説明

IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにおける障害復旧

IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のP−CSCF(13)の障害からの復旧を促進する方法が提供される。GGSNのようなゲートウェイ(11)が、P−CSCFからゲートウェイに到着する信号を監視し、例えば信号の中断が原因で監視対象の信号が受信不可能になった場合に指示情報を提供する。ゲートウェイ(11)は、IMSネットワークに対する以前の登録の間にP−CSCFに関連付けられたユーザ装置(10)に対してP−CSCF(13)が利用不可能であるということをシグナリングすることにより、応答する。これに応えて、例えば、障害の影響を受けるユーザは、別の利用可能なP−CSCFを使用してIMSネットワークに再登録することを要求することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにおける障害復旧に関し、特に、プロキシ呼セッション制御機能の障害からの復旧を可能にする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPマルチメディア・サービスは、音声、ビデオ、メッセージング、データなどの動的な組み合わせを同一のセッション中で提供する。組み合わせ可能な基本アプリケーション及びメディアの数が増加することにより、エンドユーザに提供されるサービスの数が増加し、個人間の通信エクスペリエンスが豊かになるであろう。このことは、所謂「組み合わせIPマルチメディア」サービスを含んだ、パーソナライズされた豊かなマルチメディア通信サービスの新しい世代を導くものとなろう。
【0003】
UMTS(ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーションズ・システム)は、第3世代の無線システムであり、加入者に対してより高いデータレート及び高度なサービスを提供するように設計されている。UMTSは、グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)の後継であり、GSMとUMTSとの間の重要な進化段階には、汎用パケット無線サービス(GPRS)が存在する。GPRSは、GSMコアネットワークにパケット交換を導入し、パケットデータネットワーク(PDN)に対する直接アクセスを可能にする。このことは、GSM呼ネットワークを介したISDNの64kbpsの限界をはるかに超える高いデータレートでのパケット交換伝送を可能にし、これは、2Mbpsにも及ぶUMTSデータ伝送レートのために不可欠なことである。UMTSは、第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)によって標準化された。3GPPは、欧州電気通信標準化協会(ETSI)や電波産業界(ARIB)などの地域標準化機構の集合体である。更なる詳細については、3GPP TS 23.002を参照のこと。
【0004】
UMTSのアーキテクチャは、IPマルチメディア・サブシステム(IMS)として知られる、従来の電話技術に加えて新しいIPマルチメディア・サービスをサポートするためのサブシステムを含む(3GPP TS 22.228, TS 23.228, TS 24.229, TS 29.228, TS 29.229, TS 29.328 及び TS 29.329 リリース5乃至7)。IMSは、標準化されたIMSサービスイネーブラの使用を通じて、エンドユーザの個人対個人の通信エクスペリエンスを豊かにする重要な特徴を提供する。IMSサービスイネーブラは、IPベースのネットワークを介した個人対コンテンツ(クライアント対サーバ)のサービスに加えて、新しい豊かな個人対個人(クライアント対クライアント)の通信サービスを促進するものである。IMSは、PSTN/ISDN(公衆交換電話網/サービス総合デジタル網)に対しても、インターネットに対しても、共に接続可能である。
【0005】
IMSは、ユーザ端末間(又はユーザ端末とアプリケーション端末との間)で呼又はセッションをセットアップして制御するために、セッション開始プロトコル(SIP)を使用する。SIPシグナリングによって搬送されるセッション記述プロトコル(SDP)は、セッションのメディアコンポーネントを記述して交渉するために使用される。SIPはユーザ対ユーザのプロトコルとして創造されたが、IMSによれば、オペレータ及びサービスプロバイダが、サービスに対するユーザアクセスを制御してそれに応じてユーザに課金することが可能である。3GPPは、IMS内のコンポーネント間に加えて、ユーザ装置(UE)とIMSとの間のシグナリングのためにもSIPを選択した。
