PARPの調節のための組成物およびそのスクリーニング方法
本発明は、PARPアクチベーターのスクリーニング方法に関する。本スクリーニング法は、細胞、細胞溶解産物または精製PARPを用いて、試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。本発明はまた、癌を治療する方法を提供する。本治療方法は、被験体に治療上有効な量のPARPアクチベーターを投与するステップを含む。本発明は例えば、PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、PARPをコードするDNAを含有する細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は2005年1月7日に出願された米国仮出願第60/642,353号の利益を主張し、その内容は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP;「ポリ(ADP−リボース)合成酵素」としても知られる)は、酸化型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(「NAD+」)を基質として用いてADP−リボースポリマーを合成し、そのポリマーをその他のタンパク質上に移す(「ポリADP−リボシル化」)、核酵素のファミリーである。多数のタンパク質、例えば、DNAリガーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、ヒストン、トポイソメラーゼおよびPARP自身が、PARPによって修飾され得る。(非特許文献1、非特許文献2;非特許文献3)
PARPファミリーについては、18のメンバーが同定されている(非特許文献3)。中でも、PARP−1およびPARP−2は、DNA損傷に対して応答性であるとわかっている。それらの触媒活性は、DNA鎖切断によって即座に刺激される。PARP−1は、よく研究されたPARPであり、113kDaという分子量を有する酵素である(非特許文献4)。PARP−1は細胞機能の二重レギュレーターと見なされている:DNA修復または細胞死のいずれかに関与する。DNA損傷が中程度である場合には、PARP−1はDNA修復において役割を果たす。しかし、DNA傷害が大きい場合には、過剰なPARP−1活性化がNAD+/ATPの枯渇とそれによる壊死による細胞死を導く。実際、過剰なPARP−1活性化および結果として起こる細胞死は、いくつかの疾患、例えば、卒中、心筋梗塞、糖尿病、ショック、神経変性障害、アレルギーおよびいくつかのその他の炎症プロセスの発病と関連づけられている(非特許文献5、非特許文献1)。
【0003】
PARP−2は、62kDaという分子量を有し、PARP−1と重複する役割を有する。PARP−1およびPARP−2両遺伝子のノックアウトは、マウスにとっては致死性であるが、PARP−1欠乏症自体はマウスにとって致死性ではない(同書)。
【0004】
PARP阻害剤は、DNA修復または細胞死におけるそれらの重要な役割のために、種々の疾患の治療において使用できる。一方で、PARP阻害剤は、癌療法においてアジュバント剤として、具体的には、化学療法および放射線療法において化学増感剤および放射線増感剤として使用できる。PARP活性の阻害は、PARP−1およびPARP−2が重要なメンバーであるとわかっているDNA修復機構を抑制する。このようにして、DNA修復の抑制が、DNA損傷剤の細胞感受性を高め、鎖の再結合を阻害する。次に、DNA損傷の蓄積がアポトーシスによる細胞死につながる。
【0005】
他方、PARP阻害剤は、疾患、例えば、卒中、心筋梗塞、糖尿病、ショック、神経変性障害、アレルギーをはじめとする疾患およびいくつかのその他の炎症性プロセスを治療するための薬剤として使用できる。PARP阻害剤は、過剰なPARP活性化を抑制し、それによってNAD+/ATPの枯渇によって引き起こされる細胞死を防ぐことができる(同書)。
【0006】
β−ラパコンは、強力な選択性の抗腫瘍化合物であるとわかっている。PARPの調節におけるβ−ラパコンの役割はまだ明らかではない。ある研究はPARP活性はβ−ラパコンによって阻害されると示している(非特許文献6)のに対し、別の研究は、PARP活性はβ−ラパコンによって誘導されるU2−OS細胞の壊死に関与していると示している(非特許文献7)。PARP活性におけるβ−ラパコンの阻害的役割についてのVillamilのデータは、β−ラパコンで治療した後のPARP活性の増強を示すLiuのものと矛盾する。
【0007】
本明細書に引用される参照文献は、特許請求される本発明の先行技術であると認められているわけではない。
【非特許文献1】Nguewa, et al., Mol Pharmacol 64:1007−1014(2003)
【非特許文献2】Tentori, et al., Pharmacological Research 45:73−85(2002)
【非特許文献3】Ame’, et al., Bioassays 26:882−893(2004)
【非特許文献4】De Murcia et al., BioEssays, 13:455−462(1991)
【非特許文献5】Tentori, et al., Pharmacological Research 45:73−85(2002)
【非特許文献6】Villamil S.F., et al. Mol Biochem Parasitol. 115(2):249−56(2001)
【非特許文献7】Liu T.J., et al. Toxicol Appl Pharmacol. 182(2): 116−25(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
進行型転移性癌に治癒をもたらす単一の薬剤または薬剤の組合せはなく、患者は、通常、数年で癌のために死亡する。したがって、命にかかわる腫瘍の発症を延期し、かつ/または腫瘍量をさらに減少させることによって生活の質を向上させることができる新規薬剤または組合せは、非常に重要である。癌およびその他の過剰増殖性疾患の治療のためのその他の抗増殖性化合物を単離する必要性が存在する。本明細書には、これらの化合物のスクリーニング方法およびこれらの化合物を用いてアポトーシスを調節する方法が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、PARPアクチベーターのスクリーニング方法に関する。本方法は、PARPをコードするDNAを含有する細胞において、試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。PARPは、PARP−1、PARP−2またはPARP−1とPARP−2の両方であり得る。一実施形態では、細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、細胞に試験化合物を曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。PARP活性化効果は、ポリ(ADP−リボース)合成の増大によって調べることができる。
【0010】
一実施形態では、スクリーニングに用いられる細胞は癌細胞である。癌細胞は、癌中の細胞、癌または培養癌細胞に由来する癌細胞であり得る。癌は、脊椎動物、哺乳類またはヒト由来であり得る。培養癌細胞の例としては、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)が挙げられる。
【0011】
試験化合物は低分子であり得、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングする方法を提供する。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含む。一実施形態では、正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、正常細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。
【0013】
正常細胞は、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞、脊椎動物、哺乳類またはヒトまたは培養正常細胞に由来する正常細胞であり得る。培養正常細胞の例としては、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)、PBMC(増殖性末梢血単核細胞)が挙げられる。この方法は、正常細胞においてよりも癌細胞において、高いPARP活性化効果を有する試験化合物を選択するステップをさらに含む。
【0014】
本発明は、細胞溶解産物を用いるPARPアクチベーターのスクリーニング方法をさらに提供する。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。一実施形態では、細胞は癌細胞である。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞溶解産物および正常細胞溶解産物における試験化合物のPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。
【0015】
本発明は、PARPを用いるPARPアクチベーターのスクリーニング方法をさらに提供する。この方法は、PARPを試験化合物と接触させるステップと、試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。一実施形態では、PARPは、PARP−1またはPARP−2である。この方法は、PARP活性を高める試験化合物を選択するステップをさらに含み得る。この方法は、化合物を選択した後、PARPをコードするDNAを含有する癌細胞またはその細胞の溶解産物において、選択した化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物またはその溶解産物において、選択した化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞または溶解産物および正常細胞または溶解産物における選択した化合物のPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。
【0016】
本発明はさらに、被験体において癌を治療または予防する方法に関する。この方法は、被験体の癌細胞においてPARP活性を高める、好ましくはPARP活性を選択的に高めるステップを含むことを含む。この方法は、被験体に治療上有効量のPARPアクチベーター、好ましくは、PARPの選択的アクチベーターを投与するステップを含み得る。本化合物は、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物であり得る。被験体は、脊椎動物、哺乳類またはヒトであり得る。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、種々の実施例をはじめとする本明細書に提供されるさらなる説明から明らかである。提供される実施例は、本発明を実施するのに有用な、種々の化合物および方法論を例示する。実施例は特許請求される発明を制限するものではない。当業者ならば、本開示内容に基づいて、本発明を実施するのに有用なその他の成分および方法論を同定し、用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、PARPアクチベーターのスクリーニング方法および癌の予防および治療におけるPARPアクチベーターの使用に関する。一実施形態では、PARPアクチベーターは、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である。
【0019】
(1.PARPアクチベーターのスクリーニング方法)
本発明は、試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、PARPアクチベーターのスクリーニング方法を提供する。本明細書において、「試験化合物のPARP活性化効果」とは、PARP活性を増大させる試験化合物の能力を指す。用語「増大させる」、「増強する」、「誘導する」または「促進する」は、本明細書では、同じ意味で用いられる。さらに、用語「減少させる」、「低下させる」、「阻害する」または「防ぐ」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0020】
PARP活性は、ポリ(ADPリボース)合成の測定によって調べることができる。PARP活性の測定は、当技術分野では公知である(例えば、Brown and Marala, J. of Pharmacol. and Toxicol. Method 47:137−141(2002)、Cheung and Zhang, Analytical Biochemistry 282:24−28(2000)およびDecker et al., Clinical Cancer Research 5:1169−1172(1999))参照のこと。PARP活性を増大させる試験化合物は、PARPアクチベーターである。あるいは、PARPの活性は、PARP阻害剤、例えば、3−アミノベンズアミドの存在下および非存在下で、細胞におけるアポトーシスをモニターすることによって測定することができる。
【0021】
試験化合物のPARP活性化効果は、試験化合物の存在下および非存在下でのPARP活性の比によって測定できる。一実施形態では、試験化合物の存在下でのPARP活性は、試験化合物の非存在下でのPARP活性の約1.5倍、約2倍、約4倍、約10倍、約20倍、約40倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1,000倍または1,000倍を超える。
【0022】
