説明

IAPのアザビシクロ−オクタンインヒビター

本発明は悪性腫瘍を治療するための治療剤として有用な新規IAPインヒビターを提供するもので、該化合物は次の一般式(I):


[上式中、X及びXは独立してO又はS;Lは結合又は-C(X)-、-C(X)NR12、-C(X)O-で、XはO又はS、R12はH又はR;Rはアルキル、炭素環、炭素環置換アルキル、複素環又は複素環置換アルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルスルホニル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよいもの;Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環又はヘテロシクリルアルキル;RはH又はアルキル;R及びR4’は独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよいもの;R及びR5’はそれぞれ独立してH又はアルキル;RはH又はアルキルである]を有し、またその塩及び溶媒和物である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物における治療及び/又は予防に有用な有機化合物、特に癌の治療に有用なIAPタンパク質のアザビシクロ-オクタンインヒビターに関する。
【0002】
(発明の背景)
アポトーシス又はプログラム細胞死は、無脊椎動物並びに脊椎動物の成長及びホメオスタシスにおいて重要な役割を担っている遺伝的及び生化学的な調節メカニズムである。時期尚早の細胞死に至るアポトーシスにおける異常は、様々な発達障害に関連している。細胞死の欠失を生じるアポトーシスの欠乏は、癌及び慢性的なウイルス感染に関連している(Thompsonら, (1995) Science 267, 1456-1462)。
アポトーシスにおいて鍵となるエフェクター分子の一つはカスパーゼ(システイン含有のアルパラギン酸特異性プロテアーゼ)である。カスパーゼは強力なプロテアーゼで、アスパラギン酸残基の後を切断し、ひとたび活性化されると、細胞内から生きている細胞タンパク質を消化する。カスパーゼはこのように強力なプロテアーゼであるため、このファミリーのタンパク質を厳格にコントロールすることが、時期尚早の細胞死を防止するために必要である。一般に、カスパーゼは、活性であるためには、タンパク質分解プロセシングを必要とする主として不活性なチモーゲンとして合成される。このタンパク質分解プロセシングは、カスパーゼが調節される方法のほんの一つである。第2のメカニズムは、カスパーゼに結合してこれを阻害するファミリーのタンパク質を介する。
【0003】
カスパーゼを阻害する分子ファミリーは、アポトーシスのインヒビター(IAP)である(Deverauxら, J Clin Immunol (1999), 19:388-398)。IAPは、P35タンパク質、抗アポトーシス遺伝子に代わるその機能的能力により、元々はバキュロウイルスにおいて発見された(Crookら (1993) J Virology 67, 2168-2174)。IAPはショウジョウバエからヒトまでの範囲にわたる生物において記述されている。その由来にかからわず、構造的には、IAPは1〜3のバキュロウイルスIAP反復(BIR)ドメインを含み、そのほとんどがカルボキシル末端RINGフィンガーモチーフをまた有する。BIRドメインそれ自体は、亜鉛イオンを配位したシステイン及びヒスチジン残基と共に、4つのアルファ-ヘリックスと3つのベータ-ストランドを含む、約70残基の亜鉛結合ドメインである(Hindsら, (1999) Nat. Struct. Biol. 6, 648-651)。カスパーゼを阻害し、よってアポトーシスを阻害することによって、抗アポトーシス効果を生じると考えられているのはBIRドメインである。一例として、ヒトX-染色体連鎖IAP(XIAP)は、カスパーゼ3、カスパーゼ7、及びカスパーゼ9のApaf-1-チトクロムC媒介性活性化を阻害する(Deverauxら, (1998) EMBO J. 17, 2215-2223)。カスパーゼ3及び7はXIAPのBIR2ドメインにより阻害される一方、XIAPのBIR3ドメインはカスパーゼ9活性の阻害の原因である。XIAPはほとんどの成人及び胎児組織において遍在的に発現しており(Listonら, Nature, 1996, 379(6563):349)、NCI60株化細胞パネルの多数の腫瘍細胞株で過剰発現している(Fongら, Genomics, 2000, 70:113; Tammら, Clin. Cancer Res. 2000, 6(5):1796)。腫瘍細胞におけるXIAPの過剰発現は、多様なアポトーシス誘発性刺激から保護し、化学療法に対する耐性を促進することが示されている(LaCasseら, Oncogene, 1998, 17(25):3247)。これに一致して、急性骨髄性白血病を患っている患者においては、XIAPタンパク質レベルと生存率との間に強い相関関係があることが証明されている(Tammら, 上掲)。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるXIAP発現のダウンレギュレーションが、インビトロ及びインビボの双方において、広範囲のアポトーシス促進剤により誘発される死に対し腫瘍細胞を過敏化することが示されている(Sasakiら, Cancer Res., 2000, 60(20):5659; Linら, Biochem J., 2001, 353:299; Huら, Clin. Cancer Res., 2003, 9(7):2826)。また、Smac/DIABLO-誘導性ペプチドも、種々のアポトーシス促進剤により誘発されるアポトーシスに対し、多数の異なる腫瘍細胞株を過敏化させることが証明されている(Arntら, J. Biol. Chem., 2002, 277(46):44236; Fuldaら, Nature Med., 2002, 8(8):808; Guoら, Blood,2002, 99(9):3419; Vucicら, J. Biol. Chem.,2002, 277(14):12275; Yangら, Cancer Res., 2003, 63(4):831)。
【0004】
メラノーマIAP(ML-IAP)は、ほとんどの正常な成人組織においては検出されないIAPであるが、メラノーマにおいては強力にアップレギュレートしている(Vucicら, (2000) Current Bio 10:1359-1366)。タンパク質構造の測定では、ヒトXIAP、C-IAP1及びC-IAP2に存在する対応ドメインに対し、ML-IAP BIR及びRINGフィンガードメインには有意な相同性があることが示された。ML-IAPのBIRドメインは、XIAP、C-IAP1及びC-IAP2のBIR2及びBIR3に対して最も類似性を有していると思われ、欠失分析により測定されるところでは、アポトーシス阻害の原因であると思われる。さらに、Vucicらは、ML-IAPが、化学治療剤誘発性アポトーシスを阻害しうることを証明した。アドリアマイシン及び4-tert-ブチルフェノール(4-TBP)等の薬剤を、ML-IAPを過剰発現しているメラノーマの細胞培養系において試験し、正常なメラノサイトコントロールと比較したところ、化学治療剤は細胞の殺傷においてあまり効果的ではなかった。ML-IAPが抗アポトーシス活性を生ずるメカニズムは、カスパーゼ3、7及び9の阻害による。ML-IAPはカスパーゼ1、2、6又は8を効果的には阻害しなかった。
【0005】
アポトーシスは、複数の相互作用する要因を有する厳密にコントロールされた経路であるため、IAPそれ自体が調節されるという発見は異常なことではなかった。ショウジョウバエ(fruit fly Drosophila)において、Reaper(rpr)、Head Involution Defective(hid)及びGRIMタンパク質は、ショウジョウバエファミリーと物理的に相互作用し、そのIAPの抗アポトーシス活性を阻害する。哺乳動物において、タンパク質SMAC/DIABLOは、IAPをブロックするように作用し、アポトーシスの進行を可能にする。正常なアポトーシス中、SMACは活性形態にプロセシングされ、ミトコンドリアから細胞質に放出され、そこでIAPに物理的に結合し、カスパーゼに対する結合からIAPを保護することが示されている。IAPのこの阻害により、カスパーゼは活性なままで、アポトーシスを進行させる。興味深いことに、IAPインヒビター間の配列相同性から、プロセシングされた活性タンパク質のN末端に4つのアミノ酸モチーフが存在することが示されている。このテトラペプチドは、BIRドメインの疎水性ポケットに結合し、カスパーゼに結合するBIRドメインを破壊すると思われる(Chaiら, (2000) Nature 406:855-862, Liuら, (2000) Nature 408:1004-1008, Wuら, (2000) Nature 408 1008-1012)。
【0006】
(発明の概要)
本発明の一態様では、次の一般式(I):