【0006】
UMTS通信ネットワークの動作、及びそのようなネットワーク内の多様なコンポーネントに関する具体的な詳細については、http://www.3gpp.orgから入手可能なUMTSの技術仕様から発見可能である。UMTS内でのSIPの使用に関する更なる詳細については、3GPP技術仕様TS 24.229から発見可能である。
【0007】
添付図面の図1は、GPRS/PSアクセスネットワークの場合にIMSが移動体ネットワークアーキテクチャにどのように適合するかを概略的に示す(IMSはもちろん、他のアクセスネットワークを介して動作することもできる)。呼セッション制御機能(CSCF)は、IMS内でSIPプロキシとして動作する。3GPPアーキテクチャは、3種類のCSCFを規定する。即ち、SIP端末にとってIMS内での最初のコンタクトポイントであるプロキシCSCF(P−CSCF)、ユーザが加入しているサービスをユーザに対して提供するサービングCSCF(S−CSCF)、及び、正しいS−CSCFを特定し、P−CSCFを介してSIP端末から受信したSIPリクエストをそのS−CSCFへ転送するインテロゲーティングCSCF(I−CSCF)である。
【0008】
ユーザは、規定されたSIP REGISTERメソッドを使用してIMSに登録する。これは、IMSにアタッチし、SIPユーザIDに到達可能なIMSアドレスをアナウンスするための、メカニズムである。3GPPでは、SIP端末が登録を行う際に、IMSはユーザを認証し、利用可能なS−CSCFのセットからS−CSCFをそのユーザに割り当てる。S−CSCFを割り当てる基準は3GPPによって規定されていないが、これらの基準には、負荷分散及びサービス要件が含まれ得る。なお、S−CSCFの割り当ては、IMSベースのサービスに対するユーザアクセスを制御する(そして課金する)ことの要である。オペレータは、さもなければS−CSCFをバイパスしてしまうような、ユーザ対ユーザの直接のSIPセッションを阻止するためのメカニズムを提供することができる。
【0009】
登録プロセスの間、S−CSCFがまだ選択されていない場合にS−CSCFを選択することが、I−CSCFの責務である。I−CSCFは、必要とされるS−CSCFの能力をホームネットワークのホーム加入者サーバ(HSS)から受信し、受信した能力に基づいて適切なS−CSCFを選択する。SIP REGISTERメッセージは、選択されたS−CSCFへ転送され、S−CSCFは自分のIDをSIP Service Routeヘッダに追加する。P−CSCFがS−CSCFから200 OKを受信すると、P−CSCFはService RouteヘッダからSIP IDを知る。なお、ユーザのためのS−CSCFの割り当ては、そのユーザが他の当事者から呼び出されそのユーザにS−CSCFが正しく割り当てられていない場合にも、I−CSCFによって行われる。これを、「着信」呼の事例と呼ぶ。
【0010】
IMSサービスネットワークの中で、IMSサービス機能を実装するためにアプリケーションサーバ(AS)が提供される。アプリケーションサーバは、IMSシステム内のエンドユーザにサービスを提供する。アプリケーションサーバには、3GPPによって規定されるMrインタフェースを介してエンドポイントとしても接続可能であるし、3GPPによって規定されるISCインタフェースを介してS−CSCFによって「リンクする」ことも可能である。後者の場合、SIPセッション確立の間にどのアプリケーションサーバに「リンクする」べきであるかを判断するために、S−CSCFによって初期フィルタ基準(IFC)が使用される。様々な呼の事例に対して様々なIFCを適用可能である。IFCは、S−CSCFによって、IMS登録手順の間にユーザのユーザプロファイルの一部としてHSSから受信される。アプリケーションサーバによっては、加入者ID(アプリケーションサーバを制御するネットワークによって「所有」されている限りは発呼側加入者であっても着呼側加入者であってもよい)に応じた動作を実行するものもある。例えば、呼の転送の場合、適切な(着信)アプリケーションサーバは、所与の加入者に対する呼の転送先となる新たな着信側当事者を判断する。S−CSCFによって受信されたSIPメッセージが特定のSIP ASへ転送されるべきであるとIFCが示す場合、そのASがメッセージパスに追加される。SIPメッセージがASによってS−CSCFへ返されると、SIPメッセージは、最終的な宛先へ向かって転送されるか、又は、IFCの中で指定されている場合は別のASへと転送される。
