説明

NOX選択的触媒還元効率の改善されたゼオライト触媒

本発明は、改善された水熱耐久性を有する新規な金属処理ゼオライト触媒、その触媒の製造方法、及びその触媒のNOxの選択的触媒還元での使用方法に関する。この新規の金属処理ゼオライトは、低ナトリウムゼオライトから形成され、金属イオン交換の後に水熱処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、「NOX選択的触媒還元効率の改善されたゼオライト触媒」をタイトルとする2005年12月14日に出願された米国仮出願60/750,261の優先権主張を伴うものである。
【0002】
本発明は、アンモニアを用いる窒素酸化物の還元を触媒する方法、特に、ゼオライト触媒、特に金属処理ゼオライト触媒を使用して、酸素存在下でアンモニアを用いる窒素酸化物の選択的還元を触媒する方法に関する。本発明はまた、水熱的に安定なゼオライト触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関など、具体的には自動車やトラックや、天然ガス、油または石炭による発電所や、硝酸製造プラントの排出ガス中に含まれる有害成分の窒素酸化物(NOx)が長年にわたり大気汚染を引き起こしてきた。このため、このような排出ガス中の窒素酸化物を削減する方法が、いろいろと研究されてきた。
【0004】
NOx含有ガス混合物の処理には、いろいろな方法が使用されている。一つの処理は、窒素酸化物の触媒還元である。触媒還元により排煙中から窒素酸化物を除く代表的な方法として、(1)一酸化炭素、水素または低級炭化水素を還元剤として用いる非選択的還元方法と、(2)アンモニアを還元剤として用いる選択的還元方法の二つのプロセスがある。後者の方法(アンモニアを用いる選択的還元方法)では、少量の還元剤でも窒素酸化物の高度な除去が可能である。したがって、この方法が注目されいろいろな変例が提案された。
【0005】
この選択的還元方法(2)は、SCR法(選択的触媒還元)として知られている。このSCR法では、大気中の酸素の存在下で、アンモニアを用いて窒素酸化物を触媒的還元し、主に窒素と水蒸気を生成する:
【0006】
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O (1)
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O (2)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O (3)
【0007】
現在までに提案されたアンモニアを還元剤として用いる窒素酸化物の触媒的還元方法は、大きく二つのグループに分けられる:(1)活性成分が白金またはパラジウムなどの貴金属である触媒を用いる方法と、(2)活性成分が卑金属化合物である、特に銅や鉄、バナジウム、クロム、モリブデンなどの非貴金属遷移金属の化合物である触媒を使用する方法。これらの触媒活性成分は、通常アルミナ上に坦持されている。(1)高活性の温度領域が非常に狭く、NH3がNOxに酸化されるため高温下で使用できないため、また(2)多量のN2Oを形成する傾向があるため、貴金属触媒は、あまり好ましくない。一方、卑金属触媒は、低温では窒素酸化物の触媒的還元活性が低い。したがって、反応温度の上昇と空間速度の低下が必要であった。最近のディーゼルエンジン用途においては、一般に処理すべき排ガス量が大きく、排ガス温度が低い。このため、低温で高空間速度の反応条件下でも使用可能な高活性触媒の開発が望まれている。
【0008】
従来技術では、金属処理ゼオライト触媒、中でも鉄処理ゼオライト触媒や銅処理ゼオライト触媒を、アンモニアを用いる窒素酸化物の選択的触媒還元に用いることが述べられている。これらの触媒は、水蒸気の存在下で800℃の温度で安定である必要があり、水熱耐久性が改善した材料の製造が求められている。800℃の水熱安定性は、煤煙フィルターの存在下でディーゼル排ガスの処理に用いられるSCR触媒に求められる特別な要求事項である。これは、煤煙フィルターでは、高温暴露が煤煙再生サイクルの一部となっているためである。
【0009】
高温の水熱条件に暴露された場合、高シリカ含量料のゼオライト材料は、アルミニウム溶出により大きな抵抗を示す。また、ナトリウム含有ゼオライトは、高温下でのアルミニウム溶出を促進し、低ナトリウム含量である高シリカゼオライトは、水熱耐久性が高いが、ゼオライトのか焼の程度によっては、イオン交換容量が低いことがある。このような高シリカ材料は、金属負荷量が低く、活性が低い場合が多い。また、高シリカ材料は、高レベルで所望金属と交換するのに問題が多かった。銅交換ゼオライトYは、この分野で使用されている材料であるが、銅移動と連動したゼオライト骨格からのアルミニウムの溶出のため、この材料の水熱耐久性は従来より乏しいものであった。
【0010】
Cuゼオライトの形成とそのSCRでの利用に関する米国特許ならびに非特許文献が存在する。米国特許の例としては、U.S.P4,748,012があげられる。この特許は、燃焼施設の廃ガス中の窒素酸化物含量をアンモニアで減少させる方法に関するもので、窒素酸化物含有廃ガスを、一種以上のファージャサイト系の結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトと結着剤のシリカゾル及び/又はシリケートと銅化合物からなる混合物で、厚みが0.1〜2mmとなるように被覆された耐熱性の表面構造に接触させ、触媒還元を約100〜約250℃の温度範囲で行う。
