説明

HCVのキメラNS4Aタンパク質を発現する細胞およびアッセイ法におけるその使用

キメラC型肝炎ウイルスNS4Aタンパク質を発現する細胞を開示し、このような細胞を調製するためのベクターおよび方法、ならびにNS4Aタンパク質の会合的特徴を変化させる化合物を検出するためのスクリーニングアッセイ法において該細胞およびそれに含まれるキメラタンパク質を用いる方法も開示する。開示するスクリーニングアッセイ法は、C型肝炎ウイルスに対して特異的な抗ウイルス活性を示す化合物を同定するための化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングにおける使用に適している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年4月26日付で出願された米国特許仮出願第60/914190号および2007年5月16日付で出願された米国特許仮出願第60/938,346号の優先権を主張するものであり、これらのどちらもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願の分野
本出願は、C型肝炎ウイルスに特異的な抗ウイルス活性を有する化合物を同定するための新規の生物学的手段(組換え細胞および発現ベクターを含む)に関し、該抗ウイルス活性が細胞内C型肝炎ウイルスタンパク質-タンパク質の相互作用に対する該化合物の作用と相関している。また本出願は、このような手段を用いてこのような化合物を同定するおよび特徴付けるためのアッセイ法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
C型肝炎ウイルス(HCV)は、米国における慢性肝疾患の最も広く認められる原因の一つである。これは、急性ウイルス性肝炎の約15%、慢性肝炎の60〜70%、ならびに肝硬変、末期肝疾患および肝がんの最大50%を占める。ほぼ400万人の米国人(米国人口の1.8%)がHCVに対する抗体(抗HCV)を持っており、このことはこのウイルスによる進行中のまたは過去の感染を示唆している。HCVは、米国において年間8,000〜10,000例の死亡を引き起こすと見積もられている。HCV感染は、世界中で起きており、そのウイルスの同定以前には、輸血による肝炎の主な原因とされていた。世界中の献血者の抗HCVの血清有病率は、0.02%〜1.23%の間でばらつきがあることが示されている。HCVは血液製剤に曝露された個体における肝炎についての共通する原因でもある。過去10年間に米国だけでも毎年HCV感染の新たな症例が150,000例に達するものと推定されている。HCV感染の急性期では、通常、軽度の症状を伴う。しかしながら、感染者の15%〜20%しかHCVを除去できないという証拠が提示されている。慢性感染者の群では、10〜20%が致命的な肝硬変に進行し、他の1〜5%が肝細胞がんを発症する。残念ながら、感染者の誰もがこれらの致命的な状態の危険性があるものと考えられる。これは、どの個体がそれらの状態のいずれかに最終的に進行するかを誰も予測できないからである。効果的なワクチンが大いに必要とされるが、i) 効率的な細胞培養系および好都合な小動物モデルの欠如; ii) HCVに対する弱い中和体液性免疫反応および防御細胞性免疫反応; ならびにiii) ウイルスの著しい遺伝的変異性のため、近い将来に開発される可能性は低い。
【0004】
HCVは、フラビウイルス科(Flaviviridae family)の、小さな、エンベロープを有する一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。HCVゲノムは、およそ3000アミノ酸のポリタンパク質をコードする単一の読み取り枠(ORF)を有するおよそ10,000ヌクレオチドを含む。このORFは、5'側に内部リボソーム侵入部位(IRES)として働くシス作用RNA要素である非翻訳領域が隣接しており、3'側にウイルスの複製に必要な高度に保存された非翻訳配列(3'-NTR)が隣接している。ウイルス粒子のタンパク質部分を形成し、ウイルス感染に必要な構造タンパク質をコードする配列は、ORFの5'末端付近に位置している。NS2〜NS5Bと命名された非構造タンパク質は、細胞内ウイルス複製に必要であり、ORFの残部によってコードされている。
【0005】
ポリタンパク質は、宿主細胞およびウイルスプロテアーゼによって、三つの主要な構造タンパク質および非構造タンパク質にプロセッシングされる。インターフェロンαによる処置に対する応答の違いに関連する、わずかに異なるゲノム配列を有するHCVのいくつかの異なる遺伝子型が同定されている。
【0006】
HCVは、感染細胞の細胞質中、小胞体と密接に関連して複製する。細胞の感染により、流入プラス鎖センスRNAが放出され、内部開始機構によって翻訳が開始される。内部開始はIRESによって指令され; IRESの完全な活性は、ポリタンパク質の最初の123アミノ酸をコードするORFの領域および5'非翻訳領域(UTR)に及ぶ最初の700ヌクレオチドで見られることがいくつかの報告により示唆されている。HCVのタンパク質産物の全てが、三つのプロテアーゼ: 宿主シグナルペプチダーゼ、ウイルス自己切断メタロプロテイナーゼNS2、またはウイルスセリンプロテアーゼNS3/4Aの一つによって行われるポリタンパク質ORF産物のタンパク質分解切断により産生される。これらの酵素の複合作用によって、ウイルスゲノムRNAの複製およびパッケージングに必要な、3つの構造タンパク質(C、E1およびE2)ならびに6つの非構造(NS)タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)が産生される。NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bは、ウイルスRNA複製に関与するウイルス複製複合体の成分である。NS5Bは、インプットゲノムRNAのマイナス鎖コピー(相補的RNAまたはcRNA)への転換に関わるウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼであり; このcRNAが次に、より多くのプラス鎖センスゲノム/伝令RNAのNS5Bによる転写のための鋳型として働く。
【0007】
HCVレプリコンは、適当な宿主細胞において発現される場合に(このような発現の産物をHCVレプリコンということもできる)HCV感染細胞において生じるHCV複製複合体の実験的に扱いやすいモデルとなる、組換え構築体である。このレプリコンは、5'から3'の方向に、1) HCV-IRES、2) ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子、3) HCV ORFコード配列NS3〜NS5Bの部分の翻訳を指令する、脳心筋炎ウイルスのIRES、4) HCV ORFコード配列NS3〜NS5Bの部分、および5) HCV 3'-NTRを含有する。レプリコンを発現する細胞は、公知の抗ウイルス薬、および抗ウイルス活性について評価中の化合物(試験剤)を含む化合物の抗ウイルス複製作用を評価するための好都合な手段となる。HCV生物学、HCVレプリコンおよび抗C型肝炎薬の発見に関するさらに詳細な論述は、Huang M and Deshpande M, 「Hepatitis C drug discovery: in vitro and in vivo systems and drugs in the pipeline」 Expert Rev Anti-infect Ther, 2(3) 375-388, 2004(非特許文献1)を参照されたい。
【0008】
いくつかの研究機関および研究所がHCV感染を処置するための薬物を同定および開発を試みている。これまでに発見されたHCV特異的な阻害剤のなかでNS5Bヌクレオシド類似体は、NS5Bのポリメラーゼ触媒部位を標的とする。これらの阻害剤は、新生RNA鎖へのそれらの取り込み後のさらなる伸長を阻止することにより新生のウイルスRNA合成を遮断する。他方で、いくつかの異なる化学種に属するNS5B非ヌクレオシド阻害剤は、NS5Bの活性部位から離れた4つの特有のアロステリック部位に結合することによりウイルスRNA複製の初期段階を遮断する。NS5B阻害剤とは異なり、NS3プロテアーゼ阻害剤は、基質に基づいたペプチド模倣化合物である。それらは、酵素の活性部位に結合し、NS3プロテアーゼ活性を競合的に阻害する。HCVレプリコン細胞を用いたこれらの剤の多くによる耐性変種の選択が報告されている。予想通り、阻害剤の大部分での特徴的な耐性突然変異は、特異的な阻害剤結合ポケットの周りに位置しており、同じポケットに結合する阻害剤の中には、交差耐性が存在する。
【0009】
C型肝炎に対する現市販薬による唯一効果的な治療法は、一般的に薬物リバビリンと組み合わせた、ペグ化インターフェロン(IFN)、特にペグ化αインターフェロンからなる。これは、感染者のごく一部でしか肝臓および血液中のウイルスの量(ウイルス負荷)を減らさないので、とりわけ遺伝子型1のウイルスに感染した患者において、最適以下である。現時点で、最適なレジメンは、24週間または48週間にわたるペグ化αインターフェロンおよびヌクレオシド・リバビリン、つまり広範なウイルスに対して活性を持つ経口抗ウイルス剤の組み合わせであると考えられる。リバビリンは、それ自体では、HCVに及ぼす効果はほとんどないが、それをインターフェロンに添加することで、持続応答率が2倍から3倍増大する。それにもかかわらず、組み合わせインターフェロン/リバビリン治療法に対する応答率は、50〜60%の範囲内で中程度であるが、HCVの特定の遺伝子型(特に遺伝子型2および3)に対する応答率は典型的にはそれよりも高い。処置の間にHCV RNA陰性になった患者の中でも、治療法を止めると、かなりの割合で再発する。
【0010】
さらに、顕著な副作用はこれらの剤の各々に付随することが多い。インターフェロンを投与された患者は、インフルエンザ様の症状を呈することが多い。ペグ化インターフェロンは骨髄抑制作用に関連付けられている。重要なことには、αインターフェロンは複数の神経精神医学的作用を有する。長期治療は、顕著な刺激感応性、不安、人格変化、うつ病、さらには自殺または急性精神病を引き起こすことがある。インターフェロン治療法は、薬物依存症またはアルコール依存症の前歴を有する者でのその再発にも関連付けられている。
【0011】
リバビリン処置の副作用には、ヒスタミン様副作用(掻痒感および鼻詰まり)ならびに用量依存性の赤血球溶血およびヒスタミン様副作用による貧血が含まれる。
【0012】
ウイルスがコードする二つの酵素NS3セリンプロテアーゼおよびNS5B RNA依存性RNAポリメラーゼを標的とする、直接的な抗ウイルス剤が現在開発中である。
【0013】
抗HIV薬に対する耐性の発現は、HIV患者におけるウイルス特異的な治療法の有効性を限定する主な要因である。HCV NS5Bポリメラーゼにおける校正機構の欠如および患者におけるHCVの高い複製速度を考慮すると、薬物耐性HCV変種の出現は避けられないことが十分に認識される。実際に、抗HCV薬の候補に対する耐性ウイルスの出現が臨床試験において既に観察されている。これらの耐性HCVウイルスは、HCV患者における疑似種の存在により先の変種として存在することがあるか、または処置の期間に生み出されることがある。
【0014】
HIV患者の処置から分かったのは、違った作用をし、それゆえ相互に交差耐性がない剤による併用療法は、HCV複製の持続的抑制を達成するのに必要であるものと考えられる。したがって、既に利用可能なものに対して補完的な作用機構を有する新たな薬物は、ウイルス耐性の出現を抑制するのに必要である。最大の有効性および安全性を有する化合物を見つけるには、所望の作用機構で作用すると同定された多数の化合物の試験が一般的に必要とされるので、新規の作用機構を有する薬物を同定するための新しい、迅速なアッセイ法が継続的に必要とされている。
【0015】
総合すれば、上記から、HCV複製の新しい有効な小分子阻害剤の同定、特に上記の欠点に悩まされないものの同定を容易にすると考えられる方法に対するかなりの必要性が示唆される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Huang M and Deshpande M, 「Hepatitis C drug discovery: in vitro and in vivo systems and drugs in the pipeline」 Expert Rev Anti-infect Ther, 2(3) 375-388, 2004
【発明の概要】
【0017】
開示の概要
今回、HCVに対して抗ウイルス活性を示すある種の化合物がHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進することと、このような各化合物によって促進される二量体化の程度が細胞内HCV複製の阻害についてのレプリコンに基づくアッセイ法(例えば、実施例1のアッセイ法)においてこのような化合物の抗ウイルス作用とおおよそ相関し、この作用がインビボでのHCVに対する抗ウイルス作用を予測するものであることとが、発見された。この発見は、ハイスループット形式で用いるのに適したおよびNS4Aホモ二量体化を促進するHCV特異的な抗ウイルス化合物を同定するのに有用である、新規の、好都合の、かつ迅速なアッセイ法に至る道筋をもたらした。
【0018】
ACH-806、1-ニコチノイル-3-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)チオ尿素:

