説明

LED信号灯器

【課題】 1つの灯器発光部のLEDを1つ単位またはグループ単位に変調することにより、1つの灯器発光部にあるLEDを有効に活用して複数の異なるデータを同時に伝送することを可能としたLED信号灯器を提供する。
【解決手段】 この灯器発光部1はLEDの点滅状態を変調する複数の変調部21、22、23と、この変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部20と、グループ分けされたLED2、3、4とを備えて構成される。そして灯器発光部1のLEDを複数のグループ、例えばグループA2、グループB3、グループC4に分割してグループLEDを構成し、変調部A21をグループA2に接続し、変調部B22をグループB3に接続し、変調部C23をグループC4にそれぞれ接続することにより、通信制御部20は、各グループ毎に異なる通信信号によりグループLEDを変調することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED信号灯器に関し、さらに詳しくは、灯器発光部のLEDを変調することにより、本来の信号機としての機能に加えて可視光による情報通信を可能としたLED信号灯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交通信号機に装備される信号灯器は、緑(G)、黄(Y)、赤(R)の各色に着色したガラスをはめ込んだ各容器内に白熱電球を備え、白熱電球をガラス後方より照明することによりガラスの色に応じて発光させる灯器発光部を備えている。しかし、信号の視認性の改善、灯器発光部の信頼性の向上、及びエネルギー問題から、近年では白熱電球タイプの信号灯器から高発光タイプのLEDを使用したLED信号灯器に替わりつつある。このLED信号灯器は、図10(a)に示すように、外観的には従来の信号灯器と同じであるが、図10(b)に示すように灯器発光部51が縦横に配列された複数のLED53により構成されている点が異なっている。そして各LED53として、予め割り当てられた特定色の光を発光するLEDを使用するため、強い直射日光を受けた状況下においても発光しているか否かの視認性が優れており、また消費電力、寿命の点でも従来の方式に比べて有利となっている。またLEDは直進性が強く且つ指向性が強い光特性を有するため、特定の領域だけに光を強く照射することができる。このような特性を利用して信号灯器の灯器発光部のLEDにより可視光通信を行う試みが提案されている。
例えば、WO91/02339には、1つの信号灯器の灯器発光部により1つの通信領域、1種類の通信データを出力する技術について開示されている。
また特開平8−7193号公報には、データ設定部には、信号機本体から信号灯器G、Y、Rの現在の点灯、消灯、点滅を示すステータス情報が設定され、また、送信すべき交差点の地名や、地理情報(道路案内)、道路の渋滞状況等を示す道路交通情報が設定される。そして点灯又は点滅している信号灯器G、Y、Rの光がステータス情報と道路交通情報により変調される技術が開示されている。
また特開2002−290335公報には、LED照明灯と、この照明灯に供給される電力波形をパーソナル・コンピュータからの情報に応じて変調する変調手段とを設け、照明灯を変調して情報を伝送し、この照明光を受光して受光器に接続されている装置(例えばプリンタ)を駆動させる技術について開示されている。
【特許文献1】WO91/02339
【特許文献2】特開平8−7193号公報
【特許文献3】特開2002−290335公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の灯器発光部による可視光通信は、何れの方法も1つの灯器発光部からは1種類のデータが変調されるにすぎず、特に特許文献2には、信号灯器G、Y、Rの光がステータス情報と道路交通情報により変調される旨が記載されており、変調するデータの種類が信号灯器G、Y、Rの3種類に限定されてしまい、扱う情報量が少ないといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、1つの灯器発光部のLED単体毎にまたはグループ単位毎に変調することにより、1つの灯器発光部を構成する個々のLEDを有効に活用して複数の異なるデータを同時に伝送することを可能としたLED信号灯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、複数のLEDが配列されて一つの灯器発光部を構成するLED信号灯器であって、前記灯器発光部は前記LEDの点滅状態を変調する変調部と、該変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部とを備え、前記灯器発光部のLEDを複数のグループに分割してグループLEDを構成し、前記変調部を前記各グループLEDに接続することにより、前記通信制御部は、各グループ毎に異なる通信信号により前記グループLEDを変調可能としたことを特徴とする。
