説明

IV注入投与を行う装置および方法

【課題】患者への薬物の投与プロセスを制御するIV注入システムとともに用いる注入剤カセットを提供する。
【解決手段】注入システム36のカセット10および他の態様は、使い捨て可能な構成要素、外部冗長容量追跡、空気除去および自動パージ・プライム機能、構成要素離脱ロックアウト機構、および/または冗長自動自由流れ防止デバイスを含んでよい。組み込まれた高クラッキング圧力自由流れ防止弁を備えるIVマニホルド72もまた、注入システムとともに用いられるように説明される。注入システムのカセット、IVマニホルド、および他の態様には、統合IV注入で用いられる品質保証機構が設けられてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本願の本発明は、包括的には、患者への薬物のIV注入に関し、より詳細には、注入剤カセット、注入剤容器、および種々の品質保証手段を備えるIV注入システムの態様に関する。
【0002】
本願は、米国特許法第119条(e)項の下で、2001年7月31日出願の米国特許出願第60/308,592号および2002年5月16日出願の米国特許出願第60/378,046号(いずれもその全文が本明細書中に援用される)に対する優先権を主張する。
【0003】
[発明の背景]
槽から患者への液体薬物の直接注入を機械的に制御することは、有用な薬物投与プロセスである。電気機械的に制御された注入プロセスにより、人が注入する場合に可能なよりも安定した正確な薬物または注入剤の投与が可能になることが多い。薬物の流量の厳密な制御を維持することにより、電気機械的に制御された注入デバイスは、患者の循環系における薬物の濃度が薬物の治療域内で一貫して維持されることを確実にする可能性がある。
【0004】
患者への液体の直接注入を制御するためのいくつかの既知の医療デバイスは、シリンジ、圧潰可能バッグ、または薬物容器などの槽から患者の供給管に液体薬物をデリバリするポンプ機構を利用する。このようなデバイスの一例は、米国特許第6,186,977号に示されるものであり、圧潰可能バッグ内の液体薬物供給源および注入ポンプを含み、注入ポンプは薬物を供給源から直接抜き取り、流路に沿って患者の供給管に移動させる。
【0005】
これらの医療デバイスのいくつかは、薬物ポンプカセットをさらに利用し、薬物ポンプカセットは、デバイスのポンプ機構と相互作用する剛性のあるハウジングおよび圧力板を備える。これらのカセットは、薬物容器と患者の供給ラインとの間の中間デバイスの役割を果たす。典型的なカセットは、注入デバイスのポンプ機構の作用を受けて供給ラインに沿って薬物を移動させる通路を含む。
【0006】
薬物ポンプシステムとともに用いられるカセットの一例は、米国特許第6,165,154号に示されるものであり、流体通路と、圧力勾配を発生させて通路に沿って薬物を移動させる圧潰可能な圧力伝導チャンバとを有する。カセットの別の例は、米国特許第6,202,708号に示されるものであり、散剤を液体溶剤と混合するための大きなチャンバを備える。このカセットは、流体流路を支持する圧力板も含み、流体流路に沿って、蠕動ポンプが患者のデリバリ管に液体を移動させるように働き得る。
【0007】
流路に入った空気を除去する手段を備えるいくつかの液体注入デバイスも知られている。しかしながら、これらのデバイスは、非効率的なパージプロセスを必要とすることが多く、このパージプロセスには、過剰量の薬物を失うことなく通路から空気を排出するために、人的介入および/またはシステム内の全ての流体通路の正確な内部容量を知っていることが必要である。
【0008】
ポンプ機構内の内部エンコーダのカウントを追跡することにより、容器内に残っている液体注入剤の容量を追跡することができるコンピュータまたはコントローラを備えた薬物注入システムも知られている。しかしながら、内部での結果に基づいて容量を追跡することに伴う問題は、注入デバイス内の構成要素に関して不整合がある場合、注入された薬物の計算容量は不正確である可能性があるが、それにもかかわらず、デバイスの動作と一貫しているように見えることである。
【0009】
前述のデバイス全ての効率および安全性にはさらなる欠点がある。かかる欠点の1つは、既知の薬物注入デバイスでは、薬物と直接接触する要素を配置する、費用的に効率的な手段が設けられないことである。品質管理および患者の安全性の観点から見ると、各注入プロセスの終了時に、薬物と直接接触する液体薬物注入デバイスの部品を交換することが有利であり得る。廃棄および交換により、前の注入から残っている残留注入剤がない、または前の患者からの二次汚染を引き起こすベクターがない清潔な構成要素を有する、各注入プロセスを開始する効率的な手段が与えられる。前述のデバイスのいくつかの部品、例えば薬物ポンプカセットは、大きくてかさばる場合があるため、患者の使用ごとに交換するには高価であり扱いにくい可能性がある。
【0010】
上記のデバイスの別の欠点は、薬物容器などのデバイスの構成要素のいくつかは、注入プロセス中、すなわちポンプ機構の作動中には、システムに空気を入れずに交換することができないことである。これらの構成要素が注入プロセス中にデバイスから偶然外れた場合にも、システム内に空気が入る可能性がある。患者への直接注入システムの流路に混入する気泡は、患者の循環系に入った場合は危険である可能性がある。
【0011】
モルヒネなどの強力な鎮痛剤の注入ポンプによる誤ったデリバリから、死に至る場合もあった。したがって、デリバリされる薬物の患者への効果の測定または推測に基づいて、薬物の注入量を制御する手段が有利である可能性がある。このような制御手段は、遠隔の場所および/または最小限のスタッフしかいないかまたは最小限の設備しかない場所、例えば特に、診療所の手術室、X線撮影(imaging)室、または皮膚科室、ならびに麻酔および鎮痛剤(anesthesia)の供給に伴って意識消失および無呼吸となる危険性がある軍隊の前哨医療基地(far-forward military medical outposts)において、外来患者、歩行可能患者、胃腸、心臓カテーテル検査、X線撮影、および他の処置の際に特に望ましい場合がある。
【0012】
[発明の概要]
本発明は、使い捨て可能な構成要素、外部冗長容量追跡、空気除去および自動パージ・プライム(prime)機能、構成要素ロックアウト機構、および/または冗長自動自由流れ防止デバイスを含んでよい注入剤ポンプカセットを注入システムに設けることにより、既存の薬物注入デバイスの上述の欠点に対処する。本明細書で用いられる「注入システム」という用語は、患者の監視と必ずしも統合されていない独立型注入ポンプを示す。
【0013】
コンピュータ支援によるIV注入システムに患者ごとに使用する使い捨て可能な構成要素を設けて、前の注入から同じかまたは異なる患者への、二次汚染および注入剤の持ち越しの可能性を防ぐことが、本発明のさらなる目的である。使い捨て可能であり得る本発明のこの態様の構成要素としては、特に、注入剤容器、注入管、圧力板、注入ラインコネクタ、カセット、逆流防止弁(anti-reflux valve)、高クラッキング圧力弁、IVマニホルド、および特にIV針、カニューレ、およびカテーテルなどの血管アクセスデバイス(vascular access device)が挙げられる。
【0014】
本発明の注入システムは、EKGパッドまたは皮膚電極、酸素デリバリ・ガス採取・呼吸装置、応答性質問デバイス、および患者への測定または推測された効果に基づく注入量の半自動調節器(modulation)を含み得る、コンピュータ支援による注入剤投与のためのより大型の注入システムの一部を形成することができる。EKGパッドまたは皮膚電極、酸素デリバリ・ガス採取・呼吸装置、および応答性質問デバイスは、使い捨て可能である。本明細書で用いられる「注入システム」という用語は、患者監視デバイスからのデータに基づいて注入剤の投与を管理する、より大型のシステムに一体化される注入ポンプを示す。
【0015】
統合コンピュータ支援による注入剤投与システムは、特に、鎮静、鎮痛、および深鎮静(deep sedation)処置での使用に適用可能である。このようなシステムの一例は、米国特許出願第09/324,759号に記載される鎮静剤および鎮痛剤デリバリシステム(1999年6月3日出願)であり、その全文が参照により本明細書に援用される。出願第09/324,759号の鎮静剤および鎮痛剤デリバリシステムは、患者に結合され、患者の少なくとも1つの生理学的状態を反映する信号を発生するようになっている患者健康モニタデバイスと、1つまたは複数の薬物を患者に供給するドラッグデリバリコントローラと、少なくとも1つの監視された患者の生理学的状態の安全なパラメータおよび望ましくないパラメータを反映する安全性データセットを格納するメモリデバイスと、患者健康モニタ、ドラッグデリバリコントローラ、および安全性データセットを格納したメモリデバイスの間に相互接続された電子コントローラとを含み、該電子コントローラは、上記信号を受け取り、それに応じて、安全性データセットと一致する薬物の適用を管理する。電子コントローラが参照する安全性データセットは、薬物の識別に適した値および/または薬物の供給源、用品(supplies)、構成要素、または付属品、例えば上記の使い捨て品に関するデータをさらに含んでよい。このような識別は、使い捨て品を伴う品質保証モジュールからデータを読み取ることによっても行うことができる。
