説明

NOx浄化用触媒の担体

【課題】従来困難であった自動車排NOx浄化触媒の耐熱性を著しく向上させることができる新規のメソポーラスシリカ担体を提供する。
【解決手段】
2〜20nmの細孔径と400〜1400m/gの比表面積とを有するメソポーラスシリカの細孔表面を結晶化させて成ることを特徴とするNOx浄化用触媒の担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNOx浄化用触媒を担持するための担体に関するものであり、本発明の担体を用いることによって自動車用NOx浄化触媒の浄化性能及び耐熱性を飛躍的に向上できる。
【背景技術】
【0002】
ガソリン自動車の排ガス浄化触媒の主流となっている三元触媒は、触媒支持体としてコージェライトのモノリス成形体を用い、該成形体のガス流路内壁に触媒である数100nm〜数μmの大きさの白金−パラジウム−ロジウム粒子を含んだ数μm〜数十μmの大きさの活性アルミナ粒子を塗布した構造となっている。活性アルミナ粒子は数10nm〜数100んmの微粒子の凝集体であり、微粒子間の間隙に触媒粒子が吸着している。担体としての活性アルミナは触媒に対する吸着力が大きいので触媒の保持には好都合であるが、細孔が少なく空間的な広がりもほとんどないので、触媒との接触面積がキーとなるような気相触媒反応には有利ではない。
【0003】
一方、主として化学合成用の触媒担体として用いられている合成ゼオライトや本発明で用いるメソポーラス材料は、比表面積が非常に大きく、ネットワーク状に広がった貫通型の細孔構造(細孔チャンネルという)を有する多孔性材料なので、気相触媒反応には非常に有利である。
一般に、工業的な触媒は多孔性材料に担持した状態で使用されることが多い。多孔性材料の細孔は、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)によると、細孔の直径の大きさによって2nm以下のミクロ細孔、2〜50nmのメソ細孔、及び50nm以上のマクロ細孔に分類されている。0.3nm〜0.7nmのミクロ細孔を選択的に有する材料としては上記の合成ゼオライトが有名である。ミクロからメソの範囲にわたる広い分布をもつような単一の多孔性材料は活性炭以外には知られていない。近年、数nmの位置に細孔ピークをもち、比表面積が400〜1100m/gという非常に大きな値を有するシリカ、アルミナ、及びシリカアルミナ系メソポーラス材料が開発された。これらは、例えば、特許文献1、2、及び3等開示されている。
【特許文献1】特開平5−254827号公報
【特許文献2】特表平5−503499号公表
【特許文献3】特表平6−509374号公表
【0004】
触媒反応は表面反応であるので触媒の比表面積が大きいほど触媒活性が高い。また、触媒を担持するための担体は比表面積が大きいほど触媒活性を発現しやすい。このような観点から自動車用三元触媒をみると、支持体としてのモノリス成形体の比表面積が約0.2m/g、吸着剤(担体)としてのアルミナ粒子の比表面積が110〜340m/gであり、触媒の比表面積は粒径から20〜40m/g程度であると推定される。したがって、400m/g以上の高比表面積を有するメソポーラス材料に担持したnm−サイズの触媒の表面積は三元触媒の10〜10倍であるので、これをモノリス成形体に塗布することによって自動車排NOxに対する触媒活性の向上を図ることが考えられるが、従来、このような発想に基づいて、メソポーラス材料を自動車用NOx浄化触媒の担体として積極的に使用した例はみられない。この主な原因は、750〜850℃に達することもある高温の排ガスによる担体の熱劣化である。
【0005】
具体的には、従来のメソポーラス材料は、高温下での細孔分布の変化と比表面積の著しい低下が問題となっている。より具体的には、規則的な細孔配列を有するメソポーラスシリカMCM−41(エクソン・モービル社の登録商標)は、空気中750〜850℃で24時間の熱処理によって元々の細孔径である2〜3nmの細孔が完全に消失し比表面積が50%以下に激減し、合成メソポーラスアルミナは、同様の熱処理によって元々存在していた数nmの細孔が10nm以上に膨張し比表面積が30%以下に激減するという問題がある。
また、合成ゼオライトが自動車用三元触媒の担体として用いられないのは、排ガスに含まれる高温のNOx及び水蒸気によって合成ゼオライトの成分であるアルミニウムが溶出され担体の細孔構造が破壊されるためである。
【0006】
上記問題を解決するための方策としてはメソポーラス材料等の担体の耐熱性向上であるが、従来、この問題を解決するような担体は見いだされていない。
一方、前記三元触媒自体も高温の排ガス気流下で次第に劣化する。その主な原因は、触媒被毒と触媒粒子のシンタリング(微粒子が構成元素の拡散移動により大粒子に成長する過程をいう。焼結ともいう。)である。又、三元触媒はガソリン車の排ガス浄化には有効であるが、軽油燃料で走行するディーゼル車の排NOx浄化用には用いることができないという問題もある。