【0011】
現行のIMSコアの仕様は、ネットワークエレメントにおける障害の後で整合状態に復旧するための手順を含んでいない。
【0012】
IMS登録時にユーザ装置がコンタクトするP−CSCFは、IMSに登録している期間内にSIPシグナリングパスに留まるために、自分自身のSIP URIをSIPパスヘッダに挿入する。
【0013】
ユーザが着信側としてコンタクトされる場合(例えば、音声呼のBパーティーとして)、IMSは、登録時に挿入されたP−CSCFのSIP URIを使用して端末にコンタクト可能であることを要求する。通信に障害が存在する場合、IMSが更なる試みを断念するまでの遅延は、数分かそこらの問題かもしれない。その期間の後、SIPタイムアウトエラーがAパーティーに返される。到達不可能なP−CSCFによって管理される全てのユーザへ宛てられた全ての着信SIPリクエストは、それらのユーザが新しい登録を開始するまで失敗するであろう。このシナリオは、3GPP TR 23.820 5.3.3節に記述されている。
【0014】
既存のソリューションでは、P−CSCFの障害は、ユーザがIMSコアネットワークに接続されているという認識を持っていながら到達不可能である期間を意味する。この期間は、ユーザ端末からSIPリクエストが開始されるまで継続することになり、再登録期間と同じ長さになる場合もある。現行では、IMSにおける再登録タイマーは30分から数時間の範囲に亘る。これは、P−CSCFの障害がいかに稀であるかを考慮に入れたとしても、ユーザによってはこの状態であり続けるには長すぎる時間であろう。
【0015】
「心臓の鼓動」シグナリング、又は、ユーザ装置によって実行され、且つ、IMSコアとの接続(そしてそれ故に登録)が失われているということをユーザ装置に対して示すように規定されるその他の監視は、この問題を解決するかもしれない。特に、このことは、P−CSCFに障害が発生している時や再起動した時という場合に当てはまる。しかしながら、そのようなシグナリングは、移動体ユーザ装置のバッテリーをすぐに使い果たしてしまうであろうし、許容不可能な量の無線リソースを消費するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のプロキシ呼セッション制御機能の障害からの復旧を促進する方法であって、
ゲートウェイにおいて、前記プロキシ呼セッション制御機能から前記ゲートウェイに到着する信号を監視するステップと、
前記ゲートウェイにおいて、前記監視対象の信号が受信不可能になった場合に指示情報を提供するステップと、
前記ゲートウェイにおいて、前記指示情報に応えて、前記プロキシ呼セッション制御機能に関連付けられている1つの又は各々のユーザ装置に対して前記プロキシ呼セッション制御機能が利用不可能であるということを信号通知する動作を実行するステップと、
を備えることを特徴とする方法が提供される。
【0017】
前記提供するステップは、到達不可能であるという明示的な指示情報を伝送ネットワークから受信した後に前記指示情報を提供してもよい。前記提供するステップは、前記監視対象の信号における、送信ノードの利用不可能性又は到着不可能性の特徴である変化の後に、前記指示情報を提供してもよい。
【0018】
前記提供するステップは、前記監視対象の信号の中断に応えて、前記指示情報を提供してもよい。前記提供するステップは、前記監視対象の信号の受信から所定の遅延の後に、前記指示情報を提供してもよい。前記所定の遅延は、前記1つの又は各々のユーザ装置から前記ゲートウェイを介して前記プロキシ呼セッション制御機能に向けられた信号トラヒックレベルの関数であってもよい。
【0019】
前記所定の遅延は、前記プロキシ呼セッション制御機能に関連付けられたユーザ装置インスタンスの数の関数であってもよい。前記所定の遅延は、リアルタイムで実行されるシグナリングトラヒック測定値、及び/又は、事前のシグナリングトラヒック測定値の関数であってもよい。前記所定の遅延は、これらの関数のいかなる組み合わせであってもよい。
【0020】
