説明

MCP−1/CCR2関連疾患を治療するための分子およびその使用方法

CCR2/MCP−1関連疾患の治療およびMCP−1の単離のための分子及びそれを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な分子に関し、より具体的には、MCP−1/CCR2関連疾患(例えば、炎症性疾患およびガンなど)を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年間にわたって、より多くの白血球走化性因子/活性化因子(ケモカイン)が記載された[Oppenheim,J.J.他、Annu.Rev.Immunol.、9:617〜648(1991);SchallおよびBacon、Curr.Opin.Immunol.、6:865〜873(1994);Baggiolini,M.他、Adv.Immunol.、55:97−1−79(1994)]。ケモカインは初期の炎症性メディエータ(例えば、IL−1βまたはTNF−αなど)に対する応答において様々な細胞型によって産生および分泌される。
【0003】
ケモカインスーパーファミリーは、α−ケモカイン(CXCケモカインとしても知られている)およびβ−ケモカイン(CCケモカインとしても知られている)の2つの大きな部類を含む。この分類は、アミノ酸配列における最初の2つのシステインが1つのアミノ酸によって隔てられる(CXC)か、または、隣接する(CC)かに基づいている。α−ケモカイン部類には、例えば、IL−8、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、メラノーマ増殖刺激活性(MGSA/groまたはGROα)およびENA−78(それぞれが、主に好中球およびTリンパ球に対する誘引作用および活性化作用の両方を有する)などのタンパク質が含まれる。β−ケモカイン部類のメンバーは他の血液細胞型(例えば、単球、リンパ球、好塩基球および好酸球など)に影響を及ぼし[Oppenheim,J.J.他、Annu.Rev.Immunol.、9:617〜648(1991);Baggiolini,M.他、Adv.Immunol.、55:97〜179(1994);MillerおよびKrangel、Crit.Rev.Immunol.、12:17〜46(1992);Jose,P.J.他、J.Exp.Med.、179:881〜118(1994);Ponath,P.D.他、J.Clin.Invest.、97:604〜612(1996)]、例えば、単球走化性タンパク質1〜4(MCP−1、MCP−2、MCP−3およびMCP−4)、RANTESおよびマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1αおよびMIP−1β)などのタンパク質が含まれる。
【0004】
ケモカインスーパーファミリーの第3のより小さい部類は膜結合ケモカインを含む。このクラスのメンバーはCX3Cケモカインと称される[Bazan,J.F.、他、Nature、385:640〜644(1997)]。
【0005】
ケモカインは、白血球に対する一連の前炎症性作用、例えば、走化性の開始、脱顆粒、脂質メディエータの合成、および、インテグリン活性化などを媒介することができる[Oppenheim,J.J.他、Annu.Rev.Immunol.、9:617〜648(1991);Baggiolini,M.他、Adv.Immunol.、55:97〜179(1994);Miller,M.D.およびKrangel,M.S.、Crit.Rev.Immunol.、12:17〜46(1992)]。
【0006】
これらのケモカインは、「ケモカイン受容体」と呼ばれるG−タンパク質結合型の7回膜貫通ドメインタンパク質からなるファミリーに属する特異的な細胞表面受容体に結合する[Murphy,P.M.、Annu.Rev.Immunol.、12:593〜633(1994)]。その同族リガンドと結合したとき、ケモカイン受容体は会合した三量体Gタンパク質を介して細胞内シグナルを伝達し、これにより、様々な応答、特に、細胞内カルシウム濃度における迅速な増大、細胞形状における変化、細胞接着分子の発現の増大、脱顆粒、および、細胞遊走の促進を生じさせる。
【0007】
ケモカインは、アレルギー性、炎症性および自己免疫性の障害および疾患(例えば、喘息、アテローム性動脈硬化、糸球体腎炎、膵炎、再狭窄、リウマチ様関節炎、糖尿病性腎症、肺線維症および移植片拒絶反応など)の重要なメディエータとして関係づけられている。
【0008】
特に、単球走化性因子−1(MCP−1)は、その受容体のCCケモカイン受容体2(CCR−2)に作用する一方で、様々な徴候において役割を果たしている。その受容体に結合したとき、MCP−1は細胞内カルシウム濃度における迅速な増大を誘導し、これにより、細胞接着分子の発現の増大をもたらし、また、最終的には、細胞の脱顆粒および白血球遊走の促進をもたらす。
【0009】
MCP−1/CCR−2相互作用の重要性の立証が、遺伝子改変マウスを用いた実験によって示されている。MCP−1の−/−型マウスは正常な数の白血球およびマクロファージを有したが、単球をいくつかの異なるタイプの抗原攻撃の後で炎症部位に動員することができなかった[Bao Lu他、J.Exp.Med.、1998、187、601]。同様に、CCR−2の−/−型マウスは、様々な外因性薬剤による抗原攻撃を受けたとき、単球を動員すること、または、インターフェロンγを産生することができなかった;そのうえ、CCR−2ヌルマウスの白血球はMCP−1に対する応答において遊走せず[Landin Boring他、J.Clin.Invest.、1997、100、2552]、これによってMCP−1/CCR−2相互作用の特異性が明らかとなった。他の2つのグループにより独立して、同等な結果が、CCR−2の−/−型マウスの異なる系統を用いて報告されている[William A.Kuziel他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997、94、12053、および、Takao Kurihara他、J.Exp.Med.、1997、186、1757]。MCP−1の−/−型動物およびCCR−2の−/−型動物の生存能力および全般的に正常な健康状態は、MCP−1/CCR−2相互作用の破壊が生理学的危機を誘導しないという点で注目すべきことである。まとめると、これらのデータは、MCP−1の作用を遮断する分子は、様々な炎症性障害および自己免疫障害を治療することにおいて有用であることを示唆している。
【0010】
MCP−1はリウマチ様関節炎の患者においてアップレギュレーションされることが知られている[Alisa Koch他、J.Clin.Invest.、1992、90、772〜779]。さらに、いくつかの研究では、リウマチ様関節炎を治療することにおけるMCP−1/CCR2相互作用の拮抗作用の潜在的な治療的価値が明らかにされている。MCP−1をコードするDNAワクチンは近年、ラットにおける慢性的なポリアジュバント誘発関節炎を改善することが示された[Sawsan Youssef他、J.Clin.Invest.、2000、106、361]。同様に、炎症性疾患の症状が、コラーゲン誘発関節炎のラット[Hiroomi Ogata他、J.Pathol.、1997、182、106]または連鎖球菌細胞壁誘発関節炎のラット[Ralph C.Schimmer他、J.Immunol.、1998、160、1466]に対するMCP−1についての抗体の直接的な投与により抑制され得る。おそらくは最も重要なことではあるが、MCP−1のペプチドアンタゴニストであるMCP−1(9−76)により、(投与時期に依存して)疾患の発症を防止すること、および疾患の症状を軽減することの両方が関節炎のMRL−1prマウスモデルにおいて示された[Jiang−Hong Gong他、J.Exp.Med.、1997、186、131]。
【0011】
MCP−1はまた、アテローム硬化性病変部においてアップレギュレーションされており、MCP−1の循環レベルが疾患の進行において役割を果たすことが示されている[Abdolreza Rezaie−Majd他、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.2002、22、1194〜1199]。MCP−1は、マクロファージが多い動脈壁の免疫組織化学[Yla−Herttuala他、Proc Natl Acad Sci USA、88:5252〜5256(1991);Nelken他、J Clin Invest、88:1121〜1127(1991)]および抗MCP−1抗体の検出[Takeya他、Human Pathol、24:534〜539(1993)]によって示されるように、アテローム硬化性領域内への単球の動員に関わっている。LDL受容体/MCP−1欠損マウスおよびapoB遺伝子組換え/MCP−1欠損マウスは、野生型MCP−1系統と比較して、それらの大動脈の全域での著しく少ない脂肪沈着およびマクロファージ蓄積を示す[Alcami他、J Immunol、160:624〜633(1998);Gosling他、J Clin Invest、103:773〜778(1999);Gu他、Mol.Cell.、2:275〜281(1998);Boring他、Nature、394:894〜897(1998)]。
【0012】
MCP−1がヒトの多発性硬化症においてアップレギュレーションされることが知られており、また、インターフェロンβ−1βによる効果的な治療は末梢血単核細胞におけるMCP−1の発現を低下させることが示されており、これらは、MCP−1が疾患の進行において役割を果たすことを示唆している[Carla Iarlori他、J.Neuroimmunol.、2002、123、170〜179]。他の研究では、多発性硬化症を治療することにおけるMCP−1/CCR−2相互作用の拮抗作用の潜在的な治癒的価値が明らかにされている;これらの研究のすべてが実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)(多発性硬化症についての従来の動物モデル)において明らかにされている。EAEを有する動物に対するMCP−1についての抗体の投与は疾患の再発を著しく減らした[K.J.Kennedy他、J.Neuroimmunol.、1998、92、98]。さらに、2つのより最近の報告では、CCR−2の−/−型マウスがEAEに対して抵抗性があることが現在まで示されている[Brian T.Fife他、J.Exp.Med.、2000、192、899;Leonid Izikson他、J.Exp.Med.、2000、192、1075]。
【0013】
MCP−1が、閉塞性細気管支炎症候群を肺移植後に発症する患者においてアップレギュレーションされることが知られている[Martin Reynaud−Gaubert他、J.of Heart and Lung Transplant.、2002、21、721〜730;John Belperio他、J.Clin.Invest.、2001、108、547〜556]。閉塞性細気管支炎症候群のマウスモデルにおいて、MCP−1に対する抗体の投与は気道閉塞の減衰をもたらした;同様に、CCR2の−/−型マウスはこの同じモデルにおいて気道の閉塞に対して抵抗性があった[John Belperio他、J.Clin.Invest.、2001、108、547〜556]。これらのデータは、MCP−1/CCR2の拮抗作用が移植後の器官の拒絶を治療することにおいて有益であり得ることを示唆している。
【0014】
他の研究では、喘息を治療することにおけるMCP−1/CCR2相互作用の拮抗作用の潜在的な治癒的価値が明らかにされている。オボアルブミンによる抗原攻撃を受けたマウスにおける中和抗体によるMCP−1の封鎖は、気管支の過剰応答および炎症における顕著な低下をもたらした[Jose−Angel Gonzalo他、J.Exp.Med.、1998、188、157]。マンソン住血吸虫の卵による抗原攻撃を受けたマウスにおけるアレルギー性の気道の炎症をMCP−1についての抗体の投与により軽減させることが可能であることが判明した[Nicholas W.Lukacs他、J.Immunol.、1997、158、4398]。これと一致して、MCP−1の−/−型マウスは、マンソン住血吸虫の卵による抗原攻撃に対する低下した応答を示した[Bao Lu他、J.Exp.Med.、1998、187、601]。
【0015】
他の研究では、腎臓疾患を治療することにおけるMCP−1/CCR2相互作用の拮抗作用の潜在的な治癒的価値が明らかにされている。糸球体腎炎のマウスモデルにおけるMCP−1についての抗体の投与は糸球体半月形成およびI型コラーゲンの沈着における顕著な減少をもたらした[Clare M.Lloyd他、J.Exp.Med.、1997、185、1371]。加えて、腎毒性血清腎炎が誘導されたMCP−1の−/−型マウスは、そのMCP−1の+/+型対応体よりも著しく少ない尿細管損傷を示した[Gregory H.Tesch他、J.Clin.Invest.、1999、103、73]。
【0016】
1つの研究が、全身性エリテマトーデスを治療することにおけるMCP−1/CCR2相互作用の拮抗作用の潜在的な治癒的価値を明らかにしている。MCP−1の−/−型マウスのMRL−FAS.sup.1prマウスとの交雑(後者は、ヒトの全身性エリテマトーデスと類似する致命的な自己免疫疾患を有する)は、野生型のMRL−FAS.sup.1prマウスよりも少ない疾患および長い生存を有するマウスをもたらした[Gregory H.Tesch他、J.Exp.Med.、1999、190、1813]。
【0017】
MCP−1/CCR2相互作用はまた、CCR−2の−/−型マウスがデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎の影響から保護されたので、大腸炎の病理学にも関係している[Pietro G.Andres他、J.Immunol.、2000、164、6303]。
【0018】
1つの研究が、肺胞炎を治療することにおけるMCP−1/CCR2相互作用の拮抗作用の潜在的な治癒的価値を明らかにしている。IgA免疫複合体肺傷害のラットが、ラットMCP−1(JE)に対して惹起された抗体により静脈内投与で治療されたとき、肺胞炎の症状が部分的に緩和された[Michael L.Jones他、J.Immunol.、1992、149、2147]。
【0019】
MCP−1/CCR2相互作用はまた、ガンにも関係している。ヒトの乳ガン細胞を有する免疫不全マウスが抗MCP−1抗体により治療されたとき、肺微小転移物の阻害および生存における増大が観測された[Rosalba Salcedo他、Blood、2000、96、34〜40]。特に、MCP−1が、PCT国際特許出願公開WO2004/080273(本発明者ら)に詳しく記載されるように、前立腺ガンにおいて適応される。
【0020】
再狭窄は、MCP−1が関与するさらにもう1つの適応である。CCR2が欠損したマウスは、大腿動脈の傷害の後、(野生型同腹子に対して)血管内膜面積および血管内膜/中膜比における減少を示した[Merce Roque他、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.、2002、22、554〜559]。
【0021】
他の研究では、MCP−1が、上記で述べられていない様々な疾患状態において過剰発現するという証拠が示されている。これらの報告では、MCP−1アンタゴニストがそのような疾患のための有用な治療剤であり得るという相関的な証拠が提供される。MCP−1が、炎症性腸疾患の患者の腸上皮細胞および腸粘膜において過剰発現することが示されている[H.C.Reinecker他、Gastroenterology、1995、108、40;Michael C.Grimm他、J.Leukoc.Biol.、1996、59、804]。2つの報告において、脳外傷が誘導されたラットにおけるMCP−1の過剰発現を記載する[J.S.King他、J.Neuroimmunol.、1994、56、127;Joan W.Berman他、J.Immunol.、1996、156、3017]。MCP−1はまた、齧歯類の心臓同種移植片において過剰発現することが示されており、これは、移植片の動脈硬化の病理発生におけるMCP−1の役割を示唆している[Mary E.Russell他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993、90、6086]。MCP−1の過剰発現は特発性肺線維症患者の肺の内皮細胞において認められている[Harry N.Antoniades他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1992、89、5371]。同様に、MCP−1の過剰発現が乾癬患者由来の皮膚において認められている[M.Deleuran他、J.Dermatol.Sci.、1996、13、228;R.Gillitzer他、J.Invest.Dermatol.、1993、101、127]。最後に、最近の報告では、MCP−1がHIV−1関連認知症の患者の脳および脳脊髄液において過剰発現することが示されている[Alfredo Garzino−Demo、国際特許出願公開WO99/46991]。