PARPアクチベーターは、種々の機構を介してPARP活性を増大させ得る。PARPアクチベーターは、PARPの転写、転写後、翻訳もしくは転位置、または上記の組合せを増大させ得る。PARPアクチベーターは、PARPと直接相互作用する場合もあるし、PARPのモジュレーターと相互作用する場合もあるし、両方と相互作用する場合もある。一実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、化合物を、PARPの活性または発現を増大させるその能力についてスクリーニングするステップを含む。
【0023】
試験化合物のPARP活性化効果は、種々の系、例えば、動物モデル、培養細胞、細胞溶解産物もしくは単離PARP、または上記の組合せを用いて評価できる。
【0024】
(1.1.細胞を用いる評価法)
一実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。評価に用いる細胞は、PARPをコードするDNAを含んでいなくてはならない。PARP活性化効果を評価するステップは、細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARP活性を比較するステップとを含み得る。次いで、PARP活性を増大させる試験化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0025】
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、試験化合物の、PARPの活性または発現を増大させる能力を測定するステップを含む。一実施形態では、この方法は、PARPを発現する細胞に試験化合物を曝露するステップと、次いで、PARPの発現を測定するステップとを含む。次いで、試験化合物の存在下でのPARPの発現を、試験化合物の非存在下でのPARPの発現と比較する。試験化合物の存在下でのPARPの発現が、試験化合物の非存在下でのPARPの発現よりも多い場合には、試験化合物は、PARP発現を誘導または促進するPARPアクチベーターである。発現は当技術分野で公知のいずれかの手段、例えば、ウエスタンブロッティングによって測定できる。試験化合物に曝露されていない細胞におけるPARPの発現は、試験化合物に曝露された細胞における発現の約0%、約1%、約10%、約20%、約50%または約75%であり得る。
【0026】
評価に用いる細胞は、真核生物、好ましくは、脊椎動物、より好ましくは、哺乳類、さらに好ましくは、ヒトから直接得た細胞であり得る。あるいは、評価に用いる細胞は、培養細胞であり得る。
【0027】
評価に用いる細胞は、癌細胞であることが好ましい。本明細書において、「癌細胞」とは、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトから直接得た、原発性癌、転移性癌または血液由来癌に由来する細胞を指す。癌細胞は、限定されるものではないが、ほとんどの場合、いわゆる「癌化表現型」を示し、制限されない複製能をその細胞に付与する遺伝子欠損を有し、さらに、半固体組織培養培地(ソフトアガーなど)において足場独立的に増殖する能力を示すと特徴づけられ、免疫学的に易感染性または致死量以下の照射を受けた、げっ歯類またはその他の動物モデルに注入または移植された場合に皮下腫瘍を形成する能力を特徴とする。癌細胞は脊椎動物、哺乳類またはヒトから得られる癌中の細胞であり得る。癌細胞はまた、キメラ動物から得られる癌中の細胞、またはキメラ動物における癌に由来する細胞であり得る。キメラ動物の一例として、ヒト異種移殖片腫瘍を有するマウスがある(例えば、Calabrese et al., J. Natl. Cancer Inst. 96:56−67(2004)参照のこと。あるいは、癌細胞は、滅菌ポリスチレンプレートにおいて接着単層として無制限に増殖した培養癌細胞であり得る。培養癌細胞の例としては、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)が挙げられる。
【0028】
PARPアクチベーターは、正常細胞においてよりも癌細胞においてPARP活性を増大させるPARPの選択的アクチベーターであることが好ましい。PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングするためには、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、正常細胞ならびに癌細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含み得る。正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、正常細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下でのPARPの活性を比較するステップとを含み得る。次いで、正常細胞においてよりも癌細胞においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。
【0029】
PARPアクチベーターの選択性は、癌細胞および正常細胞における試験化合物のPARP活性化効果の比によって測定できる。一実施形態では、癌細胞における試験化合物のPARP活性化効果は、癌細胞における試験化合物のPARP活性化効果の、約1.5倍、約2倍、約4倍、約10倍、約20倍、約40倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1,000倍または1,000倍を超える。
【0030】
本明細書において、「正常細胞」とは、癌細胞と比較して制限された複製能を有し、有限数の細胞分裂の後、培養において分裂を停止する細胞を指す。これらの正常細胞は、癌細胞のいわゆる「癌化表現型」を示さず、半固体組織培養培地(ソフトアガーなど)において足場独立的に増殖せず、免疫学的に易感染性または致死量以下の照射を受けた、げっ歯類またはその他の動物モデルに注入または移植された場合に皮下腫瘍を形成しない細胞を包含する。正常細胞は、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトの組織から直接単離した細胞、例えば、皮膚生検から得られるヒト皮膚線維芽細胞、全血から単離される増殖性末梢血単核細胞(PBMC)または乳房縮小術後に正常乳房組織から単離されるヒト上皮細胞であり得る。正常細胞は、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞であり得る。あるいは、正常細胞は、in vitroで増殖され、癌化表現型をとることなく複製能の増大を獲得した(「不死化」した)培養細胞株、例えば、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)であってもよい。
【0031】
PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングする方法では、癌細胞および正常細胞は、いくつかの主な特徴を共有することが好ましい。例えば、Li, et al., PNAS 100:2674−2678(2003)参照のこと。
【0032】
(1.2.細胞溶解産物を用いる評価法)
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。評価に用いる細胞は、PARPをコードするDNAを含んでいなくてはならない。PARP活性化効果を評価するステップは、細胞溶解産物を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞溶解産物におけるPARP活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARP活性を比較するステップとを含み得る。次いで、PARP活性を増大させる化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0033】
細胞溶解産物は、当技術分野で公知の種々の方法によって作製できる。例えば、Current protocols in protein science, John E. Coligan et al., Publisher: New York: Wiley 1995−2002 Edition:(v. 1)参照のこと。
【0034】
評価法は、癌細胞の溶解産物を用いることが好ましい。癌細胞としては節1.1に記載されるものがある。
【0035】
同様に、癌細胞溶解産物におけるおよび正常細胞溶解産物における、試験化合物のPARP活性化効果を比較できる。次いで、正常細胞溶解産物においてよりも癌細胞溶解産物においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。PARPアクチベーターの選択性は節1.1においてと同様に調べることができる。
【0036】
(1.3.PARPを用いる評価法)
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、PARPを試験化合物と接触させるステップと、試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下でのPARPの活性を比較するステップとを含む。次いで、PARP活性を増大させる試験化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0037】
一実施形態では、試験化合物の評価に用いるPARPは、PARP−1である。好ましい実施形態では、PARP−1は単離PARP−1である。一実施形態では、PARP−1は、表1に示されるアミノ酸配列を有するヒトタンパク質である。活性は、ポリ(ADPリボース)基の量をモニターすることによって測定されるPARPの活性をモニターすることによって測定する。
【0038】
【表1】
試験化合物をPARPアクチベーターとして選択すると、PARP活性化におけるその選択性についてアクチベーターをさらに試験できる。さらなる試験は上記の手順に従うことができる。そのため、この方法は、PARPをコードするDNAを含有する癌細胞、または癌細胞の溶解産物においてアクチベーターのPARP活性化効果を評価するステップと、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞、または正常細胞の溶解産物においてアクチベーターのPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞または溶解産物および正常細胞または溶解産物におけるアクチベーターのPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。次いで、正常細胞または溶解産物においてよりも癌細胞または溶解産物においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。PARPアクチベーターの選択性は、節1.1においてと同様に調べることができる。
【0039】
(1.4.抗癌剤候補のスクリーニング方法)
本発明はまた、PARP活性化または発現に対して増強効果を有し、ひいては、癌細胞の細胞死を促進する、候補または試験化合物または薬剤を同定する方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物を含む。
【0040】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、前癌状態または癌の治療に使用するための可能性ある治療薬を同定する方法であって、細胞、組織または動物を提供するステップと、細胞、組織または動物を、PARP活性または発現を増強する試験化合物を含む組成物に曝露させるステップと、前癌状態または癌の進行をモニターし、前癌状態または癌の進行が低減される場合に候補化合物を可能性ある治療薬として同定するステップとを含む方法を対象とする。
【0041】
一実施形態では、アッセイは、細胞ベースのアッセイであり、これでは、癌細胞を試験化合物に曝露させ、試験化合物の、PARPの活性化または発現を直接的にまたは間接的に増強し、前癌状態または癌の進行を低減する能力を調べる。細胞は、例えば、哺乳類またはヒト起源のものであり得、前癌状態または癌の細胞であり得る。試験化合物の、前癌状態または癌の進行を低減する能力を調べるステップは、例えば、前癌状態または癌の進行をモニターすることによって達成できる。
【0042】
本発明はまた、(i)薬剤の投与に先立って被験体から投与前サンプルを採取ステップと、(ii)投与前サンプルにおいて、前癌状態または癌の細胞におけるPARPの発現または活性のレベルを検出するステップと、(iii)被験体から1以上の投与後サンプルを採取するステップと、(iv)投与後サンプルにおいて、前癌状態または癌の細胞のPARPの発現または活性のレベルを検出するステップと、(v)投与前サンプルにおける前癌状態または癌の細胞のPARPの発現または活性のレベルを、投与後サンプルまたはサンプル類における前癌状態または癌の細胞と比較するステップと、(vi)被験体への薬剤の投与をそれに沿って変更するステップとを含む、PARPの活性化または発現を直接的にまたは間接的に増強する試験化合物または薬剤を用いる被験体の治療の有効性をモニターする方法を提供する。
【0043】
適したin vitroまたはin vivoアッセイを実施してPARP活性または発現を増強する組成物の効果を、またその投与が前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するかどうかを調べることができる。種々の特定の実施形態では、代表的な前癌状態または癌の細胞を用いてin vitroアッセイを実施し、所与の治療薬が、その細胞種(類)に対して所望の効果を発揮するかどうかを調べることができる。治療に用いる化合物は、ヒト被験体における試験に先立って、適した動物モデル系、例えば、それだけには限らないが、ラット、マウス、ウシ、サル、ウサギなどで試験できる。同様に、in vivo試験については、ヒト被験体への投与に先立って当技術分野で公知の動物モデル系はいずれも使用できる。
【0044】
(2.試験化合物)