[上式中、
及びXは独立して、O又はSであり;
Lは、結合、-C(X)-、-C(X)NR12又は-C(X)O-であり、ここで、XはO又はSであり、R12はH又はRであり;
は、アルキル、炭素環、炭素環置換アルキル、複素環又は複素環置換アルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルスルホニル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよいものであり;
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環又はヘテロシクリルアルキルであり;
は、H又はアルキルであり;
及びR4’は独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよいものであり;
及びR5’はそれぞれ独立して、H又はアルキルであり;
は、H又はアルキルである]
を有する新規なインヒビターIAPとその塩及び溶媒和物が提供される。
【0007】
本発明の他の態様では、式Iの化合物と、担体、希釈剤又は賦形剤を含有する組成物が提供される。
本発明の他の態様では、細胞にアポトーシスを誘発させる方法であって、式Iの化合物を前記細胞に導入することを含む方法が提供される。
本発明の他の態様では、アポトーシスシグナルに対して細胞を過敏化させる方法であって、式Iの化合物を前記細胞に導入することを含む方法が提供される。
本発明の他の態様では、カスパーゼタンパク質へのIAPタンパク質の結合を阻害する方法であって、式Iの化合物と前記IAPタンパク質を接触させることを含む方法が提供される。
本発明の他の態様では、哺乳動物におけるIAPの過剰発現に関連した病気又は症状を処置する方法であって、有効量の式Iの化合物を前記哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0008】
(好ましい実施態様の詳細な記述)
定義:
「アルキル」とは、別の特定をしない限りは、12までの炭素原子を有する、直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和(すなわちアルケニル、アルキニル)の脂肪族炭化水素基を意味する。例えば「アルキルアミノ」等、他の用語の一部として使用される場合、アルキル部分は飽和した炭化水素鎖であってよいが、不飽和の炭化水素炭素鎖、例えば「アルケニルアミノ」及び「アルキニルアミノ」も含まれる。特定のアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、3-ヘプチル、2-メチルヘキシル等が含まれる。「低級アルキル」「C−Cアルキル」及び「1〜4の炭素原子のアルキル」という用語は同義語であって、交換可能に使用され、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、1-ブチル、sec-ブチル又はt-ブチルを意味する。特定しない限りは、置換アルキル基は、同一でも異なっていてもよい1、2、3又は4の置換基を有していてよい。上述した置換アルキル基の例には、限定されるものではないが;シアノメチル、ニトロメチル、ヒドロキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、アルキルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、カルバモイルオキシメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロ(n-ブチル)、2-アミノ(イソ-プロピル)、2-カルバモイルオキシエチル等が含まれる。またアルキル基は炭素環基で置換されていてもよい。具体例には、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、及びシクロヘキシルメチル基、並びに対応する-エチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル基等が含まれる。特定の置換アルキルは置換メチル基、例えば、「置換C-Cアルキル」基と同じ置換基で置換されたメチル基である。置換メチル基の例には、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル(例えばテトラヒドロピラニルオキシメチル)、アセトキシメチル、カルバモイルオキシメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、カルボキシメチル、ブロモメチル及びヨードメチル等の基が含まれる。
【0009】
「アミジン」は、RがH又はアルキル又はアラルキルである、-C(NH)-NHR基を示す。特定のアミジンは-NH-C(NH)-NH基である。
「アミノ」とは、第1級(すなわち-NH)、第2級(すなわち-NRH)及び第3級(すなわち-NRR)アミンを示す。特定の第2級及び第3級アミンはアルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン及びジアラルキルアミンである。特定の第2級及び第3級アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジイソプロピルアミンである。
ここで使用される場合「アミノ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、アミノ基をブロック又は保護するのに通常用いられる基の誘導体を意味する。このような保護基の例には、カルバマート類、アミド類、アルキル及びアリール基、イミン類、並びに所望のアミン基を再生するために除去可能な多くのN-ヘテロ原子誘導体が含まれる。特定のアミノ保護基はBoc、Fmoc及びCbzである。これらの基のさらなる例は、T. W. Greene及びP. G. M. Wuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, 第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1991, 第7章; E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J. G. W. McOmie編, Plenum Press, New York, NY, 1973, 第5章, 及びT.W. Greene, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981に見出される。「保護アミノ」なる用語は、上のアミノ保護基の一つで置換されたアミノ基を意味する。
【0010】
「アリール」は、単独で又は他の用語の一部として用いられる場合、標記された炭素原子数を有するか、又は数が標記されない場合は14までの炭素原子を有する、縮合又は非縮合の炭素環式芳香族基を意味する。特定のアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル(naphthacenyl)等が含まれる(Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J.A.編)13版, 表7-2[1985]参照)。特定の実施態様では、アリール基はフェニルである。置換フェニル又は置換アリールとは、他に特定しない限りは、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えばC-Cアルキル)、アルコキシ(例えばC-Cアルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシメチル、保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチル、保護されたヒドロキシメチル、アミノメチル、保護されたアミノメチル、トリフルオロメチル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、又は他の特定された基から選択される1、2、3、4又は5の置換基で置換されたフェニル基又はアリール基を示す。これらの置換基におけるメチン(CH)及び/又はメチレン(CH)基の一又は複数は、さらに上述したようなものと同様の基で置換され得る。「置換フェニル」という用語の例には、限定されるものではないが、モノ-又はジ(ハロ)フェニル基、例えば2-クロロフェニル、2-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、3,4-ジブロモフェニル、3-クロロ-4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル等;モノ-又はジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2,4-ジヒドロキシフェニル、それらの保護されたヒドロキシ誘導体等;ニトロフェニル基、例えば3-又は4-ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば4-シアノフェニル;モノ-又はジ(低級アルキル)フェニル基、例えば、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2-メチルフェニル、4-(イソ-プロピル)フェニル、4-エチルフェニル、3-(n-プロピル)フェニル等;モノ又はジ(アルコキシ)フェニル基、例えば3,4-ジメトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-エトキシフェニル、4-(イソプロポキシ)フェニル、4-(t-ブトキシ)フェニル、3-エトキシ-4-メトキシフェニル等;3-又は4-トリフルオロメチルフェニル;モノ-又はジカルボキシフェニル又は(保護されたカルボキシ)フェニル基、例えば4-カルボキシフェニル;モノ-又はジ(ヒドロキシメチル)フェニル又は(保護されたヒドロキシメチル)フェニル、例えば3-(保護されたヒドロキシメチル)フェニル又は3,4-ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノ-又はジ(アミノメチル)フェニル又は(保護されたアミノメチル)フェニル、例えば2-(アミノメチル)フェニル又は2,4-(保護されたアミノメチル)フェニル;あるいはモノ-又はジ(N-(メチルスルホニルアミノ))フェニル、例えば3-(N-メチルスルホニルアミノ)フェニルが含まれる。また、「置換フェニル」という用語は、その置換基が異なっている二置換フェニル基、例えば3-メチル-4-ヒドロキシフェニル、3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシ-4-ブロモフェニル、4-エチル-2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル、2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル等、並びにその置換基が異なっている三置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノ、3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-フェニルスルホニルアミノ、及びその置換基が異なっている四置換フェニル基、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-5-メチル-6-フェニルスルホニルアミノを表す。特定の置換フェニル基は、2-クロロフェニル、2-アミノフェニル、2-ブロモフェニル、3-メトキシフェニル、3-エトキシ-フェニル、4-ベンジルオキシフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノフェニル基である。縮合アリール環は、また、置換アルキル基と同じようにして、ここで特定した置換基、例えば1、2又は3の置換基で置換され得る。
【0011】
「カルボシクリル(carbocyclyl)」、「カルボサイクリック(carbocyclylic)」、「炭素環(carbocycle)」及び「カルボシクロ(carbocyclo)」なる用語は、単独で及びカルボシクロアルキル基のような複合基中の一部として使用される場合には、飽和又は不飽和で芳香族又は非芳香族であってよい、3〜14の炭素原子、例えば3〜7の炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式の脂肪族環を意味する。特定の飽和したカルボサイクリック基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基が含まれる。特定の実施態様では、飽和したカルボサイクリック基はシクロプロピル及びシクロヘキシルである。他の特定の実施態様では、飽和したカルボサイクリック基はシクロヘキシルである。特定の不飽和の炭素環は芳香族、例えば上述したアリール基である。特定の不飽和の炭素環はフェニルである。「置換カルボシクリル」、「炭素環」及び「カルボシクロ」なる用語は、「置換アルキル」基と同じ置換基により置換されたこれらの基を意味する。
【0012】
ここで使用される場合「カルボキシ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、カルボン酸基をブロック又は保護するのに通常用いられるカルボン酸基のエステル誘導体の一つを意味する。そのようなカルボン酸保護基の例には、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4-メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル、2,2',4,4'-テトラメトキシベンズヒドリル、アルキル、例えばt-ブチル又はt-アミル、トリチル、4-メトキシトリチル、4,4'-ジメトキシトリチル、4,4',4"-トリメチトキシトリチル、2-フェニルプロプ-2-イル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2-トリクロロエチル、ベータ-(トリメチルシリル)エチル、ベータ-(ジ(n-ブチル)メチルシリル)エチル、p-トルエンスルホニルエチル、4-ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1-(トリメチルシリルメチル)プロプ-1-エン-3-イル及び同様の部分が含まれる。誘導体化カルボン酸が、分子の他の位置に対する引き続く反応の条件に対して安定であり、適当な時点で分子の残りの部分を破壊することなく除去できる限り、用いられるカルボキシ保護基の化学種は重要ではない。特に、カルボキシ-保護分子を強い求核塩基や、ラネーニッケル等の高活性化金属触媒を用いる還元条件を施さないことが重要である。(このような過酷な除去条件は、下記に検討するアミノ-保護基及びヒドロキシ-保護基を除去する際でもまた避けるべきである。)特定のカルボン酸保護基は、アリル及びp-ニトロベンジル基である。セファロスポリン、ペニシリン及びペプチド分野で使用されるのと同様のカルボキシ保護基も、カルボキシ基置換基の保護に使用できる。これらの基の更なる例は、T. W. Greene及びP. G. M. Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」, 第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, N.Y., 1991, 第5章;E. Haslam,「Protective Groups in Organic Chemistry」, J.G.W. McOmie編, Plenum Press, New York, N.Y., 1973, 第5章,及びT.W. Greene,「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley and Sons, New York, NY, 1981, 第5章に見出される。「保護されたカルボキシ」なる用語は、上述したカルボキシ-保護基の一つで置換されたカルボキシ基を意味する。
【0013】
「グアニジン」とは、RがH又はアルキル又はアラルキルである-NH-C(NH)-NHR基を示す。特定のグアニジンは-NH-C(NH)-NH基である。
【0014】
ここで使用される場合「ヒドロキシ-保護基」とは、化合物上の他の官能基に対して反応が行われている間、ヒドロキシル基をブロック又は保護するのに通常用いられるヒドロキシル基のエステル誘導体を意味する。このような保護基の例には、テトラヒドロピラニルオキシ、アセトキシ、カルバモイルオキシ、トリフルオロ、クロロ、カルボキシ、ブロモ及びヨード基が含まれる。これらの基のさらなる例は、T.W. Greene及びP.G.M. Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版, John Wiley & Sons, Inc., New York, N.Y., 1991, 第2-3章;E. Haslam, 「Protective Groups in Organic Chemistry」、J.G.W. McOmie編, Plenum Press, New York, N.Y., 1973, 第5章、及びT.W. Greene, 「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1981に見出される。「保護されたヒドロキシ」なる用語は、上述したヒドロキシ-保護基の一つで置換されたヒドロキシ基を意味する。
【0015】
「複素環基(heterocyclic group)」、「ヘテロサイクリック(heterocyclic)」、「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」又は「ヘテロシクロ(heterocyclo)」は、単独で及びヘテロシクロアルキル基のような複合基中の部分として使用される場合には、交換可能に使用され、一般に5〜約14の環原子の、標記された原子数を有する任意の単環式、二環式又は三環式の飽和又は不飽和の芳香族(ヘテロアリール)又は非芳香族環を意味し、ここで環原子は炭素と少なくとも一のヘテロ原子(窒素、硫黄又は酸素)である。特定の実施態様では、基には1〜4のヘテロ原子が含まれる。典型的には、5員環は0〜2の二重結合を有し、6員又は7員環は0〜3の二重結合を有し、窒素又は硫黄ヘテロ原子は場合によっては酸化されてもよく(例えばSO、SO)、任意の窒素へテロ原子は場合によっては第4級化されていてもよい。特定の非芳香族複素環には、モルホリニル(モルホリノ)、ピロリジニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2H-ピラニル、テトラヒドロピラニル、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチエタニル、アジリジニル、アゼチジニル、1-メチル-2-ピロリル、ピペラジニル及びピペリジニルが含まれる。「ヘテロシクロアルキル」基は、上述したようなアルキル基に共有結合した上述したような複素環基である。硫黄又は酸素原子と1〜3の窒素原子を有する特定の5員複素環には、チアゾリル、例えばチアゾル-2-イル及びチアゾル-2-イル-N-オキシド、チアジアゾリル、例えば1,3,4-チアジアゾル-5-イル及び1,2,4-チアジアゾル-5-イル、オキサゾリル、例えばオキサゾル-2-イル、及びオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、及び1,2,4-オキサジアゾル-5-イルが含まれる。2〜4の窒素原子を有する特定の5員環複素環には、イミダゾリル、例えばイミダゾル-2-イル;トリアゾリル、例えば1,3,4-トリアゾル-5-イル、1,2,3-トリアゾル-5イル、及び1,2,4-トリアゾル-5-イル、及びテトラゾリル、例えば1H-テトラゾル-5-イルが含まれる。特定のベンゾ縮合した5員複素環は、ベンズオキサゾル-2-イル、ベンズチアゾル-2-イル及びベンズイミダゾル-2-イルである。特定の6員複素環は1〜3の窒素原子と場合によっては硫黄又は酸素原子を有し、特にピリジル、例えばピリド-2-イル、ピリド-3-イル、及びピリド-4-イル;ピリミジル、例えばピリミド-2-イル及びピリミド-4-イル;トリアジニル、例えば1,3,4-トリアジン-2-イル、及び1,3,5-トリアジン-4-イル;ピリダジニル、例えばピリダジン-3-イル、及びピラジニルである。置換されていてもよい複素環のための置換基と、先に検討した5員及び6員環系の更なる例は、W. Druckheimer等の米国特許第4278793号に見出すことができる。
【0016】
「ヘテロアリール」とは、単独で及びヘテロアラルキル基等の複合基中の一部として使用される場合、標記された数の原子を有する任意の単環式、二環式又は三環式の芳香族環系を意味し、ここで少なくとも1つの環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜4のヘテロ原子を有する5員、6員又は7員環である(Lang's Handbook of Chemistry, 上掲)。上述した任意のヘテロアリール環がベンゼン環に縮合している任意の二環式の基も定義に含まれる。次の環系:チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、チアジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、テトラジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル及びプリニル、並びにベンゾ-縮合誘導体、例えばベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリルが、「ヘテロアリール」という用語で示される(置換された又は未置換の)ヘテロアリール基の例である。特に「ヘテロアリール」には;1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,2,4-チアジアゾル-5-イル、3-メチル-1,2,4-チアジアゾル-5-イル、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-ヒドロキシ-1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イルのナトリウム塩、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾル-5イル、1,3-オキサゾル-2-イル、1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、2-(ヒドロキシメチル)-1,3,4-オキサジアゾル-5-イル、1,2,4-オキサジアゾル-5-イル、1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-チオール-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-(メチルチオ)-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、2-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、4-メチル-1,2,3-トリアゾル-5-イル、ピリド-2-イル-N-オキシド、6-メトキシ-2-(n-オキシド)-ピリダズ-3-イル、6-ヒドロキシピリダズ-3-イル、1-メチルピリド-2-イル、1-メチルピリド-4-イル、2-ヒドロキシピリミド-4-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-アス-トリアジン-3イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-アストリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-アス-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アストリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-メトキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2,6-ジメチル-アス-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]-ピリダジン-6-イルが含まれる。「ヘテロアリール」の他の基には:4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾル-2-イルのナトリウム塩、1,3,4-トリアゾル-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾル-5-イル、1H-テトラゾル-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾル-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エト-2-イル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾル-5-イルのナトリウム塩、1,2,3-トリアゾル-5-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-アス-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(2-ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-アス-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イルのナトリウム塩、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アス-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルが含まれる。
【0017】
インヒビターとは、カスパーゼタンパク質へのIAPタンパク質の結合を低減又は防止し、もしくはIAPタンパク質によるアポトーシスの阻害を低減又は防止する化合物を意味する。
「製薬的に許容可能な塩」には、酸及び塩基との付加塩の双方が含まれる。「製薬的に許容可能な酸付加塩」は、フリー塩基の生物学的効能と性質とを保持し、生物学的に又は他の形で所望されないものではない塩を意味するもので、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等で生成され、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボキシル及びスルホンクラスのものから選択され得る。
「製薬的に許容可能な塩基付加塩」には、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等から誘導されるものが含まれる。特に塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムの塩である。製薬的に許容可能な無毒の有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、自然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が含まれる。特定の無毒の有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0018】
本発明は、次の一般式I:

