説明

HCVの複製を抑制するスカベンジャー受容体B1に対する抗原結合性タンパク質

本発明は、HCV E2の結合に関与する領域として本明細書中に特定されているSR-BI標的領域に結合する抗原結合性タンパク質に関する。特定された標的領域は、配列番号1、2、3または4の一本鎖抗体が結合する領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVの複製を抑制するスカベンジャー受容体B1に対する抗原結合性タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願において引用されている参考文献は、特許請求されている本発明に対する先行技術であることを自認するものではない。
【0003】
世界の人口の約3%はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していると見積もられている(Wasleyら,Semin.Liver Dis.20:1−16,2000)。HCVへの曝露は少数の場合には明らかな急性疾患を引き起こすが、ほとんどの場合には、該ウイルスは、肝炎を引き起こす慢性感染を確立し、肝不全および肝硬変へと徐々に進行させる(Straderら,ILAR J.42:107−116,2001)。疫学的調査は、肝細胞癌の発生におけるHCVの重要な役割を示している(Straderら,ILAR J.42:107−116,2001)。
【0004】
HCVはいくつかの異なる遺伝子型(1〜6)および亜型(a〜c)に分類されうる。該遺伝子型および亜型の分布は地理的にもリスクグループ間においても様々である(Robertsonら,Arch Virol.143:2493−2503,1998)。
【0005】
HCVゲノムは、約3000アミノ酸の前駆体ポリタンパク質をコードする約9.5kbの一本鎖RNAよりなる(Chooら,Science 244:362−364,1989,Chooら,Science 244:359−362,1989)。該HCVポリタンパク質は、C−E1−E2−p7−NS2−NS3−NS4A−NS4B−NS5A−NS5Bの順序でウイルスタンパク質を含有する。該前駆体タンパク質の切断は、成熟した構造的および非構造的ウイルスタンパク質を与える(Neddermannら,Biol.Chem.378:469−476,1997)。
【0006】
その感染サイクルの一部として、HCVは細胞内に侵入する。宿主細胞のLDL受容体およびCD81分子は推定HCV受容体として特定されている。該LDL受容体は、ウイルスに付随するLDL粒子への結合を介してウイルスのインターナリゼーションを媒介すると示唆されている(Agnelloら,Proc.Natl Acad.Sci U.S.A.96:12766−12771,1999)。CD81分子は、HCV遺伝子型1a由来の組換えエンベロープタンパク質E2に基づいて、HCV E2に結合すると示唆されている(Pileriら,Science 282:938−941,1998)。
【0007】
HCVエンベロープ糖タンパク質E2は、CD81には無関係にヒト肝細胞癌細胞に結合することが判明した。ヒト肝細胞へのE2の結合をもたらす受容体がヒトスカベンジャー受容体クラスB型1(SRB1)として特定された(Scarselliら,The EMBO Journal 21:5017−5025,2002)。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、HCV E2結合に関与する領域として本明細書中に特定されているSRB1標的領域に結合する抗原結合性タンパク質に関する。特定されている標的領域は、配列番号1、2、3または4の一本鎖抗体が結合する領域である。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、第1可変領域と第2可変領域とを含んでなる単離された抗原結合性タンパク質に関する。第1および第2可変領域は、配列番号1標的領域、配列番号2標的領域、配列番号3標的領域および配列番号4標的領域から選ばれる1以上の標的領域に結合する。
【0010】
「単離(された)」に対する言及は、天然で見出されるものとは異なる形態を示す。そのような異なる形態は、例えば、天然で見出されるものとは異なる純度および/または天然では見出されない構造体でありうる。天然では見出されない構造体には、異なる領域が互いに組合されている組換え構造体、例えば、ヒトフレームワークスカフォールド上に1以上のマウスCDRが挿入されているヒト化抗体、抗体結合性タンパク質からの1以上のCDRが別のフレームワークスカフォールド内に挿入されたハイブリッド抗体、ならびに軽および重可変ドメインをコードする遺伝子がランダムに一緒に組合された天然ヒト配列に由来する抗体が含まれる。
【0011】
単離されたタンパク質は、好ましくは、血清タンパク質を実質的に含有しない。血清タンパク質を実質的に含有しないタンパク質は、ほとんど又は全ての血清タンパク質を欠く環境中に存在する。
【0012】
「可変領域」は重鎖または軽鎖からの抗体可変領域の構造を有する。抗体の重鎖および軽鎖可変領域は、フレームワーク上に隔てて存在する3つの相補性決定領域を含有する。相補性決定領域は主として、特定のエピトープの認識をもたらす。
【0013】
配列番号1、2、3または4に関して定義される標的領域は、対応する一本鎖抗体が結合するSRB1領域である。例えば、配列番号1標的領域は、配列番号1のポリペプチドが結合する領域である。
【0014】
特定されている標的領域と同じ標的領域へのタンパク質結合は、その特定されている標的領域への結合に関して配列番号1、2、3または4と競合する。例えば、SRB1への結合に関して配列番号1のポリペプチドと競合するタンパク質は配列番号1標的領域に結合する。
【0015】
「タンパク質」または「ポリペプチド」なる語は連続的なアミノ酸配列を示し、最小または最大のサイズの限界を示すものではない。タンパク質またはポリペプチド内に存在する1以上のアミノ酸は例えばグリコシル化およびジスルフィド結合形成のような翻訳後修飾を含有しうる。
【0016】
好ましい抗原結合性タンパク質はモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」なる語は、同じ又は実質的に同じ相補性決定領域および結合特異性を有する抗体の一群を示す。モノクローナル抗体における変異は、同じ構築物から抗体が産生された場合に生じるものである。
【0017】
モノクローナル抗体は、例えば、特定のハイブリドーマから、および該抗体をコードする1以上の組換え遺伝子を含有する組換え細胞から産生されうる。該抗体は2以上の組換え遺伝子によりコードされることが可能であり、この場合、例えば、1つの遺伝子は重鎖をコードし、1つの遺伝子は軽鎖をコードする。
