説明

IL−4/IL−13特異的ポリペプチドおよびその治療上の使用

インターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−13(IL−13)に関連する状態または疾患を処置する方法において治療上有用である、IL−4およびIL−13に結合し得るポリペプチドおよび多量体ポリペプチド。本発明は、インターロイキン−4(IL−4)およびIL−13結合融合ポリペプチド(R1)−(R2)−Fをコードする核酸分子に特徴を有する。このポリペプチドにおいて、R1は、特異的にIL−4活性を阻害し得る改変IL−4レセプターα(IL−4Rα)構成要素であり、R2は、特異的にIL−13活性を阻害し得るIL−13レセプターα1またはIL−13レセプターα2(IL−13Rα1またはIL−13Rα2)であり、Fは、融合構成要素であり、そしてxおよびyは、各々独立して、1以上の正の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、IL−4/IL−13特異的ポリペプチド、ならびにIL−4活性および/またはIL−13活性を阻害するための、このようなポリペプチドの治療上の使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
特許文献1において、Stahlらは、サイトカインを結合して、2つのレセプター構成要素および多量体化構成要素から構成される非機能的複合体を形成し得るサイトカイン融合タンパク質融合ポリペプチドを記載する。インターロイキン−4レセプターα(IL−4Rα)およびIL−13レセプターα構成要素(IL−13Rα)は、記載されている(例えば、特許文献2および特許文献3ならびに特許文献4)。
【特許文献1】米国特許第6,472,179号明細書
【特許文献2】米国特許第5,856,296号明細書
【特許文献3】米国特許第5,840,869号明細書
【特許文献4】欧州特許第876482号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
第一の局面において、本発明は、インターロイキン−4(IL−4)およびIL−13結合融合ポリペプチド(R1)−(R2)−Fをコードする核酸分子に特徴を有する。
このポリペプチドにおいて、
R1は、この融合ポリペプチドにおける構成要素として存在する場合に、少なくとも10−10モル濃度のIC50で特異的にIL−4活性を阻害し得る改変IL−4レセプターα(IL−4Rα)構成要素であり、
R2は、この融合ポリペプチドにおける構成要素として存在する場合に、少なくとも10−10モル濃度のIC50で特異的にIL−13活性を阻害し得るIL−13レセプターα1またはIL−13レセプターα2(IL−13Rα1またはIL−13Rα2)であり、
Fは、融合構成要素であり、そして
xおよびyは、各々独立して、1以上の正の整数である。この融合ポリペプチドの構成要素は、異なる順番(例えば、F−(R1)(R2)、(R1)−F−(R2)または(R2)−F−(R1))で配置され得る。より具体的には、R1は、配列番号2のアミノ酸1〜231、24〜231、28〜231または24〜221(配列番号1の核酸配列によりコードされる)を含む親IL−4Rαまたはその対立遺伝子改変体に由来し、改変群Iで規定される1〜10個の改変により改変される。そしてR2は、配列番号3のアミノ酸1〜343または27〜343を含むIL−13レセプターα(IL−13Rα1またはIL−13Rα2)構成要素またはそのフラグメントであり、必要に応じて、改変群IIで規定される1つ以上の改変により改変される。あるいはR2は、配列番号4のアミノ酸1〜343または23〜343を含むIL−13レセプターα(IL−13Rα1またはIL−13Rα2)構成要素であり、必要に応じて、改変群IIIで規定される1つ以上の改変により改変される。必要に応じて、(R1)−(R2)−Fは、シグナル配列(SS)をさらに含む。一実施形態において、この融合ポリペプチドのR1構成要素は改変され、改変されていない構成要素と比較して、増加したIL−4阻害活性または低下したIL−4阻害活性および/または増加したIL−13阻害活性または低下したIL−13阻害活性を示す。好ましくは、R1への改変は、IL−4阻害とIL−13阻害との両方を増加させる。
【0004】
R1:天然に存在する野生型IL−4Rαタンパク質は、配列番号2に示される細胞外ドメインを有する800アミノ酸のタンパク質である。配列番号2の公知の対立遺伝子改変体としては、位置75におけるPhe、ValまたはLeu(Ile75Phe/Val/Leu)および/またはVal131Leuが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、R1は、配列番号2のアミノ酸24〜231またはその対立遺伝子改変体を含み、必要に応じて、改変群Iで規定される1つ以上の改変によりさらに改変される。別の実施形態において、R1は、配列番号2のアミノ酸1〜231またはその対立遺伝子改変体であり、改変群Iに列挙される改変から選択される少なくとも1つの改変を有する。これらの改変は、特に所望される特性(例えば、改善された溶解性、低減された免疫原性、改善されたPK、改善された生成特徴、および/または改変されたIL−4活性および/またはIL−13活性をブロックする能力などが挙げられる)を有する新規ポリペプチドを提供する。
【0005】
改変群I:配列番号2の位置67、68、71、152、164、171、172、175、198および/または207のアミノ酸は、異なるアミノ酸に置換される。好ましい実施形態において、このアミノ酸置換は、以下の通りである:位置67のLeuは、Tyrに置換される(Leu67Tyr);Leu68Asn(疎水性のパッチを除去し得、そして特定の状況において溶解性ならびに/またはIL−4および/もしくはIL−13をブロックする能力を改善するのに、望ましくあり得る);Asp171Tyr/Phe;Phe172Ser(酸性の電位を中和し得、そして疎水性のパッチの大きさを縮小する。それゆえ、改善された溶解性および/またはこの融合ポリペプチドの折りたたみのために望ましくあり得る);Tyr152Phe(リガンド結合部位のアミノ酸を変更し、それゆえ、IL−13および/またはIL−4に対する阻害活性を改善するのに望ましくあり得る);Arg198Ser(正に荷電したパッチを除去し、それゆえ精製特性を改善するのに望ましくあり得る);およびCys207Ser(異常なジスルフィド結合の形成を減少させ、それゆえ共有結合性の凝集および/または不適当なジスルフィド結合を減少するのに望ましくあり得る)。グリコシル化部位の付加をもたらす改変としては、Ala71AsnおよびTrp164Serが挙げられる。いくつかの実施形態において、1箇所以上のグリコシル化部位の付加は、さらなるグリコシル化部位のない同一のタンパク質と比較して免疫原性を低減するか、または溶解性もしくはインビボ安定性を増大するのに望ましい。好ましい実施形態において、R1は、Cys207Serを有する配列番号2の1〜231を含み、位置67、68、152、171および172の1つ以上における変化によりさらに改変される。好ましい実施形態において、R1は、(i)67、68および207における改変;(ii)67、68、152および207における改変;(iii)152および207における改変;(iv)67、171、172および207における改変;(v)68、171、172および207における改変;(vi)67、68、171および207における改変;(vii)67、68、172および207における改変;(viii)152、171、172および207における改変;(ix)67、68、171、172および207における改変;(x)67、68、152、171、172および207における改変;(xi)171、172および207における改変を含む。さらに好ましい実施形態において、R1は、Cys207Serと、(i)Leu67Tyr+Leu68Asn、(ii)Tyr152Phe、(iii)Asp171Tyr/Phe+Phe172Ser、(iv)Leu67Tyr+Leu68Asn+Tyr152Phe、(v)Tyr152Phe+Asp171Tyr/Phe+Phe172Ser、(vi)Leu67Tyr+Leu68Asn+Asp171Tyr/Phe+Phe172Ser、(vii)Tyr152Phe+Leu67Tyr+Leu68Asn+Asp171Tyr/Phe+Phe172Serからなる群から選択される改変とを含む。
【0006】
R2:天然に存在するヒト野生型IL−13Rα1タンパク質は、427アミノ酸のタンパク質であり、配列番号3の配列を有し、343アミノ酸の細胞外ドメインを含む。一実施形態において、R2は、配列番号3のアミノ酸1〜343または27〜343を含むIL−13結合ポリペプチド構成要素であり、必要に応じて、改変群IIで規定される1以上の改変により改変される。別の実施形態において、R2は、配列番号4のアミノ酸1〜343または23〜343を含むIL−13結合ポリペプチド構成要素であり、改変群IIIで規定される1つ以上の改変により必要に応じて改変される。
【0007】