その主な理由は、該触媒がディーゼル排ガスにおける比較的高濃度の酸素雰囲気下で著しい活性低下を起こすからである。ガソリン車の排ガスの酸素濃度は1%以下であるが、軽油の空燃比はガソリンの空燃比の数倍以上であるのでディーゼルの排ガスに含まれる酸素濃度は通常5%以上である。ガソリン車の場合は、空気と燃料の理論的重量混合比を示す理論空燃比近傍で燃焼させることで共存酸素を1%以下に制御しているのでこの燃焼はリッチバーンとよばれているが、ディーゼル燃料の燃焼は吸気量が理論値よりも大過剰であるので燃料供給量が相対的に少ないのでリーンバーンとよばれている。この燃焼の条件で酸素濃度が5%になると三元触媒の活性がほとんど失活するからである。
【0007】
また、ディーゼル排ガス処理を困難にしている他の要因は燃料中のイオウ分による触媒被毒である。被毒された触媒をそのまま使用し続けると終には、排ガスをまったく処理できなくなるので定期的に再生処理を行う必要がある。イオウ分によって性能劣化した触媒を連続再生使用する方法としては、定期的に750〜850℃の排ガスを触媒充填部に噴射することによる触媒表面の吸着イオウ分の脱着処理が考えられる。
しかし、この方法を用いると、通常、再生後の触媒粒子はシンタリングによる粒成長を起こしているので、劣化前のフレッシュ触媒が有していた触媒活性が再生後には維持されないという困難な問題を生じる。ディーゼル用NOx浄化触媒の重要な問題は、シンタリングが原因で起きる再生処理後の触媒活性の低下である。上記問題を解決するための方策としては、触媒自体のシンタリング防止と担体による触媒のシンタリング抑制であるが、従来、このような問題を解決するための有効な方法は見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、NOx浄化用触媒を担持するための新規な耐熱性の担体を提供することである。具体的には、自動車用の排NOx浄化触媒の浄化性能と耐熱性を飛躍的に向上させるために、高温での排ガスに対して高い耐熱性を示す新規のメソポーラス担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の細孔分布と高比表面積を有する特定粒径のメソポーラス材料、特にメソポーラスシリカについて、その細孔表面を結晶化させたものが高温の排ガスに対して高い耐熱性を有するだけでなく触媒のシンタリング抑制にも非常に有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(2)の発明である。
(1)2〜20nmの細孔径と400〜1400m/gの比表面積とを有するメソポーラスシリカの細孔表面を結晶化させて成ることを特徴とするNOx浄化用触媒の担体。
(2)該担体が、平均粒径20〜200nmの単分散粒子又はその凝集体であることを特徴とする(1)記載のNOx浄化用触媒の担体に関する。
【発明の効果】
【0010】
細孔表面を結晶化させていないメソポーラスシリカ担体は大気雰囲気中750℃で24時間処理することによって、細孔径が元々の数nmからその50%以下の大きさに縮小する。その為、この担体に自動車用触媒を担持させて成る触媒は、大気雰囲気中750℃で24時間処理によって、処理前の触媒が持っていた自動車、特にリーンバーン排NOxに対する150〜200℃における高い浄化能力が殆ど失われる。この原因は、初期の細孔内に注入された担持触媒が細孔の熱収縮によって閉塞されるためであると考えられる。
これに対して、本発明の細孔表面の結晶化を行ったメソポーラスシリカ担体は、大気雰囲気中750℃で24時間処理後でも細孔分布及び比表面積が殆ど変化しない。また、本発明の担体に自動車排ガス用触媒を担持させて成る触媒は、大気雰囲気中750℃で24時間処理後でも自動車、特にリーンバーン排NOxに対して180〜200℃において50%以上の高い浄化率を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の特徴の第一は、メソポーラスシリカ、メソポーラスメタロシリケートといったメソポーラス材料、特にメソポーラスシリカをNOx浄化触媒の担体として用いることである。その理由は、メソポーラス材料は貫通型の細孔をもつので触媒の捕捉が強いこと、細孔チャンネルを通じたガス拡散の効果が期待できること、細孔分布を制御することで触媒活性種の好ましい粒径範囲を維持できること、触媒を細孔内に坦持することで触媒粒子の再凝集を抑制し触媒の均一高分散を図れること、などの優れた効果があるからである。以下、メソポーラスシリカを例に具体的に説明する。
【0012】
以下で述べるように、NOxに対して高活性を示す触媒粒子の粒径はナノサイズであるので、担体であるメソポーラスシリカの細孔径は触媒粒子と同程度でなければならない。通常、メソポーラス材料の細孔内に坦持される触媒の粒径は、細孔径とほぼ同程度であるので、メソポーラス材料の細孔径を制御することによって、好ましい粒径を有するナノ触媒を均一に分散坦持することができる。したがって、メソポーラスシリカの細孔径と細孔分布が重要な設計要素であり、比表面積はそれに次ぐ設計要素である。ここで、本発明における比表面積とは、窒素の物理吸着を利用してBET吸着等温式から求められる物質1g当たりの表面積のことである。
