説明

MR流体ダンパ

【課題】 MR流体ダンパにおいて、減衰力の位置依存性を簡易に確保すること。
【解決手段】 ダンパチューブ11にピストンロッド12を摺動自在に挿入し、ダンパチューブ11の内部にMR流体を収容するMR流体収容室13を形成し、ダンパチューブ11のMR流体収容室13に臨む部分に磁場発生装置40を設け、磁場発生装置40がピストンロッド12との間でMR流体用流路14を形成するMR流体ダンパ10であって、ピストンロッド12の磁場発生装置40に相対する外周に、該ピストンロッド12の軸方向に沿う溝60を設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMR流体ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の如く、MR流体ダンパとして、ダンパチューブのMR流体収容室にピストンロッドを挿入し、ピストンロッドに設けたピストンによりMR流体収容室を上下の2室に区画するとともに、該ピストンに磁場発生装置を設け、磁場発生装置がダンパチューブの内周との間でMR流体用流路を形成するものがある。磁場発生装置がMR流体用流路を通過するMR流体に磁場を与え減衰力を発生させる。
【特許文献1】特表2000-514161
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のMR流体ダンパでは、ダンパチューブに対するピストンロッドの収縮ストローク端や伸張ストローク端で、急激に減衰力を増加させてその伸縮動作を抑制したい場合には、磁場発生装置のコイルへの入力電流量を伸縮ストロークに応じて増減させる必要がある。このため、複雑な通電制御が必要になるし、使用電流量も大きくなる。
【0004】
本発明の課題は、MR流体ダンパにおいて、減衰力の位置依存性を簡易に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ダンパチューブにピストンロッドを摺動自在に挿入し、ダンパチューブの内部にMR流体を収容するMR流体収容室を形成し、ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、磁場発生装置がピストンロッドとの間でMR流体用流路を形成するMR流体ダンパであって、ピストンロッドの磁場発生装置に相対する外周に、該ピストンロッドの軸方向に沿う溝を設けたものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記溝が、ピストンロッドの摺動により磁場発生装置に相対する外周のうちの軸方向の一部の外周に設けられるようにしたものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記溝の溝幅及び/又は溝深さが、ピストンロッドの軸方向に沿って変化するようにしたものである。
【0008】
請求項4の発明は、ダンパチューブにピストンロッドを摺動自在に挿入し、ダンパチューブの内部にMR流体を収容するMR流体収容室を形成し、ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、磁場発生装置がピストンロッドとの間でMR流体用流路を形成するMR流体ダンパであって、ピストンロッドの磁場発生装置に相対する部分の外径を、該ピストンロッドの軸方向で変化させたものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4の発明において更に、前記外径の変化が、該ピストンロッドの軸方向で複数段をなすようにしたものである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において更に、前記MR流体ダンパが、ダンパチューブにピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの軸方向2位置にダンパチューブ内を摺動する第1と第2のピストンを設け、ダンパチューブの内部にピストンロッドの第1と第2のピストンにより挟まれてMR流体を収容するMR流体収容室を区画し、ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、磁場発生装置がMR流体収容室を上下の2室に区画するとともに、ピストンロッドとの間で上下の2室を連通するMR流体用流路を形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)