[上式中、X、X、L、R、R、R、R、R4’、R、R5’及びRはここで記載したものである]
を有する新規化合物を提供する。
【0019】
及びXはそれぞれ独立して、O又はSである。特定の実施態様では、X及びXは双方ともOである。他の特定の実施態様では、X及びXは双方ともSである。他の特定の実施態様では、XはSであり、一方XはOである。他の特定の実施態様において、XはOである一方、XはSである。
Lは、結合、-C(X)-、-C(X)NR12又は-C(X)O-であり、ここでXはO又はSであり、R12はH又はRである。特定の実施態様では、Lは結合である。他の特定の実施態様では、Lは-C(X)-であり、ここでXはOである。他の特定の実施態様では、Lは-C(X)-であり、ここでXはSである。特定の実施態様では、Lは-C(X)NH-であり、ここでXはOである。他の特定の実施態様では、Lは-C(X)NH-であり、ここでXはSである。特定の実施態様では、Lは-C(X)O-であり、ここでXはOである。他の特定の実施態様では、Lは-C(X)O-であり、ここでXはSである。
【0020】
は、アルキル、炭素環、炭素環置換アルキル、複素環又は複素環置換アルキルであり、ここでそれぞれはハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルスルホニル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよい。特定の実施態様では、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルであり、ここでそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキルアミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよい。特定の実施態様では、Rは次の式IIa、IIb、IIc及びIId:

[上式中
は、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルであり;Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル又はアミノで置換されていてもよいH、アルキル、アリール又はヘテロアリールであり;RはH又はアルキルであり;YはNH、NR10、O又はSであり、ここでR10はH、アルキル又はアリールであり;ZはCH、CH又はNであり;mは0、1、2又は3である]
からなる群から選択される。
特定の実施態様では、Lが-C(X)-であり、特にXがOである場合に、Rは、式IIa、IIb、IIc及びIIdからなる群から選択される。
【0021】
が式IIaの基である場合、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル又はアルコキシであってよい。特定の実施態様では、RはH、メチル、F又はメトキシである。他の特定の実施態様では、RはIIa、IIa、IIa及びIIaからなる群から選択される:

特定の実施態様では、Rは、IIa、IIa、IIa及びIIaからなる群から選択され、その場合にLは-C(X)-である。特定の実施態様では、Rは式IIaの基である。特定の実施態様では、Rは式IIaの基である。特定の実施態様では、Rは式IIaの基である。特定の実施態様では、Rは式IIaの基である。
【0022】
が式IIbの基である場合、RはH又はメチルであってよい。特定の実施態様では、Rはベンゾチオフェンである。他の特定の実施態様では、Rはインドールである。他の特定の実施態様では、RはN-メチルインドールである。他の特定の実施態様では、Rはベンゾフランである。他の特定の実施態様では、Rは2,3-ジヒドロ-ベンゾフランである。
【0023】
が式IIcの基である場合、mは0又は1であり;RはH、アルキル又はハロゲンであり;RはH、アルキル又はアリールであり;RはH又はメチルである。特定の実施態様では、Rは次の式IIc

[上式中、R及びR7’はそれぞれ独立して、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルであり;RはH又はアルキルでありmは0又は1である]
の基である。特定の実施態様では、RはHである。他の特定の実施態様では、Rはメチルである。特定の実施態様では、mは0である。他の特定の実施態様では、mは1である。他の特定の実施態様では、mは0であり、R及びR7’は双方ともHであり、RはHである。他の特定の実施態様では、mは1であり、R及びR7’は双方ともHであり、RはHである。他の特定の実施態様では、mは0であり、R及びR7’は双方ともHであり、Rはメチルである。他の特定の実施態様では、mは1であり、R及びR7’は双方ともHであり、Rはメチルである。
【0024】
がIIdの基である場合、RはH、アルキル又はアリールであり;mは0又は1であり;R及びR9’は独立して、H又はアルキルである。特定の実施態様では、mは0であり;RはH又はアリールである。特定の実施態様では、mは0であり;RはHである。他の特定の実施態様では、mは0であり;Rは2-フェニルである。他の実施態様では、mは1であり;RはHであり;R及びR9’は双方ともHである。他の実施態様では、mは1であり;RはHであり、またR及びR9’は双方ともメチルである。
【0025】
Lが結合である場合、Rは、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環、又はヘテロシクリルアルキルであってよい。この特定の実施態様では、Rは、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールである。特定の実施態様では、Rは次の式:

[上式中、QはNR11、O又はSであり;Q、Q及びQは独立して、CR11又はNであり;ここでR11は、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、シクロアルキル又は複素環である]
のものである。そのような実施態様では、R11は置換されていてもよいフェニル又はピリジル基である。特定の実施態様では、R

である。
【0026】
特定の実施態様では、Lが-C(X)NR12である場合、R12は、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよい、H、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環、又はヘテロシクリルアルキルである。この特定の実施態様では、R12は、ハロゲン、ヒドロキシル又はハロアルキルで置換されていてもよいアリールである。特定の実施態様では、R12はフェニルである。
【0027】
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環、又はヘテロシクリルアルキルである。特定の実施態様では、Rは、アルキル又はシクロアルキルである。本発明の実施態様では、Rはt-ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル又はフェニルである。特定の実施態様では、Rはシクロヘキシルである。他の実施態様では、Rはテトラヒドロピラン-4-イルである。他の特定の実施態様では、Rはイソプロピルである(すなわち、バリンアミノ酸側鎖)。他の特定の実施態様では、Rはt-ブチルである。特定の実施態様では、Rは、それを含むアミノ酸又はアミノ酸類似体がL-立体配置になるように配向している。
【0028】
はH又はアルキルである。特定の実施態様では、Rは、H、又はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。特定の実施態様では、RはH又はメチルである。他の特定の実施態様では、Rはメチルである。他の特定の実施態様では、Rはt-ブチルである。他の特定の実施態様では、Rは、それを含むアミノ酸又はアミノ酸類似体がL-立体配置になるように配向している。
【0029】
及びR4’は独立して、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルである。特定の実施態様では、R及びR4’は双方ともHである。他の特定の実施態様では、Rはメチルであり、R4’はHである。特定の実施態様では、R4’はHであり、Rは、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルである。特定の実施態様では、Rは、次の式:


からなる群から選択される基である。
【0030】
及びR5’はそれぞれ独立して、H又はアルキルである。特定の実施態様では、R及びR5’はH又はメチルである。特定の実施態様では、RはHであり、R5’はメチルである。他の特定の実施態様では、Rはメチルであり、R5’はHである。他の特定の実施態様では、R及びR5’は双方ともメチルである。他の特定の実施態様では、R及びR5’は双方ともHである。
はH又はアルキルである。特定の実施態様では、RはH又はメチルである。特定の実施態様では、RはHである。
【0031】
本発明の化合物は一又は複数の不斉炭素原子を含む。従って、化合物はジアステレオマー、エナンチオマー又はそれらの混合物として存在し得る。化合物の合成は、出発物質又は中間体として、ラセミ化合物、ジアステレオマー又はエナンチオマーを使用することができる。ジアステレオマー化合物はクロマトグラフィー又は結晶化法により分離することができる。同様に、エナンチオマー混合物は、同技術又は当該分野で公知の他の技術を使用して分離することができる。各不斉炭素原子はR又はS配置に存在し、これらの配置の双方が本発明の範囲内である。特定の実施態様では、本発明の化合物は、次の式I’:

