説明

N−デスメチル−N−置換−11−デオキシエリスロマイシン化合物

式I
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は本明細書に定義されたとおりである)
の構造を有する化合物は、胃運動促進薬であり、胃の運動の障害を治療するのに使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエリスロマイシン類似体、それらの製造方法、及び胃運動促進薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(“GI”)運動は腸中の摂取された物質の規則的な移動を調節して栄養、電解質、及び液体の適度の吸収を確実にする。食道、胃、小腸、及び結腸中のGI内容物の適当な通過は腔内圧力及び幾つかの括約筋(これらはそれらの前方移動を調節し、逆流を防止する)の位置制御に依存する。正常なGI運動パターンは疾患及び手術を含む、種々の状況により損なわれるかもしれない。
GI運動障害として、胃不全麻痺及び胃食道逆流病(“GERD”)が挙げられる。胃不全麻痺(その症候として、胃の異常、胸焼け、悪心、及び嘔吐が挙げられる)は、胃内容物の遅延された空にすることである。GERDは食道への胃及び十二指腸の内容物の逆流の変化された臨床上の発現を表す。最も普通の症候は胸焼け及び嚥下障害であり、また食道侵食からの血液損失が生じることが知られている。損なわれたGI運動が関係するGI障害のその他の例として、食欲減退、胆嚢鬱血、術後麻痺性イレウス、硬皮症、偽性腸閉塞、過敏性腸症候群、胃炎、嘔吐、及び慢性便秘(結腸活動力欠如)が挙げられる。
モチリンは腸粘膜中の内分泌細胞により分泌される22アミノ酸ペプチドホルモンである。GI道中のモチリン受容体へのその結合がGI運動を刺激する。モチリン受容体アゴニストとして作用する治療薬(“胃運動促進薬”)の投与がGI障害の治療として提案されていた。
エリスロマイシンはアクチノミセス類サッカロポリスポラ・エリスラ(以前のストレプトマイセス・エリスラエウス)の発酵によりつくられるマクロライド抗生物質のファミリーである。普通使用される抗生物質である、エリスロマイシンAは、そのファミリーの最も多量に存在し、かつ重要な員である。
【0003】
【化1】

エリスロマイシンAの副作用として、悪心、嘔吐、及び腹部不快が挙げられる。これらの作用はエリスロマイシンA(1)そして、更には、その初期の酸触媒分解生成物(5)でモチリン受容体アゴニスト活性に由来すると知られていた(しかしながら、二次分解生成物である、スピロケタール(6)は、不活性である)。




【0004】
【化2】

【0005】
化合物(1)及び(5)のモチリンアゴニスト活性の発見により促されて、研究者らは新規モチリド(胃運動促進活性を有するマクロライドがそのように称される)を発見しようと試みていた。研究の多くが天然産エリスロマイシンの後発酵化学変換又は発酵方法の改良(遺伝子操作を含む)により新規エリスロマイシン類似体を生成することに集中していた。エリスロマイシンスカホールドに基づく新規モチリドに関する例示の開示として、Omuraらの米国特許第5,008,249号(1991年)及び同第5,175,150号(1992年);Haradaらの米国特許第5,470,961号(1995年);Freibergらの米国特許第5,523,401号(1996年);米国特許第5,523,418号(1996年);米国特許第5,538,961号(1996年);及び米国特許第5,554,605号(1996年);Larteyらの米国特許第5,578,579号(1996年);米国特許第5,654,411号(1997年);米国特許第5,712,253号(1998年);及び米国特許第5,834,438号(1998年);Kogaらの米国特許第5,658,888号(1997年);Miuraらの米国特許第5,959,088号(1998年);Premchandranらの米国特許第5,922,849号(1999年);Keyesらの米国特許第6,084,079号(2000年);AshleyらのUS 2002/0025936 A1(2002年);AshleyらのUS 2002/0094962 A1(2002年);CarrerasらのUS 2002/0192709 A1(2002年);Santiらの米国仮特許出願第60/407,345号;ItoらのJP 60-218321(1985年)(Chemical Abstract no. 104:82047に相当する);Santiらの米国特許出願第10/648,946号(2003年8月26日に出願);Omuraら著“マクロライド抗生物質の胃腸運動刺激活性及び構造-活性の関係”, J. Antibiotics 38, 1631-2(1985年);Faghihら著“9-デオキソ-4”-デオキシ-6,9-エポキシエリスロマイシンラクタム“モチラクチド”の調製:強力かつ経口活性な胃運動促進薬”, Biorg. & Med. Chem. Lett., 8, 805-810(1998年);Faghihら著“9-デオキソ-4”-デオキシ-6,9-エポキシエリスロマイシン誘導体の合成:新規かつ酸安定なモチリド”, J. Med. Chem., 41, 3402-3408(1998年);並びにFaghihら著“エリスロマイシンラクタムへの導入:潜在的な胃腸運動促進薬としてのエリスロマイシンAラクタムエノールエーテルの合成”, Synlett 751(1998年7月)が挙げられる。エリスロマイシン誘導体に関する重要なその他の開示として、Freibergらの米国特許第3,681,325号(1972年)及びNapoletanoらのWO 2004/013153 A2(2004年)が挙げられる。この節に引用された書類の開示が参考として本明細書に含まれる。
【0006】
幾つかのパラメーターがモチリドとしてのエリスロマイシン類似体の開発に関係がある。第一に、天然産生物におけるエリスロマイシンスカホールドの進化は胃運動促進効力ではなく、抗菌効力により誘導された。それ故、かなりの余地がモチリン受容体アゴニスト活性に関する構造-活性の関係の最適化について残っている。第二に、モチリドが抗菌活性を有することは実際に望ましくない。GI道は大集団の細菌(抗菌活性を有するモチリドへのそれらの暴露がエリスロマイシン抗生物質に対する耐性のそれら中の発生を誘導し得る)の宿主である。こうして、モチリドは操作により導入された高められた胃運動促進活性を有し、抗菌活性が操作により排除されることが望ましい。第三に、現在まで評価されたモチリドの中で普通に見られる欠点はモチリド受容体を脱感作するそれらの傾向あり、これは、初期投薬後に、モチリドのその後の投薬が一層弱い応答を誘導し、又は応答を誘導しないことを意味する。第四に、安定性及び生物学的利用能が関心事である−胃中のエリスロマイシンAの即座の分解及びその二次分解生成物の活性の欠如を参照のこと。こうして、種々の異なる性能要件をバランスしている、新規モチリドを開発するようにとの絶え間ない要望が存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は胃運動促進薬として有益な新規エリスロマイシン類似体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は式I
【化3】

