説明

MIRACタンパク質

【解決手段】 本開示は、特定の治療タンパク質において、条件的活性型生物学的タンパク質を野生型タンパク質から生成する方法に関するものであり、当該タンパク質は、野生型正常生理的条件において可逆的または不可逆的に不活性である。例えば、発達したタンパク質は、体温において実質的に不活性であるが、低温においては活性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCTとして2010年3月9日に出願されている。国際特許出願において、米国を除く全ての指定国での出願人は、米国の有限責任会社であるBioAtla, LLCの名でなされ、及び、指定国米国のみにおいて、出願人は、両者ともに米国国民であるJay M Short、Hwai Wen Chang、ドイツ国民であるGerhard Freyであり、及び2009年3月9日に出願された、米国仮特許出願番号61/209,489に対して優先権を主張し、その全体の内容は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、タンパク質の発達と活性の分野に関するものである。具体的には、本開示は、特定の治療タンパク質において、野生型タンパク質から生理活性タンパク質を条件的に生成する方法に関するものであり、当該タンパク質は、通常の生理的条件での野生型において、可逆的または不可逆的に不活性である。例えば、発達したタンパク質は、体温において実質的に不活性であるが、低温下では活性である。
【背景技術】
【0003】
様々な特徴においてタンパク質を発達させるための可能性、例えば、特に酵素を異なる条件下での操作のために安定させることについて記載している相当数の文献がある。例えば、酵素は、活性を変化させることで、より高い温度で安定するために発達した。高温での活性改良という状況において、当該改良の実質的な部分は、摂氏10度上昇するごとに代謝回転が倍増する酵素の場合において推定されるQ10ルールにより共通して記載される高い動的活性に起因していることがある。加えて、当該分子の野生型活性温度のような、通常操作条件においてタンパク質を不安定化する自然の変異株の例も存在する。温度変異型において、これらの変異は、低温において活性化されることもあるが、通常は、当該野生分子と比較して、低レベルでの活性となる(また、通常、Q10または同様のルールにより導かれる活性において減少によって記載される)。
【0004】
条件的に活性化される有用な分子を生成することは望ましい。例えば、野生型条件において実質的に不活性であるが、野生型条件以外の、野生型条件と等しいまたはより良いレベルで活性化し、または、特定の微小環境において活性化または不活性化し、または、経時的に活性化または不活性化される。温度の他に、タンパク質を発達または最適化させうる他の条件は、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度を含む。発達の間、最適化されうる他の望ましい性質は、化学抵抗及びタンパク質分解抵抗を含む。
【0005】
分子を発達または操作するための多くの戦略が既に刊行されている。しかしながら、その野生型操作条件において、不活性または実質的に不活性(10%活性以下、及び特に1%活性以下)となるようにタンパク質を操作または発達させることは、新しい条件において、野生型条件よりも等しいまたは良好な活性を維持する一方で、不安定化変異と当該不安定化効果に対抗しない変異を増加させる活性と共存する必要がある。不安定化が、Q10のような標準的規則によって予測された当該効果よりもタンパク質の活性を大きく減らすことができると推測され、したがって、低温で効果的に作用するタンパク質を発達させる能力は、例えば、それらの通常操作条件下では不活性であるのに対し、我々がMiracタンパク質と称する予期せぬ新規のタンパク質を創造する。
【0006】
この出願の全体において、様々な刊行物は、著者及び日付により参照されている。その全体におけるこれらの刊行物の当該開示は、ここに記載され請求された当該開示の日付以降、当該技術水準を当業者に知られているように、より完全に記載するために、本出願内に参照により組み込まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、条件的活性型生物学的タンパク質を調製する方法を提供するものであって、当該方法は、野生型生物学的タンパク質を選択すること、変異DNAをつくるための発達的技術の1またはそれ以上を用いる野生型生物学的タンパク質をエンコードするDNAを発達させること、変異タンパク質を得るために当該変異DNAを発現させること、当該変異タンパク質及び当該野生型タンパク質を正常生理条件下及び異常条件下で分析を行うこと、及び、(a)野生型タンパク質と比較して正常生理条件での分析において活性の減少、及び、(b)野生型タンパク質と比較して異常条件下の分析において活性の増加の両方を示すこれらの変異タンパク質当該条件的活性型生物学的タンパク質を選択すること、を有する。様々な態様において、当該正常生理条件は、温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の1またはそれ以上から選択される。特定の態様において、当該正常生理条件は温度であり、そこにおいて、当該条件的活性型生物学的タンパク質は実質的に当該正常生理温度においては不活性であるが、当該正常生理温度よりも低い異常温度では活性である。他の態様において、当該条件的活性型生物学的タンパク質は、当該野生型正常生理条件において可逆的または不可逆的に不活性である。1つの特定の態様においては、当該タンパク質は、当該野生型正常生理条件で可逆的に不活性である。一方で、条件的活性型生物学的タンパク質は、活性における、可逆的または不可逆的な、2つまたはそれ以上の異なる生理条件における変化を示すこれらのタンパク質から選択される。
【0008】
1つの実施形態においては、当該野生型生物学的タンパク質は、酵素である。特定の態様において、当該野生型生物学的タンパク質は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レニン及びヒアルロニダーゼからなる群から選択される。
【0009】
他の実施形態において、当該野生型タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスP(SP)、ニューロペプチドY(NPY)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、バソプレッシン、及びアンギオスタチンから選択される。
【0010】
他の実施形態において、当該生物学的タンパク質は抗体である。
【0011】
他の実施形態において、当該開示は条件的活性型生物学的反応修飾物質を調製する方法を提供するものであって、当該方法は、炎症反応メディエーターを選択すること、当該メディエーターへの野生型抗体を同定すること、当該野生型抗体を発達させること、第一の条件での当該野生型抗体と比較して当該メディエーターへの結合の減少を示し、及び、上昇変異体を同定するための第二条件でのメディエーターへの結合親和性の増大を示す変異体を特異的にスクリーニングすること、及び、組換えされた上昇変異体をつくるため上昇変異体の重鎖及び軽鎖を組換えすること、及び、第一の条件での当該野生型抗体と比較して当該メディエーターへの結合の減少を示し、及び当該条件的活性型生物学的反応修飾物質を同定するための第二条件でのメディエーターへの結合親和性の増大を示す変異体における当該組換えされた上昇変異体をスクリーニングすることを有する。一態様において、当該炎症反応メディエーターは、IL−6、IL−6受容体、TNF−alpha、IL−23及びIL−12から選択される。他の態様において、当該第一及び第二条件は、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の条件から選択される。
【0012】
他の実施形態において、当該開示は条件的活性型生物学的タンパク質を有する薬学的組成物と薬学的許容な担体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に提供される実施例の理解を容易にするために、特定のしばしば登場する方法及び/または用語は以下に記載される。
【0014】
測定量と関連して本明細書で使用される用語「約」は、測定を行い、測定の目的に相応の注意レベルと使用される測定機器の精度を行使する当業者によって期待される測定量における通常の変動に関連するものである。特に明記しない限り、「約」は、与えられた値の+/−10%の変動に関連する。
【0015】
用語「薬剤」は、化学化合物、化学化合物の混合物、空間的に局所化された化合物の配列(例えば、VLSIPSペプチド配列、ポリヌクレオチド配列、及び/またはコンビナトリアル小分子配列)、生体高分子、バクテリオファージペプチドディスプレイライブラリー、バクテリオファージ抗体(例えばscFV)ディスプレイライブラリー、ポリソームペプチドディスプレイライブラリー、または、バクテリア、植物、菌類または動物(特に哺乳類)の細胞または組織のような生体材料からつくられる抽出物を示すのに用いられる。薬剤は、本明細書の以下に記載されているスクリーニング分析に含まれることにより条件的活性型生物学的治療酵素として潜在的酵素活性のために評価される。薬剤は、以下の本明細書の以下に記載されているスクリーニング分析に含まれることにより条件的活性型生物学的治療酵素として潜在的活性のために評価される。
【0016】
制限部位における「曖昧な塩基要件」は、最大限には特定されないヌクレオチド塩基要件に関連するものである。例えば、特定の塩基(例えば、この例に限定はされないが、A、C、G、及びTから選択される特定の塩基)ではないが、少なくとも2つまたはそれ以上の塩基の任意の1つであっても良い。塩基の曖昧性を表すために本明細書と同様に従来技術において用いられる共通に認められた省略形には以下を含む:R=GまたはA;Y=CまたはT;M=AまたはC;K=GまたはT;S=GまたはC;W=AまたはT;H=AまたはCまたはT;B=GまたはTまたはC;V=GまたはCまたはA;D=GまたはAまたはT;N=AまたはCまたはGまたはT。
【0017】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、アミノ基(−NH2)及びカルボキシル基(−COOH)を含む任意の有機化合物である、好適には、自由群またはペプチドの部分として縮合後のどちらでも結合する。「アルファ−アミノ酸を形成する20種の自然にエンコードされたポリペプチド」は従来技術において知られており、アラニン(alaまたはA)、アルギニン(argまたはR)、アスパラギン(asnまたはN)、アスパラギン酸(aspまたはD)、システイン(cysまたはC)、グルタミン酸(gluまたはG)、ヒスチジン(hisまたはH)、イソロイシン(ileまたはI)、ロイシン(leuまたはL)、リシン(lysまたはK)、メチオニン(metまたはM)、フェニルアラニン(pheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(serまたはS)、スレオニン(thrまたはT)、トリプトファン(tipまたはW)、チロシン(tyrまたはY)及びバリン(valまたはV)に関連するものである。
【0018】
用語「増幅」は、ポリヌクレオチドのコピー数が増大することを意味する。
【0019】
「キメラ特性」を有する分子は1)第一参照分子と部分的に相同及び部分的に非相同であり、さらに、2)第二参照分子と部分的に相同であると同時に部分的に非相同であり、3)1つまたはそれ以上の付加的参照分子と部分的に相同であると同時に非相同となる可能性を排除することを含まない。非限定的な実施形態において、キメラ分子は、部分的な分子配列の再集合を組み立てることによって調製されることもある。非限定的な態様において、キメラポリヌクレオチド分子は、複数の分子テンプレートを使用する当該キメラポリヌクレオチドを合成することによって調製されることもある。それにより結果として、キメラポリヌクレオチドは複数のテンプレートの性質を有する。
【0020】
本明細書で使用される用語「相同」とは、種間に関して発達的及び機能的である遺伝子配列を意味する。例えば、限定はされないが、ヒトの遺伝子において、ヒトCD4遺伝子はマウス3d4遺伝子と相同遺伝子であり、これら2つの遺伝子の配列及び構造は、高い相同性を示し、及び、両遺伝子はMHCクラスIIを制限された抗原認識によるT細胞活性化の信号を送る際に機能するタンパク質をエンコードする。
【0021】
本明細書で用いられる「比較ウィンドウ」は、少なくとも20の隣接するヌクレオチドの部位の部分概念を意味するものであり、そこにおいて、ポリヌクレオチド配列は、少なくとも20の隣接するヌクレオチドの参照配列と比較され、及び、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、当該2つの配列の最適な配置のための参照配列(付加または削除を有さない)と比較して20%パーセントまたはそれ以下の付加または削除(つまり、ギャップ)を有することもある。比較ウィンドウを配置するための配列の最適な配置は、スミスの局所的相同性アルゴリズム(Smith and Waterman,1981/"Comparison of biosequences",Adv Appl Math, 2:482−489; Smith and Waterman, 1981,"Overlapping genes and information theory",J Theor Biol,91:379−380;Smith and Waterman, J MoI Biol, "Identification of common molecular subsequences",1981, 147:195−197; Smith et al., 1981,"Comparative biosequence metrics",J MoI Evol, 18:38−46)によって、ニードルマンの相同性アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970,"A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins"J MoI Biol, 48(3):443−453)によって、ピアソンの相似性検索(Pearson and Lipman,1988,"Improved tools for biological sequence comparison",Proc Nat Acad Sci USA, 85:2444−2448)によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実施(GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Dr., Madison,Wis.)によって、または調査によって導かれることがあり、及び選択された様々な方法によって生成される最高の配置(つまり、比較ウィンドウ上で相同性の高い割合において結果として生じる)であることもある。
【0022】
用語「条件的活性型生物学的タンパク質」は、1つまたはそれ以上の正常生理条件下の親野生型タンパク質よりも活性が多いまたは少ない野生型タンパク質の変異体または変異を意味する。この条件的活性型タンパク質は、体の選択された領域でも活性を示し、または、異常または感染に対して許容な生理条件下で活性の増加または減少を示す。正常生理条件は、投与の部位での、または対象への投与の部位または作用部位での組織または器官における通常範囲内で考慮される温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度である。異常条件は、通常受け入れられる範囲から逸脱する条件のことをさす。一態様において、条件的活性型生物学的タンパク質は、野生型条件において実質的に不活性であるが、野生型条件と等しいまたは野生型条件よりも良いレベルにおける他の野生型条件においては活性である。例えば、部位の多様において、発達した条件的活性型生物学的タンパク質は体温において実質的に不活性であるが、低温では活性である。他の態様において、当該条件的活性型生物学的タンパク質は、野生型条件において、可逆的または不可逆的に不活性である。さらなる態様において、当該野生型タンパク質は治療タンパク質である。他の態様において、当該条件的活性型生物学的タンパク質は、薬または治療薬剤として用いられる。さらにもう一つの態様において、当該タンパク質は、例えば、肺を通過した後のような高い酸素濃度の血液中において、または、腎臓においてみられる低いpHにおいて、多いまたは、少ない活性を示す。
【0023】
「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、カルボン酸側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びトレオニン、アミドを含む側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミン、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、アルギニン、及びヒスチジン、及び、含硫側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0024】
用語「対応する」は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に対して相同である(つまり、厳密に発達的に関連がなくても同一である)、または、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列と同一であることを意味する。これと対比的に、用語「相補的」は、本明細書において、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に対して相同であることを意味する。例えば、ヌクレオチド配列が「TATAC」は参照「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に対して相補的である。
【0025】
用語「効果的分解」量は、酵素と接触していない基質と比較して、基質の少なくとも50%を処理するのに必要な酵素の量に関連する。
【0026】
本明細書で使用する「定義された配列枠組」は、ランダムではない塩基、一般的に実験データまたは構造データの塩基から選択された定義された配列のセットに関連する。例えば、定義された配列枠組は、ベータ−シート構造を形成するために予測されるアミノ酸配列のセットから構成されることがあり、また、他の変異において、ロイシンジッパー7つの繰り返しモチーフ、亜鉛フィンガー領域からなることがある。「定義された配列カーネル」は、可変性の限られた範囲を包含する配列のセットである。(1)20の従来のアミノ酸の完全にランダムな10塩基長配列は、(20)10配列のいずれかであり得る、及び(2)20の従来のアミノ酸の擬似ランダムな10塩基長配列は、(20)10配列のいずれかであり得るが、特定の部位及び/または全体において、特定の残基にとってバイアスを示すが、これらに対し、(3)定義された配列カーネルは、各残基部位が許容可能な20の従来のアミノ酸のいずれかであるようにしている場合、配列のサブセットである。定義された配列カーネルは一般的に変異または不変異の残基部位を有する、及び/または、個々の選択されたライブラリメンバー配列の長さ全体あるいはセグメント的に、アミノ酸残基及びその類の定義されたサブセットから選択された残基を有することがある変異残基部位を有する。定義された配列カーネルは、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に関連することがある。限定はしないが、例として、配列(NNK)10及び(NNM)10を挙げる。ここにおいて、NはA、T、GまたはCを表し、KはGまたはTを表し、及び、Mは、AまたはCを表し、配列(NNK)10及び(NNM)10は、定義された配列カーネルである。
【0027】
DNAの「消化」は、DNA内の特定の配列のみに作用する制限酵素によるDNAの触媒的開裂に関する。本明細書において使用される様々な制限酵素は市販されているものであり、及び、それらの反応条件、補因子及び他の要件は当業者において既知のものが使用された。分析目的において、典型的には、1マイクログラムのプラスミドまたはDNAフラグメントが、約20マイクロリットルの緩衝液において約2ユニットの酵素と共に用いられる。プラスミド作成のためDNAフラグメントを分離させる目的において、典型的には5から50マイクログラムのDNAが、20から250ユニットのより大きい体積の酵素によって消化される。特定の制限酵素のための適当な緩衝溶液及び基質の量は、製造業者によって特定される。37℃で約1時間の培養が通常使用されるが、供給者の指示に従って、変化することもある。消化後、反応は所望のフラグメントを分離して取得するために直接電気泳動にかけられる。
【0028】
「指向性結紮」は、ポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端における結紮が、好適な結紮方向を特定するのに十分異なることを意味する。例えば、本来、2つの平滑末端を有する未処理及び未消化のPCR生成物は、多重クローニング部位において平滑末端を生成するために消化されるクローニングベクター内において結紮される際に、典型的には好適な結紮方向を有さない。従って、指向性結紮は、これらの状況において典型的には示されない。対照的に、5’EcoRI処理末端及び3’BamHIを有する消化されたPCR生成物が、EcoRI及びBamHIにより消化された多重クローニング部位を有するクローニングベクター内で結紮される際に、指向性結紮は典型的に示される。
【0029】
用語「DNAシャフリング」は、実質的に相同ではあるが、同一ではない配列間での組換えを示すために本明細書において使用され、実施形態によっては、DNAシャフリングは、cer/lox及び/またはflp/frtシステムなどを介してのように、非相同組換えを介しての乗換えを含むことがある。
【0030】
用語「薬剤」または「薬剤分子」は、ヒトまたは動物の体に投与された際に、ヒトまたは動物の体に有益な効果を有する物質を含む治療剤を意味する。好適には、当該薬剤は、1つまたはそれ以上の症状、病気、または、ヒトまたは動物の体における異常条件を治療する、治すまたは緩和する、または、ヒトまたは動物の体の健康を増進させることができるものである。
【0031】
「有効量」は、若干の期間にわたって投与された者の生存生物における条件を治療するまたは防止する、例えば、所望の投薬期間の間に治療的な効果を提供するのに有効的である、条件的活性型生物学的タンパク質またはフラグメントの量のことである。
【0032】
本明細書で使用されているように、用語「電解質」は、血液または電荷を運搬する他の体液内の鉱物を定義するために使用される。例えば、一態様において、正常生理条件及び異常条件は、「電解質濃度」の条件であることがある。一態様において、試験される電解質濃度は、イオン化されたカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、及びリン酸塩濃度の1つまたはそれ以上から選択される。例えば、一態様において、血清カルシウムの通常範囲は、8.5〜10.2mg/dLである。この態様において、異常血清カルシウム濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清塩化物は1リットルあたり96〜106ミリグラム当量(mEq/L)である。この態様において、異常血清塩化物濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清マグネシウム濃度の通常範囲は1.7〜2.2mg/dLである。この態様において、異常血清マグネシウム濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清リン酸塩の通常範囲は、2.4〜4.1mg/dLである。この態様において、異常血清リン酸塩濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清または血液のナトリウムの通常範囲は135〜145mEq/Lである。この態様において、異常血清または血液ナトリウム濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清または血液カリウムの通常範囲は、3.7〜5.2mEq/Lである。この態様において、異常血清または血液カリウム濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。さらなる態様において、血清重炭酸塩の通常範囲は20〜29mEq/Lである。この態様において、異常血清または血液重炭酸塩濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。異なる態様において、重炭酸塩レベルは、血液における酸性の通常レベル(pH)を示すために使用されることがある。用語「電解質濃度」は、組織、または、血液または血漿以外の体液における特定の電解質濃度を定義するためにも使用されることがある。この場合において、正常生理条件は、その組織または体液において臨床的通常範囲であるように考慮される。この態様において、異常組織または体液電解質濃度は、通常範囲の上または下から選択されることがある。
【0033】
本開示において使用されるように、用語「抗原決定基」は、酵素ポリペプチドのような抗原上の抗原性決定要素に関連する。そして、酵素特異抗体のような抗体の抗原結合部位が結合する。抗原決定基は通常、アミノ酸または当側鎖のような分子の化学表面活性分属からなり、及び、特異3次元構造性質も特異的な電荷性を有することがある。本明細書で使用されているように、「抗原決定基」は、抗原のその部分または抗体の本体と結合する可変領域と相互に作用する結合相互佐用を形成することができる他の巨大分子を意味する。典型的には、このような結合相互作用は、1つまたはそれ以上のCDRのアミノ酸残基との分子間作用として明らかにされる。
【0034】
