説明

LEDパッケージ及びその製造方法

【課題】LEDチップの発光によって白色樹脂の内壁が受けるダメージを軽減して発光特性を良好に保持する。
【解決手段】LEDパッケージは、青色光を発光するLEDチップ10が搭載されるリードフレーム本体3上のパッド部7とリード部8を有する。リードフレーム本体3上にパッド部7とリード部8を囲うように内壁5aを形成した凹部のキャビティ5を有する白色樹脂からなるリフレクター部6を備える。キャビティ5を形成する内壁5aに黄色蛍光体13を比較的大きな密度で付着する。キャビティ5内には黄色蛍光体13が比較的小さな密度で分散された透明封止樹脂12を充填した。内壁5aに向かう一部の青色光は黄色蛍光体13に衝突して黄色光に励起され、白色樹脂の内壁5aのダメージを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップ(Light Emitting Diode)を搭載するLED発光素子用リードフレームを備えたLEDパッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体集積回路やLED発光素子等の電子素子を搭載するためのリードフレームは、板状の鉄−ニッケル等の合金薄板、或いは銅−ニッケル−錫等の合金薄板からなるリードフレーム用金属材料を、その片面又は両面から塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工して製造される。このように製造されたリードフレームは、半導体集積回路やLED素子を搭載するためのパッド部(アイランド部)と、該パッド部とは絶縁状態とされて電子素子と電気的に接続が行われるリード部(アイランド部)とを備えた構成とされる。
【0003】
リードフレームのパッド部の表面側には、電子素子を載置するための搭載部(搭載面)が設けられている。そして、その裏面側には、LED発光素子等の電子素子本体から発生する駆動熱や電子素子周囲の環境条件による熱を放散させるための放熱部(放熱面)が設けられている。この放熱部により、電子素子側に熱が蓄積されないように放熱されるようになっている。
【0004】
上述のように設計されたリードフレーム等を用いて、LEDパッケージは作製されている。このLEDパッケージは、発光ダイオードを光源として用いた発光装置のことであり、ヒートシンク、リードフレーム、ケースが一体となっているものが最も一般的である。
ヒートシンクは熱の拡散を、リードフレームは電気的導通を、ケースは絶縁及び放熱効果をそれぞれ要求されている。これらで形成された基板にLEDチップを搭載し、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂といった封止樹脂で樹脂モールドし、パッケージ化されたものをLEDパッケージという。
【0005】
近年、このLEDパッケージは、照明を始め、種々の電子部品に広く利用されている。そのため、LEDチップから放出される光を効率よく取り出すことが求められており、発光素子から直接放たれた光だけでなく、リフレクターを設けることで反射させ、外部に光をより多く放出されるような輝度の高いパッケージが求められている。
LEDチップから発光される高エネルギーの短波長光を外部に発光させ、しかもLEDの輝度を向上させるようにしたLEDパッケージとして、例えば特許文献1乃至3に記載されたものが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載されたLEDパッケージでは、絶縁材料からなる基板上にLEDチップを搭載させ、LEDチップの一方の電極を一方の外部電極に接続させると共にLEDチップの他方の電極を他方の外部電極に接続させている。そして、LEDチップをドーム状の不織布で覆い、黄色蛍光体の表面に赤色系顔料を付着した顔料付き蛍光体を不織布の表面に担持させている。
【0007】
また、特許文献2に記載されたLEDパッケージでは、パッド部に紫外線を発光するLEDチップを搭載し、リフレクターの凹部にはLEDチップを被覆封止するコーティング層中に紫外線を可視光へ波長変換する蛍光体が分散状態で混入されている。これにより、LEDチップから発光された紫外光が蛍光体によって可視光に波長変換される。
また、別の例では、リフレクターの凹部にはLEDチップを被覆封止するコーティング層とその上に蛍光体が分散状態で混入された蛍光体層とが、二層で積層されている。この場合には、LEDチップから発光された紫外光がコーティング層を通って蛍光体層で可視光に変換されてすぐに外装体に入射するため可視光の取り出し効率が向上するとしている。
更に特許文献3に記載されたLED発光装置では、LEDチップを囲うリフレクターの内壁に光反射性のフィラーを含有する樹脂層を被覆形成し、リフレクターの凹部に封止部材を充填している。
