説明

LCST−ポリマー

一般式
【化1】


のポリマーにつき開示し、
式中R(同一もしくは互いに異なる)は水素またはメチル基を示し、XおよびX=−O−、−S−もしくは−NH−であると共に、XはRにおける第1原子がC原子でなく、Rが下記するラジカルの1種であれば更に単結合を意味する;
(a)少なくとも2個の構造単位−(−O−C−(エチレンオキシド=EO)および−(−O−C−)−(プロピレンオキシド=PO)もしくは−(−O−C−(ブチレンオキシド=BuO)および−(−O−CH−)−(メチレンオキシド=MeO)を5〜95:95〜5のモル比(ここでn(各構造単位につき同一もしくは互いに異なる)は約1〜1000である)を含有するコポリマーラジカル(Cop);
(b)
【化2】


[式中、Copは(a)に規定したようなコポリマーラジカルを意味し、x=1〜5であると共にy=1〜20である];
(c)
【化3】


[式中、Rはアルキル基を意味し、r=同一もしくは互いに異なる)1〜1000であり、s=1〜500である];
(d)
【化4】


[式中、o=10〜4000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する];
(e)
【化5】


[式中、p=5〜2000である];または
(f)
【化6】


[式中、q=10〜4000である]。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はLCST(低臨界溶液温度)−ポリマーに関するものである。この概念は低温度にて流体媒体に可溶性であるが所定温度(LCST温度)より高ければ流体媒体から沈降するようなポリマーと理解される。LCST−ポリマーは種々異なる化学組成を有する。最も良く知られたLCST−ポリマーはポリアルキレンオキシド−ポリマー、たとえばポリエチレンオキシド−(PEO)−もしくはポリプロピレンオキシド−(PPO)−ポリマーであるが、(PEO)−(PPO)−コポリマー、特にPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマーも存在する。他のLCST−ポリマーはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−エチル−(ヒドロキシエチル)−セルロース−、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)−およびポリ(メチルビニルエーテル)−誘導体である。
【0002】
最初に挙げたポリマーは、たとえば国際公開第01/60926号パンフレットに記載されている。この刊行物は基体表面(粒子表面および非粒状基体表面)をLCST−ポリマーで被覆するための方法に関するものであり、ここではLCST−ポリマーを溶剤にLCST−温度より低い温度にて溶解させ、この溶液を被覆すべき基体表面と混合し、得られた混合物をLCST−ポリマーの基体表面に対する沈着が開始するまでLCST−温度を超えるまで加熱する。沈着したLCST−ポリマーは不働化することができ、これは実質的に基体表面への不可逆的吸着を可能にする官能基が設けられて行われる。官能基は酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、ホスフェート基、メルカプタン基、シロキサン基または疎水性基から選択することができる。更にLCST−ポリマーには粒子へのLCST−ポリマーの沈着後に架橋反応にてLCST−ポリマーの架橋を可能にする官能基も設けることもできる。この種の官能基はカルボン酸基誘導体、クロルホルメート基、アミノ基、イソシアナト基、オキシラン基および/またはラジカル架橋性基から選択することができ、ここで架橋反応は特に溶液のpH値の変化により開始される。
【0003】
ラジカル性架橋は、pH値の変化による架橋と比較して大して好ましくない。たとえば種々の顔料粒子(TiO、Fe、Cu−フタロシアニン青、並びに二酸化珪素表面を有する半導体ウェファー)のPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマーによる被覆のみが示されている。基体表面に沈着されたコポリマーの固定は示されていない。
【0004】
超常磁性粒子を被覆するためのLCST−ポリマーの使用も国際公開第97/45202号パンフレットから公知である。これら粒子は第1ポリマーからの核と、核を被覆すると共に磁性材料を分散させた第2ポリマーからの内層と、磁性層を被覆すると共に少なくとも1種の生物学分子との反応状態にある第3ポリマーからの外層とを含有し、ここで少なくとも第2ポリマーは感熱性であると共に15〜65℃のLCST−温度を有する。好ましくは第2ポリマーは(1)水溶性アクリルアミドモノマー(たとえばN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM))、(2)少なくとも1種の架橋剤(たとえばN,N−メチレン−ビスアクリルアミド)および(3)モノマー(1)とは異なる少なくとも1種の官能性カチオン型かつ水溶性のモノマー(たとえば2−アミノエチル−メタアクリレートの塩化物)の重合により得られる。更に好適なポリマーは[ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)](PNIPAM)である。
【0005】
「日本国特許要約Vol. 009、No.188(C295)(1985)、第107頁=JP特開昭60−058237号公報には、無機粒子の包封が記載されている。その目的は安定な粒子分散物の作成である。無機粒子は水に懸濁されて、LCST温度より低い温度でLCST−ポリマーの水溶液と接触される。得られる系の温度を上昇させた後、無機粒子上にLCST−ポリマーの層を沈着させる。得られた粒子懸濁物にラジカル重合により重合しうるモノマー、開始剤および場合により乳化剤を添加し、乳化重合を行って包封された粒子を得る。更に外層としては重合したモノマー層も生じ、LCST−ポリマー層の機能はモノマーラジカルの浸入を容易化させることにある。
【0006】
重合性モノマーは、既に粒子上に存在するLCST−ポリマーと反応し、或いは水溶性ポリマーは重合性モノマーから得られたポリマーの層で覆われる。この方法は、予め沈着したLCST−ポリマーの活性中心に対してのみグラフト付着が生ずることにより、被覆が不均等かつ不均一となって完全なバリヤを構成しないと言う欠点を有する。
【0007】
更に、被覆された粒子の分散物にはモノマーを添加して架橋を開始させねばならない。大抵の場合、モノマーは決して完全には消費されず、従ってモノマーの或る程度の部分が架橋した構造に残留する。ポリマーからの「溶解した」モノマーのその後の放出は、このモノマーが健康上有害であるため望ましくない。
【0008】
更に顔料が溶剤と接触する場合、共重合した乳化剤の脱着によるラッカー系における欠点も予想される。
【0009】
国際公開第92/20441号パンフレットには包封粒子の製造方法が記載されており、ここで粒子はコアゼルベート被覆により包囲されるコアを含有する。この方法においては、LCST−ポリマーの水溶液をT1の可逆性不溶化(TRI)の温度にてT1よりも低いT2の温度における粒子の分散物と接触させ、次いでこの分散物をT1より高い温度まだ加熱し、これによりLCST−ポリマーを粒子の周囲にコアゼルベートとして沈着させる。次いでTRIを低下させる薬剤を溶液に添加し、溶液におけるLCST−ポリマーのTRIをT1より低い温度T3まで低下させ、次いで分散物をT3〜T1の温度まで冷却しその温度に維持し、或いは粒子をT3より高い温度にて分散物から分離する。TRIを低下させる薬剤として電解質およびLCST−ポリマーが可溶性でない水混和性有機液を使用することができる。
【0010】
LCST−ポリマーとしては好ましくは合成ポリマー(ホモポリマーもしくはコポリマー)を親水性モノマーと共に使用する。適するLCST−モノマーはアクリル−もしくはビニル−化合物である。LCST−コポリマーを使用する場合、一般にコモノマーは親水性であると共に、非イオン性もしくはイオン性とすることができる。適する非イオン性モノマーは或る種のアクリル−もしくはビニル−化合物である。たとえばアニオン性もしくはカチオン性モノマーはアクリル酸誘導体またはジアルキルアミノアルキルアクリレートである。これら化合物はしかしながら既に末端飽和されており、架橋反応はもはや可能でない。
【0011】
LCST−ポリマーは、たとえば欧州特許出願公開第0629649号明細書からも公知である。これらはレオ流動化添加剤および抗沈降剤としてダイヤフラム壁部構造に、油工業における穴部として、および水圧流体および潤滑剤として使用される。
【0012】
欧州特許出願公開第0718327号明細書からは、メチルメタクリレートおよびアクリレートもしくはメタクリレートから構成された普遍的な適合性顔料分散剤が公知である。これらポリマーはしかしながら顔料の分散のみに役立ち、顔料の被覆には役立たない。
【0013】
本発明は、冷却に際しもはや基体表面から脱着せず、そこに堅固に結合し続けるようなLCST−ポリマーを作成することを課題とする。従ってポリマーは乳化剤もしくはモノマーの添加なしに使用され、従って規定されたポリマー層からは全く添加物質が溶出しえない。
【0014】
この課題は、本発明によれば一般式:
【化1】