本明細書で使用されているように、「酵素」は特定の触媒作用の性質を有するタンパク質である。例えば、基質濃度、pH、温度及び阻害剤の有無などの要因は、触媒作用の割合に作用することがある。典型的には、野生型酵素において、Q10(温度係数)は温度が10℃上昇するごとに反応割合の増加を記載する。野生型酵素において、Q10=2〜3であり、換言すれば、反応割合は、温度が10℃増加するごとに2倍または3倍となる。高温にて、タンパク質は変性する。酵素最適値とわずかに異なるpH値で、酵素及びおそらく基質分子の電荷において小さな変化が生じる。イオン化における変化は、基質分子の結合に作用することがある。極端なpHレベルで、酵素は変性を生じ、そこにおいて、活性部位が歪められ、及び、基質部位はもはや適合しない。
【0035】
本明細書で使用されているように、用語「発達」または「発達する」は、1つまたはそれ以上の、新規なポリペプチドをエンコードする新規なポリヌクレオチドを生成する突然変異生成の方法を用いることを意味するものであり、新規なポリペプチドは改良された生体分子そのものであり、及び/または、他の改良された生体分子の生成に貢献する。特定の非限定的な態様において、本開示は親野生型タンパク質から条件的活性型生物学的タンパク質の発達に関するものである。一態様において、例えば、発達は、本明細書に参照により組み込まれた米国特許出願番号2009/0130718に開示される非確率的なポリヌクレオチドキメラ化及び非確率的に突然変異を指令された部位の両方を実行する方法を意味するものである。より詳しくは、本開示は、正常生理条件においては野生型親酵素と比較して活性の減少を示すが、1つまたはそれ以上の異常条件下では野生型酵素と比較して活性を強化する条件的活性型生物学的酵素の発達のための方法を提供するものである。
【0036】
用語「フラグメント」、「誘導体」及び「相似器官」は、参照ポリペプチドを参照する際に、少なくとも1つの、少なくとも本質的に参照ポリペプチドと同じ生理機能または活性を保有するポリペプチドを有する。さらに、用語「フラグメント」、「誘導体」及び「相似器官」は、著しく高い活性を有する成熟した酵素を生成するために開裂により修飾されうる低活性前駆タンパク質のような「前形態」分子によって例示される。
【0037】
「単一アミノ酸置換の全範囲」が各アミノ酸部位に示されている、テンプレートポリペプチドから子孫ポリペプチドを生成するための方法が本明細書において提供されている。本明細書に使用されるように、「単一アミノ酸置換の全範囲」は、本明細書に記載されているようにアルファ−アミノ酸を形成する、20の自然にエンコードされたポリペプチドに関するものである。
【0038】
用語「遺伝子」はポリペプチド鎖の生成において含まれるDNAセグメントを意味し、個々のコーディングセグメント(エキソン)間に介在配列(ニトロン)と同様にコーディング領域(リーダー及びトレーダー)を先行する、及び、続く領域を含む。
【0039】
本明細書に使用されるように「遺伝的不安定性」は、反復配列の損失による配列簡易化を通常含む減少事象の工程によって失われる、反復性の高い配列の自然な傾向を意味する。欠失は、反復の1つのコピー及び反復間の全ての損失を含むことがある。
【0040】
用語「非相同」は、一本鎖核酸配列が、他の一本鎖核酸配列またはその相補的配列にハイブリダイズできないことを意味する。したがって、非相同な部分は、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、他の核酸またはポリヌクレオチドにハイブリダイズできない配列における部分または領域を有することを意味する。このような領域または部分は例えば変異の部分である。
【0041】
用語「相同」または「相同」は、一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズできることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、及び、後述するような温度及び塩濃度のようなハイブリダイゼーション条件を含む要因の数によることがある。好適には、同一の領域が約5bpより大きく、さらに好適には、同一の領域が10bpよりも大きい。
【0042】
本開示の利益は「産業的応用」(または産業的工程)にまで及び、用語は、非商業的な産業的応用(例えば、非営利機関での正医学的調査)と同様に、適切な商業的な産業的(または単に産業的な)応用を含むために用いられる。関連する応用には、診断、医学、農業、製造及び学究的世界の分野を含む。
【0043】
「同一な」または「同一」は、2つの核酸が同じ配列または相補的な配列を有することを意味する。したがって、「同一の部分」は、ポリヌクレオチドの領域または部分、またはポリヌクレオチド全体が、他のポリヌクレオチドの部分に対して同一または相補的であることを意味する。
【0044】
用語「分離された」は、その材料が元の環境(例えば、それが自然に発生するものであれば、自然環境)から除去されることを意味する。例えば、自然に発生するポリヌクレオチドまたは生きている動物内に存在する酵素は分離されていないが、同じポリヌクレオチドまたは酵素でも、自然系において共存する材料のいくつかまたは全てから離されたものは、分離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であることがあり、及び/または、このようなポリヌクレオチドまたは酵素は、組成物の一部であることがあり、及び、このようなベクターまたは組成物はその自然環境の一部でないという点で、まだ分離される。
【0045】
用語「分離された核酸」は核酸、例えば、DNAまたはRNA分子を定義するのに用いられる。DNAまたはRNA分子のような核酸は、それが誘導される有機体の自然発生遺伝子において存在するときに通常直接に隣接する5’及び3’隣接配列に、直接隣接しない。従って、用語は、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、異種細胞の遺伝子内(または異種細胞の遺伝子ではあるが、自然は生のものとは異なる部位)に組み込まれた核酸、及び、例えばPCR増幅または制限酵素消化によってつくられたDNAフラグメント、または、生体外転写でつくられたRNA分子のような分離された分子として存在する核酸のように、ベクター内に組み込まれる核酸を言い表す。この用語はまた、例えば溶融タンパク質の製造において用いることができる付加的タンパク質をエンコードする交雑遺伝子の一部を形成する組換え核酸も意味する。
【0046】
本明細書で使用されるように、「リガンド」はランダムペプチドまたは可変セグメント配列のような特異的受容体によって認識される分子を意味する。当業者が認識しているように、分子(または高分子複合体)は、受容体でもリガンドでもありうる。一般的に、より小さい分子量を有する結合対はリガンドと呼ばれ、より大きい分子量を有する結合対は受容体と呼ばれる。
【0047】
「結紮」は2つの二本鎖核酸フラグメント間でリン酸ジエステル結合を形成する方法に関連する(Sambrook et al.,(1982).Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,p.146; Sambrook et al.,Molecular Cloning:a laboratory manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。提供された方法でなければ、結紮は、結紮されるDNAフラグメントのほぼ等モル量の0.5マイクログラムにつき10ユニットのT4 DNAリガーゼ(「リガーゼ」)を有する既知のバッファー及び条件を使用して達成されることもある。
【0048】
本明細書で使用されるように、「リンカー」または「スペーサー」は、例えば、ランダムペプチドが、タンパク質を結合するDNAから最少の立体障害を有する受容体に結合することができるように、タンパク質及びランダムペプチドを結合するDNAのような2つの分子を結合し、及び、好適な立体配置に2つの分子を配置するのに役立つ。
【0049】
本明細書で使用されるように、「微小環境」は、組織の他の領域または体の領域とは、一定または時間的に、物理的または化学的な差異を有する組織または体の任意の部分または領域を意味する。
【0050】
本明細書で使用されるように、「発達する分子性質」は、ポリヌクレオチド配列からなる分子、ポリペプチド配列からなる分子、及び、ポリヌクレオチド配列の一部及びポリペプチド配列の一部からなる分子を参照することを含む。特に関連して、これに限定することは意味しないが、発達する分子性質の実施例は、温度、塩分濃度、浸透圧、pH、酸化、及びグリセロール、DMSO、洗浄剤及び/または反応環境において接触させる任意の他の分子の種類の濃度のような特異的条件でのタンパク質活性を含む。加えて特に関連して、これに限定することは意味しないが、発達する分子性質の実施例は、安定性、例えば、指定された環境に指定された露出時間の後にある残余分子性質の量を含む。
【0051】
用語「変異」は、野生型核酸配列の配列における変化、または、ペプチドにおける配列の変化を意味する。このような変異は、転移または塩基転換のような点変異であることもある。変異には、欠失、挿入、または複製であることがある。
【0052】
本明細書で使用されるように、縮退「N、N、G/T」ヌクレオチド配列は、32の可能な三重項を表し、ここにおいて、「N」は、A、C、GまたはTでありうる。
【0053】
用語「自然発生」は、本明細書で使用されているように、対象が自然においてみられるという事実に関連して適用されるものである。例えば、自然において原料から分離されうる有機体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列で、実験室内で人によって意図的に修飾されたのではないものは自然発生である。一般的に、用語「自然発生」は、種において典型的であるように、非病理学的な(病気ではない)個体において存在するような対象に関連する。
【0054】
本明細書で使用されるように、「正常生理条件」または「野生型操作条件」は、対象への投与の部位または作用部位での通常範囲内で考慮される温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の条件である。
【0055】
本明細書で使用されるように、「核酸分子」は、一本鎖または二本鎖であるかによって、それぞれ少なくとも一塩基または一塩基対からなる。さらに、核酸分子は、非限定ではあるが、RNA、DNA、遺伝子核酸、非遺伝子核酸、自然発生及び非自然発生核酸、及び合成核酸など核酸分子の群などのような分子を含むヌクレオチドの任意の群にのみ、またはキメラ的に属することができる。これは、非限定的な実施例として、ミトコンドリア、リボソームRNA、及び、1つまたはそれ以上の自然発生の成分と自然発生ではない成分からキメラ的になる核酸分子のような任意の細胞小器官に関連した核酸を含む。
【0056】
加えて、「核酸分子」は、非限定ではあるが、部分的に1つまたはそれ以上のアミノ酸及び糖などのようなヌクレオチドに基づいていない成分を含むことがある。従って、実施例であり、限定するものではないが、部分的にヌクレオチドに基づき、部分的にタンパク質に基づくリボザイムは「核酸分子」とみなされる。
【0057】
加えて、これに限定されるわけではないが、実施例として、放射性または非放射性ラベルのような検出可能な部分によってラベル化される核酸分子は、同様に「核酸分子」とみなされる。
【0058】
用語「〜をコードする核酸配列」、または「〜の配列をコードするDNA」、または、「〜をエンコードするヌクレオチド配列」、特に酵素をエンコードするヌクレオチド配列−他の同義の用語と同様に−適当な調節配列の制御下におかれた際に、転写され、及び、酵素内に転換されたDNA配列に関するものである。「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼを結合し、配列をコード化する下流方向(3’方向)の転写を開始させることができるDNA調節領域である。プロモーターは、DNA配列の一部である。この配列領域は、3’末端に開始コドンを有する。プロモーター配列は、バックグラウンドより高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な成分である、最小限の塩基を含む。しかしながら、RNAポリメラーゼが配列を稀有合資、転写が開始コドン(プロモーターを有する3’末端)で開始された後、転写は3’方向において下流に進行する。プロモーターにおいて、配列は、RNAポリメラーゼの結合を負う領域(共通配列)を結合するタンパク質と同様に、転写開始部位(便宜上、ヌクレアーゼSIを有するマッピングによって定義される)で見つかる。
【0059】
用語「酵素(タンパク質)をエンコードする核酸」または「酵素(タンパク質)をエンコードするDNA」または「酵素(タンパク質)をエンコードするポリヌクレオチド」及び他の同義の用語は、酵素のためのコーディング配列のみを含むポリヌクレオチドも付加的コーディング配列及び/または非コーディング配列を含むポリヌクレオチドも包括するものである。
【0060】
一好適な実施形態において、「特異的核酸分子種」は、これに限定されるわけではないが、その一時配列によって例示されるように、その化学的構造により定義される。他の好適な実施形態において、「特異的核酸分子種」は、核酸種の機能によって、または、核酸種から誘導された生成物の機能によって定義される。したがって、非限定的な実施例として、「特異的核酸分子種」は、その発現した生成物に起因する活性または性質を含む、1つまたはそれ以上のそれに起因する活性または性質によって定義される。
【0061】
「核酸ライブラリーの中に作用核酸試料を構築すること」の即時定義は、ベクター内の結紮及び宿主の変換によるような、収集に基づいたベクター内へ核酸試料を組み込む工程を含む。関連するベクター、宿主及び他の試薬の記載は、それらの特異的非限定の実施例と同様に以下に提供される。「核酸ライブラリーの中に作用核酸試料を構築すること」の即時定義はまた、接着体への結紮によるような、収集に基づいた非ベクター内へ核酸試料を組み込む工程も含む。好適には接着体は、PCRによる増幅を容易にするためのPCRプライマーへアニールすることができる。
【0062】
また、非限定的な実施形態において、「核酸ライブラリー」は、1つまたはそれ以上の核酸分子のコレクションに基づいたベクターからなる。他の好適な実施形態において、「核酸ライブラリー」は、核酸分子のコレクションに基づいた非ベクターからなる。さらに他の好適な実施形態において、「核酸ライブラリー」は、部分的にベクターに基づき、部分的に非ベクターに基づく核酸分子のコレクションの結合からなる。好適には、ライブラリーからなる分子のコレクションは、個々の核酸分子の種類に応じて検索可能及び分離可能である。
【0063】
本開示は「核酸構築物」または「ヌクレオチド構築物」、または「DNA構築物」を提供するものである。用語「構築物」は、ベクターまたはベクターの部分のような1つまたはそれ以上の付加的分子部分に任意に化学結合されることもあるポリヌクレオチド(例えば酵素ポリヌクレオチド)のような分子を記載するのに本明細書において用いられる。特定の態様において、態様の限定を意味するわけではないが、ヌクレオチド構築物は、宿主細胞の形質転換に適したDNA発現構築物によって例証されている。
【0064】
「オリゴヌクレオチド」(または「オリゴ」と同義語)は、一本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは化学合成された相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖に関するものである。このような合成オリゴヌクレオチドは5’リン酸塩を有することも有さないこともある。これらは、キナーゼの存在下においてATPとリン酸を加えることなく他のオリゴヌクレオチドに連結することはない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されないフラグメントに連結される。ポリメラーゼに基づいた増幅(例えばPCRによる)を得るため、「連続して少なくとも第一相同配列、変性N、N、G/T配列、及び第二相同配列からなる32倍変性オリゴヌクレオチド」は言及される。この文脈で用いられているように、「相同」は、オリゴ及びポリメラーゼに基づいた増幅に供される親ポリヌクレオチド間で相同性に参照されるものである。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「操作可能な状態で結合」は、機能的関係性におけるポリヌクレオチド要素の結合を意味する。核酸は、他の核酸配列と機能的関係性におかれた際に「操作可能な状態で結合」である。例えば、それがコーディング配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーターまたはエンハンサーはコーディング配列に操作可能な状態で結合される。操作可能な状態で結合は、結合されているDNA配列が、典型的には隣接しており、及び、2つのタンパク質コーディング領域を接合するのに必要な場合、隣接し、リーディングフレーム内にあることを意味する。
【0066】
RNAポリメラーゼが単一mRNAにおいて2つのコーディング配列を転写するときに、コーディング配列は、他のコーディング配列に「操作可能な状態で結合」し、両方のコーディング配列に由来したアミノ酸を有する単一ポリペプチド内に翻訳される。発現された配列が所望のタンパク質をつくるために最終的に処理される限り、コーディング配列は、互いに隣接する必要はない。
【0067】
本明細書で使用されるように、用語「親のポリヌクレオチドセット」は1つまたはそれ以上の異なるポリヌクレオチド種からなる。通常、この用語は、好適には親のセットの突然変異生成により得られる子孫ポリヌクレオチドセットを参照するのに用いられ、この場合において、用語「親の」、「起動」及び「テンプレート」は、互換性がある。
【0068】
用語「患者」または「対象」は、治療の目的となる、ヒトのような例えば哺乳類などの動物を意味する。対象または患者には男性でも女性でもありうる。
【0069】
本明細書で使用されるように、用語「生理条件」は、温度、pH、浸透圧、イオン化強度、粘度など、生菌に適合できる、及び/または、生存可能な培養酵母または哺乳類細胞において通常細胞内に存在する生化学的限定要素を意味するものである。例えば、典型的な実験培養条件下で成長した酵母細胞内において細胞内条件とは生理的条件である。生体外転写カクテルにおける適当な生体外反応条件は正常生理的条件である。一般的に、生体外生理的条件は、50〜200mMの塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、pH6.5〜8.5、20〜45℃及び0.001〜10mMの二価陽イオン(例えばMg++、Ca++)、好適には、約150mMの塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、pH7.2〜7.6、5mMの二価陽イオン及びしばしば、0.01〜1.0%非特異的タンパク質(例えばBSA)からなる。非イオン洗剤(Tween、NP−40、トリトンX−100)がしばしば存在することがあり、通常、約0.001〜2%であり、典型的には0.05〜0.2%である(v/v)。特定の水溶条件は、従来技術によると実行者によって選択される。一般的な手引きにおいて、以下の緩衝水溶液条件は適用可能である。10〜250mMの塩化ナトリウム、5〜50mMのトリス塩酸、pH5〜8、任意の二価陽イオンの添加及び/または金属キレート剤及び/または非イオン洗剤及び/または膜画分及び/または消泡剤及び/またはシンチラント(scintillants)。正常生理条件は、患者において通常範囲とみなされる、患者の生体内または投与の部位における対象、または作用部位における温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度を意味する。
【0070】
標準規定(5’〜3’)は二本鎖ポリヌクレオチドの配列を記載するために本明細書において用いられる。
【0071】
用語「個体群」は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの部分またはタンパク質のような組成物の収集を意味する。「混合された個体群」は、核酸またはタンパク質の同じ属ではある(つまり関連している)が、その配列において異なり(つまり同一ではない)従ってその生理的知的活性において異なる組成物の収集である。
【0072】
「代用形」を有する分子とは、参照代用形分子との比較において、異なる性質(例えば活性の増加)を有するより成熟した分子形態を得るために、1つまたはそれ以上の共有結合及び非共有結合化学的修飾(例えば、グリコシル化、タンパク質分解開裂、二量体化またはオリゴマー化、温度による誘発またはpHによって誘発された高次構造的変化、補助因子との会合など)の任意の組み合わせを途中で経た分子を意味する。2つまたはそれ以上の化学的修飾(例えば、2つのタンパク質分解開裂、またはタンパク質分解開裂及び非グリコシル化)が成熟した分子の製造への途中で区別されることができるときに、参照前駆体分子は、「前駆代用形」分子と称される。
【0073】
本明細書で使用されているように、用語「擬似ランダム」は、限られた可変性を有する一組の配列を意味する。例えば、他の位置の残基可変性の程度は、任意の擬似ランダム位置以外の残基変異のある程度を与えられるが、制限はされる。
【0074】
本明細書で使用されるように、「準繰り返しユニット」は、再集合された繰り返しに関連するものであり、定義上同一ではない。実際この方法は、同一開始配列の突然変異誘発によって製造された実際に同一なエンコーディングユニットだけでなく、いくつかの領域において著しく分岐することのある類似または関連した配列の再集合も提唱される。それにもかかわらず、配列がこの方法によって再集合するのに十分な相同を含む場合、「準繰り返し」ユニットと呼ばれることができる。
【0075】
本明細書で使用されるように、「ランダムペプチドライブラリー」は、ランダムペプチドのセットをエンコードするポリヌクレオチド配列のセット、及び、これらのランダムペプチドを含む溶融タンパク質と同様に、これらのポリペプチド配列によってエンコードされるランダムペプチドのセットを意味する。
【0076】
本明細書で使用されるように、「ランダムペプチド配列」は2つまたはそれ以上のアミノ酸モノマーからなり、及び、確率的またはランダムな工程によって構成されるアミノ酸配列を意味する。ランダムペプチドは、枠組みまたは足場材料を含むことがあり、不変配列を有することがある。
【0077】
本明細書で使用されるように、「受容体」は与えられたリガンドに親和性を有する分子を意味するものである。受容体は自然発生または合成分子であることがある。受容体は、不変状態で使用される、または他の種との集合体として使用されることがある。受容体は、直接的にまたは特異的結合物質を介して結合メンバーに共有結合で、または非共有結合で結合されることがある。受容体の実施例は、これに限定されないが、単クローン抗体及び特異的抗原決定基(例えばウイルス、細胞、または他の材料)との抗血清試薬、細胞膜受容体、糖及び糖タンパク質複合体、酵素、及びホルモン受容体を含む。
【0078】
「組換え」酵素は、組換えDNA技術によって生成される酵素、つまり、所望の酵素をエンコードする外因性DNA構成によって形質転換された細胞から生成される。「合成」酵素は、化学合成によって調製される。
【0079】
用語「関連ポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドの領域または部分が同一であること、及び、ポリヌクレオチドの領域または部分が非相同であることを意味する。
【0080】
本明細書で使用されるように、「減少的再集合」は繰り返し配列によって媒介される欠失(及び/または挿入)を介して生じる分子多様性における増加を意味するものである。
【0081】
以下の用語「参照配列」、「比較ウィンドゥ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」及び「実質的に同一」は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列の関係性を記載するのに用いられる。
【0082】
「参照配列」は配列比較の基礎として使用される定義された配列である。参照配列は、より大きい配列のサブセット、例えば、全長cDNAのセグメントまたは配列リストにおいて与えられる遺伝子配列のセグメント、または完全なcDNAまたは遺伝子配列からなることがある。一般的に、参照配列は長さにおいて少なくとも20ヌクレオチドであり、しばしば、長さにおいて少なくとも25ヌクレオチドであり、及び、しばしば、長さにおいて少なくとも50ヌクレオチドである。2つのポリヌクレオチドが、それぞれ(1)2つのポリヌクレオチド間で類似の配列(つまり、完全なポリヌクレオチド配列の部分)からなり、及び(2)さらに、2つのポリヌクレオチド間で分岐する配列からなることがあるため、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間での配列比較は、配列類似性の局所的領域を同定し、及び、比較するために、「比較ウィンドゥ」上で2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって典型的に実行される。
【0083】
「反復インデックス(RI)」は、本明細書で使用されているように、クローニングベクター内に含まれる準繰り返しユニットのコピーの平均数である。
【0084】
用語「制限部位」は、制限酵素の作用の発現に必要な認識配列を意味し、接触開裂の部位を含む。開裂の部位は、低い曖昧性配列(つまり、制限部位の発生の頻度の主要な決定要素を含む配列)からなる制限部位の部分において含まれること、または含まれないことがあると認められる。従って、多くの場合、関連のある制限部位は、内部開裂部位(例えば、EcoRI部位においてG/AATTC)または直接隣接開裂位置(例えば、EcoRII部位において/CCWGG)を有する低い曖昧性配列のみを含む。他の場合において、関連のある制限酵素(例えばEco57I部位またはCTGAAG(16/14))は外部開裂部位(例えば、Eco57I部位のN.Sub.16部分において)を有する低両義性配列(例えば、Eco57I部位のCTGAAG配列)を含む。酵素(例えば制限酵素)がポリヌクレオチドを「開裂する」というのは、制限酵素がポリヌクレオチドの開裂を触媒するまたは容易にすることを意味すると理解されている。
【0085】
