HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物、及びHMG−CoA還元酵素阻害剤
【課題】細菌によって引き起こされる感染症に対する薬剤として臨床できることが期待される、HMG−CoA還元酵素に対して阻害活性を示す新規物質及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)下記式(I)
(式中Rはn−C16H33,i−C16H33,n−C17H35,MはHまたはNa等を表わす)で示される化合物、(2)その化合物等からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤、(3)ストレプトミセス属に属し式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取する式(I)で示される化合物の製造方法、及び(4)ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
【解決手段】(1)下記式(I)
(式中Rはn−C16H33,i−C16H33,n−C17H35,MはHまたはNa等を表わす)で示される化合物、(2)その化合物等からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤、(3)ストレプトミセス属に属し式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取する式(I)で示される化合物の製造方法、及び(4)ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物が生産する脂質代謝阻害活性を有する5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物、その製造方法及びHMG−CoA還元酵素阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌感染症の予防及び治療には各種ベータラクタム抗生物質、アミノ配糖体、マクロライド、グリコペプチド、キノロンなどが使われてきたが、最近これらの抗生物質に耐性を示す感染菌が増加しており、従来のタイプとは異なる抗生物質が渇望されている。
【0003】
かかる実情において、HMG−CoA還元酵素はHMG−CoAを基質としてメバロン酸を生成する酵素であり、本酵素を阻害する抗菌剤は未だ実用化に至っていない。従って、本酵素を阻害する薬剤の発見は、上記の課題を解決し得ると考えられ、MRSAやVREなどの多剤耐性菌による難治性の感染症の新しい治療剤として臨床できることが期待される。
【0004】
本発明に関連する先行技術には、ストレプトミセス属に属する微生物培養液から単離した5−アルキルベンゼンスルフェート類(ただし、5−アルキルは炭素原子数15〜16である。)をパノシアリン(panosialin)と命名し、パノシアリン類(panosialins)がシアリダーゼ(sialidase)、酸性ホスファターゼ(acid phosphatase)及びポリガラクツロナーゼ(polygalacturonase)阻害作用を有することを報告している(The Jounal of Antibiotics, 24, 860-875(1971);非特許文献1)、また、同様にストレプトミセス属に属する微生物培養液から5−アルキル部分の炭素原子数が15〜16のパノシアリン類似体がグリコシダーゼ阻害活性を有する旨の報告が有るが(The Jounal of Antibiotics, 48, 205-210(1995);非特許文献2)、5−アルキルベンゼンスルフェート類がHMG−CoA還元酵素阻害活性を有することについては全く記載がない。
【0005】
【非特許文献1】The Jounal of Antibiotics, 24, 860-875(1971)
【非特許文献2】The Jounal of Antibiotics, 48, 205-210(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、微生物のHMG−CoA還元酵素に対して阻害作用を有することにより、抗細菌剤として臨床できる新規物質及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、土壌より新たに分離されたストレプトミセス属(Streptomyces sp.)に属する菌株の培養物中に、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する物質が産生されることを見出した。次いで、該培養物中から本HMG−CoA還元酵素を阻害する活性物質を分離、精製したところ、公知のパノシアリンに比べて5位のアルキル基の構造が異なり、炭素原子数が16〜17個の類似体である後記式(I−1)〜(I−3)で示される化学構造を有する新規物質を見出した。
【0008】
これらの物質は従来全く知られていないことから、各々本物質を01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質と称し、その総称を01−76D3物質と称することにした。また、公知のパノシアリン類についてHMG−CoA還元酵素阻害活性を測定したところ、上記01−76D3−1、01−76D3−2、及び01−76D3―3物質と同等の活性を有することを初めて見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は下記1〜4の新規化合物、5〜12のHMG−CoA還元酵素阻害剤、13〜14の新規化合物の製造方法、及び15〜16の新規微生物に関する。
1.下記式(I)
【化1】
(式中、Rは−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)。)
で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物。
2.Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
3.Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
4.Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
5.下記式(IA)
【化2】
(式中、RaはC10〜20の分岐していてもよいアルキル基を表わし、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤。
6.Rが−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3、−(CH2)12CH(CH3)2、−(CH2)13CH(CH3)2、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、及び−(CH2)16CH3から選択される基を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
7.Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
8.Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
9.Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
10.Rが−(CH2)12CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
11.Rが−(CH2)14CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
12.Rが−(CH2)13CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
13.Rが−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
14.ストレプトミセス属に属し、下記式(I)
【化3】
(式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取することを特徴とする式(I)で示される化合物の製造方法。
15.ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である前記10記載の製造方法。
16.ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
17.微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である前記5記載の微生物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる新規化合物を示す一般式(I)において、Rが表わすアルキル基の具体例としては、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3が挙げられる。
【0011】
本発明にかかるHMG−CoA還元酵素阻害剤である一般式(IA)で示される化合物において、Raが表わすアルキル基の具体例としては、上記一般式(I)のRで挙げた例のほかに−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3(MがNaに対応するものがパノシアリンB)、−(CH2)12CH(CH3)2(MがNaに対応するものがパノシアリンA)、−(CH2)13CH(CH3)2(MがNaに対応するものがパノシアリンC)、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)(MがNaに対応するものがパノシアリンD)等が挙げられる。
【0012】
本発明において、一般式(I)及び(IA)中のMは水素原子を表わすか、MO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。塩としては特に限定されないが、公知のアルカリ金属(Na,K等)、アルカリ土類金属(Ca,Mg等)、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0013】
