Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)を選択的に阻害するための方法
リンパ系または骨髄系起源の細胞におけるJanusチロシンキナーゼ3(Jak3)依存性の機能を阻害または破壊するための、特にリンパ球(例えば、T細胞、B細胞)の増殖および機能をブロックするための方法が開示される。Mannich塩基化合物、または誘導体もしくは修飾された化合物が用いられ、これは、Jak3活性を選択的に阻害する一方で、その他のタンパク質チロシンキナーゼ活性をより少ない程度に影響するか、または全く影響しないで、従来の免疫抑制剤を用いるよりも少ない副作用で、移植片拒絶の軽減およびアレルギー応答の緩和のような有益な効果を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
[発明の分野]
本発明は概して、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)を含むリンパ球およびその他のリンパ系起源の細胞の増殖および機能の阻害に関する。より詳細には、本発明は、リンパ球機能、特に免疫活性の調節をブロックする化学薬剤を使用する治療および試験の方法に関する。さらにより詳細には、本発明は、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)媒介性の細胞活性および細胞増殖を選択的に破壊することに関する。
【0002】
[関連技術の説明]
臓器の同種移植片拒絶に対処するために今日使用される治療的ストラテジーの効果は、強い副作用を生じる免疫抑制薬物への依存によって厳しく制限される。現在の臨床的な免疫抑制療法は、セリン−スレオニンホスファターゼカルシニューリン(CaN)インヒビターシクロスポリンA(CsA)およびタクロリムス(FK506)1によって占められ、これらは細胞周期の初期のG1期を通してT細胞増殖をブロックすることによってT細胞修飾因子として作用する1、2。これらの薬物に関連する望ましくない副作用としては、腎臓毒性、神経毒性、真性糖尿病、高脂血症、高血圧、多毛症、および歯肉増殖症が挙げられる3。より新しい薬物、ラパマイシン(RAPA)は、RAPAのセリン−スレオニンキナーゼ哺乳動物標的(mTOR)を標的とし、これはまた、粘膜潰瘍、リンパ増殖異常、低カリウム血症を表し得、そして低密度のリポタンパク質、コレステロール、およびトリグリセリドを増加する4。臨床的に承認された薬物の深刻な欠点は、これらが同種移植片の永続的な受容を生じないことであり、それゆえこれらは患者に継続的に送達される必要がある。
【0003】
臓器の同種移植片拒絶に対処するための現在の治療的ストラテジーは、T細胞シグナル伝達経路およびそれを含む分子に集中している。T細胞シグナル伝達カスケード、ならびに免疫抑制におけるおよび潜在的に移植寛容を誘導するための、その潜在的な役割は、KirkenおよびStepkowskiによって記載されている5。T細胞の完全な活性化は、3つの閾値制限された連続的なシグナルを必要とする6。
【0004】
シグナル1が、特異的なT細胞受容体(TCR)と結合する抗原によって送達されて、続いて、シグナル2が、B7/CD28相互作用によって送達される。TCRとの結合後、数秒〜数分以内に、Zap70、Lck、およびFynのタンパク質Tyrキナーゼの自己活性化の間にCD3ζ鎖はチロシン(Tyr)リン酸化される7〜9。同時に、カルシウム(Ca2+)移動が、活性化T細胞(NFAT)脱リン酸化核因子に対するCaNホスファターゼの触媒活性化−NFATが核移行してインターロイキン(IL)−2遺伝子のプロモーター内の不連続のDNA結合エレメントを結合するために必要な工程−を引き起こす10。シグナル1および2はIL−2の合成および分泌にとって重要であり、IL−2は、IL−4、−7、−9、−13、−15、および−21のような他のT細胞増殖因子(TCGF)と協調して、サイトカイン受容体を介してシグナル3を送達する。これは、T細胞のクローン増殖を駆動するために要求される必要な工程である11。これらのサイトカイン受容体は共通のγ鎖(γc)を共有し、この共通のγ鎖(γc)は、各サイトカインについて固有のα鎖と結合される際にJanusチロシン(Tyr)、Jak1、Jak3を介して細胞内シグナルを送達し、ならびに転写のシグナル伝達因子および活性化因子(signal transducers and activators of transcription (Stat))1、Stat3、Stat5a/b、およびStat6を活性化する11〜18。
【0005】
(T細胞におけるシグナル1経路に関与する)CaN酵素および(T細胞におけるシグナル3経路に関与する)mTOR酵素は、身体中の種々の組織において遍在的に発現される。このことは、T細胞特異的標的化に対するCsA、FK506、およびRAPAのような阻害薬物の効果を厳しく制限する。RAPAは、今日臨床的に承認されている唯一の効果的なシグナル3インヒビターである24。治療的介入のための候補標的として作用する他のシグナル伝達経路分子とは異なり、Jak3発現は、組織発現の制限されたパターンを示し、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および単球に、または一般的用語では免疫起源の細胞に細分化される。
【0006】
Jak3は、リンパ系細胞へのその主要な局在性ゆえに、多くの免疫由来疾患を取り除くための固有の分子的なおよび治療的な標的として期待できる19〜21。この酵素は、γcを介してほぼ排他的に会合および活性化されるため、Jak3またはγcの遺伝子破壊は、重篤な複合免疫不全疾患として表れる22。この深刻な免疫抑制の理由は、上述のようなTCGFのファミリーによるT細胞の発達および補充においてのJak3の重要な役割に起因する。Jak3は受容体成分および近位膜と会合するので、これらの受容体から発せられる、Statおよび分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen activated protein kinase (Mapk))カスケードを含む、全ての下流のシグナルが活性化される。すなわち、Jak3の破壊は、TCGFによって媒介される全てのシグナルを引き続きブロックし、それゆえに、これらの細胞内の遺伝子転写を調節するそれらの能力をブロックする。しかし、この固有のおよび余剰なシグナル伝達経路の阻害を制御することができれば、免疫活性化の好ましい調節が、これらの遺伝子を欠損する患者およびマウスにおいて観察されるように達成可能となるはずである。さらに、この経路を標的化することは、理論上は、CsAに応答しない拒絶を担う、活性化されかつ増殖するT細胞の集団も阻害する21。
【0007】
リンパ球においてJak3を特異的に標的化するインヒビターを同定するための努力は、僅かに報告されているJak3を阻害する薬物もまた多くの身体組織における日常的な細胞機能に必要とされる多くの他のチロシンキナーゼを阻害するという事実によって阻まれる。実際、これらのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞表面受容体から核へ細胞外シグナルを伝達し、続いてリンパ球以外の細胞型の増殖、分化、および機能を調節するためには、基本的に重要である。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0042513号明細書(Uckunら)は所定のキナゾリン化合物を記載しており、その化合物は、インスリン受容体チロシンキナーゼに対する構造相同性(structural homology)に基づくJak3相同性モデルを使用して、その推定されたドッキング親和性に基づいて選択される。移植片合併症、自己免疫誘導性糖尿病を処置もしくは防止する、または同種移植片生存を延長する、いくつかのキナゾリン化合物の能力が評価された。
【0009】
米国特許出願公開第2002/0032204号明細書(Moonら)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(CTK)、およびセチン/スレオニンタンパク質キナーゼ(STK)の触媒活性を調節する、所定の3−(ピロール−2−イルメチリデン)−2−インドリノン誘導体の所定のMannich塩基プロドラッグを記載する。これらのプロドラッグが、異常なタンパク質キナーゼ活性によって媒介される多くの疾患を処置するために有用であることが述べられている。開示された化合物が、多くの種類の固形腫瘍を治癒するための治療的アプローチとして、RTK,CTK、および/またはSTK媒介性のシグナル伝達経路を調節すると述べられている。その他のMannich塩基化合物が記載され、そして細胞傷害性および抗ガン特性について記載および評価されている34、35。抗真菌および抗新生物特性を有する共役スチリルケトンの所定のMannich塩基は、米国特許第6,017,933号明細書の主題である。
【0010】
近年、Jak3に対して選択性を示す2つの薬剤が同定された21、24、25。AG−490と示される一方の薬剤は、チルホスチンファミリーメンバーであり、ベンジリデンマロノニトリルの誘導体であり、これは以下の構造式を有する:
【0011】
他方は、PNU156804であり、これは毒性の親化合物ウンデシルプロジギオシンの同族体であり、以下の構造式を有する:
【0012】
AG−490およびPNU156804の両方は、TCGFおよびJak3自己キナーゼ活性によって媒介されるT細胞増殖を阻害するために有能である一方で、Jak3を発現しない非活性化T細胞に対しては制限された効果を有する。これらの2つの薬剤のいずれも、p56LckまたはZap70チロシンキナーゼを含むT細胞受容体活性化カスケードの中間体に影響しないことが見出された23、25。
【0013】
1つの研究において、AG490処置は、単核細胞(GIC)の移植片浸潤と、エクスビボでIL−2刺激されたGICのStat5a/bDNA結合とを減少したが、リボヌクレアーゼ保護アッセイによって判断されたようにIL2R□の発現には影響しなかった。すなわち、Jak3の阻害は、同種移植片生存を延長し、また、CsAの免疫抑制効果は増強するが、RAPAの免疫抑制効果は増強しないと結論された。AG490は、その他のチロシンキナーゼファミリーメンバーのLck、Lym、Btk、Syk、Src、Jak1、またはTyk2キナーゼを阻害しない一方で、その密接に関連するファミリーメンバーJak2に対しては類似の効果を及ぼすこともまた見出された24。AG−490の有害な副作用は、免疫抑制治療のための日常的な臨床的使用を妨げる。
【0014】
他方、PNU156804は、IL−2によるJak3媒介性のT細胞増殖を阻害することによって、Jak2を使用するその他の増殖因子(プロラクチン)に比較して、より優れた特異性を示した。キナーゼアッセイによって、PNU156804が、Jak3自己リン酸化を、Jak2と比較して優先的に阻害したこと、ならびにStat5経路のような中間体エフェクター分子を共有したことが示された25。その研究においては、PNU156804は同種移植片生存を延長し、そしてCsAとは相乗的に作用するが、RAPAとは相加的に作用することが示された。PNU156804は、(Jak2自己キナーゼ活性と比較して)優先的にJak3を破壊し、それによって、γcにより駆動されるT細胞クローン増殖を選択的に阻害することもまた証明された。現在のモデルは、Jak3がmTORの上流活性化因子であることを保持する。Jak3は免疫細胞において発現されるので、Jak3の阻害はRAPAと現在関連される有害な影響を伴わずにmTOR活性化をブロックする。さらに、CsA(G0〜G1移行をブロックする)と、PNU156804(G1〜S増殖をブロックする)との相乗効果は、連続的な活性化シグナルをブロックすることにより、それによって、必要とされる各薬物の投薬量をより低くしながら有益な治療的効果を維持することにより、免疫抑制を行う新規なストラテジーを提供する25。しかし、PNU156804はその後、ヒトにおける治療的使用に対しては毒性が強すぎることが証明されている。
【0015】
いくつかの現在利用可能な薬物は、急性の拒絶をブロックする見込みがあることが示されているが、連続的な免疫抑制の不在下では、慢性的な移植片破壊および永続的な同種移植片受容(例えば、移植寛容)の問題は衰えていない。これらの問題に十分に取り組む治療的方法、および有害な副作用を回避する医薬品が必要とされている。これらの目的に向かって、T細胞シグナル伝達を理解することにおいて、およびシグナル伝達経路における所定の分子を標的化するためのストラテジーを考案することにおいて、大幅な進歩があった。TCGFによって活性化されるTおよびBリンパ球のシグナル3経路に固有の分子を、選択的にまたは特異的に阻害する薬剤が緊急に必要とされている。かかる薬剤は、その他の細胞に影響することなくT細胞のクローン増殖をブロックする大きな潜在性を有する。上述されたように、宿主対移植片疾患および移植片対宿主疾患のような望ましくない免疫応答を調節するために、Jak3はシグナル3経路において固有の分子標的を表す。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0042513号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0032204号明細書
【非特許文献1】Database MBASE on STN Online,No.2003366614,KAHN et al.’New Approaches to Transplant Immunosuppression,’abstract,Transplantation Proceedings,2003,35/5,pp.1621−1623
【非特許文献2】Database MBASE on STN Online,No.2003391451,MANEZ,R.’Current Trends in Transplantation and Immunosuppressive Treatment,’abstract,Drug News and Perspective,2003,16/5,pp.332−336
【非特許文献3】Database CAPLUS on STN Online,No.1993:603032,DIMMOCK et al.’Evaluation of Some Mannich Bases of Cycloalkanones and Related Compounds For Cytotoxic Activity,’abstract,European Journal of Medicinal Chemistry,1993,28(4),pp.313−22
【非特許文献4】Database CAPLUS on STN Online,No.1995:962281,DIMMOCK et al.’Synthesis and Cytotoxic Evaluation of Some Mannich Bases of Alicyclic Ketones,’,abstract,Pharmazie,1995,50(1),pp.668−71
【発明の開示】
【0016】
好ましい実施態様の概要
本発明は、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)を発現する任意の細胞型、好ましくは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞を含むリンパ系または骨髄系起源の細胞型(「リンパ系または骨髄系の細胞」)の機能および/または増殖を破壊または阻害する新規な方法を提供することによって、先行技術に存在する所定の欠点を克服することを目指している。したがって、本発明の所定の実施態様においては、リンパ球の機能および/または増殖の破壊または阻害は、所定の化合物、好ましくはMannich塩基で細胞を処置して治療的な免疫抑制を獲得することによって達成される。本発明の所定の実施態様においては、Jak3を優先的に破壊する一方でその他の広く散在するタンパク質チロシンキナーゼには実質的に影響しない免疫抑制剤として作用し得ることが以前は未知のもしくは認識されていなかった、所定のMannich塩基化合物またはその他の化合物を用いるインビボおよびインビトロでの治療方法および試験方法が提供される。治療的に用いられる際、これらの薬剤はまた、今日使用されている従来の免疫抑制剤に付随する深刻な副作用を完全にまたは少なくともある程度回避する。かかる方法は、臓器移植拒絶を軽減する上で、自己免疫疾患、気道過敏症(例えば喘息)、アレルギーの寛解を促進する上で、ならびにJak3依存性の白血病およびリンパ腫の腫瘍の増殖、およびJak3を発現するリンパ系または骨髄系起源の細胞におけるその他のJak3依存性の異常を阻害する上で、臨床的に有用であると期待される。
【0017】
したがって、本発明のいくつかの実施態様においては、Tリンパ球、単球、または樹状細胞のようなリンパ系または骨髄系の細胞がJak3を有するかまたは発現する、リンパ系または骨髄系の細胞の増殖および/または活性を阻害するインビトロの方法が提供される。方法は、Jak3を選択的に阻害し得る化合物の存在下で細胞を培養する工程を有する。いくつかの実施態様においては、下記の式(I)を有する化合物が用いられる。
【0018】
ここでR1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2、CH2SC(O)CH3、CH2SC6H5、CH2SCH2−(4−C6H4OCH3)、CH2SC(O)C6H5、またはCH2N(CH2CH3)2であり;R2は、Oであり;およびR3は、CH2N(CH3)2、CH2N(CH2CH3)2、およびCH2−(N−モルフィル)である。好ましい実施態様においては、化合物は式(I)を有する649641P(NC1153)であり、R1およびR3はそれぞれCH2N(CH3)2である。別の好ましい実施態様においては、化合物は、649641P(NC1153)のメソの立体異性体の形態であり、WP938として示される。
【0019】
所定の実施態様においては、Jak3を発現するリンパ系または骨髄系の細胞を、前記Jak3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記式(II)の少なくとも1つの化合物または前記化合物の塩に接触させる工程を有する、リンパ系または骨髄系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法が提供される。
【0020】
ここでnは1、2、3、4、または6であり;R1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2であり;R3は、CH2N(CH3)2である。
【0021】
所定の実施態様においては、Jak3を発現するリンパ系または骨髄系の細胞を、前記Jak3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(III)の少なくとも1つの化合物または前記化合物の塩に接触する工程を有する、リンパ系または骨髄系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法が提供される。
【0022】
ここでnは1または2であり;R1は、H、またはCH2N(CH3)2であり;R3は、CH2N(CH3)2である。
【0023】
上述のような、リンパ系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法のいくつかの実施態様において、リンパ系の細胞は活性化T細胞であり、方法は細胞分裂がブロックされるようにシグナル3経路を干渉する工程を有する。いくつかの実施態様においては、リンパ系の細胞は、Janusチロシンキナーゼ3を選択的に阻害するのに有効、かつその他のタンパク質チロシンキナーゼの活性を阻害するのに実質的に無効な濃度において、化合物に接触される。いくつかの実施態様においては、Jak3活性は、キナーゼアッセイにおいて、T細胞のようなリンパ球の集団のJak2活性よりも少なくとも50倍多く阻害される。いくつかの実施態様においては、方法は、IL2により活性化されたJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度において、プロラクチン(PRL)によってJak2およびStat5a/b活性化が阻害される可能性がないかまたは小さい1つ以上の化合物を選択する工程を有する。
【0024】
本発明のさらに他の実施態様においては、治療的な免疫抑制剤として有用な物質を同定することを補助するインビトロの試験方法が提供される。かかる方法は以下の工程を有する。(a)細胞培養培地中に静止状態のJak3依存性Tリンパ球の集団を獲得する工程;(b)随意に、静止状態のTリンパ球を、リンパ球が増殖することを刺激するために、サイトカインで前処理する工程;(c)工程(a)または(b)からの静止状態のまたは刺激されたリンパ球を、前述のような、式(I)、(II)、または(III)を有する化合物またはそれらの塩で処置する工程;(d)工程(c)からのリンパ球を、細胞増殖を促進する条件下で培養する工程;(e)工程(d)後の細胞増殖の程度を評価する工程;(f)随意に、Jak2依存性Tリンパ球増殖に対する前記化合物の阻害効果を評価する工程;(g)随意に、前記化合物の細胞傷害性を評価する工程;(h)工程(e)からの、ならびに、存在する場合は、工程(f)および(g)からの評価によって、化合物の細胞傷害性に起因しないJak3依存性リンパ球、またはその他のJak3を発現する細胞型の増殖の有意な阻害が、インビボの治療的使用のための候補薬物としての、T細胞媒介性の免疫抑制剤としての、および/またはT細胞増殖のインヒビターとしての潜在性をその化合物が有することを示唆すると判断する工程;および(i)随意に、工程(e)および(f)からの評価を比較し、工程(f)において評価される阻害効果が工程(e)において評価される阻害効果よりも小さい場合は、前記化合物がJak2活性、または別のキナーゼを阻害することに比較して、Jak3活性を阻害することに少なくともある程度選択的であることを前記比較から判断する工程。
【0025】
本発明の別の実施態様によれば、哺乳動物被験体において細胞の望ましくない機能を抑制するインビボの方法が提供され、細胞はJak3を有する。方法は、細胞を、上述の式(I)、(II)、または(III)を有する化合物のうちの少なくとも1つ、またはその代謝物もしくは誘導体に、細胞におけるシグナル3経路を干渉し、それによって細胞機能を阻害するのに有効な量において、接触させる工程を有する。接触させる工程は、かかる化合物の少なくとも1つ、または活性な代謝物のような化合物の成熟型、または被験体の身体内において前記化合物に転換され得る前記化合物の前駆体、またはそれらのうちのいずれかの薬学的に受容可能な塩を、薬学的に受容可能なキャリア中に含む、治療的に有効な量の薬学的組成物を被験体に投与して、Jak3依存性の細胞機能を阻害する工程を有する。投与する工程は継続的または周期的に行われる。いくつかの実施態様においては、Jak3を有する細胞はT細胞であり、投与される薬学的組成物の量はT細胞における細胞分裂をブロックするのに有効である。所定の好ましい実施態様においては、化合物、代謝物、誘導体、または前駆体の腎臓毒性はシクロスポリンAの腎臓毒性よりも小さい。
【0026】
本発明の所定の実施態様によれば、望ましくない免疫応答を抑制するために哺乳動物被験体を治療的に処置する方法が提供される。ここで被験体は望ましくない免疫応答を経験しているかまたは経験する危険性がある。この方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制する上述の方法を行う工程を有する。ここで治療的に有効な量の薬学的組成物は前記望ましくない免疫応答を軽減または防止する。所定の実施態様においては、方法はさらに、Jak3インヒビターの他の免疫抑制剤;例えば、シクロスポリンAまたはFK506、の治療的に有効な量を被験体に投与する工程を有する。このことは、シグナル1経路を介してT細胞をブロックすることにより、およびまたシグナル3経路を干渉することを介して活性化T細胞の細胞分裂をブロックすることにより、T細胞機能を阻害する利点を提供する。
【0027】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、移植される臓器に対するT細胞媒介性の免疫応答を抑制するのに有効な上述の方法を行い、それによって臓器の拒絶が軽減または停止される工程を有する、哺乳動物移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶を軽減する方法が提供される。
【0028】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の抗同種移植片免疫応答を抑制するのに有効な上述の方法を行い、それによって同種移植片の急性の拒絶が軽減または防止される工程を有する、哺乳動物同種移植片レシピエントにおける急性の同種移植片拒絶を軽減する方法が提供される。いくつかの実施態様においては、Jak3インヒビター組成物の継続的なまたは周期的な投与を有する、慢性の同種移植片拒絶予防のための方法が提供される。
【0029】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物移植片レシピエントにおいて移植寛容を誘導するための方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の移植片拒絶応答を抑制するのに有効な、上記の方法を行う工程を有する。
【0030】
本発明の所定の実施態様によれば、自己免疫疾患の寛解を、前記疾患を被る哺乳動物被験体において促進する方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、前記被験体におけるT細胞媒介性の自己免疫応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、それによって内因性のJak3依存性T細胞によって媒介される被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される。
【0031】
本発明の所定の実施態様によれば、気道過敏症を、前記過敏症を被る哺乳動物被験体において軽減する方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の過敏症応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、それによって被験体における気道組織の過敏症が減少または停止される。
【0032】
本発明のいくつかの実施態様は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性のアレルギー応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、アレルギーを、前記アレルギーを被る哺乳動物被験体において軽減する方法が提供される。それによって被験体におけるアレルギー反応が減少または停止される。
【0033】
本発明のさらに別の実施態様は、白血病またはリンパ腫を被る哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制する上述の方法を行う工程を有し、Jak3依存性の白血病またはリンパ腫の増殖を阻害する方法を提供する。好ましい実施態様においては、化合物またはその代謝物もしくは誘導体は、その他のキナーゼ(例えば、Jak2)の活性の阻害に比較して、Jak3活性を選択的にまたは特異的に阻害し得る。薬学的組成物の量は、白血病またはリンパ腫の細胞の増殖を阻害またはブロックするのに有効である。
【0034】
本発明のさらなる実施態様においては、T細胞媒介性の免疫応答に関連する生物学的なプロセスを解明するために、および新規な免疫抑制薬物を同定するために有用なインビトロの方法が提供される。いくつかの実施態様においては、以下の工程を有する、新規な免疫抑制薬物を同定することを補助するインビトロの方法が提供される。(a)Jak3を有するT細胞を目的の化合物にある濃度の範囲にわたって接触させて、化合物が範囲内の1つ以上の濃度においてJak3活性を阻害するか否かを判断することによって、T細胞機能を破壊するための活性について目的の化合物を試験する工程;(b)目的の化合物のJak3阻害活性と、既知のJak3阻害活性を有する式(I)、(II)、(III)の化合物、好ましくは649641P(NC1153)のJak3阻害活性とを比較する工程;ならびに(c)かかる試験および比較の結果を使用して、目的の化合物が治療的な免疫抑制剤としてインビボで使用するための候補薬物であるか否かを判断する工程。いくつかの実施態様においては、方法はまた、(d)目的の化合物を1つ以上のその他のキナーゼ(たとえば、Jak2)の阻害活性について試験する工程;(e)目的の化合物のJak3阻害活性と、もしあれば1つ以上のその他のキナーゼのその阻害活性とを比較する工程;および(f)比較を使用して、目的の化合物を選択的なJak3インヒビターとして同定する工程も有する。
【0035】
本発明の別の実施態様においては、所定のJak3選択的または特異的なインヒビターを用いるインビボの試験方法が提供される。かかる方法は、動物モデルにおいてT細胞媒介性の免疫応答を研究するために有用であり、ならびに649641P(NC1153)、WP938、および図14B〜39Bにおいて同定されるその他の化合物のような化合物は、候補Jak3特異的インヒビターの活性を比較するための標準として作用する。候補免疫抑制薬物を同種移植片生存に対するこの効果について試験するためのかかる方法の1つは、以下の工程を有する:(a)適切なドナー動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;(d)請求項1において規定されるような化合物を少なくとも1つの動物に投与してポジティブコントロール群として作用させる工程であって、R1およびR3はそれぞれCN(CH3)2であり、ならびにR2はOである工程;(e)随意に、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する候補薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および候補薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程。いくつかの実施態様においては、方法はまた、候補薬物が、Jak3依存性のT細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得ると判断する工程も有する。
【0036】