一つの灯器発光部が複数のLEDにより構成されている場合、一般的にはそのLEDは規則正しく灯器発光部のLED設置面に配列されている。本発明はこれらのLEDを所定のグループに分割して、そのグループ毎に変調するものである。それには各グループの点灯信号を変調する変調部と、その変調部に通信信号を供給する通信制御部とを備える。そしてグループに分割した数だけ変調部を用意して各グループ毎に変調する構成とするものである。尚、灯器発光部とは同色の複数のLEDが配列された信号機の発光部分を指し、信号灯器とはG、Y、Rの各色の灯器発光部を配列した構成部分を指すものとし、以下、同様とする。
請求項2は、前記グループLEDは、前記灯器発光部の正面から見て縦方向または横方向の所定領域に存在する複数のLEDの集合であることを特徴とする。
灯器発光部に配列されたLEDをグループ化する方法として、灯器発光部を正面から見たときに、灯器発光部の縦方向の所定の領域に配列されたLED群を1つのグループとしていくつかに分割する方法と、または灯器発光部の横方向の所定の領域に配列されたLED群を1つのグループとしていくつかに分割する方法がある。本発明ではこの縦方向と横方向の何れかのグループに分割するものである。
【0005】
請求項3は、前記灯器発光部の縦方向グループLEDまたは横方向グループLEDの何れか一方を選択するグループ選択装置を更に備え、前記通信制御部は、前記縦方向グループLEDと横方向グループLEDを適宜切り換えるように前記グループ選択装置を制御することを特徴とする。
灯器発光部にある複数のLEDは、マトリックス状に駆動することにより縦方向及び横方向の各グループ単位で点灯、消灯を自在に駆動することができる。即ち、本発明のグループ選択装置はこのマトリックスを駆動する駆動装置である。これにより、1つの灯器発光部内のLEDを縦方向グループまたは横方向グループに適宜切り換えることができる。
請求項4は、複数のLEDが配列されて一つの灯器発光部を構成するLED信号灯器であって、前記LEDの点滅状態を変調する変調部と、該変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部とを備え、前記灯器発光部のLED毎に前記変調部を接続することにより、前記通信制御部は、各LED毎に異なる通信信号により前記LEDを変調可能としたことを特徴とする。
LEDは1つ単位で変調することが可能である。従って、灯器発光部にある複数のLEDを全て異なるデータにより個別に変調することも可能である。本発明はこのような発想から各LED毎に異なる通信信号により変調するものである。
【0006】
請求項5は、前記グループLEDまたは1つのLEDに少なくとも1つ以上の近赤外線用LEDを直列に接続し、前記通信制御部は通信信号により前記グループLEDまたは1つのLEDを変調することにより、可視光通信と併せて赤外線による通信を可能としたことを特徴とする。
灯器発光部にある複数のLEDは各グループ毎に所定の数単位に直列に接続して点灯される。この理由は直列に駆動することにより、同じ電流で駆動が可能となりLEDの照度を一定に保つことができるためである。そこで本発明では、この直列回路の中に近赤外線用LEDを少なくとも1つ以上接続して、可視光通信以外に赤外線による通信を同時に可能とするものである。
請求項6は、前記通信制御部は前記グループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するように前記変調部を制御することを特徴とする。
可視光通信で問題となるのは、隣接するLED光による光の回り込みである。つまりLEDは直進性が高いとはいえレーザ光ほど光の収束性はない。そのため同時にLEDを変調した場合、隣接するLEDの光により相互に影響を受けて通信が混信する可能性が出てくる。そこで本発明では、グループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するものである。
【0007】
請求項7は、前記通信制御部は前記グループLEDの変調タイミングを少なくとも隣接するグループLED同士は異なるタイミングにより変調するように前記変調部を制御することを特徴とする。
LEDを同時に変調しても、ある程度の距離が離れていれば隣接光の影響は少なくなる。そこで本発明は、隣接するグループLED同士は異なるタイミングで変調するものである。
請求項8は、少なくとも隣接するグループLED同士の変調方式が異なるように前記変調部を構成することを特徴とする。
変調方式には各種の変調方式がある。例えば、PWM変調、AM変調、FM変調等である。本発明は同時に変調したときの混信を防ぐために、少なくとも隣接するグループ同士は異なる変調方式により変調するものである。
請求項9は、前記通信制御部は前記グループLEDの通信速度を各グループ毎に異なるように前記変調部を制御することを特徴とする。
同一変調方式における混信を防ぐ他の方法として、通信速度を変える方法がある。これは通信データの単位時間当たりのデータ量を変えるものである。本発明は各グループ毎に異なる通信速度により変調部を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、グループに分割した数だけ変調部を用意して各グループ毎に変調する構成とするので、同一の灯器発光部から複数の異なるデータを送信することができる。