【0011】
U.S.P4,052,337では、NH3でNOxを抑制するためのいろいろなゼオライト型触媒の、特にゼオライトYの利用を記載している。この触媒はイオウを含む窒素酸化物を比較的高温で還元するために使用されるもので、ゼオライトをアルカリ土類イオンで予備的に交換し、次いで金属イオン、特に第二銅イオンを含浸させる方法により調整された場合に、効果が高い。
【0012】
U.S.P5,536,483は、触媒的に有効量の70〜90%のNH4ゼオライトY触媒を含み、比表面積が750〜950m2/gであり、第二銅イオンで交換した(ただし銅の添加量はゼオライトの重量に対して2〜12%であり、結着剤の10〜30%である)組成物に排ガスを接触させることにより、NOxを含有する酸素系排ガス処理し、そこに含まれる窒素酸化物を抑制する方法を詳しく説明している。なお、このゼオライト触媒組成物の製造に用いたゼオライト材料は、ゼオライト格子の空孔を形成する直径が約8〜9オングストロームの開口部を通じて相互に連通する、約13オングストロームの径の空洞を持つスーパーケージ型のゼオライトを含んでいる。
【0013】
ゼオライト系触媒は一般に、またCuゼオライトは特に、NOxの選択的触媒還元用途に使用されてきたが、高温(>700℃)での水熱耐久性の改善された、具体的には煤煙フィルターと併用するディーゼル用途向けの触媒に対する需要がある。銅負荷量が十分な場合に可能な活性を付与すること、高シリカゼオライトの安定性を高めること、またこのようなゼオライトを効果的にイオン交換することに対するニーズがある。
【0014】
【特許文献1】U.S.P4,748,012
【特許文献2】U.S.P4,052,337
【特許文献3】U.S.P5,536,48
【非特許文献1】“Determination of framework aluminum content in zeolites X, Y, and dealuminated Y using unit cell size,” George T. Kerr, Zeolites91989, vol. 9, pp. 350-351 (July 1989).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、NH3を用いるNOxの選択的触媒還元の効率が改善された、新規な金属処理ゼオライト触媒の製造方法を提供する。この金属処理ゼオライトは好ましい性能を有し、水熱的に安定で、高活性を維持する。この新規の金属処理ゼオライトは、低ナトリウムゼオライトから得られ、金属イオン交換後に水熱処理されたものである。改良の理論について特に拘泥するわけではないが、酸性条件下での金属交換及び水熱処理が、このゼオライトの触媒性能を向上させているようである。
【0016】
本発明は、窒素酸化物の還元方法、それに使用する触媒、この触媒の製造方法に関する。特に、本発明は、選択的触媒還元により、窒素酸化物を含有するエンジン排ガスまたは排煙から窒素酸化物を削減し、よってこれを除去する触媒に関する。
【0017】
本発明はさらに、エンジン排ガスまたは排煙中の窒素酸化物を還元するための、ゼオライトなどの結晶性のアルミノケイ酸塩担体上にイオン交換で導入した金属イオンを含む触媒、及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
窒素酸化物の還元用の金属処理ゼオライト触媒の製造方法は、低ナトリウムの合成結晶性アルミノケイ酸塩、例えばゼオライトYを銅などの金属イオンを含む媒体に酸性の条件下で接触させ、合成結晶性アルミノケイ酸塩中のナトリウム、水素及び/又はアンモニウムカチオンを金属でイオン交換させることからなる。湿式イオン交換により、あるいは固体状態での交換、含浸または沈澱により、この金属をゼオライトに導入してもよい。ある実施様態においては、金属イオン交換の後、その金属の一部又は全部が金属酸化物として存在してもよい。この金属交換合成結晶性アルミノケイ酸塩は、次いで水熱的に処理される。このようにして製造した金属−ゼオライトは、意外にもSCR活性が高く、水熱安定性にも優れ、水熱処理されない触媒と比較して、活性が維持、場合によっては活性が増強されることが明らかとなった。ある実施様態においては、本発明の水熱処理金属交換ゼオライト触媒は、本発明の水熱処理方法で処理されていない触媒と比較すると、NOx還元活性に優れる。特に、ここで開示される水熱処理のない金属交換ゼオライトと比較すると、この触媒は、低温でのNOx還元活性に優れる。この「低温」とは、約350℃以下の温度をいう。約300℃未満での、約250℃未満での、約200℃未満での、約150℃未満の温度でのNOx還元活性の改善が例示される。他の実施様態においては、本発明の水熱処理金属交換ゼオライト触媒は、約250℃以下の温度で、排ガスまたは排煙流中の汚染NOxガスの過半の変換を触媒することができる。更に別の態様においては、本発明の水熱処理金属交換ゼオライト触媒は、約300℃以下の温度で、排ガスまたは排煙流中の汚染NOxガスの80%超の変換を触媒することができる。
【0019】