【0022】
今日までに報告されたほとんどのケモカインアンタゴニストは、特定のケモカインに対する中和抗体、または、小分子アンタゴニストのいずれかである[Howard他、Trend Biotechnol、14:46〜51(1996)]。
【0023】
抗MCP−1抗体は、上記で記載されたように数多くのマウス疾患モデルにおいて効果的に使用されている。しかしながら、ケモカインの機能を中和するために抗体を使用することに伴う大きな問題は、そのような抗体は慢性的なヒト疾患における使用の前にヒト化されなければならないことである。さらに、多数のケモカインが1つの受容体と結合し、その受容体を活性化し得ることは、病理学的状態を完全に阻止または防止するために、多抗体法の開発または交差反応性抗体の使用を余儀なくしている。
【0024】
ケモカイン受容体機能のいくつかの小分子アンタゴニストが科学文献および特許文献に報告されている[White、J Biol Chem、273:10095〜10098(1998);Hesselgesser、J Biol Chem、273:15687〜15692(1998);Bright他、BioorgMed Chem Lett、8:771〜774(1998);Lapierre、26th Natl Med Chem Symposium、6月14日〜18日、Richmond(Va.)、米国(1998);Forbes他、Bioorg Med Chem Lett、10:1803〜18064(2000);Kato他、国際特許出願公開WO97/24325;Shiota他、国際特許出願公開WO97/44329;Naya他、国際特許出願公開WO98/04554;Takeda Industries、JP09−55572(1998);Schwender他、国際特許出願公開WO98/02151;Hagmann他、国際特許出願公開WO98/27815;Connor他、国際特許出願公開WO98/06703;Wellington他、米国特許第6288103号]。しかしながら、これらのケモカイン受容体アンタゴニストの特異性は、多様または冗長的なケモカイン発現プロフィルによって特徴づけられる炎症性障害がこれらの薬剤による治療に対して比較的より不応性であることを示唆している。
【0025】
従って、上記の制限を有さない、CCR−2関連疾患を治療するための組成物およびその使用方法が必要であることが広く認識されており、また、そのような組成物および方法を有することは非常に好都合である。
【発明の開示】
【0026】
本発明の1つの態様によれば、CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列にコンジュゲート化された(conjugated)異種アミノ酸配列を含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができ、前記分子が非免疫原性である分子が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、非タンパク質性成分に結合したCCR2アミノ酸配列を含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができ、前記分子が対象において非免疫原性である分子が提供される。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、それぞれがMCP−1と結合することができる少なくとも2つのCCR2アミノ酸配列を含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができる分子が提供される。
【0029】
本発明のなおさらに別の態様によれば、MCP−1と結合することができる、CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列に結合したタグを含む分子が提供される。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、配列番号14または配列番号15に示されるような分子が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の分子と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本発明のなおさらなる態様によれば、CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子と、医薬的に許容され得るキャリアとを含み、非免疫原性である医薬組成物が提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、その必要性のある対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療する方法が提供され、この場合、この方法は、本発明の分子の治癒効果的な量を対象に投与し、それにより、対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療することを含む。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、MCP−1/CCR2関連疾患を治療するために特定される医薬品を製造するための本発明の分子の使用が提供される。
【0035】
本発明のなおさらなる態様によれば、MCP−1を生物学的サンプルから単離する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)MCP−1および請求項4に記載される分子が複合体を形成するように、生物学的サンプルを請求項4に記載される分子と接触させること;および(b)複合体を単離し、それにより、MCP−1を生物学的サンプルから単離することを含む。
【0036】
本発明のなおさらなる態様によれば、その必要性のある対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療する方法が提供され、この場合、この方法は、CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子の治癒効果的な量を対象に投与し、それにより、対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療することを含む。
【0037】
本発明のなおさらなる態様によれば、MCP−1/CCR2関連疾患を治療するために特定される医薬品を製造するための、CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子の使用が提供される。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、異種アミノ酸配列は免疫グロブリンのアミノ酸配列を含む。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列は配列番号2に示される通りである。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、MCP−1/CCR2関連疾患は、炎症性疾患、壊死、アテローム性動脈硬化、ガン、多発性硬化症、アテローム、単球性白血病、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎)、ハンマン−リッチ症候群、子宮内膜症、リウマチ様関節炎、細気管支炎、喘息、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎)、肺胞炎、再狭窄、脳外傷、乾癬、特発性肺線維症および移植片動脈硬化からなる群から選択される。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、タグはエピトープタグである。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の分子は固体担体に結合される。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の分子は非タンパク質性成分に結合される。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、非タンパク質性成分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレン−co−マレイン酸無水物)(SMA)、および、ジビニルエーテルとマレイン酸無水物とのコポリマー(DIVEMA)からなる群から選択される。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアは非経口投与のために配合される。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアは実質的に非免疫原性である。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアはリポアミン酸を含む。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアは炭水化物を含む。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアはミクロスフェアを含む。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアはリポソームを含む。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬的に許容され得るキャリアはポリマーのミクロスフェアを含む。
【0052】
本発明は、MCP−1/CCR2関連疾患を治療するための新規な分子およびその使用方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0053】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似のまたは等価な方法と材料は本発明を実施または試験するのに使用できるが、好適な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法および実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0054】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1a−1bは、前立腺ガン患者がMCP−1に対する非常に著しい自己抗体力価を選択的に発達させていることを示すグラフである。図1a−23名の前立腺ガン患者、21名の良性前立腺肥大(BPH)患者、および、10名のコントロール被験者(すべてが年齢一致の男性である)からのヒト血清を、下記の13のケモカインに対する自己抗体の生じ得る出現についてモニターした:SDF−1(CXCL12、GenBankアクセション番号NM199168)、MIF(GenBankアクセション番号L19686)、MIP−1α(CCL3、GenBankアクセション番号NM002983)、MIP−1β(CCL4、GenBankアクセション番号NM002984)、IL−8(CXCL8、GenBankアクセション番号M2813)、IP−10(CXCL10、GenBankアクセション番号NM001565)、MIP−3α(CCL20、GenBankアクセション番号BC020698)、MIP−3β(CCL−19、GenBankアクセション番号BC027968)、リンホタクチン(XCL1、GenBankアクセション番号NM002995)、MIG(CXCL9、GenBankアクセション番号NM002416)、RANTES(CCL5、GenBankアクセション番号NM002985)、MCP−3(CCL7、GenBankアクセション番号NM006273)およびMCP−1(CCL2、GenBankアクセション番号NM002982)。著しい抗体力価(p<0.01)が上記ケモカインの1つだけ(MCP−1)に対して大多数の前立腺ガン患者において観測された。図1b−図1aで記載された臨床サンプル(上記)のそれぞれにおけるMCP−1に対するLogAb力価。約82%の前立腺ガン患者(19/23)および約4.7%(1/21)のみのBPH患者がMCP−1に対する著しい応答(10を超えるlog2Ab力価)を示した。
図2は、本発明のヒトIg−CCR2ペプチド(Ig−E3)をコードする発現構築物の作製を示す概略的例示である。
図3は、CCR2のE3ドメインがMCP−1に特異的に結合することを示す棒グラフである。
図4は、ヒトCCR2(E3)−IgGがTHP−1細胞(ATCCアクセション番号TIB−202)のMCP−1誘発遊走を阻害することができることを示す棒グラフである。インビトロトランスウエル遊走アッセイを行った。簡単に記載すると、THP−1細胞(10個/ウエル)をトランスウエルの上部チャンバーに加え、CCL2(組換えヒトMCP−1(RHMCP−1);(20ng/ml))を、図に示されるように異なる濃度のCCR2(E3)−IgGもまた補充された下部ウエルに加えた。37℃での2時間のインキュベーションの後、遊走しているTHP−1細胞をFACSによって計数した。結果が三連の平均±SEとして示される。
図5a−5dは、CCR2(E3)−IgG投与細胞とコントロールの(IgG投与またはPBS治療)細胞との間で比較されたときの、原発性腫瘍およびその転移拡大物の発達を示すグラフである。図5a〜図5bは、CCR2(E3)−IgGの投与がPC−3細胞の投与と同時に開始されたとき(図5a)、または、PC−3細胞の投与後の18日で開始されたとき(図5b)のいずれでも、CCR2(E3)−IgGは腫瘍の成長を時間とともに減少させることができることを示すグラフである。CCR2(E3)−IgG投与マウス(青色で示される)、イソタイプが一致するコントロールIgGが投与されたマウス(緑色で示される)、または、PBS投与マウス(褐色または黄色で示される)からの腫瘍の腫瘍体積(mm)を、示されるような様々な時間で繰り返して測定した。図5cは、PC3細胞投与後8日で注射されたCCR2(E3)−IgGの抗腫瘍活性を示すグラフである。PC−3細胞がCCR2(E3)−IgGと一緒に投与されたマウス(青色で示される)、イソタイプが一致するコントロールIgGと一緒に投与されたマウス(緑色で示される)、または、PBSと一緒に投与されたマウス(ピンク色で示される)からの腫瘍の腫瘍体積(mm)を、示されるような様々な時間で繰り返して測定した。これらの結果は、図5a〜図5bに示されるCCR2(E3)−IgGの防止的および治療的な活性を裏付けている。図5dは、示されるようなCCR2(E3)−IgGによるルシフェラーゼ発現PC−3細胞の骨転移および肺転移の阻害を、コントロール細胞に対する比較とともに示す棒グラフである。
図6a−fは、CCR2(E3)−IgGによるCCL−2の遮断により、VEGF産生が腫瘍部位において完全に抑制されることを示す写真である(図6a〜図6f)。CCR2(E3)−IgGによる治療(図6a、図6d)、イソタイプが一致するコントロールIgGによる治療(図6b、図6e)、または、PBSによる治療(コントロール細胞;図6c、図6f)が示される。動物を屠殺し、腫瘍/組織を取り出した。組織を洗浄し、固定処理し、透過処理し、VEGFを、共焦点顕微鏡観察を使用して免疫染色によって検出した。顕微鏡写真はX10の倍率(図6a〜図6c)またはX40の倍率(図6d〜図6f)のいずれかで示される。