【0018】
本発明のもう1つの態様は医薬組成物を記載する。該組成物は抗原結合性タンパク質と医薬上許容される担体とを含有する。
【0019】
本発明のもう1つの態様は、抗原結合性タンパク質をコードする組換え遺伝子を含有する核酸を記載する。組換え遺伝子は、適切な転写およびプロセシングのための調節要素(これは翻訳および翻訳後要素を含みうる)と共にポリペプチドをコードする組換え核酸を含有する。該組換え遺伝子は宿主ゲノムから独立して存在することが可能であり、あるいは宿主ゲノムの一部でありうる。
【0020】
組換え核酸は、その配列および/または形態により天然では存在しない核酸である。組換え核酸の具体例には、精製された核酸、天然で見出されるものとは異なる核酸が得られるよう一緒に組合された2以上の核酸領域、天然で互いに付随している1以上の核酸領域(例えば、上流または下流領域)の非存在が含まれる。
【0021】
本発明のもう1つの態様は、細胞におけるHCV複製の抑制方法を記載する。該方法は、抗原結合性タンパク質の有効量を該細胞に与えることを含む。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、患者におけるHCV複製の抑制方法を記載する。該方法は、抗原結合性タンパク質の有効量を該患者に投与することを含む。
【0023】
本発明のもう1つの態様は、抗原結合性タンパク質をコードする組換え核酸を含む組換え細胞を記載する。
【0024】
本発明のもう1つの態様は、抗原結合性タンパク質の製造方法を記載する。該方法は、抗原結合性タンパク質をコードする組換え遺伝子を含む細胞を、該ヌクレオチド配列が該細胞内で発現される条件下で成長させ、該抗原結合性タンパク質を単離することを含む。
【0025】
「単離(された)」なる語は1以上の細胞成分からの該タンパク質の分離を示す。好ましくは、該タンパク質は実質的に精製されている。
【0026】
個々の用語が互いに矛盾しない限り、「または」なる語は一方または両方の可能性を示す。時には、一方または両方の可能性を強調するために、「および/または」のような語が使用される。
【0027】
「含む(含んでなる)」のような非限定的用語は追加的な要素または工程を許容する。時には、追加的な要素または工程の可能性を強調するために、非限定的用語と共に又はそれを伴わずに「1以上」のような語が使用される。
【0028】
特に明示されない限り、単数表現は単数に限定されない。例えば、「細胞」は複数の「細胞」を除外するものではない。時には、複数の存在の可能性を強調するために、1以上のような語が使用される。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、本明細書に記載されている更なる説明から明らかである。記載されている実施例(具体例)は、本発明の実施において有用な種々の成分および方法を例示するものである。該実施例は、特許請求されている発明を限定するものではない。本開示に基づけば、当業者は、本発明の実施に有用な他の成分および方法を特定し使用することが可能である。
【0030】
発明の詳細な説明
本出願は、細胞へのHCV E2結合を抑制するために標的化されうる特定のSRB1領域を特定するものである。後記の実施例は、配列番号1〜4の一本鎖抗体がHCV E2結合を抑制しうること、配列番号2または4可変領域を含有するIgG分子がHCV E2結合を抑制しうること、および配列番号2がHCV複製を抑制しうることを示している。
【0031】
HCV E2結合の抑制は研究手段として及び治療上有用でありうる。研究手段の用途には、HCVの結合および複製を研究するための、ならびに同じ領域に結合する追加的な結合性タンパク質を特定するための手段としての、該結合性タンパク質の使用が含まれる。治療用途には、患者におけるHCVを治療し又はその始動を抑制するための、適当な薬理学的特性(例えば、効力、および許容されない毒性が存在しないこと)を有する化合物の使用が含まれる。
【0032】
標的SRB1は、膜貫通ドメインによりアミノ末端およびカルボキシル末端の両方において細胞膜につなぎ止められた大きな細胞外ループを含有する糖タンパク質である(Krieger Journal of Clinical Investigation 108:793−797,2001)。SR−B1は肝細胞およびステロイド産生性組織において高度に発現され、コレステロールおよびリン脂質の選択的細胞取り込みをもたらす(Actonら,Science 271:518−520,1996,Urbanら,J.Biol.Chem.275:33409−33415,2000)。
【0033】
配列番号9は、配列番号1、2、3および4の一本鎖抗体を得るために使用されるSR−B1のアミノ酸配列を示す。配列番号9は、抗原結合性タンパク質に関する参照のフレームとして使用されうる。
【0034】
I.抗原結合性タンパク質
抗原結合性タンパク質は、エピトープへの特異的結合をもたらす抗体可変領域を含有する。該抗体可変領域は例えば完全抗体、抗体フラグメント、および抗体または抗体フラグメントの組換え誘導体中に存在しうる。
【0035】
図1および2は、異なるタイプの抗原結合性タンパク質のいくつかの具体例を示す。図1は完全IgG分子および種々の抗体領域を例示する。IgG分子は4本のポリペプチド鎖を含有し、2本はより長い重鎖であり、2本はより短い軽鎖である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、定常領域および可変領域を含有する。可変領域内には、抗原特異性をもたらす超可変領域が存在する(例えば、Breitlingら,Recombinant Antibodies,John Wiley & Sons,Inc.およびSpektrum Akademischer Verlag,1999;ならびにLewin,Genes IV,Oxford University Press and Cell Press,1990を参照されたい)。
【0036】
2本の重鎖カルボキシル領域は、Fc領域を与えるようジスルフィド結合により連結された定常領域である。Fc領域は、補体およびマクロファージ活性化のような生物活性をもたらすのに重要である。Fc領域を構成する2本の重鎖ポリペプチドのそれぞれは、ヒンジ領域を介して異なるFab領域内に伸長する。
【0037】
高等脊椎動物においては、2つのクラスの軽鎖および5つのクラスの重鎖が存在する。軽鎖はκまたはλである。重鎖は該抗体クラスを決定し、α、δ、ε、γまたはμのいずれかである。例えば、IgGはγ重鎖を有する。γ、γ、γおよびγのような異なるタイプの重鎖に関するサブクラスも存在する。重鎖は、ヒンジおよび尾部領域に、特徴的なコンホメーションを付与する(Lewin,Genes IV,Oxford University Press and Cell Press,1990)。
