説明

HPVの発癌性株に対する抗体およびそれらの使用方法

本発明は少なくとも3種のHPVの発癌性株に由来するE6タンパク質に結合する、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む抗体を提供する。一般的に、抗体は異なるHPV株、特にHPV株16および18のE6タンパク質間で保存されているアミノ酸モチーフに結合する。本抗体を用いて試料中のHPV E6タンパク質を検出することができ、従って、抗体は癌の診断法を含む、さまざまな診断への適用に有用である。本方法を実施するための、本抗体を含むキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の発癌性株の検出に関する。
【0002】
相互参照
本出願は、その全体があらゆる目的で本明細書に組み入れられる、2003年12月23日出願の米国特許仮出願第60/532,373号恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
子宮頚癌は女性において2番目に多く診断される癌であり、現在、ヒト乳頭腫ウイルス感染と99.7%の高リスクで関連している。現在のところ、米国の女性で毎年、12,000の浸潤性子宮頸癌の新規症例が診断されており、その結果毎年5,000人が死亡している。さらに、世界中では子宮頸癌が約400,000症例存在し、毎年ほぼ200,000人が死亡している。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は世界中で、性感染症の最も一般的な原因の一つとなっている。全体的に見て、性的に活発な男性および女性の50%〜75%が、人生のある時期に性器にHPV感染を得る。米国だけでも、毎年推定550万人がHPVに感染し、少なくとも2,000万人が現在感染している。HPVの100を超える異なる分離株が、子宮頸癌、または良性の頸部病変もしくは形成異常との関連に基づき、高リスクおよび低リスクの亜型に大まかに細分されている。
【0004】
数多くの一連の証拠がHPV感染は子宮頸癌の病原因子であると指摘している。1980年代の複数の研究が子宮頸部の形成異常、癌、および子宮頸癌由来の細胞系におけるHPV変異体の存在を報告した。さらなる研究から、発癌性HPV 18由来のゲノムのE6〜E7領域が、子宮頸癌細胞で選択的に保持されていることが示され、HPV感染が原因であり得ること、および不死化状態または癌状態の維持にE6〜E7領域の継続的な発現が必要であることが示唆された。さらなる研究から、HPV 16由来のE6〜E7遺伝子が培養中のヒトケラチノサイトを不死化するのに十分であることが示された。高リスクHPV由来のE6〜E7遺伝子は細胞系を形質転換し得る、HPV 6およびHPV 11などの低リスクまたは非発癌性の変異体由来のE6〜E7領域はヒトケラチノサイトを形質転換し得ないことも示された。腫瘍進行の様々な段階にある623の子宮頸部組織試料において、HPV 16および18の感染がインサイチューハイブリダイゼーションにより、E6タンパク質の発現が免疫細胞化学により調べられ、組織学的異常とHPV感染の間に有意な相関関係が見いだされた。
【0005】
1.発癌性HPV感染の早期および正確な診断、ならびに疾患の進行初期に介入して子宮頸癌の発生を予防する、原因となるHPV感染に対する処置については、重大な満たされていない要件が存在する。現在までに特徴づけられたヒト乳頭腫ウイルスは、皮膚の上皮層、または口腔、咽頭、呼吸器、および最も重要なことには、肛門性器粘膜に限局した病変に関連付けられている。HPV 6および11を含む特定のヒト乳頭腫ウイルス型は、しばしば良性の粘膜病変を引き起こし、一方でHPV 16、18および他の株の宿主など、他の型は高度の病変および癌で主に見いだされている。粘膜表面に感染するヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の各型は、子宮頸癌、乳癌(Yu et al. (1999) Anticancer Res. 19: 55555057-5061; Liu et al. (2001) J. Hum. Virol. 44:329-334)、肛門癌、陰茎癌、前立腺癌(De Villiers et al. (1989) Virology 171:248:253)、喉頭癌、および口腔癌、扁桃腺癌(Snijders et al. (1994) J. Gen. Virol. 75(Pt 10):2769-2775)、鼻腔癌(Trujillo et al. (1996) Virus Genes 12:165-178; Wu et al. (1993) Lancet 341:522-524)、皮膚癌(Trenfield et al. (1993) Australas. J. Dermatol. 34:71-78)、膀胱癌(Baithun et al. (1998) Cancer Surv. 31:17-27)、頭頸部扁平上皮細胞癌(Braakhuis et al. (2004) J. Natl. Cancer Inst. 96:978-980)、副次的ペリウンガル(periungal)癌、ならびに良性の肛門性器疣贅の原因因子としての関与が示唆されている。特定のHPV型の同定を用いて、悪性腫瘍への進行のリスクがある前癌病変を有する患者が同定されている。ヒト乳頭腫ウイルスに感染したヒトに明らかな肛門性器病変が存在する場合もあるものの、生殖道へのHPV感染を有する個体の大部分は臨床的に明らかな疾患をもたないが、子宮頸部塗抹標本中に存在する細胞形態学的形質の分析を用いてHPV感染を検出することができる。パパニコロー試験は有益なスクリーニング手段であるが、不運な偽陽性および偽陰性試験結果のためにHPV感染者の多くの割合を見逃してしまう。さらに、結果の解釈には訓練を受けた病理学者が必要であることから、パパニコロー試験は世界中での検査には適していない。
【0006】
HPV感染はネザートン症候群(Weber et al. (2001) Br. J. Dermatol. 144:1044-1049)および疣贅状表皮剥離(epidermolysis verruciformis)(Rubaie et al. (1998) Int. J. Dermatol. 37:766-771)にも関連付けられている。HPVはまた母親により胎児に伝染される(Smith et al. (2004) Sex. Transm. Dis. 31:57-62; Xu et al. (1998) Chin. Med.Sci. J. 13:29-31; Cason et al. (1998) Intervirology 41:213-218)。
【0007】
疾患の検出および診断は疾患の処置のための必要条件である。疾患の数多くのマーカーおよび特徴が同定されており、多くが疾患の診断に用いられている。冒された細胞の状態変化が、多くの疾患に先立って起こり、かつ疾患を特徴づける。変化には、感染細胞における病原体遺伝子またはタンパク質の発現、冒された細胞における遺伝子またはタンパク質の発現パターンの変化、および細胞形態の変化が含まれ得る。疾患の検出、診断、および監視はこれらの変化の正確な評価により補助され得る。安価で、迅速な、早期の、かつ正確な病原体の検出により、影響が不快感から死にわたる、疾患の処置および予防が可能となる。
【0008】
文献
関心対象の文献は以下の参考文献を含む:

【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、少なくとも3種の異なるHPVの発癌性株由来のE6タンパク質に結合する、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む抗体を提供する。一般的に、抗体は異なるHPV株の、特にHPV株16および18の、E6タンパク質間で保存されているアミノ酸モチーフに結合する。本抗体は試料中のHPV E6タンパク質の検出のために使用可能であり、従って、抗体は癌診断の方法を含む、さまざまな診断適用において用いられる。本方法を実施するための、本抗体を含むキットも提供されている。
【0010】
ある態様において、本発明は少なくとも3種(例えば、4、5、6、7、もしくは8、またはそれ以上、通常最大10または12)の異なる発癌性HPV株のE6タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む抗体組成物を提供する。この抗体組成物はHPV株16、18、31、33、および45(例えば、HPV株16、18、31、33、45、52、および58、HPV株16、18、31、33、45、52、58、35、および59、またはHPV株16、18、26、30、31、33、34、45、51、52、53、58、59、66、68b、69、70、73、および82)のE6タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体の混合物を含み得、ここで該モノクローナル抗体のうち少なくとも1つは、少なくとも3種の異なる発癌性HPV株のE6タンパク質に特異的に結合する。ある態様において、モノクローナル抗体はHPV株16および18のE6タンパク質に結合し得、該抗体はHPV株16 E6のSEQ ID NO:1、3、または5、およびHPV株18 E6のSEQ ID NO: 2、4、または6に結合する。ある態様において、モノクローナル抗体はHPV株16および45、またはHPV株16、18、31、33、および45のE6タンパク質に結合する。
【0011】
本発明は、試料中のHPV E6タンパク質を検出する方法も提供する。この方法は通常、本抗体組成物を試料と接触させる段階、および組成物中の抗体と試料との任意の結合を検出する段階を含み、ここで抗体と試料との結合はHPV E6タンパク質の存在を示す。試料はHPVの発癌性株を含むのではないかと疑われ得る。
【0012】
本発明は、試料中の発癌性HPV E6ポリペプチドの存在を検出する系も提供する。この系は通常、発癌性HPV E6ポリペプチドに対する第一および第二の結合パートナーを含む系であって、ここで第一結合パートナーはPDZドメインタンパク質であり、かつ該第二結合パートナーは本抗体である系である。該結合パートナーの少なくとも1つが固体支持体に接着されている
【0013】
本発明は、試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を検出する方法も提供する。この方法は通常以下の段階を含み:発癌性HPV E6タンパク質を含む試料をPDZドメインポリペプチドと接触させる段階;および本抗体を用いて該試料中の発癌性HPV E6タンパク質と該PDZドメインポリペプチドとの任意の結合を検出する段階、ここで該発癌性HPV E6タンパク質とPDZドメインポリペプチドとの結合は該試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を示す。
【0014】
本発明は本抗体;およびHPV E6タンパク質を検出するために抗体を使用するための説明書を含むキットも提供する。キットにはPDZドメインポリペプチドが含まれてもよい。
【0015】
本発明は、表1に示される配列のうちの任意の1つを含む、15アミノ酸未満のペプチドも提供する。
【0016】
定義
本発明についてさらに記載する前に、本発明が記載された特定の態様に限定されず、もちろん変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の態様だけを記載することを目的としており、限定する意図はないこともまた理解されるべきである。他に定義されていない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0017】
値の範囲が提供されている場合は、他で文脈が明確に示さない限り、下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限および下限値の間に介在する各値、およびその指定範囲内の任意の他の指定値または介在値が、本発明に包含されると理解される。指定範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として、これらの小さな範囲の上限および下限値は独立にそれらの小さな範囲に含まれ得、かつ同様に本発明に包含される。指定範囲が限度の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限度の一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0018】
本出願を通じて、さまざまな刊行物、特許および公開された特許出願が引用されている。本出願において参照されるこれらの刊行物、特許および公開された特許出願の開示は、これにより本開示中にそれらの全体が参照により組み入れられる。本明細書における、刊行物、特許または公開された特許出願の出願人による引用は、該刊行物、特許または公開された特許出願の先行技術としての出願人による承認ではない。
【0019】
本明細書および添付された特許請求の範囲において用いられるように、単数形の「ある(a)」、「および(and)」および「その(the)」は、特に文脈が明確に示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなくてはならない。従って、例えば、「ある試料」との言及はそのような複数の試料を含み、および「その抗体」との言及は1つまたは複数の抗体および当業者に公知のそれらの同等物への言及を含む、などである。特許請求の範囲は任意のある要素を除外するよう立案され得ることをさらに注記する。そのような場合において、この記述は「単独で」、「だけ」などの排他的な用語を請求項要素の列挙に関連して使用するため、または「否定的な」限定を使用するための先行する根拠として機能させることを意図している。
【0020】
「バイオポリマー」とは、供給源にかかわらず、1つまたは複数の型の反復単位のポリマーである。バイオポリマーは生物系に見いだされ得、かつ特にポリペプチドおよびポリヌクレオチド、ならびにアミノ酸、ヌクレオチド、またはそれらの類似体を含む、そのような化合物を含む。「ポリヌクレオチド」という用語はヌクレオチドまたはそれらの類似体の任意の長さのポリマーを意味し、10〜100ヌクレオチドの範囲の長さのオリゴヌクレオチドおよび100ヌクレオチドを超える長さのポリヌクレオチドを含む。「ポリペプチド」という用語は任意の長さのアミノ酸のポリマーを意味し、6〜50アミノ酸の範囲の長さのペプチドおよび約50アミノ酸を超える長さのポリペプチドを含む。
【0021】
大半の態様において、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同義的に用いられる。「ポリペプチド」という用語は、通常のバックボーンが非天然または合成のバックボーンに置換されているポリペプチド、および1つまたは複数の通常のアミノ酸が、ペプチド結合相互作用に関与可能な、非天然または合成のアミノ酸に置換されているペプチドを含む。「融合タンパク質」という用語またはその文法的同義語は、天然の状態では典型的に接着していないが、それらのそれぞれのアミノ末端およびカルボキシル末端でペプチド結合を介して典型的に結合し単一の連続したポリペプチドを形成している、複数のポリペプチド成分からなるタンパク質を意味する。融合タンパク質は2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれ以上さえの異なるタンパク質の組み合わせであり得る。ポリペプチドという用語は、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端のメチオニン残基の有無を問わない異種および同種のリーダー配列との融合体;免疫学的に標識されたタンパク質;例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質などの、検出可能な融合パートナーとの融合タンパク質などを含む融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0022】
一般的に、ポリペプチドは任意の長さ、例えば、2アミノ酸より長い、4アミノ酸より長い、約10アミノ酸より長い、約20アミノ酸より長い、約50アミノ酸より長い、約100アミノ酸より長い、約300アミノ酸より長い、通常最長で約500アミノ酸もしくは1000アミノ酸またはそれ以上であり得る。「ペプチド」は通常2アミノ酸より長く、4アミノ酸より長く、約10アミノ酸より長く、約20アミノ酸より長く、通常最長で約50アミノ酸である。いくつかの態様において、ペプチドは5〜30アミノ酸の間、または8〜15アミノ酸の間の長さである。
【0023】
「捕捉剤」という用語は、異なる分析物の均一混合物からその分析物にその物質が結合しかつそれを濃縮することを十分可能にするような相互作用を通じて分析物に結合する作用物質を意味する。結合相互作用は典型的に捕捉剤の親和性領域により媒介される。典型的な捕捉剤には、任意のポリペプチド、例えば、PDZタンパク質が含まれるが、抗体が用いられてもよい。捕捉剤は通常1つまたは複数の分析物、例えば発癌性E6タンパク質に「特異的に結合」する。従って、「捕捉剤」という用語は分析物に特異的に結合できる、例えば約10-6M未満の解離定数(KD)でその捕捉剤に対応する分析物に特異的に結合し、他の標的に結合しない、分子または多分子複合体を意味する。
【0024】
「特異的な結合」という用語は、捕捉剤が異なる分析物の均一混合物中に存在する特定の分析物に優先的に結合する能力を意味する。典型的に、特異的な結合相互作用は、試料中の所望の分析物と所望しない分析物を、典型的に約10倍〜100倍またはそれ以上(例えば、約1000倍もしくは10,000倍)より高く区別する。典型的に、捕捉剤/分析物複合体内で特異的に結合している場合の捕捉剤と分析物の間の親和性は、少なくとも10-7M、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、通常最大約10-10Mである。
【0025】
「捕捉剤/分析物複合体」という用語は、捕捉剤と分析物との特異的な結合の結果生じた複合体であり、つまり、「結合パートナー対」である。捕捉剤およびその捕捉剤に対応する分析物は典型的に、「特異的な結合に適した条件」下で互いに特異的に結合し、ここで、そのような条件は溶液中で捕捉剤と分析物の間の結合で生じることを可能にする(塩濃度、pH、界面活性剤、タンパク質濃度、温度、などに関する)条件である。そのような条件は、特に抗体およびそれらの抗原について、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane (Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい)。特異的な結合に適した条件は典型的に、約10-6M未満の解離定数(KD)を有する捕捉剤および標的の対が互いに結合することを可能にするが、他の捕捉剤または標的との結合は許さない。
【0026】
本明細書において使用されるように、「結合パートナー」および同義語は、捕捉剤/分析物複合体中に見いだされ得る、つまり互いに特異的な結合を示す分子の対を意味する。
【0027】
「表面結合性捕捉剤」という文言は、固体の基体表面に固定化された捕捉剤を意味し、ここで基体はさまざまな形状、例えば薄板、ビーズ、細片、またはくぼみ付きのプレートなど他の構造を有し得る。
【0028】
「所定の」という用語はその使用前に主体が公知である要素を意味する。例えば、「所定の分析物」とは捕捉剤との任意の結合の前に主体が公知である分析物である。要素は、名前、配列、分子量、その機能、または他の任意の属性もしくは識別名によって公知であり得る。いくつかの態様において、「関心対象の分析物」、つまり関心対象の公知の分析物は、「所定の分析物」という用語と同意で用いられる。
【0029】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は本明細書において同義的に用いられ、少なくとも1つの抗体のエピトープ結合ドメインを有する捕捉剤の型を意味する。これらの用語は、当業者には十分理解され、抗原に特異的に結合する1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質を意味する。抗体の1つの形態は抗体の基本的な構造単位を構成する。この形態は四量体であり、それぞれ1つの軽鎖と1つの重鎖を有する、抗体鎖の2つの同一対からなる。各対において、軽鎖および重鎖可変領域が共に抗原との結合に関与し、かつ定常領域は抗体のエフェクター機能に関与している。
【0030】
認識されている免疫グロブリンのポリペプチドには、κおよびλ軽鎖、ならびにα、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、εおよびμ重鎖、または他の種での同等物が含まれる。全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸)は、NH2末端に約110アミノ酸の可変領域およびCOOH末端にκまたはλ定常領域を含む。全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは446アミノ酸)は、同様に可変領域(約116アミノ酸)および上記の重鎖定常領域のうち1つ、例えばγ(約330アミノ酸)を含む。
【0031】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソタイプ、Fab、Fv、scFv、およびFd断片を含むがこれらに限定されない、抗原との特異的な結合を保持している抗体の断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含む。抗体は、例えば放射性同位体、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光タンパク質などを用いて、検出可能になるよう標識されてもよい。抗体はさらに、特異的な結合対のメンバー、例えばビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)などの、他の成分と結合され得る。抗体は、ポリスチレンプレートまたはビーズなどを含むがこれらに限定されない固体支持体に結合されてもよい。抗原との特異的な結合を保持しているFab'、Fv、F(ab')2および/または他の抗体断片もこれらの用語に包含される。
【0032】
抗体は、例えばFv、Fab、および(Fab')2、ならびに二機能性(つまり、二特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))および一本鎖(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Huston et al.., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988)およびBird et al.., Science, 242, 423-426 (1988))を含む他のさまざまな形状で存在し得る。(一般的にはHood et al, Immunology, Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984)およびHunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照されたい。)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および「ファージ提示」抗体は当技術分野において周知であり、かつ「抗体」という用語に包含される。
【0033】
「混合物」という用語は、本明細書において使用されるように、散在しかつ任意の特定の順番がない要素、例えば、捕捉剤または分析物の組み合わせを意味する。混合物は均一でその異なる構成成分ごとに空間的に分離することはできない。要素の混合物の例には、同一の水溶液中に溶解された多くの異なる要素、またはランダムにもしくは特別な順序なしに固体支持体に接着された多くの異なる要素であって、個々の要素は特に区別がつかない多種の要素が含まれる。言い換えれば、混合物はアドレス指定不能である。具体的には、捕捉剤のアレイは、当技術分野において一般的に公知のように、捕捉剤の混合物ではない。それは、捕捉剤の種が空間的に区別されており、アレイはアドレス指定可能であるためである。
【0034】
「単離された」または「精製された」というのは通常、物質がそれが属する試料の過半数のパーセントを占めるような物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)の単離を意味する。実質的に精製された成分は典型的に試料中で、試料の50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90%〜95%を占める。関心対象のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、例えば抗体を精製する技術は当技術分野において周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および密度による沈降分離が含まれる。
【0035】
「評価(assessing)」という用語は測定の任意の形態を意味し、要素が存在するか否かの決定を含む。「決定」、「測定」、「評価(evaluating)」、「評価」および「アッセイ」という用語は同義的に用いられ、定量的および定性的な決定の両方を含む。評価は相対的であっても絶対的であってもよい。「の存在の評価」には、それが存在するか否かの決定、および存在するものの量の決定が含まれる。
【0036】
「マーカー」または「生物学的マーカー」という用語は、本明細書において使用されるように、生物学的試料中の測定可能または検出可能な存在物を意味する。マーカーの例には、生物学的試料中に存在する核酸、タンパク質、または化学物質が含まれる。マーカーの一例は、ヒト供給源由来の生物学的試料中のウイルスもしくは病原体のタンパク質または核酸の存在である。
【0037】
「試料」という用語は本明細書において使用されるように、材料または材料混合物に関し、必ずしもそうではないが典型的に、流動体の形状、例えば水様をとり、1つまたは複数の関心対象の成分を含む。試料は、食料品、環境材料、個体から単離された組織または流動体、例えば、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚の外側切片、気道、腸管、および尿生殖路、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、臓器、ならびに同様にインビトロ培養細胞構成成分の試料(細胞培養培地での細胞増殖の結果生じた馴化培地、ウイルス感染が推定される細胞、組換え細胞、および細胞成分を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない、などの生物学的試料または固体などに由来するさまざまな供給源に由来し得る。「生物学的試料」という用語は、組換え試料であり得るかまたは組換え試料に由来し得る試料から、臨床的状況における試料を区別することを意味する。
【0038】
試料中の成分は本明細書において「分析物」とよばれている。多くの態様において、試料は、少なくとも約102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、109、1010、1011、1012、またはそれ以上の種の分析物を含む複合試料である。
【0039】
「分析物」という用語は本明細書において区別なく用いられ、分析物および捕捉剤が特異的な結合対のメンバーである場合、捕捉剤に特異的に結合する、公知または未知の試料中の成分を意味する。一般的に、分析物はバイオポリマー、つまりオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、抗体などのオリゴマーまたはポリマーである。この場合、「分析物」は移動相(典型的に流動体)中の成分として参照され、いくつかの態様において、基体に結合され、または他の態様において溶液中に存在する「捕捉剤」により検出される。しかしながら、「分析物」または「捕捉剤」のいずれか一方が、もう一方により評価されるものであり得る(従って、いずれか一方が、もう一方との結合により評価される分析物、例えば、ポリペプチドの未知の混合物であり得る)。
【0040】
「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」は本明細書において用いられるように、合成タンパク質、つまり、通常単一のアミノ酸配列内に共に融合されていない、2つ(またはそれ以上)の別個の異種ポリペプチドからなる単一の連続したアミノ酸配列を意味する。従って、融合タンパク質は、これらの配列が通常自然界で見いだされる単一のアミノ酸配列中に同じ形状で一緒に見いだされないならば、2つの全く別個のアミノ酸配列、または2つの類似のもしくは同一のポリペプチド配列を含む単一のアミノ酸配列を含むことができる。融合タンパク質は通常、組換え核酸法を用いて、つまり本発明のポリペプチドをコードするセグメントおよび異種タンパク質をコードするセグメントを含む組換え遺伝子融合産物の転写および翻訳の結果として、または当技術分野において周知である化学合成法によって調製され得る。
【0041】
「発癌性HPV株」はNational Cancer Institute (NCI, 2001)により決定された子宮頸癌の原因となることが公知であるHPV株である。「発癌性E6タンパク質」は上記の発癌性HPV株によりコードされるE6タンパク質である。例示的な関心対象の発癌性E6タンパク質の配列が図1に示されている。さまざまなHPVタンパク質の配列は、以下のNCBI's Genbankデータベースのデータベース記載項目として見いだされる。