(これは、C型肝炎患者においてHCV RNAレベルを低減することが最近になって示されており、インビトロにおいてレプリコン複製を低減することも公知である(図3参照))は、変性SDSゲル上で分離されたレプリコン含有Huh-7細胞の溶解物の抗NS4A免疫沈降物を抗NS4A抗体で免疫ブロットした場合に、およそ14 kDaのタンパク質のバンド(p14)の出現を促進することが、最初に観察された(実施例3および図4参照)。他の実験(例えば、実施例8参照)は、ACH-806と、ヌクレオシドおよび非ヌクレオシドHCV NS5B阻害剤ならびにHCV NS3プロテアーゼ阻害剤を含む、他のクラスのHCV阻害剤との間に交差耐性のないことを実証し、p14の細胞内形成を促進するさらなるHCV特異的な抗ウイルス化合物の同定が望ましいことをあおった。
【0019】
その後の実験から次に、p14がHCV複製タンパク質NS4Aのホモ二量体に相当するという発見が得られた。抗ウイルス作用の任意の特定の理論によって束縛することを望むわけではないが、NS4Aに選択的に結合しかつNS4Aのホモ二量体化を促進することにより、ACH-806は、HCV複製複合体におけるNS3とNS4Aとの間の相互作用を妨害することで機能的なHCV複製複合体の形成を阻止するものと考えられる。図5および6を参照されたい。
【0020】
この発見は、ハイスループット形式での実施に適した、かつHCVに対する抗ウイルス活性、複製阻害活性について関心対象の化合物(試験剤)をスクリーニングするのに有用な好都合のアッセイ法の基礎として働きうる、多くの細胞種に適用可能な、レプリコン不含系の開発につながった。興味深いことに、試験剤で処置されていない対照レプリコン細胞において低レベルのp14が検出可能であるのに対し、ACH-806または別の活性な試験剤の非存在下で本明細書において提供されるレプリコン不含細胞および方法を用いて、p14は一般的に検出されない。
【0021】
本明細書において提供される細胞および方法は、レプリコン不含細胞であることが好ましく、これは、全体の概略において、少なくとも一つのおよび好ましい態様の多くにおいては二つの(異なる)キメラNS4Aタンパク質の細胞内発現を指令する発現ベクターを含み、それらのタンパク質の各々が、細胞、細胞溶解物およびその画分中のキメラNS4Aを単離するために、固定化するために、またはそれ以外の方法でその存在を検出するために使用できるタンパク質タグに(好ましくは連続アミノ酸配列として)融合された、NS4Aタンパク質を含む。はっきりと識別して検出可能な二つのタグを有するキメラNS4Aの二つの集団を含む好ましい細胞は、NS4A-NS4A二量体の形成の促進に向けた試験剤をアッセイするための好都合なかつ多目的なプラットフォームを提供する。そのような二量体は、二つのタンパク質が共有結合または非共有結合によって結合されている場合にだけ検出できるそれらのタンパク質間の相互作用によって検出できるので、両タンパク質タグの単一連結分子集合体(すなわち、同時に単離する、同時に付着するまたは同時に局在するように接続された、少なくとも二つのNS4Aおよび/またはキメラNS4Aタンパク質)の存在によって容易に検出することができる。キメラタグNS4Aタンパク質間のそのような検出可能な相互作用の非限定的な例は、以下を含む。
1) 異なるタグの付いたキメラNS4Aタンパク質の二量体対の一方の付着官能性(例えば、親和性タグ、または基材に予め付着された抗体と免疫反応性のエピトープタグ)を介した基材への付着、その後の、(好ましくは)続いて(未付着タンパク質を除去するために)洗浄された基材上での、異なるタグの付いた付着キメラNS4Aタンパク質の対のもう一方の検出。この一方のものは、特定の付着官能性を欠くが、放射官能性、蛍光官能性のような別個の検出可能な官能性、または別個のエピトープタグのような免疫検出可能な官能性を含む。
2) 単一連結分子集合体に結合された場合、蛍光活性または酵素活性(例えば、タンパク質分解活性もしくはラクタマーゼ活性)のような、検出可能な機能をもたらすように補完的な形で相互作用しうる二つのタンパク質断片の一つを各々が含む、タンパク質タグ間の相互作用。および
3)どちらも存在するが互いに密接に結び付けられて(連結されて)いない場合のような二量体化される場合に、二つの蛍光タグ(例えば、単一レーザー励起により458 nmで照射されるCFPおよびYFP)によって生み出される異なる比率の蛍光エネルギー放出を引き起こす、検出可能な蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)のような二つの蛍光タグ間の近接相互作用。
【0022】
それゆえ、種々の局面において、ここで以下が提供される。
第一のタンパク質タグおよび第二のタンパク質タグが異なる、
HCV NS4Aタンパク質および第一のタンパク質タグから本質的になる第一の連続アミノ酸配列を含む、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質; ならびに
HCV NS4Aタンパク質および第二のタンパク質タグから本質的になる第二の連続アミノ酸配列を含む、第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質
を細胞内に同時発現する細胞。
【0023】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の各々が、HCV NS4Aタンパク質およびタンパク質タグからなる連続アミノ酸配列を含み、かつ第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグとは異なるタンパク質タグであるような、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に同時発現する細胞。
【0024】
上記の細胞において、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質は、第一の濃度で細胞内に発現され、かつ第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質は、第二の濃度で細胞内に発現され、この第一の濃度が、好ましくはこの第二の濃度のおよそ一桁分の範囲内にあり、この第一の濃度およびこの第二の濃度が、好ましくはおよそ等モルである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1において、NS4Aをコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)は、上部の5'-3'鎖にあり、小文字で記載されたその中の配列のごく一部である。それはagcで始まり、tgcで終わる。SEQ ID NO:1によってコードされるアミノ酸配列がSEQ ID NO:2であり、これは図中唯一の読み取り枠の産物の一部として標準的な一文字アミノ酸の形式で表示されており、その唯一の読み取り枠はその中の各三群における三つの読み枠の真ん中である。NS4Aアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)は、真ん中の読み枠に含まれる5番目の残基(S)で始まり、その読み枠に含まれる59番目の残基(C)で終わる。
【図2】NS4Aのホモ二量体化を促進する化合物(ACH-806)に対する耐性を与える突然変異の位置を示す図解であり、これらの突然変異は、HCVタンパク質NS3のN末端にマッピングされた。ACH-806耐性クローンの配列決定により、Cys-16のSer-16へのおよびAla-39のVal-39への突然変異が示された。NS3アミノ酸残基C16およびA39が図中に示されている。NS3プロテアーゼドメイン(pdbコード: 1NS3)は灰色で着色されており、ここでβ鎖(青緑色)およびα-ヘリックス(赤色)がリボンとして示されており; 触媒部位の残基は赤色(Asp 81)、黒色(His 57)および緑色(Ser 139)で着色されており; 構造亜鉛イオンは赤丸として表示されており; NS4Aは赤紫色で着色されており; ならびに耐性変異体のCPK表示(Ala 39およびCys 16)は青色になっている。NS3のCys 16 (Cb)とNS4AのVal 26 (CG1)との間の距離およびNS3のAla 39 (Cb)とNS4AのGly 21 (Cα)との間の距離は、それぞれ、4.1 Åおよび7.3 Åである。
【図3】ACH-806は、機能的レプリカーゼ複合体の産生の強力な阻害剤である。ACH-805でのレプリコン細胞の16時間の処理により、50 μMほどの低い濃度でレプリカーゼ活性の50%を超える活性の低下をもたらした。
【図4】ACH-806処理複製複合体におけるウイルスタンパク質組成およびウイルス-ウイルスタンパク質相互作用の特異的変化。複製複合体は、終夜ACH-806 (0.2、4および10マイクロモル)、NS3セリンプロテアーゼ阻害剤(20マイクロモル)またはNS5B RdRPヌクレオシド阻害剤(20マイクロモル)への曝露後のレプリコン細胞(Huh 9-13)から単離し、これをサンプル用緩衝液(5% β-メルカプトエタノールを補充したLaemmliサンプル用緩衝液)で可溶化した後にSDS/PAGEに供した。膜へのタンパク質の転写後、この膜を、前の抗体をはがした後に、左側に表示された抗体を連続的にプローブとして調べた。分子量マーカーは右側に示されている。
【図5】ACH-806で16時間処理したHCVレプリコン細胞のウエスタンブロット。8時間ACH-806 (2 μM)、NS3セリンプロテアーゼ阻害剤(20 μM)、NS5B RdRPヌクレオシド阻害剤(20 μM)およびヌクレオシド阻害剤へ8時間曝露した後のHuh-9-13細胞由来の細胞溶解物を免疫沈降した。そのSDS-PAGEゲルを抗5B抗体、抗5A抗体、抗4A抗体および抗3a抗体で免疫ブロットした。新しいNS4A含有種(p14)の用量依存的な蓄積が認められる。成熟NS3およびNS4Aレプリコンタンパク質の用量依存的な減少も認められる。NS4B、NS5AまたはNS5Bレベルの顕著な減少は認められない。
【図6】終夜ACH-806 (0.2、1および5 μM)への曝露後のHuh-9-13細胞由来の細胞溶解物を抗NS4A抗体との免疫沈降に供した。免疫沈降物を可溶化し、SDS/PAGEにて分離した。膜へのタンパク質の転写後、この膜を、前の抗体をはがした後に、右側に表示の抗体を連続的にプローブとして調べた。
【図7】終夜ACH-806 (5 μM)への曝露後のHuh-9-13細胞由来の細胞溶解物を二部分に分け、各部分をそれぞれ、抗NS4A (上部)抗体または抗NS4B抗体との免疫沈降に供した。免疫沈降物を可溶化し、上記のように分離した後に、抗NS4A抗体での免疫ブロッティングを行った。
【図8】終夜ACH-806 (5 μM)への曝露後のHuh-9-13細胞由来の細胞溶解物を二部分に分けた。少ない方の部分をサンプル用緩衝液(投入)で希釈し、多い方の部分を抗NS4A抗体との免疫沈降に供した後に、サンプル用緩衝液での可溶化 (プルダウン)を行った。SDS/PAGEにて分離した後に、タンパク質を抗NS3抗体で免疫ブロットした。NS3の密度を濃度測定により得て、各レーンの下部に示した未処理投入のそれで規準化した。未処理サンプルと処理サンプルとの間の強度の比率を投入に対しおよびプルダウンに対し計算し、図中に示した。NS3、NS3-4A、p14、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bの位置を左側に矢印によって示す。
【図9】NS3、NS4A、Flag-NS4B、NS5AまたはNS5B発現プラスミドでトランスフェクトしたHuh-7細胞のウエスタンブロット。ACH-806処理によって、p14は大いに増加した。NS4A以外のプラスミドでトランスフェクトした細胞において顕著な変化は検出されなかった。Huh-7細胞をそれぞれ、NS3、NS4A、N末端Flagを有するNS4B、NS5AおよびNS5Bをコードするプラスミドでトランスフェクトし、終夜ACH-806 (2 μM)への曝露後にサンプル用緩衝液中で溶解した。溶解物をSDS/PAGEにて分離し、上から下にそれぞれ、抗NS3抗体、抗NS4A抗体、抗Flag抗体、抗NS5A抗体および抗NS5B抗体で免疫ブロットした。
【図10】p14に及ぼす強力な変性剤の作用。NS4AでトランスフェクトしたHuh-7細胞(上部)およびレプリコン細胞(下部)のウエスタンブロット。8 M尿素をサンプル用緩衝液に添加した場合に、p14はほとんど検出できなくなった。NS4AまたはHuh-9-13をコードするプラスミドでトランスフェクトしたHuh-7のいずれかの細胞を上記のように処理した。トランスフェクトHuh-7細胞をサンプル用緩衝液(左)またはサンプル用緩衝液に加えて8 M尿素(右)で溶解した。RCをHuh-9-13細胞から単離し、サンプル用緩衝液(左)またはサンプル用緩衝液に加えて8 M尿素(右)で可溶化した。全てのサンプルをSDS/PAGEにて分離した後に、抗NS4A抗体での免疫ブロッティングを行った。
【図11】NS3、NS4A、Flag-NS4B、NS5AまたはNS5B発現プラスミドでトランスフェクトしたHuh-7細胞のウエスタンブロット。ACH-806処理によって、p14は大いに増加した。NS4A以外のプラスミドでトランスフェクトした細胞において顕著な変化は検出されなかった。一方がNS4Aをコードし、もう一方がC末端HA (ヘマグルチニン)タグを有するNS4A (NS4A-HA)をコードする二つのプラスミドをHuh-7細胞に単独でまたはともに1:1の比率でトランスフェクトした。上記のようにACH-806での処理の後、細胞を溶解し、溶解物を抗NS4A抗体との免疫沈降に供した。免疫沈降物をSDS/PAGEにて分離した後に、抗NS4A抗体での免疫ブロッティングを行った。上部の箱は、二つが二量体を形成できる場合に、予想される二量体種、つまりNS4A (白のボックス)ホモ二量体(種A)、NS4A-HA (影付きのボックスをC末端に有する白のボックス)ホモ二量体(種C)、ならびにNS4AおよびNS4A-HAヘテロ二量体(種B)を図解する。すべてのタンパク質種の位置を左側または右側に矢印によって示す。
【図12】HCVレプリコン細胞において発現されたNS4Aとの3H-ACH-119の選択的結合。Huh-9-13細胞またはその親のHuh-7細胞を40 nM 3H-ACH-119、つまりACH-806に構造的に関連する化合物で20時間処理した後に光分解、細胞溶解、抗NS3抗体(上部、レーン1および2)または抗NS4A抗体(下部、レーン1および2)による免疫沈降、SDS/PAGEならびに蛍光光度分析を行った。対照として、細胞を40 nM ACH-119で処理し、同時に20時間35S-met/システインで代謝的に標識した。溶解の後、少量のアリコットを抗NS3抗体(上部、レーン5および6)または抗NS4A抗体(下部、レーン5および6)での免疫ブロット分析に供し、その残りを抗NS3抗体(上部、レーン3および4)または抗NS4A抗体(下部、レーン3および4)との免疫沈降、SDS/PAGEならびに蛍光光度分析に供した。NS3およびNS4Aの位置を左側に示し、分子量マーカーを右側に示す。
【図13】およそ0.25 μMの合成完全長NS4A、またはN末端をNS4Aの中央ドメイン(アミノ酸番号21〜33)に融合した組換えNS3 (補因子ドメイン-NS3と命名)を1時間30℃で40 nM 3H-ACH-118とともにインキュベートした後に、光分解、SDS/PAGE、クマシーブルー染色(左)および最後に蛍光光度分析(右)を行った。NS4Aおよび補因子ドメイン-NS3の位置を真ん中に示し、分子量マーカーを左側に示す。
【図14】およそ0.66 μMの合成完全長NS4Aを逓減濃度(20、5、1.25および0.3 μM)の表示の非放射性化合物の非存在下または存在下において0.2 μM 3H-ACH-119とともに1時間30℃でインキュベートした後に、光分解、SDS/PAGEおよび蛍光光度分析を行った。NS4Aの位置を左側に示す。
【図15】ウイルス-ウイルスタンパク質相互作用の変化を示す図。免疫共沈降を用いてウイルスタンパク質間の相互作用を調べた。注目される唯一顕著な変化はNS4AとNS3およびNS4Bとの相互作用の変化であった。
【図16】NS4Aアンタゴニストのハイスループットスクリーニングアッセイ法。(1) プレートを抗タグ1抗体でコーティングする。(2) 異なるタグ標識を各々が有する、二つの異なるNS4A分子を発現するHuh-7細胞を溶解して、NS4Aタグ標識タンパク質を得る。(4) 試験化合物を溶解物に添加する。(4) 溶解物をプレートに添加する。単量体タグ1標識NS4Aおよび少なくとも一方の単量体がタグ1標識されている二量体NS4Aはプレートに結合する。(5) 未結合のNS4Aを洗い流す。(6) 抗タグ2抗体をプレートに添加する。この抗体は、一方の単量体がタグ標識されている結合二量体に結合する。(7) アッセイ検出の前に未結合の抗体を除去する。(8) プレートを発色させる。
【図17】NS4A-cFLAGの構築。C末端FLAG抗体タグを有するHCV NS4A (1b)を、pCl-neoベクター(Promega)のNheI/EcoRI部位にクローニングする。
【図18】NS4A-cV5の構築。C末端V5抗体タグを有するHCV NS4A (1b)を、pcDNA3.1 (+) (Invitrogen)のNheI/EcoRI部位にクローニングする。
【図19】NS4A-cV5およびNS4A-FLAGを同時発現する細胞から得た溶解物のウエスタンブロット。ACH-806処理により、二量体p14は、NS4A-cFlagまたはNS4A-cV5のどちらかでトランスフェクトした細胞において容易に検出される。