試験化合物は、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸、低分子またはその他の薬物候補であり得る。好ましい実施形態では、試験化合物は低分子である。本明細書において「低分子」とは、分子量が約5kD未満である、最も好ましくは、約4kD未満である組成物を指すものとする。低分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、炭水化物、脂質またはその他の有機もしくは無機分子であり得る。化学的および/または生物学的混合物、例えば、真菌、細菌または藻類抽出物のライブラリーは当技術分野で公知であり、本発明のアッセイのいずれかを用いてスクリーニングできる。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明に用いる低分子は、β−ラパコンまたはその類似体、誘導体または代謝産物である。本発明のもう1つの実施形態では、候補化合物と接触させた細胞におけるPARPの活性を、β−ラパコンと接触させた細胞におけるPARPの活性と比較する。候補化合物の存在下でのPARPの活性が、β−ラパコンの存在下でのPARPの活性と同様である場合には、候補化合物はPARP活性を誘導または促進し、アポトーシスを誘導または促進し、細胞および組織におけるアポトーシスの調節において有用である。
【0046】
PARPの発現の増大はまた、その他のアプローチでも達成され得る。具体的には、この方法は、細胞においてPARPを異種発現させる方法とともに、アンチセンスおよびRNA干渉(RNAi)を含む。PARPの発現を調節するための特異的siRNAおよびアンチセンスヌクレオチドも本発明に含まれる。
【0047】
(2.1.試験化合物のライブラリー)
本発明の試験化合物は、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれか、例えば、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能なパラレル固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を用いて得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4種のアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子ライブラリーの化合物に適用できる。例えば、Lam, Anticancer Drug Design 12:145(1997)参照のこと。
【0048】
分子ライブラリーの合成法の例は、当技術分野において、例えば、DeWitt, et al., PNAS 90:6909(1993)、Erb, et al., PNAS 91:11422(1994)、Zuckermann, et al.,J. Med. Chem. 37:2678(1994)、Cho, et al., Science 261 :1303(1993)、Carrell, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059(1994)、Carell, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061(1994)およびGallop, et al., J. Med. Chem. 37:1233(1994)に見出すことができる。
【0049】
化合物のライブラリーは溶液中に(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412−421(1992))またはビーズ上に(Lam, Nature 354:82−84(1991))、チップ上に(Fodor, Nature 364:555−556(1993))、細菌で(Ladner,米国特許第5,223,409号)、胞子で(Ladner,米国特許第5,233,409号)、プラスミドで(Cull, et al., PNAS, 89:1865−1869(1992))またはファージ上に(Scott and Smith, Science 249:386−390(1990)、Devlin, Science 249:404−406(1990)、Cwirla, et al., PNAS 87:6378−6382(1990)、Felici, J. Mol. Biol. 222:301−310(1991)、Ladner, 米国特許第5,233,409号)提供できる。
【0050】
(2.2 β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物)
実施例において示されるように、β−ラパコンはPARPアクチベーターである。PARP経路をβ−ラパコンによって誘導されるアポトーシスにおける主要な決定因子として、初めて証明した。さらに、β−ラパコンがPARP酵素を直接活性化することを発見した。
【0051】
実施例において示されるように、β−ラパコンは、細胞溶解産物(図9)および無傷の細胞(図4)の双方においてPARP活性を増強する。細胞および溶解産物をβ−ラパコンで処理し、PARP産物ポリ(ADP−リボース)の量を測定した。PARPによるポリ(ADP−リボース)の生成の増強に対するβ−ラパコンの効果は、既知のPARP阻害剤3−アミノベンズアミドの添加によって打ち消された(図5および6)。
【0052】
β−ラパコンはまた、HeLaおよびDLD1細胞において細胞傷害性を誘導する(図1〜3)。3−アミノベンズアミドは、HeLaおよびDLD1細胞における細胞傷害性の誘導を阻止する(図1〜3)。PARPは基質としてNAD+を用いてポリ(ADP)基を合成する。PARPの活性化は、NAD+の枯渇を引き起こし、これが細胞傷害性の増大をもたらす。
【0053】
β−ラパコンは、細胞において細胞NAD+レベルの迅速な枯渇を引き起こす(図7)。この枯渇は、3−アミノベンズアミドの添加によって阻害された。β−ラパコン投与に伴って起こる細胞傷害性の増大は、NAD+の投与によって元に戻すことができた(図8)。同様の結果が、MCF7、DLD1、HeLaおよびSW480細胞において見られた。このデータは、β−ラパコンはPARPと直接的に相互作用し、PARP活性の増強を介して細胞傷害性を引き起こすということを示す。
【0054】
β−ラパコンは、癌細胞ではE2F1を特異的に誘導し、それによって、癌細胞において細胞死を選択的に誘導する(Li, et al., PNAS 100:2674−2678(2003))。実施例において示されるように、β−ラパコンは、E2F1を介してPARP活性を活性化し、E2F1の阻害は、β−ラパコンによって誘導されるPARP活性化を抑制する。したがって、β−ラパコンはまた、癌細胞においてPARP活性を選択的に増大させるPARPの選択的アクチベーターである。
【0055】
一実施形態では、候補化合物はβ−ラパコン類似体、誘導体または代謝産物である。本明細書ではさらに、語句「β−ラパコン」とは、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフサ[1,2−b]ピラン−5,6−ジオンを指し、以下の化学構造を有する
【0056】
【化1】
本発明に従う、β−ラパコンまたはその類似体、誘導体または代謝産物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第6,458,974号に記載のとおり合成できる。好ましい誘導体および類似体は以下に論じる。
【0057】
もう1つの実施形態では、β−ラパコンの類似体として、還元β−ラパコン(式Ia、式中、R’およびR’’は各々水素である)ならびに還元β−ラパコンの誘導体(式Ia、式中、R’およびR’’は各々独立に水素、低級アルキルまたはアシルである)が挙げられる。
【0058】
さらにもう1つの実施形態では、β−ラパコン誘導体または類似体、例えば、ラパコールおよび、
【0059】
【化2】
その薬剤組成物および製剤が本発明に一部である。このようなβラパコン類似体としては、それだけには限らないが、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US93/07878(WO94/04145)において列挙されたものが挙げられ、これは次式の化合物を開示する:
【0060】
【化3】
[式中、R1およびR2は各々独立に、水素、置換および非置換アリール、置換および非置換アルケニル、置換および非置換アルキルならびに置換または非置換アルコキシである]。アルキル基は、1〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約10個の炭素原子がより好ましく、1〜約6個の炭素原子がさらにより好ましい。用語アルキルとは、別に修飾のない限り、環状および非環状基の双方を指し、ただし、もちろん環状基は少なくとも3個の炭素環員を含む。直鎖または分枝鎖非環状アルキル基は、通常、環状基よりもより好ましい。直鎖アルキル基は、通常、分枝よりもより好ましい。アルケニル基は、2〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、2〜約10個の炭素原子がより好ましく、2〜6個の炭素原子がさらにより好ましい。特に好ましくいアルケニル基は3個の炭素原子を有し(すなわち1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル部分を有することが特に好ましい。フェニルおよびナフチルは、通常、好ましいアリール基である。アルコキシ基は、1以上の酸素結合を有するアルコキシ基を含み、1〜15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約6個の炭素原子がより好ましい。置換R1およびR2基は、1以上の利用可能な位置で、1以上の適した基、例えば、アルキル基、例えば、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、例えば、2〜10個の炭素原子または2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロおよびブロモならびにN、OおよびSなどによって置換されていてもよく、ヘテロアルキル、例えば、1以上のヘテロ原子結合を有し(したがって、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するヘテロアルキルを含む。
【0061】
本発明に従って考慮されるその他のβ−ラパコン類似体としては、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第6,245,807号に記載されるものが挙げられ、これでは、以下の構造を有するβ−ラパコン類似体および誘導体を開示している
【0062】
【化4】
[式中、RおよびR1は各々独立に、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシおよびそれらの塩から選択され、環炭素間の点線の二重結合は、任意の環二重結合を表す]。
【0063】
さらなるβ−ラパコン類似体および誘導体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US00/10169(WO00/61142)に列挙されており、これでは以下の構造の化合物を開示している
【0064】
【化5】
[式中、R5およびR6は独立に、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−フェニルから選択されてよく、R7は水素、ヒドロキシル、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルであり、nは0〜10の整数である]。
【0065】
その他のβ−ラパコン類似体および誘導体は、米国特許第5,763,625号、同5,824,700号および同5,969,163号に、ならびに、Sabba et al., J Med Chem 27:990−994(1984)などの科学論文に開示されており、これでは以下の位置のうち1以上に置換を有するβ−ラパコンを開示している:2−、8−および/または9−位。Portela et al., Biochem Pharm 51 :275−283(1996)(2−および9−位での置換)、Maruyama et al., Chem Lett 847−850(1977)、Sun et al., Tetrahedron Lett 39:8221−8224(1998)、Goncalves et al., Molecular and Biochemical Parasitology 1:167−176(1998)(2−および3−位での置換)、Gupta et al., Indian Journal of Chemistry 16B: 35−37(1978)、Gupta et al., Curr Sci 46:337(1977)(3−および4−位での置換)、DiChenna et al., J Med Chem 44: 2486−2489(2001)(モノアリールアミノ誘導体)も参照のこと。上記の参照文献の各々は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0066】
本願によって考慮されるβ−ラパコン類似体および誘導体は、以下の一般式IIおよびIIIを有する化合物を包含するよう意図されることがより好ましい:
【0067】
【化6】