【0008】
また、他の例として、図5に示すLEDパッケージ50では、リードフレームを構成する金属部51のパッド部51aにLEDチップ52が搭載され、ワイヤWでLEDチップ52とリード部52が接続されている。また、LEDチップ52とそのリード部56を囲うように絶縁性の白色樹脂からなるリフレクター部53が形成されている。リフレクター部53の凹部には例えば黄色蛍光体54が均一の密度で分散混合された透明封止樹脂55が充填されている。
そのため、LEDチップ52から発光する例えば短波長でエネルギーの高い青色光は一部が黄色蛍光体54によって当って励起されてある確率で黄色光となり、青色光と黄色光とで擬似白色光を発生させるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3117306号公報
【特許文献2】特開2003−197978号公報
【特許文献3】特開2007−42668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図5に示すLEDパッケージ50では、図6に示すように、LEDチップ52から発光する青色光の一部が封止樹脂55のリフレクター部53の内壁53a近傍の黄色蛍光体54に衝突して黄色光になるが、黄色光は青色光よりエネルギーが低いため、内壁53aの白色樹脂に衝突しても白色樹脂が受けるダメージは小さい。
しかしながら、青色光が内壁53aの白色樹脂に直接衝突すると短波長でエネルギーが高いために白色樹脂が黄変してしまい内壁53aにダメージを与える。すると、LEDチップ3から発光する青色光と黄色蛍光体の励起光である黄色光との色バランスが崩れ、トータルとしてLEDパッケージ50から発光する光の色が白色からずれてしまうという不具合が発生する。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、LEDチップから発光する光によって内壁を形成する白色樹脂の受けるダメージを軽減して発光特性を良好に保持できるようにしたLEDパッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるLEDパッケージは、LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクターとを備えたLEDパッケージにおいて、キャビティを形成する内壁に蛍光体が比較的大きな密度で付着され、キャビティ内には蛍光体が比較的小さな密度で分散された封止樹脂が充填されてなることを特徴とする。
本発明によるLEDパッケージによれば、LEDチップから発光される光の一部は封止樹脂中に分散された比較的低密度の蛍光体に衝突して黄色光等の他の色の光に励起されるが、一部の光は白色樹脂からなるリフレクターの内壁に衝突する方向に進んでその多くは内壁に付着された比較的高密度の蛍光体に衝突し、黄色光等の他の色の光に変換されてエネルギーの低い光となって内壁に衝突するため白色樹脂のダメージは小さく内壁の黄変は抑制される。そのため、LEDチップから発光する光と蛍光体に衝突して色が変更される光と内壁に衝突して反射する光との色のバランスが良好で、トータルの光の色が疑似白色として外部に発光される。
そのため、キャビティの白色樹脂でできた内壁を高密度に付着された蛍光体によって変色から守ることができる。特に、内壁に付着する蛍光体を比較的高密度にし且つ封止樹脂中の蛍光体を比較的低密度に分散したことで、白色樹脂の黄変を抑制するようにしたから、青色光と黄色光との色バランスを良好に保って外部に発光する光を白色光に維持できる。
【0013】
また、内壁は微細な凹凸を形成して粗面化されていることが好ましい。
白色樹脂からなる内壁を例えばウエットブラスト工法等によって粗面化することで、内壁に微細な凹凸ができて蛍光体の付着性が向上する。
【0014】
また、蛍光体は黄色蛍光体であることが好ましく、この場合、LEDチップはエネルギーの高い青色光であることが好ましい。
LEDチップから発光する高エネルギーの青色光が内壁に当たると白色樹脂が黄変してくるが、内壁に黄色蛍光体を比較的高密度で付着させたことで青色光は黄色蛍光体によって低エネルギーの黄色光に変換されるために白色樹脂の内壁の黄変を抑制でき、一方、封止樹脂中の黄色蛍光体は比較的低密度であるため、青色光として出射する割合が多く黄色蛍光体に衝突して黄色光となる割合が小さく、青色光と黄色光とのバランスを維持して擬似的な白色光を外部に発光できる。
【0015】
また、蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体であることが好ましく、この場合、LEDチップはエネルギーの高い近紫外光であることが好ましい。
