説明

ITQ−27、新規結晶性微孔性材料

ITQ−27(INSTITUTO DE TECNOLOGIA QUIMICA番号27)は、四面体原子を架橋可能な原子によって連結された四面体原子のフレームワークを有する新規結晶性微孔性材料である。ここでは四面体原子フレームワークは、フレームワーク中の四面体配位原子間の相互連結によって画定されている。ITQ−27は、有機構造指向剤によってシリケート組成物中で調製可能である。これは独自のX線回折パターンを有し、それによって新規材料として識別される。ITQ−27は空気中での焼成に安定であり、炭化水素を吸収し、そして炭化水素転化に関して触媒活性である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ゼオライトおよびシリコアルミノホスフェートを含む微孔性材料は、吸収剤、触媒および触媒支持体として石油産業において幅広く使用されている。それらの結晶構造は、多くの炭化水素に類似する均一な細孔開口、チャネルおよび内部ケージの寸法(<20Å)を含有する三次元フレームワークからなる。フレームワークの組成は、それらがアニオンである組成であり得、それは負電荷を釣り合わせる非フレームワークカチオンの存在を必要とする。これらの非フレームワークカチオン、例えばアルカリまたはアルカリ土属金属カチオンは、従来の様式のイオン交換技術を利用して、もう一種のカチオンと完全または部分的に交換可能である。これらの非フレームワークカチオンが、例えば、酸処理またはアンモニウムカチオンによるイオン交換とそれに続くアンモニア除去のための焼成によってプロトン型に転化される場合、触媒活性を有するブロンステッド(Bronstead)酸部位が材料に付与される。酸性度と制限された細孔開口との組み合せによって、多くの反応におけるいくつかの生成物、反応物および/または遷移状態を排除または制限するそれらの能力のため、これらの材料に他の材料では得られない触媒特性が与えられる。非反応性材料、例えば純粋なシリカおよびアルミノホスフェートフレームワークも有用であり、そして液体、気体および反応性分子、例えばアルケンの吸収および分離プロセスにおいて使用可能である。
【0002】
ゼオライトのイオン交換および/または吸着特徴を示すモレキュラーシーブとして既知の結晶性微孔性組成物の族は、頭字語AlPOによって識別されるアルミノホスフェート、並びに特許文献1および特許文献2に開示されるような置換アルミノホスフェートである。特許文献2はシリカアルミノホスフェートの種類を開示しており、これは頭字語SAPOによって識別され、そしてそれらのX線回折パターンによって識別されるように異なる構造を有する。構造は、AlPO、SAPO、MeAPO(Me=金属)等の後ろの数値によって識別され(非特許文献1)、そしてB、Si、Be、Mg、Ge、Zn、Fe、Co、Ni等によるAlおよびP置換を含み得る。本発明は、独自のフレームワーク構造を有する新規モレキュラーシーブである。
【0003】
エクソンモービル(ExxonMobil)および他は、多くの工業的適用において様々な微孔性材料、例えばホージャサイト、モルデナイトおよびZSM−5を広範囲に使用する。かかる適用としては、改質、分解、水素化分解、アルキル化、オリゴマー化、脱蝋および異性化が挙げられる。いずれの新規材料も、現在利用されているそれらの触媒以上に触媒性能を向上させる可能性を有する。
【0004】
インターナショナル ゼオライト アソシエーション(International Zeolite Association)によって作表されるように、現在150種類以上の既知の微孔性フレームワーク構造がある。多くの炭化水素プロセスの性能向上のため、既知の材料の特性とは異なる特性を有する新規構造が必要とされている。各構造は独自の細孔、チャネルおよびケージ寸法を有し、それによって上記の通り、特定の特性が構造に与えられる。ITQ−27は新規のフレームワーク材料である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,310,440号明細書
【特許文献2】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献3】米国特許第3,354,078号明細書
【非特許文献1】フラニゲン(Flanigen)ら、Proc.7th Int.Zeolite Conf.、103頁(1986)
【非特許文献2】C.セレー(C.Serre)、G.フェレー(G.Ferey)、J.Mater.Chem.12、2367頁(2002)
【非特許文献3】N.チョン(N.Zheng)、X.ブー(X.Bu)、B.ワン(B.Wang)、P.フェン(P.Feng)、Science298、2366頁(2002)