【図20】NS4A-cV5/NS4A-FLAG同時トランスフェクト細胞における化合物によるNS4A二量体誘導。細胞を逓増濃度のアシルチオ尿素またはアシルチオ尿素で処理し、EC50を示している。EC50 > 1000 nMを有する9652を除く全ての化合物は、濃度依存的なp14二量体の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
態様の詳細な説明
分子クローニング技術および試薬は非常に高度に開発されており、そのような技術を容易にする市販のキットもごくありふれているので、技術のある分子生物学者に典型的な通常の技術レベルは、本明細書でのこれらの技術および試薬の詳述が不必要なほど高い。
【0027】
本明細書において開示される種々の用途および組成物に好ましい宿主細胞は、真核生物細胞、好ましくは脊椎動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞である。非常に好ましい細胞は、ヒト肝細胞がんHuh-7 (Huh7)細胞、アフリカミドリザルCOS細胞およびチャイニーズハムスター卵巣CHO細胞を含む。好ましいCOS細胞はCos-1細胞である。CHO-K1リジン栄養要求性チャイニーズハムスター卵巣細胞は、HCV NS4Aタンパク質、好ましくは本明細書の開示によるキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を発現するHCVレプリコン不含細胞として用いるのに特に好ましい。そのような宿主細胞は、例えば、ATCC, Manassas, VAから商業的に得ることができる。本明細書において開示されるキメラNS4Aタンパク質の発現のための宿主細胞は、C型肝炎ウイルス複製複合体またはレプリコンを含まないことが好ましい。細胞を、本明細書において開示のベクターで一過的にまたは安定的にトランスフェクトすることができる。細胞は、複数の細胞を含む培養物として調製されることが好ましい。そのようなベクターを発現する細胞は、約6マイクロモルのACH-806を含む培地中約20時間のインキュベーションによって培養物を処理すると、キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の二量体が細胞中またはその溶解物中で検出できるように、調製されることが好ましい。したがって、そのような培養物の細胞の溶解物は、本明細書において提供されるある種のアッセイ法において有用でありうる。
【0028】
種々のタンパク質タグのいずれも、本明細書において開示される好ましい態様の多くにおいて使用されるキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質に適している。例えばTerpe K., 「Overview of tag protein fusions: from molecular and biochemical fundamentals to commercial systems」, Appl Microbiol Biotechnol. 2003 Jan; 60(5):523-33; およびBrizzard B and Chubet R, 「Epitope tagging of recombinant proteins」, Current Protocols in Neuroscience, John Wiley & Sons, Inc., 2001; Chapter 5:Unit 5.8を参照されたい。
【0029】
特に好ましいタグは、FLAGタグ(Asp Tyr Lys Asp Asp Asp Asp Lys - SEQ ID NO:3 - 例えば、Einhauer A, Jungbauer A, J Biochem Biophys Methods. 2001 Oct 30;49(1-3):455-65を参照のこと)およびV5タグ(Gly Lys Pro Ile Pro Asn Pro Leu Leu Gly Leu Asp Ser Thr - SEQ ID NO:4 - 例えば、INVITROGENから入手可能な、V5タグを組み入れたGATEWAY pcDNA 3.1/nV5 DEST発現ベクターを参照のこと)を含む。他の好ましいタグは、myc、Tab2およびHAエピトープタグ(例えば、Crusius K, et al., 「Tab2, a novel recombinant polypeptide tag offering sensitive and specific protein detection and reliable affinity purification」 Gene. 2006 Oct 1;380(2):111-9を参照のこと)を含む。他の好ましいタグは、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジン結合ペプチド、ポリスチレン結合ペプチドおよびポリ(His) (好ましくは一つまたは複数のヘキサ-ヒスチジンモチーフを含む)親和性タグを含む。例えば、Lamla T and Erdmann VA; 「The Nano-tag, a streptavidin-binding peptide for the purification and detection of recombinant proteins」; Protein Expr Purif. 2004 Jan;33(1):39-47; Kumada Y, et al., 「Development of a one-step ELISA method using an affinity peptide tag specific to a hydrophilic polystyrene surface」 2007 J Biotechnol; 127(2):288-99; Kumada Y, et al.; 「Protein-protein interaction analysis using an affinity peptide tag and hydrophilic polystyrene plate」; J Biotechnol. 2007 128(2):354-61; およびLjungquist C, et al., 「Immobilization and affinity purification of recombinant proteins using histidine peptide fusions.」 Eur J Biochem. 1989 186(3): 563-9を参照されたい。好ましい蛍光タグは、GFP、YFP、CFPもしくはOFP (緑色、黄色、青緑色または橙色蛍光タンパク質)蛍光タグおよびルシフェラーゼタグ、ならびに例えば、以下に詳述の、非タンパク質フルオルに結合されたタンパク質タグを含む。
【0030】
NS4A-NS4A二量体化キメラNS4Aタンパク質の検出に好ましいアッセイ法は、均一アッセイ法、ならびにどちらも不均一アッセイ法でありうる酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)および蛍光結合免疫吸着アッセイ法(FLISA)である。有用なアッセイ技術の詳細を詳述しているテキストは、Handbook of Assay Development in Drug Discovery, Minor LK, Editor, CRC; 2006 (例えば、Chapter 17, Garippa RJ 「The emerging role of cell-based assays in drug discovery」 pp 221-226およびChapter 18, Hoffman, AF 「The preparation of cells for high content screening」 pp 227-242を参照のこと)を含む。Protein-Protein Interactions: Methods and Applications, Haian Fu, Editor, Humana Press; 2004 (例えば、Chapter 11, Park S-Hand Raines RT 「Fluorescence Polarization Assay to Quantify Protein-Protein Interactions」 pp 161-166およびChapter 13, Vikis HG and Guan K-L 「Glutathione-S-Transferase-Fusion Based Assays for Studying Protein-Protein Interactions」 pp 175-86を参照のこと); Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual, Golemis E and Adams PD, Editors, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2005 (例えば、Chapter 10, Verveer, PJ et al.,「Imaging Protein Interactions by FRET Microscopy」 pp 181-214を参照のこと); ならびにYoshitake K et al., 「Dimerization-based homogeneous fluorosensor proteins for the detection of specific dsDNA.」; Biosens Bioelectron. 2008, 23(8): 1266-1271も参照されたい。
【0031】
Handbook of Drug Screening, Seethala R, Editor and Fernandes P, Editor; Informa Healthcare 2001; Chapter 4, Seethala R 「Homogeneous Assays for High-Throughput and Ultrahigh-Throughput Screening」 pp. 69-128; Homogeneous Assay Development, Promega Notes 74, 3-6, 2000; McCormick M 「FRET based homogeneous assay of S・TAG fusion proteins」 InNovations 10, 10, 1999; およびWhitfield J et al., 「High-throughput methods to detect dimerization of Bcl-2 family proteins」 Anal Biochem. 2003 322(2): 170-178; ならびに「ALPHASCREEN Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay」(その国際出願日現在でhttp://las.perkinelmer.com/applicationssummary/applications/Principles+of+AlphaScreen.htmにて)も参照されたい。Perkin Elmer ALPHASCREEN均一アッセイ法は、生体結合のための官能基を供与するヒドロゲルの層で各々がコーティングされている微細な供与体および受容体のビーズを含む好ましい検出系を提供する。この技術を用いた代表的な均一アッセイ法は、ストレプトアビジン結合ペプチドでタグ付けされたキメラHCV NS4Aも、V5エピトープタグでタグ付けされたキメラHCV NS4Aもともに発現する細胞を用いて、ならびにストレプトアビジンに結合された供与体ビーズ(これらは製造業者から予め結合された状態で入手できる)および抗FLAG抗体に結合された受容体ビーズ(製造業者から予め結合された状態で入手できるプロテインAでコーティングされた受容体ビーズとともに、市販のIgG抗FLAG抗体をインキュベートすることによって容易に調製される)を用いて行うことができる。V5結合ペプチドおよびストレプトアビジン結合ペプチドでタグ付けされたキメラHCV NS4Aタンパク質のNS4A/V5-NS4A-FLAG二量体が存在する場合、連結された分子集合体における両タグの存在および二つの異なる二量体化タグと二つの異なるビーズコーティングとの間の親和性は、供与体および受容体ビーズを近接近させる。このように、680 nmでのレーザー励起によって大いに増幅された光シグナルを発する化学反応のカスケードが開始される。概略では、供与体ビーズ中の光感受性物質が雰囲気酸素を、さらに励起した一重項状態に変換し、この一重項状態の酸素分子がすぐ近くの受容体ビーズに拡散して、受容体ビーズ中の化学発光物質と反応し、同じビーズ内に含まれるフルオロフォアをさらに活性化する。このフルオロフォアがその次に520〜620 nmで光を発する。二量体化がない場合、供与体ビーズによって生じる一重項状態の酸素分子は、受容体ビーズがすぐ近くに保持されていないので検出されずにいる。製造業者は、ALPHASCREENをハイスループット形式で用いるための詳細なプロトコルおよびマルチウェルプレート読取装置を提供している。親和性タグおよび放射性タグでタグ付けされたキメラタンパク質の二量体化を用いた類似の均一アッセイ法は、シンチレーション近接アッセイ法(Wu S, Liu B.; 「Application of scintillation proximity assay in drug discovery」 BioDrugs, 2005;19(6):383-92)であり、そのための供給品、試薬および機器も市販されている。
【0032】
試験剤でのアッセイ結果は、陽性および陰性対照と比較されることが好ましい。したがって、複数の任意の上記培養物は、試験培養物とともにそのような対照を与えるように調製されてもよく、それらは好ましくは、しかし必ずしもというわけではないが、並行して処理されインキュベートされる。陰性対照は、典型的には、アッセイ法からの試験剤の省略を伴う。NS4A-NS4A二量体は、陰性対照の細胞または培養物において検出できないことが好ましい。陽性対照は、NS4A-NS4A二量体化を促進することが公知の化合物の有効量のアッセイ法への添加を伴う。適当な陽性対照化合物は、NS4Aのホモ二量体化を促進することが示されたアシルチオ尿素およびアミノチオアゾール化学種の化合物(例えば、以下の実施例7を参照のこと)を含み、特に好ましいのは、ACH-806および以下の実施例7に記載の他の化合物である。アシルチオ尿素およびアミノチオアゾール、ならびに以下の実施例7に記載の化合物ではなく、かつ、NSA4のホモ二量体化を促進するアシルチオ尿素およびアミノチオアゾール化学種の他の化合物は、本明細書において提供されるキメラタグ付NSA4ベクター、細胞、およびアッセイ法を用いて容易に同定される。そのような化合物は、インビトロまたはインビボでHCV複製を阻害する方法において有用であり、それらの方法は、HCVに感染した細胞と、HCV複製を阻害するのに有効なそのような化合物の量とを接触させる段階を伴う。
【0033】
さらなる具体的な好ましい態様
本明細書において開示される第一および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の異なるタンパク質タグは、上記の開示の概要において論じられている好ましいタグから独立して選択されることが好ましい。
【0034】
共有結合もしくは非共有結合または他の非一過的なタンパク質-タンパク質結合によってタンパク質が結ばれる場合に検出されうるのみの二つのタンパク質間の相互作用を検出することに関連して、および上記の開示の概要において「単一連結分子集合体に結合された場合、検出可能な機能をもたらすように補完的な形で相互作用しうる二つのタンパク質断片の一つを各々が含む、タンパク質タグ間の相互作用」と記述されている検出可能な相互作用の第二群に特に関連して、そのような補完的なタンパク質タグの好ましい対は、分割ユビキチンシステム(Johnson N and Varshavsky A 「Split ubiquitin as a sensor of protein interactions in vitro」 Proc Natl Acad Sci USA 91 pp10340-44, 1994)において使用されるユビキチンのC末端およびN末端サブドメインである。このシステムにおいて、二つのユビキチンサブドメインは、それらの二つの融合パートナー間のタンパク質-タンパク質相互作用によってすぐ近くに保持される場合にだけ互いを機能的に補完し、この補完が、再構成されたユビキチンの自己タンパク質分解切断を引き起こし、C末端ユビキチンサブドメインに連結されたレポーター成分のサブドメインからの分離を引き起こす。本明細書において提供される第一および第二のキメラNS4Aタンパク質に適用される場合、ユビキチンのC末端およびN末端サブドメインが第一および第二のタンパク質タグとして働く。分割ユビキチンシステムにおいてC末端ユビキチンサブドメインに連結されるレポータータンパク質に関連して、好ましいレポータータンパク質は、キメラNS4Aタンパク質のためのタグとして本明細書において論じられる蛍光タンパク質およびフルオル結合タンパク質から選択されるものである。例えば、分割ユビキチン構築体の好ましいレポータータンパク質成分は、二ヒ素フルオル(biarsenical Fluor) (フルオロフォア)に結合されるテトラシステインタグである。そのような蛍光分割ユビキチンレポーターは、分割ユビキチンに結合されているかまたは分割ユビキチンから切断されるので、フルオルの蛍光異方性の変化を測定することによりインサイチューで容易に検出することができる。例えば、Blommel PG and Fox BG. 「Fluorescence anisotropy assay for proteolysis of specifically labeled fusion proteins」 Anal Biochem. 2005 Jan 1;336(1):75-86を参照されたい。
【0035】
ある種の態様において、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグは、下記式

