗布層」と呼ぶ場合がある。好ましくは、ニッケルベース充填材は、少なくとも10重量%又はそれ多くのニッケルを含み、より好ましくは、約40−70重量%のニッケル、更により好ましくは、40−60重量%のニッケルを含む。そうでなければ、充填材は、部分的に互いに溶接される金属片の組成に依存することになる当業技術で公知のあらゆる材料とすることができる。異種金属の塗布及び溶接に本発明で使用することができる一部の好ましい充填材料の例は、「INCONEL溶接電極182」、「INCONEL充填材料82」、及び「INCO−WELD A電極」を含む。好ましくは、ニッケルベース充填材の組成は、両方の金属片又は各々の塗布層に対するものと同じであることを認めるべきである。
【0017】
この塗布層を付加又は溶接するのに使用することができる実際の条件及び技術は、当業者には公知である。具体的には、現在利用可能なあらゆる溶接手順又は技術を使用して塗布層を付加することができる。しかし、塗布層は、塗布中に形成されるHAZをその後の溶接中に生成される熱から隔離するのに十分な厚みで付加されるべきである。すなわち、塗布層は、HAZがその後の溶接作業、すなわち、2つの金属片を互いに溶接する時に影響を受けないほど十分に厚い必要がある。
【0018】
更に、段階104では、塗布層の付加後に、各金属片は、2つの金属片間の最終溶接の準備で再度適切な溶接幾何学的形状に機械加工することができる。従って、そのような機械加工が実行される場合、塗布層の厚みは、そのような機械加工の結果としてのその厚みの減少を考慮するのに十分であるべきである。塗布層の厚みは、どの種類の溶接処理、充填材組成、及び合金組成が使用されるかによって変化するであろう。
【0019】
次の段階106では、各金属片が熱処理される。適用される特定の熱処理は、各金属片における少なくともHAZを熱処理するのに十分であるべきである。すなわち、各金属片は、各々における少なくともHAZが、望ましい影響を達成するような望ましい温度まで加熱されるような熱を受けるべきである。一実施形態では、熱処理は、HAZを焼き均しするのに十分な温度まで各金属片又は少なくともそのHAZを加熱する段階を含む。例えば、一実施形態では、そのような熱処理は、合金又はその対応する化学的性質に依存して変化するAC3変態点よりも高く各金属片を加熱する段階を含む。HAZの焼き均しは、その第一次又は元の基本冶金条件へのHAZの回復をもたらす。好ましくは、そのような熱処理は、他の加熱方法又は機器よりも良好な制御を得るためにオーブンで実行されるであろう。
【0020】
そのような焼き均し熱処理は、金属片が両方とも約2−12重量%のクロム含有量を有する低合金金属である場合に利用することができることを認めるべきである。そのような焼き均し熱処理は、金属片の各々が低合金フェライト鋼片を含む場合に利用することができる。そのような焼き均し熱処理は、金属片の一方が低合金金属片を含み、他方の金属片がステンレス鋼片を含む時に利用することができる。そのような焼き均し熱処理は、金属片の一方が低合金フェライト鋼片を含み、他方の金属片がオーステナイトステンレス鋼片を含む時に利用することができる。そのような焼き均し熱処理はまた、金属片の一方がマルテンサイトステンレス鋼片を含み、他方の金属片が低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、又はマルテンサイトステンレス鋼のいずれかを含む時に利用することができる。
【0021】
別の実施形態では、熱処理は、HAZを焼き戻してHAZにおける適度な堅牢性、引っ張り、硬度特性を得るのに十分な温度まで各金属片を加熱する段階を含む。例えば、一実施形態では、そのような熱処理は、合金及びその対応する化学的性質によって変化するAC1変態点よりも高いが、AC3温度よりも低く各金属片を加熱する段階を含む。
【0022】
そのような焼き戻し熱処理は、金属片の一方が低合金金属片を含み、他方の金属片がステンレス鋼片を含む時に利用することができることを認めるべきである。そのような焼き戻し熱処理は、金属片の一方が低合金フェライト鋼片を含む時に利用することができる。例えば、そのような焼き戻し熱処理は、金属片の一方がマルテンサイトステンレス鋼片を含み、他方の金属片が低合金フェライト鋼を含む時に利用することができる。一部の場合には、一方の金属片に対して焼き均し熱処理、及び他方の金属片に対して焼き戻し熱処理を使用することが有利であると考えられることを認めるべきである。
【0023】
各金属片をそれらを互いに溶接する前に熱処理する利点が、PWHTの必要性を回避することを認めるべきである。従って、金属片が特に大きな構成要素の従属構成要素である場合、個々の従属構成要素の熱処理は、機器の最終構成要素又は部分全体に対してPWHTを使用する必要性よりも容易であろう。従って、高価な現地PWHTを避けることができる。更に、そのような熱処理は、工場又は現地で適用することができることを認めるべきである。
【0024】
更に、段階106で各金属片を熱処理した後に、各金属片は、2つの金属片間の最終溶接の準備で再度適切な溶接幾何学的形状に機械加工することができる。従って、そのような機械加工が実行される場合、塗布層の厚みは、そのような機械加工の結果としてのその厚みの減少を考慮するのに十分であるべきである。塗布層の厚みは、どの種類の溶接処理、充填材組成、及び合金組成が使用されるかによって変化するであろう。
【0025】
次の段階108では、熱処理された塗布金属片の各々は、ニッケルベース充填材を使用して互いに溶接される。上述のように、ニッケルベース充填材は、少なくとも10重量%又はそれ多くのニッケルを含み、より好ましくは、約40−70重量%のニッケル、更により好ましくは、40−60重量%のニッケルを含む。そうでなければ、充填材は、部分的に互いに溶接される金属片の組成に依存することになる当業技術で公知のあらゆる材料とすることができる。異種金属の塗布及び溶接に本発明で使用することができる一部の好ましい充填材料の例は、「INCONEL溶接電極182」、「INCONEL充填材料82」、及び「INCO−WELD A電極」を含む。好ましくは、2つの金属片を互いに溶接するのに使用されるニッケルベース充填材は、塗布層を作成するのに使用されるニッケルベース充填材と同じである。
【0026】
当業者は、2つの金属片を互いに溶接するのに、当業技術で公知のあらゆる方法又は技術を使用することができることを認めるであろう。同様に、当業技術で公知のあらゆる機器も同じく使用することができる。この溶接作業は、金属片の各々において適度な特性が既にそれぞれのHAZに作り出されているので、その後のPWHTを必要としないと考えられることを認めるべきである。更に、ニッケルベース充填材は、この溶接部に対して適度の冶金特性を与える。従って、2つの溶接された金属片は、PWHTを使用する必要なく実際に使用することができる。