【非特許文献4】M.R.アンダーソン(M.R.Anderson)、I.D.ブラウン(I.D.Brown)、S.ビルミノット(S.Vilminot)、Acta Cryst.B29、2626頁(1973)
【非特許文献5】W.M.マイヤー(W.M.Meier)およびH.J.モエック(H.J.Moec)、ジャーナル オブ ソリッド ステート ケミストリー(Journal of Solid State Chemistry)27、349頁(1979)
【非特許文献6】G.サストレ(G.Sastre)、J.D.ゲール(J.D.Gale)、マイクロポーラス アンド メソポーラス マテリアルズ(Microporous and mesoporous Materials)43、27頁(2001)
【非特許文献7】A.ツエル(A.Tuel)ら、J.Phys.Chem.B104、5697頁(2000)
【非特許文献8】H.コラー(H.Koller)、J.Am.Chem Soc.121、3368頁(1999)
【非特許文献9】ジャーナル オブ カタリシス(the Journal of Catalysis)4、527頁(1965)
【非特許文献10】ジャーナル オブ カタリシス(the Journal of Catalysis)6、278頁(1966)
【非特許文献11】ジャーナル オブ カタリシス(the Journal of Catalysis)61、395頁(1980)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ITQ−27(INSTITUTO DE TECNOLOGIA QUIMICA番号27)は、架橋原子によって連結された四面体原子のフレームワークを有する新規結晶性微孔性材料である。この四面体原子フレームワークは、そのフレームワーク中の四面体配位原子間の相互連結によって画定される。ITQ−27は空気中の焼成に安定であり、炭化水素を吸収し、そして炭化水素転化に対して触媒活性である。
【0007】
一実施形態において、本発明は、mR:aX:YO・nHOの組成を有するシリケート化合物である新規結晶性材料に関する。ここでRは有機化合物であり、Xは1種以上のB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrなどのいずれかの四面体配位可能な金属であり、より好ましくは1種以上の四面体配位可能な三価金属であり、そしてなおより好ましくは1種以上の元素B、Ga、AlおよびFeであり、そしてYは単独で、またはGeおよびTiなどのいずれかの他の四面体配位可能な四価金属との組み合わせでSiであり、そしてm=0.01〜1、a=0.00〜0.2およびn=0〜10である。これは表2に示されるような独自の回折パターンを有する。
【0008】
より具体的な実施形態において、本発明は、aX:YO・nHOの組成を有する焼成結晶性シリケート化合物に関する。ここでXは1種以上のB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrなどのいずれかの四面体配位可能な金属であり、より好ましくは1種以上の四面体配位可能な三価金属であり、そしてなおより好ましくは1種以上の元素B、Ga、AlおよびFeであり、そしてYは単独で、またはGeおよびTiなどのいずれかの他の四面体配位可能な四価金属との組み合わせでSiであり、そしてa=0.00〜0.2およびn=0〜10である。これは表3に示されるような独自の回折パターンを有する。
【0009】
本発明は、シリカ供給源、有機構造指向剤(SDA)、水および任意の金属を一緒に混合し、そしてシリケートを結晶化するために十分な温度および時間で加熱することによる、表2と同様の回折パターンを有する結晶性シリケート化合物の合成方法も含む。
【0010】
本発明は、炭化水素含有流から炭化水素を分離するためのITQ−27の使用を含む。
【0011】
本発明は、有機供給原料を転化生成物へと転化するための炭化水素転化触媒としてのITQ−27の使用も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は結晶性材料の新規構造である。いずれの多孔性結晶性材料と同様に、ITQ−27の構造はそのフレームワーク中の四面体配位原子間の相互連結によって画定され得る。特に、ITQ−27は、架橋原子によって連結された四面体(T)原子のフレームワークを有し、ここで四面体原子フレームワークは、表1に示される様式で最近位の四面体(T)原子を連結することによって画定される。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】
【表4】

【0017】
