説明

HCVプロドラッグ処方

本発明は、イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソ−ブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩(I)とポリエチレングリコール(PEG)/ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックコポリマーとのホットメルト押出により調製される固体懸濁物を含む薬剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として4’−アジドシチジン−2’,3’,5’−トリ−イソ−ブチラート塩酸塩(I)を有する新規な処方、及びその処方の製造方法に関する。本組成物は、C型肝炎ウイルス(HCV)の治療に有用である。
【0002】
ヌクレオシド誘導体は、しばしば強力な抗ウイルス(例えば、HIV、HCV、単純ヘルペス、CMV)及び抗癌化学療法剤である。残念なことに、これらの有用性は、2つの要因によりしばしば限定される。第1に薬物動態特性が悪く、これがしばしば腸からのヌクレオシドの吸収及びヌクレオシド誘導体の細胞内濃度を限定しており、第2に不充分な物性のため、活性成分の送達を増強するために利用することができる処方オプションが制限される。
【0003】
プロドラッグ(P. Ettmayerら, J. Med. Chem. 2004 47(10):2393-2404;K. Beaumontら, Curr. Drug Metab. 2003 4:461-485;H. Bundgaard, Design of Prodrugs: Bioreversible derivatives for various functional groups and chemical entities in Design of Prodrugs, H. Bundgaard編, Elsevier Science Publishers, Amersterdam 1985;G.M. Paulettiら, Adv. Drug Deliv. Rev. 1997 27:235-256;R.J. JonesとN. Bischofberger, Antiviral Res. 1995 27:1-15及びC.R. Wagnerら, Med. Res. Rev. 2000 20:417-45)は、薬物の吸収を改善するための1つの手法を提供する。プロドラッグの典型例は、活性化合物の官能基に結合した生物学的に不安定な保護基を有する化合物を含む。糖残基上のヒドロキシ基のアルキル化、アシル化又は他の親油性修飾が、プロヌクレオチドの設計に利用されてきた。これらのプロヌクレオチドは、インビボで加水分解又は脱アルキル化することにより、活性化合物を生成させることができる。
【0004】
残念なことに、他の点では有用な多くのプロドラッグは、重大な処方上の難問を提示する、限られた水溶解度を示す。乏しい水溶解度の従来の解決法は、粒度を下げるための微粉化、及び可能ならば、水溶性の高い塩への中性化合物の変換を含む。
【0005】
固体分散体は、水溶解度の乏しい化合物の処方への1つのアプローチを可能にする。製剤応用に対する固体分散系の有用性が概説されている。(W.L. ChiouとS. Riegelman, J. Pharm. Sci. 1971 60(9):1281-1302;C. LeunerとJ. Dressman, Eur. J. Pharm. Biopharm. 2000 50:47-60;A.T.M. Serajuddin, J. Pharm. Sci. 1999 88(10):1058-1066;A. Forsterら, Pharm. Technol. Eur. 2002 14(10):27;J. Breitenbach, Eur. J. Pharm. and Biopharm. 2002:54:107-117;J. BreitenbachとM. Maegerlein, Drugs and the Pharmaceutical Sciences 2003 133:245-260及びK.A. Coppensら, Pharm. Technol. 2006 30(1):62-70)。固体分散系は、共融混合物、固溶体及び固体懸濁物、ガラス懸濁物及び溶液、結晶性担体中の無定形沈殿物を含む。固体分散体は、溶解性に乏しい活性成分を処方するのに便利で有効な手法である。固溶体又は固体懸濁物の崩壊と分散は、胃腸(GI)管内の活性成分(AI)の吸収を助ける、活性成分のコロイド粒子を提供する。
【0006】
