説明

HM74のオキシデカヒドロナフタレンモジュレーター

HM74を発現する宿主細胞を用いて以下の構造を有するアゴニスト活性を有するオキシデカリン様分子を得る。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞のシグナル伝達に含まれる必須膜タンパク質である。GPCRは、神経伝達物質、ホルモン、臭気物質および光を含む種々の細胞外シグナルに反応して、細胞中で第二メッセンジャー反応を開始するようにシグナルを変換することができる。多くの治療薬物は、GPCRを標的にしており、その理由は、それらの受容体が炎症、血管拡張、心拍、気管支拡張、内分泌および蠕動を含む様々な生理反応に介在するからである。
【0002】
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬および関節リウマチ(RA)といったような疾患は、一般にTヘルパー細胞、単球マクロファージおよび好酸球を含む炎症性の病因を有すると考えられる。コルチコステロイドを用いた現在の抗炎症治療は、喘息に有効であるが、代謝性のおよび内分泌の副作用を伴う。肺または鼻粘膜を通して吸収することができる吸入製剤についても、おそらく同じことが言える。RAまたはCOPDについて満足な経口治療は、今のところない。
【0003】
ヒト単球からのHM74の分子クローニングでは、HM74はケモカイン受容体であることが予測される(Nomura et al., Int. Immunol. (1993) 5(10): 1239 1249)。HM74は、主として骨髄、脾臓、扁桃および気管で発現する。
【0004】
また、ヒト細胞には、関連があるが異なる受容体HM74Aが含まれる。HM74とHM74Aのアミノ酸配列は、約95%が同一である。しかしながら、HM74Aのリガンドは知られているが、HM74のリガンドが知られていない。ナイアシンまたはニコチン酸は、HM74Aリガンドである(Wise et al., J. Biol. Chem. 278:9869-9874, 2003)。しかし、ナイアシンは、HM74の活性化因子としては劣る。
【0005】
マウスゲノムはHM74遺伝子でなくHM74A遺伝子を含む。
【0006】
ある状況下では、HM74およびHM74Aは、同時制御を示す。出願人らは、Taqman PCRを用いて、HM74およびHM74Aの発現が、顆粒球ではTNFαによって50倍、そして単球ではLPSまたはTNFαによって10〜20倍誘発されることを見出した。また、HM74およびHM74の発現は、喘息の病因に重要であることが知られているTH2サイトカイン、IL4またはIL13によって正常なヒト気管支上皮細胞において4〜5倍誘発される。HM74およびHM74Aの発現は、ヒト一次好酸球(human primary eosinophil)においてIL5によって上方制御される。最終的に、肺のHM74A発現は、ネズミの実験的な喘息モデルにおいて上方制御される。
【0007】
HM74およびHM74Aの限定された組織分布およびそれらの制御は、喘息、COPDおよびRAのような炎症性プロセスにおけるHM74およびHM74Aの役割を示唆している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
GPCRが疾患において役割があり、GPCRの活性を調節することによって疾患を治療する能力があるとすれば、GPCRの活性を含む疾患状態を治療する新しい組成物および方法を開発するためのGPCRリガンドの同定および特性評価を提供することができる。本発明は、HM74に関与する分子を同定および特性評価し、そして関連する疾患の同定および治療にその発見を適用するための組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、HM74AでなくHM74を活性化する分子に関する。
【0010】
本発明の別の態様において、HM74のモジュレーターの同定方法が開示されている。例えば、興味の方法は、化学的部分を設け、HM74を発現する細胞を供給し、そして化学的部分がHM74のシグナル伝達活性を調節するかどうかを、このような調節が本発明のアゴニストの存在下でまたは欠如下で生じるかどうかを含めて測定する工程からなる。関連した態様において、化学的部分には、ペプチド、抗体、アゴニスト、インバースアゴニストおよびアンタゴニストが含まれうるが、これらに制限されない。別の態様として、知られているモジュレーターは、競合アッセイにおいて他のモジュレーターを同定するために使用することができる。
【0011】
縮合環ジヒドロピラン(別名オキシデカヒドロナフタレンおよびオキシデカリン)は、HM74を活性化する。その化合物は、HM74を発現する細胞、例えばCHO細胞、293細胞およびL1.2細胞において選択的用量−反応性のカルシウム動員を生じる。
【0012】
興味のオキシデカリンは、以下の構造を有する:
【化1】

式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルケニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルキニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C3−C18アリール、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはその組み合わせである;またはC5−C18シクロアルキル、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基であるか;またはR2は、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである、であることができ;またはXおよびR2は、環を形成することができ;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【0013】
興味の化合物は、一般にアゴニストである。従って、興味の化合物は、候補薬として開発することができる。また、興味の化合物は、例えば競合アッセイによって、HM74を調節する他の分子を同定するために使用することができる。
【0014】
本発明の別の態様には、治療組成物が含まれ、ここで、このような組成物には、核酸、抗体、ポリペプチド、アゴニスト、インバースアゴニストおよびアンタゴニストが含まれる。またさらに、本発明の方法は、治療の必要な患者にこのような治療組成物を投与することによって疾患状態を治療し、そしてHM74シグナル伝達活性を調節する方法を含む。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明らかになる。さらに、種々の文献を以下に記載し、特定の方法または組成物をより詳細に記述する。これにより、それぞれの文献は、それぞれが個々に組み込まれて記述されている場合と同様に参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、HM74を活性化する分子の発見に基づく。
【0017】
HM74コード配列は、知られている(前出のNomura et al.)。HM74を得、製造し、そして使用する方法が本明細書に記載されている。HM74コード配列およびアミノ酸への変化は、HM74の知られている機能活性が悪影響を受けない限り、許容される。
【0018】
本化合物は、HM74を調節し、HM74のアゴニストであり、従って炎症、例えば喘息を特徴とする障害の候補薬である。
【0019】
また、本化合物は、HM74アンタゴニストのスクリーニングに使用することができる。例えば、HM74を発現する細胞を試験化合物、次いで本発明のアゴニストに暴露する。次いで、例えばカルシウム動員における試験化合物の効果を測定して、試験化合物が本発明のアゴニストによって誘発されるカルシウム動員を減らすかどうかを確かめることができる。
【0020】
例えばアゴニストおよびインバースアゴニストを同定するための他のこのようなアッセイは、本発明の範囲内に帰属することが意図される。
【0021】
興味のオキシデカリンは、以下の構造を有する:
【化2】

式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルケニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルキニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C3−C18アリール、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;またはC5−C18シクロアルキル、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基であるか;またはR2は、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである、であることができ;または、XおよびR2
は、環を形成することができ;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【0022】
興味の化合物は、一般にアゴニストである。従って、興味の化合物は、候補薬として開発することができる。興味の化合物は、例えば競合アッセイによって、HM74を調節する他の分子を同定するために使用することができる。
【0023】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。代表的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。炭化水素は、1つまたはそれ以上の不飽和三重結合を含むことができる。
【0024】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシである。
【0025】
「アリール」は、芳香族炭化水素の環である。例としては、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0026】
「ヘテロ原子」は、一般に、分子の典型的な原子とは異なる原子である。従って、炭化水素において炭素または水素ではないすべての原子はヘテロ原子である。一般に生物学的に許容しうるヘテロ原子には、酸素、硫黄および窒素が含まれる。
【0027】
用語「ヘテロアリール」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアリール基のことである。例としては、ピリジル、イミダゾリル、ピロリル、チエニル、フリル、ピラニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、ナフチリジニルおよびイソオキサゾリルである。
【0028】
「分枝」は、構造が1つまたはそれ以上の部位で1つまたはそれ以上の枝分れを含むことを意味する。枝分れは、上記定義されたR基または他の側基であることができる。
【0029】
用語「シクロアルキル」は、環式炭化水素のことである。いくつかの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。長さが変化した橋かけを含むことができる。
【0030】
「複素環」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたシクロアルキルである。例としては、ピロリジニル、ピペリジニルおよびピペラジニルである。
【0031】
用語「ヘテロアルキル」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアルキルである。エーテルは、ヘテロアルキルである。
【0032】
「置換された」は、基部となる有機基が1つまたはそれ以上の置換基を有することを意味する。従って、原子または基は、分子中で別の原子または基に置き換えられる。代表的な置換基としては、ハロゲン、C1−C8アルキル、−CN、アルコキシル、ヒドロキシル、スルフィド、スルフェート、スルホンアミド、アミン、アミド、アルコール、ケト基、C6−C18アリール、ハロゲン化C1−C18アルキル、亜硝酸基または硝酸基が含まれる。