前記監視するステップは、前記プロキシ呼セッション制御機能が前記ゲートウェイに対して応答を送信することを要求する信号を、前記プロキシ呼セッション制御機能へ送信するステップを含んでもよく、前記提供するステップは、前記ゲートウェイにおいて所定数の応答を受信できなかったことに応えて、前記指示情報を提供してもよい。前記ゲートウェイと前記プロキシ呼セッション制御機能との間の信号トラヒックが所定レベルより低い場合に前記応答を要求する信号が送信されてもよい。
【0021】
前記ゲートウェイは、汎用パケット無線サービスのためのゲートウェイ・サポート・ノードであってもよい。前記動作を実行するステップは、セッション管理シグナリングを用いて前記動作を実行するステップを含んでもよい。前記動作は、
前記1つの又は各々のユーザ装置に対するシグナリングIPフローに対応するトラヒックフローテンプレートを除去することと、
前記1つの又は各々のユーザ装置に対するシグナリングIPフローを搬送するPDPコンテキストを削除することと、
GPRSセッション管理において通知を送信することと、
宛先IPアドレスに到達不可能であることを示すICMPメッセージを送信することと、
前記1つの又は各々のユーザ装置に対してどのプロキシ呼セッション制御機能が利用可能であるかを通知することと、
のうちのいずれか1つを含んでもよい。
【0022】
前記1つの又は各々のユーザ装置は、前記ユーザ装置を別のプロキシ呼セッション制御機能に関連付けることを含む前記IPマルチメディア・サブシステムへの再登録を実行することにより、前記動作に対して応答してもよい。
【0023】
前記監視するステップは、前記ゲートウェイにおいて、アドレスが前記ゲートウェイに格納されている各々のプロキシ呼セッション制御機能から前記ゲートウェイに到着する信号を監視するステップを含んでもよい。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内でゲートウェイとして動作するように構成される装置であって、
プロキシ呼セッション制御機能から到着する信号を受信する入力部と、
前記プロキシ呼セッション制御機能から受信した前記信号を監視する手段と、
前記監視対象の信号が受信不可能になった場合に指示情報を提供する手段と、
前記指示情報に応えて、前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークに対する以前の登録の間に前記プロキシ呼セッション制御機能に関連付けられた1つの又は各々のユーザ装置に対して前記プロキシ呼セッション制御機能が利用不可能であるということを信号通知する動作を実行する手段と、
を備えることを特徴とする装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】上で説明したものであり、IPマルチメディア・サブシステムの3G移動体通信システムへの統合を概略的に示す。
【図2】本発明の実施形態を構成し本発明の実施形態を構成する方法を実行するGGSNに関連する構造及びシグナリングを示す。
【図3】図2に類似するものであり、P−CSCFの利用可能性を監視する第1の技術を示す。
【図4】図2に類似するものであり、P−CSCFの利用可能性を監視する別の技術を示す。
【図5】P−CSCFの障害からの復旧に関係するIMSシグナリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2は、図1に示すシステムの一部を示し、ユーザ装置10に接続されている。ネットワークは、ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN)11を含む。GGSN11は、各々がパケットデータプロトコル(PDP)コンテキスト12を用いて複数のユーザ装置10に関連付けられている複数のゲートウェイのうちの1つである。
【0027】
図2は、ユーザ装置10がプロキシ呼セッション制御機能(P−CSCF)13に登録している状態を示す。ユーザ装置10は、セッション開始プロトコル(SIP)シグナリングのインターネットプロトコル(IP)フロー14を含んだ手段を用いて、GGSN11を介してP−CSCF13と通信する。
【0028】
GGSN11は、P−CSCF13の利用可能性を監視する新機能15を含む。新機能15は、フロー14のようなP−CSCF13からGGSN11への信号が受信不可能になった場合に、指示情報を提供する。機能15は、図3を参照して後述するような、P−CSCF13からのトラヒックの統計的監視を実行可能である。或いは、又はこれに加えて、機能15は、「心臓の鼓動メカニズム」16を使用して、機能15によって生成されP−CSCF13へ送信されP−CSCFからの応答を要求する信号に対するP−CSCF13の応答を監視することができる。そのような心臓の鼓動メカニズムは、図4を参照して後述する。