固体分散体は、AIと担体との溶融混合物のホットメルト押出により、又はAIと担体との溶液からの溶媒の急速蒸発により調製することができる。ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、尿素及び糖類(例えば、マンニトール)を含む、種々の固体担体が固体分散体に取り込まれている(Leuner, 上記文献)。明らかに多くのオプションが存在するが、個々の活性成分について最適な特性を持つ担体分子を同定することが、依然として重要な課題である。
【0007】
最初でかつ最も精力的に研究された固体分散体処方には、グリセオフルビンとPEGがある(W.L. ChiouとS. Riegelman, 上記文献)。PEGは、非常に広い範囲の分子量にわたり利用可能であり、およそ2,000〜6,000の分子量のPEGは、グリセオフルビンとの固体分散体を調製するのに最適な物性を有する。グリセオフルビンは、水溶解度が限られており、経口経路では吸収が悪いことで有名である。グリセオフルビンとPEGとの固体分散体は、グリス−PEG(Gris-PEG)(登録商標)として市販されている。PEGは、あまり良好な界面活性剤ではないため、固体分散体への乳化剤、例えば、ポリソルベート80、ポリエチレンドデシルエーテル(ブリジ(Brij)(登録商標)35)又はドデシル硫酸ナトリウムの取り込みによって、溶解プロセスを強化した。PEG4000中の固体分散体としての処方による放出速度の増加は、オキサゼパム(J.M. Ginesら, Int. J. Pharm. 1996 143:247-253)、ピロキシカム(M. Fernandezら, Int. J. Pharm. 1993 98:29-35)、ゾルピデム(G. Trapaniら, Int. J. Pharm. 1999 184:121-130)、ケトプロフェン(M.V. MargaritとI.C. Rodriguez, Int. J. Pharm. 1994 108:101-107)、オキセパム(oxepam)(R. Jachowiczら, Int. J. Pharm. 1993 99:321-325)、ニフェジピン(H. Suzukiら, Chem. Pharm. Bull. 1997 45:1688-1693)、フェニトイン(R. Jachowicz, Int. J. Pharm. 1987 35:7-12)、フェノフィブラート(M.T. Sheuら, Int. J. Pharm. 1994 103:137-146)、プレドニゾロン(R. Jachowicz, Int. J. Pharm. 1987 35:1-5)及びグリブリド(G.V. Betageriら, Int. J. Pharm. 1995 126:155-160)を含む他の薬物について観測されている。
【0008】
1997年12月31日公開のWO 97/49384において、J. McGinityとF. Zhangは、治療化合物と高分子量ポリ(エチレンオキシド)(PEO)(場合により可塑剤としてポリエチレングリコールを含む)とのホットメルト押出可能な混合物を含む、製剤処方を開示している。この発明に利用されたPEOは、1,000,000〜10,000,000の分子量範囲であった。その後この出願は、米国特許第6,488,963号として特許付与された。
【0009】
2004年12月16日公開の米国公開番号2004/0253314において、H.-U. Petereitらは、活性薬剤成分と、40〜75重量%のアクリル酸の又はメタクリル酸のラジカル共重合C1-4アルキルエステルからなる(メタ)アクリレートコポリマーとを含む、溶融押出処方を開示した。
【0010】
2005年3月3日公開の米国公開番号2005/0048112において、J. Breitenbachらは、少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害剤、少なくとも1種の薬剤学的に許容しうる水可溶性ポリマー及び少なくとも1種の薬剤学的に許容しうる界面活性剤の固体分散体[ここで、水可溶性ポリマーは、少なくとも約50℃のTg(ガラス転移温度)を有する]を含む、固体薬剤投与剤形を開示している。
【0011】
2005年4月21日公開の米国公開番号2005/0044529において、J. Rosenbergらは、少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害剤、少なくとも1種の薬剤学的に許容しうる水可溶性ポリマー及び少なくとも1種の薬剤学的に許容しうる界面活性剤の固体分散体を含む、固体薬剤投与剤形を開示している。
【0012】
