説明

Lupac二機能マーカーと、タンパク質生産におけるその使用

本発明は、タンパク質の工業的生産に関する。より詳細には、本発明は、ルシフェラーゼとピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼの融合タンパク質に対応するLupac代替マーカーに関する。本発明はさらに、Lupacを利用し、注目のタンパク質を高発現する細胞をスクリーニングする方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の工業的生産に関する。より詳細には、本発明は、ルシフェラーゼとピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼの融合に対応する代替マーカーに関する。本発明はさらに、この代替マーカーを利用し、注目のタンパク質を高発現する細胞をスクリーニングする方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
異種遺伝子を動物の宿主細胞に導入し、その添加された遺伝子の発現をスクリーニングするのは、長くて複雑なプロセスである。典型的に、克服すべき多数のハードルが存在する。ハードルとは、(i)大きな発現ベクターの構成:(ii)長期にわたって安定に発現し、最終的に選択圧が存在しない、クローンのトランスフェクションと選択;(iii)高い発現率の注目の異種タンパク質のスクリーニングである。
【0003】
1.異種遺伝子を発現するクローンの選択
【0004】
組み込まれた注目の遺伝子を有するクローンの選択は、選択圧に対する耐性を与える選択マーカーを用いて実行される。選択マーカーの多くは、抗生物質(例えばネオマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、ピューロマイシン、ゼオシン、またはブレオマイシン)に対する耐性を与える。
【0005】
発現ベクターから注目の遺伝子を発現する細胞クローンを生成させるとき、典型的に、注目のタンパク質と選択マーカーの両方を同じベクター上にコードしているプラスミドDNAベクターを宿主細胞にトランスフェクトする。プラスミドの受容能は多くの場合非常に限られており、注目の遺伝子を含むそのプラスミドと同時にトランスフェクトする第2のプラスミドから選択マーカーを発現させねばならない。
【0006】
安定なトランスフェクションによって発現ベクターが宿主細胞のゲノムにランダムに組み込まれる。選択圧を利用する(例えば培地に抗生物質を投与する)ことにより、それぞれの抗生物質または選択圧に対する耐性を与える選択マーカーを含むベクターが組み込まれなかったすべての細胞が除去されることになる。この選択マーカーが注目の遺伝子と同じベクターに上にある場合、またはこの選択マーカーが第2のベクター上にあり、且つ注目の遺伝子を含むベクターを同時に組み込む場合には、細胞は、選択マーカーと注目の遺伝子の両方を発現するであろう。しかし注目の遺伝子の発現レベルは、組み込まれる部位がどこであるかによって大きく異なることがしばしば観察されている。
【0007】
さらに、選択圧を取り除くと、発現が非常に不安定になることや、発現が消えてしまうことさえしばしば起こる。したがって少数の初期トランスフェクタントだけが高レベルかつ安定な長期発現を提供するため、候補となる大きな集団の中でそのようなクローンを同定するのは極めて厄介である。典型的に、高発現候補を単離した後、選択圧のない状態で培養する。このような条件下では、選択圧を取り除いたときに注目の遺伝子の発現を損なうため、最初に選択された候補の大きな集団が除去される。したがって、安定なトランスフェクションのための初期選択期間が経過した後に選択圧のない状態で候補を培養し、それから注目の遺伝子のスクリーニングのみを行なうことが好都合であろう。
【0008】
2.高発現クローンのスクリーニング
【0009】
注目のタンパク質を高発現するクローンのスクリーニングは、そのタンパク質が大量に存在していることを直接示す方法によってなされることがしばしばある。典型的に、免疫学的な方法(ELISAや免疫組織学的染色等)を適用し、細胞内で、または細胞培養物の上清で生成物を検出する。これらの方法は退屈で、高価で、時間がかかり、また高スループット・スクリーニング(HTS)が可能でないことがしばしばある。さらに、発現したタンパク質に反応する抗体が入手可能でなければならない。
【0010】
蛍光活性化セル・ソーティング(FACS)によってタンパク質を定量化する試みがなされてきたが、限られた場合(特に分泌タンパク質)にしかうまくいっていない(Borth他、2000年)。
【0011】
高い発現率である注目のタンパク質をスクリーニングする1つのアプローチは、注目の遺伝子と同じベクターから発現する容易に測定可能な代替マーカーを用いることであろう(Chesnut他、1996年)。測定可能な代替マーカーの使用の基礎となる考え方は、同じベクター上にある注目の遺伝子と代替マーカー遺伝子は物理的にリンクしているため、これら2つの遺伝子の発現は相関している、というものである。
【0012】
当業界において、容易に測定できる多数のマーカーを入手することができる。これらのマーカーは、通常は、発色性基質または発光性基質(例えばβ-グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ノパリンシンターゼ、β-ガラクトシダーゼ、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)、及びルシフェラーゼ等)に作用する酵素に対応する。グリーン蛍光タンパク質(GFP)もFACSにおいて測定可能なマーカーとして使用することができる。これらの全てのタンパク質の活性は、HTSで使用できる標準的なアッセイで測定することが可能である。
【0013】
このアプローチの欠点は、代替マーカー遺伝子のためのさらに別の発現カセットを使用することである。そのため、少なくとも3つのタンパク質(すなわち注目の遺伝子、選択マーカー、及び代替マーカー)のためのプロモータ、cDNA、及びポリアデニル化シグナルを含む発現ユニットを収容する発現ベクターがかなり大きくなる。多鎖タンパク質では、状況がさらに複雑になる。あるいは、注目のタンパク質、選択マーカー、及び代替マーカーをそれぞれコードしている3つの遺伝子を発現する個別のプラスミド・ベクターを同時にトランスフェクトすることもでる。しかしそれぞれのベクターが異なる遺伝子座に組み込まれたり、または発現の程度がさまざまで相関していなかったりする可能性がある。
【0014】
上記の制約を解決する有望な1つのアプローチは、選択マーカーの機能と測定可能なマーカーの機能を合わせ持つキメラ・マーカーを使用するというものである。かかるアプローチは、例えばBennettら(1998年)によって発表されている。この論文には、抗生物質ゼオシンに対する耐性を与えるGFP-Zeo(商標)マーカーが開示されている。このマーカーの発現は、蛍光顕微鏡でモニターすることができる。
【0015】
EP1 262 553号には、未知の遺伝子を捕捉する方法、または遺伝子エレメントが相同的組み換えによって所定の遺伝子座に組み込まれた細胞を選択する方法におけるキメラ・マーカー及びそのキメラ・マーカーの使用が開示されている。しかしEP1 262 553号には、組み換えタンパク質を高レベルで発現するクローンをスクリーニングするためのキメラ・マーカーの使用は教示されていない。さらに、実験データは、ルシフェラーゼと、ハイグロマイシンに対する耐性を与えるタンパク質との間の融合タンパク質に対応するキメラ・マーカーに関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
高発現クローンのスクリーニングのためのキメラ・マーカーの使用の可能性はまだほとんど調べられていない状態であり、かかるキメラ・マーカーを用いて高発現クローンのスクリーニングを行なうことの有効性はさらに研究する必要がある。新規、代替、及び強力なキメラ代替マーカーの発見は、治療用タンパク質の工業的生産の分野において非常に有用であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、新規な二機能キメラ・マーカーであるLupacの構成と特徴付けに基づく。Lupacは、ルシフェラーゼと、ピューロマイシンに対する耐性を与えるタンパク質であるピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pac)との間の融合タンパク質に相当する。Lupacは、ルシフェラーゼとpacの両方の機能的特質を合わせ持つことが実証された。さらに、治療用タンパク質のための高発現クローンを単離する際にLupacが有用であることも実証された。
【0018】
したがって本発明の第1の観点は、ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pac)の断片に融合したルシフェラーゼの断片を含んでいて、(i)ルシフェラーゼ活性と;(ii)ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ活性を示す、Lupacポリペプチドに関する。
【0019】
第2の観点は、本発明によるLupacポリペプチドをコードしている核酸に関する。
【0020】
第3の観点は、本発明による核酸を含むベクターに関する。
【0021】
第4の観点は、本発明による核酸を含む細胞に関する。
【0022】
第5の観点は、注目のタンパク質を産生するための、本発明による核酸を含む細胞の使用に関する。
【0023】
第6の観点は、注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングするための、本発明によるポリペプチド、核酸、ベクターの使用に関する。
【0024】
第7の観点は、注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングする方法に関し、当該方法は
(i)本発明による発現ベクターによって細胞をトランスフェクトするステップ;