【0013】
ナノ触媒を担持するためのメソポーラスシリカの細孔径は、2〜20nmの範囲にあり、好ましくは2〜10nmの範囲にある。また、この範囲に存在する細孔が占める細孔容積は全細孔容積の60%以上であることが好ましい。細孔径が2nm未満であってもナノ触媒の坦持は可能であるが不純物等による汚染の影響を考えると2nm以上が好ましい。20nmを越えると分散担持されたナノ触媒が水熱高温条件などによるシンタリングによって巨大粒子に成長しやすくなるので20nm以下が好ましい。ここで、本発明における細孔径とは、BJH法を用いた細孔分布測定法によって測定された細孔分布において、極大値を与える細孔径(直径で示される)の値をいう。
【0014】
比表面積は特別な事情がない限り高ければ高いほどよいが、触媒の担持量と材料の強度とのバランスから、本発明に用いることのできるメソポーラスシリカの比表面積は400〜1400m/gであり、好ましくは600〜1200m/g、である。比表面積が400m/g以上であると触媒の担持量を多くすることが出来るので触媒性能を引き出す上で好ましい。一方、材料の強度の面からは比表面積が1400m/g以下であることが好ましい。
本発明の第二の特徴は、前記メソポーラスシリカの細孔表面に結晶化処理を施したことである。本発明のメソポーラスシリカは、材料自体が非晶質であり細孔の配列についても規則的な配列性が低い(小角X線散乱測定による評価では、細孔による散乱ピークが1本しか観察されない)。既知の合成ゼオライトが結晶性物質であり、また、メソポーラスシリカ及びメソポーラスシリカアルミナ系のMCM−41やMCM−48(エクソン・モービル社の登録商標)が材料自体は非晶質であるが細孔は結晶系の規則的配置をとるのとは対照的である。
【0015】
本発明は、メソポーラスシリカ又はメソポーラスメタロシリケートといったメソポーラス材料の細孔表面に結晶化処理を施すことによって、大気雰囲気下750〜850℃処理に対する耐熱性が著しく向上する。本発明で言う所の耐熱性とは、担体の細孔分布と比表面積の高温での熱的変化が小さいことをいい、具体的には大気雰囲気下750℃で24時間処理後の担体の細孔径と比表面積の変化率が結晶化処理前に比べてそれぞれ10%以下であることを言う。未処理のメソポーラスシリカは高温熱処理によって細孔が収縮し細孔径として50%以上も小さくなるのでこれに担持された触媒は閉塞されるので触媒性能を発揮できない。従って、本発明のような細孔表面の結晶化によって担体の耐熱性が向上するとそれに担持された触媒の熱的寸法変化が抑制されるので、それによって触媒性能が安定化するものと考えられる。
【0016】
本発明の第三の特徴は、前記の結晶化処理されたメソポーラスシリカとして平均粒径20〜200nmの単分散粒子又はこの凝集体を担体として用いることである。意外なことに、メソポーラスシリカナノ粒子を担体に用いることによって、担持された触媒のシンタリングによる粒成長の限界を十分制御できることがわかった。即ち、本発明メソポーラスシリカナノ粒子の担体を用いることによって、触媒粒子の平均粒径を2〜15nmの範囲に制御できる。尚、メソポーラスシリカナノ粒子の平均粒径が20〜200nmの範囲は、実験的に求められた担持触媒の大気雰囲気下750℃で24時間処理後における粒径と触媒活性の粒径依存性を考慮して決定したものである。
【0017】
したがって、第一から第三の特徴を兼ね備えたメソポーラスシリカを担体に用いることによって、自動車排NOxに対してこれまでに例のないような顕著な浄化性能を有する触媒が得られることがわかった。
本発明の担体は、NOx浄化処理を目的とする既知の触媒及び研究中の触媒の殆どに対して用いることができる。自動車用としては、通常、白金−パラジウム−ロジウムの三元触媒又は白金を主体としこれに異なる機能を持つ助触媒的成分を付加した触媒を担持するための担体として用いることができる。本発明の担体は工場の排NOx処理のためにも用いることが可能であり、例えば、銅系又は鉄系触媒の担体として使用できる。
【0018】
白金触媒の助触媒的成分としては、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、バリウム、及びこれらの化合物をあげることができる。これらの中で、不動態化膜になるクロム、鉄、コバルト、ニッケル、還元剤の吸着力が比較的高い銅、NOx吸蔵性がある酸化バリウム、中程度の酸化力をもつ酸化セリウムと三二酸化マンガン、SOx被毒防止に有効な銅−亜鉛、鉄−クロム、酸化モリブデン、などは好ましい。この成分の添加量は、通常、モル比で白金と同質量程度から100倍程度又は100分の1程度であるが、必要に応じてこの範囲外であってもよい。
【0019】