本発明は、イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソ−ブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩[(I)、本明細書において4’−アジドシチジン−2’,3’,5’−トリ−イソ−ブチラート塩酸塩とも呼ばれる]とポリエチレングリコール(PEG)/ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックコポリマーとのホットメルト押出により調製される固体懸濁物を含む、薬剤組成物に関する。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明は、4’−アジドシチジン−2’,3’,5’−トリ−イソ−ブチラート塩酸塩を経口投与するための薬剤組成物であって、組成物の総重量に基づいて約250mg〜500mgの4’−アジドシチジン−2’,3’,5’−トリ−イソ−ブチラート塩酸塩(I)を含む組成物を提供する。本化合物は、2005年1月2日発行の米国特許第6,846,810号に記載及び特許請求されている。親ヌクレオシドの製造方法は、T.C. Connollyらにより、2005年2月17日公開の米国公開20050038240に記載されている。
【0015】
トリアシル化ヌクレオシド(I)は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者のウイルス量を低下させることが見い出された。C型肝炎ウイルスは、世界中で慢性肝疾患の主な原因である(N. Boyerら, J. Hepatol. 2000 32:98-112)。HCVに感染した患者は、肝硬変や続く肝細胞癌を発症するリスクがあるため、HCVは、肝臓移植の主要な適応症である。(I)は結晶形で入手できるが、pH依存性の物理化学的特性を有する。更に本化合物は、水に曝露されると容易にゲルを形成するため、水溶液で処理するのが困難である。
【0016】
固体分散体処方により限られた水溶解度を持つ化合物を処方する幾つかの成功例が報告されているが、各AIは特異的性質を持ち、そして特定のAIに対して処方を最適化することには困難な実証的な試みを要する。最適な放出には、活性成分の有効な分散が必要である。ホットメルト処方は、活性成分と担体の両方が適切な熱安定性を示すことを必要とする。AIを含む有機アジドの熱安定性は、重要な懸念であった。更には、ウイルス性疾患の化学療法は、ウイルス量を急速に低下させ、かつ薬物耐性突然変異につながる状態を回避するために、しばしば高用量を必要とする。高濃度にするのに必要な投与剤形中の活性成分の量は大きく、そのため溶解度の問題を更に悪化させ、さもなければ使用することができる追加の賦形剤に対する許容量を限定している。
【0017】
無定形溶液及び懸濁物の成功の一因は、親水性担体の密接な存在であり、本薬剤は、活性成分の湿潤を促進して、粒子を包囲する拡散層中のAIの溶解度を上昇させる可能性がある(Forster, 上記文献)。乳化剤の配合は、ときに固溶体/固体懸濁物中の化合物の湿潤特性及び溶解度を改善することが見い出された。ラウリル硫酸ナトリウム及びトゥイーン80のような界面活性剤は、PEG4000、6000及び20,000からのナプロキセンの放出速度を高めた(C. LeunerとJ. Dressman, 上記文献)。
【0018】
今や驚くべきことに、ポリエチレングリコール(PEG)/ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックコポリマーが、(I)の固体懸濁物に望ましいマトリックスを提供し、そして他のマトリックスに比較して生物学的利用能の改善を提供することが見い出された。本明細書において提供される組成物は、ブロックコポリマーが無定形相であって、そこに結晶性(I)が懸濁している、無定形懸濁物である。本組成物は、融点が(I)より低いブロックコポリマーから、(I)とコポリマーの融点の間の温度に押出機の加熱域を維持して調製される。
【0019】
本明細書において使用されるとき「ブロックコポリマー」という用語は、異なるホモポリマーの2個以上のブロック(又はセグメント)を含むコポリマーのことをいう。ホモポリマーという用語は、単一モノマーを含むポリマーのことをいう。ブロックコポリマーには、A−B構造を持つ単純なジブロックポリマー及びA−B−A又はA−B−C構造を持つトリブロックポリマーを含む多くの変種が存在しうる。ポロキサマー(又はルトロール(Lutrol)(登録商標))は、Aセグメントが親水性ポリエチレングリコールホモポリマーであり、そしてBセグメントが疎水性ポリプロピレングリコールホモポリマーである、A−B−Aブロックコポリマーである。ポロキサマーは、BASF社から市販されている。ブロックの相対サイズに応じて、このコポリマーは、固体、液体又はペースト状でありうる。ルトロール(LUTROL)(登録商標)は、ポロキサマーの商標である。ポロキサマー及びルトロールという用語は、本明細書では互換的に使用される。ポロキサマー188は、約8600の平均分子量、52°〜54℃の融点、及び18〜29のHLB(親水性・親油性バランス)、そして1ミクロン〜500ミクロンの範囲の平均粒度を有する。ポリオキシエチレン単位は、分子量の約81%に相当する。ポロキサマー188は、水に易溶性である。