特に好ましい結晶性アルミノケイ酸塩は、約3〜14オングストロームの範囲の孔径をもち、SiO2/Al23モル比が約2〜150であるものである。例えば、孔径が約7.4〜9オングストロームであり、SiO2/Al23モル比が約2〜80と4〜30の合成ファージャサイトやゼオライトYが好ましい。これ以外で本発明に好適なのは、立方晶系ファージャサイト(FAU)や、六方晶系ファージャサイトEMT、立方晶系ファージャサイトと六方晶系ファージャサイト(EMT)の連晶などのゼオライト族である。また、他のゼオライト系材料、例えばウルトラ−ステイブルYや、ZSM−3、ZSM−20、CSZ−1、ECR−30、LZ−210、ゼオライトL、フェリエライト、MCM−22、オフレタイトが、本発明に好適であるが、これらに限定されるわけではない。
本発明によれば、ゼオライトは、まず金属イオン交換により金属で処理される。一般に、何れの公知金属を、1種単独で用いても良く2種以上併用してもよい。例えば、本発明のゼオライトを、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びセリウム(Ce)からなる群から選ばれる金属イオンでイオン交換することができる。ある実施様態においては、ゼオライトYと銅の使用が好ましい。しかしながら、当業界の熟練者には理解できるように、上述のような他の金属イオンや他のゼオライトも銅とゼオライトYに代えて使用可能である。
【0020】
本発明の窒素酸化物還元触媒の第1の特徴は、結晶性アルミノケイ酸塩をまず処理してゼオライト中のアルカリ金属量を減少させて、金属、例えば銅とのイオン交換を増加させていることである。したがって、形成されたゼオライトをまず、当業界で広く知られている方法により、酸処理またはアンモニウムカチオン交換処理して、ゼオライトのナトリウムレベルを低下させる。具体的には、結晶性のアルミノケイ酸塩中のアルカリ金属、すなわちナトリウムを、酸またはアンモニウム交換により減量させ、一般的には5質量%未満のレベルとする。以降すべてのナトリウムレベルは、金属酸化物として報告する。結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライト中のナトリウムレベルが3質量%未満であることが、続く金属イオン、例えば銅イオンとのカチオン交換を増強するのに有用である。ある実施様態においては、0.4質量%を超えるナトリウムレベルが好ましい。他の実施様態においては、0.4質量%未満のナトリウムレベルが、触媒の高温(>700℃)耐久性のために好ましい。ゼオライトに銅を載せるイオン交換は、ゼオライトを銅イオンを含む水溶液に接触させることで実施される。一般に、銅イオンを供給するのにいずれの銅塩を用いてもよく、その例としては、硝酸銅や酢酸銅、硫酸銅などがあげられる。交換溶液のpHコントロールが、最終の触媒の活性と安定性の改善に有益であると考えられている。酸性が強すぎる(pH<2.5)場合、ゼオライト骨格からアルミニウムが多量に溶出し、塩基性が強すぎる(pH>5)場合は、Cu2+カチオンの溶解度が限定される。低ナトリウムゼオライトを使用し、交換溶液中のゼオライト固形分含量を調整することで、溶液のpHをコントロールできる。ゼオライト中のナトリウム含量が多いと、pHを下げるために酸の添加が必要となることがある。5.0より小さいpHは、交換溶液中のゼオライト固形分濃度を調整することで容易に達成できる。交換溶液のpHとしては、約2.0〜約3.5や、約2.5〜約3.5、約3.0〜約3.5が例示される。
【0021】
このイオン交換においては、所望の低ナトリウム含量のアルミノケイ酸塩を、攪拌された銅塩含有水溶液に浸漬する。ゼオライトと交換溶液との接触は、一般的には約0.5〜2時間維持される。この水溶液中の銅カチオンの濃度や、接触時間、イオン交換に使用するアルミノケイ酸塩の量は、ゼオライトへの銅の負荷量が少なくとも1.0質量%となるように選択される。カチオン交換ゼオライトの重量に対する銅の負荷量としては、3.5質量%超、約4.0〜約14.0質量%、及び約4.0〜約6.0質量%が例示される。総銅負荷量は、揮発分非含有の金属酸化物(酸化銅)の質量%で表される。銅交換は、単一工程で行っても複数工程で行ってもよい。その間に、ゼオライトは、溶液中で交換され、水洗、乾燥され、銅含有交換溶液に再分散される。他の実施様態においては、イオン交換効率をあげるために、金属イオン交換の間に一回以上のか焼を行うことがある。例えば、金属交換の後、続くまたは第二の金属イオン交換工程の前に、このゼオライトを約300〜800℃で1〜20時間、か焼する。また、ナトリウムは可動カチオンであり、好ましくないことに、水熱処理の間にアルミニウム溶出を増加させると考えられている。ゼオライト骨格からアルミニウムサイトが多量に除かれると、好ましくないことに銅負荷量が減少し、その結果として構造も弱くなり、SCR活性も低下する。しかしながら、低ナトリウム含量は、ゼオライトの熱安定性を増加させることがあるため、重要である。本発明は、比較的高い骨格アルミニウムレベル、低ナトリウム含量、高交換容量、また高い水熱安定性を与える点で、ユニークである。したがって、銅交換後のナトリウム含量は、一般的にはナトリウムとして3.0質量%未満でなければならない。2.4質量%未満、1.0質量%未満、0.4質量%未満のナトリウムレベルも、例示される。総ナトリウムレベルは、揮発分非含有のNA2Oの質量%で表される。ナトリウム量を最小とすることで、養生の間のアルミニウムの減少量を低下させ、その結果、触媒養生による不活性化を最小限に留めることができる。
【0022】
銅イオンでイオン交換されたアルミノケイ酸塩は、水洗によりイオン交換でゼオライトに取り込まれていない過剰の銅イオンを除き、100℃未満の低温で乾燥する。乾燥に続いて、このCuゼオライトを、空気中で約300〜850℃の温度範囲、好ましくは約350−600℃の温度範囲で1〜20時間か焼する。
