説明

HSP70発現を増加するためのビス(チオ‐ヒドラジドアミド)

被検体におけるHsp70に応答する障害の治療方法は、構造式(I)で表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の有効量を被検体に投与することを含む。式(I)のYは共有結合もしくは任意に置換した直鎖のヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する両方の>C=Z基と一緒になって、任意に置換した芳香族基である。R1〜R4は独立して‐H、任意に置換した脂肪族基、任意に置換したアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、ならびに/もしくはR2およびR4はそれらが結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、任意に芳香環に縮合した非芳香族複素環を形成する。R7〜R8は独立して‐H、任意に置換した脂肪族基、または任意に置換したアリール基である。ZはOまたはSである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年11月19日に出願された米国仮特許出願第60/629,595号の利益を主張する。上記出願の全体の教示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
熱ショックタンパク質(HSP)は、事実上全ての原核細胞および真核細胞で見い出される。Hsp70族のタンパク質の増加した発現は、アポトーシスなどの様々な細胞死経路を阻害することによるストレスを受けた広範囲の細胞を保護することが知られる(Mosserら, Mol Cell Biol. 2000 October; 20(19): 7146-7159; Yenari, Adv Exp Med Biol, 2002, 513, 281-299; KiangおよびTsokos, Pharmacol Ther. 1998; 80(2):182-201)。細胞は温度、損傷(外傷)、遺伝的疾患、代謝障害、アポトーシス、感染、毒素、放射線、酸化剤、過剰な/欠乏した栄養素または代謝産物などによってストレスを経験し得る。例えば、以下の様々な病状で損傷した細胞がHsp70に応じて保護作用を経験し得ることが当該技術分野で公知である。
【0003】
神経変性をもたらす、タンパク質のミスフォールディング/凝集の病状としては、アルツハイマー病(Zhangら, J. Neuroscience, 2004, 24(23), 5315-5321; Klettner, Drug News Perspect, 2004 17(5), 299-306)、ハンティングトン病(Klettner, 同書)、パーキンソン病(Auluckら, Science, 2002, 295(5556), 865-868)などが挙げられる。他の神経変性病状としては、脊髄性/延髄性筋萎縮症(Sobue, Nihon Shinkei Seishin Yakurigaku Zasshi, 2001, 21(1), 21-25)、および家族性筋萎縮性側索硬化症(Howlandら, Proc Nat Acad Sci USA, 2002, 99(3), 1604-1609; Sobue, 同書; Vleminckら, J Neuropathol Exp Neurol, 2002, 61(11), 968-974)が挙げられる。
【0004】
虚血および関連の酸化的損傷は、ニューロンおよびグリア(Carmelら, Exp Neurol, 2004, 185(1) 81-96; RenshawおよびWarburton, Front Biosci, 2004, 9, 110-116; Yenari, Adv Exp Med Biol, 2002, 513, 281-299; KellyおよびYenari, Curr Res Med Opin, 2002, 18 Suppl 2, s55-60; Leeら, Exp Neurol, 2001, 170(1), 129-139; Klettner, 同書; KlettnerおよびHerdegen, Br J Pharmacol, 2003, 138(5), 1004-1012)、心筋(Marber, M.S.ら(1995) J. Clin. Invest. 95:1446-1456; Plumier, J.C.ら (1995) J. Clin. Invest. 95:1854-1860; Radford, N.B.ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(6): 2339-2342; Vossら, Am J Physiol Heart Circ Physiol 285: H687-H692, 2003)、肝組織(Doiら, Hepatogastroenterology. 2001 Mar-Apr;48(38):533-40; Gaoら World J Gastroenterol 2004;10(7):1019-1027)、骨格筋(Leporeら, Cell Stress & Chaperones, 2001, 6(2), 93-96)、腎組織(Chenら, Kidney Int. 1999; 56: 1270-1273; Beckら, Am J Physiol Renal Physiol 279: F203-F215, 2000.)、肺組織(Hiratsukaら, J Heart Lung Transplant. 1998 Dec;17(12):1238-46)、膵臓組織(Bellmannら, J Clin Invest. 1995 June; 95(6): 2840-2845)などを含む様々な組織に影響する。
【0005】
ニューロンを損傷する発作(siezure)病状としては、例えば癲癇性発作(Yenari, 同書; Blondeauら、Neuroscience 2002, 109(2), 231-241)、または化学的に誘発された発作(Tsuchiyaら, Neurosurgery, 2003, 53(5), 1179-1187)が挙げられる。
【0006】
熱ストレスとしては、発熱、熱射痛などの高体温症状(BarclayおよびRobertson, J Neurobiol, 2003 56(4), 360-271; Satoら, Brain Res, 1996, 740(1-2), 117-123)、および低体温(KandorおよびGoldberg, Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 May 13; 94(10): 4978-4981)が挙げられる。
【0007】
老化としては、平滑筋細胞に影響するアテローム性動脈硬化(Minowada, G.およびWelch, W.J. (1995) J. Clin. Invest. 95:3-12; Johnson, A.J.ら (1995) Arterio. Thromb. Vasc. Biol. 15(1):27-36)などの病状が挙げられる。
【0008】
他の病状としては、例えば紫外線からネズミの線維芽細胞などの組織への放射線損傷(Simon, M.M.ら (1995) J. Clin. Res. 95(3): 926-933)、および網膜細胞への光損傷(Yuら, Molecular Vision 2001; 7:48-56)が挙げられる。
【0009】
外傷としては、例えば機械的損傷、例を挙げると緑内障における網膜神経節の圧損傷(Ishiiら, Invest Opthalmol Vis Sci, 2003, 44(5), 1982-1992)、が挙げられる。
【0010】
中毒症状としては、化学物質または生化学物質、例えばメタンフェタミン(Malberg & Seiden, Poster “MDMA Administration Induces Expression of HSP70 in the Rat Brain” Society for Neuroscience Annual Meeting, New Orleans, LA, October 25-30, 1997)、抗レトロウイルスHIV治療薬(Keswaniら, Annals Neurology, 2002, 53(1), 57-64)、重金属、アミノ酸アナログ、化学的酸化剤、エタノール、グルタミン酸塩、および他の毒素(Ashburner, M.およびBonner, J.J. (1979) Cell: 17:241-254; Lindquist, S. (1986) Ann. Rev. Biochem. 55:1151-1191; Craig, E.A. (1985) Crit. Rev. Biochem. 18(3):239-280; Morimotoら, In: The Biology of Heat Shock Proteins and Molecular Chaperone, (1994) pp. 417-455. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor, N.Y.)などの投与が挙げられる。
【0011】
従って、Hsp70に応答する障害を治療するためにHsp70の発現を増大する新しい方法の必要性がある。
【0012】
(発明の概要)
Hsp70に応答する障害を治療するためのHsp70発現を増大するために、ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)を用いる方法を開示する。ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)はマウスにおいてHsp70の発現を誘発し得る(実施例3参照)。さらに、これらの化合物は有利な薬物動態学的側面を有し、血液脳関門を横切ることを含み、全身に渡って輸送される(実施例1および2参照)。
【0013】
被検体におけるHsp70に応答する障害の治療方法は、構造式I:
【化1】


で表される有効量の化合物を被検体に投与することを含む。
【0014】
Yは共有結合もしくは任意に置換した直鎖のヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する両方の>C=Z基と一緒になって、任意に置換した芳香族基である。
【0015】
R1〜R4は独立して-H、任意に置換した脂肪族基、任意に置換したアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、ならびに/もしくはR2およびR4はそれらが結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、任意に芳香環に縮合した非芳香族複素環を形成する。
【0016】
R7〜R8は独立して‐H、任意に置換した脂肪族基、または任意に置換したアリール基である。
【0017】
ZはOまたはSである。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)」としてはまた、構造式Iで表される化合物の薬学的に許容され得る塩および溶媒和物が挙げられる。
【0019】
本発明の一つの態様は、有効量のビス(チオ‐ヒドラジドアミド)を被検体に投与することを含む、治療を必要とする被検体における神経変性障害の治療法である。
【0020】
本発明の別の態様は、有効量の式(I)の化合物を被検体に投与することを含む、神経損傷の危険のある被検体における神経損傷を緩和するかまたは予防する方法である。
【0021】
本明細書に記載される方法は、Hsp70に応答する障害を治療するためにHsp70発現を増大するのに有効であると思われる。
【0022】
(発明の詳細な説明)
開示される発明において用いられるビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は構造式Iで表される。
【0023】
「直鎖ヒドロカルビル基」はアルキレン基、すなわち結合基で任意に置換した1つ以上(好ましくは1つ)の内部メチレン基を有する-(CH2)y-である。yは正の整数(例えば1〜10)であり、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1または2である。「結合基」とは、直鎖ヒドロカルビルのメチレンを置換する官能基をいう。適切な結合基の例としては、ケトン(-C(O)-)、アルケン、アルキン、フェニレン、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、またはアミン(-N(Ra)-)が挙げられ、Raは以下に規定される。好ましい結合基は-C(R5R6)-であり、R5およびR6は以下に規定される。アルキレン基およびヒドロカルビル基の適切な置換基は、開示された化合物の生物活性を実質的に阻害しないものであり、適切な置換基の例は以下に規定される通りである。R5およびR6は、Yで表されるアルキレン基またはヒドロカルビル基の好ましい置換基である。
【0024】
脂肪族基は、完全に飽和しているか、もしくは1つ以上の不飽和単位を含む直鎖、分枝または環式非芳香族炭化水素である。通常は、直鎖または分枝脂肪族基は1〜約20、好ましくは1〜約10の炭素原子を有し、環式脂肪族基は3〜約10、好ましくは3〜約8の炭素原子を有する。脂肪族基は、好ましくは直鎖または分枝アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルもしくはオクチルであるか、または3〜約8の炭素原子を有するシクロアルキル基である。C1〜C20直鎖もしくは分枝アルキル基、またはC3〜C8環式アルキル基はまた「低級アルキル」基といわれる。脂肪族基の適切な置換基の例は以下に規定される通りである。
【0025】
用語「芳香族基」は、「アリール」、「アリール環」、「芳香族環」、「アリール基」および「芳香族基」と同義的に用いられ得る。芳香族基としては、フェニル、ナフチルおよびアントラシル(anthracyl)等の炭素環式芳香族基、ならびにイミダゾリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピリミジル(pyrimidy)、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル(pyrroyl)、ピラジニル、チアゾール、オキサゾリル、およびテトラゾール等のヘテロアリール基が挙げられる。用語「ヘテロアリール基」は、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロ芳香族環」および「ヘテロ芳香族基」と同義的に用いられ得る。用語「ヘテロアリール」は本明細書で使用される場合、窒素、硫黄および酸素などのヘテロ原子を少なくとも1つ含む単環または多環式芳香族へテロ環を意味するが、1、2、3または4個のヘテロ原子を含み得る。芳香族基はまた縮合多環式芳香族環系を含み、その中で炭素環式芳香族環またはヘテロアリール環が1つ以上の他の芳香族環、ヘテロ環またはシクロアルキル環に縮合される。例としては、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール(benzooxazole)、ベンズイミダゾール、キノリニル、イソキノリニルおよびイソインドリルが挙げられる。芳香族基の適切な置換基の例は以下に規定される通りである。
【0026】
用語「アリーレン」は、2つの他の結合によって分子の残余に結合されるアリール基をいう。例として、1,4-フェニレン基の構造を以下に示す:
【化2】