【0029】
大まかに言えば、機能15は、P−CSCF13からの信号フローを監視し、信号フローにおける送信者の利用不可能性の特徴である変化(例えば、監視対象信号の中断など)に応えて、受信不可能に関する指示情報を提供する。次に機能15は、P−CSCF13の利用不可能性を信号通知するために、適切な動作を行う(例えば、1つ又は各々のユーザ装置10に、現在のところ利用可能であると知られている又は信じられている別のP−CSCFに対する再登録を開始させる)。
【0030】
GGSN11と各P−CSCFとの間には固定的な接続が存在しないので、機能15は、どのP−CSCF(例えば、13)を監視すべきかを知る必要がある。GGSN11に接続されているユーザ装置に現時点で関連付けられている各P−CSCFのアドレスがGGSN11に格納されるシステムのような例では、機能15は、GGSN11に現時点で格納されている各P−CSCFのアドレスを監視すればよい。或いは、又はこれに加えて、機能15は、シグナリングのために使用されるものとしてマークされたIPアドレスの宛先アドレスを検査してもよい。そのようなマーク付けは、3GPP TS 24.008に示されているように、GPRSセッション管理シグナリングにおいてユーザ装置によって実行可能である。そのようなマーク付けは、Gxを介してPCRFによっても実行可能であるが、これは新しいメカニズムである。
【0031】
前述の通り、図3は、P−CSCF13の利用可能性を判断する統計的監視技術を示す。この技術は、次の事実に基づいている。その事実とは、GGSN11は一般的に、多数のユーザ装置10a、10b、10cのP−CSCFに対するシグナリングを扱うということである。従って、統計的には、GGSNを介したCSCFへの、そしてCSCFからの、ほとんど連続的なIPパケットのフローが存在するであろう。機能15はそれゆえ、P−CSCF13のアドレスに到達不可能であることを示すICMPを受信した場合、又は、P−CSCFに関連付けられた全てのユーザ装置に対するP−CSCFからのパケットのフローが許容不可能な期間中断した場合に、P−CSCF13に障害が発生したと判断することができる。この期間は、いかなる適切な方法によっても決定可能なものであり、例えば、P−CSCF13とのシグナリングを行っているユーザ装置10a、10b、10cの数に対応する、GGSN11がP−CSCF13のために扱っているシグナリングIPフローの数に従って動的に調整されてもよい。この期間は、P−CSCFからの、及び/又は、P−CSCFへの、シグナリングIPパケットフローの測定値に従って動的に調整されてもよい。この期間は、GGSNにとってのシグナリングトラヒックの予測を反映するように事前設定されてもよい。この期間は、これらの方法のうち任意のものの組み合わせを用いて決定されてもよい。この期間は、P−CSCFの利用不可能性を発見するための要求される最大遅延にも基づく。
【0032】
機能15は一般的に、GGSN11に接続されたユーザ装置のいずれかに影響を与える障害に関する早期の信頼できるシグナリングを提供するように、複数のP−CSCFの利用可能性を同時に監視することができる。この機能は、上述した統計的監視、及び/又は後述する心臓の鼓動メカニズムを実行するために、各P−CSCFに関係するシグナリングフローを個別に監視する。
【0033】
心臓の鼓動メカニズムを図4に示す。機能15は、IPパケット又は「ping」を1つの(又は各)P−CSCF13に対して定期的に送信する。IPパケットは、P−CSCF13からGGSN11へ戻る応答を要求するように構成される。それゆえ、P−CSCF13が利用可能で正しく機能している場合は、P−CSCF13は、GGSN11へと返送する応答IPパケット又は「pong」により、pingに対して応答する。機能15は、各pingの結果として帰ってくるpongを待ち受ける。P−CSCFからのpongの形式である1以上の応答が欠落しているということは、P−CSCFの障害として判断される。
【0034】
心臓の鼓動メカニズムは、IPフローをシグナリングするユーザ装置の数とは無関係に使用可能であるので、P−CSCFの利用可能性を監視するより汎用的な技術を提供する。心臓の鼓動メカニズムは、GGSN11及びP−CSCF13に対して追加の信号負荷をもたらすが、一方で統計的監視は、既存の信号フローを利用するので、負荷を変化させない。しかしながら、統計的監視は、信頼に足るように実行するためには、最低限のまとまったシグナリングトラヒックを必要とする。
