説明

LUTSの治療のためのフィトステロール含有組成物の使用

本発明は、油抽出物および水溶性抽出物を含んでなる組成物の使用に関し、該油抽出物および該水溶性抽出物は植物性材料から得ることができ、かつ該油抽出物および該水溶性抽出物は間質性膀胱炎および/または腹圧性もしくは切迫性尿失禁の結果としてLUTSに罹患している女性の治療のための薬剤を製造するためのフィトステロールを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油抽出物を含んでなり、該油抽出物が植物性材料から得ることができ、かつ該油抽出物は間質性膀胱炎および/または腹圧性もしくは切迫性尿失禁の結果として下部尿路症状、LUTSに罹患している女性の治療のための薬剤を製造するためのフィトステロールを含んでなる、組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
LUTSに罹患している女性群は増えており、利用可能な治療は、例えばエストロゲンまたは抗コリン鎮痙薬などの様々な医薬組成物を用いた様々な薬物治療、外科治療であるが、女性がその困難な状況を受け入れるために治療を行わないこともある。多くの場合、医薬組成物には副作用がある。LUTSは様々であり、例えば頻度、切迫感、夜間頻尿、くしゃみ直後の尿漏れ、および骨盤/会陰部または膀胱の疼痛である。
【0003】
LUTSは腹圧性もしくは切迫性尿失禁の結果であるかまたは間質性膀胱炎(IC)によるものである。ICの診断基準は切迫感、頻度、および細菌感染または他の定義可能な病変の不在下での膀胱または骨盤/会陰部の疼痛である。膀胱充満時疼痛および水圧拡張術による膀胱壁の点状出血もICを示唆する。多くの広範な症状であるために、女性がICに罹患しているかどうかを診断しにくい場合がある。このような大きなLUTS罹患群が存在するため、医師の診断なしに女性が入手し、試し得る代替薬剤の需要が増加している。LUTSについては、話すことがふさわしくないと考えられことが多く、女性は多くの場合恥ずかしいと思い、ライフスタイルを変えるかまたは生理用ナプキンなどの様々な吸収製品を使用しなければならない。そのために漏れおよび悪臭についての心配が起こるかもしれない。
【0004】
米国特許第6,197,309号は、女性における膀胱の健康に有益である、酸化防止剤、免疫ブースター、フィトステロールなどを含んでなる組成物などを開示している。この効果は、酸化防止剤と免疫ブースターが存在することによって得られると考えられている。
【0005】
当技術分野において他の組成物も開示されており、そのような組成物は前立腺炎および良性前立腺(benign prostate)の治療のための油抽出物および水溶性抽出物を含んでなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、下部尿路症状(LUTS)に罹患している女性に新しい改良治療様式を提供する薬剤に関する。この新発明の薬剤の使用によれば、女性は尿の漏れまたは悪臭や最寄のトイレが位置する場所を心配する必要がない。第1の態様において、本発明は、油抽出物を含んでなる組成物の使用に関し、該油抽出物は植物性材料から得ることができ、かつ該油抽出物は間質性膀胱炎および/または腹圧性もしくは切迫性尿失禁の結果としてLUTSに罹患している女性の治療のための薬剤を製造するためのフィトステロールを含んでなる。
【0007】
かかる新規薬剤を提供することによって、LUTSに罹患している女性は治癒するかも知れないし、それらの症状が少なくとも軽減されるかもしれない。その女性の生活の質はそれによって大きく向上し、そして生理用品の消費は減少するであろう。
【0008】
本発明に関するさらなる利点および目的は以下でより詳細に記載する。
発明の詳細な説明
定義
【0009】
本願および本発明において、次の定義を用いる:
【0010】
「油抽出物」とは、イネ科(Graminae)および/またはマツ科(Pinacea)の1以上の植物種に由来するような植物性材料から得ることができる油部分または留分を意味するものとする。例えば、このような油抽出物は花粉から得られることがある。前記油抽出物は、1以上のフィトステロール(例えば下記のもの)を含む。
【0011】
「水溶性抽出物」とは、1以上の植物種から得ることができる(例えばイネ科および/またはマツ科から得られる)水溶性抽出物を意味するものとする。前記水溶性抽出物は花粉から得られることがある。前記水溶性抽出物は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)模倣物、フラボノイド、タンニンまたはポリフェノールのうちの1以上を含む。
【0012】
驚くべきことに、植物性材料から得ることができ、かつLUTSに罹患している女性の治療のための薬剤を製造するためのフィトステロールを含んでなる油抽出物を含んでなる組成物の使用を発見した。植物種によってフィトステロールの量が異なるため、様々な源から油抽出物が得られる場合、使用する必要がある量は異なる。例えば例の中で使用する油抽出物は、約5〜15%(6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%もしくは14%または8〜12%(重量/重量)など)のフィトステロールを含有する。フィトステロールは、例えば、フコステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールまたはフィトステロールを含有する任意の他の源からなる群から選択してよい。フィトステロールは合成によるものでも半合成によるものでもよい。油抽出物はイネ科および/またはマツ科の植物から得てよく、例えば前記種の花粉から得られる。
【0013】
加えて、前記組成物は、イネ科および/またはマツ科の植物に由来するような植物性材料(例えば前記種の花粉)から得ることができる水溶性抽出物を含んでなり得る。油抽出物と水溶性抽出物の混合物を使用することによって改良組成物が得られ、この改良組成物は、すなわち間質性膀胱炎および/または腹圧性もしくは切迫性尿失禁などの状態に罹患している女性においてLUTSを治療するための、使用においてより良い効果を生む。油抽出物と水溶性抽出物の混合物を使用することによって得られる技術的効果は、フィトステロールの利用可能性が高まることである。フィトステロールは、通常は水溶性形態では含まれない物質の大群中に含められる。しかしながら、(例えばBorel, P. "Factors affecting intestinal absorption of highly lipophilic food microconstituents (fat-soluble vitamins, carotenoids and phytosterols)", Clin Chem Lab Med. 2003 Aug; 41 (8):979-94において)フィトステロールの取り込みは、フィトステロールの種類やフィトステロールが存在するマトリックスの組成によって異なることが分かっている。従って、本発明者らは、フィトステロールが存在する組成物を調整することによってフィトステロールの取り込みを制御することができると仮定し、学説にとらわれずに、本発明者らは、通常疎水性のフィトステロールが疎水性相と親水性相からなる組成物の親水性相中でミセルを形成すると考える。このように、フィトステロールが両方の相に存在し、それによってフィトステロールが細胞に大きな程度に吸収され得ることから、フィトステロールの取り込みが増加し、結果として改良組成物がもたらされ、上記の増大効果となると思われる。