のLCST−ポリマーにより解決され、
[式中R(同一もしくは互いに異なる)は水素またはメチル基を示し、XおよびX=−O−、−S−もしくは−NH−であると共に、XはRにおける第1原子がC原子でなく(Rが下記するラジカルの1種であれば更に単結合を意味する];
(a)少なくとも2個の構造単位−(−O−C−(エチレンオキシド=EO)および−(−O−C−)−(プロピレンオキシド=PO)もしくは−(−O−C−(ブチレンオキシド=BuO)および−(−O−CH−)−(メチレンオキシド=MeO)を5〜95:95〜5のモル比(ここでn(各構造単位につき同一もしくは互いに異なる)は約1〜1000である)を含有するコポリマーラジカル(Cop);
(b)
【化2】

[式中、Copは(a)に規定したようなコポリマーラジカルを意味し、x=1〜5であると共にy=1〜20である];
(c)
【化3】

[式中、Rはアルキル基を意味し、r=同一もしくは互いに異なる)1〜1000であり、s=1〜500である];
(d)
【化4】

[式中、o=10〜4000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する];
(e)
【化5】

[式中、p=5〜2000である];または
(f)
【化6】

[式中、q=10〜4000である]。
【0015】
驚くことに今回、本発明によるポリマーはアクリル−もしくはメタクリル−側鎖への重合の後に不可逆的に基体表面に対し固定化されることが突き止められた。この固定化は、たとえば末端基が簡単なビニル基または二重結合を有する他の基で構成されるLCST−ポリマーよりもずっと大である。
【0016】
たとえばビニル酢酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、ポリエチレングリコールモノビニルエーテルのような他の重合性単位は末端基として大して適していない。
【0017】
本発明によるポリマーは一般に0〜70℃の範囲のLCSTを有し、これは特に次の因子:
−LCST−ポリマーの疎水性フラクションと親水性フラクションとのモル比、
−LCST−ポリマーのモル量、
−重合性かつイオン化性基の個数
−ポリマーの濃度、
−媒体のpH値およびイオン強度
に依存する。
【0018】
LCST−ポリマーは極性および非極性または親水性および疎水性のセグメントで構成される。LCSTはこれら個々のセグメント並びに全鎖長の変動によって合理的に調節することができる。
【0019】
本発明によるLCST−ポリマーは、アクリル−もしくはメタクリル−末端基への重合の後に、基体表面に固定された分散剤として使用することができる。このようにして、特に顔料分散物のコスト上重要な工程が安価となる。何故なら、顔料はそれと共に分散剤を保持するからである。更に、このように被覆された顔料は未処理顔料よりも小さい程度まで凝集体を形成して分散をより実施容易にし、その結果さらにコスト減少をももたらす。
【0020】
分散剤は粉末物質(たとえば顔料もしくは充填剤)の液体分散媒体への分散を容易化させる表面活性物質であり、これは2つの成分の間の表面張力を低下させる。顔料磨砕に際し、これらは一次粒子に凝集体の形態で存在する二次粒子の機械的崩壊を容易化させる。更に、これらは保護コロイドセルまたは電子化学的二重層の完全な濡れおよび形成により、再凝集もしくは凝集に対し形成一次粒子を保護する。
【0021】
本発明のLCST−ポリマーは可視光にて透明もしくは半透明であるため、これらは粒子自身の色に影響を及ぼすことなく粒子の周囲に完全なエンベロプを形成することができる。更に塗料におけるこのように被覆された顔料は充分な色強度を示す。何故なら、LCST−ポリマーの被覆に基づきこれらは凝集体を形成しないからである。
【0022】
好適LCST−ポリマーはグループ(a)および(c)に分けられる。好ましくは(a)および(c)におけるラジカル−(C)−はイソプロピルラジカルであると共に(a)におけるラジカル−(C)−はイソブチルラジカルである。
【0023】
グループ(a)における好適LCST−ポリマーはブロックコポリマーであって、一方では構造単位−(EO)−および−(PO)−並びに他方では構造単位−(BuO)−および−(MeO)−はn=3〜100を有するブロックに存在する。
【0024】
プロックコポリマーは、末端を介し互いに結合されたホモ配列のブロックで構成される。グラフトポリマーは、他のホモポリマーのポリマー鎖が由来するいわゆるホモポリマー骨格で構成される。
【0025】
構造単位−(−PO−)−もしくは−(−Bu−)−を有するブロックは、好ましくは構造単位−(−EO−)−もしくは−(−MeO−)−を有するブロックの間に配置される。
【0026】
これらブロックコポリマーは単純化するためPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマーと称される。ブロック配列PEO−PPO−PEO−を有する三元プロックコポリマーは一般に、約5〜85重量%のPEO重量割合および200〜50,000g/モルの数平均分子量を有する。
【0027】
しかしながら、種々異なる構造単位が統計的分布で存在することもできる。
【0028】
好ましくは、−(EO)−構造単位と−(PO)−構造単位との間のモル比は約10〜60:40〜90である。
【0029】
変種(a)〜(f)の本発明によるLCST−ポリマーは、一般式HO−[R]−OH(ここでRは前記の意味を有する)の化合物を式
【0030】
(a)
【化7】