【0038】
サブクラスは更に詳細に特徴づけられうる。例えば、IgGサブタイプは更に、IgG2aおよびIgG2bに分類されうる(Hahn G.S.(1982)Antibody Structure,Function and Active Sites.In Physiology of Immunoglobulins:Diagnostic and Clinical Aspects.S.E.Ritzmann(編)Alan Liss Inc.,New York;およびTurner M.W.(1983)Immunoglobulins.In Immunology in Medicine.A Comprehensive Guide to Clinical Immunology.2nd Edition.EJ.Holborow & W.G.Reeves(編)Grune & Stratton,London)。
【0039】
抗体可変領域を含有する抗体フラグメントには、Fv、FabおよびFab領域が含まれる。各Fab領域は、可変領域と定常領域とから構成される軽鎖、および可変領域と定常領域とを含有する重鎖領域を含有する。軽鎖は、定常領域を介してジスルフィド結合により重鎖に連結されている。Fab領域の軽鎖および重鎖可変領域は、抗原結合に関与するFv領域を与える。
【0040】
また、抗体可変領域は、一本鎖抗体および小型抗体(minibody)のような、可変領域を含有するタンパク質の一部でありうる。一本鎖抗体は、リンカーにより互いに連結された軽鎖および重鎖可変領域を含有する(図2を参照されたい)。該リンカーは例えば約5〜16アミノ酸でありうる。小型抗体は、約80kDaの二価二量体へと自己集合する一本鎖−CH3融合タンパク質である。
【0041】
可変領域の特異性は、より保存的な隣接領域(フレームワーク領域と称される)の間に介在する3つの超可変領域(相補性決定領域とも称される)により決定される。フレームワーク領域および相補性決定領域に関連したアミノ酸は、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991に記載されているとおりに番号付けされ、整列(アライン)されうる。
【0042】
II.配列番号1〜4標的領域
配列番号1、2、3および/または4が結合するSR−B1領域は、HCV E2の結合を抑制する標的領域となる。配列番号1〜4の一本鎖抗体は必ずしも、異なる領域に結合するわけではない。配列番号1および4は同一エピトープを認識するはずである。配列番号1および4は非常に高い相同性を有し、CDR3内に1つの異なるアミノ酸を有し、フレームワーク領域内に少数の若干の変化を有する。
【0043】
本明細書に記載の抗原結合性タンパク質は、HCV E2の結合に関与するSR−B1標的領域に結合する。HCV E2の結合の抑制は、HCV E2の結合に関与する部位との相互作用により生じると予想されるが、HCV E2の結合に関与する領域は、HCV E2の結合と直接的には相互作用しない領域を含みうる。例えば、標的化領域は、HCV E2に直接結合する異なる領域に適切なコンホメーションを付与するのに関与しうる。
【0044】
配列番号1〜4の一本鎖抗体は、HCV E2結合を抑制するのに使用されうる抗原結合性タンパク質の具体例である。配列番号1〜4は、標的化領域に結合する他の抗原結合性タンパク質を設計するためにも使用されうる。他の結合性タンパク質の設計は、例えば、配列番号1〜4に記載の配列情報を用いて配列番号1〜4を誘導体化すること、または同一領域に結合するタンパク質を実験的に特定するための手段として配列番号1〜4を使用することを含む技術を用いて行われうる。
【0045】
配列番号1〜4は、抗原結合性タンパク質内に組込まれうる可変領域配列および相補性決定領域配列を与える。図3Aおよび3Bは配列番号1〜4のアミノ酸配列を示し、種々の相補性決定領域、フレームワーク領域およびリンカー領域の位置を示す。
【0046】
抗原結合性タンパク質がHCV E2結合およびHCV複製を抑制しうることは、例えば後記実施例に記載されているような方法を用いて評価されうる。HCV E2結合を抑制する抗原結合性タンパク質は、他の抗原結合性タンパク質を得るための出発構築物として使用されうる。
【0047】
II.A.一本鎖抗体の修飾
既知配列(例えば、配列番号1、2、3または4)の一本鎖抗体は、安定性を増強するために及び抗原結合性を増強するために誘導体化されうる。安定性に影響を及ぼす要因には、定常ドメイン境界部における全IgG分子の境界部に隠れている疎水性残基の露出;分子間相互作用をもたらす、Fv表面上の疎水性領域の露出;およびFvベータシートの内部または通常はVとVとの境界部の疎水性残基が含まれる(Chowdhuryら,Engineering scFvs for Improved Stability,p.237−254 in Recombinant Antibodies for Cancer Therapy Methods and Protocols(WelschofおよびKrauss編)Humana Press,Totowa,New Jersey,2003)。
【0048】
安定性は、安定性に影響を及ぼす、問題のある残基を置換することにより、増強されうる。埋もれた疎水性残基および露出した疎水性残基は潜在的に問題である。問題のある残基を考慮した一本鎖抗体の安定性を増強するための技術は当技術分野でよく知られている(Chowdhuryら,Engineering scFvs for Improved Stability,p.237−254 in Recombinant Antibodies for Cancer Therapy Methods and Protocols(Welschof and Krauss編)Humana Press,Totowa,New Jersey,2003)。
【0049】
一本鎖抗原のアフィニティーは、例えば部位特異的突然変異誘発および鎖シャフリング(chain shuffling)のような技術を用いて増強されうる。部位特異的突然変異誘発は、1以上の相補性決定領域アミノ酸を置換し次いでより高いアフィニティーを有する抗体を特定するために行われうる(Azzazyら,Clinical Biochemistry 35:425−445,2002)。
【0050】