(式中、
R1、R4、及びR6は独立にH又はMeであり、
R2は置換又は未置換C2-C5アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、かつ
R3及びR5は独立にH又はOHである)
の構造を有する化合物並びにその医薬上許される塩、エステル、及びプロドラッグ形態を提供する。
【0009】
化合物Iは以下に示されるデータにより証明されるように、良好なモチリンアゴニスト活性及び低い抗菌活性の望ましい組み合わせを有することが予期せずにわかった。
本発明の第二局面において、本発明は胃の運動の障害を患っている治療を要する対象に治療有効用量の式Iの化合物を投与することを特徴とする、このような障害を患っている対象の胃の運動の障害の治療方法を提供する。
本発明の第三局面において、化合物Iは胃の運動障害を治療するための薬物の調製に使用される。
本発明の第四局面において、本発明は式(I)の化合物及び賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
以下に示される用語の定義は、状況が明らかにそれ以外を示さない限り、それらがこの明細書及び特許請求の範囲に示されるとおりの用語に適用される。
“アルキル”は鎖中の特定の数の炭素原子、又は炭素原子の数が明記されない場合には、鎖中の5個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素部分を意味する。
“アルケニル”は少なくとも一つの炭素−炭素二重結合及び鎖中の特定の数の炭素原子、又は炭素原子の数が明記されない場合には、鎖中の5個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素部分を意味する。
“アルキニル”は少なくとも一つの炭素−炭素三重結合及び鎖中の特定の数の炭素原子、又は炭素原子の数が明記されない場合には、鎖中の5個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素部分を意味する。
“アルキルアリール”、“アリールアルキル”、“ヘテロシクロアルキル”、“アルキルヘテロアリール”、“アルキル複素環”等は、場合しだいで、ベンジル、フェネチル等中のように、アルキル部分に直接結合された、アリール基、複素環基、又はヘテロアリール基を意味する。
“アリール”は環部分、例えば、フェニル、ナフチル、及びビフェニル部分中に6〜12個の炭素原子を有する単環式又は二環式芳香族炭化水素環系を意味し、これらの夫々は必要により一つ以上の位置で置換されていてもよい。
“シクロアルキル”は、好ましくは1〜3個の環及び環当り3〜7個の炭素を含む、必要により置換されていてもよい、飽和環式炭化水素環系を意味し、これは更に不飽和C3-C7炭素環式環と縮合されてもよい。例示のシクロアルキル環系として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、及びアダマンチルが挙げられる。
【0011】
“ハロゲン”又は“ハロ”はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
“複素環”、“複素環式”、又は“ヘテロシクロ”は必要により置換されていてもよい、完全飽和又は不飽和、芳香族又は非芳香族環系を意味し、例えば、それは4〜7員単環式、7〜11員二環式、又は10〜15員三環式の環系であり、それは少なくとも1個の炭素原子含有環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する。“ヘテロアリール”はその環系がアリールである複素環を意味する。ヘテロ原子を含む複素環基の夫々の環はN、O及びSから選ばれた1個、2個又は3個のヘテロ原子を有してもよく、この場合、N及びSは必要により酸化されてもよく、またNは必要により四級化されてもよい。
例示の単環式複素環系として、ピロリジニル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキサアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジニル、N-オキソ-ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、ジオキサニル、イソチアゾリジニル、チエタニル、チイラニル、トリアジニル、並びにトリアゾリル等が挙げられる。好ましいヘテロシクロ基として、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チエニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル等が挙げられる。
【0012】
“医薬上許されるエステル”はin vivoで(例えば、人体中で)加水分解して親化合物もしくはその塩を生成し、又はそれ自体で親化合物の活性と同様の活性を有するエステルを意味する。安定なエステル基として、医薬上許される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸及びアルカンジ酸(夫々のアルキル部分又はアルケニル部分は6個以下の炭素原子を有することが好ましい)から誘導されたものが挙げられるが、これらに限定されない。例示のエステルとして、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステル、及びエチルコハク酸エステルが挙げられる。
“医薬上許される塩”は医薬製剤に適した化合物の塩を意味する。好適な医薬上許される塩として、例えば、化合物の溶液を医薬上許される酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸等の溶液と混合することにより生成し得る酸付加塩が挙げられる。化合物が一つ以上の酸部分を有する場合、医薬上許される塩は医薬上許される塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、アルキルアミン等の溶液による化合物の溶液の処理により生成されてもよい。
基が置換されていることを特徴とする場合(“置換アルキル”、“置換アルケニル”等のように)、このような基は一つ以上、好ましくは1〜5個の数、更に好ましくは1個もしくは2個の数の独立に選ばれた置換基を有してもよい。置換基及び置換パターンは化学的に安定であり、かつ当業界で知られている技術だけでなく、本明細書に示された方法により合成し得る化合物を提供するように当業者により選択し得ることが理解される。好適な置換基の例として、本明細書に明記されたものに加えて、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ四級アンモニウム、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシルアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールオキシ等が挙げられる。置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、置換アルキル、置換アラルキル等により更に置換されていてもよい。
【0013】
特別な立体異性体が(例えば、構造式中で適切な立体中心で太字又はダッシュを付された結合により)明示されない限り、全ての立体異性体が、純粋な化合物だけでなく、これらの混合物として、本発明の範囲内に含まれる。特に示されない限り、個々の鏡像体、ジアステレオマー、幾何異性体、並びにこれらの組み合わせ及び混合物が本発明により全て含まれる。また、多形の結晶性形態及び溶媒和物が本発明の範囲内に含まれる。
本発明はその範囲内に本発明の化合物のプロドラッグを含む。このようなプロドラッグは一般に必要とされる化合物にin vivoで容易に変換し得る化合物の官能性誘導体である。こうして、本発明の治療の方法において、“投与”という用語は特別に開示された化合物又は特別に開示されないかもしれないが、治療を要する対象への投与後にin vivoで特定化合物に変換する化合物による記載された種々の障害の治療を含むべきである。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための通常の操作が、例えば、Wermuth著“プロドラッグ及び生物前駆体の設計”, Wermuth編集, The Practice of Medicinal Chemistry, 第2編, 561-586頁(Academic Press 2003)に記載されている。
【0014】
化合物及び方法
本発明の好ましい実施態様において、R3はOHであり、かつR6はHであり、式II
【化4】