[式中、環炭素間の点線の二重結合は、任意の環二重結合を表し、RおよびR1は各々独立に、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシおよびそれらの塩から選択される]。アルキル基は、1〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約10個の炭素原子がより好ましく、1〜約6個の炭素原子がさらにより好ましい。用語アルキルとは、環状および非環状基の双方を指す。直鎖または分枝鎖非環状アルキル基は、通常、環状基よりもより好ましい。直鎖アルキル基は、通常、分枝よりもより好ましい。アルケニル基は、2〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、2〜約10個の炭素原子がより好ましく、2〜6個の炭素原子がさらにより好ましい。特に好ましくいアルケニル基は3個の炭素原子を有し(すなわち1−プロペニルまたは2−プロペニル)が、アリル部分を有することが特に好ましい。フェニルおよびナフチルは、通常、好ましいアリール基である。アルコキシ基は、1以上の酸素結合を有するアルコキシ基を含み、1〜15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約6個の炭素原子がより好ましい。置換RおよびR1基は、1以上の利用可能な位置で、1以上の適した基、例えば、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜10個の炭素原子または2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロおよびブロモならびにN、OおよびSなどによって置換されていてもよく、これとしては、ヘテロアルキル、例えば、1以上のヘテロ原子結合を有し(したがって、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するヘテロアルキルが挙げられる。また、式中、R5およびR6は独立に、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルから選択されてもよく、R7は水素、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルであり、nは0〜10の整数である。
【0068】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式IVの化合物が挙げられる
【0069】
【化7】
[式中、R1は(CH2)n−R2であり、nは0〜10の整数であり、R2は水素、アルキル、アリール、複素芳香族化合物、複素環式化合物、脂肪族化合物、アルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシル、アミン、チオール、アミドまたはハロゲンである。
【0070】
本発明によって同様に考慮される類似体および誘導体として、また、4−アセトキシ−β−ラパコン、4−アセトキシ−3−ブロモ−β−ラパコン、4−ケト−β−ラパコン、7−ヒドロキシ−β−ラパコン、7−メトキシ−β−ラパコン、8−ヒドロキシ−β−ラパコン、8−メトキシ−β−ラパコン、8−クロロ−β−ラパコン、9−クロロ−β−ラパコン、8−メチル−β−ラパコンおよび8,9−ジメトキシ−β−ラパコンが挙げられる。
【0071】
本発明によって同様に考慮されるその他のβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式Vの化合物が挙げられる:
【0072】
【化8】
[式中、R1〜R4は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルからなる群から選択され、または合わせたR1およびR2が、上記の群から選択される単一の置換基であり、合わせたR3およびR4は、上記の群から選択される単一の置換基であり、この場合には−−−−は二重結合である。
【0073】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、ズンニオンおよび2−エチル−6−ヒドロキシナフサ[2,3−b]−フラン−4,5−ジオンが挙げられる。
【0074】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式VIの化合物が挙げられる:
【0075】
【化9】
[式中、R1はH、CH3、OCH3およびNO2から選択される]。
【0076】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコン類似体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US03/37219(WO2004/045557)に列挙されており、これでは以下の式VIIによって表される化合物
【0077】
【化10】
またはその製薬上許容される塩またはその位置異性体混合物を開示している[式中、R1〜R6は各々独立に、H、OH、置換および非置換C1〜C6アルキル、置換および非置換C1〜C6アルケニル、置換および非置換C1〜C6アルコキシ、置換および非置換C1〜C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1〜C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−複素環および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか、またはR1もしくはR2の一方とR3もしくはR4の一方、またはR3もしくはR4の一方とR5もしくはR6の一方が縮合環を形成し、ここで、環は4〜8環員を有し、R7〜R10は各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり、nは0〜10の整数である]。
【0078】
好ましい実施形態では、R1およびR2はアルキルであり、R3〜R6は独立に、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換または非置換アシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、R7〜R10は水素である。もう1つの好ましい実施形態では、R1およびR2は各々メチルであり、R3〜R10は各々水素である。もう1つの好ましい実施形態では、R1〜R4は各々水素であり、R5およびR6は各々メチルであり、R7〜R10は各々水素である。
【0079】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコン類似体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US03/37219(WO2004/045557)に列挙されており、これでは次式VIIIによって表される化合物
【0080】
【化11】
またはその製薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物を開示している[式中、R1〜R4は各々独立に、H、OH、置換および非置換C1〜C6アルキル、置換および非置換C1〜C6アルケニル、置換および非置換C1〜C6アルコキシ、置換および非置換C1〜C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1〜C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−複素環および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか、またはR1もしくはR2の一方およびR3もしくはR4の一方が縮合環を形成し、ここで、環は4〜8環員を有し、R5〜R8は各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり、nは0〜10の整数である]。式VIIIの特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々同時にHではない。
【0081】
(3.哺乳類前癌状態、癌または過剰増殖性疾患を診断および治療する方法)
本発明によって提供されるPARPアクチベーターは、PARPの活性を増大させることによって癌細胞を死滅させる新規薬物として使用できる。この抗癌剤は、PARP関連障害の細胞、例えば、前癌状態または癌細胞、過剰増殖性細胞またはDNA損傷と関連している細胞において細胞死を促進する。
【0082】
治療される種々の癌としては、それだけには限らないが、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞腫、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍およびリンパ腫瘍が挙げられる。過剰増殖性障害とは、細胞の調節されていないおよび/または異常な増殖が、癌性または非癌性の、例えば、乾癬状態であり得る、望まれていない状態または疾患の発生をもたらし得る状態を指す。本明細書において、用語「乾癬状態」とは、ケラチノサイト過剰増殖、炎症性細胞浸潤およびサイトカイン変更を含む障害を指す。治療される過剰増殖性疾患/障害として、それだけには限らないが、エピデルミック(epidermic)嚢胞および類皮嚢胞、脂肪腫、腺腫、毛細血管および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫瘍、筋線維腫症、骨形成腫瘍およびその他の形成異常腫瘤などが挙げられる。PARP関連障害は、DNA修復障害、例えば、それだけには限らないが、毛細血管拡張性運動失調症、早期老化症候群、リー・フラウメニ症候群および前癌状態、例えば、BRCA家系であり得る。本発明の組成物はまた、癌への進行の危険の増した、前癌状態、臨床状態にとっても有用であり得る。
【0083】
本発明はまた、癌細胞の細胞死を調節する候補化合物の使用のために広く描かれている。これらの試験化合物を用いるアポトーシスの調節は、in vitro、in vivoまたはex vivoで生じ得る。調節は、癌細胞、細胞株および原発性細胞において生じ得る。
【0084】
本発明のもう1つの実施形態は、前癌状態または癌の細胞の増殖を防ぐまたは阻害する方法であり、この方法は細胞に、細胞においてPARP活性または発現を増強する組成物を、前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で細胞に投与するステップを含む。この方法は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞で実施でき、またin vitroもしくはin vivoで実施できる。
【0085】
本発明のもう1つの実施形態は、被験体において哺乳類前癌状態または癌を診断および治療する方法であり、この方法は、被験体から前癌状態または癌細胞を得るステップと、被験体から得た前癌状態または癌細胞を、PARPの存在について試験するステップと、PARP活性または発現を増強する組成物を、前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で被験体に投与するステップとを含む。この方法に用いる組成物は、PARPの発現を増大させる、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物、またはmRNAであり得る。
【0086】
本発明のもう1つの実施形態は、哺乳類被験体において前癌状態または癌を治療する方法であり、この方法は、PARP活性または発現を増強する組成物を哺乳類に投与するステップと、前癌状態または癌の状態を調べるために哺乳類をモニターするステップとを含み、組成物は前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で投与する。この方法に用いる組成物は、PARPの発現を増大させる、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物、またはmRNAであり得る。
【0087】
本発明のもう1つの実施形態は、前癌状態または癌を有する哺乳類被験体に投与されると、哺乳類被験体においてPARPの活性化または発現を選択的に増強し、腫瘍細胞増殖の退行をもたらす組成物を用いる治療に受容性である患者を診断する方法である。この方法は、患者から細胞を得るステップと、PARPの存在またはPARP活性の存在のいずれかについて細胞を試験するステップとを含み、細胞におけるPARPの存在またはPARP活性の存在のいずれかが、治療に受容性である患者を示す。
【0088】
この実施形態では、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物などの化合物を用いて癌を診断できる。被験体から単離された細胞を、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物の存在下または非存在下で培養できる。対照と比較して、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物で処理された細胞においてその増殖速度が阻害された細胞は、前癌状態または癌の細胞である。次いで、この被験体を前癌状態または癌を有すると診断できる。
【0089】
本発明のPARPアクチベーターは、種々の形の組織損傷、例えば、虚血、再潅流傷害、機械的傷害、炎症または免疫学的損傷の際のアポトーシスを阻害する薬物の開発に役立ち得る。
【0090】
(3.1 試験化合物およびPARPアクチベーターの組成物)
上記で論じたように、一態様では、本発明は、前癌状態、癌または過剰増殖性障害を有する哺乳類被験体に投与されると、哺乳類細胞および被験体においてPARP活性を選択的に増強し、細胞増殖の退行をもたらす組成物を提供する。この組成物はまた、薬剤組成物またはキットの形であり得る。
【0091】
本発明の組成物は、投与に適した薬剤組成物に組み込むことができる。このような組成物は、通常、PARP活性または発現を増強する物質と製薬上許容される担体とを含む。本明細書において、「製薬上許容される担体」とは、薬剤投与に適した、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など含むものとする。適した担体は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版、この技術分野の標準的基準教本に記載されている。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、それだけには限らないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば、硬化油も使用できる。製薬上活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。従来の媒体または薬剤はいずれも、活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が考慮される。驚くべきことに、活性化合物もまた本組成物に組み込むことができる。