の化合物であるリガンドと共有結合を形成できる原核生物ヒドロラーゼ変種であり、式中、Rは、非蛍光タグ化成分、例えば、FLAG、V5、c-myc、Tab2、HAエピトープ、ビオチン、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジン結合ペプチド、ポリスチレン結合ペプチド、ポリ(His)ペプチドグルタチオン-s-トランスフェラーゼもしくはビオチンリガーゼ、または蛍光タグ化成分から選択される。好ましくは、Rはフルオルである。好ましい原核生物ヒドロラーゼ変種タグは、その市販のベクターおよびリガンドとともに都合良く使用されるPROMEGA HALOタグ(PROMEGA, Madison, WI) (その国際出願日現在でhttp://www.promega.com/halotag/およびhttp://www.promega.com/catalog/catalogproducts.aspx?categoryname=productleaf_1632にて)である。
【0036】
他の局面において、HALO TAGタグを含む単一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質で細胞を調製することができ、この細胞を、蛍光成分R基および親和性成分R基またはその代わりに異なるフルオル、好ましくはFRET対を構成する二つの異なるフルオルを各々が含む二つのR基のような、多くの場合には異なる官能性とともに、異なるR基を有する二つのHALOリガンドの混合物と接触させる。したがって、これらの局面のある種の態様において、HALO TAGタンパク質タグを含むキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞が提供される。この細胞において、タグ付HCV NS4Aタンパク質の第一の画分は、下記式