(式中、R1、R2、R4、及びR5は先に定義されたとおりである)
の構造を有する化合物に相当する。
本発明の別の好ましい実施態様において、R1及びR4はMeであり、R3はOHであり、かつR5及びR6は夫々Hであり、式III
【0015】
【化5】

(式中、R2は先に定義されたとおりである)
の構造を有する化合物に相当する。
R1はMeであることが好ましい。R3はOHであることが好ましい。R5及びR6はHであることが好ましい。R2は好ましくは未置換C2-C5アルキル基、更に好ましくは未置換C3-C4アルキル基である。基R2の特別な例として、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、2-ブチル、n-ペンチル、及びイソペンチルが挙げられる。特に好ましい基R2はイソプロピル及びイソブチルである。上記の選択は互に独立に実行される。
本発明の特別な好ましい化合物として、化合物IVa及びIVbが挙げられ、これらの構造が以下に示される。


【0016】
【化6】

当業界で使用されるエリスロマイシン誘導体の半系統的命名法において、化合物Iは一般にN-デスメチル-N-置換-11-デオキシエリスロマイシン化合物と記載し得る。こうして、化合物IVaはN-デスメチル-N-イソプロピル-11-デオキシエリスロマイシンBと称されてもよく、一方、化合物IVbはN-デスメチル-N-イソブチル-11-デオキシエリスロマイシンBと称されてもよい。
本発明の化合物は下記のスキーム1(R1がメチルに等しい状況で示される)に示される方法により相当する11-デオキシエリスロマイシン化合物7から合成し得る。化合物7の脱メチル化は塩基の存在下でヨウ素による処理により行なわれて、N-デスメチル化合物8を生じる。アルキル化剤(Xがハロゲン又はその他の脱離基に等しい)による化合物8のアルキル化が本発明の化合物I'(即ち、R1がMeである化合物I)を与える。

