【0092】
本発明の薬剤組成物は、その意図される投与経路と適合するよう製剤される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内の、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈液、例えば、注射水、生理食塩水、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA); 酢酸、クエン酸またはリン酸などのバッファー、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張力を調整する薬剤。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整できる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数用量バイアルに封入できる。
【0093】
注射用使用に適した薬剤組成物は、滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散物と、滅菌散剤とを含む。静脈内投与には、適した担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなくてはならず、容易な注射針通過性が存在するという点で液体であるべきである。製造および保存条件下で安定でなくてはならず、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用から守られなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒または分散媒、ならびにそれらの適した混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、界面活性剤を用いることによって維持できる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マニトール(manirol)、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0094】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、必要な量の活性化合物(例えば、PARP活性または発現を増強する物質)を、上記で列挙された成分のうちの1種またはその組合せとともに適当な溶媒中に組み込むことと、それに続いて、滅菌濾過することによって調製できる。一般に、分散物は、活性化合物を、基礎分散媒と、上記で列挙されたものから必要なその他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合には、調製方法は、事前に滅菌濾過したその溶液から有効成分およびいずれかのさらなる所望の成分の散剤を生成する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0095】
経口組成物は、通常、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入でき、または錠剤に打錠できる。経口治療投与の目的で、活性化合物を腑形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形で使用できる。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして用いるために液体担体を用いて調製でき、これでは、液体担体中の化合物を経口的に適用し、局所使用し、吐き出すか飲み込む。製薬上適合する結合剤および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含み得る:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterote);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリンあるいは矯味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料。
【0096】
吸入による投与用には、本化合物は、適した噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧型容器またはディスペンサーからの、または噴霧器からのエアゾールスプレーの形で送達される。
【0097】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によってであり得る。経粘膜または経皮投与用には、通過しようとする障壁に対して適当な浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用によって達成できる。経皮投与用には、活性化合物は、一般に、当技術分野で知られるような、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤する。
【0098】
本化合物はまた、直腸送達用の坐剤(例えば、ココアバターおよびその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または保留浣腸の形で調製できる。
【0099】
一実施形態では、活性化合物は、身体からの迅速な排出から化合物を保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル型送達系をはじめとする放出制御製剤を用いて調製する。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用できる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得ることができる。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を含む感染細胞を標的とするリポソームを含む)を、製薬上許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0100】
投与が容易なようにおよび投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を、単位投与形に製剤することは特に有利である。本明細書において単位投与形とは、治療される被験体のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な薬剤担体と関連して所望の治療効果を生じるよう算出された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果および個体の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に特有の制限によって決定され、それらに応じて直接的に変わる。
【0101】
薬剤組成物は、投与のための使用説明書とともに容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【実施例】
【0102】
本発明の種々の特徴をさらに例示するために、実施例を以下に提供する。実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を例示する。これらの実施例は特許請求される本発明を制限するものではない。
【0103】
(実施例1:PARPスクリーニング)
(1.細胞死アッセイ)
示したように、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって、またはトリパンブルー排出によって細胞死を調べた。手短には、HeLaおよびDLD1細胞を、10,000個細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、完全増殖培地で24時間培養し、次いで、種々の濃度のβ−ラパコンで4時間処理した。MTTを終濃度0.5mg/mlに添加し、1時間インキュベートし、続いて、570nmでマイクロプレートリーダーを用いて細胞生存力を評価した。
【0104】
トリパンブルー排出アッセイには、HeLaおよびDLD1細胞を、6ウェルプレートにプレーティングし、同様に処理した。それらを回収し、細胞懸濁液にトリパンブルー色素溶液を添加した。血球計を用いて全細胞数および生存細胞数を調べた。PARP阻害研究のためには、細胞をPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB、5mM)で1時間前処理し、次いで、阻害剤およびβ−ラパコンでさらに4時間同時処理し、続いて、MTTアッセイまたはトリパンブルー染色を行った。
【0105】
NAD+補給実験のためには、MCF7細胞を、10,000個細胞/ウェルという密度で96ウェルプレートにプレーティングした。16〜18時間後、細胞を、5μMの3−アミノベンズアミド、10mM NAD+またはビヒクル対照を用い、37℃で1時間前処理した(すべての処理は増殖培地:10%ウシ胎児血清を含むDMEM中で策定された)。このインキュベーションの後、細胞(各プレインキュベーション処理下)を、示された濃度のβ−ラパコンを用いて、37℃で4時間処理した。次いで、MTTアッセイを上記の通り実施した。
【0106】
(2.免疫蛍光解析)
PARP活性実験のために、HeLaおよびDLD1細胞をカバースリップ上で増殖させた。種々の時点で4μMのβ−ラパコンで処理した細胞をメタノールアセトン(70/30、v/v)を用い、−20℃で10分間固定した。カバースリップを風乾し、PBS中、室温で10分間再水和した。次いで、サンプルを、加湿チャンバー中で、ブロッキングバッファー(PBS、5%PBS)中、室温で10分間インキュベートした。細胞をモノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体(10H、1:100希釈)とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、FITC結合抗マウス抗体の1:500希釈物とともに室温で1時間インキュベートした。PARP阻害研究のためには、細胞をPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB、5mM)とともに1時間前処理し、次いで、阻害剤およびβ−ラパコンでさらに10分間同時処理し、続いて、免疫蛍光染色を行った。免疫蛍光はCCDカメラを備えた免疫蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0107】
(3.NAD枯渇アッセイ)
HeLa細胞を6×105個細胞/ウェル(35mm、6ウェルディッシュ)でプレーティングした。プレーティングの18時間後、細胞を増殖培地(DMEM;10%FBS)においてβ−ラパコン(0、2、4または8μM)を用い、示した時間(15、30および60分)処理した。薬物処理した後、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、細胞を200μLのNAD溶解バッファー(61mM グリシル−グリシン、pH7.4、0.1% Triton−X−100)に溶解した。16,000gで10分間の遠心分離によって細胞溶解産物を清澄化した。清澄化した溶解産物のアリコートを96ウェルプレート(3連で25μLサンプル)に移し、NAD+濃度を調べた。
【0108】
溶解産物NADレベルの決定は、Ying et al(PNAS, 98(21):12227−32(2001))によって記載されたNAD再利用アッセイの改変を用いて実施した。手短には、NAD反応混合物は、61mM Gly−Glyバッファー(pH 7.4)中、0.1mM 3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)、0.9mM フェナジンメトスルファート、13ユニット/mlアルコール脱水素酵素(酵母抽出物由来、Sigma)、100mM ニコチンアミドおよび5.7%エタノールからなっていた。細胞溶解産物の各アリコートに、200μLの反応混合物を加えた。5分間の間、毎分、吸光度読み取り値(560nm)をとった。結果を、NAD+標準を用いて校正し、続いて、Bio−Radタンパク質アッセイを用いて調べられたタンパク質濃度に対して標準化した。最後に、このデータを対照処理した細胞(15分で0μM β−ラパコン)に対して標準化し、残存する細胞NAD+レベルパーセントをプロットした。
【0109】
(4.PARP活性測定法)
MCF7細胞の15cm(約80%コンフルエント)ディッシュを削り取り、プロテアーゼ阻害剤を含有するPARPバッファー(50mM Tris pH8.0、25mM MgCl2)1.5mlに入れることによって細胞抽出物を作製した。細胞懸濁液を、氷上で30%振幅で3×10秒バーストを用いて超音波処理した。続いて、4℃、16,000gで10分間遠心分離することによって、細胞溶解産物を清澄化した。清澄化した溶解産物を、コットンパッドフィルターを含む5mlのシリンジに通すことによって残存する不溶性の物質をいずれも除去した。抽出物のタンパク質濃度は、通常、0.6〜1.0μg/mlの間であった。
【0110】
TREVIGEN(商標)からのPARP in vitroアッセイの改変を用いてPARP in vitro活性を調べた。反応液は以下を含んでいた:約60μgの細胞タンパク質、100μM NAD、10μgのヒストンH1、β−ラパコン(種々の濃度で)またはDMSO対照、25mM MgCl2、50mM Tris−Cl pH8.0。反応液を室温で10分間インキュベートし、900μLの冷25%トリクロロ酢酸を添加することによって終結させた。終結させた反応液を氷上で10分間インキュベートした。反応液を真空下でガラス繊維フィルターを通すことによって、TCA沈殿させたタンパク質を単離した。続いて、フィルターを5mlの5% TCAで3回洗浄し、続いて冷エタノールで2回洗浄した。フィルターを乾燥させ、シンチレーションカクテルに移した。次いで、液体シンチレーション測定によって、ポリリボシル化タンパク質に組み込まれた32P標識NADの量を調べた。