【0027】
アリーレン基の適切な置換基の例は、アリール基について以下に記載される通りである。
【0028】
非芳香族ヘテロ環式環は、窒素、酸素、または硫黄等の1つ以上のヘテロ原子を環中に含む非芳香族環である。該環は、5、6、7または8員環であり得る。例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル(tetrahyrothiophenyl)、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニルおよびチアゾリジニルが挙げられる。
【0029】
(シクロアルキル、アルキレン基またはヒドロカルビル基を含む)脂肪族基、非芳香族ヘテロ環基、ベンジル基またはアリール基(炭素環式およびヘテロアリール)の適切な置換基は、開示される化合物の生物活性を実質的に阻害しないものである。置換基を有する化合物において、置換基を有さない化合物と比較して、生物活性が約50%より多く減少するとき、置換基は実質的に生物活性を阻害する。適切な置換基の例としては、-Ra、-OH、-Br、-Cl、-I、-F、-ORa、-O-CORa、-CORa、-CN、-NO2、-COOH、-SO3H、-NH2、-NHRa、-N(RaRb)、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CON(RaRb)、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCON(RaRb)、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCON(RaRb)、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-N(RaRb)、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-N(RaRb)、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-N(RaRb)、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-N(RaRb)、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-N(RaRb)、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-N(RaRb)、-NHNH2、-NHNHRa、-NHNRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O2)Raが挙げられる。Ra〜Rdは各々独立してアルキル基、芳香族基、非芳香族ヘテロ環基または-N(RaRb)であり、一緒になって任意に置換した非芳香族ヘテロ環基を形成する。Ra〜Rdで表されるアルキル、芳香族および非芳香族ヘテロ環基、ならびに-N(RaRb)で表される非芳香族ヘテロ環基は、各々が任意に独立して、R#で表される1つ以上の基で置換される。
【0030】
R#は、R+、-OR+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)R+、-CO2R+、-C(O)R+、-C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R+、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2、または-C(=NH)-N(R+)2である。
【0031】
R+は、-H、C1〜C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族ヘテロ環基またはアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミンもしくはジアルキルアミンで任意に置換したフェニル基である。任意に、-N(R+)2基は非芳香族ヘテロ環基である、ただしR+で表される非芳香族ヘテロ環基、および第2級の環アミンを含む-N(R+)2が任意にアシル化またはアルキル化されるものとする。
【0032】
R1〜R4で表されるフェニル基を含む、フェニル基に対する好ましい置換基としては、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNが挙げられる。
【0033】
R1およびR2で表されるシクロアルキル基を含む、シクロアルキル基に対する好ましい置換基は、メチル基またはエチル基等のアルキル基である。
【0034】
一つの態様において、構造式IにおけるYは共有結合、-C(R5R6)-、-(CH2CH2)-、トランス-(CH=CH)-、シス-(CH=CH)-または-(C≡C)-基であり、好ましくは-C(R5R6)-である。R1〜R4は構造式Iについて上述の通りである。R5およびR6はそれぞれ独立して-H、脂肪族基もしくは置換した脂肪族基であるか、もしくはR5は-Hであり、R6は任意に置換したアリール基であるか、またはR5およびR6は一緒になって、任意に置換したC2〜C6アルキレン基である。
【0035】
特定の態様において、Yはそれが結合する両方の>C=Z基と一緒になって、任意に置換した芳香族基である。この例において、特定のビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は構造式II:
【化3】


(式中、環Aは置換または非置換であり、Vは-CH-または-N-である。構造式IIの他の変化は構造式IまたはIIIaについて本明細書に記載される通りである)
で表される。
【0036】
特定の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は構造式IIIa:
【化4】


(R1〜R8は構造式Iについて上述の通りである)
で表される。
【0037】
構造式I〜IIIaにおいて、R1およびR2は同じであるか、もしくは異なっており、ならびに/またはR3およびR4は同じであるか、もしくは異なっており、好ましくは、R1およびR2は同じであり、ならびにR3およびR4は同じである。構造式IおよびIIIaにおいて、Zは好ましくはOである。通常は、構造式IおよびIIIaにおいて、ZはOであり、R1およびR2は同じであり、ならびにR3およびR4は同じである。より好ましくは、ZはOであり、R1およびR2は同じであり、R3およびR4は同じであり、ならびにR7およびR8は同じである。
【0038】
他の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、R1およびR2がそれぞれ任意に置換したアリール基、好ましくは任意に置換したフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれ任意に置換した脂肪族基、好ましくはアルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルであり;ならびにR5およびR6は上述の通りだが、R5は好ましくは‐Hであり、R6は好ましくは‐H、脂肪族基または置換した脂肪族基である、構造式IIIaで表される。
【0039】
あるいは、R1およびR2はそれぞれ任意に置換したアリール基であり;R3およびR4はそれぞれ任意に置換した脂肪族基であり;R5は‐Hであり;ならびにR6は‐H、脂肪族基または置換した脂肪族基である。好ましくは、R1およびR2はそれぞれ任意に置換したアリール基であり;R3およびR4はそれぞれアルキル基であり;ならびにR5は‐Hであり、およびR6は‐Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2はそれぞれ任意に置換したフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれメチルまたはエチルであり;ならびにR5は‐Hであり、R6は‐Hまたはメチルである。R1およびR2で表されるアリール基ならびにR3、R4およびR6で表される脂肪族基の適切な置換基は、アリール基および脂肪族基について以下に記載される通りである。
【0040】
別の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、R1およびR2がそれぞれ任意に置換した脂肪族基、好ましくは少なくとも一つのアルキル基と任意に置換したC3〜C8シクロアルキル基、より好ましくはシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4が構造式Iについて上述の通りであり、好ましくは両方とも任意に置換したアルキル基であり;ならびにR5およびR6は上述の通りだが、R5が好ましくは‐Hであり、R6が好ましくは‐H、脂肪族基または置換した脂肪族基であり、より好ましくは‐Hまたはメチルである、構造式IIIaで表される。
【0041】
あるいは、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、R1およびR2がそれぞれ任意に置換した脂肪族基であり;R3およびR4が構造式Iについて上述の通りであり、好ましくは両方とも任意に置換したアルキル基であり;ならびにR5が‐Hであり、R6が‐H、または任意に置換した脂肪族基である、構造式IIIaで表される。好ましくはR1およびR2は両方とも、少なくとも一つのアルキル基と任意に置換したC3〜C8シクロアルキル基であり;R3およびR4は両方とも構造式Iについて上述の通りであり、好ましくはアルキル基であり;ならびにR5は‐Hであり、R6は‐H、または脂肪族基もしくは置換した脂肪族基である。より好ましくは、R1およびR2は両方とも、少なくとも一つのアルキル基と任意に置換したC3〜C8シクロアルキル基であり;R3およびR4は両方ともアルキル基であり;ならびにR5は‐Hであり、R6は‐Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2は両方ともシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともアルキル基、好ましくはメチルまたはエチルであり;ならびにR5は‐Hであり、R6は‐Hまたはメチルである。
【0042】
特定の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、構造式IIIb:
【化5】


(式中、R1、R2、R3、R4、R7、R8、およびZは構造式IIIaについて上記に規定される通りである)
で表される。
【0043】
特定の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、構造式IVa:
【化6】


(式中、R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも4-メトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも3-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも3-フルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも4-クロロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも2-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも3-メトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジクロロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメチルフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はエチルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はn-プロピルであり、ならびにR6は‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3はメチルであり、およびR4はエチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも2-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方とも1-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロブチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロペンチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、R3およびR4は両方ともフェニルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともt-ブチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともフェニルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともt-ブチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;R1およびR2は両方ともエチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである;またはR1およびR2は両方ともn-プロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、ならびにR5およびR6は両方とも‐Hである)
で表される。
【0044】
特定の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、構造式IVb:
【化7】


(式中、R1、R2、R3、およびR4は構造式IVaについて上記に規定される通りである)
で表される。
【0045】
特定の態様において、該ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)は、構造式V:
【化8】


(式中、R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともo-CH3-フェニルである;R1およびR2は両方ともo-CH3C(O)O-フェニルであり、ならびにR3およびR4はフェニルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともn-プロピルである;R1およびR2は両方ともp-シアノフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともp-ニトロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともn-ブチルである;R1およびR2は両方ともp-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-ニトロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-シアノフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-フルオロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-フラニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-メトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジクロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメチルフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3,6-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方とも2-エチルフェニルである;R1およびR2は両方とも2-メチル-5-ピリジルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;またはR1はフェニルであり;R2は2,5-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともp-CF3-フェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともo-CF3-フェニルである;R1およびR2は両方とも-(CH2)3COOHであり;ならびにR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方とも以下の構造式:
【化9】


で表され、ならびにR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともn-ブチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともn-ペンチルであり、R3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方とも2-ピリジルである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、ならびにR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方とも2-エチルフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方とも2,6-ジクロロフェニルである;R1〜R4全てがメチルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともt-ブチルである;R1およびR2は両方ともエチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともt-ブチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メチルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも1-フェニルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-フェニルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロブチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロペンチルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである;R1はシクロプロピルであり、R2はフェニルであり、ならびにR3およびR4は両方ともメチルである)
で表される。
【0046】
ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)の好ましい例としては、化合物(1)〜(18):
【化10】







