説明

OCT用光プローブおよび光断層画像化装置

【課題】OCT用光プローブにおいて、シース交換時のシース長の調整を可能とし、且つシース交換後の十分な水密性の再現を実現させる。
【解決手段】光ファイバ12挿通される配管具51の外周中央にシール部材52を装着する。配管具51の一端の圧入部55をシース11の基端に圧入し、他端の挿入部56を本体20の略円筒状の取付孔31に所望位置まで挿入する。保持具53の開口部58にシース11の先端を挿入させることにより、シール部材52を保持具53と本体20との間で挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT用光プローブ、およびこのOCT用光プローブを用いて光断層画像を取得する光断層画像化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内で断層画像を取得する際に、OCT計測を利用した光断層画像化装置が用いられることがある。この光断層画像化装置では、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光に分割した後、この測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光と参照光とを合波し、この反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を取得するものである。OCT計測には、TD(Time Domain)−OCT計測とFD(Fourier Domain)−OCT計測の2種類が存在する。FD−OCT計測は、高速な測定が可能となる手法として、近年注目されている。FD−OCT計測を行う光断層画像化装置で代表的なものとしては、SD(Spectral Domain)−OCT装置とSS(Swept Source)−OCT装置の2種類が挙げられる。
【0003】
これらの光断層画像化装置には、体腔内に挿入され、測定対象の光断層画像を取得するために、測定光を導波させて少なくとも一次元方向に走査させるとともに、反射光を導波させるOCT用光プローブが用いられている。OCT用光プローブは、体腔内に挿入される先端部と先端部から射出される測定光を走査する本体とから構成される。先端部は、光ファイバと、光ファイバの先端に固定された先端光学系と、光ファイバと先端光学系を被覆する可撓性の長尺のシースとから構成されている。通常、このシースは、図14に示すように、口金部を基端に圧入し、接着剤等により固定されている。
【0004】
OCT用光プローブの繰返しの使用は、シースに傷や座屈による曲がり癖が発生する場合があり、シースの傷は断層画像の劣化、シースの曲がり癖は、体腔内への挿入を困難にさせる虞がある。しかしながら、OCT用光プローブは高額であり、コストの観点からシースのみが交換されている。交換時には、交換するシースの長さにばらつきが存在するため、先端光学系がシース内の所定位置となるように、シース長を調整する必要がある。
【0005】
特許文献1には、本体に螺着された固定パイプに、シースの基端に圧入された配管具を摺動自在に嵌合させ、配管具を止めネジにより固定パイプに固定するシース長調整機構を有するOCT用光プローブが提案されている。特許文献2には、配管具に雄ネジ部、本体に雌ネジ部を設け、配管具の本体へのネジ込み量により、シース長を調整するOCT用光プローブが提案されている。
【特許文献1】特開2001−87269
【特許文献2】特開2002−263106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、OCT用光プローブは、体腔内にて使用されるものであり、2次感染を防止する観点から消毒液で洗浄して使用されため、水密性が要求され、特に、シース交換後における十分な水密性の再現が重要となる。
【0007】
特許文献1に提案されている技術では、水密性が要求される、固定パイプと本体との間、および固定パイプと配管具との間に、Oリングをそれぞれ設けている。シース交換時には、固定パイプを本体に螺合することにより、固定パイプと本体との間のOリングを押圧し、固定パイプと本体との間の水密性を確保しているが、固定パイプと配管具との間の水密性は、固定パイプと配管具の間のOリングが配管具に圧接することでのみ維持されているため、Оリングの経年変化等により、シース交換後の十分な水密性の再現が困難となる虞がある。
【0008】