LEDチップから発光する高エネルギーの近紫外光が内壁に当たると白色樹脂が黄変してくるが、内壁に赤色蛍光体R、緑色蛍光体G、青色蛍光体Bを比較的高密度で付着させたことで近紫外光による白色樹脂の内壁の黄変を抑制でき、一方、封止樹脂中の赤色蛍光体R、緑色蛍光体G、青色蛍光体Bは比較的低密度であるが、青色光と赤色光と緑色光とからなる3原色のバランスを維持して擬似的な白色光を外部に発光できる。
【0016】
本発明によるLEDパッケージの製造方法は、LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色系樹脂からなるリフレクター部とを備えたLED発光素子用リードフレームを形成し、キャビティを形成する内壁に蛍光体を比較的大きな密度で付着させた後に、キャビティ内に蛍光体を比較的小さな密度で分散した封止樹脂を充填させるようにしたことを特徴とする。
本発明によるLEDパッケージの製造方法によれば、先に凹部形状のキャビティの白色樹脂からなるリフレクター部の内壁に、比較的高密度に蛍光体を付着させ、その後に比較的低密度に蛍光体を分散させた封止樹脂を充填させるようにしたから、封止樹脂の硬化後に、比較的高密度に蛍光体を付着させた内壁と、この内壁を含むキャビティに比較的低密度に蛍光体を含む封止樹脂とを一体に形成することができる。
【0017】
また、内壁は予め微細な凹凸を形成して粗面化されていてもよい。
白色樹脂からなるキャビティの内壁をウエットブラスト工法等の各種の粗面化工法によって粗らすことで内壁に微細な凹凸が形成され、蛍光体を付着させる際にその密着性が向上する。
なお、内壁の粗面化に際し、リードフレームを形成する工程において金属製のパッド部とリード部の周囲やその間に樹脂を埋設して硬化させた後、バリ取り加工によって樹脂のバリを除去する際に白色樹脂の内壁を粗面化するようにしてもよい。
【0018】
また、蛍光体を含む塗布液をキャビティの内壁に塗布するようにしてもよく、塗布液を白色樹脂の内壁に塗布することで、蛍光体を内壁に付着させることができる。
また、蛍光体を含む塗布液をキャビティの内壁に噴霧するようにしてもよく、塗布液を白色樹脂の内壁に噴霧することで、蛍光体を内壁に付着させることができる。
【0019】
また、LEDチップから射出される光は青色光であり、蛍光体は黄色蛍光体であることが好ましい。
この構成によって、白色樹脂からなる内壁に付着させた黄色蛍光体に青色LEDチップから発光する青色光が衝突することで黄色光となるため内壁の黄変とダメージを抑制できて、また青色光の他の一部は封止樹脂中に分散された黄色蛍光体に衝突して黄色光に励起されるため、黄色蛍光体に衝突しない青色光と黄色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。
【0020】
また、LEDチップから射出される光は近紫外線であり、蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体であってもよい。
この構成によって、白色樹脂からなる内壁に付着させた赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体に近紫外光が衝突することで励起されてエネルギーの小さい光に変換されるから、内壁の黄変によるダメージを抑制できて、また青色光の他の一部は封止樹脂中に分散された赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体に衝突して各色光に励起されるため、青色光と赤色光と緑色光との色のバランスによって疑似白色光を外部に発光できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るLEDパッケージによれば、LEDチップを搭載するパッド部とリード部を包囲するリフレクター部の白色樹脂からなる内壁に付着された蛍光体の密度が、封止樹脂内に分散された蛍光体の密度よりも高い密度に設定されているから、白色樹脂の内壁がLEDチップからの発光で受けるダメージを軽減できると共に、封止樹脂内の蛍光体の密度を比較的疎にしたため、LEDチップから発光する光と蛍光体で励起される光との色バランスが良好に維持され、トータルとしての光のズレを抑制できる。
【0022】
本発明に係るLEDパッケージの製造方法によれば、キャビティを形成する白色樹脂からなる内壁に比較的高密度の蛍光体を付着させた後、キャビティ内に比較的低密度の蛍光体を分散させた封止樹脂を充填させたから、白色樹脂からなるキャビティの内壁とキャビティに充填された封止樹脂との間で蛍光体の密度が粗密で相違していても、容易に製造することができる。これによって、LEDチップからの発光による白色樹脂の内壁のダメージを抑制すると共にLEDパッケージの外部に発光する光が白色からずれるのを防止できて良好な光を射出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態によるLEDパッケージの平面図である。