触媒粒子の表面積は粒径の二乗に反比例するので、触媒粒子が小さいほど触媒活性が高くなる。例えば、1nmの触媒粒子の表面積は0.1μmのそれと比べると10倍大きい。また、ナノサイズに微粒化された触媒粒子は、活性を示すエッジ、コーナー、ステップなどの高次数の結晶面を多量にもつので、触媒活性が著しく向上するだけでなく、バルクでは触媒活性を示さないような不活性金属でも予期しなかった触媒活性を発現する場合があることが知られている。したがって、触媒能力の観点からは触媒粒子は細かいほど好ましいのであるが、反面、微粒化による表面酸化、副反応などの好ましくない性質もでてくるので、微粒子の粒子径には最適範囲が存在する。本発明における目的のNOx浄化処理に対して効果的な活性を示す触媒粒子の平均粒径は1〜20nmの範囲にあり特に1〜10nmの範囲が高活性を示すことがわかった。
【0020】
触媒の担持量は、通常、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であるが、量的な問題がなければ、通常は、数%の担持量で用いる。触媒坦持量は20質量%以上でも可能であるが、坦持量が過剰になると反応にほとんど寄与しない細孔深部の触媒が増えるので20質量%未満が好ましい。また、活性能を維持する点から0.01質量%以上が好ましい。
本発明の担体を用いた担持触媒は、自動車排ガス処理等に使用されているモノリス成形体に塗布して用いることもできる。ここでいうモノリス成形体とは、成形体の断面が網目状で、軸方向に平行に互いに薄い壁によって仕切られたガス流路を設けている成形体のことである。成形体の外形は、特に限定するものではないが、通常は、円柱形である。上記担持触媒の塗布量は、3〜30質量%が好ましい。担体内部に存在する触媒へのガス拡散能を維持する点から30質量%未満が好ましい。また、触媒性能を維持する点から3質量%を超えることが好ましい。モノリス成形体への触媒の塗布量相当の付着量は、成形体の0.03〜3質量%が好ましい。
【0021】
排NOxの処理方法は、対象とする排ガスによって異なる。自動車の排ガスの内、ガソリン車の排ガス処理の場合には、触媒下、排ガスに存在する一酸化炭素、低級炭化水素及びNOxが浄化される。共存する一酸化炭素及び低級炭化水素は還元剤として働く。ディーゼル乗用車の排ガス処理は、触媒下、排ガスに含まれる共存酸素によって排NOxの主成分である一酸化窒素を二酸化窒素に酸化し、生成した二酸化窒素は燃料に少量含まれる炭素数1から6の低級オレフィンによって還元される。
トラック等の大型ディーゼル車の排ガスに対しては、搭載した尿素水によって容易に窒素と水に分解される。
【0022】
又、工場の排NOxに対しては、アンモニアを還元剤として使用することができる。
本発明で用いるメソポーラスシリカは、通常、以下に説明するゾル-ゲル法によって製造することができる。
例えば、界面活性剤をメソ細孔のテンプレートとして用いる従来のゾル−ゲル法(例えば、特許文献1、2、及び3)に準じて製造することができる。この方法では、メソポーラスシリカの前駆物質には、通常、金属アルコキシド、コロイダルシリカ、珪酸ナトリウム、及びこれらの混合物を用いる。界面活性剤は、従来のメソポア材料の作成に用いられているミセル形成の界面活性剤、例えば、長鎖の4級アンモニウム塩、長鎖のアルキルアミンN−オキシド、長鎖のスルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のいずれであってもよい。溶媒として、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水系溶媒が好ましい。反応系に金属への配位能を有する化合物を少量添加すると反応系の安定性を著しく高めることができる。このような安定剤としては、アセチルアセトン、テトラメチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ピリジン、ピコリンなどの金属配位能を有する化合物が好ましい。
【0023】
前駆物質、界面活性剤、溶媒及び安定剤からなる反応系の組成は、前駆物質のモル比が0.01〜0.60、好ましくは0.02〜0.50、前駆物質/界面活性剤のモル比が1〜30、好ましくは1〜10、溶媒/界面活性剤のモル比が1〜1000、好ましくは5〜500、安定化剤/主剤のモル比が0.01〜1.0、好ましくは0.2〜0.6である。
反応溶液の水素イオン濃度(pH)は、得られる粒子の粒径に大きな影響を与える。pHが12〜10の場合には、粒径が数100nm以上の粒子が得られる。pHが10〜7の場合には数100nm〜100nm程度の粒子が得られる。pHが7〜3の場合には100nm〜数10nmの粒子が得られる。反応温度は、20〜180℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。
【0024】
反応時間は5〜100時間、好ましくは10〜50時間の範囲である。
反応生成物は通常、濾過により分離し、十分に水洗後、乾燥し、次いで、含有している界面活性剤をアルコールなどの有機溶媒により抽出後、500〜1000℃の高温で熱分解することによって完全除去し、メソポーラスシリカを得ることができる。
本発明の担体は、上記の方法で得られるメソポーラスシリカの細孔表面を結晶化処理することによって製造することができる。
結晶化処理は、通常、以下のようにして行うことができる。すなわち、メソポーラスシリカの細孔内に結晶化促進剤を入れ、水熱処理することによって行うことができる。
【0025】