【0042】
「発癌性E6タンパク質結合パートナー」は発癌性E6タンパク質に特異的に結合する任意の分子であり得る。適切な発癌性E6タンパク質結合パートナーには、PDZドメイン(後述)、発癌性E6タンパク質に対する抗体(後述するものなど);発癌性E6タンパク質を認識する他のタンパク質(例えば、p53、E6-AP、またはE6-BP);DNA(つまり、十字形DNA);およびアプタマーなどの他のパートナーが含まれる。いくつかの態様において、複数の発癌性E6タンパク質(例えば、全ての発癌性E6タンパク質、HPV株16および18由来のE6タンパク質、またはHPV株16および45由来のE6タンパク質など)の検出が望ましく、そのように発癌性E6タンパク質結合パートナーは、後述するようにこれらのタンパク質に結合する抗体、またはそれぞれ別のタンパク質に結合する抗体の混合物であり得る。当技術分野において公知であるように、そのような結合パートナーはそれらの検出を容易にするために標識されてもよい。一般的に、結合パートナーは10-5M未満、例えば10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満(例えば、10-9M、10-10M、10-11M未満など)の結合親和性でE6と結合する。
【0043】
本明細書において用いられるように、「PDZドメイン」という用語は約90アミノ酸未満(つまり、約80〜90、約70〜80、約60〜70、または約50〜60アミノ酸)のタンパク質配列を意味し、脳のシナプスタンパク質PSD-95、ショウジョウバエ(Drosophila)の隔壁結合(septate junction)タンパク質Discs-Large (DLG)、および上皮密着結合タンパク質ZO1(ZO1)との相同性により特徴づけられる。PDZドメインはDiscs-Large相同反復(「DHR」)およびGLGF反復としても公知である。PDZドメインは通常コアコンセンサス配列を保持して現れる(Doyle, D. A., 1996, Cell 85: 1067-76)。
【0044】
PDZドメインはグアニル酸キナーゼ相同体のMAGUKファミリーのメンバー、いくつかのタンパク質フォスファターゼおよびキナーゼ、神経系一酸化窒素シンターゼ、腫瘍抑制タンパク質、ならびに総じてシントロフィンとして公知であるいくつかのジストロフィン結合タンパク質を含む種々の膜結合タンパク質内に見いだされる。
【0045】
例示的なPDZドメイン含有タンパク質およびPDZドメイン配列が表2に示されている。「PDZドメイン」という用語はこの配列の変異体(例えば、天然に生じた変異体)(例えば、多型変異体、同類置換を有する変異体など)、および別の種(例えば、マウス、ラット)由来のドメインもまた包含する。典型的に、PDZドメインは米国特許出願第09/724553号および第10/938,249号に示されているものと実質的に同一であり、例えば、最大限の一致のために比較かつ整列した場合、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%のアミノ酸残基同一性である。PDZドメインに対し、結合を強化または弱化させるアミノ酸の変化を加え、かつ特異性を変化させるが、PDZドメインであることは変わらないように、変異を加える得ることが当技術分野において理解されている(Schneider et al.,., 1998, Nat. Biotech. 17:170-5)。特に他に示されていない限り、特定のPDZドメイン(例えばMAGI-1ドメイン2)への言及は、その特定のPDZドメインおよびそのHPV E6結合変異体を包含することを意図する。言い換えれば、特定のPDZドメインへの言及がなされた場合、後述するように、HPVの発癌性E6タンパク質に結合するそのPDZドメインの変異体への言及もまたなされる。この点において、タンパク質中のPDZドメインの番号が変わる可能性があることに留意されたい。例えば、本明細書において言及されるMAGI-1ドメイン2は、他の文献においてはMAGI-1ドメイン1と言及される可能性がある。そのように、タンパク質の特定のPDZドメインが本出願において言及される場合、この言及はそのドメインの配列を考慮して、本明細書、特に配列表において記載されるように理解されるべきである。表2はさまざまなドメインについての配列表の配列および名前およびGenbankアクセッション番号の間の関係を適宜示している。PDZタンパク質についてのさらなる記載、特にMAGI-1ドメイン2についての記載は、2003年7月29日出願の特許出願第10/630,590号に見いだされ、および米国特許第20040018487号として公開されたものである。この刊行物は参照によりその全体があらゆる意図で本明細書に組み入れられる。
【0046】
本明細書において用いられるように、「PDZタンパク質」という用語はPDZドメインを含む天然のタンパク質を意味する。例示的なPDZタンパク質には、CASK、MPP1、DLG1、DLG2、PSD95、NeDLG、TIP-33、SYN1a、TIP-43、LDP、LIM、LIMK1、LIMK2、MPP2、NOS1、AF6、PTN-4、prIL16、41.8 kD、KIAA0559、RGS12、KIAA0316、DVL1、TIP-40、TIAM1、MINT1、MAGI-1、MAGI-2、MAGI-3、KIAA0303、CBP、MINT3、TIP-2、KIAA0561、およびTIP-1が含まれる。
【0047】
本明細書において用いられるように、「PLタンパク質」または「PDZリガンドタンパク質」はPDZドメインとともに分子複合体を形成するタンパク質、または全長のタンパク質とは別に発現した場合、そのカルボキシル末端(例えば、4〜25残基のペプチド断片、例えば8、10、12、14、または16残基)がそのような複合体を形成するタンパク質を意味する。分子複合体は以下に記載するさまざまなアッセイ法を用いてインビトロで観察できる。
【0048】
本明細書において用いられるように、「PL配列」はPLタンパク質のC末端のアミノ酸配列(例えばC末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、20、または25残基)(「C末端PL配列」)、またはPDZドメインに結合することが公知である内部配列(「内部PL配列」)を意味する
【0049】
本明細書において用いられるように、「PL融合タンパク質」は、1つのドメインとして、典型的に融合タンパク質のC末端ドメインとしてPL配列を有する融合タンパク質を意味する。例示的なPL融合タンパク質はtat-PL配列融合体である。
【0050】
本明細書において記載されるPDZドメインの場合は、特定のPDZドメインの「HPV E6結合変異体」は、HPV E6 PDZリガンド結合活性を保持するPDZドメイン変異体である。PDZドメイン変異体がHPV E6に結合するか否かを決定するアッセイ法は以下に極めて詳細に記載されており、かつ特定のPDZドメインを変異体にするためにどのアミノ酸を変化させるかを同定するための指針はさまざまな出典に見いだされ得る。一例を挙げれば、PDZドメインを本明細書において記載される他のPDZドメインと比較することが可能であり、例えば、対応する位置でアミノ酸を置換することができる。他の例を挙げれば、特定のPDZタンパク質のPDZドメインの配列を他の種由来の同等のPDZタンパク質内の同等のPDZドメインの配列と比較することができる。例えば、ヒトPDZタンパク質由来のPDZドメインの配列を他の種(例えば、マウス、ラットなど)由来の、他の公知かつ同等のPDZドメインの配列と比較することが可能であり、2つの配列の間で異なる任意のアミノ酸をヒトPDZドメインに置換し、PDZドメインの変異体を作成することができる。例えば、ヒトMAGI-1 PDZドメイン2の配列を他の種由来の同等のMAGI-1 PDZドメイン(例えば、マウスGenbank gi番号7513782および28526157、または他の相同配列)と比較し、ヒトMAGI-1 PDZドメインに置換してその変異体を作成できるアミノ酸を同定することが可能である。そのような方法が、本明細書において記載される任意のMAGI-1 PDZドメインに適用され得る。最小限のMAGI-PDZドメイン2配列はSEQ ID NO:68〜76として提供される。特定の変異体は、配列表に示された配列と比較して、1、最大5、最大約10、最大約15、最大約20、もしくは最大約30、またはそれ以上、通常最大50のアミノ酸の変化を有する可能性がある。例示的なMAGI-1 PDZ変異体には、SEQ ID NO: 76〜105に示された配列が含まれる。変異体作成において、PDZドメイン中にGFGモチーフが存在する場合は、一般的に、それは配列を変化させるべきではない。
【0051】
一般的に、変異体PDZドメインポリペプチドは、PDZドメイン全体にわたって広がる領域にわたり、デフォルトパラメーターを用いるBLAST 2.0によって測定されるように、本明細書に記載の変異体PDZドメインポリペプチドと、少なくとも約70%または80%、通常少なくとも約90%、およびより通常には少なくとも約98%の配列同一性を有するPDZドメインを有する。
【0052】
本明細書において用いられるように、「検出可能な標識」は当技術分野において一般的な意味をもち、検出する(例えば、物理的または化学的性質の結果)、分子の存在を示す、またはそれが共有結合もしくは他の方法で結合している他の分子の結合を可能にするために用いられるまたは用いることができる、原子(例えば、放射性核種)、分子(例えば、フルオレセイン)、または複合体を意味する。「標識」という用語は、基質上で作用し検出可能な原子、分子、または複合体を産生する、共有結合または他の方法で結合している分子(例えば、酵素などの生体分子)もまた意味する。本発明における使用に適した検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段により検出可能な任意の組成物が含まれる。本発明において有用な標識には、標識ストレプトアビジン抱合体による染色に用いられるビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、Texas red、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、加水分解酵素、特にアルカリホスファターゼなどのホスファターゼ、エステラーゼ、およびグリコシダーゼ、または酸化還元酵素、特に西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、およびELISAで一般的に用いられる他の酵素)、基質、コファクター、阻害因子、化学発光基、色素産生物質、およびコロイド金または着色されたガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)のビーズなどの比色分析用標識が含まれる。そのような標識を開示している発明には、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号が含まれる。そのような標識を検出する手段は当業者に周知である。
【0053】
本明細書において用いられるように、「サンドイッチ」、「サンドイッチELISA」、「サンドイッチ診断」、および「捕捉ELISA」という用語は全て、2つの異なる試験物質を用いて生物学的ポリペプチドを検出する概念を意味する。例えば、PDZドメインは直接的または間接的に固体支持体に接着され得る。その表面上を試験試料を通過させ、かつPDZタンパク質をその同族のPLタンパク質と結合させ得る。次いで、標識された抗体または別の検出試薬を用いて特異的なPLタンパク質がPDZタンパク質に結合したかどうか決定することができる。
【0054】
「固相支持体」または「キャリア」は、ポリペプチド、抗原、または抗体を結合できる任意の支持体を意図する。周知の支持体またはキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のまたは改変されたセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。本発明の目的のために、キャリアの性質はある程度可溶性であってもまたは不溶性であってもよい。支持体材料は、連結された分子がPDZドメインポリペプチドまたはE6抗体に結合可能な限り、実質上任意の可能な構造的形状をとり得る。従って、支持体の形状は、ビーズのような球体、または試験管内部表面もしくは棒の外部表面のような円柱形であり得る。または、薄板、培養皿、テストストリップなどのように平らでもよい。当業者には、抗体、ペプチド、または抗原に結合する他の多くの適切なキャリアが公知であるか、または日常的な実験により同じことを確認できる。
【0055】
いくつかの態様において、「プロテアソーム阻害因子」、つまりプロテアソームの阻害因子が用いられ得る。カルボベンゾキシ-ロイシニル(leucinyl)-ロイシニル-ノルバリナル(norvalinal)II(MG115)またはCBZ-LLLを含むこれらの阻害因子は、化学物質販売会社(例えば、Sigma)より購入可能である。当業者に理解されるように、プロテアソーム阻害因子はプロテアーゼ阻害因子ではない。
【0056】
本明細書において用いられるように、「複数」の成分はその通常の意味を有する。いくつかの態様において、複数とは少なくとも5、およびしばしば少なくとも25、少なくとも40、もしくは少なくとも60、またはそれ以上であり、通常最大約100または1000である。
【0057】
これらの文脈において、E6タンパク質の「量」との言及は、特に他に具体的に示されていない限り、定量的な評価が必要であることを意図せず、定性的または定量的のいずれであってもよい。
【0058】
「非天然」または「組換え」という用語は人工またはその他天然に見いだされないことを意味する。組換え細胞は通常、その細胞に通常見いだされない核酸を含み、組換え核酸は通常、天然には見いだされない2つまたはそれ以上の核酸の融合体を含み、かつ組換えポリペプチドは通常組換え核酸により産生される。
【0059】
「対象」、「個体」、「宿主」、および「患者」は本明細書において同義的に用いられ、任意の動物、例えば、哺乳動物、ヒト、または非ヒトを意味する。一般的に、対象は哺乳動物の対象である。例示的な対象には、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、トリ、シカ、オオジカ、ウサギ、トナカイ、シカ、およびウマが含まれるが、これらに必然的に限定されるわけではなく、特にヒトを関心対象とする。
【0060】
発明の詳細な説明
本発明は、HPVの少なくとも3種の発癌性株由来のE6タンパク質に結合する、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む抗体を提供する。一般的に、抗体は異なるHPV株、特にHPV株16および18のE6タンパク質の間で保存されているアミノ酸モチーフに結合する。本抗体を用いて試料中のHPV E6タンパク質を検出することができ、従って、抗体は癌診断の方法を含む、さまざまな診断適用で有用である。本方法を実施するための、本抗体を含むキットもまた提供される。
【0061】
「発明の概要」で提供したものよりさらに詳細に、かつ前述の「発明の背景」および「定義」で提供したように本発明をさらに記載するにあたり、本抗体を最初に記載し、次に本抗体が有用である方法について記載する。最後に、本方法を実施するためのキットについて記載する。
【0062】
抗体組成物
本発明は、HPVの複数の株のE6タンパク質に結合する抗体、特にモノクローナル抗体を提供する。言い換えれば、本発明は複数のE6タンパク質を「認識する」、つまり10-6Mまたはそれ以下のKDで特異的に結合する抗体を提供する。言い換えれば、本抗体はそれぞれ、発癌性、および特定の態様においてHPVの非発癌性株由来の複数の異なるE6タンパク質(つまり、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも10、通常最大約12、15、もしくは20、またはそれ以上の異なるE6タンパク質)に結合(つまり、交差反応)する。一般的に、本抗体は異なるHPV株のE6タンパク質間で保存されているアミノ酸モチーフに結合し、従ってこのモチーフを有するE6タンパク質に結合する。多くの態様において、抗体は少なくともHPV株16および18のE6タンパク質(例えば、HPV株16、18、31、33、および45;16、18、および45のE6タンパク質;または、他の態様において図1または2に列挙された全てのHPV株のE6タンパク質)に結合する。他の態様において、抗体は少なくともHPV株16および45由来のE6タンパク質に結合する。本抗体はHPVの非発癌性株(例えば、HPV株6および/または11)由来のE6タンパク質に結合し得、従って本抗体はHPVの発癌性および非発癌性株由来のE6タンパク質に結合し得る。
【0063】
本抗体はHPV E6タンパク質に見いだされる3つの配列モチーフの1つに特異的に結合し得る。これらのモチーフは図1で四角に囲ってあり、かつ通常、HPVの異なる株由来のE6タンパク質の間の配列類似領域に一致する。従って、一般的に本抗体は以下の配列を有するペプチドに結合する。
それぞれHPV株16および18のE6タンパク質における第一の共通配列モチーフに一致する、