改変群II:(a)配列番号3のアミノ酸1〜120は、ヒトgp130(配列番号5)のアミノ酸1〜123に置換される;(b)配列番号3のアミノ酸338〜343は欠失させられる;(c)配列番号3のアミノ酸1〜26は、異なるシグナル配列(例えば、配列番号6)に置換されるか;または(d)配列番号3の位置46、73、143、235、293および/または329のアミノ酸の1つ以上が、異なるアミノ酸に置換される。より特定の実施形態において、好ましい置換は、以下の通りである:Ala、GlyまたはTyrのいずれか一つ(好ましくは、Ala)による(配列番号3の)位置46におけるCys(Cys46Ala/Gly/Tyr)(特定の実施形態において、異常なジスルフィド形成および共有結合性の凝集を減少するのに望ましくあり得る);Lys73Gln;Lys73Gln(強く正に荷電したパッチを除去し、そして特定の実施形態において凝集を減少および/または溶解性を増大するのに望ましくあり得る)。R2は、完全にはグリコシル化されない部位を除去するために、1箇所以上のグリコシル化部位において、さらに改変され得る。そしてR2は、薬物動態および/または生成の一貫性を改善するのに望ましくあり得る:Asn235Ser/His、Asn293Gly、Asn329Asp。
【0008】
改変群III:(a’)配列番号4のアミノ酸1〜22は欠失させられる。特定の実施形態において、これは、欠失したアミノ酸を、例えば配列番号6のようなシグナル配列に置換して、それにより異常なジスルフィド結合形成を除去するために、Cys22を除去するのに望ましくあり得る、;(b’)配列番号4のCys252Ile;(c’)配列番号4の位置310における変更されるアミノ酸。特定の実施形態において、Ser310は、Cysに置換される(これは、タンパク質の三次構造を安定化させるのに望ましくあり得る)。
【0009】
任意の融合構成要素(F)は、融合ポリペプチドの機能性を亢進させる任意の構成要素である。それゆえ、例えば、融合構成要素は、融合ポリペプチドの生物活性を亢進させ得るか、その生成および/または回収において補助し得るか、または融合ポリペプチドの薬理学的な特性もしくは薬物動態プロフィールを(例えば、その血清半減期、組織浸透性、免疫原性の欠如または安定性を亢進させることにより)亢進させ得る。好ましい実施形態において、この融合構成要素は、多量体化構成要素、血清タンパク質または血清タンパク質に結合可能な分子からなる群から選択される。
【0010】
融合構成要素が多量体化構成要素である場合、融合構成要素としては、別の多量体化構成要素と相互作用し、高次構造(例えば、二量体、三量体など)を形成し得る、任意の天然配列または合成配列が挙げられる。特定の実施形態において、多量体化構成要素は、以下からなる群から選択される:(i)免疫グロブリン由来のドメイン、(ii)切断可能な領域(C領域)、(ii)必要に応じて少なくとも1つのシステイン残基を含む、長さ1アミノ酸〜約500アミノ酸の間のアミノ酸配列、(iii)ロイシンジッパー、(iv)ヘリックスループモチーフ、および(v)コイル−コイルモチーフ。より特定の実施形態において、免疫グロブリン由来のドメインは、IgGのFcドメインまたはIgGの重鎖からなる群から選択される。最も特定的な実施形態において、IgGのFcドメインは、ヒトFcΔ1(a)(軽鎖とのジスルフィド結合の形成に関わる領域の欠失を有するFc分子)である。
【0011】
融合構成要素が血清タンパク質である場合、血清タンパク質は、任意の血清タンパク質または血清タンパク質のフラグメント(例えば、α−1−ミクログロブリン、AGP−1、アルブミン、ビタミンD結合タンパク質、ヘモペキシン、アファミン(afamin)、ハプトグロビン)であり得る。融合構成要素が血清タンパク質に結合可能な分子である場合、この血清タンパク質に結合可能な分子は、小分子、核酸、ペプチドまたはオリゴ糖であり得る。血清タンパク質に結合可能な分子はまた、FcγR1、ScFvなどのようなタンパク質でもあり得る。好ましい実施形態において、融合構成要素は、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸によりコードされる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、例えば融合構成要素がオリゴ糖である場合、この融合構成要素は、発現された融合ポリペプチドへ翻訳後に結合される。
【0012】
本発明の核酸分子は、必要に応じてさらに、シグナル配列(SS)構成要素を含み得る。SSがポリペプチドの一部である場合、当該分野において公知の任意のSSが使用され得る。このSSとしては、任意の供給源(例えば、分泌性タンパク質または膜結合タンパク質)由来の合成配列または天然配列が挙げられる。好ましい一実施形態において、RORシグナル配列が使用される(配列番号6)。
【0013】
関連する第二の局面において、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターに特徴を有する。さらなる第三の局面および第四の局面において、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター(発現制御配列へ作動可能に連結された核酸分子を含む発現ベクターが挙げられる)と適切な宿主細胞中にこの発現ベクターを含む、融合ポリペプチドの生成のための宿主−ベクター系とを包含する。この宿主−ベクター系において、適切な宿主細胞は、限定せずに、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞あるいはタバコのような植物または動物(例えば、ウシ、マウスまたはウサギ)である。適切な細胞の例としては、E.coli、B.subtilis、BHK細胞、COS細胞およびCHO細胞が挙げられる。加えて、アセチル化またはPEG化により修飾される本発明の融合ポリペプチドが包含される。
【0014】
関連する第五の局面において、本発明は、本発明の融合ポリペプチドを生成する方法に特徴を有する。この方法は、本発明の核酸分子を含むベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞を、この宿主細胞からのタンパク質の発現に適切な条件下で培養する工程、およびこのように生成されるポリペプチドを回収する工程を包含する。
【0015】
第六の局面、第七の局面および第八の局面において、本発明は、IL−4およびIL−13融合ポリペプチドに特徴を有する。この融合ポリペプチドは、(R1)−(R2)−Fを含み、ここでR1、R2、F、xおよびyは、上記で規定されるようなものである。好ましい実施形態において、xおよびyは、1〜3であり、より好ましくは、xおよびyは、それぞれ1である。
【0016】
第九の局面において、本発明は、多量体ポリペプチドに特徴を有する。この多量体ポリペプチドは、2つ以上の本発明の融合ポリペプチドを含む。より特定の実施形態において、この多量体ポリペプチドは、二量体である。本発明の二量体IL−4/13特異的融合ポリペプチドは、当該分野において公知のアッセイ方法により決定されるよう、少なくとも10−10モル濃度のIC50でIL−4およびIL−13の両方を阻害し得る。IC50は、例えば、下記のTF1バイオアッセイにより決定され得る。一般的に、hIL−4およびhIL−13の生物活性を阻害する(例えば、ブロックする)二量体IL−4/13融合ポリペプチドの能力は、例えば、遊離リガンドおよび/または結合リガンドについてのバイオアッセイまたはELISAにより測定され得る。バイオアッセイとしては、STAT6プロモーターエレメントを使用するルシフェラーゼベースのアッセイおよび/または読み出し(例えば、増殖またはsCD23分泌)を伴うTF1のような細胞株もしくはヒト末梢血細胞のhIL−4刺激もしくはhIL−13刺激が挙げられ得る。本発明の二量体IL−4/13ポリペプチドの異なる実施形態においては、R1構成要素が改変されて、hIL−4活性および/またはhIL−13活性をブロックする能力の増加または低下を示し、ならびに/あるいはR2構成要素が改変されて、IL−4活性および/またはIL−13活性をブロックする能力の増加または低下を示す。
【0017】
第十の局面において、本発明は、薬学的組成物に特徴を有する。この薬学的組成物は、本発明の融合ポリペプチドと薬学的に受容可能なキャリアとを含む。このような薬学的組成物は、単量体ポリペプチドもしくは多量体ポリペプチド、またはこの融合ポリペプチドをコードする核酸を含み得る。
【0018】
本発明のIL−4/13特異的ポリペプチドは、IL−4および/またはIL−13の除去、阻害または低減により改善されるか、回復されるか、または阻害される任意の疾患または状態を処置するために治療上有用である。これらのポリペプチドは、IL−4およびIL−13の除去、阻害または低減により改善されるか、回復されるか、または阻害される状態(例えば、喘息)の処置のために特に有用である。したがって、さらなる局面において、本発明は、IL−4および/またはIL−13に関連する疾患または状態の処置のための治療方法に特徴を有する。この方法は、本発明の融合ポリペプチドを、IL−4および/またはIL−13に関連する疾患または状態に罹患する被験体に投与する工程を包含する。あらゆる哺乳動物が、本発明の治療方法により処置され得るが、この被験体は、好ましくは、本発明の融合ポリペプチドにより改善され得るか、回復され得るか、阻害され得るか、または処置され得る状態または疾患に罹患するか、または罹患する危険のあるヒト患者である。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、診断方法および予後診断方法、ならびに本発明の融合ポリペプチドによりIL−4および/またはIL−13を検出、定量化、および/またはモニタリングするためのキットにさらに特徴づける。
