説明

IP電話機の切り換え方法および携帯情報端末

【課題】ソフトフォンとIP専用電話機の切り換えを自動的に行う方法を提供する。
【解決手段】IP専用電話機31とソフトフォン33aには、同一の電話番号が割り当てられている。ソフトフォンが移動してLAN10に対する接続先がコネクタ29bからコネクタ29gに変化すると、中継装置も中継装置27から中継装置28に変化する。ソフトフォン33aは、現在接続されている中継装置のMACアドレスで現在位置を認識し、IP専用電話機から離れている判断したときは、IPゲートウェイ17にIPアドレスをソフトフォンに変更するように要求する。IP専用電話機に接近していると判断したときは、IPゲートウェイにIPアドレスをIP専用電話機に変更するように要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP専用電話機とソフトウェア・フォンのサーバに対する接続を自動的に切り換える技術に関し、さらに詳細には、ネットワークに対する接続情報から取得したソフトウェア・フォンの位置情報に基づいて接続を切り換える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット・プロトコル電話(以後、IP電話という。)は、VoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用して、インターネット・プロトコルを採用したネットワーク上で音声や動画を伝送するサービスである。IP電話は、近年の低廉な通信費用と音声品質の向上に伴い、インターネットの普及とともに一般家庭や企業などでの採用が増大している。ビルや工場などでは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)にIP電話ネットワークを組み込んで内線通話および外線通話にIP電話機を利用している。
【0003】
IP電話に使用される端末装置としては、通常の電話機のような送受話器や操作ボタンを備えLANに直接接続できるIP専用電話機の他に、コンピュータに音声を信号に変換するIP電話ソフトウェアを実装し、ハンド・セットやヘッド・セットなどを接続してコンピュータをIP電話機として使用するソフトウェア・フォン(以下、ソフトフォンという。)というものがある。ソフトフォンは、ハードウェアとソフトウェアが一体になってIP電話の機能を実現する。
【0004】
ソフトフォンを使用すれば、IP専用電話機を省いてコストを低減したり、机上のスペースを確保したりすることができる。ソフトフォンが無線LAN装置を装備したノートブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)で実現される際には、ユーザは無線LANの接続範囲の任意の場所でソフトフォンを使用できるので都合がよい。また、ノートPCが有線LAN装置を装備しており、建物の随所に有線接続できるLANのコネクタが配置されている場合も同様である。
【0005】
しかし、ソフトフォンは、コンピュータの電源が入っていないと使えなかったり、コンピュータの立ち上げまでに時間を費やしたりする。また、ソフトフォンはIP専用電話機に比べて機能が制限されていたり、ヘッド・セットの装着が煩雑であったり、他のソフトウェアとの相性によっては動作が不安定になったりすることがあるという不便な面もある。
【0006】
特許文献1は、コードレス電話機の子機においてスイッチが切り換えられて、移動モードから子機モードに切り替わったときに、移動電話方式の端末番号がダイヤルされると親機に着信させることができる電話方式を開示する。コードレス電話機が移動モードから子機モードに切り替わったときには、子機は自動発信してホームメモリ局に自動切り換えのための情報を送る。
【0007】
特許文献2は、IP電話の物理的位置が変わった場合に、IP網内での位置情報に基づいて変更後の位置でも変更前と同じ電話番号で利用できるように自動構成する技術を開示する。特許文献3は、オフィス内の会議室や電話機の近くなどにそれぞれ送信機を配置し、送信機が送る信号から場所を特定して、その場所に応じたアプリケーションを立ち上げる技術を開示する。特許文献4は、IP電話機またはPCの接続位置を端末装置のVLAN−IDを使用して識別する技術を開示する。
【特許文献1】特開平7−264653号公報
【特許文献2】特開2006−157158号公報
【特許文献3】特開平6−187163号公報
【特許文献4】特開2006−311173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ノートPCで実現されるソフトフォンは現状ではIP専用電話機を省くまでには至っておらず、通常はユーザに割り当てられた1つの電話番号がソフトフォンとIP専用電話機で共用されている。移動式のソフトフォンと机上に固定されたIP専用電話機とを共用する場合に2つの端末で同時に着信するようにすると、ノートPCを自分の席から離れた場所で使用している間に着信があった場合には、自席のIP専用電話機でも着信ベルが鳴動して隣人が先に電話を受けてしまったり、オフィス環境に必要のない音声ノイズを与えてしまったりすることがある。したがって、ユーザがノートPCを携帯して自席を離れるときにはソフトフォンを使用でき、自席に戻ったときにはIP専用電話機を使用できることが望ましい。
【0009】
この場合にソフトフォンとIP専用電話機との切り換えを手動操作で行う方法もあるが、移動のたびに切り換えることは煩雑である。また、自席から離れる際にソフトフォンへの切り換えを忘れた場合には移動先においてソフトフォンに対する着信ができなくなる。
【0010】
そこで本発明の目的は、ソフトフォンとIP専用電話機の切り換えを自動的に行う方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、ソフトフォンとIP専用電話機の切り換えを自動的に行うことができる携帯情報端末、IP電話システムおよびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバを含むLANに同一の電話番号を共用するIP専用電話機とソフトフォンとが接続される環境におけるIP専用電話機とソフトフォンとの切り替え方法を提供する。切り替え操作はユーザの操作を介在しないでソフトフォンが自動的に行う。ソフトフォンは、ノートPCやPDAなどの携帯情報端末にIP電話プログラムを実装して実現する。サーバが管理するネットワーク識別子は、IPアドレスまたはIPアドレスとMACアドレスとすることができる。LANは、イーサネット(登録商標)、トークン・バス、およびトークン・リングなどの規格に基づいて構成することができる。