また請求項2では、灯器発光部を正面から見たときに、縦方向と横方向の何れかのグループに分割するので、使用目的により縦方向と横方向を使い分けることができる。
また請求項3では、グループ選択装置により1つの灯器発光部内のLEDを縦方向グループまたは横方向グループに適宜切り換えるので、1つの信号灯器を使用目的により縦方向と横方向を使い分けることができる。
また請求項4では、各LED毎に異なる通信信号により変調するので、1つの灯器発光部から多数の異なるデータを送信することができる。
また請求項5では、直列回路の中に近赤外線用LEDを少なくとも1つ以上接続するので、可視光通信以外に赤外線による通信を同時に行うことができる。
また請求項6では、グループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するので、隣接する光の回りこみを防ぎ、通信の混信を防止することができる。
また請求項7では、隣接するグループLED同士は異なるタイミングで変調するので、隣接するグループLED同士の混信を防止すると共に、同時に送信するデータ量を増加することができる。
また請求項8では、同時に変調したときの混信を防ぐために、少なくとも隣接するグループ同士は異なる変調方式により変調するので、隣接するグループLED同士の混信を防止すると共に、同時に送信するデータ量を増加することができる。
また請求項9では、各グループ毎に異なる通信速度により変調部を制御するので、変調方式が同じであっても混信を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。この灯器発光部1はLEDの点滅状態を変調する複数の変調部21、22、23と、この変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部20と、グループ分けされたLED2、3、4とを備えて構成される。そして灯器発光部1のLEDを複数のグループ、例えばグループA2、グループB3、グループC4に分割してグループLEDを構成し、変調部A21をグループA2に接続し、変調部B22をグループB3に接続し、変調部C23をグループC4にそれぞれ接続することにより、通信制御部20は、各グループ毎に異なる通信信号によりグループLEDを変調することができる。尚、この構成は各色について同様であり、LEDの発色が異なるだけであるので、以下、緑(G)に限定して説明する。即ち、信号灯器にはこの構成の灯器発光部が3つ存在することになる。また各変調部にはLEDを駆動する駆動回路が組み込まれている。
このように一つの灯器発光部1が複数のLEDにより構成されている場合、一般的にはそのLEDは規則正しく灯器発光部1に配列されている。本発明はこれらのLEDを所定のグループに分割して、そのグループ毎に変調するものである。それには各グループの点灯信号を変調する変調部21、22、23と、その変調部に通信信号を供給する通信制御部20とを備える。そしてグループに分割した数だけ変調部を用意して各グループ毎に変調する構成とするものである。こうすることにより同一の灯器発光部から複数の異なるデータを送信することができる。尚、灯器発光部とは同色の複数のLEDが配列された信号機の発光部分を指し、信号灯器とはG、Y、Rの各色の灯器発光部を配列した構成部分を指すものとし、以下、同様とする。
【0010】
図2(a)は第1の実施形態に係る灯器発光部を正面から見た図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この灯器発光部1は縦方向に3つのグループに分けた場合の構成例である。即ち、グループA2、グループB3、グループC4に分割する。そして各グループを構成するLED6は各グループ内で直列に接続され、変調部21、22、23にそれぞれ接続される。図2(b)は図2(a)の灯器発光部をG、Y、R3色備えた信号灯器の外観図である。例えば、この信号灯器5はGの灯器発光部1GからグループA、B、Cの変調された可視光が照射され、光ビーム2、3、4として照射される。このビームは横方向に広がったビームであり、後述するように道路の進行方向を指示する情報として利用される。また信号灯器5は当然本来の信号機としての機能を併せ持ち、信号がGになったときにそれに必要な情報が変調部により変調されて灯器発光部1Gから送信される。そして図示しない受光部を備えた車両がこの信号を復調して交通情報を得ることができる。
このように灯器発光部1に配列されたLED6をグループ化する方法として、灯器発光部1を正面から見たときに(図2(a))、灯器発光部1の縦方向の所定の領域に配列されたLED群を1つのグループとしていくつかに分割する方法がある。
【0011】