四面体原子は四面体配位を有し得るものであり、限定されないが、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、インジウム、スズおよびアンチモンのうち1種以上が挙げられる。
【0018】
一実施形態において、この新規結晶性シリケート化合物はmR:aX:YO・nHOの組成を有し、ここでRは有機化合物であり、そしてXは1種以上のB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrなどのいずれかの四面体配位可能な金属であり、より好ましくは1種以上の四面体配位可能な三価金属であり、そしてなおより好ましくは1種以上の元素B、Ga、AlおよびFeであり、そしてYは単独で、またはGeおよびTiなどのいずれかの他の四面体配位可能な四価金属との組み合わせでSiであり、そしてm=0.01〜1、a=0.00〜0.2およびn=0〜10である。この化合物は表2および図3に示されるような独自の回折パターンを有する。
【0019】
【表5】

【0020】
新規構造の他の実施形態としては、aX:YO・nHOの組成の焼成化合物が挙げられる。ここでXは1種以上のB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrなどのいずれかの四面体配位可能な金属であり、より好ましくは1種以上の四面体配位可能な三価金属であり、そしてなおより好ましくは1種以上の元素B、Ga、Al、Feであり、そしてYは単独で、またはGeおよびTiなどのいずれかの他の四面体配位可能な四価金属との組み合わせでSiであり、そしてa=0.00〜0.2およびn=0〜10である。この化合物は表3および図3に示されるような独自の回折パターンを有する。
【0021】
【表6】

【0022】
この新規化合物は、シリカの供給源、有機構造指向剤(SDA)、水および任意の金属の供給源を一緒に混合し、そしてシリケートを結晶化するために十分な温度および時間で加熱する方法によって製造される。この方法については以下に記載される。
【0023】
本発明の合成多孔性結晶性材料、ITQ−27は結晶相であって、四面体配位原子の交差12員環を含む独自の二次元チャネル系を有する。12員環チャネルは、約7.4オングストローム×約7.1オングストロームの架橋酸素原子間の横断面寸法を有する。
【0024】
X線回折パターンにおける変動はITQ−27の異なる化学組成形態間で生じ得、正確なITQ−27構造はその特定の組成、並びに焼成および再水和されるかどうかということのため変化し得る。
【0025】
合成された状態の形態において、ITQ−27は特徴的なX線回折パターンを有し、CuKα線によって測定された本質的な線を表2に示す。特定の組成およびその構造における充填に応じて変動が生じる。この理由のため、強度およびd−間隔は範囲として与えられる。
【0026】
本発明のITQ−27材料を焼成し、結晶化度の喪失がない状態で有機テンプレーティング剤を除去することができる。これは、炭化水素などの他のゲスト分子のその後の吸収のために材料を活性化するために有用である。CuKα線によって測定された焼成/脱水ITQ−27を独自に定義する本質的な線を表3に示す。特定の組成物、温度およびその構造における水和レベルに応じて変動が生じる。
【0027】
上記表1のように四面体原子の相互連結によってITQ−27の構造を記載することに加えて、それは、材料の全ての構造要素を含有する最小繰り返し単位である単位格子によって画定されてもよい。12員環チャネルの方向下にITQ−27の細孔構造を図2に例示する(四面体原子のみが示される)。図2において単一の単位格子単位が見られ、その限界はボックスによって画定されている。表4は、単位格子における各四面体原子の典型的な位置をオングストローム単位で記載する。各四面体原子は架橋原子に結合され、そしてそれは隣接四面体原子にも結合されている。四面体原子は四面体配位を有し得るものであり、限定されないが、1種以上のリチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、インジウム、スズおよびアンチモンが挙げられる。架橋原子は2個の四面体原子を連結可能であるものであり、例としては限定されないが、酸素、窒素、フッ素、硫黄、セレンおよび炭素原子が挙げられる。
【0028】
