説明

OFDM信号受信装置およびOFDM信号の受信方法

【課題】本発明は、ドップラ周波数が高くなった場合においても、正常にOFDM信号の復調が行うことができるOFDM信号受信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るOFDM信号受信装置100は、OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされたOFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出する、周波数誤差検出部7を備えている。さらに、検出された複数の周波数誤差から中心周波数を求め、中心周波数と周波数誤差との差の絶対値を求める、計算部(CPU8)を備えている。さらに、計算部から送信される差の絶対値を用いて、ローパスフィルタ部5のカットオフ周波数を決定するフィルタ調整部9を、備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、OFDM信号受信装置およびOFDM信号の受信方法に係る発明であり、特に、周波数領域の伝送路関数に対するフィルタリング処理の際のカットオフ周波数の調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の地上波デジタルテレビ放送では、伝送方式として、OFDM(直交周波数分割多重;Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されている。OFDM方式は、送信信号を複数の搬送波に分割して送信するマルチキャリア伝送方式の1つである。当該OFDM方式は、マルチパス伝送路の周波数選択性フェージングに強い、各サブチャネルのスペクトルが密に配置できる、周波数利用効率が高い、などの利点がある。
【0003】
また、携帯機器向けの地上波デジタルテレビ放送(1セグ放送)が開始されている。デジタルテレビ放送の受信が可能な携帯電話機(またはカード型デジタルテレビ受信機など)を設計する場合には、常に小型化と低消費電力化を考慮しなければならない。ここで、携帯機器は一般的に、移動しながら放送信号を受信する。したがって、伝送路情報は、OFDM信号受信装置における復調処理制御の際には、欠かすことができない重要な情報である。当該伝送路情報は、周波数領域の伝送路伝達関数および時間領域の伝送路インパルス応答から取り出すことができる。当該周波数領域の伝送路伝達関数および時間領域の伝送路インパルス応答に関する技術は、たとえば特許文献1に開示されている。
【0004】
また、ローパスフィルタ部を通過した周波数領域の伝送路伝達関数と、FFT(高速フーリエ変換)部を通過したOFDM信号とに基づいて等化処理が実施される。ここで、当該ローパスフィルタ部のカットオフ周波数は、IFFT(逆フーリエ変換)部で生成された時間領域の伝送路インパルス応答に基づいて調整することができる。つまり、OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、カットオフ周波数が調整・決定される。
【0005】
ところで、一般的に、OFDM信号受信装置の移動や、当該OFDM信号受信装置内のPLL(Phase Locked Loop)等の性能に起因して、送受信間で周波数誤差が生じる。当該周波数誤差を検出する先行文献としては、たとえば特許文献2,3が存在する。
【0006】
【特許文献1】特開2006−253915号公報
【特許文献2】特開2003−264527号公報
【特許文献3】特開2003−124905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を時間領域の伝送路インパルス応答に基づいて調整した場合には、ドップラ周波数が高くなった場合に、OFDM信号の復調が正常に行えなくなるという問題が生じている。
【0008】
そこで、本発明は、ドップラ周波数が高くなった場合においても、正常にOFDM信号の復調が行うことができるOFDM信号受信装置および、OFDM信号の受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のOFDM信号受信装置は、外部から受信したOFDM信号をフーリエ変換するFFT部と、前記FFT部からの出力信号に含まれるパイロット信号を、規定のパイロット信号で除して、周波数領域の伝送路伝達関数を生成する除算部と、前記周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を施すローパスフィルタ部と、前記OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされた前記OFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出する、周波数誤差検出部と、前記周波数誤差検出部で検出された複数の前記周波数誤差から中心周波数を求め、前記中心周波数と前記周波数誤差との差の絶対値を求める、計算部と、前記計算部から送信される前記差の絶対値を用いて、前記ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定するフィルタ調整部とを、備えている。
【0010】