本発明の式(1)で示される新規5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物(01−76D3物質)を生産する能力を有する微生物(以下、「01−76D3物質生産菌」と称する)は、ストレプトミセス属に属するが、例えば本発明者らが分離したストレプトミセス エキナタス 01−76D3菌株が、本発明において最も有効に使用される菌株の一例である。本菌株の菌学的性状を示すと次の通りである。
【0014】
(I)形態的性質
栄養菌糸は各種寒天培地上でよく発達し、分断は観察されない。気菌糸はイースト・麦芽エキス寒天やオートミール寒天で豊富に着生し、白色から薄い茶褐色の色調を呈する。顕微鏡下の観察では、気菌糸上に20個以上の胞子の連鎖が認められ、その形態は螺旋状で、胞子の大きさは約0.7×0.9μmの円筒状である。胞子の表面は平滑である。菌核、胞子のう及び遊走子は見出されない。
【0015】
(II)各種培地上での性状
イー・ビー・シャーリング(E.B.Shirling)とデー・ゴットリーブ(D.Gottlieb)の方法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・システィマティック・バクテリオロジー,16巻,313頁,1966年)によって調べた本生産菌の培養性状を次表に示す。色調は標準色として、カラー・ハーモニー・マニュアル第4版(コンテナー・コーポレーション・オブ・アメリカ・シカゴ、1958年)を用いて決定し、色票名とともに括弧内にそのコードを併せて記した。以下は特記しない限り、27℃、2週間目の各培地における観察の結果である。
【0016】
【表1】
【0017】
(III)生理学的諸性質
(1)メラニン色素の生成
(イ)チロシン寒天 陰 性
(ロ)ペプトン・イースト・鉄寒天 陰 性
(ハ)トリプトン・イースト液 陰 性
(ニ)単純ゼラチン培地(21〜23℃) 陰 性
(2)硝酸塩の還元 陰 性
(3)ゼラチンの液化(21〜23℃) 陰 性
(単純ゼラチン培地)
(4)スターチの加水分解 陽 性
(5)脱脂乳の凝固(37℃) 陰 性
(6)脱脂乳のペプトン化(37℃) 陽 性
(7)生育温度範囲 11〜45℃
(8)炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ寒天培地)
利用する:D−グルコース、L−アラビノース、D−マンニトール、
myo−イノシトール、D−キシロース、L−ラムノース、
D−フラクトース、シュークロース
やや利用する:メリビオース
利用しない:ラフィノース
(9)セルロースの分解 陰 性
【0018】
(IV)細胞壁組成
細胞壁のジアミノピメリン酸はLL型、主要メナキノンはMK−9(H6)とMK−9(H8)である。
【0019】
(V)結論
以上、本菌の菌学的性状を要約すると次の通りである。細胞壁中のジアミノピメリン酸はLL型、主要メナキノンはMK−9(H6)とMK−9(H8)である。胞子連鎖の形態は螺旋状で、長い胞子鎖を形成し、胞子の表面は平滑である。培養上の諸性質としては、栄養菌糸は黄色の色調を呈し、気菌糸は白色から茶褐色の色調を呈する。メラニン色素は産生しない。
【0020】
これらの結果及び16S rRNA 遺伝子の解析結果から、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー、4巻、1989年に基づくストレプトミセス属に属する菌種であると考えられる。
【0021】
なお、本菌株はストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3)として、平成17年2月15日に茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、受領番号はFERM ABP−10246である。
【0022】
また、本発明の好ましい菌株として01−76D3物質生産菌を挙げたが、菌の一般的性状として菌学上の性状はきわめて変異し易く、一定したものではなく、自然的にあるいは通常行なわれる紫外線照射、X線照射または変異誘導体剤、例えばN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネートなどを用いる人工的変異手段により変異することは周知の事実であり、このような人工的変異株は勿論、自然変異株も含め、ストレプトミセス属に属し、01−76D3物質を生産する能力を有する菌株は、すべて本発明に使用することができる。また、細胞融合、遺伝子操作などの細胞工学的に変異させた菌株も01−76D3物質生産菌として包含される。
【0023】
本発明の01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質は、ストレプトミセス属に属する01−76D3物質生産菌を適当な培地に培養して製造される。本菌株の培養方法は、通常の真菌の培養方法が一般に適用される。
培地は、微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒素源、さらに必要に応じて無機塩などを含有させた栄養培地が適宜用いられる。
【0024】
同化し得る炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、糖密、澱粉、デキストリン、セルロース、グリセリン、有機酸などを単独または組み合わせて用いることができ、消化し得る窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、カゼイン、大豆蛋白加水分解物、アミノ酸、尿素などの有機窒素源、硝酸塩、アンモニウム塩などの無機窒素化合物を単独あるいは組み合わせて用いることができ、その他必要に応じてナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩などの無機塩、重金属塩類を添加してもよい。
さらに培地には、必要に応じて本菌の生育や01−76D3物質の生産を促進する微量栄養素、発育促進物質、前駆物質を適当に添加してもよい。
【0025】
培養方式は特に限定されないが、培養は好気的条件下で行ない、通常は振とうまたは通気撹拌培養を行なう。工業的には深部通気撹拌培養が好ましい。培地の酸性度は、pH6.8〜7.5の中性付近とする。培養温度は20〜37℃とし、通常は24〜30℃、好ましくは27℃付近に保つのがよい。培養時間は、本発明の01−76D3物質が生成蓄積され、培養物中の蓄積量が最大に達したときに培養を終了すればよく、通常液体培養の場合、3〜6日間培養を行なうと、本発明の01−76D3物質の蓄積量が最大に達する。
【0026】
これらの培養組成、培地の種類、酸性度、培養温度、撹拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株の種類や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られるように適宜調節、選択することができる。液体培養において発泡があるときは、例えばシリコン油、植物油、界面活性剤などの消泡剤を適宜使用してもよい。
【0027】
このようにして得られた培養物中に蓄積された01−76D3物質は、培養ろ液または培養菌体中に含まれているので、培養ろ液と菌体とに分離し、各々に01−76D3物質が可溶な有機溶媒を加え、01−76D3物質を抽出して採取するのが有利である。
培養ろ液と菌体との分離方法は特に限定されないが、必要に応じてろ過補助剤、例えばセライト、ハイフロースーパーセル等を用いてろ過するか、または遠心分離することができる
【0028】
培養ろ液から01−76D3物質を採取するには、まず培養ろ液を酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、クロロホルムなどの非親水性有機溶媒で抽出し、抽出液を減圧濃縮して粗製の物質、01−76D3物質が得られる。
【0029】
該粗製物質は、脂溶性物質の精製に通常用いられる公知の方法、例えばシリカゲル、アルミナなどの担体を用いるカラムクロマトグラフィーにより分離、精製することができる。
【0030】
菌体から01−76D3物質を採取するには、菌体を含水アセトン、含水メタノールなどの含水親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液を減圧濃縮し、その濃縮物を酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、クロロホルムなどの非親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液は、前記の培養液から得た抽出液と合わせて分離精製するか、あるいは前記と同じ方法によって01−76D3物質を分離、精製することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0032】
実施例:
500ml容三角フラスコに、澱粉2.4%、イーストエキストラクト0.5%、グルコース0.1%、ペプトン0.3%、肉エキス0.3%及びCaCO30.4%を含む培地(pH7.0に調整)100mlを仕込み、綿栓後、121℃で20分の条件で高圧蒸気滅菌した。充分に冷却した後、寒天培地上に生育させたストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01-76D3)の胞子を無菌的に植菌し、27℃で3日間振とう培養して種培養液を得た。
500ml容三角フラスコに、グリセロール2.0%、ソイトンペプトン1.0%、炭酸カルシウム0.3%、硫酸ナトリウム0.5%を含む培地(pH7.4に調整)を100ml仕込み、これを20本作成した。綿栓後、121℃で20分の条件で高圧蒸気滅菌し、充分に冷却した後、三角フラスコあたり上記種培養液2mlを無菌的に移植した。