【0016】
使い捨て可能な構成要素のいくつかが、容器から患者へ注入剤を送るための使い切りのカセットに組み込まれることが、本発明のさらなる目的である。カセットは、単動スナップオン動作(single-motion snap on action)で注入システムに取り付けることができる。カセットは、単動スナップオン動作でシステムの永久的な構成要素と正しい向きで位置合わせされるような形態である。例えば、デリバリ導管の一部は、カセットが所定位置に嵌められると、注入システムのポンプ機構の作動部分に位置付けられる。
【0017】
本発明は、ユーザが注入ラインから空気を取り除く必要なく、所与の処置中に注入剤容器を離脱および交換できるようにする。注入剤容器ロックアウト機構は、ポンプの作動中の容器の離脱を防ぐために設けられる。自由流れを防ぐために、カセットが注入システムに挿入されていない場合、種々の冗長注入ラインロックアウトが注入剤流動用(flow)内腔を自動的に閉鎖する。ロックアウトは、ポンプ機構が患者に空気を送ること、および注入剤の制御されていない自由流れが重力により患者に供給されることを防ぐために設けられる。ロックアウト機構に障害がある場合に空気が患者に到達することを防ぐために、バックアップ安全デバイスとしてライン内空気(AIL)検出器を用いてもよい。
【0018】
注入システムは、注入剤容器、例えば特に、バイアル、シリンジ、または圧潰可能バッグから、注入剤が患者に投与される前にIV溶液および/または他の流体と組み合わせられ得るマニホルドコネクタへの、注入剤の流れを制御する効率的な手段を提供する。コンピュータ制御により、正確な流量と、注入およびパージ手順のためのそれらの流量の正確な制御と、自動パージとが可能になり、ユーザがラインをパージするために介入する必要またはラインをパージすることを覚えている必要がない。流量の精度を、IV注入セットの内部容量(例えば、セットに関連する品質保証モジュールから得られる)の知識と組み合わせれば、同じ手順を手動制御する際には無駄になり得るプロポフォールなどの高価な注入剤が確実に節約される。
【0019】
本発明はさらに、鞘内に収められ(sheathed)、自動自由流れ防止機能を有する、射出成形プラスチックでできた注入剤容器スパイクを有するカセットを提供する。カセットが、例えばポンプユニットまたは鎮静剤および鎮痛剤デリバリシステムなどのデバイスの当接表面(mating surface)と完全に係合しない場合、スパイクは鞘内に収められたままである。概して、注入剤容器は上下逆さであるが、本発明では、注入剤容器を直立させる(upright)可能性も考慮される。本発明のカセットは、蠕動管を所定位置に保持するために、金属クリップの代わりにカセットと一体化された成形スナップリテーナまたはクリップを含んでもよく、それにより部品数が減る。IVカニューレまたは患者側端部にストップコックおよび/またはIVマニホルドがある場合、圧力により引き起こされる負傷の危険性が減るように、軟質材料でできているか、または包まれていてもよい。
【0020】
注入剤容器がカセットに取り付けられていない場合にスパイクを自動的に鞘内に収めることにより、偶発的な鋭利物での負傷の危険性が最小限に抑えられる。この設計は、スパイクが注入剤容器に挿入されていない場合にスパイクに触れることができないようにし、それにより偶発的な鋭利物での負傷の危険性をさらに最小にする。注入剤容器挿入(entry)機構および/またはカセットがプラスチックでできている場合、これらの要素の設計は、射出成形工具の設計により課される制約と適合する可能性がある。
【0021】
カセットから注入剤容器を離脱すると、スパイク鞘がスパイクを鞘内に収めるように再び移動する(redeploy)。スパイク鞘の移動を用いて、スパイクアセンブリの注入剤内腔が閉鎖されて注入剤流が阻止されるようにストップコックを回転させるレバーアームを作動させることができる。したがって、注入剤の注入後、蠕動静注(intravenous)管からカセットに接続されたままの患者までに残っている残留注入剤の制御されていない自由流れは、例えばカセットが離脱されると阻止される。
【0022】
カセットの破損可能なフィン(breakable fin)が、カセットの使用ステータスの目印として用いられ得る。空気フィルタハウジングが、部品数を減らすためにスパイクアセンブリに組み込まれ得る。空気フィルタ媒体用のホルダも、スパイクアセンブリに組み込まれて、それにより部品数および製造コストをさらに減らす。
【0023】
注入システムのハウジングのその当接表面に、所定のまたは特別な向きで取りつけられ得るようにカセットを設計することにより、カセットの当接表面が位置決めされて(indexed)よい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるコンピュータ支援による注入剤投与のための注入システムの一実施形態の斜視図を示す。
【図2】本発明の一実施形態によるデータの流れを示す概略図である。
【図3】本発明による注入システムに嵌められるカセットの一実施形態の水平断面図を示す。
【図4】本発明による、注入剤容器が所定位置に配置されたカセット延長部の代替的な実施形態の正面断面図を示す。
【図5】本発明による冗長容量追跡システムの一実施形態の斜視図を示す。
【図6a】本発明によるカセットの一実施形態の斜視図を示す。
【図6b】本発明による、注入剤デリバリ導管を有するカセットの一実施形態の斜視図を示す。
【図7】本発明による冗長容量追跡のための機構のブロック図である。
【図8】本発明によるポンプ機構の自動停止のための機構のブロック図である。
【図9】本発明による品質保証モジュールで用いられる所定パラメータのブロック図である。
【図10】本発明による逆流防止弁およびIVマニホルドコネクタの一実施形態を示す。
【図11】本発明による種々の構成要素間の液体流および空気流の経路の一実施形態のブロック図である。
【図12】本発明による、注入剤容器が吊り下げられたカセット延長部の一実施形態の正面断面図を示す。
【図13】本発明による一体的なスパイク鞘および自由流れ防止機構を有するカセットの一実施形態の斜視図を示す。
【図14a】本発明によるカセットと相互作用するストップコックレバーアームが一体化されたスパイクアセンブリの1つの斜視図を示す。
【図14b】本発明によるカセットと相互作用するストップコックレバーアームが一体化されたスパイクアセンブリの別の斜視図を示す。
【図15】本発明による、スパイク鞘が省略されたカセットに取り付けられたスパイクアセンブリの一実施形態の切欠図を示す。
【図16】本発明によるスパイク鞘の一実施形態の底部斜視図を示す。
【図17a】本発明による、スパイク鞘の突起部と鞘内の位置で相互作用する、スパイクアセンブリの自由流れ防止デバイスの一実施形態の切欠斜視図である。
【図17b】本発明による、スパイク鞘の突起部と鞘外の位置で相互作用する、スパイクアセンブリの自由流れ防止デバイスの一実施形態の切欠斜視図である。
【図18】本発明の一実施形態によるカセットと当接表面とがまだ接触していない時の斜視図を示す。
【図19】本発明の一実施形態によるカセットと当接表面とが部分的に嵌合した場合の、これら2つの間の相互作用の斜視図を示す。
【図20】本発明の一実施形態によるカセットと当接表面とが係合して合わさった場合の、これら2つの間の相互作用の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に記載する実施形態は、本発明を開示された形態そのものに限定することを意図されない。実施形態は、本発明の原理およびその適用および使用を説明し、それにより当業者が本発明を作製および使用できるようにするために選択および記載される。
【0026】
図1は、本発明のコンピュータ支援による注入剤投与のための注入システム36の外観図を示す。システムは、ユーザインタフェース32およびポンプ機構56(図3に示す)のためのハウジング26と、注入剤容器34、注入剤容器34を受ける取り外し可能カセット10、および口鼻用デバイス31などの患者用インタフェースデバイスの取り付けまたは挿入用のポートとを含み、口鼻用デバイス31は、例えば、酸素を供給し、かつ/またはカプノメトリあるいは他の呼吸モニタリングを行うことができる。注入剤は、カセット10から患者へ、静脈注入ラインまたはデリバリ導管27を介して流れる。静注用流体(intravenous fluids)または他の流体は、用いられる場合、別個の注入ライン80を介して患者まで流れる。ライン80および27は、コネクタまたはIVマニホルド72において合流する。流体は、コネクタ72から患者へ、患者の血管に挿入される血管アクセスデバイス、例えば特に、IV針、カニューレ、またはカテーテル84を介して流れる。デリバリ導管27は、カセット10および/またはコネクタ72に取り外し可能または永続的に取り付けられてよい。