HCVプロドラッグ処方において、ブロックコポリマーは、AIの望ましくないゲル化を引き起こす水分への曝露を限定する。(I)の固体分散体を製造するのに使用することができる他の固体担体は、ビタミンE TPGS(イーストマン・コダック(Eastman Kodak))、ゲルシレ(Gelucire)44/14、ゲルシレ50/13(ガッテフォッセ(Gattefosse)、ニュージャージー州)、ソルトール(Solutol)HS15、ポロキサマー407、ルトロールF77、クレモホール(Cremophor)RH40(BASF、ニュージャージー州)、ジパルミチン酸スクロース及びジステアリン酸スクロース(クローダ(Croda)、ニュージャージー州)を含む。
【0020】
本発明の1つの実施態様において、イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソ−ブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩(I)とPEG/PPGブロックコポリマーとのホットメルト押出により調製される固体懸濁物を含む薬剤組成物が提供される。本発明の別の実施態様において、固体懸濁物は、少なくとも1種の担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組合せられる。
【0021】
本発明の更に別の実施態様において、(I)とポロキサマーとの固体懸濁物である薬剤組成物が提供される。本発明の更に別の実施態様において、薬剤組成物は、少なくとも1種の担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組合せた、(I)とポロキサマーとの固体懸濁物である。本発明の更にまた別の実施態様において、追加の担体、希釈剤及び/又は賦形剤をも含むことができる、圧縮錠又はカプセルに含まれる、(I)とポロキサマーとの固体懸濁物が提供される。
【0022】
本発明の別の実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む薬剤組成物が提供される。本発明の更に別の実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む薬剤組成物が提供されるが、ここでこの固体懸濁物は、20〜40重量%のポロキサマー188を含む。
【0023】
本発明の別の実施態様において、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン(又はタルク)、ステアリン酸マグネシウムを含む、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む、圧縮錠が提供される。更にこの圧縮錠は、場合により、重炭酸ナトリウム、アルギニン又はマルトデキストリンを含むことができ、そして場合によりコーティング材料によって包囲することができる。
【0024】
本発明の更にまた別の実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む圧縮錠が提供されるが、ここでこの固体懸濁物は、約540mg以下の(I)及び約175〜約260mgのポロキサマー188、約125mg〜約225mgの微結晶性セルロース(アビセル(Avicel)(登録商標)PH101)、約70〜約125mgのマンニトール(パーテック(Parteck)(商標)200)、約90mg〜約150mgのクロスポビドン(ポリプラスドン(Polyplasdone)(登録商標)XL)、約10〜約40mgのコロイド状二酸化ケイ素(アエロジル(Aerosil)(登録商標)380)、約10〜約40mgのトウモロコシデンプン(又はタルク)、約10〜約25mgのステアリン酸マグネシウムを含む。本実施態様における錠剤は、場合によりオパドライ・イエロー03K12429でコーティングすることができる。
【0025】
本発明の更なる実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む圧縮錠が提供されるが、ここでこの固体懸濁物は、約537mg以下の(I)及び約230mgのポロキサマー188、約175mgの微結晶性セルロース、約72mgのマンニトール、約120mgのクロスポビドン、約24mgのコロイド状二酸化ケイ素、約24mgのトウモロコシデンプン(又はタルク)及び約18mgのステアリン酸マグネシウムを含み、そしてこの圧縮錠は、場合によりオパドライ・イエロー03K12429でコーティングされている。
【0026】