図7は、光学密度によって決定されたときの、CCL2処理されたPC3細胞の細胞遊走を示す棒グラフである。PC3細胞を、CCL2(MCP−1)、CCL2に対する抗体と一緒でのCCL2(MCP−1+抗MCP−1)、CCR2(E3)−IgGと一緒でのCCL2(MCP−1+CCR2(E3)−IgG)、および、リガンド処理されていないコントロール細胞のいずれかにより処理した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
本発明は、MCP−1/CCL2関連疾患(例えば、ガンなど)を治療するための分子、該分子を含む組成物、および、該分子を使用する方法に関する。
【0056】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解することができる。
【0057】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0058】
単球化学誘引タンパク質(MCP−1)(これはCCL2とも呼ばれる)は単球および記憶T細胞を特異的に引き寄せる。その発現が、細胞遊走によって特徴づけられる様々な疾患において生じており、また、ガン、心臓血管疾患および炎症性疾患におけるその本質的役割についての実質的な生物学的証拠および遺伝学的証拠が存在する。精力的なスクリーニングにもかかわらず、今までのところ、MCP−1/CCL2の受容体(CCR2)のアンタゴニストは1つも見出されていない。
【0059】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、CCR2に対するMCP−1の結合がCCR2の3番目の細胞外領域(E3)(GenBankアクセション番号NP_000639.1のアミノ酸座標273〜292)によって排他的に媒介されることを発見した。これは、CCR2に対するMCP−1結合がCCR2のN末端領域(N−ter)および3番目の細胞外ループ(E3)の両方に依存することを示したDatta MannanおよびStone[Datta−MannanおよびStone(2004)、Biochemistry、43:14602〜11]による以前の報告とは際立って対照的である。これらの結果は、CCR2のE3領域を含むペプチドが、本質的にはMCP−1を封鎖することによって阻害剤として使用され得ることを示唆している。
【0060】
従って、本発明では、CCR2のE3ドメインを含み、かつ、好ましくは、CCR2のN末端ドメインを有さない任意のCCR2アミノ酸配列の使用、および/または、MCP−1/CCR2関連疾患(例えば、ガンなど)を治療するための、そのような配列を含む組成物が想定される。重要なことには、本発明の組成物は、最大の治癒的効力を達成するために非免疫原性である。従って、本発明では、例えば、CCR2配列を、CCR2配列がタンパク質性成分(例えば、異種アミノ酸配列)または非タンパク質性成分(例えば、PEG)(これらのそれぞれが循環における組成物の半減期を延ばすことができる)に結合される複合体で含むことが想定される。
【0061】
従って、本発明の1つの態様によれば、MCP−1と結合することができる、CCR2のN末端ドメインを好ましくは有さないCCR2アミノ酸配列(例えば、翻訳されたGenBankアクセション番号NM_000647/NP_000638のアミノ酸座標1〜41、または、GenBankアクセション番号NM_000648/NP_000639の対応するアミノ酸座標)にコンジュゲート化された少なくとも1つの異種アミノ酸配列を含む非免疫原性分子が提供される。
【0062】
下記の実施例の節において示されるように、新しく発見されたMCP−1結合ドメインを含む本発明のこの態様のキメラ分子(E3−IgG)は、腫瘍細胞投与後18日後であっても腫瘍の発達を阻害した。驚くべきことに、この同じキメラ分子は骨組織および肺組織への腫瘍転移を一層劇的に阻害した。まとめると、本発明の知見は、MCP−1/CCR2関連疾患(例えば、ガンなど)の治療における本発明の分子の使用を裏付けている。
【0063】
本発明のこの態様のキメラ分子は、CCR2のE3領域に向けられた抗体を産生させるためのキメラなE3(すなわち、KLH−E3)の使用、それにより、CCR2受容体をリガンド結合から阻害することを教示する国際特許出願公開WO97/31949に記載されるキメラ分子とは顕著に異なることに留意しなければならない。本発明の非免疫原性ペプチドは、CCR2のリガンド(MCP−1)を標的化し、それにより、リガンドを受容体結合から阻害するために使用される。従って、本発明の分子は非常に優れた治癒的抑制および特異性を可能にし、本発明の分子は容易に合成および投与することができ、また、大きい生物利用能によって特徴づけられる。
【0064】
本明細書中で使用される場合、MCP−1はCCL2と交換可能に示され、哺乳動物(例えば、ヒト)のMCP−1タンパク質(例えば、GenBankアクセション番号NM_002982または同NP_002973で示されるタンパク質など)を示す。
【0065】
本明細書中で使用される用語「非免疫原性」は、そのような物質が投与された対象において免疫応答を実質的に生じさせることができない物質を示す。例えば、ヒトにおいて非免疫原性であるとは、本発明のこの態様のキメラ分子をヒトの適切な組織と接触させたとき、キメラ分子に対する感受性または抵抗性の何らかの状態が、適切な潜伏期間(例えば、8日〜14日)の後でのキメラ分子の2回目の投与のときにはっきり現れないことを意味する。
【0066】
本明細書中で使用される「CCR2アミノ酸配列」は、MCP−1についての親和性結合を有する、哺乳動物(例えば、ヒト)のケモカインC−C受容体2タンパク質のペプチド部分を示す。1つだけのCCR2アミノ酸配列が本発明の分子に含まれ得ること、しかし、それぞれがCCR2と(好ましくは、大きい親和性で)結合することができる少なくとも2つのCCR2アミノ酸配列(例えば、配列番号9)を含むことが好ましい場合があることに留意しなければならない。増大した結合活性のために、これらのポリペプチドはMCP−1活性の強力な阻害剤として使用することができ、また、より少ない投薬量を投与することができる。
【0067】
本明細書中で使用される「親和性結合」は、少なくとも10−6Mの最小K値を示す。
【0068】
CCR2タンパク質の例がGenBankアクセション番号NM_000647および同NP_000639.1において提供される。述べられたように、本発明のこの態様のCCR2は、好ましくはN末端ドメインを有していないが、E3ドメイン(すなわち、GenBankアクセション番号NM_000647のアミノ酸座標273〜292、配列番号2)またはその模倣体を保持する。
【0069】
本明細書中で使用される用語「模倣体」は、ペプチドに関連して作製されるとき、MCP−1との相互作用において本発明のペプチドに対する代用物として役立つ分子構造体を示す[ペプチド模倣体の総説については、Morgan他(1989)、Ann.Reports Med.Chem.、24:243〜252]。
【0070】
ペプチド模倣体は、本明細書中で使用される場合、アミノ酸および/またはペプチド結合を含有してもしなくてもよいが、ペプチドリガンドの構造的特徴および機能的特徴を保持する合成された構造体(既知および未だ知られていないもの)を含む。模倣体を作製するために利用することができるアミノ酸のタイプが本明細書中下記においてさらに記載される。用語「ペプチド模倣体」にはまた、N置換アミノ酸のペプチドまたはオリゴマーであるペプトイドおよびオリゴペプトイドが含まれる[Simon(1972)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:9367〜9371]。ペプチド模倣体としてさらに含まれるものがペプチドライブラリーであり、これは、所与のアミノ酸長であるように設計され、かつ、それに対応するアミノ酸のすべての考えられる配列を表すペプチドの集団である。ペプチド模倣体を製造するための方法が本明細書中下記に記載される。
【0071】
本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、CCR2アミノ酸配列は配列番号2のアミノ酸配列を含み、配列番号1によって示される核酸配列によってコードされ得る。
【0072】
本発明のこの態様の別の好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様の分子は配列番号14または配列番号15に示される通りである。
【0073】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」には、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、上で言及されたような、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。そのような修飾には、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細は本明細書中下記に示される。
【0074】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0075】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
【0076】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、TIC、ナフチレンアミン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
【0077】
上述のことに加えて、本発明のペプチドは一以上の修飾されたアミノ酸または一以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0078】
本明細書中および請求項の節で使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0079】
下記の表1および表2には、本発明で使用される天然に存在するアミノ酸(表1)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(例えば合成アミノ酸、表2)が示される。




【0080】
本発明のペプチドは、好ましくは、ペプチドが可溶性形態であることを要求する治癒剤または診断剤において利用されるので、本発明のペプチドは、好ましくは、ペプチド溶解性をそれらのヒドロキシル含有側鎖のために増大させることができるセリンおよびトレオニン(これらに限定されない)をはじめとする、1つ以上の非天然型または天然型の極性アミノ酸を含む。
【0081】
本発明のペプチドは好ましくは線状形態で利用されるが、環化がペプチドの特性を大きく妨害しない場合には、ペプチドの環状形態もまた利用され得ることが理解される。
【0082】
本明細書中上記で記載されるようなペプチド模倣体の作製は、例えば、ディスプレー技術を含めて、様々な方法を使用して達成することができる。
【0083】
従って、本発明では、CCR2のE3のポリペプチド配列(例えば、配列番号2)に由来する少なくとも2個の連続するアミノ酸、少なくとも3個の連続するアミノ酸、少なくとも5個の連続するアミノ酸、少なくとも7個の連続するアミノ酸、少なくとも11個の連続するアミノ酸、少なくとも15個の連続するアミノ酸をそれぞれが呈示する多数のディスプレービヒクル(例えば、ファージ、ウイルスまたは細菌など)を含むディスプレーライブラリーが意図される。
【0084】
そのようなファージライブラリーを構築する様々な方法が当該技術分野では広く知られている。そのような方法が、例えば、Young AC他、「クリプトコッカス・ネオフォルマンスに対する多糖結合抗体およびファージディスプレーライブラリー由来ペプチドとのその複合体の三次元構造:ペプチドミモトープを特定するための密接な関係」、J Mol Biol、1997(12月12日)、274(4):622〜34;Giebel LB他、「環状ペプチドファージライブラリーのスクリーニングによるストレプトアビジンと大きい親和性で結合するリガンドの特定」、Biochemistry、1995(11月28日)、34(47):15430〜5;Davies EL他、「ニワトリの免疫グロブリン遺伝子に由来するライブラリーを使用する特異的なファージディスプレー抗体の選択」、J Immunol Methods、1995(10月12日)、186(l):125〜35;Jones C RT他、「分子認識およびバイオセパレーションにおける現在の傾向」、J Chromatogr A、1995(7月14日)、707(1):3〜22;Deng SJ他、「合成遺伝子ライブラリーに由来する改善された炭水化物結合性単鎖抗体を選択するための基礎」、Proc Natl Acad Sci USA、1995(5月23日)、92(11):4992〜6;Deng SJ他、「ファージディスプレーによる改善された炭水化物結合性の抗体単鎖可変フラグメントの選択」、J Biol Chem、1994(4月1日)、269(13):9533〜8に記載される(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0085】
ペプチド模倣体はまた、コンピュータを利用した生物学を使用して発見することができる。三次元構造モデルを表示するために有用なソフトウエアプログラム、例えば、RIBBONS(Carson,M.、1997、Methods in Enzymology、277、25)、O(Jones,TA.他、1991、Acta Crystallogr.、A47、110)、DINO(DINO:Visualizing Structural Biology(2001)、http://www.dino3d.org)、ならびに、QUANTA、INSIGHT、SYBYL、MACROMODE、ICM、MOLMOL、RASMOLおよびGRASP(Kraulis,J.、1991、Appl Crystallogr.、24、946において総説される)などを、MCP−1と、予想されるペプチド模倣体との間での相互作用をモデル化し、それにより、特異的なMCP−1領域に結合する最大の確率を示すペプチドを特定するために利用することができる。タンパク質−ペプチド相互作用のコンピュータを利用したモデル化が合理的薬物設計において使用され、成功している。さらに詳しくは、Lam他、1994、Science、263、380;Wlodawer他、1993、Ann Rev Biochem.、62、543;Appelt、1993、Perspectives in Drug Discovery and Design、1、23;Erickson、1993、Perspectives in Drug Discovery and Design、1、109;およびMauro MJ.他、2002、J Clin Oncol.、20、325〜34を参照のこと。
【0086】
述べられたように、本発明のこの態様のキメラ分子は異種アミノ酸配列を含む。
【0087】
本明細書中で使用される表現「異種アミノ酸配列」は、CCR2アミノ酸配列の一部分を形成しない非免疫原性のアミノ酸配列を示す。この配列は、好ましくは、溶解性を本発明のこの態様のキメラ分子にもたらし、これにより、好ましくは、血清中におけるキメラ分子の半減期を増大させる。
【0088】
異種アミノ酸配列は一般には、本発明のCCR2ペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に局在化される。
【0089】
述べられたように、少なくとも1つの異種アミノ酸配列を本発明のCCR2アミノ酸配列にコンジュゲート化することができる。例えば、少なくとも1つのCCR2アミノ酸配列を、例えば、Hoogenboom(1991)、Mol.Immunol.、28:1027〜1037などによって記載されるように、2つの異種配列の間に埋め込むことができる。異種アミノ酸配列はペプチド結合または非ペプチド結合のいずれによってもCCR2アミノ酸配列に結合することができる。異種アミノ酸配列に対するCCR2アミノ酸配列の結合は、直接的な共有結合性の結合(ペプチド結合または置換されたペプチド結合)によって、または、例えば、官能基を有するリンカーの使用などによる間接的な結合によって達成することができる。官能基には、限定されないが、遊離カルボン酸基(C(=O)OH)、遊離アミノ基(NH)、エステル基(C(=O)OR、式中、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)、ハロゲン化アシル基((C(=O)A、式中、Aは、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである)、ハロゲン化物(フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージド)、ヒドロキシル基(OH)、チオール基(SH)、ニトリル基(C≡N)、遊離C−カルバミン酸基(NR”−C(=O)−OR’、式中、R’およびR”のそれぞれは独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)が含まれる。