【0111】
(実施例2:細胞死のβ−ラパコン誘導は、PARP阻害剤3−アミノベンズアミドによって阻害される)
MTTアッセイにより、β−ラパコン誘導細胞死はPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB)によって阻止されることが示された。HeLaおよびDLD1細胞を、10,000個細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、完全増殖培地で24時間培養し、PARP阻害剤3−AB(5mM)または等容積のDMSOで1時間前処理し、次いで、さらに4時間種々の濃度のβ−ラパコンに曝露し、続いて、MTTアッセイを行った。
【0112】
図1に示されるように、HeLa細胞生存パーセントはHeLa細胞では約5%から60%に、DLD1細胞では約75%に上昇する。
【0113】
同様の結果が、トリパンブルー染色を用いて、HeLa細胞(図2)およびDLD1細胞(図3)において示された。
【0114】
(実施例3:β−ラパコンは、PARPの迅速な細胞性活性化を誘導し、これは3−アミノベンズアミドによって阻止される)
β−ラパコンは、HeLa細胞においてPARPの迅速な活性化を誘導する。HeLa細胞をカバースリップ上で24時間増殖させ、次いで、種々の時点で4μM β−ラパコンで処理し、メタノールアセトン(70/30、v/v)で10分間固定した。サンプルを、加湿チャンバー中、ブロッキングバッファー(PBS中5%FBS)中、室温で10分間インキュベートした。細胞を、モノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体(10H 1:100)とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、細胞をFITC結合抗マウス抗体(1:1,000)とともに室温で1時間インキュベートした。免疫蛍光をCCDカメラを備えた免疫蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0115】
図4に示されるように、β−ラパコンは、PARPの産物と結合しているモノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体の存在による蛍光を増大させ、このことは、β−ラパコンがPARPの活性化を誘導したことを示す。
【0116】
HeLa細胞におけるPARPのβ−ラパコン誘導性活性化は、3−ABによって阻止される。HeLa細胞をカバースリップ上で24時間増殖させ、5mMのPARP阻害剤3−ABまたはDMSOで1時間前処理し、次いで、4μM β−ラパコンに10分間曝露し、続いて、上記のように免疫蛍光染色を行った。
【0117】
図5に示されるように、HeLa細胞におけるPARPのβ−ラパコン誘導性活性化は、図4に見られたのと同様に、3−アミノベンズアミドによって阻害され、このことは、PARP産物、ポリ(ADP−リボース)が、PARPによって実際に生じ、その蓄積はPARP活性のβ−ラパコン活性化によって引き起こされるということを証明する。
【0118】
DLD1細胞において、図5についての上記の方法を用いて同様の結果が見られた。これらの結果は図6に示されている。
【0119】
(実施例4:β−ラパコンは、細胞においてNAD+枯渇を誘導し、これらの細胞へのNAD+の再構成はβ−ラパコン誘導性細胞傷害性を低減する)
図7に示されるように、β−ラパコンは、細胞NAD+レベルの迅速な枯渇を誘導する。8μMのβ−ラパコン処理は、NAD+レベルを15分以内に対照の約20%に低下させた。30分までに、IC50(約2.8μM)を超えるβ−ラパコン濃度は、細胞NAD+レベルを対照の50%未満に低下させた。β−ラパコン媒介性NAD+枯渇の迅速な動力学は、この現象が酵素プロセスによるということを示唆する。さらに、このプロセスは化合物3−アミノベンズアミドによって阻害される(データは示していない)。これらのデータは一緒になって、PARP活性がβ−ラパコン誘導性NAD+枯渇に関与していることを示唆する。
【0120】
図8に示されるように、細胞増殖培地へのNAD+の外からの添加は、β−ラパコン処理の細胞傷害性を低減し得る(MCF7細胞における、対照対NAD+補給の、それぞれ約2.7および約6.6μMというIC50値)。外からのNAD+の、β−ラパコン誘導性細胞傷害性から細胞を保護する能力は、この荷電分子の細胞取り込みによって制限される可能性が高い。同様の結果が、DLD1、HeLaおよびSW480細胞を用いる実験で観察された。これらの結果は、図7におけるものと一緒になって、細胞NAD+レベルの枯渇はβ−ラパコン誘導性細胞傷害性の寄与因子であるということを示唆する。
【0121】
(実施例5:β−ラパコンは細胞溶解産物においてPARPの活性化を誘導する)
図9は、細胞溶解産物へのβ−ラパコンの添加が、基礎レベル(0μM β−ラパコン対照)を上回るPARP活性の増強を誘導することを示す。さらに、このβ−ラパコンによるPARP活性化の誘導は、β−ラパコン濃度に依存していた(用量依存性)。この観察結果は、PARPファミリーメンバーがβ−ラパコンの直接標的であることを示すという点で重大である。
【0122】
(実施例6:DLD1およびSW−480細胞において、E2F1発現の誘導はアポトーシスを促進する)
E2F1誘導性アポトーシスを調べるために、誘導可能な系を確立した。変異p53遺伝子を有するヒト結腸癌細胞株を用いて、E2F1誘導性細胞株を作製した(Rodrigues, et al., PNAS, 87:7555−9(1990))。E2F1発現は効果的に誘導され、テトラサイクリンの添加によってしっかりと制御された(図10A)。テトラサイクリン誘導条件下で、相当なパーセンテージの、アポトーシスを起こしているDLD1細胞が、所与の時点で検出されることが(3日目に10%、4日目に15%)、ヨウ化プロピジウム(PI)染色およびフローサイトメトリーによって調べられた(図10B)。アポトーシスは、E2F1の発現後の形態変化をアッセイすることによってさらに確認された(図10C)。同様のデータが、E2F1誘導性SW480ヒト結腸癌細胞において得られた。E2F1は、アポトーシス促進性機能に加え、細胞増殖にとって必須の転写因子である(Johnson, D. et al., Nature 365:349−52(1993)、Wu, L. et al. Nature 414:457−62(2001))。これらの実験条件下では、細胞周期分布全体では有意な変化は観察されなかった。癌細胞のコロニー形成は、E2F1誘導によって完全に取り除かれ(図10D)、このことは、E2F1のアポトーシス促進性機能および腫瘍サプレッサー機能と一致し(Yamasaki, L. et al., Cell 85:537−48(1996)、Field, S. J. et al., Cell 85:549−61(1996))、このことは、E2F1誘導性アポトーシスは癌遺伝子のアポトーシス促進性活性とは異なることを示唆する。
【0123】
(実施例7:E2F1はカスパーゼ依存性アポトーシスを活性化する)
E2F1誘導性アポトーシスの機構をさらに調べるために、カスパーゼ活性化の役割を調べた。2つの型のカスパーゼ−3、プロカスパーゼおよび切断されたカスパーゼをウエスタンブロット解析によって検出した。E2F1の発現後、細胞は明らかにアポトーシスを起こしたが、驚くべきことに、0〜72時間のテトラサイクリン誘導後、および24時間および48時間の対照で、カスパーゼ−3、カスパーゼ依存性アポトーシスの最終エフェクターの活性化はなかった(図10E)。さらに、E2F1誘導性の、p53非依存性アポトーシスが、パンカスパーゼ阻害剤を用いてカスパーゼ機能を阻害することによって影響を受けるかどうかを調べた。カンプトセシン、既知のカスパーゼ−3アクチベーターによって誘導されたアポトーシスを、陽性対照として用いた。50μMのパンカスパーゼ阻害剤Z−VADの添加は、カンプトセシン誘導性アポトーシスを阻止したが、E2F1誘導性アポトーシスは阻止できなかった(図10F)。Z−VAD添加単独には、細胞傷害性作用が全くなかった。これらの結果は、E2F1はp53変異癌細胞においてカスパーゼ非依存性細胞死経路を誘導するということを示唆する。
【0124】
PARP−1の活性化は、カスパーゼ非依存性アポトーシスと関係があるとされている。E2F1誘導性細胞死がPARP−1活性化を含むかどうかを調べた。ポリADPリボシル化(PAR)、PARP−1活性化の機能的指標を、特異的抗PAR抗体を用いてイムノブロットによって検出した。図11Aに示されるように、E2F1は、タンパク質のポリADPリボシル化を強力に活性化した。PARの免疫細胞化学的染色により、PARP−1の活性をさらに確認した(図11B)。核PAR染色は、E2F1の発現後、24時間増大し、48時間でプラトーに達した。ポリADPリボシル化が、E2F1誘導性アポトーシスにおいて因果的役割を果たすかどうかを調べるために、3’−アミノベンズアミド(3’−AB)、PARP活性の普遍的阻害剤を用いた。図11Cに示されるように、3’−ABは、5mMという濃度で、E2F1誘導性アポトーシスを70%より多く阻害した(P<0.0001)。3’−AB添加単独は、対照群全体でアポトーシスに対して効果を示さなかった。これらのデータは、E2F1が、カスパーゼ非依存性アポトーシスに寄与する、タンパク質ポリADPリボシル化を活性化することを示唆する。
【0125】
(実施例8:E2FはPARPのタンパク質発現に影響を及ぼす)
タンパク質ポリADPリボシル化は、18種の遺伝子からなるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼファミリーのメンバーによって触媒される(Ame, J. C, et al., Bioessays 26:882−93(2004))。PARP−1タンパク質は、ほとんどの細胞において優性のメンバーであり、DNA損傷によって誘導されるポリADPリボシル化全体の大部分を導く(Davidovic, L. et al., Exp Cell Res 268:7−13(2001))。PARPファミリーのどのメンバーがE2F1誘導性アポトーシスに関与したかを識別するために、siRNA技術を用いてPARP−1タンパク質レベルを低下させた。化学合成したPARP−1 siRNAプールをDLD1−E2F1誘導性細胞株にエレクトロポレーションした。PARP−1タンパク質は2日で減少し始め、4日で最低レベルに達し、6日から徐々に回復したことが、ウエスタンブロット(図12A)および免疫細胞化学的染色によって示された。E2F1の発現後、PARPの核蓄積は、siPARP−1のトランスフェクションによって抑制され(図12B)、このことはE2F1誘導性PARP活性はPARP−1によって媒介されるということを示唆する。E2F1誘導性アポトーシスは、PARP−1ノックダウン後に損なわれた(P<0.001)(図12C)。これらのデータは一緒になって、E2F1はカスパーゼ非依存性アポトーシス経路を活性化するのにPARP−1およびその活性を必要とするということを示唆する。
【0126】
E2F1は転写因子として知られている。しかし、いくつかの系列の証拠が、E2F1の転写活性はそのアポトーシス機能にとって重要でないということを示唆している(Phillips, A. C, et al., Genes Dev 11:1853−63(1997); Hsieh, J. K., et al., Genes Dev 11:1840−52(1997))。次に、E2F1がPARP−1の転写に影響を及ぼすかどうかを調べた。E2F1の発現は、PARP−1タンパク質レベルを大幅に増大させ(図12D)、このことは、E2F1は、PARP−1のトランス活性化によってPARP−1発現を誘導したという可能性を示唆する。しかし、RT−PCRおよびノーザンブロット解析は、E2Fl誘導性PARP−1タンパク質上昇は、mRNAレベルではなくタンパク質レベルで起こることを示した(図12E、図12F)。これらの結果は、E2F1は、PARP−1を非転写機構を介して誘導するということを示唆する。
【0127】
内因性E2F1がPARP−1タンパク質レベルに影響を及ぼすかどうかを調べるために、非誘導系においてE2F1をサイレンシングした。siRNAを用いたサイレンシングE2F1は、内因性PARP−1タンパク質レベルを低下させたが、サイレンシングPARP−1はE2F1タンパク質レベルに対して何の効果もなく(図13)、このことは、PARP−1タンパク質レベルの調節におけるE2F1の役割を示唆する。
【0128】
(実施例9:E2F1は、PARP依存的にAIFの転位置を誘導することによってアポトーシスを媒介する)
ミトコンドリアから核へのアポトーシス誘導因子(AIF)の転位置は、PARP−1によって誘導されるアポトーシスに関係があるとされている(Yu, S. W. et al., Science 297:259−63(2002)、Davidovic, L., et al., Exp Cell Res 268:7−13(2001))。次に、PARP−1タンパク質レベルのE2F1媒介性増大がAIF転位置の誘因となるかどうかを調べた。E2F1の発現は、ミトコンドリアからのAIFおよびシトクロムc放出およびAIFの核への転位置をもたらした(図14A、図14B)。E2F1誘導性AIF転位置がPARP−1によって主に媒介されるかどうかを調べるために、siRNAを用いてPARP−1タンパク質レベルを低下させた。E2F1誘導は、対照siRNAを用いてトランスフェクトされた細胞においてAIFの核転位置を駆動したが、特異的siRNAを用いたサイレンシングPARP−1はAIFのE2F1誘導性核転位置を阻止した(図14C、図14D)。これらの結果は、E2F1−PARP−1アポトーシス経路はAIF転位置を含むことを示唆する。
【0129】