[式中、Rは前記の意味を有すると共にXはOH、ハロゲン(好ましくはクロル)または低級アルコキシ基を意味する]
の化合物と1:2のモル比にて反応させ、或いは(b)対応する酸の無水物と1:1のモル比で反応させることにより作成することができる。
【0031】
生成物変種(a)〜(c)のLCST−ポリマーに関する出発ポリマーは部分的に市販入手することができる。しかしながら、これらは次のように作成することもできる:
【0032】
変種(a):
これらコポリマーは、既に巨大分子で存在する化合物に対し他の種類のポリマーを使用しながら重合により進行させて作成することができる。重合は水または有機溶剤における溶液として、乳液として或いは懸濁液として、或いは溶融物における固体もしくは粉末形態の各成分の直接的反応により触媒を用いて或いは用いずに、好ましくは1段階法にて行うことができる。
【0033】
変種(b):
これらコポリマーは星状であると共に中心結合単位としてグリコルリル基を含有する。これらは次のように作成することができる:
【0034】
グリコルリル単位(パウダーリンク1774)はPEO−メチルエーテルおよびPPO−ブチルエーテルと反応して、1個もしくはそれ以上のPEO−単位を1個もしくはそれ以上のPPO−単位と結合させる。この種の化合物および基体表面(たとえば顔料)を被覆するためのその使用は、たとえば次の刊行物に記載されている:ドイツ国特許出願公開第10038147号明細書、ドイツ国特許出願公開第10064240.3号明細書およびドイツ国特許出願公開第10163985.6号明細書。
【0035】
変種(c):
これらコポリマーはトシレートを用いて作成される。その結果、OH−末端ポリエーテル(PEO/PPO)をアミンと結合させることができる。この場合、これらポリエーテルを塩化トシル(p−トルエンスルホン酸クロライド)と反応させてポリエーテルトシレートを得る。トシル基は極めて良好な離脱基であるため、ポリエーテルトシレートを一ジアミンと反応させることができる。かくして、脂肪族もしくは芳香族ジアミンを介し、たとえばPEO単位をPPO単位と結合させることができる。他の可能性はPPOジアミンとPEOトシレートとの反応である。このようにして三元ブロックコポリマーが得られる。規定されない生成物をもたらすような事前反応を回避するため、ポリエーテルは1個のみのOH基を含有せねばならない。
【0036】
変種(d)〜(f)については対応のモノマーが使用される。
【0037】
本発明によるLCST−ポリマーは、粒子および非粒状基体表面の被覆に使用することができる。本発明により適する粒子には顔料、充填材料およびナノ粒子がある。顔料は粉末状もしくは小板状の色素であって着色料とは異なり包囲媒体に不溶性である(DIN 55943:1993〜11、DIN:EN971−1:1996−09)。顔料は着色に影響を及ぼし或いは決定すると共に、コスト上の理由からできるだけ少量にて使用される。相互作用の力に基づき、特にマトリックス材料に混入する際に、顔料粒子が凝集しうる。その結果、たとえば得られる顔料に品質劣化をもたらし、特に不充分な色強度、沈降または層分離により品質劣化をもたらす。
【0038】
好適顔料は二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、Cu−フタロシアニン顔料、小板状顔料(たとえば雲母、場合により酸化性および金属性被覆を有する)、またはアルミニウムである。充填材料としては、たとえば硫酸バリウムおよびタルクを使用することができる。ナノ粒子としては酸化鉄−二酸化チタン−および二酸化珪素−粒子を使用することができる。これら粒子にはミクロ繊維(たとえばガラス繊維、炭素繊維、織物およびポリマー繊維)も挙げられる。
【0039】
基体表面は非粒状表面、たとえばガラス、金属および半導体からの表面とすることもできる。特に好適な表面は二酸化珪素−ウェファーであって、半導体技術に使用されるものである。
【0040】
本発明によるLCST−ポリマーは好ましくは液体媒体(たとえば水性媒体もしくは有機媒体)中でLCST−温度未満にて粒子または非粒状基体表面と接触させ、その後に温度をLCST−温度を越えるまで上昇させ、ポリマーをこの温度またはそれより高い温度にて二重結合を介し粒子の表面上に或いは非粒状基体表面上で重合させる。
【0041】
生成物変種(a)の合成は、末端OH基を有する市販入手しうるPEO−PPO−PEO−ブロックポリマーをアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体と反応させ、これにより重合性二重結合を導入することにより行われる。本発明は次の誘導体により行うことができ:クロライド、エステル、無水物、アミドまたは遊離酸、酸性もしくはアルカリ性にて触媒される。これらエステル交換またはエステル化は溶剤中で約0〜100℃にて行いうるが、バルク(溶剤なし)でも行うことができる。望ましくない重合を阻止するには、反応混合物に少量の重合阻止剤を添加する。
【0042】
生成物変種(b)の合成は、ポリエーテル改変グリコルリルをアクリロイルもしくはメタクリル酸クロライドと反応させ、これにより重合性二重結合を導入することにより行われる。この反応は溶剤中で約0〜30℃にて行いうるが、バルク(溶剤なし)でも行うこともできる。二重結合を導入する可能性は、少なくとも2個のPEO/PPOセグメントを含有するであろう生成物混合物をエチレングリコールと反応させることである。第の1OH基とグリコグリル単位との反応の後、エチレングリコールの第2遊離OH基をポリマー鎖により立体的に遮蔽して、第2グリコグリル単位と反応させてはならない。残留する遊離OH基を次いでたとえばアクリル酸クロライドのような立体性の少ない化合物と反応させることができる。