結晶化促進剤としては、例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化アンチモン、塩化第二錫、塩化アルミニウム、リン酸塩、ポリリン酸、等の既知の化合物を用いることができる。細孔内への結晶化促進剤の注入は、通常、水溶液を含浸後、余剰の水溶液をろ過、真空乾燥することによって行われる。水溶液の濃度は、結晶化促進剤の飽和濃度以下であり、通常、数質量%〜数10質量%である。
水熱処理は、通常、耐圧密閉容器に水を入れ、水面に触れないように試料を入れた後、通常、150〜250℃の温度で数10分〜数日処理することによって行われる。処理条件は、結晶化促進剤の種類によって異なり、実験的に適切な条件が決められる。
【0026】
尚、本発明の担体表面(メソポーラスシリカ表面)の結晶化とは、高分解能透過型分析電子顕微鏡で観察した細孔部分の電子線回折を測定した結果、結晶性が見出された場合をいう。
本発明の担体への触媒の担持は、通常、イオン交換法又は含浸法によって製造することができる。これらの二つの方法は、担体への触媒の沈着化について、イオン交換法が担体表面のイオン交換能を利用し、含浸法が担体のもつ毛管作用を利用しているという違いはあるが、基本的なプロセスはほとんど同じである。すなわち、本発明の担体を触媒原料の水溶液に浸した後、濾過、乾燥し、必要に応じて水洗を行い、還元剤で還元処理することによって製造することができる。
【0027】
白金触媒の原料としては、例えば、HPtCl、(NHPtCl、HPtCl、(NHPtCl、Pt(NH(NO、Pt(NH(OH)、PtCl、白金のアセチルアセトナート、等を用いることができる。必要に応じて主触媒に添加する助触媒的成分の原料としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などの水溶性塩類を用いることができる。
還元剤としては、水素、ヒドラジン水溶液、ホルマリン、等を用いることができる。還元は、それぞれの還元剤について知られている通常の条件で行なえばよい。例えば、水素還元は、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈した水素ガス気流下にサンプルを置き、通常、300〜500℃で数時間処理することによって行なうことができる。還元後、必要に応じて、不活性ガス気流下500〜1000℃で数時間熱処理してもよい。
【0028】
本発明の担体を用いた担持触媒をモノリス成形体に塗布することによって(便宜上、これをモノリス触媒と記す)、NOx浄化用に用いることもできる。該モノリス触媒は、自動車用三元触媒を付着したモノリス成形体の製造方法に準じて製造することができる。例えば、本発明担体を用いた担持触媒とバインダーとしてのコロイダルシリカを、通常、担持触媒:バインダー=1:(0.01〜0.2)の質量割合で混合した混合物をつくり、これを水分散することによって通常10〜50質量%のスラリーを調整した後、該スラリーにモノリス成形体を浸漬してモノリス成形体のガス流路の内壁にスラリーを付着させ、乾燥後、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下500〜1000℃で数時間熱処理することによって製造することがきる。コロイダルシリカ以外のバインダーとしては、メチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエチレングリコールなどを適宜用いることもできる。
【0029】
他の方法としては、モノリス成形体に本発明の担体を塗布したのち、これに触媒原料を含浸し、還元処理、熱処理を行う方法によっても製造することができる。成形体に塗布する触媒層の厚みは、通常、1μm〜100μmであるのが好ましく、10μm〜50μmの範囲が特に好ましい。十分な反応ガスの拡散速度を得るには、100μm以下が好ましく。触媒性能の劣化防止の点から1μm以上が好ましい。
上記モノリス触媒は、自動車、特にディーゼル自動車に搭載することによって、自動車が排出するリーンバーン排NOxを150〜700℃の広い温度範囲において極めて効果的に浄化することができる。排NOxの処理には還元剤が必要であるが、乗用車などの小型車の場合には、燃料である軽油に少量含まれている炭素数1から6の低級オレフィン及び低級パラフィンが還元剤となるので、燃料を直接又は改質器を通して触媒上に供給すればよい。リッチバーンの時には酸素濃度が高くリーンバーンの時には酸素濃度が低いので、リッチバーンとリーンバーンを交互に行うことができる小型ディーゼルの排ガス浄化処理のために上記モノリス触媒を用いると、150〜700℃の広い温度範囲において効率よく排NOxを浄化処理できる。また、トラックなどの大型車の場合には、通常、尿素水を熱分解して還元剤としてのアンモニアを発生させ触媒上に供給するシステムを利用できるので、尿素供給システムを搭載する大型ディーゼル用の排NOx浄化用触媒としても用いることができる。
【0030】