それぞれHPV株16および18のE6タンパク質における第二の共通配列モチーフに一致する、

または、それぞれHPV株16および18のE6タンパク質における第三の共通配列モチーフに一致する、

本抗体が他のE6タンパク質に結合する場合、それは通常、上述されたもの、または図1で四角に囲われたものと同等な位置で他のE6タンパク質と結合する。ここで「同等な位置」とは通常、他のE6タンパク質の配列が図1にある配列群に一致する場合、四角に囲われたアミノ酸に一致する、つまりアラインメントされる連続したアミノ酸範囲を意味する。
【0064】
従って、抗体は通常、上に列挙されたものより小さなモチーフを認識することから、本抗体は上記のモチーフより小さくかつその中に含まれるペプチドを認識し得る。例えば、本抗体はSEQ NO: 1〜6のいずれか1つに記載の任意の9つの連続したアミノ酸を有するペプチドに結合し得る。特に、本抗体は 、上記のHPV株16および18のE6タンパク質の第一共通配列の部分配列に一致する、RPRKLPQLCTEL (SEQ ID NO:7)およびRPYKLPDLCTEL (SEQ ID NO:8)、上記のHPV株16および18のE6タンパク質の第二共通配列の部分配列に一致する、LLIRCINCQKPL (SEQ ID NO:9)およびLLIRCLRCQKPL (SEQ ID NO:10)、または上記のHPV株16および18のE6タンパク質の第三共通配列の部分配列に一致する、RHLDKKQRFHNI (SEQ ID NO:11)およびRHLNEKRRFHNI (SEQ ID NO:12)を認識し得る。上述のようにこれらの部分配列は通常異なるE6タンパク質間で保存されているため、上に列挙された配列に結合する抗体は通常他のHPV株由来のE6タンパク質に結合する。
【0065】
特定の別の態様において、本抗体はHPV株16および45由来のE6タンパク質に結合する。従って一般的に、本抗体は以下の配列を有するペプチドに結合する。
それぞれHPV株16および45のE6タンパク質における第一の共通配列モチーフに一致する、