【0027】
ユーザインタフェース32は、ハウジング26内に配置されたマイクロプロセッサベースの電子コントローラまたはコンピュータ42(図2に示す)に接続される。電子コントローラ42は、種々の基板上の利用可能なプログラマブルタイプのマイクロプロセッサおよび他のチップ、メモリデバイス、およびロジックデバイスからなっていてよい。種々のユーザインタフェースデバイスは、注入システム36の患者パラメータおよびシステムパラメータならびに動作ステータスを表示する、注入システム36のハウジング26に組み込むことができるディスプレイデバイス33と、例えば患者の生理学的な状態を示す患者パラメータ、注入システム36のステータス、およびタイムスタンプのついた注入剤の流量のハードコピーを印刷するプリンタ(図示せず)と、臨床医が一定の距離をおいて注入システム36と対話することを可能にする任意選択のリモコンデバイス(図示せず)とを含む。ユーザインタフェース32は、ユーザが自動化注入プロセスを停止して、注入を手動で制御または中断するとともに、注入セットから空気または前の注入剤を取り除くことを可能にするハードおよびソフトボタンを含んでよい。
【0028】
図1は、注入システム36に取り付けることができ、かつ口鼻用デバイス31とともに使い捨て可能な呼吸セット30も示す。好ましくは、呼吸セットは、注入システム36に取り外し可能に取り付けられる、1人の患者ごとまたは1回の使用ごとに使い捨て可能な要素である。注入システム36は、そのハウジング26内にコネクタポート39を含み、コネクタポート39には、電子コントローラ42に動作可能に結合されるように呼吸セットが取り付けられ得る。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態の電子コントローラ42により行われる注入管理ステップを示すデータの流れを含む概略図である。ユーザは、電子コントローラ42とつながるユーザインタフェース32と対話することにより、所定のコマンドまたはプログラムプロセスシーケンスを入力することができ、その後、所定のコマンドまたはプログラムプロセスシーケンスは電子コントローラ42によりメモリに格納される。電子コントローラ42は、注入剤容器34からの流れを制御する注入システム36とつながっている。注入剤流量システム37は、ポンプ機構56(図3に示す)と、カセット10と、デリバリ導管27とを備えてよく、自律注入システムとして機能することが可能であるか、またはより大きいシステムに統合されてもよい。電子コントローラ42は、ユーザからの入力、薬物状態モデルを組み込むことができる制御ソフトウェアからの入力、および/または患者用インタフェースデバイス38から収集したデータからの入力に基づいて、注入流量を監視および調節する。種々の患者用インタフェースデバイス38は、患者の生理学的状態を監視する1つまたは複数の患者健康モニタ(図示せず)、例えば特に、パルスオキシメータ、カプノメータ、血圧モニタ、EEG、EKG、反応性モニタ、気道圧モニタを含む可能性がある。
【0030】
図2はまた、患者に接続される呼吸セット30(使い捨て可能で口鼻用デバイス31を含み得る)と、電子コントローラ42に電力を供給する電源システム44と、プリンタであってよく、電子コントローラ42とつながっていてよく、かつソフトウェア更新を受け入れ、データを出力する外部通信デバイス40とを示す。
【0031】
図3は、注入剤容器34(密封され得る)から患者への注入剤の移送用のカセット10を示す。カセット10は、注入剤容器34をハウジング26に固定する機械的なプラットフォームを提供し、注入剤容器34がポンプ機構56に対して一定のヘッド高さに維持されることを確実にする。カセット10は、デリバリ導管27がポンプ機構56に対して適切な位置および向きであることも確実にする。カセットは、注入剤容器34を受け取り、注入プロセス中の容器の位置を維持するための延長部11を含む。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、カセット10は、各注入プロセスごとに1つの注入剤容器34を受け入れる。注入プロセスの終了時に、または容器34が枯渇に近づくと、容器34が取り外され、カセット10は前の注入プロセスを延長するために新たな注入剤容器34を受け取ってよい。デリバリ導管27は、任意の空気および/または前の注入プロセスからの注入剤が取り除かれることができる。代替的な実施形態では、カセット10は、一度に2つ以上の注入剤容器34を受け取ってよい。カセット10は、別個の注入剤容器それぞれからカセット10内の1つの注入システムまたは注入システム36へ注入剤の流れの水路を作るために、複数の流動用内腔(例えば、図4において54で示すようなもの)を有してよい。ポンプ機構56により作成された注入剤の流れを制限するための機構が設けられてよく、その結果、注入剤は、一度に1つの注入剤容器34から順次、または所定の比率に従って一度に2つ以上の注入剤容器34から流れる。注入剤を複数の容器から同時に送り込むことにより、パージ手順のために停止することなく長期の注入の運転が可能になる。注入剤を複数の容器から協働して送り込むことにより、別個の分離された注入剤源を1回の注入の運転で同時に用いることができる。さらなる代替的な実施形態では、同じ注入剤の複数の容器に1つのカセット10が設けられ、それにより、1つの容器が取り外されている間に別の容器から注入剤が流れるようにすることができる。このような実施形態により、パージ手順のために停止することなく長期の注入プロセスが可能となる。
【0033】
引き続き図3を参照すると、延長部11は、注入剤容器34からデリバリ導管27への注入剤の移送を開始するための、付属の注入剤流作動デバイス12(以下でさらに説明するように、内腔を有するスパイクまたは他の鋭利物であり得る)を含んでよい。注入プロセスの開始時に、注入剤容器34は作動デバイス12の上に設置される。
【0034】
図3は、延長部11内の注入剤流動用内腔54(図4に示す)が終端する部分であるカセットの開口16も示す。圧力板20の一端は、開口16付近に設置される。圧力板は、ポンプフィンガ58が当接して動作できるプラットフォームを提供するのに十分な剛性がある。剛性のある圧力板により、カセット10が、ワンステップのスナップオン動作でハウジング26の当接表面に簡単に嵌まることも可能になる。本発明の一実施形態では、圧力板20は、ポンプ機構56の湾曲面を受け入れるために、開口から離れる方向に傾斜した凹状の湾曲部を有する。あるいは、平坦な圧力板20およびポンプ機構56の平坦面、ならびに他の圧力板の外形もまた、本発明で用いることができる。
【0035】
図3はさらに、カセット10の開口16に設けられた注入剤デリバリ導管27を示す。デリバリ導管27は、開口16の雄ポートを覆って挿入され、注入剤流動用内腔54(図4に示す)により形成される流れチャネルとの気密接続をもたらす。デリバリ導管27は、圧力板20に沿って位置決めされ、それにより、ポンプ機構56がデリバリ導管27に作用して、導管を介して注入剤容器34から患者へ注入剤が移動する。デリバリ導管(管であってよい)は、圧力板20に沿って所定位置に固定されてよい。デリバリ導管27を圧力板20に当接させて保持する構造は、蠕動ポンプフィンガ58の動作を干渉してはならない。デリバリ導管27を圧力板20に固着するためのそのような構造のいくつかの実施形態が考えられる。例えば、導管27は、圧力板20に超音波溶接または接着されてもよく、または、それ自体が圧力板20に固定されている発泡ストリップガイド60内に嵌められてもよい。発泡ストリップガイド60は、圧縮可能かつ圧潰可能であるため、ポンプ機構56の精度またはポンプフィンガ58の動作に干渉しない。あるいは、デリバリ導管27と同様のプラスチック管をいくつか圧力板20上のデリバリ導管27の上下に配置して、デリバリ導管27を圧力板20に当接させてしっかりと保持し、ポンプフィンガ58により圧迫されると潰れるようにすることができる。デリバリ導管27の少なくとも一部は透明であってもよく、それにより、ユーザは導管を通る注入剤の流れを見て、特に、注入剤中の混入空気または微粒子、あるいは注入剤の変性、分離、または乳化を視覚的に調べることができる。
【0036】