【0012】
ソフトフォンの位置情報は、LANに対するソフトフォンの接続情報から得ることができる。接続情報には、MACフレームまたはイーサネット・フレームの転送処理を行う中継装置のMACアドレスまたはポート・アドレスを含んでもよい。中継装置はデータリンク層またはネットワーク層でMACフレームの転送を行うスイッチの機能を含む。ポート・アドレスはMACアドレスよりも精度の高い位置情報を提供する。さらに接続情報には、無線基地局のMACアドレスおよび無線基地局から受信した電波の受信信号強度値を含んでもよい。受信信号強度値は、無線基地局のMACアドレスよりも精度の高い位置情報を提供する。受信信号強度値は、ソフトフォンが現在接続されている無線基地局に隣接する無線基地局から送信された電波から測定してもよい。ソフトフォンがLANに無線接続された場合は、接続帯域幅を自動的に検出してCODECの制御パラメータを変更することで中断のない通話を実現することができる。
【0013】
ソフトフォンは、自らの位置情報に基づいて、使用するIP電話機をIP専用電話機とソフトフォンのいずれにするかを選択する。この場合、IP専用電話機の近くにソフトフォンが配置されていると判断したときは、IP電話機として利便性の高いIP専用電話機を選択し、IP専用電話機から離れた位置にソフトフォンが配置されていると判断したときは、ソフトフォンを選択する。ソフトフォンは選択した結果に基づいてサーバに同一の電話番号に登録されていたIP専用電話機またはソフトフォンのネットワーク識別子を変更するためのフレームを送りIP電話機を変更する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ソフトフォンとIP専用電話機の切り換えを自動的に行う方法を提供することができた。さらに本発明により、ソフトフォンとIP専用電話機の切り換えを自動的に行うことができる携帯情報端末、IP電話システムおよびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本実施の形態が適用されるLANの概略構成を示す図である。LAN10は、企業や公共施設などの限定された範囲における複数の場所の相互間で有線媒体または無線媒体を通じた相互通信を可能にする。LAN10は、ゲートウェイ・サーバ15を通じてインターネット・ネットワーク11に接続され、IPゲートウェイ・サーバ(以後、単にIPゲートウェイという。)17を通じて公衆電話回線13に接続されている。
【0016】
LAN10には、IEEE傘下のIEEE802委員会で策定されたLANの標準規格の1つであるイーサネット(IEEE802.3)が採用されている。イーサネットは、7層あるOSI参照モデルの物理層とデータリンク層で規定されている。ただし、本発明はLANの規格をイーサネットに限定するものではなく、トークン・バス(IEEE802.4)、トークン・リング(IEEE802.5)などの規格を採用してもよい。LAN10は、また、IEEE802委員会で策定された無線LAN(IEEE802.11)の規格に基づいた高速無線ネットワークも含む。
【0017】
LAN10は、無線基地局(アクセス・ポイントともいう。)23、25、中継装置27、28、ゲートウェイ・サーバ15、IPゲートウェイ17、DHCPサーバ19などで構成されている。中継装置27、28のROMには、それぞれMACアドレスが格納されている。MACアドレスは、LANカードなどのネットワーク機器に与えられた固有の物理アドレスであり、イーサネットでは48ビットで構成されている。中継装置27、28は、それぞれ256個のポートを備えており、それぞれにポート・アドレスが割り当てられている。ここでのポート・アドレスは、トランスポート層で処理されるポート・アドレスではなく、中継装置27、28の出口となる物理層のポートのアドレスをいう。
【0018】
図1ではコネクタ29a〜29fがLANケーブルで中継装置27の各ポートに接続され、コネクタ29gがLANケーブルで中継装置28のポートに接続されている。中継装置27、28は、データリンク層で動作するレイヤ2のスイッチとしてMACフレームの転送を行うとともに、OSI参照モデルのすべての層を認識して動作することによりポート・アドレスを送出することができる。中継装置27は、レイヤ2のデータリンク層とレイヤ3のネットワーク層で動作するスイッチを含んでもよい。中継装置の構成については後に詳しく説明する。
【0019】
コネクタ29a〜29gは建物の所定の位置に固定されており、ユーザはRJ−45のコネクタを備えるLANケーブルで、IP専用電話機31およびノートPC33をいずれのコネクタに対しても着脱できるようになっている。なお、中継装置27、28とコネクタ29a〜29gとの間は光ケーブルで接続するようにしてもよい。図1では例示的にコネクタ29aにはIP専用電話機31が接続され、コネクタ29bにはノートPC33が接続されている。DHCPサーバ19は、DHCPクライアントであるノートPC33やIP専用電話機31のためにあらかじめ用意したリース・アドレス(IPアドレス)の中からDHCPクライアントに対して1つのIPアドレスを動的に割り当てる。
【0020】
ノートPC33には、無線LAN装置が搭載され、無線基地局23、25と無線通信ができるようになっている。ノートPC33にはさらにソフトフォンの機能を実現するIP電話プログラムが実装されている。以後、IP電話プログラムが実装されたノートPC33をIP電話に着目するときはソフトフォン33aということにする。また、ソフトフォン33aとIP専用電話機31を区別する必要がないときはIP電話機ということにする。
【0021】
LAN10は、コンピュータのデータ通信ネットワークだけでなくVoIPのIPネットワークも構成する。LAN10において実現されるIPネットワークは、ITU(International Telecomunication Union)の組織の1つであるITU−Tによって標準化されたH.323やIETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されたSIPなどの周知のプロトコルを採用することができる。ゲートウェイ17は、LAN10においてインターネット・プロトコル構内交換機(IP−PBX:Internet Protocol Private Branch eXchange)を構成する。
【0022】