【図2】図1に示すLEDパッケージのA−A線断面図である。
【図3】図2に示すリフレクター部の内壁の黄色蛍光体に青色光が衝突する状態を示す要部拡大図である。
【図4】実施形態によるLEDパッケージの製造工程を示す図であり、(a)は黄色蛍光体含有塗料の塗布前のリードフレームの断面図、(b)はLEDパッケージをパッド部に搭載した状態のリードフレームの断面図、(c)は黄色蛍光体含有塗料を内壁に塗布した状態のリードフレームの断面図である。
【図5】従来技術によるLEDパッケージの要部断面図である。
【図6】図5に示すリフレクター部の内壁部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態によるLEDパッケージについて図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すLEDパッケージ1において、LED発光素子用リードフレーム(以下、単にリードフレームと称する)2は、金属部からなる板状のリードフレーム本体3と、リードフレーム本体3の上面に樹脂モールドした絶縁性の白色樹脂4とを備えている。
白色樹脂4はLEDチップ10を収容する凹部が一体形成されたリフレクター部6であり、この凹部はキャビティ5を構成する。LEDチップ10は例えば青色発光LEDチップである。なお、外装体は省略されている。
【0025】
リードフレーム本体3の金属部は、例えば板状の鉄−ニッケル等の合金薄板、或いは銅−ニッケル−錫等の合金薄板からなっている。リードフレーム本体3は、この金属合金製の板状の基材をエッチングすることにより形成される部材であって、LEDチップ10を搭載するパッド部7とLEDチップ10に電力を供給するリード部8とがスリット9によって分離され、スリット9内には絶縁性の樹脂が充填されてパッド部7とリード部8を絶縁している。
パッド部7は、図2に示すように、表面(上面)がLEDチップ10を搭載するための搭載面Aとされており、搭載面Aの反対側の裏面(下面)はパッド放熱面Bとされている。パッド放熱面Bは、LEDチップ10から発生する駆動熱やLEDチップ10の周囲環境条件から熱を放散させる放熱部として機能する。
【0026】
リード部8は、パッド部7の水平方向にスリット9を介して所定間隔離間した位置に配置されている。なお、リード部8は例えばパッド部7の両側に分離して一対設けられている構成でもよい。リード部8は、パッド部7と同様の厚みを有しており、リード部8の表面(上面)が、LEDチップ10に電気的に接続される接続面Cとされ、接続面Cの反対側の裏面(下面)が、リード部8において発生する熱を放熱する放熱部として機能するリード放熱面Dとされている。
【0027】
例えば、パッド部7の搭載面Aとリード部8の接続面Cとは、同一の板状基材から形成されるため、特段の加工を行わない限り、同一平面とされている。同様に、パッド部7のパッド放熱面B及びリード部8のリード放熱面Dも同一平面とされている。
また、リード部8の接続面Cはパッド部7に実装されるLEDチップ10に対してワイヤーボンディングやチップボンディングによって接続されており、本実施形態では、例えば金線等からなるワイヤーWを介して電気的に接続されている。
なお、接続面Cへのメッキは、銀メッキ、金メッキ、パラジウムメッキ等の中から用途に合わせて自由に選択することができる。また、このように接続面Cにメッキをするのに先立って、接続面Cに対して熱拡散性に優れたニッケルメッキ等の下地メッキを行なってもよい。
【0028】
リードフレーム本体3の上面に形成されるキャビティ5は白色樹脂4で周囲に内壁5aを成形した略逆円錐台形状の凹部として形成され、その内壁5aはパッド部7及びリード8部を含むリードフレーム本体3の表面と共に略逆円錐台形状のLEDチップ収納空間を形成する。
そして、キャビティ5の略逆円錐台形状の凹部内には透明封止樹脂12が充填されている。透明封止樹脂12は高光透過率(透過率90〜95%以上)を有する樹脂であり、本実施形態では、透明封止樹脂12内には黄色蛍光体13が分散して含まれている。
しかも、図2及び図3に示すように、黄色蛍光体13は、キャビティ5の内壁5aにほぼ均一に付着する黄色蛍光体13の割合が内壁5a以外の透明封止樹脂12内に分散されている黄色蛍光体13の割合よりも高密度とされている。
【0029】