ポンプ機構56は、デリバリ導管内に圧力勾配を作成するために、デリバリ導管27に対して、かつ圧力板20に反して作用する、少なくとも3つの可動フィンガ58を備えた蠕動ポンプであってよい。圧力勾配により、注入剤は注入剤容器34からスパイク内の孔14b(図4に示す)へ、次にカセット延長部11内の注入剤流動用内腔54(図4に示す)へ、次にデリバリ導管27へ、次にマニホルドコネクタ72(図1および図10に示す)を介して、患者の静脈に挿入された血管アクセスデバイス84へ流れる。ポンプフィンガ58はデリバリ導管27および注入システムの管全体の外部にあるため、ポンプ機構56は、デリバリ導管27の作動中のポンプ部に空気がある場合でも動作することができる。ポンプ機構56は、手動で、または注入システム36の電子コントローラ42(図2に示す)により制御されてもよく、所与の流量に、あるいは注入剤流量の指定された勾配、経時変化量、または時間プロファイルに設定されてもよい。
【0037】
図3は、ばね荷重クランプまたはピンチ弁82も示し、このばね荷重クランプ82は、カセット10がポンプ機構56との接触を解除されると、重力による患者への注入剤の抑制されない(unchecked)流れ、すなわち自由流れを止める自由流れ防止デバイスの役割を果たす。クランプ82は、導管27が開かれたままでない場合、例えば、ハウジング26、ポンプ機構56、または注入システム36と接触することにより、導管27の一部を締め付けて閉鎖する。
【0038】
図3に示すように、カセット10は、スナップロック22および23などの1つまたは複数の延長部も含むことができ、スナップロック22および23によりハウジング26へ機械的に取り付けられることにより、カセット10がその当接表面およびポンプ機構56に対して所定位置に固定されてよい。特定の実施形態では、これらの延長部はハウジング26の当接表面のスロット22aおよび23aに嵌まり、1回のスナップオン動作によるカセット10の取り付けを可能にする。カセット10は、カセット10を把持してハウジング26内の指定された場所にガイドするためのフィンガグリップ24も含んでよい。フィンガグリップ24がともに圧迫されると、スナップロック22および23は互いから離れる方向に広がり、カセットがスロット22aおよび23aに配置されることを可能にする。
【0039】
図4は、注入剤流作動デバイス12の特定の実施形態を示し、この場合、注入剤流作動デバイス12は、逆さにした注入剤容器34の再封可能な止ストッパ(stopper)13を貫通する直立スパイクである。スパイク12は、容器34に、注入剤が流出することができる気密開口を形成する孔14bを含む。カセット10の延長部11は、カセット10の孔14bと注入剤流開口16との間に設けられた注入剤流動用内腔54を含む。デリバリ導管27の一端は開口16に接続することができ、他端はコネクタ72(図1および図10を参照)に取り付けることができる。延長部11は、スパイク12の別の孔14aと入口18を介して外気に通じる開口との間の空気流動用内腔50も含む。
【0040】
注入剤容器34は、注入剤に対してほぼ不活性であり、大気汚染物を通さない。容器34は、注入プロセス前および注入プロセス中に注入剤が外部からの汚染を受けないように保護することが可能である。好ましくは、注入容器34は容量が不変の剛性バイアルであるが、圧潰可能なIVバッグなどの柔軟容器もまた、本発明と使用されることが意図される。注入剤容器34は、注入剤の状態および容量を視覚的に評価することを可能にするために、少なくとも1つの透明部分を有してよい。注入剤容器34は、成形タブなどの作り付けの把持具(図示せず)を含むこともでき、この把持具によって、ユーザは容器の表面を汚染することなく容器を保持して運ぶことができる。好ましくは、使用後にカセットから取り外されるセルフシールストッパ13が、注入剤容器とともに用いられる。セルフシールストッパは、気密貫通を可能にし、注入剤がこぼれることを防ぎ、注入剤が蒸発または汚染により劣化することを防ぐのを助ける。
【0041】
引き続き図4を参照すると、延長部11は一方向弁または圧力リリーフ弁46を含んでもよく、この弁46から外気が注入剤容器34に入ることにより、注入剤が容器から流出する際に注入剤のメニスカス(meniscus)の上に過度の負圧(これが注入に干渉する可能性がある)が発生するのを防ぐようにする。空気流動用内腔50は、一方向弁46とスパイク12の孔14aとの間に設けられる。図4に示す実施形態では、注入剤は空気流動用内腔50に沿って外気まで重力により流れる可能性があり、いくつかの実施形態は、空気流動用内腔50から注入剤が漏れることを防ぎつつ、空気が注入剤容器34の内部に流れ込んで過度の負圧の形成を防ぐことを依然として可能にすることが意図される。これらの実施形態の1つでは、注入剤が孔14aからこぼれるのを防ぐ機構は、一方向弁46である。一方向弁46は、外気が空気流動用内腔50に入ることのみを許し、孔14aから漏れた注入剤がカセット10から出ることは許さない。
【0042】
さらなる注入剤漏れ防止の実施形態では、延長部11の空気流動用内腔50に疎水性フィルタ47が設けられる。疎水性フィルタ47は、スパイク12の空気流動用内腔50内に漏れた注入剤がカセット10の空気入口18から流出することを防ぐ。
【0043】
さらなる注入剤漏出防止の実施形態では、孔14bは広い孔であり、孔14aは狭い孔である。狭い孔14aは、延長部11の空気流動用内腔50と連通しており、広い孔14bは延長部11の注入剤流動用内腔54と連通している。異なる孔サイズによりもたらされる毛管作用の差により、注入剤容器34内の液体注入剤は、広い孔14bから注入剤内腔54のみに流れる傾向がある。毛管作用は、狭い方の空気流動用内腔に注入剤が流れることを妨げる。さらなる注入剤漏出防止の実施形態では、空気流動用内腔50は、半月形のウェル52を含み、それにより、空気流動用内腔50内に漏れる注入剤の流れが空気入口18に到達しないようにする。
【0044】
空気入口18に空気フィルタ48を設けて、外気中の微粒子が延長部11内の空気流動用内腔50および注入剤容器34内に入ることを防いでもよい。空気フィルタ48は、細菌粒子およびウイルス粒子を含む微生物質(microbial matter)を排除することが可能であり得る。
【0045】
本発明の代替的な実施形態では、注入剤容器34は、前もって取り付けられたスパイク12を含んでよく、容器・スパイクセットは1つのユニットとして延長部11に挿入することができる。さらなる代替的な実施形態では、延長部11を有するカセット10は、無傷の、すなわち穿刺されていないシール13を有する事前に位置決めされた注入剤容器34を含んでもよく、シール13には、注入システムの作動直前に(例えば手で)スパイクが突き刺さることができる。このような実施形態の場合、カセット・注入剤容器アセンブリ全体を、1つのユニットとして注入システムに固定して作動および使用することができ、その後、ハウジング26(図1および図5に示す)から取り外して、1つのユニットとして処分することができる。
【0046】
図5は、本発明による代替の冗長容量追跡法で用いられる素子であってよい発光器セルおよび光検出器セルのアレイ70を示す。このようなアレイは、カセット10に設けられてもよく、またはハウジング26の一部として設けられてもよい。各発光セルは、注入剤容器34に向けた光を放つ。放射光が空気に入射する、注入剤、特にプロポフォールのような乳状の注入剤に入射するかに応じた、放射光の反射の差は、メニスカスを追跡するために用いられる。容器内部の液体から反射し戻された放射光は、光検出器セルにより検出される。検出器セルは、注入剤から反射された光を受けることができ、柱状などのパターンで配置され、それにより、特定の検出器セルが一定量の反射光を受けた場合、反射光は注入剤のメニスカスより下にあり、その特定の検出器セルが異なる量の反射光を受けた場合、その反射光は注入剤のメニスカスより上にある。光検出器セルは、検出器が注入剤容器34の発光器と同じ側にある場合には反射光を測定することができ、発光器の反対側にある場合には透過光を測定することができる。アレイの各セルは、電子コントローラ42(図2に示す)とつながっており、コントローラ42は、反射光または透過光で急激な変化がある領域を特定することにより、注入剤容器34内のどこにメニスカスがあるかを確定する。メニスカスの追跡により、容器34内の注入剤の初期容量に基づいて、注入剤容器34に残っている注入剤の量を単独で計算することができる。容器34内の注入剤の初期容量は、満杯の容器に対応する容量値および/または特定のメニスカスレベルおよび/または所与の容器サイズについての断面積などの容器特性として、所与の容器34に配置された品質保証モジュール(「QAM」)35上で符号化されてよい。QAM35は、図9に関して以下でより詳細に説明する。QAM35上の情報を読み取り、特に初期容量に関するデータを電子コントローラ42に送る機構が設けられる。発光器/光検出器の対のアレイ70は、より高い空間分解能を実現するために、2つ以上の別個のアレイの形態で千鳥状の配置であってもよい。
【0047】