の立体化学的配置を有する。
【0032】
また本発明は、上述した化合物のプロドラッグも含む。適用可能な場合、適切なプロドラッグは、例えば加水分解されて放出され、生理学的条件下で親化合物を生成する既知のアミノ-保護及びカルボキシ-保護基を含む。特定のクラスのプロドラッグは、アミノ、アミジノ、アミノアルキレンアミノ、イミノアルキレンアミノ又はグアニジノ基の窒素原子が、ヒドロキシ(OH)基、アルキルカルボニル(-CO-R)基、アルコキシカルボニル(-CO-OR)、アシルオキシアルキル-アルコキシカルボニル(-CO-O-R-O-CO-R)基(ここで、Rは一価又は二価の基であり、上述の通りである)又は式-C(O)-O-CP1P2-ハロアルキルを有する基(ここで、P1及びP2は同一か又は異なっており、H、低級アルキル、低級アルコキシ、シアノ、低級ハロアルキル又はアリールである)で置換された化合物である。特定の実施態様では、窒素原子は、本発明の化合物のアミジノ基の窒素原子の一つである。これらのプロドラッグ化合物は、上述した本発明の化合物と活性化アシル化合物とを反応させ、本発明の化合物中の窒素原子を活性化アシル化合物のカルボニルに結合させることで調製される。適切な活性化カルボニル化合物はカルボニル炭素に結合する良好な脱離基を有しており、アシルハロゲン化物、アシルアミン類、アシルピリジニウム塩、アシルアルコキシド、特にアシルフェノキシド、例えばp-ニトロフェノキシアシル、ジニトロフェノキシアシル、フルオロフェノキシアシル、及びジフルオロフェノキシアシルを含む。反応は一般的に発熱反応で、例えば−78から約50℃の低い温度にて不活性溶媒中で行われる。反応は通常は無機塩基、例えば炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウム、あるいは有機塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン等を含むアミンの存在下で行われる。プロドラッグを調製する一つの方法は、1997年4月15日に出願された米国特許出願第08/843369号(PCT国際公開第9846576号に対応)に記載されており、その内容は出典明示によりその全体がここに援用される。
【0033】
式Iの特定の化合物には、次の式:




のものが含まれる。
【0034】
合成
本発明の化合物は、市販されている出発物質及び試薬から、標準的な有機合成技術を使用して調製される。本発明の化合物の調製に使用される合成手順は、化合物に存在している特定の置換基に依存しており、様々な保護及び脱保護が、有機合成において標準であるように必要とされることが理解される。Lが-C(X)-である本発明の化合物に対しては、一般的な合成スキームは、所望の酸(例えばナフタレン-カルボン酸)の活性化エステルにカップリングされるN-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン基を含みうるもので、続いて環アミンが脱保護され、ついで典型的なアミドカップリング法を使用し、そこにアミノ酸残基をカップリングさせる。

【0035】
N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン中間体は、以下のスキーム2に例証されているCaryら, Tetrahedron Letters, 1989, 30:5547に記載の手順に従って調製することができる。一般に、シクロペンテン酢酸の活性化エステルは、メチルベンジルアミンにカップリングされる。メチルベンジル基は、アミノ酸残基へのカップリングの前は、環生成物を保護するアミンとなる。得られたアミドを水素化アルミニウムリチウムで還元し、第2級アミンを形成させ、ついでN-ブロモスクシンアミドと反応させる。得られたN-ブロモアミンを触媒量の臭化第1銅で環化し、6ブロモ置換アザビシクロ-オクタン環を生じせしめる。ついで、環を水酸化アンモニウムと反応させ、ついで本発明の化合物の合成に使用され得る対応する6-アミノ環中間体に、6-ブロモ基を転換させる。

【0036】
特定の実施態様では、メチルベンジルアミンは鏡像異性的に純粋である。このようなキラル補助基を使用すると、例えばRP-HPLC又はシリカゲルカラム等、アザビシクロ-オクタン環のジアステレオマーの簡便な分離が可能になる。ジアステレオマーの分離は、キラル補助保護基を除去する前に、6-ブロモ置換環又は6-アミノ置換環を用いて実施されてもよい。
【0037】
あるいは、本発明の化合物は、一般的なスキーム3に従い、アザビシクロ-オクタン環に、R及びRを組み入れたアミノ酸残基を逐次カップリングさせ、続いてアザビシクロ-オクタン環の6-アミノ基に、R-含有酸をカップリングさせることにより調製することができる。この方法では、出発のアザビシクロ-オクタン環は、例えばTeoc基(トリメチルシリルエチルオキシカルボニル)を用いて、第1級6-アミノ置換基で保護され、続いて第2級環アミンの脱保護がなされる。標準的なペプチドカップリング法を使用し、得られる脱保護された環アミンを、R-含有残基、ついでR-含有残基とカップリングする。ついで、Teoc基がTASF(トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリカート)を用いて除去され、脱保護された6-アミノ基がR-含有酸とカップリングされる。

【0038】
カルバマート等、Lが-C(X)O-である本発明の化合物に対しては、一般的な合成スキームは、R(Cl-C(O)O-R)のクロロホルマートと、N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン中間体との反応を含み得る。
尿素等、Lが-C(X)NR12-である本発明の化合物に対しては、一般的な合成スキームは、パラ-ニトロフェニルクロロホルマートと、N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン中間体とを反応させ、ついで、スキーム4に例証された強塩基条件下で、第1級又は第2級アミンNR12と得られたカルバマートとを反応させることを含み得る。

【0039】
Lが結合、すなわちRとそれが依存している窒素がアミンを形成する化合物は、還元的アミノ化により調製できる。あるいは、このような化合物は、例えばRがアルキル、アルケニル又はアルキニル等の脂肪族基である場合、R基のメチルスルホナートエステルと、N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン基とを反応させることによって調製されうる。Rがアリール又はヘテロアリールである場合、このような化合物は、Blassら, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2000, 10:1543、及びBakhtiarら, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1. 1994, 3:239に記載されている手順に従い、メチルスルホニル-置換R化合物と、N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン基とを反応させことによって調製されてもよい。例えば、Lが結合であり、Rが1-フェニル-1H-イミダゾール-2-イルである場合、化合物は次のスキーム5に従い調製され得る。

上式中、1-フェニル-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオンは、ヨウ化メチルと反応し、続いてm-クロロペルオキシ安息香酸を用いて酸化されて、N-保護された6-アミノ-アザビシクロ-オクタン基と反応するメチルスルホニルが得られる。
【0040】
他の例では、Lが結合であり、Rが4-フェニル-[1,2,3]チアジアゾール-5-イルである場合、化合物は、Masudaら, J. Chem. Soc. Perkin. Trans. 1, 1981, (5) 1591に記載されているように、次のスキーム6に従って調製することができる。