(a)MR流体ダンパにおいて、ピストンロッドの磁場発生装置に相対する外周に、ピストンロッドの軸方向に沿う溝を設けた。溝が磁場の弱い部分を作り、溝の存在によりピストンロッドの低速時の減衰力を下げることができ、二乗孔特性(オリフィス特性)を発生できる。
【0012】
(請求項2)
(b)溝のない部分では強い磁場を、溝がある部分では弱い磁場を発生させ、減衰力の位置依存性を得ることができる。
【0013】
(請求項3)
(c)溝の溝幅及び/又は溝深さが、ピストンロッドの軸方向に沿って変化することにより、減衰力の位置依存性を多様化できる。
【0014】
(請求項4)
(d)MR流体ダンパにおいて、ピストンロッドの磁場発生装置に相対する部分の外径を、ピストンロッドの軸方向で変化させた。大外径部では強い磁場を、小外径部では弱い磁場を発生させ、減衰力の位置依存性を得ることができる。
【0015】
(請求項5)
(e)外径の変化が、ピストンロッドの軸方向で複数段をなすものとすることにより、減衰力の位置依存性を多様化できる。
【0016】
(請求項6)
(f)MR流体ダンパにおいて、ピストンロッドの軸方向2位置に設けた第1と第2のピストンをダンパチューブの内部で摺動し、ダンパチューブの内部で第1と第2のピストンにより挟まれる部分をMR流体収容室とし、ダンパチューブに設けた磁場発生装置によりMR流体収容室を上下の2室に区画するとともに、磁場発生装置とピストンロッドとの間に上下の2室を連通するMR流体用流路を形成し、ピストンロッドの摺動によりMR流体用流路を通過する流体に磁場を与えて減衰力を発生させる。ダンパチューブに対するピストンロッドの進入/退出分のロッド体積補償室を設ける必要がなく、MR流体はダンパチューブのMR流体収容室にだけ封入すれば足り、MR流体の使用量を低減できる。
【0017】
(g)磁場発生装置をダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に設けるものであり、磁場発生装置の設置構造は単純かつ小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1はMR流体ダンパを示す断面図、図2は図1の要部を示す断面図、図3は磁場発生装置を示す断面図、図4はピストンを示す断面図、図5は図3のV−V線に沿う断面図、図6はMR流体ダンパの変形例を示す断面図、図7は磁場発生装置を示す断面図である。
【実施例】
【0019】
MR流体ダンパ10は、図1、図2に示す如く、ダンパチューブ11にピストンロッド12を挿入し、ピストンロッド12の軸方向2位置にダンパチューブ11内を摺動する第1と第2のピストン20、30を設け、ダンパチューブ11の内部にピストンロッド12の第1と第2のピストン20、30により挟まれてMR流体(磁気レオロジカル流体)を収容するMR流体収容室13を区画する。
【0020】
尚、MR流体は、一定の粘度をもつ易流動性である。磁場にさらされると、液体から瞬間的に固体に近い状態になり、磁場がなくなると、速やかに液体状態に戻る。MR流体の粘度変化は、磁場の大きさ(磁力)に比例する。MR流体は、球形の軟常磁性粒子、例えばマグネタイト、カルボニル鉄粉末、鉄合金、窒化鉄、炭化鉄、二酸化クローム、低炭素鋼、ケイ素鋼、ニッケル、コバルト等、できれば約1〜6ミロクンの公称直径を有し、シリコーン油、炭化水素油、パラフィン油、鉱油、塩化及びフッ化流体、ケロシン、グリコール、又は水等の低い粘度の液体に配合されて懸濁される。
【0021】
ピストンロッド12は、ダンパチューブ11の内部に位置するロッド本体12Aと、ロッド本体12Aの一端部に同軸的に螺合するロッド突出部12Bとからなり、ロッド突出部12Bをダンパチューブ11の一端側から外方に突出する。
【0022】
第1ピストン20は、ピストンロッド12におけるロッド本体12Aの一端側で、ロッド本体12Aの端面とロッド突出部12Bの段差部との間にシール押え21とともに挟まれて液密に固定される。第1ピストン20は、ダンパチューブ11に摺接するガイドブッシュ22と流体シール23を外周に備え、流体シール23をシール押え21により保持する。
【0023】