【0017】
スキーム1
【化7】

【0018】
R1がHである場合には、合成が二つの別の経路のいずれかにより行ない得る。第一の経路では、化合物7が2回脱メチル化(第二の脱メチル化は一層激しい条件を使用する)されてN-ジデスメチル化合物(即ち、デスオサミン単位にアミノ(NH2)基を有する)を生じ、次いで1当量のアルキル化剤R2Xを使用してこれが1回アルキル化される。第二の経路では、スキーム1の操作に従うが、その後に化合物I'が脱メチル化されて化合物I”(即ち、R1がHである化合物I)を生じる。












【0019】
【化8】

有効量の本発明の化合物は医薬上許される担体と組み合わせて医薬製剤として投与されてもよい。治療は、既存の症状を治療するために、反応性であってもよく、又は症状の発生を前もって防ぐために、予防的であってもよい。
本発明の実施は下記の実施例を参考にして更に理解でき、これらの実施例は説明のために示され、限定のためではない。本発明の化合物の合成は特に化合物IVa及びIVbに関して説明される。出発点は11-デオキシエリスロマイシンBであり、その構造が以下に示される。
【0020】
【化9】

11-デオキシエリスロマイシンBは遺伝子操作された微生物を使用して調製し得る。エリスロマイシンはポリケチドシンターゼ(“PKS”)と称される酵素系により合成される、ポリケチドである。PKSをコードする遺伝子が遺伝子操作の点から広範に研究されていた。一つのアプローチでは、天然形態で6-デオキシエリスロノリドBを生じるポリケチドシンターゼをコードする一種以上の遺伝子が6,11-ジデオキシエリスロノリドB(これは11-デオキシエリスロマイシンの前駆体として利用できる)を生じるポリケチドシンターゼをコードする一種以上の遺伝子を与えるように操作される。好適なポリケチドシンターゼをコードする遺伝子として、Katzらの米国特許第5,824,513号(1998年)に記載された、サッカロポリスポラ・エリスラからのeryAI遺伝子、eryAII遺伝子、及びeryAIII遺伝子;McDanielらの米国特許第6,524,841号(2003年)に記載された、ミクロモノスポラ・メガロミセアからのmegAI遺伝子、megAII遺伝子、及びmegAIII遺伝子;Betlachらの米国特許第6,251,636号(2001年)に記載された、ストレプトマイセス・アンティバイオティカスからのoleAI遺伝子、oleAII遺伝子、及びoleAIII遺伝子;Ashleyらの米国特許第6,503,741号(2003年)に記載された、ストレプトマイセス・ベネズエラからのpicA遺伝子、picB遺伝子、picC遺伝子、及びpicD遺伝子;並びにBetlachらの米国特許第6,303,767号(2001年)に記載された、ストレプトマイセス・ナルボネンシスからのナルボノリドシンターゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限定されず、これらの特許の夫々が参考として本明細書に含まれる。一実施態様において、eryAI遺伝子が、例えば、ラパマイシンPKSのモジュール1から採取された、デヒドラターゼドメイン、エノイルレダクターゼドメイン、及びケトレダクターゼドメインを含むカセットによるモジュール2中のケトレダクターゼドメインの置換により操作される。ドメイン置換のための方法が、例えば、McDanielの米国特許第6,403,775号(2002年)(これは参考として本明細書に含まれる)に提供されている。
【0021】
操作されたPKS遺伝子が一旦加えられると、操作されたeryAI遺伝子がeryAII遺伝子及びeryAIII遺伝子とともにポリケチドの生成に応答能のある宿主細胞に導入し得る。好ましくは、これらの宿主細胞は“クリーン宿主”であり、それらの天然PKS遺伝子が除去されていた。6,11-ジデオキシエリスロノリドBの生成に適した宿主細胞の例として、Khoslaらの米国特許第5,830,750号(1998年)に記載された、ストレプトマイセス・ケリコロール;及びZiermannらの米国特許第6,177,262号(2001年)に記載された、ストレプトマイセス・リビダンスK4-114が挙げられるが、これらに限定されず、これらの特許の夫々が参考として本明細書に含まれる。宿主細胞へのPKSの導入のための方法が、例えば、McDanielの米国特許第6,403,775号(2002年)(これは参考として本明細書に含まれる)に提供されている。
操作されたPKS遺伝子を含む宿主細胞は6,11-ジデオキシエリスロノリドBが生成される条件下で培養され、6,11-ジデオキシエリスロノリドBが、例えば、酢酸エチルもしくはジクロロメタンの如き有機溶媒を使用するブロースからの抽出、又はXAD-16樹脂の如き吸収剤を使用する固相抽出により単離される。これらの化合物の単離及び精製のための方法が、例えば、McDanielの米国特許第6,403,775号(2002年)(これは参考として本明細書に含まれる)に提供されている。
【0022】
【化10】