また、請求項2に記載のOFDM信号受信装置は、請求項1に記載のOFDM信号受信装置であって、前記計算部は、所定数の前記周波数誤差に対して加算処理を行い、前記加算処理の結果を前記所定数で除算することにより、前記中心周波数を求める。
【0011】
また、請求項3に記載のOFDM信号受信装置は、請求項2に記載のOFDM信号受信装置であって、前記ローパスフィルタ部は、前記カットオフ周波数を、第一の周波数から、前記第一の周波数より大きい第二の周波数までの間で変化することができ、前記フィルタ調整部は、前記差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、前記カットオフ周波数を前記第一の周波数とする。
【0012】
また、請求項4に記載のOFDM信号受信装置は、請求項3に記載のOFDM信号受信装置であって、前記フィルタ調整部は、前記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、前記OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、前記カットオフ周波数を調整する。
【0013】
また、請求項5に記載のOFDM信号受信装置は、請求項4に記載のOFDM信号受信装置であって、前記フィルタ調整部は、前記マルチパス遅延が大きくなるほど、前記カットオフ周波数を高くし、前記マルチパス遅延が小さくなるほど、前記カットオフ周波数を低くする。
【0014】
また、請求項6に記載のOFDM信号の受信方法は、(A)外部から受信したOFDM信号から、周波数領域の伝送路伝達関数を生成するステップと、(B)前記周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を施すステップと、(C)前記OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされた前記OFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出するステップと、(D)前記ステップ(C)で検出された複数の前記周波数誤差から中心周波数を求め、前記中心周波数と前記周波数誤差との差の絶対値を求めるステップと、(E)前記ステップ(D)における前記差の絶対値を用いて、前記ステップ(B)における前記フィルタリング処理の際のカットオフ周波数を決定するステップとを、備えている。
【0015】
また、請求項7に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項6に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記ステップ(D)は、(D−1)所定数の前記周波数誤差に対して加算処理を行うステップと、(D−2)前記加算処理の結果を前記所定数で除算することにより、前記中心周波数を求めるステップとを、有する。
【0016】
また、請求項8に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項7に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記ローパスフィルタ部の前記カットオフ周波数は、第一の周波数から、前記第一の周波数より大きい第二の周波数までの間で変化し、前記差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、前記ステップ(E)は、前記カットオフ周波数を前記第一の周波数とするステップである。
【0017】
また、請求項9に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項8に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、前記ステップ(E)は、前記OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、前記カットオフ周波数を調整するステップである。
【0018】
また、請求項10に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項9に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記ステップ(E)は、前記マルチパス遅延が大きくなるほど、前記カットオフ周波数を高くし、前記マルチパス遅延が小さくなるほど、前記カットオフ周波数を低くするステップである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1,6に記載の発明は、外部から受信したOFDM信号をフーリエ変換し、FFT部からの出力信号に含まれるパイロット信号を、規定のパイロット信号で除して、周波数領域の伝送路伝達関数を生成している。また、周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を施している。また、OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされたOFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出している。また、検出された複数の周波数誤差から中心周波数を求め、中心周波数と周波数誤差との差の絶対値を求め、当該差の絶対値を用いて、ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定している。