ここで、LEDチップ10は例えば高エネルギーで短波長410nmの青色光を発光するものであり、この青色光の一部が黄色蛍光体13に衝突することで青色光から励起されて青色光よりもエネルギーの低い黄色光となる。そして、発光された青色光と励起された黄色光との色のバランスで擬似白色光となって外部に発光することになる。
本実施形態では、特に白色樹脂4で形成されたキャビティ部5の内壁5aに衝突する一部の青色光が内壁5aに高密度に付着された黄色蛍光体13によって黄色光となる割合が高い。しかも、黄色光は青色光よりもエネルギーが低いため、白色樹脂4の内壁5aに衝突しても白色樹脂4が受けるダメージは小さく、そのため白色樹脂4が黄変する可能性は小さい。
【0030】
しかも、透明封止樹脂12中に含まれる黄色蛍光体13の割合を仮に従来と同程度とすると、内壁5aに付着する黄色蛍光体13の割合を比較的多くすることで、内壁5a以外の封止樹脂12中に分散される黄色蛍光体13の割合が比較的小さくなる。なお、仮に内壁5aに付着する黄色蛍光体13だけでなく透明封止樹脂12中の黄色蛍光体13の分散割合も増大すると、青色光が黄色光に励起される割合が増大するために、外部に発光する光の色が白色からずれてしまい、不具合が発生するおそれがある。一方、透明封止樹脂12中の黄色蛍光体13の分散割合が小さすぎると、やはり外部に発光する光の色が白色からずれてしまう不具合が発生する。
そのため、キャビティ部5内に分散される黄色蛍光体13について、透明封止樹脂12に分散含有される割合と内壁5aに付着させる割合とで粗密の調整をしてバランスさせることで、青色光と青色光の励起光である黄色光との色のバランスをとってトータルとして外部に発光する光が疑似白色となるように制御するものとする。しかも、内壁5aに付着する黄色蛍光体13を高密度に設定して白色樹脂4の黄変を抑制してダメージを小さくするものとする。
【0031】
なお、白色樹脂4として、例えばポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂を含む)、液晶ポリマー、ポリフタルアミド、ナイロン6T等を採用できる。
透明封止樹脂12は、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフタルアミド等を用いることができ、これらのうちの2種又は3種以上の混合系を用いてもよい。
また、黄色蛍光体13として、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いることができ、この蛍光体であれば青色系の光を黄色または黄緑色系の光に効率よく変換できる。なお、イットリウムの一部または全部をLaまたはLuに置換したものを用いることができ、また、アルミニウムの一部または全部をInまたはScに置換したものを用いることもできる。
【0032】
次に、実施形態によるLEDパッケージ1の製造方法について図4により説明する。
まずは、図4(a)に基づいてリードフレーム2を製造する過程を説明する。即ち、Fe−Ni等の合金薄膜またはCu−Ni−Sn等の金属合金製の板状をなすリードフレーム用金属材料を用意する。この金属材料の上面と裏面にフォトレジスト(感光性樹脂)を塗布してレジスト層を形成し、所定のパターン露光用フォトマスクを用いてフォトレジスト層にパターンを露光し、次いで、現像、必要に応じて硬膜処理をする。
これにより、金属材料の上面にパッド部7のチップ搭載用上面A、リード部8の電気接続エリアCを形成する部分を残してフォトレジストが現像除去されたレジストパターンが形成される。
【0033】
次に、レジストパターンが形成された金属材料の上面に、フォトレジスト非形成部を塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工処理(ハーフエッチング処理)を行なう。これにより、パッド部7及びリード部8となるべき部分の間には、範囲の狭いレジストパターンが配置されていることにより、比較的深度の小さいエッチング部分が形成される。これにより、金属材料の上面に凹凸形状が形成される。裏面にも同様に凹凸形状が形成される。
【0034】
次に、トランスファーモールド成形もしくは射出成形によりパッド部7とリード部8をスリット9の絶縁樹脂で保持すると共に、リフレクター部6とキャビティ5の部分を絶縁性の白色樹脂4で成形する。これにより、リフレクター部6はパッド部7とリード部8の上面の周囲の白色樹脂4によって略逆円錐台形状で上方に拡径された内壁5aの反射面を有するキャビティ5が形成される。
【0035】
