説明

ICカードおよびICカードシステム

【課題】 個人認証に要する時間が短くて済むICカードおよびICカードケースを提供する。
【解決手段】 ICカード1側では、光発電装置6により、バイオメトリクスセンサ4、IC3、および表示部5に電力が供給される。バイオメトリクスセンサ4により、 ICカード1 を持っている利用者の指などから当該利用者 の生体情報が検出され、 IC3に記録されている真正所有者の生体情報と照合される。照合結果は、 ICカード1の表示部5に表示される。これに対して、利用者がICカード1をリーダ2にかざすと、リーダ2は、アンテナ8、7を介してICカード1に認証開始信号を送信し、ICカード1では、バイオメトリクスセンサ4による照合結果に基づき、IC3の情報をアンテナ7を介してリーダ2のアンテナ8に送信するか否かを判断する。リーダ2側では、送信情報に基づき、通行許可等の動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードおよびICカードシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パッシブ型RFIDで通信する非接触式のICカードが、交通機関の自動改札機や建物の入退館システムなどにおいて利用されている。しかし、これらのICカードでは個人認証が行われていないため、真正所有者でない人がICカードを利用することが可能であり、セキュリティレベルが低いのが実情である。このため、ICカードに個人を特定する情報(指紋など)を書き込み、リーダ側に個人を特定する情報を読み込む機能を組み込んだシステムが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−102431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、交通機関の自動改札などにおいて、利用者がリーダ(自動改札機)に個人を特定する情報をインプットして通行許可を求めるとなると、一人当たりの認証に必要な時間が増加するため、滞留状態となり実用的ではない。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、個人認証に要する時間が短くて済むICカードおよびICカードケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るICカードは、利用者の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサと、真正所有者の生体情報を記録し、前記バイオメトリクスセンサにより検出された前記利用者の生体情報を前記真正所有者の生体情報と照合するICと、前記ICによる照合結果を表示する表示部と、光に反応して発電し、前記バイオメトリクスセンサ、前記IC、および前記表示部に電力を供給する光発電装置と、リーダとの間でデータの送受信を行うアンテナとを備えることを特徴とする。
【0006】
ICカード側では、光発電装置により、バイオメトリクスセンサ、IC、および表示部に電力が供給される。バイオメトリクスセンサにより、ICカードを持っている利用者の指などから当該利用者の生体情報を検出し、ICにおいて、検出された利用者の生体情報が、当該ICに記録されている真正所有者の生体情報と照合される。照合結果は、ICカードに備えられた表示部に表示される。これに対して、利用者がICカードをリーダにかざすと、リーダは、アンテナを介してICカードに認証開始信号を送信する。ICカード側では、バイオメトリクスセンサによる照合結果に基づき、ICの情報をアンテナを介してリーダに送信するか否かを判断する。そして、リーダ側では、送信情報に基づき通行許可等の動作が行われる。
【0007】
本発明では、ICカードに記録されている真正所有者の生体情報に基づいてICカード側で個人認証を行うため、大量の個人データが登録されているサーバーとの間でデータのやりとりを行う必要がなく、セキュリティレベルが高く、認証に要する時間も大幅に短縮される。一方、利用者も、ICカードに備えられている表示機能により照合結果を確認することができる。
【0008】
また、本発明に係るICカードでは、前記光発電装置は、特定波長の光に反応して発電してもよい。
本発明では、特定波長の光に反応して発電する光発電装置とすることで、特定波長の照明光に反応しないICカードを偽造ICカードとして見分けることが可能となる。これにより、セキュリティチェックを二重にして、より安全なシステムとすることができる。
【0009】
また、本発明に係るICカードシステムは、真正所有者の生体情報を記録するとともに、後記バイオメトリクスセンサにより検出された利用者の生体情報を前記真正所有者の生体情報と照合するICと、リーダとの間でデータの送受信を行うアンテナと、後記ICカードケースに備えられたケース接続部に接続するためのカード接続部とを有するICカードと、利用者の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサと、前記ICによる照合結果を表示する表示部と、光に反応して発電し、前記バイオメトリクスセンサ、前記表示部、および前記ICに電力を供給する光発電装置と、前記ICカードに備えられたカード接続部に接続するためのケース接続部とを有し、前記ICカードを格納するICカードケースとを備えることを特徴とする。
本発明では、バイオメトリクスセンサ機能と表示機能と光発電機能をICカードケースにもたせることにより、ICカードを薄くしてコンパクトなものとすることができる。
【0010】