第2ピストン30は、ピストンロッド12におけるロッド本体12Aの他端側で、ロッド本体12Aの段差部とロッド本体12Aに螺着されるナット31との間にシール押え32とともに挟まれて液密に固定される。第2ピストン30は、ダンパチューブ11に摺接するガイドブッシュ33と流体シール34を外周に備え、流体シール34をシール押え32により保持する。
【0024】
第2ピストン30は、図4に示す如く、MR流体収容室13と連通するMR流体用体積膨張補償室35を備える。第2ピストン30は、ガイドブッシュ33を外周に備える筒状部30Aの内周にフリーピストン36(Oリング36A)を液密に摺動自在に備え、フリーピストン36のロッド本体12A寄りスペースを体積膨張補償室35とする。体積膨張補償室35は、筒状部30Aの基端側に穿設した孔37、流体シール34がピストン30、シール押え32との間に形成する環状間隙を介してMR流体収容室13と連通する。尚、筒状部30Aの先端部には、フリーピストン36の抜け止めストッパ30Bが設けられる。
【0025】
MR流体ダンパ10は、ダンパチューブ11のMR流体収容室13に臨む部分、換言すればピストンロッド12(ロッド本体12A)の外周を囲む部分に磁場発生装置40を設ける。磁場発生装置40は、MR流体収容室13を上下の2室13A、13Bに区画するとともに、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の外周との間で上下の2室13A、13Bを連通する、環状間隙からなるMR流体用流路14を形成する。
【0026】
ダンパチューブ11は上下の分割チューブ11A、11Bからなり、上下の分割チューブ11A、11Bの間にアルミ等からなる非磁性体のシール材15A、15Bにシールを介して磁場発生装置40を液密に挟持する。
【0027】
磁場発生装置40は、図3に示す如く、環状の鉄心41にコイル42を設けてなり、鉄心41がピストンロッド12(ロッド本体12A)の外周との間でMR流体用流路14を形成する。鉄心41は軸方向に沿う両端部を小径部41A、41Bとし、軸方向に沿う中央部に大外径部41Cを設け、鉄心41の内周であって小径部41A、41Bに挟まれる軸方向中間部に大溝41Dを設け、この大溝41Dにコイル42を樹脂43によってモールドする。ダンパチューブ11の上下の分割チューブ11A、11Bは、鉄心41の大外径部41Cを軸方向の両側から挟み込み、環状シール材15A、15Bの大径部16を鉄心41の大外径部41Cの外周に密着し、小径部17を鉄心41の小径部41A、41Bの外周と分割チューブ11A、11Bの内周との間で液密に挟着する。磁場発生装置40は、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の外周に臨んでMR流体用流路14を形成する、鉄心41の小径部41A、41Bの内周と樹脂43の内周を面一にする。
【0028】
MR流体ダンパ10は、ダンパチューブ11の周囲にアウタチューブ50を備え、ダブルチューブをなす。アウタチューブ50は有底筒状体であり、アウタチューブ50に挿入されたダンパチューブ11の下端部はボトムピース51を介してアウタチューブ50の底部に着座する。アウタチューブ50の上端開口部には、ダンパチューブ11の上端部に設けられるロッドガイド52、ダストシール53(芯金53A)が挿着され、アウタチューブ50の上端かしめ部50Aと底部との間にダンパチューブ11(分割チューブ11A、11B)、磁場発生装置40、ボトムピース51、ロッドガイド52、ダストシール53が挟持される。アウタチューブ50の上端開口部の外周にはキャップ54が被着され、キャップ54の外面にはバンプストッパ55が取着される。尚、ダンパチューブ11の内部にあるピストンロッド12(ロッド突出部12B)の外周であって、第1ピストン20の直上部にはリバウンドラバー56が挿着される。
【0029】
MR流体ダンパ10は、ダンパチューブ11の内部で、第1ピストン20とロッドガイド52の間を第1の気体室57A、第2ピストン30とボトムピース51の間を第2気体室57Bとし、ダンパチューブ11とアウタチューブ50の環状間隙を外周気体室57Cとする。第1の気体室57Aは、ロッドガイド52に設けた溝52Aにより外周気体室57Cと連通し、第2の気体室57Bは、ボトムピース51に設けた孔51A、溝51Bにより外周気体室57Cと連通する。
【0030】