特許文献2に提案されている技術では、本体と配管具との間の水密性については、特に提案されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、OCT用光プローブのシース交換時のシース長の調整を可能とし、且つシース交換後の十分な水密性の再現を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明のOCT用光プローブは、シース内の光ファイバの先端からの光を、この光ファイバの軸線回りに走査させるOCT用光プローブにおいて、光ファイバを挿通する円筒状の取付孔を有する本体と、内部に光ファイバが挿通され、一端にシースに圧入される圧入部と他端に取付孔の所望位置まで挿入可能とされた挿入部とを有する配管具と、この配管具の外周中央に装着されるシール部材と、略中央に開口部を有し、この開口部をシースの先端から挿入させて、シール部材を本体との間で挟持する保持具とを有することを特徴とする。ここで、「略円筒状」とは、必ずしも直線の軸を中心として端から端まで厳密な一定の径を有する円筒状を意味するものではなく、異なる径からなる段付きの円筒状や、円筒面に溝等が形成されているものも含むものである。上記「外周中央」とは、厳密な配管具の外周の中央位置を意味するものではなく、外周の中央位置近傍も含むものである。上記「シール部材」とは、広く密閉に使用する部材を意味するが、具体的には、Оリング、Yパッキン、Vパッキン、密封するのに最適な形状で成型された成型品をも意味するものである。上記「略中央」とは、厳密な中央位置に限定されるものではなく、中央位置近傍も含むものである。
【0011】
また、保持具が開口部の本体側にテーパ面をさらに有し、このテーパ面と本体との間でシール部材を挟持してもよい。ここで、「本体側」とは、本体に面する側を意味するものである。上記「テーパ面をさらに有し」とは、開口部を加工してテーパ面を形成することに限定されず、開口部にテーパ面を有する他部品を設けることも含まれるものである。
【0012】
また、保持具の開口部に形成された雌ネジと配管具の外周に形成された雄ネジとが螺合することにより、保持具が本体側に移動可能とされ、この移動により保持具と本体との間でシール部材を挟持してもよい。ここで、「開口部に形成」とは、開口部の、配管具の外周と面する部分に形成することを意味するものである。上記「配管具の外周」とは、配管具の外周の全部を意味するものではなく、配管具の外周の一部であってもよい。
【0013】
また、本体に設けられた突起と保持具に設けられた鉤形状の係合溝とを係合させることにより、保持具と本体との間でシール部材を挟持してもよい。
【0014】
また、本体に設けられた鉤形状の係合溝と保持具に設けられた突起とを係合させることにより、保持具と本体との間でシール部材を挟持してもよい。
【0015】
また、本発明による光断層画像化装置は、先に説明したような各計測方式の光断層画像化装置に、本発明によるOCT用光プローブを用いたことを特徴とするものである。すなわち、本発明による光断層画像化装置は、光を射出する光源手段と、この光源手段から射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、測定光を測定対象に照射するOCT用光プローブと、測定対象に測定光が照射されたときの測定対象からの反射光と参照光とを合波する合波手段と、合波された反射光と参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、検出された干渉光の周波数および強度に基づいて、測定対象の複数の深さ位置における反射強度を検出し、これらの各深さ位置における反射光の強度に基づいて測定対象の断層画像を取得する断層画像処理手段とを備えてなる光断層画像化装置において、OCT用光プローブが、本発明のOCT用光プローブを含むものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のOCT用光プローブは、シースに圧入された配管具の挿入部が本体の円筒状の取付孔に所望位置まで挿入可能であり、シースの長さにばらつきがあっても、シース交換時のシース長の調整が可能である。また、保持具の開口部にシースを先端から挿通させて、配管具の外周中央に装着されたシール部材を保持具と本体側とで挟持することにより。シース交換後の十分な水密性の再現できる。さらに、保持具の開口部の本体側にテーパ面を設けることにより、このテーパ面がシール部材を配管具と本体の両方に押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のOCT用光プローブ2が適用された光断層画像化装置1の全体斜視図である。図1に示すように、光断層画像化装置1は、光断層処理装置100と、この光断層処理装置100と光ファイバケーブル3および制御ケーブル4により接続される駆動ユニット60と、この駆動ユニット60に着脱自在とされている本発明のOCT用光プローブ2とから構成されている。
【0018】
光ファイバケーブル3は、図示しない光ファイバを被覆するものであり、この光ファイバは、駆動ユニット60およびOCT用光プローブ2を挿通する。駆動ユニット60は、図示しないロータリコネクタを有することにより、駆動ユニット60内の光ファイバとOCT用光プローブ2内の光ファイバを着脱自在とさせている。また、駆動ユニット60は、図示しない駆動手段を有することにより、この図示しないロータリコネクタを介して光ファイバを回動させるものとなっている。制御ケーブル4は、駆動ユニット60に内蔵される図示しない駆動手段に接続されるものである。OCT用光プローブ2は、可撓性を有する長尺の先端部材10と、先端部材10の基端側に固定された本体20とから構成される。