ならびにそれらの薬学的に許容され得る塩および溶媒和物が挙げられる。
【0047】
ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)の特に好ましい例としては、化合物(1)、(17)、および(18)ならびにそれらの薬学的に許容され得る塩および溶媒和物が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ビス(チオ‐ヒドラジドアミド)」および本発明の構造式への参照としてはまた、これらの化合物および構造式の薬学的に許容され得る塩および溶媒和物が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「Hsp70」としては、構造性(constituitive)、同族、細胞特異的、グルコース調節、誘導などの形態を含む、約70キロダルトンの質量を有する熱ショックタンパク質の一群の各員が挙げられる。具体的なHsp70タンパク質の例としては、hsp70、hsp70hom、hsc70、Grp78/BiP、mt-hsp70/Grp75などが挙げられる。)通常は、開示される方法は誘導Hsp70の発現を増大する。機能上、70-kDa HSP (HSP70)族は、細胞質、ミトコンドリア、および小胞体においてタンパク質の折り畳み、輸送、および会合を援助するシャペロンの一群である。ヒトにおいてHsp70族は、非常に関係のあるタンパク質の一群をコードする少なくとも11の遺伝子を包含する。例えば、文献の全体の教示が参照によって本明細書に援用されるTavariaら, Cell Stress Chaperones, 1996;1(1):23-28; Todrykら, Immunology. 2003, 110(1): 1-9; ならびにGeorgopoulosおよびWelch, Annu Rev Cell Biol. 1993;9:601-634;を参照されたい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「Hsp70に応答する障害」とは、(癌および細胞増殖/細胞過剰増殖障害を特に除く)ストレスを受けた細胞が増加したHsp70発現により治療され得る病状である。かかる障害は限定されないが、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、脊髄性/延髄性筋萎縮症(例えば、ケネディ病)、脊髄小脳失調、および他の神経筋萎縮、家族性筋萎縮性側索硬化症、虚血、発作、低体温、高体温、熱傷外傷、アテローム性動脈硬化、被ばく、緑内障、毒素曝露、機械的損傷、炎症、自己免疫疾患、感染(細菌性、ウイルス性、真菌性または寄生性)などを含む多種多様な細胞のストレッサーによって起こり得る。
【0051】
一部の態様において、Hsp70に応答する障害は神経変性障害である。本明細書で使用される場合、神経変性障害は脳(cereberal)、脊髄、および末梢の神経(例えば神経筋接合部で)などの神経の崩壊、より典型的には脳および脊髄の神経の崩壊、または好ましい態様においては脳神経の崩壊に関与する。神経変性障害は、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、脊髄性/延髄性筋萎縮症、および他の神経筋萎縮、ならびに家族性筋萎縮性側索硬化症またはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)突然変異に関連する他の疾患を含み得る。神経変性障害はまた、虚血、発作、熱ストレス、放射線、毒素曝露、感染、外傷などによって起こる神経の崩壊を含み得る。
【0052】
一部の態様において、Hsp70に応答する障害は、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病などのタンパク質の凝集/ミスフォールディングの障害である。
【0053】
別の態様において、Hsp70に応答する障害は、神経損傷を起こすかまたは起こし得る処置または病状である。本発明の方法において用いる化合物は、i)神経損傷を起こすかもしくは起こし得る病状を患うか、またはii)神経損傷を起こすかもしくは起こし得る処置を受ける被検体において、神経損傷を緩和するかまたは予防する(発症を阻害する)(すなわち神経防護作用を与える)ために用いられ得る。ある局面において、神経損傷を起こすかまたは起こし得る処置は放射線治療である。別の局面において、該処置は化学療法である。ある局面において、該化学療法は抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、またはパクリタキセルアナログ)を投与することを含む。ある局面において、該化学療法はパクリタキセルを投与することを含む。別の局面において、該化学療法は白金誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン)を投与することを含む。ある態様において、本発明の方法において用いる化合物は併用療法として、神経損傷を起こすかまたは起こし得る処置と同時に投与され得る。他の態様において、本発明の方法において用いる化合物は、神経損傷を起こすかまたは起こし得る処置の前または後に投与され得る。ある態様において、本発明の方法において用いる化合物は、神経損傷を起こすかまたは起こし得る処置の30分から12時間、1時間から6前または後、に投与され得る。
【0054】
神経損傷は、限定されないが、放射線療法;例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、イホスファミド、メトトレキサート、クラドリビン、アルトレタミン、フルダラビン、プロカルバジン、チオテパ、テニポシド、三酸化ヒ素、アレムツズマブ(alemtuzumab)、カペシタビン、ダカルバジン、デニロイキンディフィトックス(denileukin diftitox)、インターフェロンα、リポソームダウノルビシン、トレチノイン、エトポシド/VP-16、シタラビン、ヘキサメチルメラミン、スラミン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン(gemcitibine)、サリドマイド、およびボルテゾミブ等の化学療法;例えばアミオダロン、ヒドララジン、ジゴキシン、およびペルヘキシリン等の心臓または血圧投薬;例えばメトロニダゾール、ニトロフラントイン、サリドマイド、およびINH等の闘感染症(fight infection)に対する投薬;例えばダプソン等の皮膚状態を処置するための投薬;例えばフェニトイン等の抗けいれん薬;ジスルフィラム等の抗アルコール投薬;ジドブジン、ジダノンシン(didanonsine)、スタブジン、ザルシタビン、リトナビル、d4T、ddC、ddl、およびアンプレナビル等のHIV投薬;例えばロバスタチン、プラバスタチン、インダパミド、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、例えばセリバスタチン、およびゲムフィブロジル等のコレステロール投薬;クロロキン、コルヒチン(cholchicine)、有機金(organic gold)、およびペニシラミン等の抗リウマチ薬;亜酸化窒素;リチウム;ならびに麦角を含む、多くの処置により生じ得る。
【0055】
いくつかの態様において、Hsp70-応答性損傷は虚血である。虚血は、酸素欠乏、糖欠乏、再灌流の際の酸化ストレス、および/またはグルタミン酸毒性等を含む、複数の経路を介して組織に損傷を与え得る。虚血は、内因性の状態(例えば、脳卒中、心臓発作等)、偶発性の機械的損傷、外科的な損傷(例えば移植された器官の再灌流ストレス)等により生じ得る。あるいは、虚血により損傷を受け得る組織としては、神経、心筋、肝臓組織、骨格筋、腎臓組織、肺組織、脾臓組織等が挙げられる。一つの好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は、脳または脊髄虚血である。別の態様において、Hsp70-応答性障害は心臓虚血である。
【0056】
種々の態様において、Hsp70-応答性障害は、例えばてんかん(eplileptic)発作、障害に誘導される発作、化学的に誘導される発作等の発作である。
【0057】
いくつかの態様において、Hsp70-応答性障害は熱ストレスのためである。熱ストレスには、(例えば、熱、熱射病、火傷による)高熱および低体温症が含まれる。好ましい態様において、障害は高熱である。別の好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は火傷外傷である。
【0058】
好ましい態様において、Hsp70-応答性障害はアテローム性動脈硬化症である。
【0059】
種々の態様において、Hsp70-応答性障害は、放射線損傷、例えば可視光、紫外光、マイクロ波、宇宙線、α線、β線、γ線、X線等のためである。例えば、該損傷は、放射線療法により癌を処置された被験体における、非癌組織に対する放射線損傷であり得る。好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は、可視光または紫外光による放射線損傷である。
【0060】
種々の態様において、Hsp70-応答性障害は機械的損傷、例えば手術、事故、特定の疾患状態(例えば緑内障における圧力損傷)等による外傷である。好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は、脳または脊髄外傷である。別の好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は(網膜神経節に圧力損傷をもたらす)緑内障である。
【0061】
種々の態様において、Hsp70-応答性障害は毒素への曝露である。好ましい態様において、Hsp70-応答性障害は、メタンフェタミン;抗レトロウイルスHIV療法(例えばヌクレオチド逆転写酵素阻害剤;重金属(例えば、水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、それらの化合物等)、アミノ酸アナログ、化学的酸化剤、エタノール、グルタミン酸、代謝阻害剤、抗体等より選択される神経毒への曝露である。
【0062】
本発明の方法の使用のための本明細書に記載される化合物も、ナチュラルキラー(NK)細胞活性を増加させることが見出された(その全内容が本明細書中に参照によって援用される米国仮特許出願第60/671,910号を参照)。NK細胞活性を増加させることも、神経変性障害を含むが、これに限定されない障害を有する被験体の処置に有益である。本明細書中で使用する場合、神経変性障害には、中枢神経、脊髄神経、および末梢神経の崩壊(例えば神経筋接合部において)、より典型的に中枢神経および脊髄神経の崩壊が含まれる。神経変性障害には、アルツハイマー病;ハンティングトン病;パーキンソン病;脊髄/延髄性筋萎縮症(例えばケネディ病)、脊髄小脳性運動失調障害、および他の神経筋萎縮;家族性筋萎縮側索硬化症;虚血;発作;低体温症;高熱;火傷外傷;アテローム性動脈硬化症;放射線曝露;緑内障;毒素曝露;機械的損傷;炎症;てんかん発作、障害に誘導される発作、化学的に誘導される発作、または他のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)変異に関する疾患等が含まれ得る。神経変性障害には、虚血、発作、熱ストレス、放射線、毒素曝露、感染、損傷等により生じる神経の崩壊も含まれ得る。虚血は、酸素欠乏、糖欠乏、再灌流の際の酸化ストレス、および/またはグルタミン酸毒性等を含む、複数の経路を介して組織に損傷を与え得る。虚血は、内因性の状態(例えば、脳卒中、心臓発作等)、偶発性の機械的損傷、外科的な損傷(例えば移植された器官の再灌流ストレス)等により生じ得る。あるいは、虚血により損傷を受け得る組織としては、神経、心筋、肝臓組織、骨格筋、腎臓組織、肺組織、膵臓組織等が挙げられる。
【0063】
他の、NK細胞活性を増加させることが有益であり得る障害には、熱ストレス(高熱(例えば熱、熱射病、火傷等)および低体温症を含む熱ストレス);例えば可視光、紫外光、マイクロ波、宇宙線、α線、β線、γ線、X線等による放射線損傷(例えば該損傷は、放射線療法により癌を処置された被験体における、非癌組織に対する放射線障害であり得る);機械的損傷、例えば手術、事故、特定の疾患状態(例えば緑内障における圧力障害)等;ならびに毒素への曝露、例えば、メタンフェタミン;抗レトロウイルスHIV療法(例えばヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;重金属(例えば、水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、それらの化合物等)、アミノ酸アナログ、化学的酸化剤、エタノール、グルタミン酸、代謝阻害剤、抗生物質等より選択される神経毒への曝露のための障害が含まれる。
【0064】
従って、本発明の方法の使用のためのて本明細書に記載される化合物は、すぐ上の2段落に記載される疾患の処置に、より効果的である。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「処置する(treat)」、「処置(treatment)」および「処置すること(treating)」は、Hsp70-応答性障害の進行、重症度および/または持続時間を減少、改善もしくは予防するため、またはHsp70-応答性障害の一つ以上の症候(好ましくは一つ以上の識別可能な症候)を減少、改善もしくは予防するための、一つ以上の療法(例えばビス(チオ-ヒドラジドアミド)等の一つ以上の治療剤)の実施について言う。特定の態様において、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、Hsp70-応答性障害の、少なくとも一つの測定可能な身体的パラメーターの改善について言い、必ずしも患者により識別可能である必要はない。他の態様において、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、Hsp70-応答性障害の進行の、例えば識別可能な症候の安定化による身体的、または身体的パラメーターの安定化による生理学的、またはその両方の阻害について言う。他の態様において、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、Hsp70-応答性障害に関連する一つ以上の症候の開始、発達又は進行における阻害又は減少について言う。
【0066】
本明細書で使用する場合、「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」および「予防すること(preventing)」は、所定のHsp70-応答性障害の獲得もしくは発達させる危険性を減少するため、またはHsp70-応答性障害の一つ以上の症候の再発、開始もしくは発達を減少もしくは阻害するための、一つ以上の療法(例えばビス(チオ-ヒドラジドアミド)等の一つ以上の治療剤)の予防的な実施について言う。好ましい態様において、Hsp70-応答性障害についての遺伝的または環境的危険因子を有する患者、好ましくはヒトに対する予防策として、本発明の化合物を投与する。
【0067】
本明細書で使用する場合、「被験体」は哺乳類、好ましくはヒトであるが、獣医学的処置の必要がある動物、例えばペット(例えばイヌ、ネコ等)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えばラット、マウス、モルモット等)でもあり得る。
【0068】
本明細書で使用する場合、「有効量」は、化合物を被験体に投与した場合に、有益な臨床的結果を達成する化合物の量である。「有益な臨床的結果」としては、細胞の崩壊の減少または阻害、細胞の崩壊に関連する症候の重症度の減少(例えばアルツハイマー症候群の減少、虚血における再灌流損傷の予防または処置等)により生じる、増加したHsp70の発現によりストレスを受けた細胞の治療的または予防的処置が挙げられる。Hsp70-応答性障害またはその一つ以上の症候の予防、処置、管理または改善に有効である、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)またはビス(チオ-ヒドラジドアミド)を含む組成物の量は、疾患または状態の性質および重症度、ならびに活性成分が投与される経路により変化する。頻度および用量も、投与される特定の療法(例えば治療または予防剤)、障害、疾患もしくは状態、投与経路、ならびに年齢、体、重、応答、および患者の過去の病歴に依存する、各患者に特異的な因子に従って変化する。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から予想され得る。適切な養生法(regiment)は、かかる因子を斟酌すること、ならびに、例えば以下の、文献に報告される用量およびその全教示が参照によって本明細書中に援用されるHardman, et al., 編., 1996, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics第9版, McGraw-Hill, New York; Physician’s Desk Reference (PDR) 第57版., 2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJにおいて推奨される用量によって、当業者により選択され得る。
【0069】
ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の例示的な用量は、被験体または試料の重量のキログラム当り、マイクログラム〜ミリグラム量(例えば、約1μg/kg〜約500mg/kg、約500μg/kg〜約250mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、約10mg/kg〜約50mg/kg等)の化合物を含む。
【0070】
本明細書中に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、薬物投与の任意の従来の方法、例えばカプセル、懸濁剤もしくは錠剤の経口投与、または非経口投与により被験体に投与され得る。非経口投与としては、例えば、筋肉内、静脈内、皮下または腹腔内注射等による全身性投与が含まれ得る。化合物は、経口(例えば食餌)、吸引による全身(例えば気管支内、鼻腔内、経口吸引または鼻腔滴下)、直腸、膣等でも投与され得る。特定の態様において、経口、非経口または局所投与は、Hsp70-応答性障害の処置のための好ましい投与形態である。
【0071】
本明細書中に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、Hsp70-応答性障害の処置のための医薬組成物の一部として、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせて被験体に投与され得る。投与される化合物の調製は、選択された投与経路(例えば溶液、エマルジョン、カプセル等)に従って変化する。適切な、薬学的に許容され得る担体は、化合物の生物学的活性を過度に阻害しない不活性成分を含み得る。薬学的に許容され得る担体は、生物適合性、つまり非毒性、非炎症性、非抗原性でなくてはならず、被験体への投与の際に他の所望されない反応があってはならない。標準的な薬学的調製技術には、同節中のRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されるもの等が使用され得る。非経口投与のための適切な医薬担体としては、例えば滅菌水、生理食塩水、静菌食塩水(約0.9% mg/mlベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝化食塩水、ハンクス液、リンガー液等が挙げられる。組成物をカプセル化する(硬質ゼラチンまたはシクロデキストランのコーティング等)方法は、当該分野で公知である(Baker, et al., "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986)。
【0072】
一つの態様において、該方法は、局所投与を含む。かかる場合において、化合物は、溶液、ゲル、ローション剤、クリームまたは軟膏として薬学的に許容され得る形態で調製され得る。これらおよひ他の医薬組成物を調製する実際の方法は、当業者に公知または自明であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 第16および18版., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1980-1990)に詳細に記載される。
【0073】
また、本明細書に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)の薬学的に許容され得る塩も本発明に包含される。これらのビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、適切な有機または無機塩基と反応して塩基付加塩を形成し得る、十分に酸性の一つ以上の陽子を有する。塩基付加塩としては、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等の無機塩、およびアルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリルアミン等の有機塩由来のものが含まれる。従って、本発明の塩の調製に有用なかかる塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム等が含まれる。
【0074】
例えばビス(チオ-ヒドラジドアミド)の薬学的に許容され得る塩(例えば構造式I〜Vまたは化合物(1)〜(18)で示されるものは、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の、一価の塩(つまり化合物が、一価の陽イオン等の薬学的に許容され得る対応する陽イオンにより平衡となる、一つの負の電荷を有す)を形成する、一等量の適切な塩基との反応、または二価の塩(例えば化合物が、二つの一価の陽イオン等の薬学的に許容され得る対応する二つの陽イオンまたは一つの薬学的に許容され得る二価の陽イオンにより平衡となる、二つの電子の負の電荷を)を形成する、二等量適切な塩基との反応により形成されたものである。ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の二価の塩が好ましい。「薬学的に許容され得る」は、陽イオンが被験体への投与に適していることを意味する。例としては、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+およびNR4+が挙げられ、式中Rは独立して水素、任意の置換脂肪族(例えば、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基またはアンモニウムアルキル基)もしくは任意の置換アリル基であるか、または任意の置換非芳香族複素環式環由来の二つのR基が一緒になって、任意に芳香族環と縮合する。一般的に、薬学的に許容され得る陽イオンは、Li+、Na+、K+、NH3(C2H5OH)+またはN(CH3)3(C2H5OH)+であり、より典型的には、塩は二ナトリウムまたは二カリウム塩であり、好ましくは二ナトリウム塩である(例えばその全てが参照によって本明細書中に援用される、米国出願第11/157,213号を参照)。
【0075】
十分に塩基性であるアミン等の基を有するビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、有機または無機酸と反応して、酸付加塩を形成し得る。塩基性の基を有する化合物から酸付加塩を形成するために一般に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、およびp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等の有機酸である。かかる塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、ギ酸塩、イソブチレート、n-カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベレート、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニルブチレート、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレート、グリコレート、酒石酸塩、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、マンデル酸塩等が挙げられる。
【0076】
本発明の特定の化合物が異なる立体異性体として入手され得ること(例えばジアステレオマーおよびエナンチオマー)、ならびに本発明に、純粋な異性体およびラセミ体混合物を含むそれらの混合物で被験体を処置する、開示された化合物および方法の全異性体形態およびラセミ体混合物が含まれることが理解されよう。立体異性体は、クロマトグラフィー等の適切な方法を用いて、分離および単離され得る。
【0077】
本明細書に記載された化合物およびその合成は、以前にKoya, et al.: 米国特許第6,800,660号、6,924,312号、および6,762,204号、米国出願第10/807,919号、Zhou et al. 米国出願第10/758,589号および Chen, et al., 米国特許第6,825,235号に開示された。これらの文献の全教示は、参照によって本明細書中に開示される。
【実施例】
【0078】
本発明は、いかなる方法においても限定することを意図しない、以下の実施例によって説明される。
【0079】
実施例1:ビス(チオヒドラジド)アミドは脳、腎臓、肝臓および脾臓に分布しており;化合物(1)および(18)は血液脳関門を通過する
SW雌マウス群あたりn=2(ビヒクル対照を含んで全部で4群において、化合物(1)および(18)の組織分布を調査するために、(血液脳関門を通過する分布についての陰性対照としてアテノロールを使用して)試験を設計した。試薬はSigma, St Louis, Moから入手し;マウスはTaconic Farms(Germantown NY)から入手した。ビヒクルには10% DMSO、18% Cremophor RH40を用いた。化合物を25mg/kgの用量で静脈投与した。投与30分後に血液を回収し、血液回収後すぐに組織回収を行なった。50μL血漿および50μL 1% ジチオトレイトール(DTT)および150μL CH3CN(0.1% HCOOH)を合わせて、10,000 rpm x 5分で遠心分離し;150μL上清に90μL H2Oを加えて血漿試料を調製した。計量した組織試料をリン酸緩衝化食塩水(PBS, x 1) および1% DTT(x 1)およびCH3CN(0.1% HCOOH)(x 3))中で均質化して調製し、10,000 rpm x 5分で遠心分離し;150μL上清に90μL H2Oを加えた。100μLの調製した試料を、溶離液として5〜95% CH3CN(0.1% HCOOH)を用いてHPLCにかけた。HPLCにかけた時間は15分であった。この方法で、保持時間(retention times)は化合物(18)について7.25分であり、化合物(1)について7.99分であった。
【0080】
図1は、最初の実験の注射の30分後に、測定したマウス血漿、脳、腎臓、肝臓および脾臓における化合物(1)および化合物(18)の濃度を示す棒グラフである。化合物(18)を脳で約2μMの濃度で検出し、約7%の血漿濃度であり、脳における化合物(1)はより高く、血漿において約27%の濃度の化合物(1)であった。従って、両化合物は血液脳関門を効果的に通過し、脳において化合物(1)は化合物(18)のほぼ2倍の濃度に達し、血漿と比較した脳において化合物(1)は、化合物(18)によって達した7%に対して27%の濃度に達した。注射の30分後の腎臓、肝臓および脾臓の濃度は、化合物(18)について50μM、33μMおよび25μMそれぞれであり、化合物(1)について28μM、32μMおよび12μMであった。肝臓における化合物(18)および(1)の分布は同様であるが、腎臓および脾臓における化合物(18)の濃度は化合物(1)の濃度の約2倍であった。
【0081】
第二の実験で、血液脳関門の通過について、化合物を陰性対照(アテノロール)と比較した。図2は、マウスの血漿および脳における陰性対照アテノロールに対する化合物(1)および化合物(18)の濃度を示す棒グラフである。化合物(1)および(18)は93%および13%の血漿濃度それぞれの脳の濃度に達するが、陰性対照アテノロールはわずか4%にしか達しない。従って、化合物(1)および化合物(18)は、アテノロールよりも効果的に血液脳関門を通過し得る。
【0082】
実施例2:化合物(1)および(9)は優れた生物学的利用能を有する
SW雌マウスにおける化合物(1)と(9)の、組織分布および生物学的利用能を比較するための試験を設計した。二つの製剤中で化合物を調製した。製剤Aは水中に10% DMSOおよび18% Cremophor RH40を含み;製剤Bはエタノール:Cremophor ELを1:1の比で含んだ。以下の配分に従って製剤を投与した。群1:静脈:製剤A中25mg/kg化合物(1);群2:経口(per os):製剤B中100mg/kg化合物(1);群3:静脈:製剤A中25mg/kg化合物(9);群4:経口:製剤B中100mg/kg化合物(9)。
【0083】
注射後30分、1、2および4時間に血液試料を得た。血液回収の30分後に脳組織試料を得、ここで各群から一匹のマウスを選択して、分析のために脳を切除した。
【0084】
血液試料を3〜5mgの固形DTTと混ぜ、その後試料をボルテックスにかけ、6,000rpm X 10分で遠心分離した。50μLアリコートの血漿を採取し、次いで50μL 1% DTTおよび150μL CH3CN(0.1% TFA)を添加した。混合物をボルテックスにかけ、10,000rpm X 5分で遠心分離した。150μLの上清を150μLの水で希釈した。計量した組織試料をPBS (1:1)中で均質化し、次いで1% DTT(1:1)と混ぜ、次いで0.1% TFA (3:1)を含有したCH3CNを添加した。混合物をボルテックスにかけ、10,000 rpm x 5分で遠心分離した。150μLの上清を150μLの水で希釈した。溶離液として5〜95% CH3CN(0.1%トリフルオロ酢酸)を使用して100μLの調製した試料をHPLCにかけた。
【0085】
図3〜5は、種々のパラメーターに対する化合物(1)および(9)の分布を示す。
【0086】
図3は、0〜4時間および0〜推定(extrapolated)無限大でのマウスの血漿および脳における、化合物(1)および化合物(9)についての(μM x時間における)AUC(曲線下面積)値を示す棒グラフである。製剤Aによる化合物(1)の静脈投与についての4時間対無限のAUC値はほぼ同一であり、化合物(9)についても同様であった。製剤Bを使用した経口投与について、化合物(1)は4時間で静脈の値の約30%に達し、無限で静脈の値の約80%に達した。製剤Bを使用した経口投与下での化合物(9)は、4時間で静脈の値の約30%に達したが、無限では静脈の値の約50%に過ぎなかった。
【0087】
図4は、化合物(1)および化合物(9)についての時間に対するマウス血漿濃度を示すグラフである。製剤Bを用いた経口投与による両化合物(1)および(9)の半減期は、静脈注射よりもかなり長かった。製剤B中の化合物(1)の半減期(2.3時間)は、化合物(9)のもの(3.8時間)よりもわずかに短かった。化合物(1)および(9)の生物学的利用能は同様であった(約8%)。
【0088】
図5は、投与30分後のマウスの脳における化合物(1)および化合物(9)の濃度を示す棒グラフである。IVおよびPO両投与後30分での化合物(9)と比較して、化合物(1)は30分で、脳において有意な濃度(5.25μmol/組織g (iv)および3.09μmol/組織g (po))で検出された。従って、化合物(1)は、化合物(9)よりも効果的に血液脳関門を通過する。
【0089】
実施例3:ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は正常細胞においてHsp70を誘導する
腫瘍を有さないマウスにビヒクルのみまたは化合物(1)を用いた。使用したビヒクルは、10% DMSO、18% Cremophor RH40であった。化合物(1)をビヒクルと組み合わせて(2.5mg/mL)、週に3回静脈投与した。尾部で採取した血液(bleed)より血漿試料を調製した。酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)により血漿Hsp70レベルを決定した。
【0090】
図6は、ビヒクルと比較した化合物(1)の投与における正常(腫瘍を有さない)マウスにおける血漿Hsp70のレベルの増加を示す棒グラフである。従って、これにより、単独で投与されたビス(チオ-ヒドラジドアミド)は正常細胞中でHsp70を誘導し得ることが示される。
【0091】
実施例4〜8
熱ショックタンパク質(Hsp)は種々のストレス状態下で誘導され、その変性を避けるために他のタンパク質と結合する。Hspは、アポトーシス性の死から細胞を保護し得る。Hsp70の産生を誘導する因子は、種々の障害に対して防御活性を有し得、神経学的損傷において特別な有用性を有し得る。Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の神経防御活性は、種々の動物の神経学的疾患モデルにおいて評価し得る。有効性の試験について、特に脳卒中、筋萎縮側索硬化症、ハンティングトン病、パーキンソン病、およびアルツハイマー病の動物モデルが適切な設定である。いくつかの例示的動物モデルを以下に提供する。
【0092】
実施例4:脳虚血(脳卒中)
Hsp70を誘導するビス(チオ-ヒドラジドアミド)による開示される処置の恩恵を脳卒中のげっ歯類モデルで評価し得る。例えば、Longa, et al.(Longa, E.Z., Weinstein, P.R., Carlson, S., および Cummins, R. (1989) Reversible middle cerebral artery occlusion without craniectomy in rats. Stroke 20:84-91)に記載される脳卒中モデルが有用であり得る。
【0093】
ラットを塩酸ケタミン麻酔し、次いで頭蓋外脈管閉塞により梗塞を誘導する。4-0ナイロン管内縫合を頸部内頸動脈に施し、頭蓋内で血流の閉塞を中大脳動脈まで進行させる。外頚動脈の全ての分枝および内頚動脈の全ての頭蓋外分枝を遮ることで側副の血流を減少させる。ビス(チオ-ヒドラジドアミド)、例えば化合物(1)は、梗塞の誘導の直前または直後に投薬され得る。用量、例えば10〜100mg/kg体重が、任意の従来の投与形態、例えば経口または静脈により、週に一回、週に三回、または毎日投与され得る。神経学的欠乏、死亡率、肉眼病理学(梗塞の大きさ)、および組織化学染色を分析して、化合物の有効性を評価し得る。これは非常に急性のモデルであり、しばしば梗塞後3日で死が観察されるので、モデリングは薬物の単一投与からなり得る。
【0094】
実施例5:家族性筋萎縮側索硬化症(ALS)
ALSの処置における化合物の効果を、SOD1トランスジェニックマウスモデルを使用してモデル化し得る(Gurney, M.E., Pu, H., Chiu, A.Y., Dal Canto, M.C., Polchow, C.Y., Alexander, D.D., Caliendo, J., Hentati, A., Kwon, Y.W., およびDeng, H.X. (1994) Motor neuron degeneration in mice that express a human CuZn superoxide dismutase mutation. Science 264:1772-1775)。家族性ALSを有する患者にヒトCuZnスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の変異が見られる。アミノ酸93でのグリシンからアラニンへの置換を含むヒトSOD遺伝子の発現により、トランスジェニックマウスにおける運動神経疾患が生じる。脊髄からの運動神経の消失の結果として、マウスは麻痺し、5〜6ヶ月齢までに死亡する。
【0095】
Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の効果を試験するために、SOD1変異(SOD1G93A)を有するトランスジェニックマウスを化合物で処置し、疾患における効果をモニターする。これらの動物において、症候が2.5〜3ヶ月齢に臨床的に現れる。この時点で化合物を投薬し得る。用量は、例えば10〜100mg/kg体重で、週に一度または週に三度、経口または静脈経路で投与され得る。終点には、運動機能の機能的重要性および組織学的変化が含まれる。後者の終点には、運動神経の変性および脊髄運動神経のニューロフィラメント富化封入体の出現を評価する、脳および脊髄の組織病理学が含まれる。長期間投与を行なった場合、マウス生存における影響が評価され得る。
【0096】
実施例6:ハンティングトン病(HD)
HDのトランスジェニックマウスモデルが存在し、この疾患における硬化について、Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の試験が可能となる(Mangiarini, L., Sathasivam, K., Seller, M., Cozens, B., Harper, A., Hetherington, C., Lawton, M., Trottier, Y., Lehrach, H., Davies, S.W., およびBates, G.P. (1996) Exon 1 of the HD gene with an expanded CAG repeat is sufficient to cause a progressive neurological phenotype in transgenic mice. Cell 87:493-506; Carter, R.J., Lione, L.A., Humby, T., Mangiarini, L., Mahal, A., Bates, G.P., Dunnett, S.B., およびMorton, A.J. (1999) Characterization of progressive motor deficits in mice transgenic for the human Huntington's disease mutation. J. Neuroscience 19:3248-3257)。HDはCAG/ポリグルタミンリピートの伸長により生じる。これらのトランスジェニックマウス(R62/トランスジェニック)は、(CAG)115-(CAG)150リピートの伸長を有するヒトHD遺伝子の5'末端を有する。該マウスはHDと同様の進行性神経病理学を示し、それには異常で不随意な動作、震顫、てんかん発作を含む。
【0097】
これらのトランスジェニックマウスは、約8週齡で明らかな行動の変化を示す。5〜6週齡ほどの初期に、それらはより微妙な運動技術の欠損を示す。Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)、例えば化合物(1)を、10〜100mg/kg体重で種々の時期(例えば5〜6週齡に)に開始して、静脈または経口投与により投与し得る。複数の異なる投薬スケジュール(例えば、週に一度対週に三度)で化合物を与え得る。泳ぎタンク、はり歩行、回転装置および足跡試験等の一つ以上のげっ歯類運動試験(Carter, et al., 1999参照)における動作を行ない、HDマウスにおける神経機能の消失を防ぐ化合物の活性を評価し得る。
【0098】
実施例7:パーキンソン病(PD)
化学的処置により疾患が誘導されるような、広く使用される二つのPDのモデルがある。それらは、6-OHDA(Zigmond, M.J. and Stricker, E.M. (1984) Parkinson's disease: studies with an animal model. Life Sci. 35:5-18; Sauer, H. and Oertel, W.H. (1994) Progressive degeneration of nigrostriatal dopamine neurons following intrastriatal terminal lesions with 6-hydroxydopamine: a combined retrograde tracing and immunocytochemical study in the rat. Neuroscience 59:401-415)ならびにMPTP(Langston, J.W., Forno, L.S., Rebert, C.S., およびIrwin, I. (1984) Selective nigral toxicity after systemic administration of 1-methyl-4-phenyl-1,2,5,6-tetrahydropyrine (MPTP) in the squirrel monkey. Brain Res. 292:390-4)モデルである。Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)、例えば化合物(1)の6-OHDAを用いた試験の例が記載される。
【0099】
PDの部位である黒質のニューロンの可視化を容易にするために、若い成体の雄ラットに定位注射でFluoro-Gold(FG)を脳の線条に注射する。麻酔下で、0.2μlのFGの4%溶液を定位注射により投与した(ブレグマの1mm前方、3mm側方、および硬膜から4.5mm腹側、両線条体中)。FG注射の一週間後、ラットは、FG注射と同時に、脳の一方の線条体中に、6-OHDAの定位注射を受ける。Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)、例えば化合物(1)は、静脈または経口投与により10〜100mg/kg体重で投与され得る。化合物は6-OHDA注射と同時か、または6-OHDA処置のしばらく(例えば2〜4週)後に与えられ得る。6-OHDA注射の8〜16週後にラットを屠殺する。このモデルの終点は、1)古典的な神経読出しを用いた回転(回転性の)行動の評価による、生存期間の種々の時点でモニターされる行動の変化、および2)屠殺後に脳を切除し、クリオスタットを用いて薄片を作製し、Zigmond and Stricker(1984)に記載されるように免疫組織化学を行なうことである。Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の効果は、回転行動の減少、および黒質のドーパミン作動性ニューロンの消失の縮小により明らかになる。
【0100】
実施例8:アルツハイマー病(AD)
いくらかのADのトランスジェニックモデルマウスが存在する。ADにおける薬物の効果を試験するために広く使用される一つのモデルは、Holcomb, et al. (Holcomb, L., Gordon, M.N., McGowan, E., Yu, X., Benkovic, S., Jantzen, P., Wright, K., Saad, I., Mueller, R., Morgan, D., Sanders, S., Zehr, C., O'Campo, K., Hardy, J., Prada, C.M., Eckman, C., Younkin, S., Hsiao, K., およびDuff, K. (1998) Accelerated Alzheimer-type phenotype in transgenic mice carrying both mutant amyloid precursor protein and presenilin 1 transgenes. Nature Medicine 4:97-100)により記載された。このモデルにはADに関係する二つの異なる遺伝子が含まれる。一つはアミロイド前駆タンパク質(AAP)の変異体である。変異AAP(K670L、M671L)トランスジェニック系統、Tg2576は、初期齢で増加したアミロイドβタンパク質レベルを有し、後期には、脳中に細胞外AD型Aβ沈着が現れる。もう一つの遺伝子は、変異型プレセニリン-1(PS1)遺伝子である。Tg2576およびPS1変異PS1M146Lトランスジェニック系統の交配による二重トランスジェニック子孫は、その一重トランスジェニックTg2576マウスよりもかなり早い時期に大脳皮質および海馬において、多くの原繊維Aβ沈着が現れる。
【0101】
Hsp70誘導性ビス(チオ-ヒドラジドアミド)、例えば化合物(1)を、種々の時点でマウスに投薬し得る。薬物投薬の開始時点のマウスの齢は異なり得る。例えば、処置開始時は、脳沈着が最初に検出可能となる時期である、3ヶ月齢であり得る。用量、例えば、10〜100mg/kg体重が週に一度、または週に三度経口または静脈経路で投与され得る。薬物処置の効果は、脳におけるAD型沈着の測定および迷路試験におけるマウスの機能の評価により評価され得る。
【0102】
実施例9:熱ショックタンパク質70(Hsp70)の測定
血漿Hsp70を、内部で改変されたプロトコールに従って、サンドイッチELISAキット(Stressgen Bioreagents Victoria, British Columbia, CANADA)により測定する。簡潔に、血漿生検中のHsp70およびHsp70標準の連続濃度を、抗Hsp70抗体でコートされた96ウェルプレートに補足させた。次いで、捕捉されたHsp70をビオチン化抗Hsp70抗体で検出し、ユーロピウム結合ストレプトアビジンとインキュベートした。各インキュベート後、結合していない物質を洗浄して除去した。最終的に抗体Hsp70複合体を、ユーロピウムの時間分解蛍光比色法により測定した。標準曲線からHsp70の濃度を計算した。
【0103】
実施例10:ナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性の測定
以下の手法を用いて、被験体におけるNK細胞をアッセイし得る。該手法はKantakamalakul W, Jaroenpool J, Pattanapanyasat K、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害活性の測定のための新規の増強緑色蛍光タンパク質 (EGFP)-K562フローサイトメトリー法、J Immunol Methods. 2003 Jan 15; 272:189-197から改変され、その全教示は参照によって本明細書に援用される。
【0104】
方法および材料:赤白血病細胞株、K562をAmerican Type Culture Collection(CCL-243, American Type Culture Collection, Manassas, VA)から入手し、10% 加熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)、2mM L-グルタミン、100 μg/mlストレプトマイシンおよび100 IU/mlペニシリンを補充したRPMI-1640メディウム(Cat#11875-093Gibco Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)中で37℃、5% CO2で培養した。K562細胞を、緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするレトロウイルスベクターでトランスフェクトした。安定な細胞株を抗生物質、G418で選択した。選択(section)後、約99.6% のG418耐性細胞が、eGFP陽性であった。
【0105】
被験体の末梢血単核細胞(PBMC)を臨床試験部位により調製し、ヘパリンナトリウム入りのBD Vacutainer Cell Preparation Tube(製品番号:362753, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に受けた。
【0106】
1X106細胞/mLの濃度で開始した800μlのエフェクター細胞(患者のPBMC)の二倍連続希釈液を、4本の個々のポリスチレン 12X75-mmチューブに入れた。対数段階的増殖標的細胞(K562/eGFP)を、増殖メディウム(RPMI-1640)で1X105 細胞/mLの濃度に調整し、次いで、100μLの標的をチューブに加えて80:1、40:1、20:1、10:1のエフェクター/標的(E/T)比を提供した。エフェクター細胞のみおよび標的細胞のみを対照として使用した。全チューブを37℃、5% CO2で約3.5時間インキュベートした。10μlのヨウ化プロピジウム(PI)を1 mg/mLの濃度で、エフェクターおよび標的対照チューブを含む各チューブに添加し、次いで室温で15分間インキュベートした。
【0107】
FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)で細胞障害活性を分析した。前方散乱および側方散乱(forward and side scatter)(FSC/SSC) シグナルの一時的な増幅、ならびに緑および赤の蛍光においてeGFPおよびPI放出の対数関数的増幅が得られた。獲得のためのゲーティング(gating)を有さない試料チューブ当り10000の事象を、分析のために回収した。生存標的細胞および死滅標的細胞を数えるためにCELLQuest(Becton Dickinson Biosciences)ソフトウェアを用いて、eGFP対PIについての2パラメータードットプロットのデータ分析を行なった。前方光散乱の閾値を設定して、残屑および死滅細胞を計算した。
【0108】
実施例11:Hsp70を含む併用療法
ビス(チオ-ヒドラジド)アミド(化合物(1))およびタキサン(パクリタキセル)の種々の進行した充実性腫瘍を有するヒト被験体への組み合わされた投与のためにフェーズI試験を行なった。化合物(1)およびパクリタキセルを、3週間ごとに3時間かけて、静脈に共投与した。開始用量は、44 mg/m2(g/m2、または110μmol/m2(μmol/m2))化合物(1)および135 mg/m2(158μmol/m2)パクリタキセルであった。次いで、パクリタキセルを175 mg/m2(205μmol/m2)に増やし、化合物(1)の段階的増加を続け、各用量レベルで3〜6人の患者における1周目の毒性に基づいた最大許容量を確立した。周期1中に血漿中の両化合物を測定するために、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)を用いて薬物速度(PK)試験を行なった。処置の前後で血漿中の熱ショックタンパク質70(Hsp70)を測定した。パクリタキセル135 mg/m2(158μmol/m2)および化合物(1)44 mg/m2、ならびにパクリタキセル175 mg/m2(205μmol/m2)および化合物(1)44〜525 mg/m2(110〜1311μmol /m2)の間の用量範囲を含む8の用量レベルで35人の患者を評価した。表1は、mg/m2およびμmol/m2単位の8の異なる用量#1〜#8を示す。
【0109】
【表1】