それぞれHPV株16および45のE6タンパク質における第二の共通配列モチーフに一致する、

または、それぞれHPV株16および45のE6タンパク質における第三の共通配列モチーフに一致する、

本抗体が他のE6タンパク質に結合する場合、次いでそれは通常、上述されたもの、または図1で四角に囲われたものと同等な位置で他のE6タンパク質と結合する。例えば、HPV58、HPV33、HPV52、HPV31、HPV16、HPV18、およびHPV45由来のE6タンパク質が図2に示されており、そこで上記のモチーフが四角で囲われている。
【0066】
従って、抗体は通常、上に列挙されたものより小さなモチーフを認識することから、本抗体は上記のモチーフより小さくかつその中に含まれるペプチドを認識し得る。例えば、本抗体はSEQ NO: 1、3、5、57、58、および59のいずれか1つに記載の任意の9つの連続したアミノ酸を有するペプチドに結合し得る。特に、本抗体は、上記のHPV株16および45のE6タンパク質の第一共通配列の部分配列に一致する、RPRKLPQLCTEL (SEQ ID NO:7)およびRPYKLPDLCTEL (SEQ ID NO:60)、上記のHPV株16および45のE6タンパク質の第二共通配列の部分配列に一致する、LLIRCINCQKPL (SEQ ID NO:9)およびLLIRCLRCQKPL (SEQ ID NO: 61)、または上記のHPV株16および45のE6タンパク質の第三共通配列の部分配列に一致するRHLDKKQRFHNI (SEQ ID NO:11)およびRHLKDKRRFHSI (SEQ ID NO: 62)を認識し得る。上述のようにこれらの部分配列は通常異なるE6タンパク質間で保存されているため、上に列挙された配列に結合する抗体は通常他のHPV株由来のE6タンパク質に結合する。特定の態様において、システイン残基をセリン残基に置換してジスルフィド結合形成を防ぐことができる。
【0067】
抗体、特にモノクローナル抗体作成のための方法は当技術分野において周知であり、かつさまざまな周知の実験マニュアル(例えば、Harlow et al.,. Antibodies: A Laboratory Manual, First Edition (1988) Cold spring Harbor, N.Y.; Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL Press (1999)およびAusubel, et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, (1995))に記載されている。従って、ペプチド配列が前におよび添付の表に示されていることから、本抗体作成のための方法は本明細書においてそれ程詳細に記載する必要はない。本共通モチーフを含む、より長い全長E6タンパク質の任意の断片(例えば、全長タンパク質)、全長E6タンパク質、またはその融合タンパク質を用いて本抗体を作成し得る。特定の態様において、全長E6タンパク質、列挙された配列を含むペプチド、またはその化学修飾(例えば、結合)派生物、もしくはその融合体(例えば、MBPまたはGST融合体)が抗原として用いられ得る。特定の態様において、ポリペプチドをコードする核酸が用いられるか、または異なるポリペプチドの混合物(例えば、それぞれ異なるHPV株に由来するE6ポリペプチドの混合物)が抗原として用いられ得る(Michel (2002) Vaccine 20:A83-A88)。従って、抗原はアジュバントと混合され、適切な非ヒト動物(例えば、マウス、ニワトリ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ウマ、ラット、またはモルモットなど)が標準的な免疫化技術(例えば、筋肉注射)により免疫され、かつ一旦それらの特異的な免疫応答が確立したら、動物から血液を回収してもよく、かつ記載されたペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗血清を単離してもよい。多くの場合において、免役された動物の脾臓由来の細胞はミエローマ細胞系と融合され、融合後、例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT)を含む選択培地中で生育されることでハイブリドーマの増殖について選択され、2〜3週間後にはハイブリドーマのコロニーが現れる。これらの培養ハイブリドーマ細胞の上清は、通常酵素結合免疫吸着分析(ELISA)などにより抗体分泌についてスクリーニングされ、かつ抗原に特異的なモノクローナル抗体を分泌する陽性クローンを、標準的な手順に従って選択しかつ増殖することができる。
【0068】
免疫化に適した例示的なペプチドは表1に記載される。コンセンサスにより記載された異なるペプチドのいずれか1つまたは混合物を用いて本抗体を作成し得ることを示すため、ペプチドは「コンセンサス」配列(つまり、1つまたは複数の位置に、いくつかのアミノ酸のうちの1つが存在し得るペプチド)として示される。従って、コンセンサス配列が記載される場合、このコンセンサスに含まれる個々のペプチドはそれぞれ明記されているとみなされるべきである。特定の態様において、コンセンサス配列に包含される例示的なペプチド種は、図1に記載されるもののような、天然のHPV E6タンパク質内に見いだされる配列を有する。そのような例示的な配列は、表1の3つめの列で特定されているアミノ酸位置、特定のHPVタイプ「HPVタイプ」の「開始アミノ酸」、および他のHPV E6タンパク質の相当位置(つまり、表1に示されている位置とアラインメントされる位置)から始まる配列として同定され得る。
【0069】
従って、上記のペプチドの任意の9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上、通常最大20またはそれ以上の連続したアミノ酸を有するペプチドを免疫化に用いてもよい。いくつかの態様において、列挙されたペプチド配列は、列挙されたポリペプチドよりサイズが1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上、時には最大約15もしくは20またはそれ以上大きなアミノ酸であり得る、より大きなポリペプチドに含まれ得る。従って、本ペプチドは約8〜約30アミノ酸長であり得る。特定の態様において、本ペプチドは約9〜20アミノ酸長であり、かつ通常上記のアミノ酸配列を含む。
【0070】
従って、所望の抗体に依存して、適切な動物が本ペプチドまたは本ペプチド混合物(例えば、上記の2、3、4、5、約6もしくはそれ以上、約10もしくはそれ以上、または約15もしくはそれ以上、通常最大約20もしくは30またはそれ以上のペプチド)を用いて免役される。抗体は通常その動物から単離され、標準的な方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロットなど)を用いて、異なるHPV E6タンパク質との結合が試験される。従って多くの態様において、HPV株16および18、HPV株16、18、31、33および45、または特定の態様において、図1もしくは図2に示されるHPV株全ておよびその他に由来するE6タンパク質との結合がスクリーニングされる。従って、複数のHPV株由来のE6タンパク質と結合する、つまり交差反応する抗体を同定し得、公知の方法を用いてそれらの抗体を産生する永久細胞系を確立し得る。言い換えれば、抗体は通常複数の抗原との結合について試験され、それらの抗原は通常さまざまなHPV株由来のE6タンパク質またはそれらの断片である。大半の態様において、抗体は未変性または変性状態において抗原との結合について試験される。複数のE6タンパク質に結合する抗体は所望の結合性質を有し、従って本方法において有用である。
【0071】
上記のように、当技術分野において周知のように、本抗体は検出可能な標識と結合されても、またはシグナル生成系の一部を形成であってもよい。
【0072】
従って、上記の方法を用いて、複数のHPV E6タンパク質を検出するための抗体組成物が提供される。特定の態様において、少なくとも5、7、9、12、15、20または24のHPVの異なる株を認識する異なる抗体の混合物が用いられ得る。組成物は少なくとも3種の異なる発癌性E6タンパク質を認識する、少なくとも1つの抗体を含み得る。組成物は1、2、3、4、もしくは5、またはそれ以上の異なる抗体を含み得、組成物の抗体はそれぞれ少なくとも1つ(例えば、2、3、約5、約10、など)のE6タンパク質を認識する。集合的に、抗体は図1に示されるE6タンパク質の全てまたは一部に結合し、特定の態様においては、非発癌性E6タンパク質にもまた結合し得る。抗体は混合されても、互いに分離、つまり別々の容器に入れられていてもよい。
【0073】
上述の抗体はどれも表1に示されるエピトープに結合し得る。
【0074】
(表1)エピトープ

【0075】
上記および下記のモノクローナル抗体を産生する特定のハイブリドーマはATCCに寄託されてもよい。任意の寄託ハイブリドーマ、それらのハイブリドーマにより産生される抗体、およびそれらのハイブリドーマにより産生される抗体と同じエピトープに結合する他の抗体もまた本発明の態様であり、本明細書において特許請求され得る。そのような抗体は本明細書において記載の任意の方法に用いられ得る。
【0076】
試料中のHPV E6タンパク質を検出する方法
本発明は試料中のHPV E6タンパク質を検出する方法を提供する。一般的に、方法は本抗体組成物を試料と接触させる段階、および抗体と試料との任意の結合を評価する段階を含む。大半の態様において、抗体と試料との結合はHPV E6タンパク質の存在を示す。
【0077】
本発明の抗体は、当技術分野に公知の任意の方法により、免疫特異的結合についてスクリーニングされてもよい。使用可能なイムノアッセイ法として、いくつか挙げるとウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ法、ELISA (酵素結合免疫吸着分析)、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、免疫沈降アッセイ法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫アッセイ法、プロテインAイムノアッセイ法、ならびに細胞の免疫染色(固定または未変性)アッセイ法などの技術を用いる、競合および非競合アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアッセイ法は当技術分野において、ルーチンかつ周知である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい)。例示的なイムノアッセイ法を以下に簡単に記載する(しかしながら限定を意図しない)。
【0078】
免疫沈降プロトコルは通常、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害因子(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウムを補ったRIPA緩衝液(1% NP-40またはTriton X-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウムpH7.2、1% トラジロール)などの溶解緩衝液中で細胞集団を溶解する段階、細胞溶解物に関心対象の抗体を添加する段階、4℃でしばらくの間(例えば、1〜4時間)インキュベートする段階、細胞溶解物にプロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを添加する段階、4℃で約1時間またはそれ以上インキュベートする段階、ビーズを溶解緩衝液中で洗浄する段階、およびビーズをSDS/試料緩衝液中に再懸濁する段階を含む。関心対象の抗体が特定の抗原を免疫沈降させる能力は、例えばウエスタンブロット分析により評価され得る。当業者は、抗体と抗原の結合を増強し、かつバックグラウンドを低減するために改変できるパラメーター(例えば、セファロースビーズを用いて細胞溶解物を事前に洗浄する段階)について精通している。
【0079】
ウエスタンブロットは通常、タンパク質試料の調製とその後のポリアクリルアミドゲル中でのタンパク質試料の電気泳動(例えば、抗原の分子量に依存して8%〜20%のSDS-PAGE)の段階、および分離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF、またはナイロンなどのメンブレンに転移させる段階を含む。転移の後、メンブレンはブロッキング溶液(例えば、3% BSAまたは脱脂乳を含むPBS)中でブロッキングされ、洗浄緩衝液(例えばPBS-Tween 20)中で洗浄され、ブロッキング緩衝液中に希釈された一次抗体(関心対象の抗体)と共にインキュベートされる。このインキュベーションの後、メンブレンは洗浄緩衝液中で洗浄され、酵素の基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pもしくは125I)と結合された(一次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)二次抗体と共にインキュベートされ、さらなる洗浄の後、抗原の存在が検出され得る。当業者は、検出されるシグナルを増強し、かつバックグラウンドノイズを低減するために改変できるパラメーターについて精通している。
【0080】
ELISAは抗原を調製する段階、96穴マルチウェルプレートのウェルを抗原でコーティングする段階、酵素の基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物を結合した関心対象の抗体をウェルに添加しかつしばらくインキュベートする段階、ならびに抗原の存在を検出する段階を含む。ELISAにおいて、関心対象の抗体は検出可能な化合物と結合される必要はない;代わりに、検出可能な化合物に結合した関心対象の抗体を認識する)二次抗体をウェルに添加することができる。さらに、抗原でウェルをコーティングする代わりに、抗体でウェルをコーティングしてもよい。この場合、コーティングしたウェルに関心対象の抗原を添加した後に、検出可能な化合物に結合した二次抗体を添加することができる。当業者は、検出されるシグナルを増強するために改変できるパラメーターについて、および当技術分野において公知であるELISAの変法について精通している。
【0081】
抗体の抗原との結合親和力および抗体−抗原相互作用の解離速度(off-rate)は競合的結合アッセイ法により決定され得る。競合的結合アッセイ法の一例には、標識抗原(例えば、3Hまたは125I)を関心対象の抗体と共に、次第に増量される非標識抗原の存在下でインキュベートする段階、および標識抗原に結合した抗体を検出する段階を含むラジオイムノアッセイ法がある。特定の抗原に対する関心対象の抗体の親和力および結合解離速度はスキャッチャードプロット分析によるデータから決定され得る。二次抗体との競合もまたラジオイムノアッセイ法を用いて決定され得る。この場合、抗原は標識化合物(例えば、3Hまたは125I)と結合した関心対象の抗体と共に、次第に増量される非標識の二次抗体の存在下でインキュベートされる。
【0082】
本発明の抗体は、当技術分野において一般的に公知の技術を用いて抗原の発現を可能にするベクターまたはベクターのみをトランスフェクトした細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳動物細胞)に対する免疫細胞化学法を用いてスクリーニングされてもよい。抗原がトランスフェクトされた細胞には結合するがベクターのみがトランスフェクトされた細胞には結合しない抗体は抗原特異的である。
【0083】
しかしながら特定の態様において、アッセイ法は抗原捕捉アッセイ法であり、抗体のアレイまたはマイクロアレイがこの目的のために用いられ得る。ポリペプチドのマイクロアレイの作成および使用方法は当技術分野において公知である(例えば、米国特許第6,372,483号、第6,352,842号、第6,346,416号、および第6,242,266 号を参照されたい)。
【0084】
発癌性HPV E6タンパク質を検出するための系
本発明は試料中の発癌性HPV E6ポリペプチドの存在を検出するための系を提供する。一般的に、系には発癌性HPV E6ポリペプチドに対する第一および第二の結合パートナーが含まれる。大半の態様において、第一の結合パートナーはPDZドメインタンパク質であり第二の結合パートナーは本抗体である。
【0085】
HPVの発癌性株由来のE6タンパク質を検出するための系の一部として、特定のPDZドメインタンパク質とともに本抗体が用いられ得る。上記のように、発癌性HPV E6タンパク質は、特定のPDZドメインポリペプチドによって結合する「PDZリガンド」(「PL」)を含む。非発癌性HPV E6タンパク質はそのようなPDZリガンドを含まず、従ってPDZドメインポリペプチドによって結合されない。本系における使用に適した多くのPDZドメインは通常表2に記載されており、MAGI-1 PDZドメイン2、TIP-1のPDZドメイン、DLG-1のPDZドメイン1および2、ならびにその他多くが含まれる。当業者に認識されるように、特にPDZドメインポリペプチドが基質に固定される態様において、PDZドメインは融合タンパク質の一部として用いられ得る。従って、本系は通常、通常融合タンパク質である適切なPDZドメインポリペプチドおよび本抗体を含む。
【0086】
特定の態様において、結合パートナーの1つは固体支持体に接着され、もう1つの結合パートナーは標識されるか、またはシグナル生成系の一部であり得る。タンパク質は共有結合されるか、または非特異的結合により非共有結合的に接着され得る。融合タンパク質と表面の間に共有結合が望まれる場合、表面は通常多官能性であるか、または多官能性化が可能である。表面に存在し連結に用いられ得る官能基には、カルボン酸、アルデヒド、アミノ基、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが含まれ得る。さまざまな表面に多種多様な化合物を連結する方法は周知であり、文献に十分に説明されている。
【0087】
(表2)




