【0019】
OCT用光プローブ2について詳細に説明する。図2は、本発明のOCT用光プローブ2の断面図である。
【0020】
OCT用光プローブ2の先端部材10は、通常1.6〜3m程度の長さを有し、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通して体腔内Bに挿入される場合があるが、理解を容易にするため内視鏡は図示していない。先端部材10は、略円筒状のシース11と、このシース11の中に長手方向に延びて収容された光ファイバ12と、この光ファイバ12を被覆するとともに、光ファイバ12に固定される可撓性シャフト13と、光ファイバ12の先端から出射した光を測定対象Mに向けて集光する先端光学系14と、光ファイバ12の光軸LPと同軸上で先端光学系14と一体的に固定されるフェルール15等から構成されている。このフェルール15は、光ファイバ12および可撓性シャフト13を接着材等で保持し、さらにスリーブ16と嵌合することにより、この保持を補強している。
【0021】
シース11は、可撓性を有する部材からなり、本実施形態においては、このシース11先端は、キャップ11aにより閉塞された構造を有している。可撓性シャフト13は、金属線を密巻き螺状に巻回した密着コイルから構成されている。先端光学系14は、略球状の形状を有しており、光ファイバ12から射出した測定光L1を偏向させるともに、測定対象Mに対し集光し、測定対象Mからの反射光L3を偏向するとともに、集光させて光ファイバ12に入射させる。ここで、先端光学系14の焦点距離は、例えば光ファイバ12の光軸LPからシース11の径方向に向かって3mm程度の位置に形成されている。先端光学系14から射出した測定光L1は、光軸LPの垂直方向から約7度程度傾いている。
【0022】
ここで、本発明のOCT用光プローブ2の先端部材10の動作について説明する。前述のとおり、光ファイバ12は、駆動ユニット60に内蔵される駆動手段と接続されており、この駆動手段により光ファイバ12が光軸LP回りの矢印R方向に回動される。光ファイバ12の光軸LP回りの回動により、フェルール15を介して光ファイバ12に固定されている先端光学系14も光軸LP回りの矢印R方向に回動される。したがって、OCT用光プローブ2は、測定対象Mに対し、先端光学系14から射出される測定光L1を光軸LP回りの矢印R方向に走査する。なお、この回動は、一定方向への回転に限定されるものではなく、所定範囲での揺動をも含むものとする。
【0023】
OCT用光プローブ2の本体20について説明する。本体20は、固定部材30、光ファイバ12の光軸LP回りに固定部材30に対して回動するともに、駆動ユニット60に接続される回転部材40、および固定部材30の先端側に装着され、シース11の基端を保持する保持部材50から構成されている。
【0024】
固定部材30は、光ファイバ12および可撓性シャフト13が貫通するとともに、保持部30が装着される取付孔31を有する内スリーブ32、この内スリーブ32の外側に内スリーブ32に対して光ファイバ12の光軸LP方向にスライド可能に取り付けられた外スリーブ33、内スリーブ32に嵌合固着され、シース11の基端側の部位を囲繞するように設けられた折れ止め用のゴムスリーブ34、内スリーブ32に受容され、回転部材40を回転自在に保持するベアリング35とから構成されている。
【0025】
回転部材40は、可撓性シャフト13が固着され、光ファイバ12が貫通する連結材41、光ファイバ12の基端が接着され、連結材41に連結して設けられている基端側フェルール42、連結材41の基端側の周囲に配置され、この連結材41を基端側に付勢するスプリング43、駆動ユニット60と接続する接続リング44、この接続リング44と連結され、連結部材25を囲繞するように配置されている回転筒45から構成されている。
【0026】
保持部材50は、光ファイバ12および可撓性シャフト13が挿通され、基端側が取付孔31と装着されるともに、先端側がシース11の基端に圧入される配管具51と、配管具51の外周中央57に装着されたOリング52と、配管具51に装着されて内スリーブ32側に移動することにより、内スリーブ32との間でOリング52を挟持する保持具53とから構成されている。
【0027】
ここで、保持部材50およびこの保持部材50によるシース11の交換について詳細に説明する。図3は、保持部材50の第1の実施形態を示す図である。図3(A)に示すように、外周中央57にОリング52を装着した配管具51の貫通穴54に段付きピンを挿入する。シース11の基端に配管具51の圧入部55を圧入する。このように、配管具51に光ファイバ12および可撓性シャフト13挿通させない状態で、シース11への配管具51の圧入が可能であり、作業性が向上する。
【0028】