酸素の場合、架橋酸素が水素原子に連結されて、ヒドロキシル基(−OH−)を形成することも可能である。炭素の場合、炭素が2個の水素原子に連結されて、メチレン基(−CH−)を形成することも可能である。例えば、架橋メチレン基はジホスホン酸ジルコニウム、MIL−57において見出される。非特許文献2を参照のこと。架橋硫黄およびセレン原子は、微孔性材料のUCR−20−23族において見出される。非特許文献3を参照のこと。架橋フッ素原子は、ABW構造型を有するリチウムヒドラジニウムフルオロベリレートにおいて見出される。非特許文献4を参照のこと。他の結晶力(例えば、無機または有機種の存在)のため、または架橋原子の四面体の選択によって、四面体原子が動き回るため、x座標位置に関して±0.5オングストロームの範囲が暗示され、そしてyおよびz座標位置に関して±1.0オングストロームの範囲が暗示される。
【0029】
【表7】

【0030】
【表8】

【0031】
【表9】

【0032】
【表10】

【0033】
完全連結された三次元フレームワークにおいて、上記で定義されたように多数の単位格子を連結することによって、ITQ−27の完全構造は構築される。1つの単位格子中の四面体原子は、その隣接する単位格子の全てにおいて特定の四面体原子に連結される。ITQ−27の所定の単位格子に関して、全ての四面体原子の連結が表1に記載されるが、連絡は同一単位格子中の特定の原子に対するものでなくてもよく、隣接する単位格子に対するものであってもよい。表1に記載される連絡は全て、それらが同一単位格子中または隣接する単位格子においてであることに関係なく、最近位の四面体(T)原子に対するものである。
【0034】
表4に示されるデカルト座標は、理想構造における四面体原子の位置を正確に反映し得るが、真の構造は、上記表1に示されるようにフレームワーク原子間での連結性によって、より正確に記載され得る。
【0035】
この連結性を記載するもう1つの方法は、非特許文献5において微孔性フレームワークに適用されるように、配位配列の使用による。微孔性フレームワークにおいて、各四面体原子、N、(T原子)は、架橋原子(典型的に酸素)を通してN=4の隣接T原子に連結される。次いで、これらの近隣T原子は、次のシェルにおいてNのT原子に連結される。第2のシェルにおけるN原子は、第3のシェルにおいてNのT原子に連結され、この様式が続く。各T原子は一度だけ数えられ、例えば、T原子が4員環にある場合、第4のシェルにおいてN原子は2回数えられない。この方法論を使用して、T原子の4連結網のそれぞれの独自のT原子に対して配置配列を決定することができる。以下の線は、各シェルのT原子の最大数を記載する。
【0036】
=1 N≦4 N≦12 N≦36 N≦4・3k−1
【0037】
【表11】

【0038】
所定の構造に関する配位配列を決定するための1つの方法は、コンピュータープログラム zeoTsitesを使用するフレームワーク原子の原子座標からである(非特許文献6を参照のこと)。
【0039】
ITQ−27構造に関する配位配列を与える。T原子連結性は表1に記載され、これはT原子のみに関する。酸素などの架橋原子は通常、T原子を連結する。ほとんどのT原子は架橋原子を通して他のT原子に連結されるが、フレームワーク構造を有する材料の特定の結晶において、多くのT原子が互いに連結しなくてもよいことは認識される。非連結性の理由は、限定されないが、結晶の端部に位置するT原子および例えば、結晶中の空孔によって生じる欠陥部位が挙げられる。表1および表5に記載されるフレームワークはその組成、単位格子寸法または空間群対称性によって、いずれかの形式に限定されない。
【0040】
理想構造は4座標T原子のみを含有するが、特定の条件下では、いくつかのフレームワーク原子は5座標または6座標であってもよい。これは例えば、材料の組成物が主にリンおよびアルミニウムT原子を含有する場合、水和条件下で生じ得る。生じる場合、T原子が水分子(−OH)またはヒドロキシル基(−OH)の1個もしくは2個の酸素原子に配位してよいことがわかっている。例えば、非特許文献7に記載されるように、モレキュラーシーブAlPO−34が、いくつかのアルミニウムT原子の配位を水和条件下で4座標から5座標および6座標へと可逆変化させることは既知である。非特許文献8に記載されるように、材料がフッ素の存在下で調製されて、5座標T原子を有する材料を製造する場合、いくつかのフレームワークT原子をフッ化物原子(−F)に配位することも可能である。
【0041】
本発明は、モル比で以下の範囲内:
R/YO 0.01〜1
O/YO 2〜50
X/YO 0〜.2
そして好ましくは以下の範囲内:
R/YO 0.1〜.5
O/YO 5〜20
X/YO 0〜.1
の組成で、シリカ供給源、有機構造指向剤(SDA)、水および任意の金属、Xを一緒に混合することによる、表2と同様の回折パターンを有するITQ−27の結晶性シリケート組成物の合成方法も含む。Xは1種以上のB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrなどのいずれかの四面体配位可能な金属であり、より好ましくは1種以上の四面体配位可能な三価金属であり、そしてなおより好ましくは1種以上の元素B、Ga、AlおよびFeであり、そしてYは単独で、またはGeおよびTiなどのいずれかの他の四面体配位可能な四価金属との組み合わせでSiである。