MR流体ダンパ10は、アウタチューブ50の下部に車軸側取付部を備え、ピストンロッド12の突出部に車体側取付部を備える。そして、アウタチューブ50の外周に取着される下ばね受とピストンロッド12に取着される上ばね受との間に懸架スプリングを介装する。MR流体ダンパ10は、懸架スプリングにより路面からの衝撃を吸収し、ピストンロッド12の上下摺動に伴なってMR流体用流路14を通過するMR流体の流れ抵抗に起因して生ずる減衰力により懸架スプリングの伸縮振動を制振させる。
【0031】
即ち、MR流体ダンパ10にあっては、磁場発生装置40のコイル42への電流の印加によりコイル42に磁場(磁界)を生ずると、この磁場はコイル42の一端から鉄心41の小径部41Aを通り、MR流体用流路14のギャップを飛び越えてピストンロッド12(ロッド本体12A)の一端側に入り、ピストンロッド12を通って、ピストンロッド12の他端側からMR流体用流路14のギャップを飛び越えて鉄心41の小径部41Bに入り、コイル42の他端に戻る閉磁気回路を形成する。磁場発生装置40がMR流体用流路14に及ぼす磁場の大きさはコイル42への印加電流の変更により調整される。
【0032】
他方、ダンパ10の伸張行程では、ピストンロッド12のピストン20、30がダンパチューブ11の内周を上方へ向けて摺動するに際し、下室13BのMR流体がMR流体用流路14を通って上室13Aに流れる。また、ダンパ10の圧縮行程では、ピストンロッド12のピストン20、30がダンパチューブ11の内周を下方へ向けて摺動するに際し、上室13AのMR流体がMR流体用流路14を通って下室13Bに流れる。
【0033】
そして、ダンパ10にあっては、伸張行程や圧縮行程で、MR流体が上述の如くに流路14を通るときに、磁場発生装置40が流路14に及ぼす磁場の大きさを調整することにより、流路14を通過するMR流体の粘度を変化させ、結果として流路14におけるMR流体の流れ抵抗に起因して生ずる減衰力を調整可能にする。
【0034】
MR流体ダンパ10にあっては、磁場発生装置40を上述の如くに構成したから、以下の作用効果を奏する。
【0035】
(a)MR流体ダンパ10において、ピストンロッド12の軸方向2位置に設けた第1と第2のピストン20、30をダンパチューブ11の内部で摺動し、ダンパチューブ11の内部で第1と第2のピストン20、30により挟まれる部分をMR流体収容室13とし、ダンパチューブ11に設けた磁場発生装置40によりMR流体収容室13を上下の2室13A、13Bに区画するとともに、磁場発生装置40とピストンロッド12との間に上下の2室13A、13Bを連通するMR流体用流路14を形成し、ピストンロッド12の摺動によりMR流体用流路14を通過する流体に磁場を与えて減衰力を発生させる。ダンパチューブ11に対するピストンロッド12の進入/退出分のロッド体積補償室を設ける必要がなく、MR流体はダンパチューブ11のMR流体収容室13にだけ封入すれば足り、MR流体の使用量を低減できる。
【0036】
(b)磁場発生装置40をダンパチューブ11のMR流体収容室13に臨む部分に設けるものであり、磁場発生装置40の設置構造は単純かつ小型化できる。
【0037】
(c)磁場発生装置40は、ダンパチューブ11の上下の分割チューブ11A、11Bの間にシール材15A、15Bを介して挟持することにて設置でき、ダンパチューブ11のMR流体収容室13に臨む部分に簡易に設置できる。
【0038】
(d)磁場発生装置40の鉄心41が、ピストンロッド12との間でMR流体用流路14を形成でき、MR流体用流路14を簡易に形成できる。
【0039】
(e)MR流体用体積膨張補償室35は小容量で足りるし、ピストン30に設けることで管路系も短縮でき、MR流体の使用量を低減できる。MR流体用体積膨張補償室35をピストン30に一体化して組付性も向上できる。
【0040】
(f)MR流体ダンパ10がダンパチューブ11の周囲にアウタチューブ50を備えたダブルチューブ式にて構成されることにより、ダンパ10に作用する横力等に対する耐力、強度を向上できる。MR流体ダンパ10に併設される懸架スプリングのためのスプリングシートをアウタチューブに容易に固定(溶接等)できる。
【0041】