【0043】
生成物変種(c)の合成は、トシレート法で得られた三元プロックコポリマーをNH基にてアクリル−もしくはメタクリルクロライドと反応させて重合性アクリル−もしくはメタクリル二重結合を有するポリマーを得ることにより行われる。
【0044】
この合成過程を介し、PPO−ジアミン(2000g/モル)をPEO(750g/モル)と結合させることができると共にアクリル酸クロライドに二重結合を導入することができる。PEO−トシレートとPPO−ジアミンとの反応に際し温度は約150℃である。正確な合成過程は実施例5に示されている。
【0045】
生成物変種(d)〜(f)の合成は溶液における対応モノマーのアニオン性重合により行われる。その際、ナトリウム−ナフタリン溶液が開始剤として役立つ。
この開始剤系の使用により、モノマーの1部に対する電子移動はいわゆるラジカルアニオンを形成する。形成されたラジカルアニオンは極めて急速に結合してジアニオンを形成し、従って鎖成長は2つの側部方向に生ずる。
【0046】
この重合法の利点は、極めて狭いポリマーの分子量分布が得られる点である。これは各反応体の選択および組成により影響を受けると共に予測することができる。
【0047】
重合の終了は電気親和性物質で行われる。反応溶液とアクリル酸クロライドもしくはメタクリル酸クロライドの反応は、重合を終了させるだけでなく同時にアクリルもしくはメタクリル末端基を導入する。
【0048】
本発明の課題は更に、重合したLCST−ポリマーで被覆された粒子または非粒状基質表面である。
【0049】
以下、限定はしないが本発明を実施例により説明する。
【0050】
実施例1
(変種(a))
固定化するための市販LCST−ポリマーの改変
基本的に、OH−もしくはNH−基を有するLCST−ポリマーをアクリル酸クロライドと反応させることは可能である。それから得られる改変LCST−ポリマーは、それらを介しラジカル重合させうる二重結合を有する。
【0051】
この実施例はHOPEOPPOPEOOH−コポリマーの改変を説明する。
【0052】
20gのPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマー(4400g/モル、2個のOH末端基;ハンデルスプロダクト・シンペロニック(登録商標)L121)を二首丸底フラスコに秤量して入れ、撹拌器を用いて3mlのトリエチルアミン(1.2倍過剰)と混合する。この混合物を約10℃に温度調整する(水浴)。滴下漏斗の使用下で2ml(1.2倍過剰)のアクリル酸クロライドをゆっくり強力攪拌および冷却下に滴下し、その際温度を25〜30℃を越えないよう注意せねばならない。生じた蒸気(HCl、若干のアクリルアミド)を空気除去システムに案内する。アクリル酸クロライドの添加後、熱−および蒸気−発生が終了するまで(約30分間)冷却下に攪拌し続ける。アクリルアミドを完全に反応させるため更に2時間にわたり撹拌下で30℃にて加熱し、次いで室温まで冷却し、水により室温にて3回フラッシュさせると共に遠心分離する。
【0053】
8℃のLCST−温度を有する得られた生成物は一般的に湿潤状態で使用することができ、すなわち通常の場合は更なる後処理を必要としない。ポリマーの含有量を固形物含有量として測定し、LCST−ポリマーは固形物含有量に対し5〜10重量%の相対濃度を用いて使用される。
【0054】
ポリマーの乾燥を最高35〜40℃で油ポンプ減圧にて行なって、架橋を回避することができる。充分に乾燥させるため、ポリマーをエタノールによりもう1度溶解させると共にその後にエタノールを除去するよう行われる。PEONHPPONHPEOの反応につき記載したように後処理を行うこともできる。その際ポリマーをクロロホルムに溶解させる。この溶液をそれぞれ小希釈HCl−、希釈NaOH−および飽和NaCl−溶液と共に振とうする。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させると共に、クロロホルムを回転エバボレータ(水浴<25℃)にて除去する。
【0055】
実施例2
(変種(a))
実施例1のブロックコポリマーの反応を従来技術に従いエステル交換によって行うこともできる。これには1モルのポリマーを4モルまで、好ましくは2.4モルのメタクリレートもしくはメチルアクリレートと混合する。エステルの添加は部分的に或いは連続的に反応の際に行うことができる。更に0.1〜5重量%のエステル交換触媒(硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルカリ(土類)(水)酸化物もしくは金属アルコラート)との混合物も使用される。エステル交換は80〜120℃のスンプ温度にて行われる。望ましくない重合を回避するため、少量の市販重合阻止剤(たとえばハイドロキノンモノアルキルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、N−ニトロソアミン、フェノチアジンもしくは燐酸エステル)の存在下に反応を合理的に行うことができる。これら化合物はアクリル酸エステルの重量に対し0.01〜2.0%の量にて使用される。得られる生成物は8℃のLCSTを有する。
【0056】
実施例3
(変種(a))
実施例2の手順を反復したが、ただし1モルのブロックコポリマーを2.4モルのアクリル酸と反応させる。エステル化を溶剤の存在下に行って、水をn−ヘキサン、n−ヘプタンおよびシクロヘキサン、または芳香族物質、たとえばベンゼン、トルエンおよびキシレン−異性体、並びにいわゆる70℃〜140℃の沸点範囲を有する特殊ベンゼンと同様に共沸除去することができる。得られる生成物は8℃のLCSTを有する。