【0027】
図2A−2Cは、本発明の一実施形態による2つの金属片の溶接を示す図である。図2Aは、溶接される2つの金属片202及び204を示している。図1に関して上述したように、各金属片は、機械加工のような当業技術で公知の調製方法に従って調製することができる。図2Bは、金属片の各々への塗布層206及び208の付加を示している。この特定の場合では、塗布層206及び208は、金属片202及び204の各々の端面に付加される。図1に関して上述したように、塗布層206及び208を有するこれらの金属片202及び204の各々は、次に、焼き均し熱処理又は焼き戻し熱処理のいずれかを通じて熱処理されるであろう。更に、各金属片は、望ましい表面形状を達成するために機械加工によって更に処理することができると考えられる。図2Cは、最終溶接段階の結果を示しており、充填材210を使用して、塗布層206及び208及び従って2つの金属片202及び204が互いに溶接される。また、図1に関して上述したように、最終の溶接された構成要素は、PWHTの必要なく実際に使用することができる。
【0028】
本発明の様々な実施形態を説明した。説明は、本発明の例示を意図したものである。当業者には、特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、説明した本発明に修正を加えることができることは明らかであろう。例えば、本発明を同種及び異種金属片の両方の溶接に適用することができることは理解されるものとする。更に、本発明は、2つの金属片の溶接に関して一般的に説明したが、本発明が、金属が互いに溶接されるあらゆる用途に利用することができることは理解されるものとする。例えば、本発明は、電力、化学、石油、鉄鋼、輸送、及びパルプ及び製紙業において利用することができる。より一般的には、低合金鋼の溶接が使用されるあらゆる処理で、この技術を使用することができる。更に、本発明を使用して、マルテンサイトステンレス鋼をフェライトステンレス鋼、オーステナイトステンレス鋼、又は別のマルテンサイトステンレス鋼のいずれかに溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による処理流れ図を示す図である。
【図2A】本発明一実施形態による2つの金属片の溶接を示す図である。
【図2B】本発明一実施形態による2つの金属片の溶接を示す図である。
【図2C】本発明一実施形態による2つの金属片の溶接を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
100 本発明の一実施形態による処理
102 第1の段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属片を互いに溶接する方法であって、
第1の塗布表面を生成するために、第1のニッケルベース金属充填材を用いて、第1の金属片の表面を該第1の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、
熱処理された第1の塗布表面を生成するために、前記第1の金属片の前記表面を前記塗布した後に該第1の金属片の少なくとも前記熱影響域を熱処理する段階と、
第2の塗布表面を生成するために、前記第1のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第2のニッケルベース金属充填材を用いて、第2の金属片の表面を該第2の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、
熱処理された第2の塗布表面を生成するために、前記第2の金属片の前記表面を前記塗布した後に該第2の金属片の少なくとも前記熱影響域を熱処理する段階と、
前記第1及び第2のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第3のニッケルベース金属充填材を用いて、前記熱処理された第1の塗布表面を前記熱処理された第2の塗布表面に溶接する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1、第2、及び第3のニッケルベース金属充填材の各々は、10重量%よりも多くのニッケル含有量を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニッケル含有量は、約40−60重量%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き均しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理する段階の各々は、それぞれ、前記金属片の各々の対応するAC3温度よりも高い温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の金属片の各々は、低合金フェライト鋼片を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属片は、低合金金属片を含み、前記第2の金属片は、ステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の金属片は、低合金フェライト鋼片を含み、前記第2の金属片は、オーステナイトステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の金属片は、マルテンサイトステンレス鋼片を含み、前記第2の金属片は、低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼から成る群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き戻しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理する段階の各々は、それぞれ、前記金属片の各々の対応するAC1温度よりも高く、かつ該金属片の各々の対応するAC3温度よりも低い温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の金属片は、低合金金属片を含み、前記第2の金属片は、ステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の金属片は、低合金フェライト鋼片を含み、前記第2の金属片は、オーステナイトステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の金属片は、マルテンサイトステンレス鋼片を含み、前記第2の金属片は、低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼から成る群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の金属片の各々は、低合金フェライト鋼片を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の金属片は、低合金金属片を含み、前記第2の金属片は、ステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の金属片は、低合金フェライト鋼片を含み、前記第2の金属片は、オーステナイトステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の金属片は、マルテンサイトステンレス鋼片を含み、前記第2の金属片は、低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