【0020】
他の目的および利点が、次の詳細な説明を検討することから明白となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本方法が説明される前に、本発明が特定の方法および記載される実験条件に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、このような方法および条件は変化し得るからである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記述する目的のみのためのものであり、限定することを意図されないこともまた理解される。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が他を明白に指示しない限り、複数形の言及を含む。それゆえ、例えば、「方法(a method)」への言及は、1つ以上の方法、ならびに/または本明細書に記載されるおよび/もしくは、本開示を読むことにより当業者に明白となる工程の型などを含む。
【0023】
他で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術における当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書で記載される方法および材料と類似するか、または等価である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が、ここで記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、この刊行物が引用される方法および/または材料と関連する方法および/または材料を記述するために、本明細書において参考として援用される。
【0024】
(定義)
用語IL−4および/またはIL−13「に対する親和性」は、当該分野において公知のアッセイ方法(例えば、BiaCore分析)により決定されるように、本発明の融合ポリペプチドが、少なくとも10−10モル濃度(好ましくは、少なくとも10−11モル濃度)の親和性で、意図されるサイトカインに結合することを意味する。用語IL−4および/またはIL−13を「特異的にブロックし得る」あるいはIL−4および/またはIL−13の「活性を阻害し得る」は、例えば、遊離リガンドおよび/または結合リガンドについてのバイオアッセイまたはELISAにより測定されるように、本発明のIL−4/13融合ポリペプチドが、標的サイトカインの生物活性を阻害することを意味する。バイオアッセイとしては、STAT6プロモーターエレメントを使用するルシフェラーゼベースのアッセイおよび/または読み出し(例えば、増殖またはsCD23分泌)を伴うTF1のような細胞株もしくはヒト末梢血細胞のIL−4刺激もしくはIL−13刺激が挙げられ得る。「IC50」は、バイオアッセイにより測定されるIL−4またはIL−13への応答の50%を阻害するのに必要とされる、融合タンパク質の濃度として定義される。本発明の融合ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも1×10−10M(さらにより好ましくは、10−11M(IL−13に対して))のIC50で、IL−4および/またはIL−13の生物活性を阻害し得る。
【0025】
用語「処置」および「処置する」などは、本明細書で使用され、望ましい薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを一般的に意味する。効果は、疾患、状態もしくはそれらの症状を完全にか、もしくは部分的に防止することに関して予防的であり得、ならびに/または、疾患、状態もしくはそれらの症状に対する部分的治癒もしくは完全な治癒に関して治療的であり得、ならびに/または、効果は、この疾患または状態に起因する有害な効果であり得る。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物(特に、ヒト)の疾患または状態の、任意の処置を網羅する。そして「処置」としては、(a)疾患または状態の素因を有し得るが、それを保有しているとはまだ診断されていない被験体におけるこの疾患または状態の発症を防ぐこと;(b)この疾患または状態を阻害すること(すなわち、その発症を阻止すること);または(c)この疾患または状態を軽減すること(すなわち、この疾患または状態の退行させること)が挙げられる。本発明の方法により処置される被験体の集団としては、望ましくない状態または疾患に罹患する被験体、ならびに状態または疾患の発症の危険のある被験体が挙げられる。
【0026】
用語「治療上の有効用量」により、投与されるものに対する望ましい効果を生じる用量が意味される。正確な用量は、処置の目的に依存し、かつ公知の技術を使用して、当業者により確認可能である(例えば、Lloyd(1999)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照のこと)。
【0027】
本明細書で使用される場合、「状態または疾患」は、一般的に、哺乳動物宿主(特に、ヒト宿主)にとって望ましくない、および/またはその宿主に有害な、その宿主の状態を包含する。それゆえ、IL−4/13特異的融合ポリペプチドにより状態または障害を処置することは、哺乳動物(特に、ヒト)の処置を包含する。この哺乳動物は、増大されたIL−4および/もしくはIL−13または有害なIL−4および/もしくはIL−13を反映する症状を有するか、あるいは疾患、状態または処置レジメンに応答してこのような低下した活性化を有することが予想される。IL−4および/もしくはIL−13関連状態または疾患を処置することは、ヒト被験体の処置を包含する。この処置において、本発明の融合ポリペプチドによるIL−4および/またはIL−13レベルの低下は、IL−4および/もしくはIL−13関連状態またはIL−4および/もしくはIL−13関連疾患から生じる望ましくない症状の改善をもたらす。
【0028】
(一般的な説明)
IL−4とIL−13とを欠損する動物における研究は、これらのサイトカインが、Th2様応答(例えば、好酸球の浸潤、免疫グロブリンEの産生およびIL−5の産生)の誘導において、重複する役割および追加的な役割の両方を担うことを示した(McKenzieら(1999)J.Exp.Med.189(10):1565〜72)。本発明は、IL−4および/またはIL−13特異的融合ポリペプチドあるいはIL−4および/またはIL−13に結合し得、かつこれらの生物学的作用をブロックし得るアンタゴニストとして作用し得る新規ポリペプチド(単量体および多量体の両方)を提供する。
【0029】
(核酸の構築物および核酸の発現)
本発明は、IL−4/13特異的ポリペプチドをコードする核酸分子の構築を提供する。先に記載されるように、本発明の核酸分子は、野生型(または、天然に存在する)ヒトIL−4Rαタンパク質および/またはヒトIL−13Rαタンパク質の改変フラグメントをコードする。したがって、この核酸分子は、それらは天然に見出される核酸分子ではない(例えば、天然に存在する配列ではないが、組換えDNA技術により構築される配列である)ので、「組み換え型」、「人工」または「合成」と称され得る。
【0030】
これらの核酸分子は、適切な宿主細胞に導入される場合に、本発明の融合ポリペプチドを発現し得るベクターに挿入される。適切な宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターへのDNAフラグメントの挿入のための、当業者にとって公知の任意の方法が、転写制御シグナルおよび/または翻訳制御シグナルの制御下で本発明の融合ポリペプチドをコードする発現ベクターを構築するために使用され得る。
【0031】
本発明の核酸分子の発現は、この分子が組換えDNA分子により形質転換された宿主において発現されるように、第二の核酸配列により調節され得る。例えば、発現は、当該分野において公知である、任意のプロモーター/エンハンサーエレメントにより制御され得る。キメラポリペプチド分子の発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:長い末端反復配列(long terminal repeat)(Squintoら(1991)Cell 65:1〜20);SV40早期プロモーター領域、CMV、M−MuLV、チミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン(metallothionine)遺伝子の調節配列;原核生物の発現ベクター(例えば、β−ラクタマーゼプロモーターまたはtacプロモーター)(Scientific American(1980)242:74〜94もまた参照のこと);酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント(例えば、Gal4プロモーター、ADH、PGK、アルカリホスファターゼ)およびエラスターゼIのような遺伝子に由来する組織特異的転写制御領域。
【0032】