【0023】
か焼後に、このCuゼオライト、例えばCu−Yを水熱処理することが重要である。この水熱処理によりアルミニウムとそれに会合した銅がゼオライト表面に移動することがわかっている。このゼオライト表面への移動により、水熱条件においてでもSCR触媒活性が維持されているようである。水蒸気処理の温度は、低くとも540℃であり、その温度範囲としては約540〜約1000℃や700〜800℃が例示される。通常、空気中の水蒸気濃度は約1%〜約100%の範囲であり、典型的には約5%〜約50%の水蒸気であり、10%の水蒸気も例示され、残りは空気である。他の実施様態においては、本水熱処理は、少なくとも約10%の水蒸気、少なくとも約15%の水蒸気、少なくとも約20%の水蒸気、または少なくとも約25%の水蒸気を使用する。この水蒸気処理は、好ましくは大気圧で実施する。水熱処理時間は、一般に約5分〜約250時間である。上述の条件での水熱処理では、少なくとも1時間や、2時間を超える時間、5時間を越える時間、10時間を超える時間も例示される。約1時間〜約50時間、約2時間〜約20時間、約2時間〜約10時間の水熱処理も例示される。
【0024】
本発明の水熱処理により、骨格外アルミニウムが生産、形成されること、またこの骨格外アルミニウムがゼオライト結晶構造内で移動することが明らかとなった。骨格外アルミニウムは、四面体ゼオライト骨格に不可欠の要素ではない(即ち、非骨格性の)アルミニウムである。骨格外アルミニウムは、ゼオライト空孔中に存在することもあれば、ゼオライト系結晶の外表面に存在することもある。この「ゼオライト系結晶の外表面」は、結晶の20〜100nmの範囲での外表面をいう。骨格外アルミニウムは、ゼオライトの微細な空孔をブロックし、活性な金属のサイトを隠すと報じられている。したがって、金属交換ゼオライトを本発明によれって水熱処理するとき、得られる骨格外アルミニウムがゼオライトの空孔からゼオライトの該表面に移動することは、本発明の重要な発見の一つである。ある実施様態においては、骨格外アルミニウムの大部分が空孔から除かれる。この「大部分が空孔から除かれる」とは、総アルミニウムの65%を超える量がゼオライト空孔から除かれることを意味する。他の実施様態においては、総骨格外アルミニウムの7.5質量%未満が空孔に存在する。更に別の態様においては、アルミニウム総量の35%未満がゼオライトの空孔に存在する。さらに、本発明の金属処理ゼオライトのか焼が、骨格外アルミニウムのゼオライト結晶の外表面への移動を促進することがわかった。骨格外アルミニウムの移動に加えて、イオン交換された金属の移動も見られることがある。ある実施様態においては、ゼオライトの外表面への金属(例えば、銅)の負荷量は、金属酸化物として金属交換ゼオライトの総重量あたり約1質量%から約10.0質量%である。金属酸化物として約1質量%から約5質量%の外表面での金属負荷量が例示される。
【0025】
アルミニウムのゼオライト中での位置は、いろいろな手法を組みあわせて決定される。X線回折で得られる単位格子データをゼオライト骨格の要素となるアルミニウムの量の決定に用いることができる。骨格外アルミニウムの量は、この情報とバルクによる化学分析とを比較することで計算できる。例えば、実施例6の表1を参照されたい。骨格外アルミニウムのゼオライト内孔から外表面への除去を反映する、表面に高感度な方法をさらに使用することで、骨格外アルミニウムの位置を識別することが可能である。アルミニウム除去後のYゼオライトの表面組成は、X線光電子分光法(XPS)で試験可能で、表面アルミニウム量の増加の推定値を与える。XPSにはしばしば試験材料のバルク組成物が用いられるが、骨格アルミニウム含量との比較することで、ゼオライト空孔からのアルミニウムの移動で引き起こされる表面でのアルミニウムの濃縮を追跡するのに使用できる。その結果、表面での正味の変化は、空孔内に未だに残存する骨格外アルミニウムを決めるのに使用できる。アルミニウム除去法により表面濃縮が起こる場合にはこの方法が利用できるが、ゼオライトから骨格外アルミニウムを完全に除去する方法では使用できない。このような状況の一例は、骨格外アルミニウムを溶解してアルミニウムの酸抽出を行う場合である。このような状況では、空孔に存在する骨格外アルミニウムの最大量を決めるために、X線回折で得られた単位格子と化学分析とを比較してもよい。
【0026】
空孔から外表面への骨格外アルミニウムの移動によりもたらされる他の特徴は、メソ気孔性である。合成ゼオライトは、ゼオライト構造に特徴的なマイクロポア構造を有する。例えば、ゼオライトYは、直径が約0.74nmである12員環マイクロポアを持つ。骨格からまたマイクロポアからアルミニウム抽出して構造の崩壊を起こし最終的にメソ気孔性を与えるいろいろな処理により、メソ気孔性をゼオライト系材料に導入することができる。メソポーラス材料とは、直径が2〜50nmで空孔容量が少なくとも0.07cm3/gである空孔(以降、メソポアと称す)を持つ材料である。約0.07cm3/gから約0.22cm3/gのメソポア容量が例示される。ゼオライト格子からアルミニウムが抽出されると、最終的には部分的な骨格の崩壊が起こり、骨格外アルミニウムが外表面に移動しやすくなる。
【0027】