【0035】
いずれの技術も単独で実行可能であるが、両方の技術を同時に実行することもできるし、或いは、シグナリングトラヒックが十分な場合は統計的監視が使用される一方でシグナリングトラヒックが不十分な場合は心臓の鼓動メカニズムが使用されるようなやり方で両方の技術を組み合わせることもできる。機能15は、例えばシグナリングトラヒックに従って、いつでもこれらの技術の間で切り替わることができる。
【0036】
P−CSCF13の障害(又は他の利用不可能性)からの復旧を促進するために、GGSN11は、多様な対策のうちの任意のもの又は任意の組み合わせを実行可能である。一般的には、これらの対策は、障害が発生したか又は利用不可能なP−CSCFに以前に登録されていた1つの又は各ユーザ装置に対して通知を行うために使用される。するとユーザ装置は、現時点で利用可能な別のP−CSCFに登録することができる。
【0037】
GGSN11は、例えば3GPP TS 24.008に規定される既存の手順に従って、ユーザ装置に対するPDPコンテキスト変更手順を使用してシグナリングIPフローを除去することにより、ユーザ装置10に対する通知を行うことができる。GGSN11は、やはり3GPP TS 24.008に規定されているPDPコンテキスト非アクティブ化手順を使用して、シグナリングフローを搬送するPDPコンテキスト12を削除することができる。GGSN11は、現在のところ3GPP TS 24.008に規定されていないGPRSセッション管理シグナリングの中で、シグナリングIPフローの宛先(P−CSCF13)に障害が発生しているという新しい明示的な通知を送信することができる。GGSNは、IETF RFC722に従い、(P−CSCFの)宛先IPアドレスに到達不可能であるという指示情報を伴うICMP(インターネット制御管理プロトコル)メッセージを送信することができる。
【0038】
図5は、P−CSCF13の利用可能性を監視してそれに反応するための、変更された技術を示す。GGSN11は、GGSN11に接続されているユーザ装置10に対してどのP−CSCFのアドレスが割り当てられているかに関する情報を、保持又は格納する。GGSNは、例えば統計的監視又は心臓の鼓動メカニズムを使用することにより、これらの格納されたアドレスの各々におけるP−CSCFとのトラヒックを監視する。監視により、P−CSCFのうちのいずれかで障害が発生した又は利用不可能になったと判断された場合、GGSN11は、もはや利用可能ではない1つの又は各アドレスを引っ込めることにより、そのP−CSCFのアドレスが有効であるかに関する変更されたアナウンスをユーザ装置に対して提供する。これに影響されるユーザ装置は、次に、変更されたアナウンスの中で提供されるP−CSCFのアドレスを使用してIMS再登録を開始する。心臓の鼓動による監視メカニズムを使用する場合、P−CSCFの障害から再登録までの遅延は、心臓の鼓動トラヒックの頻度と、影響されるユーザ装置に対して変更されたアナウンスが行われるペースとに主に依存する。
【0039】
図5を参照すると、GGSN11は、3GPP TS 29.061に従い、ユーザ装置(例えば、10)に対してP−CSCFのアドレスを提供するように構成される。GGSN11は、IMSフレームワークにおける新しいSIP/SDP手順であってもよいし(例えばICMPプロトコルを使用する)IPプロトコルベースの手順であってもよい、心臓の鼓動技術を実行する。例えば、これは、GGSNが開始する定期的なエコートラヒックであってもよいし、(対応する通知(SIP NOTIFY)を定期的に発行する)P−CSCFからの「心臓の鼓動」イベントをGGSNが購読すること(SIP SUBSCRIBE)であってもよい。P−CSCFの障害が検出された場合、GGSN11は、どのIP−CAN(接続アクセスネットワーク)セッションが影響を受けるかを判断する。
【0040】