本発明の核酸分子を含み、細菌宿主または真核生物宿主において複製され得る発現ベクターは、宿主をトランフェクトし、それにより本発明の融合ポリペプチドを生成するような核酸の発現を導くために使用される。トランフェクトされた細胞は、一過性にか、または、好ましくは、恒常的かつ持続的に、本発明のポリペプチドを発現する。このように発現されるポリペプチドが、融合構成要素(例えば、第二のポリペプチドの多量体化構成要素と会合し得る多量体化構成要素)を含む場合、このように発現される単量体は、多量体化構成要素間の相互作用によって多量体化して、多量体ポリペプチドを形成する(WO00/18932)。
【0033】
本発明の融合ポリペプチドは、当該分野において公知の任意の技術により精製され得る。本発明のポリペプチドが、多量体化構成要素(自発的に別のポリペプチドとのマルチマーを形成する)を含む場合、使用される精製技術は、次の、安定的で生物学的に活性な多量体ポリペプチド(「融合ポリペプチド」としても公知である)の形成を可能にする。例えば、限定としてではないが、この因子(factor)は、可溶性タンパク質または封入体(そこから8M塩酸グアニジニウムおよび透析により適量抽出され得る)のいずれかとして、細胞から回収され得る(例えば、米国特許第5,663,304号を参照のこと)。さらにこの因子を精製するために、従来のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたはゲル濾過が使用され得る。
【0034】
(融合構成要素)
本発明の融合ポリペプチドは、特定の実施形態において、多量体化構成要素、血清タンパク質または血清タンパク質に結合可能な分子からなる群から選択される融合構成要素(F)を含む。Fが多量体化構成要素である場合、Fとしては、別の多量体化構成要素と相互作用し、高次構造(例えば、二量体、三量体など)を形成し得る、任意の天然配列または合成配列が挙げられる。多量体化構成要素は、以下からなる群から選択され得る:(i)切断可能な領域を含む多量体化構成要素、(ii)短縮型多量体化構成要素、(iii)長さ1アミノ酸〜約500アミノ酸の間のアミノ酸配列、(iv)ロイシンジッパー、(v)ヘリックスループモチーフ、および(vi)コイル−コイルモチーフ。Fが長さ1アミノ酸〜約500アミノ酸の間を含む多量体化構成要素である場合、この配列は、別の融合ポリペプチド(1つ以上のシステイン残基を有するFを含む)上の対応するシステイン残基とジスルフィド結合を形成し得る、1つ以上のシステイン残基を含み得る。
【0035】
好ましい実施形態において、この多量体化構成要素は、ヒトIgG、ヒトIgMまたはヒトIgA由来の1つ以上の免疫グロブリン由来のドメインを含む。特定の実施形態において、この免疫グロブリン由来のドメインは、IgGのFcドメインまたはIgGの重鎖からなる群から選択される。IgGのFcドメインは、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4ならびに各々のアイソタイプ群内の任意のアロタイプから選択され得る。特定の一実施形態において、Fは、共有結合性の二量体形成を安定化させるためにProに変異されたSer228(Cabot番号付け)(Mol.Immunol.(1993)30:105〜108)および/または残りのエフェクター機能を除去するLeu235→Glu(Reddyら(2000)J.Immunol.164:1925〜1933)を有するIgG4のFcドメインである。好ましい実施形態において、Fは、IgG1のFcドメイン、または特異的に所望される特性のために改変され得るIgG1のFcドメインの誘導体である(例えば、Armourら(2003)Mol.Immunol.40:585〜593;Shieldsら(2001)J.Biol.Chem.276:6591〜6604を参照のこと)。特定の実施形態において、本発明のIL−4/13特異的ポリペプチドは、1つまたは2つのIgG1のFcドメインを含む。
【0036】
一実施形態において、Fは、以下からなる群から選択される血清タンパク質またはそのフラグメントである:α−1−ミクログロブリン、AGP−1、オロソムコイド、α−1−酸性糖タンパク質、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、ヘモペキシン、ヒト血清アルブミン(hSA)、トランスフェリン、フェリチン、アファミン、ハプトグロビン、α−フェトプロテイン サイログロブリン、α−2−HS−糖タンパク質、β−2−糖タンパク質、ヒアルロン酸結合タンパク質、シンタキシン、C1R、C1q鎖、ガレクチン3−Mac2結合タンパク質、フィブリノゲン、重合体Igレセプター(PIGR)、α−2−マクログロブリン、尿素輸送タンパク質、ハプトグロビン、IGFBPs、マクロファージスカベンジャーレセプター、フィブロネクチン、ギアンチン(giantin)、Fc、α−1−抗チロモトリプシン(antichyromotrypsin)、α−1−抗トリプシン、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質B、β−2−ミクログロブリン、セルロプラスミン、補体構成要素C3またはC4、CIエラスターゼインヒビター、C反応性タンパク質、シスタチンCおよびプロテインC。より特定の実施形態において、Fは、α−1−ミクログロブリン、AGP−1、オロソムコイド、α−1−酸性糖タンパク質、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、ヘモペキシン、ヒト血清アルブミン(hSA)、アファミン、ハプトグロビンからなる群から選択される。F構成要素の含有は、所望される場合、本発明のIL−4/13特異的ポリペプチド血清半減期を延長し得る。例えば、血清アルブミン融合タンパク質の例について米国特許第6,423,512号、同第5,876,969号、同第6,593,295号および同第6,548,653号を参照のこと。
【0037】
Fが、血清タンパク質に結合可能な分子である場合、この分子は、合成小分子、脂質もしくはリポソーム、核酸(アプタマーのような合成核酸を含む)、ペプチドまたはオリゴ糖であり得る。さらに、この分子は、例えば、FcγR1、FcγR2、FcγR3、重合体Igレセプター(PIGR)、ScFvおよび血清タンパク質に特異的な他の抗体フラグメントのようなタンパク質であり得る。
【0038】
(任意の構成要素スペーサ)
本発明の融合ポリペプチドの構成要素は、直接的に互いに結合され得るか、またはスペーサを介して結合され得る。一般的に、用語「スペーサ」(またはリンカー)は、1つ以上の構成要素ドメインの間に挿入され得る1つ以上の分子(例えば、核酸もしくはアミノ酸、またはポリエチレングリコールのような非ペプチド部分)を意味する。例えば、スペーサ配列は、操作の容易さのため、構成要素間に望ましい目的の部位を提供するために使用され得る。スペーサはまた、宿主細胞からの融合タンパク質の発現を亢進させるために提供され得る。スペーサはまた、この構成要素がその最適な三次構造をとり得るように、および/またはこの構成要素が適切にその標的分子と相互作用し得るように、立体障害を減少させるために提供され得る。スペーサおよび望ましいスペーサを同定する方法については、例えば、Georgeら(2003)Protein Engineering 15:871〜879を参照のこと。スペーサ配列は、レセプター構成要素に天然的に結合される1つ以上のアミノ酸を含み得るか、または宿主細胞からの融合タンパク質の発現を亢進させるため、特に望まれる目的の部位を提供するため、構成要素ドメインに最適な三次構造を形成させること、および/または構成要素とその標的分子との相互作用を亢進させることを可能にするために使用される付加配列であり得る。一実施形態において、このスペーサは、1つ以上の構成要素間の、1〜100アミノ酸(好ましくは、1〜25アミノ酸)の間の1つ以上のペプチド配列を含む。特定の一実施形態において、このスペーサは、3アミノ酸配列であり;より詳細には、Gly Ser Glyの3アミノ酸配列である。
【0039】
(IL−4生物活性および/またはIL−13生物活性の阻害)
本発明の融合ポリペプチドは、少なくとも1×10−10M(IL−4およびIL−13の両方に対して)の;さらにより好ましくは、10−11M(IL−13に対して)のIC50(IL−4またはIL−13への応答の50%を阻害するのに必要とされる融合タンパク質の濃度)で、IL−4および/またはIL−13の生物活性を阻害し得る。下記の表1〜表7に示されるデータは、下記のようなIL−4またはIL−13により刺激される増殖についてのTF1バイオアッセイにおいて決定された。IC50を決定するのに有用な他のバイオアッセイは当該分野に公知であり、これらとしては、例えば、STAT6プロモーターエレメントを使用するルシフェラーゼベースのアッセイおよび/または読み出し(例えば、sCD23分泌)を伴うヒト末梢血細胞のhIL−4刺激もしくはhIL−13刺激が挙げられ得る。下記に示される表1〜表7におけるデータは、親分子からの倍分の差(fold difference)(親1132分子のIC50の値で割られた改変融合ポリペプチドのIC50値)として示される。下記の実験において確証されるように、改変融合ポリペプチドは、その親分子と比較して、1.5倍〜3.0倍の、またはさらに良く改善されたIL−4および/またはIL−13をブロックする能力を有し得る。特定の実施形態において、本発明の改変融合ポリペプチドは、IL−4および/またはIL−13をブロックする能力において、少なくとも2.0倍以上の改善、少なくとも2.5倍以上の改善、またはさらには少なくとも3倍以上の改善を有する。
【0040】
(治療上の使用)