*:このPDZドメイン含有タンパク質にはGI番号は存在しない。それは、ヒトゲノムクローンのAC000036に対してラットのShank3配列を用いたコンピュータクローニングされ、6400〜6496、6985〜7109、7211〜7400のヌクレオチドを共にスプライシングし仮定のヒトShank3が作製されたためである。
【0088】
試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を検出するための方法
本発明は試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を検出する方法を提供する。一般的に、方法は、発癌性HPV E6タンパク質を含むかまたは含む可能性のある生物学的試料をPDZドメインポリペプチドと接触させる段階、および該試料中の発癌性HPV E6タンパク質とPDZドメインポリペプチドとの任意の結合を本抗体を用いて検出する段階を含む。別の態様において、試料が本抗体と接触し、かつE6タンパク質の存在がPDZドメインポリペプチドを用いて検出され得る。大半の態様において、発癌性HPV E6タンパク質とPDZドメインポリペプチドおよび本抗体との結合は試料中に発癌性HPV E6タンパク質が存在することを示す。
【0089】
本発明の方法を用いて分析される生物学的試料はHPVの任意の哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト動物モデルから得られ得る。多くの態様において、生物学的試料は生きた対象から得られる。
【0090】
いくつかの態様において、そこから試料が得られる対象は一見健康であり、ここで分析はルーチンのスクリーニングの一部として実施される。他の態様において、対象はHPVに感染しやすい(例えば、家族歴による決定;特定の環境要因への暴露;など)個体である。他の態様において、対象はHPVの症状(例えば、子宮頸部疣贅など)を有する。他の態様において、(例えば、例えばPCRに基づく他の試験により決定されるように)対象はHPVを有すると仮に診断される。
【0091】
生物学的試料は対象の任意の組織、臓器、または細胞群に由来し得る。いくつかの態様において、子宮頸部切屑、生検、または洗浄が対象から得られる。他の態様において、試料は血液または尿試料である。
【0092】
いくつかの態様において、生物学的試料は当技術分野において標準的な方法を用いて、例えば、本発明のアッセイ法を妨害し得る特定の成分を除去するため処理される。いくつかの態様において、生物学的試料は、例えば、塩析沈殿などにより、タンパク質について濃縮するように処理される。特定の態様において、試料はE6タンパク質の分解を阻害するためプロテアソーム阻害因子の存在下で処理される。
【0093】
本発明のアッセイ法において、いくつかの態様において、試料中のE6タンパク質のレベルが定量化および/または対照と比較され得る。適切な対照試料は健康であることが公知の個体、例えば、HPVを有さないことが公知である個体に由来する。対照試料は、試験される対象に遺伝的に関連する個体に由来してよいが、遺伝的に関連しない個体に由来してもよい。適切な対照試料には、試験試料が採取される時点より早い時点で採取された個体由来の試料、例えば、HPVの症状であり得る症状を呈する前にその個体から採取された生物学的試料が含まれる。
【0094】
特定の態様において、試料をPDZドメインポリペプチドと試料中の任意のPLタンパク質との結合に適した条件下で、固体支持体に結合したPDZドメインポリペプチドに接触させ、結合したタンパク質から結合しない試料タンパク質が分離させた後、結合したタンパク質は公知の方法を用いて本抗体を用いて検出される。
【0095】
キット
本発明は本発明の方法を実施するためのキットもまた含む。本キットは通常本抗体を含む。多くの態様において、キットは第一および第二の結合パートナーを含み、ここで第一の結合パートナーはPDZドメインポリペプチドであり、かつ第二の結合パートナーは本抗体である。いくつかの態様において、第二の結合パートナーは検出可能な標識により標識される。他の態様において、検出可能に標識された二次抗体などの二次標識成分が含まれる。いくつかの態様において、本キットは、試料から発癌性HPV E6を単離するための、装置または系などの手段をさらに含む。キットは任意でプロテアソーム阻害因子を含んでもよい。
【0096】
本キットは、望ましければ、1つまたは複数のさまざまな従来の成分、例えば、1つまたは複数の緩衝液、検出試薬または抗体の入った容器などをさらに含むことができる。使用される成分の分量およびそれらの使用についての指針を示す、挿入物またはラベルとしての印刷された説明書もまたキットに含まれ得る。本開示において、本発明の実践には明記された材料および条件が重要であるが、明記されていない材料および条件も、それらが本発明の恩典の実現を妨げない限り除外されないことが理解されるべきである。本発明の診断法の例示的な態様は上に詳細に記載されている。
【0097】
本キットにおいて、発癌性E6検出反応は水性または固体の基体を用いて実施され、ここでキットは、テストストリップ、サンドイッチアッセイ法などのいくつかの分離および検出プラットフォームとともに用いるための試薬を含んでもよい。テストストリップキットの多くの態様において、テストストリップには、発癌性E6タンパク質のPLドメインに特異的に結合し、固体支持体上で発癌性E6タンパク質を捕捉するPDZドメインポリペプチドが結合されている。キットは通常、直接的または間接的に検出可能で、かつ発癌性E6タンパク質に結合してその検出を可能にする、検出のための本抗体を含む。キットは同様に、ウエスタンブロットを実施するための成分(例えば、既製のゲル、メンブレン、転移系など);ELISAを行うための成分(例えば、96穴プレート);免疫沈降を行うための成分(例えば、プロテインA);試料から発癌性E6タンパク質を親和力またはサイズ分離するためのカラム、特にスピンカラム(例えば、ゲルろ過カラム、PDZドメインポリペプチドカラム、サイズ排除カラム、メンブレン分画スピンカラムなど)も含み得る。
【0098】
本キットは発癌性もしくは非発癌性E6、および/または発癌性E6の希釈系列を含む対照試料も含み得、ここで希釈系列はキットの使用者が自らの結果を比較でき、自らの試料中の発癌性E6タンパク質レベルを概算できる、適切な基準の範囲を表す。そのような希釈系列は、患者における任意の癌の進行の推定を提供し得る。蛍光、カラー、または自己放射線フィルムの現像結果を、キットにより提供される蛍光、カラー、またはフィルム濃度の標準曲線と比較することもできる。
【0099】
上記の成分に加え、本キットは典型的に、本方法を実践するためにキットの成分を使用するための説明書をさらに含む。本方法を実践するための説明書は適切な記録媒体に通常記録される。例えば、説明書は紙またはプラスチックなどの基体上に印刷される。そのように、説明書は添付文書として、キットまたはその成分の容器のラベル内(つまり、包装または内部の包装に付随して)などで、キット中に存在し得る。他の態様において、説明書は、適切なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上、例えば、CD-ROM、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の態様において、実際の説明書はキット中に存在しないが、リモートソースから、例えばインターネットを介して説明書を得る手段が提供される。この態様の例には、そこで説明書を見ることができる、および/またはそこから説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットがある。説明書については、説明書を得るための手段は適切な基体に記録されている。
【0100】
本発明により同様に提供されるのは、少なくとも上述されたようなプログラムおよび説明書を含むコンピュータ読み取り可能媒体を含むキットである。説明書にはインストールまたはセットアップの指示も含まれ得る。説明書には、上記のように、選択肢または選択肢の組み合わせとともに本発明を用いるための指示が含まれ得る。特定の態様において、説明書は両方の型の情報を含む。
【0101】
説明書は通常適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は紙またはプラスチックなどの基体上に印刷される。そのように、説明書は添付文書として、キットまたはその成分の容器のラベル内(つまり、包装または内部の包装に付随して)などで、キット中に存在し得る。他の態様において、説明書は、プログラムが存在するのと同じ媒体を含む、適切なコンピュータ読み取り可能記憶媒体上、例えば、CD-ROM、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。
【0102】
有用性
本発明の抗体および方法はさまざまな診断的分析に有用である。本抗体および方法は、個体におけるHPVの発癌性株の感染の診断;癌を有する可能性の決定;HPVに対する処置への患者の応答の決定;個体におけるHPV感染の重症度の決定:および個体におけるHPVの進行の監視に有用である。本発明の抗体および方法は、子宮頸癌、卵巣癌、乳癌、肛門癌、陰茎癌、前立腺癌、喉頭癌および口腔癌、扁桃腺癌、鼻腔癌、皮膚癌、膀胱癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、副次的ペリウンガル癌、ならびに良性の肛門性器疣贅を含む癌に関連付けられるHPVの発癌性または非発癌性株の感染の診断に有用である。本発明の抗体および方法は、ネザートン症候群、疣贅状表皮剥離、子宮内膜症、および他の障害に関連付けられるHPVの発癌性または非発癌性株の感染の診断に有用である。本発明の抗体および方法は、成人女性、成人男性、胎児、乳児、小児、および免疫無防備状態の個体における、HPVの発癌性または非発癌性株の感染の診断に有用である。
【0103】
本方法は通常生きた対象に由来する生物学的試料に対し実施される。本発明の特に有利な特徴は、この方法が1回の反応で、いくつかの公知のHPVの発癌性株を同時に検出できることである。
【0104】
特定の態様において、本発明の抗体は試料の免疫組織学的検査に用いられてもよい。
【0105】
実施例
以下の実施例は、当業者に対し、どのように本発明を作成し使用するのかについての完全な開示および記載を提供することを目的として示され、本発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することは意図されず、かつそれらは以下の実験が行われた実験の全てまたは唯一のものであることを表すことも意図されない。使用された数字(例えば、量、温度など)については正確さを期すよう努力が払われたが、いくらかの実験上の誤差および偏差は考慮されるべきである。他に特に示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は平均重量の分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0106】
実施例1
潜在的発癌性を決定するためのHPV E6タンパク質の配列分析
PDZタンパク質はタンパク質の特定のカルボキシル末端配列(PL)に結合することが公知である。PDZドメインに結合するPL配列は予測可能であり、かつ米国特許出願第09/710059号、第09/724553号、および第09/688017号にさらに詳細に記載されている。PLモチーフの主要なクラスの1つは、-X-(S/T)-X-(V/ I/L)という配列が末端をなすタンパク質群である。本発明者らは数多くのHPV株に由来するE6タンパク質のC末端配列を調べた。National Cancer Instituteにより発癌性であると決定された全ての株が、共通のPDZ結合配列を示した。癌性でない乳頭腫ウイルス株由来のE6タンパク質は、PDZドメインに結合すると予測される配列を欠いており、従って、PDZタンパク質との相互作用はヒトで癌を引き起こすための必要条件であることが示唆される。PLの存在と癌を引き起こす能力とのこの相関は調べられた配列について100%である(表3A)。理論上は、前記の特許リストから開示されたPL共通配列から、HPVの新規の変異体を、それらPDZタンパク質結合能について評価することが可能であり、かつPLが存在するか否かに基づいて発癌性が予測可能である。本年前半に、ヒト乳頭腫ウイルスの新規の発癌性株が5種同定され、それらのE6タンパク質が配列決定された。予測されたとおり、これらのタンパク質は全てPL共通配列を含む(表3B)。
【0107】
(表3A)E6 PDZリガンドと発癌性の相関