の化合物に共有結合しており、
式中、Xは、第一のフルオル結合タグ付キメラHCV NS4Aタンパク質をもたらす第一のフルオルであり、およびタグ付キメラHCV NSAタンパク質の第一の画分は、細胞内に第一の検出可能な濃度で存在し、かつキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の第二の画分は、下記式

の化合物に共有結合しており、
式中、Yは、第二のフルオル結合タグ付キメラHCV NS4Aタンパク質をもたらす、Xと同じものではない第二のフルオルであり、およびYは、第一の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が第二の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質と二量体化された場合にXへの検出可能な周波数共鳴エネルギー転移の能力を有し、第二の画分は、細胞内に第二の検出可能な濃度で存在し、かつ第二の濃度は、第一の濃度と同じ桁のものであり、および好ましくは第一の濃度とほぼ等モルである。
【0037】
あるいは、上記で論じられたHALO TAGタグの態様と類似した形で、単一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグは、リガンドと接した状態でのインキュベーションによってリガンドに好都合に結合されうる別のタグである。好ましい態様において、キメラタグ付タンパク質を発現する細胞を対の二つの補完的リガンドの混合物とともにインキュベートして、その一つの部分が二つの補完的リガンドの一つと結合され、かつもう一つの部分が補完的リガンドの対のもう一つと結合されている、タグの混合群をもたらす。一つの態様において、タグはテトラシステインタグ、つまりシステイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システイン(SEQ ID NO:5)タグ(ここで、Xaaがシステイン以外のアミノ酸である)である。好ましいテトラシステインタグは、システイン-システイン-プロリン-グリシン-システイン-システイン(SEQ ID NO:6)である。そのようなタグは、単純にタグとリガンドとを接触させることにより、有用な二ヒ素タグリガンドに好都合に結合される。好ましい二ヒ素リガンドは、適切な波長および強度の光の照射によってFRETシグナルが得られる際の二量体化を検出する均一アッセイ法を容易にする、フルオル、好ましくはフルオルの補完的FRET対である。好ましいテトラシステインリガンドのFRET対はF2FlAsHおよびF4FlAsHである。例えば、Spagnuolo CC et al., 「Improved photostable FRET-competent biarsenical-tetracysteine probes based on fluorinated fluoresceins」 J Am Chem Soc. 2006; 128(37): 12040-1を参照されたく、同様にWO/2007/144077を参照されたい。
【0038】
GFP変種の耐熱性GFP (ttGFP)は、二つの励起ピークを持っており、395 nmおよび475 nmにそれぞれの最大値を有する。どちらかのピーク内の波長でのタンパク質の照射によって、GFPに特徴的な緑色光(508 nm)の放出を引き起こす。二つの励起極大の比率(励起比率)は、同じ緩衝液中でおよび一定温度で測定される場合、どの単量体ttGFP融合タンパク質の場合にも同じである。自己会合できるタンパク質にttGFPが融合された場合、ホモ二量体状態での励起比率は、特徴的な形で単量体状態のそれとは異なる。これらのスペクトル変化を用いて、インビトロおよびインビボでのttGFPタグ付タンパク質の自己会合の程度を検出することができる。Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual, Golemis E and Adams PD, Editors, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2005, Chapter 11, De Angelis, DA, 「Detection of Homotypic Protein Interactions with Green Fluorescent Protein Proximity Imaging (GFP-PRIM)」 p215-226を参照されたい。
【0039】
したがって、以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進する剤を同定するための方法も本明細書において提供される:
ttGFPでタグ付けされているキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する複数の細胞培養物の各々と複数の試験剤の各々とを、細胞内タンパク質と各剤との間の相互作用を可能にする条件の下で接触させる段階; および
細胞と試験剤とを接触させた後にタグ付HCV NS4Aタンパク質が連結分子集合体に自己会合したと判定される場合、試験剤がHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定されるように、細胞と試験剤とを接触させた後にタグ付HCV NS4Aタンパク質が連結分子集合体に自己会合するかを各培養物において判定する段階。
タグ付HCV NS4Aタンパク質が自己会合するかどうかの判定は、好ましくは試験剤との接触前後の395 nmでのGFP励起極大の475 nmでのGFP励起極大に対する比率を比較することによって行われ、試験剤との接触前後の比率の再現可能な差異によって、タグ付HCV NS4Aタンパク質が自己会合すると判定される。
【0040】
同様に提供されるのは、以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を複数の化合物の各々が促進する相対的程度を特徴付けるための方法である:
上記のアッセイ法の各アッセイ法において、第一のタグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のタグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在もしくは第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在、またはttGFPの励起極大の比率のシフト、あるいは蛍光もしくはフルオル結合タグの蛍光異方性の変化が、シグナル強度について評価されるシグナルとして検出され、かつ
該アッセイ法においてより強いシグナルを生じる化合物が、そのようなアッセイ法においてあまり強くないシグナルを生じる化合物よりも大きい程度にHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると特徴付けられる、
複数の化合物の各々を用いて上記のアッセイ法を別々に行う段階。
【0041】
本明細書において開示されるおよび最初と最後の頁数で特定される参考文献の各々は、その個々の表題に記載されている主題に関してその中の教示を参照することにより本明細書に組み入れられる。以降の実施例は、例示を目的として与えられており、本明細書において開示される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0042】
実施例
C型肝炎のウイルスレプリコンを阻害する能力は、HCVレプリコン構築体を組み入れた培養細胞において発現されるHCVレプリコンを用いて試験することができる。HCVレプリコン系はBartenschlagerら(Science, 285, pp. 110-113, 1999)によって記述されている。このレプリコン系は、HCVに対するインビボでの活性を予測するものであり、ヒトにおいて活性な化合物は、このレプリコンアッセイ法での活性を一様に示す。
【0043】
このアッセイ法においては、HCVレプリコン含有細胞を各種濃度の試験化合物で処理して、HCVレプリコンの複製を抑制する試験化合物の能力を確認する。陽性対照として、HCVレプリコン含有細胞を各種濃度のインターフェロンα、つまり公知のHCV複製阻害剤で処理する。レプリコンアッセイ系は、レプリコンそれ自体の成分としてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPT)を、宿主細胞におけるレプリコン遺伝子産物の転写の簡便な検出を可能にするマーカーとして含む。HCVレプリコンが活発に複製している細胞は高レベルのNPTを有し、NPTのレベルは、HCV複製に比例する。HCVレプリコンが複製していない細胞は低レベルのNPTを有し、したがってネオマイシンで処理されると生存できない。各サンプルのNPTレベルは、捕捉ELISAを用いて測定することができる。
【0044】
レプリコン構築体が組み入れられたC型肝炎レプリコン培養細胞のウイルス複製を阻害する能力について化合物を試験するためのプロトコルを、以下に示す。
【0045】
1A. HCVレプリコンおよびレプリコン発現
HCVレプリコンの配列はGenBank (アクセッション番号AJ242652)に寄託されている。
【0046】
レプリコンは、エレクトロポレーションなどの標準的な方法を用いて、Huh-7細胞にトランスフェクトされる。
【0047】
1B. 細胞維持
機器および材料はHuh-7 HCVレプリコン含有細胞、維持培地(10% FBS、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、および500 μg/mlのジェネティシンG418を補充したDMEM (ダルベッコ改変イーグル培地))、スクリーニング培地(10% FBS、L-グルタミンおよび非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)およびストレプトマイシン(100 μg/ml)を補充したDMEM)、96ウェル組織培養プレート(平底)、96ウェルプレート(薬物希釈のためのU底)、陽性対照のためのインターフェロンα、固定試薬(メタノール:アセトンのような)、一次抗体(ウサギ抗NPTII)、二次抗体: Eu-N1l、ならびに増強液を含むが、これらに限定されることはない。
【0048】
HCVレプリコン含有細胞は、その密度が適当である場合には、高レベルのウイルスRNAレプリコン複製を支持する。過度の集密度は、ウイルスRNA複製の減少を引き起こす可能性がある。それゆえ、細胞は、500 μg/mlのG418の存在下において対数期で増殖し続けられねばならない。一般的に、細胞は週2回、1:4〜6希釈で継代されるべきである。細胞の維持は以下のように行う。
【0049】
HCVレプリコン含有細胞を顕微鏡下で調べて、細胞が十分に増殖していることを確認する。細胞をPBSで1回すすぎ、トリプシン2 mlを添加する。細胞/トリプシン混合物を3〜5分間CO2インキュベータ中37℃でインキュベートする。インキュベーション後、完全培地10 mlを添加してトリプシン処理反応を停止させる。細胞を穏やかにブローし、15 mlの試験管に入れて、1200 rpmで4分間遠心処理する。トリプシン/培地溶液を除去する。培地(5 ml)を添加し、細胞を注意深く混合する。細胞を計数する。
【0050】
次いで細胞を96ウェルプレート上に細胞6000〜7500個/100マイクロリットル/ウェル(細胞6〜7.5×105個/10 ml/プレート)の密度で播種する。次いでプレートを5% CO2インキュベータ中37℃でインキュベートする。
【0051】
播種から約24時間後かつ薬物の添加前に細胞を顕微鏡下で調べる。計数および希釈が正確に行われていれば、細胞は60〜70%の集密度であり、ほとんど全ての細胞がウェル中に均等に付着かつ拡散するはずである。
【0052】
1C. 試験化合物によるHCVレプリコン含有細胞の処理
HCVレプリコン含有細胞を1回PBSですすぎ、トリプシン2 mlを添加する。細胞を3〜5分間5% CO2インキュベータ中37℃でインキュベートする。完全培地10 mlを添加して反応を停止させる。細胞を穏やかにブロー(blow)し、15 mlの試験管に入れて、1200 rpmで4分間遠心処理する。トリプシン/培地溶液を除去し、BRLカタログ番号12430-054の培地(500 ml DMEM (高グルコース)) 5 ml、10% FBS 50 ml、5%ジェネティシンG418 (50 mg/ml, BRL 10131-035)、MEM非必須アミノ酸(100× BRL #11140-050) 5 mlおよびペン・ストレップ(pen-strep) (BRL #15140-148) 5 mlを添加しる。細胞および培地を注意深く混合する。
【0053】
細胞をスクリーニング培地(500 ml DMEM (BRL #21063-029)、FBS (BRL #10082-147) 50 mlおよびMEM非必須アミノ酸(BRL #11140-050) 5 mlにより細胞6000〜7500個/100 μl/96ウェルプレートのウェル(細胞6〜7.5×105個/10 ml/プレート)でプレーティングする。プレートを終夜37℃の5% CO2インキュベータ中に入れる。
【0054】
1D. アッセイ法
翌朝、薬物(試験化合物またはインターフェロンα)をスクリーニングのために選択された終濃度に応じて、培地またはDMSO/培地により96ウェルU底プレート中で希釈する。一般的に、10マイクロモルから0.03マイクロモルまでの範囲の各試験化合物の6つの濃度を適用する。試験化合物の希釈液100 μlを、HCVレプリコン細胞を含有する96ウェルプレートのウェルに入れる。薬物なしの培地を陰性対照としていくつかのウェルに添加する。DMSOは細胞増殖に影響を与えることが知られている。それゆえ、DMSOで希釈された薬物が使われるなら、陰性対照(培地のみ)および陽性対照(インターフェロンα)のウェルを含む全てのウェルが単一用量のスクリーニングのため、同じ濃度のDMSOを含有しなければならない。プレートを3日間5% CO2加湿環境中37℃でインキュベートする。
【0055】
4日目に、NTPIIアッセイ法で定量化する。培地をプレートから流し、プレートをPBS 200 μlで1回洗浄する。次いでPBSをデカントし、プレートを紙タオルの中で軽くたたいて残りのPBSを除去する。細胞を予冷(-20℃)メタノール:アセトン(1:1) 100 μl/ウェルによりインサイチューで固定し、プレートを30分間-20℃に置く。
【0056】
固定液をプレートから流し、プレートを(約1時間)完全に風乾させる。乾燥させた細胞層の外観を記録し、有毒なウェル中の細胞密度を肉眼でスコア化する。あるいは、後述のMTSアッセイ法を用いて細胞生存性を評価することもできる。
【0057】
ウェルを室温で30分間ブロッキング溶液(PBS中10% FBS; 3% NGS) 200 μlでブロッキングする。ブロッキング溶液を除去し、ブロッキング溶液中で1:1000希釈されたウサギ抗NPTII 100 μlを各ウェルに添加する。次いでプレートを室温で45〜60分間インキュベートする。インキュベーション後、ウェルをPBS-0.05% Tween-20溶液で6回洗浄する。ブロッキング緩衝液で1:15,000希釈されたユウロピウム(EU)結合ヤギ抗ウサギ100 μlを各ウェルに添加し、30〜45分間室温でインキュベートする。プレートを再び洗浄し、各ウェルに増強液(Perkin Elmer #4001-0010) 100 μlを添加する。各プレートをプレート振盪機中で3分間振盪(約30 rpm)させる。95 μlを各ウェルから黒色プレートに移し、EUシグナルをPerkin-Elmer VICTORプレート読取機(EU-Lance)の中で定量化する。
【0058】
実施例2. 細胞毒性アッセイ法
実施例1のアッセイ法において検出されたレプリコン複製の減少が非特異的な毒性ではなくHCVレプリコンに対する化合物の活性によるものであることを確実にするため、細胞タンパク質アルブミンアッセイ法または細胞増殖アッセイ法を用いて化合物の細胞毒性を定量化する。
【0059】
細胞タンパク質アルブミンアッセイ法:
細胞タンパク質アルブミンの測定は、細胞毒性のマーカーとなる。細胞アルブミンアッセイ法から得られるタンパク質レベルを用いて、化合物の抗ウイルス活性の規準化参照を与えることもできる。このアッセイ法において、HCVレプリコン含有細胞を各種濃度のヘリオキサンチン、つまり高濃度では細胞毒性を有することが知られている化合物で3日間処理する。細胞を溶解し、細胞溶解物を用いて、プレートに結合されたヤギ抗アルブミン抗体に3時間室温(25℃〜28℃)で結合させる。次に、プレートを1×PBSで6回洗浄する。未結合のタンパク質を洗い流した後に、マウスモノクローナル抗ヒト血清アルブミンを適用して、プレート上のアルブミンに結合させる。次いでこの複合体を、二次抗体としてホスファターゼ標識抗マウスIgGにより検出する。
【0060】
細胞増殖アッセイ法:
細胞生存性をCELLTITER 96 AQUEOUS ONE Solution Cell Proliferation Assay (Promega, Madison WI)、つまりサンプル中の生存細胞数を測定するための比色アッセイ法により測定することもできる。この方法では、細胞を固定する前に、製造元の使用説明書にしたがってMTS試薬10〜20 μlを各ウェルに添加し、プレートを37℃でインキュベートし、OD 490 nmで読み取る。インキュベーション時間の間に、生細胞は、MTS試薬を、490 nmで吸光するホルマザン生成物に転換する。したがって、490 nmの吸光度は培養生細胞の数に正比例する。
【0061】
細胞毒性を判定するための細胞アルブミン法およびMTS法の直接的な比較は、以下のように得ることができる。細胞を上記のようにアルブミンの検出のために溶解する前に、各種濃度の試験化合物またはヘリオキサンチンで3日間処理し、MTS試薬を製造元の使用説明書にしたがって各ウェルに添加し、37℃でインキュベートし、OD 490 nmで読み取る。次いで、細胞アルブミンアッセイ法を上記のように行う。
【0062】
実施例3. p14の発見
この実験では、HCVレプリコンを発現するHuh-7細胞を8時間ACH-806 (EC50 14 nM)で処理する。次いでウイルスタンパク質を細胞溶解物から抗NS4A抗体で免疫沈降する。免疫沈降物の変性ゲル電気泳動の後に抗NS3抗体または抗NS4A抗体で免疫ブロッティングを行う。
【0063】
興味深いことに、ACH-806で処理された細胞では14 KDaのタンパク質バンド(p14)が検出される。かなり長時間の曝露では未処理細胞でもNS5B阻害剤処理細胞でもともに少量のp14を示すが、p14のバンドは、ACH-806で処理された細胞からの免疫沈降物において実質的にいっそう強い。免疫ブロットの曝露不足では処理によるNS4Aの減少が明らかである。ACH-806の存在下におけるp14バンドのかなりの増強から、このタンパク質産物がACH-806のような抗ウイルス化合物の存在下におけるレプリカーゼ複合体の阻害に関連しうることが示唆される。
【0064】
p14バンド強度が、添加される試験化合物の量に直接関連するかを判定するために、ACH-806に対するp14バンド強度の用量依存性をアッセイする。この実験は、ACH-806濃度が10 μM、2 μM、0.4 μMおよび0.08 μMのように異なることを除き、先の実験(すなわち、抗NS4A抗体との免疫沈降後、抗NS4Aまたは抗NS3での免疫ブロッティング)と同じように行う。p14がACH-806での処理によって用量依存的に蓄積し、NS3のレベルが用量依存的に減少することを認めた。
【0065】
実施例4. タグ付キメラNS4Aベクターの調製
C末端V5エピトープタグをコードするかつ5'-3'配列:

を有する、挿入断片NheI-NS4A-Cflag-EcoRIを、NheI-EcoRI消化された発現ベクターpCl-neo (PROMEGA, Madison, WI)に連結して、ベクターpCl-neo-NS4A-cFlagを得た。
【0066】
C末端V5エピトープタグをコードするかつ5'-3'配列:

を有する、挿入断片NheI-NS4A-V5-EcoRIを、NheI-EcoRI消化された発現ベクターpCl-neoに連結して、ベクターpCl-neo-NS4A-cV5を得た。
【0067】
実施例5. タグ付キメラNS4AベクターでのHUH-7細胞のトランスフェクション
6ウェルプレートの各ウェル中の培地約3 mLの中で、Huh-7細胞4〜5×105個をトランスフェクトする。FUGENE HDの製造元の説明書にしたがってリポフェクション試薬FUGENE HD (Roche Diagnostic Products) 12 μl、pCl-neo-NS4A-cV5 2 μgおよびpCl-neo-NS4A-cFlag 0.2 μgを添加し、インキュベートする。
【0068】
ベクターがウイルスベクターである場合、形質導入によって細胞にベクターを導入することができる。ウイルスベクターの一例は、関心対象の遺伝子(この場合にはタグ付-NS4A)を持つウイルスが産生されるレンチウイルス形質導入系である。このウイルスの感染によって関心対象の細胞株(huh-7、CHOなど)を形質導入する。これは、連続的な継代によって不要のウイルス残余物を除去した後に、安定的にトランスフェクトされた細胞株を生ずる。
【0069】
実施例6. FLISAおよびELISA
先の実施例に記述したようにpCl-neo-NS4A-cV5およびpCl-neo-NS4A-cFlagで同時トランスフェクトした細胞を培養液中で約50〜75%の集密度に増殖させ、次に約1〜約10 (好ましくは約5)マイクロモルの試験剤を含む培地中で約20時間インキュベートする。次いで培地を除去し、次いで培養細胞を適当な量(培養液中の細胞の量に依る)の界面活性剤溶解緩衝液で溶解する。
【0070】
溶解物のアリコットを、抗V5抗体で予めコーティングされたマルチウェルポリスチレンプレートのウェルに添加する。このアリコットは、ウェルの底を完全に覆うのに少なくとも十分な容量のものである。
【0071】
0.1〜5時間のインキュベーションの後、溶解物を除去し、プレートを緩衝液で洗浄し、フルオル-(このアッセイ法をFLISAにする)または酵素-(このアッセイ法をELISAにする)結合抗FLAG抗体の適切な希釈液(製造元の使用説明書による)を含有する適当な緩衝液を添加する。抗体製造供給元の使用説明書にしたがうインキュベーションの後、ウェルを洗浄する。FLISAなら、ウェル中の蛍光を次に適当な機器で読み取る。ELISAなら、抗体に結合された酵素の活性の検出に適した反応混合物を添加し、反応混合物中の基質に対する酵素作用の産物の量を測定することにより酵素活性を評価する。
【0072】
実施例7. 試験化合物
最初がACH-806である、以下の化合物を、実施例5のトランスフェクト細胞を用いたNS4A二量体化アッセイ法で試験し、NS4Aのホモ二量体化を促進する剤と同定した。これらの化合物を実施例1のレプリコンアッセイ法において試験した。これらの化合物は、実施例2のアッセイ法においてあまり細胞毒性を示さないものの、レプリコン複製を阻害することを認めている。
【0073】
1-ニコチノイル-3-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)チオ尿素

【0074】
1-(4-(ヘキシルオキシ)フェニル)-3-ニコチノイルチオ尿素

【0075】
N-(3-(4-フェニル-ベンジルオキシ)フェニルカルバモチオイル)ニコチンアミド

【0076】
1-(3-フルオロ-4-(ペンチルオキシ)フェニル)-3-ニコチノイルチオ尿素

【0077】
1-(フロ[3,2-c]ピリジン-2-カルボニル)-3-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)チオ尿素

【0078】
N-(3-(4-フェニル-ベンジルオキシ)フェニルカルバモチオイル)-2-モルホリノアセトアミド

【0079】
1-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(ピリミジン-5-カルボニル)チオ尿素

【0080】
1-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-3-(3-ベンジルフェニル)チオ尿素

【0081】
1-(3-(ベンジルオキシ)フェニル)-3-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-カルボニル)チオ尿素

【0082】
5-フルオロ-N-(4-オクチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(ピリジン-3-イル)チアゾール-2-アミン