所定の他の実施態様においては、インビボの免疫抑制の潜在性について候補薬物を評価するインビボの方法が提供される。候補薬物は好ましくは、先ずJak3依存性T細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得るとして同定される。方法は、以下の工程を有する。(a)適切なドナー哺乳動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;(d)649641P(NC1153)を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、標準レシピエントまたは群として作用させる工程;(e)好ましくは、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;ならびに(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程。本発明のこれらのおよびその他の実施態様、特徴、および利点は、以下の記載および図面を参照して明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
好ましい実施態様の詳細な説明
本明細書中に記載される研究において、生化学的中間体−酵素Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)が成熟T細胞の活性化、機能、および同種移植片拒絶にとって重要であることが確認される。本明細書中で同定される所定の化合物、特にMannich塩基として分類される化合物は、選択的にJak3を阻害し、CsA、FK506、およびRAPAのような従来の免疫抑制薬物を越える治療的利点を提供し得る。上述の背景のセクションに記載されたように、RAPAはmTORを阻害する一方、CsAおよびFK506はCaNをブロックし、これらの標的分子の両方とも、遍在的な発現プロフィールを示し、強力な毒性副作用を引き起こす。それとは対照的に、Jak3発現は、TおよびBリンパ球を含むリンパ系区分に排他的に制限される。
【0038】
最初に、Jak3のアンタゴニストを同定および特徴づけを目指して一連の試験が行われた。それによって、Jak3のアンタゴニストはTCGF依存性経路のファミリー全体を阻害する。Mannich塩基およびその他の化合物の群が、ある濃度の範囲にわたって、選択的なJak3阻害活性についてスクリーニングされた。プロラクチン(PRL)刺激された(すなわち、Jak2依存性の)T細胞増殖に比較して、IL−2刺激された(すなわち、Jak3依存性の)T細胞増殖の選択的な阻害のいくつかの基準を示した化合物は、構造的に類似するいくつかの化合物とともに、図14B〜39Bに、それらの構造式により示される。各化合物の対応する阻害活性は、図14A〜39Aに示される。図22Aは、図21Aのアッセイに類似するアッセイの結果を示すが、図21Bと同じ化合物の僅かに異なる純度の調製物を伴う。Mannich塩基に加えて、構造的に類似の化合物(図25Bおよび26B)が、試験された化合物の中に含まれる。以下の材料および一般的な方法が、実施例においてそうではないと記載された場合を除いて使用された。代表的な化合物、649641Pはまた、NCI薬物データベース番号NC1153によって本明細書中で参照され、および図18Bに示されるメソの立体異性体(WP938と称される)は、同一の選択的なJak3阻害をインビトロで示し、単独でまたはCsAと組合わせて同種移植片生存を延長する能力について、ならびに薬物誘導性の毒性についてさらに試験された。
【0039】
[一般的な方法および材料]
[細胞培養および処置]
ラットT細胞株Nb2−11cは、元来Peter Gout博士(Vanvouver、Canada)によって開発され、10%胎児ウシ血清(Intergen、カタログ番号1020−90)、2mM L−グルタミン、5mM HEPES、pH7.3、およびペニシリン−ストレプトマイシン(それぞれ、50IU/mlおよび50μg/ml)を伴うRPMI−1640中で、37℃/5% CO2にて増殖された。等遠心分離(Ficoll(登録商標);EM Science、Gibbstown、NJ)によって精製された、新鮮に外殖された正常なヒトTリンパ球は、以前に記載されるように23、72時間、フィトヘマグルチニン(PHA)活性化された。Tリンパ球は、洗浄し、サイトカインへの曝露の前に、1%胎児ウシ血清を含むRPMI−1640培地中で24時間インキュベートすることによって、静止状態にされた。次に、細胞は図面の説明において以下に記載されるように、種々の濃度の649641P(NC1153)で処置された。Mannich塩基649641P(NC1153)は、JonathanDimmock 博士 College of Pharmacy、Univercity of Saskatchewan、Saskatoon、Saskatchewan、Canadaにより快く提供された。次いで、全ての細胞は1nM組換えヒトIL−2(Hoffman−LaRoche、Basal、Switzerland)、IL−4もしくはIL−7(PeproTech)、またはNational Hormon and Pituitary Program、National Institute of Diabetes、Digestive、and Kidney Disesase(Bethesda、MD)によって供給されたヒツジプロラクチン(PRL)で、37℃にて刺激された。細胞ペレットは−70℃にて凍結された。
【0040】
[増殖アッセイ]
静止状態ヒト1次T細胞、YT、またはラットNb2−11c T細胞(5.0×104/ウェル)が、1nM IL−2、−4、−7(PeproTech、Rock Hill、NJ)またはPRLの不在下または存在下、200μlの静止状態の培地中、平底の、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて播種された。次に、細胞は、Mannich塩基薬物で16時間処置され、次いで4時間、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)でパルスされ、そして線維ガラスフィルター上に採集された。[3H]−チミジン取り込みは、以前に記載されるように23、液体シンチレーション計測によって、または当該分野において周知である標準的な技術を使用して、分析された。
【0041】
[膜タンパク質の可溶化、免疫沈降、およびウェスタンブロット分析]
凍結された細胞ペレットは、以前に記載されるように16、氷上で解凍され、そして1% TX−100溶解緩衝液(108細胞/ml)中で可溶化され、そして遠心分離によって分類された。ヒトT細胞に対しては、上清は、Jak3の固有COOH末端(アミノ酸[a.a]1104〜1124)、ヒトStat5a(a.a775〜794)のカルボキシル末端、またはStat5b(a.a777〜787)のカルボキシル末端26のいずれかに由来するペプチドに対して産生された5μl/mlポリクローナルウサギ抗血清とともに、2時間、4℃にて、上下回転してインキュベートされた。Abおよび免疫沈降されたタンパク質が、プロテインA−セファロースビーズ(Pharmacia、Piscataway、NJ)との30分間のインキュベーションにより捕獲され、精製のために沈降され、そして2×SDSサンプル緩衝液(0.125M Tris pH6.8中の20% グリセロール、10% 2−メルカプトエタノール、4.6% SDS、0.004% ブロモフェノールブルー)中で4分間煮沸することによって溶出された。ホスホMapkアッセイに対しては、約25μgの全細胞可溶化物がSDSサンプル緩衝液中に解離され、そして還元条件下、10%(ほかの全ては7.5%)SDS−PAGE上で分離された。タンパク質は、以前に記載されるように27、二フッ化ポリビニリデン(Immobilon(商標);カタログ番号1PVH00010、Millipore、Bedford、MA)にトランスファーされた。ウェスタンブロット分析が、pAb、マウス抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(mAb;UBI;4G10;カタログ番号05〜321、Upstate Biotechnology、Inc.Lake Placid、NY)または、ホスホ p44/42 Mapk(New England Biolabs、Beverly、Massachusetts、カタログ番号9101)を用いて行われた。上述の抗体、ウサギ抗ホスホ−Erk1/2、およびモノクローナルpan−Erk(Pharmingen、San Diego、CA、カタログ番号E17120)でウェスタンされたブロットは、ブロッキング緩衝液中で1:1000希釈され、そして以前に記載されるように27、または当該分野において周知である標準的な技術を用いて使用された。ウサギ抗ホスホ−チロシン(□PY)、およびモノクローナルマウス抗−Fyn、または抗−Lck抗体(BD Biosciences、San Diego、CA、カタログ番号610163[Fyn]および610097[Lck])でウェスタンされたブロットは、以前に記載されるように27、ブロッキング緩衝液中で1:1000希釈された。
【0042】
[ラット腎臓移植]
Harlan Sprague−Dawley(Indianapolis、IN)から得られた成体雄性ACI(RT1a)およびLewis(LEW;RT11)ラット(160〜200g)は、Animal Welfare Committeeのガイドラインに従って飼育された。ラットは、光および温度制御された部屋で飼育され、そして食事および水が適宜与えられた。腎臓は、OnoおよびLindsey28の標準的な超微細手術を使用して、LEWドナーからACIレシピエントに異種局所的に移植された。免疫抑制薬物の評価に対しては、移植片レシピエントは、毎日の静脈内(i.v.)注射または経口強制飼養(p.o.)によって、Mannich塩基化合物を、単独で、または経口強制飼養により毎日投与されるCsAもしくはRAPAと組合わせて与えて処置された。レシピエントのコントロール群は未処置のままであった。いくつかのレシピエントは、CsAまたはRAPA単独で処置された。移植片生存時間は、腎臓移植片を支持する動物の生命の生存として規定された。結果は、平均生存時間(MST)±標準偏差(SD)として表され、Gehan生存検定により統計学的有意性について評価された。さらに、Mannich塩基と、CsAまたはRAPAとの間の相互作用が、50%有効分析29、30によって評価された。コンピューターソフトウェアが、組合わせ指標(CI)値を算定するために使用され:CI<1は相乗的な相互作用、CI>1は拮抗的な相互作用、またはCI=1は相加的な相互作用を示した30。
【0043】
[組織病理学的評価]
LEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントは、以下に続く実施例において記載されるように処置された。移植後7日目に、腎臓同種移植片がBouin´s Fixative(Poly Scientific R&D Corp.、Bay Shore、NY)に置かれた。各腎臓は、単回の水平切開、続く3つの連続的な切開からなる同一の方法で切り取られて、スライドを作成するために使用された。次に、別の切開が行われ、続いてさらに3つの連続的な切片およびスライドが作成された。腎臓当たり合計12個のスライドが、以前に記載されるように31、または当該分野において周知である標準的な技術を使用して、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色された。拒絶の程度は、Hert and Lung Transplantationによって確立された基準32に従って分類された。特に、腎臓は、緩衝化10%ホルマリン中に固定化されて一晩処理され;3−□組織学的切片は、漸進性のヘマトキシリン−エオシン(H&E)試薬で染色された。2つの独立した病理学者が、複数の腎臓切片における血管障害、糸球体の変化、および尿細管間質障害の程度を評価するために、光学顕微鏡基準の半定量スケールを使用した。尿細管および糸球体の変化は、別々に、0=変化なし;1+=<5%;2+=5〜25%;3+=26〜50%;および4+=>50%関与として分類された。類似の血管スケールは、0=なし;1+=最小;2+=軽度;3+=中程度;および4+=重篤を含んだ。
【0044】
[EMSA]電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)。
薬物またはベヒクルコントロール(DMSO)で処置された細胞は、遠心分離(20,000×g、1分間、4℃にて)によりペレット化され、そして続いて5容量の10mM HEPES、pH7.9、10mM KCl、1.5mM MgCl2、0.5mM DTT、100mM PMSF、5□g/mlアプロチニン、1□g/mlペプスタチンA、および2□g/mlロイペプチン中で洗浄され、遠心分離され、次いで1% NP−40が補充された同じ緩衝液中に溶解され、そして20分間氷上でインキュベートされた。核を含むペレットは、等容量の低塩緩衝液(10mM HEPES、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、20mM KCl、0.5mM DTT、0.2mM EDTA、およびプロテアーゼインヒビター)および高塩緩衝液(800mM KClを含む低塩緩衝液)中に再懸濁された。次いで、この画分は4℃にて10分間の遠心分離によって単離され、そして上清は核タンパク質抽出物として保存され、そして−70℃で貯蔵された。ゲル移動度シフトアッセイが、Stat5a/b DNA結合活性を検出するために、□−カゼイン遺伝子のプロモーター(5´−AGATTTCTAGGAATTCAATCC−3´)またはNF−kB結合エレメント(5´−AGTTGAGGGGACTTTCCAGGC−3´)に対応するStat5DNA結合配列を使用して行われた。両方のプローブは、[32P]dATPで末端標識化された。次いで、標識化オリゴヌクレオチドは、15□lの結合カクテル(50mM Tris−Cl、pH7.4、25mM MgCl2、5mM DTT、50% グリセロール)中、4℃にて2時間、5□gの核抽出されたタンパク質とともにインキュベートされた。スーパーシフトアッセイについて、核抽出物は、1□gの正常なウサギ血清またはStat5a、Stat5b、もしくはp50/p65 NF□Bに特異的な抗血清(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、Santa Cruz、CA;それぞれ、カタログ番号sc−1190Xおよびsc−372X)のいずれかとともに、4℃にて1時間、説明書において示されるように、予めインキュベートされ、次いで[32P]−標識化DNAオリゴヌクレオチドとともに、15分間室温でインキュベートされた。DNA−タンパク質複合体は、0.25×TBE緩衝液中で、1時間、100Vにて予め泳動された、0.25×TBEを含む5%ポリアクリルアミドゲル上で分解された。サンプルはロードされ、そしてゲルは室温で約2時間、150Vにて泳動され、次いで減圧下で過熱することによって乾燥され、そしてX線フィルム(X−Omat、Kodak)に、−70℃にて露光された。
【0045】
[Mannich塩基およびその他の化合物]
最初の研究において使用された化合物649641P(NC1153)は、the University of Saskarchewan、Saskatoon、CanadaのJonathan R.Dimmock博士から提供された。649641P(NC1153)および図14B〜39Bにおいて同定される化合物を含むその他の化合物は、the M.D.Anderson Cancer Center、University of Texas System、Houston、TexasのWaldemar Priebe博士によって調製された。本明細書中に記載される化合物は、Aldrich Chemical Co.、(Milwaukee、Wis.)およびSigma(St.Louis,Mo.)のようなサプライヤーから入手可能な市販の出発物質および試薬によって調製され得る。Fieser and Fieser´s REAGENT FOR ORGANIC SYNTESIS、第1〜17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd´s CHEMISTRY OF CARBON COMPOUNDS、第1〜5巻およびその増刊(Elsevier Science Publishers、1989);ORGANIC REACTIONS、第1〜40巻(John WileyおよびSons、1991)、March´s ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、(John Wiley and Sons、第4版)、およびLarock´s COMPREHENSIVE ORGANIC TRANSFORMATIONS(VCH Publishers Inc.、1989)のような参考文献において記載されるように、標準的な化学合成技術および手順が用いられ得る。化合物を合成するためのさらなる手引きは、定期刊行物、例えば、Dimmock34、35の出版物において、および以下に記載されるように、見出され得る。
【0046】
以下の制限されない例は、代表的なJak3選択的インヒビター化合物の特徴および使用の説明であり、および本発明をいかようにも制限することを意味するものではない。
【0047】
[実施例1.Mannich塩基649641P(NC1153)のインビトロでの効果]
649641P(C18H38C12N2O;分子量369.41)と示されるMannich塩基はまたNC1153として、その立体異性体の混合物として参照され、以下の一般式を有するが、
Jak3対Jak2依存性の増殖を受けるT細胞に添加されて、上述のように、Jak3を選択的に阻害するその能力が試験された。図1Aは、γc/Jak3−依存性のPHA活性化ヒトT細胞の増殖に対する、649641P(NC1153)の効果を示すグラフである。静止状態のPHA活性化ヒトT細胞(5.0×104細胞/ウェル)は、1nMヒトIL−2(■)、IL−4(●)、またはIL−7(▲)の存在下または不在下で、漸増濃度の649641P(NC1153)(縦座標)とともに、16時間37℃にて培養された。次いで細胞は、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)で4時間パルスされ、そして取り込まれた放射標識化プローブが横座標上にプロットされ、DMSO処置されたサンプルセット(n=6)からの全cpmの阻害%として表された。
【0048】
図1Bは、Jak2活性化因子(プロラクチン;PRL[○])またはJak3活性化因子〈インターロイキン−2;IL−2[■]〉の存在下で培養されたT細胞の増殖に対する649641P(NC1153)の効果を示す。ラットT細胞株(Nb2−11c)が選択されたのは、それがPRL/Jak2またはIL−2/Jak3刺激のいずれかに応答するからである。静止状態ラットT細胞(5.0×104細胞/ウェル)は、Jak2活性化因子(1nM PRL([○])またはJak3活性化因子(1nM IL−2[■])の存在下、漸増濃度の649641P(NC1153)(縦軸;0〜100μM)とともに、16時間37℃にて培養された。細胞は、アッセイの最後の4時間、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)でパルスされ、次いでDNAが取り込まれた放射標識化プローブが横軸上にプロットされ、DMSO処置されたサンプルセット(n=4)からの全cpmの阻害%として表された。図1A〜Bに示されるように、649641P(NC1153)は、γc/Jak3依存性の細胞増殖を選択的に阻害するが、PRL/Jak2依存性の細胞増殖は阻害しない。特に、649641P(NC1153)は、IL−2、IL−4、およびIL−7に応答してNb2−11c細胞増殖を等しく有効に阻害することを証明したが、同化合物は、Jak2依存性の増殖よりもJak3依存性の増殖を3倍有効に阻害した。
【0049】
図2A〜Cにおいては、Jak3/Stat5シグナル経路に対する649641P(NC1153)の効果が示される。ヒトYT細胞は、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、2時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Jak3 pAbで免疫沈降され、そして図2A、上部パネルに示されるように、抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ、次いで剥離されて抗Jak3で再ブロットされた(図2A、下部パネル)。これらのウェスタンブロットの実験結果は、Jak3のチロシンリン酸化が、ヒトYT細胞(1〜100μM)においては649641P(NC1153)によって用量依存的に阻害されており、図1Aに示される結果と相関する。ここで図2Bを参照すると、ヒトYT T細胞はまた、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、2時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Stat5a pAbで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ(図2B、上部パネル)、次いで剥離されてStat5aで再ブロットされた(図2B、下部パネル)。第3の試験において、この結果は図2Cに示され、ヒトYT細胞は、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、16時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Stat5b pAbで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ(図2C、上部パネル)、次いで剥離されて抗Stat5aで再ブロットされた(図2C、下部パネル)。
【0050】
IL−2はまた、アダプタータンパク質、Shcを介して、Shc/Ras/Raf/Erk経路を強力に活性化する。ShcはIL−2Rβ鎖のTyr338に結合して、最終的にT細胞増殖を駆動する。図3は、上述の実験に類似する実験の結果を示し、ここではIL−2媒介性のp44/42 Erk1/2リン酸化に対する上昇する649641P(NC1153)濃度の効果が研究された。静止状態のPHA−活性化T細胞は、DMSO(コントロール;レーンa〜b)または漸増濃度(c〜i)の649641P(NC1153)で2時間処置され、次いで1μgの存在下、37℃にて10分間刺激された。細胞は溶解され、そして全細胞可溶化物は、10% SDS−PAGE上で分離され、PVDF膜上にトランスファーされ、抗−ホスホ−p44/42 Erk1/2でウェスタンブロットされ(上部パネル)、次いで剥離されてpan Erk抗体で再プローブされた(下部パネル)。矢印は、p44/42 Erk1/2の位置を示す。これらの結果は、649641P(NC1153)が、ヒトT細胞においてIL2媒介性のErk1/2活性化をブロックすることを明らかにする。
【0051】
YT細胞は、活性化FynおよびLckキナーゼを恒常的に発現し、その活性化FynおよびLckキナーゼは、YT細胞のチロシンリン酸化状態について試験することによって示され得る。YT細胞は、様々な濃度の649641P(NC1153)(1〜100□M)とともに2時間培養された。細胞抽出物は、抗Fynまたは抗Lck抗体で免疫沈降され、そして抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ、次いで剥離されて抗Fynまたは抗Lck抗体で再ブロットされた。図4は、上述の実験の結果を示す:YT細胞抽出物は、抗Fynで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ(第1列)、次いで剥離されて抗Fynで再ブロットされ(第2列);YT細胞は抗Lck抗体で免疫沈降(IP)されて抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ(第3列)、次いで剥離されて抗Lck抗体で再ブロットされた(第4列)。YT細胞はベヒクルのみとともに(レーンaおよびb)、または上昇する649641P(NC1153)濃度(1〜100□M)(レーンc〜i)とともに培養された。これらの結果は、649641P(NC1153)がFynまたはLckキナーゼの活性をブロックしないことを示す。
【0052】
上述の結果は、その他のインヒビターはJak3およびJak2の応答性細胞増殖を阻害する(約10〜25μMのIC50)一方で、649641P(NC1153)は約2.5μMのIC50を伴って細胞増殖を破壊することによってより有効であったことを示す。さらに、649641P(NC1153)はIL4またはIL7駆動の細胞増殖を同じ濃度において有効に阻害した(約2.5□□のIC50)。この薬剤は、ホスホウェスタンブロットによって測定されたように、Jak3およびその基質、すなわちStat5a/b、アダプタータンパク質Shc、およびErk1/2のチロシンリン酸化を阻害した。649641P(NC1153)は、以前に記載された約10□□のIC50を示すPNU156804 Jak3インヒビターよりも有効であった。さらに、オリゴヌクレオチドプローブへのStat5a/b DNA結合は、649641P(NC1153)によって大きく損なわれるが、この化合物は、TNF−□誘導性のNF−kB DNA結合に対してなんら効果がないので、この転写因子に特異的であった。649641P(NC1153)化合物は非Jak3発現ヒトJurkat T細胞のDNA合成も、TCRシグナル伝達中間体LckおよびFynチロシンキナーゼの活性化も阻害しなかった。
【0053】
[実施例2.同種移植片生存に対するMannich塩基649461P(NC1153)の効果]
インビボでの効果を試験するために、腎臓同種移植片のレシピエントは、移植後即座に開始して7日間、649641P(NC1153)で処置された。LEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントは、2.5、5.0、10.0、または20.0mg/kgの649641P(NC1153)を7日間毎日のi.v.注射単独で、または2.5、5.0、10.0、もしくは20.0mg/kgのCsAの経口強制飼養と組合わせることによって、処置された。i.v.または経口強制飼養によって送達されて単独で与えられた649641P(NC1153)は、表1に示されるように、投薬量依存的にラット腎臓同種移植片生存を延長した。80mg/kgの649641P(NC1153)p.o.は、i.v.注射された10mg/kgの649641P(NC1153)と類似の生存を生じたので、経口の生物学的利用能は、約12.5%であると見積もられる。平均生存時間(MST)およびSDは、5〜6の実験から各群について算出された。組合わせ指標(CI)値は、50%有効分析によって算出された(CI<1は相乗的な相互作用、CI>1は拮抗的な相互作用、およびCI=1は相加的な相互作用を示す)29、30。
【0054】
経口強制飼養によって投与された、649641P(NC1153)の単独の、またはCsAと組合わせた腎臓同種移植片生存に対する効果は、表2に示される。LEW(RT11)腎臓同種移植片のACT(RT1a)レシピエントは、40、80、または160mg/kg/dの649641P(NC1153)の7日間の経口強制飼養によって、単独で、または2.5、5.0、10.0、または20.0mg/kg/dのCsAの経口強制飼養と組合わせて、1日1回処置された。MSTおよびSDは、5〜6実験から各群について算出された。組合わせ指標(CI)値が算出された。
【0055】
MST±SDに係る表2に示される結果は、Gehan生存検定によって統計学的有意性について評価された。
【0056】
結果に対して算出された組合わせ指標(CI)値対CsA/649641P(NC1153)比は表1に示され、そしてこれらのデータは図5に示されるようにグラフ化された。CsAの経口の生物学的利用能が90%であることを考慮して、4:1、3:1、2:1、および1.5:1のCsA/649641P(NC1153)比(CI=0.1〜0.27)は、1:1、1:2、または1:4のCsA/649641P(NC1153)比(CI=0.38〜0.60)に比較して、より良好な相乗作用を示した。50%有効分析および組合わせ指標(CI)値が、649641P(NC1153)とCsAとの間の相互作用の質を算出するために使用された。649641P(NC1153)およびCsAの組合わせは、CI値(0.6〜0.1;図5)によって確認されるように、相乗的であり;1:2〜1:4の649641P(NC1153)/CsA比は最も有効であった(CI=0.1〜0.27;表1)。
【0057】
結果をまとめると、649641P(NC1153)は腎臓同種移植片生存の用量依存性の延長を示し:7日間i.v.送達された20mg/kg/日の649641P(NC1153)の投薬量は、24.8±6.6日の(p=0.00003:未処置コントロール;MST=8.8±0.5日)、7または14日間経口送達された240mg/kg/日の649641P(NC1153)は、47.8±19.59日または>60日(両方ともp<0.00001)のMSTを生じた。CsA単独(2.5、5、10、または20mg/kg/d、3日間)での処置は、用量依存性の効果を生じ、最も高い用量にて、24.50±4.58日のMSTを達成する(p<0.0001)。組合わせの処置は、各試薬での単剤治療と比較して、移植片生存における強力な相乗的相互作用を明らかにした。例えば、2.5mg/kg/日の7日間の649641P(NC1153)単独のi.v.投与は、9.5±1.4日のMSTを生じ、3日間の10mg/kg/日のCsA単独の静脈内投与は、21.2±5.3日のMSTを生じるが、2つの薬物の組合わせは生存を41.4±9.8日に延長した(p=0.00002)。最も良好な結果は、4:1および2:1の649641P:CsA投薬量比で観察され、それぞれ0.11および0.27のCI値を生じた。新規なおよび選択的なJak3インヒビター、649641P(NC1153)は、腎臓同種移植モデルにおいてインビボで免疫抑制的であり、そしてCsAと組合わせて顕著な相乗的効果を発揮することが同定された。
【0058】
[実施例3.腎臓毒性についての649641P(NC1153)の評価]
組織学的検査のために、組織がLEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントから得られ、これは以下のように処置された;7日間低塩食餌におかれたレシピエントは14日間:i.v.送達された10mg/kgの649641P(NC1153);i.v.送達された0.16mg/kg RAPA;p.o.送達された10mg/kg CsA;10mg/kg CsAp.o.と0.16mg/kg RAPAi.v.との組み合わせ;または10mg/kg CsA p.o.と10mg/kg 649641P(NC1153)i.v.との組み合わせ、で処置された。14日目にラットは屠殺され、そして組織学が、標準的な方法に従うH&E染色を使用して腎臓に対して行われた。図6A〜Eにおける顕微鏡写真は、649641P(NC1153)単独の、またはCsAと組合わせた、腎臓構造に対する効果を示す。全ての写真は、同じ200×倍率にて示される。類似の結果が1群あたり5匹のラットにおいて観察された。649641P(NC1153)(図6A)もRAPA単独(図6B)も、腎臓において有意な変化をなんら示さなかった。それとは対照的に、CsA単独(図6C)は、空胞形成および萎縮によって可視化されるように、30%の細管において障害を引き起こした。CsA/RAPA(SRL)群は、萎縮および濃縮した核を伴って、90%の細管において大規模な空胞形成を示した(図6D)。CsA/RAPA群と対照的に、CsA/649641P(NC1153)の組合わせで処置されたラットからの腎臓は、CsA単独の群において観察された変化に類似する変化を示した(図6E)。簡潔には、649641もRAPA単独のいずれも、腎臓毒性を引き起こさなかった。しかし、CsA単独は腎臓毒性であり、そしてこの効果は、RAPAとともに増強され、649641P(NC1153)では増強されなかった。