第1の後続の手順によれば、GGSN11は、影響を受けるIP−CANセッションのための新しい1以上のP−CSCFのアドレスを決定し、その各々について、中で元の1以上のアドレスが発行(publish)されていたPDPコンテキストのための「変更されたPDPコンテキスト」を発行(issue)する。PDPコンテキストがもはや存在しない場合、専用のシグナリングPDPコンテキスト、又は他の何らかのコンテキストを、使用可能である。PDPコンテキストに対する唯一の変更は、1以上のP−CSCFのアドレスの中のPCO(protocol configuration option)フィールドであり、ベアラ制御モードが許可する場合であって必要な場合は、専用のシグナリングコンテキストのためのTFT(トラヒックフローテンプレート)フィルタが新しい状況に対して調整される。ユーザ装置は、新しいP−CSCFに対してIMS登録リクエストを発行することにより、PDPコンテキストの変更に対して応答する。
【0041】
P−CSCFに障害が発生してからユーザ装置が再登録するまでの遅延には、1つの心臓の鼓動の周期、GGSNが「PDPコンテキストの変更」を送信する際の遅延(同時進行する変更の数は制限され得るので)、及び、ユーザ装置の応答時間までが含まれる。
【0042】
ユーザ装置がIMS登録を再確立するように構成される第2の後続の手順によれば、IP−CANセッションが終了した場合、例えば全てのPDPコンテキストを非アクティブ化することにより影響を受けるIP−CANセッションを終了させ、ユーザ端末に新しいIP−CANセッションを確立させてIMSに再登録させる。この手順の下で、ユーザ装置は別のIPアドレスを正常に受信し、全てのIMSサービスが着信する。この場合、P−CSCFに障害が発生してから再登録までの典型的な遅延には、心臓の鼓動メカニズムの1つの周期、GGSNが「PDPコンテキストの削除」を送信する際の遅延(同時進行する変更の数は制限され得るので)、及び、ユーザ装置の応答時間までが含まれる。
【0043】
有効なP−CSCFのアドレスの新しいセットの送信に対して単純に応答する能力をユーザ装置が持っていない場合、この技術の使用は、ユーザ装置が最初にP−CSCFアドレスを要求することに関連してサポート(PCOフィールド)を宣言するように、条件付にされ得る。
【0044】
GGSN11は、3GPP TS 29.061に従ってGiインタフェースを介してP−CSCF13の健康状態を監視することができる。このための信号フローを図5に示す。監視には、P−CSCFの再起動の指示情報を伴ういくつかの追加の明示的なシグナリングが含まれ得る。P−CSCFが利用不可能である場合、GGSNは、ユーザ装置へ送信されるアドレスリストから対応するP−CSCFのアドレスを除去することができる。P−CSCFの再起動の場合、GGSNは、新しい登録を開始するために、利用可能なP−CSCFのアドレスのリストを伴う指示情報をユーザ装置に対して送信することができる。
【0045】
GGSN内でP−CSCFの健康状態を監視するための代替は、3GPP TS 29/060(7.2節)に示されるように、GGSNとSGSN(サービングGPRSサポートノード)との間のGTPにおいて利用可能なEcho Requestに類似した心臓の鼓動を実装することである。これにより、Echo Requestに対する応答が欠落していることを検出することにより利用不可能性を検出することが可能であり、インクリメントされたRestart Counterを伴うEcho Responseを含む再起動を検出することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のプロキシ呼セッション制御機能の障害からの復旧を促進する方法であって、
ゲートウェイにおいて、前記プロキシ呼セッション制御機能から前記ゲートウェイに到着する信号を監視するステップと、
前記ゲートウェイにおいて、前記監視対象の信号が受信不可能になった場合に指示情報を提供するステップと、
前記ゲートウェイにおいて、前記指示情報に応えて、前記プロキシ呼セッション制御機能に関連付けられている1つの又は各々のユーザ装置に対して前記プロキシ呼セッション制御機能が利用不可能であるということを信号通知する動作を実行するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記提供するステップは、前記監視対象の信号の中断に応えて、前記指示情報を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記提供するステップは、前記監視対象の信号の受信から所定の遅延の後に、前記指示情報を提供することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の遅延は、前記1つの又は各々のユーザ装置から前記ゲートウェイを介して前記プロキシ呼セッション制御機能に向けられた信号トラヒックレベルの関数であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記監視するステップは、前記プロキシ呼セッション制御機能が前記ゲートウェイに対して応答を送信することを要求する信号を、前記プロキシ呼セッション制御機能へ送信するステップを含み、