E2F1は、E2F1の転写依存性アポトーシス経路に寄与するアポトーシス遺伝子、特に、p73およびapaf1を転写によって調節することがわかっている(Irwin, M. et al., Nature 407:645−8(2000)、Furukawa, Y. et al.,J Biol Chem 277:39760−8(2002))。p73は、p53非依存性アポトーシス経路におけるE2F1の標的遺伝子であることがわかった。p73 mRNAは、E2F1発現後にわずかに誘導されたことが、RT−PCRによって検出された(図15)が、siRNAによるp73の効果的なノックダウンは、E2F1誘導性アポトーシスに対して保護効果を全く示さなかった。E2F1は、apaf1の転写を誘導することもわかっている(Furukawa, Y. et al., J Biol Chem 277, 39760−8(2002))。しかし、RT−PCRデータは、E2F1誘導性細胞においてapaf1の発現変化を全く示さなかった(図15)。p73およびapaf1の大幅な誘導がない理由は明らかではないが、E2F1レベル、期間の相違、およびPARP−1誘導による相対的に迅速な細胞死による可能性がある。
【0130】
一実施形態では、PARP発現またはPARP活性の調節および結果として生じるアポトーシスの調節は、E2F発現または活性の調節を介して起こる。好ましい実施形態では、E2FはE2F1である。E2F1−PARP−1細胞死経路は、チェックポイントレギュレーターとアポトーシスの間のp53非依存性関連を提供する。E2F1はATMおよびChk2によってリン酸化され、これがE2F1の安定化を導く(Lin, W. C., et al., Genes Dev 15:1833−44(2001)、Bartek, J., et al., Nat Rev Mol Cell Biol 2:877−86(2001))。反対に、E2F1は、ATMおよびChk2キナーゼを活性化し、それによって正のフィードバックループを形成する(Rogoff, H. A. et al., Mol Cell Biol 24:2968−77(2004)、Berkovich, E. & Ginsberg, D., Oncogene 22:161−7(2003))。癌遺伝子シグナルまたはDNA損傷によるATM−Chk2活性化の存在が、侵襲の規模に応じて、E2F1−PARP−1経路の活性化を導く可能性があり、これがアポトーシス、DNA修復または細胞周期停止を導く場合があり、これが腫瘍形成の予防において重要な機能を果たす可能性があるということが推測される。この経路は、E2F1の観察されている腫瘍サプレッサー機能の根底にあるものであり得る(Yamasaki, L. et al., Cell 85:537−48(1996)、Field, S. J. et al., Cell 85:549−61(1996))。
【0131】
E2F1とPARP−1間の相互作用は、細胞周期調節とゲノムサーベイランス間の新規関連を確立する。結果は、PARP−1タンパク質の内因性レベルは、E2F1に応じて変わることを示唆する。PARP−1はE2F1の転写活性を増強することが示唆されている(Simbulan−Rosenthal, C. M., et al., Oncogene 18:5015−23(1999)、Simbulan−Rosenthal, C. M. et al., Oncogene 22:8460−71(2003))。これらの観察結果は、ゲノムサーベイランスと細胞周期調節の間の正のフィードバックループを示唆する。これらのフィードバック相互作用は、回復不能なDNA損傷を有する細胞の増殖を阻止し、それらの排出を促進する高度に感受性の機構を提供し得る。
【0132】
ヒト癌においてE2F1およびPARP−1の変異がないことは、化学療法の抗癌活性の媒介におけるこのチェックポイント−アポトーシス経路の重要性を示唆し、このことは、癌、例えば、p53経路に変異を有するものに対する有効な新規治療を開発するためのこのチェックポイント経路の活性化の可能性を提供する。
【0133】
その他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。いくつかの実施形態が示され、説明されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1Aは、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるHeLa細胞の生存パーセントを示すグラフである。図1Bは、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるDLD1細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図2】図2は、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるHeLa細胞のトリパンブルー染色の一連の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】図3は、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるDLD1細胞のトリパンブルー染色の一連の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】図4Aは、DMSOで処理した(対照)HeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Bは、4μMのβ−ラパコンで5分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Cは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Dは、4μMのβ−ラパコンで20分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Eは、4μMのβ−ラパコンで30分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Fは、4μMのβ−ラパコンで1時間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Gは、4μMのβ−ラパコンで2時間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図5】図5Aは、DMSOで処理した(対照)HeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図5Bは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図5Cは、4μMのβ−ラパコンおよび5mMの3−アミノベンズアミドで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図6】図6Aは、DMSOで処理した(対照)DLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図6Bは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したDLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図6Cは、4μMのβ−ラパコンおよび5mMの3−アミノベンズアミドで10分間処理したDLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図7】図7は、種々の濃度のβ−ラパコンで処理したDLD1細胞中に残存する細胞NAD+のパーセントを示すグラフである。
【図8】図8は、NAD+を外から添加したか添加していない、種々の濃度のβ−ラパコンで処理したDLD1細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図9】図9は、DLD1細胞から得た細胞溶解産物における、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるPARP活性の活性化倍数を示すグラフである。
【図10A】図10Aは、p53欠損であり、外因性E2F1遺伝子と機能しうる形で連結されたテトラサイクリン誘導プロモーターでトランスフェクトされたヒト結腸癌細胞株(DLDl)におけるE2F1のウエスタンブロットを示す図である。
【図10B】図10Bは、テトラサイクリンとともに3日間および4日間インキュベートされたE2F1 tet誘導性DLD1細胞のフローサイトメトリーデータを示す図である。
【図10C】図10Cは、テトラサイクリンとともに3日間および4日間インキュベートされたE2F1 tet誘導性DLD1細胞の光学顕微鏡写真である。
【図10D】図10Dは、E2F1 tet誘導性DLD1細胞を用いたコロニー形成アッセイの写真である。
【図10E】図10Eは、種々の期間の間テトラサイクリンを用いた、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるカスパーゼ−3のウエスタンブロットを示す図である。
【図10F】図10Fは、50μMのパンカスパーゼ阻害剤Z−VADおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合のE2F1 tet誘導性DLD1細胞のアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図11A】図11Aは、テトラサイクリンのインキュベーションが異なる、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるPARのイムノブロット示す図である。
【図11B】図11Bは、PARおよびDAPIについて染色した、E2F1 tet誘導性DLD1細胞の光学顕微鏡写真である。
【図11C】図11Cは、3’−アミノベンズアミドおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合の、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図12A】図12Aは、PARP−1 siRNAに曝露されたE2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるPARPのウエスタンブロットを示す図である。
【図12B】図12Bは、DAPI染色と比較したPARの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図12C】図12Cは、PARP siRNAおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合の、E2F1 tet誘導性DLD1細胞のアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図12D】図12Dは、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのウエスタンブロットを示す図である。
【図12E】図12Eは、tet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのRT−PCRを示す図である。
【図12F】図12Fは、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのノーザンブロットを示す図である。
【図13】図13は、E2F1およびPARP1のsiRNAとともにインキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのウエスタンブロットを示す図である。
【図14A】図14Aは、DAPI染色およびPARP−1活性化と比較した、シトクロムcの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14B】図14Bは、DAPI染色およびPARP−1活性化と比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14C】図14Cは、DAPI染色および対照siRNAと比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14D】図14Dは、DAPI染色およびPARP−1 siRNAと比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図15】図15は、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたE2F1 tet誘導性DLD1細胞における、Atm、P73およびApaf−1のノーザンブロットを示す図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は2005年1月7日に出願された米国仮出願第60/642,353号の利益を主張し、その内容は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP;「ポリ(ADP−リボース)合成酵素」としても知られる)は、酸化型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(「NAD+」)を基質として用いてADP−リボースポリマーを合成し、そのポリマーをその他のタンパク質上に移す(「ポリADP−リボシル化」)、核酵素のファミリーである。多数のタンパク質、例えば、DNAリガーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、ヒストン、トポイソメラーゼおよびPARP自身が、PARPによって修飾され得る。(非特許文献1、非特許文献2;非特許文献3)