図5は、本発明に設けることができる自由流れ防止デバイスの代替の実施形態も示す。カセット10のスナップロック23は、スリット19を含み、スリット19を通してデリバリ導管27が配置され得る。スリット19の両側には、スリット19が押し広げられるようにする切欠き部21が設けられ、それにより、カセット10がハウジング26の適切な位置に配置されると、ハウジング26に位置するスプレッダピース92がスナップロック23のフィンガを広げて、注入剤がデリバリ導管27を拘束のない状態で流れるようにする。
【0048】
引き続き図5を参照すると、ハウジング26は、注入剤が注入剤容器34から引き出される際に注入剤容器34を受け取って支持する機械的なレセプタクル66を含んでよい。レセプタクル66は、特定サイズの注入剤容器34を受け取ることができる特定サイズであってもよく、または様々なサイズの容器を受け取るように構成されていてもよい。
【0049】
図5はまた、注入剤容器離脱ロックアウト機構68の一実施形態を示し、これは、ハウジング26に設けられて、ポンプ機構56(図3に示す)の作動中に容器34が離脱することを防ぐようにすることができる。ロック位置にある場合、機構68はハウジング26から外れて、注入剤容器34がカセット10から離脱するのを機械的に防ぐ。機構68は、注入システムの電子コントローラ42とつながっていてよく、電子コントローラ42は、ロックアウト機構68がロック位置にある場合にのみ作動できることをポンプ機構56に伝える。機構68が非ロック位置にあり、後退している場合、注入剤容器34はカセット10から物理的に離脱されることができ、電子コントローラ42は、ポンプ機構56に注入流を止めるように伝える。新たな注入剤容器34がカセット10に挿入され、ロックアウト機構68がロック位置に戻されると、電子コントローラ42はポンプ機構56に作動可能であることを再び伝える。電源システム44(図2に示す)またはコントローラ42に対するソフトウェアが故障した場合、機構68は容器34を離脱させるためにハウジング26に手動で押し戻されてもよい。本発明のこの特徴により、注入剤容器34が離脱されて、前の容器の注入剤と同じアイデンティティ(identity)および濃度の注入剤を含む別の容器と交換されるたびにパージ手順を行う必要性をなくすことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、注入剤容器ロックアウト機構68は、コントローラ42上で実行されるソフトウェアにより実施されてよい。注入剤容器34の離脱の要求は、ソフトウェアにより受け取られる。ソフトウェアは、注入中であるか否かを調べ、状況および一般的な状態に基づいて、注入を停止して注入剤容器の離脱を可能にするか、または注入を続けて注入剤容器の離脱を防止するかを決定し、その決定に応じて、注入剤容器の離脱を防いで注入剤容器34の手動での離脱を可能にすることも防止することもできるアクチュエータに、適切なコマンドを送ることができる。
【0051】
図6aは、カセット10のさらなる斜視図を示すが、ここではカセットはハウジング26に取り付けられていない。フィンガグリップ24それぞれ、圧力板20、開口16、孔14を有するスパイク12、空気入口18、スナップロック22および23、スリット19、ならびに切欠き部21(これらは全て詳細に上述した)が示される。
【0052】
図6bは、カセット10の代替的な実施形態を示し、ここでは、スパイク12がデリバリ導管27に取り付けられ、カセット10から取り外されることができるため、カセット自体は新たなスパイクアセンブリ98とともに再使用可能である。スパイクアセンブリ98は導管27に嵌まり、導管27はカセット10のスロット96に嵌まる。カセット10がハウジング26(図示せず)に対して配置されると、ハウジング26はスパイクセット98がスロット96内にしっかりと保持し続けるのに役立つ。
【0053】
図7は、注入プロセス中に注入剤容器34から送り出される注入剤の容量を追跡する種々の機構を示す。容量追跡法は、注入システムの電子コントローラ42がポンプ機構のサイクルおよび注入の持続時間から計算した容量に冗長性を与え、それにより、ポンプ機構56の流量の精度が確認および補償されることができる。この冗長性は、患者への注入剤の確実かつ正確な流量を確保するのに役立つ。
【0054】
冗長容量追跡のこのような機構の1つは、注入剤容器34が注入剤流作動デバイス12と接触している際の注入剤容器34の重量を測定する秤86を利用する。秤86は、カセット10に設けられてもよく、または注入システム36の一部であってもよい。秤86は、電子コントローラ42とつながっており、電子コントローラ42は注入剤容器34の重量およびその残量に関する連続的または周期的データを受け取る。注入剤が容器34から流出するにつれて重量は減り、電子コントローラ42は、あらかじめプログラムされた注入剤密度データのセットから注入剤の容量の対応する減少量を計算する。所与の時間にわたって容量の変化を監視することにより、その所与の時間にわたる平均流量を計算することもできる。
【0055】
別の容量追跡機構は、図5を参照して上述したメニスカス追跡のための発光器/光検出器アレイ70である。
【0056】
さらなる容量追跡は、ポンプ機構56の内部エンコーダのカウント94および96を追跡することにより行うことができる。ほとんどのポンプはポンプ機構を駆動するためにモータを用いるため、通常、ポンプのモータの各回転すなわちサイクルによりデリバリされる注入剤の設定容量が存在する。エンコーダ機構、例えば、ポンプのカムにおけるスロットの通過を検出することが可能な1組の発光器/受光器セルをポンプに設けた場合、ポンプのモータの各回転を検出することができる。電子コントローラ42は、ポンプのモータの1分間あたりの回転数に1回転でデリバリされる注入剤の容量を乗算して、1分間あたりの注入量を導くことができる。次に、コントローラ42は、一定期間にわたって流量を積分して、一定期間にわたって注入された総容量を計算し、平均流量を導くこともできる。
【0057】
図8は、電子コントローラ42にポンプ機構56を停止させる理由を警告する種々の任意選択の方法を示す。これらの方法は、空気が患者の血液循環に送り込まれることを防ぐのに役立ち、また、不正確な(例えば、期限切れの、以前使用された、または承認されてない)注入剤または不正確な用量が患者に投与されることを防ぐのに役立つ。
【0058】
これらの方法の1つでは、ユーザは、患者に空気が送られていることに気付いた場合、ポンプを停止させるように手動で伝える。ユーザは、電子コントローラ42とつながっているユーザインタフェース32(図1に示す)と対話する。注入システム36内に、注入剤中の気泡を感知するライン内空気検出器90を設けてもよい。ライン内空気検出器90は、電子コントローラ42とつながっている。電子コントローラ42は、ライン内空気検出器90から信号が通知されると流量を終了するようポンプ機構56に信号を送るようにプログラムされ得る。すると、導管またはPVC管27から空気が取り除かれる。
【0059】
これらの方法のうちの別のものでは、カセット10または注入システム36に、流れを妨げる捻れまたは障害物がデリバリ導管27に存在するか否かを関連する圧力変化により感知する、少なくとも1つの閉塞検出器91が設けられる。閉塞検出器91は、電子コントローラ42とつながっており、そのような障害物が検出された場合にはコントローラ42に信号を送る。コントローラ42は、閉塞検出器91から信号が通知されると流量を終了するようポンプ機構56に信号を送るようにプログラムされ得る。
【0060】
これらの方法のうちのさらに別のものでは、カセット10または注入システム36に空気混入ロックアウト機構93が設けられる。空気混入ロックアウト機構93は、ポンプ機構56の作動中のカセット10からの注入剤容器34の離脱により起動される。起動されると、空気混入ロックアウト機構93はカセット10内の注入剤の流れを停止させる。
【0061】
空気混入ロックアウト機構93の一例は、注入剤流作動デバイス12に、またはその付近に位置するマイクロスイッチである。注入剤容器34は、作動デバイス12から離脱されると、マイクロスイッチを起動して電子コントローラ42に信号を送るようにする。マイクロスイッチは、注入剤容器34が作動デバイス12上にある限り押下されるが容器が離脱されると解除されるばね荷重ボタンであってよく、注入剤容器34が離脱されると容器の表面により押下されるような場所に位置するばね荷重ボタンであってもよく、または注入剤容器34が離脱されるとそれを示す、光センサ、電磁センサ、誘導センサ、または容量センサなどの電子センサであってもよい。
【0062】
このようなロックアウト機構に関する注入剤容器離脱ロックアウト機構68およびポンプ56の管理の一例は、図5に関して上述されている。
【0063】