【0057】
実施例4
(変種(b))
グリコルリル−LCST−ポリマーは、溶液においても固体としても合成することができる。同者の場合、同じ生成物が得られる。
【0058】
溶液における合成:
反応容器に約2000g/モルの分子量を有する105gのPEO/PPO−ブロックコポリマー(製造業者シグマ−アルドリッチ・ヘミーGmbH、ダイセンホッフェン)と;3gのグリコルリル・パウダーリンク(登録商標)1174(製造業者フィルマ・サイテク・インダストリース社B.V.、ネウス)と;400mlのトルエンとを入れ、窒素下で135℃まで加温すると共に微量の水分を共沸蒸留により除去する。1時間の後、反応を0.2gのp−トルエンスルホン酸の添加により530ミリバールの減圧下および新鮮トルエンの連続滴加の下で開始させる。約5時間の後、1.45gのエチレングリコールを添加する。反応混合物を不変の条件下で更に5時間にわたり反応させる。
【0059】
冷却の後、2.8gのトリエチルアミンを添加すると共に、2.5gのアクリル酸クロライドを冷却下で25〜30℃にて滴加する。反応溶液をシャーレに注ぎ入れ、減圧乾燥棚にて最高50℃で一定質量まで乾燥させる。得られる生成物は8℃のLCSTを有する。
【0060】
比較例
実施例4(グリコルリル変種)の手順を反復したが、ただし最後の反応工程(すなわち重合性二重結合のポリマーへの導入)をアクリル酸クロライドを用いずに4−ペンテン酸クロライド(製造業者シグマ−アルドリッチ・ヘミー社、ダイセンホッフェン)を用いて行った。その際、反応のため溶液にて3.26gおよび固体にて反応のため3.26gの4−ペンテン酸クロライドを使用した。他の反応体割合は変化させなかった。得られた生成物は0〜2℃のLCSTを有する。
【0061】
実施例5
(変種(c))
(a)PEO−トシレートの合成
25g(33.3ミリモル)のPEO−モノメチルエーテル(750g/モル)と3.54g(35ミリモル)のトリエチルアミンとをクロロホルムに溶解させると共に約0〜5℃まで冷却する。6.67g(35ミリモル)のトシルクロライド(クロロホルム中に溶解)を滴下し、溶液を約15時間にわたり室温にて攪拌する。この溶液をそれぞれ小希釈のHCl−および飽和NaCl−溶液と共に振とうする。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホルムを回転エバボレータで除去する。
【0062】
(b)PEO−トシレート(a)とPPO−ジアミンとのPEONHPPONHPEO−コポリマーへの反応
丸底フラスコにPEO−トシレート(4.5g/5ミリモル)とPPO−ジアミン(2000g/モル;5g/2.5ミリモル)と2mlのトリエチルアミン(過剰量、沸点89℃)とを秤量して入れる。還流下に強力攪拌しながら3時間にわたり150℃まで加熱する。生成物をクロロホルムに溶解させると共にそれぞれ少量の水、希釈HCl−、希釈NaOH−および飽和NaCl−溶液と共に振とうする。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させると共に、クロロホルム(並びに残余のトリエチルアミン)を回転エバボレータで除去する。
【0063】
(c)PEONHPPONHPEO−コポリマー(b)とアクリル酸クロライドとの反応
3g(0.86ミリモル)のPEONHPPONHPEO−コポリマーと0.15g(1.71ミリモル)のアクリル酸クロライドとをクロロホルムに溶解させると共に約10〜15℃まで冷却する。0.17g(1.71ミリモル)のトリエチルアミンを滴下し、溶液を約15時間にわたり室温にて攪拌する。この溶液をそれぞれ小希釈のHCl−、希釈NaOH−および飽和NaCl−溶液と共に振とうする。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホルムを回転エバポレータ(水浴、25℃)にて除去する。
【0064】
合成した生成物をH−NMR−分光光度測定法およびGPCにより分析検査し、その際CH=CH−基のプロトンが5.5〜6.5ppmの範囲で明らかに検知された。GPC−溶出ダイヤグラムは、反応体と比較して生成物のより高い分子量を示した。しかしながら生成物はより低い分子量を持った反応体フラクションをまだ含有した。0.5%水溶液のLCST−温度は1〜2℃であった。より高いポリマー濃度にて0℃で僅かな濁りが検知された。
【0065】
実施例6
(変種(d))
N,N−ジエチルアクリルアミド−LCST−ポリマーの合成
(a)開始剤溶液の作成
還流冷却器と乾燥チューブと窒素導入管とが装着された2リットルの3つ首フラスコにて1000mlの数回にわたりナトリウムで蒸留されたテトラヒドロフランと40gのナフタリンと6gのナトリウム切り屑とを20℃で絶対乾燥窒素雰囲気下に攪拌する。ナトリウムは2時間で深緑色の付加化合物を形成しながら溶液となる。作成された溶液はここでナトリウムに対し0.25モルであった。
【0066】
(b)重合の実施
空気および水分を慎重に排除しながら、その後の操作を行われねばならない。
【0067】