【0059】
上述の組織学的研究に加えて、649641P(NC1153)処置された動物はまた、SRLと典型的に関連する毒性のタイプについても評価された。この研究においては、動物の処置は649641P(NC1153)単独またはCsAとの組合わせを含んだ。Wistar−Furthラットは、649641P(NC1153)(10mg/kg/d i.v.または強制飼養あたり40mg/kg/d)もしくはSRL(強制飼養あたり1.6mg/kg/d)を単独で、またはCsA(強制飼養あたり10mg/kg/d)と組合わせて受けた。慢性的な腎臓毒性を評価するための塩類の欠乏(0.05% NaCl)、または脂質補充(17.7%トリグリセリド、5.02%コレステロール)のいずれかによる7日間の食餌前処理後、ラットの群は、7、14、または28日間の処置過程(n=6/薬物/持続時間)を受けた。クレアチニンクリアランス(CrCL)における差異;総密度、低密度、および高密度(HDL)コレステロール(CHOL)画分;トリグリセリド(TG);骨髄細胞密度;抹消血計数(PBC);および血液の化学的性質が、Fisherのt検定によって評価された。
【0060】
この研究の結果は、649641P(NC1153)が体重増加(p=0.0002)を引き起こし、そしてCsAまたはSRLによって生じる体重減少をエンハンスしないことを示した。CrCL値は、未処置(2.0 0.1mL/分)および649641P(NC1153)単独(1.9 0.1mL/分)について類似であったが、SRL単独(1.7 0.1mL/分;p<0.02)、およびCsA単独(1.3 0.1mL/分;p<0.001)について減少した。CsA単独に比較して、648641Pの付加は、CrCL値をさらに減少させることはなかった(1.38 0.2mL/分;p=0.68);一方、SRLは顕著にこれを減少させた(0.9 0.2mL/分;p=0.03)。低塩食餌における未処置のラットに比較して、649641P(NC1153)は、TGまたはLDLレベルを変化させずに、血清CHOL(82.0 5.0対65.5 9.4mg/dL;p=0.03)を減少させ、HDLを増加させた(p=0.004)。648641Pは、SRL+CsA(107.8 8.4mg/dL;p=0.0005)と対照的に、CsAの高コレステロール症効果を増加させなかった(77.5 7.0単独対64.1 12.7mg/dL組合わせ)。高脂食餌において、SRLはCHOL(689.5 67.4;p=0.00001)およびその他の脂質画分に対して顕著な効果を生じ;CsAはより少ない効果(545.7 95.7mg/dL;p=0.0002)であり、649641P(NC1153)は、未処置の動物において中程度の変化のみを生じた(323.8 51.1mg/dL;p=0.01対237.5 31.4mg/dL)。649641P(NC1153)はHDL、LDL、またはTGレベルに対する効果をなんら有しなかった。648641PもCsAも、SRLとは対照的に(P<0.04)、未処置のラットと比較して、PBCを減少させなかった。SRL/CsA宿主は低細胞性の骨髄を示し(30〜40%が脂肪組織に置き換えられる)、649641P/CsAコホートは、未処置のラットからなんら有意な変化を示さなかった。これらの結果を考慮すると、649641P(NC1153)は、腎臓毒性および骨髄毒性の効果がなく、高脂投与に対して軽度の脂質毒性を伴うと結論づけられる。SRLを混乱させるようなCsAの有害な効果を悪化させないので、649641P(NC1153)はリンパ系要素に対して選択的な作用を発揮するようである。
【0061】
上述の研究から、649641P(NC1153)はJak3活性をブロックし、単独で同種移植片生存を延長し、そしてCsAと相乗的であることが結論づけられ得る。好ましい化合物、649641P(NC1153)はJak2依存性T細胞増殖に比較してJak3依存性T細胞増殖のインビトロでの選択的な阻害を示し、そしてインビボでなんら腎臓毒性の副作用を引き起こすことなく臓器の同種移植片の生存を延長させた。有利には、649641P(NC1153)はシクロスポリンと強力な相乗的相互作用を示し、シクロスポリン誘導性の腎臓毒性を増加することなく臓器の同種移植片の生存を延長させた。さらに、649641P(NC1153)は、以前に記載された化合物AG490およびPNU156804と比べて、Jak3媒介性の細胞活性をブロックすることに対しては大きな特異性を示したが、Jak2媒介性の細胞活性をブロックすることに対しては示さなかった。しかし、現時点では、649641P(NC1153)の投与と関連する上述の望ましい薬理学的特性が、649641P(NC1153)化合物とJak3との直接的な相互作用に完全に起因するのか否か、または、例えばJak3阻害が649641P(NC1153)からの代謝物または誘導体よってなんらかの程度インビボで媒介されるのか否かは、明らかではない。後者の場合、医学的に示すとすれば、かかる活性な代謝物または誘導体の種のいずれの直接的な投与が、治療的に649641P(NC1153)の代わりをし得ると考えられる。同様に、本明細書中に記載される選択的なJak3インヒビター化合物の1つを生じるようにインビボで作用する前駆体化合物もまた、個体の特別の必要性がそのように示す場合には、治療的に投与され得る。
【0062】
[実施例4.治療的適用]
649641P(NC1153)化合物は、免疫抑制治療のため、およびJak3を含むかまたは発現するリンパ系、骨髄系、またはその他の細胞の病理を処置するため、本明細書中に記載される医学的有用性のある化合物の群の代表であると考えられる。化合物は、ヒトのT細胞関連疾患において特に有用であると考えられ、および獣医学的診察における使用に対して、Jak3依存性のリンパ系もしくは骨髄系の細胞機能をその他のタンパク質キナーゼの活性に影響を与えずに抑制することが望ましいなんらかの適用に対して、またはかかるキナーゼにほとんど影響を与えないもしくは治療的に受容可能な程度の影響を与えるなんらかの適用に対して、特に有用であると考えられる。処置は、リンパ球、またはJak3を発現するリンパ系もしくは骨髄系起源の他の細胞においてシグナル3経路を干渉するのに有効な化合物の量を投与する工程を有し、それによってその作用を阻害する。例えば、細胞分裂をブロックする。かかる投与は、化合物の酸の形態または薬学的に受容可能なその塩を利用するか、またはこれは化合物の生物学的に活性な代謝物の形態をとる。あるいは、被験体の身体において化合物の1つ以上の活性な形態に代謝され得る前駆体化合物が投与され、それによってJak3依存性のリンパ球作用が破壊され、好ましくは細胞分裂をブロックする。投与は連続的または周期的である。
【0063】
いくつかの医学的状況において、個体は望ましくない免疫応答の抑制を必要とし、その場合、649641P(NC1153)、または前駆体もしくは活性な代謝物を含む薬学的組成物の有効な量の投与は、望ましくない免疫応答を軽減または防止する。シクロスポリンAまたはFK506のような、Jak3阻害を介して作用しない、別の免疫抑制剤の治療的に有効な量を同時投与することによって、さらにより良好な結果が、個体に対する毒性をほとんど伴わずに達成され得る。かかる使用の例は、哺乳動物移植片もしくは同種移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶もしくは同種移植片拒絶を軽減すること、または移植寛容を誘導することを含む。その他の例においては、治療目的は、内因性Jak3依存性T細胞によって媒介される自己免疫疾患の寛解を促進することであり、それによって被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される。さらにその他の使用の手段は、649641P(NC1153)の薬学的調製物を投与して、T細胞媒介性の過敏性応答を抑制することによって哺乳動物被験体における気道過敏症を軽減することを含む。同様に、アレルギー患者は、T細胞媒介性のアレルギー応答を抑制するために処置され、それによってアレルギー反応が減少または停止される。649641P(NC1153)を含む薬学的組成物の投与はまた、Jak3依存性の白血病またはリンパ腫の増殖を阻害することが期待される。649641P(NC1153)での治療的処置の顕著な潜在的利点は、Jak3活性を選択的に阻害し、リンパ系画分の細胞(およびJak3を発現する骨髄系の細胞)に制限されることによる、ならびにJak2、および身体にわたる多くの組織において見出される他のタンパク質キナーゼ活性に対してほとんどまたは全く影響を有しないことによる利点であり、ずっと少ない副作用が期待される。
【0064】
[薬学的組成物]
治療的使用に適切な薬学的組成物は、その酸形態をとる649641P(NC1153)化合物、または適切なキャリアと組み合わせられてその薬学的に受容可能な塩もしくは水和物を含む。薬学的に受容可能な塩および水和物とは、製薬化学者に明白な化合物の、このような塩および水和物の形態、すなわち、溶解性、嗜好性、吸収、分散、代謝、および排泄のような化合物の物理学的なまたは薬物動態学的な特性に好ましい影響を与える形態をいう。事実上より実用的で、化合物の形態の選択においてもまた重要なその他の因子は、得られるバルク薬物の、原材料費用、結晶化の容易性、収量、安定性、溶解性、吸湿性、および流動性を含む。化合物が負に荷電されると、これは対イオン、例えば、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属カチオンによって平衡化される。他の適切な対イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム、またはテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、コリン、トリエチルヒドロアンモニウム、メグルミン、トリエタノールヒドロアンモニウムなどのような、アルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。対イオンの適切な数は、全体の電荷の中立性を維持するための分子に関連する。同様に、化合物が正に荷電される、例えばプロトン化されると、適切な数の負に荷電された対イオンが存在して全体の電荷の中立性を維持する。
【0065】
薬学的に受容可能な塩はまた、酸付加塩を含む。すなわち、化合物は、無機または有機の酸または塩基に由来する塩の形態において使用可能である。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳塩、樟脳硫酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン塩、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンのような有機塩基を伴う塩、ならびにアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸を伴う塩が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチル塩化物、臭化物、ヨウ化物のような低級アルキルハライド;ジメチル、ジエチル、ジブチルのようなジアルキル硫酸塩;およびジアミル硫酸塩、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル塩化物、臭化物、ヨウ化物のような長鎖ハライド、ベンジルおよびフェネチル臭化物のようなアラルキルハライドなどの薬剤で四元化される。他の薬学的に受容可能な塩としては、硫酸塩エタノレートおよび硫酸塩が挙げられる。
【0066】
本明細書中に記載されるJak3インヒビター化合物は、当該分野において周知であるように、薬学的に受容可能なキャリアと、化合物とを組合わせることによって薬学的組成物中に処方される。化合物は、粉末または結晶の形態で、溶液中でまたは懸濁液中で用いられる。これらは、経口的に、非経口的に(静脈内または筋肉内)、局所的に、経皮的に、または吸入によって投与される。用いられるキャリアは、必要に応じて、固体または液体である。固体キャリアの例としては、ラクトース、石膏、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。液体キャリアの例としては、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油、水などが挙げられる。経口の使用のためのキャリアとしては、単独で、またはワックスと組合わせて、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような当該分野において周知な時間遅延材料が挙げられる。局所的な適用は、軟膏、クリーム、ローションを形成するために疎水性または親水性の基剤のようなキャリアで、塗布剤を形成するために水性、油性、またはアルコール性の液体で、または粉末剤を形成するために乾燥希釈剤で処方される。経口固体投薬形態の例としては、錠剤、カプセル、トローチ、薬用キャンデーなどが挙げられる。投薬形態の大きさは、広範に変化するが、好ましくは約25mg〜約500mgである。経口液体投薬形態の例としては、溶液、懸濁液、シロップ、乳濁液、軟質ゼラチンカプセルなどが挙げられる。注射可能な投薬形態の例としては、無菌の注射可能な液体、例えば、溶液、乳濁液、および懸濁液が挙げられる。注射可能な固体の例としては、注射の前に液体中に再構成、溶解、または懸濁される粉末が挙げられる。注射可能な組成物において、キャリアは典型的には、無菌水、生理食塩水、または別の注射可能な液体、例えば、筋肉内注射のためのピーナツ油、からなる。また、種々の薬学的に受容可能な緩衝剤、保存剤なども含まれる。
【0067】
[投薬]
本明細書中に記載されるJak3選択的インヒビター化合物の治療的使用を行うための薬学的組成物としては、意図される目的、すなわち、Jak3活性の選択的な破壊もしくは、阻害、またはJak3関連性の異常の処置もしくは防止を達成するのに十分な量において有効成分を含む組成物が挙げられる。治療的に有効な量すなわち投薬量は、本明細書中に示されるようにして、先ず細胞増殖アッセイから見積もられる。次いで、投薬量は、また本明細書中で示されることだが、動物モデルにおける使用のために処方され、細胞培養で判断されるIC50(すなわち、IL2依存性の増殖の最大阻害の半分を達成し、PRL依存性の増殖をほとんどまたは全く阻害しない化合物の濃度)を含む循環濃度範囲が達成される。次いで、かかる情報は、標準的な薬理学的な実施に従って、ヒトおよびその他の哺乳動物において有用な投薬量の範囲をより正確に判断するために使用される。投薬量は、用いられる投薬形態および利用投与経路に依存して変化する。例えば、投薬の量および間隔は、所望されるJak3阻害効果を開始および/または維持するのに十分である活性な種の血漿レベルを提供するように個々に調節される。これらの血漿レベルは、習慣的には最小有効濃度(MEC)として参照される。MECは、化合物によって異なるが、上記のようにインビトロデータから見積もられる。例えば、T細胞の集団においてJak3自己キナーゼ活性の50〜90%阻害達成するのに必要な濃度は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して確認される。HPLCアッセイまたはバイオアッセイが、血漿濃度を判断するために用いられ得る。投薬間隔はまた、MEC値を使用して判断される。好ましくは、化合物は所望される期間、MECを上回る血漿レベルを維持する投与計画を使用して投与される。局所的な投与または選択的な取り込みを含む処置において、化合物、またはその活性な代謝物もしくは誘導体の有効な局所濃度は、血漿濃度によって十分に反映されない可能性がある。この場合においては、当該分野において周知の、その他の手順が適切な投薬の量および間隔を判断するために用いられる。成体ヒトに対する適切な経口投薬量の範囲の例は、単回または分割される投薬量において、1日あたり約0.1〜約80mg/kgである。適切な非経口投薬量の範囲の例は、単回または分割される用量において、1日当たり約0.1〜約80mg/kgであり、静脈内または筋肉内注射によって投与される。局所的な投薬量の範囲は、約0.1mg〜約150mgであり、1日約1〜4回、外部から適用される。吸入の投薬量の例は、一日あたり約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。正確な処方、投与の経路、および投薬量は、患者の状態、処置される疾患の性質、およびその他の因子を考慮して個々の医師によって選択され得る。
【0068】
[実施例5.さらなるJak3選択的インヒビター化合物]
前述の実施例において、649641P(NC1153)は、Jak3を含むT細胞の増殖および機能を選択的にまたは特異的に阻害し、同種移植片の生存を延長し、そして低い毒性を示すことが実証された。これらの評価を考慮すると、649641P(NC1153)が免疫関連の異常を有する個体を処置するための潜在的治療的価値を有することは明らかである。この化合物はまた、インビトロのアッセイおよびインビボの研究におけるJak3の阻害または破壊についての選択性に関して、その他の候補薬物化合物を評価する上での比較基準として使用するための試薬として価値がある。
【0069】
上記のように、本研究の過程において、NCI薬物発見データベース(NCI Drug Dicovery Database)が、Janusキナーゼ3(Jak3)の選択的なインヒビターとして作用し得るさらなる候補化合物についてスキャンされた。「種」化合物AG490、Jak3阻害の潜在性を伴うチルホスチンに類似の相関係数を示す化合物が評価された。
【0070】
[COMPAREアルゴリズム]
NCI薬物データベースは、世界の種々の部門から集められた数十万の化合物からなるデータベースである。これらとしては、大きな製薬会社から小さな私有の研究所までにおよぶ薬物の寄託が挙げられる。多くの例において、これらの化合物が付加されて、ライブラリーが試験および促進された。しかし、これらの化合物の多くは、その元来提案された機能についての効果のなさに起因して、製造業者により製造中止にされており、およびいくつかの例においては、提出した企業がもはや稼動していない。薬物の状態にかかわらず、その構造および得られる活性は、毎週更新されるライブラリーデータベースに付加される。
【0071】
データベースは、60個の異なるヒト細胞株(例えば、上皮、肺、結腸、単球/マクロファージ、T−B細胞、乳房−前立腺(prostrate)など)に対して、特定の薬物についての投薬量応答性を試験することによって作成された。測定されるこれらのパラメーターとしては、細胞増殖の阻害(IC50)、細胞傷害性(LC50)、および細胞増殖抑制効果(TGI)が挙げられる。同時に、これらは、各化合物についての平均グラフ「符号定数」を含む。ポジティブな値を示す(右側に突出する)薬物は、平均を超える反射的な細胞感受性である。ネガティブな値(左側に突出する)は、細胞株が、試験薬剤に対して平均よりも少ない感受性であることを示す。COMPAREは、各化合物を、本明細書の場合のAG490におけるように、所定の「種」に対するインビトロでのその活性に基づいて序列するアルゴリズムである。平均グラフは、各薬物に対してピアソンの相関係数(Pearson’s correlation coefficient (PCC))を使用してスカラー指標順位(scalar index rating)に変換される。最終的には、最も類似の効果を伴う薬物は高位の相関(アプローチ1)を示し、種化合物の作用メカニズムに類似する作用メカニズムを有する可能性が高い。
【0072】
COMPAREは、類似の作用メカニズムを伴う化合物を同定することにおいて成功してきた。これは、例えば細胞増殖をブロックする類似した薬物は、類似した細胞型の同じ重要な標的経路を標的する、という前提に基づく仮説的なモデルである。特定の経路に大きく依存する細胞は、その経路を阻害する感受性があるが(例えば、JAK3/Stat5を発現する細胞)、かかる分子を発現しないか、またはほとんどこの経路に依存しない細胞は、同じ薬物はほとんどまたは全く効果を有しない。このことは、COMPAREが、細胞のパネルにわたって類似の作用メカニズムを伴う薬物をまとめて分類することを可能にする。
【0073】
今日までに完了された多くの様々な研究は、このアプローチが、同じ分子標的に選択的に影響する、すなわち特徴的な平均グラフパターンを生じる新規な薬剤を同定するために成功してきたことを示した。COMPAREアルゴリズムは、別個の構造の化合物であるが、種と比べて同じ作用メカニズムを伴う化合物に対する類似の平均パターンを同定し得る。実験室研究では、特定の読取り内での適合(JAK3 Stat5リン酸化)を確認する必要がある。COMPAREは、薬物作用の類似メカニズムに依存するので、化学構造に必ずしも依存しない。このことは、以前は所定の標的に対する特定のインヒビターとして決して認識されていなかった、構造的に新規なクラスの化合物の同定を可能にする。このアプローチの有効性は、p53、Raf、トポイソメラーゼ、およびチューブリン結合タンパク質のインヒビターを同定することによって実証されてきた。既知の作用メカニズムの構造的クラスが一旦発見されると、次いで新しい作用メカニズムの利用可能な類似体および合成体のさらなるスクリーニングが使用されて、目的の薬物が規定および最適化され得る。
【0074】
上記のNCI薬物データベーススクリーニングにおいて同定された化合物の中に、649641P(NC1153)、および649641Pのいくつかの同族体または構造類似があった。T細胞増殖に対する化合物637712、640674、643423、655906、673137、683332、および693812(それらのNCIデータベース番号によって示される)の効果が評価され、AG490、PNU156804、および649641P(NC1153)の効果と比較された。これらの比較アッセイの結果は、図7Aにおいて棒グラフの形態において示される。PHA活性化ヒトT細胞の増殖は、IL−2での刺激後にこれらのNCI薬剤によってブロックされることがわかる。NC1153の構造式は、差込図において示されている。NC1153は、IL2受容体の発現に影響しなかった。
【0075】
また示されるのは(図7B)、50μM NC1153を伴わないで(太線)、または伴って(細線)、一晩処置されてIL2R−α、−β、およびγ鎖について染色されたPHA活性化T細胞ブラストのFACS分析を示すグラフである。破線は、NC1153で前処理された細胞を示す。これらの結果は、IL−2受容体の存在がNC1153によって影響を受けないことを示す。これらの知見は、IL2シグナルの喪失は、受容体発現における変化に起因せず、すなわちIL2受容体、従ってJak3の遠位で生じることを実証する。図7Cに示されるように、NC1153化合物は、非Jak3発現細胞の細胞増殖をブロックしない。Jak3を発現しないJurkat細胞(黒菱形)は、Jak3を含むPHA活性化T細胞(白四角)とは対照的に、NC1153での処置後の細胞増殖には有意な変化を示さなかった。データは、ベヒクルコントロールのパーセントとして正規化される。NC1153は、Jak3および共通のガンマ鎖を利用するサイトカインによる細胞の増殖を阻害する(図7D)。図1Aにおいてまた示されるように、649641P(NC1153)で処置されたT細胞のT細胞増殖は、未処置コントロールに対して正規化されたIL2、IL4、またはIL7駆動性の増殖を投薬量依存的に阻害する。すなわち、NC1153の阻害効果は、IL−2によってのみ刺激された細胞に制限されるわけではない。その代わりに、Jak3を使用するサイトカインのファミリー全体は、NC1153によってブロックされる。
【0076】
ここで図8を参照すると、6496421P(NC1153)がJak3シグナル伝達経路を阻害するという直接的な証拠が提供される。Jak3自己キナーゼ活性は、インビトロの分析に基づいて、NC1153によって直接的にブロックされる。「PY−Jak3」として同定されるバンドは、NC1153の示された投薬量にて、IL−2およびATPを伴ってまたは伴わないで、活性なJak3のみを明らかにする。「Jak3」として同定されるバンドは、全ての(活性プラス不活性な)Jak3タンパク質の存在を明らかにする。Jak3を阻害することが下流の経路をブロックするということを示すために、免疫精製されたJak3は、Jak3自己キナーゼ活性についてアッセイされ、100μMのATPおよび/または薬物の存在下または不在下での、ホスホチロシンウェスタンブロットによって試験され、そして図2A〜Cに示されるようにコントロールと比較された。649641(NC1153)は、図7Aおよび7Dに示されるように、増殖データに類似する約2.5μMのIC50を示したことがまた観察された。
【0077】
図9A〜Cは、NC1153が非Jak3シグナル伝達経路を阻害しないことを示す。図9Aにおいて、NC1153が、漸増濃度のNC1153で処置されたPHA活性化T細胞において、EMSA分析を介して測定されるように(上部パネル)、Jak3駆動性の転写因子−Stat5a/bを投薬量依存的に阻害することがわかる。「コールド匹敵物」として同定されるレーンは、未標識のプローブを含む。しかし、TNF−□による非Jak3媒介性Nf□B活性化(下部パネル)は、同じ処置セット内では影響を受けなかった。図9Bに示される結果は、NC1153は、密接関連Jak2/Stat5aシグナル伝達経路を阻害しないことを確立する。ラットNb2細胞は、漸増濃度のNC1153で処置され、次いでプロラクチンで刺激された。ホスホチロシンウェスタンブロットは、活性化を検出したが、NC1153による阻害は検出しなかった。Stat5a/b活性化において、Jak3媒介性のJak3自己キナーゼ活性化は、インビトロの分析に基づいて、NC1153によって直接的にブロックされる。NC1153は、複数のキナーゼの活性に影響を与えない。キナーゼアッセイにおけるJak2よりも少なくとも50倍多いJak3の阻害が、図9Bおよび図8に示される。図9Cに示されるように、NC1153は、10または50μMにて、増殖因子チロシンキナーゼ(FGFR3およびPDGFR□)、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Fyn、Lck、Yes、Zap70)、またはセリンスレオニンキナーゼ(PKCおよびPKA)の基質のリン酸化をブロックすることが試験された。コントロールの活性は、破線としてプロットされる。
【0078】
図10A〜Dは、(表1に示された)同種移植片生存に対する649641P(NC1153)のインビボの効果をまとめる。Lewis(LEW)腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは、7日間、毎日の静脈内注射または経口強制飼養により送達されるNC1153で処置された。種々の薬物投薬量での同種移植片生存時間(日)は図10Aに示され、個体の生存は表1に示される。LEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは、14日間、毎日の経口強制飼養によって送達されるNC1153で処置された。移植片生存比率(日)は、図10BにおいてNC1153の種々の投薬量にて示される。LEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは7日間、そしてその後、3×/1週間、90日まで、毎日の経口強制飼養によって送達される160mg/kgのNC1153で処置された。図10Cに示されるように、処置されたレシピエントの75%が、90日間の処置を超えて生存し、生存時間は200日間を越えた。移植寛容の誘導は、LEWドナー(>100日間;n=3)の受容によって確認されたが、長期間生存するレシピエントによる第三者のBUF(7.0±1.0日;n=3)心臓同種移植片によっては確認されなかった。寛容のメカニズムは、LEW心臓同種移植片の照射(400rad)ACIレシピエントが寛容レシピエントから30×106個の精製T細胞を養子的にトランスファーされた際に試験された。寛容T細胞をトランスファーされたレシピエントは、LEW心臓同種移植片の有意に遅延された拒絶を示し(40.0±15.0日;N=6対15±1.0日;照射されたコントロールにおいてn=5)、2つの心臓は100日間を越えて良好に心拍したが、第三者の心臓同種移植片は拒絶された(12±1.0日;n=2)。これらの結果は、移植寛容が、T細胞調節細胞によって少なくとも一部媒介されたことを示す(示されず)。図10Dは、表2において上述で示される結果のまとめを示す。これは、7日間、毎日の経口強制飼養により送達された、NC1153単独で、CsA単独で、および組み合わせの薬物で処置されたLEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントに関する。各投薬量レベルでの各処置群のMSTが示され、そして図の下方では、NC1153−CsAの組合わせが相乗的であることを示す低いCI値が示されている。
【0079】
図11A〜Fに示されるように、649641P(NC1153)は腎臓毒性でなく、脂質代謝に影響を与えない。低塩食餌を与えられたラット(治療前の7日間および治療の間の14日間)は、160mg/kgのNC1153を単独で、または5mg/kg CsAと組合わせて経口強制飼養によって処置され;いくつかの動物は0.8mg/kgラパマイシン(RAPA)単独でまたは5mg/kg CsAと組合わせて処置された。腎臓機能は、血清クレアチニンレベルおよび血清クレアチニンクリアランスによって評価され、そして結果は、それぞれ、図11Aおよび11Bに示される。脂質代謝は、血清コレステロール(図11C)、トリグリセリド(図11D)、LDL−コレステロール(図11E)、およびHDL−コレステロール(図11F)を測定することによって評価された。NC1153単独またはCsAとの組合わせの、腎臓構造に対する効果が判断された。7日間低塩食餌にあったラットは、14日間、10mg/kg NC1153のi.v.送達;0.16mg/kg RAPAのi.v.送達;10mg/kg CsAの経口強制飼養による送達;10mg/CsAのp.o.と0.16mg/kgRAPAのi.v.との組合わせ;または10mg/kg RAPAのp.o.と10mg/kg 641Pのi.v.との組合わせ、で処置された。14日目に、ラットは屠殺され、そして組織学が、H&E染色を使用して腎臓に対して行われた。類似の結果が、1群当たり5匹のラットにおいて観察された。図6A〜Eに示されるように、649641P(NC1153)単独もRAPA単独も、腎臓において有意な変化を示さなかった。対照的に、CsA単独は、30%の細管において障害を引き起こし、空胞形成および萎縮を伴った。CsA/RAPA群は、90%の細管において大規模な空胞形成を示し、萎縮および濃縮した核を伴った。CsA/RAPA群とは対照的に、CsA/NC1153の組合わせで処置されたラットからの腎臓は、CsA単独の群において観察された変化に類似した変化を示した。