【0020】
つまり、ドップラ周波数の値に応じて(OFDM信号受信装置の移動に応じて)、ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定できる。したがって、ドップラ周波数が高くなった場合においても、正常にOFDM信号の復調が行うことができるOFDM信号受信装置およびOFDM信号の受信方法を提供できる。
【0021】
また、請求項2,7に記載の発明では、所定数の周波数誤差に対して加算処理を行い、その後、当該加算処理の結果を当該所定数で除算することにより、中心周波数を求めている。
【0022】
したがって、検出された周波数誤差から適切に、OFDM信号の中心周波数を求めることができる。
【0023】
また、請求項3,8に記載の発明では、カットオフ周波数は、第一の周波数から、第一の周波数より大きい第二の周波数までの間で変化し、差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、カットオフ周波数を第一の周波数としている。
【0024】
つまり、ドップラ周波数が高い場合には、ローパスフィルタのフィルタ幅を最も狭めている。これにより、遅延プロファイルからのノイズの誤検出を防止でき、OFDM信号の受信性能の移動耐性を向上させることができる。換言すれば、OFDM信号受信装置がより高速で移動したとしても、OFDM信号を正常に受信できる。
【0025】
また、請求項4,9に記載の発明では、差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、カットオフ周波数を調整している。
【0026】
したがって、ドップラ周波数が低い場合(スタティック状態および比較的遅い側での移動状態の場合)には、遅延プロファイルに基づいたカットオフ周波数の調整を実施できる。これにより、ドップラ周波数が低い場合における、レイリーフェージングのマルチパス耐性を改善できる。
【0027】
また、請求項5,10に記載の発明では、マルチパス遅延が大きくなるほど、カットオフ周波数を高くし、マルチパス遅延が小さくなるほど、カットオフ周波数を低くしている。
【0028】
したがって、ドップラ周波数が低い場合に、遅延プロファイルに基づいて、より適正なカットオフ周波数の調整ができる。これにより、ドップラ周波数が低い場合における、レイリーフェージングのマルチパス耐性をより改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0030】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係るOFDM信号受信装置100の要部構成を示すブロック図である。当該OFDM信号受信装置100は、たとえば携帯電話機や携帯型デジタルテレビなどに搭載される。
【0031】
当該OFDM信号受信装置100は、FFT(高速フーリエ変換;Fast Fourier Transform)部1、除算部2、パイロットパターン部3、伝送路推定部4、ローパスフィルタ部(以下、単にLPF部と称する)5、等化部6、周波数誤差検出部7、計算部(以下、CPUと称する)8、フィルタ調整部9、およびIFFT(逆高速フーリエ変換:Inverse FFT)部10を備えている。
【0032】
OFDM信号受信装置100は、図示していないアンテナを介してOFDM信号を外部から受信する。当該OFDM信号は、図示しないチューナおよびA/D変換等を通過し、その後FFT部1に入力する。
【0033】
FFT部1では、外部から受信したOFDM信号に対してフーリエ変換処理を実施する。つまり、FFT部1は、時間領域のOFDMシンボル信号を、周波数領域のOFDMシンボル信号に変換することができる。
【0034】
当該FFT部1から出力されるOFDM信号は、等化部6に送信される。さらに、OFDM信号に埋め込まれたパイロット信号は、除算部2に送信される。ここで、当該パイロット信号は、図示しないパイロット信号抽出部によって抽出される信号であり、サブキャリア位置、振幅、および位相が既知のPRBS(Pseudo Random Binary Series)信号である。
【0035】
パイロットパターン部3は、上述した図示しないパイロット抽出部に同期して、その振幅と位相が既知である規定のパイロット信号を発生するもので、その出力は除算部2に供給される。上述から分かるように、除算部2には、OFDM信号から抽出されたパイロット信号(受信パイロット信号)と、パイロットパターン部3で生成された規定のパイロット信号(規定パイロット信号)とが入力される。
【0036】
除算部2では、受信パイロット信号を規定パイロット信号で除算する。これにより、除算部2では、周波数領域の伝送路伝達関数が生成される。当該周波数領域の伝送路伝達関数は、伝送路推定部4に供給される。
【0037】
伝送路推定部4では、当該周波数領域の伝送路伝達関数を時間軸方向に補間、周波数軸方向に補間する。伝送路推定部4からの出力信号は、LPF部5およびIFFT部10に供給される。