1リットル3つ首フラスコに純窒素雰囲気下に300mlのナトリウム上で蒸留された新鮮なテトラヒドロフランを入れた。次いで(a)からの20mlのナフタリンナトリウム溶液をフラスコに戴置された滴下漏斗まで移送し、フラスコ内の最終的不純物を数滴の溶液を用いて除去する。緑色が維持されたら直ちに、500mlのこの0.25M溶液を流入させる。次いで、激しく攪拌しながら30分間かけて1000mlのテトラヒドロフランにおける317gのN,N−ジエチルアクリルアミド(2.5モル)の溶液を滴下する。溶液は即座に着色する。外部冷却により温度を15〜20℃に保持し、滴下されたN,N−ジエチルアクリルアミドは実質的に数秒以内で重合する。N,N−ジエチルアクリルアミドの添加終了後、過剰量の12gのアクリル酸クロライドを添加することにより重合を停止させる。後処理のため、反応混合物を溶剤のストリップ除去前に12mlのメタノールと反応させる。得られた生成物は約4700g/モルの平均モル量と約39℃のLCSTとを有する。
【0068】
実施例7
(変種(e))
N−ビニルカプロラクタム−LCST−ポリマーの合成
N,N−ジエチルアクリルアミドの場合と同様に、348g(2.5モル)のN−ビニルカプロラクタムの重合を行った。得られた生成物は約5700g/モルの平均分子量と約32℃のLCSTとを有する。
【0069】
実施例8
(変種(f))
メチルビニルエーテル−LCST−ポリマーの合成
N,N−ジエチルアクリルアミドの場合と同様に、145g(2.5モル)のメチルビニルエーテルの重合を行った。得られた粘性生成物は約2500gモルの平均分子量と約28〜30℃のLCSTとを有する。
【0070】
使用例1〜6
蛍光顔料(イリオジン・アフレア(登録商標)504;製造業者メルクKGaA社、ダルムシュタット)を生成物変種(a)〜(f)に従うLCST−ポリマーで被覆する。粒子のポリマー被覆の効果を迅速に検査するため、小板状蛍光顔料の使用を選択した。未改変型は比較的迅速に水中に沈降するので、本発明によるLCST−ポリマーでの処理により改善された安定性を短時間で判定することができる。更に、変化した色効果も容易に測定することができる。
【0071】
使用例1
イリオジン・アフレア(登録商標)504号を実施例1のLCST−ポリマー(変種(a))で処理するため、0.5%ポリマー溶液を使用する。顔料(10重量%)を800U/minにて15分間にわたり水に分散させる。この分散物を次いで0.5℃の温度まで冷却する。ポリマー溶液を添加した後、顔料を11℃にて30分間にわたりポリマーで被覆し、沈降したポリマーを次いで3時間にわたり架橋させる。開始剤系としてポリマー1g当たり0.8gのナトリウムピロサルファイトと0.4gの硫酸鉄(II)と0.8gのカリウムペルオキソジサルフェートとを使用した。顔料に対するポリマー濃度は5重量%とした。
【0072】
使用例2
同様にして、イリジオン・アフレア(登録商標)の実施例4のLCST−ポリマー(変種(b))による処理を行い、その際顔料分散物の温度を顔料の被覆のため0.5℃から11℃まで上昇させる。ポリマー層の架橋は、使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0073】
使用例3
同様にして、実施例5のLCST−ポリマー(変種(c))によるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、その際顔料分散物の温度を顔料の被覆のため0.5℃から11℃まで上昇させる。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0074】
使用例4
同様にして、実施例6のLCST−ポリマー(変種(d))によるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を顔料の被覆のため10℃から50℃まで上昇させる。ポリマー層の使用を使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0075】
使用例5
同様にして、実施例7のLCST−ポリマー(変種(e))によるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を顔料の被覆のため10℃から40℃まで上昇させる。ポリマー層の架橋を使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0076】
使用例6
同様にして、実施例8のLCST−ポリマー(変種(f))によるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を顔料の被覆のため10℃から48℃まで上昇させる。ポリマー層の架橋を使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0077】
使用例7(比較)
同様にして、比較例によるLCST−ポリマーでのイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を顔料の被覆のため約0℃から5℃まで上昇させる。ポリマー層の架橋を使用例1の重合開始剤の使用下で3時間にわたり行う。
【0078】
LCST−ポリマーによる顔料処理の安定化作用を沈降特性により判定し、その際水における0.5重量%の顔料分散物の沈降特性を追跡した。これら検討の結果を図1および2に示す。図1および2は、未処理顔料も比較ポリマー処理された顔料も60分間後に強力に沈降した一方、本発明によるLCST−ポリマーで処理された顔料は極く僅かしか沈降しなかったことを示す。
【0079】
処理された顔料を2成分ヒドロアクリルメラニン塗料に、固形物顔料に対し10重量%の濃度にて分散(周速4m/s、15℃、10min)させることにより混入し、その色特性に関しフィルマX−ライト社の色測定器MA68マルチ−アングル分光光度計により検討した。これら検討の結果を表Iに要約する。
【0080】
【表1】