次に、図3(B)に示すように、シース11に圧入された配管具51の挿入部56を内スリーブ32に形成された取付孔31の所定位置まで挿入する。本実施形態においては、挿入部56の外周56aに形成された雄ネジ56bと取付孔31の内周31aに形成された雌ネジ31bとを螺合することにより、所望位置まで挿入可能な構造となっている。雄ネジ56bは挿入部56の外周56aの全部に形成される必要はなく、一部であってもよい。同様に、雌ネジ31bは取付孔31の内周31aの全部に形成される必要はなく、一部であってもよい。
【0029】
次に、図3(C)に示すように、保持具53の中央に設けられた開口部58にシース11を先端から挿入させる。この開口部58の径は、圧入部55の径よりも大きいため、保持具53は、圧入部55を越えて内スリーブ32側に移動可能となっている。本実施形態において、開口部58の内周58aに形成された雌ネジ58bと配管具51の外周51aに形成された雄ネジ51bと螺合することにより、保持具53は内スリーブ32側に移動する。また、開口部58にはテーパ面59が形成されており、このテーパ面59と内スリーブ32との間でOリング52を挟持する。また、テーパ面59は、図中矢印AおよびB方向にОリングを押圧し、このОリング52は配管具51と内スリーブ32の両方に押圧されることにより、シース交換後の配管具51と内スリーブ32との間の水密性が再現されるとともに、挿入部56と内スリーブ32との間の緩みも低減される。また、開口部58の内周58aの雌ネジ58bと配管具51の外周51aの雄ネジ51bを、配管具51を挿通する光ファイバ12および可撓性シャフト13が回動する図中矢印R方向で螺合させた場合に、保持具53が内スリーブ32側に移動するネジ構造とすることにより、配管具51を挿通する光ファイバ12および可撓性シャフト13の回動の摩擦による緩みも低減される。
【0030】
保持部50の第2の実施形態について説明する。図4は、保持部50の第2の実施形態を示す図である。なお、基端部50の第1の実施形態と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。保持部50の第2の実施形態においては、図4に示すように、内スリーブ32に取付孔31の側方に貫通するネジ穴を設け、このネジ穴に固定ネジ31cを螺合させることにより、この固定ネジ31cが配管具51を押圧し、配管具51を所望位置で固定する構造である。第2の実施形態においては、取付孔31と挿入部56とが螺着する構造ではないが、第1の実施形態と同様に、取付孔31の内周31aに雌ネジ31bおよび挿入部56の外周56aに雄ネジ56bを形成してもよい。圧入部55のシース11への圧入、保持具53と内スリーブ32との間でのОリング52の挟持は、第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0031】
保持部50の第3の実施形態について説明する。図5は、保持部50の第3の実施形態を示す図である。なお、基端部50の第1の実施形態と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示すように、保持部50の第3の実施形態は、内スリーブ32の外周32aに突起32b、保持具53に鉤形状の係合溝53aを設け、突起32bが鉤形状の係合溝53aに係止されることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52を挟持する構造である。図5(A)に示すように、シース11の先端から保持具53を挿通させ、矢印A方向に移動させることにより、突起32bを係合溝53aの直線部53bと係合させる。保持部53は、内スリーブ32の先端側を受容するとともに、開口部58のテーパ面59はОリング52を押圧する。次に、図5(B)に示すように、保持具53を矢印B方向に回動させて鉤部53cに突起32bを係止させることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52は挟持され、第1の実施形態と同様に、テーパ面59によりОリング52は配管具51および内スリーブ52の両方に押圧されることにより、シース交換後の配管具51と内スリーブ32との間の水密性が再現されることになる。圧入部55のシース11への圧入、挿入部56の取付孔31への挿入は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。また、第2の実施形態の挿入部56の取付孔31への固定は、第3の実施形態にも適用可能である。さらに、突起32bと係合溝53aは一対に限定されるものではなく、複数の対で構成させることも可能である。
【0032】