また、本発明に係るICカードシステムでは、前記光発電装置は、特定波長の光に反応して発電してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るICカードでは、 ICカードに記録されている真正所有者の生体情報に基づいて ICカード側で個人認証を行うため、大量の個人データが登録されているサーバーとの間でデータのやりとりを行う必要がなく、セキュリティレベルが高く、認証に要する時間も大幅に短縮することが可能となる。また、利用者も、 ICカードに備えられている表示機能により照合結果を確認することができる。
また、本発明に係るICカードシステムでは、バイオメトリクスセンサ機能と表示機能と光発電機能をICカードケースにもたせることにより、ICカードを薄くしてコンパクトなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るICカードおよびICカードシステムについて図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るICカードの構成図である。
本発明に係るICカード1は、利用者 の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサ4と、真正所有者の生体情報を記録し、バイオメトリクスセンサ4により検出された利用者の生体情報を真正所有者の生体情報と照合するIC3と、IC3による照合結果を表示する表示部5と、光に反応して発電し、バイオメトリクスセンサ4、IC3、および表示部5に電力を供給する光発電装置6と、リーダ2との間でデータの送受信を行うアンテナ7とを備えている。
【0013】
バイオメトリクスセンサ4は、利用者一人一人に固有な生体情報(バイオメトリクス)を画像データとして検出するセンサである。生体情報としては、指紋あるいは手のひらや指の静脈パターンなどを用いることができる。
【0014】
IC3は、真正所有者の生体情報を記録・保存しておくメモリー機能と、バイオメトリクスセンサ4により検出された生体情報を真正所有者の生体情報と照合する演算処理機能とを備えている。生体情報の照合は、バイオメトリクスセンサ4により検出された生体情報から特徴データを抽出し、幾何学的特徴マッチング方式やパターン・マッチング方式などの照合アルゴリズムを用いて、記録・保存された登録データとの一致度を調べ、真正所有者かどうか判定するプロセスからなる。
【0015】
表示部5は、IC3による照合結果を表示したり、リーダ2との通信ができなかった場合のエラー内容の確認など、利用者が状況を把握するためのものであり、LED、液晶、電子ペーパーなどからなる薄型の表示装置が利用される。
【0016】
光発電装置6は、太陽光や照明光などの光に反応して発電する装置であり、バイオメトリクスセンサ4、IC3、および表示部5に電力を供給する。そのため、地下の施設や夜間など光環境が不充分な場合を考慮し、リーダ2側に光発電に必要な照明器具を設置しておく場合もある。
また、光発電装置6は、特定波長の光のみに反応して発電するようにしてもよい。これにより、特定波長の照明光に反応しないICカード1を偽造ICカードとして見分けることができるので、セキュリティチェックが二重となり、より安全なシステムとなる。
【0017】
次に、上記構成からなるICカード1の動作について説明する。
ICカード1側では、光発電装置6により、バイオメトリクスセンサ4、IC3、および表示部5に電力が供給される。バイオメトリクスセンサ4により、 ICカード1 を持っている利用者の指などから当該利用者 の生体情報を検出する。
次いで、 IC3において、バイオメトリクスセンサ4により検出された利用者の生体情報が、当該 IC3に記録されている真正所有者の生体情報と照合される。照合結果は、 ICカード1の表示部5に表示される。
これに対して、利用者がICカード1をリーダ2にかざすと、リーダ2は、アンテナ8、7を介してICカード1に認証開始信号を送信する。ICカード1では、バイオメトリクスセンサ4による照合結果に基づき、IC3の情報をアンテナ7を介してリーダ2のアンテナ8に送信するか否かを判断する。なお、照合不能や通信不能など何らかのエラーが発生した場合には、 ICカード1の表示部5に表示される。
リーダ2側では、送信情報に基づき、通行許可等の動作が行われる。
【0018】
本実施形態によるICカード1では、 ICカード1に記録されている真正所有者の生体情報に基づいて ICカード1側で個人認証を行うため、大量の個人データが登録されているサーバーとの間でデータのやりとりを行う必要がなく、セキュリティレベルが高く、認証に要する時間も大幅に短縮することが可能となる。また、利用者も、 ICカード1に備えられている表示機能により照合結果を確認することができる。そのため、交通機関の自動改札や建物の入退館など、大人数が集中する施設に特に有効である。
また、本実施形態によるICカード1では、電力源として光発電装置6を用いているため、ICカードの利便性が向上するとともに、電力コストを削減することができる。
【0019】
次に、ICカードとICカードケースから構成されるICカードシステムについて説明する。
図2は、本発明に係るICカードシステムの一例を示す図である。また、図3は、当該ICカードシステムの構成図である。
本発明に係るICカードシステム30では、ICカード10をICカードケース20に格納した状態で使用する。
【0020】