非限定的な態様において、「選択可能なポリヌクレオチド」は、5’末端領域(または終止領域)、中間領域(例えば、内部または中央領域)及び3’末端領域(または終止領域)からなる。本態様で使用されているように、5’末端領域は、5’ポリヌクレオチド末端(または5’ポリヌクレオチド終止)の方に位置する領域である。従って、ポリヌクレオチドの5’半分における部分または全体である。同様に、3’末端領域は、3’ポリヌクレオチド末端(または3’ポリヌクレオチド終止)の方に位置する領域である。従って、ポリヌクレオチドの3’半分における部分または全体である。この非限定的例証で使用されているように、任意の2つの領域間で、または3つの全ての領域間で配列が重複していることがある。
【0086】
用語「配列同一性」は、比較ウィンドゥ上で、2つのポリヌクレオチド配列が同一である(つまりヌクレオチド単位でヌクレオチドごとに)ことを意味する。用語「配列同一性の割合」は、比較ウィンドゥ上で最適に整列された2つの配列を比較する工程、適合位置数を得るために同一核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)が両配列において発生する位置の数を決定する工程、適合位置数を比較ウィンドゥにおける位置の全数(つまりウィンドゥサイズ)によって割る工程、配列同一性の割合を得るために結果に100を掛ける工程、によって計算される。本明細書で使用される、この「実質的に同一」は、ポリヌクレオチドの配列の特徴を示すものであり、ここにおいて、ポリヌクレオチドは、少なくとも25〜50ヌクレオチドの比較ウィンドゥの参照配列と比較して、少なくとも80%の配列同一性、好適には少なくとも85%の同一性、しばしば90〜95%の配列同一性、及び最も一般には少なくとも99%配列同一性からなり、ここにおいて、配列同一性の割合は、比較ウィンドゥ上で参照配列の全20%またはそれ以下の欠失または付加を含むことのあるポリヌクレオチド配列と参照配列を比較することによって計算される。
【0087】
当業者において知られているように、2つの酵素間の「類似性」は、第二酵素の配列にアミノ酸配列及びその酵素の保存されているアミノ酸サブユニットを比較することによって決定される。類似性は、当業者においてよく知られているように、BLASTプログラム(国立生物工学情報センターでのBasic Local Alignment Search Tool)の手順によって決定される。
【0088】
分子対(例えば、抗体−抗原対または核酸対)のメンバーは、他の非特異的分子に対してよりも強い親和性で互いに結合している際に、互いに「特異的に結合している」といわれる。例えば、抗体は、抗原に対して非特異的タンパク質よりも効率よく結合するため、抗原と特異的に結合すると記載されることができる。(同様に、塩基対相互作用によって標的と特異的に二本鎖を形成している場合、核酸プローブは、標的核酸と特異的に結合すると記載されることができる(上記を参照)。)
「特異的ハイブリダイゼーション」は、本明細書において、第一ポリヌクレオチド及び第二ポリヌクレオチド(例えば、第一ポリヌクレオチドと違いを有するが、実質的には同一な配列を有するポリヌクレオチド)間での交雑の形態として定義したものであり、ここにおいて、実質的に無関係なポリヌクレオチド配列は混合物において交雑を形成しない。
【0089】
用語「特異的ポリヌクレオチド」は、特定の終末点、及び、特定の核酸配列を有するポリヌクレオチドを意味する。2つのポリヌクレオチドにおいて、1つのポリヌクレオチドが第二のポリヌクレオチドの一部として同一の配列を有するが、異なる末端が2つの異なる特異的ポリヌクレオチドからなる。
【0090】
「厳密なハイブリダイゼーション条件」は、配列間で少なくとも90%同一、好適には少なくとも95%同一、最も好適には少なくとも97%同一であるときのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照すること、本明細書にその全体は参照によって組み込まれている。
【0091】
本開示においてはまた、酵素ポリペプチドの配列と「実質的に同一な」配列を有するポリペプチドも含まれる。「実質的に同一な」アミノ酸配列は、保存アミノ酸置換によってのみ参照配列と異なる配列であり、例えば、同じ種類の別の1つのアミノ酸の置換である(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンのような疎水性アミノ酸から他の疎水性アミノ酸への置換、または、アルギニンからリシンへの置換、グルタミン酸からアスパラギン酸への置換またはグルタミンからアスパラギンへの置換のように、ある極性アミノ酸から他の極性アミノ酸への置換)。
【0092】
加えて、「実質的に同一な」アミノ酸配列は、参照配列とは異なる配列、または、非保存的置換、欠失または挿入のような置換が分子の活性部位ではない部位で発生するとき、1つまたはそれ以上の非保存的置換、欠失または挿入によって異なる配列であり、ポリペプチドがその行動性質を基本的に保持すると定めた配列である。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸は酵素ポリペプチドから除かれることがあり、結果として、著しくその生物学的活性を変えることなく、ポリペプチドの構造の修飾となる。例えば、酵素生理的活性において必要とされない、アミノ−またはカルボキシル−末端アミノ酸は除かれることがある。このような修飾は、より小さな活性酵素ポリペプチドの開発につながることがある。
【0093】
本開示は「実質的に純粋な酵素」を提供するものである。用語「実質的に純粋な酵素」は、自然に関連付けられる他のタンパク質、脂質、糖、核酸及び他の生理的材料を実質的に含まないポリペプチド(例えば酵素ポリペプチド、またはそれらのフラグメント)のような分子を記載するのに本明細書において用いられる。例えば、ポリペプチドのように、実質的に純粋な分子は、対象の分子において乾燥重量で少なくとも60%であることがある。ポリペプチドの純度は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えばSDS−PAGE)、カラムクロマトグラフィー(例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC))、及びアミノ−末端アミノ酸配列分析を含む標準的な方法を使用して決定される。
【0094】
本明細書で使用されるように「実質的に純粋」は、対象となる種が、支配的な種であることを意味し(つまり、モルベースで、組成物において任意の他の個別の分子より豊富である)、及び好適には、実質的に精製された断片は、対象となる種が存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルベースで)からなる組成物である。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物において存在する高分子種の約80〜90パーセント以上からなる。最も好適には、対象となる種は、基本的に均質に精製され(汚染物質種は従来の検出方法によって組成物において検出されることができない)、ここにおいて、その構成は基本的に単一の高分子種からなる。溶解種、小さな分子(<500ドルトン)及び基本的なイオン種は高分子種とはみなされない。
【0095】
用語「治療する」は、(1)状態、疾患または条件の臨床的または潜在的症状に苦しむ、またはそれらに罹患しやすいが、状態の臨床的または潜在的症状、疾患または条件をまだ経験していないまたは示していない動物において進行する状態、疾患または条件の臨床的症状の出現を防止するまたは遅延させること、(2)状態、疾患または条件を阻害すること(つまり、疾患または維持療法の場合においてはそれらの逆戻りまたは、少なくとも1つの臨床的または潜在性症状の進行を抑制し、減少させ、または遅延させること)及び/または(3)状態を楽にすること(つまり、状態、疾患、または条件または臨床または潜在性症状の少なくとも1つの後退を引き起こすこと)治療される患者の利点は、統計学的にも有意であり、または、少なくとも患者または医師に少なくとも認知可能である。
【0096】
本明細書で使用されているように、用語「可変性セグメント」は、ランダム、擬似ランダム、または定義された仁配列からなる発生期のペプチドの部分を意味する。「可変性セグメント」は、ランダム、擬似ランダム、または定義された仁配列からなる発生期のペプチドの部分を意味する。可変性セグメントは変異体及び不変異体残基位置の両方からなることがあり、及び、変異体残基位置における変異体残基の度合いは、限定されることがあり、両方の選択肢は、実行者の裁量で選択される。典型的には可変性セグメントは、長さにおいて約5〜20アミノ酸残基(例えば8〜10)であり、しかし、可変性セグメントはそれより長いこともあり、及び、抗体フラグメント、タンパク質結合核酸、受容体タンパク質などのような抗体タンパク質または受容体タンパク質からなることもある。
【0097】
用語「変異体」は、1つまたはそれ以上の野生型タンパク質親分子の塩基対、コドン、イントロン、エキソンまたはアミノ酸残基(それぞれ)において修飾された開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。変異体は、例えば、エラープローンPCR、シャフリング、オリゴヌクレオチド指定突然変異、アセンブリPCR、性的PCR突然変異、生体内での突然変異、カセット突然変異、再帰的アンサンブル突然変異、指数的アンサンブル突然変異、位置特異的突然変異、遺伝子再構築、飽和突然変異及びそれらの任意の組み合わせのような方法を含む手段の任意の数によって製造される。野生型タンパク質と比較して、正常生理的条件、例えば温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の1つまたはそれ以上の条件において活性が減少し、及び、異常条件において活性が増強される変異体タンパク質を製造するための技術は、本明細書に開示される。変異体は、野生型タンパク質と比較して、化学的耐性及びタンパク質分解耐性を増強する性質において付加的に選択される。
【0098】
本明細書で使用されているように、用語「野生型」はいかなる変異も有さないポリヌクレオチドを意味する。「野生型タンパク質」、「野生型タンパク質」、「野生型生物学的タンパク質」、または「野生型生物学的タンパク質」は、自然においてみられる活性のレベルにおいて活性となり、及び、自然においてみられるアミノ酸配列からなる、自然から分離されうるタンパク質を意味する。用語「親分子」及び「標的タンパク質」は野生型タンパク質に関するものである。
【0099】
「作用試料」における用語「作用」は、例えば、そのうち1つが作用する試料のことである。同様に「作用分子」は、例えば、そのうち1つが作用する分子のことである。
【0100】
本開示はまた、野生型条件において可逆的にまたは不可逆的に不活性であるが、野生型条件と同じまたは等しいレベルの非正常条件においては活性である新規な分子を生成するためのタンパク質を操作または発達させる方法を指示する。これらの新規なタンパク質はまた、「Mirac」タンパク質として本明細書に参照される。Miracタンパク質は、宿主内において短いまたは限定的な期間において活性化する新規な治療薬の開発において特に価値がある。宿主に有害であるが、限定された活性が、所望の治療を実行するのに必要である、投与されるタンパク質の拡張された操作において、これは特に価値がある。有益な適用の実施例は、高濃度においての局所的治療と同様に、高投与量での局所的または全身的治療を含む。生理的条件下での不活性化は、投与の組み合わせ及びタンパク質の不活性化の割合によって決定されることがある。この条件に基づいた不活性化は、触媒活性が比較的短い期間において実質的に負の影響を引き起こすとき、酵素治療において特に重要である。
【0101】
本開示はまた、野生型分子とは異なる新規の分子、経時的に可逆的または不可逆的に、活性または不活性である、または、体内の特定の器官(例えば膀胱または腎臓)を含む体内の特定の微小環境においてのみ活性または不活性である新規の分子を生成するためのタンパク質を操作するまたは発達させる方法を指示する。
【0102】
標的野生型タンパク質
任意の治療的タンパク質は、条件的活性型生物学的タンパク質の製造において、標的タンパク質または野生型タンパク質としての機能を果たす。一態様において、標的タンパク質は野生型酵素である。現在使用されている治療的タンパク質酵素は、凝血塊の治療において使用されるウロキナーゼ及びストレプトキナーゼ、他の薬剤の吸収及び分散を増加させる補助剤として使用されるヒアルロニダーゼを含む。一態様において、条件的活性型生物学的タンパク質の生成のために選択される野生型タンパク質は、野生型タンパク質または酵素に関連した有害な副作用を回避するまたは最小限にするために、現在では治療的タンパク質が使用される。あるいは、治療としての使用が現在されていない酵素は、条件的活性型生物学的タンパク質の生成のために選択されることがある。特定の非限定的実施例は、以下に詳細に議論される。
【0103】
治療的タンパク質は、単独で、または、様々な疾患または医学的条件を治療するための他の療法と組み合わせて用いられることがある。本開示の条件的活性型生物学的タンパク質は、循環疾患、関節炎、多発性硬化症、自己免疫疾患、癌、皮膚科学的状態を含む1つまたはそれ以上の兆候において使用するための適用ができ、及び、様々な診断形式で使用できる。タンパク質及び兆候によっては、条件的活性型生物学的酵素タンパク質は、以下に議論されるように、非経口的、局所的または経口的な剤形で投与されることがある。
【0104】
循環障害−血栓症及び血栓溶解療法
血栓(凝血塊)は、循環系において形成される血液構成要素に由来する固体の塊として定義される。血栓は、血液凝固因子、血小板、赤血球及び血管壁との相互作用を含む一連の事象により形成される。血小板は、血小板、フィブリン及び脈管障害の原因となることがある補足された血液細胞の血管内凝集である。血流を妨げる、または遮断することによって、血栓は、組織への酸素供給を奪う。血栓の断片(塞栓)は、剥離することができ、より小さい血管を妨げることができる。動脈血栓形成は、潜在性の狭窄−アテローム性動脈硬化症、低流量状態の心機能、癌における凝固亢進または凝固因子欠乏、または、ステントまたはカテーテルなどの異物を含む任意の様々な要因のいずれかによって誘発される。動脈虚血につながる血栓は、肢または組織の損傷、急性心筋梗塞(AMI)、脳卒中、切断または腸梗塞に結果としてなることがある。疾病率及び死亡率の大きな原因は、動脈血栓(冠状動脈血栓及び脳動脈血栓)及び肺血栓の形成である。静脈血栓形成は、外傷、例えば静止による鬱血、または凝固亢進などの内皮損傷によって生じることがあるが、アテローム性動脈硬化は要因とはならない。治療法は、機械的血栓摘出術、薬力学的血栓摘出術及び血栓溶解を含む。血栓症の治療は、血栓の形成を最小化し、除去を助けるために用いられる。
【0105】
血栓症の治療は、血小板の活性化を阻害する抗血小板薬剤の使用、抗凝固性治療、及び/または、凝血を分解するための血栓溶解治療を含む。抗血小板物質の例としては、アスピリン、ジピリダモール及びチクロピジンが挙げられる。抗凝固剤の例は、ヘパリン、ワルファリン、ヒルジン、及び活性型ヒトタンパク質Cを含む。血栓溶解剤の例は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)/tPA変異体、ウロキナーゼ及びストレプトキナーゼを含む。血栓溶解剤は、作用の触媒型を示す。
【0106】
急性心筋梗塞における血栓溶解治療は、確立されている。血栓溶解剤の使用は、標準的な救急治療となった。効果的であるにもかかわらず、これらの製品は、完全な再灌流を患者の約50%においてしか成し遂げず、副作用は、高血圧と同様に出血(特に頭蓋内出血)の危険を含む。傷害性または疾患性血管からの凝血塊の分解は、「線維素溶解」または「線維素溶解方法」と称される。タンパク質プラスミノーゲンを活性化するプラスミノーゲン活性剤によって、線維素溶解はタンパク質分解方法であり、それによって、プラスミンを形成する。タンパク質分解性プラスミンは、凝血塊を溶かすために、フィブリンストランドを分解する。フィブリン特異性プラスミノーゲン活性剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子または変異体を含む。非特異的プラスミノーゲン活性剤は、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼを含むことがある。
【0107】
特定の一般的に用いられる血栓溶解治療は、いくつかの利用できる組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)変異体の1つを利用する。例えば、以前使用のために承認された製品に基づくtPA変異体は、Alteplase(rt−PA)、Reteplase(r−PA)及びTenecteplase(TNK)である。tPA変異体の承認された用途は、例えば、AMIに続く心室機能改善における急性心筋梗塞、鬱血性心不全の発病率の減少、及び、AMIと関連した死亡率の減少、神経病学的回復を改善するための成人における虚血性脳卒中の管理及び障害の発病率の減少、急性肺塞栓の溶解のため、及び、不安定な血行動態が付随する肺塞栓の溶解のため、成人における急性大量肺塞栓の管理を含む。
【0108】
他の一般的に用いられる血栓溶解治療は、ウロキナーゼを利用する。ウロキナーゼは、抹消血管疾患の処置において使用する標準的溶解剤である。
【0109】
ストレプトキナーゼは、ヒトプラスミノーゲンを結合及び活性化することができる連鎖球菌のいくつかの種類から分泌されるタンパク質である。ヒトプラスミノーゲンとストレプトキナーゼの複合体は、プラスミンを生成するための結合開裂で活性化されることによって、他の非結合プラスミノーゲンを加水分解的に活性化することができる。プラスミノーゲンの通常の活性は、Arg561−Val562結合のタンパク質分解によって起こる。Val562のアミノ基は、Asp740と塩橋を形成し、活性プロテアーゼプラスミンをつくるため高次構造的な変化を生じさせる。プラスミンは、凝血の主要成分であるフィブリンを分解するために血中でつくられる。
【0110】
ストレプトキナーゼは、心筋梗塞(心臓発作)、肺塞栓症(肺凝血)及び深部静脈血栓症(脚凝血)のいくつかの場合において、有効な凝血塊溶解薬剤として用いられる。ストレプトキナーゼは線維素溶解剤と呼ばれている一群の薬剤に帰属する。ストレプトキナーゼは、心臓壁の動脈における凝血塊を溶かし、心筋への損傷を減らすために、心臓発作の発症後、可能な限り早く与えられる。ストレプトキナーゼは、細菌製品であるため、本体はタンパク質に対して免疫を確立する能力を有する。従って、この製品は、最初の投与から4日後以降は、有効ではない可能性があり、及び、アレルギー反応を引き起こす可能性があるため、与えないことが推奨される。このため、通常、最初の心臓発作の後のみ与えられ、更なる血栓症は典型的には組織プラスミノーゲン活性剤(TPA)により治療される。ストレプトキナーゼは、術後癒着を防止するために用いられることもある。
【0111】
ストレプトキナーゼの副作用は、出血(多量及び少量)、低血圧、及び、呼吸抑制及びアレルギー反応を含む。加えて、抗凝血剤、血小板機能を変える薬剤(例えば、アスピリン、他のNSAID、ジピリダモール)は、出血の危険性を高めることがある。
【0112】
血栓溶解剤の投与は、通常、注射によって、または急速静注投与によって、または機械的注入システムによって行われる。副作用は、重篤には頭蓋内、胃腸、後腹膜、または心嚢の出血を含むことがある。出血が生じた場合には、直ちに投与を中断しなければならない。
【0113】
本開示の特定の実施形態において、tPA、ストレプトキナーゼまたはウロキナーゼは、標的または野生型タンパク質として選択される。
【0114】
一実施形態において、本開示の方法は、通常の生理的条件よりも低い異常温度条件で高い活性を有し、通常の生理的条件(例えば37℃)で実質的に非活性または不活性である、条件的活性型組換え、または合成ストレプトキナーゼ変異体を選択するのに用いられる。一態様において、異常温度条件は、室温、例えば20〜25℃である。他の態様において、本開示は、脳卒中または心臓発作を治療する方法を提供するものであり、この方法は、凝血塊を消去し、ストレプトキナーゼ変異体の急速な不活性化が過剰な出血を回避できるように、条件的活性型ストレプトキナーゼ変異体の高用量を脳卒中または心臓発作患者に投与することからなる。
【0115】
循環障害−レニン/アンギオテンシン
レニン−アンギオテンシン系は、血圧及び水(流体)バランスを調節するホルモン系である。腎臓は、血液量が低い時にレニンを分泌する。レニンは、ペプチドアンギオテンシンIに肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンを加水分解する酵素である。アンギオテンシンIは、アンギオテンシンIIに内皮結合したアンギオテンシン変換酵素(ACE)によって、肺においてさらに切断される。アンギオテンシンIIは、血管を収縮させ、結果として血圧を増加させる。しかしながら、アンギオテンシンπも副腎皮質からホルモンアルドステロンの分泌を促進する。アルドステロンは、腎細管でのナトリウム及び水の再吸収を増加させる。この増加は、体の流体を増加させ、血圧を増加させる。過剰に活発なレニン−アンギオテンシン系は、血管収縮、及び、ナトリウム及び水の保持につながる。これらの効果は高血圧につながる。血圧を下げるために、このシステムにおいて異なる工程を中断する多くの薬がある。これらの薬は、高血圧(高血圧症)、心不全、腎不全及び糖尿病の有害な影響を制御するための主要な方法の1つである。
【0116】
血液量減少性ショックは緊急状態であり、大量の血液及び/または流体を失うことにより、心臓は体細胞に酸素を含ませた血液を適切に灌流することができなくなる。失血は、外傷、損傷及び内出血によりおこりうる。循環血液の量は、火傷、下痢、過剰な汗または嘔吐による過剰な流体損失のため減少することがある。血液量減少性ショックの兆候には、不安、冷たくじっとりした肌、混乱、呼吸促迫または意識消失を含む。検査は低血圧、低体温及び弱いまたは弱々しいこともある速い脈拍を含むショックの徴候を示す。治療は、輸液、血液または血液製剤、ショックの治療、及び、血圧及び心拍出量を増加させるためのドーパミン、ドブタミン、エピネフリン及びノルエピネフリンのような薬剤を含む。
【0117】
一実施形態に置いて、本開示は、通常の生理的温度では可逆的に不活性化されるが、血液量減少性ショックにより患者が異常低温であるときには再び活性化される条件的組換えレニン変異体を選択するための方法を提供する。条件的活性型タンパク質は、体内の流体量の増加及び血圧の増加を促すために血液量減少性ショックを治療するのに用いられることがある。
【0118】
循環障害−レイノー現象
レイノー現象(RP)は、指、つま先及び時には他の末端の変色を引き起こす血管攣縮性疾患である。感情的ストレス及び冷えがこの減少の典型的な引き金である。冷温にさらされると、末端は熱を失う。指及びつま先に供給される血液は、体の核心温度を保つために通常ゆっくりとなる。血流は、末端の皮下の小さな動脈の狭窄によって減少する。ストレスは、体が冷えるのと同じような反応を引き起こす。レイノー現象においては、通常の反応が肥大したものである。状態としては、痛み、変色、及び、冷え及び麻痺の感覚を引き起こすことがある。この現象は結果としてそれぞれの領域への血液供給を減少させる血管攣縮である。レイノー疾患(初期レイノー現象)において、疾患は突発性である。レイノー症候群(第二レイノー現象)において、現象は、他の扇動因子によって引き起こされる。手の温度勾配の測定は、初期及び第二形態間の識別を行う一つの手段である。初期形態は、第二形態に進行することがあり、極端な場合においては、第二形態は指先の壊死または壊疽に進行することがある。
【0119】
レイノー現象は、冷えまたは感情的ストレスへの反応の肥大したものである。初期のRPは、微小血管攣縮によって基本的にもたらされる。交感神経系の過剰活性化は、末梢血管の過度の血管収縮を引き起こし、低酸素症につながる。慢性、再発性の場合は、皮膚、皮下組織及び筋肉の萎縮となることがある。稀に潰瘍形成及び虚血性壊疽となることもある。
【0120】
レイノー現象のための従来の治療選択肢は、血管を拡張し、循環を促進する処方薬物治療を含む。これらは、ニフェピジンまたはジルチアゼムのようなカルシウムチャンネル遮断薬、ノルアドレナリン、血管を収縮させるホルモンの作用を相殺するプラゾシンまたはドキサゾシンのようなアルファ遮断薬、及び、ニトログリセリンクリームまたはアンギオテンシンII阻害剤ロサルタン、シルデナフィルまたはプロスタグランジンのような血管を緩めるための血管拡張薬を含む。フルオキセチン、選択的セロトニン再摂取阻害剤及び他の抗鬱剤は、生理的ストレッサーによる発症の頻度及び重症度を低減することができる。これらの薬剤は、頭痛、潮紅及びくるぶし浮腫のような副作用を引き起こすことがある。薬剤は経時的に効果を失うこともある。
【0121】
皮膚血管収縮及び血管拡張の調節は、変更した交感神経活性及び多くの神経調節を含み、REDOXシグナル伝達及びRhoA/ROCK経路のような他のシグナル伝達と同様に、アドレナリン性および非アドレナリン性を含む。皮膚の血管平滑筋細胞(vSMC)の血管収縮は、アルファ1及びアルファ2アドレナリン受容体によって伝達されるノルエピネフリンによって活性化されると考えられる。アルファ2C−ARsは、トランスゴルジから刺激に応答するvSMCの細胞表面に転座させ、及びこれらの応答のシグナル伝達は、RhoA/Rhokinase(ROCK)シグナル伝達経路を含む。皮膚動脈の冷たい刺激は、vSMCのミトコンドリアの反応性酸素種(ROS)の即時の生成につながる。ROSは、RhoA/ROCK経路を介したREDOXシグナル伝達に含まれる。RhoAは、vSMCにおける遊走及び細胞収縮のようなアクチン−ミオシン依存工程の調節の役割をもつGTP−結合タンパク質である。RPとの可能な包含を有する脈管構造の周知の機能を有する非アドレナリンニューロペプチドは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスP(SP)、ニューロペプチドY(NPY)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)を含む。Fonseca et al., 2009, "Neuronal regulators and vascular dysfunction in Raynaud’s phenomenon and systemic sclerosis", Curr. Vascul. Pharmacol. 7:34−39.