【0080】
649641P(NC1153)のメソの立体異性体は、(図18Bに示される)WP938と称され、以下の工程を有する手順を使用して合成された。400mLのアセトニトリル中に溶解された0.1mmolのシクロアルカノネオンおよび0.21MのN,N,N´、N´−テトラメチルジアミノメタンに、16.5g(0.21mol)の塩化アセチルが40分間、滴下して添加された。反応が完了した後に粗生成物が沈殿され、濾過され、エーテルで洗浄され、そして乾燥された。その後の結晶化によって、純粋な生成物が得られた。
【0081】
得られたWP938化合物は、単独でまたはCsAと組合わせて投与された際の、同種移植片生存に対するその効果についておよび毒性について試験された。結果は、図12A、Bから図13A〜Fに示される。経口強制飼養により7日間、投薬量20〜160mg/kgにて送達されるWP938単独は、LEW腎臓同種移植片のACIレシピエントの生存を、投薬量依存的に延長したことが見出された(図12A)。p.o.で7日間送達された1.25mg/kg CsAと160mg/kg WP938との組合わせは、0.44のCI値によって示されるように(図12B)、腎臓同種移植片生存に対して相乗的な相互作用を生じた。図13A〜Fに示されるように、160mg/kg WP938の14日間の経口治療は、化学的性質および血液要素計数における変化を生じず、毒性がないことを実証した。血清クレアチニンおよびクレアチニンクリアランスは、WP938による腎臓毒性がないこと、およびCsA誘導性の腎臓毒性に対して効果がないことを示した(図13A、B)。図13Cは、コレステロールレベルを示す。図13Dはトリグリセリドを示す。図13EはHDLレベルを示す。図13FはLDLレベルを示す。
【0082】
図14B〜図39Bは、プロラクチンまたはIL2刺激されたT細胞において増殖を阻害する能力についてスクリーニングされた種々のMannich塩基化合物およびその他の化合物(塩として示される)の化学式を示す。図14A〜図39Aは、示された濃度範囲にわたるこれらのアッセイの結果を示す。スクリーニングアッセイが、実質的に上述の一般的な方法で記載されたように行われた。IL2(白四角)により活性化されるJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度にて、プロラクチン(PRL)(黒四角)によるJak2およびStat5a/b活性をブロックしない明白な特徴を有する化合物が、さらなる評価のために同定された。好ましい649641P(NC1153)化合物およびその選択的な阻害活性は、実施例1および図1A、Bに示される。さらなる候補薬物、すなわちPRLまたはIL2刺激されたT細胞に関する所定の濃度での少なくともある程度の量の選択的な阻害活性を示した図14B〜17Bおよび19B〜39Bに示される化合物は、代表的な化合物649641P(NC1153)を用いる上述の実施例において記載されるのと同様に現在研究中の主題である。適用可能な場合は、これらの化合物は非対称中心を有し、そしてラセミ体、ラセミ混合物として、および本明細書中に開示される目的のための全ての異性体形態が含まれる個々のジアステレオマーまたは鏡像異性体として存在する。例えば、式(I)に関して、C−2およびC−12での立体配置は(R)または(S)である。これらの化合物は、全ての立体異性体を含み、これらは十分に非毒性と判断され、そしてこれらは649641P(NC1153)に対して本明細書中で示されたように同種移植片生存を有意に延長し得、ヒトにおいて、および免疫抑制治療における獣医の使用のための、潜在的な治療的価値も有する。これらはまた、リンパ系または骨髄系起源のJak3を発現する細胞に関連するその他の病理を処置するための治療的価値があると期待される。649641P(NC1153)およびWP938において示されたように、これらの候補薬物化合物のいくつかはまた、Jak3関連経路以外の経路によりその免疫抑制効果を発揮するCsAまたはその他の免疫抑制剤とともに投与されると、相乗的な活性を示すと考えられる。
【0083】
[定義]
その習慣的および通常の意味を有することに加えて、以下の定義が、明細書および請求の範囲において文脈が認める場合に適用する。
【0084】
「選択的阻害」とは、1つのタンパク質の機能を優先的に、または1つ以上の既知のタンパク質をより少ない程度に、ブロックする化合物をいう。
【0085】
「特異的な阻害」とは、所定のタンパク質の機能を、その他のタンパク質を影響することなく専らブロックする化合物をいう。
【0086】
「免疫抑制の潜在性」とは、免疫応答を減少または除去するべき化合物(例えば、移植された臓器同種移植片の拒絶をブロックする薬物)をいう。
【0087】
「薬学的組成物」とは、医薬品としての哺乳動物への投与のための、1つ以上の化学物質、または薬学的に受容可能なその塩と、適切なキャリアとの混合物をいう。
【0088】
「リンパ細胞」とは、免疫起源の細胞、または、より詳細には、リンパ系統の幹細胞に由来する細胞をいい、大リンパ球、称リンパ球、血漿細胞を包含する。リンパ系の細胞の例は、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0089】
「骨髄細胞」とは、骨髄起源の、すなわち、骨髄系統の幹細胞に由来する細胞をいい、単球、マクロファージ、および樹状細胞を包含する。
【0090】
「薬物」とは、医薬の使用に適切な化合物をいう。
【0091】
「同族体」またはコージェナーとは、組成物(例えば、構造類似体)内で他方と密接関連し、て類似のまたは拮抗的な効果を発揮する化合物をいう。
【0092】
「治療的に有効な量」とは、処置される異常の1つ以上の症状を、少なくともある程度軽減する、投与される化合物の量をいう。例えば、疾患の症状を防止、緩和、もしくは寛解する、または処置される被験体の生存を延長するのに有効な化合物の量。
【0093】
疾患または異常に関して、用語「処置」とは、疾患もしくは異常の出現を防止、抑制すること、疾患もしくは異常の症状もしくは副作用を停止、退行、もしくはそれらからの救済を提供すること、ならびに/または処置される被験体の生存を延長することをいう。
【0094】
【0095】
本発明の好ましい実施態様が示され、そして記載されたが、その改変は、本発明の精神および教示から逸脱することなく当業者によってなされ得る。本明細書中に記載される実施態様は例示および典型であり、ならびに制限することは意図されない。本明細書中に開示される本発明の多くの変形および改変が可能であり、そして本発明の範囲内である。上述の記載は、T細胞駆動性の移植片対宿主疾患に対して集中されたが、本明細書中に記載される方法、化合物、および組成物はまた、他のT細胞依存性の疾患または異常における適用を有するようであることが容易に理解される。例えば、これらは狼瘡、関節炎、および多発性硬化症のような自己免疫疾患を処置するために、またはアレルギー、喘息、乾癬、潰瘍性大腸炎、リンパ腫、および白血病を処置するために有用である。選択的なJak3標的化阻害はまた、機能亢進のまたは望ましくない樹状細胞、B細胞、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞由来の状態に由来する機能亢進性免疫系応答状態を含む、多くのその他の免疫由来の病理においての、またはJak3を発現する骨髄系細胞由来の病理においての適用もまた有することが期待される。したがって、保護の範囲は、上述の記載によって制限されず、以下の請求の範囲によってのみ制限され、その範囲は請求の範囲の主題の全ての等価物を含む。本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書中に記載された材料、方法、および例示的な詳細に補充的な、材料、方法、および例示的な詳細をそれらが提供する程度に、本明細書中に参考として援用される。上述の関連分野の記載におけるある参考文献の考察は、それらが本発明に対する先行技術であるとの承認ではない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1Aは、未処置コントロールに対して正規化された、1nMヒトIL−2(■)、IL−4(●)、またはIL−7(▲)の不在下または存在下で培養されたγc/Jak3−依存性PHA活性化ヒトT細胞増殖に対する649641P(NC1153)の投薬量依存性の効果を示すグラフである。図1Bは、Jak2活性化因子(PRL[○])またはJak3活性化因子(IL−2[■])の存在下で培養された際の、Jak2対Jak3依存性のラットT細胞増殖に対する649641P(NC1153)の阻害効果を示すグラフである。
【図2】リン酸化に対する649641P(NC1153)による阻害または阻害なしを示すウェスタンブロットである。図2AはヒトYT細胞におけるIL−2活性化Jak3チロシンリン酸化を示す。図2BはヒトYT細胞におけるIL−2活性化Stat5aチロシンリン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示す。図2CはYT細胞におけるIL−2活性化Stat5bチロシンリン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示す。
【図3】PHA活性化T細胞におけるIL−2活性化p44/42 ERK1/2リン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示すウェスタンブロットである。
【図4】YT細胞における活性化FynおよびLckに対する649641P(NC1153)の効果を示すウェスタンブロットである。
【図5】ACIレシピエントラット心臓同種移植片に対するLweisの生存についての、CsA対649641P(NC1153)の比率の範囲についての組合わせ指標を示すグラフである。
【図6】ラット腎臓構造に対する649461P(NC1153)、RAPA、およびCsAの効果を示す顕微鏡写真(200×の倍率)である。図6Aは649461P(NC1153)である。図6BはRAPAである。図6CはCsAである。図6DはCsAおよびRAPA(シロリムスまたはSRL)の組合わせの効果を示す。図6EはCsAおよび649641P(NC1153)の組合わせの効果を示す。
【図7】649641P(NC1153)がJak3を含むT細胞の増殖を特異的に阻害することを示すグラフである。図7Aは、PHA活性化ヒトT細胞の増殖が、IL−2での刺激後に示されるNCI薬剤によってブロックされたことを示す棒グラフである。図7Bは、50μM NC1153を伴わないで(太線)または伴って(細線)一晩処置され、そしてIL2R−α、−β、および−γ鎖について染色された、PHA活性化T細胞ブラストのFACS分析である。図7Cは、Jak3非発現細胞(黒菱形)における、およびJak3を含むPHA活性化T細胞(白四角)における、NC1153の濃度範囲にわたる細胞増殖阻害のグラフである。図7Dは、Jak3および共通のγ鎖を利用してサイトカインにより刺激されるT細胞における、細胞増殖阻害対NC1153濃度のグラフである。
【図8】インビトロの分析に基づいた、Jak3自己キナーゼ活性が649641P(NC1153)により直接的に阻害されることを示す棒グラフである。免疫精製されたJak3は、Jak3自己キナーゼ活性についてアッセイされ、100□M ATPおよび/または薬物の不在下または存在下で、ホスホチロシンウェスタンブロットによって試験されてコントロールと比較された。649641P(NC1153)は、約2.5□MのIC50を示し、これは図1AおよびBの増殖データに類似する。
【図9】649641P(NC1153)選択性を示す。図9Aは、用量依存性の様式において漸増濃度の649641P(NC1153)で処置されたPHA活性化T細胞において、649641P(NC1153)がJak3駆動性の転写因子−Stat5a/bを阻害することを示す電気泳動移動度アッセイ(EMSA)のオートラジオグラフである(上部パネル)。TNF−□による非Jak3媒介性のNf□B活性化は、同じ処置セット内で影響されなかった(下部パネル)。図9Bは、649641P(NC1153)が、密接関連Jak2/Stat5aシグナル伝達経路を阻害できないことを示すウェスタンブロットオートラジオグラフである。プロラクチン[PRL](+)または(−)は、細胞がJak2活性化を伴うプロラクチンで刺激されたか否かを示す。ホスホチロシンウェスタンブロットは、Jak2−Stat5活性化を検出するが、649641P(NC1153)による阻害は検出しない。図9Cは、649641P(NC1153)がJak3以外の複数のキナーゼの活性に影響を与えないことを示す棒グラフである。649641P(NC1153)は、10(白棒)または50μM(黒棒)にて、基質の増殖因子チロシンキナーゼ(FGFR3およびPDGFR□)、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Fyn、Lck、Yes、Zap70)、またはセリンスレオニンキナーゼ(PKCおよびPKA)リン酸化をブロックすることを試験された。コントロールの活性は、破線としてプロットされている。
【図10】同種移植片生存に対するNC1153のインビボの効果を説明する。図10Aは、毎日の静脈内注射により(左側パネル)または経口強制飼養により(右側パネル)送達される、649641P(NC1153)で7日間処置された、ルイス(LEW)腎臓同種移植片のACIラットレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Bは、毎日の経口強制飼養により送達される、649641P(NC1153)で14日間処置された類似のレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Cは、毎日の経口強制飼養により送達される、160mg/kg NC1153で7日間、そしてその後3×/1週間で90日間まで処置された類似のレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Dは、7日間処置されたLEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントにおいて、毎日の経口強制飼養により送達されるNC1153の、CsAとの相乗的効果を示す。649641P(NC1153)単独(黒棒)。CsA単独(白棒)、649641P(NC1153)およびCsA(淡色棒)。
【図11】649641P(NC1153)が腎臓毒性でなく、および脂質代謝を影響しないことを示すアッセイ結果のグラフであり、血清クレアチニンレベル(図11A)、血清クレアチニンクリアランス(図11B)、血清コレステロール(図11C)、トリグリセリド(図11D)、LDL−コレステロール(図11E)、およびHDL−コレステロール(図11F)によって評価される。結果は、mg/dLにおいて表されている。組織学的外見は図6A〜Eに示されるようであった。
【図12】(図18Bに示される)WP938と称される649641P(NC1153)のメソの立体異性体での結果を示す以外は、図10A〜Dに類似し、LEW腎臓同種移植片のACIレシピエントにおける同種移植片生存について試験された。図12Aは、未処置の、CsA単独で処置された、およびWP938単独で処置されたラットの平均生存を示す。図12Bは、同じ投薬量のCsA/WP938の組合わせと比較した、1投薬量のCsA単独、1投薬量のWP938単独の比較を示し;0.44のCI値は、相乗的な相互作用を示す。
【図13】WP938単独についての、またはCsAと組合わせての毒性アッセイの結果を示す。図13Aは血清クレアチニンレベルを示す。図13Bはクレアチニンクリアランスを示す。図13Cはコレステロールレベルを示す。図13Dはトリグリセリドを示す。図13EはHDLレベルを示す。図13FはLDLレベルを示す。
【図14−17】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図18−21】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図22−25】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図26−29】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図30−33】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図34−37】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図38−39】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
[発明の分野]
本発明は概して、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)を含むリンパ球およびその他のリンパ系起源の細胞の増殖および機能の阻害に関する。より詳細には、本発明は、リンパ球機能、特に免疫活性の調節をブロックする化学薬剤を使用する治療および試験の方法に関する。さらにより詳細には、本発明は、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)媒介性の細胞活性および細胞増殖を選択的に破壊することに関する。
【0002】
[関連技術の説明]
臓器の同種移植片拒絶に対処するために今日使用される治療的ストラテジーの効果は、強い副作用を生じる免疫抑制薬物への依存によって厳しく制限される。現在の臨床的な免疫抑制療法は、セリン−スレオニンホスファターゼカルシニューリン(CaN)インヒビターシクロスポリンA(CsA)およびタクロリムス(FK506)1によって占められ、これらは細胞周期の初期のG1期を通してT細胞増殖をブロックすることによってT細胞修飾因子として作用する1、2。これらの薬物に関連する望ましくない副作用としては、腎臓毒性、神経毒性、真性糖尿病、高脂血症、高血圧、多毛症、および歯肉増殖症が挙げられる3。より新しい薬物、ラパマイシン(RAPA)は、RAPAのセリン−スレオニンキナーゼ哺乳動物標的(mTOR)を標的とし、これはまた、粘膜潰瘍、リンパ増殖異常、低カリウム血症を表し得、そして低密度のリポタンパク質、コレステロール、およびトリグリセリドを増加する4。臨床的に承認された薬物の深刻な欠点は、これらが同種移植片の永続的な受容を生じないことであり、それゆえこれらは患者に継続的に送達される必要がある。
【0003】
臓器の同種移植片拒絶に対処するための現在の治療的ストラテジーは、T細胞シグナル伝達経路およびそれを含む分子に集中している。T細胞シグナル伝達カスケード、ならびに免疫抑制におけるおよび潜在的に移植寛容を誘導するための、その潜在的な役割は、KirkenおよびStepkowskiによって記載されている5。T細胞の完全な活性化は、3つの閾値制限された連続的なシグナルを必要とする6。
【0004】
シグナル1が、特異的なT細胞受容体(TCR)と結合する抗原によって送達されて、続いて、シグナル2が、B7/CD28相互作用によって送達される。TCRとの結合後、数秒〜数分以内に、Zap70、Lck、およびFynのタンパク質Tyrキナーゼの自己活性化の間にCD3ζ鎖はチロシン(Tyr)リン酸化される7〜9。同時に、カルシウム(Ca2+)移動が、活性化T細胞(NFAT)脱リン酸化核因子に対するCaNホスファターゼの触媒活性化−NFATが核移行してインターロイキン(IL)−2遺伝子のプロモーター内の不連続のDNA結合エレメントを結合するために必要な工程−を引き起こす10。シグナル1および2はIL−2の合成および分泌にとって重要であり、IL−2は、IL−4、−7、−9、−13、−15、および−21のような他のT細胞増殖因子(TCGF)と協調して、サイトカイン受容体を介してシグナル3を送達する。これは、T細胞のクローン増殖を駆動するために要求される必要な工程である11。これらのサイトカイン受容体は共通のγ鎖(γc)を共有し、この共通のγ鎖(γc)は、各サイトカインについて固有のα鎖と結合される際にJanusチロシン(Tyr)、Jak1、Jak3を介して細胞内シグナルを送達し、ならびに転写のシグナル伝達因子および活性化因子(signal transducers and activators of transcription (Stat))1、Stat3、Stat5a/b、およびStat6を活性化する11〜18。
【0005】
(T細胞におけるシグナル1経路に関与する)CaN酵素および(T細胞におけるシグナル3経路に関与する)mTOR酵素は、身体中の種々の組織において遍在的に発現される。このことは、T細胞特異的標的化に対するCsA、FK506、およびRAPAのような阻害薬物の効果を厳しく制限する。RAPAは、今日臨床的に承認されている唯一の効果的なシグナル3インヒビターである24。治療的介入のための候補標的として作用する他のシグナル伝達経路分子とは異なり、Jak3発現は、組織発現の制限されたパターンを示し、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および単球に、または一般的用語では免疫起源の細胞に細分化される。
【0006】
Jak3は、リンパ系細胞へのその主要な局在性ゆえに、多くの免疫由来疾患を取り除くための固有の分子的なおよび治療的な標的として期待できる19〜21。この酵素は、γcを介してほぼ排他的に会合および活性化されるため、Jak3またはγcの遺伝子破壊は、重篤な複合免疫不全疾患として表れる22。この深刻な免疫抑制の理由は、上述のようなTCGFのファミリーによるT細胞の発達および補充においてのJak3の重要な役割に起因する。Jak3は受容体成分および近位膜と会合するので、これらの受容体から発せられる、Statおよび分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen activated protein kinase (Mapk))カスケードを含む、全ての下流のシグナルが活性化される。すなわち、Jak3の破壊は、TCGFによって媒介される全てのシグナルを引き続きブロックし、それゆえに、これらの細胞内の遺伝子転写を調節するそれらの能力をブロックする。しかし、この固有のおよび余剰なシグナル伝達経路の阻害を制御することができれば、免疫活性化の好ましい調節が、これらの遺伝子を欠損する患者およびマウスにおいて観察されるように達成可能となるはずである。さらに、この経路を標的化することは、理論上は、CsAに応答しない拒絶を担う、活性化されかつ増殖するT細胞の集団も阻害する21。
【0007】
リンパ球においてJak3を特異的に標的化するインヒビターを同定するための努力は、僅かに報告されているJak3を阻害する薬物もまた多くの身体組織における日常的な細胞機能に必要とされる多くの他のチロシンキナーゼを阻害するという事実によって阻まれる。実際、これらのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞表面受容体から核へ細胞外シグナルを伝達し、続いてリンパ球以外の細胞型の増殖、分化、および機能を調節するためには、基本的に重要である。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0042513号明細書(Uckunら)は所定のキナゾリン化合物を記載しており、その化合物は、インスリン受容体チロシンキナーゼに対する構造相同性(structural homology)に基づくJak3相同性モデルを使用して、その推定されたドッキング親和性に基づいて選択される。移植片合併症、自己免疫誘導性糖尿病を処置もしくは防止する、または同種移植片生存を延長する、いくつかのキナゾリン化合物の能力が評価された。
【0009】
米国特許出願公開第2002/0032204号明細書(Moonら)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(CTK)、およびセチン/スレオニンタンパク質キナーゼ(STK)の触媒活性を調節する、所定の3−(ピロール−2−イルメチリデン)−2−インドリノン誘導体の所定のMannich塩基プロドラッグを記載する。これらのプロドラッグが、異常なタンパク質キナーゼ活性によって媒介される多くの疾患を処置するために有用であることが述べられている。開示された化合物が、多くの種類の固形腫瘍を治癒するための治療的アプローチとして、RTK,CTK、および/またはSTK媒介性のシグナル伝達経路を調節すると述べられている。その他のMannich塩基化合物が記載され、そして細胞傷害性および抗ガン特性について記載および評価されている34、35。抗真菌および抗新生物特性を有する共役スチリルケトンの所定のMannich塩基は、米国特許第6,017,933号明細書の主題である。
【0010】
近年、Jak3に対して選択性を示す2つの薬剤が同定された21、24、25。AG−490と示される一方の薬剤は、チルホスチンファミリーメンバーであり、ベンジリデンマロノニトリルの誘導体であり、これは以下の構造式を有する:
【0011】
他方は、PNU156804であり、これは毒性の親化合物ウンデシルプロジギオシンの同族体であり、以下の構造式を有する:
【0012】
AG−490およびPNU156804の両方は、TCGFおよびJak3自己キナーゼ活性によって媒介されるT細胞増殖を阻害するために有能である一方で、Jak3を発現しない非活性化T細胞に対しては制限された効果を有する。これらの2つの薬剤のいずれも、p56LckまたはZap70チロシンキナーゼを含むT細胞受容体活性化カスケードの中間体に影響しないことが見出された23、25。
【0013】
1つの研究において、AG490処置は、単核細胞(GIC)の移植片浸潤と、エクスビボでIL−2刺激されたGICのStat5a/bDNA結合とを減少したが、リボヌクレアーゼ保護アッセイによって判断されたようにIL2R□の発現には影響しなかった。すなわち、Jak3の阻害は、同種移植片生存を延長し、また、CsAの免疫抑制効果は増強するが、RAPAの免疫抑制効果は増強しないと結論された。AG490は、その他のチロシンキナーゼファミリーメンバーのLck、Lym、Btk、Syk、Src、Jak1、またはTyk2キナーゼを阻害しない一方で、その密接に関連するファミリーメンバーJak2に対しては類似の効果を及ぼすこともまた見出された24。AG−490の有害な副作用は、免疫抑制治療のための日常的な臨床的使用を妨げる。
【0014】
他方、PNU156804は、IL−2によるJak3媒介性のT細胞増殖を阻害することによって、Jak2を使用するその他の増殖因子(プロラクチン)に比較して、より優れた特異性を示した。キナーゼアッセイによって、PNU156804が、Jak3自己リン酸化を、Jak2と比較して優先的に阻害したこと、ならびにStat5経路のような中間体エフェクター分子を共有したことが示された25。その研究においては、PNU156804は同種移植片生存を延長し、そしてCsAとは相乗的に作用するが、RAPAとは相加的に作用することが示された。PNU156804は、(Jak2自己キナーゼ活性と比較して)優先的にJak3を破壊し、それによって、γcにより駆動されるT細胞クローン増殖を選択的に阻害することもまた証明された。現在のモデルは、Jak3がmTORの上流活性化因子であることを保持する。Jak3は免疫細胞において発現されるので、Jak3の阻害はRAPAと現在関連される有害な影響を伴わずにmTOR活性化をブロックする。さらに、CsA(G0〜G1移行をブロックする)と、PNU156804(G1〜S増殖をブロックする)との相乗効果は、連続的な活性化シグナルをブロックすることにより、それによって、必要とされる各薬物の投薬量をより低くしながら有益な治療的効果を維持することにより、免疫抑制を行う新規なストラテジーを提供する25。しかし、PNU156804はその後、ヒトにおける治療的使用に対しては毒性が強すぎることが証明されている。
【0015】
いくつかの現在利用可能な薬物は、急性の拒絶をブロックする見込みがあることが示されているが、連続的な免疫抑制の不在下では、慢性的な移植片破壊および永続的な同種移植片受容(例えば、移植寛容)の問題は衰えていない。これらの問題に十分に取り組む治療的方法、および有害な副作用を回避する医薬品が必要とされている。これらの目的に向かって、T細胞シグナル伝達を理解することにおいて、およびシグナル伝達経路における所定の分子を標的化するためのストラテジーを考案することにおいて、大幅な進歩があった。TCGFによって活性化されるTおよびBリンパ球のシグナル3経路に固有の分子を、選択的にまたは特異的に阻害する薬剤が緊急に必要とされている。かかる薬剤は、その他の細胞に影響することなくT細胞のクローン増殖をブロックする大きな潜在性を有する。上述されたように、宿主対移植片疾患および移植片対宿主疾患のような望ましくない免疫応答を調節するために、Jak3はシグナル3経路において固有の分子標的を表す。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0042513号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0032204号明細書
【非特許文献1】Database MBASE on STN Online,No.2003366614,KAHN et al.’New Approaches to Transplant Immunosuppression,’abstract,Transplantation Proceedings,2003,35/5,pp.1621−1623
【非特許文献2】Database MBASE on STN Online,No.2003391451,MANEZ,R.’Current Trends in Transplantation and Immunosuppressive Treatment,’abstract,Drug News and Perspective,2003,16/5,pp.332−336
【非特許文献3】Database CAPLUS on STN Online,No.1993:603032,DIMMOCK et al.’Evaluation of Some Mannich Bases of Cycloalkanones and Related Compounds For Cytotoxic Activity,’abstract,European Journal of Medicinal Chemistry,1993,28(4),pp.313−22