(ii)ピューロマイシンに対する耐性のある細胞を選択するステップ;及び
(iii)ステップ(ii)で選択した細胞のルシフェラーゼ活性を調べるステップを含んで成る。
【0025】
第8の観点は、注目のタンパク質を発現する細胞株を得る方法に関し、当該方法は、
(i)本発明のスクリーニング方法に従って細胞をスクリーニングするステップ;
(ii)上記注目のタンパク質の最高の発現を示す細胞を選択するステップ;及び
(iii)上記細胞から細胞株を確立するステップを含んで成る。
【0026】
第9の観点は、注目のタンパク質を生産する方法に関し、当該方法は、
(i)本発明に従って得られた細胞株を、上記注目のタンパク質が発現できる条件下で培養するステップ;及び
(ii)注目の上記タンパク質を回収するステップを含んで成る。
【0027】
第10の観点は、本発明のポリペプチドを生産する方法に関し、当該方法は、
(i)本発明の核酸を含む細胞を、Lupacポリペプチドが発現できる条件下で培養するステップ;及び
(ii)本発明によるそのポリペプチドを回収するステップを含んで成る。
【0028】
配列表の配列に関する簡単な説明
配列ID番号1は、本発明によるLupacポリペプチドの核酸配列に相当する。
配列ID番号2は、本発明によるLupacポリペプチドをコードするタンパク質配列に相当する。
配列ID番号3〜6は、本発明によるLupacポリペプチドを構成するために用いられるプライマーに相当する。
配列ID番号7は、pBSI.IL18BPmCMVLupac.Iベクターに存在するマウスCMV前初期領域のフラグメントに相当する。
配列ID番号8は、キタアメリカホタル(photinus pyralis)のルシフェラーゼのタンパク質配列に相当する。
配列ID番号9は、ストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)のpacのタンパク質配列に相当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、Lupacと呼ばれる新規な二機能性キメラ・マーカーの構成と特徴化に基づく。Lupacは、ルシフェラーゼと、ピューロマイシンに対する耐性を与えるタンパク質であるピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pac)との間の融合タンパク質に相当する。
【0030】
Lupacは、ルシフェラーゼとpacの両方の機能の特質を合わせ持つことが実証された(実施例2)。したがってLupacマーカーは、そのpac活性のゆえに安定なトランスフェクションにおける選択マーカーとして用いることと、そのルシフェラーゼ活性のゆえに容易に測定できる代替マーカーとして用いることの両方が可能である。
【0031】
さらに、治療用タンパク質を高発現するクローンを単離するためにLupacが有用であることも実証された。実施例3では、2つの異なるプロモータから発現させたLupacと注目のタンパク質を含むベクターを構成した。Lupacの発現レベルと注目の遺伝子の発現レベルの間には非常に良好な正の相関が存在していることが示された。
【0032】
したがって本発明により、強力なマーカーであるLupacが提供される。このLupacは、安定なトランスフェクションにおける選択性を提供するのに使用できると同時に、注目の遺伝子を高発現する候補クローンをスクリーニングするための代替マーカーとしても機能する。HTSでLupacを用いると、高発現クローンを選択できる可能性を、注目の遺伝子の発現レベルを直接測定する場合と同程度に維持できる。さらに、Lupacを用いると、時間を短縮し、コストを下げ、資材を減らすことができる。なぜなら(i)生産物とは無関係に標準化され、そして簡単な分析がなされ;そして(ii)ルシフェラーゼ活性の測定は安価なアッセイだからである。
【0033】
1.Lupacポリペプチド
【0034】
本発明の第1の観点は、ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pac)の断片に融合したルシフェラーゼの断片を含んでいて、(i)ルシフェラーゼ活性と;(ii)ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ活性を示すLupacポリペプチドに関する。本明細書では、以後、用語“Lupacポリペプチド”または“Lupac”をかかるポリペプチドと呼ぶ。
【0035】
本明細書では、ポリペプチドは、ルシフェリンを酸化できる場合に“ルシフェラーゼ活性”を示す。上記ポリペプチドは、以下の反応のうちの少なくとも1つの触媒となれることが好適である。
・ホタル(Photinus)のルシフェリン + O2 + ATP => 酸化されたホタルのルシフェリン + CO2 + H2O + AMP + 二リン酸塩 + 光。
・ウミシイタケ(Renilla)またはウミホタル(Cypridina)のルシフェリン + O2 <=> 酸化されたウミシイタケのルシフェリン + CO2 + 光。
【0036】
ホタルのルシフェリンは、(S)-4,5-ジヒドロ-2-(6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾロイル)-4-チアゾールカルボン酸を意味する。ウミホタルのルシフェリンは、[3-[3,7-ジヒドロ-6-(1H-インドール-3-イル)-2-[(S)-1-メチル-6-プロピル]-3-オキソイミダゾ-[1,2-a]ピラジン-8-イル]プロピル]グアニジンを意味する、ウミシイタケのルシフェリンは、8-ベンジル-2-(4-ヒドロキシベンジル)-6-(4-ヒドロキシフェニル)イミダゾ-[1,2-A]ピラジン-3(7H)-オンを意味する。
【0037】
上記の反応が起こっている間に発生する光を測定することにより、ルシフェラーゼの活性を測定できる。ルシフェラーゼの活性は、例えば実施例2.2に発表したようにして測定することができる。
【0038】
本明細書では、ポリペプチドは、ピューロマイシンに対する耐性を細胞に与えることができる場合に“ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ活性”を示す。ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば実施例2.3に発表したようにして測定することができる。
【0039】
好適な態様では、Lupacポリペプチドは、ホタル(例えばキタアメリカホタル(photinuspyralis)、ゲンジボタル(Luciola cruciata)、ヘイケボタル(Luciola lateralis)、またはフォトゥリ・ペンシルバニカ(Photuris pennsylvanica))からのルシフェラーゼの断片を含んでいる。Lupacポリペプチドは、キタアメリカホタルのルシフェラーゼの断片を含んでいることが好ましい。この明細書では、“キタアメリカホタルのルシフェラーゼ”という用語は、配列ID番号8のポリペプチド、またはその対立遺伝子変異体、またはそのスプライス変異体、またはそのムテインを意味する。最も好ましいのは、上記キタアメリカホタルのルシフェラーゼの断片が、配列ID番号8のアミノ酸1〜547を含んでいることである。あるいは上記キタアメリカホタルのルシフェラーゼの断片は、キタアメリカホタルの全長ルシフェラーゼの少なくとも50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個、300個、325個、350個、375個、400個、425個、450個、475個、500個、または525個のアミノ酸の断片、またはキタアメリカホタルの全長ルシフェラーゼに対応していてもよい。
【0040】
他の好適な態様では、Lupacポリペプチドは、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)(ウミシイタケ(sea pansy))またはヴァルグラ・ヒルゲンドルフィ(Vargula hilgendorfii)(ウミホタル(sea firefly))からのルシフェラーゼの断片を含んでいる。
【0041】
他の好適な態様では、Lupacポリペプチドは、ストレプトミセス(Streptomyces)属(例えばストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)、またはストレプトミセス・コエリコロール(Streptomyces coelicolor))からのpacの断片を含んでいる。Lupacポリペプチドは、ストレプトミセス・アルボニガーのpacの断片を含んでいることが好ましい。本明細書では、“ストレプトミセス・アルボニガーのpac”という用語は、配列ID番号9のポリペプチド、またはその対立遺伝子変異体、またはそのスプライス変異体、またはそのムテインを意味する。より好ましいのは、このpacの断片が配列ID番号9のアミノ酸2〜199を含んでいることである。あるいは上記ストレプトミセス・アルボニガーのpacの断片は、ストレプトミセス・アルボニガーの全長pacの少なくとも50個、75個、100個、125個、150個、または175個のアミノ酸の断片、またはストレプトミセス・アルボニガーの全長pacに対応していてもよい。
【0042】
Lupacポリペプチドでは、ルシフェラーゼの断片をpac断片の5'末端に融合させること、またはpac断片をルシフェラーゼの断片の5'末端に融合させることができる。好適には、ルシフェラーゼの断片をpac断片の5'末端に融合させる。
【0043】
最も好ましい態様では、Lupacポリペプチドは、配列ID番号2を含むか、配列ID番号2からなる。
【0044】
他の最適な態様では、Lupacポリペプチドは、配列ID番号2と少なくとも50%同一のアミノ酸配列、より好適には少なくとも60%同一のアミノ酸配列、さらにより好適には少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一のアミノ酸配列を含むか、そのようなアミノ酸配列からなる。
【0045】