IPゲートウェイ17は、呼制御またはシグナリングのプロトコルと、音声や画像データのプロトコルの両方を公衆電話回線13とLAN10との間で相互変換する。ゲートウェイ17は、呼制御による電話機間の通信を確立した後に、公衆電話回線13から受け取った音声信号からパケットを組み立ててLAN10に接続されたIP電話機へ送り、IP電話機から受け取ったパケットを音声信号に変換して公衆電話回線13に送る。
【0023】
IPゲートウェイ17は、IPアドレスと電話番号を相互変換するためのアドレス・テーブルを備えており、公衆電話回線とIP電話機との間での呼制御をしたり、LAN10に接続されたIP電話機間での内線通話のための呼制御とセッションの確立をしたりする。IPゲートウェイ17はまた、IP電話機の認証や登録を行ったり、転送や保留などの付加機能を実現したりする。IPゲートウェイ17の機能は、複数のサーバに分散してもよい。ゲートウェイ・サーバ15は、LAN10とインターネット11のデータ転送を中継する。
【0024】
無線基地局23、25は、LAN10のイーサネットに有線接続されており、ノートPC33は、無線基地局23、25を通じてLAN10に接続することができる。無線基地局23、25は、それぞれの電波到達範囲により仕切られた空間内に無線セル35、37を形成して、ノートPC33との間でインフラストラクチャ・モードのネットワークを構成する。
【0025】
ノートPC33は、無線セル35の範囲に位置するときは、無線基地局23と無線通信することができ、無線セル37の範囲に位置するときは、無線基地局25と無線通信することができる。無線セル35と無線セル37は重なることもあるが、その場合は、ノートPC33は電波強度の強い方の無線基地局を選択して無線接続を確立する。図1では、ノートPC33は、セル35の範囲に存在しており、無線基地局23との通信が確立されている。無線基地局23、25は、それぞれMACアドレスを格納したROMを備える。
【0026】
IP専用電話機31は、イーサネットのインターフェースを備えているが、受話器の形状や数字のボタンの配列などは一般のビジネスホンと同様である。IP専用電話機31は、短縮ダイヤル、保留、および転送といった様々な電話の機能を備えており、ビジネスホンと同じように使用することができる。IP専用電話機31は、ユーザの机39の上に置かれて使用される。ソフトフォン33aは、IP専用電話機31のユーザと同一のユーザが使用することを前提にしており、図1では同じ机39の上に配置されている。IP専用電話機31とソフトフォン33aは同じ電話番号を共用する。
【0027】
図2(A)は、ノートPC33の概略構成を示すブロック図で、図2(B)はノートPC33に実装されるソフトウェアの概略構成を示すブロック図である。図2(A)、(B)からは本実施形態との関連性が小さい周知の要素は省略している。ノートPC33には、IP電話プログラム91、LAN接続プログラム89、および本発明にかかる切り替え操作を実行する切替プログラム87を実装している。IP電話プログラム91およびLAN接続プログラム89は周知である。ノートPC33は、IP電話プログラム91が実行されるとソフトフォン33aとして動作する。ノートPC33は、ソフトフォン33aとして機能している間もノートPCとしてのデータ処理をすることができる。デバイス・ドライバ83は、OS85がハードウェア81を制御するためのソフトウェアである。
【0028】
IP専用電話機31ではハードウェアが音声を電気信号に変換しているのに対して、ソフトフォンではIP電話プログラム91が音声を電気信号に変換してパケットを生成する。LAN接続プログラム89は、ノートPC33と無線基地局23、25または中継装置27、28に対する無線接続または有線接続の動作を制御する。切替プログラム87は、IP専用電話機31とソフトフォン33aとの間での切り換え作業を行う。CPU51は、メイン・メモリ53に読み出したプログラムを実行して所定の作業をするとともにノートPC33の全体の動作を制御する。メイン・メモリ53は、CPU51が実行するプログラムやデバイス・ドライバ83を一時的に記憶したり、CPU51に作業領域を提供したりする。
【0029】
ハードディスク55は、図2(B)に示した各種プログラム、オペレーティング・システム(OS)、およびデバイス・ドライバ83を格納する。サウンド・カード57には、ノートPC33をソフトフォンとして使用する際に、ヘッドフォンとマイクが一体になったヘッド・セット63が接続される。サウンド・カード57は、ヘッド・セット63からの音声信号を処理してディジタル信号に変換したり、ノートPC33が生成したディジタルの音声信号をヘッド・セットから出力するためにアナログ信号に変換したりする。サウンド・カード57には、CODEC(CoderDECorder)が実装されている。
【0030】
CODECは、ハードウェアおよびソフトウェアで構成され、音声データをストリーミングで送受信するためにアナログ信号とディジタル信号を双方向に変換する。CODECは、アナログ信号を標本化、量子化、および符号化してディジタル信号に変換しさらにパケット化する。パケットは、有線LANカード59または無線LANカード61を通じてLAN10との間で交換される。符号化の方式には、PCM(Pulse Code Modulation)やCELP(Code Excited Linear Prediction)が採用される。音声データの品質は、サンプリング周波数や量子化ビット数に依存する。サンプリング周波数や量子化ビット数は、通信速度の範囲内に設定されていないとストリーミング送信ができなくなり音声がとぎれてしまう。
【0031】
IP電話プログラム91はLAN接続プログラム89から、有線通信または無線通信の接続帯域幅(通信速度)に関する情報を受け取ることができ、ユーザは手動操作でCODECの設定を行うことができる。具体的には、通信速度が速いときは、サンプリング周波数や量子化ビット数を大きい値に設定し、通信速度が遅いときはその逆に設定する。本実施の形態では、ソフトフォン33aが無線接続されたときには、切換プログラム87がLAN接続プログラム89から接続帯域幅に関する情報を受け取り、IP電話プログラム91を通じて通信速度に適合するようにCODECのソフトウェアの動作パラメータを変更することができる。
【0032】
有線LANカード59は、イーサネットに準拠したネットワーク・インターフェース・カード(NIC)で、LANケーブルを接続するRJ−45コネクタを備えている。無線LANカード61はIEEE802.11の規格に基づいて、ノートPC27が無線基地局19、31と通信するための信号処理をする。有線LANカード59および無線LANカード61はともにデータリンク層と物理層で動作する。有線LANカード59および無線LANカード61はMACアドレスを格納したROMを備えている。