【0038】
LPF部5では、伝送路推定部4から出力された周波数領域の伝送路関数に対して、フィルタリング処理を施す。ここで、後述するように、LPF部5におけるのカットオフ周波数は、フィルタ調整部9により調整・決定される。また、LPF部5は、カットオフ周波数を、第一の周波数から、第一の周波数より大きい第二の周波数(第一の周波数≦カットオフ周波数≦第二の周波数)までの間で変化することができる。なお、LPF部5からの出力された信号は、等化部6に入力される。
【0039】
等化部6では、LPF部5から出力された信号を用いて、FFT部1から出力されるOFDM信号の等化処理を実行する。なお、等化処理後のOFDM信号は、復調処理のために、図示しないデマッピング部、FEC(forward error coding)等に出力される。
【0040】
一方、周波数誤差検出部(たとえば、AFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)7には、FFT部1入力前のOFDM信号が入力される。周波数誤差検出部7は、FFT部1に入力される前のOFDM信号を、所定のタイミングでサンプリングする。そして、周波数誤差検出部7は、当該サンプリングしたOFDM信号に対して、送受信間での周波数誤差(周波数ズレ)を検出する。当該周波数誤差は、OFDM信号受信装置100側のチューナのPLL、およびOFDM信号受信装置100の移動(ドップラ周波数の影響)等により、生じる。なお、周波数誤差検出部7(周波数誤差検出方法)について周知の技術であり、たとえば、上記特許文献2,3に開示されている。
【0041】
CPU8は、周波数誤差検出部7から送信されてくる上記周波数誤差を受信する。CPU8は、周波数誤差検出部7で検出された複数の周波数誤差から中心周波数を求める。より具体的に、CPU8は、所定数の周波数誤差に対して加算処理を行い、当該加算処理の結果を所定数で除算する。これにより、CPU8は、上記中心周波数を求める。さらに、CPU8は、中心周波数と周波数誤差検出部7から送信されてきた周波数誤差との差の絶対値を求める。なお、当該差の絶対値を示す信号は、CPU8からフィルタ調整部9へと送信される。
【0042】
さて、上述したように図1に示す構成では、補間処理がなされた周波数領域の伝送路伝達関数は、IFFT部10にも供給される。IFFT部10では、当該周波数領域の伝送路伝達関数が高速逆フーリエ変換され、時間領域の信号に変換される。つまり、IFFT部10では、周波数領域の伝送路伝達関数が、時間領域の伝送路インパルス応答に変換される。当該時間領域の伝送路インパルス応答は、IFFT部10からフィルタ調整部9へと送信される。
【0043】
フィルタ調整部9は、CPU8から送信されてくる上記信号と、IFFT部10から送信されてくる信号とに基づいて、LPF部5のカットオフ周波数を調整・決定する。まず、フィルタ調整部9は、CPU8から送信される上記差の絶対値の値と、当該フィルタ調整部9に予め設定されている閾値周波数との大小関係を比較する。
【0044】
そして、差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、フィルタ調整部9は、カットオフ周波数を上記第一の周波数とする。つまり、LPF部5を通過できる周波数を、当該LPF部5の最小カットオフ周波数とする(LPF部5のフィルタリング設定を、LPF部5において設定可能な最も厳しいフィルタ条件とする)。
【0045】
これに対して、上記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、フィルタ調整部9は、受信したOFDM信号から得られるマルチパス遅延(上記時間領域の伝送路インパルス応答であり、遅延プロファイルと把握できる)に基づいて、カットオフ周波数を調整・決定する。具体的に、上記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、フィルタ調整部9は、マルチパス遅延が大きくなるほど、カットオフ周波数を高くし、マルチパス遅延が小さくなるほど、前記カットオフ周波数を低くする。
【0046】
次に、本発明の特徴的なステップを図示したフローチャートを用いて、OFDM信号の受信方法の動作について説明する。
【0047】
OFDM信号受信装置100が受信したOFDM信号が、FFT部1、除算器2、伝送路推定4を経由する、これにより、OFDM信号から、補間された周波数領域の伝送路伝達関数を生成される。
【0048】
他方、周波数誤差検出部7は、FFT部1に入力されるOFDM信号を所定のタイミングでサンプリングする(ステップS1)。たとえば、周波数誤差検出部7は、200ms毎に上記OFDM信号をサンプリングする。その後、周波数誤差検出部7は、サンプリングされたOFDM信号に対して各々、送受信間での周波数誤差を検出する(ステップS2)。次に、周波数誤差検出部7は、当該検出した周波数誤差の各々をCPU8へと送信する。
【0049】
次に、CPU8では、ステップS2で検出された複数の周波数誤差から中心周波数を求める(ステップS3)。具体的に、CPU8は、所定数の周波数誤差(たとえば、周波数誤差検出部7から随時送信されてくる、25個の周波数誤差)に対して加算処理を行う。その後、CPU8は、当該加算処理の結果を前記所定数(25)で除算する。これにより、中心周波数を求める(ステップS3)。