本明細書では、“ムテイン”という用語は、天然のポリペプチドのアナログのうちで、天然のポリペプチドの1個以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されていたり、天然のポリペプチドの1個以上のアミノ酸残基が欠失していたり、天然のポリペプチドに1個以上のアミノ酸残基が付加されていたりするが、得られる産物の活性は天然のポリペプチドと比べて大きく低下していないものを意味する。このようなムテインは、公知の合成法および/または部位指定突然変異誘発技術によって、あるいは任意の他の適切な公知技術によって作られる。ストレプトミセス・アルボニガーのpacまたはキタアメリカホタルのルシフェラーゼに関する本発明で使用可能なムテイン、またはこのムテインをコードしている核酸(その中には、置換ペプチドや置換ポリヌクレオチドなどの実質的に対応する配列の有限集合が含まれる)は、通常の当業者であれば、この明細書に提示した示唆や指示に基づき、過度な実験を行なうことなく定型的に得ることができるだろう。
【0046】
ストレプトミセス・アルボニガーのpacまたはキタアメリカホタルのルシフェラーゼに関する本発明のムテインには、pacまたはルシフェラーゼをコードしている本発明のDNAやRNAに中程度のストリンジェント条件下、または高度のストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸(例えばDNAやRNA)によってコードされているタンパク質が含まれる。“ストリンジェント条件”という用語は、ハイブリダイゼーションとそれに続く洗浄の条件のうちで、通常の当業者が一般に“ストレンジェント”と呼ぶ条件を意味する。Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology, Interscience、NY、§6.3及び6.4(1987年、1992年)と、Sambrook他(Sambrook, J.C.、Fritsch, E.F.、Maniatis, T.、1989年、Molecular Cloning: A laboratory Manual, Cole Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Habor、NY)を参照のこと。
【0047】
ストリンジェント条件の限定的ではない例は、試験下にあるハイブリッドの計算値Tmよりも12〜20℃低い温度にて2×SSC及び0.5%SDSの中で5分間、2×SSC及び0.1%SDSの中で15分間;37℃にて0.1×SSC及び0.5%SDSの中で30〜60分間、そしてその後、68℃にて0.1×SSC及び0.5%SDSの中で30〜60分間にわたって洗浄するという条件を含む。通常の当業者であれば、ストリンジェント条件は、DNA配列、オリゴヌクレオチド・プローブ(例えば10〜40塩基)、混合オリゴヌクレオチド・プローブの長さにも依存することが理解できるだろう。混合プローブを用いる場合には、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を用いることが好ましい。
【0048】
ストレプトミセス・アルボニガーのpacまたはキタアメリカホタルのルシフェラーゼのムテインは、天然のポリペプチドと少なくとも50%同一、より好ましくは少なくとも60%同一、及び更に好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0049】
本発明の参照アミノ酸配列と例えば少なくとも95%“同一”のアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、対象となるポリペプチドのアミノ酸配列が、参照アミノ酸配列のアミノ酸100個ごとに5個まで異なるアミノ酸を含んでいてもよい点を除いて参照配列と同一であることを意味する。言い換えるならば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドを得るには、対象となる配列の5%(100個のうちの5個)までのアミノ酸残基が、挿入されたり、欠失したり、または他のアミノ酸で置換されていたりしてもよい。
【0050】
正確な対応が存在していない複数の配列に関して“%同一性”が決定され得る。一般に、比較する2つの配列の相関が最大になるようにアラインメントさせる。ここには、“ギャップ”を一方または両方の配列に挿入してアラインメントの程度を改善する操作が含まれていてもよい。%同一性は、比較されるそれぞれの配列の全長にわたり決定され得る(いわゆる全体アラインメント)。これは、長さが同一または近似する配列に特に適している。あるいは%一致は、より短い所定の長さに関して決定され得る(いわゆる局所的アラインメント)。これは、長さが異なる配列により適している。
【0051】
2つ以上の配列の同一性および相同性を比較する方法は当業界において周知である。例えばウィスコンシン配列分析パッケージ、バージョン9.1(Devereux他、1984年)で入手可能なプログラム(例えばBESTFITとGAP)を用いて2つのポリヌクレオチドの%同一を決定することや、2つのポリペプチド配列の%同一性と%相同性を決定することができる。BESTFITでは、(SmithとWaterman、1981年)“局所的相同性”アルゴリズムが用いられており、2つの配列の間で最も近似する単一の領域が見いだされる。配列間の同一性および/または類似性を決定する他のプログラムも当業界において公知であり、例えばワールド・ワイド・ウェブ・サイトでNCBIのホーム・ページを通じてアクセスできるBLASTファミリーのプログラム(Altschul他、1990年)や、FASTA(PearsonとLipman、1988年;Pearson、1990年)がある。
【0052】
本発明のムテインに関する好適な変化は、“保存的”置換として知られるものである。ストレプトミセス・アルボニガーのpacまたはキタアメリカホタルのルシフェラーゼの保存的アミノ酸置換は、1つのグループ内の同義アミノ酸がある。同義アミノ酸は、互いに十分に近似する物理化学的性質を持っているため、そのグループのメンバー同士を入れ換えてもその分子の生物機能が保持される(Grantham、1974年)。上記配列に対するアミノ酸の挿入や欠失でその配列の機能を変えないものも可能であることは明らかである。それは特に、挿入または欠失がほんのアミノ酸数個(例えば30個未満であり、10個未満が好ましい)であって、しかも機能する立体配座となる上で極めて重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)が取り除かれたり移動したりしない場合に当てはまる。このような欠失および/または挿入によって生まれるタンパク質とムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
同義アミノ酸のグループは、表Iに規定したものであることが好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIに規定したものであることがさらに好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIIに規定したものであることが最も好ましい。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
ストレプトミセス・アルボニガーのpacまたはキタアメリカホタルのルシフェラーゼに関して本発明で用いるムテインを得るのに利用できるタンパク質のアミノ酸置換法の例は、公知の任意の方法であり、例えば、Markらに付与された米国特許第4,959,314号、第4,588,585号、第4,737,462号;Kothsらに付与された米国特許第5,116,943号;Namenらに付与された米国特許第4,965,195号;Chongらに付与された米国特許第4,879,111号;Leeらに付与された米国特許第5,017,691号に提示されている方法があり;リシン置換されたタンパク質は米国特許第4,904,584号(Shaw他)に提示されている。
【0058】
本発明のムテインは、対応する天然のポリペプチドと実質的に同じ生物活性を示すことが好ましい。
【0059】
2.Lupac核酸と、それを含むベクターおよび宿主細胞
【0060】
本発明の第2の観点は、Lupacポリペプチドをコードしている核酸に関する。本明細書では、かかる核酸を以後“Lupac核酸”と呼ぶ。
【0061】
好適な態様では、Lupac核酸は、配列ID番号1を含むか、配列ID番号1からなる。
【0062】
当業界において公知の任意方法を利用して本発明のLupac核酸を得ることができる。Lupac核酸は、例えば実施例1に記載したようにして得られる。
【0063】
本発明の第3の観点は、Lupac核酸を含むベクターに関する。かかるベクターを、本明細書では“Lupacベクター”と呼ぶ。Lupacベクターは発現ベクターであることが好ましい。かかるベクターをさらに“Lupac発現ベクター”と呼ぶ。“Lupacベクター”という用語には“Lupac発現ベクター”も含まれる。“ベクター”という用語は、本明細書では、二本鎖または一本鎖の環状または直線状のDNA化合物またはRNA化合物を指すのに用い、その化合物には、宿主細胞に、すなわち単細胞または多細胞の宿主生物に移すことになる本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドが含まれている。“発現ベクター”には、ベクター内の適切なシグナルが含まれる。このシグナルには、多様な調節エレメント(ウイルス、細菌、植物、哺乳動物、及び他の真核生物に由来し、宿主細胞に挿入されたポリヌクレオチドを発現させるエンハンサー/プロモータなど)が挙げられる。
【0064】
最適な態様では、Lupac発現ベクターは、注目のタンパク質をコードしている核酸をさらに含んでいる。実施例3に示すように、かかるベクターは、注目のタンパク質を高発現する細胞のスクリーニングに特に有用である。
【0065】
本発明では、“注目のタンパク質”は、その生産が所望される任意のポリペプチドであってよい。注目のタンパク質は、医薬、農業ビジネス、または研究所の器具の分野における使用が見出される。注目のタンパク質は、好適には医薬の分野で使用される。