鎖シャフリングは、抗原に結合する可変領域の新規組合せを得るために行われうる。鎖シャフリングは、一本鎖抗体ライブラリーを得るために一本鎖抗体可変領域(例えば、V)を異なる可変領域(例えば、V)のレパートリーと組合せることにより行われうる。得られたライブラリーは、該抗原に特異的であることが判明している可変領域と、ランダムな可変領域とを含有する。増強されたアフィニティーを有する該抗原に結合する一本鎖抗体を特定するために、該ライブラリーを該抗原に対してパンニングすることが可能である。
【0051】
II.B.可変領域情報に基づく抗原結合性タンパク質の構築
配列番号1〜4の一本鎖抗体からの可変領域および相補性決定領域は抗原結合性タンパク質内に組込まれうる。可変領域を抗体または抗体フラグメント内に組込むための技術は当技術分野でよく知られている(例えば、Azzazyら,Clinical Biochemistry 35:425−445,2002,Persicら,Gene 187:9−18,1997)。そのような技術の一例は以下のとおりである。
【0052】
1)VおよびV領域に特異的なPCRプライマーを使用して、Fvドメインを別々に増幅する。該プライマーは、スプライス部位を与えるユニーク(唯一の)制限部位を導入するための及び追加的なアミノ酸をコードするための追加的なヌクレオチドを含みうる。
2)増幅された該可変コード領域を哺乳類発現カセット内に組込む。Vコード核酸は、ヒト重鎖(例えば、ヒトγ4重鎖)を発現させるためのカセットを含有するプラスミド内に挿入することが可能であり、Vコード領域は、軽鎖(例えば、ヒトγ軽鎖)を発現するベクター内に導入することが可能である。どちらのベクターも、リーダー配列と抗体の定常領域配列との間にイントロンを含有すべきである。該イントロンは、増幅されたFvドメインをクローニングするのに適したユニーク制限部位を含有すべきである。
3)IgGの産生は、293−EBNA内にVおよびV発現ベクターをコトランスフェクトすることにより達成されうる。
【0053】
抗体または抗体フラグメント内に可変領域を組込むためには、概説されている方法の多数の変法が用いられうる。そのような変法には、例えば、異なるタイプの抗体軽鎖および重鎖またはそれらのフラグメントをコードするベクターの使用、単一のベクターの使用、および異なるタイプの宿主細胞の使用が含まれる。
【0054】
相補性決定領域を抗体または抗体フラグメント内にグラフティングするための技術も当技術分野でよく知られている。そのような技術は全般的には、マウス可変領域をヒト抗体フレームワーク上にグラフティングし必要に応じて更なる修飾を行うことによるマウス抗体のヒト化に関して記載されている(例えば、O’Brienら,Humanization of Monoclonal Antibodies by CDR Grafting,p 81−100, From Methods in Molecular Biology Vol 207:Recombinant antibodies for Cancer Therapy:Methods and Protocols(WelschofおよびKrauss編)Humana Press,Totowa,New Jersey,2003)。
【0055】
別の実施形態においては、抗原結合性タンパク質は完全抗体、抗体フラグメント、または抗体もしくは抗体フラグメントの組換え誘導体であり、ここで、
a)第1可変領域は、配列番号1のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号1のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号1のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域は、配列番号1のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号1のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号1のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域であり、
b)第1可変領域は、配列番号2のアミノ酸31−37を含む第1CDR、配列番号2のアミノ酸52−67を含む第2CDRおよび配列番号2のアミノ酸100−114を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域は、配列番号2のアミノ酸164−176を含む第1CDR、配列番号2のアミノ酸192−198を含む第2CDRおよび配列番号2のアミノ酸231−241を含む第3CDRを含むV領域であり、
c)第1可変領域は、配列番号3のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号3のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号3のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域は、配列番号3のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号3のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号3のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域であり、
d)第1可変領域は、配列番号4のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号4のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号4のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域は、配列番号4のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号4のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号4のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域であり、
e)第1可変領域は配列番号1のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域は配列番号1のアミノ酸136−245よりなり、
f)第1可変領域は配列番号2のアミノ酸1−125よりなり、第2可変領域は配列番号2のアミノ酸142−251よりなり、
g)第1可変領域は配列番号3のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域は配列番号3のアミノ酸136−245よりなり、または