RPのための新しい治療は、アルファ−2Cアドレナリン受容体遮断薬、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、Rho−キナーゼ阻害剤及びカルシトニン遺伝子関連ペプチドを含む。
【0122】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)はペプチドのカルシトニン族のメンバーであり、及び、アルファ−CGRP及びベータ−CGRPの2つの形態で存在する。アルファ−CGRPは、カルシトニン/CGRP遺伝子の選択的スプライシングによって形成された37−アミノ酸ペプチドである。CGRPは、末梢神経及び中枢神経においてつくられる最もありふれたペプチドの一つである。それは、効能のあるペプチド血管拡張薬であり、痛みの伝導に作用することができる。片頭痛はCGRPの濃度上昇に関連する共通の神経疾患である。CGRPは、脳内血管を拡張し、及び、血管痛覚を伝導する。CGRP受容体拮抗薬は、片頭痛の治療として実験された。Arulmani et al., 2004, "Calcitonin gene−related peptide and it role in migraine pathophysiology", Eur. J. Pharmacol. 500(1−3): 315−330.少なくとも3つの受容体サブタイプが同定され、CGRPは、Gタンパク質共役型受容体を介して作用し、様々な組織におけるペプチドの作用を調節する機能において変化する。受容体を介したCGRPの情報伝達は、2つの補助的タンパク質、受容体活性修飾因子タンパク質1(RAMP1)及び受容体構成タンパク質(RCP)に依存している。Ghatta 2004、カルシトニン遺伝子関連ペプチドは、その役割が理解されている。Indian J. Pharmacol. 36(5): 277−283。3つの血管拡張薬、内皮依存性血管拡張薬アデノシン三リン酸(ATP)、内皮非依存性血管拡張薬プロスタサイクリン(エポプロステロール、PGI2)及びCGRPのレイノー現象の患者への静注の効果の一つ、及びCGRPの研究は、レイノー現象をもつ患者及びCGRP及びレーザードップラー血流測定法(LDF)を用いて制御に適合した年齢及び性別の同程度の数に対して、レイノー患者においては、皮膚血流増大によって顔及び手の潮赤がCGRPによって誘導されるが、制御群においては、CGRPは顔のみの潮赤を引き起こしたことを示した。PG12は、両群の手及び顔の血流に同様のことを引き起こした。ATPは、患者の手または顔の血流にいかなる重大な変化も引き起こさなったが、制御群の顔における血流は増加させた。Shawket et al., 1989, "Selective suprasensitivity to calcitonin−gene−related peptide in the hands in Reynaud’s phenomenon".The Lancet, 334(8676):1354−1357。一態様において、野生型タンパク質標的分子はCGRPである。
【0123】
一実施形態において、本開示は、通常の生理的温度において可逆的に不活性であるが、指が異常低温であるときには再活性される、レイノー症候群に関連するタンパク質の条件的活性型組換えタンパク質変異体を選択するための方法を提供する。条件的活性型タンパク質は、レイノー現象を治療するため、低循環による指機能の喪失を防止するまたは低減させるために用いられることがある。
【0124】
循環障害−バソプレッシン
アルギニンバソプレッシン(AVP、バソプレッシン、抗利尿性ホルモン(ADH))は、組織浸透性に関する腎細管での分子の再吸収を制御する多くの哺乳類でみられるペプチドホルモンである。バソプレッシンの最も重要な役割の一つは、体内における水分保持を調節することである。高濃度においては、適度な血管収縮が導かれることで血圧を上昇させる。バソプレッシンは、尿浸透圧(高濃度)の上昇及び水分排泄の減少を結果として引き起こす3つの効果を有する。第一に、バソプレッシンは、水分の再吸収及び濃縮尿(抗利尿)のより少ない量の排出を可能とする腎臓において、集合管細胞の水の透過性の増大を引き起こす。これは、集合管細胞の頂端膜において、アクアポリン2水分チャンネルの挿入を介して起こる。第二に、バソプレッシンは、尿素に集合管の内側髄部分透過性の増大を引き起こし、髄質間質において尿の再吸収の増加を可能にする。第三に、バソプレッシンは、Na+、K+、2Cl−共輸送体の活性を増加することによって、ナトリウムの刺激及びヘンレ係蹄の厚みのある上肢における塩化物の再吸収が起こる。塩化ナトリウム再吸収は、逆流増加の過程によるものであり、集合管髄質での水分再吸収をもたらすアクアポリンにおいての浸透勾配を提供する。
【0125】
腎臓の集合管周辺の高張性間質性流体は、水の除去において高い浸透圧を提供する。アクアポリンと呼ばれるタンパク質によってつくられる膜貫通チャンネルは、水への浸透性を非常に高める血漿膜に挿入される。開いているとき、アクアポリンチャンネルは、毎秒30億分子の水を透過させることができる。アクアポリン2チャンネルの挿入は、バソプレッシンによるシグナル伝達を必要とする。バソプレッシンは、集合管細胞の基底側表面で受容体(V2受容体と呼ばれる)と結合する。ホルモンの結合は、細胞内におけるcAMPのレベルを引き上げる引き金となる。この「第二メッセンジャー」は、集合管細胞の頂端膜でアクアポリン2チャンネルの挿入に結果としてなる連鎖を開始する。アクアポリンは、腎単位の外へ水を排出し、血流に尿を戻すことから水分の再吸収量を増加させる。
【0126】
脳下垂体からのバソプレッシンの放出においての主要な刺激は、血漿のオスモル濃度を増加させる。激しい発汗のような体の脱水はどんなものでも血中のオスモル濃度を増加させ、アクアポリン2経路にV2受容体へのバソプレッシンを作動させる。結果として、尿の0.5リットル/日と同じくらい少量が、もとの腎ろ液180リットル/日が残存することがある。尿における塩濃度は血中の4倍であることがある。大量の水を飲むなどして、血液があまりにも希薄となると、バソプレッシン分泌が阻害され、アクアポリン2チャンネルは、エンドサイトーシスによって細胞内に戻される。その結果、血中の4分の1程度の少量の塩濃度で大量の薄い尿が生成される。
【0127】
減少させたバソプレッシン放出または減少させたAVPへの腎臓の感受性は、尿崩症、高ナトリウム血症状態(血中のナトリウム濃度の増加)、多尿症(過剰な尿生成)及び多飲症(口渇)。
【0128】
AVP分泌の高レベル(不適当な抗利尿ホルモン(SIADH)症候群)及び結果として生じる低ナトリウム血症(低い血液ナトリウム濃度)は、脳疾患及び肺(小さな細胞肺癌)の条件において生じる。周術期間において、外科的ストレス及びいくつかの一般的に用いられる薬物(例えば、阿片剤、シントシノン、制吐剤)の作用は、過剰なバソプレッシン分泌の同様の状態につながる。これは、数日間程度の低ナトリウム血症を引き起こすことがある。
【0129】
バソプレッシン作動薬は、様々な条件において治療的に使用され、及び、その長時間作用性の合成類似デスモプレッシンは、出血(フォン・ウィルブラント病のいろいろな形において)の制御及び、児童による寝小便の極端な場合の制御と同様に、低バソプレッシン分泌を特徴とする条件において使用される。テルリプレッシン及び関連する類似体は、特定の条件において血管収縮剤として用いられる。バソプレッシン注入は、イノトロープ(例えばドーパミンまたはノルエピネフリン)の高投与に応じない感染性ショック患者において、管理の第二ラインとして用いられる。バソプレッシン受容体アンタゴニストは、バソプレッシン受容体で作用を妨げる薬剤である。それらは低ナトリウム血症の治療においても使用されることがある。
【0130】
一実施形態において、本開示は、通常の生理的浸透圧においては可逆的に不活性であるが、血中における異常浸透圧下においては再活性される、バソプレッシン応答において含まれるタンパク質の条件的生物学的組換えまたは合成タンパク質のための選択の方法を提供する。他の実施形態において、バソプレッシン応答において含まれるタンパク質の変異体は、ナトリウム欠乏状態において活性化されるが、通常の血清ナトリウム濃度では不活性化される。一態様において、ナトリウム欠乏状態は、血清ナトリウム<135mEq/Lである。
【0131】
癌−アンギオスタチン
アンギオスタチンはいくつかの動物種において自然発生するタンパク質である。それは、内因性血管新生阻害剤(つまり、新しい血管の成長を阻害する)として作用する。アンギオスタチンは、内皮細胞の増殖及び転移を阻害することで腫瘍細胞の成長及び転移を抑制する。アンギオスタチンはプラスミン(それ自身、プラスミノーゲンのフラグメントである)の38kDフラグメントである。アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの1〜3クリングルからなる。アンギオスタチンは、例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼによる細胞外ジスルフィド結合還元を含むプラスミノーゲンの自己融解開裂によってつくられる。アンギオスタチンは、MMP2、MMP12及びMMP9を含む異なる基質メタロプロテイナーゼ、及び、セリンプロテアーゼ(好中級エラスターゼ、前立腺特異抗原(PSA))によるプラスミノーゲンから開裂することができる。生体内において、アンギオスタチンは、腫瘍の成長を阻害し、及び、実験的転移を休眠状態に維持する。アンギオスタチンは、初期腫瘍、及び、他の炎症性及び変性疾患の動物内で上昇する。
【0132】
アンギオスタチンは、アンギオモチン及び内皮細胞表面ATOシンターゼ、インテグリン、アネキシンπ、C−met受容体、NG2−プロテオグリカン、組織プラスミノーゲン活性体、コンドロイチン表面糖タンパク質、及びCD26を含む多くのタンパク質と結合することで知られている。ある研究は、強力な抗血管新生活性を有するIL−12、TH1サイトカインはアンギオスタチンの活性のメディエーターであることを示している。Albin"., J. Translational Medicine. Jan. 4, 2009, 7:5。アンギオスタチンは、内皮細胞表面で結合し、及びATP合成を阻害する。ATP合成はまた、様々な癌細胞表面で生じる。腫瘍細胞表面ATP合成は、低細胞外pH、腫瘍微小環境の特徴にてより活発にみられる。アンギオスタチンは、酸性細胞外pH(pHe)での腫瘍細胞表面ATP合成活性に作用するとみられる。低細胞外pHで、アンギオスタチンは、直接的に抗腫瘍化である。低pHで、アンギオスタチン及び抗ベータサブユニット抗体は、細胞外ATP合成の低レベルな腫瘍細胞において欠けている直接的毒性と同様に、A549癌細胞の細胞内酸性化を導く。腫瘍細胞毒性の機構は、細胞表面ATP合成の阻害に起因して細胞内pH調節解除によっていることが仮定されている。Chi and Pizzo, "Angiostatin is directly cytotoxic to tumor cells at low extracellular pH: a mechanism dependent on cell surface−associated ATP synthase", Cancer Res., 2006, 66(2): 875−82。
【0133】
一実施形態において、本開示は通常の生理的血液pHにおいては野生型アンギオスタチンよりも活性が低いが、低pHにおいては、活性の増強を示す条件的活性型アンギオスタチン変異体の同定のための方法を提供する。低pHは、通常の生理的pHよりも低いものとして定義される。一態様において、低pHはpH約7.2以下である。特定の態様において、低pHはpH約6.7である。
【0134】
一態様において、条件的活性型アンギオスタチン変異体は抗癌剤として処方され、利用されることがある。
【0135】
組織浸透性の増進−ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解させる酵素の一系統である。ヒアルロン酸、格子間障壁の主要構成要素の分解を引き起こすことによって、ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸の粘性を低下させ、それによって、組織透過率を上昇させる。薬剤の分散及び運搬を速くするために、薬剤に関連して医学において用いられる。最も一般的な適用は、眼の手術において、局所麻酔約と組み合わせて使用される。動物由来のヒアルロニダーゼは、Hydase(商標)(PrimaPharm Inc.;Akorn me)、ビトラーゼ(ISTA Pharmaceuticals)、Amphadase (Amphastar Pharmaceuticals)を含む。ヒト組換えヒアルロニダーゼは、他の薬剤の吸収を増加させる補助剤として現在承認されている。Hypodermocyclis(流体の皮下注入)、放射線不透過性薬剤の吸収を改良する、皮下尿路造影における補助剤(Hylenex; Halozyme Therapeutics, Inc.; Baxter Healthcare Corp)。一実施形態において、条件的活性型生物学的タンパク質の調製のために、ヒアルロニダーゼは野生型タンパク質(親分子)として使われる。ヒアルロニダーゼは、癌転移及び血管新生において役割をはたすことができる。従って、これらの酵素に対する露出過度は優雅うであることがある。一態様において、条件的活性型生物学的ヒアルロニダーゼタンパク質は、正常生理的温度において不可逆的または可逆的に不活性であるが、正常生理的温度よりも低い特定の温度範囲においては、野生型ヒアルロニダーゼと等しいまたは上回るレベルで活性である。
【0136】
自己免疫疾患−条件的活性型生物学的応答修飾因子
リウマチ性関節炎は、関節炎及び関節の進行的破壊による腫れにつながる、異常免疫機構によって特徴づけられた自己免疫疾患である。RA(リウマチ性関節炎)は皮膚、結合組織及び体内の器官にも作用することがある。従来の治療は、非ステロイドの抗炎症薬剤(NSAIDS)、COX−2阻害剤及びメトトレキサートのような疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDS)を含む。従来の治療方式は、特に長期間の使用において、どれも理想的ではない。
【0137】
炎症メディエーターを標的とする生物学的応答修飾因子は、リウマチ性関節炎及び他の自己免疫疾患の治療に、相対的に新規な手法を提供する。このような生物学的応答修飾因子には、IL−6、IL−6受容体、TNF−アルファ、IL−23及びIL−12のような様々な炎症メディエーターに対する抗体またはそれらの活性部分を含む。
【0138】
第一生物学的応答修飾因子のいくつかは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−a)、RAの病因において含まれる炎症促進性サイトカインを標的とする薬物である。いくつかの抗TNFアルファ薬剤は、RAの治療のため現在市販されている。例えば、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト、アムゲン)はTNF−アルファ遮断薬である。エタネルセプトは、ヒトIgGIのFc部分に結合されるヒト75キロドルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外連結結合部分からなる二量体溶融タンパク質である。エタネルセプトのFc成分は、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びヒンジ領域を含むが、IgGIのCh1ドメインは含まない。エタネルセプトはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)哺乳類細胞発現系でつくられる。それは、934アミノ酸からなり、見かけの分子量は約150キロドルトンである。エンブレル(登録商標)はリウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び尋常性乾癬の治療に使用される。エンブレル(登録商標)の重大な副作用には、結核、真菌感染、日和見病原体によるウイルス感染を含む感染症を含む。敗血症が生じることもある。リンパ腫または他の悪性腫瘍も報告されている。
【0139】
レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)は、ヒト恒常的領域及びネズミ可変領域からなるキメラ抗−TNF−アルファIgGKI単一クローン抗体である。レミケードは静注で投与され、及び、リウマチ性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎及び強直性脊椎炎の治療に使用される。レミケードの副作用は、重篤な感染症または敗血症、及び、稀に特定のT細胞リンパ腫を含む。他の副作用は、肝毒性、特定の重篤な血液学的事象、過敏性反応及び特定の神経学的事象を含む。
【0140】
他の生物学的応答修飾因子は、ヒト化抗インターロイキン−6(IL−6)受容体抗体を含む。IL−6は、炎症、腫れ、及びRAにおける関節損傷に寄与するサイトカインである。1つのヒト化抗IL−6受容体抗体、アクテムラ(トシリズマブ、Roche)は、FDA及び欧州委員会によって、リウマチ性関節炎の成人患者を治療するとして承認されている。アクテムラはまた、日本においてもRA及び若年性関節リウマチ(sJIA)の治療において承認されている。段階III研究は、他の治療薬と比較して、アクテムラによる治療は、単独治療としても、また、MTXまたは他のDMARDとの組み合わせでも、RAの兆候及び症状を減少させると示している。アクテムラは、その受容体にIL−6の結合を競合的に遮断するヒト化IL−6受容体単クローン抗体である。従って、それは、RAにおける滑膜肥厚及びパンヌス形成につながるIL−6の増殖作用を阻害する。アクテムラの重大な副作用は、重篤な感染症及びアナフィラキシーのいくつかの場合を含む過敏反応を含む。他の副作用は、上気道感染症、頭痛、鼻咽頭炎、高血圧及び増加ALTが含まれる。
【0141】
他の共通な自己免疫疾患は、乾癬である。免疫系の過剰活性は、IL−12及びIL−23、乾癬皮膚斑でみられる2つのサイトカインタンパク質の高濃度につながることがある。IL−12及びIL−23は、ナチュラルキラー細胞活性化及びCD4+T細胞分化及び活性化のような、炎症性及び免疫性応答において含まれる。
【0142】
中程度の、または重症な乾癬における一治療は、ステラーラ(商標)(ウステキマヌブ、Centocor Ortho Biotech,Inc.)IL−12及びIL−23サイトカインのp40サブユニットに対するヒト化IgGIk単クローン抗体の皮下注射を含む。ステラーラは、斑肥厚、皮膚のはがれ、赤みなどの乾癬斑に関する特定の症状からの軽減を提供することが示されている。ステラーラ用製剤は、L−ヒスチジン及びL−ヒスチジン塩酸塩水和物、ポリソルベート80、及び水溶液中のショ糖を含む。ステラーラ(商標)の使用は、免疫系に作用し、及び、特定の型の癌の危険性を増すのと同様に、結核及びバクテリア、真菌またはウイルスによって引き起こされる感染症を含む感染症の機会を増やす。
【0143】
生物学的応答修飾因子の副作用は、重篤であり、患者への高レベルの注入によって、患者を重篤な感染症または死に影響されやすくすることがある。これが薬剤のこの重要な種類に関連する大きな副作用である。1つの課題は、注入後に長い治療効果を提供するために必要な抗体の投与から活性の高い初期レベルを回避することである。
【0144】
一実施形態において、本開示は条件的活性型生物学的応答メディエーターまたはそれらのフラグメントを調製するための方法を提供し、注入後に長い治療効果を提供するために必要な抗体の投与から活性の高いレベルを回避するものである。本開示の方法は、室温のような投与条件では不活性であるが、体温ではゆっくりとリフォールド(可逆的または不可逆的に)する、IL−6、IL−6受容体、TNF−アルファ、IL−23及びIL−12のような炎症メディエーターに対する抗体を設計するために用いられることがある。これらの抗体またはそのフラグメントは、最初の注入に応じて不活性であるが、血液注入に露出されると、数時間から数日の機関にわたって、リフォールドまたは再活性される。これは、副作用の減少による、より高い投与量及びより長い半減期(または投与期間)を可能にするものである。
【0145】
一態様において、本開示は室温のような投与条件では不活性であるが、体温においてはゆっくりとタンパク質を(可逆的または不可逆的に)再び折り畳む、炎症メディエーターへの条件的活性型抗体またはそれらのフラグメントの調製のための方法を提供する。この方法は以下の工程からなる。炎症メディエーターを選択する工程。融合細胞を介して炎症メディエーターへの抗体を同定するためにスクリーニングする工程。抗炎症メディエーター抗体をヒト化する工程。抗炎症メディエーター抗体を発達する工程及び2つまたはそれ以上の条件、例えば、室温及び37℃またはそれ以上のような2つまたはそれ以上の温度条件で結合するための差次的スクリーニングをする工程。野生型と比較して、第一の条件において不活性であるが、第二条件においては野生型抗体活性(結合)と比較して活性(例えば結合)の増加を示す突然変異のための選択をする工程。重鎖及び軽鎖において同定された上昇変異体は重鎖及び軽鎖の組み合わせ結合を介してと同様に、重鎖及び軽鎖において組換えられる。これらの組換えられた重鎖及び軽鎖のスクリーニングは、2つの条件で、例えば、室温及び37℃またはそれ以上で、繰り返される。加えて、組換えられた抗体またはフラグメントは、貯蔵及び生理的条件下での活性及び安定性のためにスクリーニングされる。
【0146】
あるいは、炎症メディエーターへの野生型抗体は、抗体または変異体またはそれらの活性フラグメントが知られている。
【0147】
一態様において、第一及び第二条件は、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電荷濃度から選択される。他の態様においては、炎症メディエーターは、IL−6、IL−6受容体、TNF−アルファ、IL−23及びIL−12から選択される。
【0148】
他の態様において、本開示は室温のような投与条件では不活性であるが、体温においてはゆっくりとタンパク質を(可逆的または不可逆的に)再び折り畳む、IL−6への条件的活性型抗体またはそれらのフラグメントの調製のための方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。IL−6への抗体のための完全なヒトライブラリーをスクリーニングする工程。IL−6抗体を発達する工程及び、分子を室温及び37℃またはそれ以上で差次的にスクリーニングする工程。野生型と比較して室温においては不活性であるが、野生型抗体活性(結合)と比較して、活性(例えば結合)の増加を示す変異を選択する工程。重鎖及び軽鎖において同定された上昇変異体は、重鎖及び軽鎖の組み合わせ結合を介してと同様に、重鎖及び軽鎖において組換えられる。これらの組換えられた重鎖及び軽鎖のスクリーニングは、室温及びそれよりも高い温度において繰り返される。加えて、組換えられた抗体またはフラグメントは、貯蔵及び生理的条件下で活性及び安定性においてテストされる。
【0149】
従って同定され、及び製造された条件的活性型抗IL−6抗体は、それを必要とする患者に有効な量を投与することによって、リウマチ性関節炎または乾癬のような自己免疫疾患を治療するための方法において使用され、従来の生物学的応答修飾因子抗IL−6抗体の投与と比較して副作用を低減している。この方法の利点の1つは、数週間または数カ月にわたって半減期のクリアランスが続く生物学的応答修飾剤の現在の高いレベルと比較して、治療期間にわたっての薬剤量の平滑化及び平準化ができることである。
【0150】
1つまたはそれ以上の突然変異誘発技術は、変異DNAのライブラリーをつくるための野生型タンパク質をエンコードするDNAを発達させるのに使用される。変異DNAは、変異タンパク質のライブラリーをつくるために発現され、及び、このライブラリーは、正常生理的条件下及び1つまたはそれ以上の異常条件下でスクリーニング分析するために対象とされる。条件的活性型生物学的タンパク質は、(a)野生型タンパク質と比較して正常生理的条件下での分析において活性が減少し、(b)野生型タンパク質と比較して異常条件下での分析において活性が増大する、両方を示すこれらのタンパク質から選択される。あるいは、条件的活性型生物学的タンパク質は、2つまたはそれ以上の異なる生理的条件において、可逆的にまたは不可逆的に活性の変化を示すこれらのタンパク質から選択される。
【0151】
親分子から発達した分子の生成
Miracタンパク質は、突然変異誘発の工程及び、野生型条件においての活性と同じまたはそれ以上を残存する非野生型条件での活性と、野生型条件での活性の減少のための個々の突然変異のためのスクリーニングをする工程を経て生成される。
【0152】
本開示は酵素活性を有するポリペプチドをエンコードする核酸変異体を生成するための方法を提供するものであって、ここにおいて、この変異体は、自然発生のものから異常生理的活性を有するものであり、この方法は、(a)(i)異なるヌクレオチドと1つまたはそれ以上のヌクレオチドを置換する工程。ここにおいてヌクレオチドは自然または非自然のヌクレオチドからなる。(ii)1つまたはそれ以上のヌクレオチドを欠失する工程。(iii)1つまたはそれ以上のヌクレオチドを付加する工程、または(iv)任意のこれらの組み合わせによって核酸を修飾する工程、からなる。一態様において、非自然のヌクレオチドは、イノシンからなる。他の態様において、この方法は、異常酵素活性のために修飾された核酸によってエンコードされたポリペプチドを分析する工程、それによって、異常酵素活性を有するポリペプチドをエンコードする修飾された核酸を同定する工程からなる。一態様において、工程(a)の修飾は、PCR、エラープローンPCR、シャフリング、オリゴヌクレオチド指定突然変異、アセンブリPCR、性的PCR突然変異、生体内突然変異、カセット突然変異、再帰的アンサンブル突然変異、指数的アンサンブル突然変異、位置特異的突然変異、遺伝子再構築、遺伝子位置飽和突然変異、リガーゼ鎖反応、生体外突然変異、リガーゼ鎖反応、オリゴヌクレオチド合成、任意の遺伝子生成技術、及びこれらの組み合わせによってなされる。他の態様において、この方法はさらに修飾工程(a)の少なくとも1回の繰り返しからなる。