【0041】
(有用性)
本発明の化合物は、細胞において、カスパーゼ、例えばカスパーゼ3、7及び/又は9へ、IAPタンパク質、例えばXIAP及びML-IAPが結合するのを阻害する。従って、本発明の化合物は、特にIAPタンパク質を過剰発現する癌細胞において、アポトーシスシグナルに対して細胞を過敏化させ、又は細胞においてアポトーシスを誘発させるのに有用である。より広義には、化合物は、アポトーシスを被り損ねた全ての癌型の処置に使用することができる。このような癌型の例には、神経芽細胞種、腸癌腫、例えば直腸癌、大腸癌、家族性大腸腺腫症癌、及び遺伝性非ポリポーシス大腸癌、食道癌、口唇癌、咽頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、腎臓癌、腎実質癌、卵巣癌、 頸部癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛癌、膵癌、前立腺癌、精巣癌、乳癌、尿癌(urinary carcinoma)、黒色腫、脳腫瘍、例えば神経膠芽腫、星細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、及び末梢神経外胚葉性腫瘍、ホジキンリンパ腫、非-ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、肝臓癌、胆嚢癌、気管支癌、小細胞肺癌、非-小細胞肺癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、及び形質細胞腫が含まれる。
【0042】
本発明の化合物は、アポトーシスシグナルに対して細胞を過敏化させるのに有用である。従って、本化合物は、放射線治療、又は細胞増殖抑制剤又は抗悪性腫瘍剤による化学療法の前、同時又は後に投与されうる。適切な細胞増殖を抑制する化学療法用化合物には、限定されるものではないが、(i)代謝拮抗剤、例えばシタラビン、フルダラビン、5-フルオロ-2'-デオキシウイリジン(uiridine)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素又はメトトレキセート;(ii)DNA-断片化剤、例えばブレオマイシン、(iii)DNA-架橋剤、例えばクロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド又はナイトロジェンマスタード;(iv)挿入剤、例えばアドリアマイシン(ドキソルビシン)又はミトキサントロン;(v)タンパク質合成インヒビター、例えばL-アスパラギナーゼ、シクロヘキシミド、ピューロマイシン又はジフテリア毒素;(vi)トポイソメラーゼI毒素、例えばカンプトテシン又はトポテカン;(vii)トポイソメラーゼII毒素、例えばエトポシド(VP-16)又はテニポシド;(viii)微小管用薬剤(microtubule-directed agents)、例えばコルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン又はビンクリスチン;(ix)キナーゼインヒビター、例えばフラボピリドール(flavopiridol)、スタウロスポリン、STI571(CPG 57148B)又はUCN-01(7-ヒドロキシスタウロスポリン);(x)種々の治験薬、例えばチオプラチン(thioplatin)、PS-341、フェニルブチラート、ET-18-OCH、又はファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(L-739749、L-744832);ポリフェノール類、例えばケルセチン、リスベラトロール、ピセタノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体;(xi)ホルモン類、例えばグルココルチコイド類又はフェンレチニド(fenretinide);(xii)ホルモンアンタゴニスト、例えばタモキシフェン、フェナステリド、又はLHRHアンタゴニストが含まれる。特定の実施態様では、本発明の化合物は、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソール、タキソテール、及びマイトマイシンCからなる群から選択される細胞増殖抑制化合物と同時投与される。特定の細胞増殖抑制化合物はドキソルビシンである。
【0043】
本発明で使用可能な他のクラスの活性化合物は、デスレセプターに結合することによりアポトーシスを誘発するか又は過敏化可能なもの(「デスレセプターアゴニスト」)である。このようなデスレセプターのアゴニストには、デスレセプターリガンド、例えば腫瘍壊死因子a(TNF-α)、腫瘍壊死因子β(TNF-β、リンホトキシン-β)、LT-β(リンホトキシン-β)、TRAIL(Apo2L、DR4リガンド)、CD95(Fas、APO-1)リガンド、TRAMP(DR3、Apo-3)リガンド、DR6リガンド、並びに任意の該リガンドの断片及び誘導体が含まれる。特定の実施態様では、デスレセプターリガンドはTNF-αである。特定の実施態様では、デスレセプターリガンドはApo2L/TRAILである。さらに、デスレセプターアゴニストは、デスレセプターに対するアゴニスト抗体、例えば抗-CD95、抗-TRAIL-R1(DR4)抗体、抗-TRAIL-R2(DR5)抗体、抗-TRAIL-R3抗体、抗-TRAIL-R4抗体、抗-DR6抗体、抗-TNF-R1抗体、及び抗-TRAMP(DR3)抗体、並びに任意の該抗体の断片及び誘導体を含む。
【0044】
アポトーシスに対して細胞を過敏化させる目的に対して、本発明の化合物は、放射線治療と組合せて使用することができる。「放射線治療」なる用語は、異常増殖の処置に、電磁気又は微粒子放射線を使用することを意味する。放射線治療は、標的領域に送達される高用量の放射線により、腫瘍及び正常組織の双方において再生細胞を死亡させるという原則に基づく。線量投与計画は、放射線吸収量(rad)、時間及び分画に関して一般的に定められており、腫瘍学者により注意深く定められなくてはならない。患者が受容する放射線の量は種々の検討材料に依存するが、最も重要な2つの検討材料は、他の重要な構造体又は体の器官に対する腫瘍の位置と、腫瘍の広がった程度である。放射線治療剤の例は、限定されるものではないが、放射線治療において提供されるものであり、当該技術(Hellman, Principles of Radiation Therapy, in Cancer, Principles I and Practice of Oncology, 24875 (Devitaら, 4th ed., vol 1, 1993)において知られている。放射線治療における近年の進歩は、3次元原体外照射、強度変調放射線治療(IMRT)、定位的放射線治療及び近接放射療法(組織内照射治療)が含まれ、後者は、インプラントされる「種」として、腫瘍に直接放射線源が配される。これらの新規な処置法により、より多くの用量の放射線が腫瘍に送達せしめられ、標準的な外照射療法と比較した場合に、それらの効果が増大する一因となっている。
【0045】
β-放出核種を有する電磁放射線は、電離粒子(電子)の中程度の線エネルギー付与(LET)及びその中距離(典型的には組織においては数ミリメートル)の故に、放射線治療への応用において最も有用であると考えられる。ガンマ線は、より長い距離に対して低レベルの用量を送達する。アルファ粒子は全く正反対で、非常に高いLET用量を送達するが、極度に制限された範囲であり、よって、処置される組織の細胞に密接に接触させなければならない。さらに、アルファ放射体は一般的に重金属であり、実施可能な化学種は限定され、処置される領域から放射性核種が漏出する危険性も存在する。処置される腫瘍に応じて、あらゆる種類の放射体が、本発明の範疇に入ると考えられる。
【0046】
さらに、本発明は非電離放射線のタイプ、例えば紫外線(UV)、高エネルギーの可視光線、マイクロ波照射(温熱治療)、赤外線(IR)及びレーザーを含む。本発明の特定の実施態様では、UV線が適用される。
【0047】
また本発明は、本発明の化合物と、治療用の不活性な担体、希釈剤又は賦形剤を含有する製薬用組成物又は医薬、並びにこのような組成物及び医薬を調製するための、本発明の化合物の使用方法も含む。典型的には、本発明の方法に使用される式Iの化合物は、周囲温度、適切なpHで、所望する純度にて、生理学的に許容可能な担体、すなわち生薬投与形態に使用される用量及び濃度でレシピエントに無毒な担体と混合することにより処方される。製剤のpHは、主として化合物の濃度及び特定の用途に依存するが、約3〜8の範囲であってよい。適切な実施態様では、pH5の酢酸バッファー中で処方される。ここで使用される阻害化合物は滅菌されていてもよい。通常、化合物は固形組成物として保存されるが、凍結乾燥製剤又は水溶液も許容可能である。
【0048】
本発明の組成物は、良好な医療行為と一致した様式にて、処方、服用及び投与されるであろう。ここで考慮される要因には、処置される特定の疾患、処置される特定の哺乳動物、個人の患者の病状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医者に公知の他の要因が含まれる。投与される化合物の「有効量」は、このような考慮により決定され、カスパーゼとIAPとの相互作用を阻害し、アポトーシスを誘発させ、又はアポトーシスシグナルに対して悪性細胞を過敏化させるのに必要な最小量である。このような量は、正常細胞、又は全体として哺乳動物に毒性である量以下であることが好ましい。
一般に、一回当たりに非経口投与される本発明の化合物の当初の製薬的有効量は、約0.01〜100mg/kg、例えば一日当たり患者の体重に対して約0.1〜20mg/kgの範囲であり、使用される化合物の典型的な当初の範囲は、0.3〜15mg/kg/日である。経口単位用量形態、例えば錠剤及びカプセルは、約25〜約1000mgの本発明の化合物を含有していてよい。
【0049】
本発明の化合物は、経口、局所、経皮、非経口、皮下、腹膜内、肺内、及び鼻孔内、局部的治療が所望されている場合は病巣内部への投与を含む、任意の適切な手段により投与されてよい。非経口的注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与が含まれる。適切な経口投与形態の例は、25mg、50mg、100mg、250mg又は500mgの本発明の化合物と、約90〜30mgの無水ラクトース、約5〜40mgのクロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、約5〜30mgのポリビニルピロリドン(PVP)K30、及び約1〜10mgのステアリン酸マグネシウムを混合して含有する錠剤である。パウダー状の成分をまず最初に混合し、次にPVPの溶液と混合する。得られた組成物を乾燥し、粒状化し、ステアリン酸マグネシウムと混合し、従来からの装置を使用して錠剤の形態に圧密化する。エアゾール製剤は、リン酸バッファー等の適切なバッファー溶液に、例えば5〜400mgの本発明の化合物を溶解し、所望するならば、塩類、例えば塩化ナトリウム等の緊張化剤(tonicifier)を添加することにより調製することができる。典型的には、溶液は、例えば0.2ミクロンのフィルターを使用して濾過され、不純物及び汚染物が除去される。
【実施例】
【0050】
本発明は、次の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。ここで使用される略語は以下の通りである:
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;
DME:1,2-ジメトキシエタン;
DMF:ジメチルホルムアミド;
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;
HATU:O-(7-アゾベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
NBS:N-ブロモスクシンアミド;
TASF:トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリカート;
THF:テトラヒドロフラン
【0051】
実施例1
2-アザビシクロ[3.3.0]オクタン環を、Coreyら, Tetrahedron Letters, 1989, 30:5547の手順に従い調製した。

EDC(38.34g、200mmol)、DMAP(2.44g、20mmol)、シクロペンテン酢酸(25.0g、198mmol)、及びR-α-メチルベンジルアミン(25mL、196mmol)を、逐次CHCl(500mL)に添加した。溶液を室温で2時間保持し、ついで1NのHCl(3x100mL)、1NのNaOH(3x100mL)、塩水(1x100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、無色の固体として43.7g(97%)のアミド3が得られた。
【0052】