【0033】
「ハロゲン」は、例えば塩素、フッ素または臭素である。
【0034】
「アルケニル」は、1つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含む炭化水素である。炭化水素は分枝していてもよい。
【0035】
用語「環」は、1つの、複数の環構造の1つの、または複数の、環構造を意味し、その際、複数の環の2つまたはそれ以上は縮合していてもよく、複数の環または複数の環の1つまたはそれ以上は、芳香族であってもよく、ヘテロ原子を含み、置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせであることができる。環は、二環式または多環式であってもよい。環は、長さが変化した橋かけを含むことができる。
【0036】
用語「側基」は、別の構造に結合した原子または分子を意味する。従って、側基は、上記定義されたR基、アルキル、アリール、シクロアルキル、等であることができる。
【0037】
用語「橋かけ」は、2つの構造間のリンカーのことである。例えば、ヘテロ原子を含むことができ、置換されていてもよく、分枝していてもよく、またはそれらの組み合わせであることができる非環式炭化水素、例えばアルキル、アルケニル等は、2つの環式炭化水素、例えばアリールまたはシクロアルキル基を結合することができる。また、橋かけは、環式構造の少なくとも2個の原子を結合する環式構造中に含んでいてもよい。分子内架橋は、0、1、2、3、4またはそれ以上の原子を含むことができる。分子内架橋は、直鎖、分枝であってもよく、そして置換を含むことができる。
【0038】
興味の化合物は、誘導体化して生物学的利用能を高めるプロドラッグを形成することができる官能基を含む。従って、本発明は、投与した後、代謝されて生物活性形態になるものは興味の活性化合物の変形を意図する。このような生物活性薬物の前駆体は、生体変換可能なキャリア(bioreversible carriers)、潜在的な薬物、ドラッグデリバリーシステムまたはプロドラッグとしても知られている(“Bioreversible Carriers in Drug Design" E.B. Roche, ed., Pergamon, NY, 1987;“Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems", Higuchi & Stella, eds., American Chemical Society, DC, 1975)。
【0039】
薬物の化学修飾は、脂質バリアを越えなければならない極性化合物の利用能をいかにして高めるか、通常、生体内で分解等に敏感である化合物をいかにして安定化させるかといったような薬力学の特定の態様に対処することを目的とする。
【0040】
プロドラッグを製造する別の理由としては、生物活性薬物の毒性、特異性の欠如、不安定性、吸収部位で代謝される、あまりに急速に吸収される、患者のコンプライアンス、例えば味覚に乏しいもしくは注射部位の疼痛、医師の承認が低いまたは製剤の問題が同様に含まれる。
【0041】
一般的な修飾は、エステル化であり、これはカルボキシル基の誘導体化に限らない。同様に、例えばアミン、イミン、硫黄を含む置換基およびアミドについてこのような誘導体を製造するための化学がある。
【0042】
エステルの場合、種々の置換基を、それに加えることができ、置換基は非分枝、環式または分枝炭化水素を含み、これは置換されていてもよく、1つまたはそれ以上の二重または三重結合を含むことができ、環構造を含むことができ、炭化水素骨格鎖は、1つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば窒素、硫黄または酸素、等を含むことができる。
【0043】
エステルを構成するためにR基を検討する場合、考慮すべき別の因子は、酵素切断への感受性である。従って、生物学的利用能にとって立体的電荷および立体配座的因子は、決定因子であるといえる。例えば、分枝アルキル基は、エステラーゼ活性部位への接近容易さにとって立体障害となり、それによって加水分解の速度を遅くすることができる。あまり望ましくなければ、生物学的利用能を遅らせるか、望ましければ生物学的利用能を持続させるかのいずれかである。
【0044】
別の状況では、薬物の水溶解度を高めることが望ましい。その目標を達成する置換基の例としては、スクシネート、スルフェート、ヘミスクシネート、ホスフェート、アミノ酸、アセテート、アミン等が含まれる。
【0045】
アミド、イミド、カルボネート、ヒダントイン等の窒素は、誘導体化することができる。窒素への反応に適切な基は、ヒドロキシメチル基または一般にヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基およびアシル基が含まれる。
【0046】
また、カルボニル基も誘導体化の部位である。誘導体の例は、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンおよびエノールエステルである。
【0047】
上記議論した誘導体は、薬物への置換基の共有結合を含むが、置換基は、別の形で、例えば水素結合、ファンデルワールス力、静電力、疎水的相互作用、等で薬物に結合することができる。
【0048】
誘導体化のさらに別の手段は、非酵素的機構によってプロドラッグから除去される置換基を用いることである。例としては、(2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル、マンニッヒ塩基、オキサゾリジン、分子内加水分解に触媒作用を及ぼす塩基性側鎖を有するエステルおよび分子内求核環化脱離反応を受けるエステルまたはアミドを含むプロドラッグが含まれる。環化機構は、フェノール、アルコールおよびアミンを含む薬物で利用可能である(“Prodrug Design" Testa & Mayer in “Encyclopedia of Pharmaceutical Technology," 2nd ed. V.3, Swarbrick & Boylan, eds., Marcel Dekker, 2002.)。
【0049】
従って、本発明は、知られている合成方法を実施して、一旦投与したら反応し、または生体内で作用してHM74活性を調節する化合物を生じる化合物を得るための興味の化合物のなんらかのさらなる修飾を企図する。
【0050】
本明細書における用語「同等のアミノ酸残基」は、2つまたはそれ以上の配列を分析でアラインメントした時にタンパク質配列において実質的に同じ位置を占めるアミノ酸を意味する。本発明の好ましいHM74ポリペプチドは、野生型HM74のものと十分に同一のアミノ酸配列を有する。「野生型」は、局所的またはより広い範囲にかかわらず定義された個体群中に存在する最も一般的な形態または対立遺伝子を意味する。本明細書で使用する用語「十分に同一」は、第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列が第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対して十分なまたは最小数の同一もしくは同等の(例えば、類似の側鎖を有する)アミノ酸残基またはヌクレオチドを含み、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能活性を有することである。例えば、HM74活性と少なくとも96%の同一性を有する共通の構造ドメインを含むアミノ酸またはヌクレオチド配列は、十分に同一であるものとして本明細書に定義される。
【0051】
本明細書において同義的に使用するように、「HM74活性」、「HM74の生物活性」または「HM74の機能活性は、標準技術に従ってインビボまたはインビトロで測定してHM74発現細胞においてHM74タンパク質、ポリペプチドまたは核酸分子によってもたらされた活性を意味する。HM74活性は、直接的な活性、例えば第2のタンパク質との結合もしくは第2のタンパク質上の酵素活性、または間接的な活性、例えばHM74と第2のタンパク質との相互作用が介在する細胞のシグナル伝達活性であってもよい。好ましい実施態様において、HM74活性には、少なくとも以下の活性の1つまたはそれ以上が含まれる:(i) HM74シグナル伝達経路においてタンパク質と相互作用する能力;(ii) HM74リガンドと相互作用する能力;(iii)活性化された時に宿主細胞を変化させる能力;(iv)本発明の分子を結合することにおける活性化;および(v)細胞内標的タンパク質と相互作用する能力。
【0052】
本発明の一態様において、HM74が活性化された時に反応を示す細胞中でHM74を発現することに関する。本明細書で使用するように、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えばmRNA)ならびにヌクレオチド類似体を用いて生成したDNAまたはRNAの類似体を含むものとする。核酸分子は一本鎖または二本鎖であってもよいが、二本鎖DNAであることが好ましい。
【0053】
「単離された」核酸分子は、核酸の自然供給源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。好ましくは、「単離された」核酸は、核酸が誘導された生物のゲノムDNA中で本来HM74をコードしている核酸の側面に位置する配列(すなわち、核酸の5'および3'末端に位置する配列)を含まない。単離されたHM74核酸分子は、核酸が誘導された細胞のゲノムDNA中で本来オープンリーディングフレーム核酸分子の側面に位置する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kbより少ないヌクレオチド配列を含むことができる。さらに、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、組換え技術によって作成した場合、他の細胞物質または培養基を実質的に含まず、または化学合成した場合、化学物質前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。
【0054】
本発明の核酸分子、例えばHM74をコードする核酸分子は、標準分子生物学技術および配列を用いて単離することができる(前出のNomura et al.)。HM74配列の全てまたは一部を用い、標準ハイブリッド形成およびクローン技術を用いてHM74核酸分子を単離することができる(例えば、Sambrook et al., eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載された通り)。
【0055】
本発明の核酸分子は、標準PCR増幅技術に従ってテンプレートとしてcDNA、mRNAまたはゲノムDNAおよび適切なオリゴヌクレオチドプライマを用いて増幅することができる。このように増幅された核酸を適切なベクターにクローニングし、DNA配列分析によって特性評価することができる。さらにまた、標準合成技術、例えば自動化されたDNA合成装置を用いてHM74ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを製造することができる。
【0056】
さらに、本発明の核酸分子は、HM74をコードする核酸配列の部分のみ、例えばリガンドがそれに結合した時に検出可能な細胞内事象が生じる細胞外ドメインおよび/または細胞内ドメインをコードするフラグメントを含むことができる。検出可能な細胞内事象は、HM74が正常なホスト細胞中で活性化された時に観察されるものであることが好ましい。
【0057】
「HM74の生物活性部分」をコードする核酸フラグメントは、HM74生物活性を有するポリペプチドをコードするHM74の部分を単離し、HM74タンパク質のコード部分を発現し(例えばインビトロの組換え型発現によって)そしてHM74のコード部分の活性を評価することによって作成することができる。