【0050】
次に、CPU8は、ステップS3で求めた中心周波数と、ステップS2の結果送信されてくる周波数誤差との差の絶対値(|周波数誤差−中心周波数|)を求める。そして、CPU8は、当該差の絶対値を示す信号をフィルタ調整部9へ送信する。
【0051】
ここで、当該CPU8の中心周波数を求める処理および上記差の絶対値を求める処理、図3に示すCPU8の機能ブロック図を用いて説明する。
【0052】
周波数誤差検出部7から随時、周波数誤差信号がCPU8に送信される。そして、当該周波数が差信号は、CPU8内のレジスタ8aに随時格納される。さて、周波数誤差検出部7から周波数誤差信号d25が送信され、レジスタ8aに既に格納されている周波数誤差信号d1〜d24に加えて、当該周波数誤差信号d25も格納されたとする(図3のレジスタ8a参照)。
【0053】
すると、加算器8bは、25個分(所定数)の周波数誤差信号d1〜d25の各々の加算処理を行う(d1+d2+・・・+d24+d25=D1)。その後、除算器8cは、当該加算処理後の信号を所定数(=25)で除算する(D1/25=F1)。ここまでのステップがステップS3である。つまり、当該除算器8cから出力される信号が中心周波数F1を示す信号である。
【0054】
その後、差分器8dにおいて、中心周波数信号F1と周波数誤差信号d25との差の絶対値(|d25−F1|)を求める。
【0055】
さて、次に、周波数誤差検出部7から周波数誤差信号d26が送信されてきたとする。すると、レジスタ8aに既に格納されていた最も古い周波数誤差信号d1がレジスタ8aから削除され、レジスタ8aには周波数誤差信号d2〜d26が格納される(図4のレジスタ8a参照)。つまり、レジスタ8a内には、常に所定数の周波数誤差信号が格納され、新たに周波数誤差信号が入力されるたびに、最も古い周波数誤差信号が順に削除されることになる。
【0056】
加算器8bは、25個分(所定数)の周波数誤差信号d2〜d26の各々の加算処理を行う(d2+d3+・・・+d25+d26=D2)。その後、除算器8cは、当該加算処理後の信号を所定数(=25)で除算する(D2/25=F2)。ここまでのステップがステップS3である。つまり、当該除算器8cから出力される信号が中心周波数F2を示す信号である。
【0057】
その後、差分器8dにおいて、中心周波数信号F2と新たに入力されてきた周波数誤差信号d26との差の絶対値(|d25−F2|)を求める。
【0058】
このように、周波数誤差検出部7から新たに周波数誤差信号が送信されて来るたびに、図3,4に示した説明の内容を順次行う。これが、CPU8におけるステップS3の詳細な内容である。なお、上記差の絶対値を示す信号は順次、CPU8からフィルタ調整部9へと送信される。
【0059】
フィルタ調整部9では、送信されてくる差の絶対値を用いて、LPF部5のフィルタリング処理の際のカットオフ周波数を決定する。より具体的には、フィルタ調整部9は、CPU8から送信されてくる信号(差の絶対値)およびIFFT部10から送信されてくる信号(上記時間領域の伝送路インパルス応答;マルチパス遅延、遅延プロファイルと同義である)を用いて、当該カットオフ周波数を調整・決定する。当該カットオフ周波数の調整・決定動作の詳細は、次の通りである。
【0060】
まず、フィルタ調整部9は、受信した上記差の絶対値(|周波数誤差−中心周波数|)と、当該フィルタ調整部9に予め設定されている所定の閾値周波数FL(たとえば、25Hz)との大小関係を比較する(ステップS4)。当該閾値周波数FLは任意に設定される。
【0061】
ステップS4の比較の結果、上記差の絶対値が所定の閾値周波数FLよりも大きい(|周波数誤差−中心周波数|>所定の閾値周波数FL)場合には(ステップS4でYes)、フィルタ調整部9は、カットオフ周波数として第一の周波数を設定する(ステップS5)。ここで、上記の通りLPF部5は、カットオフ周波数を、第一の周波数から第一の周波数より大きい第二の周波数(第一の周波数≦カットオフ周波数≦第二の周波数)までの間で変化することができる。したがって、カットオフ周波数として第一の周波数を設定することは、LPF部5を通過できる周波数を、当該LPF部5の最小カットオフ周波数とする(LPF部5のフィルタリング設定を、LPF部5において設定可能な最も厳しいフィルタ条件とする)ことである。
【0062】
これに対して、ステップS4の比較の結果、上記差の絶対値が所定の閾値周波数FL以下(|周波数誤差−中心周波数|≦所定の閾値周波数FL)場合には(ステップS4でNo)、フィルタ調整部9は、OFDM信号から得られるマルチパス遅延(時間領域の伝送路インパルス応答)に基づいて、上記カットオフ周波数を調整・決定する(ステップS6)。具体的に、マルチパス遅延が大きくなるほど、上記カットオフ周波数を高くし、マルチパス遅延が小さくなるほど、上記カットオフ周波数を低くする(ステップS6)。当該カットオフ周波数の調整・決定方法(ステップS6の内容)を、図5、6の遅延プロファイルに基づいて概念的に説明する。
【0063】