他の実施様態においては、金属イオン交換の先立って、このゼオライトからアルミニウムが除かれる。一般に、公知の何れの方法の脱アルミニウム法を用いてもよい。例えば、ゼオライトからのアルミニウム除去は、いずれの酸アルミニウム溶出法で行ってもよく、具体的には、例えば(NH4)SiF6で処理する化学的アルミニウム溶出法、水蒸気アルミニウム溶出法、骨格外アルミニウムの錯化剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)による抽出があげられる。これらの処理が、空孔をブロックしゼオライトの金属活性サイトをブロックする骨格外アルミニウムを生成することになることもある。
【0028】
本発明の結晶性アルミノケイ酸塩は、約1〜30質量%の少なくとも一種の他の耐火性材料、即ちアルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ハフニア、シリカまたは珪藻土などの酸化物を含んでいてもよい。触媒成形物の製造にあたり、アルミナやシリカゾルなどの結着剤を、適量、具体的には約2〜40質量%添加してもよい。
【0029】
このCuゼオライトを、公知の方法により基材、例えば固体状モノリス担体上に堆積又は塗布してNOx排ガス流の処理に用いてもよい。触媒の構造状の支持体である不活性担体材料上に、薄膜または塗膜としてCuゼオライトを塗布することが通常、最も簡便である。この不活性な担体材料は、いかなる耐火性材料であってもよく、例えばセラミックスであっても金属材料であってもよい。あるいは、公知のように、触媒をペレットまたはビーズ状とし、流通装置に詰めて、排ガスが流れる触媒床としてもよい。排ガス中に含まれる窒素酸化物の還元に本発明の触媒を使用するに当たり、ペレットまたはビーズの形状は、円柱状、球状、または、接触面の大きくガスの流れが容易なラシヒリング状のいずれでもよい。さらに他の実施様態においては、この触媒を押出し等によりモノリス状に成形し、排ガス流中に設置する。
【0030】
SCRで使用する触媒の量は、排ガスの具体的な組成、具体的なゼオライトと結着剤の組合せ、NOx含有ガス流の濃度や条件などの因子により変動しうる。通常、モノリス、例えばハニカムへの塗布に使用する場合には、Cuゼオライト触媒組成物は、5〜50重量パーセント、好ましくは10〜40重量パーセントの固形分を含む水系スラリーである。得られるモノリスは、本触媒組成物を、ゼオライト触媒化合物の量として、0.3〜5.0g/in.3、好ましくは1.5〜3.0g/in.3の塗装量で含むことが好ましい。
【0031】
本発明の触媒は、ボイラーなどの定置型の発生源、または自動車、特にディーゼルエンジン駆動の自動車などの移動発生源からの排煙から、極めて効果的に窒素酸化物を除去する。特に、エンジン排ガスまたは窒素酸化物や酸化硫黄、酸素を含む排ガスをアンモニアと混合し、得られるガス状の混合物を本発明の触媒と接触させることで、窒素酸化物を選択的に還元することができる。
【0032】
窒素酸化物のアンモニアによる還元は、式(1)、式(2)、式(3)に示すように、窒素酸化物の無害な窒素への変換からなる。
【0033】
本発明の触媒は、尿素などの分解してアンモニアを与えるいかなる還元剤とも併用可能であるが、特に好ましい還元剤はアンモニアである。
【0034】
還元剤として排ガスに加えるアンモニアの量は、窒素酸化物を完全に無害な窒素に還元するのに必要な化学量論量の0.7倍より大きい。窒素酸化物の大部分が一窒素酸化物(NO)である場合、窒素酸化物1モルあたり約1.0モルのアンモニアが必要である。
【0035】
理論的には、SCR法では、反応を完全に進めるため、またガス流中のアンモニアの不完全な混合を克服するために、存在する窒素酸化物を完全に反応させるのに必要な化学量論以上のアンモニアを供給することが望ましい。しかしながら実際には、触媒から排出される未反応のアンモニアが大気汚染の問題をひきおこすため、通常、化学量論量を大幅に超えるアンモニアを供給することはない。アンモニアが、化学量論量又はそれ以下で存在する場合でも不完全な反応及び/又はアンモニアのガス流中での混合の不足の結果として
未反応アンモニアの排出が起こることもある。混合不足によりガス流中に高アンモニア濃度の流路ができるが、特に複数の微細な平行ガス流路を持つ耐火性ボディーに収納したモノリスハニカム型の担体の触媒を使用する場合には、粒状触媒の床の場合とは異なり流路間でガスの混合の可能性がないため、このような流路ができる懸念が大きい。したがって、窒素酸化物の選択的触媒還元の触媒のために使用される触媒が、酸素とアンモニアの反応を触媒して、効果的に過剰または未反応のアンモニアをN2及びH2Oに酸化することが望ましい。
【0036】
一般に、窒素酸化物と還元剤とを含む排ガスのガス状混合物は、触媒、例えば固定床または被覆モノリス状の触媒と接触させられる。その際の反応条件は、温度が約150〜650℃、好ましくは約250〜500℃、ガスの空間速度が約2,000〜100,000V/H/V、好ましくは約10,000〜60,000、より好ましくは約15,000〜45,000V/H/Vである。したがって、本発明は、酸素の存在下で窒素酸化物を還元する新たな触媒とその製造方法を提供する。従来の触媒と較べると、本発明の触媒は、優れた活性と選択性を示し、煤煙フィルターの活性の再生が必要な排ガスシステムで使用する場合に、800℃の養生条件でもSCR活性を維持する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例でもって説明する。
(実施例1)
触媒A.