【0058】
本発明は、さらに遺伝コードの縮重のため開示されたHM74のヌクレオチド配列と異なるが、以前に開示されたものと実質的に同じHM74タンパク質をコードする核酸分子を包含する。
【0059】
HM74のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多形が個体群(例えばヒト個体群)に存在しうることが当業者ならば理解するであろう。HM74コード配列におけるこのような遺伝的多形は、対立遺伝子の自然変異(natural allelic variation)のため、個体群の中で個々に存在する可能性がある。対立遺伝子は、所定の遺伝子座で代替的に生じる一群の遺伝子の1つである。本明細書で使用するように、用語「遺伝子」および「組換遺伝子」は、HM74タンパク質、好ましくは哺乳動物のHM74タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子のことである。本明細書で使用するように、語句「対立遺伝子の変異型」は、HM74遺伝子座で生じたヌクレオチド配列またはそのヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドのことである。代替の対立遺伝子は、多くの異なる個体において興味の遺伝子を塩基配列決定することによって同定することができる。それは、ハイブリッド形成プローブを用いて種々の個体において同じ遺伝子座を同定することによって容易に実施することができる。いずれかおよびすべてのこのようなヌクレオチド変異および対立遺伝子の自然変異の結果でありHM74の機能活性と変わらないHM74中に生成したアミノ酸性多形または変異は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0060】
さらに、ヒトHM74の核酸分子と異なるヌクレオチド配列を有するが、実質的に同じ活性を有する他の種類(HM74同族体)からのHM74タンパク質をコードする核酸分子は、本発明の範囲内にあるものとする。対立遺伝子の自然変異型(natural allelic variants)および本発明のHM74 cDNAの同族体に対応する核酸分子は、標準ハイブリッド形成技術に従ってストリンジェントなハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成プローブとしてヒトcDNAまたはその部分を用いて本明細書に開示されたヒトHM74核酸との同一性に基づいて単離することができる。
【0061】
本明細書で使用するように、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する」は、ヌクレオチド配列がハイブリッド形成し、および典型的にハイブリッド形成されたまま残る洗浄するための条件を表わすものとする。このようなストリンジェントな条件は、当業者に知られており、そして“Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1 6.3.6.に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の好ましい非限定的な例は、約45℃で6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリッド形成、続いて50〜65℃で、0.2XSSC,0.1%SDS中で1回またはそれ以上洗浄する。ストリンジェントな条件下で配列HM74またはその相補体にハイブリッド形成された本発明の単離された核酸分子は、自然発生の(naturally occurring)核酸分子に対応することが好ましい。本明細書で使用するように、「自然発生の(naturally occurring)」核酸分子は、自然発生のヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子のことである(例えば、天然タンパク質をコードする)。
【0062】
個体群中に存在しうるHM74配列の対立遺伝子の自然発生変異型に加えて、熟練技術者は、さらに、突然変異によってヌクレオチド配列に変化をもたらし、それによってHM74タンパク質の生物活性を実質的に変えることなく、コードされたHM74のアミノ酸配列に変化させることができることを理解するであろう。従って、「非必須」アミノ酸残基でアミノ酸置換体をもたらすヌクレオチド置換体を作成することができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を実質的に変化させることなくHM74の野生型配列から変化させることができる残基である。「必須」アミノ酸残基は、実質的な生物活性に必要なものである。例えば、様々な種のHM74の中で保存されてないまたは半保存しかされてないアミノ酸残基は、活性にとって必須ではなく、従って改変のターゲットとなることが多い。二者択一的に、様々な種のHM74タンパク質の中で保存されたアミノ酸残基は、活性にとって必須であり、従って改変のターゲットとなることはあまりない。
【0063】
従って、本発明の別の態様は、活性に必須でないアミノ酸残基中に変化を含むHM74タンパク質をコードする核酸分子に関する。このようなHM74タンパク質は知られているアミノ酸配列と異なるが、生物活性を保持する。一実施態様において、単離された核酸分子は、知られているHM74アミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0064】
知られているHM74の配列と異なる配列を有するHM74タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コードされたタンパク質中に1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失を導入するように知られているHM74のヌクレオチド配列に1つまたはそれ以上のヌクレオチドの置換、挿入または欠失を導入することによって作成することができる。
【0065】
突然変異は、標準技術、例えば部位特異的突然変異生成法およびPCR仲介による突然変異生成によって導入することができる。1つまたはそれ以上の予測される非必須アミノ酸残基で、同類アミノ酸置換を行うことが好ましい。「同類アミノ酸置換」は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義される。そのファミリーには、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンおよびシステイン)、無極性の側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えばトレオニン、バリンおよびイソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。従って、HM74において予測される非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えることが好ましい。別法として、突然変異は、例えば飽和突然変異生成によってHM74コード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入することができ、そして生成した突然変異体は、活性を保持している突然変異体を同定するため、HM74生物活性についてスクリーニングすることができる。突然変異生成後、コードされたタンパク質を、組換え発現することができ、そしてタンパク質の活性を測定することができる。
【0066】
関心のある核酸を産生するために使用することができる修飾されたヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュェオシン、5−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリンが含まれる。
【0067】
HM74の機能に影響を与える1つの方法は、HM74の発現に影響を及ぼすことである。従って、転写レベルは、より小さいまたはより大きいレベルのHM74mRNAについて操作することができ、これが順に細胞表面でより小さいまたはより大きいレベルのHM74発現に至る。このような操作を実施する1つの方法は、例えば相同組換えによってHM74コード配列の付近でゲノム中の適当な部位に導入することができる調節可能なプロモーターを用いることである。
【0068】
従って、本発明の別の態様は、抗HM74抗体に関する。本明細書に使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性部分、すなわち特異的に抗原、例えばHM74を結合する抗原結合部位を含む分子のことである。HM74に特異的に結合する分子は、試料、例えば本来HM74を含有する生体試料においてHM74を結合するが、他の分子を実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性部分の例としては、抗体をペプシンのような酵素で処理することによって生成することができるF(ab)およびF(ab')2フラグメントが含まれる。本発明は、HM74を結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書に使用する用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、HM74の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位のイディオタイプまたはクローンを1種類しか含まない抗体分子の集団のことである。従って、モノクローナル抗体組成物は、典型的に特定のHM74タンパク質エピトープについて単一結合親和性を示す。
【0069】
抗体の様々な他の抗原結合形態は、フラグメント、キメラ抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、等を含めて当分野で知られているように製造することができる。
【0070】
本発明の別の態様は、ベクター、好ましくはHM74(またはその部分)をコードしている核酸を含む発現ベクターに関する。本明細書で使用するように、用語「ベクター」は、それに結合した別の核酸を運ぶことができる核酸分子のことである。ベクターの1つのタイプは、その中にさらなるDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを意味する「プラスミド」である。ベクターの別のタイプは、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム中に連結することができるウイルスベクターである。ある種のベクターは、宿主細胞中で自律複製できる(例えば細菌性の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソームの哺乳類のベクター)は、宿主細胞へ導入する際、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それによって宿主ゲノムに沿って複製される。さらに、ある種のベクター、発現ベクターは、操作可能な状態でそれに結合された(operably linked)遺伝子の発現を導くことができる。一般に、組換えDNA技術における有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミド(ベクター)の形態である。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすこのような他の型の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば複製欠損のあるレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含むものとする。