【0066】
注目のタンパク質は、例えば、天然の分泌タンパク質、通常の細胞質タンパク質、正常の膜貫通タンパク質、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体であってよい。注目のタンパク質が正常の細胞質タンパク質または正常の膜貫通タンパク質である場合には、そのタンパク質を可溶性にするために好適には遺伝子操作される。注目のポリペプチドは任意の由来であってよい。注目のポリペプチドは好適にはヒト起源である。
【0067】
好適な態様では、注目のタンパク質の選択は、絨毛性性腺刺激ホルモン、濾胞刺激ホルモン、ルトロピン-絨毛性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えばインターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b)、インターフェロン受容体(例えばインターフェロンγ受容体)、TNF受容体p55とp75、インターロイキン(例えばインターロイキン-2、インターロイキン-11)、インターロイキン結合タンパク質(例えばインターロイキン-18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチド・ホルモン、更年期ゴナドトロピン、インスリン様増殖因子(例えばソマトメジン-C)、角質細胞増殖因子、グリア細胞系由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨誘導因子-2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポイエチン、組み換えLFA-3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼと、及びこれらのムテイン、断片、可溶性形態、機能性誘導体、融合タンパク質から成る群からなされる。
【0068】
好適な態様では、Lupac発現ベクターは、注目のタンパク質をコードしている核酸であり、且つ少なくとも2つのプロモータを含んでいる。一方のプロモータはLupacポリペプチドを発現させ、他方のプロモータは注目のタンパク質を発現させる。かかるベクターは、エンハンサー領域および/または発現促進配列(例えばインシュレータ、境界エレメント、LCR(例えばBlackwoodとKadonaga、1998年に記載)、またはマトリックス/足場結合領域(例えばLi他、1999年に記載)をさらに含むことができる。Lupac発現ベクターの中にある異なるORFの間に内部リボソーム・エントリー部位(IRES)が存在してもよい。
【0069】
あるいはLupac発現ベクターは、注目のタンパク質の発現とLupacの発現の両方を駆動するプロモータを含んでいる。LupacのORFは、IRESの存在によって注目のタンパク質のORFとは隔てられている。IRESは、例えばウイルスや細胞の遺伝子に由来してよい。
【0070】
この明細書では、“プロモータ”という用語は、DNAの領域のうちで1つ以上のDNA配列の転写を制御する機能を持つ領域を意味し、且つDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位及び相互作用してプロモータ機能を調節する他のDNA配列の存在によって構造的に同定される。プロモータの機能性発現促進断片は、プロモータとしての活性が保持された短縮プロモータ配列または切り詰めプロモータ配列である。プロモータの活性は、当業界における公知の任意のアッセイ(例えばルシフェラーゼをレポータ遺伝子として用いたレポータ・アッセイ(Wood他、1984年;SeligerとMcElroy、1960年;de Wet他、1985年);またはプロメガ(商標)から商業的に入手可能)で測定され得る。“エンハンサー領域”は、DNAの領域のうちで1個以上の遺伝子の転写を増大させる機能を持つ領域である。より詳細には、“エンハンサー”という用語は、本明細書では、ある遺伝子の発現を、発現させるその遺伝子に関して位置や方向とは無関係に促進、増大、向上、または改善させるDNA調節エレメントであり、1つ以上のプロモータの発現を促進、増大、向上、または改善させ得る。
【0071】
好適な態様では、Lupac発現ベクターは、マウスCMV前初期領域の少なくとも1つのプロモータを含んで成る。このプロモータとして、例えばWO 87/03905に記載され公知になっているmCMV IE1遺伝子のプロモータ(“IE1プロモータ”)であってよい。当該プロモータは、mCMV IE2遺伝子のプロモータ(“IE2プロモータ”)でもよい。なおmCMV IE2遺伝子そのものは、例えばMesserleら(1991年)の論文から公知である。IE2プロモータ領域とIE2 エンハンサー領域は、PCT/EP2004/050280に詳細に記載されている。Lupac発現ベクターは、ネズミCMV前初期領域の少なくとも2つのプロモータを含んでいることが好ましい。より好適には、当該2つのプロモータは、IE1プロモータとIE2プロモータである。最適には、当該Lupac発現ベクターは、その中にIE1プロモータ、IE2プロモータ、及びエンハンサー領域を含む配列ID番号7を含んで成る。
【0072】
好適な態様では、Lupac発現ベクターは、ネズミCMV前初期領域の少なくとも2つのプロモータを含んでいる。一方のプロモータはLupacポリペプチドを発現させ、他方のプロモータは注目のタンパク質を発現させる。この態様は、図4に示したpBSI.IL18BPmCMVLupac.Iベクターで実現されており、その中に含まれるIE1プロモータがLupacポリペプチドを発現させ、IE2プロモータが注目のタンパク質を発現させる。
【0073】
好適な他の態様では、ネズミCMV前初期領域のプロモータが、注目のタンパク質をコードしている遺伝子を発現させ、Lupacポリペプチドは、ベクターの骨格に挿入された別の発現カセットから発現される。IE1プロモータとIE2プロモータは、注目のタンパク質をコードしている遺伝子の同じ2つのコピーのいずれか、または注目の多量体タンパク質(例えば抗体やペプチド・ホルモン)の2つのサブユニットのいずれかを発現させることができる。
【0074】
好適な他の態様では、Lupac発現ベクターは、増幅マーカーを含んで成る。当該増幅マーカーは、例えば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)、及びN-(ホスホンアセチル)-L-アスパラギン酸耐性(CAD)から成る群から選択することができる。注目のタンパク質をコードしている遺伝子を増幅すると、細胞にベクターを組み込んだときに注目のそのタンパク質の発現レベルを増大させることができる(Kaufman他、1985年)。
【0075】
本発明の第4の観点は、Lupacベクターをトランスフェクトされた細胞に関する。多くの細胞が本発明に適しており、例えば多種多様な真核生物(植物細胞、動物細胞を含む)からの一次細胞系や確立された細胞系がある。好適には前記細胞は真核細胞である。より好適には前記細胞は哺乳動物の細胞である。最適には前記細胞はチャイニーズ・ハムスターの細胞またはヒトの細胞である。
【0076】
適切な細胞として、例えばNIH-3T3細胞、COS細胞、MRC-5細胞、BHK細胞、VERO細胞、CHO細胞、rCHO-tPA細胞、rCHO-Hep B表面抗原細胞、HEK 293細胞、rHEK細胞、rC127-Hep B表面抗原細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、LM細胞、YI細胞、NS0およびSP2/0マウスハイブリドーマ細胞等、RPMI-8226細胞、WI-38細胞、正常なヒト線維芽細胞、ヒト・ストロマ細胞、ヒト肝細胞、ヒト骨肉腫細胞、ナマルワ細胞、ヒト網膜芽細胞、PER.C6細胞、及び哺乳動物の他の不死化細胞および/または形質転換細胞がある。
【0077】
3.Lupacの使用法
【0078】
第5の観点は、Lupac核酸を含む細胞を使用し、注目のタンパク質を産生させる方法に関する。好適には前記細胞は、Lupacベクターを含んで成る。
【0079】
実施例3.3.2、3.3.3、及び4に検討するように、Lupacポリペプチドの選択・代替マーカーとしての使用は、注目のタンパク質を高発現する細胞をスクリーニングする上で多くの利点を提供する。特に、Lupacポリペプチドの発現は注目のタンパク質の発現と高く相関しているため、発現が高度であるLupacを最初にスクリーニングすることが好都合である。注目のタンパク質の発現は2回目のスクリーニングで調べられる。このスクリーニングは、高発現するLupacを探す最初のスクリーニングで単離された最良の産生細胞によってのみ実施される。
【0080】
したがって本発明の第6の観点は、Lupacポリペプチド、Lupac核酸、またはLupac発現ベクターを使用し、注目のタンパク質を発現する細胞、または高発現する細胞をスクリーニングする方法に関する。細胞に対する最初のスクリーニングによって発現が多いLupacを探し、次いで推論によってLupacの発現を注目のタンパク質の発現と相関させる。するとLupacの発現レベルが低いという理由でテストした細胞の80〜95%が迅速に除去されるため、残った5〜20%に対して注目の遺伝子の発現を第2ステップにおいて分析することができる。
【0081】
本発明の利用法と方法に関して、“高発現”とは、スクリーニングされた特定の細胞内での発現レベルが、スクリーニングされた他の細胞内での発現レベルよりも高いことを意味する。あるタンパク質の“高発現”は、相対値である。例えば商業的に製造されている組み換えタンパク質の最終発現レベルは、そのタンパク質、年間必要量や、及び治療投与量に応じ、1〜2,000mg/lの範囲である。スクリーニングの間、注目のタンパク質の発現レベルは、最終発現レベルよりも低い。
【0082】
第7の観点は、注目のタンパク質を発現する細胞、または高発現する細胞をスクリーニングする方法に関し、当該方法は、