銅ゼオライトYの合成
低ナトリウムY(Na2O<2.4質量%)のアンモニウム型を、銅で次のように処理した:
【0038】
A.507.3gのゼオライトYを、2523.77gの0.24質量%のCu(0.04MCu)を含む硫酸銅(II)五水和物の水溶液に撹拌下で添加し、4リットルのパイレックス(登録商標)ビーカー中で固体を懸濁させ、塊を分散させた。
B.攪拌を続けながら、工程Aのスラリーを80℃に加熱し、一時間保持し、その後冷却した。溶液のpHは調整しなかったが、反応中2.75〜3.5の範囲であった。
C.冷却した工程Bのスラリーを真空濾過して、液体から固形分を分離し、固形分を、分離された液体と同量の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を4時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
E.工程DのCuYを、工程Aのものと同一の銅溶液に再スラリー化(連続的に攪拌しながら)し、その後、工程B〜工程Dを五回交換を繰り返した。各々の交換のpHは、いずれの反応も2.75〜3.5であった。
F.最終の交換の後、粉末を16時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
G.工程FのCuYは、16時間640℃でか焼した。化学分析の結果、このCuY粉末が、4.89質量%のCu(揮発分非含有の金属酸化物として)と0.41質量%Na2Oを含んでいることがわかった。
H.次いで、か焼したCuYを、10%水蒸気の空気中で800℃で50時間水熱処理した。これを触媒Aと称する。
【0039】
(実施例2)
触媒B.
銅ゼオライトYの合成
低ナトリウムY(Na2O<2.4質量%)のアンモニウム型を、銅で次のように処理した:
【0040】
A.4375kgのゼオライトYを、33.5kgの1質量%のCu(0.16MCu)を含む硫酸銅(II)五水和物の水溶液に撹拌下で添加し、4リットルのパイレックス(登録商標)ビーカー中で固体を懸濁させ、塊を分散させた。
B.攪拌を続けながら、工程Aのスラリーを80℃に加熱し、一時間保持し、その後冷却した。溶液のpHは調整しなかったが、反応中3〜4の範囲であった。
C.冷却した工程Bのスラリーを真空濾過して、液体から固形分を分離し、固形分を分離された液体と同量の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を4時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
E.工程DのCuYを、工程Aのものと同一の銅溶液に再スラリー化(連続的に攪拌しながら)し、その後工程B〜工程Dを二回、それぞれ1時間行った。各々の交換のpHは、いずれの反応も3〜4であった。
F.最終の交換の後、粉末を16時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
G.工程FのCuYは、16時間640℃でか焼した。化学分析の結果、このCuY粉末が、4.75質量%のCu(揮発分非含有の金属酸化物として)と0.1質量%Na2Oを含んでいることがわかった。
H.か焼したCuYを、次いで、10%水蒸気の空気中で800℃で50時間水熱処理した。これを触媒Bと称する。
【0041】
(実施例3)
実施例1と実施例2銅ゼオライト触媒を用いて、約2〜2.5g/in.3の量でハニカムに塗布した。試験室反応器において、これらの触媒のNOXのNH3でのSCR還元性能を試験した。供給ガスは、窒素中に500ppmのNOX(NOとして添加)と500ppmのNH3と5体積%の水と10体積%のO2を含んでいた。空間速度GHSVは、80,000h-1であった。図1は、銅ゼオライトY触媒の水熱安定性にとってナトリウム含量が重要であることを示す。低いナトリウムレベルでは水熱養生後にNOx還元効率が改善している。フレッシュな触媒はいずれも、類似の銅負荷量(約4.8質量%のCuO)及び類似の骨格外アルミニウム含量を有するが、ナトリウム含量では異なっている。
【0042】
(実施例4)
触媒C.
銅ゼオライトYの合成
低ナトリウムY(Na2O<0.2質量%)のアンモニウム型を、銅で次のように処理した:
【0043】
A.609.9gのゼオライトYを、2531.7gの0.3質量%のCu(0.05MCu)を含む硫酸銅(II)五水和物の水溶液に撹拌下で添加し、4リットルのパイレックス(登録商標)ビーカー中で固体を懸濁させ、塊を分散させた。
B.攪拌を続けながら、工程Aのスラリーを80℃に加熱し、一時間保持し、その後冷却した。溶液のpHは調整しなかったが、反応中2.75〜3.5の範囲であった。
C.冷却した工程Bのスラリーを真空濾過して、液体から固形分を分離し、固形分を、分離された液体と同量の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を4時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
E.工程DのCuYを、工程Aのものと同一の銅溶液に再スラリー化(連続的に攪拌しながら)し、その後、工程B〜工程Dを五回、それぞれ1時間交換を繰り返した。各々の交換のpHは、いずれの反応も2.75〜3.5であった。
F.最終の交換の後、粉末を16時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
G.工程FのCuYは、16時間640℃でか焼した。化学分析の結果、このCuY粉末が、4.4質量%のCu(揮発分非含有の金属酸化物として)と0.1質量%のNa2Oを含んでいることがわかった。
H.か焼したCuYを、次いで10%水蒸気の空気中で800℃で50時間水熱処理した。これを触媒Cと称する。
【0044】
(実施例5)
触媒D.