【0071】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で核酸を発現するのに適した形態の本発明の核酸を含む。つまり、組換え発現ベクターには、発現しようとする核酸に操作可能な状態で結合しており、発現に用いる宿主細胞に基づいて選ばれる1つまたはそれ以上の調節配列が含まれる。組換え発現ベクターの中で、「操作可能な状態で結合した(operably linked)」は、ヌクレオチド配列の発現可能な形で興味のヌクレオチド配列が調節配列(複数可)に結合していることを意味するものとする(例えば、ベクターが宿主細胞に導入された時にインビトロ転写/翻訳系においてまたは宿主細胞において)。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節因子(例えばポリアデニル化シグナル)を含むものとする。このような調節配列は、例えばGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology Vol. 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの(例えば組織特異性調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル、等のような因子に左右されうることは当業者ならば理解するであろう。本発明の発現ベクターは、本明細書に記載された核酸をコードするタンパク質またはペプチド(例えばHM74、HM74の変異形、融合タンパク質、等)を生産するため、宿主細胞に導入することができる。
【0072】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物または真核生物の細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、イースト細胞または哺乳動物細胞中でHM74の発現用に設計することができる。適切な宿主細胞は、前出のGoeddel中でさらに議論されている。別法として、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写し、そして翻訳することができる。
【0073】
別の実施態様において、HM74発現ベクターは、イースト発現ベクターである。S. cerevisiaeのようなイースト中で発現するベクターの例としては、pYepSecl (Baldari et al., EMBO J. (1987) 6:229-234)、pMFa (Kurjan et al., Cell (1982) 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al., Gene (1987) 54:113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)およびpPicZ (Invitrogen Corp, San Diego, CA)が含まれる。
【0074】
別法として、HM74は、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞中で発現させることができる。培養された昆虫細胞(例えばSf9細胞)中でタンパク質を発現させるために利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smith et al., Mol. Cell. Biol. (1983) 3:2156-2165)およびpVL系列(Lucklow et al., Virology (1989) 170:31-39)が含まれる。
【0075】
さらに別の実施態様において、本発明の核酸は、哺乳類の発現ベクターを用いて哺乳動物細胞で発現される。哺乳類の発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed, Nature (1987) 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al., EMBO J. (1987) 6:187-195)が含まれる。哺乳動物細胞に用いる場合、発現ベクターの調節機能は、しばしばウイルス調節因子によってもたらされる。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウィルスおよびシミアンウイルス40から誘導される。原核生物および真核生物の両細胞についての他の適切な発現系については、前出のSambrook等の第16章および第17章を参照のこと。
【0076】
哺乳動物細胞の安定な形質転換については、使用する発現ベクターおよび形質転換技術に応じて、小画分の細胞のみがゲノム中に外来性DNAを組み込むことができることが知られている。成分の同定および選択には、一般に、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質耐性についての)を関心のある遺伝子と共に宿主細胞に導入する。好ましい選択可能なマーカーとしては、薬物抵抗性を与えるもの、例えばG418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートが含まれる。選択可能なマーカーをコードしている核酸を、HM74をコードしているものと同じベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別々のベクター上で導入することができる。導入された核酸で安定してトランスフェクションされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば選択可能な標識遺伝子を組み込まれた細胞は生き残るが、他の細胞は死滅する)。
【0077】
HM74と関与し、これを活性化する興味の化合物は、縮合環ジヒドロピランであり、これにはオキシデカリン様化合物が含まれる。オキシデカリンは、オキシデカヒドロナフタレンの別の名称である。このようなジヒドロピランは、一般構造を有する:
興味のジヒドロピランおよびオキシデカリンは、米国特許第6,399,653号、WO 97/48691中およびvon Roedern, Mol. Div. (1998) 3:253-256中に教示されたように製造することができる。
【0078】
興味のオキシデカリンは、以下の構造を有する:
【化3】

式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルケニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C1−C18アルキニル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;C3−C18アリール、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;またはC5−C18シクロアルキル、これは側基を含むことができ、橋かけを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである;またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基であるか;またはR2は、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル、これは分枝していてもよく、ヘテロ原子を含むことができ、もしくは置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである、であることができ;またはXおよびR2は、環を形成することができ;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【0079】
関心のある化合物は、一般にアゴニストである。従って、興味の化合物は、候補薬として開発することができる。また、興味の化合物は、例えば競合アッセイによってHM74を調節する他の分子を同定するために使用することができる。
【0080】
好ましい化合物は、R2がメチル、エチルまたはシクロヘキシルである場合、R1はn−アルキルまたはC1−C4分枝アルキルではない;またはR1がアセチル基で置換されうるC1−C4アルコールまたはC1−C4分枝アルキルである場合、R1はn(−C1−C8)アルキル、(C1−C4)分枝アルキルまたはチオ置換されたフェニルではないものである。
【0081】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。代表的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。炭化水素は、1つまたはそれ以上の不飽和三重結合を含むことができる。
【0082】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基を意味する。例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシである。
【0083】
「アリール」は、芳香族炭化水素である。例としては、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0084】
「ヘテロ原子」は、一般に、分子の典型的な原子とは異なる原子である。従って、炭化水素において炭素または水素ではないすべての原子はヘテロ原子である。一般に生物学的に許容しうるヘテロ原子には、酸素、硫黄および窒素が含まれる。
【0085】
用語「ヘテロアリール」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアリール基のことである。例としては、ピリジル、イミダゾリル、ピロリル、チエニル、フリル、ピラニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、ナフチリジニルおよびイソオキサゾリルである。
【0086】
用語「シクロアルキル」は、環式炭化水素のことである。いくつかの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。
【0087】
「複素環」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたシクロアルキルである。例は、ピロリジニル、ピペリジニルおよびピペラジニルである。
【0088】
用語「ヘテロアルキル」は、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアルキルである。エーテルは、ヘテロアルキルである。
【0089】
「置換された」は、ベースとなる有機基が1つまたはそれ以上の置換基を有することを意味する。従って、原子または基は、分子中で別の原子または基と置き換わる。代表的な置換基としては、ハロゲン、C1−C8アルキル、−CN、アルコキシル、ヒドロキシル、スルフィド、スルフェート、スルホンアミド、アミン、アミド、アルコール、ケト基、C6−C18アリール、ハロゲン化C1−C18アルキル、亜硝酸基または硝酸基が含まれる。
【0090】
「ハロゲン」は、例えば塩素、フッ素または臭素である。
【0091】
「アルケニル」は、1つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含む炭化水素である。炭化水素は分枝していてもよい。
【0092】
用語「環」は、1つの環構造または複数の環構造の1つを意味し、その際、複数の環の2つまたはそれ以上が縮合していてもよく、複数の環、複数の環の1つまたはそれ以上は、芳香族であってもよく、ヘテロ原子を含むことができ、置換されていてもよく、またはそれらの組み合わせである。環は二環式または多環式であってもよく、そして橋かけを含んでいてもよい。
【0093】
関心のある化合物はHM74と結合し、HM74を活性化するが、HM74Aには結合しない。
【0094】
関心のあるオキシデカリンは、当分野で知られているように合成することができる(米国特許第6,399,653号)。
【0095】