(i)Lupac発現ベクターを細胞にトランスフェクトするステップ;
(ii)ピューロマイシンに対し耐性のある細胞を選択するステップ;及び
(iii)ステップ(ii)で選択した細胞のルシフェラーゼ活性を調べるステップを含んで成る。
【0083】
好適な態様では、ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞の20%に、注目のタンパク質の発現が最高である細胞が含まれる。好適には、ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞の10%に、注目のタンパク質の発現が最高である細胞が含まれる。最適には、ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞の1または5%に、注目のタンパク質の発現が最高である細胞が含まれる。
【0084】
ルシフェラーゼ活性は、上記の方法のステップ(iii)において5秒間の取得時間の間にCentro LB 960光度計を用いてブライト-グロ・ルシフェラーゼ・アッセイ(Bright-Glo Luciferase assay)によって測定することが好ましい。
【0085】
任意の数の細胞をかかる方法でスクリーニングすることができる。少なくとも20個、50個、100個、500個、1,000個、5,000個、10,000個、50,000個、100,000個、500,000、または1,000,000個の細胞のルシフェラーゼ活性をステップ(iii)において調べることが好ましい。最適には、ピューロマイシンに対する耐性を有する独立な少なくとも1,000〜10,000,000個のトランスフェクタントを得るのに十分な細胞の集団をスクリーニングすることである。これらの細胞のうちで、ピューロマイシンに対する耐性を有する少なくとも10〜1,000,000個の候補クローンに関してさらにルシフェラーゼ活性を調べることができる。
【0086】
上記のスクリーニング法の終了時に得られる細胞は、Lupacの発現に関して相対的にランク付けすることができる。上記の任意の方法が終了したときに最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞を選択できる。例えばLupac発現細胞の上位5〜20%に対応するルシフェラーゼ活性を示す個々の細胞を選択し、続くステップにおいて注目の遺伝子の発現をさらに分析する。
【0087】
好適な態様では、上記のスクリーニング法は、ステップ(iii)で調べた細胞の約1%〜約20%を選択するステップ(iv)をさらに含んでいる。その選択された細胞は、ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞である。ルシフェラーゼ活性が最高であることを基準にして、ステップ(iii)で調べた細胞の約5%〜約20%を選択することができる。あるいはルシフェラーゼ活性が最高であることを基準にして、ステップ(iii)で調べた約1%、1.5%、2%、3%、4%、5%〜約30%、40%、50%、60%、70%、80%の細胞を選択することができる。
【0088】
他の好適な態様では、上記のスクリーニング法をマルチウエルマイクロタイタープレート、またはそれと同様のものを用いて実施する。
【0089】
最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞が選択されると、前記選択された細胞に含まれる注目のタンパク質の発現レベルをさらに調べることができる。
【0090】
したがって第8の観点は、注目のタンパク質を発現する細胞系を得る方法に関し、当該方法は、
(i)上記の任意のスクリーニング方法に従って細胞をスクリーニングするステップ;
(ii)前記注目のタンパク質の発現が最高である細胞を選択するステップ;及び
(iii)前記細胞から細胞系を確立するステップ、を含んで成る。
【0091】
本明細書では、“細胞系”は、実験室で成長することのできる1つの特定のタイプの細胞を意味する。細胞系は、通常は、永続的に確立した細胞培養の中で増殖させることができ、新鮮な培地と空間が適切に与えられれば無限に増殖するであろう。単離した細胞から細胞系を確立する方法は、当業者には周知である。
【0092】
第9の観点は、注目のタンパク質を生産する方法に関し、当該方法は
(i)上記のようにして得られた細胞系を、注目のそのタンパク質が発現できる条件下で培養するステップ;及び
(ii)注目の前記タンパク質を回収するステップを含んで成る。
【0093】
注目のタンパク質の発現を可能にする条件は、当業者によって標準的な方法で容易に確立することができる。例えば実施例3.3.1に開示した条件を利用することができる。
【0094】
好適な態様では、注目のタンパク質を生産する上記の方法は、注目の前記タンパク質を精製するステップをさらに含んで成る。精製は、当業者に周知の任意の方法で実施され得る。注目のタンパク質が医薬分野で使用される場合には、好適には当該注目のタンパク質は医薬組成物に製剤化される。
【0095】
第10の観点は、Lupacポリペプチドを製造する方法に関し、当該方法は
(i)Lupac核酸を含む細胞を、Lupacポリペプチドが発現できる条件下で培養するステップ;及び
(ii)Lupacポリペプチドを回収するステップを含んで成る。
【0096】
かかる方法は、例えば実施例2に発表するように実施され得る。かかる方法はさらに、Lupacポリペプチドを当業界における任意の公知方法で精製するステップを含み得る。
【0097】
本発明をここに十分に説明したので、本発明の精神と範囲から逸脱せず、過度な実験を実施せず、広い範囲の同等なパラメータ、濃度、及び条件で本発明を実施することができることを当業者は理解するだろう。
【0098】
本発明を特別な態様で説明したが、さらなる変更が可能であることが理解されるだろう。本出願は、一般に本発明の原理に従う任意の変形、利用法、または改変をカバーし、且つ本発明の属する技術分野における公知または慣用技術、及び添付の特許請求の範囲にある本明細書にて説明した本質的な特徴に適用され得る、本開示内容からの逸脱も含むことが意図される。
【0099】
本明細書で引用した全ての参考文献(例えば学術誌の論文や要約、米国公開特許出願、未公開特許出願、外国の特許出願、米国または外国で付与された特許、他のあらゆる参考文献)は、引用された文献に提示されているあらゆるデータ、表、図面、文章も含め、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。さらに、参考文献の中で引用されている参考文献も全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0100】
公知の方法の個々のステップ、慣用法の個々のステップ、公知の方法、慣用法に言及してある場合、本発明の任意の観点、説明、または態様が、関連技術に開示、教示、または示唆されると認めているわけでは決してない。
【0101】
特別な態様の上記説明によって、本発明の全体的な特徴が完全に明らかになるであろうから、他の者は、当業者の知識(その中にはこの明細書で引用した参考文献の内容も含まれる)を適用することにより、過度な実験を実施せず、本発明の一般的な概念から逸脱せずに、かかる特別な実施態様を多様な適用のために容易に修正および/または改変することができるだろう。したがってかかる改変及び修正は、本明細書で示される教示及び指南に基づき、開示された態様と同等の意味及び範囲内にあるものと意図される。本明細書の専門用語または表現は説明を目的とするものであって、本発明を制限する意図はなく、本明細書のかかる専門用語または表現は、本明細書に示される教示や指南を通常の当業者の知識と組み合わせて解釈するものとする。
【実施例1】
【0102】
Lupacの構成
1.1.PCRによるLupac核酸の取得
ホタルのルシフェラーゼとPACのオープン・リーディング・フレームをPCRクローニングによって融合することでLupacを構成した。
【0103】
ルシフェラーゼのための鋳型DNAはpGL3-ctrlプラスミド(Pronega、カタログ#E1741)であり、及びピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼのための鋳型DNAはpPURプラスミド(Clontech、カタログ#6156-1)であった。増幅と、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼの5'末端へのルシフェラーゼの3'末端の融合を可能にする2対のPCRプライマー(配列ID番号3〜6)を設計した。第1のPCRプライマーは、ルシフェラーゼ遺伝子のPpuMI部位から最後のアミノ酸までを停止コドンを除いて増幅し、そして第2のPCRプライマーは、翻訳の開始コドンとして機能する最初のメチオニンを除き、ルシフェラーゼの3'末端をピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼの5'末端に融合した。
【0104】
PCRの条件は以下の通りであった:
・ルシフェラーゼの増幅:配列ID番号3と4のプライマーを50ピコモル、pGL3-ctrlを20ng、それぞれのdNTPを200μM、1×サーモポル緩衝液、Vent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、カタログ#M0254S、10×緩衝液を含有)を2単位、5%DMSOで合計50μlの容量とする。
【0105】
・pacの増幅:、配列ID番号5と6のプライマーが50ピコモル、pPurが20ngであること以外は、ルシフェラーゼと同じ化学的条件にした。
【0106】
・サイクリング:
- 変性:1サイクル、98℃、5分間
- ハイブリダイゼーション/重合:98℃にて1分間と60℃にて1分間を25サイクル
- 最終的な重合:1サイクル、72℃、10分間。
【0107】
ルシフェラーゼを増幅するPCRでは474塩基対のバンドが得られたのに対し、pacを増幅するPCRでは618塩基対のバンドが得られた。
【0108】