【0033】
有線LANカード59および無線LANカード61のデバイス・ドライバ83がノートPC33にインストールされると、それぞれのROMに格納されたMACアドレスがノートPC33のLANデバイス・ドライバのメモリ上に保持され、以後、ノートPC33がLAN10に送出するフレームには、そのMACアドレスが発信元MACアドレスとして付加される。なお、MACアドレスはすべてのLANカードに固有の番号であるため、有線LANカード59のMACアドレスと無線LANカード61のMACアドレスは異なる値である。LCD52は、静止画および動画を表示するノートPC33のユーザ・インターフェースである。
【0034】
図3は、本実施形態におけるIP専用電話機31とソフトフォン33aとの切り替え操作を行う手順を示すフローチャートである。切り替え操作は主として、ノートPC33の位置情報をLAN10に対する接続情報から取得することと、取得した位置情報に基づいてIPゲートウェイ17に切り換え要求を出すことで構成され、これらの作業はユーザの操作を介在することなくノートPC33が自動的に行うことができる。イーサネットでは、データがMACフレームを最小単位にして転送されて接続情報の取得や切換要求が行われる。
【0035】
MACフレームは、アプリケーション層で作成されたユーザ・データにTCPヘッダおよびIPヘッダが付加されて形成されたIPパケットに、さらにイーサネット・ヘッダが付加されて形成される。イーサネット・ヘッダには、宛先MACアドレスと発信元MACアドレスを設定する。宛先MACアドレスには、すべての情報端末を宛先とするブロードキャスト・アドレスを設定することができる。また、IPヘッダは、宛先IPアドレスと発信元IPアドレスを含む。
【0036】
ブロック101では、IP専用電話機31をコネクタ29aに接続する。IP専用電話機31は、LAN10に対してブロードキャストでIPアドレス・リクエスト・フレームを送出する。そのIPアドレス・リクエスト・フレームの発信元MACアドレスには、IP専用電話機31に実装されたNICのMACアドレス(04-A3-43-5F-43-23)が設定される。このIPアドレス・リクエスト・フレームを受信したDHCPサーバ19は、用意していたリース・アドレスの中から1つのIPアドレス(aa-bb-cc-dd)を選択し、IP専用電話機31のMACアドレスを宛先MACアドレスとして設定したフレームを生成して送出する。
【0037】
ゲートウェイ17のIPアドレス17はあらかじめLAN10の管理者よりユーザに配布されている。ユーザは配布されたIPアドレスを使用してIP専用電話機31からARP(Address Resolution Protocol)リクエスト・フレームをLAN10にブロードキャストして、ゲートウェイ17のMACアドレスを取得する。
【0038】
ブロック103では、IP専用電話機31は自らの電話番号(12-345-6789)、IPアドレス(aa-bb-cc-dd)および登録を要求するメッセージを含むIPパケットに、IPゲートウェイ17のMACアドレスを宛先アドレスに設定し、自らのMACアドレスを発信元アドレスに設定したイーサネット・ヘッダを付加したMACフレームを生成してLAN10に送出する。IPゲートウェイ17は、IP専用電話機31から受け取ったMACフレームを開封して読み取ったIP専用電話機31のIPアドレス、電話番号、およびMACアドレスをアドレス・テーブルに格納しIP専用電話機31を登録する。なお、登録に当たってはユーザの認証作業も行われるがここでの手順には関係がないので省略する。
【0039】
図4(A)はIP専用電話機31の登録が行われたアドレス・テーブルの一部のデータ構造を示す。IPゲートウェイ17のアドレス・テーブルには、電話番号、MACアドレス、およびIPアドレスが関連づけられて登録されている。IP専用電話機31の登録作業が完了すると、IP専用電話機31はLAN10に接続されたIP電話機に対する内線通話および公衆電話回線13に接続された加入者電話機に対する外線通話が可能になる。発信時には、IP専用電話機31の操作ボタンから入力された相手先電話番号を含むMACフレームがIPゲートウェイ17宛に送られる。相手先電話番号が内線番号の場合は、IPゲートウェイ17は相手先電話番号に対応するIPアドレスおよびMACアドレスを、アドレス・テーブルを参照して取得し、相手先のIP電話機に送ることで呼制御をした後に、音声データの送信のために両者間のセッションを確立する。
【0040】
相手先電話番号が外線番号の場合は、IPゲートウェイ17はIPパケットに含まれたデータで呼制御をして両者を接続し、双方向にデータのプロトコル変換をしてIP専用電話機31と公衆電話回線13に接続された加入者電話機との通信を実現する。ソフトフォン33aが通話するときも同様の手順で行う。ノートPC33は、建物の中を移動してコネクタ29a〜29gを通じて有線でLAN10に接続したり、無線基地局23、25を通じて無線でLAN10に接続したりすることができる。
【0041】
ブロック105では、ノートPC33がコネクタ29bに接続される。LAN接続プログラム89は、接続を検知するとDHCPサーバ19に対するIPアドレス・リクエスト・フレームをLAN10に対してブロードキャストで送る。このMACフレームには、有線LANカード59のMACアドレス(05-B4-54-60-54-34)が発信元MACアドレスとして設定される。なお、LAN接続プログラム89は、OSI参照モデルの各層のハードウェアおよびソフトウェアと協働してIPアドレス・リクエスト・フレームやその他のフレームを処理する。
【0042】
DHCPサーバ19は、ノートPC33に割り当てるIPアドレスをIPパケットに設定したMACフレームを生成してノートPC33に返送する。IPアドレスを取得することでノートPC33はLAN10に接続された情報端末にMACフレームを送出できる準備が完了したことになり、LAN接続プログラム89は図示しない認証サーバに対してパスワードやユーザIDを送ってユーザの認証作業を行う。
【0043】
なお、LAN接続プログラム89は、有線通信に代えてまたは有線通信とともに無線基地局23に接続することもできる。この場合もノートPC33は、同様の手順でDHCPサーバ19からIPアドレスを取得する。ノートPC33が有線と無線で同時にLAN10に接続されるときは、有線LANカード59および無線LANカード61のそれぞれに対応した異なるIPアドレスを取得する。
【0044】