本発明の融合ポリペプチドは、IL−4および/またはIL−13の除去、阻害または低減により改善されるか、回復されるか、阻害されるか、または防止される任意の疾患または状態を処置するために治療上有用である。IL−4およびIL−13の両方が、独立に、そして連帯して、Th2細胞に促進される応答により特徴づけられる種々の臨床状態(例えば、好酸球の浸潤、IgEの産生およびIL−5の産生)に関係している。したがって、この融合ポリペプチドにより、これらの応答をブロックすることは、TH2型のヘルパーT細胞の発生の増加を有する任意の疾患または状態の処置のために有用である。
【0041】
一実施形態において、IL−4/13融合ポリペプチドは、喘息を処置するために使用される。動物実験および喘息のヒトの検査より得られるデータは、アトピー性状態の重要な発動因子および喘息性の肺を代表する慢性の炎症性状態の永続因子(perpetuator)として、IL−4およびIL−13を関係付ける。IL−4およびIL−13は、喘息の表現型に関連する影響(IgE産生へのアイソタイプ転換、好酸球増加症、肥満細胞症、粘液形成、増加した血管透過性、気道の反応亢進、平滑筋過形成および上皮下線維症が挙げられる)を誘導する(Hoganら(1997)Pharmcol.Ther.74(3):259〜283;McKenzieら(2000)Pharmacol.Ther.88(2):143〜151;Wills−Karp(2001)J.Allergy Clin.Immunol..107(1):9〜18)。実際に、IL−4およびIL−13のシグナル伝達は、マウスにおいて、アレルゲンに対するIgE応答の発達のために必要とされ、そしてオボアルブミンに対する喘息応答の発達は、IL−4Ra欠損マウスにおいて弱められる。さらに、マウスの肺におけるIL−4またはIL−13のトランスジェニック発現は、マウス肺へのIL−4タンパク質またはIL−13タンパク質の直接投与で模倣し得る喘息の表現型を導く。それゆえ、IL−4とIL−13とをブロックすることは、上記のパラメーターのいくつかまたは全てにおける緩和を導くことが予想される。その上、独立にシグナルカスケードを開始し、そして喘息の表現型を誘導するIL−4またはIL−13のいずれかの能力に起因して、両方の分子を同時に阻害することは、より強力な抗喘息の有効性を生じ得る。
【0042】
IL−4および/またはIL−13の阻害または低減により改善される特定の状態の非網羅的なリストは、以下を含む:アトピー性皮膚炎、免疫複合体疾患(例えば、狼瘡、腎炎およびグレーヴズ病)、アレルギー状態、高IgE症候群、免疫欠損、特発性肺線維症、肝線維症、HIV、肺の「再構築」、COPD、潰瘍性大腸炎、癌、ホジキンリンパ腫、水疱性類天疱瘡、対宿主移植組織および移植片病(transplant and graft vs host disease)、ウイルス疾患、寄生虫性疾患、細菌性疾患ならびに真菌の感染(12/11/01に発行された米国特許第6,328,954号、Idzerda,R.J.ら 1990 J Exp.Med.171:861〜873)。
【0043】
代替的な実施形態において、融合ポリペプチドは、しばしばIgアイソタイプにおける変化ならびにCTL(細胞障害性Tリンパ球)応答を伴う細胞媒介性免疫の一つへの免疫応答を促進するワクチンと共にアジュバントとして使用される。CTLは本来、ウイルスに感染した細胞または細胞内細菌に感染した細胞および腫瘍細胞の破壊を補助するCD8陽性T細胞である。
【0044】
(処置のために適切な被験体)
処置のために適切な被験体は、IL−4および/またはIL−13の阻害または低減により改善される特定の状態に罹患すると診断されるヒトである。この特定の状態としては、アトピー性皮膚炎、免疫複合体疾患(例えば、狼瘡、腎炎およびグレーヴズ病)、アレルギー状態、高IgE症候群、免疫欠損、特発性肺線維症、肝線維症、HIV、肺の「再構築」、COPD、潰瘍性大腸炎、癌、ホジキンリンパ腫、水疱性類天疱瘡、対宿主移植組織および移植片病、ウイルス疾患、寄生虫性疾患、細菌性疾患ならびに真菌の感染が挙げられる。
【0045】
(併用治療)
多数の実施形態において、本発明の融合ポリペプチドは、1つ以上のさらなる化合物または治療と組み合わせて投与され得る。組み合わせとしては、短時間作用性の吸入β2アゴニスト、経口β2アゴニスト、吸入抗コリン作用剤、経口コルチコステロイド、吸入コルチコステロイド、クロモリンナトリウム(GastrocromTM/Celltech)、ネドクロミル、長時間作用性β2アゴニスト、ロイコトリエン修飾因子、テオフィリン、カルシニューリン(calcinerin)インヒビター、ピクロリムス(picrolimus)、シロリムス、抗IgE(ZolairTM、Genentech)、NFKBインヒビター、p38MAPキナーゼインヒビター(VX−702)、ICEインヒビター(VX−765)、IL−1インヒビター(IL−1特異的融合ポリペプチド、Regeneron;アナキンラ、Amgen)、TNFaインヒビター(RemicadeTM、Centocor;EnbrelTM、Amgen;HumiraTM、Abbott)、IL−5インヒビター、IL−18インヒビター、IFNγインヒビター、IFNαブロッカーが挙げられる。例えば、複数の融合ポリペプチドが、共に投与され得るか、または1つ以上のポリペプチドが、1つ以上の治療化合物と共に投与され得る。本発明のポリペプチドがIL−4および/またはIL−13を除去する場合、1つ以上のその他の治療剤は、IL−4および/またはIL−13の存在に関連する状態を防止するか、または処置するために使用される治療剤である。本発明の融合ポリペプチドと第二の治療剤との併用の利益は、いずれかの治療剤の効能の改善および/または毒性の減少を提供することである。
【0046】
(投与方法)
本発明は、有効量の本発明の融合ポリペプチドを被験体に投与する工程を包含する処置方法を提供する。好ましい局面において、この融合ポリペプチドは、実質的に精製されている(例えば、その効果を制限するか、または望まれない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。この被験体は、好ましくは哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒトである。
【0047】
種々の送達系が公知であり、そして本発明の薬剤を投与するために使用され得る(例えば、リポソーム中における封入、微小粒子、マイクロカプセル、この化合物を発現し得る組換え体、レセプター媒介性エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432を参照のこと)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての核酸の構築など)。導入方法は、経腸的か、または非経口的であり得、そして導入方法としては、皮内経路、筋内経路、関節内経路、注入ポリペプチドエリトニール(polypeptideeritoneal)経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、眼内経路および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。この化合物は、任意の簡便な経路(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮内層または粘膜皮膚内層(例えば、口内粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)により投与され得、そして他の生物学的に活性な因子と共に投与され得る。投与は、全身性か、または局所性であり得る。投与は、急性的か、または慢性的(例えば、毎日、毎週、毎月など)であり得るか、あるいは他の因子と組み合され得る。肺の投与もまた、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む処方物の使用により利用され得る。
【0048】
別の実施形態において、この活性薬剤は、制御放出系内またはポンプ内のベシクル(特に、リポソーム)中において送達され得る。本発明の活性薬剤がタンパク質をコードする核酸である別の実施形態において、この核酸は、以下により、そのコードされるタンパク質の発現を促進するためにインビボ投与され得る:適切な核酸発現ベクターの一部としてこの核酸を構築し、そしてこの核酸が、例えば、レトロウイルスベクターの使用(例えば、米国特許第4,980,286号を参照のこと)によってか、直接注射によってか、もしくは微粒子砲撃(microparticle bombardment)の使用によって細胞内になるように、この核酸を投与するか、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、あるいは核内に入ることが公知であるホメオボックス様ペプチドへ連結した状態でこの核酸を投与することによってなど(例えば、Joliotら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1861〜1868を参照のこと)。あるいは、核酸は、細胞内に導入され得、発現のために、相同組換えにより宿主細胞DNAに取り込まれ得る。全身性発現もまた、プラスミド注射(皮内にか、または筋内に)および細胞へのエレクトロポレーションにより達成され得る。
【0049】