Macherey-Nagel社のNucleospin抽出キット(カタログ#740 590.50)を用い、製造業者のプロトコルに従って各PCR反応物を精製した。
【0109】
精製した1μlの各PCR断片を用いて別のPCR反応を以下のように実施した。
配列ID番号3と6のプライマーを50ピコモル使用した。1回目の変性ステップの後にVent DNAポリメラーゼを添加した以外は、第1ステップのPCRで説明したものと同じ混合物を使用した(ホット・スタート法)。ハイブリダイゼーション/重合の温度を65℃に上げた以外は、サイクリング・パラメータは本質的に同一のままであった。
【0110】
PCR反応によって2つのDNA断片を融合させ、1092塩基対の1つの断片にすることができる。
【0111】
アガロース・ゲルからバンドを切断することによってこのPCR断片を精製し、そしてEppendorf・テーブル遠心分離機中で9600rpmにて10分間にわたってCorningフィルターチップ(カタログ#4823)中で遠心分離した。次に、2容積の100%エタノールを添加することによって溶離液を沈澱させ、フルスピードで遠心分離した。
【0112】
1.2.前記核酸のクローニング
1.2.1.pBS-Lupak
ペレットを再懸濁させ、そしてT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Stratagene、カタログ#600103)により製造業者のプロトコルに従って処理した。レシピエント・ベクターは、EcoRVによって切断した後、子ウシの腸アルカリホスファターゼ(Gibco 18009-027)を製造業者のプロトコルに従って処理したpBluescript II SK(+)(カタログ#212205-01)であった。プラスミドpBS-Lupacは、慣用の連結反応及び大腸菌中のクローニングによって取得した。次にこのプラスミドの配列をシークエンシングによって確認した。
【0113】
1.2.2.pGLupac
確認されたpBS-Lupacの配列をPpuMI/XbaIで消化させ、1.1kbのバンドをCorningチップとエタノールによる沈澱を利用して精製した。レシピエント・ベクターは、PpuMI/XbaIで消化させたpGL3-ctrlであった。Corningチップを用いた溶離によって4.8kbのバンドが精製された。連結後に得られたベクターpGLupacは、配列ID番号1のLupac配列を含んでいた。このLupac配列は、配列ID番号2のLupacポリペプチドをコードしている。
【0114】
pGLupacを図2に示す。pGLupacは、3'末端にSV40エンハンサーを有するSV40プロモータから発現するLupacのためのORFを含んで成る。
【0115】
1.2.3.pGLupac-ベーシック
pGL3ベーシック(Promega、カタログ# E1751)をNcoI/XbaIで切断した。pGLupacをNcoI/XbaIで切断し、Corningチップを用いて2.3kbのLupac挿入体を精製した。連結後に得られたベクターをpGLupac-ベーシックと名づけた。
【0116】
1.2.4.pBSI.IL18BPmCMVLupac.I
pGLupac-ベーシックをNheI/ClaI/PvuIで消化させた。2.6kbのNheI/ClaI断片を精製した。レシピエント・ベクターは、マウスCMV前初期領域を含むベクターをNheIとClaIで消化させることによって取得した。このレシピエント・ベクターは、IE1プロモータとIE2プロモータ、ならびにIE1エンハンサーとIE2エンハンサーが含まれている配列ID番号7のDNA配列を含んでいる。配列ID番号7のDNA配列の機能に関する詳細な説明は、PCT/EP2004/052591に記載されている。このレシピエント・ベクターは、IL18BP(SwissProt アクセス番号第O95998号)をコードしているDNA配列をさらに含んでいた。
【0117】
連結後に得られたベクターをpBSI.IL18BPmCMVLupac.Iと名づけた。pBSI.IL18BPmCMVLupac.Iを図2に示す。IL18BPの発現はIE2プロモータによって駆動されるのに対し、Lupacの発現はIE1プロモータによって駆動される。
【0118】
この構成体では、IL18BPは産生させる注目のタンパク質に対応し、そしてLupacは代替マーカーに対応する。
【実施例2】
【0119】
Lupacの機能の特徴化
安定にトランスフェクトされた細胞にLupacが2つの機能(すなわち、測定可能なルシフェラーゼ活性と、ピューロマイシンに対する耐性)を与えるかどうかを調べるため、アッセイを実施した。これは、CHO細胞にLupacの発現ベクターをトランスフェクトすることによって調べた。対照として、ホタルの野生型ルシフェラーゼの発現ベクターとpacの発現ベクターを同時にトランスフェクトしたCHO細胞を用いた。
【0120】
2.1.リポフェクタミンを用いたCHO細胞のトランスフェクション
CHO-S細胞をGibco/Invitrogen(カタログ番号:11619)から購入した。
形式:6ウエルのプレート
指数増殖期にあるCHO-S細胞をトランスフェクションの24時間前に希釈して1mlにつき細胞を0.75×106個にした。
【0121】
0.6×106個の細胞を、4.5mMのグルタミンと1×ヒポキサンチン/チミジン(HT)(100×HT、Invitrogen、カタログ番号:11067-030;L-グルタミン、200mM、Sigma、G-7513)を補足した440μlのProCho5培地(Cambrex、カタログ番号:12766Q)に再懸濁させた。
【0122】
2種類の混合物を調製した。
・混合物A:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号:18324-012):8.8μl
ProCho5培地:211.2μl
全体積:220μl
・混合物B:対照またはLupac構成体のためのそれぞれ1μgのプラスミドDNA。
対照:0.5μgのpGL3-ctrl + 0.5μgのpPur。
Lupac:0.5μgのpGLupac + 0.5μgの無関係なプラスミド(pBluescript II SK(+))。
ProCho5培地:220μlになるまで補充。
【0123】
混合物Aと混合物Bを混合し、30分間にわたって室温に放置した。このA+B混合物を、0.6×106個の細胞を含む440μlの培地に添加した。得られた細胞懸濁液を、37℃、5%CO2の培養器に入れて3時間放置した後、1×HTと4.5mMのL-グルタミンを補足した1.6mlのProCho5を添加した。この細胞懸濁液を同じ条件下でさらに培養した。
【0124】
2.2.ルシフェラーゼの測定:
2.2.1.プロトコル
トランスフェクションの2日後にルシフェラーゼ活性を測定した。ブライト-グロ・ルシフェラーゼ・アッセイ系はPromegaから購入した(カタログ番号:E2610)。アッセイは、製造業者のガイドラインに従って実施した。要するに、細胞懸濁液を数回上下にピペッティングすることによって均質化し、そして50μlのアリコートを採取し、それを白い96ウエルのプレート(Nunc、カタログ番号:236108)に入れた。50μlの再構成したブライト-グロ試薬を直接添加し、そして細胞懸濁液を室温にて5分間培養した。Centro LB 960光度計(Berthold Technologies)を用い、取得時間を5秒にして発光を測定した。発光は、相対光単位(RLU)を単位として測定する。結果は、細胞数に関して標準化化した(100万個/mlを単位とした細胞密度)。
【0125】
2.2.2.結果
結果を図3に示す。pGLupacをトランスフェクトした細胞と、pGL3-ctrl+pPurをトランスフェクトした細胞の両方でルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、Lupacはルシフェラーゼ活性を示す。
【0126】
2.3.ピューロマイシンに対する耐性の選択
2.3.1.プロトコル
ルシフェラーゼ活性を測定した後、6ウエルのプレートからの残存細胞を15mlのFalcon管に移し、遠心分離し、そして細胞ペレットを、別の6ウエルのプレートの中で、5%ウシ胎仔血清(FBS)を含む2mlの培地の中に再懸濁させた。トランスフェクションの48時間後、培地を、10μg/mlのピューロマイシン(シグマ社、P-8833)を含むProCho5/HT/グルタミン/5%FBSと交換することにより、選択を行なった。2日ごとに古い培地を廃棄し、1×PBSで洗浄し、そして新鮮な選択培地を添加した。選択してから2週間後、細胞をトリプシンで処理し、カウントし、一連の希釈を行なって、6ウエル形式のウエル1つごとに細胞が1000個、500個、100個、50個、20個、10個となるようにする。10日後、すべての希釈液の中で増殖したコロニーをカウントし、そしてそのすべてを採取し、血清を含まない懸濁液の中で増殖させてプロトクローンを分析した。
【0127】
pGL3-ctrlとpPurを同時にトランスフェクトした正の対照では、57個のクローンが増殖した。
【0128】
トランスフェクトしていないCHO-S野生型細胞に対応する負の対照では、クローンが増殖しなかった。
【0129】
pGLupacとpBluescript II SK(+)をトランスフェクトした場合には、48個のクローンが増殖した。
【0130】
したがって選択培地の中で同程度の量のクローンが増殖することが観察された。その結果、融合タンパク質によって与えられるピューロマイシン耐性は、野生型ピューロマイシン耐性遺伝子によって与えられるピューロマイシン耐性に匹敵することが結論づけられる。
【0131】
次に、耐性クローンのルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼの測定により、pGLupacをトランスフェクトしたときに両方の機能を発現するクローンの割合は、ルシフェラーゼとピューロマイシン耐性遺伝子を別々のベクター上に同時にトランスフェクトしたときに両方の機能を発現するクローンよりも多いことがわかった(表IV)。このことから、Lupacの効果が確認される。
【0132】
【表4】