h)第1可変領域は配列番号4のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域は配列番号4のアミノ酸136−245よりなる。
【0056】
II.C.抗原結合性タンパク質の更なる同定
一本鎖抗体配列番号1、2、3または4は、標的化領域に結合する他の抗原結合性タンパク質を特定するために使用されうる。特定は、種々の技術、例えば、SRB1に結合する配列番号1、2、3または4と競合する抗原結合性タンパク質に関するスクリーニング、一本鎖抗体配列番号1、2、3または4により認識されるエピトープのマッピング、および他の抗原結合性タンパク質を選択するための該エピトープ自体の使用により行うことが可能である。
【0057】
競合アッセイにおいて使用する抗原結合性タンパク質は、SRB1を抗原として使用して製造されうる。一本鎖抗体、抗体または抗体フラグメントのような抗原結合性タンパク質を製造するための技術は当技術分野でよく知られている。そのような技術の具体例には、ファージディスプレイ技術の利用、げっ歯類抗体の特定およびヒト化、ならびにXenoMouseまたはTrans−Chromoマウスを使用するヒト抗体の製造が含まれる(Azzazyら,Clinical Biochemistry 35:425−445,2002,Bergerら,Am.J.Med.Sci.324(1):14−40,2002)。
【0058】
III.タンパク質の製造
抗原結合性タンパク質は、好ましくは、組換え核酸技術を用いて又はハイブリドーマの使用により製造される。組換え核酸技術はタンパク質合成のための核酸鋳型の構築を含む。ハイブリドーマは、抗原結合性タンパク質を産生する不死化細胞系である。
【0059】
抗原結合性タンパク質をコードする組換え核酸は、実際にはコード化タンパク質のための工場として働く宿主細胞内で発現されうる。該組換え核酸は、宿主細胞ゲノムから自律して又は宿主細胞ゲノムの一部として存在する、抗原結合性タンパク質をコードする組換え遺伝子を与えうる。
【0060】
組換え遺伝子は、タンパク質の発現のための調節要素と共にタンパク質をコードする核酸を含有する。一般には、組換え遺伝子内に存在する調節要素には、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、および場合によってはオペレーターが含まれる。真核細胞内でのプロセシングのための好ましい要素はポリアデニル化シグナルである。抗体関連イントロンも存在しうる。抗体または抗体フラグメントの製造のための発現カセットの具体例は当技術分野でよく知られている(例えば、Persicら.Gene 187:9−18,1997,Boelら,J.Immunol.Methods 239:153−166,2000,Liangら,J.Immunol.Methods 247:119−130,2001)。
【0061】
細胞内の組換え遺伝子の発現は、発現ベクターを使用して促進される。好ましくは、発現ベクターは、組換え遺伝子に加えて、宿主細胞内での自律的複製のための複製起点、選択マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位および潜在的な高コピー数をも含有する。抗体および抗体フラグメントの製造のための発現ベクターの具体例は当技術分野でよく知られている(Persicら,Gene 187:9−18,1997,Boelら,J.Immunol.Methods 239:153−166,2000,Liangら,J.Immunol Methods 247:119−130,2001)。
【0062】
所望により、当技術分野でよく知られた技術を用いて(Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley,1987−1998,Marksら,国際出願番号WO 95/17516(国際公開日1995年6月29日)を参照されたい)、抗体をコードする核酸を宿主染色体内に組込むことが可能である。
【0063】
組換え抗原結合性タンパク質の発現には、原核生物(例えば、大腸菌(E.coli)、バシラス(Bacillus)およびストレプトマイセス(Streptomyces))および真核生物(例えば、酵母、バキュロウイルスおよび哺乳類)に由来する細胞系を含む多種多様な細胞系が使用されうる(Breitlingら,Recombinant Antibodies,John Wiley & Sons,Inc.and Spektrum Akademischer Verlag,1999)。
【0064】
組換え抗原結合性タンパク質の発現のための好ましい宿主は、適切な翻訳後修飾を伴って抗原結合性タンパク質を産生しうる哺乳類細胞である。翻訳後修飾には、ジスルフィド結合形成およびグリコシル化が含まれる。もう1つのタイプの翻訳後修飾はシグナルペプチドの切断である。
【0065】
適切なグリコシル化は抗体機能のためには重要となりうる(Yooら,Journal of Immunological Methods 261:1−20,2002)。天然に存在する抗体は、重鎖に結合した少なくとも1つのN結合炭水化物を含有する(前掲)。他のN結合炭水化物およびO結合炭水化物が存在することが可能であり、抗体機能のためには重要となりうる(前掲)。
【0066】
効率的な翻訳後修飾のためには種々のタイプの哺乳類宿主細胞が使用されうる。そのような宿主細胞の具体例には、チャイニーズハムスター卵巣(Cho)、HeLa、C6、PC12および骨髄腫細胞が含まれうる(Yooら,Journal of Immunological Methods 261:1−20,2002,Persicら,Gene 187:9−18, 1997)。
【0067】
ハイブリドーマは、不死化された抗体産生細胞系である。ハイブリドーマは、例えばAusubel Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley,1987−1998、Harlowら,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988およびKohlerら,Nature 256,495−497,1975に記載されているような技術を用いて製造されうる。
【0068】
IV.併用療法
適当なSR−B1部位に結合する抗原結合性タンパク質は、HCVを抑制するために、およびHCV患者をそれ単独で又は1以上の他の抗HCV剤と組合せて治療するために使用されうる。現在承認されている抗HCV剤はインターフェロンα、およびリボバリンと組合されたインターフェロンαである。HCV感染を治療するためには、種々の形態のインターフェロンα、例えば組換えインターフェロンおよびペグリル化(peglylated)インターフェロンが使用されうる(De Francescoら,Antiviral Research 58:1−16,2003,Walkerら,Antiviral Chemistry & Chemotherapy 14:1−21,2003)。