保持部50の第4の実施形態について説明する。図6は、保持部50の第4の実施形態を示す図である。なお、基端部50の第1の実施形態と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図6に示すように、保持部50の第4の実施形態は、内スリーブ32の外周32aに鉤形状の係合溝32c、保持具53の開口部58内に突起53dを設け、突起53dが鉤形状の係合溝32cに係止されることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52を挟持する構造である。図6(A)に示すように、シース11の先端から保持具53を挿通させ、矢印A方向に移動させることにより、突起53dを係合溝32cの直線部32dと係合させる。保持部53は、内スリーブ32の先端側を受容するとともに、開口部58のテーパ面59はОリング52を押圧する。次に、図5(B)に示すように、保持具53を矢印B方向に回動させて鉤部32eに突起53dを係止させることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52は挟持され、第1の実施形態と同様に、テーパ面59によりОリング52は配管具51および内スリーブ52の両方に押圧されることにより、シース交換後の配管具51と内スリーブ32との間の水密性が再現されることになる。圧入部55のシース11への圧入、挿入部56の取付孔31への挿入は第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。また、第2の実施形態の挿入部56の取付孔31への固定は、第4の実施形態にも適用可能である。さらに、突起53dおよび係合溝32cは一対に限定されるものではなく、複数の対で構成させることも可能である。
【0033】
保持部50の第5の実施形態について説明する。図7は、保持部50の第5の実施形態を示す図である。なお、基端部50の第1の実施形態と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図7に示すように、保持部50の第5の実施形態においては、内スリーブ32の外周32aに複数の係合溝32fと係止溝32g、保持具53の内スリーブ32側の面から突出する複数の鉤形状の係止爪53eを設け、この係合爪53eの爪部53fを係止溝32gに係止させることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52を挟持する構造である。図7(A)に示すように、シース11の先端から保持具53を挿通させ、矢印A方向に移動させることにより、係止爪53eを係合溝32fに係合させる。保持部53は、内スリーブ32の先端側を受容するとともに、開口部58のテーパ面59はОリング52を押圧する。次に、図7(B)に示すように、保持具53を矢印B方向に回動させて係止溝32gに係止爪53eの爪部53fを係止させることにより、保持具53と内スリーブ32との間でOリング52は挟持され、第1の実施形態と同様に、テーパ面59によりОリング52は配管具51および内スリーブ32の両方に押圧されることにより、シース交換後の配管具51と内スリーブ32との間の水密性が再現されることになる。圧入部55のシース11への圧入、挿入部56の取付孔31への挿入は第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。また、第2の実施形態の挿入部56の取付孔31への固定は、第5の実施形態にも適用可能である。本実施形態において、係止爪53e、係合溝32fおよび係止溝32gは、それぞれ120度の等間隔毎に配置された3対の構成とされているが、これに限定させるものではない。
【0034】
光断層処理装置100について説明する。図8は、光断層画像化装置1の概略構成図である。図8に示す光断層処理装置100は、SS−OCT計測による光断層処理装置であり、レーザ光Lを射出する光源手段110と、この光源手段から射出されたレーザ光Lを分割する光ファイバカプラ101と、この光ファイバカプラ101により分割されたレーザ光から周期クロック信号TCLKを出力する周期クロック生成手段120と、光ファイバカプラ101により分割された一方のレーザ光を測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段102と、この光分割手段102により分割された参照光L2の光路長を調整する光路長調整手段130と、OCT用光プローブ2からの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段103と、この合波手段103により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段140と、この干渉光検出手段140により検出された干渉光L4を周波数解析することにより測定対象Mの画像処理を行い、表示手段160に断層画像信号Stを出力する断層画像処理手段150とを有している。
【0035】
