説明

MIMプリフォームを使用するマイクロ波ロウ付け方法

【課題】MIMプリフォームを使用するマイクロ波ロウ付け方法の提供
【解決手段】マイクロ波ロウ付け用のロウ付けプリフォーム(32)を製造する方法は、金属粉末(34)形態のロウ付け合金と結合剤(36)との混合物を準備する段階と、結合剤(36)を溶融しかつ混合物を所定の形状を有するプリフォーム(32)に成形する段階とを含む。2つの金属構成部品を互いに接合する方法は、凝固した結合剤(36)中に含有された金属粉末(34)形態のロウ付け合金を含むロウ付けプリフォーム(32)を準備する段階と、プリフォーム(32)を金属構成部品間に形成された接合部に隣接させて又は該接合部内部に配置する段階と、マイクロ波エネルギーを使用してプリフォーム(32)を該プリフォーム(32)の融点以上のロウ付け温度に加熱してロウ付け合金を溶融させかつ接合部内に流動させる段階と、ロウ付け合金を放冷して金属構成部品間に接合部を形成する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には金属構成部品のロウ付け接合に関し、より具体的には、ロウ付け合金プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
金属構成部品、特にガスタービンエンジン構成部品は、多くの場合にロウ付けにより互いに接合される。ロウ付けにおいては、接合しようとする構成部品よりも低い融点を有する金属合金が、構成部品間に配置される。次に、組立体全体をロウ付け合金の融点以上でありかつ構成部品の融点以下である温度に加熱して、合金を接合部内に流動させる。冷却させると、接合構成部品の冶金学的特性に対して有害な影響がない状態の構造的接合部が得られる。
【0003】
接合しようとする構成部品部分の基体材料を加熱しないでロウ付け合金を局所的に加熱するために、マイクロ波加熱法を使用することが知られている。ロウ付け接合部は、従来型のロウ付け合金を使用して形成れてきた。マイクロ波は、粉末粒子の周りに磁場を確立して、粉末粒子をその融点以上に加熱する。この溶融池は、ロウ付け接合部又は亀裂を加熱し続けかつ毛管作用によって該ロウ付け接合部又は亀裂内に流動する。熱伝導による基体の加熱は、溶融池に隣接した区域にのみ限られる。この方法は、ロウ付け区域外の基体材料を加熱せずに、ロウ付け粉末を選択的に加熱することを可能にする。
【0004】
しかしながら、そのような方法では、ロウ付け合金は一般的に、基体材料上の広い区域に拡がったスラリー形態で施される。この拡大した接触区域により、加熱したロウ付け粉末と基体材料との間の熱伝導が増大することになる。このことは、基体材料の加熱を増大させる結果となり、所望の選択的加熱を妨げる。
【特許文献1】米国特許第6,530,971号公報
【特許文献2】米国特許第6,464,128号公報
【特許文献3】米国特許第5,666,643号公報
【特許文献4】米国特許第5,523,170号公報
【特許文献5】米国特許第6,793,457号公報
【特許文献6】米国特許第6,494,677号公報
【特許文献7】米国特許第6,416,278号公報
【特許文献8】米国特許第5,902,421号公報
【特許文献9】米国特許第5,758,416号公報
【特許文献10】米国特許第5,511,721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、過度な加熱のない状態での構成部品のマイクロ波ロウ付け方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の要求は本発明によって満たされ、1つの態様によると、本発明はマイクロ波ロウ付け用のロウ付けプリフォームを製造する方法を提供し、本方法は、金属粉末形態のロウ付け合金と結合剤との混合物を準備する段階と、結合剤を溶融しかつ混合物を所定の形状を有するプリフォームに成形する段階とを含む。
【0007】
本発明の別の態様によると、2つの金属構成部品を互いに接合する方法は、凝固した結合剤中に含有された金属粉末形態のロウ付け合金を含むロウ付けプリフォームを準備する段階と、プリフォームを金属構成部品間に形成された接合部に隣接させて又は該接合部内部に配置する段階と、マイクロ波エネルギーを使用してプリフォームを該プリフォームの融点以上のロウ付け温度に加熱して、ロウ付け合金を溶融させかつ接合部内に流動させる段階と、ロウ付け合金を放冷して、金属構成部品間に接合部を形成する段階とを含む。
【0008】
本発明は、添付図面の図と関連させて行った以下の説明を参照することによって、最もよく理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