【0090】
本発明のこの態様に従って使用することができる異種アミノ酸配列の一例が免疫グロブリンの配列であり、例えば、免疫グロブリン重鎖ドメインのヒンジ領域およびFc領域などである(米国特許第6777196号を参照のこと)。本発明のこの態様のキメラ体における免疫グロブリン成分は、本明細書中下記でさらに議論されるように、IgG1、IgG2、IgG3またはIg4のサブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMから得ることができる。
【0091】
適切な免疫グロブリン定常ドメイン配列に連結された受容体配列から構築された様々なキメラ体(イムノアドヘシン)が当該技術分野で知られている。文献に報告されるイムノアドヘシンには、T細胞受容体の融合体[Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:2936〜2940(1987)]、CD4の融合体[Capon他、Nature 337:525〜531(1989);Traunecker他、Nature、339:68〜70(1989);Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA、9:347〜353(1990);Byrn他、Nature、344:667〜670(1990)];L−セレクチン(ホーミング受容体)の融合体[(Watson他、J.Cell.Biol.、110:2221〜2229(1990);Watson他、Nature、349:164〜167(1991)];CD44の融合体[Aruffo他、Cell、61:1303〜1313(1990)];CD28およびB7の融合体(Linsley他、J.Exp.Med.、173:721〜730(1991)];CTLA−4の融合体[Lisley他、J.Exp.Med.、174:561〜569(1991)];CD22の融合体[Stamenkovic他、Cell、66:1133〜1144(1991)];TNF受容体の融合体[Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:10535〜10539(1991);Lesslauer他、Eur.J.Immunol.、27:2883〜2886(1991);Peppel他、J.Exp.Med.、174:1483〜1489(1991)];NP受容体の融合体[Bennett他、J.Biol.Chem.、266:23060〜23067(1991)];および、IgE受容体αの融合体[Ridgway他、J.Cell.Biol.、1 15:abstr、1448(1991)]が含まれる。
【0092】
典型的には、そのような融合体において、キメラ分子は免疫グロブリン重鎖の定常領域の少なくとも機能的に活性なヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを保持する。融合体はまた、定常ドメインのFc部分のC末端に対して、あるいは、重鎖のCH1または軽鎖の対応する領域のすぐN末端側に対して作製することができる。
【0093】
異種配列とCCR2アミノ酸配列との間での融合(コンジュゲート化)が行われる正確な部位は重要でない。具体的な部位が当該技術分野では広く知られており、そのような部位を、本発明のこの態様のキメラ分子の生物学的活性、分泌または結合特性を最適化するために選択することができる(下記の実施例の節の実施例3を参照のこと)。
【0094】
重鎖の定常領域全体を本発明のCCR2アミノ酸配列にコンジュゲート化することが可能であり得るが、より短い配列を融合することが好ましい。例えば、重鎖定常領域の最初の残基が114であることを考えると、パパイン切断部位(これは化学的にはIgGのFcを規定する;残基216)、または、他の免疫グロブリンの類似する部位の直ぐ上流側のヒンジ領域において始まる配列が融合体において使用される。特に好ましい実施形態において、CCR2アミノ酸配列は、IgG1、IgG2またはIgG3の重鎖のヒンジ領域ならびにCH2ドメインおよびCH3ドメインに、または、CH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインに融合される(米国特許第6777196号を参照のこと)。融合が行われる正確な部位は重要でなく、最適な部位を日常的な実験によって決定することができる。
【0095】
述べられたように、本発明のこの態様のキメラ分子の構築において使用される免疫グロブリン配列はIgG免疫グロブリンの重鎖定常ドメインに由来し得る。ヒトのIgG1免疫グロブリン配列およびIgG3免疫グロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を使用することの大きな利点は、IgG1が固定化プロテインAにおいて効率的に精製できることである。対照的に、IgG3の精製では、著しく好都合な媒体ではないが、プロテインGが要求される。しかしながら、免疫グロブリンの他の構造的性質および機能的性質を、具体的なキメラ構築物のためのIgG融合パートナーを選ぶときには考慮しなければならない。例えば、IgG3のヒンジはより長く、より柔軟であり、従って、IgG3のヒンジは、IgG1に融合されたときには正しく折り畳まれ得ないか、または、正しく機能しないことがあるより大きいCCR2アミノ酸配列を受け入れることができる。別の検討事項は価数である場合がある:IgGは二価のホモ二量体であり、これに対して、IgAおよびIgMのようなIgサブタイプは基本的なIgホモ二量体ユニットの二量体構造または五量体構造をそれぞれ生じさせ得る。本発明のこの態様のキメラ分子の免疫グロブリン部分を選択することにおける他の検討事項が米国特許第6777196号に記載される。
【0096】
従って、本発明のこの態様のキメラ分子は、上記で記載されたように、異種アミノ酸配列を含むことができる。
【0097】
加えて、または、代替として、本明細書中上記で述べられたように、本発明のCCR2アミノ酸配列(これはMCP−1と結合することができる)は非タンパク質性成分に結合させることができ、そのような分子は対象において特定の非免疫原性である。そのような分子は非常に安定であり(おそらくは非タンパク質性成分によってもたらされる立体的障害のためにインビボでのタンパク質分解活性に対して抵抗性であり)、また、本明細書中下記においてさらに記載されるように、安価であり、かつ、非常に効率的である一般的な固相合成法を使用して製造することができる。しかしながら、組換え技術を依然として使用することができ、従って、組換えペプチド生成物はインビトロ修飾(例えば、本明細書中下記においてさらに記載されるようなPEG化)に供されることが理解される。
【0098】
述べられたように、CCR2アミノ酸配列は非タンパク質性成分に結合される。本明細書中で使用される表現「非タンパク質性成分」は、上記のCCR2アミノ酸配列に結合される、(ペプチド結合した)アミノ酸を含まない分子を示す。現時点で好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様の非タンパク質性成分はポリマーまたはコポリマー(合成または天然)である。本発明の非タンパク質性成分の限定されない例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ジビニルエーテルおよびマレイン酸無水物のコポリマー(DIVEMA;例えば、Kaneda Y他、1997、Biochem.Biophys.Res.Commun.、239:160〜5を参照のこと)、および、ポリ(スチレンcoマレイン酸無水物)(SMA;例えば、Mu Y他、1999、Biochem Biophys Res Commun.、255:75〜9を参照のこと)が含まれる。
【0099】
そのような非タンパク質性成分のバイオコンジュゲート化は、その生物学的活性を保持し、かつ、その半減期を延ばしながら、安定性(例えば、プロテアーゼ活性に対して)および/または溶解性(例えば、生物学的流体(例えば、血液、消化液など)において)を有するCCR2アミノ酸配列をもたらす。バイオコンジュゲート化は、短い半減期および血液からの迅速なクリアランスを示す治癒的タンパク質の場合には特に好都合である。バイオコンジュゲート化されたタンパク質の血漿中の増大した半減期は、タンパク質コンジュゲートの増大したサイズ(これにより、その腎糸球体ろ過が制限される)およびポリマーの立体的障害による低下したタンパク質分解から生じている。一般には、ペプチドあたりの結合したポリマー鎖が多くなるほど、半減期の延長が大きくなる。しかしながら、様々な対策が、本発明のCCR2アミノ酸配列の特異的な活性(すなわち、MCP−1結合)を低下させないために取られる。
【0100】
PEGによるCCR2アミノ酸配列のバイオコンジュゲート化(すなわち、PEG化)を、PEG誘導体を使用して、例えば、PEGカルボン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、モノメトキシPEG−NHS、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル(SCM−PEG)、PEGのベンゾトリアゾールカルボナート誘導体、PEGのグリシジルエーテル、PEGのp−ニトロフェニルカルボナート(PEG−NPC、例えば、メトキシPEG−NPCなど)、PEGアルデヒド、PEG−オルトピリジル−ジスルフィド、カルボニルジイミダゾール活性化PEG、PEG−チオール、PEG−マレイミドなどを使用して達成することができる。そのようなPEG誘導体が様々な分子量で市販されている[例えば、カタログ(ポリエチレングリコールおよび誘導体、2000)(Shearwater Polymers,Inc.、Huntsvlle、Ala.)を参照のこと]。所望であれば、上記誘導体の多くがモノ官能性のモノメトキシPEG(mPEG)形態で入手可能である。一般には、本発明のCCR2アミノ酸配列に付加されるPEGは、分子量(MW)が数百ダルトン〜約100kDaの範囲でなければならない(例えば、3kDa〜30kDa)。より小さいMWのPEGを使用することができるが、より低分量のPEGはPEG化ペプチドの収率のいくらかの喪失をもたらし得る。より小さいMWのPEGについて得ることができる純度と同じくらい高い純度のより大きいMWのPEGを得ることは困難である場合があるので、より大きいPEG分子の純度にも気をつけなければならない。少なくとも85%の純度のPEG、より好ましくは、少なくとも90%の純度、95%の純度またはそれ以上の純度のPEGを使用することが好ましい。分子のPEG化が、例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques(Academic Press San Diego、Calif.(1996))において第15章に、また、Zalipsky他、「ポリエチレングリコールのスクシンイミジルカルボナート」(DunnおよびOttenbrite編、Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems、American Chemical Society、Washington、D.C.(1991))においてさらに記載される。
【0101】
好都合には、PEGは、コンジュゲートの活性(すなわち、MCP−1結合)が保持される限り、部位特異的変異誘発によってCCR2アミノ酸配列における選ばれた位置に結合させることができる。例えば、配列番号1に示されるようなCCR2アミノ酸配列の5位におけるシステイン残基がPEG化のために標的であり得る。加えて、または、代替として、他のシステイン残基をCCR2アミノ酸配列に(例えば、N末端またはC末端において)付加することができ、それにより、PEG化のために標的として役立たせることができる。コンピュータ分析を、活性を損なうことを伴わない変異誘発のための好ましい位置を選択するために行うことができる。
【0102】
活性化PEG(例えば、PEG−マレイミド、PEG−ビニルスルホン(VS)、PEG−アクリラート(AC)、PEG−オルトピリジルジスルフィドなど)の様々なコンジュゲート化化学を用いることができる。活性化PEG分子を調製する様々な方法が当該技術分野では知られている。例えば、PEG−VSは、PEG−OHのジクロロメタン(DCM)溶液をNaHと反応し、次いで、ジビニルスルホンと反応することによってアルゴン下で調製することができる(モル比;OH 1:NaH 5:ジビニルスルホン 50、0.2グラムPEG/mL(DCM))。PEG−ACが、PEG―OHのDCM溶液をアクリロイルクロリドおよびトリエチルアミンと反応することによってアルゴン下で作製される(モル比;OH 1:アクリロイルクロリド 1.5:トリエチルアミン 2、0.2グラムPEG/mL(DCM)で)。そのような化学基を、線状化された2アームPEG分子、4アームPEG分子または8アームPEG分子に結合することができる。
【0103】
システイン残基へのコンジュゲート化は、本発明のCCR2アミノ酸配列がPEG化され得る1つの好都合な方法ではあるが、他の残基もまた、所望であれば、使用することができる。例えば、無水酢酸を、COOH基、S−−S基または−−SCH基とではなく、NH基およびSH基と反応させるために使用することができ、一方、過酸化水素を、NH基とではなく、SH基および−−SCH基と反応させるために使用することができる。反応を、十分に確立された反応性を利用する化学反応を用いて、ペプチドにおける所望される残基に対するコンジュゲート化のために適切である条件のもとで行うことができる。
【0104】
PVPとの本発明のCCR2アミノ酸配列のバイオコンジュゲート化のために、末端COOHを有するPVPが、ラジカル開始剤としての4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)および連鎖移動剤としての3−メルカプトプロピオン酸の助けをかりたジメチルホルアミド中でのラジカル重合によってN−ビニル−2−ピロリドンから合成される。平均分子量Mrが6000である得られたPVPを高速液体クロマトグラフィーによって分離および精製することができ、合成PVPの末端COOHがN−ヒドロキシスクシンイミド/ジシクロヘキシルカルボジイミド法によって活性化される。CCR2アミノ酸配列が60倍モル過剰の活性化PVPと反応させられ、反応がアミノカプロン酸(活性化PVPに対して5倍モル過剰)により停止される(これは本質的には、Haruhiko Kamada他、2000、Cancer Research、60:6416〜6420(これは参考として全体が本明細書中に組み込まれる)に記載される通りである)。
【0105】
得られるコンジュゲート化されたCCR2分子(例えば、PEG化CCR2またはPVP−コンジュゲート化CCR2)は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、分離、精製および定量される。加えて、本発明のこの態様の精製されたコンジュゲート化分子は、本質的には他のケモカインについて記載されるように[例えば、MIP−1α、例えば、Hesselgesser J、1998(上掲)(これは参考として全体が本明細書中に組み込まれる)を参照のこと]、例えば、MCP−1のその受容体(例えば、CCR2)に対する結合特異性が本発明のCCR2コンジュゲートの存在下または非存在下で試験されるインビトロアッセイを使用してさらに定量することができる。
【0106】
本発明のこの態様の分子は、例えば、様々な標準的な固相技術を使用することなどによって生化学的に合成することができる。これらの方法には、完全固相合成、部分固相合成法、フラグメント縮合および古典的溶液合成が含まれる。これらの方法は、好ましくは、ペプチドが比較的短い(すなわち、10kDaである)とき、および/または、ペプチドが組換え技術によって産生できないとき(すなわち、核酸配列によってコードされないとき、例えば、本明細書中下記においてさらに記載される「タグ」など)に使用され、従って、異なる化学を伴う。