【0042】
前記有機構造指向剤(SDA)は、好ましくは、ジフェニル−ジメチルホスホニウムである。図1を参照せよ。シリカの供給源は、コロイド状、ヒュームドまたは沈殿シリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム或いはオルトケイ酸テトラエチルなどの有機ケイ素等であり得る。金属の供給源は、ホウ酸、ゲルマニウム(IV)エトキシド、酸化ゲルマニウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、並びに硝酸鉄、塩化鉄および硝酸ガリウムなどの金属Xの様々な塩等であり得る。次いで、シリケートを結晶化させるために十分な温度および時間で混合物を加熱する。
【0043】
所望の範囲まで材料のX/YOモル比次第で、合成された状態のITQ−27に存在するいずれのカチオンも、他のカチオンによるイオン交換によって当該分野で周知の技術に従って置換可能である。好ましい置換カチオンとしては、金属イオン、水素イオンおよび水素前駆体、例えばアンモニウムイオンおよびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいカチオンは、特定の炭化水素転化反応に関する触媒活性を調整するものである。これらとしては、水素、希土類元素、並びに元素周期表のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族およびVIII族が挙げられる。
【0044】
既存の商業的/工業的に重要である多くを含む多種多様な化学的転化プロセス、特に有機化合物転化プロセスを触媒するために、本発明の結晶性材料を使用することができる。それ自体で、または他の結晶性触媒を含む一種以上の他の触媒活性物質と組み合わせて、本発明の結晶性材料によって有効に触媒される化学的転化プロセスの例としては、酸活性を有する触媒を必要とするものが挙げられる。
【0045】
従って、活性型ITQ−27は高い酸活性を示し得、これはアルファテストで測定可能である。アルファ値は、標準触媒と比較された触媒の触媒分解活性のおよその指示であり、そしてそれは相対速度定数を与える(単位時間あたりの触媒容積あたりのノルマルヘキサン転化の速度)。1のアルファとしてみなされるシリカ−アルミナ分解触媒を基準とする(速度定数=0.016秒−1)。アルファテストについては、特許文献3;非特許文献9;非特許文献10;および非特許文献11に記載されており、それぞれ記載に関して本明細書に援用される。本明細書で使用されるテストの実験条件としては、非特許文献11に詳細に記載されるように、538℃の一定温度および可変流速が挙げられる。
【0046】
触媒として使用される場合、有機成分の一部または全てを除去するように本発明の結晶性材料に処理を施してもよい。これは、合成された状態の材料を少なくとも1分間、そして一般的に20時間を超えない時間で少なくとも約370℃の温度で加熱する熱処置によって都合よく実行される。熱処置の間、大気圧より低い圧力を利用することができるが、便宜上、大気圧が望ましい。熱処置は約927℃までの温度で実行可能である。特に金属、水素およびアンモニウムの形態の熱処理された製品は、特定の有機、例えば、炭化水素の転化反応の触媒において特に有用である。
【0047】
触媒として使用される場合、水素化−脱水素化作用が実行される水素化された成分、例えばタングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、または貴金属、例えば限定されないが、白金もしくはパラジウムと結晶性材料を本質的に組み合わせることができる。かかる成分は共結晶化(co−crystallization)を経由して組成物中に存在可能であるか、IIIA族元素、例えばアルミニウムが構造中に存在する範囲まで組成物中に交換可能であるか、その中に浸透可能であるか、またはそれと本質的に物理的に混合可能である。かかる成分は、例えば、白金の場合、白金金属含有イオンを含有する溶液でITQ−27を処理することによって、その中またはその上に浸透可能である。従って、この目的のための適切な白金化合物としては、クロロ白金酸、二塩化白金および白金アミン錯体を含有する様々な化合物が挙げられる。
【0048】