引き続き図8を参照すると、さらなる特定の実施形態では、注入システム36に、ポンプ機構56の作動中のカセット10の離脱を防ぐカセット離脱ロックアウト機構95が設けられ得る。ロック位置にある場合、機構95は、カセット10をハウジング26に機械的に締結する。機構95は、電子コントローラ42とつながってよく、電子コントローラは、ロックアウト機構95がロック位置にある場合にのみ作動できることをポンプ機構56に伝える。非ロック位置にある場合、カセット10はハウジング26から物理的に離脱されることができ、電子コントローラ42は、ポンプ機構56に注入剤の流れを止めるように伝える。新たなカセット10がハウジング26に挿入され、ロックアウト機構95がロック位置に戻されると、電子コントローラ42はポンプ機構56に作動可能であることを再び伝える。機械的なカセットロックアウト機構95は、手動操作により、あるいは電動式ブラケット、ロック、ツイストロック、カム、レバー、または延長した場合にカセットの離脱を物理的に防ぐ任意の機械部品により、容易に実施することができる。特にマイクロスイッチ、近接センサ、容量センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、光センサ、および誘導センサなどのセンサは、手動操作式または電動式のカセットロックアウト機構95の位置を監視することができ、このデータをコントローラ42に伝えることができる。
【0064】
カセットロックアウト機能は、ソフトウェア(電子コントローラ42で実行され得る)により実施されてもよく、それにより、ソフトウェアはカセット10を離脱させる要求または要求の表示を受け取り、一般的な状態(例えば特に、注入剤が注入中であるか、ケース終了が伝えられたか、カセット10が非QAMコンプライアント(non-QAM compliant)であることを示すフラグが立てられているか)を調べ、次に、安全である場合にはカセット10を(手動または自動で)離脱させる。ソフトウェア実施の通常の動作では、カセット10は制御ソフトウェアへの要求によってのみ離脱され得る。カセット10が手動で離脱される場合、ソフトウェアは、通常動作では手動で起動できない電動式ロックアウト機構95を制御し得る。緊急時には、ユーザが認識すべき少なくとも1つの警告メッセージの後に、ユーザはソフトウェアを無効にし、カセット10を離脱することができる。機械的カセットロックアウト機構およびソフトウェアによるカセットロックアウト機構をハイブリッド設計に組み合わせる種々の方法は、当業者には既知であろう。
【0065】
電子コントローラ42にポンプ機構56を停止させるよう警告する任意選択の方法のさらに別のものでは、カセット10および容器34に取り付けることができる、電子コントローラ42に伝えるべき情報を格納する種々のQAM35が考えられる。QAM35に記録されたパラメータが、電子コントローラ42によりメモリに格納された事前にプログラムされた範囲外である場合、コントローラ42は、注入を終了するかまたは開始しないようにポンプ機構56に信号を送り得る。
【0066】
図9は、注入剤容器のQAM35およびカセットのQAM35が格納できる所定のパラメータのブロック図である。注入剤容器34またはカセット10のタグは、注入剤のアイデンティティ、濃度、初期容量すなわちメニスカスの高さ、注入剤容器の特性寸法(characteristic dimensions)または容量、容器ID、注入セットおよびカセット10の内部容量、注入剤の密度、製造番号、バッチ番号、有効期限、URL(Universal Resource Locator)などのアドレス、および製造業者IDなどのパラメータを、例えばバーコードまたはRFIDが組み込まれた回路に格納することができる。このようなタグおよびQAMならびに統合注入システムでのこれらの使用の例は、米国特許第出願第10/151,255号(2002年5月21日出願)および米国特許出願第60/324,043号(2001年9月24日出願)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される。
【0067】
電子コントローラ42は、QAM35からパラメータデータを受け取り、注入設定の初期状態を確定するためにそれを処理する。コントローラ42は、QAM35上に符号化された注入剤アイデンティティデータを用いて、製品の製造元および品質を認証し、注入される特定の注入剤が現在の患者用の注入剤であることを保証するようにすることができる。特に患者の病歴および身体記録ならびに既知のアレルギーなどのデータを格納できる病院情報システムと組み合わせれば、その患者に禁忌である注入剤の不注意による投与が知らされ、回避されることができる。
【0068】
電子コントローラ42はまた、注入剤容器またはカセットのQAM35上に符号化された注入剤識別情報を用いて、二次汚染が起こる可能性がある時を確定することができる。コントローラ42は、前に用いられた注入剤のアイデンティティおよび濃度、ならびに同じカセット10および注入システム36で用いられる次の注入剤のアイデンティティおよび濃度を、メモリに格納することができる。格納された次の注入剤のアイデンティティまたは濃度が前の注入剤と異なる場合、電子コントローラ42は、自動的にパージ手順を開始して、前の注入手順からの残留注入剤をシステム36から取り除くことができる。
【0069】
特定の実施形態では、電子コントローラ42は、QAM35からのデータを用いて、自動パージまたはプライム手順を調整する。カセット10のQAM35は、注入剤容器34と血管アクセスデバイスとの間の内部容量、例えば特に、カセット10の注入剤流動用内腔、デリバリ導管27、およびIVマニホルド72(図10)の内部容量を格納する。電子コントローラ42は、QAM35からこれらの内部容量またはそれらの総量を記録し、内部容量の合計を超える注入剤の容量を注入セットに流してラインに残っている空気または前の注入剤を取り除くように、ポンプ機構56に伝える。自動パージ手順は、パージ手順中にIVシステムに送り込まれる注入剤の容量の厳密な制御を可能にし、それにより、注入剤セットから空気または前の注入剤が確実になくなるのに十分なだけの容量の注入剤が送り込まれるようにする。このようなパージまたはプライム手順を手動で行うと、必要な容量より多い注入剤が注入システムから送り出されることになり、注入剤および時間の無駄が生じ得る。パージ手順の自動的な態様は、IVセットをパージまたはプライムすることをユーザに自動的に知らせるため、不作為の誤りから生じ得る危険が防がれる。パージ手順の自動的な態様はまた、「開始後放置(initiate and forget)」という利点をもたらすため、パージ手順の開始後に、パージが行われている間にユーザは他の作業に移ることができる。
【0070】
好ましくは、電子コントローラ42は、各注入ランの開始時刻および持続時間を設定するためにクロック90(図9)を参照する。コントローラ42は、ポンプ流量の変化または注入剤容器の交換などの事前にプログラムされたイベントを行うべき時を確定するためにも、クロック90を用いることができる。コントローラ42はまた、クロック90および所与の期間にわたる注入量を用いて、容器34内の注入剤の残量を判定することにより、容器34に残っている注入剤の容量が少ない場合にはポンプ56を停止させて、ユーザに警告することができる。
【0071】
図10は、デリバリ導管27をIV溶液または他の流体の容器78からつながる管80および血管アクセスデバイス84に接続するコネクタ72上の、逆流防止弁77を示す。逆流防止弁77は、注入剤の管27からIV管80への逆流を防ぐ。
【0072】
コネクタ72の一部である逆止弁76は、管80から注入剤ライン27への流体の逆流を防ぐ。逆止弁76は、満杯の注入剤容器34にスパイクが突き刺されており、導管27が最大限の高さまで完全に伸びている状態により生成される最高の静水圧よりも高くなるように、クラッキング圧力または開口圧力をゆっくりと増加させることにより、自動自由流れ防止デバイスとしても動作することができる。したがって、その設計には、注入剤が患者に流れるように、ポンプ機構56が弁76の開口圧力よりも高い圧力を生成することが必要である。ポンプ機構56(図3に示す)が導管27および圧力板20と接触していない場合、カセット10が例えばハウジング26または注入システム36から離脱されると、生成され得る最高の静水頭が弁76のクラッキング圧力よりも低くなるため、注入剤流が止まる。
【0073】
代替の実施形態では、コネクタ72は、シリンジの先端または針を受け入れ、注入剤または流体をそこから直接注入することが可能なストップコックまたは再封可能な注入ポート74も含むことができる。血管アクセスデバイス84は、患者の静脈に挿入されてよい。好ましくは、血管アクセスデバイスは、コネクタ72に取り外し可能に取り付けられる、1人の患者ごとまたは1回の使用ごとに使い捨て可能な要素である。
【0074】