0℃で、THF(430mL)にアミド3(43.6g、190mmol)が入った溶液に、2時間以上かけて、水素化アルミニウムリチウム(THFに200mLの1.0M溶液、200mmol)を添加した。混合物を室温まで温め、ついで36時間、還流にて加熱 した。混合物を0℃まで冷却し、水(7.6mL)、続いて15%のNaOH(8mL)水(24mL)を滴下方式にて添加した。得られた混合物を一晩激しく攪拌し、THF及び1NのNaOH(20mL)を用い、セライトパッドを通して濾過した。減圧下でTHFを除去し、残留物をCHClで希釈し、層を分離させ、有機相を濃縮したところ、無色の油として定量的収率のアミン4が得られた。
【0053】

アミン4(950mg、4.4mmol)を、激しく攪拌しつつ、0℃で2時間、ヘキサン(11mL)中で、N-ブロモスクシンアミド(980mg、5.5mmol)で処理した。付加的なNBS(160mg)を添加し、0℃で1.5時間攪拌し続けた。コース・フリット(course frit)を通して混合物を濾過し、濃縮した。残留物をCHClに溶解させ、触媒のCuBr(〜1mg)を用いて、0℃で2.5時間処理した。減圧下で溶媒を除去したところ、直接処理される、臭化物5及び6の1:1混合物が得られた。
【0054】

粗臭化物5及び6の混合物をDME(14mL)と濃NHOH(7mL)に溶解させ、密封容器において、18時間60℃で加熱した。減圧下で溶媒を除去し、残留物をCHCl(50mL)に溶解させ、1NのHSO(1x25mL)で抽出した。水相をCHCl(3x50mL)で洗浄した。NaOH(s)を用い、水相を塩基性(pH>11)にし、CHCl(3x50mL)で抽出した。組合せた有機相を濃縮し、残留物を逆相HPLC(C18、MeCN-HO、0.1%TFA)で精製した。全てのMeCNが除去されるまで、生成物を含有するフラクションを減圧下で濃縮し、1NのNaOHを用いて塩基性(pH>11)にし、CHClを用いて包括的に抽出した。組合せた有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、無色の油として7149mg(29%)のアミン7が得られた。
【0055】
実施例2

アミン7(140mg、0.61mmol)を、典型的なEDCカップリング手順に従い、ジフェニル酢酸(148mg、0.7mmol)とカップリングさせたところ、無色の油として263mg(88%)のアミド8が得られた。

ベンジルアミン8(263mg、0.62mmol)、酢酸(71μL、1.24mmol)、20%のPd(OH)・C(62mg)、及びMeOH(6mL)の混合物を、1気圧のH下、8時間保持した。混合物を、セライトパッドを通して濾過し、濃縮した。残留物をCHCl(50mL)に溶解させ、1NのNaOH(3x10mL)、塩水(1x10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、無色の油として200mg(100%)のアミン9が得られた。
【0056】
実施例3

第2級アミン1(166mg、0.61mmol)、CbzNt-ブチルグリシン(166mg、0.61mmol)、HATU(475mg)、DIPEA(1mL)及びDMF(3ml)の混合物を、室温で1時間保持した。混合物をCHCl(50mL)で希釈し、1NのHCl(3x20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル-ヘキサン)で精製したところ、無色の油として、400mg(>100%、過度の重量は溶媒)の2が得られ、これは直接実施された。

上述したアミド2、MeOH(15ml)、AcOH(0.3ml)及び20%のPd(OH)・C(150mg)の混合物を、Hの雰囲気下、3時間激しく攪拌した。過度のMeOHを用い、セライトを通して混合物を濾過した。減圧下でMeOHを除去し、残留物をCHCl(50mL)に溶解させ、0.5NのNaOH(3x10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、無色の油として169mg(2工程を越えて72%)のアミン3が得られた。
【0057】

アミン3(169mg、0.44mmol)を、典型的なEDCカップリング手順に従い、N-Boc-N-メチルアラニン(108mg、0.53mmol)とカップリングさせたところ、無色の油として260mgの保護されたアミン4が得られ、これはさらなる精製を行わないで使用された。
【化25】

保護されたアミン4(265mg)を、MeCNに過度のTAS-Fが入ったもので、50℃にて4時間処理した。反応体をCHCl(50mL)で希釈し、0.5NのNaOH(3x30mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、無色の油として168mg(2工程を越えて90%)のアミン5が得られた。
【0058】
実施例4 化合物25

第2級アミン1(65mg)を、上述にてCbz-シクロヘキシルグリシンにカップリングさせ、ついで水素添加分解によりCbz基を除去したところ、無色の油として、73mg(2工程を越えて74%)のアミン2が得られた。

アミン2(73mg)を上述したように反応させたところ、76mg(2工程を越えて94%)のアミン3が得られた。

アミン3(39mg)を、典型的なEDCカップリング条件下で、ジフェニル酢酸とカップリングさせ、ついで標準的な条件下でBoc基を除去した。残留物をHPLCで精製したところ、無色の固体として、58mg(34%)の最終化合物4が得られた。
【0059】
実施例5 化合物1

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている酸である1H-インドール-3-カルボキシラートとカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(31%)が得られた。
【0060】
実施例6 化合物19

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている酸である1-メチル-1H-インドール-3-カルボキシラートとカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(39%)が得られた。
【0061】
実施例7 化合物10

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている酸である1-メチル-1H-インダゾール-3-カルボキシラートとカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(42%)が得られた。
【0062】
実施例8 化合物17

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、市販されている酸塩化物であるフェニル-アセチルクロリドとカップリングさせ、続いてTFAによりBocを除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(39%)が得られた。
【0063】
実施例9 化合物18

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、市販されている酸塩化物である2-メチル-2-フェニル-プロピオニルクロリドとカップリングさせ、続いてTFAによりBocを除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(54%)が得られた。
【0064】
実施例10 化合物8

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、市販されている酸塩化物である2,2-ジフェニル-プロピオニルクロリドとカップリングさせ、続いてTFAによりBocを除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(65%)が得られた。
【0065】
実施例11 化合物14

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている安息香酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(16%)が得られた。
【0066】
実施例12 化合物11

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているベンゾフラン-3-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(32%)が得られた。
【0067】
実施例13 化合物21

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているナフタレン-1-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(28%)が得られた。
【0068】
実施例14 化合物24

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている4-フルオロ-ナフタレン-1-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(33%)が得られた。
【0069】
実施例15 化合物6

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている4-メチル-ナフタレン-1-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(39%)が得られた。
【0070】
実施例16 化合物4

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている(4-フルオロ-フェニル)-フェニル-酢酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物 (68%)が得られた。
【0071】
実施例17 化合物3

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-3-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(39%)が得られた。
【0072】
実施例18 化合物12

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されている2-メトキシ-ナフタレン-1-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(52%)が得られた。
【0073】
実施例19 化合物28

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているナフタレン-1-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(41%)が得られた。
【0074】
実施例20 化合物25

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているジフェニル-酢酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(33%)が得られた。
【0075】
実施例21 化合物27

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているキノリン-4-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(78%)が得られた。
【0076】
実施例22 化合物26

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているナフタレン-2-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(79%)が得られた。
【0077】
実施例23 化合物16

実施例3の手順に従い調製されたBoc-保護されたアミン中間体を、典型的なEDCカップリング条件に基づき、市販されているベンゾ[b]チオフェン-3-カルボン酸とカップリングさせ、続いてBoc基を除去し、HPLCで精製したところ、最終化合物(49%)が得られた。
【0078】
実施例24

ジヒドロベンゾフラン10(160mg、0.9mmol)DDQ(300mg)及びCHCl(11mL)の混合物を、室温で2日間保持した。溶液を50%の酢酸エチル-ヘキサンで希釈し、0.5NのNaOH(3x10mL)、塩水(1x10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、150mgのベンゾフランメチルエステル11が得られた。