なお、本発明で用いた細孔表面の結晶化は、メソポーラスシリカ以外のメソポーラス材料一般に応用可能であり、これによって得られる細孔表面結晶化メソポーラス材料をNOx浄化用触媒の担体として用いる時、程度の差はあるけれども本発明の担体と同様に担持触媒の耐熱性が向上する。
【実施例】
【0031】
以下に実施例などを挙げて本発明を具体的に説明する。
担体の平均粒径は、日立(株)製走査型高分解能電子顕微鏡S−4800による形態観察によって決定した。
触媒の平均粒径は、日立(株)製高分解能透過型分析電子顕微鏡HF−2000による形態観察によって決定し、一方、理学電機社製X線回折装置RINT2000によって測定して得られた粉末X線回折パターンのメインピークの半値幅をシェラー式に代入して算出した値と一致することを確認した。
比表面積及び細孔分布は、脱吸着の気体として窒素を用い、カルロエルバ社製ソープトマチック1800型装置によって測定した。比表面積はBET法によって求めた。
【0032】
細孔分布は1〜200nmの範囲を測定し、BJH法で求められる微分分布で示した。合成したメソポーラス材料の多くは指数関数的に左肩上がりの分布における特定の細孔直径の位置にピークを示した。この時の細孔直径が、本発明における細孔径である。
細孔表面の結晶性は、日立(株)製高分解能透過型分析電子顕微鏡H−2000で観察した細孔部分の電子線回折を測定することによって調べた。
残留界面活性剤を調べるための熱分析は、島津製作所製熱分析装置DTA−50によって、昇温速度20℃min−1で測定した。
自動車排NOxのモデルガスとして、ヘリウム希釈一酸化窒素、酸素、及び還元性ガス(エチレン又はアンモニア)を用いた。処理後のガスに含まれるNOxの含有量は、以下の亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン法(JIS K 0104)に準じて定量分析し、一酸化窒素の処理率を求めた。
[操作方法]
テドラーバッグに反応ガスを採取する。反応ガスの入ったテドラーバッグにガスタイトシリンジを差込み反応ガスを20ml採取する。三方コックを付けた容量100mlのナスフラスコ内を減圧にし、ガスタイトシリンジの反応ガスを全量導入する。該ナスフラスコに0.1規定アンモニア水20mlを加え1時間放置する。10%塩酸水溶液にスルファニルアミド1gを溶解した溶液を1ml加え、30秒程度攪拌後、3分放置する。これに、蒸留水100mlにN−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩0.1gを溶解した溶液を1ml加え、30秒程度攪拌後、20分静置する。この液を石英セル(セル長10mm)に入れ、540nmの吸光度を測定する。一酸化窒素の反応率は、下記式(1)によって求めた。
【0033】
【数1】

[標準試料1]メソポーラスシリカの合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させる。この時の水溶液のpHは約12であった。攪拌下でテトラエトキシシラン125gを加えて室温で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスシリカを得た。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.8nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が832m/g、細孔容積が0.93 cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.93cm/gであった。広角粉末X線回折図には、結晶パターンが観察されなかった。透過型高分解能分析電子顕微鏡によって細孔部分を観察し、この部分を電子線回折測定した結果、ハローが観察され非晶質であることが確認された。
[標準試料2]メソポーラスシリカナノ粒子の合成
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させ、10%酢酸水溶液を加えてpHを10に調整した。これに攪拌下でテトラエトキシシラン125gを加えて室温で10分攪拌した後、10%酢酸水溶液を加えて水溶液のpHを5.0に調整した。室温で22時間攪拌した後、生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃で5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスシリカを得た。走査型電子顕微鏡によって、平均粒径30〜60nmの一次粒子が複数個凝集した凝集体であることが確認された。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が950m/g、細孔容積が1.10cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.10cm/gであった。また、透過型高分解能分析電子顕微鏡によって細孔部分を観察し、この部分を電子線回折測定した結果、ハローが観察され、非晶質であることが確認された。
[実施例1]メソポーラスシリカの細孔表面の結晶化、耐熱性試験