これを27℃で5日間しんとう培養後、日立高速遠心分離機を用いて8000回転で上澄みと菌体に分離した。培養液上清1.8Lをイオン交換樹脂DAIAION HP-20(100ml、三菱化成工業(株)製)のカラムに通し、イオン交換水300mlで洗浄した後、50%アセトン水溶液300mlを流し01−76D3成分を溶出させ、溶出液を減圧濃縮してアセトンを留去した。得られた水溶液を等量のブタノールで3回抽出し、ブタノール層を集め、減圧乾固して褐色の粗物質708mgを得た。これをシリカゲル(20g,シリカゲル60(230-400メッシュ),メルク社製)のカラムにチャージし、クロロホルム0.1L、クロロホルム−メタノール(9:1)、(4:1)、(7:3)、(3:2)、(1:1)の溶液各0.15Lの順に段階的に溶出させた。
01−76D3成分を含むクロロホルム−メタノール(4:1)及び(7:3)画分を集め、減圧乾固して淡褐色の粗物質147mgを得た。これをSephadex LH-20(Amersham社製)のゲルろ過カラム(内径20mm、高さ565mm)にチャージし、メタノールで展開した。溶出液を15mlずつ100画分に分け、01−76D3成分を含む画分7から画分60を集め、白色粉末131mgを得た。
これを高速液体クロマトグラフィー(装置はセンシュー科学社製のHPLCシステム、カラムはセンシュー科学社製のSenshu Pak PEGASIL ODS(サイズ20×250mm)、検出はUV210nm、流速は7ml/分、カラム温度は40℃、移動相はアセトニトリル−50mM燐酸緩衝液(pH7.0)1:1混合液)に1回あたり5mgずつチャージして、溶出時間14.3分、38.4分、51.6分、及び57.4分に出現する画分を集めた。各画分を濃縮してアセトニトリルを留去した後、10%アセトニトリルで平衡化したODS(PEGASIL ODS 粒子径75〜150μm、孔径120センシュー科学社製)を充填したカラムにチャージし、10%アセトニトリル10mlで洗浄した後、70%アセトニトリルと90%アセトニトリル各10mlで溶出した。
これらの溶出液を濃縮乾固することにより溶出時間38.4分の画分から01−76D3−1物質、51.6分の画分から01−76D3−2物質、および57.4分の画分から01−76D3−3物質をそれぞれ3.46mg、7.17mgおよび2.94mg得た。
【0033】
次に、本発明の01−76D3−1物質(式(I)においてR=−(CH2)15CH3、M=Na)、01−76D3−2物質(式(I)においてR=−(CH2)14CH(CH3)2、M=Na)、及び01−76D3−3物質(式(I)においてR=−(CH2)16CH3、M=Na)の理化学的性状について述べる。
【0034】
[I]01−76D3−1物質
(1)分子式:C22H36O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z561.1546 (M+Na)が観察された)(計算値561.1545)。
(2)分子量:538(FABマススペクトルよりm/z561(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示す通りであり、209nm(ε=8,500)と266nm(ε=1,100)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図2に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3468,2917,2848,1589,1469,1261に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図3に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.89(3H分),1.28(4H),1.28〜1.33(22H),1.62(2H),2.58(2H),7.00(2H),7.04(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図4に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
15.2(1C分),24.5(1C),33.8(1C),31.2〜31.6(11C),33.1(1C),37.7(1C),114.0(1C),119.5(2C),146.6(1C),155.0(2C)。
【0035】
以上、01−76D3−1物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−1物質は下記式(I−1)で表わされる化学構造であることが決定された。
【化4】
【0036】
[II]01−76D3−2物質
(1)分子式:C23H38O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z575.1697 (M+Na)が観察された)(計算値575.1701)。
(2)分子量:552(FABマススペクトルよりm/z575(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図9に示す通りであり、209nm(ε=7,700)と266nm(ε=460)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図10に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3465, 2920, 2848, 1589, 1469, 1296に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図11に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.87(6H分), 1.28(2H), 1.28〜1.33(24H), 1.53(1H), 1.62(2H), 2.58(2H), 7.00(2H), 7.04(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図12に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
23.8(2C分), 29.9(1C), 31.3〜31.8(11C), 33.1(1C), 37.7(1C), 41.0(1C), 114.0(1C), 119.4(2C), 146.5(1C), 155.0(2C)。
【0037】
以上、01−76D3−2物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−2物質は下記式(I−2)で示される化学構造であることが決定された。
【化5】
【0038】
[III]01−76D3−3物質
(1)分子式:C23H38O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z575.1704 (M+Na)が観察された)(計算値575.1701)。
(2)分子量:552(FABマススペクトルよりm/z575(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図13に示す通りであり、209nm(ε=6,700)と266nm(ε=500)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図14に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3467, 2924, 2852, 1592, 1466, 1266に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図15に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.89(3H分), 1.28(4H), 1.28〜1.33(24H), 1.62(2H), 2.58(2H), 7.00(2H), 7.05(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図16に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
15.1(1C分), 24.4(1C), 33.8(1C), 31.2〜31.6(12C), 33.1(1C), 37.2(1C), 114.0(1C), 119.4(2C), 146.5(1C), 155.0(2C)。
【0039】
以上、01−76D3−3物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−3物質は下記式(I−3)示される化学構造であることが決定された。
【化6】
【0040】
上記したように、01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質の各種理化学的性状について詳述したが、このような性質に一致する化合物はこれまでに全く報告されておらず、01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3−3物質は新規物質である。
【0041】
試験例:
次に、本発明の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物である01−76D3物質及び公知の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物であるパノシアリンA〜Dの生物学的試験について述べる。
【0042】
(1)黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素に対する阻害作用
HMG−CoA還元酵素活性は、Wildingらの方法(J. Bacteriol., 182巻, 5147〜5152頁, 2000年)を一部改変して行なった。酵素源としては、黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素遺伝子をPCRで増幅し、T7ファージ由来プロモーターにより大腸菌BL21(DE3)株においてIsopropyl-1-thio-β-D-galactopyranosideを0.1mMとなるように添加して黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素を誘導発現させることにより得られた形質転換大腸菌由来の無細胞抽出液を用いた。