銅ゼオライトYの合成
低ナトリウムY(Na2O<0.2質量%)のアンモニウム型を、銅で次のように処理した:
【0045】
A.12.6kgのゼオライトYを、93.65kgの1質量%のCu(0.16MCu)を含む硫酸銅(II)五水和物の水溶液に撹拌下で添加し、150リットルの反応器中で固体を懸濁させ、塊を分散させた。
B.攪拌を続けながら、工程Aのスラリーを80℃に加熱し、一時間保持し、その後冷却した。溶液のpHは調整しなかったが、反応中3〜3.5の範囲であった。
C.冷却した工程Bのスラリーは、フィルタープレスを用いて液体から固形分を分離し、固形分を、分離された液体と同量の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を4時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
E.工程DのCuYを、工程Aのものと同一の銅溶液に再スラリー化(連続的に攪拌しながら)し、その後、工程B〜工程Dを二回繰り返した。二回目の交換の際のpHは、いずれの反応も3〜3.5であった。
F.最終の交換の後、粉末を16時間90℃の空気中で乾燥し、銅処理ゼオライトY粉末(CuY)を得た。
G.工程FのCuYは、16時間640℃でか焼した。化学分析の結果、このCuY粉末が、4.3質量%のCu(揮発分非含有の金属酸化物として)と0.1質量%Na2Oを含んでいることがわかった。
H.か焼したCuYを、次いで、10%水蒸気の空気中で800℃で50時間水熱処理した。これを触媒Dと称する。
【0046】
(実施例6)
実施例4と実施例5の銅ゼオライト触媒を用いて、約2〜2.5g/in.3の量でハニカムに塗布した。試験室反応器において、これらの触媒のNOXのNH3SCR還元性能を試験した。The供給ガスは、窒素中に500ppmのNOX(NOとして添加)と500ppmのNH3と5体積%の水と10体積%のO2を含んでいた。空間速度GHSVは、80,000h-1であった。図2は、ゼオライト空孔から骨格外アルミニウムを除去することが重要であることを示している。骨格外アルミニウムが除かれない場合には水蒸気養生後に触媒の不活性化が見られ、骨格外アルミニウムがゼオライト空孔から除かれると触媒性能が改善した。骨格外アルミニウムのゼオライト空孔中における好ましくない残存レベルを決めるのに、実施例7と実施例8で作成したデータを使用した。表1は、触媒の水熱安定性のために必要な骨格外アルミニウムの限度を示すX線回折(XRD)データ及びX線光電子分光法(XPS)データである。
【0047】
ゼオライトYの化学組成は、Na56Al56Si134384であり、アルミニウムはすべて、ゼオライト骨格の一部である。このため、骨格のAl/Siは0.42である。他のすべてのNH4材料の骨格アルミニウム含量が、“Determination of framework aluminum content in zeolites X, Y, and dealuminated Y using unit cell size,” George T. Kerr, Zeolites91989, vol. 9, pp. 350-351 (July 1989)に開示されている方法を用いて、単位格子より計算された。なお、この文献を、参照として本願明細書に組み込むこととする。
【0048】
FAL=112.4*(単位格子−24.233)、
【0049】
なお、FALは単位格子中の骨格アルミニウムである。
【0050】
Al/Siのうちどれほどが骨格外アルミニウム(EFA)によるものかを次式により算出する:
【0051】
EFA=(NaYのAl/Si単位格子値−試料のAl/Si単位格子値)
【0052】
低NaのCuY生成物の性能の増減を比較すると、XPSのAl/Si>0.5の場合に、水熱安定性の改善された材料が得られるようである。このXPSのAl/Si比率では、非骨格アルミニウム総量の65%未満が空孔中に存在することとなる。この値は、また空孔中に非骨格的に存在するAl23が<7.5質量%であることに相当する。
【0053】
したがって、ここに開示されている水熱処理のような、ゼオライト結晶の表面にAlを濃縮する結果となる方法で製造された低ナトリウムのCuY材料の性質を記述するのに、XPSを用いることができる。ゼオライトからEFAを完全に除去する方法においては、ゼオライトのマイクロポアに残存する骨格外アルミニウムを定量するのに、XPSを用いることができない。したがって、これらの材料は、単位格子データと化学分析とを組合せで評価する。表1のXPS例に示されるEFA値<7.5質量%が、水蒸気養生における更なる安定性及び性能の改善のために必要であろう。
【0054】
【表1】

【0055】
XPSのAl/Siが0.5より大きい場合、アルミニウム総量の65%超が空孔の外部にあり、7.5質量%以下のEFA(Al23)が空孔内にある。この後者の値を、表面濃縮なしに(即ち、7.5質量%のEFA(Al23)未満で)ゼオライトからEFAを除去するあらゆる処理の極大値として利用できる。
【0056】
(実施例7)
ゼオライトYの水熱前処理
マイクロポアから骨格外アルミニウムを除くための低ナトリウムY(NA2O<0.2質量%)の水熱脱アルミニウム処理
この方法で、XPSのAl/Siが0.58でEFAの計算値が5質量%Al23であるサンプルを得た。
【0057】
A.2kgの低ナトリウムゼオライトYを、760℃で40%の水蒸気中で4時間水蒸気処理した。これは大型の縦型水蒸気管反応器中でおこなった。
B.冷却した試料を反応器から取り出した。
【0058】
(実施例8)
ゼオライトYの酸溶出前処理
骨格外アルミニウム除去のための低ナトリウムY(NA2O<0.2質量%)の酸溶出脱アルミニウム処理
バルクのAl23の化学分析では、揮発分非含有のAl23として22.72質量%の含量であった。24.53Åの単位格子において、揮発分非含有の骨格アルミニウム含量は、14.8質量%Al23であった。この方法により、EFAの計算値が2.08質量%Al23である試料が得られた、この値は、XPS例で定義した上限より小さい。