標準試料1のメソポーラスシリカ3gに10質量%の硫酸亜鉛水溶液30gを加え、10分程度かき混ぜた後、余剰の水溶液を減圧濾過して取り除き、室温で2時間真空乾燥した。これを円筒状の紙製容器に入れ、5mlの蒸留水を張った容積50mlのステンレス製耐圧容器に入れた後、160℃で2時間熱処理を行い、室温まで放冷し、耐圧容器から試料を取り出し、水洗、減圧濾過後、100℃で3時間真空乾燥した。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.8nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が830m/g、細孔容積が0.93cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.93cm/gであった。走査型高分解能電子顕微鏡によって一次粒子の大きさが300〜500nmであり、この粒子が複数個凝集した凝集体であることが確認された。透過型高分解能分析電子顕微鏡によって細孔部分を観察し、この部分を電子線回折測定した結果、弱いスポットパターンが観察され、六方晶シリカに帰属されることが確認された。
【0034】
つぎに、得られた上記試料を電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理を行った。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.8nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が830m/g、細孔容積が0.93cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.93cm/gであった。
[実施例2]メソポーラスシリカナノ粒子の細孔表面の結晶化、耐熱性試験
標準試料2のメソポーラスシリカナノ粒子3gに10質量%の硫酸亜鉛水溶液30gを加え、10分程度かき混ぜた後、余剰の水溶液を減圧濾過して取り除き、室温で2時間真空乾燥した。これを円筒状の紙製容器に入れ、5mlの蒸留水を張った容積50mlのステンレス製耐圧容器に入れ、160℃で2時間熱処理を行った後、室温まで放冷し、耐圧容器から試料を取り出し、水洗、減圧濾過後、100℃で3時間真空乾燥した。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が960m/g、細孔容積が1.10cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.10cm/gであった。走査型高分解能電子顕微鏡によって一次粒子の大きさが30〜60nmであり、この粒子が数個凝集した凝集体であることが確認された。広角粉末X線回折図には、結晶パターンが観察されなかった。また、透過型高分解能分析電子顕微鏡によって細孔部分を観察し、この部分を電子線回折測定した結果、弱いスポットパターンが観察され、六方晶シリカに帰属されることが確認された。
【0035】
つぎに、得られた上記試料を電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理を行った。細孔分布及び比表面積測定の結果、約2.5nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が960m/g、細孔容積が1.10cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.10cm/gであった。
[比較例1]メソポーラスシリカの耐熱性試験
標準試料1のメソポーラスシリカを電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理した。細孔分布及び比表面積測定の結果、約1.6nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が871m/g、細孔容積が0.65cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は0.55cm/gであった。
[比較例2]メソポーラスシリカナノ粒子の耐熱性試験
標準試料2のメソポーラスシリカナノ粒子を電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理を行った。細孔分布及び比表面積測定の結果、約1.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が920m/g、細孔容積が1.05cm/g、2〜50nmの細孔が占める容積は1.05cm/gであった。
上記メソポーラスシリカについての耐熱性に関する実験結果をまとめて表1に示す。
【0036】
【表1】

表1から、本発明で行った細孔表面の結晶化方法は、メソポーラスシリカの細孔特性を処理前に比べて殆ど変化させないこと、本発明の細孔表面結晶化メソポーラスシリカは熱処理後でも細孔特性は殆ど変化しないこと、未処理のメソポーラスシリカは熱処理によって細孔径が50%以下に収縮することがわかる。したがって、本発明の細孔表面結晶化メソポーラスシリカは、高温熱処理が行われる触媒の担体として有効であることがわかる。