図11は、本発明の一実施形態のブロック図を示し、上述の図3および図10の要素を通る注入剤流および外気流の経路を示す。カセット10がハウジング26または注入システム36にスナップ嵌めされると、ピンチ弁82が開く。カセット10が外されると、ピンチ弁82のばねが伸び、IVライン27を閉鎖する。ピンチ弁82の目的は、導管27がポンプ機構56と接触していないために導管27を通る流れがポンプ機構56により制御されていない場合、重力により注入剤が患者へ自由に流れるのを防ぐことである。
【0075】
図12は、注入剤流作動デバイス12が直立した注入剤容器からの注入剤の移動を可能にする、代替の実施形態を示す。直立した注入剤容器34が作動デバイス12と連通するように持ち上げるために、エレベータ94が用いられる。好ましくは、この実施形態では、上下が逆になったスパイクが作動デバイス12として用いられる。図12のように注入剤容器34が直立して配置される場合、空気抜き内腔を介して重力により液体内容物が流出する可能性がなくなる。
【0076】
次に、カセット10と、自由流れ防止デバイスと、空気混入ロックアウト機構と、最小限の個別部品で管をカセットに固定する手段と、品質保証タグと、使用時以外に注入剤流作動デバイス(すなわちスパイク)12を覆う手段と、軟質材料ででき、かつそれに包まれたストップコックとの特定の代替的な実施形態を説明する。
【0077】
図13は、圧力板152を有する、本発明によるカセット150の特定の実施形態の斜視図を示す。圧力板152は、成形されたスナップリテーナ154、またはデリバリ導管27または蠕動管(明確にするために図示せず)を当該板に対して所定位置に保持する他のそのような手段を含み得る。図3に示すもののような、管に接触し、かつ圧力板152に当接する蠕動ポンプ機構56を設けてもよい。カセット本体156は、図13においてスパイクを覆う位置に示される摺動可能に取り付けられたスパイク鞘158を受け入れるキャビティ176(図15に詳細に示す)を含んでよい。カセット本体156は、カセット150が(図18に示すように)システム36の当接表面200と完全に係合している場合には、スパイク鞘158が滑り落ちてスパイク163(図14aおよび図14bを参照して以下で詳細に示す)を露出させるように構成され、カセット150が当接表面200と完全に係合していない場合には、鞘158が滑り落ちないようにするようにも構成される。その場合、本発明の特定の実施形態では、新たな、または使用済みのカセット150が当接表面200に取り付けられていない場合、スパイク鞘158は常にスパイク163を鞘内に収めるように配置され、偶発的な鋭利物での負傷を防ぐ。その場合、カセット150は、露出したスパイクによる偶発的な鋭利物での負傷の可能性をあまり心配せずに、使用後に汚染廃棄物入れに廃棄することができる。溝192に嵌まる面200のペグ202(図18に示す)のための隙間を提供するために、スパイク鞘158およびカセット本体156の両方に溝192が設けられ得る。カセット150の使用状況の目印としての役割を果たすために、カセット150に破損可能なフィンを設けてもよい。カセット150は、カセットを取り扱う際によりうまく把持できるような輪郭にされたリッジを備えて構成されてもよい。
【0078】
図14aは、カセット150および蠕動管にコネクタ164で嵌まることができるスパイクアセンブリ160の一実施形態の斜視図である。スパイクアセンブリ160は、スパイク163を含み、空気フィルタハウジング162と、蠕動管(または他の注入導管)に接続するためのテーパ状の出口コネクタ164と、ストップストック168(図14b)を作動させるレバーアーム166または他の同様の手段とのいずれかまたは全てを含み得る。スパイク163は、内腔14a(空気抜き内腔)および14b(注入剤流動用内腔)を含み得る。空気は、注入剤容器がスパイクアセンブリ160の上に配置されてスパイクを刺されると、内腔14aを通って注入剤容器へ流入する。この空気流は、注入剤容器の中身が注入中に空になった場合に容器内部に真空が形成されるのを防ぐことができる。空気フィルタハウジング162は、内腔14aを通って注入剤容器へ流入する周囲空気から空気感染疾患生物をフィルタリング除去するフィルタ要素(図示せず)を収容し得る。空気フィルタハウジング162は、空気フィルタ媒体を含むために従来用いられる空気フィルタ媒体ホルダを使用しなくてよいように設計され得るため、本発明のデバイスの部品数および製造コストがさらに減る。レバーアーム166が、図14aおよび図14bに示すようなアップ位置にある場合、ストップコック168は、注入剤内腔14bを閉鎖するように回転する。閉鎖された注入剤内腔14bは、蠕動静注セット管に残っている残留注入剤の自由流れを防止し、IVセット管が患者に接続されたままであるうちに使用済みのカセット150が当接表面200から離脱される状況では、患者の血流に空気塞栓が混入する可能性を防ぐ。
【0079】
図15は、スパイク鞘158を取り外したカセット本体156の切欠斜視図を示す。カセット本体156のキャビティ176は、スパイク鞘158を受け入れるように設計される。スパイクアセンブリ160は、カセット本体156に組み込まれている取り付けフランジ170に取り付けられるか、またはスパイクアセンブリ160自体がカセット本体156に取り付けられている。取り付けフランジ170は、カセット本体156に対して、特に垂直軸に沿ってスパイクアセンブリ160を静止保持し、注入剤容器がスパイクアセンブリ160に押し付けられ得るようにする。可動部材172がキャビティ176の壁の一部を形成し、部材172の上下に切り込まれたスリット178により移動可能にされ得る。部材172は、端部174を有する溝192を有し得る。可動部材172のペグ175は、ノッチ184(図16)またはスパイク鞘158の他の面と係合する。可動部材172は、通常の静止すなわち後退位置にある場合、スパイク鞘158のノッチ184(図18および図19)をペグ175と係合させ、それにより、スパイク鞘158の垂直方向の移動を防ぐ。可動部材172が広がった位置にある場合、ペグ175はそれ以上ノッチ184と係合せず(図20)、それにより、スパイク鞘158の垂直方向の移動が可能になる。可動部材172は、カセット150が当接表面200とほぼ係合している場合には広がる。ペグ202は、カセット150が当接表面200に当接して位置付けられた場合、溝192の端部174を押すことにより可動部材172を広げるような位置で、当接表面200に取りつけられ得る。
【0080】
引き続き図15を参照すると、スパイク鞘158(図13)の垂直方向の移動により、スパイク163を鞘内に収めることおよび鞘外に露出させることのそれぞれまたは両方と、自由流れ防止デバイスの作動または停止とが可能になる。例えば、鞘158がアップ位置にある場合、スパイク163はスパイク鞘158の鞘内に収められ、ストップコック168は閉鎖され、それにより、スパイクアセンブリ160を通る注入液の自由流れが防止される。鞘158がダウン位置にある場合、スパイク168は露出し、ストップコック168は解放され、それにより、スパイクアセンブリ160を注入剤が流れることが可能になる。
【0081】
図16は、スパイク鞘158の斜視図を示し、スパイク鞘158は、部分190と、スパイク163をスパイク鞘158に通過させる開口188と、突起部182および186とを含み、突起部182および186は、レバーアーム166(図14b)と係合して、スパイク鞘158が上下移動する際にストップコック168をそれぞれ開閉する(図17aおよび図17b)。部分190の上部には、段部180にリップ191が設けられてよく、これが注入剤容器ホルダ(図示せず)と係合する。
【0082】
特定の実施形態では、カセット150が当接表面200(図18ないし図20)に係合すると、注入剤容器ホルダが、スパイク鞘158の段部180およびリップ191と係合する。可動部材172(図15)がスパイク鞘158の下方移動を可能にするように広げられると、注入剤容器ホルダはスパイク鞘158と係合し、鞘が不意に下方移動することを防ぐようにする。注入剤容器ホルダとスパイク鞘とが噛み合っている場合、注入剤容器ホルダが下方移動しなければスパイク鞘は下方移動できない。したがって、このような実施形態では、カセットがその当接表面に完全に係合している場合、スパイク鞘を手で押してスパイクを露出させることは不可能である。
【0083】
注入剤容器ホルダがスパイク鞘158に対して下方に移動すると、注入剤容器ホルダがスパイクアセンブリ160の方へ進み(presented)、逆さの注入剤容器にスパイクが突き刺される。注入剤容器ホルダに注入剤容器が入っていない場合、注入剤容器ホルダの下方移動によりスパイクが露出され、鋭利物での負傷の危険がある。本発明の特定の実施形態は、注入剤容器ホルダの下方移動を可能にする前に注入剤容器の存在を調べる。注入剤容器の存在を調べることは、QAM35(図11を参照して上述した)および/またはソフトウェアを含むセンサにより、あるいは機械的手段により、実施することができる。本発明では、注入剤容器が有効であるか、例えば、製造元(origin)がわかっており、品質管理がされており、有効期限を過ぎていないかも調べる。