【0133】
結論として、Lupac融合タンパク質は、ルシフェラーゼとpacタンパク質の組み合わされた活性と機能を示す。
【実施例3】
【0134】
代替マーカーとしてのLupacの使用
作製したLupac融合タンパク質の2つの機能は、2つの効果を有すことを示唆する。第1に、Lupacは、安定にトランスフェクトされたクローンをそれらのピューロマイシン耐性によって単離を可能にするはずである。第2に、Lupacの発現は、ルシフェラーゼ活性の測定によって物理的に連結した注目の遺伝子の発現レベルを反映するはずである。この仮説を検証するため、pBSI.IL18BPmCMVLupac.Iが安定にトランスフェクトされた細胞のプールから一連のクローンを生成させた。Lupac活性とIL18BPの発現レベルを測定した。
【0135】
3.1.リポフェクタミンを用いたCHO細胞のトランスフェクション
CHO-S細胞をGibco/Invitrogen(カタログ番号:11619)から購入した。
形式:T75フラスコ。
指数増殖期にあるCHO-S細胞をトランスフェクションの24時間前まで継代培養した。その細胞を希釈して1mlにつき細胞を0.75×106個にした。
【0136】
T75フラスコの中で、5×106個の細胞を、1×HT(Invitrogen、カタログ番号:11067-030)と4.5mMのL-グルタミン(Sigma、カタログ番号:G-7513)を補足した7mlのProCho5培地(Cambrex、カタログ番号:12766Q)に再懸濁させた。
【0137】
2種類の混合物を調製した。
・混合物A:リポフェクタミン(Invitrogen、カタログ番号:18324-012):52.1μl
ProCho5培地:517.9μl
全体積:570μl
・混合物B:DNA:XmnIで直線化した5μgのpBSI.IL18BPmCMVLupac.Iと、5μgの無関係なプラスミド(pBluescript II SK(+))を含む合計で10μgのDNA
ProCho5培地:570μlになるまで補足。
【0138】
混合物Aと混合物Bを組み合わせて、室温にて30分間培養した。
このA+B混合物を、5×106個の細胞を含む7mlの培地に添加した。この懸濁液を、37℃、5%CO2の培養器に戻し、3時間放置した。次にこの培養物を800gで3分間遠心分離し、細胞ペレットを、1×HTと4.5mMのL-グルタミンを補足した5mlのProCho5に再懸濁させた。次に、5mlのProCho5/HT/グルタミンをT75フラスコに直接添加することによって懸濁液に添加した。最終的に、5×106個の細胞が10mlのProCho5/HT/グルタミン培地の中に存在していた。
【0139】
3.2.選択手順
トランスフェクションの48時間後、培地を交換し、そして10μg/mlのピューロマイシン(Sigma、P-8833)を含むProCho5/HT/グルタミンの中に細胞が0.5×106個/mlとなるように希釈することにより、選択を行なった。2日ごとに細胞をカウントし、遠心分離し、そして新鮮な選択培地に再懸濁させ、その中に生きた細胞が0.5×106個/mlとなるようにした。2日ごとに生存をチェックした。21〜35日後、選択を終えた。生存率は、予期された初期低下の後、再び80%超に達した。
【0140】
安定なプールが確立すると、マルチドロップ・ディスペンサー(ThermoLabsystem、カタログ番号:5840150)を用い、細胞を、ウエル1つにつき細胞1個の密度(70μl/ウエル)で384ウエルのプレート(Nunc、カタログ番号:164688)に播植し、2週間後、ランダムに取り出したクローンを1つの96ウエル・プレートに再配置した。
【0141】
3.3.発現の分析
3.3.1.プロトコル
両方の遺伝子の発現を評価するため、高スループット形式を用いた(96ウエルのプレート)。
【0142】
・1日目:100μlのProCho5培養培地(無血清)+5%のウシ胎仔血清を含む100μlの新鮮なProCho5の中で、細胞を50%に希釈した。無血清ProCho5培地の中に1/20に希釈してメンテナンス・プレートを毎週継代培養した。
【0143】
・2日目:培地を廃棄し、200μlの1×PBS(Invitrogen、カタログ番号:10010-015)で1回洗浄した。5%FBSを含む75μlの新鮮なProCho5を添加し、そして得られた懸濁液を24時間の発現パルス期間にわたって培養した。
【0144】
・3日目:50μlの上清を回収し、200μlのELISA緩衝液(1×PBS、0.1%w/v BSA、0.2%v/vTween20)を添加した。IL18BPに関する標準的なELISAアッセイによって100μlを分析した。
【0145】
ウエルを200μlの1×PBS(廃棄)で洗浄し、そして100μlのGlo溶解緩衝液(Promega、E266a)を添加した。ウエルを室温にて30分間培養し、細胞を確実に溶解させた。
【0146】
白い96ウエルのプレート(Nunc、カタログ番号:236108)に移した30μlの溶解した細胞+30μlの再構成したブライト-グロ試薬(Promega、E263a)を用いてルシフェラーゼの測定を行なった。Centro LB 960光度計を用い、取得時間を5秒にして発光を測定した。
【0147】
図4では、IL18BPの発現レベルはBiacore装置によって応答単位(RU、製造業者によって提供される指標)において測定され、そしてルシフェラーゼ活性は相対光単位(RLU)において測定される。
【0148】
3.3.2.結果
85個の候補クローンをランダムに選択し、そしてLupacとIL18BPの両方の発現を調べた。24個のクローンを選択してさらに調べた。8個ごとのクローンが、それぞれ、Lupacを高度に発現するクローン、中程度に発現するクローン、軽度に発現するクローンを代表する。次に、全部で24個のこれらクローンで両方の遺伝子の発現を再び調べた。
【0149】
図4は、これらの実験で観察された相関を示す。Lupacの発現とIL18BPの発現の間に非常に良好な相関が、特に範囲の両端に存在している。言い換えると、Lupacを最も高発現するクローンは、IL18BPを最も高発現するクローンにも対応している。
【0150】
したがってLupacを選択・代替マーカーとして使用し、Lupacと注目のタンパク質の両方を発現するベクターを用いて候補クローンの確立とスクリーニングを行なうことができる。例えば高発現のLupacを探す1回目のスクリーニングを行なうと、注目の遺伝子を高発現するクローンも高確率で選択することができる。したがって非常に退屈で、長時間かかり、そしてコストもかかるELISAまたは他の方法を利用したスクリーニングを回避できる。さらに、Lupacのスクリーニングは選択される注目の特定の遺伝子から独立しているため、同一のアプローチは多様なスクリーニングプログラムのために使用され得る。これは明白な論理的な利点である。注目の遺伝子の発現は、1回目のスクリーニングからの最大の産生クローンに対する2回目のスクリーニングを行なうときだけに調べられるだろう。
【0151】
3.3.3.結論
HTSでLupacを用いると、高発現クローンを選択する確率を同一に保ち、且つ時間と資材を減らすことができる。古典的なHTSクローン産生アプローチでは、最良のクローンは、典型的に、2,000を超えるクローンをスクリーニングする際に高力価の分泌タンパク質をもとにして選択される。Lupacを用いると、IL18BPに関して同様の生産性を与えるクローンがわずか85個のクローンをスクリーニングしたときに得られた。同様の生産性を持つ注目の遺伝子を得るのにスクリーニングするサンプルの数が減ることは、Lupacアプローチの利用が簡単であり、それに伴って、ELISA高スループット・スクリーニングにおけるサンプリングの間違いとアッセイの変動が減ることと関係している可能性がある。さらに、プレート毎に5〜10個の最良のクローンを選択することにより、プレート毎に最良の1つのクローンが選択されることが期待される。したがって1,000個のクローンのスクリーニングにLupacを用いると、分析すべきクローンの数が50〜100個に減り、その結果として2回目のHTSを避けることができだろう。
【0152】
さらに、本明細書で説明したように、活性と由来が非常に異なる2つの独立した酵素の融合により、驚くべきことに、それらの機能がLupacにおいて保持されることに注目することが重要である。2つの機能が保持されることで、明らかに2つの効果がもたらされることになる。というのもLupacは、安定なトランスフェクションにおいて選択性を提供するため、且つ注目の遺伝子を高発現する候補クローンをスクリーニングするための代替マーカーとして機能するために使用され得る。
【0153】
最後に、本実験では、細胞内Lupacの発現が分泌IL18BPの発現と高く相関していることにも注目する価値がある。他の高スループット技術(例えばFACSを用いたセル・ソーティング)には、分泌タンパク質をスクリーニングする上で明らかに限界がある。
【実施例4】
【0154】
r-SP1を多く産生するクローンの取得
本実験の目的は、組み換えSerono・タンパク質1(r-SP1)と呼ばれる組み換えタンパク質を多く産生するCHO細胞系を開発することであった。
【0155】
r-SP1タンパク質の直接的な高スループット・スクリーニング法は存在していなかった。サンプル中のr-SP1の量を測定するための市販されているELISAアッセイでは、感度が低いためにマイクロタイタープレート1つにつき8個のサンプルを分析できるだけであった。かかるELISAアッセイは、マイクロタイタープレート1つにつき96個近くのサンプルを分析できる“高スループット”ELISAアッセイに対し、“低スループット”ELISAアッセイと呼ばれる。
【0156】
市販の低スループットELISAアッセイを利用してr-SP1を多く産生するクローンをスクリーニングするのは(それが現実的であるとするなら)極めて退屈で時間のかかる方法だろう。このように長時間かかる方法を利用する代わりに、代替マーカーとしてのLupacを用いて高産生クローンを迅速かつうまくスクリーニングできたことを以下に示す。
【0157】
4.1.スクリーニングのための実験的アプローチ
実験的アプローチのフローチャートを表5に示す。
組み換えタンパク質r-SP1をコードしていて、二方向性のマウスCMV IE1プロモータとマウスCMV IE2プロモータの効果的な発現に必要な他のエレメントと組み合わせた発現ベクターを図5に示す。このベクターは、r-SP1とLupacを同時に発現する。安定にトランスフェクトされた細胞のプールをピューロマイシンの存在下で確立した。
【0158】
選択後、r-SP1の力価と比生産速度(pcd)をプールのレベルで評価し、そして最良の2つのプールに対してクローンの単離を実施した。
【0159】
選択したそれぞれのプール1つにつき700個のクローンを高スループット・ルシフェラーゼ・アッセイで2回分析した。Lupacを最高レベルで発現するクローンを選択した。こうすることにより、ほんの2日間でクローンの数を1400個から19個に減らすことができた。
【0160】
これら19個のクローンを定量的ELISAでさらに分析してr-SP1の力価と特定の生産性を求め、r-SP1を最高レベルで発現するクローンを選択した。これらのクローンに対してさらにクローニングを1回行ない、独立したクローンが確実に得られるようにした。その独立のクローンの特定の生産性(pcd)を分析した。最も有望なクローンに関してマスター細胞バンクを確立した。得られた細胞系をCHO-r-SP1と名づけた。
【0161】
表5
発現ベクターを構成する