様々な図を通して同一の参照符号が同じ要素を示している図面を参照すると、図1は、弓形の外側及び内側バンド14及び16間に配置されたノズルベーン12A及び12Bを含む例示的なタービンノズルセグメント10を示している。ベーン12は、燃焼ガスをその下流に設置されたタービンロータ(図示せず)に向けるように構成された翼形部を形成する。外側及び内側バンド14及び16は、それぞれノズルセグメント10を通るガス流の半径方向外側及び内側の境界面を形成する。ガスタービンエンジンは、環状の構成として円周方向に配列された複数のそのようなセグメント10を含むことになる。
【0010】
図2は、互いに組み立ててノズルセグメント10を形成する例示的な1対のタービンノズル「シングレット」18A及び18Bを示している。シングレット18の各々は、それぞれ弓形の外側及び内側バンド部分14A、14B及び16A、16B間に配置されたノズルベーン12A、12Bの1つを含む。シングレット18は一般的に、例えば約1100℃(2000°F)又はそれ以上のような高温度において高い強度を有する金属合金で鋳造される。そのような合金は、多くの場合にニッケル又はコバルト基であり、当技術分野においては「超合金」と呼ばれる。シングレット18A及び18Bは、内側バンド部分16A及び16Bの合わせ端縁部22及び24によって形成された内側接合部20(図3)と外側バンド部分14A及び14Bの合わせ端縁部28及び30によって形成された外側接合部26とに沿って互いに接合される。
【0011】
シングレット18は、多くの場合に方向性凝固(DS)又は単結晶(SC)ミクロ構造として鋳造され、これら方向性凝固(DS)又は単結晶(SC)ミクロ構造は、融接のような液相接合法によって劣化される。従って、シングレット18A及び18Bは一般的に、ロウ付けによって接合される。この例示的な構成は、タービンノズルセグメントのロウ付け接合部の多くの公知の構成の1つであるに過ぎず、またノズルセグメント10自体は、一般にロウ付けによって組み立てられる、特にガスタービンエンジンにおける多数の構成部品及び組立体の1つの実施例に過ぎないことに留意されたい。本発明は、あらゆるタイプのロウ付け接合部に適用可能である。
【0012】
初めに、シングレット18A及び18Bは、上記の内側及び外側接合部20及び26が形成されるように、図3に示すように横に並んだ関係で配置される。適当な固定具装置を使用してシングレット18A及び18Bをこの関係で保持することができ、また必要に応じて、接合部20及び26は、1つ又はそれ以上の仮付け溶接によって一時的に固定することもできる。
【0013】
金属射出成形(MIM)法を用いて製作したロウ付けプリフォーム32が、接合部20及び26の各々に隣接させて又は該接合部20及び26の各々の内部に配置される。図4は、細長い円形断面のワイヤの形態になったロウ付けプリフォーム32を示している。ロウ付けプリフォーム32は、約100マイクロメートル又はそれ以下の粒径を有する金属粒子34と結合剤36とを含む。プリフォーム32の形状は、以下に詳述するように、該プリフォームを製作するために使用した金型の形状によってのみ限定される。
【0014】
固定具で固定した後に、プリフォーム32は、マイクロ波ロウ付けされる。図5に示すように、シングレット18は、焼結処理の間におけるプリフォーム32の望ましくない酸化又はその他の反応を防止するために、好適な雰囲気を形成するための手段を含むチャンバ38内に配置される。この図示した実施例では、アルゴンのような不活性ガスの供給源40が、チャンバ38の内部に連結される。ロウ付けはまた、真空下において行うこともできる。マイクロ波周波数範囲の出力を有する公知のタイプの空洞マグネトロンのようなマイクロ波源42が、直接波又は反射波のいずれかがプリフォーム32に対して見通しの良い通視線を有することになるようにチャンバ38と連通して取り付けられる。この図示した実施例では、外側接合部26のロウ付けのみを示している。マイクロ波スペクトルは、約1GHz〜300GHzの範囲にわたる。このスペクトル範囲内において、約2.4GHzの出力周波数は、固体金属を透過しない状態で金属粒子と結合しかつ該金属粒子を加熱することが知られている。
【0015】