本発明の結晶性材料は、有機化合物転化プロセスにおいて吸着剤または触媒として利用される場合、少なくとも部分的に脱水されるべきである。これは、空気、窒素等などの雰囲気中で、大気圧、大気圧より低い圧力または大気圧より高い圧力において30分から48時間、100℃〜約370℃の範囲の温度まで加熱することによって実行可能である。脱水は、単純にITQ−27を真空下に置くことによって室温でも実行可能であるが、十分量の脱水を得るために、より長時間が必要とされる。
【0049】
多くの触媒の場合、有機転化プロセスにおいて利用される温度および他の条件に耐性を示すもう一種の材料と新規結晶を組み合わせることが望ましい。かかる材料としては、活性および不活発材料並びに合成または天然由来ゼオライト、並びに無機材料、例えば粘土、シリカおよび/またはアルミナなどの金属酸化物が挙げられる。後者は天然由来であっても、またはゼラチン沈殿物もしくはゲルの形態であってもよく、シリカと金属酸化物との混合物が挙げられる。新規結晶とともに、即ちそれと組み合わせて、または新規結晶の合成間に存在する活性材料の使用は、特定の有機転化プロセスにおいて触媒の転化および/または選択性を変更する傾向がある。不活発材料は、所定のプロセスにおいて転化の量を制御するための希釈剤として適切に役立つため、反応速度を制御する他の手段を利用せずに、経済的および規則的に製品を得ることができる。商業的な操作条件下で触媒の粉砕強度を改善するために、これらの材料を天然由来の粘土、例えば、ベントナイトおよびカオリンに組み入れることができる。前記材料、即ち粘土、酸化物等は触媒のバインダーとして機能する。商業的用途において触媒が粉末状材料へと分解されるのを防ぐことが望ましいため、良好な粉砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土および/または酸化物バインダーは、通常、触媒の粉砕強度を改善する目的のためだけに利用されている。
【0050】
新規結晶と混成可能である天然由来の粘土としてはモンモリロナイト族およびカオリン族が挙げられ、これらの族にはサブベントナイト、並びにディキシー(Dixie)、マクネーミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)およびフロリダ(Florida)粘土等として一般的に既知のカオリンが挙げられる。これらの主要鉱物成分はハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライトまたはアナウキサイトである。採掘された状態で、または焼成、酸処理もしくは化学的変性を最初に受けたかかる粘土を使用することができる。本結晶と混成するために有用なバインダーとしては、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナおよびそれらの混合物などの無機酸化物も挙げられる。
【0051】
前記材料に加えて、新規結晶を多孔性マトリックス材料、例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア並びに三成分組成物、例えば、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアと混成することができる。
【0052】
超微粒子状結晶性材料と無機酸化物マトリックスとの相対的な割合は広範囲に異なり、結晶含量は約1重量%〜約90重量%で変動し、そして通常、特に複合体がビーズの形態で調製される場合、複合体の約2重量%〜約80重量%の範囲内である。
【0053】
本発明の本質およびその調製の様式をより完全に説明するために、以下の例を示す。
【実施例】
【0054】
実施例1:ジフェニル−ジメチル−ホスホニウムの合成
COの存在下でクロロホルム中ヨウ化メチルによるジフェニルホスフィンのメチル化によって、図1に示されるジフェニル−ジメチル−ホスホニウムテンプレートを得た。次いでそれを一晩、アニオン交換樹脂によって相当する水酸化物にバッチ式で変換した。窒素雰囲気下(または水の不在下)で10.80g(0.058モル)のジフェニルホスフィンを50mlのイソプロパノールに溶解した。次いで9.55gの炭酸カリウムセスキ水和物を添加し、そして混合物を撹拌した。最後に24.60g(0.173モル)のヨウ化メチルを滴下した。48時間後、8gのヨウ化メチルを再び添加し、そして混合物を全5日間、放置した。
【0055】
標準方法を使用してイソプロパノールを排除し、そして固体をクロロホルムで洗浄した。次いで生成物をクロロホルム中に溶解した。クロロホルムを蒸発させ、そして固体をジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させた。18.426gのジフェニル−ジメチル−ホスホニウムヨージドが得られた(収率93.2重量%)。
【0056】