DHCPサーバ19から送られたMACフレームのイーサネット・ヘッダに含まれる発信元MACアドレスは、中継装置27を通過するときに中継装置27により中継装置27のMACアドレスに変更される。ブロック109では、切換プログラム87が、DHCPサーバ19から送られたMACフレームから中継装置27のMACアドレスを認識する。中継装置27は、建物の中では位置が固定されており、コネクタ29aも中継装置27から所定の距離の範囲において固定されているので、切替プログラム87は中継装置27のMACアドレスからノートPC33の位置情報を得ることができる。
【0045】
本実施の形態においてはノートPC33の位置情報は、ノートPC33がIP専用電話機31を利用した方が便利なほどIP専用電話機3に近い位置かそれ以外の位置かのいずれであるかを認識するために必要な情報である。位置情報はたとえば、ノートPC33が通常使用する机39の上にあるかそれ以外の場所にあるかを知るための情報である。ただし、本実施の形態では、ノートPCが確実に机の上にあるか否かを判断するほど正確な位置情報は必要がない。なお、1人のユーザが同一電話番号のIP専用電話機31を複数台保有するような場合は、IP専用電話機31を利用した方が便利な位置を複数設けてもよい。
【0046】
ブロック111では、ノートPC33の机39に対する物理的な距離を判断する。ノートPC33が机39から離れた場所でLAN10に接続された状態で使用されるときは、IP専用電話機31からソフトフォン33aに切り換えると、IP電話機を移動先でも使用することができるので便利である。本実施の形態では、ソフトフォン33aの位置情報をノートPC33のLAN10に対する接続情報から取得して切り換え操作の必要性を判断する。ノートPC33とLAN10は、イーサネットによる有線または無線接続のいずれかで接続されるのでそれぞれについての接続情報を説明する。
【0047】
最初にノートPC33を移動先において有線でLAN10に接続する場合の切り換え手順を説明する。ノートPC33のLAN10に対する接続をコネクタ29bからコネクタ29gに変更すると、LAN接続プログラム89は、ノートPC33からLAN10に対してブロードキャストでIPアドレス・リクエスト・フレーム送出する。
【0048】
そのMACフレームには、有線LANカード59のMACアドレスがイーサネット・ヘッダの発信元MACアドレスとして設定されている。このIPパケットを受信したDHCPサーバ19は、利用可能なリース・アドレスの中から1つのIPアドレス(aa-bb-cc-de)を選択してIPパケットのデータ・フィールドに設定し、ノートPC33のMACアドレスを宛先MACアドレスに設定したMACフレームをLAN10に送出する。
【0049】
DHCPサーバ19から送出されたMACフレームは、中継装置28を経由してノートPC33に送られる。DHCPサーバ19からノートPC33に送られるMACフレームに含まれる送信元MACアドレスは、中継装置28を経由するときに中継装置28により中継装置28のMACアドレスに変更される。LAN接続プログラム89は、MACフレームを開封して入手したIPアドレスをノートPC33に新たに設定するとともに、中継装置28のMACアドレスを切換プログラム87に渡す。切換プログラム87は、それまで接続されていた中継装置27のMACアドレスと新たに接続された中継装置28のMACアドレスが異なることを認識して、ノートPC33の位置が変化したと判断することができる。この場合は、位置情報を取得するためのLAN10に対する接続情報が、中継装置のMACアドレスということになる。
【0050】
つぎにノートPC33を移動先において無線でLAN10に接続する場合の切り換え手順を説明する。ノートPC33の位置が移動し、無線セル35の範囲を外れて無線セル37の範囲に入ったときは、ノートPC33は、無線基地局25から強いビーコン・フレームを受信する。LAN接続プログラム89は、無線基地局25に対してノートPC33の認証と接続を行う。ビーコン・フレームには、無線基地局25のMACアドレスとSSID(Service Set ID)が含まれている。無線基地局25にノートPC33が接続されると、切換プログラム87は、それまで接続されていた無線基地局23のMACアドレスと新たに接続された無線基地局25のMACアドレスが異なることを認識して、ノートPC33の位置が変化したと判断することができる。この場合は、位置情報を取得するためのLAN10に対する接続情報が、無線基地局のMACアドレスということになる。
【0051】
ブロック111で切換プログラム87が接続情報に基づいてノートPC33の位置が変化したと判断したときはブロック113に移行する。接続プログラム87はノートPC33のLAN10に対する接続場所によっては位置が変化していないと判断する場合があるが、そのときは、接続プログラム87はノートPC33の位置に変化が生じたと認識するまで待機する。ブロック113では、切換プログラム87が、ノートPC33の位置が机39の上か否かを判断する。切替プログラム87は、接続情報として中継装置27のMACアドレスまたは無線基地局23のMACアドレスを認識したときはノートPCの位置が机の上であると判断し、その他の中継装置のMACアドレスまたは無線基地局のMACアドレスを認識したときは、ノートPCの位置が机から離れていると判断する。机の上か否かを判断するための情報は、接続プログラム87が参照するテーブルを設けて、ユーザが登録することができる。
【0052】
ブロック113は、切換プログラム87が、ノートPC113の位置が机39から離れていると判断したときはブロック115に移行し、机39の上であると判断したときはブロック117に移行する。ブロック117では、切換プログラム87がブロック103で述べた手順に基づいてIP専用電話機31をゲートウェイ17に登録する。すでにゲートウェイ17のアドレス・テーブルにIP専用電話機31が登録されている場合は、切換プログラム87はそれまでの登録を維持する。
【0053】
ブロック115では、ノートPC33は、IPゲートウェイ17に自分のIPアドレス、電話番号および切り換えのメッセージを含むIPパケットにゲートウェイ17のMACアドレスを宛先MACアドレスに設定したMACフレームを無線接続または有線接続でLAN10に送出する。このときの電話番号は、IP専用電話機31に割り当てられていた電話番号と同じである。IPゲートウェイ17は、ノートPC33から受け取ったMACフレームを開封して読み取ったIPアドレス、電話番号、およびMACアドレスをアドレス・テーブルに格納して、ソフトフォン33aを登録する。このときすでに同一の電話番号に対してIP専用電話機31が登録されていた場合は、IPゲートウェイ17はIP専用電話機31の登録を抹消してその電話番号にソフトフォン33aだけを登録する。