【0014】
前記油抽出物および/または前記水溶性抽出物は、オオアワガエリ、ノコギリパルメット、トウモロコシ、ライムギ、コムギ、ウイキョウゼリ、ピジウム(Prunus africanum、Pygeum africanum)およびカボチャ(Cururbita Pepo)(例えばカボチャ種子)からなり、またはその混合物である群から選択される少なくとも1つの植物から得てよい。
【0015】
一実施形態では、前記組成物は二酸化ケイ素を含んでなり、二酸化ケイ素は前記油抽出物と結合させ、酸化から保護するために含められる。
【0016】
油抽出物の例は、Allergon AB, SwedenのEA5/EA10、Cernelle AB, SwedenのGBX、およびGraminex USのGFX、NAXである。
【0017】
水溶性抽出物の例はAllergon AB, SwedenのP2、PI82およびGCFEMである。
【0018】
前記油抽出物は、約1〜約20mgのフィトステロールの1日投与量を与える(約2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mgまたは16mgの1日投与量を与えるなど)量で含めてよい。前記用量は4〜20mg間(8〜16mg間または10〜12mg間など)であってよい。
【0019】
前記薬剤は錠剤、カプセル剤または散剤形態であってよい。前記水溶性抽出物間の比率(The ratio between the water-soluble extract)は約1:4〜約1:20(1:10など)であってよい。
【0020】
よって、前記薬剤は単回投与で(in a single does)または複数回投与で投与してよく、また、初期高用量またはしばらくするとより低いレベルの投与まで低下させる用量として投与してもよい。
【0021】
前記油抽出物および/または前記水溶性抽出物は、米国特許第3,360,437号に開示されている方法を用いて、型を使用しないという変更を加えて生産してよい。これらの抽出物は1以上の製造業者から購入してもよい(上述のものなど)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次の実施例は、いかなる方法、形においても、明示的にも黙示的にも本発明を例示するものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0023】
実施例
実施例1
EA5/EA10という名前の油抽出物と水溶性抽出物P2をAllergon AB, Valingevagen 309, 262 92 Angelholm, Swedenから購入した。
【0024】
成分 量
錠剤A
花粉抽出物、水溶性 140.00mg
花粉抽出物、油 8.00mg
微晶質セルロース 177.00mg
ラクトース 170.00mg
コロイド二酸化ケイ素 3.00mg
ステアリン酸マグネシウム 2.00mg
合計: 500.00mg
投与量 1日当たりカプセル剤1〜2個
【0025】
カプセル剤B
花粉抽出物、水溶性 70.00mg
花粉抽出物、油 8.00mg
イソマルト 200.00mg
微晶質セルロース 117.00mg
コロイド二酸化ケイ素 3.00mg
ステアリン酸マグネシウム 2.00mg
合計: 400.00mg
投与量 1日当たり錠剤1〜2個
【0026】
軟カプセル剤C
花粉抽出物、水溶性 70.00mg
花粉抽出物、油 16.00mg
植物油 200mg
合計: 286.00mg
投与量 1日当たりカプセル剤1個
【0027】
実施例2
本発明の組成物の効力を調査するために試験を行った。
【0028】
30歳〜60歳以上の41名の女性(全員LUTSに罹患している)において試験を行い、この際40名の女性が試験を終了した。9名の女性は30〜39歳間であった。10名は40〜49歳であり、14名は50〜59歳であり8名は60歳以上であった。
これらの女性には1日おきに実施例1の錠剤Aを与え、それらの女性を2週間後、1ヶ月後および2ヶ月後に定期的に評価した。評価した症状はくしゃみによる尿漏れ、トイレに着く前の尿漏れ、頻尿および残尿感であった。これらの異なる症状に、それぞれの群に終わった女性の数の%値として評点をつけた。
【0029】
それらの結果を以下に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
上記試験の結果では、実施例1の錠剤1を用いた治療中に治癒しているまたはICおよび腹圧性もしくは切迫性尿失禁の典型的な症状である下部尿路症状が軽減している女性が増加していることが分かる。くしゃみによる尿漏れに苦しんでいる女性は2週間後に38.5%であり、2ヶ月後に7.7%まで減少し、2ヶ月後には17.9%が治癒した。トイレに着く前の尿漏れに苦しんでいる女性は2週間の治療後に40.9%であり、2ヶ月後には全員が治癒した。頻尿に苦しんでいる女性は治療の2週間後に52.5%、2ヶ月後には21.7%だけであり、残尿感に苦しんでいる女性は治療の2週間後の45.5%から2ヶ月後の18.2%まで減少し。すなわち、この治療は成功し、全ての症状が軽減した。また、この治療転帰から、長期にわたる治療によってさらに良い結果がもたらされるであろうことが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油抽出物および水溶性抽出物を含んでなる組成物の使用であって、該油抽出物および該水溶性抽出物は植物性材料から得ることができ、かつ該油抽出物および該水溶性抽出物は下部尿路症状(LUTS)に罹患している女性の治療のための薬剤を製造するためのフィトステロールを含んでなる、使用。
【請求項2】
前記フィトステロールがフコステロール、β−シトステロール、カンペステロールおよびスチグマステロールからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記油抽出物がイネ科および/またはマツ科の植物から得られる、請求項1〜2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