【0153】
この方法はさらに、2つまたはそれ以上の核酸からポリヌクレオチドを製造するための方法を提供する。この方法は、次の(a)〜(c)からなる。(a)2つまたはそれ以上の核酸間で同一の領域及び多様な領域を同定する工程。そこにおいて、この核酸の少なくとも1つは、本開示の核酸からなる。(b)2つまたはそれ以上の核酸の少なくとも2つの配列に対応するオリゴヌクレオチドのセットを提供する工程。及び(c)ポリメラーゼでオリゴヌクレオチドを延長し、それにより、ポリヌクレオチドを製造する工程。
【0154】
任意の突然変異誘発の技術は、本開示の様々な実施形態において使用されることがある。確率的またはランダムな突然変異誘発は、予定されていない突然変異を有する一連の子孫分子を得るために、親分子が変異する(修飾されるまたは変えられる)状況によって例証される。従って、生体外確率的突然変異誘発反応は、例えば、その製造が意図されたものではない、特に予定されていない製造物である。むしろ、得られる変異の正確な性質に関して、従って、生成される製造物に関して、不確定、従ってランダムである。確率的突然変異誘発は、エラープローンPCR及び確率的シャフリングのような、変異がランダムまたは予定されていない方法において示される。変異体形成は、エラープローンPCRのようなエラープローン転写や、プルーフリーディング活性が欠けるポリメラーゼの使用(Liao (1990) Gene 88: 107−111参照)または、変異株(変異宿主細胞は以下にさらに詳細に議論されており、これは一般的によく知られている)において第一形態の複製によるものである。突然変異誘発因子株は、不整合な修復の機能において欠損される任意の変異体を含むことができる。これらは、mutS、mutT、mutH、mutL、ovrD、dcm、vsr、umuC、umuD、sbcB、recJなどの変異遺伝子生成物を含む。欠損は、遺伝子突然変異、対立遺伝子交換、微小化合物または発現されたアンチセンスRNAまたは他の技術によって得られる。欠損は、記述された遺伝子または任意の有機体における相同遺伝子であることがある。
【0155】
開始分子から選択的タンパク質をつくるために、現在、広く使われている突然変異誘発の方法は、オリゴヌクレオチド指定突然変異技術、エラープローンポリメラーゼ鎖反応(エラープローンPCR)及びカセット突然変異誘発であり、そこにおいて、最適化される特定の領域は、合成的に突然変異を誘発されたオリゴヌクレオチドと置換される。これらの場合において、多くの突然変異部位はもとの配列における特定の部位の周辺で発生する。
【0156】
オリゴヌクレオチド指定突然変異において、短い配列は、合成的に突然変異を誘発されたオリゴヌクレオチドと置換される。オリゴヌクレオチド指定突然変異において、ポリヌクレオチドの短い配列は、制限酵素消化を使用する合成ポリヌクレオチドから除かれ、様々な塩基がもとの配列から変更された合成ポリヌクレオチドと置換される。ポリヌクレオチド配列は化学的突然変異誘発によって変更されることもある。化学的突然変異ゲ原は、例えば、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、またはギ酸を含む。ヌクレオチド前駆体と類似の他の薬剤は、ニトロソグアニジン、5−ブロモウラシル、2−アミノプリン、またはアクリジンを含む。一般的に、これらの薬剤は、それにより配列を変位させるヌクレオチド前駆体の代わりにPCR反応に加えられる。プロフラビン、アクリフラビン、キナクリンなどのような薬剤の挿入が使用されることもある。ポリヌクレオチド配列のランダムな突然変異誘発は、X線または紫外線照射によって得られることがある。一般的に、突然変異誘発されたプラスミドポリヌクレオチドは、E.coli内に導入され、交雑プラスミドのプールまたはライブラリーとして伝播される。
【0157】
エラープローンPCRは、長い配列にわたってランダムに点突然変異の低レベルを導入するための低忠実度重合条件を使用する。未知の配列のフラグメントの混合物において、エラープローンPCRは、混合物を突然変異誘発するのに用いられることがある。
【0158】
カセット突然変異誘発において、単一テンプレートの配列遮断は、典型的にはランダム配列によって(部分的に)置換される。Reidhaar−Olson J F and Sauer R T:タンパク質配列の情報内容のプローブとしての組み合わせカセット突然変異誘発。Science 241(4861):53−57,1988。
【0159】
あるいは、非確率的または非ランダムな遺伝子突然誘発の任意の技術も本開示の様々な実施形態において使用することができる。非確率的突然変異誘発は、1つまたはそれ以上の予め決定された変異を有する分子を得るために、親分子が変異される(修飾される、または、変化される)状況によって例証される。ある程度の量におけるバックグラウンド製造物の存在が、分子プロセシングの起こる多くの反応において実在し、及び、バックグラウンド製造物の存在が、予定されていない製造物を有する突然変異誘発工程の非確率的性質から減じないことはよく理解されている。部位−飽和突然変異誘発及び合成結紮リアセンブリは、遺伝子突然変異誘発技術の例であり、そこにおいて意図された製造物の正確な化学的構造は、予定されたものである。
【0160】
部位−飽和点突然変異誘発の1つの方法は、米国出願公報2009/0130718に記載されており、本明細書に参照により組み込まれている。この方法は、テンプレートポリヌクレオチドのコドンに対応する一連の変性プライマーを提供し、及び、変性プライマーに対応する配列を含む子孫ポリヌクレオチドを製造するためのポリメラーゼ伸長を実行する。子孫ポリヌクレオチドは、直接的発達において発現され、及び、スクリーニングされる。具体的には、これは、一連の子孫ポリペプチドを製造するための方法であって、工程(a)テンプレートポリペプチド配列をエンコードするコドンの複数からそれぞれなるテンプレートポリペプチドのコピーを提供する工程、及び(b)テンプレートポリヌクレオチドの各コドンにおいて、(1)一連の変性プライマーを提供する工程、そこにおいて、各プライマーはテンプレートポリヌクレオチドのコドンに対応する変性コドンからなり、少なくとも1つの隣接配列は、テンプレートポリヌクレオチドのコドンに隣接する配列に相同である、(2)プライマーがテンプレートポリヌクレオチドのコピーにアニール可能な条件を提供する工程、及び、(3)テンプレートに沿ったプライマーからのポリメラーゼ伸長反応を実行する工程、の(1)〜(3)の工程を実行し、それによって子孫ポリヌクレオチドを提供し、それぞれがアニールされたプライマーの変性コドンに対応する配列を含み、それによって一連の子孫ポリヌクレオチドを製造する。
【0161】
部位−飽和突然変異誘発は、核酸の誘導された発達及び、例えば核酸活性及び/または特異的タンパク質、特に酵素、対象の活性のような結果として生じる対象の活性において発達した核酸を含むクローンのスクリーニングに関するものである。この技術によって提供された突然変異誘発された分子は、糖、脂質、核酸及び/またはタンパク質組成物を含む生物学的分子を含む、キメラ分子及び点突然変異を有する分子を有することがあり、及び、特異的であるが非限定的なこれらの実施例は、抗生物質、抗体、酵素、及びステロイド及び非ステロイドホルモンを含む。
【0162】
部位飽和突然変異誘発は、1)分子の子孫世代を調製する工程(ポリヌクレオチド配列からなる分子、ポリペプチドからなる分子、及び、ポリヌクレオチド配列の部分及びポリペプチド配列の部分からなる分子を含む)、これは少なくとも1つの点突然変異、付加、欠失及び/またはキメラ化を1つまたはそれ以上の祖先または親世代テンプレートから得るための突然変異誘発である、2)子孫生成分子をスクリーニングする工程−好適には、対象の少なくとも1つの性質(例えば、酵素活性における改良、または安定性の増加、または新規の化学療法的効果)において、高スループット法を使用する工程、3)親及び/または子孫世代分子に関する構造及び/または機能的情報を随意に得る及び/または一覧にする工程、及び、4)任意の工程1)〜3)を随意に繰り返す工程からなる方法を一般的に意味する。
【0163】
部位飽和突然変異誘発において、生成された(例えば、親ポリヌクレオチドテンプレートから)「コドン部位飽和突然変異誘発」と称されるポリヌクレオチドの子孫世代は、全てのコドン(または同じアミノ酸をエンコードする変性コドンの全系統)が各コドン位置で表れるように、それぞれが、3つ以上の隣接点突然変異(つまり、新しいコドンからなる異なる塩基)の少なくとも1組を有する。このポリヌクレオチドの子孫世代に対応する、及び、このポリヌクレオチドの子孫世代によってエンコードされるのは、それぞれ少なくとも1つの単一アミノ酸点突然変異を有する、生成された一連の子孫ポリペプチドである。好適な態様において、生成された「アミノ酸部位飽和突然変異誘発」と称される一例は、ポリペプチドに沿った各アミノ酸位置及び全アミノ酸位置でアルファアミノ酸置換を形成する、自然にエンコードされる19のポリペプチドのそれぞれにおける変異ポリペプチドである。この収量は−親ポリペプチドに沿った各アミノ酸位置及び全アミノ酸位置−もとのアミノ酸を含む20の異なる子孫ポリペプチドの全て、または、付加アミノ酸が、20の自然にエンコードされたアミノ酸の代わりに、または付加されてのどちらかで使用される場合、潜在的に21以上の異なる子孫ポリペプチドである。
【0164】
他の突然変異誘発技術は、組換えを含んで用いられることがあり、より具体的には、部分的相同の領域を含むポリヌクレオチド配列の生体内再集合の方法によって、ポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドを調製するための方法、少なくとも1つのポリヌクレオチドを形成するためのポリヌクレオチドをアセンブリする方法、有用な性質を有するポリペプチドの製造のためにポリヌクレオチドをスクリーニングする方法を含む。
【0165】
他の態様において、突然変異誘発技術は、分子を組換えるため、及び/または配列及び相同領域を有する反復または連続した配列の範囲の煩雑さを減らす縮小した方法を伝達するため、細胞の本来の性質を利用する。
【0166】
様々な突然変異誘発技術は、活性を強化された生物学的活性交雑ポリペプチドをエンコードする交雑ポリペプチドを生成するための方法を提供するため、単独で、または組み合わせて用いられることがある。これら及び他の目的を達成することにおいて、本開示の一態様に従って、適当な宿主細胞内にポリペプチドを導入し、交雑ポリヌクレオチドエオ製造するための条件下で宿主細胞を成長させる方法が設けられている。
【0167】
キメラ遺伝子は、制限酵素によって生成される互換性のある粘着末端を使用する2つのポリヌクレオチドフラグメントを接合することによってつくられる。ここにおいて、各フラグメントは、別々の祖先(親)分子に由来する。他の実施例は、単一部位突然変異誘発されたポリペプチドのためにエンコードする単一子孫ポリヌクレオチドを生成するための親ポリヌクレオチドにおいて、単一コドン位置の突然変異誘発(つまり、コドン置換、付加、欠失を得るため)である。
【0168】
さらに、生体内部位特異的組換え系は、生体内組換えのランダムな方法と同様に、遺伝子の交雑の生成、及び、相同であるが、プラスミド上で切断された遺伝子間の組換えの生成のために利用される。突然変異誘発はまた、重複拡張及びPCRによっても報告された。
【0169】
非ランダムな方法は、点突然変異及び/またはキメラ化のより大きい数を得るために使用し、例えば、総合的または包括的な方法は、テンプレート分子において特異的構造群(例えば、特異的単一アミノ酸位置または2つまたはそれ以上のアミノ酸位置からなる配列)に機能的に属するために、及び突然変異の特異的な群化を分類し、比較するために、特定の突然変異の群化において全ての分子種を生成するために用いられる。
【0170】
これらの、または他の任意の発達させる方法は、本開示において、1つまたはそれ以上の親分子から新規な分子の個体群(ライブラリ)を生成する。
【0171】
一度形成されると、構造物は、発表されたプロトコルに従ってアガロースゲルに分別され、クローニングベクターに挿入され、及び、適当な宿主細胞に形質移入されるサイズであることもそうでないこともある。
【0172】
発達分子の発現
一旦変異分子のライブラリが生成されると、DNAは通常の分子生物学的技術を使用して発現されることができる。したがって、タンパク質発現は、さまざまな周知の方法を使用して管理されることができる。
【0173】
例えば、野生型遺伝子は本願明細書において示されるような任意の種々のランダム法又は非ランダム法を使用して発達されることができる。変異DNA分子はその後消化され、標準の分子生物学的技術を用いてプラスミドDNA等のベクターDNAにライゲーションされる。個々の変異体を含むベクターDNAは、標準プロトコルを使用して細菌または他の細胞に形質転換される。これは、ハイスループットな発現およびスクリーニングのための96穴トレイ等のマルチウェルトレイの個々のウェルにおいて行われ得る。この方法は、変異分子ごとに繰り返される。
【0174】
このようにして選抜され単離されたポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞に導入される。適切な宿主細胞は、遺伝子組換えおよび/または減少的再集合を促進することができる任意の細胞である。選抜されたポリヌクレオチドは、好ましくは、適切な制御配列を含むベクターに既にあるものである。前記宿主細胞は、哺乳細胞等の高等真核細胞であり、又は酵母細胞等の下等真核細胞であっても良く、又は好ましくは前記宿主細胞は、細菌細胞等の原核細胞であっても良い。前記宿主細胞へのコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって遂行されることができる(例えば、Ecker and Davis, 1986, Inhibition of gene expression in plant cells by expression of antisense RNA, Proc Natl Acad Sci USA, 83:5372−5376)。
【0175】
使用可能な発現ベクターの代表例として、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスDNA(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、foul pox virus、仮性狂犬病、およびSV40派生物)plに基づく人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、及び特定の目的宿主に特異的な任意の他のベクター(例えば桿菌、アスペルギルス、および酵母)が言及され得る。従って、例えば、DNAは、ポリペプチドを発現するための様々な発現ベクターのいずれか一つに含まれ得る。このようなベクターは、染色体性のDNA配列、非染色体性のDNA配列、および合成DNA配列を含む。多数の適切なベクターは当業者に周知であり、市販されている。例として以下のベクターを挙げる。細菌性:pQEベクター(Qiagen)、pBluescriptプラスミド、pNHベクター、ラムダZAPベクター(Stratagene);ptrc99a、ρKK223−3、pDR540、pRIT2T(Pharmacia);真核性:pXTl、ρSG5(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVLSV40(Pharmacia)。しかしながら、それらが前記宿主において複製可能であり且つ生存可能である限り、他のいかなるプラスミドもまたは他のベクターも使用可能である。低コピー数ベクターまたは高コピー数ベクターが、本発明において使用されることができる。
【0176】
発現ベクターにおけるDNA配列は、RNA合成を導くための適切な発現制御配列(プロモーター)と操作可能に連結される。特定の名づけられた細菌プロモーターは、lad、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、PL、およびtrpを含む。真核生物プロモーターは、前初期CMV、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−1を含む。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者の水準の範囲内にある。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含む。このベクターは、発現を増幅するための適切な配列を含んでも良い。プロモーター領域は、選択可能なマーカーを有するクロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)ベクター、または他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択されることができる。加えて、発現ベクターは、真核細胞培養に対するジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性等、又は大腸菌におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性等の、形質転換された宿主細胞の選抜のための表現型の特徴を提供するために、好ましくは、1若しくはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0177】
従って、本願発明の他の態様においては、新規なポリヌクレオチドは、減少的再集合の方法によって生成されることができる。方法は、連続的な配列(オリジナルのコード配列配列)、適切なベクターへのそれらの挿入、及び適切な宿主細胞へのその後のそれらの導入を含むコンストラクトの生成を含む。個々の分子同一性の再集合は、相同領域を有するコンストラクトにおける連続的な配列間での、または擬似繰り返し単位間での組合せ方法によって発生する。再集合方法は、複雑さ及び反復配列の範囲を再結合させおよび/または減少させ、新しい分子種の生成をもたらす。さまざまな処理を、再集合の割合を増強させるために適用することができる。これらは、紫外線処理またはDNA損害性化学薬品、および/または増強した水準の「遺伝的不安定性」を示す宿主細胞株の使用を含むことができる。したがって、再集合方法は、それら自身の発達を導くために、相同組換えまたは準反復配列の自然の特性を含むことができる。
【0178】
一の態様において、宿主生物または細胞は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、または真核生物からなるものである。本発明の他の態様において、グラム陰性細菌は、大腸菌または蛍光菌からなるものである。本発明の他の態様において、グラム陽性細菌は、Streptomyces diversa、Lactobacillus gasseri、Lactococcus lactis、Lactococcus cremoris、または枯草菌(Bacillus subtilis)からなるものである。本発明の他の態様において、真核生物は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Kluyveromyces lactis、Hansenula plymorphaまたは黒色麹菌(Aspergillus niger)からなるものである。適切な宿主の代表例として、大腸菌、ストレプトマイセス、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)等の細菌細胞;酵母等の真菌細胞;Drosophila S2およびSpodoptera Sf9等の昆虫細胞;CHO、COSまたはボーズ黒色腫(Bowes melanoma)等の動物細胞;アデノウイルス;及び、植物細胞が言及され得る。適切な宿主の選択は、本願明細書における教示から当業者の範囲内であると考えられる。
【0179】
組換えタンパク質を発現するために使用され得るさまざまな哺乳細胞培養系に特に関連して、哺乳類の発現系の例は、「SV40−transformed simian cells support the replication of early SV40 mutants」(Gluzman、1981)に記載されるサル腎臓繊維芽細胞のCOS−7株、及びC127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株等の相性の良いベクターを発現することができる他の細胞株を含む。哺乳類の発現ベクターは複製開始点、適切なプロモーター、およびエンハンサー、および任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスのドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列をも含むであろう。SV40スプライシングに由来するDNA配列、及びポリアデニル化部位は、必要な非転写遺伝因子を提供するために使用されることができる。
【0180】
細胞はその後増殖し、「減少的再集合」は達成される。減少的再集合方法の割合は、必要に応じて、DNA損傷の導入によって刺激され得る。インビボでの再集合は「遺伝子組換え」とまとめて呼ばれる「分子間の」方法に向けられ、これは細菌においては、「RecA依存性」の現象として通常観察される。本発明は、配列を組換え且つ再集合させるための宿主細胞の遺伝子組換え方法、または欠損によって細胞における準反復配列の複雑性を減少させるための縮小方法を調節する細胞の能力に依存することができる。「縮小再集合」のこの方法は、「分子内の」、RecA非依存性の方法によって生じる。最終結果は、すべての可能な組合せへの分子の再集合である。
【0181】
目的のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、プロモーターを活性化させ、形質転換細胞を選択し、又は遺伝子を増幅させるのに適切なように改変された従来の栄養培地で培養されることができる。この培養条件(例えば温度、pHなど)は、発現のために選択される宿主細胞と共に以前使用されたものであり、また当業者にとって明らかである。
【0182】
タンパク質発現は様々な周知の方法によって誘導されることができ、多くの遺伝系がタンパク質発現の誘導のために公表されている。例えば、適切な系については、誘導剤品の追加によってタンパク質発現が誘導される。細胞はその後、遠心分離によってペレットにされ、上澄みが取り除かれる。ペリプラズムタンパク質は、DNAse、RNAseおよびリソチームを有する細胞を培養することによって高められ得る。遠心分離後、新規なタンパク質を含む上澄みは、アッセイ前に新しいマルチウェルトレイに移され、保存される。
【0183】
細胞は一般的には遠心分離によって採取され、物理的又は化学的手段によって分離され、そして得られたクルードの抽出物は更なる精製のために保持される。タンパク質の発現のために使用される微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械分離、または細胞溶解剤の使用を含む任意の都合のよい方法によって分離されることができる。このような方法は当業者に周知である。発現したポリペプチドまたはその断片は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、及びレクチンクロマトグラフィを含む方法によって、組換え細胞培養物から回収され、精製され得る。タンパク質のリフォールディング過程が、必要に応じて、ポリペプチドの構造を仕上げる際に用いられることができる。必要に応じて、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)が、最終的な精製過程のために使用されることができる。
【0184】
所望の活性を有すると特定されるクローンは、その後シーケンスされることができ、増強した活性を有する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を特定する。
【0185】
このようなライブラリから特定されるポリペプチドが、治療、診断、研究、及び関連する目的のために使用されることができ、及び/又は、シャッフリング及び/又は選択の1若しくはそれ以上の追加的なサイクルにさらされることができる。本発明は、少なくとも10アミノ酸の長さである条件的活性型生物学的タンパク質の断片を提供するものであり、前記断片は活性を有するものである。
【0186】
本発明は、酵素活性を有するコドン最適化ポリペプチドまたはその断片を提供するものであり、前記コドンの使用は特定の生物または細胞のために最適化される。Narum et al., "Codon optimization of gene fragments encoding Plasmodium falciparum merzoite proteins enhances DNA vaccine protein expression and immunogenicity in mice". Infect.Immun. 2001 December, 69(12): 7250−3には、マウス系におけるコドン最適化が記載される。Outchkourov et al., "Optimization of the expression of Equistatin in Pichia pastoris, protein expression and purification", Protein Expr. Purif. 2002 February; 24(1): 18−24 には、酵母系におけるコドン最適化が記載される。Feng et al., "High level expression and mutagenesis of recombinant human phosphatidylcholine transfer protein using a synthetic gene: evidence for a C−terminal membrane binding domain" Biochemistry 2000 Dec. 19, 39(50): 15399−409 には、大腸菌におけるコドン最適化が記載される。Humphreys et al.,"High−level periplasmic expression in Escherichia coli using a eukaryotic signal peptide: importance of codon usage at the 5’end of the coding sequence", Protein Expr. Purif. 2000 Nov. 20(2): 252−64には、大腸菌においてコドンの使用がどのように分泌に影響するかが記載される。