上記形質転換大腸菌は氷冷した緩衝液A(20mM リン酸カルシウム緩衝液(pH7.5)、50mM 塩化ナトリウム、5mM EDTA(pH7.5)、10mM ジチオスレイトール、100mM ショ糖、1mM フェニルメチルスルフォニルフルオリド(PMSF)、10%グリセロール)に懸濁し、フレンチプレスを用いて1,000Kg/cm2の圧力で菌体を破砕した。これを18,800×gで4℃、10分間遠心し、得られた上清を100,000×g、4℃、90分間超遠心した。得られた上清を18.6mg/mlの蛋白質濃度となるように前記の緩衝液Aで調製し、無細胞抽出液とした。
HMG−CoA還元酵素活性の測定は、緩衝液B(25mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、50mM塩化ナトリウム、5mMジチオスレイトール、1mM EDTA、0.2mM NADPH)中で250μM HMG−CoAと01−76D3物質を加え全量92.5μlとして、96穴マイクロプレートの穴に入れた。酵素溶液(62μg/ml)7.5μlを加え全量を100μlとして、340nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで25秒間隔で20分間測定した。
HMG−CoA添加、無添加1分間あたりの吸光度の変化を求め、HMG−CoA還元酵素阻害率を下記の式から算出した。
【数1】
その算出結果、01−76D3物質のHMG−CoA還元酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は、01−76D3−1物質で3.53μM、01−76D3−2物質で3.62μM、01−76D3−3物質で3.62μMと測定された。
また、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)の培養物より精製したパノシアリンA、B、C及びDについて同様にして測定したHMG−CoA還元酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は各々、3.82μM、3.82μM、3.35μM、及び3.53μMであった。
【0043】
(2)抗細菌作用について
次に、本発明の01−76D3物質の抗菌活性について以下に述べる。黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する抗菌活性を日本化学療法学会により規定された微量液体希釈法(Chemotherapy, 41巻, 183頁, 1993年)に従って測定した。その結果、本発明の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物である01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、01−76D3−3物質とも黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する最小発育阻止濃度は31.3μg/mlと測定された。同様にパノシアリンA、B、C及びDについて測定した黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する最小発育阻止濃度は31.3μg/mlと測定された。
【0044】
以上に詳しく述べたように、本発明による新規パノシアリン類(01−76D3物質)及び公知のパノシアリン類はHMG−CoA還元酵素に対して阻害活性を示し、黄色ブドウ球菌FDA209P株に対して抗菌活性を示すことから、抗細菌剤として有用であると期待される。
【0045】
以上、本発明を、ストレプトミセス属に属する微生物が生産する一般式(I)においてMがNaであるナトリウム塩化合物について説明したが、当業者であれば、ナトリウム塩化合物から対応するMが水素原子を表わすフリー体を調製すること、及びフリー体を経由して他の塩類(例えば、カリウム塩、アンモニウム塩等)に容易に誘導できることは明らかであり、またこれらがナトリウム塩化合物と同等の活性有することも予想されるところである。したがって、ナトリウム塩化合物に対応するフリー体及び他の塩類も本発明の範囲に含まれる。
さらに、一般式(I)で示される化合物は、ストレプトミセス属に属する微生物が生産するものに限定されず、例えば、非特許文献2(The Jounal of Antibiotics, 24, 870-875(1971))に記載の方法に準じて合成される合成品も当然に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上の通り、ストレプトミセス属に属する01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中から01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3−3物質を採取することにより、HMG−CoA還元酵素に対する阻害活性物質が得られた。該物質は多剤耐性菌などによる難治性の細菌感染症に対する抗細菌剤としての効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による01−76D3−1物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図2】本発明による01−76D3−1物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図3】本発明による01−76D3−1物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図4】本発明による01−76D3−1物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図5】本発明による01−76D3−2物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図6】本発明による01−76D3−2物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図7】本発明による01−76D3−2物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図8】本発明による01−76D3−2物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図9】本発明による01−76D3−3物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図10】本発明による01−76D3−3物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図11】本発明による01−76D3−3物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図12】本発明による01−76D3−3物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物が生産する脂質代謝阻害活性を有する5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物、その製造方法及びHMG−CoA還元酵素阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌感染症の予防及び治療には各種ベータラクタム抗生物質、アミノ配糖体、マクロライド、グリコペプチド、キノロンなどが使われてきたが、最近これらの抗生物質に耐性を示す感染菌が増加しており、従来のタイプとは異なる抗生物質が渇望されている。
【0003】
かかる実情において、HMG−CoA還元酵素はHMG−CoAを基質としてメバロン酸を生成する酵素であり、本酵素を阻害する抗菌剤は未だ実用化に至っていない。従って、本酵素を阻害する薬剤の発見は、上記の課題を解決し得ると考えられ、MRSAやVREなどの多剤耐性菌による難治性の感染症の新しい治療剤として臨床できることが期待される。
【0004】
本発明に関連する先行技術には、ストレプトミセス属に属する微生物培養液から単離した5−アルキルベンゼンスルフェート類(ただし、5−アルキルは炭素原子数15〜16である。)をパノシアリン(panosialin)と命名し、パノシアリン類(panosialins)がシアリダーゼ(sialidase)、酸性ホスファターゼ(acid phosphatase)及びポリガラクツロナーゼ(polygalacturonase)阻害作用を有することを報告している(The Jounal of Antibiotics, 24, 860-875(1971);非特許文献1)、また、同様にストレプトミセス属に属する微生物培養液から5−アルキル部分の炭素原子数が15〜16のパノシアリン類似体がグリコシダーゼ阻害活性を有する旨の報告が有るが(The Jounal of Antibiotics, 48, 205-210(1995);非特許文献2)、5−アルキルベンゼンスルフェート類がHMG−CoA還元酵素阻害活性を有することについては全く記載がない。
【0005】
【非特許文献1】The Jounal of Antibiotics, 24, 860-875(1971)
【非特許文献2】The Jounal of Antibiotics, 48, 205-210(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、微生物のHMG−CoA還元酵素に対して阻害作用を有することにより、抗細菌剤として臨床できる新規物質及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、土壌より新たに分離されたストレプトミセス属(Streptomyces sp.)に属する菌株の培養物中に、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する物質が産生されることを見出した。次いで、該培養物中から本HMG−CoA還元酵素を阻害する活性物質を分離、精製したところ、公知のパノシアリンに比べて5位のアルキル基の構造が異なり、炭素原子数が16〜17個の類似体である後記式(I−1)〜(I−3)で示される化学構造を有する新規物質を見出した。