本発明のオキシデカリン様化合物は、投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。このような組成物は、典型的に活性成分および医薬上許容しうる担体を含んでなる。本明細書で使用するように、用語「医薬上許容しうる担体」は、医薬投与に適合しうる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性のおよび吸収を遅らせる物質、等のいずれかおよびすべてを含むものとする。医薬活性物質のためのこのような媒体および物質の使用は、当分野でよく知られている。いずれか慣用の媒体または物質が活性化合物と適合しない場合を除いて、組成物におけるそれらの使用を意図する。また、補助活性化合物を組成物に組み込むことができる。
【0096】
本発明の医薬組成物は、意図する投与経路に適合しうるように処方する。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮的(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下用途に用いる液剤または懸濁剤は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度調整剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含むことができる。pHは、酸または塩基(例えばHClまたはNaOH)で調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチックから製造されたアンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアル中に封入することができる。
【0097】
注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水性液剤(水溶性の場合)または分散剤および滅菌注射液剤または分散剤を即座に調製するための滅菌散剤が含まれる。静脈内投与では、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(R)(BASF; Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物を滅菌しなければならず、そして容易にシリンジ化可能な程度にまで流動性でなければなれらない。組成物は、製造および貯蔵条件において安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に備えて保存しければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコール等)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等によって行うことができる。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば砂糖、多価アルコール(例えばマンニトール)、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0098】
滅菌注射液剤は、必要な量の活性化合物を上記列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に適当な溶媒中に組み込み、必要に応じて、その後、滅菌濾過することによって調製することができる。一般に、分散剤は、活性化合物を基本的な分散媒体および上記列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製する。滅菌注射液剤を調製するための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより予め滅菌濾過された溶液から活性成分+任意の添加所望成分の粉末が得られる。
【0099】
経口組成物は、一般に不活性希釈剤または可食性担体を含む。組成物はゼラチンカプセル中に封入するかまたは圧縮して錠剤にすることができる。経口治療の投与では、活性化合物を賦形剤と共に組み込むことができ、そして錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用する。また、経口組成物は、シロップまたは液体製剤を得るための液体担体を用いて調製することができ、またはうがい薬としての使用のために調製され、ここで液体担体中の化合物を経口的に適用し、うがいして吐き出すまたは飲み込む。
【0100】
医薬上適合しうる結合剤、および/または補助物質は、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、等は、以下の成分:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;または着香剤、例えばハッカ、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料のいずれかまたは類似の性質の化合物を含むことができる。
【0101】
吸入による投与では、適切な噴射剤、例えばガス、例えば二酸化炭素を含有する加圧容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器からエアゾールスプレーの形態で化合物を送達する。
【0102】
また、全身投与は、経粘膜または経皮的な手段によることができる。経粘膜または経皮投与では、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、一般に当分野で知られており、そして例えば、経粘膜投与では、デタージェント、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔内噴霧器または坐剤を使用して実施することができる。経皮投与では、活性化合物を一般に当分野で知られているように軟膏、サルヴ剤(salves)、ゲル剤またはクリームに処方する。
【0103】
また、化合物は、直腸送達のための坐剤(例えば、慣用の坐剤基剤、例えばカカオ脂および他のグリセリドを用いて)または停留浣腸剤の形態で調製することができる。
【0104】
一実施態様において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御製剤のように、身体から化合物が急速に排泄させるのを防ぐ担体を用いて調製される。生分解性の、生体適合性のポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。
【0105】
このような製剤の調製方法は、当業者に明らかである。また、材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することができる。また、リポソームの懸濁剤(モノクローナル抗体で感染細胞に標的設定されたリポソーム剤を含む)は、医薬上許容しうる担体として使用することができる。それは、当業者に知られている方法に従って、例えば米国特許第4,522,811号に記載されたように調製することができる。
【0106】
投与を容易にし、用量を均一にするため単位投薬形態で経口または非経口の組成物を処方することは特に好都合である。本明細書で使用する単位投薬形態は、治療しようとする対象者のための単回の投薬に適した物理的に分離された単位のことであり;それぞれの単位は所望の治療効果を得るために算出された活性化合物の所定の量を必要な医薬担体と共に含んでなる。例えば1回またはそれ以上の分割投与によるかまたは持続注入によるかどうかにかかわらず、患者に投与するための初期の候補用量は、疾患のタイプおよび重症度に応じて、活性成分約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1〜20mg/kg)である。典型的な日用量は、上記の因子に応じて約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲となりうる。数日またはそれより長い反復投与では、状態に応じて、疾患の症状が望ましく抑制されるまで治療を持続させる。しかしながら、他の投与計画も有用でありうる。治療の進行は、慣用の技術およびアッセイによって容易にモニターされる。典型的な用法・用量は、WO 94/04188に開示されている。本発明の単位投薬形態について詳細は、活性化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療効果および個体の治療のためこのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって定まり、これらに直接左右される。
【0107】
医薬組成物は、投薬説明書と共に容器、パックまたはディスペンサー中に梱包することができる。
【0108】
興味のHM74モジュレーターは、スクリーニングアッセイおよび治療方法(例えば、治療および予防)に使用することができる。興味のHM74モジュレーターは、HM74活性または発現を調節する他の薬物または化合物をスクリーニングするために、そして炎症を特徴とする障害を治療するために使用することができる。また、興味のモジュレーターは、HM74タンパク質の不十分なもしくは過剰の産生から生じる、またはHM74野生型タンパク質と比較して減少したもしくは異常な活性を有するHM74タンパク質形態の産生によって生じる病気における使用を見いだすことができる。さらに、本発明は、スクリーニングアッセイによって同定された新規なHM74モジュレーターおよび本明細書に記載された治療のためのその使用に関する。
【0109】
本発明は、モジュレーター、すなわち、HM74に結合し、そして例えばHM74発現またはHM74活性における刺激または抑制効果を有する候補物質または試験化合物または薬剤(例えばペプチド、ペプチドミメティック、小分子、抗体または他の薬物)を同定するための方法(また、本明細書では「スクリーニングアッセイ」と称する)を提供する。
【0110】
一実施態様において、本発明は、HM74を結合しまたはHM74の活性を調節する候補物質または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。従って、スクリーニングアッセイを用いてHM74を調節する他のフロセミド様およびオキシデカリン様化合物を同定することができる。また、このようなモジュレーターを競合アッセイ中に使用してHM74アンタゴニストのような他のモジュレーターを同定することができる。
【0111】
一実施態様において、アッセイは、細胞に基づくアッセイであり、細胞表面でHM74の膜結合形態を発現する細胞を試験化合物と接触させてHM74を活性化する試験化合物の能力を測定する。細胞は、例えば、イースト細胞または哺乳動物起源の細胞であることができる。HM74を活性化する試験化合物の能力の測定は、例えば試験化合物を放射性同位元素または酵素標識と結合させることによって実施することができ、その結果試験化合物のHM74への結合は、HM74との複合体中で、またはHM74が位置する場所で標識化合物を検出することによって測定することができる。例えば、試験化合物は、直接または間接的に125I、35S、14Cまたは3Hで標識化することができ、そして放射性同位元素は放射線放出を直接カウントするか、またはシンチレーションカウントによって検出される。別法として、試験化合物は、酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼによって標識化することができ、そして酵素標識は、適切な基質が生成物に変換するのを測定することによって検出される。好ましい実施態様において、アッセイは、細胞表面のHM74の膜結合形態を発現する細胞を試験化合物と共にHM74を結合する知られている化合物と接触させ、知られている化合物と競合してHM74と相互作用する試験化合物の能力を測定することを含む。
【0112】