【0187】
条件的活性型生物学的タンパク質の発達は、都合のよいハイスループットスクリーニングまたは選択過程の利用によって補助されることができる。
【0188】
一旦特定されると、本発明のポリペプチドおよびペプチドは、合成されたもの、又は組換えによって生成されたポリペプチドでありえる。ペプチドおよびタンパク質は、インビトロで又はインビボで、組換え技術によって発現されることができる。本発明のペプチドおよびポリペプチドは、公知技術の任意の方法を使用して作製され、且つ単離されることができる。本発明のポリペプチドおよびペプチドはまた、全体又は一部において、公知技術の化学的方法を使用して合成されることができる。例えば、Caruthers (1980) "New chemical methods for synthesizing polynucleotides", Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 215−223; Horn (1980),"Synthesis of oligonucleotides on cellulose. Part II: design and synthetic strategy to the synthesis of 22 oligodeoxynucleotides coding for Gastric Inhibitory Polypeptide (GIP)1", Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 225−232; Banga, A. K., Therapeutic Peptides and Proteins, Formulation, Processing and Delivery Systems (1995) Technomic Publishing Co., Lancaster, Paを参照。例えば、ペプチド合成はさまざまな固相法を使用して実行されることができ(例えば、Roberge (1995)"A strategy for a convergent synthesis of N−linked glycopeptides on a solid support",Science 269:202; Merrifield (1997)"Concept and early development of solid−phase peptide synthesis",Methods Enzymol. 289:3−13)、例えば、製造者によって提供される指示書に従ってABI 43 IA Peptide Synthesizer (Perkin Elmer)を使用することにより、オートメーション化した合成を成し遂げることができる。
【0189】
本発明のペプチドおよびポリペプチドは、グリコシル化されることもできる。グリコシル化は、化学的にまたは細胞生合成機構によってポスト翻訳的に加えられることができ、後者は周知のグリコシル化のモチーフの使用を組み込むものであり、それは配列固有でありえるか、又はペプチドとして加えられることができるか、又は核酸コード配列に加えられ得る。グリコシル化はO結合型又はN結合型であることができる。
【0190】
本発明のペプチドおよびポリペプチドは、上術の通り、すべての「模倣の」および「ペプチド模倣の」形態を含む。用語「模倣の」および「ペプチド模倣の」は、実質的に本発明のポリペプチドと同じ構造および/または機能的特徴を有する合成化学化合物について言及するものである。模倣体は、合成の、非天然のアミノ酸類似体から完全に成ることができ、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸のキメラ分子、および部分的に非天然のアミノ酸類似体である。模倣体の構造及び/若しくは活性を実質的には変えない限り、模倣のものは天然アミノ酸の保存的置換をいくらでもでも組み込むことができる。保存的変形である本発明のポリペプチドと同様に、ルーチン試験は、模倣体が本発明の範囲内かどうか、すなわち、その構造および/または機能が実質的に変えられていないかどうかを決定するだろう。
【0191】
本発明のポリペプチド模倣体組成物は、非天然の構造成分の任意の組合せを含むことができる。他の態様において、本発明の模倣体組成物は、以下の3つの構造グループの1つ又は全てを含む。a)天然のアミド結合「ペプチド結合」)以外の残基結合グループ。b)自然発生的なアミノ酸残基の代わりの非天然の結合。または、c)二次構造模倣を誘導する、すなわち、二次構造(例えば、βターン、γターン、βシート、αヘリックスコンフォメーション等)を誘導し、又は安定化させるための残基。例えば、本発明のポリペプチドは、その残基の全てまたは一部が天然のペプチド結合以外の化学的手段で結合される際に、模倣体として特徴づけられることができる。個々のペプチド模倣の残基は、ペプチド結合、他の化学結合、またはカップリング手段(例えばグルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等)で結合されることができる。従来のアミド結合(「ペプチド結合」)連結の代替手段でありえる連結基は、例えば、ケトメチレン(例えば、−−C(.dbd.O)−−CH.sub.2−−for−−C(.dbd.O)−−NH−−)、アミノメチレン(CH.sub.2−−NH)、エチレン、オレフィン(CH.dbd.CH)、エーテル(CH.sub.2−−O)、チオエーテル(CH.sub.2−−S)、テトラゾール(CN.sub.4−−)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、またはエステルを含む(例えば、Spatola (1983) in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7, pp 267−357, "Peptide Backbone Modifications,"Marcell Dekker,N.Y.を参照)。
【0192】
本発明のポリペプチドは、自然発生的なアミノ酸残基の代わりに全てまたは一部の非天然の残基を含むことによって、模倣体として特徴づけられることもできる。非天然の残基は、科学文献および特許文献によく記載されている。次に、天然のアミノ酸残基の模倣体として有用な非天然の組成物の少ない例示およびガイドラインを以下に説明する。芳香族アミノ酸の模倣体は、例えばD−又はL−ナフチルアラニン;D−又はL−フェニルグリシン;D−L−2チエニルアラニン;D−又はL−1、−2、3−または4−ピレニルアラニン;D−又はL−3チエニルアラニン;D−又はL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−又はL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−又はL−(2−ピラジニル)−アラニン;D又はL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン;D−(トリフロロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフロロメチル)−フェニルアラニン;D−p−フルオロ−フェニルアラニン;D−又はL−p−ビフェニルフェニルアラニン;D−又はL−p−メトキシ−ビフェニルフェニルアラニン;D−又はL−2−インドール(アルキル)アラニン;及びD−又はL−アルキルアミンによって置換されることによって生成され得、ここでアルキルは、非置換メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec−イソチル、イソペンチルまたは非酸性アミノ酸であるあり得る。非天然アミノ酸の芳香環は、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリルおよびピリジル芳香環を含む。
【0193】
酸性アミノ酸の模倣体は、負電荷;(ホスホノ)アラニン;硫酸化スレオニンを維持すると共に、例えば非カルボン酸塩アミノ酸によって置換されることによって生成され得る。カルボキシル側基(例えば、アスパルチルまたはグルタミル)はまた、例えば1−シクロヘキシル−3(2−モルフォリニル−(4−エチル)カルボジイミド、又は1−エチル−3(4−アゾニア−4,4−ジメトールペンチル)カルボジイミド等のカルボジイミド(R’−−N−−C−−N−−R’)との反応によって、選択的に修飾されることもできる。アスパルチルまたはグルタミルは、アンモニウムイオンとの反応によって、アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換されることもできる。塩基性アミノ酸の模倣体は、例えば、(リシンおよびアルギニンに加えて)アミノ酸オルニチン、シトルリン、又は(グアニジノ)−酢酸、又は(グアニジノ)アルキル−酢酸によって置換されることによって生成されることができ、ここでアルキルは上記の通りである。ニトリル誘導体(例えば、COOHの代わりにCN部分を含む)は、アスパラギンまたはグルタミンに置換されることができる。アスパラギニルおよびグルタミニル残基は、対応するアスパルチルまたはグルタミル残基に非アミノ化されることができる。アルギニン残基模倣体は、アルギニルを、好ましくはアルカリ条件下で、例えば、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、またはニンヒドリンを含む、例えば1若しくはそれ以上の従来の試薬と反応させることによって生成されることができる。チロシン残基模倣体は、チロシルを、例えば芳香族のジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンと反応させることによって生成させることができる。N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンは、それぞれ、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成するために用いられることができる。システイン残基模倣体は、システイニル残基を、例えば、2−クロロ酢酸酸または塩化アセトアミド、および対応するアミン等のα−ハロ酢酸塩と反応させ、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を与えることによって生成させることができる。システイン残基模倣体は、システイニル残基を、例えば、ブロモ−トリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾイル)プロピオン酸;塩化アセチルリン酸塩、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド;メチル2−ピリジルジスルフィド;p−クロロ第二水銀安息香酸塩;2−クロロメルクリ−4ニトロフェノール;または、クロロ−7−ニトロベンゾ−オキサ−1,3−ジアゾールと反応させることによって生成させることができる。リシン模倣体は、リシニルを、例えば、コハク酸又は他のカルボン酸酸無水物と反応させることによって生成させることができ、(且つアミノ末端残基を変更させることができる)。リシンおよび他のα−アミノ含有残基模倣体は、メチルピコリンアミド塩、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロ−ベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4,ペンタンジオン、およびグリオキシル酸とのトランスアミダーゼ触媒反応等のイミドエステルとの反応によって生成されることができる。メチオニンの模倣体は、例えばメチオニンスルホキシドとの反応によって生成されることができる。プロリンの模倣体は、例えば、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、3−又は4−ヒドロキシプロリン、デヒドロプロリン、3−又は4−メチルプロリン、又は3,3−ジメチルプロリンを含む。ヒスチジン残基模倣体は、ヒスチジルを、例えば、ジエチルプロカルボン酸塩またはパラ−ブロモフェナシルブロミドと反応させることによって生成させることができる。他の模倣体は、例えば、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化;セリルまたはトレオニル残基の水酸基のリン酸化;リシン、アルギニンおよびヒスチジンのα−アミノ基のメチル化;N末端アミンのアセチル化;主鎖アミド残基又はN−メチルアミノ酸での置換のメチル化;またはC末端カルボキシル基のアミド化によって生成されるものを含む。
【0194】
本発明のポリペプチド(例えばアミノ酸)の残基は、逆のキラリティのアミノ酸(またはペプチド模倣体残基)によって置き換えられることもできる。したがって、L−構造(化学物質の構造によってRまたはSとも呼ばれる)において自然発生している任意のアミノ酸は、D−アミノ酸と呼ばれ、同じくR−又はS−形と呼ばれる逆のキラリティ以外の、同じ化学構造タイプ又はペプチド模倣体のアミノ酸によって置き換えられることができる。
【0195】
本発明はまた、翻訳後プロセシング等の天然の過程(例えばリン酸化、アシル化等)によって、または化学的修飾技術によって本発明のポリペプチドを修飾するための方法を提供するものである。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミンまたはカルボキシル末端を含むポリペプチドのどこに起きても良い。同じタイプの修飾が、与えられたポリペチドのいくつかの部位において同じ又は様々な程度で存在しても良いことはいうまでもない。また、与えられたポリペチドは、多くの種類の修飾を有することができる。修飾は、アセチル化、アシル化、PEGylation、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋性環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、myristolyation、酸化、pegylation、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、selenoylation、硫酸化、およびarginylation等のタンパク質への運搬RNA媒介性のアミノ酸の追加を含む。Creighton, T. E., Proteins−Structure and Molecular Properties 2nd Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1993); Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, pp. 1−12 (1983)を参照。
【0196】
固相化学ペプチド合成方法を、本発明のポリペプチドまたは断片を合成するために用いることもできる。このような方法は1960年代初期から本分野において周知であり(Merrifield, R. B., "Solid−phase synthesis.I. The synthesis of a tetrapeptide", J. Am. Chem. Soc, 85:2149−2154, 1963)(また、Stewart, J. M. and Young, J. D., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed., Pierce Chemical Co., Rockford, 111., pp. 11−12も参照)、最近になって市販の実験用のペプチドデザインおよび合成キットにおいて使用された(Cambridge Research Biochemicals)。このような市販の実験用のキットは通常、H. M. Geysen et al., "Use of peptide synthesis to probe viral antigens for epitopes to a resolution of a single amino acid," Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 81:3998 (1984) の教示を使用しており、、そのすべてが単一のプレートに接続している多数の「ロッド」または「ピン」の先端上にペプチドを合成することを提供する。このような系が利用される際には、ロッドまたはピンのプレートは逆さにされ、対応するウェルまたはリザーバーの第二のプレートに挿入され、この第二のプレートは適切なアミノ酸をピンまたはロッドの先端に取り付け、又は固定するための溶液を含む。このようなプロセス工程を繰り返すことによって、つまり、ロッド及びピンの先端を適切な溶液に逆さにして挿入することによって、アミノ酸は所望のペプチドに組み込まれる。加えて、多くの利用可能なFMOCペプチド合成システムを利用できる。例えば、ポリペプチドまたは断片の組み立ては、Applied Biosystems, Inc. の431A(登録商標)オートメーション化ペピチド合成機を用いた固体支持体上で行われることができる。このような装置は、直接合成によって、又は他の周知の技術を使用した結合され得る一連の断片の合成によって、本発明のペプチドの容易な利用を提供する。
【0197】
合成ポリペプチドまたはその断片は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィおよびレクチンクロマトグラフィを含む周知の方法によって回収され、精製されることができる。タンパク質のリフォールディング過程が、必要に応じて、ポリペプチドの構造を仕上げる際に用いられることができる。必要に応じて、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)が、最終的な精製過程のために使用されることができる。
【0198】
本発明は、少なくとも1つのタンパク質変異体を有する条件的活性型タンパク質変異体製剤または剤形を提供するものであり、前記製剤は液体又は乾燥物である。タンパク質製剤は、選択的に、緩衝液、補因子、第ニの又は追加のタンパク質、又は1若しくはそれ以上の賦形剤を含むものである。一の態様において、前記製剤は、治療的な条件的活性型生物学的タンパク質として利用され、これは例えば、温度、pH、または浸透圧、酸化またはオスモル濃度について、異常又は非生理的条件下で活性型であり、正常又は生理的条件下では低活性又は不活性なものである。
【0199】
標準的な精製技術を、いずれの組換え体または合成条件的活性型生物学的タンパク質のために使用することができる。
【0200】
可逆的又は非可逆的な変異を同定するための変異スクリーニング
望ましい分子の同定は、許容型の条件及び野生型の条件におけるタンパク質活性を測定することによって、非常に直接的に達成される。最も高い活性の比(許容型/野生型)を示す変異体を、次いで選択し、標準的な方法を用いて個々の変異を組み合わせることで、点変異の並べ替え(permutation)を生成することが出来る。次いで、この組み合わせた並べ替えタンパク質ライブラリーから、許容型と野生型の活性に最も大きい差を示すタンパク質をスクリーニングする。
【0201】
上清の活性を、様々な方法、例えば、蛍光アッセイなどのハイスループットな活性アッセイを使ってスクリーニングして、希望する特性(温度、pHなど)に感受性をもつ、タンパク質変異体を同定することが可能である。例えば、時間的感受性の変異体をスクリーニングするためには、個々の変異体ごとに、低い温度(25℃など)と、元のタンパク質が機能する温度(37℃など)とにおいて、商業的に利用可能な基質を用いて、酵素活性又は抗体活性の測定を行う。反応は、最初は96ウェルアッセイなどのマルチウェルアッセイの形式で行われ、14mlチューブ形式などの異なる形式を用いて確認されてもよい。
【0202】
本開示は、酵素を同定するためのスクリーニングアッセイをさらに提供するものであって、前記アッセイは、(a)複数の核酸又はポリペプチドを提供する工程と、(b)前記複数の核酸又はポリペプチドから、酵素活性をテストするためのポリペプチドの候補を得る工程と、(c)前記候補の酵素活性をテストする工程と、(d)これらのポリペプチドの候補であって、例えば、温度、pH、酸化、浸透圧性、電解質濃度、又は浸透圧の条件が、異常な条件又は非生理的な条件下において、野生型酵素タンパク質に比べてより高い酵素活性を示し、通常の生理的な条件下において、より低い酵素活性を示すものである、前記ポリペプチドの候補を同定する工程とを、有するものである。
【0203】
一態様においては、本方法はさらに、前記候補の条件的生理活性をテストする前に、少なくとも一つの前記核酸又はポリペプチドを改変する工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、宿主細胞又は宿主生物における前記ポリペプチドの発現の上昇をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約pH3〜約pH12のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約pH5〜約pH10のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約pH6〜約pH8のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約pH6.7〜約pH7.5のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約4℃〜約55℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約15℃〜約47℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約20℃〜約40℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、約25℃〜約37℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、通常の浸透圧下での酵素活性と、(正方向又は負方向に)異常な浸透圧下での酵素活性とをテストする工程を有するものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、通常の電解質濃度下での酵素活性と、(正方向又は負方向に)異常な電解質濃度下での酵素活性とをテストする工程を有するものである。テストされる前記電解質濃度は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素、重炭酸、及びリン酸の濃度から選択されるものである。別の態様においては、前記テストする工程(c)はさらに、安定した反応産物をもたらす酵素活性をテストする工程を有するものである。
【0204】
別の態様においては、本開示は、酵素活性を持つ本開示のポリペプチド又はその断片に特異的に結合する、精製抗体を提供するものである。一態様においては、本開示は、酵素活性を持つポリペプチドに特異的に結合する前記抗体の断片を提供するものである。
【0205】
抗体及び抗体ベースのスクリーニング方法
本開示は、本開示の酵素に特異的に結合する、単離された抗体又は組換え抗体を提供する。これらの抗体を用いて、本開示の酵素、又は関連するポリペプチドの酵素を、単離、同定、又は定量化することが出来る。これらの抗体を用いて、本開示の範囲内の他のポリペプチド、又は他の関連する酵素を単離することが出来る。前記抗体は、酵素の活性部位に結合するように設計することが出来る。従って、本開示は、本開示の抗体を用いて、酵素を抑制する方法を提供する。
【0206】
前記抗体は、免疫沈降、染色、及び免疫親和性カラムなどで用いることが出来る。必要な場合、特定の抗原をエンコードする核酸配列は、免疫処置とそれに続くポリペプチド又は核酸の単離、増幅又はクローニング、並びに本開示のアレイへのポリペプチドの固定化によって生成することが出来る。あるいは、本開示の方法を用いて、細胞によって生産された抗体の構造を改変することが可能であり、抗体を改変し、例えば抗体の親和性を上昇又は低下させることが可能である。さらに、抗体を作成又は改変する能力を、本開示の方法により細胞中に設計された表現型とすることが出来る。免疫処置、抗体の作製及び単離(ポリクローナル及びモノクローナル)の方法は、本技術分野の当業者に公知であり、科学文献及び特許文献に記載されている。例えば、Coligan,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,Wiley/Greene,NY(1991);Stites(eds.)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(7th ed.)Lange Medical Publications,Los Altos,Calif.("Stites");Goding,MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE(2d ed.)Academic Press,New York,N. Y.(1986);Kohler(1975)"Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity",Nature 256:495;Harlow(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Publications,New York. を参照のこと。抗体はまた、例えば、従来的な動物を用いたインビボの方法に加えて、組換え抗体の結合部位を発現するファージディスプレイライブラリーを用いることで、インビトロで作製することも可能である。例えば、Hoogenboom(1997)"Designing and optimizing library selection strategies for generating high−affinity antibodies",Trends Biotechnol.15:62−70; and Katz(1997)"Structural and mechanistic determinants of affinity and specificity of ligands discovered or engineered by phage display",Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.26:27−45.を参照のこと。