図3は本発明の第2の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。この灯器発光部1はLEDの点滅状態を変調する複数の変調部24、25、26と、この変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部20と、グループ分けされたLED12、13、14とを備えて構成される。そして灯器発光部1のLEDを複数のグループ、例えばグループD12、グループE13、グループF14に分割してグループLEDを構成し、変調部D24をグループD12に接続し、変調部E25をグループE13に接続し、変調部F26をグループF14にそれぞれ接続することにより、通信制御部20は、各グループ毎に異なる通信信号によりグループLEDを変調することができる。尚、この構成は各色で同様でありLEDの発色が異なるだけであるので、以下、緑(G)に限定して説明する。即ち、信号灯器にはこの構成の灯器発光部が3つ存在することになる。また各変調部にはLEDを駆動する駆動回路が組み込まれている。
図4(a)は第2の実施形態に係る灯器発光部を正面から見た図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。この灯器発光部1は横方向に3つのグループに分けた場合の例を示している。即ち、グループD12、グループE13、グループF14に分割する。そして各グループを構成するLED6は各グループ内で直列に接続され、変調部24、25、26にそれぞれ接続される。図4(b)は図4(a)の灯器発光部をG、Y、R3色備えた信号灯器の側面から見た外観図である。例えば、この信号灯器5はGの灯器発光部1GからグループD、E、Fの変調された可視光が照射され、光ビーム12、13、14として照射される。このビームは前後方向に広がったビームであり、後述するようにGの残り時間と信号機までの距離を車両に通知する「ジレンマ通知」の情報として利用される。また信号灯器5は当然本来の信号機としての機能を併せ持ち、信号がGになったときにそれに必要な情報が変調部により変調されて灯器発光部1Gから送信される。そして受光部を備えた車両15がこの信号を復調して交通情報を得ることができる。
このように灯器発光部1に配列されたLED6をグループ化する他の方法として、灯器発光部1を正面から見たときに(図4(a))、灯器発光部1の横方向の所定の領域に配列されたLED群を1つのグループとしていくつかに分割する方法がある。また図示はしないが、LED単体毎に変調することが可能である。従って、灯器発光部1にある複数のLEDを全て異なるデータにより個別に変調することも可能である。
【0012】
図5は本発明の第3の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。この灯器発光部1は縦方向グループまたは横方向グループの何れか一方を選択するグループ選択装置27を更に備え、通信制御部20は、縦方向グループと横方向グループを適宜切り換えるようにグループ選択装置27を制御する。即ち、この灯器発光部1はLEDの点滅状態を変調する複数の変調部21、22、23と、この変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部20と、縦方向にグループ分けされたLED2、3、4と、横方向にグループ分けされたLED12、13、14と、縦方向グループまたは横方向グループの何れか一方を選択するグループ選択装置27とを備えて構成される。そしてグループ選択装置27は通信制御部20の指示により適宜、縦方向グループまたは横方向グループの何れか一方を選択するように制御される。本実施形態の場合は、縦方向グループまたは横方向グループは予め配線により各グループが点灯するように構成されている。また変調部は各グループ共通であるので、同じ変調方式により変調される。
図6は本発明の第4の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。この灯器発光部1はマトリックス状に配列された複数のLED33と、X軸方向を駆動する駆動部32と、Y軸方向を駆動する駆動部31と、各駆動部を制御する通信制御部30とを備えて構成される。尚、変調部は通信制御部30か駆動部31、32の何れかに備えるものとする。例えば、縦方向のグループを指定する場合には、駆動部32の何れか1箇所の駆動線を駆動し、駆動部31を全て駆動すれば縦方向の1ラインが点灯する。また横方向のグループを指定する場合には、駆動部31の何れか1箇所の駆動線を駆動し、駆動部32を全て駆動すれば横方向の1ラインが点灯する。また全点灯する場合は、駆動部31、32の全ての駆動線を駆動すればよい。このように、駆動部31、32の駆動線の組み合わせにより縦横自在にLEDを点灯することが可能である。
灯器発光部にある複数のLEDは、マトリックス状に駆動することにより縦方向及び横方向を自在に駆動することができる。即ち、本実施形態のグループ選択装置27はこのマトリックスを駆動する駆動装置である。これにより、1つの灯器発光部内のLEDを縦方向グループまたは横方向グループに適宜切り換えることができる。
【0013】