【0008】
これらの物質は従来全く知られていないことから、各々本物質を01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質と称し、その総称を01−76D3物質と称することにした。また、公知のパノシアリン類についてHMG−CoA還元酵素阻害活性を測定したところ、上記01−76D3−1、01−76D3−2、及び01−76D3―3物質と同等の活性を有することを初めて見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は下記1〜4の新規化合物、5〜12のHMG−CoA還元酵素阻害剤、13〜14の新規化合物の製造方法、及び15〜16の新規微生物に関する。
1.下記式(I)
【化1】
(式中、Rは−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)。)
で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物。
2.Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
3.Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
4.Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記1に記載の化合物。
5.下記式(IA)
【化2】
(式中、RaはC10〜20の分岐していてもよいアルキル基を表わし、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤。
6.Rが−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3、−(CH2)12CH(CH3)2、−(CH2)13CH(CH3)2、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、及び−(CH2)16CH3から選択される基を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
7.Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
8.Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
9.Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
10.Rが−(CH2)12CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
11.Rが−(CH2)14CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
12.Rが−(CH2)13CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
13.Rが−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす前記5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
14.ストレプトミセス属に属し、下記式(I)
【化3】
(式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取することを特徴とする式(I)で示される化合物の製造方法。
15.ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である前記10記載の製造方法。
16.ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
17.微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である前記5記載の微生物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる新規化合物を示す一般式(I)において、Rが表わすアルキル基の具体例としては、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3が挙げられる。
【0011】
本発明にかかるHMG−CoA還元酵素阻害剤である一般式(IA)で示される化合物において、Raが表わすアルキル基の具体例としては、上記一般式(I)のRで挙げた例のほかに−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3(MがNaに対応するものがパノシアリンB)、−(CH2)12CH(CH3)2(MがNaに対応するものがパノシアリンA)、−(CH2)13CH(CH3)2(MがNaに対応するものがパノシアリンC)、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)(MがNaに対応するものがパノシアリンD)等が挙げられる。
【0012】
本発明において、一般式(I)及び(IA)中のMは水素原子を表わすか、MO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。塩としては特に限定されないが、公知のアルカリ金属(Na,K等)、アルカリ土類金属(Ca,Mg等)、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0013】
本発明の式(1)で示される新規5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物(01−76D3物質)を生産する能力を有する微生物(以下、「01−76D3物質生産菌」と称する)は、ストレプトミセス属に属するが、例えば本発明者らが分離したストレプトミセス エキナタス 01−76D3菌株が、本発明において最も有効に使用される菌株の一例である。本菌株の菌学的性状を示すと次の通りである。
【0014】
(I)形態的性質
栄養菌糸は各種寒天培地上でよく発達し、分断は観察されない。気菌糸はイースト・麦芽エキス寒天やオートミール寒天で豊富に着生し、白色から薄い茶褐色の色調を呈する。顕微鏡下の観察では、気菌糸上に20個以上の胞子の連鎖が認められ、その形態は螺旋状で、胞子の大きさは約0.7×0.9μmの円筒状である。胞子の表面は平滑である。菌核、胞子のう及び遊走子は見出されない。
【0015】
(II)各種培地上での性状
イー・ビー・シャーリング(E.B.Shirling)とデー・ゴットリーブ(D.Gottlieb)の方法(インターナショナル・ジャーナル・オブ・システィマティック・バクテリオロジー,16巻,313頁,1966年)によって調べた本生産菌の培養性状を次表に示す。色調は標準色として、カラー・ハーモニー・マニュアル第4版(コンテナー・コーポレーション・オブ・アメリカ・シカゴ、1958年)を用いて決定し、色票名とともに括弧内にそのコードを併せて記した。以下は特記しない限り、27℃、2週間目の各培地における観察の結果である。
【0016】
【表1】
【0017】
(III)生理学的諸性質
(1)メラニン色素の生成
(イ)チロシン寒天 陰 性
(ロ)ペプトン・イースト・鉄寒天 陰 性
(ハ)トリプトン・イースト液 陰 性
(ニ)単純ゼラチン培地(21〜23℃) 陰 性
(2)硝酸塩の還元 陰 性
(3)ゼラチンの液化(21〜23℃) 陰 性
(単純ゼラチン培地)
(4)スターチの加水分解 陽 性
(5)脱脂乳の凝固(37℃) 陰 性
(6)脱脂乳のペプトン化(37℃) 陽 性
(7)生育温度範囲 11〜45℃
(8)炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ寒天培地)
利用する:D−グルコース、L−アラビノース、D−マンニトール、
myo−イノシトール、D−キシロース、L−ラムノース、
D−フラクトース、シュークロース
やや利用する:メリビオース
利用しない:ラフィノース
(9)セルロースの分解 陰 性
【0018】
(IV)細胞壁組成
細胞壁のジアミノピメリン酸はLL型、主要メナキノンはMK−9(H6)とMK−9(H8)である。
【0019】
(V)結論
以上、本菌の菌学的性状を要約すると次の通りである。細胞壁中のジアミノピメリン酸はLL型、主要メナキノンはMK−9(H6)とMK−9(H8)である。胞子連鎖の形態は螺旋状で、長い胞子鎖を形成し、胞子の表面は平滑である。培養上の諸性質としては、栄養菌糸は黄色の色調を呈し、気菌糸は白色から茶褐色の色調を呈する。メラニン色素は産生しない。
【0020】
これらの結果及び16S rRNA 遺伝子の解析結果から、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー、4巻、1989年に基づくストレプトミセス属に属する菌種であると考えられる。
【0021】
なお、本菌株はストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3)として、平成17年2月15日に茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、受領番号はFERM ABP−10246である。
【0022】
また、本発明の好ましい菌株として01−76D3物質生産菌を挙げたが、菌の一般的性状として菌学上の性状はきわめて変異し易く、一定したものではなく、自然的にあるいは通常行なわれる紫外線照射、X線照射または変異誘導体剤、例えばN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネートなどを用いる人工的変異手段により変異することは周知の事実であり、このような人工的変異株は勿論、自然変異株も含め、ストレプトミセス属に属し、01−76D3物質を生産する能力を有する菌株は、すべて本発明に使用することができる。また、細胞融合、遺伝子操作などの細胞工学的に変異させた菌株も01−76D3物質生産菌として包含される。