発現ベクターをCHO細胞にトランスフェクトする
・無血清培地中での懸濁培養

安定なプールを確立する
・ピューロマイシンの存在下での選択

1400個の候補クローンを単離する
・限外希釈し、384ウエルのプレートでウエル1つにつき細胞1個にする
・候補クローンを384ウエルのプレートから96ウエルのプレートに再配置する

高スループット・ルシフェラーゼELISAアッセイを利用し、96ウエルのプレートでスクリーニングを行なう
・1400個の候補クローン → わずか2日間で19個の候補クローン

低スループットr-SP1 ELISAアッセイを利用し、r-SP1の発現を測定する
・19個の候補クローン → 5個の候補クローン

5個の候補クローンの再クローニングを行なう

クローンを評価する

産生が最高であるクローンを選択する

マスター細胞バンクを構成する

方法を開発し、r-SP1を生産する
【0162】
4.2.CHO-r-SP1細胞系からのr-SP1の産生
【0163】
250リットルのバイオリアクターに入れた無血清培地中の懸濁物中で、フェッド-バッチ法を利用してCHO-r-SP1細胞系を培養した。図6と図7に示すように、r-SP1の力価は、22日後に401mg/lという高いレベルに達した。実験終了時における細胞の生存はなお良好であった。CHO-r-SP1細胞系は増殖して高い細胞密度(1000万個/ml)になり、特定の生産性の平均値は2pcdであった。
【0164】
4.3.結論
【0165】
本実験は、実際のスクリーニング形式におけるLupacの使用を確認する。Lupacの代替マーカーとして使用は、注目のタンパク質を高レベルで発現する産生クローンを成功裏に選択することができ、それは直接的な高スループット・スクリーニング法ではできなかった。
【0166】
参考文献
【表5】

【表6】

【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明のLupacポリペプチド(配列ID番号2)、ルシフェラーゼ(配列ID番号8)、pac(配列ID番号9)のアラインメントを示す。
【図2】pGLupacベクターとpBSI.IL18BPmCMVLupac.Iベクターの図を示す。pGLupacは、3'末端にSV40エンハンサーを有するSV40プロモータから発現する配列ID番号1のLupacポリペプチドためのORFを含んでいる。プラスミドpBSI.IL18BPmCMVLupac.Iは、二方向マウスCMV前初期領域のIE1プロモータから発現する配列ID番号2のLupacポリペプチドを含んでいる。このベクターのIE2プロモータが、IL18BPを発現させる。
【図3】pGLupacまたはpGL3-ctrl + pPur(ルシフェラーゼとpacをそれぞれ含むベクター)を一過性にトランスフェクトしたCHO細胞のルシフェラーゼ活性を示す。ルシフェラーゼ活性は、細胞密度(10万個/ml)で標準化してある。
【図4】pBSI.IL18BPmCMVLupac.Iベクターをトランスフェクトした24個のクローンにおいて配列ID番号2のLupacポリペプチドの発現(RLU)とIL18BPの発現(RU)の間に正の相関があることを示す。
【図5】実施例4で用いた発現ベクターの図である。このベクターは、二方向マウスCMV前初期領域のIE1プロモータから発現する配列ID番号2のLupacポリペプチドを含んでいる。このベクターのIE2プロモータが、“Serono・タンパク質1”(r-SP1)と呼ばれる組み換えタンパク質を発現させる。インシュレータは、PCT/EP2004/052591に記載されている。
【図6】r-SP1を発現するCHO細胞系(CHO-r-SP1)を培養したときに得られたr-SP1の力価と生存している細胞の密度を示す。代替マーカーとしてLupacを用いてこのようなCHO細胞系を選択した(実施例4を参照のこと)。
【図7】r-SP1を発現するCHO細胞系(CHO-r-SP1)を培養したときに得られたr-SP1の力価と生存している細胞の密度を示す。代替マーカーとしてLupacを用いてこのようなCHO細胞系を選択した(実施例4を参照のこと)。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pac)の断片に融合したルシフェラーゼの断片を含んでいて、
(i)ルシフェラーゼ活性と;
(ii)ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ活性を示す、Lupacポリペプチド。
【請求項2】
上記ルシフェラーゼがキタアメリカホタル(photinus pyralis)のルシフェラーゼである、請求項1に記載のLupacポリペプチド。
【請求項3】
ルシフェラーゼの上記断片が、配列ID番号8のアミノ酸1〜547を含む、請求項2に記載のLupacポリペプチド。
【請求項4】
上記pacがストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)のpacである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のLupacポリペプチド。
【請求項5】
pacの上記断片が、配列ID番号9のアミノ酸2〜199を含む、請求項4に記載のLupacポリペプチド。
【請求項6】
ルシフェラーゼの上記断片が、pacの上記断片の5'末端に融合している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のLupacポリペプチド。
【請求項7】
pacの上記断片が、ルシフェラーゼの上記断片の5'末端に融合している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のLupacポリペプチド。
【請求項8】
配列ID番号2を含む、請求項6に記載のLupacポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のLupacポリペプチドをコードしている核酸。
【請求項10】
配列ID番号1を含む、請求項8に記載の核酸。
【請求項11】
請求項9または10に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
発現ベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
注目のタンパク質をコードしている核酸をさらに含む、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
少なくとも2つのプロモータを備えていて、一方は、上記Lupacポリペプチドを発現させ、他方は、注目の上記タンパク質を発現させる、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
上記少なくとも2つのプロモータが、ネズミCMV前初期領域のプロモータである、請求項14に記載の発現ベクター。
【請求項16】
上記少なくとも2つのプロモータが、IE1プロモータとIE2プロモータである、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
アデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)、及びN-(ホスホンアセチル)-L-アスパラギン酸耐性(CAD)からなる群から選択した増幅マーカーをさらに備える、請求項12〜16のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項18】
請求項9または10に記載の核酸を含む細胞。
【請求項19】
請求項11〜17のいずれか1項に記載のベクターを含む、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
哺乳動物の細胞である、請求項18または19に記載の細胞。
【請求項21】
CHO細胞である、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
ヒト細胞である、請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
注目のタンパク質を産生させるための、請求項18〜22のいずれか1項に記載の細胞の使用。
【請求項24】
注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングするための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のLupacポリペプチドの使用。
【請求項25】
注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングするための、請求項9または10に記載の核酸の使用。
【請求項26】
注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングするための、請求項12〜17のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項27】
上記注目のタンパク質の発現がルシフェラーゼの活性と相関している、請求項24〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
注目のタンパク質を発現する細胞をスクリーニングする方法であって、
(i)請求項12〜17のいずれか1項に記載の発現ベクターによって細胞をトランスフェクトするステップ;
(ii)ピューロマイシンに対する耐性のある細胞を選択するステップ;及び
(iii)ステップ(ii)で選択した細胞のルシフェラーゼ活性を調べるステップを含む方法。
【請求項29】
ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す5%、10%、15%、または20%の細胞が、注目の上記タンパク質の最高の発現を示す細胞を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記ルシフェラーゼ活性を、5秒間の取得時間の間にCentro LB 960光度計でのブライト-グロ・ルシフェラーゼ・アッセイ(Bright-Glo luciferase assay)によって測定する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも20個、50個、100個、500個、1,000個、5,000個、10,000個、50,000個、100,000個、500,000、または1,000,000個の細胞のルシフェラーゼ活性をステップ(iii)において調べる、請求項28〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
(iv)ステップ(iii)で調べた細胞の約1%〜約20%を選択するステップをさらに含んでおり、その選択された細胞が、ステップ(iii)において最高のルシフェラーゼ活性を示す細胞である、請求項28〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
(v)ステップ(iv)の終了時に選択された細胞中の注目の上記タンパク質の発現レベルを調べるステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
注目のタンパク質を発現する細胞系を得る方法であって、
(i)請求項27〜33のいずれか1項に記載の方法に従って細胞をスクリーニングするステップ;
(ii)注目の上記タンパク質が最高の発現を示す細胞を選択するステップ;及び
(iii)その細胞から細胞系を確立するステップを含む方法。
【請求項35】
注目のタンパク質を生産する方法であって、
(i)請求項34に記載の方法に従って得られた細胞系を、注目の前記タンパク質が発現できる条件下で培養するステップと;
(ii)注目の上記タンパク質を回収するステップを含む方法。
【請求項36】
注目の上記タンパク質を精製するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
注目の上記タンパク質を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質を生産する方法であって、
(i)請求項18〜22のいずれか1項に記載の細胞を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の上記タンパク質が発現できる条件下で培養するステップと;
(ii)請求項1〜8のいずれか1項に記載の上記タンパク質を回収するステップを含む方法。
【請求項39】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の上記タンパク質を精製するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−521421(P2008−521421A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543848(P2007−543848)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056373
【国際公開番号】WO2006/058900
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】