ICカード10は、真正所有者の生体情報を記録するとともに、ICカードケース20に備えられたバイオメトリクスセンサ24により検出された利用者の生体情報を真正所有者の生体情報と照合するIC13と、リーダ2との間でデータの送受信を行うアンテナ17と、ICカードケース20に備えられたケース接続部21に接続するためのカード接続部11とを備えている。
【0021】
一方、ICカードケース20は、利用者 の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサ24と、ICカード10に備えられたIC13による照合結果を表示する表示部25と、光に反応して発電し、バイオメトリクスセンサ24、表示部25、およびIC13に電力を供給する光発電装置26と、ICカード10に備えられたカード接続部11に接続するためのケース接続部21とを備えている。
【0022】
次に、上記構成からなるICカードシステム30の動作について説明する。
ICカードシステム30側では、光発電装置26により、バイオメトリクスセンサ24、IC13、および表示部25に電力が供給される。この際、IC13には、ケース接続部21およびカード接続部11を介して電力が供給される。
バイオメトリクスセンサ24により、 ICカードシステム30 を持っている利用者の指などから利用者 の生体情報を検出し、当該利用者 の生体情報はケース接続部21およびカード接続部11を介して IC13に伝送される。
次いで、 IC13において、バイオメトリクスセンサ24により検出された利用者の生体情報が、当該 IC13に記録されている真正所有者の生体情報と照合される。照合結果は、カード接続部11およびケース接続部21を介して ICカードケース20の表示部25に表示される。
これに対して、利用者がICカードケース20に格納されたICカード10をリーダ2にかざすと、リーダ2は、アンテナ8、17を介してICカード10に認証開始信号を送信する。ICカード10では、バイオメトリクスセンサ24による照合結果に基づき、IC13の情報をアンテナ17を介してリーダ2のアンテナ8に送信するか否かを判断する。なお、照合不能や通信不能など何らかのエラーが発生した場合には、 ICカードケース20の表示部25に表示される。
リーダ2側では、照合結果に基づき、通行許可等の動作が行われる。
【0023】
本実施形態によるICカードシステム30では、バイオメトリクスセンサ機能と表示機能と光発電機能をICカードケース20にもたせることにより、ICカード10を薄くしてコンパクトなものとすることができる。
【0024】
以上、本発明に係るICカードおよびICカードケースについて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、ICカードは非接触式としているが、接触式でもよく、この場合はアンテナに代えて端子を設ければよい。要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るICカードの構成図である。
【図2】本発明に係るICカードシステムの一例を示し、(a)は側断面、(b)は表面、(c)は裏面である。
【図3】本発明に係るICカードシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1、10 ICカード
2 リーダ
3、13 IC
4、24 バイオメトリクスセンサ
5、25 表示部
6、26 光発電装置
7、8、17 アンテナ
11 カード接続部
21 ケース接続部
20 ICカードケース
30 ICカードシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサと、真正所有者の生体情報を記録し、前記バイオメトリクスセンサにより検出された前記利用者の生体情報を前記真正所有者の生体情報と照合するICと、前記ICによる照合結果を表示する表示部と、光に反応して発電し、前記バイオメトリクスセンサ、前記IC、および前記表示部に電力を供給する光発電装置と、リーダとの間でデータの送受信を行うアンテナとを備えることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記光発電装置は、特定波長の光に反応して発電することを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
真正所有者の生体情報を記録するとともに、後記バイオメトリクスセンサにより検出された利用者の生体情報を前記真正所有者の生体情報と照合するICと、リーダとの間でデータの送受信を行うアンテナと、後記ICカードケースに備えられたケース接続部に接続するためのカード接続部とを有するICカードと、
利用者の生体情報を検出するバイオメトリクスセンサと、前記ICによる照合結果を表示する表示部と、光に反応して発電し、前記バイオメトリクスセンサ、前記表示部、および前記ICに電力を供給する光発電装置と、前記ICカードに備えられたカード接続部に接続するためのケース接続部とを有し、前記ICカードを格納するICカードケースとを備えることを特徴とするICカードシステム。
【請求項4】
前記光発電装置は、特定波長の光に反応して発電することを特徴とする請求項3に記載のICカードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−309537(P2006−309537A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131865(P2005−131865)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】