【0207】
ポリペプチド又はペプチドを用いて、特異的に本開示のポリペプチド、例えば酵素に結合する抗体を作製することが出来る。結果得られる抗体は、ポリペプチドを単離又は精製するため、或いはポリペプチドが生体サンプルの中に存在するかどうかを決定するために、免疫親和性クロマトグラフィーの手法の中で用いられてもよい。そうした手法においては、抽出物などのタンパク質調製物、又は生体サンプルを、本開示のポリペプチドの中の1つに特異的に結合することが出来る抗体と接触させる。
【0208】
免疫親和性手法においては、前記抗体を、ビーズ又はその他のカラム基材などの、固体支持体に結合させる。前記タンパク質調製物を、本開示のポリペプチドの中の1つに特異的に前記抗体が結合する条件下で、前記抗体と接触するように置く。洗浄を行い、非特異的に結合したタンパク質を除去した後、特異的に結合したポリペプチドを溶出する。
【0209】
生体サンプル中のタンパク質の、抗体対する結合能力を、本技術分野の当業者に公知の様々な手法を用いて決定することが出来る。例えば、蛍光物質、酵素ラベル、放射性同位体などの、検出可能な標識を用いて抗体を標識することによって、結合能を決定してもよい。あるいは、表面にそうした検出可能な標識を持つ二次抗体を用いて検出することによって、サンプルに対する抗体の結合能を決定してもよい。特定のアッセイとしては、ELISAアッセイ、サンドイッチアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及びウェスタンブロットが含まれる。
【0210】
本開示のポリペプチドに対して製作されるポリクロ―ナル抗体は、動物への前記ポリペプチドの直接注射か、又は非ヒト動物への前記ポリペプチドの投与によって、得ることが出来る。そうして得られた抗体を、次いでポリペプチドそれ自体に結合させる。この方法においては、前記ポリペプチドの断片のみをエンコードする配列さえ、未変性の全長ポリペプチドに結合する可能性のある抗体を作成するのに用いることが出来る。次いで、そうした抗体を用いて、前記ポリペプチドを発現する細胞から前記ポリペプチドを単離することが出来る。
【0211】
モノクローナル抗体を調整するために、継代培養細胞株によって生産される抗体を提供する、任意の手法を用いることが出来る。例として、ハイブリドーマ法、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、及びEBVハイブリドーマ法(例えば、Cole(1985)in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96を参照のこと)が含まれる。
【0212】
単鎖抗体を作製するために記載された手法(例えば、米国特許第4946778号を参照のこと)を、本開示のポリペプチドに対する単鎖抗体を作製するために適応することが出来る。あるいは、トランスジェニックマウスを用いて、前記ポリペプチド又はその断片に対するヒト化抗体を発現させてもよい。本開示のポリペプチドに対して製作される抗体を用いて、他の生物及びサンプル由来の類似のポリペプチド(例えば、酵素)をスクリーニングすることが出来る。そうした手法においては、生物由来のポリペプチドを前記抗体と接触させ、前記抗体と特異的に結合するポリペプチドを検出する。上述した手法から任意のものを、抗体の結合を検出するために用いてもよい。
【0213】
スクリーニング方法、及び「オンライン」モニタリング装置
本開示の方法の実施においては、様々な装置及び方法を本開示のポリペプチド及び核酸と併せて使用することが出来る。その装置及び方法には、例えば、酵素活性によるペプチドのスクリーニングするためのもの、酵素活性に対してアクチベーター又はインヒビターなどの潜在モジュレーターとなる化合物のスクリーニングするためのもの、本開示のポリペプチドに結合する抗体のためのもの、本開示の核酸にハイブリダイズする核酸のためのもの、本開示のポリペプチドを発現する細胞をスクリーニングするためのものなどが挙げられる。
【0214】
アレイ又は「バイオチップ」
本開示の核酸又はポリペプチドは、アレイに固定化又は適用することが出来る。アレイを用いることで、組成物(例えば、小分子、抗体、核酸など)のライブラリーに対して、本開示の核酸又はポリペプチドに結合する能力、又はそれらの活性を調整する能力によって、スクリーニング又はモニターすることが出来る。例えば、本開示の一態様においては、モニターされるパラメーターは酵素遺伝子の転写発現である。ある細胞の転写産物の、1つ又は複数、或いは全てを、その細胞の転写産物或いは細胞の転写産物の代表的又は相補的な核酸を有するサンプルを、アレイ又は「バイオチップ」に固定化した核酸にハイブリダイズすることで、測定することが可能である。マイクロチップ上の核酸の「アレイ」を用いることで、転写産物の一部又は全部を同時に定量化する事が出来る。あるいは、ゲノム核酸を有するアレイを用いることで、本開示の方法によって作られた、新たに設計された株の遺伝子型を決定することも出来る。ポリペプチド「アレイ」を用いることで、同時に複数のタンパク質を定量化することも出来る。本開示は、任意の既知の「アレイ」とともに実施することが可能であって、この「アレイ」は、「マイクロアレイ」又は「核酸アレイ」又は「ポリペプチドアレイ」又は「抗体アレイ」又は「バイオチップ」又はそれらの変型とも見なされる。アレイは一般的に、複数の「スポット」又は「標的要素」であって、それぞれの標的要素は、規定の量の1つ又は複数の生体分子、例えば、オリゴヌクレオチドを有するものであり、サンプル分子、例えばmRNA転写産物に特異的に結合する基質表面の規定の領域に、固定化されているものである。
【0215】
本開示の方法の実施においては、以下の文献中に記載されているような、任意の既知のアレイ及び/又はアレイを作成及び使用する方法が、それらの全体又は一部、或いはそれらの変型について援用されうる。例えば、米国特許第6277628号;同第6277489号;同第6261776号;同第6258606号;同第6054270号;同第6048695号;同第6045996号;同第6022963号;同第6013440号;同第5965452号;同第5959098号;同第5856174号;同第5830645号;同第5770456号;同第5632957号;同第5556752号;同第5143854号;同第5807522号;同第5800992号;同第5744305号;同第5700637号;同第5556752号;同第5434049号;例えば、国際公開WO99/51773号;国際公開WO99/09217号;国際公開WO97/46313号;国際公開WO96/17958号も参照のこと;例えば、Johnston(1998)"Gene chips: Array of hope for understanding gene regulation",Curr.Biol.8:R171−R174;Schummer(1997)"Inexpensive Handheld Device for the Construction of High−Density Nucleic Acid Arrays",Biotechniques 23:1087−1092;Kern(1997)"Direct hybridization of large−insert genomic clones on high−density gridded cDNA filter arrays",Biotechniques 23:120−124;Solinas−Toldo(1997)"Matrix−Based Comparative Genomic Hybridization: Biochips to Screen for Genomic Imbalances",Genes,Chromosomes & Cancer 20:399−407;Bowtell(1999)"Options Available−From Start to Finish ̄for Obtaining Expression Data by Microarray",Nature Genetics Supp.21:25−32も参照のこと。米国特許出願公開第20010018642号;米国特許出願公開第20010019827号;米国特許出願公開第20010016322号;米国特許出願公開第20010014449号;米国特許出願公開第20010014448号;米国特許出願公開第20010012537号;米国特許出願公開第20010008765号も参照のこと。
【0216】
キャピラリーアレイ
GIGAMATRIX(商標)(Diversa Corporation、カリフォルニア州、サンディエゴ)などのキャピラリーアレイを、本開示の方法において用いることが出来る。本開示の核酸またはポリペプチドを、キャピラリーアレイを含むアレイに対して固定化又は適用することが出来る。アレイを用いることで、組成物(例えば、小分子、抗体、核酸など)のライブラリーに対して、本開示の核酸又はポリペプチドに結合する能力、又はそれらの活性を調整する能力によって、スクリーニング又はモニターすることが出来る。キャピラリーアレイは、サンプルを保持かつスクリーニングするためのもう一つのシステムを提供する。例えば、サンプルスクリーニング装置は、隣接したキャピラリーアレイとして形成される複数のキャピラリーを含むことが出来、ここで各キャピラリーは少なくとも1つの、サンプルを保持する管腔を形成する壁を有するものである。前記装置は、さらに、前記アレイ中の隣接したキャピラリーの間に配置される間質材を含みうるものであって、その間質剤の中に、1つまた複数の参照指標が形成されているものである。サンプルをスクリーニングするためのキャピラリーは、キャピラリーアレイに結合するように適合されたものであって、サンプルを保持するための管腔を形作る第一の壁と、前記サンプルを励起するために管腔に与えられる励起エネルギーをフィルターするフィルター材から形成される第二の壁を含みうるものである。ポリペプチド又は核酸、例えばリガンドを、キャピラリーアレイの少なくとも一部のキャピラリーの第一成分に、導入することが出来る。前記キャピラリーアレイの各キャピラリーは、少なくとも1つの、前記第一成分を保持する管腔を形作る壁を有することが出来る。前記キャピラリー中の前記第一成分の後ろに、気泡を導入することが出来る。第二成分を前記キャピラリーに導入することが可能であり、ここでこの第二成分は気泡によって第一成分と分離される。対象サンプルは、検出可能粒子で標識された第一液として、キャピラリーアレイ中の一つのキャピラリーに導入され、このキャピラリーアレイ中の各キャピラリーは、前記第一液と前記検出可能粒子とを保持するための管腔を形作る少なくとも1つの壁を有するものであって、前記少なくとも一つの壁は、検出可能粒子を結合させるための結合材料で被覆されている。本方法は、さらに、結合した検出可能粒子が保持されているキャピラリーチューブから第一液を除去する工程と、そのキャピラリーに第二液を導入する工程とを含むものである。前記キャピラリーアレイは、管腔を形作る少なくとも一つの外壁を有する、複数の個々のキャピラリーを含むものである。前記外壁は、互いに融合した1つ又は複数の壁であってもよい。同様に、前記壁は、その壁が液体又はサンプルを保持する管腔を形成する限り、円筒形、四角形、六角形、又はその他の幾何学的形態の管腔を形作ることができる。前記キャピラリーアレイ中のキャピラリーは、平面構造を形成するように近接して互いに支え合うことが出来る。前記キャピラリーは、隣同士を融合(例えば、ここではキャピラリーはガラス製)、接着、粘結、又は固定することによって、互いに結合することが出来る。前記キャピラリーアレイは、任意の数、例えば100〜4,000,000の、個々のキャピラリーから形成することが可能である。キャピラリーアレイは、約100,000又はそれより多くの、互いに結合した個々のキャピラリーを持つ、マイクロタイタープレートを形成することが出来る。
【0217】
医薬組成物
本開示は、少なくとも1つの組成物を提供するものであって、この組成物は、(a)条件的活性型生物学的タンパク質、及び(b)適当な担体又は希釈剤、を有するものである。本開示はまた、少なくとも1つの組成物を提供するものであって、この組成物は、(a)本明細書に記載の核酸をエンコードする条件的活性型生物学的タンパク質、及び(b)適当な担体又は希釈剤、を有するものである。前記担体又は希釈剤は、選択的に、既知の担体又は希釈剤に従って、薬学的に許容可能なものにすることが出来る。前記組成物はさらに、選択的に、追加して少なくとも1つの化合物、タンパク質、又は組成物を有することが出来る。
【0218】
前記条件的活性型生物学的タンパク質は、薬学的に受容可能な塩の形をとっていてもよい。薬学的に受容可能な塩とは、製薬産業において治療用タンパク質の塩として一般的に用いられるものであって、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムなどの塩、並びに、プロカイン、ジベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、メチルグルカミン、タウリンなどのアミン塩、並びに、塩酸塩、及び塩基性アミノ酸などの酸添加塩含むものである。
【0219】
本開示は、さらに、本技術分野に既知である通り、そして/又は本明細書に記載されている通り、細胞、組織、臓器、動物又は患者における、少なくとも1つの親分子が関連する症状を、そして/或いは、関連症状の前に、後に、又は間に、調節又は治療するための、治療有効量を投与するための、少なくとも1つの条件的活性型生物学的タンパク質の方法又は組成物を提供する。従って、本開示は、本開示の少なくとも一つの条件的活性型生物学的タンパク質の有効量を有する組成物を、細胞、組織、臓器又は動物に接触させる工程或いはそれに投与する工程を有する、細胞、組織、臓器又は動物における、野生型タンパク質に関連する症状を、診断又は処置する方法を提供するものである。本方法は選択的に、さらに、細胞、組織、臓器又は動物に対し、有効量である0.001〜50mg/kgの、本開示の条件的活性型生物学的タンパク質を使用する工程を有していてもよい。本方法は選択的に、さらに、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内(intracapsular)、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、嚢内(intravesical)、ボーラス、膣、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも一つの形態により、接触させる工程又は投与する工程を、使用する工程を有していてもよい。本方法は選択的に、さらに、条件的活性型生物学的タンパク質の接触又は投与の前に、同時に、又は後に、検出可能な標識又はレポーター、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ剤、筋肉弛緩剤、麻酔薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、局所麻酔剤、神経筋遮断薬、抗菌薬、乾癬治療薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗欝薬、抗精神病薬、興奮剤、喘息薬、ベータアゴニスト、吸入用ステロイド、エピネフリン又はその類似物、細胞毒性薬又は他の抗癌剤、メトトレキセートのような代謝拮抗剤、増殖抑制剤、サイトカイン、或いはサイトカインアンタゴニストの少なくとも一つから選択される、少なくとも一つの化合物又はタンパク質の有効量を有する、少なくとも一つの組成物を投与する工程を有していてもよい。
【0220】
本開示はさらに、本技術分野において既知である通り、そして/又は本明細書に記載されている通り、細胞、組織、臓器、動物又は患者における少なくとも一つの、野生型タンパク質が関連する症状を、そして/或いは、関連症状の前に、後に、又は間に、診断するための、少なくとも1つの条件的活性型生物学的タンパク質の方法を提供する。
【0221】
薬学的に受容可能な担体は、投与される特定の組成物によって、及びその組成物を投与するのに使用される特定の方法によって、ある程度決定される。従って、本発明の医薬組成物に好適な製剤は多種多様である。様々な液体担体、例えば緩衝生理食塩水などが使用されてもよい。そうした溶液は、無菌であり、一般的に不都合となる物質は入っていない。そうした溶液は、従来的な、既知の滅菌方法によって滅菌されてもよい。前記組成物は生理学的条件に近付けるのに必要とされる薬学的に受容される、pH調節剤及び緩衝剤、等張性調節剤などの補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含んでいてもよい。こうした製剤の中での条件的活性型生物学的タンパク質の濃度は幅広く変えてもよく、選んだ特定の投与形態に従って、流体容積、粘度、体重などに主に基づいて選択されるであろう。
【0222】
経口投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、又はPEG400などの希釈剤中に懸濁された、有効量の放送された核酸のような、液体の液剤、(b)それぞれ予め決定された量の活性成分を、液体、固形物、顆粒又はゼラチンとして含有する、カプセル剤、サシェ剤または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁剤、並びに(d)好適な乳剤からなることが出来る。本発明の、経口投与のための医薬組成物及び製剤は、本技術分野で公知の薬学的に受容可能な担体を、適切な用量使用して配合することが出来る。そうした担体は、前記医薬品が、錠剤、丸剤、散剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、トローチ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤など、患者の服用に好適な単位用量形に製剤化されることを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、固体賦形剤によって製剤化されるが、場合により、錠剤又は糖衣剤の中核部を得るため、得られた混合物を磨り潰し、好適な追加の化合物を加えた後にその顆粒剤の混合物を処理する。好適な固体賦形剤は炭水化物又はタンパク質充填剤であり、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなどの糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ又は他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;並びにアラビア及びトラガカントを含むガム:並びにゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質を含む。架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩のような、崩壊剤又は可溶化剤を加えてもよい。錠剤形は、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、水和剤、保存剤、香味料、色素、崩壊剤、及び薬学的に受容可能な担体の中から1つ又は複数を含むことが出来る。
【0223】
本発明は、水性懸濁剤の製造に適する賦形剤との混合物中に、条件的活性型生物学的タンパク質を有する水性懸濁剤を提供する。そのような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガムのような懸濁化剤、及び天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビトールモノオレート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)のような核酸剤又は湿潤剤を含むことが出来る。前記水性懸濁剤はまた、エチル又はn−プロピル−p−ヒドロキシベンゾエートなどの1つ又は複数の保存剤、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の香味料、並びにスクロース、アスパルテーム又はサッカリンなどの1つ又は複数の甘味料を含有することが出来る。製剤は浸透圧について調整されてもよい。
【0224】
トローチ剤形は、活性成分を通常、スクロース及びアカシア又はトラガカントといった香味料中に有し、また、香錠剤は、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア乳剤、ゲル剤などの、不活性基材中に活性成分を有し、これらの活性成分に加え本技術分野で既知の担体を有することが出来る。前記条件的活性型生物学的タンパク質は、経口投与されるとき、消化から保護されていなければならないと理解されている。これは、一般的には、前記条件的活性型生物学的タンパク質を、酸性的及び酵素的な加水分解への耐性を付与する組成物と複合体を作ることによって、或いは前記条件的活性型生物学的タンパク質を、リポソームなどの適切な耐性を持つ担体中に包装することによって、達成される。タンパク質を消化から保護する方法は、本技術分野において公知である。前記医薬組成物は、例えば、リポソーム中に、又は活性成分を徐放出来るようにする製剤中に、封入することが出来る。
【0225】
包装された前記条件的活性型生物学的タンパク質は、単独で、又は他の好適な成分との組み合わせによって、エアロゾル製剤(例えば、噴霧吸入が可能なもの)に製剤化して、吸入法によって投与することが出来るエアロゾル製剤は、ジクロロフルオロメタン、プロパン、窒素などの圧縮された許容される噴射剤に入れることが出来る。直腸投与に好適な製剤は、例えば、包装された核酸と坐剤基材からなる坐剤を含む。好適な坐剤は、天然又は合成のトリグリセリド又はパラフィン炭化水素を含み、さらに、包装された核酸と基材の組合せからなるゼラチンの直腸用カプセルを使うことも可能であり、その基材には、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、及びパラフィン炭化水素が含まれる。
【0226】
本発明の経皮又は局所の送達組成物は、条件的活性型生物学的タンパク質に加えて、薬学的に受容可能な担体が、クリーム、軟膏、液体又はハイドロゲルの製剤中に含んでもいてもよく、添加成分が治療用タンパク質の送達に悪影響を与えない限り、その他の化合物を含んでいてもよい。従来の薬学的に受容可能な乳化剤、界面活性剤、懸濁化剤、抗酸化剤、浸透圧上昇剤、増量剤、希釈剤、保存剤を、加えてもよい。水に可溶のポリマーもまた、担体として使用することが出来る。
【0227】
非経口投与、例えば、関節内(関節部中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下の経路などによる投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、及び対象の被投与者の血液に対する等張性を製剤に与える溶質を含有しうる水性及び非水性の等張性無菌注射溶液と、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤を含有しうる水性及び非水性の無菌懸濁溶液とを含む。本発明の実施においては、組成物は、例えば、静脈内注入、経口、局所、腹腔内、又はくも膜下腔内に投与することが出来る。一態様においては、非経口投与の形態は、条件的活性型生物学的タンパク質を有する組成物の投与に好適な方法である。前記組成物は、便宜的に、単位用量形で投与されてもよく、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.Easton Pa.,18th Ed.,1990に記載されているような、医薬分野で公知である任意の方法によって調製されてもよい。静脈内投与の製剤は、無菌の水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、野菜由来のオイル、水素化ナフタレンなどの、薬学的に受容可能な担体を含有していてもよい。米国特許第4318905号の記載も参照及び適用のこと。
【0228】
条件的活性型生物学的タンパク質を有する、包装された組成物の製剤は、アンプル及びバイアルのような、単位用量又は複数容量を封入された容器に入れることが出来る。注射用溶液及び懸濁液は、以前に記載した種類の無菌の散剤、顆粒剤、及び錠剤から調製することが出来る。
【0229】
本開示はまた、本開示に従って、少なくとも1つの野生型タンパク質に関連する症状を診断するための、少なくとも1つの条件的活性型生物学的タンパク質の、組成物、装置及び/又は送達方法を提供するものである。
【0230】