単離された6,11-ジデオキシエリスロノリドBはグリコシル単位の生成及び付加並びにエリスロノリドの6位及び12位の炭素のヒドロキシル化に応答能があるが、機能性ポリケチドシンターゼの不在のためにエリスロマイシンの生成に応答能のない変換株の培養液を使用して11-デオキシエリスロマイシンに変換される。このような変換株は欠陥ポリケチドシンターゼを発現する変異体であってもよく、又はポリケチドシンターゼ遺伝子が除去されたクリーン宿主であってもよい。変換株はSantiらのUS 2002/0004229 A1(2002年)(参考として本明細書に含まれる)に記載された、クリーン宿主サッカロポリスポラ・エリスラK24-1であることが好ましい。エリスロノリドからエリスロマイシンへの変換のための方法が、例えば、Chuらの米国特許第6,451,768号(2002年)(これは参考として本明細書に含まれる)に提供されている。サッカロポリスポラ・エリスラK24-1は受理番号PTA-5061として2003年3月12日にブダペスト条約の条項に従ってATCC(P.O. Box 1549、マナサス、バージニア20108、米国)に寄託された。更に、変換方法がCarrerasら著J. Biotechnol., 92 (2002) 217-228,“新規エリスロマイシンの生成のための6-デオキシエリスロノリドB類似体のサッカロポリスポラ・エリスラ触媒生物変換”(その開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されている。
【0023】
また、11-デオキシエリスロマイシンBは単一発酵で調製し得る。この実施態様において、操作されたPKS遺伝子が一旦加えられると、操作されたeryAI遺伝子がeryAII遺伝子及びeryAIII遺伝子とともにエリスロマイシンの生成に応答能のある宿主細胞にとり込まれる。好ましい実施態様において、これらの宿主細胞はそれらの天然PKS遺伝子が除去された“クリーン宿主”である。好適な宿主の例として、クリーン宿主サッカロポリスポラ・エリスラK24-1及び突然変異したPKS遺伝子を有するサッカロポリスポラ・エリスラの株、例えば、SantiらのUS 2002/0004229 A1(2002年)(これは参考として本明細書に含まれる)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。株K24-1は米国特許第5,190,871号(参考として本明細書に含まれる)に記載された、アクチノファージΦC31のattBファージ付着部位で置換された天然eryAI遺伝子、eryAII遺伝子、及びeryAIII遺伝子、続いてermE*プロモーターを有していた。これは送出すべき遺伝子とともに相補attPファージ付着部位を含むプラスミドベクターがファージインテグラーゼの存在下でatt部位の染色体に組み込むことを可能にする。好適な組込みファージベクターの例として、pSET152及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の化合物(I)は1〜5mg/kgの範囲の用量で投与し得る。投与は静脈内又は経口であってもよい。経口投与される場合、投与される量は静脈内投与に使用される量よりも2倍又は3倍高いことが好ましい。
本発明の化合物は本発明の化合物及び賦形剤を含む医薬製剤中で使用し得る。使用し得る賦形剤として、担体、表面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体バインダー、分散助剤又は懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、矯味矯臭薬、被覆物、崩壊剤、滑剤、甘味料、防腐剤、等張剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な賦形剤の選択及び使用がGennaro編集Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20編(Lippincott Williams & Wilkins 2003)に教示されており、その開示が参考として本明細書に含まれる。
本発明の実施が下記の実施例を参考にして更に理解でき、これらの実施例は説明のために示され、限定のためではない。
【実施例】
【0025】
実施例1:サッカロポリスポラ・エリスラK24-1/159-44
この実施例は単一発酵で11-デオキシエリスロマイシンを生合成することができるサッカロポリスポラ・エリスラ(K24-1/159-44)の株の構築を記載する。
出発宿主株サッカロポリスポラ・エリスラK24-1の調製がSantiらのUS 2002/0004229 A1(2002年)に記載されており、その株は受理番号PTA-5061として2003年3月12日にブダペスト条約の条項に従ってATCC(P.O. Box 1549、マナサス、バージニア20108、米国)に寄託された。