【0069】
多種多様な抗HCV剤が種々の臨床開発段階にある。開発中の種々の抗HCV剤には、種々のHCV標的に対する物質が含まれる。種々のHCV標的の具体例には、HCVポリメラーゼおよびHCV NS3−NS4Aプロテアーゼが含まれる(De Francescoら,Antiviral Research 58:1−16,2003,Walkerら,Antiviral Chemistry & Chemotherapy 14:1−21,2003)。
【0070】
V.投与
医薬投与全般の指針は例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences 20th Edition,Gennaro編,Mack Publishing,2000;ならびにModern Pharmaceutics 2nd Edition,BankerおよびRhodes編,Marcel Dekker,Inc.,1990に記載されている。
【0071】
医薬上許容される担体は抗原結合性タンパク質の保存または投与を促進する。タンパク質溶液製剤を安定化するために使用される物質には、炭水化物、アミノ酸および緩衝化塩が含まれる(Middaughら,Handbook of Experimental Pharmacology 137:33−58,1999)。
【0072】
抗原結合性タンパク質は皮下、筋肉内または粘膜経路のような種々の経路により投与されうる。皮下および筋肉内投与は、例えば針またはジェット・インジェクターを使用して行われうる。粘膜運搬、例えば鼻腔内運搬は、吸着部位における、より長い保持時間をもたらす増強剤または粘膜付着剤の使用を含みうる(Middaughら,Handbook of Experimental Pharmacology 737:33−58,1999)。
【0073】
適当な投与計画は、好ましくは、患者の年齢、体重、性別および医学的状態;投与経路;所望の効果;ならびに使用する特定の化合物を含む、当技術分野においてよく知られた要因を考慮して決定される。用量は1.0μg〜1.0mg全タンパク質の範囲よりなると予想され、本発明の種々の実施形態においては、該範囲は0.01mg〜1.0mgおよび0.1mg〜1.0mgである。
【0074】
VI.実施例
以下に記載の実施例は本発明の種々の特徴を更に詳しく例示するものである。該実施例は本発明の実施のための有用な方法をも例示する。これらの実施例は、特許請求されている本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0075】
SRB1特異的ファージ抗体を得るための実験方法
CAT(Cambridge antibody technology)ファージライブラリーCSを、SRB1に結合する一本鎖抗体に関してスクリーニングした。該ライブラリーは、pIIIタンパク質のN末端への融合体として繊維状ファージの表面上に露出した重鎖および軽鎖抗体の可変部を含有する一本鎖抗体を提供する。V領域はSerおよびGlyのリンカーによりV領域に連結されている。
【0076】
SRB1受容体に特異的に結合する抗体を提示するファージを選択するために、ファージ富化のために全細胞を使用した。該ライブラリー(1011ファージ)を10個のCHO細胞と共に室温で1時間プレインキュベートし、ついで遠心分離した。上清中に存在する未結合ファージを回収し、ヒトSRB1受容体(配列番号9)を発現するCHO細胞と共に1時間インキュベートした。ついで細胞をPBSで数回洗浄し、溶出バッファー(トリエチルアミン、100mM)に25分間再懸濁させ、ついでTris.HClでpHを調節した。回収されたファージをTG1細胞への感染により増幅し、前記のとおりに更に2ラウンドの選択に付した。
【0077】
第3ラウンドの選択の後、3×10個のファージを回収した。陰性対照としてのCHO細胞と平行して、SRB1発現CHO細胞を使用して、これら(144個のファージ)のサンプルを、細胞に基づくELISAにおいて試験した。これらのうち、11個のファージクローンがSRB1に特異的であると評価された。ついでHCV E2結合能に関してクローンを試験した。
【実施例2】
【0078】
HCV E2の抑制
ファージコンテクストの外部で産生された、配列番号1、2、3および4をコードするクローンは、HepG2細胞へのHCV E2タンパク質の結合を抑制することが可能であった。HepG2はヒトヘパトーマ細胞系である。
【0079】
細胞を解離させ、リン酸緩衝食塩水(PBS)、0.2% BSA、10mM Hepes(洗浄バッファー)中で洗浄した。4×10個の細胞を種々の濃度(0.5−5−20−40μg/ml)の一本鎖抗体または無関係な一本鎖対照D5に室温で30分間結合させた。ついで細胞を組換え可溶性E2と共に室温で1時間インキュベートした。抗E2ラットmAb 6/1a(Patelら,J.Gen.Virol.81:2873−2883,2000)および二次抗ラットPE結合mAbにより結合を表示した。該細胞に付随する蛍光をFACS分析により測定した。
【0080】
図6に示すとおり、配列番号1、2、3および4の抗SRB1一本鎖抗体はHepG2細胞系へのE2タンパク質の結合を抑制した。縦軸は、抗体と共にプレインキュベートされていない細胞に対する、HepG2細胞へのE2タンパク質の結合の比率(%)を表す。該実験は二重に行い、該二重サンプルの平均が示されている。
【実施例3】
【0081】
配列番号2の一本鎖抗体を使用するHCV感染の抑制
HCV E2の結合を抑制しうる一本鎖抗体がHCVの複製をも抑制しうることを、配列番号2の一本鎖抗体を使用して実証した。
【0082】
外科的肝臓切除からの、単離されたヒト肝細胞を、3×10細胞/ウェルの密度で24ウェルマイクロプレートに播いた。細胞を付着させ回収し(24時間)、ついで培地を、異なる濃度の抗SRB1一本鎖抗体配列番号2(25および5μg/ml)または対照としての最高濃度(25μg/ml)の無関係な一本鎖抗体Fvを含有する新鮮なものと交換した。
【0083】
肝細胞を、示されている量の一本鎖抗体と共に37℃で1時間プレインキュベートし、ついで培地を、同量の一本鎖抗体および一定量(100μl)の感染性ヒト血清(HCV慢性患者由来のもの)を含有する新鮮なものと交換した。細胞を該ウイルスと共に18時間インキュベートして感染を生じさせ、ついでそれを洗浄し、4日間インキュベートした。全RNAを抽出し、ウイルス複製を定量的RT−PCRにより測定した。