この18.426gのジフェニル−ジメチル−ホスホニウムヨージドを予め水中に溶解し、一晩バッチ式で58.15gのアニオン交換樹脂によって相当する水酸化物へと変換すると、183.52gの0.27Mジフェニル−ジメチル−ホスホニウムヒドロキシド溶液が得られ(交換収率92%)、これをSDA供給源として使用する。
【0057】
実施例2:ITQ−27の合成
テフロン(登録商標)(Teflon)ライニングステンレス鋼オートクレーブにおいて熱水条件下および連続撹拌下で、以下の組成のゲルから合成を実行した。
SiO:0.014 Al:0.50 MePhPOH:0.50 HF:4.2 H
【0058】
この合成において、9.73gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)および0.28gのアルミニウムイソプロポキシドを、0.27モル/1000gの溶液濃度を有する86.01gのジフェニル−ジメチル−ホスホニウムヒドロキシド(MePhPOH)溶液で加水分解した。次いで、SiおよびAl前駆体が完全に加水分解し、そしてゲル濃度に到達するまで混合物を室温で撹拌した。最後に0.97gのHF溶液(48重量%)を添加し、そして混合物を撹拌することによって均質化し、64日間タンブリング下で150℃でオートクレーブ処理した。固体を濾過によって回収し、蒸留水で洗浄して、373Kで乾燥させることによって純粋なITQ−27が得られる。
【0059】
実施例3:ITQ−27の合成
0.29モル/1000gの溶液濃度を有する95.04gのジフェニル−ジメチル−ホスホニウム(MePhP)ヒドロキシド中で0.32gのアルミニウムイソプロポキシドおよび11.50gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加水分解することによってITQ−27の合成を実行した。この混合物を撹拌下で濃縮し、そして加水分解において形成されたアルコールを完全に蒸発させた。1.14gのHF溶液(48.1重量%)を添加し、そして過剰量の水の完全蒸発まで混合物を撹拌下で放置した。少量の非晶質材料を有するITQ−27の種結晶を添加した(混合物中の全シリカに対して5重量%)。ゲルの組成は以下の通りである:
SiO:0.014 Al:0.50 MePhPOH:0.50 HF:3 H
テフロン(登録商標)(Teflon)ライニングステンレス鋼オートクレーブ中、タンブリング下で混合物を48日間加熱した。生成物は純粋なITQ−27であった。空気中、580℃まで3時間、試料を焼成した。
【0060】
製造された材料および焼成された材料のX線回折パターンを図3に示し、そして表6および表7に与える。窒素およびアルゴンを吸着することによって、焼成ITQ−27試料の多孔性を測定した。得られた結果は以下の通りである:
・床表面積:450m/g
・微孔面積:434m/g
・微孔容積:0.21cm/g
・孔直径:6.7Å
【0061】
【表12】

【0062】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ジフェニルジメチルホスホニウム、有機構造指向剤(SDA)の表示。
【図2】4個の単位格子が存在し、その縁部が灰色のボックスによって画定される、四面体原子のみを示すITQ−27のフレームワーク構造。
【図3】合成された状態のITQ−27および焼成/脱水されたITQ−27のX線回折パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋原子によって連結された四面体原子(T)のフレームワークを有し、明細書の表1に示される様式で最近位の四面体(T)原子を連結することによって四面体原子フレームワークが画定されることを特徴とする合成結晶性材料。
【請求項2】
前記四面体原子がLi、Be、Al、P、Si、Ga、Ge、Zn、Cr、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrよりなる群から選択される1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶性材料。
【請求項3】
前記架橋原子がO、N、F、S、SeおよびCよりなる群から選択される1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶性材料。
【請求項4】
実質的に明細書の表2に明示されるピークを含むX線回折パターンを特徴とする合成された状態の合成多孔性結晶性材料。
【請求項5】
mR:aX2O3:YO2・nH2O(式中、Rは有機化合物であり、XはB、Ga、AlおよびFeよりなる群から選択される1種以上の金属であり、YはSi、GeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の金属であり、m、aおよびnは10以下の実数である)の組成を有することを特徴とする請求項4に記載の結晶性材料。