【非特許文献4】Database CAPLUS on STN Online,No.1995:962281,DIMMOCK et al.’Synthesis and Cytotoxic Evaluation of Some Mannich Bases of Alicyclic Ketones,’,abstract,Pharmazie,1995,50(1),pp.668−71
【発明の開示】
【0016】
好ましい実施態様の概要
本発明は、Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)を発現する任意の細胞型、好ましくは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞を含むリンパ系または骨髄系起源の細胞型(「リンパ系または骨髄系の細胞」)の機能および/または増殖を破壊または阻害する新規な方法を提供することによって、先行技術に存在する所定の欠点を克服することを目指している。したがって、本発明の所定の実施態様においては、リンパ球の機能および/または増殖の破壊または阻害は、所定の化合物、好ましくはMannich塩基で細胞を処置して治療的な免疫抑制を獲得することによって達成される。本発明の所定の実施態様においては、Jak3を優先的に破壊する一方でその他の広く散在するタンパク質チロシンキナーゼには実質的に影響しない免疫抑制剤として作用し得ることが以前は未知のもしくは認識されていなかった、所定のMannich塩基化合物またはその他の化合物を用いるインビボおよびインビトロでの治療方法および試験方法が提供される。治療的に用いられる際、これらの薬剤はまた、今日使用されている従来の免疫抑制剤に付随する深刻な副作用を完全にまたは少なくともある程度回避する。かかる方法は、臓器移植拒絶を軽減する上で、自己免疫疾患、気道過敏症(例えば喘息)、アレルギーの寛解を促進する上で、ならびにJak3依存性の白血病およびリンパ腫の腫瘍の増殖、およびJak3を発現するリンパ系または骨髄系起源の細胞におけるその他のJak3依存性の異常を阻害する上で、臨床的に有用であると期待される。
【0017】
したがって、本発明のいくつかの実施態様においては、Tリンパ球、単球、または樹状細胞のようなリンパ系または骨髄系の細胞がJak3を有するかまたは発現する、リンパ系または骨髄系の細胞の増殖および/または活性を阻害するインビトロの方法が提供される。方法は、Jak3を選択的に阻害し得る化合物の存在下で細胞を培養する工程を有する。いくつかの実施態様においては、下記の式(I)を有する化合物が用いられる。
【0018】
ここでR1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2、CH2SC(O)CH3、CH2SC6H5、CH2SCH2−(4−C6H4OCH3)、CH2SC(O)C6H5、またはCH2N(CH2CH3)2であり;R2は、Oであり;およびR3は、CH2N(CH3)2、CH2N(CH2CH3)2、およびCH2−(N−モルフィル)である。好ましい実施態様においては、化合物は式(I)を有する649641P(NC1153)であり、R1およびR3はそれぞれCH2N(CH3)2である。別の好ましい実施態様においては、化合物は、649641P(NC1153)のメソの立体異性体の形態であり、WP938として示される。
【0019】
所定の実施態様においては、Jak3を発現するリンパ系または骨髄系の細胞を、前記Jak3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記式(II)の少なくとも1つの化合物または前記化合物の塩に接触させる工程を有する、リンパ系または骨髄系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法が提供される。
【0020】
ここでnは1、2、3、4、または6であり;R1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2であり;R3は、CH2N(CH3)2である。
【0021】
所定の実施態様においては、Jak3を発現するリンパ系または骨髄系の細胞を、前記Jak3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(III)の少なくとも1つの化合物または前記化合物の塩に接触する工程を有する、リンパ系または骨髄系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法が提供される。
【0022】
ここでnは1または2であり;R1は、H、またはCH2N(CH3)2であり;R3は、CH2N(CH3)2である。
【0023】
上述のような、リンパ系の細胞の機能および/または増殖を阻害する方法のいくつかの実施態様において、リンパ系の細胞は活性化T細胞であり、方法は細胞分裂がブロックされるようにシグナル3経路を干渉する工程を有する。いくつかの実施態様においては、リンパ系の細胞は、Janusチロシンキナーゼ3を選択的に阻害するのに有効、かつその他のタンパク質チロシンキナーゼの活性を阻害するのに実質的に無効な濃度において、化合物に接触される。いくつかの実施態様においては、Jak3活性は、キナーゼアッセイにおいて、T細胞のようなリンパ球の集団のJak2活性よりも少なくとも50倍多く阻害される。いくつかの実施態様においては、方法は、IL2により活性化されたJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度において、プロラクチン(PRL)によってJak2およびStat5a/b活性化が阻害される可能性がないかまたは小さい1つ以上の化合物を選択する工程を有する。
【0024】
本発明のさらに他の実施態様においては、治療的な免疫抑制剤として有用な物質を同定することを補助するインビトロの試験方法が提供される。かかる方法は以下の工程を有する。(a)細胞培養培地中に静止状態のJak3依存性Tリンパ球の集団を獲得する工程;(b)随意に、静止状態のTリンパ球を、リンパ球が増殖することを刺激するために、サイトカインで前処理する工程;(c)工程(a)または(b)からの静止状態のまたは刺激されたリンパ球を、前述のような、式(I)、(II)、または(III)を有する化合物またはそれらの塩で処置する工程;(d)工程(c)からのリンパ球を、細胞増殖を促進する条件下で培養する工程;(e)工程(d)後の細胞増殖の程度を評価する工程;(f)随意に、Jak2依存性Tリンパ球増殖に対する前記化合物の阻害効果を評価する工程;(g)随意に、前記化合物の細胞傷害性を評価する工程;(h)工程(e)からの、ならびに、存在する場合は、工程(f)および(g)からの評価によって、化合物の細胞傷害性に起因しないJak3依存性リンパ球、またはその他のJak3を発現する細胞型の増殖の有意な阻害が、インビボの治療的使用のための候補薬物としての、T細胞媒介性の免疫抑制剤としての、および/またはT細胞増殖のインヒビターとしての潜在性をその化合物が有することを示唆すると判断する工程;および(i)随意に、工程(e)および(f)からの評価を比較し、工程(f)において評価される阻害効果が工程(e)において評価される阻害効果よりも小さい場合は、前記化合物がJak2活性、または別のキナーゼを阻害することに比較して、Jak3活性を阻害することに少なくともある程度選択的であることを前記比較から判断する工程。
【0025】
本発明の別の実施態様によれば、哺乳動物被験体において細胞の望ましくない機能を抑制するインビボの方法が提供され、細胞はJak3を有する。方法は、細胞を、上述の式(I)、(II)、または(III)を有する化合物のうちの少なくとも1つ、またはその代謝物もしくは誘導体に、細胞におけるシグナル3経路を干渉し、それによって細胞機能を阻害するのに有効な量において、接触させる工程を有する。接触させる工程は、かかる化合物の少なくとも1つ、または活性な代謝物のような化合物の成熟型、または被験体の身体内において前記化合物に転換され得る前記化合物の前駆体、またはそれらのうちのいずれかの薬学的に受容可能な塩を、薬学的に受容可能なキャリア中に含む、治療的に有効な量の薬学的組成物を被験体に投与して、Jak3依存性の細胞機能を阻害する工程を有する。投与する工程は継続的または周期的に行われる。いくつかの実施態様においては、Jak3を有する細胞はT細胞であり、投与される薬学的組成物の量はT細胞における細胞分裂をブロックするのに有効である。所定の好ましい実施態様においては、化合物、代謝物、誘導体、または前駆体の腎臓毒性はシクロスポリンAの腎臓毒性よりも小さい。
【0026】
本発明の所定の実施態様によれば、望ましくない免疫応答を抑制するために哺乳動物被験体を治療的に処置する方法が提供される。ここで被験体は望ましくない免疫応答を経験しているかまたは経験する危険性がある。この方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制する上述の方法を行う工程を有する。ここで治療的に有効な量の薬学的組成物は前記望ましくない免疫応答を軽減または防止する。所定の実施態様においては、方法はさらに、Jak3インヒビターの他の免疫抑制剤;例えば、シクロスポリンAまたはFK506、の治療的に有効な量を被験体に投与する工程を有する。このことは、シグナル1経路を介してT細胞をブロックすることにより、およびまたシグナル3経路を干渉することを介して活性化T細胞の細胞分裂をブロックすることにより、T細胞機能を阻害する利点を提供する。
【0027】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、移植される臓器に対するT細胞媒介性の免疫応答を抑制するのに有効な上述の方法を行い、それによって臓器の拒絶が軽減または停止される工程を有する、哺乳動物移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶を軽減する方法が提供される。
【0028】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の抗同種移植片免疫応答を抑制するのに有効な上述の方法を行い、それによって同種移植片の急性の拒絶が軽減または防止される工程を有する、哺乳動物同種移植片レシピエントにおける急性の同種移植片拒絶を軽減する方法が提供される。いくつかの実施態様においては、Jak3インヒビター組成物の継続的なまたは周期的な投与を有する、慢性の同種移植片拒絶予防のための方法が提供される。
【0029】
本発明の所定の実施態様によれば、哺乳動物移植片レシピエントにおいて移植寛容を誘導するための方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の移植片拒絶応答を抑制するのに有効な、上記の方法を行う工程を有する。
【0030】
本発明の所定の実施態様によれば、自己免疫疾患の寛解を、前記疾患を被る哺乳動物被験体において促進する方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、前記被験体におけるT細胞媒介性の自己免疫応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、それによって内因性のJak3依存性T細胞によって媒介される被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される。
【0031】
本発明の所定の実施態様によれば、気道過敏症を、前記過敏症を被る哺乳動物被験体において軽減する方法が提供される。方法は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性の過敏症応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、それによって被験体における気道組織の過敏症が減少または停止される。
【0032】
本発明のいくつかの実施態様は、哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制して、T細胞媒介性のアレルギー応答を抑制するのに有効な、上述の方法を行う工程を有し、アレルギーを、前記アレルギーを被る哺乳動物被験体において軽減する方法が提供される。それによって被験体におけるアレルギー反応が減少または停止される。
【0033】
本発明のさらに別の実施態様は、白血病またはリンパ腫を被る哺乳動物被験体において望ましくないリンパ球機能を抑制する上述の方法を行う工程を有し、Jak3依存性の白血病またはリンパ腫の増殖を阻害する方法を提供する。好ましい実施態様においては、化合物またはその代謝物もしくは誘導体は、その他のキナーゼ(例えば、Jak2)の活性の阻害に比較して、Jak3活性を選択的にまたは特異的に阻害し得る。薬学的組成物の量は、白血病またはリンパ腫の細胞の増殖を阻害またはブロックするのに有効である。
【0034】
本発明のさらなる実施態様においては、T細胞媒介性の免疫応答に関連する生物学的なプロセスを解明するために、および新規な免疫抑制薬物を同定するために有用なインビトロの方法が提供される。いくつかの実施態様においては、以下の工程を有する、新規な免疫抑制薬物を同定することを補助するインビトロの方法が提供される。(a)Jak3を有するT細胞を目的の化合物にある濃度の範囲にわたって接触させて、化合物が範囲内の1つ以上の濃度においてJak3活性を阻害するか否かを判断することによって、T細胞機能を破壊するための活性について目的の化合物を試験する工程;(b)目的の化合物のJak3阻害活性と、既知のJak3阻害活性を有する式(I)、(II)、(III)の化合物、好ましくは649641P(NC1153)のJak3阻害活性とを比較する工程;ならびに(c)かかる試験および比較の結果を使用して、目的の化合物が治療的な免疫抑制剤としてインビボで使用するための候補薬物であるか否かを判断する工程。いくつかの実施態様においては、方法はまた、(d)目的の化合物を1つ以上のその他のキナーゼ(たとえば、Jak2)の阻害活性について試験する工程;(e)目的の化合物のJak3阻害活性と、もしあれば1つ以上のその他のキナーゼのその阻害活性とを比較する工程;および(f)比較を使用して、目的の化合物を選択的なJak3インヒビターとして同定する工程も有する。
【0035】
本発明の別の実施態様においては、所定のJak3選択的または特異的なインヒビターを用いるインビボの試験方法が提供される。かかる方法は、動物モデルにおいてT細胞媒介性の免疫応答を研究するために有用であり、ならびに649641P(NC1153)、WP938、および図14B〜39Bにおいて同定されるその他の化合物のような化合物は、候補Jak3特異的インヒビターの活性を比較するための標準として作用する。候補免疫抑制薬物を同種移植片生存に対するこの効果について試験するためのかかる方法の1つは、以下の工程を有する:(a)適切なドナー動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;(d)請求項1において規定されるような化合物を少なくとも1つの動物に投与してポジティブコントロール群として作用させる工程であって、R1およびR3はそれぞれCN(CH3)2であり、ならびにR2はOである工程;(e)随意に、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する候補薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および候補薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程。いくつかの実施態様においては、方法はまた、候補薬物が、Jak3依存性のT細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得ると判断する工程も有する。
【0036】
所定の他の実施態様においては、インビボの免疫抑制の潜在性について候補薬物を評価するインビボの方法が提供される。候補薬物は好ましくは、先ずJak3依存性T細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得るとして同定される。方法は、以下の工程を有する。(a)適切なドナー哺乳動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;(d)649641P(NC1153)を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、標準レシピエントまたは群として作用させる工程;(e)好ましくは、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;ならびに(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程。本発明のこれらのおよびその他の実施態様、特徴、および利点は、以下の記載および図面を参照して明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
好ましい実施態様の詳細な説明
本明細書中に記載される研究において、生化学的中間体−酵素Janusチロシンキナーゼ3(Jak3)が成熟T細胞の活性化、機能、および同種移植片拒絶にとって重要であることが確認される。本明細書中で同定される所定の化合物、特にMannich塩基として分類される化合物は、選択的にJak3を阻害し、CsA、FK506、およびRAPAのような従来の免疫抑制薬物を越える治療的利点を提供し得る。上述の背景のセクションに記載されたように、RAPAはmTORを阻害する一方、CsAおよびFK506はCaNをブロックし、これらの標的分子の両方とも、遍在的な発現プロフィールを示し、強力な毒性副作用を引き起こす。それとは対照的に、Jak3発現は、TおよびBリンパ球を含むリンパ系区分に排他的に制限される。
【0038】
最初に、Jak3のアンタゴニストを同定および特徴づけを目指して一連の試験が行われた。それによって、Jak3のアンタゴニストはTCGF依存性経路のファミリー全体を阻害する。Mannich塩基およびその他の化合物の群が、ある濃度の範囲にわたって、選択的なJak3阻害活性についてスクリーニングされた。プロラクチン(PRL)刺激された(すなわち、Jak2依存性の)T細胞増殖に比較して、IL−2刺激された(すなわち、Jak3依存性の)T細胞増殖の選択的な阻害のいくつかの基準を示した化合物は、構造的に類似するいくつかの化合物とともに、図14B〜39Bに、それらの構造式により示される。各化合物の対応する阻害活性は、図14A〜39Aに示される。図22Aは、図21Aのアッセイに類似するアッセイの結果を示すが、図21Bと同じ化合物の僅かに異なる純度の調製物を伴う。Mannich塩基に加えて、構造的に類似の化合物(図25Bおよび26B)が、試験された化合物の中に含まれる。以下の材料および一般的な方法が、実施例においてそうではないと記載された場合を除いて使用された。代表的な化合物、649641Pはまた、NCI薬物データベース番号NC1153によって本明細書中で参照され、および図18Bに示されるメソの立体異性体(WP938と称される)は、同一の選択的なJak3阻害をインビトロで示し、単独でまたはCsAと組合わせて同種移植片生存を延長する能力について、ならびに薬物誘導性の毒性についてさらに試験された。
【0039】
[一般的な方法および材料]
[細胞培養および処置]
ラットT細胞株Nb2−11cは、元来Peter Gout博士(Vanvouver、Canada)によって開発され、10%胎児ウシ血清(Intergen、カタログ番号1020−90)、2mM L−グルタミン、5mM HEPES、pH7.3、およびペニシリン−ストレプトマイシン(それぞれ、50IU/mlおよび50μg/ml)を伴うRPMI−1640中で、37℃/5% CO2にて増殖された。等遠心分離(Ficoll(登録商標);EM Science、Gibbstown、NJ)によって精製された、新鮮に外殖された正常なヒトTリンパ球は、以前に記載されるように23、72時間、フィトヘマグルチニン(PHA)活性化された。Tリンパ球は、洗浄し、サイトカインへの曝露の前に、1%胎児ウシ血清を含むRPMI−1640培地中で24時間インキュベートすることによって、静止状態にされた。次に、細胞は図面の説明において以下に記載されるように、種々の濃度の649641P(NC1153)で処置された。Mannich塩基649641P(NC1153)は、JonathanDimmock 博士 College of Pharmacy、Univercity of Saskatchewan、Saskatoon、Saskatchewan、Canadaにより快く提供された。次いで、全ての細胞は1nM組換えヒトIL−2(Hoffman−LaRoche、Basal、Switzerland)、IL−4もしくはIL−7(PeproTech)、またはNational Hormon and Pituitary Program、National Institute of Diabetes、Digestive、and Kidney Disesase(Bethesda、MD)によって供給されたヒツジプロラクチン(PRL)で、37℃にて刺激された。細胞ペレットは−70℃にて凍結された。
【0040】
[増殖アッセイ]
静止状態ヒト1次T細胞、YT、またはラットNb2−11c T細胞(5.0×104/ウェル)が、1nM IL−2、−4、−7(PeproTech、Rock Hill、NJ)またはPRLの不在下または存在下、200μlの静止状態の培地中、平底の、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて播種された。次に、細胞は、Mannich塩基薬物で16時間処置され、次いで4時間、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)でパルスされ、そして線維ガラスフィルター上に採集された。[3H]−チミジン取り込みは、以前に記載されるように23、液体シンチレーション計測によって、または当該分野において周知である標準的な技術を使用して、分析された。
【0041】
[膜タンパク質の可溶化、免疫沈降、およびウェスタンブロット分析]
凍結された細胞ペレットは、以前に記載されるように16、氷上で解凍され、そして1% TX−100溶解緩衝液(108細胞/ml)中で可溶化され、そして遠心分離によって分類された。ヒトT細胞に対しては、上清は、Jak3の固有COOH末端(アミノ酸[a.a]1104〜1124)、ヒトStat5a(a.a775〜794)のカルボキシル末端、またはStat5b(a.a777〜787)のカルボキシル末端26のいずれかに由来するペプチドに対して産生された5μl/mlポリクローナルウサギ抗血清とともに、2時間、4℃にて、上下回転してインキュベートされた。Abおよび免疫沈降されたタンパク質が、プロテインA−セファロースビーズ(Pharmacia、Piscataway、NJ)との30分間のインキュベーションにより捕獲され、精製のために沈降され、そして2×SDSサンプル緩衝液(0.125M Tris pH6.8中の20% グリセロール、10% 2−メルカプトエタノール、4.6% SDS、0.004% ブロモフェノールブルー)中で4分間煮沸することによって溶出された。ホスホMapkアッセイに対しては、約25μgの全細胞可溶化物がSDSサンプル緩衝液中に解離され、そして還元条件下、10%(ほかの全ては7.5%)SDS−PAGE上で分離された。タンパク質は、以前に記載されるように27、二フッ化ポリビニリデン(Immobilon(商標);カタログ番号1PVH00010、Millipore、Bedford、MA)にトランスファーされた。ウェスタンブロット分析が、pAb、マウス抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(mAb;UBI;4G10;カタログ番号05〜321、Upstate Biotechnology、Inc.Lake Placid、NY)または、ホスホ p44/42 Mapk(New England Biolabs、Beverly、Massachusetts、カタログ番号9101)を用いて行われた。上述の抗体、ウサギ抗ホスホ−Erk1/2、およびモノクローナルpan−Erk(Pharmingen、San Diego、CA、カタログ番号E17120)でウェスタンされたブロットは、ブロッキング緩衝液中で1:1000希釈され、そして以前に記載されるように27、または当該分野において周知である標準的な技術を用いて使用された。ウサギ抗ホスホ−チロシン(□PY)、およびモノクローナルマウス抗−Fyn、または抗−Lck抗体(BD Biosciences、San Diego、CA、カタログ番号610163[Fyn]および610097[Lck])でウェスタンされたブロットは、以前に記載されるように27、ブロッキング緩衝液中で1:1000希釈された。
【0042】
[ラット腎臓移植]
Harlan Sprague−Dawley(Indianapolis、IN)から得られた成体雄性ACI(RT1a)およびLewis(LEW;RT11)ラット(160〜200g)は、Animal Welfare Committeeのガイドラインに従って飼育された。ラットは、光および温度制御された部屋で飼育され、そして食事および水が適宜与えられた。腎臓は、OnoおよびLindsey28の標準的な超微細手術を使用して、LEWドナーからACIレシピエントに異種局所的に移植された。免疫抑制薬物の評価に対しては、移植片レシピエントは、毎日の静脈内(i.v.)注射または経口強制飼養(p.o.)によって、Mannich塩基化合物を、単独で、または経口強制飼養により毎日投与されるCsAもしくはRAPAと組合わせて与えて処置された。レシピエントのコントロール群は未処置のままであった。いくつかのレシピエントは、CsAまたはRAPA単独で処置された。移植片生存時間は、腎臓移植片を支持する動物の生命の生存として規定された。結果は、平均生存時間(MST)±標準偏差(SD)として表され、Gehan生存検定により統計学的有意性について評価された。さらに、Mannich塩基と、CsAまたはRAPAとの間の相互作用が、50%有効分析29、30によって評価された。コンピューターソフトウェアが、組合わせ指標(CI)値を算定するために使用され:CI<1は相乗的な相互作用、CI>1は拮抗的な相互作用、またはCI=1は相加的な相互作用を示した30。
【0043】
[組織病理学的評価]
LEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントは、以下に続く実施例において記載されるように処置された。移植後7日目に、腎臓同種移植片がBouin´s Fixative(Poly Scientific R&D Corp.、Bay Shore、NY)に置かれた。各腎臓は、単回の水平切開、続く3つの連続的な切開からなる同一の方法で切り取られて、スライドを作成するために使用された。次に、別の切開が行われ、続いてさらに3つの連続的な切片およびスライドが作成された。腎臓当たり合計12個のスライドが、以前に記載されるように31、または当該分野において周知である標準的な技術を使用して、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色された。拒絶の程度は、Hert and Lung Transplantationによって確立された基準32に従って分類された。特に、腎臓は、緩衝化10%ホルマリン中に固定化されて一晩処理され;3−□組織学的切片は、漸進性のヘマトキシリン−エオシン(H&E)試薬で染色された。2つの独立した病理学者が、複数の腎臓切片における血管障害、糸球体の変化、および尿細管間質障害の程度を評価するために、光学顕微鏡基準の半定量スケールを使用した。尿細管および糸球体の変化は、別々に、0=変化なし;1+=<5%;2+=5〜25%;3+=26〜50%;および4+=>50%関与として分類された。類似の血管スケールは、0=なし;1+=最小;2+=軽度;3+=中程度;および4+=重篤を含んだ。
【0044】
[EMSA]電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)。
薬物またはベヒクルコントロール(DMSO)で処置された細胞は、遠心分離(20,000×g、1分間、4℃にて)によりペレット化され、そして続いて5容量の10mM HEPES、pH7.9、10mM KCl、1.5mM MgCl2、0.5mM DTT、100mM PMSF、5□g/mlアプロチニン、1□g/mlペプスタチンA、および2□g/mlロイペプチン中で洗浄され、遠心分離され、次いで1% NP−40が補充された同じ緩衝液中に溶解され、そして20分間氷上でインキュベートされた。核を含むペレットは、等容量の低塩緩衝液(10mM HEPES、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、20mM KCl、0.5mM DTT、0.2mM EDTA、およびプロテアーゼインヒビター)および高塩緩衝液(800mM KClを含む低塩緩衝液)中に再懸濁された。次いで、この画分は4℃にて10分間の遠心分離によって単離され、そして上清は核タンパク質抽出物として保存され、そして−70℃で貯蔵された。ゲル移動度シフトアッセイが、Stat5a/b DNA結合活性を検出するために、□−カゼイン遺伝子のプロモーター(5´−AGATTTCTAGGAATTCAATCC−3´)またはNF−kB結合エレメント(5´−AGTTGAGGGGACTTTCCAGGC−3´)に対応するStat5DNA結合配列を使用して行われた。両方のプローブは、[32P]dATPで末端標識化された。次いで、標識化オリゴヌクレオチドは、15□lの結合カクテル(50mM Tris−Cl、pH7.4、25mM MgCl2、5mM DTT、50% グリセロール)中、4℃にて2時間、5□gの核抽出されたタンパク質とともにインキュベートされた。スーパーシフトアッセイについて、核抽出物は、1□gの正常なウサギ血清またはStat5a、Stat5b、もしくはp50/p65 NF□Bに特異的な抗血清(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、Santa Cruz、CA;それぞれ、カタログ番号sc−1190Xおよびsc−372X)のいずれかとともに、4℃にて1時間、説明書において示されるように、予めインキュベートされ、次いで[32P]−標識化DNAオリゴヌクレオチドとともに、15分間室温でインキュベートされた。DNA−タンパク質複合体は、0.25×TBE緩衝液中で、1時間、100Vにて予め泳動された、0.25×TBEを含む5%ポリアクリルアミドゲル上で分解された。サンプルはロードされ、そしてゲルは室温で約2時間、150Vにて泳動され、次いで減圧下で過熱することによって乾燥され、そしてX線フィルム(X−Omat、Kodak)に、−70℃にて露光された。
【0045】
[Mannich塩基およびその他の化合物]