【0023】
本発明の01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質は、ストレプトミセス属に属する01−76D3物質生産菌を適当な培地に培養して製造される。本菌株の培養方法は、通常の真菌の培養方法が一般に適用される。
培地は、微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒素源、さらに必要に応じて無機塩などを含有させた栄養培地が適宜用いられる。
【0024】
同化し得る炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、糖密、澱粉、デキストリン、セルロース、グリセリン、有機酸などを単独または組み合わせて用いることができ、消化し得る窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、カゼイン、大豆蛋白加水分解物、アミノ酸、尿素などの有機窒素源、硝酸塩、アンモニウム塩などの無機窒素化合物を単独あるいは組み合わせて用いることができ、その他必要に応じてナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩などの無機塩、重金属塩類を添加してもよい。
さらに培地には、必要に応じて本菌の生育や01−76D3物質の生産を促進する微量栄養素、発育促進物質、前駆物質を適当に添加してもよい。
【0025】
培養方式は特に限定されないが、培養は好気的条件下で行ない、通常は振とうまたは通気撹拌培養を行なう。工業的には深部通気撹拌培養が好ましい。培地の酸性度は、pH6.8〜7.5の中性付近とする。培養温度は20〜37℃とし、通常は24〜30℃、好ましくは27℃付近に保つのがよい。培養時間は、本発明の01−76D3物質が生成蓄積され、培養物中の蓄積量が最大に達したときに培養を終了すればよく、通常液体培養の場合、3〜6日間培養を行なうと、本発明の01−76D3物質の蓄積量が最大に達する。
【0026】
これらの培養組成、培地の種類、酸性度、培養温度、撹拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株の種類や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られるように適宜調節、選択することができる。液体培養において発泡があるときは、例えばシリコン油、植物油、界面活性剤などの消泡剤を適宜使用してもよい。
【0027】
このようにして得られた培養物中に蓄積された01−76D3物質は、培養ろ液または培養菌体中に含まれているので、培養ろ液と菌体とに分離し、各々に01−76D3物質が可溶な有機溶媒を加え、01−76D3物質を抽出して採取するのが有利である。
培養ろ液と菌体との分離方法は特に限定されないが、必要に応じてろ過補助剤、例えばセライト、ハイフロースーパーセル等を用いてろ過するか、または遠心分離することができる
【0028】
培養ろ液から01−76D3物質を採取するには、まず培養ろ液を酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、クロロホルムなどの非親水性有機溶媒で抽出し、抽出液を減圧濃縮して粗製の物質、01−76D3物質が得られる。
【0029】
該粗製物質は、脂溶性物質の精製に通常用いられる公知の方法、例えばシリカゲル、アルミナなどの担体を用いるカラムクロマトグラフィーにより分離、精製することができる。
【0030】
菌体から01−76D3物質を採取するには、菌体を含水アセトン、含水メタノールなどの含水親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液を減圧濃縮し、その濃縮物を酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、クロロホルムなどの非親水性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液は、前記の培養液から得た抽出液と合わせて分離精製するか、あるいは前記と同じ方法によって01−76D3物質を分離、精製することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0032】
実施例:
500ml容三角フラスコに、澱粉2.4%、イーストエキストラクト0.5%、グルコース0.1%、ペプトン0.3%、肉エキス0.3%及びCaCO30.4%を含む培地(pH7.0に調整)100mlを仕込み、綿栓後、121℃で20分の条件で高圧蒸気滅菌した。充分に冷却した後、寒天培地上に生育させたストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01-76D3)の胞子を無菌的に植菌し、27℃で3日間振とう培養して種培養液を得た。
500ml容三角フラスコに、グリセロール2.0%、ソイトンペプトン1.0%、炭酸カルシウム0.3%、硫酸ナトリウム0.5%を含む培地(pH7.4に調整)を100ml仕込み、これを20本作成した。綿栓後、121℃で20分の条件で高圧蒸気滅菌し、充分に冷却した後、三角フラスコあたり上記種培養液2mlを無菌的に移植した。
これを27℃で5日間しんとう培養後、日立高速遠心分離機を用いて8000回転で上澄みと菌体に分離した。培養液上清1.8Lをイオン交換樹脂DAIAION HP-20(100ml、三菱化成工業(株)製)のカラムに通し、イオン交換水300mlで洗浄した後、50%アセトン水溶液300mlを流し01−76D3成分を溶出させ、溶出液を減圧濃縮してアセトンを留去した。得られた水溶液を等量のブタノールで3回抽出し、ブタノール層を集め、減圧乾固して褐色の粗物質708mgを得た。これをシリカゲル(20g,シリカゲル60(230-400メッシュ),メルク社製)のカラムにチャージし、クロロホルム0.1L、クロロホルム−メタノール(9:1)、(4:1)、(7:3)、(3:2)、(1:1)の溶液各0.15Lの順に段階的に溶出させた。
01−76D3成分を含むクロロホルム−メタノール(4:1)及び(7:3)画分を集め、減圧乾固して淡褐色の粗物質147mgを得た。これをSephadex LH-20(Amersham社製)のゲルろ過カラム(内径20mm、高さ565mm)にチャージし、メタノールで展開した。溶出液を15mlずつ100画分に分け、01−76D3成分を含む画分7から画分60を集め、白色粉末131mgを得た。
これを高速液体クロマトグラフィー(装置はセンシュー科学社製のHPLCシステム、カラムはセンシュー科学社製のSenshu Pak PEGASIL ODS(サイズ20×250mm)、検出はUV210nm、流速は7ml/分、カラム温度は40℃、移動相はアセトニトリル−50mM燐酸緩衝液(pH7.0)1:1混合液)に1回あたり5mgずつチャージして、溶出時間14.3分、38.4分、51.6分、及び57.4分に出現する画分を集めた。各画分を濃縮してアセトニトリルを留去した後、10%アセトニトリルで平衡化したODS(PEGASIL ODS 粒子径75〜150μm、孔径120センシュー科学社製)を充填したカラムにチャージし、10%アセトニトリル10mlで洗浄した後、70%アセトニトリルと90%アセトニトリル各10mlで溶出した。
これらの溶出液を濃縮乾固することにより溶出時間38.4分の画分から01−76D3−1物質、51.6分の画分から01−76D3−2物質、および57.4分の画分から01−76D3−3物質をそれぞれ3.46mg、7.17mgおよび2.94mg得た。
【0033】
次に、本発明の01−76D3−1物質(式(I)においてR=−(CH2)15CH3、M=Na)、01−76D3−2物質(式(I)においてR=−(CH2)14CH(CH3)2、M=Na)、及び01−76D3−3物質(式(I)においてR=−(CH2)16CH3、M=Na)の理化学的性状について述べる。
【0034】
[I]01−76D3−1物質
(1)分子式:C22H36O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z561.1546 (M+Na)が観察された)(計算値561.1545)。
(2)分子量:538(FABマススペクトルよりm/z561(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示す通りであり、209nm(ε=8,500)と266nm(ε=1,100)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図2に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3468,2917,2848,1589,1469,1261に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図3に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.89(3H分),1.28(4H),1.28〜1.33(22H),1.62(2H),2.58(2H),7.00(2H),7.04(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図4に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
15.2(1C分),24.5(1C),33.8(1C),31.2〜31.6(11C),33.1(1C),37.7(1C),114.0(1C),119.5(2C),146.6(1C),155.0(2C)。
【0035】
以上、01−76D3−1物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−1物質は下記式(I−1)で表わされる化学構造であることが決定された。
【化4】
【0036】