MR流体ダンパ10は、ダンパチューブ11に対するピストンロッド12の伸縮ストローク(位置)に応じて磁場発生装置40のコイル42への入力電流量を増減制御し、磁場発生装置40がMR流体用流路14に及ぼす磁場の大きさを変化させることにより、MR流体の流れ抵抗に起因して生ずる減衰力に位置(伸縮ストローク)依存性を付与することができる。
【0042】
ところが、MR流体ダンパ10にあっては、磁場発生装置40のコイル42への入力電流量の増減制御によらずに、減衰力の位置依存性を確保可能にするため、以下の構成を具備する。
【0043】
即ち、MR流体ダンパ10は、図3、図5に示す如く、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の磁場発生装置40に相対する外周に、ピストンロッド12の軸方向に沿う溝60を設けた。
【0044】
溝60は、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の上下摺動により磁場発生装置40に相対する外周のうちの軸方向の一部、本実施例ではロッド本体12Aの両端部を除く中間部の外周に設けた。
【0045】
溝60の溝深さは、ピストンロッド12の軸方向に沿って変化する。本実施例では、ピストンロッド12の軸方向に沿う溝60の両端部を除く中央部の溝深さを一定とし、両端部の溝深さを中央部の側から徐々に浅くするようにテーパ状(段階状でも可)に変化させた(図3)。
【0046】
MR流体ダンパ10にあっては、ピストンロッド12(ロッド本体12A)に溝60を設けたから、以下の作用効果を奏する。
【0047】
(a)MR流体ダンパ10において、ピストンロッド12の磁場発生装置40に相対する外周に、ピストンロッド12の軸方向に沿う溝60を設けた。溝60が磁場の弱い部分を作り、溝60の存在によりピストンロッド12の低速時の減衰力を下げることができ、二乗孔特性(オリフィス特性)を発生できる。ピストンロッド12の微低速時に減衰力を発生させる微低速用溝60を設けることもできる。
【0048】
(b)ピストンロッド12の軸方向の一部にだけ溝60を設けたから、溝60のない部分では強い磁場を、溝60がある部分では弱い磁場を発生させ、減衰力の位置依存性を得ることができる。ピストンロッド12の両端部に溝60を設けない場合、ピストンロッド12の伸縮ストローク端で高い減衰力を発生する。
【0049】
但し、ピストンロッド12の摺動により磁場発生装置40に相対する外周のうちの軸方向の両端部を含む全部の外周に溝60を設けても良い。
【0050】
(c)溝60の溝深さをピストンロッド12の軸方向に沿って変化することにより、減衰力の位置依存性を多様化できる。
【0051】
溝60の溝幅を、ピストンロッド12の軸方向に沿ってテーパ状又は段階状に変化することによっても、減衰力の位置依存性を多様化できる。
【0052】
図6、図7のMR流体ダンパ10は、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の磁場発生装置40に相対する部分の外径を、ピストンロッド12の軸方向で変化させたものである。即ち、ピストンロッド12の磁場発生装置40に相対する部分の外径のうち、ロッド本体12Aの両端部を大外径部70とし、両端部を除く中間部の外径を小外径部80とした。
【0053】
小外径部80の外径は、ピストンロッド12の軸方向に沿って変化する。本実施例では、ピストンロッド12の軸方向に沿う小外径部80の両端部を除く中央部の直径を一定の小径にし、両端部の直径を中央部の側から徐々に大外径部70に近づくように大径化するテーパ状(段階状でも可)に変化させた(図7)。
【0054】
MR流体ダンパ10にあっては、ピストンロッド12(ロッド本体12A)に大外径部70と小外径部80を設けたから、以下の作用効果を奏する。
【0055】
(a)MR流体ダンパ10において、ピストンロッド12の磁場発生装置40に相対する部分の外径を、ピストンロッド12の軸方向で変化させた。大外径部70では強い磁場を、小外径部80では弱い磁場を発生させ、減衰力の位置依存性を得ることができる。
【0056】
(b)ピストンロッド12(ロッド本体12A)の磁場発生装置40に相対する部分の外径を、ピストンロッド12の軸方向で3段階以上に多段変化させても良い。例えば、ピストンロッド12の軸方向の中央部の外径を小外径部として柔らかい減衰力を発生させ、ピストンロッド12の小外径部の両側傍部の外径を中外径部、ピストンロッド12の中外径部の両側傍部の外径を大外径部として伸縮ストローク端側でより高い減衰力を発生させることができる。