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物を処置の必要のある領域に局所的に投与することが望ましい;このことは、例えば(限定の目的ではなく)、手術中の局所注入、(局所(topical)適用(例えば、注射によってか、カテーテルによってか、または移植物によって))により達成され得る。この移植物は、多孔性材料、非多孔性材料またはゼラチン状材料(シラスティック(sialastic)膜のような膜、ファイバーまたは市販の皮膚代用物が挙げられる)で作られる。
【0050】
本発明の方法を実施することにおいて有用な組成物は、本発明の薬剤を、溶液中、懸濁物中、またはその両方の中に含む液体であり得る。用語「溶液/懸濁物」は、活性薬剤の第一の部分は溶液中に存在し、活性薬剤の第二の部分は粒子状の形態(液体マトリックス中の懸濁物)で存在する液体の組成物をいう。液体の組成物としてはまた、ゲルが挙げられる。液体の組成物は、水性であり得るか、または軟膏の形態であり得る。
【0051】
一実施形態において、本発明の薬学的組成物は、徐放性組成物である。生物学的に活性なペプチドの送達のための徐放性処方物は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第6,740,634号は、生物学的に活性な物質のヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphtoic acid)塩と生分解性ポリマーとを含む徐放性処方物を記載する。米国特許第6,699,500号は、少なくとも5ヶ月の期間にわたって生理学的に活性な物質を放出し得る徐放性処方物を開示する。
【0052】
(診断方法およびスクリーニング方法)
本発明の融合ポリペプチドは、診断的に、および/またはスクリーニング方法において使用され得る。例えば、融合ポリペプチドは、処置効能を評価する臨床研究の間、IL−4および/またはIL−13のレベルをモニタリングするために使用され得る。別の実施形態において、本発明の方法および組成物は、例えば、非常に高いIL−4および/またはIL−13レベルあるいは非常に低いIL−4および/またはIL−13レベルを有する個体を同定する臨床研究への参加のため、個体をスクリーニングするために使用される。本発明の融合ポリペプチドは、IL−4および/またはIL−13の局在化および活性に関する、当該分野において公知の方法(例えば、診断方法におけるイメージング、適切な生理学的サンプルにおけるIL−4および/またはIL−13のレベルを測定することなど)において使用され得る。
【0053】
本発明の融合ポリペプチドは、例えば、IL−4および/またはIL−13の発現を低下させ得る試験薬剤を同定するスクリーニング方法において、存在する未結合IL−4および/またはIL−13の量を定量化するインビボスクリーニングアッセイおよびインビトロスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。より一般的には、本発明の融合ポリペプチドは、IL−4および/またはIL−13の定量および/または単離が所望される任意のアッセイまたはプロセスにおいて使用され得る。
【0054】
(薬学的組成物)
本発明はまた、本発明の融合ポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。このような組成物は、治療上の有効量の1つ以上の融合ポリペプチドと薬学的に受容可能なキャリアとを含む。用語「薬学的に受容可能な」は、動物(より詳細には、ヒト)における使用についての連邦政府もしくは州政府の監督官庁により認可されていること、または米国薬局方もしくは他の一般的に承認される薬局方に列挙されていることを意味する。用語「キャリア」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルをいう。このような薬学的キャリアは、水および油(石油由来の油、動物由来の油、植物由来の油または合成由来の油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油およびゴマ油など)が挙げられる)のような無菌の液体であり得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールなどが挙げられる。所望される場合、この組成物はまた、少量の湿潤剤または乳化剤あるいはpH緩衝剤も含む。これらの組成物は、溶液、懸濁物、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル、粉末剤および徐放性処方物などの形態を取り得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0055】
本発明の融合ポリペプチドは、中性の形態または塩の形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、遊離アミノ基と共に形成される塩(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩)および遊離カルボキシル基と共に形成される塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩)が挙げられる。
【0056】
意図される治療上の使用のために有効な融合ポリペプチドの量は、本記載に基づく標準的な臨床技術により決定され得る。加えて、インビトロアッセイが、必要に応じて、最適な投薬量の範囲を同定するのを補助するために利用され得る。一般的に、静脈内投与のための適切な投薬量の範囲は、大体、1キログラム体重あたり約0.02ミリグラム〜約10ミリグラムの活性化合物である。鼻内投与のための適切な投薬量の範囲は、大体、1kg体重あたり約0.01pg〜1kg体重あたり約10mgである。有効用量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系から得られる用量−応答曲線から推定され得る。投与される化合物の量は、もちろん、処置されている被験体に依存し、被験体の体重、苦痛の重症度、投与様式および処方する医師の判断に依存する。治療は、症状が検出可能である間または症状が検出不能である場合でさえも、断続的に繰り返され得る。
【0057】
(細胞のトランスフェクションおよび遺伝子治療)
本発明は、インビボおよびインビトロでの細胞のトランスフェクションのための、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸の使用を包含する。これらの核酸は、標的細胞および標的生物のトランスフェクションのために、任意の多くの周知のベクターに挿入され得る。核酸は、エキソビボおよびインビボで、脂質の混合またはエレクトロポレーションにより促進されるベクターと標的細胞との相互作用を介して細胞にトランスフェクトされる。組成物は、治療応答を誘発するのに十分な量で(例えば、筋肉への注射により)被験体に投与される。このことを達成するのに適当な量は、「治療上の有効用量または治療上の有効量」として定義される。
【0058】
別の局面において、本発明は、ヒトまたは他の動物におけるIL−4および/またはIL−13レベルを減少させる方法を提供する。この方法は、本発明のポリペプチドをコードする核酸により細胞をトランスフェクトする工程を包含する。ここで、この核酸は、このポリペプチドをコードする核酸へ作動可能に連結された誘導可能なプロモーターを含む。ヒトの疾患の処置または防止における遺伝子治療の手順については、例えば、Van Brunt(1998)Biotechnology 6:1149〜1154を参照のこと。
【0059】
(キット)
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で満たされた1つ以上の容器を含む、薬学的パックまたはキットを提供する。必要に応じて、薬学的製品もしくは生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定される書式での通知が、このような容器に付随し得る。この通知は、(a)ヒトへの投与に関する、上記機関による製造、使用または販売の認可(b)使用についての指示、またはその両方を示す。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法のある完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、かつ本発明者らが、本発明者らの発明とみなす範囲を限定することを意図されない。使用された数(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するために努力がなされたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が説明されるべきである。他に指示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、そして圧力は、大気圧または大気圧の近傍である。
【0061】
(実施例1.IL−4/13改変融合ポリペプチドの構築)