最初の研究において使用された化合物649641P(NC1153)は、the University of Saskarchewan、Saskatoon、CanadaのJonathan R.Dimmock博士から提供された。649641P(NC1153)および図14B〜39Bにおいて同定される化合物を含むその他の化合物は、the M.D.Anderson Cancer Center、University of Texas System、Houston、TexasのWaldemar Priebe博士によって調製された。本明細書中に記載される化合物は、Aldrich Chemical Co.、(Milwaukee、Wis.)およびSigma(St.Louis,Mo.)のようなサプライヤーから入手可能な市販の出発物質および試薬によって調製され得る。Fieser and Fieser´s REAGENT FOR ORGANIC SYNTESIS、第1〜17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd´s CHEMISTRY OF CARBON COMPOUNDS、第1〜5巻およびその増刊(Elsevier Science Publishers、1989);ORGANIC REACTIONS、第1〜40巻(John WileyおよびSons、1991)、March´s ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、(John Wiley and Sons、第4版)、およびLarock´s COMPREHENSIVE ORGANIC TRANSFORMATIONS(VCH Publishers Inc.、1989)のような参考文献において記載されるように、標準的な化学合成技術および手順が用いられ得る。化合物を合成するためのさらなる手引きは、定期刊行物、例えば、Dimmock34、35の出版物において、および以下に記載されるように、見出され得る。
【0046】
以下の制限されない例は、代表的なJak3選択的インヒビター化合物の特徴および使用の説明であり、および本発明をいかようにも制限することを意味するものではない。
【0047】
[実施例1.Mannich塩基649641P(NC1153)のインビトロでの効果]
649641P(C18H38C12N2O;分子量369.41)と示されるMannich塩基はまたNC1153として、その立体異性体の混合物として参照され、以下の一般式を有するが、
Jak3対Jak2依存性の増殖を受けるT細胞に添加されて、上述のように、Jak3を選択的に阻害するその能力が試験された。図1Aは、γc/Jak3−依存性のPHA活性化ヒトT細胞の増殖に対する、649641P(NC1153)の効果を示すグラフである。静止状態のPHA活性化ヒトT細胞(5.0×104細胞/ウェル)は、1nMヒトIL−2(■)、IL−4(●)、またはIL−7(▲)の存在下または不在下で、漸増濃度の649641P(NC1153)(縦座標)とともに、16時間37℃にて培養された。次いで細胞は、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)で4時間パルスされ、そして取り込まれた放射標識化プローブが横座標上にプロットされ、DMSO処置されたサンプルセット(n=6)からの全cpmの阻害%として表された。
【0048】
図1Bは、Jak2活性化因子(プロラクチン;PRL[○])またはJak3活性化因子〈インターロイキン−2;IL−2[■]〉の存在下で培養されたT細胞の増殖に対する649641P(NC1153)の効果を示す。ラットT細胞株(Nb2−11c)が選択されたのは、それがPRL/Jak2またはIL−2/Jak3刺激のいずれかに応答するからである。静止状態ラットT細胞(5.0×104細胞/ウェル)は、Jak2活性化因子(1nM PRL([○])またはJak3活性化因子(1nM IL−2[■])の存在下、漸増濃度の649641P(NC1153)(縦軸;0〜100μM)とともに、16時間37℃にて培養された。細胞は、アッセイの最後の4時間、[3H]−チミジン(0.5μCi/200μl)でパルスされ、次いでDNAが取り込まれた放射標識化プローブが横軸上にプロットされ、DMSO処置されたサンプルセット(n=4)からの全cpmの阻害%として表された。図1A〜Bに示されるように、649641P(NC1153)は、γc/Jak3依存性の細胞増殖を選択的に阻害するが、PRL/Jak2依存性の細胞増殖は阻害しない。特に、649641P(NC1153)は、IL−2、IL−4、およびIL−7に応答してNb2−11c細胞増殖を等しく有効に阻害することを証明したが、同化合物は、Jak2依存性の増殖よりもJak3依存性の増殖を3倍有効に阻害した。
【0049】
図2A〜Cにおいては、Jak3/Stat5シグナル経路に対する649641P(NC1153)の効果が示される。ヒトYT細胞は、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、2時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Jak3 pAbで免疫沈降され、そして図2A、上部パネルに示されるように、抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ、次いで剥離されて抗Jak3で再ブロットされた(図2A、下部パネル)。これらのウェスタンブロットの実験結果は、Jak3のチロシンリン酸化が、ヒトYT細胞(1〜100μM)においては649641P(NC1153)によって用量依存的に阻害されており、図1Aに示される結果と相関する。ここで図2Bを参照すると、ヒトYT T細胞はまた、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、2時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Stat5a pAbで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ(図2B、上部パネル)、次いで剥離されてStat5aで再ブロットされた(図2B、下部パネル)。第3の試験において、この結果は図2Cに示され、ヒトYT細胞は、上昇する濃度(1〜100μM)の649641P(NC1153)を伴わないで(a〜b)、または伴って(c〜i)、16時間培養され、そして100nM IL−2を伴って(+)または伴わないで(−)、10分間再抗原投与された。細胞は、抗Stat5b pAbで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシンmAbでウェスタンブロットされ(図2C、上部パネル)、次いで剥離されて抗Stat5aで再ブロットされた(図2C、下部パネル)。
【0050】
IL−2はまた、アダプタータンパク質、Shcを介して、Shc/Ras/Raf/Erk経路を強力に活性化する。ShcはIL−2Rβ鎖のTyr338に結合して、最終的にT細胞増殖を駆動する。図3は、上述の実験に類似する実験の結果を示し、ここではIL−2媒介性のp44/42 Erk1/2リン酸化に対する上昇する649641P(NC1153)濃度の効果が研究された。静止状態のPHA−活性化T細胞は、DMSO(コントロール;レーンa〜b)または漸増濃度(c〜i)の649641P(NC1153)で2時間処置され、次いで1μgの存在下、37℃にて10分間刺激された。細胞は溶解され、そして全細胞可溶化物は、10% SDS−PAGE上で分離され、PVDF膜上にトランスファーされ、抗−ホスホ−p44/42 Erk1/2でウェスタンブロットされ(上部パネル)、次いで剥離されてpan Erk抗体で再プローブされた(下部パネル)。矢印は、p44/42 Erk1/2の位置を示す。これらの結果は、649641P(NC1153)が、ヒトT細胞においてIL2媒介性のErk1/2活性化をブロックすることを明らかにする。
【0051】
YT細胞は、活性化FynおよびLckキナーゼを恒常的に発現し、その活性化FynおよびLckキナーゼは、YT細胞のチロシンリン酸化状態について試験することによって示され得る。YT細胞は、様々な濃度の649641P(NC1153)(1〜100□M)とともに2時間培養された。細胞抽出物は、抗Fynまたは抗Lck抗体で免疫沈降され、そして抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ、次いで剥離されて抗Fynまたは抗Lck抗体で再ブロットされた。図4は、上述の実験の結果を示す:YT細胞抽出物は、抗Fynで免疫沈降され、そして抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ(第1列)、次いで剥離されて抗Fynで再ブロットされ(第2列);YT細胞は抗Lck抗体で免疫沈降(IP)されて抗ホスホチロシン抗体(□PY)でウェスタンブロットされ(第3列)、次いで剥離されて抗Lck抗体で再ブロットされた(第4列)。YT細胞はベヒクルのみとともに(レーンaおよびb)、または上昇する649641P(NC1153)濃度(1〜100□M)(レーンc〜i)とともに培養された。これらの結果は、649641P(NC1153)がFynまたはLckキナーゼの活性をブロックしないことを示す。
【0052】
上述の結果は、その他のインヒビターはJak3およびJak2の応答性細胞増殖を阻害する(約10〜25μMのIC50)一方で、649641P(NC1153)は約2.5μMのIC50を伴って細胞増殖を破壊することによってより有効であったことを示す。さらに、649641P(NC1153)はIL4またはIL7駆動の細胞増殖を同じ濃度において有効に阻害した(約2.5□□のIC50)。この薬剤は、ホスホウェスタンブロットによって測定されたように、Jak3およびその基質、すなわちStat5a/b、アダプタータンパク質Shc、およびErk1/2のチロシンリン酸化を阻害した。649641P(NC1153)は、以前に記載された約10□□のIC50を示すPNU156804 Jak3インヒビターよりも有効であった。さらに、オリゴヌクレオチドプローブへのStat5a/b DNA結合は、649641P(NC1153)によって大きく損なわれるが、この化合物は、TNF−□誘導性のNF−kB DNA結合に対してなんら効果がないので、この転写因子に特異的であった。649641P(NC1153)化合物は非Jak3発現ヒトJurkat T細胞のDNA合成も、TCRシグナル伝達中間体LckおよびFynチロシンキナーゼの活性化も阻害しなかった。
【0053】
[実施例2.同種移植片生存に対するMannich塩基649461P(NC1153)の効果]
インビボでの効果を試験するために、腎臓同種移植片のレシピエントは、移植後即座に開始して7日間、649641P(NC1153)で処置された。LEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントは、2.5、5.0、10.0、または20.0mg/kgの649641P(NC1153)を7日間毎日のi.v.注射単独で、または2.5、5.0、10.0、もしくは20.0mg/kgのCsAの経口強制飼養と組合わせることによって、処置された。i.v.または経口強制飼養によって送達されて単独で与えられた649641P(NC1153)は、表1に示されるように、投薬量依存的にラット腎臓同種移植片生存を延長した。80mg/kgの649641P(NC1153)p.o.は、i.v.注射された10mg/kgの649641P(NC1153)と類似の生存を生じたので、経口の生物学的利用能は、約12.5%であると見積もられる。平均生存時間(MST)およびSDは、5〜6の実験から各群について算出された。組合わせ指標(CI)値は、50%有効分析によって算出された(CI<1は相乗的な相互作用、CI>1は拮抗的な相互作用、およびCI=1は相加的な相互作用を示す)29、30。
【0054】
経口強制飼養によって投与された、649641P(NC1153)の単独の、またはCsAと組合わせた腎臓同種移植片生存に対する効果は、表2に示される。LEW(RT11)腎臓同種移植片のACT(RT1a)レシピエントは、40、80、または160mg/kg/dの649641P(NC1153)の7日間の経口強制飼養によって、単独で、または2.5、5.0、10.0、または20.0mg/kg/dのCsAの経口強制飼養と組合わせて、1日1回処置された。MSTおよびSDは、5〜6実験から各群について算出された。組合わせ指標(CI)値が算出された。
【0055】
MST±SDに係る表2に示される結果は、Gehan生存検定によって統計学的有意性について評価された。
【0056】
結果に対して算出された組合わせ指標(CI)値対CsA/649641P(NC1153)比は表1に示され、そしてこれらのデータは図5に示されるようにグラフ化された。CsAの経口の生物学的利用能が90%であることを考慮して、4:1、3:1、2:1、および1.5:1のCsA/649641P(NC1153)比(CI=0.1〜0.27)は、1:1、1:2、または1:4のCsA/649641P(NC1153)比(CI=0.38〜0.60)に比較して、より良好な相乗作用を示した。50%有効分析および組合わせ指標(CI)値が、649641P(NC1153)とCsAとの間の相互作用の質を算出するために使用された。649641P(NC1153)およびCsAの組合わせは、CI値(0.6〜0.1;図5)によって確認されるように、相乗的であり;1:2〜1:4の649641P(NC1153)/CsA比は最も有効であった(CI=0.1〜0.27;表1)。
【0057】
結果をまとめると、649641P(NC1153)は腎臓同種移植片生存の用量依存性の延長を示し:7日間i.v.送達された20mg/kg/日の649641P(NC1153)の投薬量は、24.8±6.6日の(p=0.00003:未処置コントロール;MST=8.8±0.5日)、7または14日間経口送達された240mg/kg/日の649641P(NC1153)は、47.8±19.59日または>60日(両方ともp<0.00001)のMSTを生じた。CsA単独(2.5、5、10、または20mg/kg/d、3日間)での処置は、用量依存性の効果を生じ、最も高い用量にて、24.50±4.58日のMSTを達成する(p<0.0001)。組合わせの処置は、各試薬での単剤治療と比較して、移植片生存における強力な相乗的相互作用を明らかにした。例えば、2.5mg/kg/日の7日間の649641P(NC1153)単独のi.v.投与は、9.5±1.4日のMSTを生じ、3日間の10mg/kg/日のCsA単独の静脈内投与は、21.2±5.3日のMSTを生じるが、2つの薬物の組合わせは生存を41.4±9.8日に延長した(p=0.00002)。最も良好な結果は、4:1および2:1の649641P:CsA投薬量比で観察され、それぞれ0.11および0.27のCI値を生じた。新規なおよび選択的なJak3インヒビター、649641P(NC1153)は、腎臓同種移植モデルにおいてインビボで免疫抑制的であり、そしてCsAと組合わせて顕著な相乗的効果を発揮することが同定された。
【0058】
[実施例3.腎臓毒性についての649641P(NC1153)の評価]
組織学的検査のために、組織がLEW(RT11)腎臓同種移植片のACI(RT1a)レシピエントから得られ、これは以下のように処置された;7日間低塩食餌におかれたレシピエントは14日間:i.v.送達された10mg/kgの649641P(NC1153);i.v.送達された0.16mg/kg RAPA;p.o.送達された10mg/kg CsA;10mg/kg CsAp.o.と0.16mg/kg RAPAi.v.との組み合わせ;または10mg/kg CsA p.o.と10mg/kg 649641P(NC1153)i.v.との組み合わせ、で処置された。14日目にラットは屠殺され、そして組織学が、標準的な方法に従うH&E染色を使用して腎臓に対して行われた。図6A〜Eにおける顕微鏡写真は、649641P(NC1153)単独の、またはCsAと組合わせた、腎臓構造に対する効果を示す。全ての写真は、同じ200×倍率にて示される。類似の結果が1群あたり5匹のラットにおいて観察された。649641P(NC1153)(図6A)もRAPA単独(図6B)も、腎臓において有意な変化をなんら示さなかった。それとは対照的に、CsA単独(図6C)は、空胞形成および萎縮によって可視化されるように、30%の細管において障害を引き起こした。CsA/RAPA(SRL)群は、萎縮および濃縮した核を伴って、90%の細管において大規模な空胞形成を示した(図6D)。CsA/RAPA群と対照的に、CsA/649641P(NC1153)の組合わせで処置されたラットからの腎臓は、CsA単独の群において観察された変化に類似する変化を示した(図6E)。簡潔には、649641もRAPA単独のいずれも、腎臓毒性を引き起こさなかった。しかし、CsA単独は腎臓毒性であり、そしてこの効果は、RAPAとともに増強され、649641P(NC1153)では増強されなかった。
【0059】
上述の組織学的研究に加えて、649641P(NC1153)処置された動物はまた、SRLと典型的に関連する毒性のタイプについても評価された。この研究においては、動物の処置は649641P(NC1153)単独またはCsAとの組合わせを含んだ。Wistar−Furthラットは、649641P(NC1153)(10mg/kg/d i.v.または強制飼養あたり40mg/kg/d)もしくはSRL(強制飼養あたり1.6mg/kg/d)を単独で、またはCsA(強制飼養あたり10mg/kg/d)と組合わせて受けた。慢性的な腎臓毒性を評価するための塩類の欠乏(0.05% NaCl)、または脂質補充(17.7%トリグリセリド、5.02%コレステロール)のいずれかによる7日間の食餌前処理後、ラットの群は、7、14、または28日間の処置過程(n=6/薬物/持続時間)を受けた。クレアチニンクリアランス(CrCL)における差異;総密度、低密度、および高密度(HDL)コレステロール(CHOL)画分;トリグリセリド(TG);骨髄細胞密度;抹消血計数(PBC);および血液の化学的性質が、Fisherのt検定によって評価された。
【0060】
この研究の結果は、649641P(NC1153)が体重増加(p=0.0002)を引き起こし、そしてCsAまたはSRLによって生じる体重減少をエンハンスしないことを示した。CrCL値は、未処置(2.0 0.1mL/分)および649641P(NC1153)単独(1.9 0.1mL/分)について類似であったが、SRL単独(1.7 0.1mL/分;p<0.02)、およびCsA単独(1.3 0.1mL/分;p<0.001)について減少した。CsA単独に比較して、648641Pの付加は、CrCL値をさらに減少させることはなかった(1.38 0.2mL/分;p=0.68);一方、SRLは顕著にこれを減少させた(0.9 0.2mL/分;p=0.03)。低塩食餌における未処置のラットに比較して、649641P(NC1153)は、TGまたはLDLレベルを変化させずに、血清CHOL(82.0 5.0対65.5 9.4mg/dL;p=0.03)を減少させ、HDLを増加させた(p=0.004)。648641Pは、SRL+CsA(107.8 8.4mg/dL;p=0.0005)と対照的に、CsAの高コレステロール症効果を増加させなかった(77.5 7.0単独対64.1 12.7mg/dL組合わせ)。高脂食餌において、SRLはCHOL(689.5 67.4;p=0.00001)およびその他の脂質画分に対して顕著な効果を生じ;CsAはより少ない効果(545.7 95.7mg/dL;p=0.0002)であり、649641P(NC1153)は、未処置の動物において中程度の変化のみを生じた(323.8 51.1mg/dL;p=0.01対237.5 31.4mg/dL)。649641P(NC1153)はHDL、LDL、またはTGレベルに対する効果をなんら有しなかった。648641PもCsAも、SRLとは対照的に(P<0.04)、未処置のラットと比較して、PBCを減少させなかった。SRL/CsA宿主は低細胞性の骨髄を示し(30〜40%が脂肪組織に置き換えられる)、649641P/CsAコホートは、未処置のラットからなんら有意な変化を示さなかった。これらの結果を考慮すると、649641P(NC1153)は、腎臓毒性および骨髄毒性の効果がなく、高脂投与に対して軽度の脂質毒性を伴うと結論づけられる。SRLを混乱させるようなCsAの有害な効果を悪化させないので、649641P(NC1153)はリンパ系要素に対して選択的な作用を発揮するようである。
【0061】
上述の研究から、649641P(NC1153)はJak3活性をブロックし、単独で同種移植片生存を延長し、そしてCsAと相乗的であることが結論づけられ得る。好ましい化合物、649641P(NC1153)はJak2依存性T細胞増殖に比較してJak3依存性T細胞増殖のインビトロでの選択的な阻害を示し、そしてインビボでなんら腎臓毒性の副作用を引き起こすことなく臓器の同種移植片の生存を延長させた。有利には、649641P(NC1153)はシクロスポリンと強力な相乗的相互作用を示し、シクロスポリン誘導性の腎臓毒性を増加することなく臓器の同種移植片の生存を延長させた。さらに、649641P(NC1153)は、以前に記載された化合物AG490およびPNU156804と比べて、Jak3媒介性の細胞活性をブロックすることに対しては大きな特異性を示したが、Jak2媒介性の細胞活性をブロックすることに対しては示さなかった。しかし、現時点では、649641P(NC1153)の投与と関連する上述の望ましい薬理学的特性が、649641P(NC1153)化合物とJak3との直接的な相互作用に完全に起因するのか否か、または、例えばJak3阻害が649641P(NC1153)からの代謝物または誘導体よってなんらかの程度インビボで媒介されるのか否かは、明らかではない。後者の場合、医学的に示すとすれば、かかる活性な代謝物または誘導体の種のいずれの直接的な投与が、治療的に649641P(NC1153)の代わりをし得ると考えられる。同様に、本明細書中に記載される選択的なJak3インヒビター化合物の1つを生じるようにインビボで作用する前駆体化合物もまた、個体の特別の必要性がそのように示す場合には、治療的に投与され得る。
【0062】
[実施例4.治療的適用]
649641P(NC1153)化合物は、免疫抑制治療のため、およびJak3を含むかまたは発現するリンパ系、骨髄系、またはその他の細胞の病理を処置するため、本明細書中に記載される医学的有用性のある化合物の群の代表であると考えられる。化合物は、ヒトのT細胞関連疾患において特に有用であると考えられ、および獣医学的診察における使用に対して、Jak3依存性のリンパ系もしくは骨髄系の細胞機能をその他のタンパク質キナーゼの活性に影響を与えずに抑制することが望ましいなんらかの適用に対して、またはかかるキナーゼにほとんど影響を与えないもしくは治療的に受容可能な程度の影響を与えるなんらかの適用に対して、特に有用であると考えられる。処置は、リンパ球、またはJak3を発現するリンパ系もしくは骨髄系起源の他の細胞においてシグナル3経路を干渉するのに有効な化合物の量を投与する工程を有し、それによってその作用を阻害する。例えば、細胞分裂をブロックする。かかる投与は、化合物の酸の形態または薬学的に受容可能なその塩を利用するか、またはこれは化合物の生物学的に活性な代謝物の形態をとる。あるいは、被験体の身体において化合物の1つ以上の活性な形態に代謝され得る前駆体化合物が投与され、それによってJak3依存性のリンパ球作用が破壊され、好ましくは細胞分裂をブロックする。投与は連続的または周期的である。
【0063】
いくつかの医学的状況において、個体は望ましくない免疫応答の抑制を必要とし、その場合、649641P(NC1153)、または前駆体もしくは活性な代謝物を含む薬学的組成物の有効な量の投与は、望ましくない免疫応答を軽減または防止する。シクロスポリンAまたはFK506のような、Jak3阻害を介して作用しない、別の免疫抑制剤の治療的に有効な量を同時投与することによって、さらにより良好な結果が、個体に対する毒性をほとんど伴わずに達成され得る。かかる使用の例は、哺乳動物移植片もしくは同種移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶もしくは同種移植片拒絶を軽減すること、または移植寛容を誘導することを含む。その他の例においては、治療目的は、内因性Jak3依存性T細胞によって媒介される自己免疫疾患の寛解を促進することであり、それによって被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される。さらにその他の使用の手段は、649641P(NC1153)の薬学的調製物を投与して、T細胞媒介性の過敏性応答を抑制することによって哺乳動物被験体における気道過敏症を軽減することを含む。同様に、アレルギー患者は、T細胞媒介性のアレルギー応答を抑制するために処置され、それによってアレルギー反応が減少または停止される。649641P(NC1153)を含む薬学的組成物の投与はまた、Jak3依存性の白血病またはリンパ腫の増殖を阻害することが期待される。649641P(NC1153)での治療的処置の顕著な潜在的利点は、Jak3活性を選択的に阻害し、リンパ系画分の細胞(およびJak3を発現する骨髄系の細胞)に制限されることによる、ならびにJak2、および身体にわたる多くの組織において見出される他のタンパク質キナーゼ活性に対してほとんどまたは全く影響を有しないことによる利点であり、ずっと少ない副作用が期待される。
【0064】
[薬学的組成物]
治療的使用に適切な薬学的組成物は、その酸形態をとる649641P(NC1153)化合物、または適切なキャリアと組み合わせられてその薬学的に受容可能な塩もしくは水和物を含む。薬学的に受容可能な塩および水和物とは、製薬化学者に明白な化合物の、このような塩および水和物の形態、すなわち、溶解性、嗜好性、吸収、分散、代謝、および排泄のような化合物の物理学的なまたは薬物動態学的な特性に好ましい影響を与える形態をいう。事実上より実用的で、化合物の形態の選択においてもまた重要なその他の因子は、得られるバルク薬物の、原材料費用、結晶化の容易性、収量、安定性、溶解性、吸湿性、および流動性を含む。化合物が負に荷電されると、これは対イオン、例えば、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属カチオンによって平衡化される。他の適切な対イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム、またはテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、コリン、トリエチルヒドロアンモニウム、メグルミン、トリエタノールヒドロアンモニウムなどのような、アルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。対イオンの適切な数は、全体の電荷の中立性を維持するための分子に関連する。同様に、化合物が正に荷電される、例えばプロトン化されると、適切な数の負に荷電された対イオンが存在して全体の電荷の中立性を維持する。
【0065】
薬学的に受容可能な塩はまた、酸付加塩を含む。すなわち、化合物は、無機または有機の酸または塩基に由来する塩の形態において使用可能である。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳塩、樟脳硫酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン塩、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンのような有機塩基を伴う塩、ならびにアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸を伴う塩が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチル塩化物、臭化物、ヨウ化物のような低級アルキルハライド;ジメチル、ジエチル、ジブチルのようなジアルキル硫酸塩;およびジアミル硫酸塩、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル塩化物、臭化物、ヨウ化物のような長鎖ハライド、ベンジルおよびフェネチル臭化物のようなアラルキルハライドなどの薬剤で四元化される。他の薬学的に受容可能な塩としては、硫酸塩エタノレートおよび硫酸塩が挙げられる。
【0066】
本明細書中に記載されるJak3インヒビター化合物は、当該分野において周知であるように、薬学的に受容可能なキャリアと、化合物とを組合わせることによって薬学的組成物中に処方される。化合物は、粉末または結晶の形態で、溶液中でまたは懸濁液中で用いられる。これらは、経口的に、非経口的に(静脈内または筋肉内)、局所的に、経皮的に、または吸入によって投与される。用いられるキャリアは、必要に応じて、固体または液体である。固体キャリアの例としては、ラクトース、石膏、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。液体キャリアの例としては、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油、水などが挙げられる。経口の使用のためのキャリアとしては、単独で、またはワックスと組合わせて、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような当該分野において周知な時間遅延材料が挙げられる。局所的な適用は、軟膏、クリーム、ローションを形成するために疎水性または親水性の基剤のようなキャリアで、塗布剤を形成するために水性、油性、またはアルコール性の液体で、または粉末剤を形成するために乾燥希釈剤で処方される。経口固体投薬形態の例としては、錠剤、カプセル、トローチ、薬用キャンデーなどが挙げられる。投薬形態の大きさは、広範に変化するが、好ましくは約25mg〜約500mgである。経口液体投薬形態の例としては、溶液、懸濁液、シロップ、乳濁液、軟質ゼラチンカプセルなどが挙げられる。注射可能な投薬形態の例としては、無菌の注射可能な液体、例えば、溶液、乳濁液、および懸濁液が挙げられる。注射可能な固体の例としては、注射の前に液体中に再構成、溶解、または懸濁される粉末が挙げられる。注射可能な組成物において、キャリアは典型的には、無菌水、生理食塩水、または別の注射可能な液体、例えば、筋肉内注射のためのピーナツ油、からなる。また、種々の薬学的に受容可能な緩衝剤、保存剤なども含まれる。
【0067】
[投薬]