【0054】
ノートPC33がLAN10に無線接続される場合は、ソフトフォン33aが登録されると、切換プログラム87は、LAN接続プログラム89から現在接続されている接続帯域幅に関する情報を取得し、サウンド・カード57に実装されたCODECが当該接続帯域幅に対して最適に動作するパラメータを、IP電話プログラム91を経由してCODECのソフトウェアに渡す。
【0055】
ブロック103、115、117でIP専用電話機31またはソフトフォン33aのいずれかが登録されたときには、IP電話プログラム91はLCD52にその旨を表示する。また、IP専用電話機31では、IP専用電話機31が現在登録されているか否かの表示がされる。ユーザは、図3に示した手順とは別に、IP専用電話機31のボタン操作またはノートPC33のキーボードによる強制操作により登録を変更することができる。たとえば、切換プログラム87によりノートPC33が机39の上に位置することが認識されてIP専用電話機31が登録されたが、ノートPC33の位置は正確には机の上ではないためにソフトフォン33aを使用する必要がある場合は、ユーザは手動操作で強制的にソフトフォン33aを登録することができる。
【0056】
図4(B)はソフトフォン33aの登録が行われたIPゲートウェイ17のアドレス・テーブルの一部のデータ構造を示す。図4(A)と比べると、同一の電話番号に対するMACアドレスとIPアドレスが、IP専用電話機31から有線接続されたソフトフォン33aに変更されたことが示されている。ここでのMACアドレスは、有線LANカード59のROMに格納されていたものである。ソフトフォン33aが有線接続とともに無線接続でも登録された場合は、同一の電話番号に対する無線LANカード61のMACアドレスと、そのMACアドレスに割り当てられたIPアドレスがアドレス・テーブルに追加される。ソフトフォン33aが無線接続だけで登録された場合は、同一の電話番号に対しては無線LANカード61のMACアドレスと、そのMACアドレスに割り当てられたIPアドレスだけがアドレス・テーブルに格納される。
【0057】
登録作業が完了し、切換プログラム87の制御の下、ソフトフォン33aがIPゲートウェイ17にログオンを完了すると、IP専用電話機31に代わって内線および外線の着信および発信が可能になる。ブロック115、117が完了してIP専用電話機31またはソフトフォン33aのいずれか一方が使用可能になると、ブロック111に戻って再びノートPC33の位置が変化したか否かを接続情報に基づいて切換プログラム87が監視する。
【0058】
ここでブロック111では、ノートPC33のLAN10に対する接続位置を、コネクタ29bからコネクタ29cに変更する場合もある。コネクタ29cにノートPCを接続したときは、ノートPC33は机39から離れた場所に存在するものとする。この場合は、接続先の中継装置には変化がないので、切換プログラム87は、ノートPC33の位置が変化したことを認識することができない。また、同一の無線セル35の範囲内では、無線接続する無線基地局に変更がないので、同様に切換プログラム87はノートPC33の位置が変化したことを認識することができない。この場合でも切換プログラム87がノートPC33の位置の変化を認識する方法として本実施の形態では2つの方法を提供する。1つは、中継装置27のポート・アドレスに基づいてノートPC33の位置が変化したと判断する方法である。ただし、MACフレームには中継装置のポート・アドレスが含まれないので、それを取得する方法については図5を参照して中継装置27の内部構造とともに後で説明する。
【0059】
もう1つの方法は、無線基地局が発信する電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定する方法である。インフラストラクチャ・モードでは、無線基地局23、25は周期的にビーコン・フレームを送信している。LAN接続プログラム89は、無線LANカード61の受信回路を通じて、無線基地局23から送信されたビーコン・フレームのプリアンブルから受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定することができる。ノートPC33の位置が、無線セル35の範囲で無線基地局23からの距離が変化するとRSSIが変化するため、ノートPC33が机39の上にあるか机39から離れた位置にあるかを判断することができる。
【0060】
切換プログラム87は、LAN接続プログラム89から受け取ったRSSIの値から、ノートPC33が机39の上に置かれたときの値から所定値以上変化したことを認識すると、切換プログラム87は、コネクタ29cを経由してLAN10に有線接続してIPゲートウェイ17に登録を要求する。登録が完了すると、ソフトフォン33aは、IP専用電話機31に代わって有線接続により使用できるようになる。この場合は、位置情報を取得するためのLAN10に対する接続情報が、無線基地局が送信する電波のRSSIの値ということになる。
【0061】
ノートPC33は、無線基地局23に接続されている状態で移動すると、無線基地局25のRSSIの値も測定することができるようになる。無線基地局25からのRSSIの値が所定値以上になったときは、切換プログラム87は、ノートPC33が机39から離れた位置にあると判断して、中継装置27を経由した有線接続または無線基地局23を経由した無線接続でIPゲートウェイ17に登録を要求することができる。この場合は、位置情報を取得するためのLAN10に対する接続情報が、現在接続されている無線基地局に隣接する無線基地局が送信する電波のRSSIの値ということになる。
【0062】
つづいて、中継装置27のポート・アドレスに基づいてノートPC33の位置の変化を判断する方法を説明する。図5は、中継装置27の概略構成を示すブロック図である。RJ−45コネクタ101a〜101fは、外部からのLANケーブルが接続される物理的なポート#1〜#6で、それぞれに8ビットのポート・アドレス00〜05が割り当てられている。ポート#1〜#6には、図1のコネクタ29a〜29fがLANケーブルで接続されている。信号処理部103a〜103fはそれぞれコネクタ101a〜101fと制御部105に接続され、物理層として動作して外部の電気信号と内部のディジタル信号を双方向に変換する。なお、コネクタと信号処理部は図では一部だけを示している。
【0063】