光源手段110は、波長を一定周期T0で掃引させながらレーザ光Lを射出するものである。具体的に、光源手段110は、半導体光増幅器111と、この半導体光増幅器111の両端に接続された光ファイバFB10とを有している。半導体光増幅器111は、駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB10の一端側に射出するとともに、光ファイバFB10の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器111に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器111および光ファイバFB10で形成される光共振器によりパルス状のレーザ光Lが、光ファイバFB0へ射出される。さらに、光ファイバFB10にはサーキュレータ112が結合されており、光ファイバFB10内を導波するレーザ光の一部がサーキュレータ112から光ファイバFB11側へ射出される。この光ファイバFB11から射出した光はコリメータレンズ113、回折光学素子114、光学系115を介して回転多面鏡116において反射される。この反射されたレーザ光は、光学系115、回折光学素子114、コリメータレンズ113を介して再び光ファイバFB11に入射される。ここで、この回転多面鏡116は矢印R1方向に3万rpm程度の高速で回転するものであって、各反射面の角度が光学系115の光軸に対して変化する。回折光学素子114において分光されたレーザ光のうち、特定の波長域のレーザ光だけが、再び光ファイバFB11に入射される。そして光ファイバFB11に入射した特定の波長域のレーザ光は、サーキュレータ112を介して光ファイバFB10に入射され、結果として光ファイバFB0側に射出される。したがって、回転多面鏡116が矢印R1方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB11に入射されるレーザ光の波長λは、時間の経過にともなって、一定周期で変化することになる。図9に示すように、光源手段110は、最小掃引波長λminから最大掃引波長λmaxまで一定周期T0(例えば約50μsec)で掃引されたレーザ光Lを射出する。この波長掃引されたレーザ光Lは、光ファイバFB0側に射出される。
【0036】
光ファイバカプラ101は、光ファイバFB0に入射されたレーザ光Lを分岐して光ファイバFB1およびFB5に入射させる。光ファイバFB5に射出されたレーザ光Lは、周期クロック生成手段120に導波される。また、光ファイバFB1に射出されたレーザ光は、光分割手段102に導波される。
【0037】
周期クロック生成手段120は、光源手段110から射出されるレーザ光Lの波長が1周期掃引される毎に1つの周期クロック信号TCLKを出力するものである。この周期クロック生成手段120は、光学レンズ121および123、光学フィルタ122、光検出部124を備えている。光ファイバFB5から射出されたレーザ光Lが、光学レンズ121を介して光学フィルタ122に入射される。この光学フィルタ122を透過したレーザ光Lが、光学レンズ123を介して光検出部124により検出され、周期クロック信号TCLKを断層画像処理手段150に出力する。図10(A)に示すように、光学フィルタ122は、設定波長λrefのレーザ光Lのみを透過し、それ以外の波長帯域のレーザ光Lを遮光する機能を有している。また、光学フィルタ122は、複数の透過波長のうち波長帯域λmin〜λmax内においては、一の透過波長が設定されるような光透過周期FSR(フリースペクトルレンジ)を有している。よって、光源手段110から射出されるレーザ光Lの波長が掃引される波長帯域λmin〜λmax内において設定された設定波長λrefのレーザ光Lのみを透過し、それ以外の波長帯域のレーザ光Lを遮光することになる。図10(B)に示すように、光源手段110から周期的に波長が掃引されたレーザ光Lが射出され、レーザ光Lの波長が設定波長λrefになったとき、周期クロック信号TCLKが出力されることになる。
【0038】
光分割手段102は、光ファイバFB1に導波されたレーザ光Lを測定光L1と参照光L2に分割する。測定光L1は、光ファイバFB2により導波され、参照光L2は、光ファイバFB3により導波され、光路長調整手段130に入射される。光ファイバFB2は、光ファイバ12と光学的に接続されている。なお、本実施形態において光分割手段102は、合波手段103としても機能するものである。
【0039】
光路長調整手段130は、断層画像の取得を開始する位置を調整するために、参照光L2の光路長を変更するものであって、光ファイバFB3から射出された参照光L2を反射させる反射ミラー132と、反射ミラー132と光ファイバFB3との間に配置された第1光学レンズ131aと、この第1光学レンズ131aと反射ミラー132との間に配置された第2光学レンズ131bとを有している。光ファイバFB3から射出した参照光L2は、第1光学レンズ131aにより平行光になり、第2光学レンズ131bにより反射ミラー132に集光される。その後、反射ミラー132により反射された参照光L2は、第2光学レンズ131bにより平行光になり、第1光学レンズ131aにより光ファイバFB3に集光される。さらに光路長調整手段130は、第2光学レンズ131bと反射ミラー132とを固定した基台133と、この基台133を第1光学レンズ131aの光軸方向に移動させるミラー移動手段134とを有している。そして基台133が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変えられる。
【0040】