【0084】
典型的には、感染の4日後に10〜10コピーのゲノム/ウェルが検出される。測定されたウイルスRNAが活性な複製に由来することを確かめるために、ウイルスレプリカーゼの小分子インヒビターを陽性対照として加えた。図7に示すとおり、配列番号2の抗SRB1一本鎖(scFVC11)は培養ヒト肝細胞のHCV感染を阻止しうる。
【実施例4】
【0085】
一本鎖抗体からのIgG産生
配列番号2または配列番号4の可変領域を含有するIgG4分子を産生させた。配列番号2または4可変領域を、VおよびV領域に特異的なプライマーを使用するPCRにより別々に増幅した。該プライマーは、ユニーク制限部位の導入のための追加的なヌクレオチド、およびスプライス部位に相当し追加的なアミノ酸をコードする塩基を含有していた。
【0086】
該増幅産物を2つの別々の哺乳類発現ベクターに導入した。Vは、ヒトγ4重鎖の発現のためのカセットを含有するpEU8.2内に挿入し、Vは、ヒトλ軽鎖の定常領域を発現するベクターpEU4.2内に導入した。どちらのベクターも、リーダー配列と抗体の定常領域配列との間にイントロンを含有する。該イントロンは、増幅された可変ドメインをクローニングするのに適したユニーク制限部位を含有する。
【0087】
IgGの産生は、Lipofectamin 2000試薬(Invitrogen)を使用して293−EBNA(Invitrogen)内にVおよびV発現ベクターをコトランスフェクトし8日間まで上清を集めることにより達成された。Hi−TrapプロテインAカラム(Amersham)を製造業者の指示に従い使用して、IgGを培地から精製した。
【実施例5】
【0088】
抗SRB1 IgGを使用するHCV E2タンパク質結合の抑制
配列番号2または4可変領域を含有する抗SRB1 IgGがHCV E2結合を抑制する能力を評価するために、ヒトSR−B1受容体を安定に発現するCho7細胞(Scarselliら,The EMBO Journal 21(19):50l7−5025,2002)を使用した。細胞をを解離させ、リン酸緩衝食塩水(PBS)、0.2% BSA、10mM Hepes(洗浄バッファー)中で洗浄した。4×10個の細胞を種々の濃度(60−12−2.4μg/ml)の抗体に室温で30分間結合させた。ついで細胞を組換え可溶性E2(Hisタグを含有するもの)と共に室温で1時間インキュベートした。
【0089】
抗ペンタHisビオチンコンジュゲートおよびストレプトアビジン−R−PEにより結合を表示した。該細胞に付随する蛍光をFACS分析により測定した。図8に示すとおり、抗SRB1 IgG4配列番号2および4はCho7細胞系へのE2タンパク質結合を抑制した。無関係なIgGを陰性対照として使用した。
【0090】
他の実施形態も特許請求の範囲内である。いくつかの実施形態が示され記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾が施されうる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1はIgG分子の構造を例示する。「V」は軽鎖可変領域を意味する。「V」は重鎖可変領域を意味する。「CL」は軽鎖定常領域を意味する。「CH」、「CH」および「CH」は重鎖定常領域を意味する。
【図2】図2は一本鎖抗体の構造を例示する。「V」は軽鎖可変領域を意味する。「V」は重鎖可変領域を意味する。
【図3A】図3Aおよび3Bは配列番号1、2、3および4の一本鎖抗体のアミノ酸配列アライメントを示すし、種々の相補性決定領域(「CDR」)、フレームワーク領域(「FW」)およびリンカーを示す。「SEQ1」は配列番号1を意味する。「SEQ2」は配列番号2を意味する。「SEQ3」は配列番号3を意味する。「SEQ4」は配列番号4を意味する。CDRは、この図に例示されているものより長くなりうる。記載されているアライメントにおいては、該CDRにおける共通のギャップが省略されている。
【図3B】図3Aおよび3Bは配列番号1、2、3および4の一本鎖抗体のアミノ酸配列アライメントを示すし、種々の相補性決定領域(「CDR」)、フレームワーク領域(「FW」)およびリンカーを示す。「SEQ1」は配列番号1を意味する。「SEQ2」は配列番号2を意味する。「SEQ3」は配列番号3を意味する。「SEQ4」は配列番号4を意味する。CDRは、この図に例示されているものより長くなりうる。記載されているアライメントにおいては、該CDRにおける共通のギャップが省略されている。
【図4A】図4A〜4Dは、配列番号1、2、3および4をコードする核酸配列を例示する。図4Aは、配列番号1をコードする核酸配列(配列番号5)を例示する。
【図4B】図4A〜4Dは、配列番号1、2、3および4をコードする核酸配列を例示する。図4Bは、配列番号2をコードする核酸配列(配列番号6)を例示する。
【図4C】図4A〜4Dは、配列番号1、2、3および4をコードする核酸配列を例示する。図4Cは、配列番号3をコードする核酸配列(配列番号7)を例示する。
【図4D】図4A〜4Dは、配列番号1、2、3および4をコードする核酸配列を例示する。図4Dは、配列番号4をコードする核酸配列(配列番号8)を例示する。
【図5】図5は配列番号9のアミノ酸配列を示す。
【図6】図6は、HepG2細胞系へのE2タンパク質結合を抑制する配列番号1、2、3および4の一本鎖抗体の能力を例示する結果を示す。縦軸は、一本鎖抗体と共にプレインキュベートされなかった細胞に対する、HepG2細胞へのE2タンパク質結合の比率を表す。対照として、無関係な一本鎖抗体を使用した(D5)。この実験は二重に行い、該二重サンプルの平均が示されている。
【図7】図7は、配列番号2の一本鎖抗体(「scFVC11」)による培養ヒト肝細胞のHCV感染の抑制を例示する結果を示す。定量PCRにより全RNAに関してウイルス複製を測定し、それをHCVコピー数/350000細胞として表した。該実験は三重ウェルにおいて行い、値は標準偏差と共に示されている。配列番号2の一本鎖抗体を2つの異なる濃度(25および5μg/ml)で試験した。対照として、無関係な一本鎖抗体(FV)を25μg/mlの濃度で使用した。感染の抑制の陽性対照として、HCVインヒビター(「Pol inhibitor」)を使用した。
【図8】図8は、CHO7細胞系へのE2タンパク質結合を抑制する配列番号2または配列番号4可変領域を含有するIgG4分子の能力を例示する結果を示す。陰性対照として、無関係なIgGを使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1可変領域と第2可変領域とを含んでなり、第1および第2可変領域が、配列番号1標的領域、配列番号2標的領域、配列番号3標的領域および配列番号4標的領域よりなる群から選ばれる1以上の標的領域に結合する、単離された抗原結合性タンパク質。