エステル11(150mg)LiOH・HO(95mg)THF(5mL)及び水(2.5mL)の混合物を、2日間激しく攪拌した。NHCl(1x50mL)の飽和水溶液を用いて反応を停止させ、減圧下でTHFを除去した。CHCl(1x50mL)を用いて水相を抽出し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮したところ、140mgのベンゾフラン12が得られた。
【0079】
実施例25 IAP阻害アッセイ
以下の実験においては、110残基の11がXIAP-BIR3に見出されるものに対応し、残りがML-IAP-BIRに対応する、MLXBIR3SGと称されるキメラBIRドメインを使用した。キメラタンパク質MLXBIR3SGは、天然BIRドメインのいずれかよりも有意に良好にカスパーゼ-9に結合してこれを阻害することが示されているが、天然ML-IAP-BIRのものに類似した親和性でSmac-ベースタンパク質及び成熟Smacに結合した。キメラBIRドメインMLXBIR3SGのカスパーゼ-9阻害度の改善度合いは、MCF7細胞に形質移入した場合に、ドキソルビシン-誘発性アポトーシスの阻害度の増加度合いと相関している。
MLXBIR3SG配列:
MGSSHHHHHHSSGLVPRGSHMLETEEEEEEGAGATLSRGPAFPGMGSEELRLASFYDWPLTAEVPPELLAAAGFFHTGHQDKVRCFFCYGGLQSWKRGDDPWTEHAKWFPGCQFLLRSKGQEYINNIHLTHSL(配列番号:1)
【0080】
TR-FRETペプチド結合アッセイ
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動競争実験を、Kolbら(Journal of Biomolecular Screening, 1996, 1(4):203)の手順に従い、Wallac Victor2 Multilabeled Counter Reader(Perkin Elmer Life and Analytical Sciences, Inc.)で実施した。300nMのhis-タグMLXBIR3GS;200nMのビオチン化SMACペプチド(AVPI);5μg/mLの抗hisアロフィコシアニン(XL665)(CISBio International);及び200ng/mLのストレプタビジン-ユーロピウム(Perkin Elmer)を含有する試薬混合物を、試薬用バッファー(50mMのトリス[pH7.2]、120mMのNaCl、0.1%のウシグロブリン、5mMのDTT及び0.05%のオクチルグルコシド)において調製した。(あるいは、この混合物は、それぞれ6.5nM及び25nM濃度のユーロピウムで標識された抗His(Perkin Elmer)及びストレプタビジン-アロフィコシアニン(Perkin Elmer)を使用して作製することもできる)。試薬カクテルを室温で30分インキュベートした。インキュベート後、カクテルを、384ウェルブラックFIAプレート (Greiner Bio-One, Inc.)においてアンタゴニスト化合物(出発濃度は50μM)の1:3連続希釈液に添加した。室温での90分のインキュベート後、ユーロピウムの励起(340nm)用、及びユーロピウム(615nm)及びアロフィコシアニン(665nm)の発光波長用のフィルターを用いて、蛍光を読み取った。615nmにおけるユーロピウムの発光に対する、665nmにおけるアロフィコシアニンの発光シグナルの比率として、アンタゴニストデータを算出した(データ操作を容易にするために、これらの比率には10000という因数をかけた)。得られた値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading,PA)を使用し、4-パラメータ等式にあてはめた。アンタゴニスト能の表示はIC50値から決定した。このアッセイで試験した式I'の化合物は、200μM未満のIC50値を示し、IAP阻害活性を示した。

【0081】
蛍光偏光ペプチド結合アッセイ
偏光実験を、Keating, S.M., Marsters, J, Beresini, M., Ladner, C., Zioncheck, K., Clark, K., Arellano, F., 及びBodary., S.(2000), Proceedings of SPIE : In Vitro Diagnostic Instrumentation (Cohn, G.E.編)pp128-137, Bellingham, WAの手順に従い、アナリストHT 96-384(Molecular Devices Corp.)で実施した。蛍光偏光親和測定のための試料を、偏光用バッファー(50mMのトリス[pH7.2]、120mMのNaCl、1%のウシグロブリン、5mMのDTT及び0.05%のオクチルグルコシド)に、最終濃度5μMのMLXBIR3SGから出発して、最終濃度5nMの5-カルボキシフルオレセイン-結合AVPdi-Phe-NH(AVP-diPhe-FAM)まで、1:2連続希釈液を添加することにより調製した。

【0082】
96ウェルブラックHE96プレート(Molecular Devices Corp.)において、フルオレセインフルオロプローブ(λex=485nm;λem=530nm)用の標準的なカットオフフィルターを用い、室温で10分のインキュベート時間の後、反応を読み取った。蛍光値をタンパク質濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading, PA)を使用し、データを4-パラメータ等式にあてはめることで、IC50を得た。5nMのAVP-diPhe-FAMプローブを含むウェルに、30nMのMLXBIR3SGを添加し、また偏光用バッファー中300μM濃度で始めるアンタゴニスト化合物の1:3連続希釈により、競合実験を実施した。10分のインキュベート後、試料を読み取った。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Kaleidographソフトウエア(Synergy Software, Reading, PA)を使用し、データを4-パラメータ等式にあてはめることで、IC50を得た。アンタゴニストに対する阻害定数(K)をIC50値から決定した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式I:

[上式中、
及びXは独立してO又はSであり;
Lは、結合、-C(X)-、-C(X)NR12又は-C(X)O-であり、ここで、XはO又はSで、R12はH又はRであり;
は、アルキル、炭素環、炭素環置換アルキル、複素環又は複素環置換アルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルスルホニル、アミノ、ニトロ、アリール及びヘテロアリールで置換されていてもよいものであり;
は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環又はヘテロシクリルアルキルであり;
は、H又はアルキルであり;
及びR4’は独立して、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルで、それぞれハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アルキル、アルコキシ、アミノ及びニトロで置換されていてもよいものであり;
及びR5’はそれぞれ独立して、H又はアルキルであり;
は、H又はアルキルである]
の化合物及びその塩及び溶媒和物。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lが-C(X)-であり、Rが、式IIa〜IId:

[上式中
は、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルであり;
は、H、アルキル、アリール又はヘテロアリールで、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル又はアミノで置換されていてもよいものであり;
及びR9'は独立して、H又はアルキルであり;
YはNH、NR10、O又はSであり、ここでR10はH、アルキル又はアリールであり;
ZはCH、CH又はNであり;
mは0、1、2又は3である]
からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が式IIaの基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、H、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル又はアルコキシである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がアルキル又はシクロアルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
がイソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
がメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
がH又はメチルで、R4’がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
、X及びXがOで、R、R5’及びRがそれぞれHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
が式IIbの基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項12】
式IIbの基が、ベンゾチオフェン、インドール、N-メチルインドール、ベンゾフラン又は2,3-ジヒドロ-ベンゾフランである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
がアルキル又はシクロアルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
がイソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
がメチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
がH又はメチルで、R4’がHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項17】
、X及びXがOで、R、R5’及びRがそれぞれHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項18】
が式IIcの基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項19】
が式IIc

[上式中
及びR7’はそれぞれ独立して、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアラルキルであり;
はH又はアルキルであり;
mは0又は1である]
の基である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
がHであり、RがHであり、mが0である、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
がアルキル又はシクロアルキルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
がイソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項23】
がメチルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項24】
がH又はメチルで、R4’がHである、請求項18に記載の化合物。
【請求項25】
、X及びXがOで、R、R5’及びRがそれぞれHである、請求項18に記載の化合物。
【請求項26】
が式IIdの基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項27】
がH又はフェニルであり;RがH又はアルキルであり、R9’がH又はアルキルであり、mが0又は1である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
がアルキル又はシクロアルキルである、請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
がイソプロピル、t-ブチル又はシクロヘキシルである、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
がメチルである、請求項26に記載の化合物。
【請求項31】
がH又はメチルで、R4’がHである、請求項26に記載の化合物。
【請求項32】
、X及びXがOで、R、R5’及びRがそれぞれHである、請求項26に記載の化合物。
【請求項33】
細胞においてアポトーシスを誘発させる方法において、請求項1に記載の化合物を前記細胞に導入することを含んでなる方法。
【請求項34】
細胞をアポトーシスシグナルに対して過敏化させる方法において、請求項1に記載の化合物を前記細胞に導入することを含んでなる方法。
【請求項35】
前記アポトーシスシグナルが、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロ-2'-デオキシウイリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、シスプラチン、シクロホスファミド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ミトキサントロン、カンプトテシン、トポテカン、コルセミド、コルヒチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、フェナステリド、タキソテール、及びマイトマイシンCからなる群から選択される化合物に前記細胞を接触させることによって誘導される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アポトーシスシグナルがApo2L/TRAILに前記細胞を接触させることによって誘導される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
カスパーゼタンパク質へのIAPタンパク質の結合を阻害する方法において、前記IAPタンパク質を請求項1に記載の化合物に接触させることを含む方法。
【請求項38】
哺乳動物におけるIAPの過剰発現に関連した病気又は症状を処置する方法において、前記哺乳動物に、請求項1に記載の有効量の化合物を投与することを含む方法。
【請求項39】
前記病気又は症状が癌である、請求項38に記載の方法。

【公表番号】特表2007−530553(P2007−530553A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505059(P2007−505059)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009328
【国際公開番号】WO2005/094818
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】