【0059】
A.310gの低ナトリウムYを3.1Lの脱イオン水に添加した。攪拌を継続しながら、工程Aのスラリーを80℃に加熱した。
B.濃塩酸を添加してpHを2.5に調整した。塩酸を添加して、pHを2.5〜2.8に1時間維持した。
C.このスラリーを真空で濾過し、液体から固形分を除き、この固形分を分離された液体と同体積の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を90℃の空気中で4時間乾燥した。
E.工程Dの粉末を工程Aと同一の脱イオン水に再懸濁(連続して攪拌しながら)した。その後、工程B〜工程Eを繰り返した。この反応中、pHを2.5〜2.8にコントロールした。
【0060】
(実施例9)
ゼオライトYの酸溶出前処理
骨格外アルミニウム除去のための低ナトリウムY(NA2O<0.2質量%)の酸溶出脱アルミニウム処理
バルクAl23の化学分析では、揮発分非含有のAl23の含量は22.72質量%であった。24.53Åの単位格子において、揮発分非含有の骨格アルミニウム含量は、14.8質量%Al23であった。この方法により、EFAの計算値が2.08質量%Al23である試料が得られた、この値は、XPS例で定義した上限より小さい。
【0061】
A.310gの低ナトリウムYを3.1Lの脱イオン水に添加した。
B.攪拌を継続しながら、濃塩酸を添加して、pHを2.5に調整した。塩酸を添加して、pHを2.5〜2.8に24時間維持した。
C.このスラリーを真空で濾過し、液体から固形分を除き、この固形分を分離された液体と同体積の脱イオン水で洗浄した。
D.工程Cの粉末を90℃の空気中で4時間乾燥した。
E.工程Dの粉末を工程Aと同一の脱イオン水に再懸濁(連続して攪拌しながら)した。その後、工程B〜工程Eを繰り返した。この反応中、pHを2.5〜2.8にコントロールした。
【0062】
実施例7〜実施例9は、ゼオライトのマイクロポアから骨格外アルミニウムを除去する方法を示す。実施例7では、ゼオライト結晶の外表面のマイクロポアから骨格外アルミニウムが除かれている。実施例8と実施例9では、骨格外アルミニウム種は、可溶性の形でゼオライトから完全に除かれた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ナトリウム含量の異なる二種の銅ゼオライトY触媒を比較するものである。
【図2】ゼオライト系空孔中にあるアルミニウム量が異なる二種の銅ゼオライトY触媒を比較するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxの選択的触媒還元のための新規な金属処理ゼオライト触媒の製造方法であって、
a.上記金属をゼオライト中にイオン交換で導入し、
b.続いて、上記金属交換ゼオライトを水熱処理する工程からなり、
c.工程bで処理されない金属交換ゼオライト触媒と比較して、
上記触媒において、選択的触媒還元におけるNOx還元活性が改善されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ゼオライトが、ゼオライトY、ファージャサイト、ウルトラ−ステイブルY、ZSM−3、ZSM−20、CSZ−1、ECR−30、LZ−210、ゼオライトL、フェリエライト、MCM−22及びオフレタイトからなる群から選ばれ、前記金属が、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及びセリウムの金属イオンからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属イオン交換を、pHが約2.5〜約3.5である水系の交換溶液中で行う請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属交換ゼオライトを、温度が約540℃〜約1000℃で、水蒸気濃度が約5〜約100%で、5分間〜約250時間水熱処理する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法により製造することを特徴とする銅含有アルミノケイ酸塩ゼオライト触媒。
【請求項6】
窒素酸化物の選択的還元用の水熱的に安定なゼオライト触媒であって、該触媒が金属処理ゼオライト触媒を含み、該金属処理ゼオライトが、骨格外アルミニウムを形成するように処理されて、骨格外アルミニウムの大部分がゼオライトの空孔から除かれることを特徴とする触媒。
【請求項7】
アルミニウム総量の65質量%未満がゼオライトの空孔中に存在する請求項6に記載のゼオライト触媒。
【請求項8】
前記ゼオライトがゼオライトYであり、前記金属が銅である請求項6に記載のゼオライト触媒。
【請求項9】
前記ゼオライトが直径が2〜50nmのメソポアを含み、前記メソポアの空孔容量が少なくとも0.07cm3/gである請求項6に記載のゼオライト触媒。
【請求項10】
アンモニアと酸素を用いて選択的触媒還元により排ガスまたは排煙流中のNOxを還元する方法であって、該排ガスまたは排煙流を、請求項1または請求項6に記載の金属処理ゼオライト触媒に接触させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−519817(P2009−519817A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545808(P2008−545808)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047711
【国際公開番号】WO2007/070639
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【Fターム(参考)】