【0110】
特に化合物(1)によるような重要な効果は観察されなかった。毒性を制限するパクリタキセルの用量は、上位三つの、コホート拡張を生じる用量レベル(好中球減少症、関節痛、粘膜炎を伴う熱性好中球減少症)における単一の患者において生じた。化合物(1)は、パクリタキセルによって影響を受けない一次PKを示し、0.94±0.23(h)の最終段階半減期および28±8リットル/時間/メートル2(L/h/m2)の総体内除去で血漿から迅速に除去された。その分布の見かけの容量は、全ての体内水分と等しかった(23±16L/m2)。パクリタキセルPKは、最終段階半減期に影響を与えるのではなく、減少している除去へと向かう有意な傾向、およびピーク血漿濃度およびVssによって示されるように、化合物(1)容量に適度に依存しているように思われた。これらの観察は、パクリタキセルの肝臓代謝の競合的な阻害と矛盾しない。より高い容量レベルでの増加した毒性は、パクリタキセルへの全身の曝露の緩やかな増加と矛盾しなかった。血漿におけるHsp70の誘導は容量依存的であり、投薬後約8時間〜約24時間でピークに達した。
【0111】
図7A、7B、および7Cは、化合物(1)/パクリタキセル併用療法の投与に関係する、投与後1時間(図7A)、5時間(図7B)、および8時間(図7C)でのHsp70のパーセント増加を示す棒グラフである。約90%のパーセント増加においてHsp70レベルがほぼ2倍になった場合、88mg/m2(220μmol/m2)化合物(1)容量で、少なくとも一人の患者に対してHsp70レベルの有意な増加が生じた。175mg/m2(437μmol/m2)化合物(1)容量で、二人の患者においてHsp70濃度は2倍より高くなり;263mg/m2(657μmol/m2)化合物(1)容量で、二人の患者においてHsp70濃度はほぼ2倍より高くなり、1/3の患者において250%よりも高く増加し;350mg/m2(874μmol/m2)化合物(1)容量で、全患者においてHsp70濃度は200%よりも高くなり、二人の患者において500%も高く増加し;438mg/m2(1094μmol/m2)化合物(1)容量で、二人の患者においてHsp70濃度はほぼ2倍になり、一人の患者において2005を超えて増加し、もう一人の患者において500%も高く増加した。
【0112】
従って、ビス(チオ-ヒドラジド)アミドおよびタキサンは、患者の血漿Hsp70濃度を劇的に増加させ、組み合わされた175mg/m2(205μmol/m2)のパクリタキセル容量および88〜438mg/m2(220〜1094μmol/m2)の範囲の化合物(1)容量で患者に有意な増加をもたらした。さらに、該組合せは、パクリタキセルのみで予期されるものと一致する不利な事象に対して、良く耐性を示した。
【0113】
実施例12:カルボプラチンを用いた併用療法におけるフェーズ2試験はHsp70を誘導する
非小細胞肺癌を有する間における化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験は、上記のフェーズ1試験の結果によって示された生物活性に基づいて開始され、化合物(1)およびパクリタキセルの組合せ投与は用量に関係するHsp70の誘導をもたらした。
【0114】
フェーズ1(安全/PK/MTD(最大許容量)の後、ランダム化された二つのアーム集団のフェーズ2を続けた。フェーズ1において二つの用量レベルを評価した。
【0115】
コホート1にカルボプラチンAUC(曲線下面積)6、パクリタキセル175mg/m2および化合物(1)233mg/m2を投薬した。最大許容量が観察されない場合、コホート2をカルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2および化合物(1)266mg/m2で記録(enroll)した。
【0116】
投薬は、用量制限毒性または進行の非存在下で、6周期までのIV q3週であった。フェーズ2集団において、86人の患者は、カルボプラチンAUC6 + パクリタキセル200mg/m2 IV q 3週、またはカルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2および化合物(1)266mg/m2に1:1にランダム化されるように計画される。フェーズ2の最初の終点は進行の時間であり、第二の終点は反応速度、生存、および生活の質である。試験の薬力学的なパラメーターとしては、NK細胞活性およびHsp70レベルが挙げられる。
【0117】
フェーズ1において、コホート1に7人、コホート2に9人で、16人の患者を処置した。第一周期用量制限毒性は、両コホートに見られなかった。フェーズの不利な効果(AE)としては、(通常1〜2級)関節痛および筋肉痛、末梢神経障害、発疹、悪心、および嘔吐、疲労、脱毛症、水腫、脱水症、便秘、および減少した血球数が挙げられる。11人の患者が6周期の治療を完遂した。8人の患者(50%)が部分応答(PR)を達成した。2度目の投薬の7日後にアッセイした際に、8人の患者のうち7人の評価可能な試料を有する患者は、高いNK細胞活性を示した。
【0118】
カルボプラチン:パクリタキセル:化合物(1)の組合せは、試験された用量レベルでよく耐性を示し、全体の安全プロフィールはカルボプラチン:パクリタキセルのみと同様である。臨床活性の促進が観察され、化合物(1)がインビボで生物学的に活性であるという結論を支持する相関的NK活性が観察された。
【0119】
RECIST標準は、目的の病変について目的の腫瘍応答を測定することを使用し、全標的病変の最長直径の測定を考慮に入れた。RECIST標準としては、
完全応答(CR):全標的病変の消失
部分応答(PR):標的病変の最長直径(LD)の合計の少なくとも30%の減少、ベースライン合計LDを基準としたとき
進行性疾患(PD):標的病変のLDの合計の少なくとも20%の増加、処置の開始または一つ以上の新しい病変の出現から記録された最小合計LDを基準としたとき
安定疾患(SD):PRに適格であるのに十分な減少もPDに適格であるのに十分な増加も無く、処置の開始からの最小合計LDを基準としたとき
が挙げられる。
【0120】
表2は、異なる被験体に対する実質的な抗癌効力およびNK細胞活性の結果を示す。エフェクター/標的データは、NKアッセイ標的細胞に対する被験体のPBMC細胞の比を示す。投与前および投与後の欄の値は、パクリタキセルおよび化合物(1)を投与する前に溶解された腫瘍細胞の割合を示す。最良応答は、患者の腫瘍の評価を示し、PR = ベースラインと比較したとき最大直径の合計の少なくとも30%減少であり、SDは、ベースラインと比較したとき最大直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示す。標的病変は、被験体の標的化黒色腫病変の変化割合を示す。NK活性は、投与前および投与後のNK活性の変化を示す。
【0121】
表2は、試験を終えた患者(#1〜#8)では、各患者について標的病変の大きさに実質的な減少があったことを示す。また、試験を終えた8名の患者のうち5名は、最良応答評価カテゴリー、ベースラインと比べて最大直径の合計の少なくとも30%減少を有した。NK細胞活性については、11名の当初の患者のうち8名が投与前処置および投与後処置の間に増加を示したが、この実施例では差は、対t-検定により有意でなかった(p=0.06)。