【0107】
様々な固相ペプチド合成手法が当該技術分野では広く知られており、John Morrow StewartおよびJanis Dillaha Young、Solid Phase Peptide Synthesis(第2版、Pierce Chemical Company、1984)によってさらに記載される。
【0108】
合成ペプチドは調製用の高速液体クロマトグラフィーによって精製することができ[Creighton T.(1983)、Proteins,structures and molecular princples、WH Freeman and Co.、N.Y.]、その組成をアミノ酸配列決定によって確認することができる。
【0109】
多量の本発明のペプチドが所望される場合、本発明のペプチドは、例えば、Bitter他(1987)、Methods in Enzymol.、153:516〜544、Studier他(1990)、Methods in Enzymol.、185:60〜89;Brisson他(1984)、Nature 310:511〜514;Takamatsu他(1987)、EMBO J.、6:307〜311;Coruzzi他(1984)、EMBO J.、3:1671〜1680;Brogli他(1984)、Science、224:838〜843;Gurley他(1986)、Mol.Cell.Biol.、6:559〜565;Weissbach&Weissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、第VIII節、421頁〜463頁などによって記載される組換え技術を使用して作製することができる。
【0110】
簡単に記載すると、本発明の(場合により、異種アミノ酸配列をコードする核酸配列に読み枠を合わせて融合された)CCR2アミノ酸配列をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド(すなわち、その天然に存在する供給源から単離されたポリヌクレオチド、例えば、配列番号10)を調節エレメント(例えば、プロモーターなど)の転写制御下に設置されて含む発現構築物(すなわち、発現ベクター)が宿主細胞に導入される。
【0111】
例えば、本発明のCCR2ペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号1)が、免疫グロブリンのcDNA配列(例えば、配列番号3および配列番号5)に読み枠を合わせて連結される。ゲノムの免疫グロブリンフラグメントの連結もまた使用され得ることが理解される。この場合、融合は、発現のために免疫グロブリン調節配列の存在を必要とする。IgGの重鎖定常領域をコードするcDNAを、ハイブリダイゼーションによって、または、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって、脾臓または末梢血リンパ球に由来するcDNAライブラリーから、発表された配列に基づいて単離することができる。CCR2アミノ酸配列および免疫グロブリンをコードする核酸を、選択された宿主細胞における効率的な発現(これは本明細書中下記でさらに記載される)を導く発現構築物(ベクター)にタンデムで連結することができる。哺乳動物細胞における発現のために、pRK5に基づくベクター[Schall他、Cell、61:361〜370(1990)]、および、CDM8に基づくベクター[Seed、Nature、329:840(1989)]を使用することができる。正確な接合を、オリゴヌクレオチド特異的欠失変異誘発[Zoller他、Nucleic Acids Res.、10:6487(1982);Capon他、Nature、337:525〜531(1989)]を使用して、設計された接合部コドンの間の余分な配列を除くことによって生じさせることができる。それぞれの半分が所望の接合部の両側での配列に対して相補的である合成オリゴヌクレオチドを使用することができる;理想的には、これらは11mer〜48merである。あるいは、PCR技術を、適切なベクターと読み枠を合わせて分子の2つの部分をつなぐために使用することができる。
【0112】
発現構築物を宿主細胞に導入する様々な方法が当該技術分野で広く知られており、これらには、エレクトロポレーション、リポフェクションおよび化学的形質転換(例えば、リン酸カルシウム)が含まれる。下記の実施例の節の実施例2もまた参照のこと。
【0113】
「形質転換された」細胞は、核酸配列によってコードされるキメラ分子の発現を可能にする好適な条件のもとで培養される。
【0114】
所定の期間の後、発現したキメラ分子が細胞または細胞培養物から回収され、精製が組換えポリペプチドの最終的な使用に従って行われる。
【0115】
利用された宿主/ベクター系に依存して、構成的プロモーターおよび誘導可能なプロモーター、転写エンハンサー配列、転写ターミネーターなどを含めて、数多くの好適な転写エレメントおよび翻訳エレメントはどれも、発現ベクターにおいて使用することができる[例えば、Bitter他(1987)、Methods in Enzymol.、153:516〜544を参照のこと]。
【0116】
(キメラ体をコードする)挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含有すること以外に、本発明の発現構築物はまた、発現した融合タンパク質の安定性、産生、精製、収率または毒性を最適化するために操作された配列を含むことができる。
【0117】
様々な原核生物細胞または真核生物細胞を、融合タンパク質をコードする配列を発現させるための宿主−発現系として使用することができる。これらには、微生物、例えば、キメラ体をコードする配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌;キメラ体をコードする配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換された酵母など;キメラ体をコードする配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))を感染させた植物細胞系、または、キメラ体をコードする配列を含有する組換え植物発現ベクター(例えば、Tiプラスミドなど)により形質転換された植物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物発現システムが、好ましくは、本発明のキメラ体を発現させるために使用される。
【0118】
本発明の分子を発現させるための宿主細胞株の選択は、主として、発現ベクターに依存する。真核生物発現システムが、これらは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を可能にするので好ましい(例えば、哺乳動物および昆虫)。別の検討事項は、要求されるタンパク質の量である。ミリグラム量を、多くの場合、一過性トランスフェクションによって産生させることができる。例えば、アデノウイルスEIAにより形質転換された293ヒト胚性腎臓細胞株は、効率的な発現を可能にするためにリン酸カルシウム法の改変によってpRK5系ベクターにより一過性にトランスフェクションすることができる。CDM8系ベクターを、DEAE−デキストラン法によってCOS細胞をトランスフェクションするために使用することができる[Aruffo他、Cell、61:1303〜1313(1990);Zettmeissl他、DNA Cell Biol.US、9:347〜353(1990)]。より多量のタンパク質が所望であれば、分子は宿主細胞株の安定的な形質転換の後で発現させることができる(実施例の節の実施例2を参照のこと)。分子のN末端における疎水性のリーダー配列の存在はトランスフェクション細胞による分子のプロセシングおよび分泌を確実にすることが理解される。
【0119】
細菌宿主系または酵母宿主系の使用は、製造コストを軽減するために好ましい場合があることが理解される。しかしながら、細菌宿主系はタンパク質グリコシル化機構を有していないので、産生後のグリコシル化が必要となる場合がある。
【0120】
いずれの場合でも、形質転換された細胞は、多量の組換えポリペプチドの発現を可能にする効果的な条件のもとで培養される。効果的な培養条件には、タンパク質の産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、これらに限定されない。効果的な培地は、細胞が、本発明の組換えキメラ分子を産生するために培養される任意の培地を示す。そのような培地には、典型的には、同化可能な炭素源、窒素源およびリン酸源、ならびに、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分(例えば、ビタミンなど)を有する水溶液が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿で培養することができる。培養は、組換え細胞のために適切である温度、pHおよび酸素含有量で行うことができる。そのような培養条件は当業者の専門的知識の範囲内である。
【0121】
製造のために使用されたベクターおよび宿主の系に依存して、本発明の生じたタンパク質は組換え細胞内に留まり得るか、または、発酵培地に分泌され得るか、または、2つの細胞膜の間の空間(例えば、大腸菌における細胞周辺腔など)に分泌され得るか、または、細胞膜もしくはウイルス膜の外膜に保持され得る。
【0122】
培養での所定の時間の後、組換えタンパク質の回収が行われる。表現「組換えタンパク質を回収すること」は、タンパク質を含有する発酵培地全体を集めることを示し、分離または精製のさらなる工程を伴う必要はない。本発明のタンパク質は、様々な標準的なタンパク質精製技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマト分画および示差的可溶化(これらに限定されない)など)を使用して精製することができる。
【0123】
本発明の分子は、好ましくは、「実質的に純粋な」形態で回収される。本明細書中で使用される「実質的に純粋な」は、本明細書中下記で記載される種々の適用におけるタンパク質の効果的な使用を可能にする純度を示す。
【0124】
免疫グロブリンのアミノ酸配列を含むキメラ分子はアフィニティークロマトグラフィーによって都合良く精製することができる。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの好適性は、キメラ体において使用される免疫グロブリンFcドメインの種およびイソタイプに依存する。プロテインAを、ヒトのγ1重鎖、γ2重鎖またはγ4重鎖に基づくキメラ分子を精製するために使用することができる[Lindmark他、J.Immunol.Meth.、62:1〜13(1983)]。プロテインGが、好ましくは、すべてのマウスイソタイプについて、また、ヒトγ3について使用される[Guss他、EMBO J.、5:1567〜1575(1986)]。アフィニティーリガンドが結合される固体担体は、ほとんどの場合アガロースであるが、他の固体担体もまた利用可能である。機械的に安定な固体担体(例えば、制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなど)は、アガロースを用いて達成され得るよりも速い流速および短い処理時間を可能にする。キメラ分子をプロテインAまたはプロテインGのアフィニティーカラムに結合するための条件は、Fcドメインの特徴、すなわち、その種およびイソタイプによって完全に決定される。一般には、適切なリガンドが選ばれるとき、効率的な結合が未調整の培養液から直接に生じる。本発明のこの態様のキメラ分子の1つの特徴的な特徴が、ヒトγ1分子については、プロテインAについての結合能が、同じFcタイプの抗体と比較して若干低下することである。本発明のこの態様の結合したキメラ分子は、酸性pH(約3.0以上)において、または、穏和なカオトロピック塩を含有する中性pH緩衝液で、そのどちらでも効率よく溶出することができる。このアフィニティークロマトグラフィー工程により、95%を超える純度のキメラ分子調製物を得ることができる。医療用規格の純度が治癒的適用のためには不可欠である。
【0125】
当該技術分野で知られている他の方法を、免疫グロブリンの一部分を含むキメラ分子を精製するために、プロテインAまたはプロテインGでのアフィニティークロマトグラフィーの代わりに、あるいは、プロテインAまたはプロテインGでのアフィニティークロマトグラフィーに加えて使用することができる。そのようなキメラ分子はイオウ親和性(thiophilic)ゲルクロマトグラフィー[Hutchens他、Anal.Biochem.、159:217〜226(1986)]および固定化金属キレートクロマトグラフィー[Al−Mashikhi他、J.Dairy Sci.、71:1756〜1763(1988)]において抗体と同様に挙動する。しかしながら、抗体とは対照的に、イオン交換カラムでのその挙動は、その等電点によってだけではなく、そのキメラ性のために分子に存在し得る電荷双極子によってもまた決定される。
【0126】
本発明の分子は、CCR2と、例えば、そのE3ドメインを介して結合する任意のリガンドと結合させるために使用され得ることが理解される。これらには、CCL7、CCL8およびCCL13が含まれ得る[D’Ambrosio(2003)、J.Immunol.Methods、273:3〜13]。
【0127】
本発明のこの態様の分子は、MCP−1/CCR2関連疾患を治療するために使用することができる。
【0128】
従って、本発明の別の態様によれば、その必要性のある対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療する方法が提供される。この方法は、本発明の分子の治癒効果的な量を対象に投与し、それにより、対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療することを含む。
【0129】
本明細書中で使用される用語「対象」は哺乳動物対象を示し、好ましくは、ヒト対象を示す。
【0130】
本明細書中で使用される用語「治療すること」は、MCP−1/CCR2関連疾患の有害な作用を防止すること、治癒すること、逆戻りさせること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、または、停止させることを示す。
【0131】
本明細書中で使用される表現「MCP−1/CCR2関連疾患」は、発症または進行についてMCP−1とその受容体(CCR2)との間での相互作用に依存する疾患を示す。
【0132】
MCP−1/CCR2関連疾患の例には、炎症性疾患、壊死、アテローム性動脈硬化、ガン(例えば、前立腺ガン、乳房のガン腫、乳ガン、神経膠芽細胞腫、食道ガン、神経芽細胞腫)、多発性硬化症、アテローム、単球性白血病、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎)、ハンマン−リッチ症候群、子宮内膜症、リウマチ様関節炎、細気管支炎、喘息、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎)、肺胞炎、再狭窄、脳外傷、乾癬、特発性肺線維症および移植片動脈硬化が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
本発明の分子は、それ自体で、あるいは、本発明の分子が好適なキャリアまたは賦形剤と混合される医薬組成物において対象に投与することができる。
【0134】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。好ましくは、医薬組成物は免疫原性ではない。
【0135】
本明細書中において、用語「有効成分(活性成分)」は、生物学的効果を担うことができる本発明の分子を示す。
【0136】
以降、交換可能に使用されうる表現「医薬的に許容され得るキャリア」および表現「生理学的に許容され得るキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0137】
従って、例えば、本発明の医薬的に許容され得るキャリアはリポアミン酸を含むことができる。
【0138】