制御部105は、中継装置27がデータリンク層でMACフレームの転送をするスイッチとして動作するために全体の動作を制御する。制御部105はさらにポート・アドレス処理部107が生成したMACフレームを所定のポート・アドレスのコネクタからLAN10に送出する。制御部105は、送り出すMACフレームを符号化したり、受け取ったMACフレームを復号化する。制御部105のROMには、中継装置27のMACアドレスが格納されている。
【0064】
フレーム・バッファ113は制御部105に接続され、各ポートを通じて外部から転送されたMACフレームを一時的に蓄積する。フラッシュ・メモリ115は制御部105に接続され、コネクタ101a〜101fのポート・アドレスとMACアドレスを対にしたアドレス・テーブル116を格納している。図5(B)にアドレス・テーブル116のデータ構造を示す。図1に示したように、IP専用電話機31はポート#1に接続され、ノートPC33はポート#2に接続されている。そしてアドレス・テーブル116には、各ポートに接続されている情報端末装置のMACアドレスが宛先MACアドレスとして登録される。
【0065】
ポート・アドレス処理部107は制御部105とフラッシュ・メモリ115に接続され、各ポート#1〜#6に接続された情報端末から受け取ったポート・アドレス要求フレームに対し、当該情報端末が接続されているコネクタのポート・アドレスを含むMACフレーム上でIPパケットを生成し、制御部105を通じて要求した情報端末に返送する。ポート・アドレスは、IPパケットのデータ・フレームにおける最初の8バイトに定義されたMACフレームのLLCフィールド(Logical Link Control)のコントロール・フィールドなどに設定することができる。
【0066】
つぎに、中継装置27のMACフレームの転送動作を説明する。制御部105は、コネクタ101a〜101fのいずれかに新たに接続された情報端末からMACフレームを受け取ったときには、受け取ったコネクタのポート・アドレスと送出した情報端末のMACアドレスとをアドレス・テーブル116に登録する。制御部105は、各情報端末から受け取ったMACフレームを一旦フレーム・バッファ113に格納する。
【0067】
制御部105はフレーム・バッファ113に格納されたMACフレームの宛先MACアドレスに対応するポート・アドレスを、アドレス・テーブル116を参照して調べ、そのポート・アドレスのコネクタだけからMACフレームを送出することで中継装置27の内部で全二重通信を実現する。制御部105は、フレーム・バッファ113に蓄積したMACフレームの宛先MACアドレスを、アドレス・テーブル116から見つけることができないときは、当該MACフレームを、受信したポート以外のすべてのポートから送出する。制御部105は所定の時間が経過するとフレーム・バッファ113のデータをすべて消去して再度ポート・アドレスと宛先MACアドレスの関係を学習しフレーム・バッファ113に記憶していく。
【0068】
つづいて、中継装置27がノートPC33の要求に応じてノートPC33が接続されているコネクタのポート・アドレスを送出する手順について説明する。MACフレームには、レイヤ2またはレイヤ3のスイッチのポート・アドレスは含まれていないので、これを取得するには特別な工夫が必要である。ユーザがノートPC33をコネクタ29bから外してポート#3に接続されたコネクタ29cに接続すると、図3のブロック111で説明したようにLAN接続プログラム89は、DHCPサーバ19からIPアドレスを取得して、ノートPC33をLAN10に接続させる。切換プログラム87は、現在接続されているポート#3のポート・アドレスを取得するためのメッセージを作成する。ノートPC33はデータ・フィールドにこのメッセージを設定したポート・アドレス要求のIPパケットを生成し、宛先MACアドレスに中継装置27のMACアドレスを設定したMACフレームをLAN10に送出する。
【0069】
制御部105は、ノートPC33から受け取ったMACフレームの宛先MACアドレスが自らであることを認識すると、これをフレーム・バッファ113に記憶しないでポート・アドレス処理部107に渡す。ポート・アドレス処理部107は、IPパケットを開封してメッセージを解読する。そして、MACアドレス処理部107は、アドレス・テーブル116を参照してMACフレームの発信元MACアドレスである有線LANカード59のMACアドレスに対応するポート・アドレス(02)を取得する。
【0070】
ポート・アドレス処理部107は、ポート・アドレスを取得するとそれをデータ・フィールドに設定し、宛先MACアドレスには有線LANカード59のMACアドレスを設定したMACフレームを生成してノートPC33に返送する。その結果、切換プログラム87は、現在接続されているイーサネットのポート・アドレスを取得することができる。イーサネットのポート・アドレスは、コネクタ毎に異なるので、切換プログラム87は中継装置23、25のMACアドレスから位置情報を取得するよりも高い精度を得ることができる。この場合は、位置情報を取得するためのLAN10に対する接続情報が、中継装置のポート・アドレスということになる。これまで説明した複数の接続情報は、位置情報の判断のために単独で使用しても複数組み合わせて使用してもよい。
【0071】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
IP電話機とソフトフォンを併用する場合の切換操作に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明が適用されるネットワーク構成の一例を示す図である。
【図2】ノートPCの概略構成を示すブロック図である。
【図3】IP専用電話機とソフトフォンとの切り替え操作を行う手順を示すフローチャートである。
【図4】IPゲートウェイのアドレス・テーブルのデータ構造を示す図である。
【図5】中継装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0074】
31…IP専用電話機
33…ノートPC
33a…ノートPCに実装されたソフトフォン
23、25…無線基地局
29a〜29g…イーサネットのコネクタ
59…有線LANカード
61…無線LANカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバを含むローカル・エリア・ネットワークに同一の電話番号を共用するIP専用電話機とソフトウェア・フォンとが接続される環境において、前記ソフトウェア・フォンが実行する前記IP専用電話機と前記ソフトウェア・フォンとの切り替え方法であって、