親IL−4/13融合ポリペプチドを作製するために、1132(配列番号8)(ヒトIL−4Rα細胞外ドメイン(配列番号1〜2)とヒトIL−13Rα1細胞外ドメイン(配列番号3の27〜343)とをコードする核酸)を、標準的なPCR技術を使用して増幅し、ヒトFc配列を含む発現ベクターに連結させた。それにより、IL−4Rαおよび/またはIL−13Rα1から構成される融合タンパク質とそのヒンジ(N末端からC末端までの、ヒトIgG1のCH2領域およびCH3領域)とを作製した。配列番号8の置換:Cys207→Serおよび配列番号8の置換:Cys251→Ala(Cys251は、配列番号3のCys46に対応する)を、当該分野において公知の標準的な技術を使用する部位特異的突然変異誘発により導入した。全ての配列を、標準的な技術により確認した。適切なコード配列を、標準的な分子生物学技術を使用して真核生物発現ベクターにサブクローニングした。当該分野において公知の技術を使用して、親1132融合ポリペプチドの部位特異的突然変異誘発により、IL−4/13融合ポリペプチド改変体を作製し、そして配列決定により確認した。
【0062】
改変IL−4/13融合ポリペプチドを、Lipofectamine/LIPO PlusTM(Life Technologies)を使用して、改変タンパク質をコードするDNA構築物により一過的にCHO細胞をトランスフェクトすることによって、小規模な上清として生成した。上清を72時間後に収集した。そしてタンパク質発現を、抗ヒトFc HRP結合抗体(Promega)を用いるウエスタンブロッティングにより測定し、ECL(Pierce)により可視化した。改変IL/4/13融合ポリペプチドの大規模な精製のために、この融合タンパク質をコードするDNAを、FASTR技術(米国特許出願公開20020168702)を使用して、一過性発現のためまたは安定株を作製するためのいずれかのためにCHO細胞にトランスフェクトした。1L〜2Lのこの融合タンパク質を発現する細胞の培地を収集し、そしてFcを含む融合タンパク質を捕捉するために、プロテインAカラムに通過させた。プロテインA精製を、製造者(Amersham)のプロトコールにしたがって実行した。濃縮後、この融合タンパク質を、混入している凝集体のパーセンテージについて特徴づけ、Superdex200カラム(Amersham)または類似のカラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用してさらに精製した。
【0063】
改変IL−4/13融合ポリペプチドの安定性を、標準的な方法(20回の凍結/融解のサイクル後のSECによる分析およびウェスタンブロットによる分析、37℃で7日間、低塩の緩衝液(10mM リン酸ナトリウム緩衝液)および中程度の塩の緩衝液(PBS)中で、このタンパク質をインキュベートすることによる分析、または種々のpHで緩衝化されたPBS溶液中でこのタンパク質を2時間インキュベートすることによる分析が挙げられる)を使用して、評価した。
【0064】
この分子の薬物動態を、1mg/kgのIL−4/13融合ポリペプチド改変体を用いて、マウスまたはラットに静脈内にかまたは皮下に注射することにより決定した。血液を種々の時点において収集し、そして血清を単離した。この融合タンパク質を捕捉する抗IL−13Raモノクローナル抗体と、複合体を形成するビオチン化抗IL−4Raモノクローナル抗体と、この複合体を検出するストレプトアビジン−HRP結合体とを用いるELISAを使用して、改変融合ポリペプチドの量について血清サンプルを分析した。融合ポリペプチドの濃度を、血清サンプルからのODと精製融合タンパク質を使用して生成される検量線から得られるODとの比較により決定した。融合ポリペプチドの量をまた、3種の抗体(抗IL−13Ra抗体、抗IL−4Ra抗体または抗ヒトFc抗体)のうちの1つと検出のためのHRP結合体化二次抗体とを使用する1μlの血清のウェスタンブロット分析によりモニタリングした。
【0065】
(実施例2.改変融合ポリペプチドによるhIL−4生物活性およびhIL−13生物活性の阻害)
(TF1バイオアッセイ)hIL−13Rα1により安定的にトランスフェクトしたTF1細胞を、増殖培地(10ng/ml GM−CSF、RPMI 1640、10% FBS、L−グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン)中で維持した。バイオアッセイのために、細胞をアッセイ培地(上記と同じだが、GM−CSFを含まない)で3回洗浄し、次に50μlのアッセイ培地中に2×10の細胞でプレートした。精製融合ポリペプチドを、アッセイ培地中に段階希釈した。25μlの各々の改変IL−4/13融合ポリペプチドを、この細胞に添加した。次に、25μlのIL−13(15pM)または25μlのIL−4(20pMまたは40pM)のいずれかを、この細胞とこの融合ポリペプチドとを含むウェルに添加した。それから、細胞を約70時間、37℃、5% COでインキュベートした。TF1細胞の増殖の程度を、製造者(Dojindo Laboratories)のプロトコールにしたがったCCK−8アッセイにより測定した。
【0066】
表1〜表7についての全てのバイオアッセイは、親IL−4/13融合ポリペプチド、1132(シグナル配列(成熟ポリペプチドから切断される)と共に示される配列番号8)(配列番号7によりコードされる)を含んだ。この融合ポリペプチドは、以下からなる:シグナル配列(アミノ酸1〜23)+1つのIL−4Rα構成要素(Cys207→Serを有する配列番号8のアミノ酸24〜231)(配列番号2の24〜231に対応する)+1つのIL−13Rα1構成要素(Cys251→Alaを有する配列番号8のアミノ酸232〜548)(Cys251は、配列番号3のCys46に対応する)(配列番号3の27〜343に対応する)+1つの多量体化構成要素(IgG1 Fc)(配列番号8の549〜776)。全ての改変融合ポリペプチド(別に特定されるもの(表1)を除く)は、親のCys207→Ser変異を含み、そして全ての改変融合ポリペプチドは、IL−13Ra1構成要素中のCys251→Ala(配列番号3のCys46)変異を含む。例えば、配列番号10(構築物2674;配列番号9によりコードされる)、配列番号12(構築物2681;配列番号11によりコードされる)、配列番号14(構築物2795;配列番号13によりコードされる)、および配列番号16(構築物2796;配列番号15によりコードされる)(これらは、最終的に成熟融合ポリペプチドから切断されるシグナル配列を含む)を参照のこと。表1は、親のトラップ(trap)1132および2例の改変融合ポリペプチドについてのIC50のデータ(細胞の増殖の50%が阻害される濃度)ならびに親IL−4/13融合ポリペプチド1132についてのIC50値からの倍分の差(改変融合ポリペプチドIC50で割った親融合ポリペプチドIC50)を示す。
【0067】
(表1.融合ポリペプチド2674および2681のIC50のデータおよび倍分の差のデータ)
【0068】
【表1】

表2〜表6は、CHOの一過性の上清を使用してアッセイされた、改変融合ポリペプチドのIC50バイオアッセイ値の倍分の差を示す。この上清の濃度を、ウェスタンブロット分析により決定した。表2は、システイン変異を有する改変体の、hIL−13活性またはhIL−4活性をブロックする能力についてのIC50における倍分の差を示す;表3は、コアを安定化する変異と活性部位変異とを有する融合ポリペプチド改変体の、hIL−13活性またはhIL−4活性をブロックする能力を示す;表4は、hIL−13活性またはhIL−4活性をブロックする電荷変更改変体および組み合わせを示す;表5は、hIL−13活性またはhIL−4活性をブロックする疎水性パッチ改変体および組み合わせを示す;表6は、IL−4RαのN末端欠失およびC末端欠失を有する改変融合ポリペプチドの活性を示す(これらの全ては、親融合ポリペプチド1132と比較して表現される)。
(表2.システイン改変体の、IL−13活性およびIL−4活性を阻害する能力)
【0069】
【表2】

(表3.コアを安定化する改変体および活性部位改変体の、IL−13活性およびIL−4活性をブロックする能力)
【0070】
【表3】

(表4.IL−4活性およびIL−13活性を阻害する電荷改変体および組み合わせ改変体)
【0071】
【表4】

(表5.疎水性パッチ改変体および組み合わせ改変体の、IL−13活性およびIL−4活性を阻害する能力)
【0072】
【表5】

(表6.N末端改変体およびC末端改変体の、IL−13活性およびIL−4活性を阻害する能力)
【0073】
【表6】

(実施例3.生物活性についての精製融合ポリペプチド改変体の特徴づけ)
表7は、改変融合ポリペプチドの、IL−4活性およびIL−13活性をブロックする能力を示す。その結果を、親融合ポリペプチド、IL−4/13融合ポリペプチド1132(配列番号8)についてのIC50値からの倍分の差(改変融合ポリペプチドIC50で割った親融合ポリペプチドIC50)として示す。この親分子は、以下からなる:シグナル配列(アミノ酸1〜23)+1つのIL−4Rα構成要素(Cys207Serを有するアミノ酸24〜231)(配列番号2の24〜231に対応する)+1つのIL−13Rα1構成要素(Cys251Alaを有するアミノ酸232〜548)(配列番号3の27〜343に対応する)+1つの多量体化構成要素(IgG1 Fc)(549〜776)。標準偏差は、3回以上アッセイされたものについて示される。全ての改変融合ポリペプチド(他の特定のCys207の置換を有するものを除く)は、Cys207→Ser変異を含み、全ての改変融合ポリペプチドは、IL−13Ra1構成要素中のCys251→Ala変異を含む。