表3A:E6 C末端配列および発癌性。HPV変異体は左に列挙されている。配列はGenbank配列記録タから同定された。PLの有無は、本発明者らおよびSongyang et al.により決定された共通配列-X-(S/T)-X-(V/I/L)との一致または不一致により定義された。発癌性データはNational Cancer Institute; Kawashima et al. (1986) J. Virol. 57:688-692; Kirii et al. (1998) Virus Genes 17:117-121; Forslund et al. (1996) J. Clin. Microbiol. 34:802-809から収集された。*他の発癌性タンパク質と共に共トランスフェクションされた発癌性株にのみ見いだされた。
【0108】
(表3B)最近同定された発癌性E6タンパク質の相関

表3B:E6 C末端配列および発癌性。HPV変異体は左に列挙されている。配列はGenbank配列記録から同定された。PLの有無は、共通配列-X-(S/T)-X-(V/I/L)との一致または不一致により定義された。新規の株の発癌性データはN Engl J Med 2003;348:518-527から収集された。
【0109】
これらの表は、HPVゲノムによりコードされるE6タンパク質のC末端の4アミノ酸の配列に基づくHPV株の分類を提供する。21種の発癌性HPV株は(C末端の4アミノ酸の配列に基づいて)11クラスのうちの1つに分類され、上に具体的に列挙されていないHPV株もこれらのクラスに分類される可能性がある。そのような場合において、11のクラス全てに由来するHPV株を検出することが望まれる:本方法はそのような検出法を提供する。
【0110】
本発明の交差反応性抗体は、複数(例えば、2、3、4、5、6、もしくは7またはそれ以上の種類)のクラスのHPV株に由来するE6タンパク質を認識できる。
【0111】
実施例2
発癌性E6タンパク質のC末端と相互作用するPDZドメインの同定
診断的アッセイ法において、発癌性E6タンパク質を検出するのに用いることができるPDZドメインを決定するため、アッセイ法を用いてE6 PLおよびPDZドメイン間の相互作用が同定された。ヒト乳頭腫ウイルスの発癌性株由来のE6タンパク質のC末端アミノ酸配列に一致するペプチドが合成された。これらのペプチドは、アッセイ法を用いてPDZドメインと結合する能力を用いて、および米国特許出願第09/710059号、第09/724553号、および第09/688017号にさらに詳細に記載される発現コンストラクトから合成されたPDZタンパク質と結合する能力が評価された。高い結合親和性を示すこれらのアッセイ法の結果を以下の表4に列挙する。
【0112】
以下に本発明者らが見ることができるように、いくつかの発癌性E6タンパク質に結合する数多くのPDZドメインが存在し、かつMAGI-1由来の第二のPDZドメインは試験された全ての発癌性E6 PLに結合する。TIP-1のPDZドメインは試験された発癌性E6 PLのうち1つを除いて全てに結合し、発癌性E6タンパク質の存在を検出するためにMAGI-1ドメイン2と併せて有用であり得る。
【0113】
同様に、いくつかの非発癌性E6タンパク質のC末端側終端に一致するペプチドがアッセイ法を用いて試験された。PDZドメイン結合に対しいかなる親和性を示したペプチドもなかった。
【0114】
(表4)HPV E6 PLおよびPDZドメインの間の高親和性相互作用

表4:いくつかのHPV変異体のE6 C末端とヒトPDZドメインの間の相互作用。HPV株は、E6 C末端ペプチド配列情報が取得された元の株を示す。このアッセイ法で用いられたペプチドは18〜20アミノ酸の長さで変動し、末端の4残基を括弧内に列挙する。HPV E6変種それぞれの右側の名称は、アッセイにおいてE6ペプチドとの結合が飽和したヒトのPDZドメインを(複数のPDZドメインを有するタンパク質については括弧内のドメイン番号と共に)示す。*はhDlg1のPDZドメインが、有限な材料のため、これらのタンパク質に対して未だ試験されていないことを示すが、両方とも文献においてはhDlg1に結合することが示されている。
【0115】
本抗体は、発癌性HPV株を検出する方法において、これらの発癌性HPV E6結合PDZタンパク質とともに用いることができる。
【0116】
実施例3〜7の材料と方法
免疫化プロトコル:
8週齢の雌のBALB/cマウス5匹が、腹腔内で、足蹠で、または皮下で、0日目に20μgのMBP-E6融合タンパク質または100μgのE6共役ペプチドおよび20μgのpolyI/polyCポリマーもしくは完全フロインドアジュバントを用いて免疫された。動物は20μgのE6タンパク質およびpolyI/polyCまたは不完全フロインドアジュバントを用いて追加免疫された。最後の追加免疫の3日後試験採血が行われ、一致するE6タンパク質に対するELISAによりスクリーニングされた。免疫反応性のマウスに融合の3日前に最終の追加免疫が行われる。
【0117】
血清抗体価およびB細胞ハイブリドーマ上清のELISAスクリーニング:
ELISAのプレートは適切な融合タンパク質を用いてコーティングされ、洗浄され、2%BSA(Sigma)を含むPBSを用いてブロッキングされる。その後、試験試料(免疫血清またはハイブリドーマ上清)が、免疫前のまたは無関係な上清の負の対照とともに添加される。インキュベートの後に、プレートは洗浄され、PBS/2% BSA中の抗マウスIgG-HRP抱合体(Jackson Laboratories)が添加される。徹底的な洗浄の後、TMB基質が30分間添加され、その後0.18M H2SO4を用いて反応が停止された。その後、プレートはMolecular DevicesのTHERMO Max マイクロプレートレーダーを用いて、450nmで読み取られた。
【0118】
融合:
融合当日に、動物が殺され、血液が回収され、脾臓が切除されてハサミにより細かく切り刻まれる。その後細胞はピペットにより穏やかに吸引および吐出されて細かく分けられ、無菌の70μmのナイロンフィルターを通してろ過され、遠心により洗浄される。脾臓細胞およびFOX-NYミエローマパートナー(融合前に対数増殖に維持される)は、無血清RPMI培地に再懸濁され、4:1の割合で混ぜ合わされて、一緒に沈降される。次に、1 mlの50% PEG (Sigma)を1分間滴下し、その後細胞を1分間攪拌することにより融合が行われる。次に、2mlのRPMI/15% FCS培地を2分間滴下し、その後一定の攪拌を行いながら8 mlのRPMI/15% FCSを2分間滴下する。この混合物は遠心分離され、細胞は穏やかにRPMI/15% FCS+1×HAT培地(Sigma)中に108細胞/mlで再懸濁され、200μl/ウェルで96穴平底プレートに播き出される。5日後、〜100μlの古い培地がウェルから吸引され、100μlの新鮮なRPMI/HAT培地を加えることで置換される。ハイブリドーマはRPMI/HAT中に〜7日間維持される。その後、1×HTを含むRPMI/15% FCS中で約1週間生育される。ウェルは10%〜30%コンフルエントの時期に、ELISAにより抗体活性についてアッセイされる。
【0119】
ハイブリドーマクローニング、抗体精製およびアイソタイプ決定:
所望の活性を与える上清を有するウェルをクローニングのために選択した。細胞は96穴平底プレート中で限界希釈法によりクローニングされる。組織培養上清からの抗体の精製はプロテインGおよびAアフィニティークロマトグラフィー(Amersham)により行われる。抗体のアイソタイプはサイトメリックビーズアレイ(Cytometric bead array)を用いて決定される。
【0120】
細胞系:
列挙されたHPV株 E6を発現する子宮頸癌細胞系をATCCより購入し、以下の表に示す:

【0121】
安定的にまたは一過的にトランスフェクトされた細胞は以下の方法を用いて産生された:
以下の安定な細胞系が作製された:3A-HA-E6-26(HPV 26 E6を発現する);C33A-HA-E6-53(HPV 53 E6を発現する);C33A-HA-E6-58(HPV 58 E6を発現する);C33A-HA-E6-59(HPV 59 E6を発現する);C33A-HA-E6-66(HPV 66 E6を発現する);C33A-HA-E6-69(HPV 69 E6を発現する)および C33A-HA-E6-73(HPV 73 E6を発現する)。
【0122】
哺乳動物細胞系のリン酸カルシウムトランスフェクション
材料:脱イオン水、2M CaCl2、2×HBS pH 7.1、25mM クロロキン(1000×)、DNA。
0日目:トランスフェクションの前の夜に6穴プレートのそれぞれのウェルに80万個の細胞をまく(各コンストラクトにつき2ウェル、従って、6穴プレート中には3コンストラクト)。
1日目:a)適切な細胞培地を取り分け、クロロキンを添加する(培地10mlに対しそれぞれ12.5μlを添加する。余分な2.5μlは後に細胞に添加される500μlのリン酸カルシウム+DNA溶液のためである)。b)細胞から培地を吸引し、2mLの培地+クロロキン溶液を添加する。細胞をインキュベーターに戻す。c)5mLのポリプロピレンチューブ内に以下を列挙された順に添加する:i)脱イオン水、ii)DNA、iii)2M CaCl2を以下のように添加する:

d)電動ピペットマンおよびパスツールピペットを用いて泡立てながら、DNA混合物を500μl滴下して、2×HBSに添加する;e)DNA/カルシウム/リン酸溶液を500μlを各ウェルに添加する;およびf)インキュベーターで8時間インキュベートした後、培地を通常の成長培地に置換する。
3日目:1mg/mlのG-418 (Gibco)により選択を開始する。
【0123】
HPV 51 E6を一過的に発現するための細胞は標準的な方法により産生された。
【0124】
実施例3
HPV-E6組換えタンパク質の発現および精製
前に列挙された高リスクHPVタイプのE6タンパク質をコードするポリヌクレオチドを化学的に合成し(DNA 2.0, Menlo Park, California)、または子宮頸癌細胞系よりRT-PCRを介してクローニングした。マルトース結合タンパク質-E6(MBP-E6)およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ-E6(GST-E6)融合タンパク質の両方の型を用いた。GST-E6およびMBP-E6タンパク質は供給業者(それぞれAmersham およびNew England Biolabs)により推奨された標準的なプロトコルにより産生された。DH5α大腸菌(E. coli)においてIPTG駆動の誘導を用いてタンパク質を発現させた。37℃において2時間の誘導によりGST-E6またはMBP-E6組換えタンパク質が〜1mg/L産生された一方、20℃において終夜誘導し、かつタンパク質のゲル基質への再結合を含む精製を行い、結果として2〜10mg/Lの最終収量が得られた。MBP-E6タンパク質の純度はPAGE分析に基づき>90%と推定された。組換えE6融合タンパク質を免疫原として用いた。
【0125】
実施例4
免疫化、融合、E6タンパク質に対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニング
マウスをそれぞれのHPV E6タンパク質を用いて免疫した。さまざまな抗原用量(100μg〜10μg)、アジュバント(CFA/IFA、poly(I)-poly(C)、CpG+Alum)、および経路(皮下、腹腔内)を含むさまざまな免疫化プロトコルが試験された。免疫化および血清回収を扱っている動物ケアのサービス設備と契約した(Josman, Napa, CA)。免疫化プロジェクトはそれぞれ5〜15匹のマウスを用いて行われた。免疫されたマウスの血清は組換えE6タンパク質に対するELISAで試験された。血清がE6に対し十分に高い力価を示した(1:1000希釈でODが1より高い)マウスを融合用に選択した。
【0126】
抗E6抗体を分泌するハイブリドーマの頻度を高めるため、最終の追加免疫で用いられる組換えE6タンパク質は、免疫化の間に用いられたものと異なるタグを含んだ(MBP-E6を用いて免疫化が行われた場合は追加免疫でGST-E6を用い、逆の場合も同じである)。
【0127】
実施例5
選択されたマウスの脾臓細胞を融合した
ハイブリドーマ上清を、免疫化に用いたMBP-E6および負の対照としてのMBPタンパク質に対する直接抗原ELISAにより試験した。MBP-E6(免疫原)に対しては反応性を示したが、MBPに対して示さなかった上清はさらなる分析のために選択された。選択された上清は、抗E6 mAbの存在を再確認するため、スロットウエスタンブロットにより、組換えMBP-E6およびGST-E6に対する反応性についてさらに試験された。この段階で、抗E6mAbを分泌するハイブリドーマクローンを単離するために、ハイブリドーマは限界希釈法によりクローニングされた。
【0128】
ハイブリドーマの反応性をさらに特徴づけるため、選択された上清を、組換えE6タンパク質、ならびに負の対照としてのGST-INADL(PDZ)およびGST-MAGI1-PDZ1に対するELISAで試験した。GST-INADLは、原核生物の発現系で精製された場合に、免疫化に用いられたMBP-/GST-E6タンパク質調製物にも存在する、細菌性混入物と会合する傾向があるタンパク質のクラスに相当する。この対照により、上清中に見いだされた反応性がmAbとHPV-E6との結合を反映しており、会合していた混入物に対する反応性ではないことが裏付けられた。
【0129】
実施例6
抗E6モノクローナル抗体の交差反応パターン
免疫原として用いられたもの以外のE6タンパク質に対する抗E6 mAbの交差反応パターンが試験された。このE6パネル試験のために、直接ELISA法を用いた(組換えE6タンパク質でプレート上をコーティングした)。
【0130】
子宮頸癌を引き起こす高リスクHPVタイプ(例えば、HPV 16、18、26、30、31、34、45、51、52、53、58、59、66、68b、69、70、73、82)のE6タンパク質に対するモノクローナル抗体を産生した。
【0131】
産生した抗体の交差反応について示す結果の概要を以下の表5に示す。
【0132】
(表5)




【0133】
図3は、ハイブリドーマ上清をプローブとした、組換えE6タンパク質のスロットウエスタンブロットにより得られた結果を示す。
【0134】
実施例7
HPV診断試験のための抗体の選択
E6タンパク質と反応するハイブリドーマ由来の上清が、組換えE6融合タンパク質を用いたサンドイッチELISAにおいて、発癌性PL検出体とともに試験される。
【0135】
モノクローナル抗体は、子宮頸癌細胞系または(細胞系が入手不可能な場合は)E6を用いてトランスフェクトされた細胞由来のE6を検出する能力について、HPV診断ELISAにおいて試験される。
【0136】
上記の結果および議論から、本発明がHPV E6タンパク質を検出するための重要な新規の手段を提供することは明らかである。具体的には、本発明は発癌性HPV株を検出するための系を提供する。PDZタンパク質が複雑な生物学的試料の他の分析物からE6タンパク質を単離し、かつE6タンパク質が一種より多くのE6タンパク質と交差反応する抗体を用いて検出されることから、これは現行の方法より優れている。検出の特異性はPDZドメインに存在し、従来の方法で現在必要なように、抗体が発癌性E6タンパク質だけに結合する必要はない。従って、本方法および系はさまざまな異なる診断への適用に有用である。従って、本発明は当技術分野に重大な寄与をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1はさまざまな発癌性HPV株に由来するE6アミノ酸配列のアラインメントである。上から下へ、さまざまなHPV E6アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:13〜32の配列表と同じように示されている。他の3種の発癌性HPV株(HPV株34、67、および70)由来のアミノ酸配列はSEQ ID NO:359〜361の配列表に見いだされる。
【図2】図2は図1に示された発癌性HPV株の一部に由来するE6アミノ酸配列のアラインメントである。
【図3】図3はE6タンパク質との抗体反応性を示すスロットウエスタンブロットである。
【図4】図4はF22-10D11モノクローナル抗体の交差反応を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV株16、18、31、33、および45のE6タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体の混合物を含む抗体組成物であって、該モノクローナル抗体の少なくとも1つが、少なくとも3種の異なる発癌性HPV株のE6タンパク質に特異的に結合する、抗体組成物。
【請求項2】
モノクローナル抗体の混合物がHPV株16、18、31、33、45、52、および58のE6タンパク質に特異的に結合する、請求項1記載の抗体組成物。
【請求項3】
モノクローナル抗体の混合物がHPV株16、18、31、33、45、52、58、35、および59のE6タンパク質に特異的に結合する、請求項1記載の抗体組成物。
【請求項4】
少なくとも2つのモノクローナル抗体が、少なくとも6種の異なる発癌性HPV株のE6タンパク質に特異的に結合する、請求項1記載の抗体組成物。
【請求項5】
請求項1記載の抗体組成物を含む、試料中のHPV E6ポリペプチドの検出のための診断キット。
【請求項6】
モノクローナル抗体が標識されている、請求項5記載の診断キット。
【請求項7】
試料中の発癌性HPV E6ポリペプチドを検出するために抗体組成物を使用するための説明書をさらに含む、請求項5記載の診断キット。
【請求項8】
試料中の発癌性HPV E6ポリペプチドに結合するPDZドメインポリペプチドをさらに含む、請求項5記載の診断キット。
【請求項9】
以下の段階を含む、試料中のHPV E6タンパク質を検出する方法であって:
請求項1記載の抗体組成物を該試料に接触させる段階;および
該抗体と該試料との任意の結合を検出する段階;
ここで、該抗体と該試料との結合がHPV E6タンパク質の存在を示す、方法。
【請求項10】
試料がHPVの発癌性株を含むと疑われる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
以下の段階を含む、試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を検出する方法であって:
試料をPDZドメインポリペプチドと接触させる段階;および
請求項1記載の抗体組成物を用いて、該試料中の発癌性HPV E6タンパク質と該PDZドメインポリペプチドとの任意の結合を検出する段階;
ここで、該発癌性HPV E6タンパク質とPDZドメインポリペプチドとの結合が該試料中の発癌性HPV E6タンパク質の存在を示す、方法。
【請求項12】
発癌性HPV E6ポリペプチドに対する第一および第二の結合パートナーを含む、試料中の発癌性HPV E6ポリペプチドの存在を検出する系であって:
ここで、該第一結合パートナーはPDZドメインタンパク質であり、かつ該第二結合パートナーは少なくとも3種の異なる発癌性HPV株のE6タンパク質に特異的に結合する抗体である、系。
【請求項13】
結合パートナーの少なくとも1つが固体支持体に接着されている、請求項12記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−522108(P2007−522108A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547382(P2006−547382)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043356
【国際公開番号】WO2005/063286
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】