説明

MRSA殺菌・除菌剤

【課題】殺菌や除菌を行なうべき対象が多種、多様に及んでも一つの殺菌・除菌剤にて消毒が行なえるようにし、現状における殺菌、除菌に用いる薬品の管理や使用法の習得を簡単にして、手間の軽減を図る。
【解決手段】MRSA殺菌・除菌剤を、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した生成物より得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はMRSA殺菌・除菌剤に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、病院においてはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)保菌者や感染者により院内にMRSAが持ち込まれる可能性があるとともに、病院内においてMRSA感染患者や感染患者が使用していたベッドなどの病院内の諸設備からの感染により新たなMRSA感染者が出現するなどの可能性があり、MRSAに対する予防策が講じられているが、病院でのMRSA感染症の多発が大きな問題となっている。
即ち、保菌者や感染者によって院内へ持ち込まれたMRSAや抗生物質の投与によって院内でMRSAに変質したものが、患者から直接或いは間接的に他の患者、医療従事者に接触感染して発症しており、特に院内感染では医療従事者の手、指、使用品、医療用具などを介しての伝播が多いと考えられている。そして、このMRSAは抗生物質の使用に伴って耐性が高められる傾向にあり、抗生物質の使用を発症患者へのMRSA感染治療に限定し、感染予防や感染症を発症していない患者でのMRSA除菌などを目的とした使用を避けなければならず、そのため、菌の伝播を極力抑えることなどを目的として、医療従事者の手洗い消毒や患者の消毒、院内で使用する各種医療用具・施設設備などに対しての、殺菌消毒、除菌に多種の薬品を用いるようにしている。
しかしながら、消毒や除菌を行なう対象の種別ごとに、その消毒や除菌に用いる薬品が異なっているのが現状であり、これらの薬品の管理などが極めて煩雑になり、本来の医療業務に支障が発生するという問題がある。
【0003】
上述した問題に対して本発明者は、不要物として処分されてきたホタテなどの貝殻を焼成し粉砕して得られた粉体が、天然物本来の除菌効果を有することと、アルカリ性を示す点に着目したものである。そこで本発明は上記事情に鑑み、殺菌・除菌を行なうべき対象が多種に及んでも一つの殺菌・除菌剤にて確実、かつ効果的に殺菌消毒や除菌が行なえるようにすることを課題とし、現状における殺菌消毒、除菌に用いる薬品の管理や使用法の習得を簡単にして、手間の軽減を図ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕してなる生成物であることを特徴とするMRSA殺菌・除菌剤を提供して、上記課題を解消するものである。
そして、この発明において、上記生成物は、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻粉末であって多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末との混合物とすることができるものである。
さらに上記生成物を水溶させた水溶物であることを特徴とするMRSA殺菌・除菌剤を提供して、上記課題を解消するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のMRSA殺菌・除菌剤を得るに当たっては、まず、少なくとも貝殻主要部分を炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体としているホタテなどの貝殻を用意する。貝殻としては各種のものが使用できるが、二枚貝、特にホタテにあってはその貝殻の大部分をこの結晶構造体としている点に特徴がある。
例えば、ホタテはその生態において、貝殻を開閉して海水を勢いよく外部に放出することで「海中を泳ぐ」と表現されるように機敏に移動を行い、捕捉者(ヒトデなど)から逃げる動作が特長的であり、この動作が行なえるように大きな貝柱を有するとともに、貝殻自体が、比較的薄く軽量で、かつ、強度を有するという条件を備えている。その貝殻では、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が葉状構造を呈して貝内面側が形成され、貝内層(貝殻厚さ方向での芯となる層)では、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が板状構造を呈していて、この貝内面側と貝内層との構造が貝殻の主要部(表層部や蝶番部を除いた部分)を形作っているため、薄く軽量でありながら強度のあるものとなっている。
そして、前述したようホタテの貝殻の主要部において、内面側は、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が葉状構造となる(針状結晶が剣山状に密に詰まって敷き並べられている状態)とともに、貝内層は、炭酸カルシウムの方解石型構造の結晶構造体が板状構造としている(ベニヤ板のように、針状結晶が同一方向に並んだ層が幾重にも重なり、針状結晶の向きが層ごとに異なっている状態)としているため、後述するようにこの二枚貝であるホタテの貝殻を粉砕して得られた粒体は方解石型構造が残って多孔質性を備えたものとなる。これに比べて他形態の貝殻では、炭酸カルシウムの結晶が面状に広がって重なった構造となっており、これによりパール状光沢を呈するものとなっているが、粒体とした場合には多孔質性を呈しないものとなっている。
【0006】
MRSA殺菌・除菌剤を得るに当たって上記ホタテの貝殻を原材料とした。ホタテの貝柱を取り除いた後において不要物として処理されてきたものを利用でき、廃棄物の有用な利用が行なえる。まず、不用となった貝殻を集めて天日乾燥を行なって乾かし硬化させる。つぎに天日乾燥によって硬化した貝殻を粒径約200μmとなるまでに粉砕する。粉砕方法自体は特に限定するものではなく、既存の粉砕装置を用いればよい。このようにして炭酸カルシウム粉末が得られるものものであり、粒体は多孔性粒体となっている。
つぎに上述の多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末の一部分を用いてこれをロータリーキルンに入れて約1050℃の温度で数時間程度の時間で加熱して酸化カルシウム粉末を得るようにする。そして、このようにして得られた酸化カルシウム粉末と上記炭酸カルシウム粉末との混合物である生成物を得て、この生成物がMRSA殺菌・除菌剤となる。また、前記生成物を水に溶いた水溶物としてもMRSA殺菌・除菌剤が得られる。
【0007】
上記MRSA殺菌・除菌剤において、炭酸カルシウム粉末分は上述したように天然物であるホタテの貝殻粉末であり、天然物一般が有する抗菌性がある。なお、ここで天然物とは化学合成生産物の対極としていうものであり、養殖されたホタテの貝殻も天然物としている。また、酸化カルシウム粉末分はアルカリ性であり、高い抗菌性を示すものである。よって、このMRSA殺菌・除菌剤は、天然物が有する抗菌性とアルカリ性による抗菌性を示して、菌類の増殖を抑える性質のものとなり、粉末形態のMRSA殺菌・除菌剤を病院内での各種用具や病室内装材などに付着、埋め込みなどすれば殺菌、除菌が行われるようになり、また、水溶物形態のMRSA殺菌・除菌剤への漬け込みを行なった部分、MRSA殺菌・除菌剤を塗布したり噴霧して施した個所でも殺菌、除菌が行なわれるようになる。このようにMRSA殺菌・除菌剤は施す対象物は特に限定されない。
【0008】
また、上記実施の例では、生成物を炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻粉末で多孔質性粒体の炭酸カルシウム粉末とこの炭酸カルシウム粉末を焼成した酸化カルシウム粉末との混合物を生成物としてMRSA殺菌・除菌剤を得て、また前記生成物の水溶物をMRSA殺菌・除菌剤をとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、生成物を前記炭酸カルシウム粉末のみとしたり、或いは前記酸化カルシウム粉末のみとしてもよい。さらに生成物の原材料である貝殻もホタテに限定されているものではなく、天然物の貝殻であればよい。
【0009】
MRSA抗菌試験を行なった。表1に示すこの試験では溶媒液でのMRSAの培養時間(分)と生菌率(%)とを測定したものであり、MRSAの溶媒液は、生理食塩水(培養液1)、生理食塩水に本発明のMRSA除菌剤を添加したもの(培養液2)、生理食塩水に試薬NaOHを添加したもの(培養液3)である。MRSA除菌剤と試薬(NaOH)との両希釈度は10-3であり、両者のpHは12.7であった。
【0010】
【表1】