別の実施態様において、アッセイは、細胞表面上でHM74の膜結合形態を発現する細胞を試験化合物と接触させ、そしてHM74の活性を調節する(例えば、刺激または阻害する)試験化合物の能力を測定することを含む、細胞に基づくアッセイである。HM74の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えばHM74を活性化または阻害する試験化合物の能力を測定することによって実施することができる。それは活性化されたHM74が、シグナル伝達経路に関連する細胞内のまたは膜の標的分子と相互作用するときに顕在化する可能性がある。本明細書で使用するように、「標的分子」は、事実上HM74が結合するまたは相互作用する分子、例えばHM74を発現する細胞表面上の分子、第2の細胞表面上の分子、細胞外環境中の分子、細胞膜または細胞質の分子の内側面と関連する分子である。HM74標的分子は、非HM74分子であることができる。一実施態様において、HM74標的分子は、細胞膜を通しておよび細胞中に細胞外シグナル(例えば化合物がHM74へ結合することによって生じるシグナル)の伝達を促進するシグナル伝達経路の成分である。標的は、例えば触媒活性を有する第2の細胞間タンパク質または下流のシグナル伝達分子とHM74との結合を促進するタンパク質であることができる。
【0113】
HM74標的分子と結合するまたは相互作用するHM74の能力の測定は、直接結合を測定するための上記方法の1つによって実施することができる。好ましい実施態様において、HM74標的分子と結合するまたは相互作用するHM74の能力の測定は、標的分子の活性を測定することによって実施することができる。例えば、標的分子の活性は、標的の細胞の第二メッセンジャーの誘発を検出する(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3、等)、適切な基質上で標的の触媒/酵素活性を検出する、レポーター遺伝子の誘発を検出する(例えば、検出可能なマーカーをコードしている核酸に操作可能な状態で結合したHM74反応性の調節要素、例えばルシフェラーゼ)または細胞の反応、例えば細胞の分化または細胞増殖を検出することによって測定することができる。
【0114】
さらに別の実施態様において、本発明のアッセイは、HM74を試験化合物と接触させ、そしてHM74に結合する試験化合物の能力を測定することを含む細胞を含まないアッセイである。試験化合物のHM74への結合は、先に述べたように、直接または間接的に測定することができる。好ましい実施態様において、アッセイは、HM74を試験化合物と共に本発明の知られている化合物と接触させ、そして本明細書に記載された知られている化合物のHM74活性に影響を与える試験化合物の能力を測定することを含む。HM74と相互作用する試験化合物の能力の測定は、本明細書に記載された知られている化合物の結合と比べて優先的にHM74と結合する試験化合物の能力を測定することを含む。
【0115】
別の実施態様において、アッセイは、HM74を試験化合物と接触させ、そしてHM74の活性を調節する(例えば、刺激または阻害する)試験化合物の能力を測定することを含む細胞を含まないアッセイである。HM74の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば直接結合を測定するための上記方法の1つによって、HM74標的分子に結合する活性化HM74の能力を測定することによって実施することができる。別の実施態様において、HM74の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、HM74標的分子をさらに調節するHM74の能力を測定することによって実施することができる。例えば、適切な基質の標的分子の触媒/酵素活性は、先に記載したように測定することができる。
【0116】
さらに別の実施態様において、細胞を含まないアッセイは、HM74を、試験化合物とHM74を結合させる知られている化合物と接触させ、そしてHM74と相互作用する試験化合物の能力を測定することを含み、その際、HM74と相互作用する試験化合物の能力の測定は、HM74標的分子に優先的に結合するまたはHM74標的分子の活性を調節するHM74の能力を測定することを含む。
【0117】
受容体は、必ずしもリガンド結合を阻害しないが、受容体中で構造変換を生じてGタンパク質結合またはおそらく活性化を生じることができる受容体凝集、二量化またはクラスター形成を可能にする非リガンド分子によって活性化することができる。
【0118】
本発明の細胞を含まないアッセイは、HM74の可溶形態および膜結合形態の両方の使用に適する。HM74の膜結合形態を含む、細胞を含まないアッセイの場合、HM74の膜結合形態が溶液中で維持されるように可溶化剤を用いることが望ましいといえる。このような可溶化剤の例としては、非イオン性デタージェント、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton-X-100、Triton-X-114、Thesit(R)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンミノ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンミノ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)またはN−ドデシル=N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートが含まれる。
【0119】
別の実施態様において、宿主細胞上で発現する場合、一定の活性状態にあるようHM74を変化させる。HM74を変化させると、リガンドを結合させる必要なく受容体を活性にすることができる。活性化された受容体を得る1つのやり方は、リガンド結合することなくHM74を変化させてGタンパク質と相互作用させることである。変化は、受容体と細胞内Gタンパク質との結合を可能にするリガンド結合における受容体の立体配座の変化に似ている。そのような一つのアプローチは、WO 00/22129に記載されている。
【0120】
WO 00/22129は、構成的活性が得られるTM6およびIC3の領域における特定のアミノ酸を教示している。部位特異的突然変異誘発、サブクローニング、等のような特定のアミノ酸をHM74に組み込む方法は、当分野で知られている。次いで、変化したHM74分子を宿主細胞中で発現させて構成的に活性なHM74を得る。
【0121】
次いで、活性化された細胞を、HM74アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、等、HM74活性を変化させる分子であることが推測される分子に暴露する。Gタンパク質活性を変化させるそれらの分子は、医薬開発において知られている方法を用いてHM74代謝の変化と関連する障害を治療するための目標とされる。
【0122】
本発明の上記のアッセイ方法の複数の実施態様において、HM74またはその標的分子のいずれかを固定してタンパク質の一方または両方の複合体形成してない形態から複合形態の分離を促進するだけでなく、アッセイの自動化に適応させることが望ましいといえる。試験化合物のHM74への結合または候補化合物の存在下および欠如下での標的分子とHM74との相互作用は、反応体を含むのに適したいずれかの容器中で実施することができる。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管およびマイクロ遠心分離管が含まれる。一実施態様において、タンパク質の一方または両方をマトリックスに結合させるドメインを加えた融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/HM74融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロース(R)ビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることができる。次いで、その複合体を試験化合物および非吸着の標的タンパク質またはHM74タンパク質と合わせ、そして混合物を複合体形成に適した条件下で(例えば、塩およびpHについて生理学的条件で)インキューベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄してすべての非結合成分を除去し、そして複合体形成を、例えば先に述べたように直接または間接的に測定する。別法として、複合体をマトリックスから分離して、標準技術を用いてHM74結合または活性のレベルを測定することができる。
【0123】
また、マトリックス上でタンパク質を固定する別の技術を本発明のスクリーニングアッセイに使用することができる。例えば、HM74またはその標的分子のいずれかを、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を用いて固定することができる。ビオチン化されたHM74または標的分子は、当分野でよく知られた技術(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を用いてビオチンNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から製造し、そしてストレプトアビジンコーティングされた96ウェルプレート(Pierce Chemicals)のウェル中に固定することができる。別法として、HM74または標的分子と反応性であるが、HM74タンパク質の標的分子への結合を妨げない抗体をプレートのウェルに誘導体化して、結合していない標的またはHM74を、抗体結合によってウェル中に捕捉することができる。このような複合体の検出方法としては、GST固定された複合体について上記されたもの加えて、HM74または標的分子と反応性の抗体を用いた複合体の免疫検出の他にHM74または標的分子に伴う酵素活性の検出に依存する酵素結合アッセイが含まれる。
【0124】
別の実施態様において、HM74発現のモジュレーターは、細胞を候補化合物と接触させ、そして細胞中でのHM74 mRNAまたはタンパク質の発現を測定する方法で同定される。候補化合物の存在下でのHM74 mRNAまたはタンパク質の発現レベルを候補化合物がない場合のHM74 mRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較する。次いで、その比較に基づいて候補化合物をHM74発現のモジュレーターとして同定することができる。例えば、候補化合物の欠如下よりも、候補化合物の存在下でHM74 mRNAまたはタンパク質の発現がより大きい(統計学的に有意に大きい)場合、候補化合物は、HM74 mRNAまたはタンパク質発現の刺激物質またはアゴニストとして同定される。あるいは、HM74mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の欠如下よりも候補物質の存在下でより少ない(統計学的に有意に少ない)場合、候補化合物は、HM74 mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤またはアンタゴニストとして同定される。HM74活性が、リガンドまたはアゴニストの存在下で、または構成的HM74中でベースラインより下に減少する場合、候補化合物は、インバースアゴニストとして同定される。細胞中のHM74 mRNAまたはタンパク質発現のレベルは、HM74 mRNAまたはタンパク質を検出するための本明細書に記載された方法によって測定することができる。
【0125】
大量の純粋なHM74を製造することができるので、合理的なドラッグデザインをする際、有望な機能領域の高次構造の物理的な特性評価を確かめることができる。例えば、分子のIC3領域およびECドメインは、特に興味深い領域である。領域の形状およびイオン配置がわかったら、その領域と相互作用する候補薬物を構成し、次いでインタクトの細胞、動物および患者で試験することができる。このような構造情報を導くことができる方法としては、X線結晶構造解析、NMR分光法、分子モデリング等が含まれる。また、3D構造により、特定の部位で作用する知られている薬物が存在する場合、他の知られているタンパク質において類似の立体配座部位を同定することができる。それらの薬物またはその誘導体は、HM74に関する用途を見いだすことができる。