前記ソフトウェア・フォンの前記ローカル・エリア・ネットワークに対する接続情報から自らの位置情報を取得するステップと、
前記位置情報に基づいて前記IP専用電話機または前記ソフトウェア・フォンのいずれかを選択するステップと、
前記選択するステップに応答して、前記サーバに前記同一の電話番号に登録されていた前記IP専用電話機または前記ソフトウェア・フォンのネットワーク識別子を変更するためのフレームを送るステップと
を有する切り替え方法。
【請求項2】
前記ローカル・エリア・ネットワークの規格がイーサネット(登録商標)である請求項1に記載の切り替え方法。
【請求項3】
前記接続情報が、MACフレームの転送を行う中継装置の入出力ポートに対応するポート・アドレスを含む請求項1または請求項2に記載の切り替え方法。
【請求項4】
前記接続情報が、MACフレームの転送を行う中継装置のMACアドレスを含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の切り替え方法。
【請求項5】
前記接続情報が、前記ソフトウェア・フォンと無線接続された無線基地局のMACアドレスを含む請求項1〜請求項4のいずれかに記載の切り替え方法。
【請求項6】
前記接続情報が、前記ソフトウェア・フォンと無線接続される無線基地局が送信する電波の受信信号強度値を含む請求項1〜請求項5のいずれかに記載の切り替え方法。
【請求項7】
前記接続情報が、前記ソフトウェア・フォンが現在接続されている無線基地局に隣接する無線基地局から送信された電波の受信信号強度値を含む請求項1〜請求項6に記載の切り替え方法。
【請求項8】
前記ソフトウェア・フォンが無線接続された無線基地局に対する接続帯域幅を検出し、検出した接続帯域幅に基づいて前記ソフトウェア・フォンがCODECの制御パラメータを変更するステップを有する請求項1〜請求項7のいずれかに記載の切り替え方法。
【請求項9】
ローカル・エリア・ネットワークに接続された同一の電話番号を共用するIP専用電話機とソフトウェア・フォンとを切り替える方法であって、
電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバを提供するステップと、
前記ソフトウェア・フォンの前記ローカル・エリア・ネットワークに対する接続情報から前記ソフトウェア・フォンが自らの位置情報を取得するステップと、
前記位置情報に基づいて前記IP専用電話機または前記ソフトウェア・フォンのいずれかを前記ソフトウェア・フォンが選択するステップと、
前記選択するステップに応答して前記ソフトウェア・フォンが前記同一の電話番号に登録されていた前記IP専用電話機または前記ソフトウェア・フォンのネットワーク識別子を変更するためのフレームを前記サーバに送るステップと、
前記フレームに応答して前記サーバが前記ネットワーク識別子を変更するステップと
を有する切り替え方法。
【請求項10】
前記位置情報を取得するステップが、前記ソフトウェア・フォンが有線接続された中継装置にポート・アドレス要求フレームを送信して前記中継装置のポート・アドレスを取得するステップを含む請求項9に記載の切り替え方法。
【請求項11】
前記位置情報を取得するステップが、無線基地局が送信する電波の受信信号強度値を測定するステップを含み、前記フレームを送るステップが有線接続で前記サーバに前記フレームを送る請求項9または請求項10に記載の切り替え方法。
【請求項12】
電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバとIP専用電話機とが接続されたローカル・エリア・ネットワークに接続が可能で、IP電話プログラムを実装し前記IP専用電話機と同一の電話番号を割り当てることができる携帯情報端末であって、
前記携帯情報端末の前記ローカル・エリア・ネットワークに対する接続情報から自らの位置情報を取得する手段と、
前記位置情報に基づいて前記IP専用電話機または前記携帯情報端末のいずれかを選択する手段と、
前記選択したIP専用電話機またはソフトウェア・フォンのネットワーク識別子を含むフレームを前記サーバに送る手段と
を有する携帯情報端末。
【請求項13】
前記位置情報を取得する手段が、データリンク層で動作するスイッチのMACアドレスまたはポート・アドレスを取得する手段を含む請求項12に記載の携帯情報端末。
【請求項14】
前記携帯情報端末が前記ローカル・エリア・ネットワークに接続する無線LAN装置を搭載したノートブック型コンピュータである請求項12または請求項13に記載の携帯情報端末。
【請求項15】
ローカル・エリア・ネットワークに組み込まれたIP電話システムであって、
前記ローカル・エリア・ネットワークに接続が可能なIP専用電話機と、
前記IP専用電話機と同一の電話番号を共用し前記ローカル・エリア・ネットワークに接続が可能なソフトウェア・フォンと、
電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバとを有し、
前記ソフトウェア・フォンの前記ローカル・エリア・ネットワークに対する接続情報から取得した自らの位置情報に基づいて前記ソフトウェア・フォンが前記同一の電話番号に登録されていた前記IP専用電話機または前記ソフトウェア・フォンのネットワーク識別子を変更するためのフレームを前記サーバに送る
インターネット電話システム。
【請求項16】
電話番号とそれに対応するネットワーク識別子を管理するサーバとIP専用電話機とが接続されたローカル・エリア・ネットワークに接続が可能で、IP電話プログラムを実装し前記IP専用電話機と同一の電話番号を割り当てることができる携帯情報端末に、
前記携帯情報端末の前記ローカル・エリア・ネットワークに対する接続情報から自らの位置情報を取得する機能と、
前記位置情報に基づいて前記IP専用電話機または前記携帯情報端末のいずれかを選択する機能と、
前記携帯情報端末を選択したときに前記同一の電話番号に対応する前記ネットワーク識別子を前記携帯情報端末のネットワーク識別子に変更させ、前記IP専用電話機を選択したときに前記同一の電話番号に対応する前記ネットワーク識別子を前記IP専用電話機のネットワーク識別子に変更させるフレームを前記サーバに送る機能と
を実現させるコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−65311(P2009−65311A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229675(P2007−229675)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】