マイクロ波源42が起動されて、プリフォーム32を照射する。プリフォーム32内での小さな金属粒径の故に、マイクロ波は、粒子34と結合しかつ該粒子34を加熱し、またシングレット18を加熱しない状態で該シングレット18によって反射されることになる。プリフォーム32は、金属粒子34の液相温度以上の温度に加熱されて、金属粒子34を液状ロウ付け合金に溶融させ、外側接合部26内に流動させる。次に、ロウ付け合金は、放冷されかつ凝固して、シングレット18A及び18B間に冶金学的結合部を形成する。この方法を使用すると、接触区域の減少(ロウ付けスラリーと比べて)により、それらの構成部品を著しく加熱することによるシングレット18A又は18Bの再結晶又は結晶粒成長温度以上の温度にロウ付け合金を加熱することが可能になることになる。加熱はプリフォーム32のみを対象とするので、この方法は、融点降下剤を殆ど又は全く含まない状態のロウ付け合金の使用を可能にすることになる。
【0016】
ロウ付けプリフォーム32は、以下のようにMIM法により製作される。初めに、金属粒子34の形態のロウ付け合金と好適な結合剤36とが準備される。好適なロウ付け合金は、当技術分野においては公知であり、一般的にロウ付けされる構成部品と同様な合金基材を含む。ガスタービンエンジンの構成部品の場合、ロウ付け合金は一般的に、ニッケル基又はコバルト基である。任意選択的に、ロウ付け合金組成は、該ロウ付け合金が接合しようとするあらゆる構成部品よりも低い温度範囲内で溶融するのを保証するためにロウ付け合金の融点を低下させるための1つ又はそれ以上の成分を含有することができる。ニッケル基及びコバルト基ロウ付け合金用の融点抑制剤には、ケイ素、ホウ素、燐又はその組合せが含まれる。使用するロウ付け合金の特定は、該ロウ付け合金がMIM法のための粉末に加工処理することができる限り、特に重要ではない。
【0017】
射出成形法における最適性能のためにまたさらにマイクロ波加熱との適合性のために、金属粉末の粒径は、約100マイクロメートル又はそれ以下とすべきである。
【0018】
結合剤36は、金属粉末と化学的な適合性がありかつ必要な処理(例えば、混合、射出、凝固及び溶脱処理)を可能にするあらゆる材料とすることができる。公知の好適な結合剤36の実施例には、ワックス及びポリマー樹脂が含まれる。結合剤36は、粉末形態で準備することができる。
【0019】
結合剤36及び金属粉末34は、互いに完全に混合される。この混合物は次に、加熱されて、結合剤を溶融させかつ結合剤36で被覆された金属粉末34を含んだ流動体を形成する。次に混合物は、所定の形状に成形される。混合物を成形する1つの方法は、公知の射出成形装置を使用することである。混合物は、金型の空洞内に押し出される。任意選択的に、金型を加熱して、脆弱なプリフォームを形成することになる結合剤の過度に急速な凝固を回避することができる。
【0020】
個別のバッチとして結合剤を溶融させるのに代えて、結合剤は、該結合剤がスクリューを通過する時に結合剤を溶融させることができる公知の射出成形装置を使用して、連続方式で混合物を成形することもできる。混合物が凝固し終わると、金型を開き、得られた非圧密化つまり「グリーン」プリフォームが取り出される。
【0021】
プリフォームは、凝固した結合剤36中に浮遊した金属粒子34を含む。プリフォームは、更なる処理を行うのに十分な強度を有するが、プリフォーム32は幾らか壊れ易い。プリフォーム32は、溶脱処理して結合剤36の大部分を除去し、「ブラウン」プリフォームを得ることができる。この処理は、結合剤36を溶解するが金属粉末34は侵食しない好適な溶剤にプリフォーム32を浸漬させるか又は該好適な溶剤でプリフォーム32を洗浄することによって行うことができる。
【0022】
プリフォーム32は、「グリーン」又は「ブラウン」状態で上記のマイクロ波ロウ付け法のために使用することができる。任意選択的に、プリフォーム32は、その密度及び強度を増大させるために焼結することができる。プリフォーム32は、焼結処理の間におけるプリフォーム32の望ましくない酸化又はその他の反応を防止するために、真空又はその他の好適な雰囲気を形成するための手段を含む上記のチャンバ38と同様なチャンバ内に配置される。上記のようなマイクロ波源を使用することができ、或いは従来型の加熱法を利用することもできる。
【0023】
焼結する場合には、プリフォーム32は、金属粉末34の液相温度以下でありかつ残留結合剤36を溶融しかつ放逐するのに十分な高さの温度に加熱される。上記のようなマイクロ波ロウ付けの目的のために、プリフォーム32は、粉末又は粒子状態でロウ付け合金を含有し、ロウ付け合金がマイクロ波エネルギーを吸収することになるようにしなくてはならない。従って、あらゆる焼結工程の温度及び時間は、プリフォーム32が実質的に100%よりも低い密度になるように制限される。焼結サイクルが完了すると、プリフォーム32は、チャンバから取り出されて放冷される。
【0024】