(表7.改変体分子の、IL−13活性およびIL−4活性を阻害する能力)
【0074】
【表7】

(実施例4.BIAcoreを使用しての、改変体のIL−4/13結合親和性の決定)
ヒトIL−4およびヒトIL−13に対するIL−4/13特異的ポリペプチドの親和性を、WO00/75319に記載されるように、BIAcore 2000またはBIAcore 3000を使用して測定した。このBIAcoreアッセイは、R1−R2−Fc改変体(全てのこれらの改変体は、1つのシグナル配列、1つのIL−4Rα構成要素、続いて、1つのIL−13Rα1構成要素および1つの多量体化構成要素(IgG1 Fc)から構成された)と比較して、親の1132(配列番号8)構築物を試験した。IL−4/13融合ポリペプチド改変体を、抗ヒトFc抗体を使用してチップ表面に捕捉した。種々の濃度のヒトIL−4および/またはヒトIL−13を、この表面の全面に注入し、そして会合および解離の時間経過をモニタリングした。会合速度定数および解離速度定数を得るために、BIA評価ソフトウェアを使用する反応速度分析を実行した。結果を表8に示す。
(表8.BIAcoreを介して測定されたIL−4/IL−13結合親和性)
【0075】
【表8】

(実施例5.構成要素改変体の、IL−4活性およびIL−13活性を阻害する能力)
表9は、上記のCHOの一過性の上清を使用してアッセイされた、融合ポリペプチドのIC50バイオアッセイ値の倍分の差を示す。これらの融合ポリペプチドは、代替的な構成要素配置(例えば、R2−R1−F(配列番号3および配列番号2))を含む。そして、これらの融合ポリペプチドを1132親分子と比較する。試験した改変体は、以下から構成される:RORシグナル配列(アミノ酸1〜29)+IL−13Rα1構成要素(Cys46Serを有するアミノ酸30〜346(配列番号3の27〜343に対応する))+1つのIL−4Rα構成要素(Cys207Serを有するアミノ酸347〜554(配列番号2の24〜231に対応する))+1つの多量体化構成要素(IgG1 Fc、アミノ酸555〜784)。
(表9.構成要素配置改変体)
【0076】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合ポリペプチド(R1)−(R2)−Fであって、該融合ポリペプチドにおいて、
R1は、以下の配列:配列番号2の1〜231および24〜231から選択され、該配列は1〜10個の改変を含み得;
R2は、配列番号3および配列番号4から選択され、該配列は1〜3個の改変を含み得;
Fは、融合構成要素であり、そしてxおよびyは、各々独立して、1以上の正の整数である、融合ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の融合ポリペプチドであって、前記R1が、位置67、68、71、152、164、171、172、175、198および/または207における1以上のアミノ酸の、異なるアミノ酸による置換によって改変される、融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記位置67におけるアミノ酸がTyrに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記位置68におけるアミノ酸がAsnに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記位置171におけるアミノ酸がTyrまたはPheに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記位置172におけるアミノ酸がSerに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記位置152におけるアミノ酸がPheに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記位置198におけるアミノ酸がSerに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記位置207におけるアミノ酸がSerに置換される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
R1が、位置67、68および207における置換により改変される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記位置67におけるアミノ酸がTyrに置換される、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記位置68におけるアミノ酸がAsnに置換される、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記位置68におけるアミノ酸がAsnに置換される、請求項11に記載の融合ポリペプチド。
【請求項14】
R1が位置171および172における置換によりさらに改変される、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項15】
前記位置171におけるアミノ酸がTyrまたはPheに置換される、請求項14に記載の融合ポリペプチド。
【請求項16】
前記位置172におけるアミノ酸がSerに置換される、請求項15に記載の融合ポリペプチド。
【請求項17】
R1が位置152における置換によりさらに改変される、請求項14に記載の融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記位置152におけるアミノ酸がPheに置換される、請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の融合ポリペプチドであって、R2が、(i)配列番号3の1〜343または27〜343、および(ii)配列番号4の1〜343または23〜343からなる群から選択される、融合ポリペプチド。
【請求項20】
請求項19に記載の融合ポリペプチドであって、前記(i)が、以下:
(a)配列番号3のアミノ酸1〜120を配列番号5のアミノ酸1〜123に置換する工程;
(b)配列番号3のアミノ酸338〜343を欠失させる工程;
(c)配列番号3のアミノ酸1〜26を配列番号6に置換する工程;または
(d)位置46、73、143、235、293および/または329における1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸に置換する工程、
により改変される、融合ポリペプチド。
【請求項21】
請求項19に記載の融合ポリペプチドであって、前記(ii)が、(a’)配列番号4のアミノ酸1〜22の欠失;(b’)Cys251Ile;または(c’)配列番号4の位置310のアミノ酸の置換、により改変される、融合ポリペプチド。
【請求項22】
前記Fが、多量体化構成要素、血清タンパク質または血清タンパク質に結合可能な分子からなる群から選択される、請求項1〜21のいずれかに記載の融合ポリペプチド。
【請求項23】
請求項22に記載の融合ポリペプチドであって、前記Fが、(i)免疫グロブリン由来のドメイン、(ii)切断可能な領域(C領域)、(ii)必要に応じて少なくとも1つのシステイン残基を含む、長さ1アミノ酸〜約500アミノ酸の間のアミノ酸配列、(iii)ロイシンジッパー、(iv)ヘリックスループモチーフ、および(v)コイル−コイルモチーフ、からなる群から選択される多量体化構成要素である、融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記Fが、IgGのFcドメインまたはIgGの重鎖からなる群から選択される免疫グロブリン由来のドメインである、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
2つ以上の請求項1〜24のいずれかに記載の融合ポリペプチドを含む、多量体タンパク質。
【請求項26】
2つの融合ポリペプチドを含む二量体である、請求項25に記載の多量体タンパク質。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれかに記載の融合ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項28】
請求項27に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項29】
適切な宿主細胞中に、請求項28に記載のベクターを含む宿主−ベクター系。
【請求項30】
融合ポリペプチドを生成する方法であって、該方法は、前記宿主細胞からのタンパク質の発現に適切な条件下で、請求項29に記載の宿主−ベクター系を培養する工程、およびこのように生成される該ポリペプチドを回収する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2008−504806(P2008−504806A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500773(P2007−500773)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/006266
【国際公開番号】WO2005/085284
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】