【0122】
コホート2の安全性プロフィールから、この用量レベル (カルボプラチンAUC 6、パクリタキセル 200 mg/m2および化合物(1) 266 mg/m2)をフェーズ2に使用した。
【0123】
実施例13: 併用療法に対する2ステージフェーズ2試験はHsp70を誘導する
進行転移性黒色腫の患者において化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験を、前記フェーズI試験の結果によって示される生物学的活性に基づいて開始し、化合物(1)およびパクリタキセルの併用投与は、用量依存性のHsp70誘導をもたらした。
【0124】
この試験は、106 mg/m2 (265μmol/m2)の化合物(1)および80 mg/m2 (94μmol/m2)のパクリタキセルを4週間のうち3週間毎週投与する週間投与スケジュールのステージ1初期安全性評価を含んだ。次いで、80 mg/m2 (94μmol/m2)のパクリタキセルと組み合わせて化合物(1)の投与を213 mg/m2 (532μmol/m2)に増加させた。許容される高用量レベルを合計20名の患者に拡張した(ステージ1)。
【0125】
合計7名の患者を初期安全性評価において、3名を低用量レベルで、4名を高用量レベルで処置した。いずれの群でも用量規定毒性の非存在下では、高用量レベルを目的の投与として選択し、ステージ1を終了するためにさらなる患者を登録した。見られた有害事象は、パクリタキセル化学療法投与について予測されるものであった。20名の評価可能な患者のうち、11名が3ヶ月目で55%NPRに対して安定であった。
【0126】
7名以上の患者が、安定型疾患の、もしくはより良い応答を有するか、または少なくとも2名の患者が部分的な、もしくはより良い応答を有する場合、試験をステージ2まで継続する。安全性評価は、週間投与スケジュールがこれまでヒトで試験されていなかったため(a s)、まず、6名の登録患者で行なった。最初の評価項目は、3ヶ月での非進行割合(NPR)および応答割合である。薬力学的パラメーターは、血中および可能な場合は腫瘍生検材料中の投与前および投与後NK細胞活性を含む。
【0127】
表3は、異なる被験体への第2の投与の7日後にアッセイしたときの抗癌効力およびNK細胞活性結果の重要な予備結果を示す。エフェクター/標的データは、NKアッセイ標的細胞に対する被験体PBMC細胞の比を示す。投与前および投与後の欄の値は、パクリタキセルおよび化合物(1)を投薬する前に溶解された腫瘍細胞の割合を示す。最良応答は、患者の腫瘍の評価を示す。SDは、ベースラインと比較したとき最大直径の合計における20%未満の増加および30%未満の減少、PD = ベースラインと比較したとき最大直径の合計における少なくとも20%の増加を示す。NK活性は、投薬前および投薬後のNK活性における変化を示す。
【0128】
表3は、試験を終えた患者(#12〜#20、#22)について、3名の患者がベースラインと比較したとき最大直径の合計における20%未満の増加および30%未満の減少を有したが、7名の患者はベースラインと比較したとき最大直径の合計における少なくとも20%の増加を有したことを示す。NK細胞活性については、当初の患者の4名が投与前処置と投与後処置の間で統計学的に有意な増加を示した。