あるいは、本発明によって使用される医薬的に許容され得るキャリアは埋め込み用物質(例えば、ポリオール(すなわち、炭水化物)など)を含むことができる。賦形剤としての使用に好適である炭水化物の限定されない例には、マルトデキストリン(例えば、Glucidex、Roquette)、トレハロース(例えば、Trehalose、Merck)、セロビオース、グルコース、フルクトース、マルツロース、iso−マルツロース、ラクツロース、マルトース、ゲントビオース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール(例えば、Maltisorb、Roquette)、ラクチトール、エリトリトール、パラチニトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトールおよびリビトール、スクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、プランテオース、ベルバスコース、スタキオース、メレジトース、デキストランおよびイノシトールが含まれる。
【0139】
さらに代替として、本発明によって使用される医薬的に許容され得るキャリアは、経口投与に好適なミクロスフェアである。例えば、ミクロスフェアは、本質的には米国特許第6849271号(Vaghefi他)(これは参考として全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、胃において見出されるpHレベル(4未満のpHレベル)での溶解または酸分解に対して抵抗性がある有機物質の水不溶性マトリックスを含むことができる。そのような有機マトリックス物質は、例えば、トリグリセリド、水素化植物油、ワックスまたはワックスの混合物、ポリアルコキシアルキルエーテル、ポリアルコキシアルキルエステル、および、水不溶性の部分的に分解されたタンパク質が可能である。
【0140】
バイオコンジュゲート化ポリマー(例えば、本発明のPEG化CCR2ペプチド)は、医薬的に許容され得るキャリアにおいて、または、医薬的に許容され得るキャリアの一部として使用することができ、従って、CCR2アミノ酸配列を送達するためのキャリア分子として役立ち、一方で、同時に送達ビヒクルの成分として役立つことが理解される。この二重使用の好ましい実施形態が、例えば、米国特許出願公開第20030186869号(Poiani,George他)(これは参考として全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、リポソームビヒクル(例えば、PEGコンジュゲート化リポソーム)である。
【0141】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0142】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0143】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。
【0144】
あるいは、例えば、患者の身体の特定部位に直接的に調製物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に調製物を投与しうる。
【0145】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0146】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0147】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な生理的食塩緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0148】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合され得る。そのようなキャリアは、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0149】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0150】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0151】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0152】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0153】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0154】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0155】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン非含有水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0156】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0157】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療効果的な量(治癒効果的な量)」は、治療されている対象の病状(例えば、虚血)を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(例えば、核酸構築物)の量を意味する。
【0158】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に示される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0159】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、用量または治療効果的な量は、最初はインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は所望の濃度または力価を得るために動物モデルにおいて配合することが可能である。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0160】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における、インビトロで標準的な薬学的手法によって、明らかにすることができる。これらのインビトロでの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(Fingl,et al,(1975年)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照)。
【0161】
投薬量および投薬間隔は、生物学的作用を誘導または抑制するための有効成分の十分な血漿中レベルまたは脳内レベル(すなわち、最小有効濃度、MEC)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個体の特徴、および、投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿中濃度を求めるために使用することができる。
【0162】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0163】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0164】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に許容され得るキャリアに配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上で詳細に記載されたように、適応される状態の治療のために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0165】
本発明のこの態様の分子(例えば、キメラのタンパク質性分子)は遺伝子療法によって対象に提供され得ることが理解される。従って、上記の哺乳動物発現構築物を、本明細書中上記で記載される任意の好適な投与様式を用いて対象に投与することができる(すなわち、インビボ遺伝子療法)。あるいは、核酸構築物は、適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組換えなど)および必要とされるような発現システムによって好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、対象に戻される(すなわち、エクスビボ遺伝子療法)。
【0166】
現在好ましいインビボ核酸移入技術には、ウイルス構築物または非ウイルス構築物(例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスIウイルスまたはアデノ関連ウイルス(AAV)など)によるトランスフェクション、および、脂質に基づくシステムが含まれる。遺伝子の脂質媒介による移入のための有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholなどである[Tonkinson他、Cancer Investigation、14(1):54〜65(1996)]。遺伝子療法において使用される最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。ウイルス構築物(例えば、レトロウイルス構築物など)は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー、または、遺伝子座を規定するエレメント、あるいは、遺伝子発現を他の手段(例えば、メッセンジャーの選択スプライシング、核RNA輸出または翻訳後修飾など)によって制御する他のエレメントを含む。そのようなウイルス構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在しない限り、パッケージングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、ならびに、使用されたウイルスに対して適切なプラス鎖およびマイナス鎖のプライマー結合部位を含む。加えて、そのような構築物は、典型的には、構築物が置かれている宿主細胞からペプチドを分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は哺乳動物のシグナル配列であり、例えば、Igκのリーダー配列(例えば、配列番号7および配列番号8など)である。場合により、構築物はまた、ポリアデニル化を導くシグナル、ならびに、1つ以上の制限部位、および、翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および、3’LTRまたはその一部分を含む。非ウイルスである他のベクターを使用することができる(例えば、カチオン性脂質、ポリリシンおよびデンドリマーなど)。
【0167】
MCP−1に対する本発明のCCR2ペプチドの親和性はMCP−1の精製および検出におけるその使用を可能にする。
【0168】
従って、本発明のさらに別の態様によれば、タグおよび本発明のCCR2ペプチドを含む分子が提供される。
【0169】
本明細書中で使用される用語「タグ」は、結合性パートナー(例えば、抗体分子、キレーター分子またはアビジン(ビオチン)分子など)によって特異的に認識される成分を示す。タグは、その生物学的活性(例えば、MCP−1結合)を妨害しない限り、CCR2ペプチドのC末端またはN末端に設置することができる。
【0170】
例えば、タグポリペプチドは、それに対する抗体を作製することができるエピトープを提供するための十分な残基を有するが(すなわち、エピトープタグ)、CCR2ペプチドの生物学的活性を妨害しないように十分に短い。エピトープタグは好ましくはまた、それに対する抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないようにかなり特有である。好適なタグポリペプチドは一般には少なくとも6個のアミノ酸残基を有し、通常的には約8個〜50個のアミノ酸残基(好ましくは、約9個〜30個の残基)を有する。例えば、ポリヒスチジン配列が好ましく、この配列はニッケルと結合し、これにより、記載されたように[Lindsay他、Neuron、17:571〜574(1996)]、Ni−NTAクロマトグラフィーによるタグ化タンパク質の単離を可能にする。
【0171】
CCR2のかかるエピトープタグ化形態が望ましい。これは、その存在がタグポリペプチドに対する標識化抗体を使用して検出され得るからである。また、エピトープタグの提供は、本発明のCCR2ペプチドが、抗タグ抗体を使用するアフィニティー精製によって容易に精製されることを可能にする。抗体を伴うアフィニティー精製技術および診断アッセイが本明細書中下記に記載される。
【0172】
様々なタグポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体が当該技術分野では広く知られている。例には、インフルエンザHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field他、Mol.Cell.Biol.、8:2159〜2165(1988));c−mycタグおよびそれに対する抗体の8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10(Evan他、Molecular and Cellular Biology、5:3610〜3616(1985));および、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)およびその抗体(Paborsky他、Protein Engineering、3(6):547〜553(1990))が挙げられる。他のタグポリペプチドが開示されている。例には、Flagペプチド[Hopp他、BioTechnology、6:1204〜1210(1988)]、KT3エピトープペプチド[Martin他、Science、255:192〜194(1992)、α−チューブリンエピトープペプチド[Skinner他、J.Biol.Chem.、266:15163〜15166(1991)]、および、T7の遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz−Freyermuth他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6393〜6397(1990)]が挙げられる。タグポリペプチドが選択されると、それに対する抗体を、当該技術分野で広く知られている方法を使用して作製することができる。そのような抗体が、例えば、Sigma(St.Louis、米国)などから市販されている。
【0173】
本発明のこの態様の分子は、MCP−1を生物学的サンプルから単離するために、または、生物学的サンプルにおけるMCP−1の存在を検出するために使用することができる。
【0174】
本明細書中で使用される表現「生物学的サンプル」は、MCP−1が存在する生物学的流体を示し、例えば、血液、血清、血漿、リンパ液、胆汁、尿、唾液、痰、滑液、精液、涙液、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、腹水、膿および馴化培地などを示す。
【0175】
本発明のこの態様によるMCP−1の単離は、生物学的サンプルを本発明のこの態様の分子と接触させ、その結果、MCP−1および分子が(分子がMCP−1に結合することを可能にする緩衝液、温度条件を使用して)複合体を形成するようにすること(例えば、Datta−MannanおよびStone(2004、上掲)を参照のこと)、および、複合体を単離し、それにより、MCP−1を生物学的サンプルから単離することによって行われる。
【0176】
複合体を単離するために、分子は、好ましくは、固体担体に固定化される。本明細書中で使用される表現「固体担体」は、目的とする試薬(例えば、本発明のこの態様の分子)が接着することができる非水性マトリックスを示す。固体担体の例には、一部または全体がガラス(例えば、制御細孔ガラス)から形成される固体担体、多糖(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、状況に依存して、固体担体はアッセイプレートの壁を含むことができる。他の実施形態では、固体担体は精製カラム(例えば、アフィニティークロマトグラフィーカラム)である。この用語はまた、ばらばらの粒子(例えば、米国特許第4275149号に記載される粒子など)の不連続な固相を包含する。