[II]01−76D3−2物質
(1)分子式:C23H38O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z575.1697 (M+Na)が観察された)(計算値575.1701)。
(2)分子量:552(FABマススペクトルよりm/z575(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図9に示す通りであり、209nm(ε=7,700)と266nm(ε=460)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図10に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3465, 2920, 2848, 1589, 1469, 1296に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図11に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.87(6H分), 1.28(2H), 1.28〜1.33(24H), 1.53(1H), 1.62(2H), 2.58(2H), 7.00(2H), 7.04(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図12に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
23.8(2C分), 29.9(1C), 31.3〜31.8(11C), 33.1(1C), 37.7(1C), 41.0(1C), 114.0(1C), 119.4(2C), 146.5(1C), 155.0(2C)。
【0037】
以上、01−76D3−2物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−2物質は下記式(I−2)で示される化学構造であることが決定された。
【化5】
【0038】
[III]01−76D3−3物質
(1)分子式:C23H38O8S2Na2(高分解能FABマススペクトルでm/z575.1704 (M+Na)が観察された)(計算値575.1701)。
(2)分子量:552(FABマススペクトルよりm/z575(M+Na)+が観察された)。
(3)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは図13に示す通りであり、209nm(ε=6,700)と266nm(ε=500)に特徴的な吸収極大を示す。
(4)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは図14に示す通りであり、λmaxKBrcm-1:3467, 2924, 2852, 1592, 1466, 1266に特徴的な吸収帯を有する。
(5)溶剤に対する溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに可溶、酢酸エチル、クロロホルム、に不溶。
(6)塩基性、酸性、中性の区別:中性。
(7)物質の色、形状:無色粉末状物質。
(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スペクトル(重メタノール中で測定、600MHz)は図15に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
0.89(3H分), 1.28(4H), 1.28〜1.33(24H), 1.62(2H), 2.58(2H), 7.00(2H), 7.05(1H)。
(9)カーボン核磁気共鳴スペクトル:バリアン社製、核磁気共鳴スペクトロメータを用いて測定したカーボン磁気共鳴スペクトル(重メタノ−ル中で測定、150MHz)は図16に示す通りであり、水素及び炭素の化学シフト(ppm)は、下記に示す通りである。
15.1(1C分), 24.4(1C), 33.8(1C), 31.2〜31.6(12C), 33.1(1C), 37.2(1C), 114.0(1C), 119.4(2C), 146.5(1C), 155.0(2C)。
【0039】
以上、01−76D3−3物質の各種理化学的性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、01−76D3−3物質は下記式(I−3)示される化学構造であることが決定された。
【化6】
【0040】
上記したように、01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質の各種理化学的性状について詳述したが、このような性質に一致する化合物はこれまでに全く報告されておらず、01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3−3物質は新規物質である。
【0041】
試験例:
次に、本発明の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物である01−76D3物質及び公知の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物であるパノシアリンA〜Dの生物学的試験について述べる。
【0042】
(1)黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素に対する阻害作用
HMG−CoA還元酵素活性は、Wildingらの方法(J. Bacteriol., 182巻, 5147〜5152頁, 2000年)を一部改変して行なった。酵素源としては、黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素遺伝子をPCRで増幅し、T7ファージ由来プロモーターにより大腸菌BL21(DE3)株においてIsopropyl-1-thio-β-D-galactopyranosideを0.1mMとなるように添加して黄色ブドウ球菌由来HMG−CoA還元酵素を誘導発現させることにより得られた形質転換大腸菌由来の無細胞抽出液を用いた。
上記形質転換大腸菌は氷冷した緩衝液A(20mM リン酸カルシウム緩衝液(pH7.5)、50mM 塩化ナトリウム、5mM EDTA(pH7.5)、10mM ジチオスレイトール、100mM ショ糖、1mM フェニルメチルスルフォニルフルオリド(PMSF)、10%グリセロール)に懸濁し、フレンチプレスを用いて1,000Kg/cm2の圧力で菌体を破砕した。これを18,800×gで4℃、10分間遠心し、得られた上清を100,000×g、4℃、90分間超遠心した。得られた上清を18.6mg/mlの蛋白質濃度となるように前記の緩衝液Aで調製し、無細胞抽出液とした。
HMG−CoA還元酵素活性の測定は、緩衝液B(25mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、50mM塩化ナトリウム、5mMジチオスレイトール、1mM EDTA、0.2mM NADPH)中で250μM HMG−CoAと01−76D3物質を加え全量92.5μlとして、96穴マイクロプレートの穴に入れた。酵素溶液(62μg/ml)7.5μlを加え全量を100μlとして、340nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで25秒間隔で20分間測定した。
HMG−CoA添加、無添加1分間あたりの吸光度の変化を求め、HMG−CoA還元酵素阻害率を下記の式から算出した。
【数1】
その算出結果、01−76D3物質のHMG−CoA還元酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は、01−76D3−1物質で3.53μM、01−76D3−2物質で3.62μM、01−76D3−3物質で3.62μMと測定された。
また、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)の培養物より精製したパノシアリンA、B、C及びDについて同様にして測定したHMG−CoA還元酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は各々、3.82μM、3.82μM、3.35μM、及び3.53μMであった。
【0043】
(2)抗細菌作用について
次に、本発明の01−76D3物質の抗菌活性について以下に述べる。黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する抗菌活性を日本化学療法学会により規定された微量液体希釈法(Chemotherapy, 41巻, 183頁, 1993年)に従って測定した。その結果、本発明の5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物である01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、01−76D3−3物質とも黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する最小発育阻止濃度は31.3μg/mlと測定された。同様にパノシアリンA、B、C及びDについて測定した黄色ブドウ球菌FDA209P株に対する最小発育阻止濃度は31.3μg/mlと測定された。
【0044】
以上に詳しく述べたように、本発明による新規パノシアリン類(01−76D3物質)及び公知のパノシアリン類はHMG−CoA還元酵素に対して阻害活性を示し、黄色ブドウ球菌FDA209P株に対して抗菌活性を示すことから、抗細菌剤として有用であると期待される。
【0045】
以上、本発明を、ストレプトミセス属に属する微生物が生産する一般式(I)においてMがNaであるナトリウム塩化合物について説明したが、当業者であれば、ナトリウム塩化合物から対応するMが水素原子を表わすフリー体を調製すること、及びフリー体を経由して他の塩類(例えば、カリウム塩、アンモニウム塩等)に容易に誘導できることは明らかであり、またこれらがナトリウム塩化合物と同等の活性有することも予想されるところである。したがって、ナトリウム塩化合物に対応するフリー体及び他の塩類も本発明の範囲に含まれる。