また提供するものは、少なくとも1つの条件的活性型生物学的タンパク質及び少なくとも1つの薬学的に受容可能な担体又は希釈剤を有する組成物である。前記組成物は選択的に、さらに、検出可能な標識又はレポーター、細胞毒性薬又は他の抗癌剤、メトトレキセートのような代謝拮抗剤、増殖抑制剤、サイトカイン、またはサイトカインアンタゴニスト、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ剤、筋肉弛緩剤、麻酔薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、局所麻酔剤、神経筋遮断薬、抗菌薬、乾癬治療薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗欝薬、抗精神病薬、興奮剤、喘息薬、βアゴニスト、吸入用ステロイド、エピネフリン又は類似物の少なくとも一つから選択される、少なくとも一つの化合物又はタンパク質の有効量を有することが出来る。
【0231】
また提供するものは、本開示の少なくとも一つの条件的活性型生物学的タンパク質を有する医療装置であり、ここで前記装置は、少なくとも一つの条件的活性型生物学的タンパク質を、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、嚢内、ボーラス、膣、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される、少なくとも一つの形態により接触させる工程又は投与する工程に好適なものである。
【0232】
さらなる態様においては、本開示は、少なくとも1つの本開示の条件的活性型生物学的タンパク質又は断片を凍結乾燥された形で有する第一の容器と、場合により、無菌の水、無菌の緩衝化水、或いは、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール又はそれらの混合物よりなる群から選択され、水性希釈剤中に入れられた少なくとも1つの保存剤を有する第二の容器とを、有するキットを提供するものである。一態様において、前記キットの前記第一の容器中の、条件的活性型生物学的タンパク質又は特定部分又は変異体の濃度は、前記第二の容器の内容物によって、約0.1mg/ml〜約500mg/mlの濃度に再構成される。別の態様においては、前記第二の容器はさらに等張剤を有する。別の態様においては、前記第二の容器はさらに生理学的に受容可能な緩衝液を有する。一態様においては、本開示は、少なくとも1つの野生型タンパク質が介在する症状を治療する方法であって、それを必要とする患者に、キットに提供されている製剤を投与する工程と、投与の前に再構成する工程とを有する、前記治療する方法を提供する。
【0233】
また提供されるものは、ヒトの医薬品又は診断用途のための製品の物品であって、この製品の物品は、包装素材と、溶液又は少なくとも1つの本開示の条件的活性型生物学的タンパク質を凍結乾燥したものとを有する。前記製品の物品は、選択的に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内(intracapsular)、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、嚢内(intravesical)、ボーラス、膣、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮の、送達装置又は送達システムを、構成要素とする容器を有することが出来る。
【0234】
本開示はさらに、本明細書中に記載されるあらゆる開示を提供するものである。
【0235】
実施例1:温度変異体についてのマルチウォールアッセイ(例えば、96ウェルアッセイ)についての概要
マルチウォールプレートの各ウェルに蛍光基質を加え、野生型の温度と、新規の型で低い反応温度の両方(例えば、上述の通り37℃又は25℃のいずれか)に適切な時間おく。蛍光プレートリーダーによって、適切な励起及び発光スペクトル(例えば、320nmの励起スペクトル、405nmの発光スペクトル)において、蛍光を測定することによって、蛍光を検出する。相対蛍光ユニット(Relative fluorescence unit:RFU)を決定する。野生型分子からの上清及びプラスミド/ベクターで形質転換された細胞を、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして用いる。各サンプル、反応温度、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールにおいて、複製反応を行う。
【0236】
低い温度(例えば、25℃で活性化する変異体)で活性化し、野生型の温度(例えば、37℃で、10%、20%、30%、40%、又はそれ以上活性が低下する)で活性が低下し、すなわち活性の比が1.1以上か又はより大きい値以上(例えば25℃又は37℃における活性の比(25℃/37℃)が1.1以上か又はより大きい値以上)である、変異体を、推定温度感受性の一次ヒットとしてみなすことが出来る。この温度感受性一次ヒットを、次いで、同じアッセイを用いてスクリーニングし、全ての一次ヒットを確かめることが出来る。
【0237】
実施例2:温度変異体の確認試験のための異なるアッセイ形式(例えば、14mLアッセイ)についての概要
温度感受性一次ヒットとして同定された変異体を、14mLの培養チューブで発現させ、それらの酵素活性を野生型の温度(例えば、37℃)とより低い温度(例えば、25℃)とにおいて測定する。タンパク質を発現させ、上述の通りにマルチウォール形式で用いるために精製するが、マルチウォール(96ウェルプレート)でない異なる形式(14mlチューブ)における発現も別に行う。
【0238】
各変異体の上清を、マルチウォールプレート、例えば96ウェルのマイクロプレートに移動する。各チューブに蛍光基質を加え、指定の温度(野生型の温度、より低い温度)に適切な時間おく。野生型分子をポジティブコントロールとして使用し、ベクターのみにより形質転換した細胞からの上清をネガティブコントロールとして使用する。蛍光プレートリーダーによって、適切な発光スペクトル(例えば、320nmの励起スペクトル、405nmの発光スペクトル)において、蛍光を測定することによって、蛍光を検出する。相対蛍光ユニット(Relative fluorescence unit:RFU)を決定する。各サンプル、反応温度、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールにおいて、複製反応を行う。
【0239】
低い温度(例えば、25℃)で活性化するが、野生型の温度(例えば、37℃)で、少なくとも30%かそれ以上の活性の低下を見せ、すなわち野生型の温度(例えば、37℃)での活性に対する、低い温度(例えば25℃)での活性の比が1.1以上である変異体を、温度感受性ヒットとして同定する。
【0240】
低い温度(例えば、25℃)における変異体の活性を、野生型の温度(例えば、37℃)における野生型分子の活性と比較する。もし、低い温度(例えば、25℃)において野生型分子よりも活性が高いことが、残存活性が1より大きく、好ましくは2以上であることで示される場合、かつ、変異体が野生型の温度(37℃)において野生型分子と比べたときに、全体的な活性の低下を示す場合、変異体の表現型が温度感受性変異体であると確認出来る。
【0241】
実施例3:発見したヒットのさらなる発達についての概要
必要な場合、新規のコンビナトリアル変異体ライブラリーを、上述において同定した変異体ヒットの全て又は選択したものから作成する。この新規のライブラリーを、選択した変異体それぞれについて、可能な全てのアミノ酸変異体を含むようにデザインし、新しいヒットについての記載の通り再度スクリーニングをすることが出来る。
【0242】
実施例4:温度低下後の酵素活性の可逆性についての概要
温度感受性の発達させた変異体に対してさらにアッセイを行い、低い温度(例えば、25℃)における酵素活性が可逆的か非可逆的か、当該変異体を高い温度に曝し、続けて低い温度(例えば、25℃)に戻すことによって、確認することが出来る。この温度感受性変異体を、所望の形式、例えば、概述のような14mL培養チューブにおいて発現させる。この変異体を、野生型の温度(例えば、37℃)及びその他の温度を含んだ幾つかの条件下においてテストし、続いて、必要な低い温度(例えば、25℃)に再度曝す。低い温度において活性のある変異体であって、より高い温度又は野生型の温度まで上昇させたとき、活性の低下を示し(つまり、低い温度における活性の高い温度に対する活性の比が、1、1.5、2、又はそれより高い値以上である)、再度低い温度まで下げられたときにベースラインの活性を示す、前記変異体を、「可逆性ヒット」と判定する。低い温度において活性のある変異体であって、より高い温度又は野生型の温度まで上昇させたとき、活性の低下を示し(つまり、低い温度における活性の高い温度に対する活性の比が、1、1.5、2、又はそれより高い値以上である)、再度低い温度まで下げられたときに少なくとも低下した活性と同じ程度の活性を示す、前記変異体を、「非可逆性ヒット」と判定する。
【0243】
実施例5:条件的活性型のアンジオスタチン変異体のスクリーニングについての材料及び方法。条件的活性型のアンジオスタチン変異体のスクリーニングについての材料及び方法は、Chi and Pizzo,"Angiosatin is directly cytotoxic to tumor cells at low extracellular pH: a mechanism dependent on cell surface−associated ATP synthase",Cancer Res.2006;66(2):875−882から適用することが可能であり、この文献は参照することによって本明細書に援用される。
【0244】
材料。ヒトのプラスミノーゲン由来の、野生型アンジオスタチンのクリングル1〜3は、Calbiochem(ドイツ、Darmstadt)から入手可能であり、無菌PBS中で再構成することが出来る。過去に記載されているように、ATP合成酵素の触媒的βサブユニットに対するポリクローナル抗体は作製可能であり、ウシのATP合成酵素F1サブユニットは精製可能である((Moser et al.,"Angiostatin binds ATP synthase on the surface of human endothelial cells",Proc Natl Acad Sci USA 1999;96:2811−6;Moser et al."Endothelial cell surface Fl−FO ATP synthase is active in ATP synthesis and is inhibited by angiostatin",Proc Natl Acad Sci USA;2001;98:6656−61)。カリポリドは、無菌の水に可溶化し、無菌にフィルターすることが出来る。
【0245】
細胞培養。A549(肺がん組織由来のヒト上皮細胞株)又は他のがん細胞株(DU145、LNCaP、又はPC−3細胞)は、例えばATCCから入手可能である。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、文献に記載されているようにヒト臍帯静脈から単離可能である(Grant et al.,"Matrigel induces thymosin h 4 gene in differentiating endothelial cells",J Cell Sci 1995;108:3685−94.)。HUVEC細胞は、ATP合成酵素を細胞表面に発現する細胞株で、ポジティブコントロールとして使用することが出来る。細胞は、1%ペニシリンストレプトマイシン及び10%血清置換培地3(Sigma、ミズーリ州、St.Louis)を入れたDMEM(Life Technologies、カリフォルニア州、Carlsbad)で培養し、プラスミミノーゲンの存在を最小限にすることが出来る。低いpH(6.7)の培地は、重炭酸塩を5%CO条件下で10mmol/Lまで減少させ、浸透圧を維持するために34mmol/LのNaClを追加するか、又は22mmol/Lの重炭酸塩培地を17%CO条件下でインキュベートすることで調製することが出来る。pHを低下させる方法は、実験的制約及びアッセイによって変化してもよい。
【0246】
フローサイトメトリー。ATP合成酵素が腫瘍細胞株の細胞表面において機能的であることを確認するために、フローサイトメトリー実験を行うことが出来る。例えば、A549細胞株を、低酸素状態(0.5%O、5%CO、N平衡)対酸素正常状態(21%O、5%CO)で、異なるpHの培地(10、22、及び44mmol/Lの重炭酸塩DMEM)において、0、12、24、48、お及び72時間培養することが出来る。生細胞をブロックし、抗βサブユニット抗体とともにインキュベートし、洗浄し、ブロックし、二次抗体のヤギ抗ウサギ抗体FITC(Southern Biotech、アラバマ州、Birmingham)とともにインキュベートし、再度洗浄することが出来る(全ての工程は4℃で行われる)。ヨウ化プロピジウム(BD Biosciences、カリフォルニア州、San Jose)を、細胞膜を損傷した細胞を識別するために全てのサンプルに含めることが出来る。10,000細胞中のFITCの平均蛍光強度を、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson、ニュージャージー州、Franklin Lakes)によって定量化し、CELLQuestソフトウェア(BD Biosciences)上で、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞を取り除くことで、ミトコンドリアATP合成酵素の検出を除去することが出来る。
【0247】
細胞表面のATP合成アッセイ。96ウェルプレート中のA549又は1−LN細胞(ウェル毎に60,000個)を、培地で満たし、アンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウシ血清アルブミンに対して作成されたウサギIgG(Organon Teknika、ペンシルバニア州、West Chester)、ピセタノール(既知のATP合成酵素F1の阻害剤でポジティブコントロールとして用いられる、Sigma)、又は培地のみによって、37℃、5%COで30分間処理することが出来る。次いで、細胞を0.05mmol/LのADPで20秒間インキュベートすることが出来る。上清を除去し、記載(23)の通り、にCellTiterGloルミネセンスアッセイ(Promega、ウィスコンシン州、Madison)によって、ATP産生を分析することが出来る。細胞溶解物を同様に分析し、ATPの細胞内プールが全ての条件において変わらないことを確認することが出来る。記録を、Luminoskan Ascent(Thermo Labsystems、フィンランド、Helsinki)上でとることが出来る。データは、それぞれの独立した実験において決定された基準に基づいて、細胞毎のATPのモル数によって表される。
【0248】
細胞増殖アッセイ。アンジオスタチンのがん細胞株への効果を、無血清培地に置いて、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩(MTS)増殖アッセイによって評価することが出来る。アンジオスタチンの存在下又は非存在下において、37℃、5%COで20時間インキュベートした後、96ウェルマイクロプレートの各ウェルにおける相対的な細胞数を、AQueous One細胞増殖アッセイ(Promega)を用いて製品のプロトコルに従って、決定することが出来る。培地のpHを、5%COにおいて重炭酸塩濃度によって調節することが出来る。
【0249】
細胞毒性の評価。細胞死および細胞溶解を定量化するために、サイトゾルから上清に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate cehydrogenase:LDH)の活性を、Cytotoxicity Detectionキット(Roche、インディアナ州、Indianapolis)によって計測することが出来る。アンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウサギIgG、カリポリド、及びトリトンX(細胞を透過処理する界面活性剤でポジティブコントロールとして用いる)によって処理したがん細胞(例えば、A549細胞)(ウェル毎に5,000個)を、5%CO又は17%CO(それぞれ、中性及び低pH条件)で、37℃、15時間インキュベートすることが出来る。細胞毒性の指標は、同じpHの培地に対応させて、4組の処理したサンプルの平均吸光度を、4組の未処理サンプルの平均吸光度によって除算することで計算することが出来る。細胞のネクローシス及びアポトーシスの評価アンジオスタチンの細胞死を引き起こす作用を決定するために、ヒストン−DNA ELISAを行うことが出来る。A549細胞(ウェル毎に5,000個)に対するアンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウサギIgG、カリポリドの効果を、核外のヒストン−DNA断片の検出に基づいた、ELISAアポトーシス及びネクローシスアッセイ(Roche)を用いることで、決定することが出来る。試薬の存在下又は非存在下で、37℃15時間インキュベートした後、4組のサンプルの細胞溶解物又は上清から、それぞれアポトーシス又はネクローシスを決定することが出来る。アポトーシス又はネクローシスは、同じpHの培地に対応させて、4組の処理したサンプルの平均吸光度を、4組の未処理サンプルの平均吸光度によって除算することで計算することが出来る。培地のpHを、5%CO又は17%COにおいてインキュベートすることで調節することが出来る。
【0250】
細胞内pH(pHi)の測定。pHiは、カバーガラス付きの35mmマイクロウェルディッシュ(MatTek、マサチューセッツ州、Ashland)上に乗せた細胞の蛍光によって、測定することが出来る。細胞を、成長因子を減少させた、フェノールレッドフリーのMatrigel(BD Biosciences)に乗せることが出来る。一晩培養後、培地を変え、細胞をpH感受性蛍光色素のcSNARF(Molecular Probes、オレゴン州、Eugene)とともに添加して15分間おき、続いて新しい培地で20分間回復させる。次いで、細胞を顕微鏡の台にマウントし、37℃、5%COで発光スペクトルの収集を1時間行い、記載の通りそれぞれ7〜15細胞を含む領域からpHiを計算することが出来る(Wahl ML,Grant DS."Effects of microenvironmental extracellular pH and extracellular matrix proteins on angiostatin’s activity and on intracellular pH",Gen Pharmacol 2002;35:277−85)。スペクトル収集の開始時に、培地をディッシュから取り除き、細胞を、アンジオスタチン、抗βサブユニット抗体、ウサギIgG、カリポリド、ナトリウム−プロトン交換阻害剤を含む又は含まない、1mLの新しい培地によって試すことが出来る。培地のpHを、上述のように、固定した%COにおいて、重炭酸塩濃度によって調節することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
条件的活性型生物学的タンパク質を調製する方法であって、
i.野生型生物学的タンパク質を選択する工程と、
ii.変異DNAをつくるために、1つまたはそれ以上の発達的技術を用いて前記野生型生物学的タンパク質をコードするDNAを発達させる工程と、
iii.変異タンパク質を得るために、前記変異DNAを発現する工程と、
iv.前記変異タンパク質及び前記野生型タンパク質を正常生理条件下及び異常条件下で分析する工程と、
v.(a)前記正常条件下での前記分析において、前記野生型タンパク質と比較して活性が減少していること、及び(b)前記異常条件下での前記分析において、前記野生型タンパク質と比較して活性が増加していること、の両方を示すこれらの変異タンパク質から前記条件的活性型生物学的タンパク質を選択する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記野生型生物学的タンパク質は酵素である、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記野生型生物学的タンパク質は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レニン及びヒアルロニダーゼからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記野生型生物学的タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、サブスタンスP、ニューロペプチドY、血管作用性小腸ペプチド、バソプレッシン及びアンギオスタチンからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記正常生理条件は、正常生理温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の1つまたはそれ以上から選択されるものである、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記正常生理条件は温度であり、前記条件的活性型生物学的タンパク質は前記正常生理温度において不活性であり、且つ前記正常生理温度よりも低い異常温度において活性である、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法によって調製された条件的活性型生物学的タンパク質であって、前記タンパク質は、前記正常生理条件において可逆的または不可逆的に不活性である、条件的活性型生物学的タンパク質。
【請求項8】
請求項7記載の条件的活性型生物学的タンパク質において、前記タンパク質は、前記野生型正常生理条件において可逆的に不活性である、条件的活性型生物学的タンパク質。
【請求項9】
請求項7記載の条件的活性型生物学的タンパク質において、前記野生型生物学的タンパク質は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レニン及びヒアルロニダーゼからなる群から選択されるものである、条件的活性型生物学的タンパク質。
【請求項10】
請求項7記載の条件的活性型生物学的タンパク質において、前記野生型生物学的タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、サブスタンスP、ニューロペプチドY、血管作用性小腸ペプチド、バソプレッシン及びアンギオスタチンからなる群から選択されるものである、条件的活性型生物学的タンパク質。
【請求項11】
請求項7記載の条件的活性型生物学的タンパク質の有効量と薬学的に許容な担体とを有する医薬組成物。
【請求項12】
請求項11記載の医薬組成物において、前記条件的活性型生物学的タンパク質は、組織プラスミノーゲン活性化因子変異型、ストレプトキナーゼ変異型、ウロキナーゼ変異型、レニン変異型及びヒアルロニダーゼ変異型からなる群から選択されるものである、医薬組成物。
【請求項13】
請求項12記載の医薬組成物において、前記条件的活性型生物学的タンパク質は、組織プラスミノーゲン活性化因子変異型、ストレプトキナーゼ変異型及びウロキナーゼ変異型からなる群から選択されるものである、医薬組成物。
【請求項14】
請求項11記載の医薬組成物において、前記条件的活性型生物学的タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド変異型、サブスタンスP変異型、ニューロペプチドY変異型、血管作用性小腸ペプチド変異型、バソプレッシン変異型及びアンギオスタチン変異型からなる群から選択されるものである、医薬組成物。
【請求項15】
請求項14記載の医薬組成物において、前記条件的活性型生物学的タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド変異型、バソプレッシン変異型及びアンギオスタチン変異型からなる群から選択されるものである、医薬組成物。
【請求項16】
条件的活性型生物学的反応修飾物質を調製する方法であって、
a.炎症反応メディエーターを選択する工程と、
b.前記メディエーターに対する野生型抗体を同定する工程と、
c.前記野生型抗体を発達させる工程と、
d.第一の条件において前記野生型抗体と比較して前記メディエーターとの減少した結合性を示し、且つ上昇変異体を同定するための第二の条件において、前記メディエーターとの増大した結合親和性を示す変異体を特異的にスクリーニングする工程と、
e.組換え上昇変異体をつくるために、前記上昇変異体の重鎖及び軽鎖を組換えさせる工程と、
f.前記第一の条件において前記野生型抗体と比較して前記メディエーターとの減少した結合性を示し、且つ前記条件的活性型生物学的反応修飾物質を同定するための第二の条件において前記メディエーターとの増大した結合親和性を示す変異体に関して、前記組換え上昇変異体をスクリーニングする工程と、
を有する、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記炎症反応メディエーターは、IL−6、IL−6受容体、TNF−アルファ、IL−23及びIL−12から選択されるものである、方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法において、前記第一及び前記第二の条件は、それぞれ、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化及び電解質濃度の条件から選択されるものである、方法。

【公表番号】特表2012−519499(P2012−519499A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554111(P2011−554111)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026611
【国際公開番号】WO2010/104821
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511217348)バイオアトラ、エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】