そして、内壁5aで囲まれた領域内のリードフレーム本体3のパッド部7の搭載面Aとリード部8の接続面Cに、耐熱拡散性に優れたNiめっき等の下地めっきを行い、その後に、銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等を行う。ここで、LEDパッケージ1を外部基板に搭載、接続するために、パッド部7の放熱用裏面B及びリード部8の放熱用裏面Dにも銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等を行ってもよい。
このようにして凹部の内壁5aが上方に向かって外側に傾斜して拡径するキャビティ5として形成され、キャビティ5の底部にパッド部7の搭載面A及びリード部8の接続面Cが露出するリードフレーム2が成形される。
【0036】
次に、上述したリードフレーム2からLEDパッケージ1を製造する方法について説明する。
まず、図4(b)において、製造したリードフレーム2におけるパッド部7の搭載面AにLEDチップ10を搭載し、LEDチップ10とリード部8の接続面CとをワイヤーWを用いてワイヤーボンディングする。
次に、図4(c)に示すように、リードフレーム本体3上に白色樹脂4によって形成されたキャビティ5の内壁5aに、黄色蛍光体13を比較的高密度に含有する塗料を塗布する。塗料として例えばヘキサンやキシレンなどの溶媒にイットリウムアルミニウムガーネット蛍光体またはYAG蛍光体を分散させた分散液などを用いることができる。これによって内壁5aに高密度の黄色蛍光体13が付着して偏在することになる。
【0037】
なお、キャビティ5の内壁5aに高密度の黄色蛍光体13を含む塗料を塗布する場合、予め形成したキャビティ5の白色樹脂4が金属部からなるリードフレーム本体3の表面にも一部被覆される場合がある。この場合、リードフレーム本体3表面の白色樹脂4上にも黄色蛍光体13を含む塗料を塗布してもかまわない。
その後、内壁5aの黄色蛍光体13の密度よりも比較的黄色蛍光体13の密度が小さくなるように分散された透明封止樹脂6をキャビティ5内に充填して満たし、リードフレーム本体3の表面の搭載面A、接続面C及びLEDチップ10を封止する。
このようにして、図1に示すLEDパッケージ1が完成する。
【0038】
上述のように、本実施形態によるLEDパッケージ1によれば、点灯してLEDチップ10から青色光が発光すると、内壁5a以外の透明封止樹脂12内を進行する一部の青色光は、黄色蛍光体13に衝突して励起されて黄色光になるが、この領域の黄色蛍光体13の含有割合が内壁5aより低いため黄色蛍光体13に当接しないで青色光として透過する割合が多い。
一方、一部の青色光はキャビティ5の内壁5a方向に進行して、その多くは内壁5aに比較的高密度に付着された黄色蛍光体13に衝突して励起されて黄色光となる。そのため、この黄色光が白色樹脂4からなる内壁5aに衝突しても青色光よりもエネルギーが低いために内壁5aを構成する白色樹脂4が受けるダメージが軽減され、白色樹脂4の黄変の程度が抑えられる。
そのため、LEDチップ10から発光される青色光と黄色蛍光体13で励起される黄色光と内壁5aで反射する黄色光とがバランスによって擬似白色光として外部に射出される。しかも、白色樹脂4のキャビティ5に形成されたリフレクター部6としての内壁5aが青色光によって黄変することを抑制できるから、LEDパッケージ1から外部に射出される光の色が擬似白色に維持される。
【0039】
しかも、本実施形態によるLEDパッケージ1の製造方法によれば、予め白色樹脂4からなるキャビティ5の内壁5aに高密度の黄色蛍光体13を含む塗料を塗布した後、黄色蛍光体13を比較的低密度に分散させた透明封止樹脂12をキャビティ5内に充填して固化させるから、透明封止樹脂12の内部と周側面とで黄色蛍光体13の密度を粗密に分けて一体に形成できる。
【0040】
なお、本発明は上述の実施形態によるLEDパッケージ1及びその製造方法に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態ではLED発光素子として青色光を発光する青色光LEDチップ10を用いたが、これに代えて近紫外光を発光する近紫外光LEDを採用してもよい。この場合、近紫外光は高エネルギーであるために、白色樹脂4の内壁5aに衝突すると黄変して白色樹脂4が劣化する。
そのため、本変形例では、黄色蛍光体13に変えて、3原色である赤色蛍光体Rと緑色蛍光体Gと青色蛍光体Bとを透明封止樹脂12内に分散させるようにした。この場合、リードフレーム本体3上に白色樹脂4によって形成されたキャビティ5の内壁5aに、赤色蛍光体Rと緑色蛍光体Gと青色蛍光体Bとを、透明封止樹脂12内よりも高密度に含有する塗料を塗布することで、内壁5aに高密度の黄色蛍光体13が付着して偏在することになる。
【0041】