さらに、一般式(I)で示される化合物は、ストレプトミセス属に属する微生物が生産するものに限定されず、例えば、非特許文献2(The Jounal of Antibiotics, 24, 870-875(1971))に記載の方法に準じて合成される合成品も当然に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上の通り、ストレプトミセス属に属する01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3―3物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養して、その培養物中から01−76D3−1物質、01−76D3−2物質、及び01−76D3−3物質を採取することにより、HMG−CoA還元酵素に対する阻害活性物質が得られた。該物質は多剤耐性菌などによる難治性の細菌感染症に対する抗細菌剤としての効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による01−76D3−1物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図2】本発明による01−76D3−1物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図3】本発明による01−76D3−1物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図4】本発明による01−76D3−1物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図5】本発明による01−76D3−2物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図6】本発明による01−76D3−2物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図7】本発明による01−76D3−2物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図8】本発明による01−76D3−2物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図9】本発明による01−76D3−3物質の紫外部吸収スペクトル(CH3OH中)を示す。
【図10】本発明による01−76D3−3物質の赤外部吸収スペクトル(KBr法)を示す。
【図11】本発明による01−76D3−3物質のプロトン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【図12】本発明による01−76D3−3物質のカーボン核磁気共鳴スペクトル(CD3OD)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、Rは−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)
で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物。
【請求項2】
Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記式(IA)
【化2】
(式中、RaはC10〜20の分岐していてもよいアルキル基を表わし、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項6】
Rが−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3、−(CH2)12CH(CH3)2、−(CH2)13CH(CH3)2、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、及び−(CH2)16CH3から選択される基を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項7】
Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項8】
Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項9】
Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項10】
Rが−(CH2)12CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項11】
Rが−(CH2)14CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項12】
Rが−(CH2)13CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項13】
Rが−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項14】
ストレプトミセス属に属し、下記式(I)
【化3】
(式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取することを特徴とする式(I)で示される化合物の製造方法。
【請求項15】
ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
【請求項17】
微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である請求項5記載の微生物。
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、Rは−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、−(CH2)16CH3、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)
で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物。
【請求項2】
Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記式(IA)
【化2】
(式中、RaはC10〜20の分岐していてもよいアルキル基を表わし、Mは水素原子を表わすか、またはMO3S−基がスルホン酸基(HO3S−)の塩を表わす。)で示される5−アルキルベンゼン−1,3−ジスルフェート化合物からなるHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項6】
Rが−(CH2)12CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)14CH3、−(CH2)12CH(CH3)2、−(CH2)13CH(CH3)2、−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)、−(CH2)15CH3、−(CH2)14CH(CH3)2、及び−(CH2)16CH3から選択される基を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項7】
Rが−(CH2)15CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項8】
Rが−(CH2)14CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項9】
Rが−(CH2)16CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項10】
Rが−(CH2)12CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項11】
Rが−(CH2)14CH3を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項12】
Rが−(CH2)13CH(CH3)2を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項13】
Rが−(CH2)12CH(CH3)(CH2CH3)を表わし、MO3S−基がスルホン酸基のNa塩を表わす請求項5に記載のHMG−CoA還元酵素阻害剤。
【請求項14】
ストレプトミセス属に属し、下記式(I)
【化3】
(式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、培養液中に前記化合物を蓄積せしめ、培養物から前記化合物を採取することを特徴とする式(I)で示される化合物の製造方法。
【請求項15】
ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
ストレプトミセス属に属し、式(I)で示される化合物を生産する能力を有する微生物。
【請求項17】
微生物が、ストレプトミセス エキナタス 01−76D3(Streptomyces echinatus 01−76D3,受領番号:FERM ABP−10246)である請求項5記載の微生物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−232741(P2006−232741A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50600(P2005−50600)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(598041566)学校法人北里学園 (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(598041566)学校法人北里学園 (180)
【Fターム(参考)】
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