pKOS159-8及びpKOS159-10は夫々ermEp*プロモーターの制御下のeryA遺伝子及びactIp/actII-ORF4プロモーター-アクチベーター対を含むpSET152の誘導体である。eryA遺伝子及びactIp/actII-ORF4領域を有するpKAO127からの35 kb NsiIフラグメントをpKOS97-64c(ermEp*プロモーター及びλcos部位を含むpSET152誘導体)にクローニングしてpKOS159-10をつくった。pKAO127フラグメントからのfd転写ターミネーターはこのプラスミド中のermEp*プロモーターからの遺伝子の発現を阻止する。pKOS159-10中のfdターミネーター及びactIp/actII-ORF4セグメントを含むフラグメントをPacIによる消化及び自己ライゲーションにより除去してpKOS159-8を生成した。それらの天然プロモーターの下のeryA遺伝子の発現のために、pKOS159-10からのeryA遺伝子(及びλcos部位)を有するNdeI-XbaIフラグメント及び先からのXbaI-NdeI消化PCR増幅eryAI左フランクフラグメントをXbaIで消化されたpSET152にクローニングすることにより、pKOS159-31を構築した。pKOS108-04からのeryAフラグメントを使用して、pKOS159-33(これはS.エリスラK41-135からのeryA遺伝子を含む)を同様の方法で構築した。同様に、スカホールドとしてのpKOS159-31及び適当な制限酵素を使用して全ての操作されたDEBS発現プラスミドをつくって遺伝子修飾されたeryAフラグメントを既存のプラスミドから移動した。
【0026】
pKOS159-44はeryAIプロモーター(Rodriguezら著“工業的に最適化された株への遺伝子導入によるポリケチド過剰生成の迅速な操作”J. Ind. Microbio. Biotechnol., 8, 480-8 (2003))の制御下に遺伝子修飾されたeryA遺伝子(KR2→rapDH/ER/KR1)を有するpSET152(Biermanら, Gene 116, 43-49 (1992),“エシェリキア・コリからストレプトマイセス種へのDNAの接合導入のためのプラスミドクローニングベクター”)誘導プラスミドである。pKOS11-66(Xueら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 11740-11745 (1999),“ポリケチドの大きいライブラリーを調製するためのマルチプラスミドアプローチ”)からの30 kb NdeI-NsiIフラグメント(遺伝子修飾されたeryA遺伝子を有する)を単離し、ベクターpSET152、eryApプロモーター及びcosλ部位を含む、pKOS159-33(Rodriguezらの上記引用文献)からの8 kb NdeI-NsiIフラグメントにつないだ。ギガパックIIIゴールドパッケージング抽出物(ストラタゲン)を使用してそのライゲーション混合物をパッケージングし、E. coli XL-1ブルーを感染するのに使用した。組換え体を60μg/mlのアプラマイシンを含むLB寒天プレートで選択した。pKOS159-44プラスミドDNAを単離し、制限消化によりチェックした。
【0027】
S.エリスラ株K24-1(これは三つのeryA遺伝子の染色体欠失及びストレプトマイセス・リビダンスからのストレプトマイセスファージΦC31のためのattB遺伝子座、続いてそれらの場所におけるermE*プロモーターの挿入を含む)を、1-2 M1プレート(1リットル当り、グルコース5g、トリプトン5g、ベタイン塩酸塩0.5g、トウモロコシ澱粉5g、コーンスティープリカー(50%)1g、MgSO4・7H2O 200mg、ZnSO4・7H2O 2mg、CuSO4・5H2O 0.8mg、CoCl2・6H2O 0.2mg、FeSO4・7H2O 4mg、CaCl2・6H2O 80mg、KH2PO4 150mg、NaCl 10g、寒天20g)で増殖された株から胞子を回収し、胞子を無菌綿で濾過し、20%のグリセロール1ml中で再懸濁させることにより調製した。胞子懸濁液を-20℃で貯蔵した。胞子懸濁液の20μLのアリコートを2xYT 5mLに添加し、30℃で振とうしながらインキュベートした。1時間後、胞子を遠心分離により回収した(レシピエント細胞)。E. coli ET12567/pUZ8002をpKOS159-44で形質転換し、アプラマイシン耐性のみについて選択することによりドナー細胞を調製した。幾つかのコロニーを一次形質転換プレートからピックオフし、クロラムフェニコール(10μg/mL)、カナマイシン(100μg/mL)及びアプラマイシン(60μg/mL)を含むLB5mlに接種するのに使用した。細胞を37℃で3-4時間増殖させ(0.4-0.6のOD600)、遠心分離により回収し、LB5mL中で洗浄し、遠心分離し、LB100μL中で再懸濁させた。レシピエント細胞をドナー懸濁液100μl中で再懸濁させることにより、ドナー細胞及びレシピエント細胞の間の接合導入を行ない、50μg/mLのナリジクス酸を含むR5プレート(Hopwoodら著“ストレプトマイセスの遺伝子操作:実験マニュアル”(The John Innes Foundation, Norwich, UK, 1985))に塗布し、34℃で16時間インキュベートした。次いでプレートをナリジクス酸1mg及びアプラマイシン2mgを含む軟質栄養寒天3mLでオーバーレイした。接合完了体K24-1/159-44を48時間の更なるインキュベーション後に観察した。