本明細書中に記載されるJak3選択的インヒビター化合物の治療的使用を行うための薬学的組成物としては、意図される目的、すなわち、Jak3活性の選択的な破壊もしくは、阻害、またはJak3関連性の異常の処置もしくは防止を達成するのに十分な量において有効成分を含む組成物が挙げられる。治療的に有効な量すなわち投薬量は、本明細書中に示されるようにして、先ず細胞増殖アッセイから見積もられる。次いで、投薬量は、また本明細書中で示されることだが、動物モデルにおける使用のために処方され、細胞培養で判断されるIC50(すなわち、IL2依存性の増殖の最大阻害の半分を達成し、PRL依存性の増殖をほとんどまたは全く阻害しない化合物の濃度)を含む循環濃度範囲が達成される。次いで、かかる情報は、標準的な薬理学的な実施に従って、ヒトおよびその他の哺乳動物において有用な投薬量の範囲をより正確に判断するために使用される。投薬量は、用いられる投薬形態および利用投与経路に依存して変化する。例えば、投薬の量および間隔は、所望されるJak3阻害効果を開始および/または維持するのに十分である活性な種の血漿レベルを提供するように個々に調節される。これらの血漿レベルは、習慣的には最小有効濃度(MEC)として参照される。MECは、化合物によって異なるが、上記のようにインビトロデータから見積もられる。例えば、T細胞の集団においてJak3自己キナーゼ活性の50〜90%阻害達成するのに必要な濃度は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して確認される。HPLCアッセイまたはバイオアッセイが、血漿濃度を判断するために用いられ得る。投薬間隔はまた、MEC値を使用して判断される。好ましくは、化合物は所望される期間、MECを上回る血漿レベルを維持する投与計画を使用して投与される。局所的な投与または選択的な取り込みを含む処置において、化合物、またはその活性な代謝物もしくは誘導体の有効な局所濃度は、血漿濃度によって十分に反映されない可能性がある。この場合においては、当該分野において周知の、その他の手順が適切な投薬の量および間隔を判断するために用いられる。成体ヒトに対する適切な経口投薬量の範囲の例は、単回または分割される投薬量において、1日あたり約0.1〜約80mg/kgである。適切な非経口投薬量の範囲の例は、単回または分割される用量において、1日当たり約0.1〜約80mg/kgであり、静脈内または筋肉内注射によって投与される。局所的な投薬量の範囲は、約0.1mg〜約150mgであり、1日約1〜4回、外部から適用される。吸入の投薬量の例は、一日あたり約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。正確な処方、投与の経路、および投薬量は、患者の状態、処置される疾患の性質、およびその他の因子を考慮して個々の医師によって選択され得る。
【0068】
[実施例5.さらなるJak3選択的インヒビター化合物]
前述の実施例において、649641P(NC1153)は、Jak3を含むT細胞の増殖および機能を選択的にまたは特異的に阻害し、同種移植片の生存を延長し、そして低い毒性を示すことが実証された。これらの評価を考慮すると、649641P(NC1153)が免疫関連の異常を有する個体を処置するための潜在的治療的価値を有することは明らかである。この化合物はまた、インビトロのアッセイおよびインビボの研究におけるJak3の阻害または破壊についての選択性に関して、その他の候補薬物化合物を評価する上での比較基準として使用するための試薬として価値がある。
【0069】
上記のように、本研究の過程において、NCI薬物発見データベース(NCI Drug Dicovery Database)が、Janusキナーゼ3(Jak3)の選択的なインヒビターとして作用し得るさらなる候補化合物についてスキャンされた。「種」化合物AG490、Jak3阻害の潜在性を伴うチルホスチンに類似の相関係数を示す化合物が評価された。
【0070】
[COMPAREアルゴリズム]
NCI薬物データベースは、世界の種々の部門から集められた数十万の化合物からなるデータベースである。これらとしては、大きな製薬会社から小さな私有の研究所までにおよぶ薬物の寄託が挙げられる。多くの例において、これらの化合物が付加されて、ライブラリーが試験および促進された。しかし、これらの化合物の多くは、その元来提案された機能についての効果のなさに起因して、製造業者により製造中止にされており、およびいくつかの例においては、提出した企業がもはや稼動していない。薬物の状態にかかわらず、その構造および得られる活性は、毎週更新されるライブラリーデータベースに付加される。
【0071】
データベースは、60個の異なるヒト細胞株(例えば、上皮、肺、結腸、単球/マクロファージ、T−B細胞、乳房−前立腺(prostrate)など)に対して、特定の薬物についての投薬量応答性を試験することによって作成された。測定されるこれらのパラメーターとしては、細胞増殖の阻害(IC50)、細胞傷害性(LC50)、および細胞増殖抑制効果(TGI)が挙げられる。同時に、これらは、各化合物についての平均グラフ「符号定数」を含む。ポジティブな値を示す(右側に突出する)薬物は、平均を超える反射的な細胞感受性である。ネガティブな値(左側に突出する)は、細胞株が、試験薬剤に対して平均よりも少ない感受性であることを示す。COMPAREは、各化合物を、本明細書の場合のAG490におけるように、所定の「種」に対するインビトロでのその活性に基づいて序列するアルゴリズムである。平均グラフは、各薬物に対してピアソンの相関係数(Pearson’s correlation coefficient (PCC))を使用してスカラー指標順位(scalar index rating)に変換される。最終的には、最も類似の効果を伴う薬物は高位の相関(アプローチ1)を示し、種化合物の作用メカニズムに類似する作用メカニズムを有する可能性が高い。
【0072】
COMPAREは、類似の作用メカニズムを伴う化合物を同定することにおいて成功してきた。これは、例えば細胞増殖をブロックする類似した薬物は、類似した細胞型の同じ重要な標的経路を標的する、という前提に基づく仮説的なモデルである。特定の経路に大きく依存する細胞は、その経路を阻害する感受性があるが(例えば、JAK3/Stat5を発現する細胞)、かかる分子を発現しないか、またはほとんどこの経路に依存しない細胞は、同じ薬物はほとんどまたは全く効果を有しない。このことは、COMPAREが、細胞のパネルにわたって類似の作用メカニズムを伴う薬物をまとめて分類することを可能にする。
【0073】
今日までに完了された多くの様々な研究は、このアプローチが、同じ分子標的に選択的に影響する、すなわち特徴的な平均グラフパターンを生じる新規な薬剤を同定するために成功してきたことを示した。COMPAREアルゴリズムは、別個の構造の化合物であるが、種と比べて同じ作用メカニズムを伴う化合物に対する類似の平均パターンを同定し得る。実験室研究では、特定の読取り内での適合(JAK3 Stat5リン酸化)を確認する必要がある。COMPAREは、薬物作用の類似メカニズムに依存するので、化学構造に必ずしも依存しない。このことは、以前は所定の標的に対する特定のインヒビターとして決して認識されていなかった、構造的に新規なクラスの化合物の同定を可能にする。このアプローチの有効性は、p53、Raf、トポイソメラーゼ、およびチューブリン結合タンパク質のインヒビターを同定することによって実証されてきた。既知の作用メカニズムの構造的クラスが一旦発見されると、次いで新しい作用メカニズムの利用可能な類似体および合成体のさらなるスクリーニングが使用されて、目的の薬物が規定および最適化され得る。
【0074】
上記のNCI薬物データベーススクリーニングにおいて同定された化合物の中に、649641P(NC1153)、および649641Pのいくつかの同族体または構造類似があった。T細胞増殖に対する化合物637712、640674、643423、655906、673137、683332、および693812(それらのNCIデータベース番号によって示される)の効果が評価され、AG490、PNU156804、および649641P(NC1153)の効果と比較された。これらの比較アッセイの結果は、図7Aにおいて棒グラフの形態において示される。PHA活性化ヒトT細胞の増殖は、IL−2での刺激後にこれらのNCI薬剤によってブロックされることがわかる。NC1153の構造式は、差込図において示されている。NC1153は、IL2受容体の発現に影響しなかった。
【0075】
また示されるのは(図7B)、50μM NC1153を伴わないで(太線)、または伴って(細線)、一晩処置されてIL2R−α、−β、およびγ鎖について染色されたPHA活性化T細胞ブラストのFACS分析を示すグラフである。破線は、NC1153で前処理された細胞を示す。これらの結果は、IL−2受容体の存在がNC1153によって影響を受けないことを示す。これらの知見は、IL2シグナルの喪失は、受容体発現における変化に起因せず、すなわちIL2受容体、従ってJak3の遠位で生じることを実証する。図7Cに示されるように、NC1153化合物は、非Jak3発現細胞の細胞増殖をブロックしない。Jak3を発現しないJurkat細胞(黒菱形)は、Jak3を含むPHA活性化T細胞(白四角)とは対照的に、NC1153での処置後の細胞増殖には有意な変化を示さなかった。データは、ベヒクルコントロールのパーセントとして正規化される。NC1153は、Jak3および共通のガンマ鎖を利用するサイトカインによる細胞の増殖を阻害する(図7D)。図1Aにおいてまた示されるように、649641P(NC1153)で処置されたT細胞のT細胞増殖は、未処置コントロールに対して正規化されたIL2、IL4、またはIL7駆動性の増殖を投薬量依存的に阻害する。すなわち、NC1153の阻害効果は、IL−2によってのみ刺激された細胞に制限されるわけではない。その代わりに、Jak3を使用するサイトカインのファミリー全体は、NC1153によってブロックされる。
【0076】
ここで図8を参照すると、6496421P(NC1153)がJak3シグナル伝達経路を阻害するという直接的な証拠が提供される。Jak3自己キナーゼ活性は、インビトロの分析に基づいて、NC1153によって直接的にブロックされる。「PY−Jak3」として同定されるバンドは、NC1153の示された投薬量にて、IL−2およびATPを伴ってまたは伴わないで、活性なJak3のみを明らかにする。「Jak3」として同定されるバンドは、全ての(活性プラス不活性な)Jak3タンパク質の存在を明らかにする。Jak3を阻害することが下流の経路をブロックするということを示すために、免疫精製されたJak3は、Jak3自己キナーゼ活性についてアッセイされ、100μMのATPおよび/または薬物の存在下または不在下での、ホスホチロシンウェスタンブロットによって試験され、そして図2A〜Cに示されるようにコントロールと比較された。649641(NC1153)は、図7Aおよび7Dに示されるように、増殖データに類似する約2.5μMのIC50を示したことがまた観察された。
【0077】
図9A〜Cは、NC1153が非Jak3シグナル伝達経路を阻害しないことを示す。図9Aにおいて、NC1153が、漸増濃度のNC1153で処置されたPHA活性化T細胞において、EMSA分析を介して測定されるように(上部パネル)、Jak3駆動性の転写因子−Stat5a/bを投薬量依存的に阻害することがわかる。「コールド匹敵物」として同定されるレーンは、未標識のプローブを含む。しかし、TNF−□による非Jak3媒介性Nf□B活性化(下部パネル)は、同じ処置セット内では影響を受けなかった。図9Bに示される結果は、NC1153は、密接関連Jak2/Stat5aシグナル伝達経路を阻害しないことを確立する。ラットNb2細胞は、漸増濃度のNC1153で処置され、次いでプロラクチンで刺激された。ホスホチロシンウェスタンブロットは、活性化を検出したが、NC1153による阻害は検出しなかった。Stat5a/b活性化において、Jak3媒介性のJak3自己キナーゼ活性化は、インビトロの分析に基づいて、NC1153によって直接的にブロックされる。NC1153は、複数のキナーゼの活性に影響を与えない。キナーゼアッセイにおけるJak2よりも少なくとも50倍多いJak3の阻害が、図9Bおよび図8に示される。図9Cに示されるように、NC1153は、10または50μMにて、増殖因子チロシンキナーゼ(FGFR3およびPDGFR□)、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Fyn、Lck、Yes、Zap70)、またはセリンスレオニンキナーゼ(PKCおよびPKA)の基質のリン酸化をブロックすることが試験された。コントロールの活性は、破線としてプロットされる。
【0078】
図10A〜Dは、(表1に示された)同種移植片生存に対する649641P(NC1153)のインビボの効果をまとめる。Lewis(LEW)腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは、7日間、毎日の静脈内注射または経口強制飼養により送達されるNC1153で処置された。種々の薬物投薬量での同種移植片生存時間(日)は図10Aに示され、個体の生存は表1に示される。LEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは、14日間、毎日の経口強制飼養によって送達されるNC1153で処置された。移植片生存比率(日)は、図10BにおいてNC1153の種々の投薬量にて示される。LEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントは7日間、そしてその後、3×/1週間、90日まで、毎日の経口強制飼養によって送達される160mg/kgのNC1153で処置された。図10Cに示されるように、処置されたレシピエントの75%が、90日間の処置を超えて生存し、生存時間は200日間を越えた。移植寛容の誘導は、LEWドナー(>100日間;n=3)の受容によって確認されたが、長期間生存するレシピエントによる第三者のBUF(7.0±1.0日;n=3)心臓同種移植片によっては確認されなかった。寛容のメカニズムは、LEW心臓同種移植片の照射(400rad)ACIレシピエントが寛容レシピエントから30×106個の精製T細胞を養子的にトランスファーされた際に試験された。寛容T細胞をトランスファーされたレシピエントは、LEW心臓同種移植片の有意に遅延された拒絶を示し(40.0±15.0日;N=6対15±1.0日;照射されたコントロールにおいてn=5)、2つの心臓は100日間を越えて良好に心拍したが、第三者の心臓同種移植片は拒絶された(12±1.0日;n=2)。これらの結果は、移植寛容が、T細胞調節細胞によって少なくとも一部媒介されたことを示す(示されず)。図10Dは、表2において上述で示される結果のまとめを示す。これは、7日間、毎日の経口強制飼養により送達された、NC1153単独で、CsA単独で、および組み合わせの薬物で処置されたLEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントに関する。各投薬量レベルでの各処置群のMSTが示され、そして図の下方では、NC1153−CsAの組合わせが相乗的であることを示す低いCI値が示されている。
【0079】
図11A〜Fに示されるように、649641P(NC1153)は腎臓毒性でなく、脂質代謝に影響を与えない。低塩食餌を与えられたラット(治療前の7日間および治療の間の14日間)は、160mg/kgのNC1153を単独で、または5mg/kg CsAと組合わせて経口強制飼養によって処置され;いくつかの動物は0.8mg/kgラパマイシン(RAPA)単独でまたは5mg/kg CsAと組合わせて処置された。腎臓機能は、血清クレアチニンレベルおよび血清クレアチニンクリアランスによって評価され、そして結果は、それぞれ、図11Aおよび11Bに示される。脂質代謝は、血清コレステロール(図11C)、トリグリセリド(図11D)、LDL−コレステロール(図11E)、およびHDL−コレステロール(図11F)を測定することによって評価された。NC1153単独またはCsAとの組合わせの、腎臓構造に対する効果が判断された。7日間低塩食餌にあったラットは、14日間、10mg/kg NC1153のi.v.送達;0.16mg/kg RAPAのi.v.送達;10mg/kg CsAの経口強制飼養による送達;10mg/CsAのp.o.と0.16mg/kgRAPAのi.v.との組合わせ;または10mg/kg RAPAのp.o.と10mg/kg 641Pのi.v.との組合わせ、で処置された。14日目に、ラットは屠殺され、そして組織学が、H&E染色を使用して腎臓に対して行われた。類似の結果が、1群当たり5匹のラットにおいて観察された。図6A〜Eに示されるように、649641P(NC1153)単独もRAPA単独も、腎臓において有意な変化を示さなかった。対照的に、CsA単独は、30%の細管において障害を引き起こし、空胞形成および萎縮を伴った。CsA/RAPA群は、90%の細管において大規模な空胞形成を示し、萎縮および濃縮した核を伴った。CsA/RAPA群とは対照的に、CsA/NC1153の組合わせで処置されたラットからの腎臓は、CsA単独の群において観察された変化に類似した変化を示した。
【0080】
649641P(NC1153)のメソの立体異性体は、(図18Bに示される)WP938と称され、以下の工程を有する手順を使用して合成された。400mLのアセトニトリル中に溶解された0.1mmolのシクロアルカノネオンおよび0.21MのN,N,N´、N´−テトラメチルジアミノメタンに、16.5g(0.21mol)の塩化アセチルが40分間、滴下して添加された。反応が完了した後に粗生成物が沈殿され、濾過され、エーテルで洗浄され、そして乾燥された。その後の結晶化によって、純粋な生成物が得られた。
【0081】
得られたWP938化合物は、単独でまたはCsAと組合わせて投与された際の、同種移植片生存に対するその効果についておよび毒性について試験された。結果は、図12A、Bから図13A〜Fに示される。経口強制飼養により7日間、投薬量20〜160mg/kgにて送達されるWP938単独は、LEW腎臓同種移植片のACIレシピエントの生存を、投薬量依存的に延長したことが見出された(図12A)。p.o.で7日間送達された1.25mg/kg CsAと160mg/kg WP938との組合わせは、0.44のCI値によって示されるように(図12B)、腎臓同種移植片生存に対して相乗的な相互作用を生じた。図13A〜Fに示されるように、160mg/kg WP938の14日間の経口治療は、化学的性質および血液要素計数における変化を生じず、毒性がないことを実証した。血清クレアチニンおよびクレアチニンクリアランスは、WP938による腎臓毒性がないこと、およびCsA誘導性の腎臓毒性に対して効果がないことを示した(図13A、B)。図13Cは、コレステロールレベルを示す。図13Dはトリグリセリドを示す。図13EはHDLレベルを示す。図13FはLDLレベルを示す。
【0082】
図14B〜図39Bは、プロラクチンまたはIL2刺激されたT細胞において増殖を阻害する能力についてスクリーニングされた種々のMannich塩基化合物およびその他の化合物(塩として示される)の化学式を示す。図14A〜図39Aは、示された濃度範囲にわたるこれらのアッセイの結果を示す。スクリーニングアッセイが、実質的に上述の一般的な方法で記載されたように行われた。IL2(白四角)により活性化されるJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度にて、プロラクチン(PRL)(黒四角)によるJak2およびStat5a/b活性をブロックしない明白な特徴を有する化合物が、さらなる評価のために同定された。好ましい649641P(NC1153)化合物およびその選択的な阻害活性は、実施例1および図1A、Bに示される。さらなる候補薬物、すなわちPRLまたはIL2刺激されたT細胞に関する所定の濃度での少なくともある程度の量の選択的な阻害活性を示した図14B〜17Bおよび19B〜39Bに示される化合物は、代表的な化合物649641P(NC1153)を用いる上述の実施例において記載されるのと同様に現在研究中の主題である。適用可能な場合は、これらの化合物は非対称中心を有し、そしてラセミ体、ラセミ混合物として、および本明細書中に開示される目的のための全ての異性体形態が含まれる個々のジアステレオマーまたは鏡像異性体として存在する。例えば、式(I)に関して、C−2およびC−12での立体配置は(R)または(S)である。これらの化合物は、全ての立体異性体を含み、これらは十分に非毒性と判断され、そしてこれらは649641P(NC1153)に対して本明細書中で示されたように同種移植片生存を有意に延長し得、ヒトにおいて、および免疫抑制治療における獣医の使用のための、潜在的な治療的価値も有する。これらはまた、リンパ系または骨髄系起源のJak3を発現する細胞に関連するその他の病理を処置するための治療的価値があると期待される。649641P(NC1153)およびWP938において示されたように、これらの候補薬物化合物のいくつかはまた、Jak3関連経路以外の経路によりその免疫抑制効果を発揮するCsAまたはその他の免疫抑制剤とともに投与されると、相乗的な活性を示すと考えられる。
【0083】
[定義]
その習慣的および通常の意味を有することに加えて、以下の定義が、明細書および請求の範囲において文脈が認める場合に適用する。
【0084】
「選択的阻害」とは、1つのタンパク質の機能を優先的に、または1つ以上の既知のタンパク質をより少ない程度に、ブロックする化合物をいう。
【0085】
「特異的な阻害」とは、所定のタンパク質の機能を、その他のタンパク質を影響することなく専らブロックする化合物をいう。
【0086】
「免疫抑制の潜在性」とは、免疫応答を減少または除去するべき化合物(例えば、移植された臓器同種移植片の拒絶をブロックする薬物)をいう。
【0087】
「薬学的組成物」とは、医薬品としての哺乳動物への投与のための、1つ以上の化学物質、または薬学的に受容可能なその塩と、適切なキャリアとの混合物をいう。
【0088】
「リンパ細胞」とは、免疫起源の細胞、または、より詳細には、リンパ系統の幹細胞に由来する細胞をいい、大リンパ球、称リンパ球、血漿細胞を包含する。リンパ系の細胞の例は、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0089】
「骨髄細胞」とは、骨髄起源の、すなわち、骨髄系統の幹細胞に由来する細胞をいい、単球、マクロファージ、および樹状細胞を包含する。
【0090】
「薬物」とは、医薬の使用に適切な化合物をいう。
【0091】
「同族体」またはコージェナーとは、組成物(例えば、構造類似体)内で他方と密接関連し、て類似のまたは拮抗的な効果を発揮する化合物をいう。
【0092】
「治療的に有効な量」とは、処置される異常の1つ以上の症状を、少なくともある程度軽減する、投与される化合物の量をいう。例えば、疾患の症状を防止、緩和、もしくは寛解する、または処置される被験体の生存を延長するのに有効な化合物の量。
【0093】
疾患または異常に関して、用語「処置」とは、疾患もしくは異常の出現を防止、抑制すること、疾患もしくは異常の症状もしくは副作用を停止、退行、もしくはそれらからの救済を提供すること、ならびに/または処置される被験体の生存を延長することをいう。
【0094】
【0095】
本発明の好ましい実施態様が示され、そして記載されたが、その改変は、本発明の精神および教示から逸脱することなく当業者によってなされ得る。本明細書中に記載される実施態様は例示および典型であり、ならびに制限することは意図されない。本明細書中に開示される本発明の多くの変形および改変が可能であり、そして本発明の範囲内である。上述の記載は、T細胞駆動性の移植片対宿主疾患に対して集中されたが、本明細書中に記載される方法、化合物、および組成物はまた、他のT細胞依存性の疾患または異常における適用を有するようであることが容易に理解される。例えば、これらは狼瘡、関節炎、および多発性硬化症のような自己免疫疾患を処置するために、またはアレルギー、喘息、乾癬、潰瘍性大腸炎、リンパ腫、および白血病を処置するために有用である。選択的なJak3標的化阻害はまた、機能亢進のまたは望ましくない樹状細胞、B細胞、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞由来の状態に由来する機能亢進性免疫系応答状態を含む、多くのその他の免疫由来の病理においての、またはJak3を発現する骨髄系細胞由来の病理においての適用もまた有することが期待される。したがって、保護の範囲は、上述の記載によって制限されず、以下の請求の範囲によってのみ制限され、その範囲は請求の範囲の主題の全ての等価物を含む。本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書中に記載された材料、方法、および例示的な詳細に補充的な、材料、方法、および例示的な詳細をそれらが提供する程度に、本明細書中に参考として援用される。上述の関連分野の記載におけるある参考文献の考察は、それらが本発明に対する先行技術であるとの承認ではない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1Aは、未処置コントロールに対して正規化された、1nMヒトIL−2(■)、IL−4(●)、またはIL−7(▲)の不在下または存在下で培養されたγc/Jak3−依存性PHA活性化ヒトT細胞増殖に対する649641P(NC1153)の投薬量依存性の効果を示すグラフである。図1Bは、Jak2活性化因子(PRL[○])またはJak3活性化因子(IL−2[■])の存在下で培養された際の、Jak2対Jak3依存性のラットT細胞増殖に対する649641P(NC1153)の阻害効果を示すグラフである。
【図2】リン酸化に対する649641P(NC1153)による阻害または阻害なしを示すウェスタンブロットである。図2AはヒトYT細胞におけるIL−2活性化Jak3チロシンリン酸化を示す。図2BはヒトYT細胞におけるIL−2活性化Stat5aチロシンリン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示す。図2CはYT細胞におけるIL−2活性化Stat5bチロシンリン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示す。
【図3】PHA活性化T細胞におけるIL−2活性化p44/42 ERK1/2リン酸化に対する649641P(NC1153)の効果を示すウェスタンブロットである。
【図4】YT細胞における活性化FynおよびLckに対する649641P(NC1153)の効果を示すウェスタンブロットである。
【図5】ACIレシピエントラット心臓同種移植片に対するLweisの生存についての、CsA対649641P(NC1153)の比率の範囲についての組合わせ指標を示すグラフである。
【図6】ラット腎臓構造に対する649461P(NC1153)、RAPA、およびCsAの効果を示す顕微鏡写真(200×の倍率)である。図6Aは649461P(NC1153)である。図6BはRAPAである。図6CはCsAである。図6DはCsAおよびRAPA(シロリムスまたはSRL)の組合わせの効果を示す。図6EはCsAおよび649641P(NC1153)の組合わせの効果を示す。
【図7】649641P(NC1153)がJak3を含むT細胞の増殖を特異的に阻害することを示すグラフである。図7Aは、PHA活性化ヒトT細胞の増殖が、IL−2での刺激後に示されるNCI薬剤によってブロックされたことを示す棒グラフである。図7Bは、50μM NC1153を伴わないで(太線)または伴って(細線)一晩処置され、そしてIL2R−α、−β、および−γ鎖について染色された、PHA活性化T細胞ブラストのFACS分析である。図7Cは、Jak3非発現細胞(黒菱形)における、およびJak3を含むPHA活性化T細胞(白四角)における、NC1153の濃度範囲にわたる細胞増殖阻害のグラフである。図7Dは、Jak3および共通のγ鎖を利用してサイトカインにより刺激されるT細胞における、細胞増殖阻害対NC1153濃度のグラフである。
【図8】インビトロの分析に基づいた、Jak3自己キナーゼ活性が649641P(NC1153)により直接的に阻害されることを示す棒グラフである。免疫精製されたJak3は、Jak3自己キナーゼ活性についてアッセイされ、100□M ATPおよび/または薬物の不在下または存在下で、ホスホチロシンウェスタンブロットによって試験されてコントロールと比較された。649641P(NC1153)は、約2.5□MのIC50を示し、これは図1AおよびBの増殖データに類似する。
【図9】649641P(NC1153)選択性を示す。図9Aは、用量依存性の様式において漸増濃度の649641P(NC1153)で処置されたPHA活性化T細胞において、649641P(NC1153)がJak3駆動性の転写因子−Stat5a/bを阻害することを示す電気泳動移動度アッセイ(EMSA)のオートラジオグラフである(上部パネル)。TNF−□による非Jak3媒介性のNf□B活性化は、同じ処置セット内で影響されなかった(下部パネル)。図9Bは、649641P(NC1153)が、密接関連Jak2/Stat5aシグナル伝達経路を阻害できないことを示すウェスタンブロットオートラジオグラフである。プロラクチン[PRL](+)または(−)は、細胞がJak2活性化を伴うプロラクチンで刺激されたか否かを示す。ホスホチロシンウェスタンブロットは、Jak2−Stat5活性化を検出するが、649641P(NC1153)による阻害は検出しない。図9Cは、649641P(NC1153)がJak3以外の複数のキナーゼの活性に影響を与えないことを示す棒グラフである。649641P(NC1153)は、10(白棒)または50μM(黒棒)にて、基質の増殖因子チロシンキナーゼ(FGFR3およびPDGFR□)、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Fyn、Lck、Yes、Zap70)、またはセリンスレオニンキナーゼ(PKCおよびPKA)リン酸化をブロックすることを試験された。コントロールの活性は、破線としてプロットされている。
【図10】同種移植片生存に対するNC1153のインビボの効果を説明する。図10Aは、毎日の静脈内注射により(左側パネル)または経口強制飼養により(右側パネル)送達される、649641P(NC1153)で7日間処置された、ルイス(LEW)腎臓同種移植片のACIラットレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Bは、毎日の経口強制飼養により送達される、649641P(NC1153)で14日間処置された類似のレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Cは、毎日の経口強制飼養により送達される、160mg/kg NC1153で7日間、そしてその後3×/1週間で90日間まで処置された類似のレシピエントにおける移植片生存を示す。図10Dは、7日間処置されたLEW腎臓同種移植片のACIラットレシピエントにおいて、毎日の経口強制飼養により送達されるNC1153の、CsAとの相乗的効果を示す。649641P(NC1153)単独(黒棒)。CsA単独(白棒)、649641P(NC1153)およびCsA(淡色棒)。