本発明の別の実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む圧縮錠が提供されるが、ここでこの固体懸濁物は、約537mg以下の(I)及び約179mgのポロキサマー188、約175mgの微結晶性セルロース、約123mgのマンニトール、約120mgのクロスポビドン、約24mgのコロイド状二酸化ケイ素、約24mgのトウモロコシデンプン及び約18mgのステアリン酸マグネシウムを含み、そしてこの圧縮錠は、場合によりオパドライ・イエロー03K12429でコーティングされている。
【0027】
別の実施態様において、(I)、ポロキサマー及び可塑剤の固体懸濁物を含む薬剤組成物が提供される。本実施態様において、可塑剤は、押出物の柔軟性、加工性、又は膨張性を増加させる。更に可塑剤は、生成物の溶融粘度を減少させ、そして弾性係数を低下させることができる。可塑剤は一般に、ブロックコポリマーのガラス転移温度又は軟化点を低下させることによって、押出過程での低い加工温度、小さい押出機トルク及び圧力を可能にする。可塑剤はまた、普通には溶融押出物の粘度を低下させる。本発明に使用することができる可塑剤の例は、トリアセチン、プロピレングリコール、約200〜約1,000の分子量を有するポリエチレングリコール(例えば、PEG4600)、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、植物油及び鉱油、脂肪酸、C6-18脂肪酸の脂肪酸グリセリド、例えば、トゥイーン80などを含む。
【0028】
別の実施態様において、(I)とPEG/PPGブロックコポリマーとの固体懸濁物の製造方法であって、(i)ブレンダー中で固体を混合する工程;(ii)生じた固体混合物をホットメルト押出機の加熱域中に導入する工程[ここで、加熱域の温度は、該ブロックコポリマーの融点より高く(I)の融点より低い範囲にある];(iii)生じた溶融物を押し出す工程;及び(iv)固体懸濁物を約20〜約2000ミクロンの間の粒度まで粉砕する工程を含む方法が提供される。本発明の別の実施態様において、粒度は、約100〜約600ミクロンの間まで粉砕される。
【0029】
本発明の別の実施態様において、(I)とポロキサマー188との固体懸濁物を含む薬剤組成物が提供されるが、ここでこの固体懸濁物は、約55〜約70%の間の(I)(w/w)、約5〜約12%のマンニトール、約13〜約16%の微結晶性セルロース、約8〜約12%のクロスポビドン、約1〜約3%のコロイド状二酸化ケイ素、約1〜約3%のトウモロコシデンプン(又はタルク)及び約1〜約2%のステアリン酸マグネシウムである。
【0030】
本発明の1つの実施態様において、担体、希釈剤及び賦形剤と一緒に固体懸濁物は、圧縮錠に配合される。賦形剤は、所望の性質を与えるために固体懸濁物と一緒に配合される。圧縮錠処方に普通に含まれる有用な賦形剤は、結合剤、界面活性剤、希釈剤、圧縮補助剤、崩壊剤、粘着防止剤、安定化剤、酸化防止剤、着色料、湿潤剤及び滑沢剤を含む。有用であることが分かった担体、希釈剤及び賦形剤は、製剤分野において周知であり、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, E.W. Martin編, Mack Publishing Company, 第19版, イーストン, ペンシルバニア州に記載されている。同じ処方内であっても幾つかの目的で、多くの成分を使用することができ、そして本明細書に含まれる賦形剤及び希釈剤は、本発明の本質を逸することなく、置換又は変更することができる。
【0031】
固体懸濁物を含む錠剤は、場合によりコーティングされる。膜コーティング剤は更に、乳白剤、色素、着色料などのような他のコーティング賦形剤を含んでもよい。このような材料の選択及び使用すべき量は、当該分野の範囲内であると考えられる。
【0032】
本明細書において使用されるとき賦形剤という用語は、処方に充分な加工及び圧縮特性を与えるか、又は完成した錠剤に所望の物理特性を与える、不活性物質のことをいう。
【0033】
希釈剤は、圧縮するのに実用的なサイズにするためにバルクを調整するのに加えられる不活性成分である。普通の希釈剤は、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、デンプン及び粉砂糖を含む。充分量のマンニトール、乳糖、ソルビトール、スクロース及びイノシトールのような希釈剤は、錠剤の崩壊を助け、チュアブル錠にしばしば使用される。微結晶性セルロース(アビセル(AVICEL)(登録商標))は、直接圧縮処方で賦形剤として使用されている。
【0034】
結合剤は、粉末に凝集性を与えるために粉末に加えるが、これによって圧縮錠がその完全性を保持することができる。結合剤として普通に使用される物質は、デンプン、ゼラチン及び糖類(スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜及び乳糖など)を含む。アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴムを含む天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースもまた、幾つかの処方において結合剤として使用することができる。