株K24-1/159-44を受理番号PTA-5054で2003年3月12日にブダペスト条約の条項に従ってATCC(P.O. Box 1549、マナサス、バージニア20108、米国)に寄託した。
【0028】
実施例2:11-デオキシエリスロマイシンB(9)
この実施例は生産株として、先の実施例に記載された、株K21-1/159-44を使用する、11-デオキシエリスロマイシンB(9)の調製を記載する。Frykmanら, Biotechnol. Bioeng., 76, 303-310 (2001)“サッカロポリスポラ・エリスラによるエリスロマイシン類似体の前駆体誘導生成”、及びRodriguezらの上記引用文献(これらの開示が参考として含まれる)に開示された発酵技術に従った。
下記の培地を使用した:(a)種子培地V1は16g/Lのトウモロコシ澱粉、10g/Lのデキストリン(D-2256、シグマ-アルドリッチ)、15g/Lの大豆粉(S-9633、シグマ-アルドリッチ)、2.5g/Lの塩化ナトリウム、5g/Lのコーンスティープリカー、1g/Lの硫酸アンモニウム(A-2939、シグマ-アルドリッチ)、6g/Lの大豆油(S-7381、シグマ-アルドリッチ)、及び4g/Lの炭酸カルシウム(C-4830、シグマ-アルドリッチ)を含んでいた。(b)発酵培地F2は28g/Lのトウモロコシ澱粉、24g/Lの大豆粉、5.5g/Lの塩化ナトリウム、8g/Lのコーンスティープリカー、及び1.5g/Lの硫酸アンモニウム、4.5g/Lの大豆油、及び6g/Lの炭酸カルシウムを含んでいた。全ての培地を121℃で90分間オートクレーブ処理することにより滅菌した。
凍結された細胞バンクからサッカロポリスポラ・エリスラK24-1/pKOS159-44の1mLのバイアルを採取し、解凍し、バイアル内容物を培地V1 50mLに添加し、34℃で40-48時間インキュベートすることにより二つの種子フラスコを始動した。次いで種子フラスコからの50mLのアリコートを500mLの培地V1に移し、34℃で40-48時間インキュベートすることにより二つの二次種子を生じた。
【0029】
両方の500mLの二次種子培養液を9Lの培地V1を含むB.ブラウンB10発酵槽に移した。発酵槽を34℃で運転し、2.5Nの硫酸及び2.5Nの水酸化ナトリウムの添加によりpH 7.0に維持した。3LPMの通気及び600〜800rpmの撹拌を与えて、溶解酸素張力を40%より大に維持した。回収を約24時間後に行なった。
次いで、10Lの発酵槽種子培養液を300Lの培地F2を含むB.ブラウンバイオスタットUD500発酵槽に移した。バイオスタットUD500発酵槽を34℃で運転し、2.5Nの硫酸及び2.5Nの水酸化ナトリウムの添加によりpH 7.0に維持した。200〜300rpmの撹拌及び40-250LPMの通気を与えて、溶解酸素張力を40%より大に維持した。デキストリン(150g/L)を24時間から98時間まで675mL/時間の速度で供給した。大豆油を24時間から140時間まで64mL/時間の速度で供給した。n-プロパノールを24時間から140時間まで26mL/時間の速度で供給した。回収を180時間後に行なった。
発泡を必要に応じて消泡剤B(JTベーカー)の50%溶液の添加により制御した。
発酵ブロースを遠心分離により清澄化し、HP20樹脂(三菱)を使用して固相抽出にかけた。吸着された生成物をメタノールで溶離し、乾燥させた。次いで粗生成物を酢酸エチル:水の液体:液体抽出にかけた。合わせた酢酸エチル抽出液を乾燥させた。HP20SS樹脂を使用して生成物をクロマトグラフィーにより精製し、50%から80%までのメタノールの段階勾配で溶離した。生成物を含む画分を溜め、乾燥させて、11-デオキシエリスロマイシンBを得た。m/z: 702.64 (MH); 13C-NMR (CDCl3): 219.13, 175.56, 102.48, 95.92, 82.73, 79.40, 78.92, 77.79, 74.88, 72.52, 70.79, 68.80, 65.52, 65.13, 49.25, 45.98, 44.31, 43.40, 40.15 (2x), 38.11, 37.20, 36.54, 34.79, 33.19, 28.52, 26.37, 24.55, 21.37, 21.19, 18.54, 18.31, 15.69, 14.68, 11.96, 10.36, 9.16 ppm