【0081】
表Iに示した数には、参考として未処理顔料に基づくものを示す。分散状態および小板状有効顔料の配向は明らかに低視野角度にて明確な役割を演ずる。LCST処理は有効顔料の色特性(明るさ、色調)につきプラスの結果を示すことが明らかである。これは良好な分散状態および一層扁平な顔料粒子の配向に起因しうる。
【0082】
表Iにおける本発明の実施例にてΔL、ΔaおよびΔbにつき報告した数値は顔料粒子の配向に起因する。これに対し比較例からのポリマーで処理された顔料はより低い配向値を示し、これらは未処理顔料に関する数値に匹敵する。
【0083】
使用例8
寸法1x1cmの二酸化珪素表面を有する半導体ウェファーを3mlの蒸留水に浸漬する。これを2℃まで冷却すると共に、0.2mlの10重量%濃度の実施例1によるLCST−ポリマー溶液を添加する。2℃にて2時間の後、この系を1時間以内に23℃まで加温する。その後、2℃まで僅か10分間かけて再び2℃まで冷却し、1時間以内に23℃まで加温する。この冷却および加温のサイクルを全部で3回行う。最終的サイクルの後、ウェファーを23℃にて液体被覆媒体中に24時間残留させ、その後に蒸留水で洗浄する。ポリマー層を次いで熱誘導下に架橋させ、この目的でウェファーを乾燥オーブン内にて70〜100℃の温度で5時間調温する。ポリマー層を架橋させる他の可能性は、被覆ウェファーを強力な可視光で5時間にわたり照射することである。
【0084】
同様にしてシリコンウェファーを実施例4および5のLCST−ポリマーで処理し、被覆プロセスにおけるポリマー溶液の温度範囲を2℃から23℃まで拡大する。架橋過程は実施例1のポリマーと同様に行なう。
【0085】
同様にしてシリコンウェファーを実施例6〜8のLCST−ポリマーで処理し、被覆プロセスにおけるポリマー溶液の温度範囲を10℃から50℃まで、10℃から40℃まで、および10℃から48℃までそれぞれ拡大する。架橋過程は実施例1のポリマーの場合と同様に行なう。
【0086】
LCST−ポリマーで上記したように被覆した半導体ウェファーはかくして、被覆なしのウェファーよりもずっと強力な疎水性の表面を有する。これは、表面に施された水滴により実験的に示すことができる。被覆され従って一層疎水性である表面は未改変表面よりも水による濡れが大して効果的でない。水滴が被覆ウェファーから流れ落ち、未改変表面においては水滴が拡開する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