【0083】
実施例8. ACH-806に耐性のレプリコン変種の特徴付け
8A. 耐性レプリコン変種の遺伝子型分析
耐性レプリコン細胞株のACH-806感受性の低下が特有のレプリコン突然変異によるものであったかを突き止めるため、本発明者らは、3つの耐性レプリコン細胞株(1次選択からの#22、#24、および#28)から抽出されたレプリコンの非構造タンパク質コード領域全体の配列を決定し、それらを親レプリコンの配列と並べた。いくつかの非保存突然変異がレプリコン全体に無造作に散在していたほかに、本発明者らは、耐性レプリコン細胞株から単離された三つ全てのレプリコンにおいて保存されている二つのセンス突然変異を見出した。一方の突然変異は、NS3のシステイン16 (ポリタンパク質の残基番号1042)のセリンとの置換(C16S) (表1)をもたらし、もう一方は、NS5Bのイソロイシン585 (ポリタンパク質の残基番号3004)のスレオニンとの置換(I585T)をもたらした。NS3におけるC16S突然変異は、ACH-806に対する耐性を与える突然変異であったので(下記参照)、その後の遺伝子解析はNS3領域に焦点を合わせた。残り5つの耐性レプリコン細胞株から抽出されたレプリコンのNS3領域を配列決定した後に、本発明者らは、それらのうちの2つ(1次選択からの#23および#25)がC16S突然変異を保有し、しかしながら、その他3つ(2次選択からの#6、#8および#9)が、NS3のアラニン39 (ポリタンパク質の残基番号1065)をバリンと置き換える異なる突然変異(A39V)を保有することを見出した(表1)。そのA39V突然変異は、いくつかのACH-806類似体で選択された耐性レプリコン変種において以前に検出されており、それらの類似体に対する耐性レプリコン細胞クローンの感受性の低下に関与することが同定されている(データ不掲載)。
【0084】
8B. 耐性表現型に関与する突然変異の決定
耐性レプリコン細胞株におけるACH-806に対する耐性の遺伝的基礎、具体的にはNS3におけるC16SおよびA39Vの役割、ならびにNS5BにおけるI585T 1の役割を詳しく調べるため、本発明者らは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する選択不能なレプリコンにこれらの突然変異を別々に導入した。親レプリコンRNA分子ならびにC16S、A39VおよびI585T変種レプリコンRNA分子のHuh-7細胞へのトランスフェクションの後、全てのレプリコンの複製能を、方法および材料に記述したように測定した。A39V突然変異を保有するレプリコンRNAは、その親と同じくらい効率的に複製したのに対し、C16SおよびI585T突然変異は複製能のわずかな減少(親レプリコンの約75%の複製能)を引き起こした。ACH-806に対するおよび他のクラスの阻害剤に対するこれらの4つのレプリコンの感受性を並べて比較し、表2にその結果を要約する。I585T突然変異はどの化合物の効力にも有意な影響を及ぼさなかった。C16SおよびA39V突然変異は、その一方で、ACH-806のEC50値をそれぞれ12倍および14倍に増大した。対照的に、それらの突然変異のいずれも他の対照阻害剤の効力に有意な影響を及ぼさなかった。さらに、C16S突然変異もA39V突然変異もともに保有するレプリコン変種も15種作出されたが、Huh-7細胞において効率的に複製することができなかった。
【0085】
ACH-806に対する耐性を与えるうえでのC16SおよびA39Vの役割をさらに確認するため、本発明者らは、neo遺伝子および選択不能なレプリコンとは異なる適応突然変異を保有する選択可能なレプリコンに、別々に、両方の突然変異を導入した。親レプリコンRNA、C16SレプリコンRNAおよびA39VレプリコンRNAのHuh-7細胞へのトランスフェクションの後、G418とACH-806の両方の処理の下で形成されたコロニーの数によって評価した場合の、ACH-806に対するこれらの3つのレプリコンの感受性を、並べて比較した。この場合もやはり、ACH-806に対するC16SまたはA39Vレプリコン変種の感受性の約10倍の低下を認めた。
【0086】
第三のアプローチである断片クローニングを用いて、C16S突然変異の役割を補強し、ACH-806に対する耐性を与えるうえでの他の非コンセンサス突然変異の役割を除外した。NS3、NS4AおよびNS4Bの一部のコード領域を網羅する約3 kbの断片を、ACH-806耐性クローン#28から単離された総RNAのRT-PCRによって増幅した。PCR産物を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する選択不能なレプリコンにクローニングした。レプリコンRNA分子を、個々の8クローンから作出し、Huh-7細胞にトランスフェクトして、ルシフェラーゼ活性により複製能を判定した。8クローンから、2つは効率的に複製することができた。これらの2つのクローンにクローニングされた断片全体の配列決定から、他の非コンセンサス突然変異に加えてC16S突然変異の存在が確認された。次いで、これらの2つのクローンのうち1つでのNS3のアミノ酸残基においてセリンを、部位特異的突然変異誘発法によりシステインに転換し戻し、他の非コンセンサス突然変異は変えなかった。得られたこのレプリコン[Luc/N3-4AR(C16)]の複製能は、既述のように測定されたその親[Luc/N3-4AR(S16)]の95%の複製能であった。Huh-7細胞へのトランスフェクションの後、両方のレプリコンの感受性を比較した。NS3のアミノ酸残基番号16でのセリンのシステインへの逆戻りは、ACH-806に対するレプリコンの感受性を約10倍に増大し、他のクラスのHCV阻害剤に対する感受性を維持した(表3)。類似の結果は、A39V突然変異を保有する耐性細胞株に由来するNS3、4Aおよび4Bの一部を含有する断片でも得られた(データ不掲載)。要約すれば、三つのアプローチはいずれも、C16SまたはA39V突然変異のどちらか1つを保有するレプリコン変種においてACH-806に対する感受性の10〜15倍の減少を生じ、耐性細胞クローンの場合に認められたものに類似の値がACH-806の選択下で明らかになった(表1)。ゆえに、本発明者らは、HCVレプリコンにおけるC16S突然変異またはA39V突然変異のどちらでもACH-806に対するレプリコン耐性を与えるのに十分であると結論付ける。
【0087】
8C. ACH-806と他のクラスのHCV阻害剤との間の交差耐性はない
上記の研究において、本発明者らは、他のクラスのHCV阻害剤に対するACH-806耐性レプリコン変種とその親レプリコンとの間の感受性の有意差がないことを示した(表2〜3)。さらに、IFNおよびリバビリンに対するACH-806耐性レプリコン細胞株の感受性も親細胞株と同様であった(データ不掲載)。ACH-806と他のクラスのHCV阻害剤との間の交差耐性がないことを、他のクラスのHCV阻害剤に耐性のレプリコン細胞株のACH-806に対する感受性の評価によってさらに評価した。HCV阻害剤の各々に耐性のレプリコン細胞株をHuh-9-13細胞株での選択によって得た。耐性レプリコン細胞株は、その誘発剤に強い耐性(EC50>20の倍変化)を示し、他者らにより既報の特徴となる突然変異を保有していた(23、31、36、39、49、52) (表4)。これらの耐性レプリコン細胞株および親レプリコン細胞株のACH-806に対する感受性を並べて比較した場合、有意差は認められなかった(表4)。ゆえに、本発明者らは、ACH-806がヌクレオシドおよび非ヌクレオシドNS5Bポリメラーゼ阻害剤、ならびにNS3ポリメラーゼ阻害剤を含む本発明者らが試験した他のクラスの阻害剤と交差耐性ではないと結論付ける。
【0088】
(表1)ACH-806耐性レプリコン細胞株の表現型および遺伝子型

a. EC50の倍変化は、親レプリコン細胞株Huh-9-13で見られたそれの比較によって計算される。
b. Huh-9-13に対する3回の独立した実験からのμM単位のEC50±SDは、0.04±0.02 (ACH806) 、0.78±0.2である。
c. ND、未決定
【0089】
(表2)ACH-806および対照阻害剤に対する親および変異体レプリコン変種の感受性a

a. 示されるデータは、1回の実験しか行われなかったレプリコンLuc/NS3-A39Vのものを除き2回の独立した実験の結果の平均±標準偏差である。
b. EC50およびEC90の倍変化はLuc/親レプリコンで見られたそれの比較によって計算される。
【0090】
(表3)ACH-806および対照阻害剤に対するC16S突然変異ありおよびなしの変異体レプリコン変種の感受性a

a. 示されるデータは、2回の独立した実験の結果の平均±標準偏差である。
b. FC、Luc/NS3-4R(C16)レプリコンで見られたものに対するEC50またはEC90の倍変化。
【0091】
(表4)ACH-806に対する他の耐性細胞株の感受性

a. EC50の倍変化は、親レプリコン細胞クローンHuh-9-13で見られたそれの比較によって計算される。
b. Huh-9-13に対する2回の独立した実験からのEC50±SDは、0.04±0.03 μM (ACH-806)、0.61±9.14 μM (VX-950)、1.2±0.61 nM (BILN 2061)、1.16±1.22 μM (NM 107)、0.56±0.17 μM (NI-1)および1.37±0.56 μM (NNI-1)である。
c. 各種の阻害剤耐性レプリコンにおいて検出された特異的突然変異を括弧内に示す。
d. ND、未決定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の各々が、N末端およびC末端を含み、かつHCV NS4Aタンパク質およびタンパク質タグから本質的になる連続アミノ酸配列をさらに含み、
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグとは異なるタンパク質タグである、
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に同時発現する細胞。
【請求項2】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、第一の濃度で細胞内に発現され、第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、第二の濃度で細胞内に発現され、
該第一の濃度が、該第二の濃度のおよそ一桁分の範囲内にある、
請求項1記載の細胞。
【請求項3】
第一の濃度および第二の濃度がおよそ等モルである、請求項2記載の細胞。
【請求項4】
第一および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の異なるタンパク質タグが、エピトープタグ、蛍光タグ、親和性タグおよび酵素タグから独立して選択される、請求項2記載の細胞。
【請求項5】
第一および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の異なるタンパク質タグが、FLAG、V5、c-myc、Tab2もしくはHAエピトープタグ、GFP、YFP、CFPもしくはOFP蛍光タグ、ルシフェラーゼタグ、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジン結合ペプチド、ポリスチレン結合ペプチドもしくはポリ(His)親和性タグ、およびグルタチオン-s-トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼもしくはビオチンリガーゼ酵素タグから独立して選択される、請求項4記載の細胞。
【請求項6】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグであり、
Xaaが、システイン以外のアミノ酸である、
請求項2記載の細胞。
【請求項7】
システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグが、システイン-システイン-プロリン-グリシン-システイン-システインタグである、請求項6記載の細胞。
【請求項8】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、
下記式

の化合物と共有結合を形成できる原核生物ヒドロラーゼ変種であり、
式中、Rが、ビオチン、PEG-ビオチンまたはフルオルから選択される、
請求項2記載の細胞。
【請求項9】
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、HCV NS4Aタンパク質および式中Rがフルオルである下記式

の化合物と共有結合を形成できる原核生物ヒドロラーゼ変種タグから本質的になる、連続アミノ酸配列を含み、
タグ付HCV NS4Aタンパク質の第一の画分が、式中Xが第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質をもたらす第一のフルオルである下記式


の化合物に共有結合しており、
タグ付HCV NS4Aの該第一の画分が、細胞内に第一の検出可能な濃度で存在し、かつ
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の第二の画分が、式中Yが第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質をもたらす、Xと同じものではない第二のフルオルである下記式

の化合物に共有結合しており、
該第一の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、該第二の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質と二量体化された場合に、Yが、Xへの検出可能な周波数共鳴エネルギー転移能力を有し、
該第二の画分が、細胞内に第二の検出可能な濃度で存在し、かつ
該第二の濃度が、該第一の濃度と同じ桁のものである、
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞。
【請求項10】
第一の濃度および第二の濃度がおよそ等モルである、請求項9記載の細胞。
【請求項11】
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、式中Rがビオチン、PEG-ビオチンまたはフルオルから選択される下記式

の化合物と共有結合を形成できる原核生物ヒドロラーゼ変種を含み、
タグ付HCV NS4Aタンパク質の第一の画分が、式中Fがフルオルである下記式

の化合物に共有結合しており、
該第一の画分が、細胞内に第一の検出可能な濃度で存在し、かつ
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の第二の画分が、式中BがビオチンまたはPEG-ビオチンである下記式