【請求項6】
実質的に明細書の表3に明示される最も有意な線を含むX線回折パターンを有することを特徴とする焼成脱水材料。
【請求項7】
aX2O3:YO2・nH2O(式中、XはB、Ga、AlおよびFeよりなる群から選択される1種以上の金属であり、YはSi、GeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の金属であり、aおよびnは10以下の実数である)の組成を有することを特徴とする請求項6に記載の焼成脱水材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の材料を使用することを特徴とする炭化水素含有流から炭化水素を分離する方法。
【請求項9】
有機化合物を含む供給原料を少なくとも一種の転化生成物へ転化する方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載の材料の活性型を含む触媒と前記供給原料を、有機化合物転化条件下で接触させる工程を含むことを特徴とする転化方法。
【請求項10】
前記触媒が水素化金属と組み合わされることを特徴とする請求項9に記載の転化方法。
【請求項11】
前記水素化金属がタングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガンおよび貴金属よりなる群から選択される1種以上の金属であることを特徴とする請求項10に記載の転化方法。
【請求項12】
表2と同様の回折パターンを有するITQ−27の結晶性シリケート組成物の合成方法であって、
シリカ供給源、有機構造指向剤(R)、水および任意の金属(X)を、モル比で以下の範囲内:
R/YO 0.01〜1
O/YO 2〜50
X/YO 0〜.2
(式中、Xは四面体配位可能ないずれかの三価金属であり、Yはケイ素および四面体配位可能な任意のいずれかの他の四価金属である)
の組成で一緒に混合することによる合成方法。
【請求項13】
XがB、Ga、AlまたはFeよりなる群から選択される1種以上の金属であり、
Yがケイ素であり、かつGeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の金属を含み得る
ことを特徴とする請求項12に記載の合成方法。
【請求項14】
表2と同様の回折パターンを有するITQ−27の結晶性シリケート組成物の合成方法であって、
シリカ供給源、有機構造指向剤(R)、水および任意の金属(X)を、モル比で以下の範囲内:
R/YO 0.01〜1
O/YO 2〜50
X/YO 0〜.2
(式中、XはB、Ga、Al、Fe、Li、Be、P、Zn、Cr、Mg、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrよりなる群から選択される1種以上の金属であり、Yはケイ素であり、かつGeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の金属を含み得る)
の組成で一緒に混合することによる合成方法。
【請求項15】
前記モル比の範囲が
R/YO 0.1〜.5
O/YO 5〜20
X/YO 0〜.1
であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の合成方法。
【請求項16】
前記有機構造指向剤(SDA)がジフェニル−ジメチル−ホスホニウムであることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の合成方法。
【請求項17】
前記有機構造指向剤(SDA)がジフェニル−ジメチル−ホスホニウムであることを特徴とする請求項15に記載の合成方法。
【請求項18】
請求項12、13、14および17のいずれかに記載の方法を使用して製造された生成物。
【請求項19】
請求項15に記載の方法を使用して製造された生成物。
【請求項20】
請求項16に記載の方法を使用して製造された生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−520537(P2008−520537A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543104(P2007−543104)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/040226
【国際公開番号】WO2006/055305
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】