【0126】
さらに、本発明は、上記スクリーニングアッセイによって同定された新規な薬剤および本明細書に記載された治療のためのその使用に関する。
【0127】
本発明は、異常なHM74発現または活性と関連する障害の危険性がある(すなわち、かかりやすい)またはその障害を有する対象者を治療する予防的および治療的な両方法を提供する。このような障害としては、例えば炎症性障害、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患および関節リウマチが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
一態様において、本発明は、対象者にHM74発現または少なくとも1つのHM74活性を調節する薬剤を投与することによって、対象者において異常なHM74発現または活性に関連する疾患または状態を予防する方法を提供する。異常なHM74発現または活性によって生じるまたはそれが原因となる疾患の危険性のある対象者は、例えば、本明細書に記載した診断法または予測アッセイのいずれかまたは組み合わせによって同定することができる。疾患または障害を予防するまたは代わりに進行を遅らせるように、HM74異常の症状の特徴が発現する前に予防的な薬剤の投与を行うことができる。HM74異常のタイプに応じて、例えばHM74アゴニストまたはHM74アンタゴニストの薬剤を、対象者の治療に使用することができる。本明細書に記載されたスクリーニングアッセイに基づいて適切な薬剤を決定することができる。
【0129】
本発明の別の態様は、治療目的でHM74発現または活性を調節する方法に関する。本発明の調節方法は、細胞を、細胞と関連するHM74の活性の1つまたはそれ以上を調節する薬剤と接触させることを含む。HM74活性を調節する薬剤は、本明細書に記載された薬剤、例えばフロセミドまたはオキシデカリン、核酸またはタンパク質、HM74タンパク質の自然発生の同種のリガンド、ペプチド、HM74ペプチドミメティックまたは他の小分子であることができる。一実施態様において、薬剤は、HM74の生物活性の1つまたはそれ以上を刺激する。別の実施態様において、薬剤は、HM74タンパク質の生物活性の1つまたはそれ以上を阻害する。このような阻害剤の例としては、抗HM74抗体が含まれる。調節的な方法は、インビトロで(例えば、薬剤と共に細胞を培養することによって)または、代わりに、インビボで(例えば、対象者に薬剤を投与することによって)実施することができる。このように、本発明は、HM74の異常な発現または活性を特徴とする疾患または障害で苦しむ人の治療方法を提供する。一実施態様において、方法は、薬剤(例えば本明細書に記載されたスクリーニングアッセイによって同定された薬剤)またはHM74発現または活性を調節する薬剤の組み合わせ(例えば、上方制御または下方制御する)を投与することを含む。
【0130】
HM74活性の刺激は、HM74が異常に下方制御されたおよび/または高められたHM74活性が有益な効果をもたらす見込みがある状況において望ましい。これに対して、HM74活性の阻害は、HM74が異常に上方制御されたおよび/または低下したHM74活性が有益な効果をもたらす見込みがある状況において望ましい。
【0131】
〔実施例〕
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、それは制限するものとして解釈すべきではない。本願を通じて引用された全ての文献、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
実施例1 HM74を発現する哺乳動物細胞の産生
hHM74をコードするcDNAを発現ベクター中にクローニングし、そして哺乳動物細胞、例えばCHO細胞または293細胞中にトランスフェクションした。
【0133】
HM74を過剰発現する哺乳動物細胞を産生させるため、6ウェルの35mm組織培養プレート(ウェル当たり3×105の哺乳動物細胞(ATCC Catalog No. CRL-1573))において、DMEM培地(Gibco/BRL, Catalog No. 11765-054)2ml中、10%ウシ胎児血清(Gibco/BRL Catalog No. 1600-044)の存在下で哺乳動物細胞を培養した。
【0134】
次いで、細胞が50〜80%集密になるまでCO2インキュベータ中37℃で細胞をインキューベートした。HM74のクローニングされたcDNA核酸配列をpcDNA3.1クローニングベクター(Invitrogen, Catalog No. V790-20)中に挿入した。DNA2μgを無血清F12ハム培地100μl中に希釈した。それとは別に、リポフェクトアミン試薬(Life Technologies, Catalog No. 18324-020)25μlを無血清F12ハム培地100μl中に希釈した。次いで、DNA溶液およびリポフェクトアミン溶液を穏やかに混合し、室温で45分インキューベートし、DNA脂質複合体を形成させた。
【0135】
細胞を、無血清F12ハム培地2mlで1回すすいだ。それぞれのトランスフェクションについて(6ウェルプレート中で6トランスフェクション)、無血清F12ハム培地0.8mlを、DNA脂質複合体を含む溶液(0.2mlの総体積)に加え、穏やかに混合した。次いで、得られた混合物(以下、「トランスフェクション混合物」)をすすいだ細胞上にかぶせた(0.8ml+0.2ml)。抗細菌試薬は加えなかった。次いで、細胞を脂質DNA複合体と共にCO2インキュベータ中37℃で16時間インキューベートしてトランスフェクションさせた。
【0136】
培養期間が完了した後、最初にトランスフェクション混合物を除去することなく、10%ウシ胎児血清を含むF12ハム培地1mlを細胞上にかぶせた。トランスフェクションの18時間後、細胞にかぶせた媒体を吸い出した。次いで、細胞をPBS,pH2〜4 (Gibco/BRL Catalog No. 10010-023)で洗浄し、そしてPBSを、5%血清を含むF12ハム培地(「選択培地」)で置き換えた。トランスフェクションの72時間後、抗菌剤ジェネティシン(Life Technologies, Catalog No. 11811)を400μg/mlで含む選択培地中に細胞を10倍希釈した。
【0137】
実施例2 アゴニストアッセイ
ヒトHM74のアゴニストをスクリーニングするため、HM74をGq機構に人工的に共役させることができる。Gq機構の活性化は、細胞内の筋小胞体からのCa2+の放出を刺激する。Ca2+が細胞質中に放出され、これはCa2+キレート化色素を用いて検出することができる。蛍光測定イメージングプレートリーダーまたはFLIPR(R)装置(Molecular Devices)を用いて蛍光において生じたなんらかの変化をモニターする。アゴニストの活性は、蛍光におけるなんらかの増加によって反映される。
【0138】
HM74を発現するCHO−K1細胞を予め操作してGqタンパク質(Gα16)の無差別形態(indiscriminate form)を発現させた。このような細胞を製造するため、Gα16共役型CHO細胞を商業的に入手し(Molecular Devices LIVEWARETM cells, Catalog No. RD-HGAl6)、実施例1のプロトコールに続いてそれらの細胞中のHM74の発現を促進した。
【0139】
10%ウシ胎児血清、100lU/mlペニシリン(Gibco/BRL, Catalog No. 15140-148)、100μg/mlストレプトマイシン(Catalog No. 15140-148, Gibco/BRL)、400μg/mlジェネティシン(G418)(Gibco/BRL, Catalog No. 10131-035)および200μg/mlゼオシン(Invitrogen, Catalog No. R250-05)を含むF12ハム媒体(Gibco/BRL, Catalog No. 11765-054)中、37℃および5%CO2で細胞を増殖対数期に維持した。アッセイの1日前に、CHO−K1細胞12,500細胞/ウェルを96/384 Multidropデバイス(Labsystems, Type 832)を用いてウェル体積50μlを有する384ウェルの透明な底部のアッセイプレート(Greiner/Marsh, Catalog No. N58102)上で培養した。加湿された5%CO2インキュベータ(Forma Scientific CO2 water jacketed incubator Model 3110)中、37℃で細胞をインキューベートした。
【0140】
以下の保存溶液を調製した:Hepes(Gibco/BRL, Catalog No. 15630-080)の1M保存溶液(pH7.5);1N NaOH中に作成したプロベニシド(Sigma, Catalog No. P8761)の250mM保存溶液;およびDMSO (Sigma D2650)中に作成したFluo 4-AM Dye (Molecular Probes, Catalog No. Fl 4202)の1mM保存溶液。ハンクス平衡塩類溶液(Fisher/Mediatech, Catalog No. MT21023)1000ml、1M Hepes保存溶液20mlおよび250mMプロベニシド保存溶液10mlを用いて反応緩衝液を調製した。ローディング緩衝液を調製するため、1mM Fluo 4-AM Dye保存溶液1.6mlをプルロニック酸(Molecular Probes, Catalog No. P6866)0.32mlと混合し、次いで上記の反応緩衝液400mlおよびウシ胎児血清4mlと混合した。
【0141】
アッセイの1時間前に、96/384 Multidropデバイスを用いて新たに調製したローディング緩衝液50μlを384ウェルプレートの各ウェルに加えた。加湿されたインキュベータ中37℃で細胞をインキューベートして色素取込みを最大にした。アッセイの直前に、プレート底面より少なくとも10mm上に設定された吸引ヘッドを有する384 EMBLA Cell Washer (Skatron; Model No. 12386)を用いて細胞を反応緩衝液90μlで2回洗浄し、ウェル当たり45μlの緩衝液を残した。
【0142】
FLIPR(R) II (Molecular Devices)機器のCCDカメラ(Princeton Instruments)をf−ストップ2.0および露出0.4秒に設定した。カメラを用いて色素ローディングの精度について細胞プレートをモニターした。
【0143】
候補となるオキシデカリン様化合物を含む化合物ライブラリーをそれぞれウェル当たり生理学的塩類緩衝液中約10μMの濃度で試験した。蛍光における変化を化合物添加前に10秒間測定した。化合物を添加した後、最初の1分間は毎秒、蛍光を測定し、続いて全実験分析時間3分間の間に6秒毎に露光した。第10スキャン後、100μM保存化合物の5μlアリコートを加え、10μMの細胞における最終化合物濃度を得た。最初の80スキャンについての最大蛍光変化をアゴニスト活性の基準として記録し、そして10μM ATP (Sigma A9062)により誘発された最大蛍光変化と比較した。
【0144】
多くのオキシデカリン化合物は、HM74を活性化することがわかった。
【0145】
実施例3 アンタゴニストアッセイ
ヒトHM74のアンタゴニストについてスクリーニングするため、HM74を、Gq機構に人工的に共役させることができる。実施例2のようにして、FLIPR(R)装置を用いて蛍光において生じたすべての変化をモニターする。アンタゴニストの活性は、蛍光におけるなんらかの減少によって反映される。
【0146】