の化合物に共有結合しており、
該第二の画分が、細胞内に第二の検出可能な濃度で存在し、かつ
該第二の濃度が、該第一の濃度と同じ桁のものである、
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞。
【請求項12】
第一の濃度および第二の濃度がおよそ等モルである、請求項11記載の細胞。
【請求項13】
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグを含み、
Xaaが、システイン以外のアミノ酸であり、かつ
タグ付HCV NS4Aタンパク質の第一の画分のタグが、第一の二ヒ素蛍光色素と安定的に複合体形成され、かつタグ付HCV NS4Aタンパク質の第二の画分のタグが、第二の二ヒ素蛍光色素と安定的に複合体形成し、
タグ付HCV NSAの第一の画分が、細胞内に第一の検出可能な濃度で存在し、かつ第二の画分が、細胞内に第二の検出可能な濃度で存在し、第二の濃度が第一の濃度と同じ桁のものであり、
第二の色素が第一の色素と同じものではなく、かつ第一の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が第二の画分のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質と二量体化された場合に、第二の色素が、第一の色素への検出可能な周波数共鳴エネルギー転移の能力を有する、
キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞。
【請求項14】
システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグが、システイン-システイン-プロリン-グリシン-システイン-システインタグであり、かつ
第一の濃度および第二の濃度がおよそ等モルである、
請求項13記載の細胞。
【請求項15】
第一の色素がF2F1AsHであり、
第二の色素がF4F1AsHである、
請求項13記載の細胞。
【請求項16】
真核生物細胞である、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞。
【請求項17】
培養哺乳動物細胞である、請求項16記載の細胞。
【請求項18】
ヒト肝細胞がんHuh-7細胞、アフリカミドリザルCOS細胞またはチャイニーズハムスター卵巣CHO細胞である、請求項17記載の細胞。
【請求項19】
C型肝炎ウイルス複製複合体を含まない、請求項1〜18のいずれか一項記載の細胞。
【請求項20】
前記細胞がHuh-7細胞であり、
第一のキメラタグ付HCV NS4Aのタンパク質タグがV5タグであり、かつ
第二のキメラタグ付HCV NS4Aのタンパク質タグがFLAGタグである、
請求項5記載の細胞。
【請求項21】
C型肝炎ウイルス複製複合体を含まない、請求項20記載の細胞。
【請求項22】
各タンパク質タグが、各キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のC末端に位置する、請求項1〜21のいずれか一項記載の細胞。
【請求項23】
各キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、一つまたは複数のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の発現を各々が指令する一つまたは複数の発現ベクターから発現され、
一つまたは複数の該ベクターが、各キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質に対して同じベクターまたは異なるベクターである、
請求項1〜22のいずれか一項記載の細胞。
【請求項24】
一つまたは複数の発現ベクターの少なくとも一つで一過的にトランスフェクトされた、請求項23記載の細胞。
【請求項25】
一つまたは複数の発現ベクターの少なくとも一つで安定的にトランスフェクトされた、請求項23記載の細胞。
【請求項26】
請求項19記載の複数の細胞を含む、細胞の培養物。
【請求項27】
請求項26記載の培養物の細胞の細胞溶解物。
【請求項28】
化学名1-ニコチノイル-3-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)チオ尿素を有する約6マイクロモルのACH-806を含む培地中約20時間のインキュベーションによって培養物を処理すると、細胞中またはその溶解物中において、その中における存在を第一のタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のタグ付HCV NS4Aタンパク質についての連結分子集合体中で検出することにより、またはその中における存在を第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質の両方についての連結分子集合体中で検出することにより、キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の二量体を検出することができる、請求項26記載の細胞の培養物。
【請求項29】
下記式

を有する6マイクロモルの1-ニコチノイル-3-(4-(ペンチルオキシ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)チオ尿素を含む培地中約20時間のインキュベーションによって複数の陽性対照培養物を処理すると、細胞中またはその溶解物中において、その中における存在を第一のタグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のタグ付HCV NS4Aタンパク質の両方についての連結分子集合体中で検出することにより、またはその中における存在を第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質の両方についての連結分子集合体中で検出することにより、キメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の二量体を検出することができる、請求項26記載の複数の培養物。
【請求項30】
陽性対照培養物のインキュベーションと並行してインキュベーションすると、複数の未処理陰性対照培養物の細胞中またはその溶解物中で前記二量体を検出することができない、請求項29記載の複数の培養物。
【請求項31】
以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進する物質を同定するためのアッセイ法:
請求項28記載の細胞の培養物を化合物とインキュベートする段階、および
キメラタグ付HCV NS4Aの二量体の存在の検出が、第一のタグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のタグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在を検出することにより、または第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在を検出することにより達成され、
培養物と化合物とのインキュベーションによるキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の二量体の存在の検出により、該化合物がHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定される、
培養物の細胞またはその溶解物中のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の二量体の存在または非存在を検出する段階。
【請求項32】
以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を複数の化合物の各々が促進する相対的程度を特徴付けるための方法:
請求項31記載のアッセイ法において、第一のタグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のタグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在、または第一のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質と第二のフルオル結合タグ付HCV NS4Aタンパク質の両方の連結分子集合体における存在が、シグナル強度について評価されるシグナルとして検出され、かつ
該アッセイ法においてより強いシグナルを生じる化合物が、該アッセイ法においてあまり強くないシグナルを生じる化合物よりも大きい程度にHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると特徴付けられる、
複数の化合物の各々を用いて該アッセイ法を行う段階。
【請求項33】
培養細胞におけるレプリコンに基づくアッセイ法においてHCV複製の阻害についてHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定された、一つまたは複数の化合物を試験する段階
をさらに含む、請求項31記載のアッセイ法。
【請求項34】
以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進する剤を同定するための方法:
タンパク質で異なってタグ付けされた二つのHCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞と試験剤とを、細胞内タンパク質と該試験剤との間の相互作用を可能にする条件の下で接触させる段階; および
該細胞と該試験剤とを接触させた後に、異なってタグ付けされた二つのHCV NS4Aタンパク質が、連結分子集合体にともに会合されるようになったと判定される場合、該試験剤がHCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定される、
該細胞と該試験剤とを接触させた後に、異なってタグ付けされた二つのHCV NS4Aタンパク質が連結分子集合体にともに会合されるようになるかどうかを判定する段階。
【請求項35】
前記細胞が、C型肝炎ウイルス複製複合体を含まない、請求項34記載の方法。
【請求項36】
各タンパク質タグが、各タンパク質でタグ付けされたHCV NS4Aタンパク質のN末端またはC末端に位置する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
各タンパク質でタグ付けされたHCV NS4Aタンパク質が、一つまたは複数のタンパク質でタグ付けされたHCV NS4Aタンパク質の発現を各々が指令する一つまたは複数の発現ベクターから発現され、
この一つまたは複数のベクターが、各タンパク質でタグ付けされたHCV NS4Aタンパク質に対して同じベクターまたは異なるベクターである、
請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が細胞培養物中のものである、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項34記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、一つまたは複数の発現ベクターの少なくとも一つで一過的にトランスフェクトされる、請求項34記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、一つまたは複数の発現ベクターの少なくとも一つで安定的にトランスフェクトされる、請求項34記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、ヒト肝細胞がんHuh-7細胞、アフリカミドリザルCOS細胞またはチャイニーズハムスター卵巣CHO細胞である、請求項34記載の方法。
【請求項43】
前記剤が、アシルチオ尿素化学種またはアミノチオアゾール化学種のものである、請求項34記載の方法。
【請求項44】
HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定された剤の特性をさらに試験する段階を含み、
さらに試験する該段階が、培養細胞におけるレプリコンに基づくアッセイ法で該剤がHCV複製を阻害する程度を評価する段階からなる、
請求項34記載の方法。
【請求項45】
HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定された前記剤の特性をさらに試験する段階を含み、
さらに試験する該段階が、インビボで前記剤がHCV複製を阻害する程度を評価する段階からなる、
請求項34記載の方法。
【請求項46】
原核生物細胞における複製と真核生物細胞におけるタンパク質発現とを含む機能に適合した、発現ベクターであって、
該ベクターが、適合性のある真核生物細胞へ導入されると、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を発現し、
該ベクターが、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質をコードする第一の別個の配列および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質をコードする第二の別個の配列を含み、
第一の別個の配列が、第一の別個の真核生物プロモーターに機能的に連結されており、かつ第二の別個の配列が、第一のプロモーターの配列と同じものまたは異なるものである配列を持つことができる第二の別個の真核生物プロモーターに連結されており、
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の各々が、N末端およびC末端を含み、かつその各々がHCV NS4Aタンパク質およびタンパク質タグから本質的になる連続アミノ酸配列をさらに含み、
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグとは異なるタンパク質タグである、
該発現ベクター。
【請求項47】
プラスミドベクターである、請求項46記載のベクター。
【請求項48】
ウイルスベクターである、請求項46記載のベクター。
【請求項49】
適合性のある真核生物細胞へ導入されると、第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、第一の濃度で該細胞内に発現され、
第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質が、第二の濃度で細胞内に発現され、
該第一の濃度が、該第二の濃度のおよそ一桁分の範囲内にある、
請求項46記載のベクター。
【請求項50】
第一の濃度および第二の濃度がおよそ等モルである、請求項47記載のベクター。
【請求項51】
第一および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の異なるタンパク質タグが、エピトープタグ、蛍光タグ、親和性タグおよび酵素タグから独立して選択される、請求項46記載のベクター。
【請求項52】
第一および第二のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質の異なるタンパク質タグが、FLAG、V5、c-myc、Tab2もしくはHAエピトープタグ、GFP、YFP、CFPまたはOFP蛍光タグ、ルシフェラーゼタグ、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジン結合ペプチド、ポリスチレン結合ペプチドもしくはポリ(His)親和性タグ、およびグルタチオン-s-トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼもしくはビオチンリガーゼ酵素タグから独立して選択される、請求項46記載のベクター。
【請求項53】
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグであり、
Xaaがシステイン以外のアミノ酸である、
請求項46記載のベクター。
【請求項54】
システイン-システイン-Xaa-Xaa-システイン-システインタグが、システイン-システイン-プロリン-グリシン-システイン-システインタグである、請求項53記載のベクター。
第一のキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質のタンパク質タグが、下記式

の化合物と共有結合を形成できる原核生物ヒドロラーゼ変種であり、
式中、Rが、ビオチン、PEG-ビオチンまたはフルオルから選択される、
請求項46記載のベクター。
【請求項55】
第一および第二のキメラHCV NSA2タンパク質が細胞中で発現されるように、哺乳動物細胞にベクターを導入する段階を含む、請求項46記載のベクターを用いる方法。
【請求項56】
前記ベクターが、ウイルスベクターを用いたトランスフェクションまたは形質導入によって細胞に導入される、請求項56記載の方法。
【請求項57】
前記細胞が、培地中の培養物中のものであり、かつ
前記トランスフェクションが、リポフェクション試薬の有効量およびベクターの有効量を培地に添加することによって、およびベクターおよびリポフェクション試薬が添加された培地中の培養物をインキュベートすることによって達成される、
請求項57記載の方法。
【請求項58】
前記トランスフェクションが、培地中の培養物の細胞にベクターの有効量を添加することによって、およびベクターが添加された培地中の培養物をエレクトロポレーションに供した後にベクターが添加された培地中の培養物をインキュベートすることによって達成される、
請求項57記載の方法。
【請求項59】
以下の段階を含む、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進する剤を同定するための方法:
ttGFPでタグ付けされているキメラタグ付HCV NS4Aタンパク質を細胞内に発現する細胞と試験剤とを、細胞内タンパク質と該試験剤との間の相互作用を可能にする条件の下で接触させる段階; および
該細胞と該試験剤とを接触させた後にタグ付HCV NS4Aタンパク質が自己会合するかどうかの判定が、該試験剤との接触前後の395 nmでのttGFP励起極大の475 nmでのttGFP励起極大に対する比率を比較することによって行われ、該試験剤との接触前後の該比率の再現可能な差異によって、タグ付HCV NS4Aタンパク質が自己会合すると判定され、かつ
該細胞と該試験剤とを接触させた後にタグ付HCV NS4Aが自己会合すると判定される場合、該試験剤が、HCV NS4Aタンパク質のホモ二量体化を促進すると同定される、
該細胞と該試験剤とを接触させた後にタグ付HCV NS4Aタンパク質が自己会合するかどうかを判定する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−536326(P2010−536326A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506559(P2010−506559)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/061779
【国際公開番号】WO2008/134640
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(504378685)アキリオン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (22)
【Fターム(参考)】