[式中、R(同一もしくは互いに異なる)は水素またはメチル基を示し、XおよびX=−O−、−S−もしくは−NH−であると共に、XはRにおける第1原子がC原子でなく、Rが下記するラジカルの1種であれば更に単結合を意味する];
(a)少なくとも2個の構造単位−(−O−C−(エチレンオキシド=EO)および−(−O−C−)−(プロピレンオキシド=PO)もしくは−(−O−C−(ブチレンオキシド=BuO)および−(−O−CH−)−(メチレンオキシド=MeO)を5〜95:95〜5のモル比(ここでn(各構造単位につき同一もしくは互いに異なる)は約1〜1000である)を含有するコポリマーラジカル(Cop);
(b)
【化2】

[式中、Copは(a)に規定したようなコポリマーラジカルを意味し、x=1〜5であると共にy=1〜20である];
(c)
【化3】

[式中、Rはアルキル基を意味し、r=(同一もしくは互いに異なる)1〜1000であり、s=1〜500である];
(d)
【化4】

[式中、o=10〜4000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する];
(e)
【化5】

[式中、p=5〜2000である];または
(f)
【化6】

[式中、q=10〜4000である]
のLCST−ポリマー。
【請求項2】
(a)および(c)における−(C)−ラジカルがイソプロピレンラジカルを意味すると共に(a)におけるラジカル−(C)−がイソブチレンラジカルを意味することを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項3】
(a)において一方では構造単位−(EO)−および−(PO)−並びに他方では構造単位−(BuO)−および−(MeO)−がn=1〜1000を有するブロックに存在することを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項4】
構造単位−(PO)−もしくは−(BuO)−を有するブロックが、構造単位−(EO)−もしくは−(MeO)−を有するブロックの間に配置されたことを特徴とする請求項3に記載のLCST−ポリマー。
【請求項5】
一般式HO−[R]−OH(式中、Rは請求項1に示した意味を有する)の化合物を式
【化7】

[式中、Rは請求項1に示した意味を有すると共にXはOH、ハロゲン(好ましくはクロル)、酸基、アクリル基または低級アルコキシ基を意味する]
の化合物と1:1〜1:4、特に1:2のモル比にて反応させることを特徴とする請求項1〜4のLCST−ポリマー(変種(a)〜(c))の製造方法。
【請求項6】
p−トルエンスルホン酸クロライドを式H−[EO]−OCH(式中、rは請求項1(c)に示した意味を有する)のポリエチレンオキシド−メチルエステルとポリエチレンオキシド−トシレートまで反応させ、これを(NH)−C−[−PO−]−NH(ここで、sは請求項1(c)に示した意味を有する)とH−[EO]−NH−(PO)−NH−(EO)−OHまで反応させると共に、これを(a)
【化8】

[式中、Rは請求項1に示した意味を有すると共に、Xは請求項5に示した意味を有する]
または(b)と対応の酸の無水物を用いて反応させることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー(変種c)の製造方法。
【請求項7】
粒子または非粒状基体表面を被覆するための請求項1〜4に記載の、または請求項5または6の方法により製造されるLCST−ポリマーの使用。
【請求項8】
LCST−ポリマーを液体媒体中でLCST−温度以下にて粒子または非粒状基体表面と接触させ、温度をLCST−温度を越えるまで上昇させ、ポリマーを二重結合を介しこの温度もしくはそれより高い温度にて粒子の表面または非粒子状基体表面の上で重合させることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
重合されたLCST−ポリマーにより請求項8に従って被覆された粒子または非粒状基体表面。

【公表番号】特表2006−517983(P2006−517983A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552699(P2004−552699)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013098
【国際公開番号】WO2004/046258
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【Fターム(参考)】