【0084】
引き続き図16を参照すると、注入剤容器ホルダが下方に移動すると、スパイク163が開口188から露出して注入剤容器ストッパを貫通し、それにより、逆さの注入剤容器内に内腔14aおよび14bを配置するようにする。注入剤容器ホルダは、スパイク鞘158のリップ191および段部180と係合し、それにより、注入剤容器ホルダが注入剤容器からスパイクを抜くように上方に移動する場合、注入剤容器ホルダがスパイク鞘158を上方に引き寄せてスパイク163を再び鞘内に収めるようにする。スパイク鞘158が下方に移動する際の取り付けフランジ170(図15)のための隙間を与えるように、切欠き部194がスパイク鞘158に含まれる。可動部材172の溝192とともに部分190(図16)に溝192が設けることができるにより、当接表面200(図18)に設けられたペグ202のエッジ204が受け入れられる。部分190(図16)の両側のエッジ189は、スパイク鞘158がキャビティ176内で回転することを防ぐため、スパイク鞘158は垂直軸でのみ自由に移動する。エッジ189は、スパイク鞘158の垂直方向の移動のガイドとしての役割も果たす。
【0085】
図17aは、スパイク鞘158がスパイク163を鞘内に収めるように上方に移動し、その際に突起部182がレバーアーム166と係合してストップコック168を閉鎖し、それによりスパイク163の注入剤内腔14bにおける流れを防止する方法を示す。図17bは、スパイク鞘158がスパイク163を露出させるように下方に後退し、その際に突起部186がレバーアーム166と係合してストップコック168を開放し、それによりスパイク163の注入剤内腔14bにおける流れを可能にする方法を示す。
【0086】
図18は、当接表面200と係合する向きになっているがまだ当接表面と接触していないカセット本体156の一部を示す。ペグ202はエッジ204を含み、エッジ204は、カセット本体156の溝192(図16)に沿って、スパイク鞘158の部分190(図16)上を摺動する。ペグ202は突起部206も含み、突起部206は、カセット150が当接表面200と完全に係合している場合に端部174(図15)に当接して、可動部材172を広げる。突起部206は溝192に沿って移動する。ペグ202の突起部206の後ろの切欠き部は、スパイク鞘158がペグ202に引っ掛からずに下方に移動することを可能にするために含まれてよい。
【0087】
図19は、当接表面200と部分的に係合したカセット本体156の一部を示す。ペグ202の突起部206(図18)のエッジ204は、部分190(図16)の溝192に係合した状態で示される。スパイク鞘158はここでも、可動部材172(図15)により、下方に移動してスパイク163を露出しないようにされる。注入剤容器ホルダ(図示せず)は、スパイク鞘(図16)の段部180およびリップ191と係合している。
【0088】
図20は、当接表面200とほぼ係合することにより可動部材172(図15)を広げるカセット本体156を示す。ペグ202(図18)の突起部206は、カセット本体156の溝192(図15)の端部174に係合して示される。可動部材172は、スパイク鞘158が下方に移動してスパイク163を露出することを可能にするように広げられる。
【0089】
カセット150は、米国特許出願第09/324,759号(1999年6月3日出願)に記載されるものなどの、注入剤容器注入システムとともに用いられる使い捨て可能要素のキットの一部として設けることができることが意図される。カセットは、注入剤容器注入システムの使い捨て可能または再使用可能な構成要素として、単独で設けてもよい。安全性を高め、スパイク163からの偶発的な負傷を防ぐために、本発明のカセット150は、スパイク163が露出されないようにスパイク鞘158がアップ位置または広がった位置にある状態で、キットあるいは他の包装材または保存材から開梱することができる。カセット150は、自動機構(図示せず)または手動で、当接表面200に固定されることができる。注入剤容器ホルダ(図示せず)に逆さに装填された注入剤容器(図示せず)は、次に、スパイクアセンブリ160の上方にスパイク鞘158に当接して所定位置に位置付けられ得る。注入剤容器ホルダは、注入剤容器ストッパがスパイク鞘158と中心を合わせて位置合わせされるように注入剤容器を位置決めするように構成される。注入剤容器ホルダは、スパイク鞘158のリップ191(図16)とも係合し、押し下げられた場合、注入剤容器およびスパイク鞘を下方に駆動して、スパイク163を露出させ、注入剤容器ストッパを貫通する。注入剤容器ホルダは、スパイク鞘158の上方に位置決めされ、手動で下方に移動されてもよい。スパイク鞘158が下方に移動すると、ストップコック168または他の自由流れ防止デバイスにより注入剤容器内の液体が注入剤内腔14bを流れることができるように、レバーアーム166が作動される。次に、カセット158はおよび蠕動静注(IV)管がパージされ、IV管がIVカテーテルに接続され、患者への注入プロセスが開始され得る。
【0090】
注入ケースが終了すると、注入剤の注入が停止する。注入剤容器ホルダが引き上げられ、注入剤容器ホルダは、上方に移動する際に注入剤容器を引き上げ、スパイク鞘158をそのリップ191に沿って引き寄せる。スパイク鞘158の上方移動は、レバーアーム168に注入剤内腔14bを閉鎖させる。注入剤容器からスパイクが抜けると、スパイク163は再び鞘内に収められる。注入剤容器が離脱されると、カセット158は当接表面200から係脱され得る。注入剤内腔14bが閉鎖されるため、カセット158およびIV管に残っている残留注入剤は、IV管に接続されたままの患者へと自由に流れることができない。次に、IV管はIVカテーテルから外され得る。その後、静注管およびスパイクアセンブリ160を有するカセット150は、廃棄物入れに廃棄することができる。
【0091】
2つ以上の注入剤容器が所与の場合に必要とされる場合、カセット150を当接表面200に固定されたまま、上述のように第1の注入剤容器からスパイクを抜くことができる。注入剤内腔14bが閉鎖されていることにより、空気が蠕動IV管に吸い込まれることがなく、それにより、注入剤容器の交換後にIVおよび/または蠕動管を再びパージまたはプライムする必要がない。次に、新たな注入剤容器は、上述のように、注入剤容器ホルダに装填され、スパイクが刺される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置又は外科処置に関連した患者の痛み、不安、不快感を軽減するための静注薬物デリバリ装置であって
前記処置中に或る投薬量の鎮静剤を前記患者にデリバリするドラックデリバリコントローラと、
前記処置中に患者に結合されるようになっており、かつ前記患者の少なくとも1つの監視された生理学的状態の測定値を反映する信号を発生する少なくとも1つの患者健康モニタと、
この患者健康モニタおよび前記ドラックデリバリコントローラに動作可能に接続され、かつ前記監視された生理学的状態の前記測定値のパラメータにアクセス可能なプロセッサであって、前記信号を受け取り、前記信号を前記パラメータと比較し、かつ、前記信号が前記パラメータの安全範囲外にある場合、ドラッグデリバリを控えめに管理させるコマンドを前記ドラックデリバリコントローラに送るプロセッサと、
前記ドラックデリバリコントローラが薬物導管と協働して前記投薬量の鎮静剤をもたらすように、前記ドラックデリバリコントローラと取り外し可能に相互接続されるカセットであって、薬物容器を支持するようになっているカセットと、
前記ドラックデリバリコントローラが前記患者に前記投薬量の鎮静剤をデリバリしている間、前記薬物容器が外れることを防ぐ機構と
を備える静注薬物デリバリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−279425(P2009−279425A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171523(P2009−171523)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【分割の表示】特願2003−516607(P2003−516607)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(502451904)スコット・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】SCOTT LABORATORIES, INC.
【住所又は居所原語表記】2804 N. Loop 289, Lubbock, Texas 79415, United States of America
【Fターム(参考)】