HM74を発現するCHO−K1細胞を予め操作し、実施例2に記載したようにGqタンパク質(Gα16)の無差別形態(indiscriminate form)を発現させた。10%ウシ胎児血清、100IU/mlペニシリン(Gibco/BRL, Catalog No. 15140-148)、100μg/mlストレプトマイシン(Catalog No. 15140-148, Gibco/BRL)、400μg/mlジェネティシン(G418)(Gibco/BRL, Catalog No. 10131-035)および200μg/mlゼオシン(Invitrogen, Catalog No. R250-05)を含むF12ハム培地(Gibco/BRL, Catalog No. 11765-054)中37℃および5%CO2で細胞を増殖対数期に維持した。アッセイの1日前、96/384 Multidropデバイスを用いてウェル体積50μlを有する384ウェルの黒い/透明な底部のアッセイプレート(Greiner/Marsh, Catalog No. N58102)上でCHO−K1細胞12,500細胞/ウェルを培養した。加湿された5%CO2中37℃で細胞をインキューベートした。
【0147】
以下の保存溶液を調製した:Hepes(Gibco/BRL, Catalog No. 15630-080)の1M保存溶液(pH7.5);1N NaOH中に作成されたプロベニシド(Sigma, Catalog No. P8761)の250mM保存溶液;DMSO (Sigma D2650)中に作成されたFluo 4-AM Dye(Molecular Probes, Catalog No. F 14202)の1mM保存溶液;およびリガンドまたはアンタゴニストの保存溶液。ハンクス平衡塩類溶液(Fisher/Mediatech, Catalog No. MT21023)1000ml、1M Hepes保存溶液20ml、250mMプロベニシド保存溶液10mlおよび1mM CaCl2を用いて反応緩衝剤を調製した。ローディング緩衝液を調製するため、1mM Fluo 4-AM Dye保存溶液80μlをプルロニック酸(Molecular Probes, Catalog No. P6866)16μlと混合し、次いで、上記の反応緩衝液20mlおよびウシ胎児血清0.2mlと混合した。
【0148】
アッセイの30分前、96/384 Multidropデバイスを用いて、新たに調製したローディング緩衝液30μlを384ウェルプレートの各ウェルに加えた。加湿されたCO2インキュベータ中37℃で細胞をインキューベートして色素取込みを最大にした。アッセイ直前に、プレート底面より少なくとも40mm上に設定された吸引ヘッドを有する384 EMBLA Cell Washerを用いて細胞を反応緩衝液100μlで3回洗浄し、ウェル当たり緩衝液45μlを残した。
【0149】
Platemate 384 pipetor(Matrix)を用いて100μM保存アンタゴニスト化合物5μlを細胞に加えた。インキュベーション工程中の化合物濃度は、約10μMであった。細胞をFLIPR(R) IIに置き、プレートの蛍光は、最初の1分間は毎秒測定し、続いて全実験分析時間3分間の間に6秒ごとに露光させた。第10スキャンの後、アンタゴニストまたはリガンド(10μM)を加えた。それぞれ添加した後、384のチップを、水中0.01%DMSO20μlで10回洗浄した。
【0150】
HM74細胞は、同定されたアゴニストに暴露することができまたは候補アンタゴニストで試験した後に暴露することができる。
【0151】
実施例4 受容体結合アッセイ
HM74を含む膜画分を調製するため、1mM EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(10ml)中でインキュベーションすることによってHM74を発現するCHO細胞系を集めた。細胞を、1mM EDTA(10ml)を含むリン酸緩衝生理食塩水中でさらに3回洗浄した後、緩衝液A(50mMトリスHCl(pH7.8)(Sigma T6791)5ml、5mM MgCl2 (Sigma M8266)および1mM EGTA (Sigma 0396)中で再懸濁した。
【0152】
次いで、組織ホモジナイザー(Polytron, Kinemetica, Model PT 10/35)で1分間、細胞を粉砕した。生成したホモジネートをSorvall Instruments RC3B冷却遠心機中、4℃で20分間49,000Xgで遠心分離した。得られたペレットを緩衝液A25ml中で再懸濁し、そして遠心分離工程を3回繰り返した。最後に遠心分離した後、再びペレットを緩衝液A5ml中に再懸濁し、等分し、そして−70℃で保存した。
【0153】
膜画分およびトレーサーとして放射性同位元素標識化された興味のアゴニストを用いた受容体結合実験を実施した。アッセイは、96ウェルプレート(Beckman Instruments)で実施した。結合反応物は、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma, Catalog No. 34287) (Im et al., J. Biol. Chem. (2000) 275(19): 14281-14286参照)を含む緩衝液Aの最終体積0.2ml中、放射性アゴニスト(0.01nM〜25nM)の存在下でCHO細胞調製物18μgからなる。反応物を室温で1時間インキューベートした。0.3%ポリエチレンイミン(Sigma, Catalog No. P3143)および0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間、前処理したマルチチャネル収穫器(Brandell)上でWhatman GF/Cフィルタを通して濾過することによって反応を終了した。混合物をフィルタに適用し、1時間インキューベートした。フィルタを氷冷50mMトリスHCl(pH7.6)1mlで6回洗浄した。特異的結合は、放射活性の測定による各トレーサー濃度について全結合と非特異的結合(バックグラウンド)との間の差分に基づいて算出した。8〜16の濃度データポイントを得、アゴニストと受容体との間の平衡状態で達成された受容体へのアゴニストの結合を測定した(平衡結合パラメーター)。競合アッセイにおいて、試験化合物を混合物に加え、受容体上で放射性アゴニストの結合について競合させた(競合結合値)。阻害曲線を作成し、結合の50%阻害を達成するのに必要な濃度(IC50)を決定した。
【0154】
実施例5 小分子アゴニスト
一連のオキシデカリン様分子を先に述べたようなHM74を発現する細胞に暴露した。標的分子を標識化してHM74への結合が生じたかどうかを測定した。洗浄後で細胞の標識化の程度を測定することによって結合を検出した。また、2Dゲル電気泳動によってHM74を単離し、そのタンパク質と関連する標識化の程度を測定することによって結合を確かめた。その結合評価に続いて、またはその結合評価とは別に、HM74を活性化する候補アゴニストの能力を測定した。FLIPRアッセイを用いてHM74への標的分子の結合における細胞内カルシウム動員を評価した。これによってカルシウム動員を生じたオキシデカリン分子を同定した。
【0155】
本発明を説明してきたが、技術者は、本明細書に教示された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書の教示に対して種々の変更および改良を行うことができることを知っている。
【0156】
本明細書に引用されたすべての文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造:
【化1】

を有する分子を治療を必要とする患者に投与することを含む、該患者においてHM74シグナル伝達活性またはシグナル伝達を調節するための治療方法。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【請求項2】
アゴニスト候補を、HM74を発現する細胞と接触させ、該アゴニスト候補の存在下でのHM74のシグナル伝達活性が、該アゴニスト候補がない場合のHM74の活性と比較して高められたかどうかを測定することを含むHM74のアゴニストの同定方法であって、該アゴニスト候補は、下記構造:
【化2】

を有する上記方法。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【請求項3】
インバースアゴニスト候補を、HM74を発現する細胞と接触させ、該インバースアゴニスト候補の存在下でのHM74の活性が、該インバースアゴニスト候補がない場合のHM74の活性と比較して減少したかどうかを測定することを含むHM74のインバースアゴニストの同定方法であって、該インバースアゴニスト候補は、下記構造:
【化3】

を有する上記方法。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、シッフ塩基に結合したカルボニルもしくは酸素、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【請求項4】
アンタゴニスト候補を、HM74を発現する細胞と接触させ、該アンタゴニスト候補の存在下でのHM74のシグナル伝達活性が、アゴニストの存在下でのHM74の活性と比較して減少したかどうかを測定することを含むHM74のアンタゴニストの同定方法であって、該アンタゴニスト候補は、下記構造:
【化4】

を有する上記方法。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【請求項5】
式:
【化5】

の化合物を含む医薬組成物の炎症調節量を治療の必要な患者に暴露することからなる炎症の調節方法。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルである。
【請求項6】
式:
【化6】

の化合物。
式中、XはO、NR2またはSであり;
1は、C1−C18アルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルケニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C1−C18アルキニル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);C3−C18アリール(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはその組み合わせであってもよい);またはC5−C18シクロアルキル(これは側基を含んでいても、橋かけを含んでいても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい);またはそれらの組み合わせであり;
2は、R1基、(C1−C10)アルキル−(C3−C10)シクロアルキル(これは分枝していても、ヘテロ原子を含んでいても、もしくは置換されていても、またはそれらの組み合わせであってもよい)であり;またはXおよびR2は、環を形成してもよく;
3は、HまたはR1であり;そして
Yは、カルボニル、シッフ塩基、オキシン、ケタール、アセタール、オキサゾリジン、チアゾリジンまたはエノールエステルであり、
但し、R2がメチル、エチルまたはシクロヘキシルである場合、R1はn−アルキルまたはC1−C4分枝アルキルではなく;またはR2がアセチル基で置換されてもよいC1−C4アルコールまたはC1−C4分枝アルキルである場合、R1はn−(C1−C8)アルキル、(C1−C4)分枝アルキルまたはチオ置換されたフェニルではない。

【公表番号】特表2007−526917(P2007−526917A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554127(P2006−554127)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/004095
【国際公開番号】WO2005/082352
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】