前記油抽出物が花粉から得られる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記水溶性抽出物がイネ科および/またはマツ科の植物から得られる、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記水溶性抽出物が花粉から得られる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記油抽出物および/または前記水溶性抽出物が、オオアワガエリ、ノコギリパルメット、トウモロコシ、ライムギ、コムギ、ウイキョウゼリ、ピジウムアフリカンウム(Pygeum africanum)およびカボチャ種子からなる群から選択される少なくとも1つの植物から得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が二酸化ケイ素を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記油抽出物がEA5/EA10、GBX、GFXおよび/またはNAXの少なくとも1つ以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記水溶性抽出物がP2である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記油抽出物が前記薬中に、約1〜約20mgのフィトステロールの1日投与量を与えるなどの量で含められる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記油抽出物が前記薬中に、約4〜約20mgのフィトステロールの1日投与量を与えるなどの量で含められる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記油抽出物が前記薬中に、約8〜約16mgのフィトステロールの1日投与量を与える量で含められる、請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤が錠剤、カプセル剤または散剤形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記油抽出物と前記水溶性抽出物間の比率が約1:4〜約1:20である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記薬剤の前記1日投与量が単回投与でまたは複数回投与で投与される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記LUTSが間質性膀胱炎および/または腹圧性もしくは切迫性尿失禁の結果である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
油抽出物および水溶性抽出物を含んでなる組成物であって、該油抽出物および該水溶性抽出物は植物性材料から得ることができ、かつ該油抽出物および該水溶性抽出物はフィトステロールを含んでなる、組成物。
【請求項19】
前記フィトステロールがフコステロール、β−シトステロール、カンペステロールおよびスチグマステロールからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記油抽出物がイネ科および/またはマツ科の植物から得られる、請求項18または請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記油抽出物が花粉から得られる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記水溶性抽出物がイネ科および/またはマツ科の植物から得られる、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
前記水溶性抽出物が花粉から得られる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記油抽出物および/または前記水溶性抽出物が、オオアワガエリ、ノコギリパルメット、トウモロコシ、ライムギ、コムギ、ウイキョウゼリ、ピジウムアフリカンウム(Pygeum africanum)およびカボチャ種子からある群から選択される少なくとも1つの植物から得られる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が二酸化ケイ素を含んでなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記油抽出物がEA5/EA10、GBX、GFXおよび/またはNAXの少なくとも1つ以上である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記水溶性抽出物がP2である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記油抽出物が前記薬中に、約1〜約20mgのフィトステロールの1日投与量を与える量で含められる、請求項1〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記油抽出物が前記薬中に、約4〜約20mgのフィトステロールの1日投与量を与える量で含められる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記油抽出物が前記薬中に、約8〜約16mgのフィトステロールの1日投与量を与える量で含められる、請求項18〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
錠剤、カプセル剤または散剤形態である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記油抽出物と前記水溶性抽出物間の比率が約1:4〜約1:20である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−512385(P2010−512385A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541262(P2009−541262)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050948
【国際公開番号】WO2008/073040
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509165312)ナチュミン ファーマ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】