合波手段103は、光路長調整手段130により光路長の調整が施された参照光L2と、測定対象Mからの反射光L3とを合波し、光ファイバFB4を介して干渉光L4を干渉光検出手段140に射出するものである。
【0041】
干渉光検出手段140は、干渉光L4を検出して干渉信号ISを出力するものである。なお、本装置においては、干渉光L4を光分割手段102で二分し、光検出器140a、140bに導き、これを演算し、バランス検波を行う機構を有している。この干渉信号ISは、断層画像処理手段150に出力される。
【0042】
図11は、断層画像処理手段150の概略構成図である。断層画像処理手段150は、干渉信号ISに基づいて、断層画像信号Stを出力するものである。この断層画像処理手段150は、干渉信号取得手段151、干渉信号変換手段152、干渉信号解析手段153、断層画像情報生成手段154、画像補正手段155、回転制御手段156を有している。
【0043】
干渉信号取得手段151は、周期クロック生成手段120からの周期クロック信号TCLKに基づいて、干渉光検出手段140により検出された1周期分の干渉信号ISを取得するものである。この干渉信号取得手段151は、周期クロック信号TCLKの出力タイミング前後の波長帯域DT(図10(B)参照)の干渉信号ISを取得する。
【0044】
干渉信号変換手段152は、干渉信号取得手段151により取得された干渉信号ISを波数(=2π/λ)軸において等間隔になるように再配列するものである。図12(A)は、干渉信号ISを示す図である。図12(B)は、再配列された干渉信号ISを示す図である。具体的には、干渉信号変換手段152は、光源手段110の時間−波長掃引特性データテーブル若しくは関数を予め有しており、この時間−波長掃引特性データテーブル等を用いて波数k軸において等間隔になるように干渉信号ISを再配列する。
【0045】
干渉信号解析手段153は、干渉信号変換手段152により信号変換された干渉信号ISをフーリエ変換処理、最大エントロピー法等の公知のスペクトル解析技術により、断層情報Itを所得するものである。
【0046】
回転制御手段156は、駆動ユニット60に内蔵された駆動手段を制御するものである。具体的に、回転制御手段156は、駆動手段の有するモータ等の駆動源に対する制御信号MCに出力するとともに、駆動手段の有するエンコーダ等からの回転信号RSが入力される。この回転信号RSには、駆動源が一回転した場合の回転クロック信号RCLK、回転角度信号RPOSがある。
【0047】
断層情報生成手段154は、干渉信号解析手段153により取得された1周期分(1ライン分)の断層情報Itを、OCT用光プローブ2の先端部材10のラジアル方向走査について取得するものである。図13は、断層情報生成手段154の処理を模式的に示す図である。この断層情報生成手段154は、順次取得される1ライン分の断層情報Itを断層情報蓄積手段154aに記憶する。断層情報生成手段154は、回転制御手段156に入力された回転クロック信号RCLKに基づいて、断層情報Itを断層情報蓄積手段154aからnライン分の断層情報Itを一括して読み込み、ラジアル方向走査分の断層情報Itを生成できる。また、断層情報生成手段154は、回転制御手段156に入力された回転角度信号RPOSに基づいて、断層情報Itを断層情報蓄積手段154aから逐次読み込むことにより、ラジアル方向走査分の断層情報Itを生成することもできる。
【0048】
画質補正手段155は、断層情報生成手段154からの断層情報Itに鮮鋭化処理、平滑化処理等を施して、表示手段160に断層画像信号Stを出力する。
【0049】
表示手段160は、断層画像処理手段150から断層画像信号Stが入力されて断層画像Ptを表示する。
【0050】
本発明のOCT用光プローブ2は、シース11に圧入された配管具51の挿入部55が、内スリーブ32の取付孔31に所望位置まで挿入可能であることにより、シース長さにばらつきがある場合でも、交換時に光ファイバ12の先端に固定された先端光学系14をシース11内の所定位置とすることが可能である。また、保持具53の開口部58にシース11を先端から挿通させて、配管具51の外周中央57に装着されたOリング52を保持具53の開口部58に形成されたテーパ面59と内スリーブ32との間で挟持することで、テーパ面59がОリング52を配管具51および内スリーブ52の両方に押圧することにより、シース交換後の配管具51と内スリーブ32との間の十分な水密性が再現されることになる。
【0051】
したがって、本発明のOCT用光プローブ2は、シース交換時のシース長の調整を可能とし、且つシース交換後の十分な水密性を再現できる。また、本実施形態においては、シール部材をОリング52として説明したが、これに限定されず、Yパッキン、Vパッキン、密封するのに最適な形状で成型された成型品であってもよい。
【0052】
また、本発明による光断層画像化装置1も、上述した通りのOCT用光プローブ2が適用されたものであるから、シース交換時のシース長の調整を可能とし、且つシース交換後の十分な水密性を再現できる。