【0129】
併用療法は、週間スケジュールに対して胃充分許容された。任意抽出された部分への登録で、パクリタキセルの組合せ対パクリタキセル単独における化合物(1)の活性を評価する。
【0130】
ステージ2は、薬物の併用をパクリタキセル単独と比較する任意抽出された2群試験となるように計画される。ステージ2への継続の基準は、2ヶ月目に>= 50%非進行割合(NPR)である。合計78名の患者を2:1 (併用:対照)に任意抽出する。最初の評価項目は進行までの時間であり、第2の評価項目は、応答割合、生存、および生活の質である。薬力学的パラメーターは、血中および可能な場合は腫瘍生検材料中のNK細胞活性の投与前および投与後測定を含む。
【0131】
実施例14: 併用療法に対するフェーズ2試験はHsp70を誘導する
軟組織肉腫を有する患者において、化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験を、前記フェーズI試験の結果によって示される生物学的活性に基づいて開始し、化合物(1)およびパクリタキセルの併用投与は、用量依存性Hsp70誘導をもたらした。
【0132】
試験は2 ステージ設計であり、第1ステージで30名の患者を登録し、一定の継続基準が満たされていれば、50名の患者を加えて合計80名にする。主な試験対象患者基準は、最近の進行の徴候を有する消化管間質腫瘍(GIST)以外の難治性または再発性軟組織肉腫である。患者を、4週ごとのサイクルのうち3週間毎週、213 mg/m2 化合物(1)および80 mg/m2 パクリタキセルで処置する。例えば、4週間のうち3週間、28日サイクルの第1、8および15日目に化合物を一緒に1時間のIV輸液として投与した。30名の患者がステージ1の終了(completed accrual)に登録されていた。
【0133】
本明細書で使用するように、「軟組織肉腫」(STS)は、身体の種々の部分を支持、結合および包囲する軟組織内、例えば、筋肉、脂肪、腱、神経、および血管、リンパ節などの軟組織内に発症する癌である。かかるSTSは、身体内のどこにでも起こり得るが、典型的には、約半数が四肢に起こる。種々の態様において、STSとしては、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫平滑筋肉腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫などから選択される1種類以上の癌が挙げられ得る。
【0134】
表4は、異なる被験体への第2の投与の7日後にアッセイしたときの抗癌効力およびNK細胞活性結果の重要な予備結果を示す。エフェクター/標的データは、NKアッセイ標的細胞に対する被験体PBMC細胞の比を示す。投与前および投与後の欄の値は、パクリタキセルおよび化合物(1)を投薬する前に溶解された腫瘍細胞の割合を示す。最良応答は、患者の腫瘍の評価を示す。PR = ベースラインと比較したとき最大直径の合計における少なくとも30%減少、SDは、ベースラインと比較したとき最大直径の合計における20%未満の増加および30%未満の減少、PD = ベースラインと比較したとき最大直径の合計における少なくとも20%の増加を示す。NK活性は、投薬前および投薬後のNK活性における変化を示す。
【0135】
表4は、試験を終えた患者 (#23〜#29、#31〜33)について、5名の患者がベースラインと比較したとき最大直径の合計における20%未満の増加および30%未満の減少を有したが、5名の患者は、ベースラインと比較したとき最大直径の合計における少なくとも20%の増加を有したことを示す。NK細胞活性については、当初の患者の7名が、投与前処置と与後処置の間で統計学的に有意な増加を示したか、または変化なしであったが、当初の患者の4名のみは、投与前処置と与後処置の間で統計学的に有意な増加の減少(decrease statistically significant increase)を示した。