【0030】
実施例3:N-デスメチル-11-デオキシエリスロマイシンB(11)
【化11】

メタノール-水(8:2V/V、15mL)中の11-デオキシエリスロマイシンB(9、200mg、0.285ミリモル)及び酢酸ナトリウム(117mg、1.43ミリモル)の混合物を50℃で撹拌し、次いでヨウ素(72.5mg、0.285ミリモル)を添加した。反応中に、1Nの水酸化ナトリウム(0.29mL)を少しづつ添加した。1時間後に反応の完結を薄層クロマトグラフィー分析により確かめた。溶媒の除去後に、混合物を酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗化合物11(170mg)を白色の固体として得、これを更に精製しないで次の工程に使用した。m/z:688.5(MH)。
【0031】
実施例4:N-デスメチル-N-イソプロピル-11-デオキシエリスロマイシンB(IVa)
アセトニトリル(4mL)中のN-デスメチル-11-デオキシエリスロマイシンB(上記された、60mg、0.087ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン(113mg、10当量)、2-ヨードプロパン(299mg、20当量)の混合物を70℃の浴中で一夜撹拌した。水及び飽和重炭酸ナトリウムを添加し、その溶液を酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラム(3:1のヘキサン-アセトン、1%のトリエチルアミン)で精製して純粋な化合物IVa(35mg、2工程について48%の収率)を得た。
m/z: 730.5 (MH); 13C-NMR (CDCl3): 219.23, 175.74, 102.45, 95.88, 82.54, 79.40, 79.05, 77.90, 75.01, 72.62, 70.30, 68.90, 65.63, 62.41, 52.48, 49.32, 44.32, 43.52, 40.35, 38.13, 37.58, 36.61, 34.86, 33.29, 29.58, 29.16, 26.41, 24.63, 21.46, 21.28, 20.98, 20.35, 18.60, 18.35, 15.73, 14.65, 11.95, 10.42, 9.14 ppm
【0032】
実施例5:N-デスメチル-N-イソブチル-11-デオキシエリスロマイシンB(IVb)
アセトニトリル(2mL)中のN-デスメチル-11-デオキシエリスロマイシンB(上記された、30mg、0.044ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン(56.4mg、10当量)、1-ヨード-2-メチルプロパン(160mg、20当量)の混合物を65℃の浴中で20時間撹拌した。水及び飽和重炭酸ナトリウムを添加し、その溶液を酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラム(3:1のヘキサン-アセトン、1%のトリエチルアミン)で精製して純粋な化合物IVb(15mg、2工程について40%の収率)を得た。
m/z: 744.5 (MH); 13C-NMR (CDCl3): 219.28, 175.79, 102.46, 95.89, 82.46, 79.32, 79.08, 77.93, 75.11, 72.65, 70.64, 69.07, 66.06, 65.67, 61.35, 49.34, 44.36, 43.51, 40.79, 38.18, 37.18, 36.63, 34.88, 33.29, 29.59, 29.35, 26.47, 26.05, 24.61, 21.51, 21.28, 20.58, 20.35, 18.60, 18.39, 15.76, 14.64, 12.10, 10.45, 9.17 ppm
実施例6:モチリンアゴニスト活性
本発明の化合物をCarrerasら, Anal. Biochem., 300, 146-151 (2002)(その開示が参考として本明細書に含まれる)の操作に従ってモチリンアゴニスト活性について試験した。表1はモチリン受容体の活性化に関するEC50値を示す。
【0033】
表1

【0034】
実施例7:抗菌活性
微生物学技術で知られている方法を使用して、本発明の化合物をストレプトコッカス・ニューモニエの3種のエリスロマイシン感受性株(ATCC6301、ATCC700671、及びATCC49619)に対するin vitro活性について試験した。結果を表2に示す。
【0035】
表2

【0036】
表1及び2の結果は合わせて本発明の化合物が高いモチリンアゴニスト活性及び低い抗菌活性の望ましい並列を有することを示す。これらの結果は予期されない。何とならば、構造の似ている11-デオキシエリスロマイシンBが、モチリンアゴニスト活性を有するが、また抗生物質エリスロマイシンAに匹敵する、高い抗菌効力を有するからである。
以上の本発明の詳細な記載は主として、又は専ら本発明の特別な部分又は局面に関する数節を含む。これは明瞭化及び便宜のためであること、特別な特徴がそれが開示されている節以上に妥当であること、及び本明細書の開示が異なる節に見られる情報の全ての適当な組み合わせを含むことが理解されるべきである。同様に、本明細書の種々の数値及び記載は本発明の特別な実施態様に関するものであるが、特別な特徴が特別な数値又は実施態様の状況で開示されている場合には、このような特徴はまた別の数値もしくは実施態様の状況において、別の特徴との組み合わせにおいて、又は一般に本発明において、適当な程度に、使用し得ることが理解されるべきである。
更に、本発明が特に或る種の好ましい実施態様に関して記載されたが、本発明はこのような好ましい実施態様に限定されない。むしろ、本発明の範囲は特許請求の範囲により特定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物並びにその医薬上許される塩、エステル、又はプロドラッグ。
【化1】

(式中、
R1、R4、及びR6は独立にH又はMeであり、
R2は置換又は未置換C2-C5アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、かつ
R3及びR5は独立にH又はOHである)
【請求項2】
式II
【化2】

(式中、R1、R2、R4、及びR5は請求項1に定義されたとおりである)
の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式III
【化3】

(式中、R2は請求項1に定義されたとおりである)
の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R2が未置換C2-C5アルキル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R2が未置換C3-C4アルキル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R2がイソプロピル又はイソブチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式IVa
【化4】

の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
式IVb
【化5】

の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
胃の運動の障害を患っている対象に治療有効用量の請求項1記載の化合物を投与することを特徴とする、このような障害を患っている対象の胃の運動の障害の治療方法。
【請求項10】
化合物が請求項7記載の化合物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
化合物が請求項8記載の化合物である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
対象がヒトである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
胃の運動障害を治療するための薬物の調製のための請求項1記載の化合物の使用。
【請求項14】
請求項1記載の化合物及び賦形剤を含むことを特徴とする医薬組成物。

【公表番号】特表2007−521320(P2007−521320A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524876(P2006−524876)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/027854
【国際公開番号】WO2005/018576
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(307020121)ファイザー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】