たとえば、ある事象において、図5の遅延プロファイルが得られたとする。この場合、最もマルチパス遅延が大きい遅延パルスPmがフィルタリングされないように、フィルタ調整部9は、LPF部5のカットオフ周波数fc1を決定する。また、他の事象において、図6の遅延プロファイルが得られたとする。この場合、最もマルチパス遅延が大きい遅延パルスPnがフィルタリングされないように、フィルタ調整部9は、LPF部5のカットオフ周波数fc2を決定する。
【0064】
ここで、図5のケースと図6のケースとを比較すると、遅延パルスPmよりも遅延パルスPnの方が遅延が大きい。したがって、図5のケースで決定されるカットオフ周波数fc1よりも、図6のケースで決定されるカットオフ周波数fc2の方が高くなる。
【0065】
換言すれば、ドップラ周波数が高い場合には、ステップS5の処理を実施し、ドップラ周波数が低い場合には、ステップS6の処理を実施する。
【0066】
LPF部5では、ステップS5,S6で調整・決定されたカットオフ周波数に基づいて、入力信号である補間後の周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を実施する。なお、フィルタイリング処理後の信号は、等化部6に入力され、FFT処理後のOFDM信号の等化処理に用いられる。
【0067】
以上のように、本実施の形態に係る発明では、OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされたOFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出している。そして、検出された複数の周波数誤差から中心周波数を求め、中心周波数と周波数誤差との差の絶対値を求めている。そして、当該差の絶対値を用いて、ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定している。
【0068】
つまり、ドップラ周波数の値に応じて(OFDM信号受信装置100の移動に応じて)、ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定できる。したがって、ドップラ周波数が高くなった場合においても、正常にOFDM信号の復調が行うことができるOFDM信号受信装置100およびOFDM信号の受信方法を提供できる。
【0069】
また、本実施の形態に係る発明では、所定数の周波数誤差に対して加算処理を行い、その後、当該加算処理の結果を当該所定数で除算することにより、中心周波数を求めている。
【0070】
したがって、検出された周波数誤差から適切に、OFDM信号の中心周波数を求めることができる。
【0071】
ところで、ドップラ周波数が高くなると、ノイズの影響に遅延パルスの判定が困難となり、IFFT部10からの信号を用いたLPF部5のカットオフ周波数の決定処理の精度が落ちる。
【0072】
そこで、本実施の形態に係る発明では、上記のように、ドップラ周波数が高い場合には、LPF部5のフィルタ幅を最も狭める(カットオフ周波数を上記第一の周波数とする)。これにより、遅延プロファイルからのノイズの誤検出を防止でき、OFDM信号受信装置100の受信性能の移動耐性を向上させることができる。換言すれば、OFDM信号受信装置100がより高速で移動したとしても、OFDM信号を正常に受信できる。
【0073】
また、本実施の形態に係る発明では、上記差の絶対値(|周波数誤差−中心周波数|)が所定の閾値周波数以下の場合には、OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、カットオフ周波数を調整している。
【0074】
したがって、ドップラ周波数が低い場合(スタティック状態および比較的遅い側での移動状態)において、レイリーフェージング時のマルチパス耐性を向上させることができる。より可能となる。
【0075】
特に、本実施の形態に係る発明では、マルチパス遅延が大きくなるほど、カットオフ周波数を高くし、マルチパス遅延が小さくなるほど、カットオフ周波数を低くしている。
【0076】
したがって、ドップラ周波数が低い場合に、遅延プロファイルに基づいて、より適正なカットオフ周波数の調整ができる。これにより、ドップラ周波数が低い場合における、レイリーフェージングのマルチパス耐性をより改善することができる。
【0077】
なお、上記カットオフ周波数の決定・調整は、CPU8およびフィルタ調整部9等を用いて、自動的に行っている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係るOFDM信号受信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るOFDM信号の受信方法の特徴的なステップの流れを示すフローチャート。
【図3】CPU8内の処理を説明するための機能ブロック図である。
【図4】CPU8内の処理を説明するための機能ブロック図である。
【図5】カットオフ周波数の調整方法を説明するための説明図である。
【図6】カットオフ周波数の調整方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1 FFT部
2,8c 除算器
3 パイロットパターン
4 伝送路推定部
5 ローパスフィルタ(LPF部)
6 等化部
7 周波数誤差検出部
8 計算部(CPU)