【請求項2】
a)第1可変領域が、配列番号1のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号1のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号1のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域が、配列番号1のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号1のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号1のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域であるか、
b)第1可変領域が、配列番号2のアミノ酸31−37を含む第1CDR、配列番号2のアミノ酸52−67を含む第2CDRおよび配列番号2のアミノ酸100−114を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域が、配列番号2のアミノ酸164−176を含む第1CDR、配列番号2のアミノ酸192−198を含む第2CDRおよび配列番号2のアミノ酸231−241を含む第3CDRを含むV領域であるか、
c)第1可変領域が、配列番号3のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号3のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号3のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域が、配列番号3のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号3のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号3のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域であるか、または
d)第1可変領域が、配列番号4のアミノ酸31−35を含む第1CDR、配列番号4のアミノ酸50−66を含む第2CDRおよび配列番号4のアミノ酸99−108を含む第3CDRを含むV領域であり、第2可変領域が、配列番号4のアミノ酸158−170を含む第1CDR、配列番号4のアミノ酸186−192を含む第2CDRおよび配列番号4のアミノ酸225−235を含む第3CDRを含むV領域である、請求項1記載の抗原結合性タンパク質。
【請求項3】
該結合性タンパク質が抗体またはそのフラグメントである、請求項2記載の結合性タンパク質。
【請求項4】
a)第1可変領域が配列番号1のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域が配列番号1のアミノ酸136−245よりなるか、
b)第1可変領域が配列番号2のアミノ酸1−125よりなり、第2可変領域が配列番号2のアミノ酸142−251よりなるか、
c)第3 V領域が配列番号3のアミノ酸1−119よりなり、第3 V領域は配列番号3のアミノ酸136−245よりなるか、または
d)第4 V領域が配列番号4のアミノ酸1−119よりなり、第4 V領域が配列番号4のアミノ酸136−245よりなる、請求項3記載の結合性タンパク質。
【請求項5】
該結合性タンパク質が抗体である、請求項4記載の結合性タンパク質。
【請求項6】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項5記載の結合性タンパク質。
【請求項7】
該結合性タンパク質が一本鎖抗体であり、該V領域が約5〜16アミノ酸長のアミノ酸リンカーにより該V領域に連結されている、請求項3記載の結合性タンパク質。
【請求項8】
a)第1可変領域が配列番号1のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域が配列番号1のアミノ酸136−245よりなるか、
b)第1可変領域が配列番号2のアミノ酸1−125よりなり、第2可変領域が配列番号2のアミノ酸142−251よりなるか、
c)第1可変領域が配列番号3のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域が配列番号3のアミノ酸136−245よりなるか、または
d)第1可変領域が配列番号4のアミノ酸1−119よりなり、第2可変領域が配列番号4のアミノ酸136−245よりなる、請求項7記載の結合性タンパク質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の抗原結合性タンパク質をコードする組換え遺伝子を含んでなる核酸。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項記載の結合性タンパク質と医薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載の結合性タンパク質の有効量を細胞に与える工程を含んでなる、該細胞におけるHCV複製の抑制方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載の結合性タンパク質の有効量を患者に投与する工程を含んでなる、患者におけるHCVの治療方法。
【請求項13】
該患者が、HCVに感染したヒトである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項9記載の核酸を含んでなる組換え細胞であって、該細胞内で該ヌクレオチド配列が発現される、組換え細胞。
【請求項15】
請求項14記載の組換え細胞を、該細胞内で該ヌクレオチド配列が発現される条件下で成長させ、該抗原結合性タンパク質を単離する工程を含んでなる、抗原結合性タンパク質の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−509657(P2008−509657A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519692(P2007−519692)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007160
【国際公開番号】WO2006/005465
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】