【図11】649641P(NC1153)が腎臓毒性でなく、および脂質代謝を影響しないことを示すアッセイ結果のグラフであり、血清クレアチニンレベル(図11A)、血清クレアチニンクリアランス(図11B)、血清コレステロール(図11C)、トリグリセリド(図11D)、LDL−コレステロール(図11E)、およびHDL−コレステロール(図11F)によって評価される。結果は、mg/dLにおいて表されている。組織学的外見は図6A〜Eに示されるようであった。
【図12】(図18Bに示される)WP938と称される649641P(NC1153)のメソの立体異性体での結果を示す以外は、図10A〜Dに類似し、LEW腎臓同種移植片のACIレシピエントにおける同種移植片生存について試験された。図12Aは、未処置の、CsA単独で処置された、およびWP938単独で処置されたラットの平均生存を示す。図12Bは、同じ投薬量のCsA/WP938の組合わせと比較した、1投薬量のCsA単独、1投薬量のWP938単独の比較を示し;0.44のCI値は、相乗的な相互作用を示す。
【図13】WP938単独についての、またはCsAと組合わせての毒性アッセイの結果を示す。図13Aは血清クレアチニンレベルを示す。図13Bはクレアチニンクリアランスを示す。図13Cはコレステロールレベルを示す。図13Dはトリグリセリドを示す。図13EはHDLレベルを示す。図13FはLDLレベルを示す。
【図14−17】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図18−21】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図22−25】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図26−29】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図30−33】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図34−37】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【図38−39】多くの化合物の化学式、およびインビトロアッセイにおけるJak3依存性またはJak3非依存性のT細胞の増殖を阻害するそれらの活性を示す。(A)IL−2刺激(淡色丸);PRL刺激(黒丸)。(B)それに対応する各化合物の構造式(塩として示される)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、Janusチロシンキナーゼ3活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(I)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
R1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2、CH2SC(O)CH3、CH2SC6H5、CH2SCH2−(4−C6H4OCH3)、CH2SC(O)C6H5、またはCH2N(CH2CH3)2であり;
R2は、Oであり;
R3は、CH2N(CH3)2、CH2N(CH2CH3)2、またはCH2−(N−モルフィル)である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
R1はCH2N(CH3)2であり、R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記化合物はメソの立体異性体である方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
細胞はリンパ系または骨髄系起源である方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
細胞分裂がブロックされるように、前記細胞におけるシグナル3経路を干渉する工程を有する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記Janusチロシンキナーゼ3を選択的に阻害するのに有効な前記濃度において、前記少なくとも1つの化合物は、Janusチロシンキナーゼ3活性以外のタンパク質チロシンキナーゼ活性に実質的に非阻害性である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記細胞はT細胞であり、前記T細胞においてJak2活性を阻害するよりも少なくとも3倍多くJak3活性を阻害する工程を有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
IL2により活性化されるJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度におけるプロラクチン(PRL)によって、Jak2およびStat5a/b活性を阻害する可能性の小さな少なくとも1つの前記化合物を選択する工程を有する方法。
【請求項9】
治療的な免疫抑制剤として有用である物質を同定することを補助するためのインビトロの試験方法であって、
(a)細胞培養培地中に静止状態のJak3依存性Tリンパ球の集団を獲得する工程;
(b)随意に、静止状態のTリンパ球を、前記リンパ球が増殖することを刺激するために、サイトカインで前処理する工程;
(c)工程(a)または(b)からの前記静止状態のまたは刺激されたリンパ球を、請求項1において規定されるように、化合物またはその塩で処置する工程;
(d)工程(c)からのリンパ球を、細胞増殖を促進する条件下で培養する工程;
(e)工程(d)後の細胞増殖の程度を評価する工程;
(f)随意に、Jak2依存性Tリンパ球増殖に対する前記化合物の阻害効果を評価する工程;
(g)随意に、前記化合物の細胞傷害性を評価する工程;
(h)工程(e)からの、ならびに、存在する場合は、工程(f)および(g)からの評価によって、化合物の細胞傷害性に起因しないJak3依存性リンパ球増殖の有意な阻害が、インビボで治療的に使用されるための候補薬物としての、T細胞媒介性の免疫抑制剤としての、および/またはT細胞増殖のインヒビタ−としての潜在性をその化合物が有することを示唆すると判断する工程;および
(i)随意に、工程(e)および(f)からの評価を比較し、ならびに、工程(f) において評価された阻害効果が工程(e)において評価された阻害効果よりも有意に小さい場合は、前記化合物が、Jak2活性を阻害することに比較して、Jak3活性を阻害することに少なくともある程度選択的であることを前記比較から判断する工程、を有する方法。
【請求項10】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の望ましくない機能を抑制する、その必要がある哺乳動物被験体におけるインビボの方法であって、
前記細胞を、請求項1において規定される少なくとも1つの化合物、またはその代謝物もしくは誘導体に、細胞におけるシグナル3経路を干渉するのに有効な量において接触させて、それによって細胞機能を阻害する工程を有し、
前記接触させる工程は、請求項1において規定される少なくとも1つの前記化合物、または薬学的に受容可能なその塩、または前記化合物の代謝物、または被験体の身体において前記化合物に変換可能な前記化合物の前駆体を、薬学的に受容可能なキャリア中に含む、治療的に有効な量の薬学的組成物を前記被験体に投与して、Jak3依存性の細胞機能を阻害する工程を有する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記細胞はT細胞であり、前記薬学的組成物の前記量が前記T細胞における細胞分裂をブロックするのに有効である方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記薬学的組成物が継続的にまたは周期的に被験体に投与される工程を有する方法。
【請求項13】
哺乳動物被験体を治療的に処置して望ましくない免疫応答を抑制する方法であって、
請求項10に記載の方法を行う工程を有し、前記被験体は望ましくない免疫応答を経験しているかまたは経験する危険性があり、前記薬学的組成物の前記治療的に有効な量は、前記望ましくない免疫応答を軽減するかまたは防止する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
Jak3インヒビターの他の免疫抑制剤の治療的に有効な量を前記被験体に投与する工程をさらに有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記他の免疫抑制剤はシクロスポリンAまたはFK506である方法。
【請求項16】
哺乳動物移植片レシピエントにおいて臓器移植片拒絶を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って、移植される臓器に対するT細胞媒介性の免疫応答を抑制する工程を有し、それによって臓器の拒絶が軽減または停止される方法。
【請求項17】
哺乳動物の同種移植片レシピエントにおいて急性の同種移植片拒絶を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記同種移植片に対するT細胞媒介性の抗同種移植片免疫応答を抑制する工程を有し、それによって同種移植片の急性の拒絶が軽減または防止される方法。
【請求項18】
哺乳動物移植片レシピエントにおいて移植寛容を誘導する方法であって、
請求項10に記載の方法を行ってT細胞媒介性の移植片拒絶応答を抑制する工程を有する方法。
【請求項19】
自己免疫疾患を被る哺乳動物被験体において前記疾患の寛解を促進する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体におけるT細胞媒介性の自己免疫応答を抑制する工程を有し、それによって内因性のJak3依存性T細胞によって媒介される被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される方法。
【請求項20】
気道過敏性を被る哺乳動物被験体において前記気道過敏性を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体においてT細胞媒介性の過敏性応答を抑制する工程を有し、それによって前記被験体における気道組織の過敏性が減少または停止される方法。
【請求項21】
アレルギーを被る哺乳動物被験体において前記アレルギーを軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体においてT細胞媒介性のアレルギー応答を抑制する工程を有し、それによって前記被験体におけるアレルギー反応が減少または停止される方法。
【請求項22】
Jak3依存性白血病またはリンパ腫の増殖を阻害する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って白血病またはリンパ腫細胞の増殖を阻害またはブロックする工程を有し、前記被験体は白血病またはリンパ腫を被っており、前記化合物または前記代謝物は他のキナーゼ活性に比較してJak3活性を選択的に阻害し得る方法。
【請求項23】
請求項10に記載の方法であって、
前記化合物の腎臓毒性がシクロスポリンAの腎臓毒性よりも少ない方法。
【請求項24】
請求項10に記載の方法であって、
別の免疫抑制剤を投与する工程をさらに有する方法。
【請求項25】
新規な免疫抑制薬物を同定することを補助するためのインビトロの方法であって、
Jak3を有するT細胞を前記目的の化合物に濃度範囲にわたって接触させて前記化合物が前記範囲内の1つ以上の濃度においてJak3活性を阻害するか否かを判断することによって、T細胞機能を破壊するための活性について目的の化合物を試験する工程;
前記目的の化合物のJak3阻害活性と、既知のJak3阻害活性を有する請求項2において規定される化合物のJak3阻害活性とを比較する工程;ならびに
前記試験および比較の結果を使用して、前記目的の化合物が治療的な免疫抑制剤としてインビボで使用するための候補薬物であるか否かを判断する工程を有する方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
前記目的の化合物をJak2阻害活性について試験する工程;
前記目的の化合物のJak3阻害活性と、もしあればそのJak2阻害活性とを比較する工程;および
前記比較を使用して、前記目的の化合物を選択的なJak3インヒビターとして同定する工程をさらに有する方法。
【請求項27】
候補の免疫抑制薬物を同種移植片生存に対するその効果について試験するインビボの方法であって、
(a)適切なドナー動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;
(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;
(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;
(d)請求項1において規定される化合物を少なくとも1つの動物に投与してポジティブコントロール群として作用させる工程であって、R1およびR3はそれぞれCN(CH3)2であり、ならびにR2はOである工程;
(e)随意に、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;
(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;
(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する候補薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;
(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および候補薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに
(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程を有する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記候補薬物がJak3依存性T細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得ると判断する工程を有する方法。
【請求項29】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、前記Janusチロシンキナーゼ3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(II)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
nは1、2、3、4、または6であり;
R1はH、CH2、またはCH2N(CH3)2であり;
R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項30】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、細胞を、前記Janusチロシンキナーゼ3の活性を選択的に阻害するのに有効な濃度において、下記の式(III)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
nは1または2であり;
R1はHまたはCH2N(CH3)2であり;
R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項31】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、前記Janusチロシンキナーゼの3活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有する方法。
【請求項32】
下記の式を有する単離されたもしくは精製された化合物またはその塩。
【請求項33】
請求項32に記載の化合物または薬学的に受容可能なその塩をキャリア中に有する薬学的組成物。
【請求項1】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、Janusチロシンキナーゼ3活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(I)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
R1は、H、=CH2、CH2N(CH3)2、CH2SC(O)CH3、CH2SC6H5、CH2SCH2−(4−C6H4OCH3)、CH2SC(O)C6H5、またはCH2N(CH2CH3)2であり;
R2は、Oであり;
R3は、CH2N(CH3)2、CH2N(CH2CH3)2、またはCH2−(N−モルフィル)である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
R1はCH2N(CH3)2であり、R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記化合物はメソの立体異性体である方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
細胞はリンパ系または骨髄系起源である方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
細胞分裂がブロックされるように、前記細胞におけるシグナル3経路を干渉する工程を有する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記Janusチロシンキナーゼ3を選択的に阻害するのに有効な前記濃度において、前記少なくとも1つの化合物は、Janusチロシンキナーゼ3活性以外のタンパク質チロシンキナーゼ活性に実質的に非阻害性である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記細胞はT細胞であり、前記T細胞においてJak2活性を阻害するよりも少なくとも3倍多くJak3活性を阻害する工程を有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
IL2により活性化されるJak3およびStat5a/bを阻害するのに十分な濃度におけるプロラクチン(PRL)によって、Jak2およびStat5a/b活性を阻害する可能性の小さな少なくとも1つの前記化合物を選択する工程を有する方法。
【請求項9】
治療的な免疫抑制剤として有用である物質を同定することを補助するためのインビトロの試験方法であって、
(a)細胞培養培地中に静止状態のJak3依存性Tリンパ球の集団を獲得する工程;
(b)随意に、静止状態のTリンパ球を、前記リンパ球が増殖することを刺激するために、サイトカインで前処理する工程;
(c)工程(a)または(b)からの前記静止状態のまたは刺激されたリンパ球を、請求項1において規定されるように、化合物またはその塩で処置する工程;
(d)工程(c)からのリンパ球を、細胞増殖を促進する条件下で培養する工程;
(e)工程(d)後の細胞増殖の程度を評価する工程;
(f)随意に、Jak2依存性Tリンパ球増殖に対する前記化合物の阻害効果を評価する工程;
(g)随意に、前記化合物の細胞傷害性を評価する工程;
(h)工程(e)からの、ならびに、存在する場合は、工程(f)および(g)からの評価によって、化合物の細胞傷害性に起因しないJak3依存性リンパ球増殖の有意な阻害が、インビボで治療的に使用されるための候補薬物としての、T細胞媒介性の免疫抑制剤としての、および/またはT細胞増殖のインヒビタ−としての潜在性をその化合物が有することを示唆すると判断する工程;および
(i)随意に、工程(e)および(f)からの評価を比較し、ならびに、工程(f) において評価された阻害効果が工程(e)において評価された阻害効果よりも有意に小さい場合は、前記化合物が、Jak2活性を阻害することに比較して、Jak3活性を阻害することに少なくともある程度選択的であることを前記比較から判断する工程、を有する方法。
【請求項10】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の望ましくない機能を抑制する、その必要がある哺乳動物被験体におけるインビボの方法であって、
前記細胞を、請求項1において規定される少なくとも1つの化合物、またはその代謝物もしくは誘導体に、細胞におけるシグナル3経路を干渉するのに有効な量において接触させて、それによって細胞機能を阻害する工程を有し、
前記接触させる工程は、請求項1において規定される少なくとも1つの前記化合物、または薬学的に受容可能なその塩、または前記化合物の代謝物、または被験体の身体において前記化合物に変換可能な前記化合物の前駆体を、薬学的に受容可能なキャリア中に含む、治療的に有効な量の薬学的組成物を前記被験体に投与して、Jak3依存性の細胞機能を阻害する工程を有する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記細胞はT細胞であり、前記薬学的組成物の前記量が前記T細胞における細胞分裂をブロックするのに有効である方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記薬学的組成物が継続的にまたは周期的に被験体に投与される工程を有する方法。
【請求項13】
哺乳動物被験体を治療的に処置して望ましくない免疫応答を抑制する方法であって、
請求項10に記載の方法を行う工程を有し、前記被験体は望ましくない免疫応答を経験しているかまたは経験する危険性があり、前記薬学的組成物の前記治療的に有効な量は、前記望ましくない免疫応答を軽減するかまたは防止する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
Jak3インヒビターの他の免疫抑制剤の治療的に有効な量を前記被験体に投与する工程をさらに有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記他の免疫抑制剤はシクロスポリンAまたはFK506である方法。
【請求項16】
哺乳動物移植片レシピエントにおいて臓器移植片拒絶を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って、移植される臓器に対するT細胞媒介性の免疫応答を抑制する工程を有し、それによって臓器の拒絶が軽減または停止される方法。
【請求項17】
哺乳動物の同種移植片レシピエントにおいて急性の同種移植片拒絶を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記同種移植片に対するT細胞媒介性の抗同種移植片免疫応答を抑制する工程を有し、それによって同種移植片の急性の拒絶が軽減または防止される方法。
【請求項18】
哺乳動物移植片レシピエントにおいて移植寛容を誘導する方法であって、
請求項10に記載の方法を行ってT細胞媒介性の移植片拒絶応答を抑制する工程を有する方法。
【請求項19】
自己免疫疾患を被る哺乳動物被験体において前記疾患の寛解を促進する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体におけるT細胞媒介性の自己免疫応答を抑制する工程を有し、それによって内因性のJak3依存性T細胞によって媒介される被験体のネイティブな組織に対する自己免疫攻撃が減少または停止される方法。
【請求項20】
気道過敏性を被る哺乳動物被験体において前記気道過敏性を軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体においてT細胞媒介性の過敏性応答を抑制する工程を有し、それによって前記被験体における気道組織の過敏性が減少または停止される方法。
【請求項21】
アレルギーを被る哺乳動物被験体において前記アレルギーを軽減する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って前記被験体においてT細胞媒介性のアレルギー応答を抑制する工程を有し、それによって前記被験体におけるアレルギー反応が減少または停止される方法。
【請求項22】
Jak3依存性白血病またはリンパ腫の増殖を阻害する方法であって、
請求項10に記載の方法を行って白血病またはリンパ腫細胞の増殖を阻害またはブロックする工程を有し、前記被験体は白血病またはリンパ腫を被っており、前記化合物または前記代謝物は他のキナーゼ活性に比較してJak3活性を選択的に阻害し得る方法。
【請求項23】
請求項10に記載の方法であって、
前記化合物の腎臓毒性がシクロスポリンAの腎臓毒性よりも少ない方法。
【請求項24】
請求項10に記載の方法であって、
別の免疫抑制剤を投与する工程をさらに有する方法。
【請求項25】
新規な免疫抑制薬物を同定することを補助するためのインビトロの方法であって、
Jak3を有するT細胞を前記目的の化合物に濃度範囲にわたって接触させて前記化合物が前記範囲内の1つ以上の濃度においてJak3活性を阻害するか否かを判断することによって、T細胞機能を破壊するための活性について目的の化合物を試験する工程;
前記目的の化合物のJak3阻害活性と、既知のJak3阻害活性を有する請求項2において規定される化合物のJak3阻害活性とを比較する工程;ならびに
前記試験および比較の結果を使用して、前記目的の化合物が治療的な免疫抑制剤としてインビボで使用するための候補薬物であるか否かを判断する工程を有する方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
前記目的の化合物をJak2阻害活性について試験する工程;
前記目的の化合物のJak3阻害活性と、もしあればそのJak2阻害活性とを比較する工程;および
前記比較を使用して、前記目的の化合物を選択的なJak3インヒビターとして同定する工程をさらに有する方法。
【請求項27】
候補の免疫抑制薬物を同種移植片生存に対するその効果について試験するインビボの方法であって、
(a)適切なドナー動物から採取された同種移植片を、適切なレシピエント動物に移植する工程;
(b)動物についての基本栄養素および健康促進条件を維持する工程;
(c)候補薬物を少なくとも1つの動物のそれぞれに投与して、処置されたレシピエントまたは群を提供する工程;
(d)請求項1において規定される化合物を少なくとも1つの動物に投与してポジティブコントロール群として作用させる工程であって、R1およびR3はそれぞれCN(CH3)2であり、ならびにR2はOである工程;
(e)随意に、少なくとも1つのレシピエント動物を未処置のままにして未処置のコントロールレシピエントまたは群として作用させる工程;
(f)各レシピエントにおける各同種移植片の同種移植片生存時間を判断する工程;
(g)各同種移植片の組織学的検査を行い、必要に応じて、各同種移植片に対する候補薬物関連性の構造的損傷を評価する工程;
(h)各同種移植片において、同種移植片生存時間および候補薬物誘導性の組織学的構造変化を比較する工程;ならびに
(i)(h)からの比較を使用することで、未処置のコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、またはポジティブコントロールレシピエントからの同種移植片に比較して、エンハンスされた移植片生存時間および薬物処置された同種移植片に対する薬物誘導性の構造的損傷の欠如が、候補薬物が免疫抑制剤としてインビボで治療的に使用される場合に有効である可能性が高いことを標示していると判断する工程を有する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記候補薬物がJak3依存性T細胞増殖をインビトロで選択的に阻害し得ると判断する工程を有する方法。
【請求項29】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、前記Janusチロシンキナーゼ3の活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式(II)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
nは1、2、3、4、または6であり;
R1はH、CH2、またはCH2N(CH3)2であり;
R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項30】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、細胞を、前記Janusチロシンキナーゼ3の活性を選択的に阻害するのに有効な濃度において、下記の式(III)の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有し、
nは1または2であり;
R1はHまたはCH2N(CH3)2であり;
R3はCH2N(CH3)2である方法。
【請求項31】
Janusチロシンキナーゼ3を発現する細胞の機能および/または増殖を阻害する方法であって、
細胞を、前記Janusチロシンキナーゼの3活性を選択的に阻害するに有効な濃度において、下記の式の少なくとも1つの化合物またはそれらの塩に接触させる工程を有する方法。
【請求項32】
下記の式を有する単離されたもしくは精製された化合物またはその塩。
【請求項33】
請求項32に記載の化合物または薬学的に受容可能なその塩をキャリア中に有する薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−17】
【図18−21】
【図22−25】
【図26−29】
【図30−33】
【図34−37】
【図38−39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−17】
【図18−21】
【図22−25】
【図26−29】
【図30−33】
【図34−37】
【図38−39】
【公表番号】特表2006−514021(P2006−514021A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559442(P2004−559442)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/038993
【国際公開番号】WO2004/052359
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(501449540)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (4)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/038993
【国際公開番号】WO2004/052359
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(501449540)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (4)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
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