以上、構成部品のマイクロ波ロウ付けの方法について説明した。本発明の特定の実施形態について説明してきたが、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく本発明に対して様々な変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明の好ましい実施形態及び本発明を実施するための最良の形態に関する以上の説明は、限定のためではなくて説明のためのみに行ったものであり、本発明は、特許請求の範囲によって定まる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】例示的なタービンノズルセグメントの斜視図。
【図2】接合作業の前における、図1のノズルセグメントを構成する1対のタービンノズル「シングレット」の斜視図。
【図3】接合作業の前段階として横に並べて配置された、図2のノズル「シングレット」の斜視図。
【図4】図3の一部分の断面図。
【図5】マイクロ波ロウ付け処理のためにチャンバ内に配置された、図2のノズルシングレットの概略図。
【符号の説明】
【0026】
10 タービンノズルセグメント
12A、12B ノズルベーン
14 外側バンド
14A、14B 外側バンド部分
16 内側バンド
16A、16B 内側バンド部分
18A、18B タービンノズルシングレット
20 内側接合部
22、24、28、30 合わせ端縁部
26 外側接合部
32 ロウ付けプリフォーム
34 金属粒子
36 結合剤
38 チャンバ
40 不活性ガス供給源
42 マイクロ波源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波ロウ付け用のロウ付けプリフォーム(32)を製造する方法であって、
金属粉末(34)形態のロウ付け合金と結合剤(36)との混合物を準備する段階と、
前記結合剤(36)を溶融しかつ前記混合物を所定の形状を有するプリフォーム(32)に成形する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記結合剤(36)の大部分が、該結合剤(36)を溶解するが前記金属粉末(34)は溶解しないように選択した溶剤で前記プリフォーム(32)を洗浄することによって除去される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォーム(32)を加熱して前記結合剤(36)の残留部を除去する段階をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記混合物をプリフォーム(32)に成形する段階が、所定の形状を有する金型内に前記混合物を射出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記所定の形状が、円形断面のワイヤである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
2つの金属構成部品を互いに接合する方法であって、
凝固した結合剤(36)中に含有された金属粉末(34)形態のロウ付け合金を含むロウ付けプリフォーム(32)を準備する段階と、
前記プリフォーム(32)を前記金属構成部品間に形成された接合部に隣接させて又は該接合部内部に配置する段階と、
マイクロ波エネルギーを使用して前記プリフォーム(32)を該プリフォーム(32)の融点以上のロウ付け温度に加熱して、前記ロウ付け合金を溶融させかつ前記接合部内に流動させる段階と、
前記ロウ付け合金を放冷して、前記金属構成部品間に接合部を形成する段階と、
を含む方法。
【請求項7】
前記ロウ付け温度が、前記金属構成部品のいずれもの融点以下である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記加熱する段階の前に、前記結合剤(36)を溶解するが前記金属粉末(34)は溶解しないように選択した溶剤で前記プリフォーム(32)を洗浄することによって、該プリフォーム(32)から前記結合剤(36)の実質的に全てを溶脱させる段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記金属粉末(34)が、ニッケル、コバルト及びその合金から成る群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記金属粉末(34)が、100マイクロメートル以下の粒径を有する、請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−319933(P2007−319933A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144309(P2007−144309)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】