図7は本発明の第5の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のLED構成図である。グループLED40に少なくとも1つ以上の近赤外線用LED41を直列に接続し、図示しない通信制御部は通信信号によりグループLED40を変調することにより、可視光通信と併せて赤外線による通信を可能とするものである。このように灯器発光部にある複数のLEDは各グループ毎に所定の数単位に直列に接続して点灯される。この理由は直列に駆動することにより、同じ電流で駆動が可能となりLEDの輝度を一定に保つことができるためである。そこで本実施形態では、この直列回路の中に近赤外線用LED41を少なくとも1つ以上接続して、可視光通信以外に赤外線による通信を同時に可能とするものである。
【0014】
図8(a)は本発明の第6の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のグループLEDの変調タイミングを表すタイミングチャートである。図では縦軸に灯器発光部のグループ名を表し、横軸は時間を表す。図8(a)は図示しない通信制御部がグループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するように変調部を制御するものである。即ち、グループAがt1時間変調信号を送信し、次にグループBがt1時間変調信号を送信し、次にグループCがt1時間変調信号を送信して、このサイクルを繰り返すものである。尚、各グループの順番は問わず、同時にグループが重ならなければどのような順番でもよい。即ち、可視光通信で問題となるのは、隣接するLED光による光の回り込みである。つまりLEDは直進性が高いとはいえレーザ光ほど光の収束性は弱い。そのため同時にLEDを変調した場合、隣接するLEDの光により相互に影響を受けて通信が混信する可能性が出てくる。そこで本実施形態では、グループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するものである。
図8(b)は本発明の第7の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のグループLEDの変調タイミングを表すタイミングチャートである。図8(b)は図示しない通信制御部がグループLEDの変調タイミングを少なくとも隣接するグループLED同士は異なるタイミングにより変調するように前記変調部を制御するものである。即ち、グループAとグループCが同時にt1時間変調信号を送信し、次にグループBのみがt1時間変調信号を送信して、このサイクルを繰り返すものである。即ち、LEDを同時に変調しても、ある程度の距離が離れていれば隣接光の影響は少なくなる。そこで本実施形態は、隣接するグループLED同士は異なるタイミングで変調するものである。
図8(c)は本発明の第8の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のグループLEDの変調タイミングを表すタイミングチャートである。図8(c)は少なくとも隣接するグループLED同士の変調方式が異なるように変調部を構成するものである。即ち、グループAとグループCが変調方式Aでt1時間変調信号を送信し、同時にグループBがグループAとグループC変調方式と異なる変調方式Bでt1時間変調信号を送信して、このサイクルを繰り返すものである。また変調方式の代わりに通信速度を替えるようにしてもよい。このように変調方式には各種の変調方式がある。例えば、PWM変調、AM変調、FM変調等である。本実施形態は同時に変調したときの混信を防ぐために、少なくとも隣接するグループ同士は異なる変調方式により変調するものである。また、同一変調方式における混信を防ぐ他の方法として、通信速度を変える方法がある。これは通信データの単位時間当たりのデータ量を変えるものである。本実施形態は各グループ毎に異なる通信速度により変調部を制御するものである。
【0015】
図9は本発明の信号灯器を使用した実施例を説明する図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。図9(a)の実施例は、信号灯器5の灯器発光部1Gから変調された縦方向グループの可視光が光ビーム2、3、4、として道路の車線50、51、52に照射されている図である。即ち、車線50は左折専用車線であるため、光ビーム2からは「この車線は左折専用車線です。」といった情報が送信される。また車線51は直進専用車線であるため、光ビーム3からは「この車線は直進専用車線です。」といった情報が送信される。また車線52は右折専用車線であるため、光ビーム3からは「この車線は右折専用車線です。」といった情報が送信される。またこの他に各車線の行き先を通知するようにしたり、道路交通情報等を通知してもよい。
図9(b)の実施例は、道路領域53に進入した車両に対して信号灯器5の灯器発光部1Gから変調された横方向グループの可視光が光ビーム12、13、14、として道路領域53に照射されている図である。即ち、車両が光ビーム14に進入したときにGの点灯残り時間と信号灯器5までの距離を車両に通知することにより、車両側で自身の速度と交差点までの距離とGの点灯残り時間から、ドライバーに警告を発する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。