【0177】
あるいは、そのような分子は、生物学的サンプルにおけるMCP−1のレベルを検出するために使用することができる。診断適用のために、分子は典型的には、検出可能な成分により標識される。検出可能な成分は、検出可能シグナルを直接的または間接的のどちらかで生じさせることができる任意の成分が可能である。例えば、検出可能な成分は、放射性同位体、蛍光性化合物もしくは化学発光性化合物、または、タグ(例えば、標識された抗体が結合することができる本明細書中上記で記載されるタグなど)であり得る。本発明の分子は、任意の知られているアッセイ方法(例えば、競合的結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ、ならびに、免疫沈殿アッセイなど)において用いることができる。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147頁〜158頁(CRC Press、Inc.、1987)。
【0178】
本発明のこの態様の分子は、本発明のこの態様の分子、ならびに、場合により、固体担体および画像化試薬(例えば、抗体、発色性基質など)が、適切な緩衝液および保存剤とともに好適な容器に包装され、診断のために使用され得る診断キットにおいて含むことができる。
【0179】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0180】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0181】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている[例えば以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら1989年;Ausubel, R.M.編1994年「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻;Ausubelら著1989年「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア;Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク1988年;Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク1998年;米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号および5272057号に記載される方法;Cellis, J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻1994年;Coligan, J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻1994年;Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク1994年;MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク1980年;また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている。米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号および5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」1984年;Hames, B.D.およびHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」1985年;Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Transcription and Translation」1984年;Freshney, R.I.編「Animal Cell Culture」1986年;「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press 1986年;Perbal, B.著「A Practical Guide to Molecular Cloning」1984年および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年;Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、1996年;なおこれらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである]。その外の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0182】
(実施例1)
前立腺ガン患者はMCP−1に対する特異的な選択的抗体応答を示す
CCL2と前立腺ガンとの関係が、前立腺ガン患者における、MCP−1(CCL2)をはじめとする様々なケモカインに対する自己抗体の存在についてのELISA試験を使用して明らかにされた。
【0183】
材料および実験手順
患者標本−ヒトでの実験研究を、Haifa(イスラエル)にあるCARMEL医療センターおよびRAMBAM医療センターの泌尿器科との共同で行った。すべての血清サンプルおよび組織サンプルを、Helsinki委員会承認番号1822(2003年11月11日付け)のもと、RAMBAM病院の患者から得た。病理学的分析がCARMEL医療センターの泌尿器科のAvi Stein教授によって行われた。患者の臨床データが下記の表1に要約される。
【0184】
抗体(Ab)力価の測定―それぞれ試験されたケモカインに対するAb力価を、詳細が前述されたように、ELISA試験を使用して検出した(Wildbaum,G.、M.NahirおよびN.Karin、2003、前炎症性メディエータに対する有益な自己免疫性は自己破壊性免疫の結果を抑制する、Immunity、19:679)。組換えヒトケモカイン:SDF−1(CXCL12)、MIP−1α(CCL3)、MIP−1β(CCL4)、IL−8(CXCL8)、IP−10(CXCL10)、MIP−3α(CCL20)、MIP−3β(CCL−19)、リンホタクチン(XCL1)、MIG(CXCL9)、RANTES(CCL5)、MCP−3(CCL7)およびMCP−1(CCL2)はすべてPeproTech(Rocky Hill、NJ)から購入した。ヒトMIFをR&D Systems(Minneapolis、NM)から購入した。
【0185】
結果
前立腺ガン患者はMCP−1に対する著しい自己抗体力価を示す
23名の前立腺ガン患者、21名の良性前立腺肥大(BPH)者および11名のコントロール被験者(表3、下記)からの血清を、SDF−1(CXCL12)、MIF、MIP−1α(CCL3)、MIP−1β(CCL4)、IL−8(CXCL8)、IP−10(CXCL10)、MIP−3α(CCL20)、MIP−3β(CCL−19)、リンホタクチン(XCL1)、MIG(CXCL9)、RANTES(CCL5)、MCP−3(CCL7)およびMCP−1(MCP−1)を含めて、様々なケモカイン(特に、ガンに関係しているケモカイン)に対する自己抗体の存在について試験した。

【0186】
試験されたすべてのケモカインの中で、前立腺ガン患者は、MCP−1に対してのみ非常に著しい抗体力価を有した(図1a、11.85±0.8のlogAb力価)。健常者およびBPH患者における抗MCP−1抗体のベースライン力価(log)は5〜6であり、それ以外のケモカインのいずれかに対する応答において観測された力価とは異なっていなかった。従って、前立腺ガン患者はMCP−1に対する非常に特異的かつ選択的な抗体応答を示す(図1a、p<0.01)。統計学的分析では、前立腺ガン患者の約82%(19/23)および非悪性BPH患者の4.7%(1/21)のみがMCP−1に対する著しい応答(10を超えるlog2Ab力価、p<0.01)を示したことが明らかにされた。
【0187】
これらの結果は、MCP−1とCCR2との相互作用の阻害が、MCP−1/CCR2によって調節されるガンおよび他の疾患を抑制するために使用され得ることを示唆している。
【0188】
(実施例2)
CCR2キメラペプチド(E3−Ig)の作製および細胞株における安定的発現
材料および実験手順
CCR2(E3)−IgG構築物の作製
図2は、CCR2(E3)−IgGキメラ体を発現させるための構築物の例示を示す。このIgG1構築物を、CTLA4−Igの作製のために以前に利用した基本的プロトコル(Van Oosterhout,A.J.、C.L.Hofstra、R.Shields、B.Chan、I.Van Ark、P.M.JardieuおよびF.P.Nijkamp、1997、マウスCTLA4−IgG治療はアレルギー性喘息のマウスモデルにおいて気道の好酸球増加症および過剰応答を阻害し、IgEのアップレギュレーションを弱める、Am J Respir Cell Mol Biol、17:386)に従って、改変を伴いながら作製した:ヒトIgG1重鎖の定常領域(ヒンジ−CH2−CH3)をコードするcDNAを、LPSおよびIL−4により活性化された末梢血単核細胞(PBMC)からpSecTag2/HygroB(Invitrogen、San Diego、CA)にクローン化した。ヒトCCR2−E3を、下記のような、CCR2の6ドメイン(E3、それぞれ、配列番号1および配列番号2)の一部をコードするプライマーを使用して、LPS活性化のヒトPBMCからサブクローン化した:センス:cccaagcttggcctgagtaactgtgaaag(配列番号12)、アンチセンス:ccgctcgagagtctctgtcacctgcgtgg(配列番号13)。配列を確認した後、増幅されたPCR生成物をpSec−Tag2ベクター(Invitrogen、San Diego、CA)にクローン化した。ヒトIgGのFcγのヒンジ−CH2−CH3をCCR2(E3)の下流側においてプラスミド(pSec−CCR2)に連結して、融合タンパク質CCR2−IgGを作製した。
【0189】
安定的なpSec−CCR2(E3)−IgG発現細胞株の作製
pSec−CCR2(E3)−IgGプラスミドを、ジェットPEI(Polypluseトランスフェクション、Illkirch Cedex、フランス)を製造者のプロトコルに従って使用して、CHO DHFRミニ遺伝子ベクターとともに、DG44 CHO細胞(DHFR−/−)(これはLawrence Chasin博士(コロンビア大学、米国)によって提供された)に同時トランスフェクションした。安定的なトランスフェクタント細胞を、ヒグロマイシン(200μg/ml)を含有する培地で選択した。CCR2(E3)−IgG融合タンパク質を、Amersham Biosciences(Uppsia、スウェーデン)から得られるプロテインG−Sepharoseカラムによって上清から精製し、ヤギ抗ヒトIgG−HRP(Sigma、St.Louis、MO)を使用してウエスタンブロット分析によって確認した。
【0190】
(実施例3)
CCR2(E3)−IgGはMCP−1に特異的に結合する
MCP−1と結合するCCR2のE3ドメインの能力をELISAアッセイによって検討した。
【0191】
材料および実験手法
ELISA−様々な市販のヒトケモカイン(PeproTech、Rocky Hill、NJ)に対するCCR2(E3)−IgGの結合特異性を下記のように直接ELISAによって明らかにした:96ウエルELISAプレート(Nunc、Roskilde、デンマーク)を100ng/mlの各ケモカインにより被覆し、洗浄し、1%BSA/PBSによりブロッキング処理した。その後、5μg/mlの濃度でのCCR2(E3)−IgGを加えた。HRP標識されたマウス抗ヒトIg(Jackson、Pennsylvania)を二次抗体として加えた。結果が450nmでの吸光度読み取りとして示される。抗CCL2モノクローナル抗体(MAB679;R&D Systems、Minneapolis、NM)を陽性コントロール(1μg/ml)として使用した。
【0192】
結果
様々なケモカインに対するCCR2(E3)−IgGの結合をELISAによって明らかにした。図3に示されるように、CCR2のE3ドメインは、MCP−1と結合するために十分であり、試験された他の因子と比較して、このケモカインに対するほぼ4倍大きい結合を示した。
【0193】
(実施例4)
CCR2(E3)−IgGはMCP−1誘導の細胞遊走を阻害する
材料および実験手順
細胞株
THP−1細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD;ATCCアクセション番号TIB−202)から得て、製造者のプロトコルに従って成長させた。
【0194】
細胞遊走アッセイ―THP−1細胞のMCP−1誘発遊走を阻害するCCR2(E3)−IgGの能力を試験した。走化性アッセイを、TransWellチャンバー(Corning Coster、Cambridge、MA)を使用して行った。培地を伴うTHP−1細胞(1X10細胞/ウエル)を、可溶性CCR2(E3)−IgGが補充された、または、補充されなかった培地(組換えヒトMCP−1(R&D Systems、Minneapolis、NM))による下部チャンバーの平衡化の後、Transwellの上部チャンバーに加えた。その後、Transwellを、7.5%COを含有する加湿空気において37℃で3時間インキュベーションした。遊走している単球を下部チャンバーから集め、計数した。
【0195】
結果
図4は、可溶性CCR2(E3)−IgGが、用量依存的様式で、THP−1細胞のMCP−1誘発遊走を著しく、顕著に(90%)阻止したことを示す。
【0196】
(実施例4)
CCR2(E3)−IgGは根本的にPC−3腫瘍成長を低下させ、VEGF発現を減少させる
材料および実験手順
CCR2(E3)−IgGによるマウスの治療―6匹のSCID/Bgマウスからなる3つの群に5x10個/マウスのPC−3Luc細胞を皮下投与した(El Hilali他、Clin Cancer Res.、2005(Feb 1)、11(3):1253〜8)。
【0197】
第1群はCCR2(E3)−IgGの反復投与(200ug/マウス、i.v.、4日間隔)を受けた。第2群には、一致する量のPBSが投与され、第3群には、イソタイプが一致したコントロールIgGが投与された。後治療(すなわち、確立された腫瘍の治療)のために、投与をPC−3細胞投与後18日で開始した。
【0198】
VEGFの検出−de Wet,J.R.、K.V.Wood、M.DeLuca、D.R.HelinskiおよびS.Subramani、1987、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子:構造および哺乳動物細胞における発現、Mol Cell Biol、7:725;Rubio,N.、M.M.VillacampaおよびJ.Blanco、1998、ルシフェラーゼ遺伝子を腫瘍細胞マーカーとして使用して可視化されたヌードマウスにおけるPC−3前立腺腫瘍細胞のリンパ節への移動、Lab Invest、78:1315;Rubio,N.、M.Lorgansは、ルシフェラーゼ遺伝子を定量可能な腫瘍細胞マーカーとして発現する前立腺腫瘍PC−3細胞を使用して測定した(Prostate、44:133);Harlow,E.およびD.Lane、1988、Antibodies,a laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと。動物を30日目で屠殺し、腫瘍を回収し、切片化した。VEGFを、Santa Cruz(カタログ番号が必要ならば、後日提供することが可能である)から得られるウサギ抗VEGFを使用して検出した。
【0199】
ルシフェラーゼ活性−以前に記載されたように測定した。El Hilali、Clin Cancer Res.、2005(Feb 1)、11(3):1253〜8を参照のこと。簡単に記載すると、動物を、COを使用して30日目に屠殺した。肺および骨を回収し、液体窒素で凍結した。その後、凍結組織を粉末に粉砕し、溶解緩衝液(Promega)を加えた。サンプルを数秒間ボルテックス処理し、混合物を20分間遠心分離した(13000rpm)。その後、ルシフェラーゼ基質を加えた。