2つの異種金属片を互いに溶接する方法であって、
第1の塗布表面を生成するために、第1のニッケルベース金属充填材を用いて、第1の金属片の表面を該第1の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、
熱処理された第1の塗布表面を生成するために、前記第1の金属片の前記表面を前記塗布した後に該第1の金属片を熱処理する段階と、
第2の塗布表面を生成するために、前記第1のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第2のニッケルベース金属充填材を用いて、前記第1の金属片とは異なる組成を有する第2の金属片の表面を該第2の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階と、
熱処理された第2の塗布表面を生成するために、前記第2の金属片の前記表面を前記塗布した後に該第2の金属片を熱処理する段階と、
前記第1及び第2のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第3のニッケルベース金属充填材を用いて、前記熱処理された第1の塗布表面を前記熱処理された第2の塗布表面に溶接する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記第1の金属片は、低合金金属片を含み、前記第2の金属片は、ステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の金属片は、低合金フェライト鋼片を含み、前記第2の金属片は、オーステナイトステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の金属片は、マルテンサイトステンレス鋼片を含み、前記第2の金属片は、低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼から成る群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き均しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き戻しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
2つの異質金属を溶接する方法であって、
溶接のために、第1の金属片の表面、及び該第1の金属片とは異なる組成を有する第2の金属片の表面を調製する段階、
第1の塗布表面を生成するために、第1のニッケルベース金属充填材を用いて、前記第1の金属片の前記表面を該第1の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階、
熱処理された第1の塗布表面を生成するために、前記第1の金属片の少なくとも前記熱影響域を熱処理する段階、
前記第1の塗布表面を機械加工する段階、
第2の塗布表面を生成するために、前記第1のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第2のニッケルベース金属充填材を用いて、前記第2の金属片の前記表面を該第2の金属片の熱影響域をその後の溶接から隔離するのに十分な厚みで塗布する段階、
熱処理された第2の塗布表面を生成するために、前記第2の金属片の少なくとも前記熱影響域を熱処理する段階、及び
前記第1及び第2のニッケルベース金属充填材と同じ組成を有する第3のニッケルベース金属充填材を用いて、前記熱処理された第1の塗布表面を前記熱処理された第2の塗布表面に溶接する段階、
から本質的に構成されることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記第1の金属片は、低合金金属片を含み、前記第2の金属片は、ステンレス鋼片を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の金属片は、低合金フェライト鋼片を含み、前記第2の金属片は、オーステナイト鋼片を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の金属片は、ステンレスマルテンサイト鋼片を含み、前記第2の金属片は、低合金フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼から成る群から選択されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き均しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記熱処理する段階の各々は、前記第1及び第2の金属片の各々の前記熱影響域を焼き戻しするのに十分な温度で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−517768(P2008−517768A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537897(P2007−537897)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/033835
【国際公開番号】WO2006/047021
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(391013276)エレクトリック パワー リサーチ インスチテュート インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】ELECTRIC POWER RESEARCH INSTITUTE,INCORPORATED
【Fターム(参考)】