【0035】
滑沢剤は、ダイとパンチの表面への錠剤材料の付着を防止するために使用される。普通に使用される滑沢剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油及びPEGを含む。水溶性滑沢剤は、安息香酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムと酢酸ナトリウムとの混合物、塩化ナトリウム、ロイシン及びカーボワックス(Carbowax)4000を含む。
【0036】
流動促進剤は、錠剤粉末の流動特性を改善するために配合される。コロイド状二酸化ケイ素(アエロジル(登録商標))は、普通の流動促進剤である。タルクは滑沢剤/流動促進剤の複合剤として役立つことができる。
【0037】
崩壊剤は、投与後の粉砕を促進するか又は崩壊させるために加えられる、1つの物質、又は物質の混合物である。乾燥粉末化トウモロコシデンプン又はバレイショデンプンは、よくある崩壊剤である。これらは、水に対する高い親和性を持ち、吸湿すると膨潤して錠剤の破壊をもたらす。スーパー崩壊剤として知られている一群の物質は、クロスカルメロース、架橋セルロース、クロスポビドン、架橋ポリマー及びデンプングリコール酸ナトリウム、架橋デンプンを含む。クロスポビドン(ポリプラスドン(登録商標))は、合成の、不溶性ではあるが急速膨潤性の架橋N−ビニル−ピロリドンホモポリマーである。
【0038】
以下の実施例は、本発明の範囲内の化合物の製造法と生物学的評価を例証する。後述のこれらの実施例及び製造法は、当業者が、本発明をより明らかに理解し、かつ実施することができるように提供される。これらは、本発明の範囲を限定するものと考えてはならず、単にそれを例証し代表するものと考えるべきである。熟練した薬剤学の化学者であれば、互換的に使用することができる賦形剤、希釈剤及び担体を承知しており、これらの変形態様は、本発明の本質から逸することはない。
【0039】
実施例1
以下の組成物は、重量%に基づく処方を表す。
【0040】
【表4】

【0041】
当業者であれば、少量のAIを追加の希釈剤で置換することにより、異なる強度の錠剤又はカプセル剤を製造するために(I)の量は容易に調節することができること、及び(I)又は(I)の固体分散体の量を変更することが、本発明の本質から逸するものではないことを認識しているであろう。
【0042】
活性成分(I)とポロキサマー188、及び場合により可塑剤をブレンダー中で混合する。混合した固体をライストリッツ(Leistritz)二軸スクリュー押出機に供給した。加熱域を45、65、65、65、65、70、75及び80℃に調整する。域温度変動は、±5℃に維持した。これらの条件は、(I)を溶融することなくポロキサマー及び賦形剤を溶融するのに充分である。二軸スクリューを100±30回転/分で操作して、粉体流量は5〜20g/分の間、好ましくは10〜15g/分の間とした。このような条件下で、ポリマーが溶融して、活性成分の周りに均質なコーティングを形成する。押出物は、二列のポリエチレン容器に室温(15〜30℃)で回収する。押出された材料は、フィッツミル(Fitz Mill)を通し、そして粉砕された材料は、アビセルPH101、マンニトール、ポリプラスドンXL及びトウモロコシデンプン(場合によりトウモロコシデンプンの代わりにタルクを伴う)と混合する。最後にステアリン酸マグネシウムをこの混合材料に加える。粉砕された粒度は、100と2000ミクロンの間である。生じた混合物を打錠機に供給して、圧縮して核にする。
【0043】
コーティング懸濁物は、オパドライと精製水を合わせて、オパドライが完全に分散するまで45分間混合することにより、調製することができる。核を有孔コーティングパンに入れて、排気が40±5℃に達するまで間欠的に振盪しながら45±5℃の吸気で加熱する。次いで吸気温度を60±5℃まで上昇させ、1錠あたり乾燥量基準で25mgのフィルムコートを適用するように較正された吹き付けシステムを用いて、核を連続撹拌コーティング懸濁物でコーティングする。コーティング錠は、水分含量が2%未満になるまで微動により乾燥させ、次に錠剤をRTまで冷却して、気密な二重ポリエチレン被覆容器に貯蔵する。
【0044】
実施例2
以下の組成物を調製する:
【0045】
【表5】

【0046】
前記の説明、又は以下の請求の範囲に開示された、その具体的な形として、あるいは開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を成就するための方法若しくはプロセスに関して表現された特色は、適宜、別々に、又はこのような特色の任意の組合せとして、本発明をその多様な形で実現するために利用することができる。