【0200】
結果
CCR2(E3)−IgGによる治療は根本的にPC−3腫瘍成長を低下させる−図5aに示されるように、CCR2(E3)−IgGの反復投与は、PC−3腫瘍成長を、PBSまたはコントロールIgGが投与されたマウスにおいて発達した腫瘍と比較して、完全に阻害した。
【0201】
CCR2−Igによる後治療(18日目)は、事前に確立された原発性腫瘍の発達、および、転移物を形成するその能力を阻止する−図5bは、CCR2(E3)−IgGが腫瘍発達後(細胞注入の18日目)に投与されたときでさえ、CCL2の阻止は、原発性腫瘍の発達、および、転移を形成するその能力を劇的に低下させたことを明瞭に示す。腫瘍細胞投与後の中間日時(8日)の後でさえ、CCR2(E3)−IgGは腫瘍の発達を阻害することができた。
【0202】
CCR2(E3)−IgGによる治療は腫瘍転移を減少させる−図5cに示されるように、CCR2(E3)−IgGによるマウスの治療は、ルシフェラーゼ活性の減少によって示されるように肺組織および骨組織への腫瘍転移を著しく阻害した。両方の組織におけるルシフェラーゼ活性は、非治療動物と比較して1/4〜1/10に低下し、全体的には、同じ最小レベル(すなわち、約0.5)に達した。
【0203】
CCR2(E3)−IgGによる治療は根本的にVEGF発現を減少させる−図6a〜図6fに示されるように、CCR2(E3)−IgGの投与(図6a、図6f)は、イソタイプが一致するコントロールIgG(図6b、図6e)およびPBS(図6c、図6f)と比較して、腫瘍部位におけるVEGF発現を劇的に減少させた。これは、CCR2経路の遮断はVEGFの腫瘍誘導活性を阻害することを示唆している。
【0204】
(実施例5)
PC−3細胞のCCL2誘発遊走がCCR2(E3)−IgGによって阻害される
材料および実験手順
細胞遊走アッセイ−細胞遊走を、CytoSelectキット(Cell Biolabs、San Diego、CA)を使用して明らかにした。抗CCL2をMartinez博士およびMelado博士(Department of Immunology and Oncology、Centro Nacional de Biotechnologia、UAM Campus de Cantoblanco、Madrid、スペイン)から得た。簡単に記載すると、PC−3細胞(10個/ウエル)をトランスウエルプレートの上部チャンバーに加え、CCL2(組換えヒトMCP−1、RHMCP−1;20ng/ml)を、図7に示されるように抗CCL2(50μg)および/またはCCR2(E3)−IgG(200μg)もまた補充された下部ウエルに加えた。37℃での2時間のインキュベーションの後、遊走しているPC−3細胞をFACSによって集めた。結果が三連の平均±SEとして示される。
【0205】
結果
前立腺ガン細胞に対するCCL2の可能性のある作用機構の1つが、CCL2が腫瘍細胞を引き寄せることである。図7において認められ得るように、CCR2−Igと一緒でのCCL2はPC3細胞の遊走を抗CCL2mAbよりも良好に阻害する。
【0206】
(実施例6)
CCR2アミノ酸配列のPEG化
本発明のCCR2アミノ酸配列を安定化するために、また、本発明のCCR2アミノ酸配列を経口投与および/または非経口投与のために好適にするために、下記の配列:LysGlyLeuSerAsnCysGluSerThrSerGlnLeuAspGlnAlaThrGlnValThrGluThr(配列番号11)(これは、リシン残基がそのN末端において付加されていることを除いて、配列番号1と同一である)を有するペプチドは、当該技術分野で知られている方法を使用してPEG化することができる(例えば、Croyle、M.A.他、2000、Hum.Gene Ther.、11:1721〜1730;Croyle、M.A.他、2004、J.Virol.、78:912〜921)。例えば、モノメトキシポリ(エチレン)グリコールをスクシンイミジルスクシナート(これはSigma Chemicals(St.Louis、MO)から得ることができる)によって活性化することができる。活性化されると、このポリマーは約10:1(ポリマー:ペプチド)の重量比でCCR2ペプチドに加えることができ、PEG化反応が、穏やかな撹拌とともに25℃でさらに行われる。反応を、加えられたPEGの量に対して過剰(例えば、10倍)のリシン(Sigma Chemicals)の添加によって停止させることができる。未反応のPEG、過剰なリシン、および、反応副生成物が、100mMリン酸ナトリウム緩衝化生理的食塩水(pH7.4)により平衡化されたMicro−Bio Spin P−30クロマトグラフィーカラム(Bio−Rad)での緩衝液交換によって除かれる。
【0207】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0208】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許、特許願およびGenBankアクセション番号はすべて、個々の刊行物、特許、特許願またはGenBankアクセション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】前立腺ガン患者がMCP−1に対する非常に著しい自己抗体力価を選択的に発達させていることを示すグラフである。
【図2】本発明のヒトIg−CCR2ペプチド(Ig−E3)をコードする発現構築物の作製を示す概略的例示である。
【図3】CCR2のE3ドメインがMCP−1に特異的に結合することを示す棒グラフである。
【図4】ヒトCCR2(E3)−IgGがTHP−1細胞(ATCCアクセション番号TIB−202)のMCP−1誘発遊走を阻害することができることを示す棒グラフである。
【図5a】CCR2(E3)−IgG投与細胞とコントロールの(IgG投与またはPBS治療)細胞との間で比較されたときの、原発性腫瘍およびその転移拡大物の発達を示すグラフであり、CCR2(E3)−IgGの投与がPC−3細胞の投与と同時に開始されたとき、CCR2(E3)−IgGが腫瘍の成長を時間とともに減少させることができることを示すグラフである。
【図5b−d】CCR2(E3)−IgG投与細胞とコントロールの(IgG投与またはPBS治療)細胞との間で比較されたときの、原発性腫瘍およびその転移拡大物の発達を示すグラフであり、図5bは、PC−3細胞の投与後の18日で開始されたとき(図5b)、CCR2(E3)−IgGが腫瘍の成長を時間とともに減少させることができることを示すグラフであり、図5dは、示されるようなCCR2(E3)−IgGによるルシフェラーゼ発現PC−3細胞の骨転移および肺転移の阻害を、コントロール細胞に対する比較とともに示す棒グラフである。
【図5c】CCR2(E3)−IgG投与細胞とコントロールの(IgG投与またはPBS治療)細胞との間で比較されたときの、原発性腫瘍およびその転移拡大物の発達を示すグラフであり、PC3細胞投与後8日で注射されたCCR2(E3)−IgGの抗腫瘍活性を示すグラフである。
【図6】CCR2(E3)−IgGによるCCL−2の遮断により、VEGF産生が腫瘍部位において完全に抑制されることを示す写真である。
【図7】光学密度によって決定されたときの、CCL2処理されたPC3細胞の細胞遊走を示す棒グラフである。
【配列表フリーテキスト】
【0210】
配列番号1は、ヒトのCCR2 E3ドメインのコード配列である。
配列番号2は、ヒトのCCR2 E3ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号7は、Igカッパリーダーのコード配列である。
配列番号8は、Igカッパリーダーのアミノ酸配列である。
配列番号9は、二つのタンデムCCR2 E3ドメインを含むポリペプチドである。
配列番号10は、二つのタンデムCCR2 E3ドメインを発現するポリヌクレオチドである。
配列番号11は、PEG化のためのN’ Lys残基を付加されたCCR2 E3ドメインを含むペプチドである。
配列番号12及び13は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。
配列番号14は、Igカッパリーダー、CCR2 E3ドメイン、免疫グロブリン重鎖定常領域及び6XHisタグからなるポリペプチドである。
配列番号15は、Igカッパリーダー、CCR2 E3ドメイン及び免疫グロブリン重鎖定常領域からなるポリペプチドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列にコンジュゲート化された異種アミノ酸配列を含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができ、前記分子が非免疫原性である分子。
【請求項2】
非タンパク質性成分に結合したCCR2アミノ酸配列を含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができ、前記分子が対象において非免疫原性である分子。
【請求項3】
それぞれがMCP−1と結合することができる少なくとも2つのCCR2アミノ酸配列を含む分子。
【請求項4】
CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列に結合したタグを含む分子であって、前記CCR2アミノ酸配列がMCP−1と結合することができる分子。
【請求項5】
配列番号14または配列番号15に示される分子。
【請求項6】
請求項1、2、または3に記載の分子と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項7】
CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子と、医薬的に許容され得るキャリアとを含み、非免疫原性である医薬組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3、5、または7に記載の分子の治癒効果的な量を対象に投与し、それにより、対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療することを含む、MCP−1/CCR2関連疾患の治療の必要性のある対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療する方法。
【請求項9】
MCP−1/CCR2関連疾患を治療するために特定される医薬品を製造するための請求項1、2、3、5、または7に記載の分子の使用。
【請求項10】
(a)MCP−1および請求項4に記載の分子が複合体を形成するように、生物学的サンプルを請求項4に記載の分子と接触させること;および
(b)前記複合体を単離し、それにより、MCP−1を生物学的サンプルから単離すること
を含む、MCP−1を生物学的サンプルから単離する方法。
【請求項11】
前記異種アミノ酸配列は免疫グロブリンのアミノ酸配列を含む、請求項1、6、8、または9に記載の分子、医薬組成物、方法、または使用。
【請求項12】
前記CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列は配列番号2に示される、請求項1、4、6、8、9、または10に記載の分子、医薬組成物、方法、または使用。
【請求項13】
前記MCP−1/CCR2関連疾患は、炎症性疾患、壊死、アテローム性動脈硬化、ガン、多発性硬化症、アテローム、単球性白血病、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎)、ハンマン−リッチ症候群、子宮内膜症、リウマチ様関節炎、細気管支炎、喘息、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎)、肺胞炎、再狭窄、脳外傷、乾癬、特発性肺線維症および移植片動脈硬化からなる群から選択される、請求項8または9に記載の方法または使用。
【請求項14】
前記タグはエピトープタグである、請求項4または10に記載の分子または方法。
【請求項15】
請求項4の分子は固体担体に結合される、請求項4または10に記載の分子または方法。
【請求項16】
非タンパク質性成分に結合される、請求項1、2、3、5、または7に記載の分子。
【請求項17】
前記非タンパク質性成分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレン−co−マレイン酸無水物)(SMA)、および、ジビニルエーテルとマレイン酸無水物とのコポリマー(DIVEMA)からなる群から選択される、請求項2、6、8、または9に記載の分子、医薬組成物、方法、または使用。
【請求項18】
前記医薬的に許容され得るキャリアは非経口投与のために配合される、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬的に許容され得るキャリアは実質的に非免疫原性である、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬的に許容され得るキャリアはリポアミン酸を含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬的に許容され得るキャリアは炭水化物を含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬的に許容され得るキャリアはミクロスフェアを含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬的に許容され得るキャリアはリポソームを含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬的に許容され得るキャリアはポリマーのミクロスフェアを含む請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項25】
CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子の治癒効果的な量を対象に投与し、それにより、対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療することを含む、MCP−1/CCR2関連疾患の治療の必要性のある対象におけるMCP−1/CCR2関連疾患を治療する方法。
【請求項26】
MCP−1/CCR2関連疾患を治療するために特定される医薬品を製造するための、CCR2のN末端ドメインを有さず、かつ、MCP−1と結合することができるCCR2アミノ酸配列を含む分子の使用。
【請求項27】
前記CCR2のN末端ドメインを有さないCCR2アミノ酸配列は配列番号2に示される、請求項25または26に記載の方法または使用。
【請求項28】
前記MCP−1/CCR2関連疾患は、炎症性疾患、壊死、アテローム性動脈硬化、ガン、多発性硬化症、アテローム、単球性白血病、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎)、ハンマン−リッチ症候群、子宮内膜症、リウマチ様関節炎、細気管支炎、喘息、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎)、肺胞炎、再狭窄、脳外傷、乾癬、特発性肺線維症および移植片動脈硬化からなる群から選択される、請求項25または26に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記分子は配列番号14または配列番号15に示される、請求項25または26に記載の方法または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b−d】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−535909(P2008−535909A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506051(P2008−506051)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000454
【国際公開番号】WO2006/109301
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507342353)ラパポート ファミリー インスティテュート フォー リサーチ イン ザ メディカル サイエンシーズ (6)
【Fターム(参考)】