【0011】
表1の試験結果からMRSA殺菌・除菌剤が良好な殺菌、除菌作用を有することが確認できた。よって、このMRSA殺菌・除菌剤を患者の消毒、手術室における施設の消毒や手術担当の作業者の手の消毒などに効果がある。また、病院内外の感染地域の消毒処理や、医療廃棄物の消毒処理にも使用できる。さらに、病室などにおけるベッド用シートや布団カバーなどの寝具、白衣などの衣類、院内履物などに対する除菌、病室内什器類に対する除菌にも効果がある。
さらに、病院や学校での厨房施設、公共および一般料理店の厨房施設、食品生産工場、食品加工工場でのMRSAの除菌にも効果がある。
【0012】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、MRSA殺菌・除菌剤は良好な殺菌、除菌作用を有しており、各種の殺菌、除菌に用いることができる。よって、殺菌、除菌を施す対象によって種々の薬品を用いることなく、この一つのMRSA殺菌・除菌剤に対処できるため、消毒作業が効率的に行なえる。また、化学合成物質を含まずに天然素材からなるものであってこのMRSA殺菌・除菌剤の取り扱い作業者などの健康への悪影響を生じさせないという利点がある。
さらに、貝殻を原材料としているため、今迄多く不要物として処分されてきた貝殻を有効に利用でき、ゴミの削減化に大きく寄与できる。そして、MRSA殺菌・除菌剤が簡易な構成であるため、その製造は煩雑な工程を経るものとはならずに低コストにて提供できるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕してなる生成物であることを特徴とするMRSA殺菌・除菌剤。
【請求項2】
上記生成物は、炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻粉末であって多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末と該炭酸カルシウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末との混合物である請求項1に記載のMRSA殺菌・除菌剤。
【請求項3】
請求項1または2の生成物を水溶させた水溶物であることを特徴とするMRSA殺菌・除菌剤。

【公開番号】特開2007−131533(P2007−131533A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−306597(P2001−306597)
【出願日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【出願人】(501329116)
【出願人】(501386773)
【出願人】(595131857)株式会社チャフローズコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】