【0136】
患者は、現在、3ヶ月間の評価中である。見られた有害事象は、同様のスケジュールでのパクリタキセル投与について典型的なものであった。NK活性の評価は、継続中である。週間パクリタキセルスケジュールへの化合物(1)の添加は充分許容された。ステージ1を終了し、患者は、現在、試験継続決定についで評価中である。
【0137】
各引用文献の全教示は参照により本明細書に援用される。
【0138】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は注射30分後に測定したマウスの血漿、脳、腎臓、肝臓および脾臓における化合物(1)および化合物(18)の濃度を示す棒グラフである。
【図2】図2はマウスの血漿および脳における陰性対照アテノロールに対する化合物(1)および化合物(18)の濃度を示す棒グラフである。
【図3】図3はマウスの血漿および脳における0〜4時間および0〜推定で無限の化合物(1)および化合物(9)の(μM x 時間における)AUC(曲線下面積)値を示す棒グラフである。
【図4】図4は化合物(1)および化合物(9)について、時間に対するマウスの血漿濃度を示すグラフである。
【図5】図5は投与30分後のマウスの脳における化合物(1)および化合物(9)の濃度を示す棒グラフである。
【図6】図6は化合物(1)の投与の際の、通常の(腫瘍を有さない)マウスにおけるHsp70の血漿レベルの増加を示す棒グラフである。
【図7A】図7Aは、投与後1時間の化合物(1)/パクリタキセル併用療法の投与と関連するHsp70血漿レベルのパーセント増加を示す棒グラフである。
【図7B】図7Bは、投与後5時間の化合物(1)/パクリタキセル併用療法の投与と関連するHsp70血漿レベルのパーセント増加を示す棒グラフである。
【図7C】図7Cは、投与後8時間の化合物(1)/パクリタキセル併用療法の投与と関連するHsp70血漿レベルのパーセント増加を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体に、以下の構造式:


(式中、
Yは、共有結合もしくは任意に置換された直鎖ヒドロカルビル基である、またはYは、それが結合している両方の>C=Z基と一緒になって、任意に置換された芳香族基である;
R1〜R4は、独立して、-H、任意に置換された脂肪族基、任意に置換されたアリール基である、あるいはR1およびR3がそれらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、および/またはR2およびR4がそれらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、任意に芳香族環に縮合した非芳香族複素環を形成する;
R7〜R8は、独立して、-H、任意に置換された脂肪族基、または任意に置換されたアリール基である;ならびに
ZはOまたはSである)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、被験体においてHsp70応答性障害を処置する方法。
【請求項2】
障害が、アルツハイマー病; ハンティングトン病; パーキンソン病; 脊髄性/延髄性筋萎縮症; 家族性筋萎縮性側索硬化症; 虚血; 発作; 熱ストレス(thermal stress); アテローム性動脈硬化; 放射線曝露; 緑内障; 神経毒曝露; 機械的損傷; 炎症; 自己免疫疾患; または感染である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
障害が神経変性障害である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
障害が、タンパク質凝集/ミスフォールディング疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
障害が虚血である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
障害が脳虚血または脊髄虚血である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
障害が心臓虚血である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
障害が発作である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
障害が熱ストレスである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
障害がアテローム性動脈硬化である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
障害が放射線曝露である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
障害が緑内障である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
障害が機械的損傷である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
障害が毒素曝露である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該化合物が単独療法として投与される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
該化合物が二ナトリウム塩もしくは二カリウム塩である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ZがOであり、R1およびR2が同じである、およびR3およびR4が同じである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
Yが、共有結合、-C(R5R6)-、-(CH2CH2)-、トランス-(CH=CH)-、シス-(CH=CH)-または-(C≡C)-である; および
R5およびR6は、各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基である、またはR5が-HでありR6が任意に置換されたアリール基である、またはR5およびR6が一緒になって任意に置換されたC2〜C6アルキレン基である、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
Yが-C(R5R6)-である;
R1およびR2が各々、任意に置換されたアリール基である;および
R3およびR4は、各々、任意に置換された脂肪族基である、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
R5が-Hであり、R6が、-H、脂肪族または置換脂肪族基である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
R3およびR4が各々、アルキル基であり、R6が-Hまたはメチルである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
R1およびR2が各々、任意に置換されたフェニル基であり、R3およびR4が各々、メチルまたはエチルである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
R1で表されるフェニル基およびR2で表されるフェニル基が、-Ra、-OH、-Br、-Cl、-I、-F、-ORa、-O-CORa、-CORa、-CN、-NCS、-NO2、-COOH、-SO3H、-NH2、-NHRa、-N(RaRb)、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CON(RaRb)、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCON(RaRb)、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCON(RaRb)、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-N(RaRb)、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-N(RaRb)、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-N(RaRb)、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-N(RaRb)、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-N(RaRb)、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-N(RaRb)、-NHNH2、-NHNHRa、-NHNRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb,-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra
(式中、Ra〜Rdは、各々独立して、アルキル基、芳香族基、非芳香族複素環式基である; または-N(RaRb)が一緒になって任意に置換された非芳香族複素環式基を形成し、ここで、Ra〜Rdで表されるアルキル、芳香族および非芳香族複素環式基ならびに-N(RaRb)で表される非芳香族複素環式基は各々、任意に独立して、R#で表される1個以上の基で置換されており、ここで、R#は、R+、-OR+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)R+、-CO2R+、-C(O)R+、C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R+、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2、または -C(=NH)-N(R+)2であり、ここで、R+は、-H、C1〜C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族複素環式基、またはアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミンもしくはジアルキルアミンで任意に置換されたフェニル基である、または-N(R+)2が、非芳香族複素環式基である、ただし、R+および-N(R+)2で表される第2級環状アミンを含む非芳香族複素環式基は、任意にアシル化またはアルキル化されているものとする)
から選択される1個以上の基で任意に置換されている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
R1およびR2で表されるフェニル基が、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2または-CNで任意に置換されている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
Yが-CR5R6-である;
R1およびR2が両方とも、任意に置換された脂肪族基である;
R5が-Hである; ならびに
R6が-Hまたは任意に置換された脂肪族基である、
請求項18記載の方法。
【請求項26】
R1およびR2が両方とも、少なくとも1個のアルキル基で任意に置換されたC3〜C8 シクロアルキル基である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
R3およびR4が両方ともアルキル基であり、R6が-Hまたはメチルである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
R1およびR2が両方ともシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
被験体に、以下の構造式:


(式中、
R7〜R8が両方とも-Hである、ならびに
R1およびR2が両方ともフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともフェニルである、R3およびR4が両方ともエチルである、ならびにR5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも4-シアノフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも4-メトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方ともフェニルである、R3およびR4が両方ともエチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも4-シアノフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも3-シアノフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも3-フルオロフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも4-クロロフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも2-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも3-メトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,3-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,3-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジフルオロフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジフルオロフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジクロロフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジメチルフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2,5-ジメトキシフェニルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともエチルである、ならびにR5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、ならびにR6が-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がメチルである、R6が-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がエチルである、R6が-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5がn-プロピルである、R6が-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方ともメチルであり;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともエチルである、ならびにR5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも1-メチルシクロプロピルである、R3がメチルである、R4がエチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2-メチルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも2-フェニルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方とも1-フェニルシクロプロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロブチルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロペンチルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロヘキシルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともシクロヘキシルである、R3およびR4が両方ともフェニルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともメチルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともメチルである、R3およびR4が両方ともt-ブチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともメチルである、R3およびR4が両方ともフェニルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2が両方ともt-ブチルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである;
R1およびR2がエチルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである; または
R1およびR2が両方ともn-プロピルである、R3およびR4が両方ともメチルである、R5およびR6が両方とも-Hである)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、被験体においてHsp70応答性障害を処置する方法。
【請求項30】
該化合物が以下の構造式:


で表される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
該化合物が以下の構造式:


で表される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
該化合物が二ナトリウム塩である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
障害が、アルツハイマー病; ハンティングトン病; パーキンソン病; 脊髄性/延髄性筋萎縮症; 家族性筋萎縮性側索硬化症; 虚血; 発作; 熱ストレス; アテローム性動脈硬化; 放射線曝露; 緑内障; 神経毒曝露; 機械的損傷; 炎症; 自己免疫疾患; または感染である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
障害が神経変性障害である、請求項29記載の方法。
【請求項35】
障害が脳虚血または脊髄虚血である、請求項29記載の方法。
【請求項36】
障害が心臓虚血である、請求項29記載の方法。
【請求項37】
障害が、脳組織または脊髄組織に対する機械的損傷である、請求項29記載の方法。
【請求項38】
障害が熱ストレスである、請求項29記載の方法。
【請求項39】
障害がアテローム性動脈硬化である、請求項29記載の方法。
【請求項40】
障害が緑内障である、請求項29記載の方法。
【請求項41】
障害が機械的損傷である、請求項29記載の方法。
【請求項42】
被験体に、以下の構造式:


;


; および



の1つで表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、被験体においてHsp70応答性障害を処置する方法。
【請求項43】
化合物が以下の構造式:


で表される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
該化合物が二ナトリウム塩である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
障害が神経変性障害である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
障害が脳虚血または脊髄虚血である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
被験体に、以下の構造式:


(式中、
Yは、共有結合もしくは任意に置換された直鎖ヒドロカルビル基である、またはYは、それが結合している両方の>C=Z基と一緒になって、任意に置換された芳香族基である;
R1〜R4は、独立して、-H、任意に置換された脂肪族基、任意に置換されたアリール基である、あるいはR1およびR3がそれらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、および/またはR2およびR4がそれらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、任意に芳香族環に縮合した非芳香族複素環を形成する;
R7〜R8は、独立して、-H、任意に置換された脂肪族基、または任意に置換されたアリール基;ならびに
ZはOまたはSである)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、神経の損傷のリスクのある被験体において神経の損傷を低減または予防する方法。
【請求項48】
被験体が、神経の損傷を引き起こす処置を受けている、請求項47記載の方法。
【請求項49】
処置が放射線療法である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
処置が化学療法である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
化学療法がパクリタキセルを投与することを含む、請求項50記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2008−520697(P2008−520697A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543254(P2007−543254)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/041750
【国際公開番号】WO2006/055747
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(503271718)シンタ ファーマスーティカルズ コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】Synta Pharmaceuticals Corp.
【Fターム(参考)】