9 フィルタ調整部
10 IFFT部
8a レジスタ
8b 加算器
8d 差分器
100 OFDM信号受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受信したOFDM信号をフーリエ変換するFFT部と、
前記FFT部からの出力信号に含まれるパイロット信号を、規定のパイロット信号で除して、周波数領域の伝送路伝達関数を生成する除算部と、
前記周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を施すローパスフィルタ部と、
前記OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされた前記OFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出する、周波数誤差検出部と、
前記周波数誤差検出部で検出された複数の前記周波数誤差から中心周波数を求め、前記中心周波数と前記周波数誤差との差の絶対値を求める、計算部と、
前記計算部から送信される前記差の絶対値を用いて、前記ローパスフィルタ部のカットオフ周波数を決定するフィルタ調整部とを、備えている、
ことを特徴とするOFDM信号受信装置。
【請求項2】
前記計算部は、
所定数の前記周波数誤差に対して加算処理を行い、前記加算処理の結果を前記所定数で除算することにより、前記中心周波数を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項3】
前記ローパスフィルタ部は、
前記カットオフ周波数を、第一の周波数から、前記第一の周波数より大きい第二の周波数までの間で変化することができ、
前記フィルタ調整部は、
前記差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、前記カットオフ周波数を前記第一の周波数とする、
ことを特徴とする請求項2に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項4】
前記フィルタ調整部は、
前記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、前記OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、前記カットオフ周波数を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項5】
前記フィルタ調整部は、
前記マルチパス遅延が大きくなるほど、前記カットオフ周波数を高くし、前記マルチパス遅延が小さくなるほど、前記カットオフ周波数を低くする、
ことを特徴とする請求項4に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項6】
(A)外部から受信したOFDM信号から、周波数領域の伝送路伝達関数を生成するステップと、
(B)前記周波数領域の伝送路関数に対してフィルタリング処理を施すステップと、
(C)前記OFDM信号を所定のタイミングでサンプリングし、当該サンプリングされた前記OFDM信号に対して送受信間での周波数誤差を検出するステップと、
(D)前記ステップ(C)で検出された複数の前記周波数誤差から中心周波数を求め、前記中心周波数と前記周波数誤差との差の絶対値を求めるステップと、
(E)前記ステップ(D)における前記差の絶対値を用いて、前記ステップ(B)における前記フィルタリング処理の際のカットオフ周波数を決定するステップとを、備えている、
ことを特徴とするOFDM信号の受信方法。
【請求項7】
前記ステップ(D)は、
(D−1)所定数の前記周波数誤差に対して加算処理を行うステップと、
(D−2)前記加算処理の結果を前記所定数で除算することにより、前記中心周波数を求めるステップとを、有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項8】
前記ローパスフィルタ部の前記カットオフ周波数は、
第一の周波数から、前記第一の周波数より大きい第二の周波数までの間で変化し、
前記差の絶対値が所定の閾値周波数よりも大きい場合には、前記ステップ(E)は、
前記カットオフ周波数を前記第一の周波数とするステップである、
ことを特徴とする請求項7に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項9】
前記差の絶対値が所定の閾値周波数以下の場合には、前記ステップ(E)は、
前記OFDM信号から得られるマルチパス遅延に基づいて、前記カットオフ周波数を調整するステップである、
ことを特徴とする請求項8に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項10】
前記ステップ(E)は、
前記マルチパス遅延が大きくなるほど、前記カットオフ周波数を高くし、前記マルチパス遅延が小さくなるほど、前記カットオフ周波数を低くするステップである、
ことを特徴とする請求項9に記載のOFDM信号の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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