【0047】
前述の発明は、明確さと理解を目的として、説明及び実例によって幾分詳細に記述されている。当業者には、変更と改変が添付の請求の範囲の範囲内で実行できることは自明であろう。したがって、当然のことながら、上記の記述は、説明のためのものであって制限するものではない。よって本発明の範囲は、上記説明への参照により決定すべきでなく、代わりに以下に添付の請求の範囲への参照により、このような請求の範囲が与えられる均等物の全容に沿って決定すべきである。
【0048】
本出願に引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、個々の特許、特許出願又は刊行物が個々に示されたのと同程度に、全ての目的についてその全体が引用例として本明細書に取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソ−ブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩(I)とポリエチレングリコール(PEG)/ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックコポリマーとのホットメルト押出により調製される固体懸濁物を含む薬剤組成物。
【請求項2】
更に、少なくとも1種の希釈剤、担体及び/又は賦形剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該PEG/PPGブロックコポリマーが、ポロキサマーである、請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項4】
更に、少なくとも1種の希釈剤、担体及び/又は賦形剤を含む、請求項3記載の薬剤組成物。
【請求項5】
該組成物が、カプセル又は圧縮錠に含まれ、かつ該錠剤又は該カプセルが、場合により1種以上の担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む、請求項3記載の薬剤組成物。
【請求項6】
該固体懸濁物が、(I)及びポロキサマー188を含む、請求項5記載の薬剤組成物。
【請求項7】
該固体懸濁物が、20〜40%(重量/重量)ポロキサマー188である、請求項6記載の薬剤組成物。
【請求項8】
固体懸濁物が、圧縮錠に含まれ、該錠剤が、更に場合により、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン(又はタルク)、ステアリン酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、アルギニン、マルトデキストリン及びコーティング材料よりなる群から選択される、1種以上の賦形剤を含む、請求項7記載の薬剤組成物。
【請求項9】
該圧縮錠が、下記:
【表1】


[ここで、該圧縮錠は、場合によりオパドライ(Opadry)イエロー03K12429でコーティングされている]を含む、請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項10】
下記:
【表2】


[ここで、該圧縮錠は、場合によりオパドライ・イエロー03K12429でコーティングされている]を含む、請求項9記載の薬剤組成物。
【請求項11】
下記:
【表3】


[ここで、該圧縮錠は、場合によりオパドライ・イエロー03K12429でコーティングされている]を含む、請求項9記載の薬剤組成物。
【請求項12】
(I)、ポロキサマー188及び可塑剤のホットメルト押出により調製される固体懸濁物を含む薬剤組成物。
【請求項13】
(I)とPEG/PPGブロックコポリマーとの固体懸濁物の製造方法であって、
(i) ブレンダー中で固体を混合する工程;
(ii) 生じた固体混合物をホットメルト押出機の加熱域に導入する工程[ここで、加熱域の温度は、該ブロックコポリマーの融点より高く(I)の融点より低い範囲にある];
(iii) 生じた溶融物を押し出す工程;及び
(iv) 固体懸濁物を約20〜約2000ミクロンの間の粒度まで粉砕する工程
を含む方法。
【請求項14】
固体懸濁物が、約100〜約600ミクロンの間まで粉砕される、請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2009−519289(P2009−519289A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544952(P2008−544952)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069262
【国際公開番号】WO2007/068615
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】