【0057】
尚、MR流体ダンパ10にあっては、ピストンロッド12(ロッド本体12A)の磁場発生装置40に相対する部分の外周に、ピストンロッド12の軸方向に沿う溝を設け、かつ当該部分の外径をピストンロッド12の軸方向で変化させても良い。ピストンロッド12の軸方向の中央部のみに微低速用溝を設け、伸縮ストローク端側に向けて溝の二乗孔特性をなくすこともできる。さらに、溝の長さを変えることもできるし、複数本の溝を設けることも可能であり、複数本の溝を設ける場合には溝長さをそれぞれ変更し、ストローク位置によって減衰特性を変えることが可能である。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1はMR流体ダンパを示す断面図である。
【図2】図2は図1の要部を示す断面図である。
【図3】図3は磁場発生装置を示す断面図である。
【図4】図4はピストンを示す断面図である。
【図5】図5は図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図6はMR流体ダンパの変形例を示す断面図である。
【図7】図7は磁場発生装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 MR流体ダンパ
11 ダンパチューブ
11A、11B 分割チューブ
12 ピストンロッド
13 MR流体収容室
13A、13B 上下の2室
14 MR流体用流路
15A、15B シール材
20 第1のピストン
30 第2のピストン
35 体積膨張補償室
40 磁場発生装置
41 鉄心
42 コイル
50 アウタチューブ
60 溝
70 大外径部
80 小外径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパチューブにピストンロッドを摺動自在に挿入し、
ダンパチューブの内部にMR流体を収容するMR流体収容室を形成し、
ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、
磁場発生装置がピストンロッドとの間でMR流体用流路を形成するMR流体ダンパであって、
ピストンロッドの磁場発生装置に相対する外周に、該ピストンロッドの軸方向に沿う溝を設けたMR流体ダンパ。
【請求項2】
前記溝が、ピストンロッドの摺動により磁場発生装置に相対する外周のうちの軸方向の一部の外周に設けられる請求項1に記載のMR流体ダンパ。
【請求項3】
前記溝の溝幅及び/又は溝深さが、ピストンロッドの軸方向に沿って変化する請求項1又は2に記載のMR流体ダンパ。
【請求項4】
ダンパチューブにピストンロッドを摺動自在に挿入し、
ダンパチューブの内部にMR流体を収容するMR流体収容室を形成し、
ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、
磁場発生装置がピストンロッドとの間でMR流体用流路を形成するMR流体ダンパであって、
ピストンロッドの磁場発生装置に相対する部分の外径を、該ピストンロッドの軸方向で変化させたMR流体ダンパ。
【請求項5】
前記外径の変化が、該ピストンロッドの軸方向で複数段をなす請求項4に記載のMR流体ダンパ。
【請求項6】
前記MR流体ダンパが、ダンパチューブにピストンロッドを挿入し、
ピストンロッドの軸方向2位置にダンパチューブ内を摺動する第1と第2のピストンを設け、
ダンパチューブの内部にピストンロッドの第1と第2のピストンにより挟まれてMR流体を収容するMR流体収容室を区画し、
ダンパチューブのMR流体収容室に臨む部分に磁場発生装置を設け、
磁場発生装置がMR流体収容室を上下の2室に区画するとともに、ピストンロッドとの間で上下の2室を連通するMR流体用流路を形成する請求項1〜5のいずれかに記載のMR流体ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−57767(P2006−57767A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241432(P2004−241432)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】