前記提供するステップは、前記ゲートウェイにおいて所定数の応答を受信できなかったことに応えて、前記指示情報を提供する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲートウェイと前記プロキシ呼セッション制御機能との間の信号トラヒックが所定レベルより低い場合に前記応答を要求する信号が送信されることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に従属する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲートウェイは、汎用パケット無線サービスのためのゲートウェイ・サポート・ノードであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記動作を実行するステップは、セッション管理シグナリングを用いて前記動作を実行するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記動作は、前記1つの又は各々のユーザ装置に対するシグナリングIPフローに対応するトラヒックフローテンプレートを除去することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記動作は、前記1つの又は各々のユーザ装置に対するシグナリングIPフローを搬送するPDPコンテキストを削除することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記動作は、GPRSセッション管理において通知を送信することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記動作は、宛先IPアドレスに到達不可能であることを示すICMPメッセージを送信することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記動作は、前記1つの又は各々のユーザ装置に対してどのプロキシ呼セッション制御機能が利用可能であるかを通知することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記1つの又は各々のユーザ装置は、前記ユーザ装置を別のプロキシ呼セッション制御機能に関連付けることを含む前記IPマルチメディア・サブシステムへの再登録を実行することにより、前記動作に対して応答することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記監視するステップは、前記ゲートウェイにおいて、アドレスが前記ゲートウェイに格納されている各々のプロキシ呼セッション制御機能から前記ゲートウェイに到着する信号を監視するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内でゲートウェイとして動作するように構成される装置であって、
プロキシ呼セッション制御機能から到着する信号を受信する入力部と、
前記プロキシ呼セッション制御機能から受信した前記信号を監視する手段と、
前記監視対象の信号が受信不可能になった場合に指示情報を提供する手段と、
前記指示情報に応えて、前記プロキシ呼セッション制御機能に関連付けられている1つの又は各々のユーザ装置に対して前記プロキシ呼セッション制御機能が利用不可能であるということを信号通知する動作を実行する手段と、
を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−541349(P2010−541349A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526170(P2010−526170)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060346
【国際公開番号】WO2009/039894
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】