その後、内壁5aよりも赤色蛍光体Rと緑色蛍光体Gと青色蛍光体Bとからなる蛍光体の密度を小さくして分散させた透明封止樹脂12をキャビティ5内に充填して満たし、リードフレーム本体3の表面の搭載面A、接続面C、LEDチップ10及びワイヤWを封止すればよい。
このような構成を採用したLEDパッケージ1であっても、LEDチップ10から発光する近紫外光によって白色樹脂4の内壁5aが黄変することを抑制して、擬似白色光を外部に発光できる。
【0042】
また、上述の実施形態や変形例では、蛍光体を含有した塗料を内壁5aに塗布するようにしたが、塗布に代えてスプレー等を用いてこの塗料を内壁5aに噴射させるようにしてもよい。
【0043】
なお、白色樹脂4からなる内壁5aは予め微細な凹凸を形成して粗面化されていてもよい。白色樹脂4からなるキャビティ5の内壁5aを、ウエットブラスト工法等の各種の粗面化工法によって予め粗面化しておくことで、内壁5aに微細な凹凸が形成されているため、蛍光体を付着させる際にその密着性が向上する。
なお、内壁5aの粗面化に際し、リードフレーム2を製造する工程において、金属製のパッド部7とリード部8の間に絶縁樹脂を埋設すると共に白色樹脂4によるリフレクター部6を形成して硬化させた後、バリ取り加工によって絶縁樹脂や白色樹脂5のバリを除去する際に白色樹脂4の内壁5aをも粗面化するようにしてもよい。或いは、リードフレーム2を製造する工程における絶縁樹脂や白色樹脂4のバリ取り工程とは別に、内壁5aに蛍光体を付着する前の工程で独立して粗面化処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 LEDパッケージ
2 リードフレーム
3 リードフレーム本体
4 白色樹脂
5 キャビティ
5a 内壁
6 リフレクター部
7 パッド部
8 リード部
10 LEDチップ
12 透明封止樹脂
13 黄色蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLEDパッケージにおいて、
前記キャビティを形成する内壁に蛍光体が比較的大きな密度で付着され、前記キャビティ内に前記蛍光体が比較的小さな密度で分散された封止樹脂が充填されてなることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項2】
前記内壁は微細な凹凸を形成して粗面化されている請求項1に記載されたLEDパッケージ。
【請求項3】
前記蛍光体は黄色蛍光体である請求項1または2に記載されたLEDパッケージ。
【請求項4】
前記蛍光体は、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体である請求項1または2に記載されたLEDパッケージ。
【請求項5】
LEDチップが搭載されるパッド部と、LEDチップと電気的な接続を行うリード部と、該パッド部及びリード部を囲うように内壁が形成された凹部形状のキャビティを有する白色樹脂からなるリフレクター部とを備えたLED発光素子用リードフレームを形成し、
前記キャビティを形成する内壁に蛍光体を比較的大きな密度で付着させた後に、
前記キャビティ内に前記蛍光体を比較的小さな密度で分散した封止樹脂を充填させるようにしたことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記内壁は予め微細な凹凸を形成して粗面化されている請求項5に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記蛍光体を含む塗布液を前記キャビティの内壁に塗布するようにした請求項5または6に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体を含む塗布液を前記キャビティの内壁に噴霧するようにした請求項5または6に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記LEDチップから射出される光は青色光であり、前記蛍光体は黄色蛍光体である請求項5乃至8のいずれか1項に記載されたLEDパッケージの製造方法。
【請求項10】
前記LEDチップから射出される光は近紫外線であり、前記蛍光体は赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体である請求項5乃至8のいずれか1項に記載されたLEDパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182208(P2012−182208A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42574(P2011−42574)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】