【0053】
なお、上記説明では、本発明のOCT用光プローブ2を適用する光断層処理装置100の実施形態としてSS−OCT装置を例に挙げて説明したが、SD−OCT装置およびTD−OCT装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のOCT用光プローブ2が適用された光断層画像化装置1の全体斜視図
【図2】本発明のOCT用光プローブ2の断面図
【図3】保持部材50の第1の実施形態を示す図
【図4】保持部材50の第2の実施形態を示す図
【図5】保持部材50の第3の実施形態を示す図
【図6】保持部材50の第4の実施形態を示す図
【図7】保持部材50の第5の実施形態を示す図
【図8】光断層画像化装置1の概略構成図
【図9】光源手段110から射出させる光の波長の掃引を示す図
【図10】周期クロック生成手段120により生成される周期クロック信号を示す図
【図11】断層画像処理手段150の概略構成図
【図12】干渉信号変換手段152における干渉信号ISを示す図
【図13】断層情報生成手段154の処理を模式的に示す図
【図14】従来のシース保持を示す図
【符号の説明】
【0055】
L レーザ光
L1 測定光
L2 参照光
L3 反射光
L4 干渉光
M 測定対象
1 光断層画像化装置
2 OCT用光プローブ
11 シース
12 光ファイバ
20 本体
31 取付孔
32 内スリーブ
32b 突起
32c 係合溝
51 配管具
51a 外周
51b 雄ネジ
52 Оリング
53 保持具
53a 係合溝
53d 突起
55 圧入部
56 挿入部
57 外周中央
58 開口部
58b 雌ネジ
59 テーパ面
100 光断層画像化装置
102 光分割手段
103 合波手段
110 光源手段
140 干渉光検出手段
150 断層画像処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース内の光ファイバ先端からの光を、該光ファイバの軸線回りに走査させるOCT用光プローブにおいて、
前記光ファイバを挿通する略円筒状の取付孔を有する本体と、
内部に前記光ファイバが挿通され、一端に前記シースの基端に圧入される圧入部と他端に前記取付孔の所望位置まで挿入可能とされた挿入部とを有する配管具と、
該配管具の外周中央に装着されるシール部材と、
略中央に開口部を有し、該開口部を前記シースの先端から挿入させて、前記シール部材を前記本体との間で挟持する保持具とを有することを特徴とするOCT用光プローブ。
【請求項2】
前記保持具が、前記開口部の前記本体側にテーパ面をさらに有し、該テーパ面と前記本体との間で前記シール部材を挟持することを特徴とする請求項1に記載のOCT用光プローブ。
【請求項3】
前記保持具の前記開口部に形成された雌ネジと前記配管具の外周に形成された雄ネジとが螺合することにより、前記保持具が前記本体側に移動可能とされ、該移動により前記保持具と前記本体との間で前記シール部材を挟持することを特徴とする請求項1または2に記載のOCT用光プローブ。
【請求項4】
前記本体に設けられた突起と前記保持具に設けられた鉤形状の係合溝とを係合させることにより、前記保持具と前記本体との間で前記シール部材を挟持することを特徴とする請求項1または2に記載のOCT用光プローブ。
【請求項5】
前記本体に設けられた鉤形状の係合溝と前記保持具に設けられた突起とを係合させることにより、前記保持具と前記本体との間で前記シール部材を挟持することを特徴とする請求項1または2に記載のOCT用光プローブ。
【請求項6】
光を射出する光源手段と、
該光源手段から射出された光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
前記測定光を測定対象に照射するOCT用光プローブと、
前記測定対象に測定光が照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
合波された前記反射光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光検出手段と、
前記検出された干渉光の周波数および強度に基づいて、前記測定対象の複数の深さ位置における反射強度を検出し、これらの各深さ位置における反射光の強度に基づいて測定対象の断層画像を取得する断層画像処理手段とを備えてなる断層画像処理装置において、
前記OCT用光プローブが、請求項1から5のいずれかに記載のOCT用光プローブを含むものであることを特徴とする断層画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−210368(P2009−210368A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52846(P2008−52846)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【復代理人】
【識別番号】100152401
【弁理士】
【氏名又は名称】我妻 慶一
【Fターム(参考)】