【図2】(a)は第1の実施形態に係る灯器発光部を正面から見た図、(b)は(a)の灯器発光部をG、Y、R3色備えた信号灯器の外観図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。
【図4】(a)は第2の実施形態に係る灯器発光部を正面から見た図、(b)は(a)の灯器発光部をG、Y、R3色備えた信号灯器の側面から見た外観図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のブロック図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のLED構成図である。
【図8】(a)は本発明の第6の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のグループLEDの変調タイミングを表すタイミングチャート、(b)は本発明の第7の実施形態に係る信号灯器を構成する1つの灯器発光部のグループLEDの変調タイミングを表すタイミングチャート、(c)は少なくとも隣接するグループLED同士の変調方式を異なるようにしたタイミングチャートである。
【図9】(a)(b)は本発明の信号灯器を使用した実施例を説明する図である。
【図10】(a)(b)は従来の信号灯器と灯器発光部の可視光通信を説明する図である。
【符号の説明】
【0017】
1 灯器発光部、2 グループA、3 グループB、4 グループC、5 信号灯器、20 通信制御部、21、22、23 変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDが配列されて一つの灯器発光部を構成するLED信号灯器であって、
前記灯器発光部は前記LEDの点滅状態を変調する変調部と、該変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部とを備え、前記灯器発光部のLEDを複数のグループに分割してグループLEDを構成し、前記変調部を前記各グループLEDに接続することにより、前記通信制御部は、各グループ毎に異なる通信信号により前記グループLEDを変調可能としたことを特徴とするLED信号灯器。
【請求項2】
前記グループLEDは、前記灯器発光部の正面から見て縦方向または横方向の所定領域に存在する複数のLEDの集合であることを特徴とする請求項1に記載のLED信号灯器。
【請求項3】
前記灯器発光部の縦方向グループLEDまたは横方向グループLEDの何れか一方を選択するグループ選択装置を更に備え、前記通信制御部は、前記縦方向グループLEDと横方向グループLEDを適宜切り換えるように前記グループ選択装置を制御することを特徴とする請求項1に記載のLED信号灯器。
【請求項4】
複数のLEDが配列されて一つの灯器発光部を構成するLED信号灯器であって、
前記LEDの点滅状態を変調する変調部と、該変調部に対して変調すべき通信信号を制御する通信制御部とを備え、前記灯器発光部のLED毎に前記変調部を接続することにより、前記通信制御部は、各LED毎に異なる通信信号により前記LEDを変調可能としたことを特徴とするLED信号灯器。
【請求項5】
前記グループLEDまたは1つのLEDに少なくとも1つ以上の近赤外線用LEDを直列に接続し、前記通信制御部は前記通信信号により前記グループLEDまたは1つのLEDを変調することにより、可視光通信と併せて赤外線による通信を可能としたことを特徴とする請求項1または4に記載のLED信号灯器。
【請求項6】
前記通信制御部は前記グループLEDの変調タイミングを各グループ毎に異なるタイミングにより変調するように前記変調部を制御することを特徴とする請求項1、2、3または5に記載のLED信号灯器。
【請求項7】
前記通信制御部は前記グループLEDの変調タイミングを少なくとも隣接するグループLED同士は異なるタイミングにより変調するように前記変調部を制御することを特徴とする請求項1、2、3または5に記載のLED信号灯器。
【請求項8】
少なくとも隣接するグループLED同士の変調方式が異なるように前記変調部を構成することを特徴とする請求項1、2、3または5に記載のLED信号灯器。
【請求項9】
前記通信制御部は前記グループLEDの通信速度を各グループ毎に異なるように前記変調部を制御することを特徴とする請求項1、2、3または5に記載のLED信号灯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−92486(P2006−92486A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280448(P2004−280448)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】