[実施例3〜4]結晶化処理メソポーラスシリカを用いた担持触媒の合成
蒸留水20gにHPtCl・6HOを0.267g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに実施例1〜2の結晶化処理後のメソポーラス材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃で3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金の含有量がそれぞれ約2質量%の担持触媒を合成した。それぞれの坦持触媒における白金粒子の平均粒径は担体に用いたそれぞれのメソポーラスシリカの細孔径とほとんど同じであった。
[比較例3〜4]未処理のメソポーラスシリカを用いた担持触媒の合成
蒸留水20gにHPtCl・6HOを0.267g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに標準試料1〜2のそれぞれのメソポーラス材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃で3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金の含有量がそれぞれ約2質量%の担持触媒を合成した。それぞれの坦持触媒における白金粒子の平均粒径は担体に用いたそれぞれの標準試料の細孔径とほとんど同じであった。
[実施例5〜6、比較例5〜6]
結晶化処理メソポーラスシリカに担持した触媒によるNOx処理
実施例3〜4の担持触媒を電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理した。熱処理後の担持触媒0.6gをそれぞれ石英製の連続流通式反応管に充填し、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素を流通処理した。被処理ガスの成分モル濃度を、一酸化窒素0.1%、酸素14%、水蒸気10%、及びエチレン0.3%とした。反応管へ導入した混合ガスの流量を毎分100ml、処理温度を100〜350℃とした。160℃、170℃、200℃、250℃における排ガスをサンプリングし、一酸化窒素の浄化処理率を求めた。また、比較のために実施例3,4の担持触媒を用いて同様な条件でNOx処理を行った(比較例5,6)。結果を表2に示した。
[比較例7〜10]未処理のメソポーラス材料を用いた担持触媒の耐熱性
比較例3〜4の担持触媒を電気炉に入れ、750℃で24時間熱処理した。熱処理後の担持触媒0.6gをそれぞれ石英製の連続流通式反応管に充填し、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素を流通処理した。被処理ガスの成分モル濃度を、一酸化窒素0.1%、酸素14%、水蒸気10%、及びエチレン0.3%とした。反応管へ導入した混合ガスの流量を毎分100ml、処理温度を100〜350℃とした。160℃、170℃、200℃、250℃における排ガスをサンプリングし、一酸化窒素の浄化処理率を求めた(比較例7,8)。また、比較のために比較例3〜4の担持触媒を用いて同様な条件でNOx処理を行った(比較例9,10)。結果を表2に示した。
【0037】
【表2】

表2から、本発明の担体を用いた担持触媒は、高温処理後でも、エチレンなどの炭化水素を還元剤に用いて高濃度酸素共存下でのNOxを低温領域でも効率よく浄化できることがわかった。一方、結晶化処理を行っていない担体を用いた担持触媒は、高温処理によって元々持っていた低温領域での高いNOx処理性能が殆ど失われることがわかった。したがって、本発明の担体は、高温での触媒再生処理が必要なディーゼル車の排NOx処理に適していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の担体は、NOx浄化用触媒の担体、特に、耐熱性を必要とする自動車の排NOx浄化用触媒の担体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜20nmの細孔径と400〜1400m/gの比表面積とを有するメソポーラスシリカの細孔表面を結晶化させて成ることを特徴とするNO浄化用触媒の担体。
【請求項2】
該担体が、平均粒径20〜200nmの単分散粒子又はその凝集体であることを特徴とする請求項1記載のNOx浄化用触媒の担体。

【公開番号】特開2007−69095(P2007−69095A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257268(P2005−257268)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000173924)財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】