PARPファミリーについては、18のメンバーが同定されている(非特許文献3)。中でも、PARP−1およびPARP−2は、DNA損傷に対して応答性であるとわかっている。それらの触媒活性は、DNA鎖切断によって即座に刺激される。PARP−1は、よく研究されたPARPであり、113kDaという分子量を有する酵素である(非特許文献4)。PARP−1は細胞機能の二重レギュレーターと見なされている:DNA修復または細胞死のいずれかに関与する。DNA損傷が中程度である場合には、PARP−1はDNA修復において役割を果たす。しかし、DNA傷害が大きい場合には、過剰なPARP−1活性化がNAD+/ATPの枯渇とそれによる壊死による細胞死を導く。実際、過剰なPARP−1活性化および結果として起こる細胞死は、いくつかの疾患、例えば、卒中、心筋梗塞、糖尿病、ショック、神経変性障害、アレルギーおよびいくつかのその他の炎症プロセスの発病と関連づけられている(非特許文献5、非特許文献1)。
【0003】
PARP−2は、62kDaという分子量を有し、PARP−1と重複する役割を有する。PARP−1およびPARP−2両遺伝子のノックアウトは、マウスにとっては致死性であるが、PARP−1欠乏症自体はマウスにとって致死性ではない(同書)。
【0004】
PARP阻害剤は、DNA修復または細胞死におけるそれらの重要な役割のために、種々の疾患の治療において使用できる。一方で、PARP阻害剤は、癌療法においてアジュバント剤として、具体的には、化学療法および放射線療法において化学増感剤および放射線増感剤として使用できる。PARP活性の阻害は、PARP−1およびPARP−2が重要なメンバーであるとわかっているDNA修復機構を抑制する。このようにして、DNA修復の抑制が、DNA損傷剤の細胞感受性を高め、鎖の再結合を阻害する。次に、DNA損傷の蓄積がアポトーシスによる細胞死につながる。
【0005】
他方、PARP阻害剤は、疾患、例えば、卒中、心筋梗塞、糖尿病、ショック、神経変性障害、アレルギーをはじめとする疾患およびいくつかのその他の炎症性プロセスを治療するための薬剤として使用できる。PARP阻害剤は、過剰なPARP活性化を抑制し、それによってNAD+/ATPの枯渇によって引き起こされる細胞死を防ぐことができる(同書)。
【0006】
β−ラパコンは、強力な選択性の抗腫瘍化合物であるとわかっている。PARPの調節におけるβ−ラパコンの役割はまだ明らかではない。ある研究はPARP活性はβ−ラパコンによって阻害されると示している(非特許文献6)のに対し、別の研究は、PARP活性はβ−ラパコンによって誘導されるU2−OS細胞の壊死に関与していると示している(非特許文献7)。PARP活性におけるβ−ラパコンの阻害的役割についてのVillamilのデータは、β−ラパコンで治療した後のPARP活性の増強を示すLiuのものと矛盾する。
【0007】
本明細書に引用される参照文献は、特許請求される本発明の先行技術であると認められているわけではない。
【非特許文献1】Nguewa, et al., Mol Pharmacol 64:1007−1014(2003)
【非特許文献2】Tentori, et al., Pharmacological Research 45:73−85(2002)
【非特許文献3】Ame’, et al., Bioassays 26:882−893(2004)
【非特許文献4】De Murcia et al., BioEssays, 13:455−462(1991)
【非特許文献5】Tentori, et al., Pharmacological Research 45:73−85(2002)
【非特許文献6】Villamil S.F., et al. Mol Biochem Parasitol. 115(2):249−56(2001)
【非特許文献7】Liu T.J., et al. Toxicol Appl Pharmacol. 182(2): 116−25(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
進行型転移性癌に治癒をもたらす単一の薬剤または薬剤の組合せはなく、患者は、通常、数年で癌のために死亡する。したがって、命にかかわる腫瘍の発症を延期し、かつ/または腫瘍量をさらに減少させることによって生活の質を向上させることができる新規薬剤または組合せは、非常に重要である。癌およびその他の過剰増殖性疾患の治療のためのその他の抗増殖性化合物を単離する必要性が存在する。本明細書には、これらの化合物のスクリーニング方法およびこれらの化合物を用いてアポトーシスを調節する方法が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、PARPアクチベーターのスクリーニング方法に関する。本方法は、PARPをコードするDNAを含有する細胞において、試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。PARPは、PARP−1、PARP−2またはPARP−1とPARP−2の両方であり得る。一実施形態では、細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、細胞に試験化合物を曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。PARP活性化効果は、ポリ(ADP−リボース)合成の増大によって調べることができる。
【0010】
一実施形態では、スクリーニングに用いられる細胞は癌細胞である。癌細胞は、癌中の細胞、癌または培養癌細胞に由来する癌細胞であり得る。癌は、脊椎動物、哺乳類またはヒト由来であり得る。培養癌細胞の例としては、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)が挙げられる。
【0011】
試験化合物は低分子であり得、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングする方法を提供する。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含む。一実施形態では、正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、正常細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。
【0013】
正常細胞は、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞、脊椎動物、哺乳類またはヒトまたは培養正常細胞に由来する正常細胞であり得る。培養正常細胞の例としては、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)、PBMC(増殖性末梢血単核細胞)が挙げられる。この方法は、正常細胞においてよりも癌細胞において、高いPARP活性化効果を有する試験化合物を選択するステップをさらに含む。
【0014】
本発明は、細胞溶解産物を用いるPARPアクチベーターのスクリーニング方法をさらに提供する。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。一実施形態では、細胞は癌細胞である。この方法は、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞溶解産物および正常細胞溶解産物における試験化合物のPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。
【0015】
本発明は、PARPを用いるPARPアクチベーターのスクリーニング方法をさらに提供する。この方法は、PARPを試験化合物と接触させるステップと、試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARPの活性を比較するステップとを含む。一実施形態では、PARPは、PARP−1またはPARP−2である。この方法は、PARP活性を高める試験化合物を選択するステップをさらに含み得る。この方法は、化合物を選択した後、PARPをコードするDNAを含有する癌細胞またはその細胞の溶解産物において、選択した化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物またはその溶解産物において、選択した化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞または溶解産物および正常細胞または溶解産物における選択した化合物のPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。
【0016】
本発明はさらに、被験体において癌を治療または予防する方法に関する。この方法は、被験体の癌細胞においてPARP活性を高める、好ましくはPARP活性を選択的に高めるステップを含むことを含む。この方法は、被験体に治療上有効量のPARPアクチベーター、好ましくは、PARPの選択的アクチベーターを投与するステップを含み得る。本化合物は、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物であり得る。被験体は、脊椎動物、哺乳類またはヒトであり得る。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、種々の実施例をはじめとする本明細書に提供されるさらなる説明から明らかである。提供される実施例は、本発明を実施するのに有用な、種々の化合物および方法論を例示する。実施例は特許請求される発明を制限するものではない。当業者ならば、本開示内容に基づいて、本発明を実施するのに有用なその他の成分および方法論を同定し、用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、PARPアクチベーターのスクリーニング方法および癌の予防および治療におけるPARPアクチベーターの使用に関する。一実施形態では、PARPアクチベーターは、β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である。
【0019】
(1.PARPアクチベーターのスクリーニング方法)
本発明は、試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、PARPアクチベーターのスクリーニング方法を提供する。本明細書において、「試験化合物のPARP活性化効果」とは、PARP活性を増大させる試験化合物の能力を指す。用語「増大させる」、「増強する」、「誘導する」または「促進する」は、本明細書では、同じ意味で用いられる。さらに、用語「減少させる」、「低下させる」、「阻害する」または「防ぐ」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0020】
PARP活性は、ポリ(ADPリボース)合成の測定によって調べることができる。PARP活性の測定は、当技術分野では公知である(例えば、Brown and Marala, J. of Pharmacol. and Toxicol. Method 47:137−141(2002)、Cheung and Zhang, Analytical Biochemistry 282:24−28(2000)およびDecker et al., Clinical Cancer Research 5:1169−1172(1999))参照のこと。PARP活性を増大させる試験化合物は、PARPアクチベーターである。あるいは、PARPの活性は、PARP阻害剤、例えば、3−アミノベンズアミドの存在下および非存在下で、細胞におけるアポトーシスをモニターすることによって測定することができる。
【0021】
試験化合物のPARP活性化効果は、試験化合物の存在下および非存在下でのPARP活性の比によって測定できる。一実施形態では、試験化合物の存在下でのPARP活性は、試験化合物の非存在下でのPARP活性の約1.5倍、約2倍、約4倍、約10倍、約20倍、約40倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1,000倍または1,000倍を超える。
【0022】
PARPアクチベーターは、種々の機構を介してPARP活性を増大させ得る。PARPアクチベーターは、PARPの転写、転写後、翻訳もしくは転位置、または上記の組合せを増大させ得る。PARPアクチベーターは、PARPと直接相互作用する場合もあるし、PARPのモジュレーターと相互作用する場合もあるし、両方と相互作用する場合もある。一実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、化合物を、PARPの活性または発現を増大させるその能力についてスクリーニングするステップを含む。
【0023】
試験化合物のPARP活性化効果は、種々の系、例えば、動物モデル、培養細胞、細胞溶解産物もしくは単離PARP、または上記の組合せを用いて評価できる。
【0024】
(1.1.細胞を用いる評価法)
一実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。評価に用いる細胞は、PARPをコードするDNAを含んでいなくてはならない。PARP活性化効果を評価するステップは、細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARP活性を比較するステップとを含み得る。次いで、PARP活性を増大させる試験化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0025】
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、試験化合物の、PARPの活性または発現を増大させる能力を測定するステップを含む。一実施形態では、この方法は、PARPを発現する細胞に試験化合物を曝露するステップと、次いで、PARPの発現を測定するステップとを含む。次いで、試験化合物の存在下でのPARPの発現を、試験化合物の非存在下でのPARPの発現と比較する。試験化合物の存在下でのPARPの発現が、試験化合物の非存在下でのPARPの発現よりも多い場合には、試験化合物は、PARP発現を誘導または促進するPARPアクチベーターである。発現は当技術分野で公知のいずれかの手段、例えば、ウエスタンブロッティングによって測定できる。試験化合物に曝露されていない細胞におけるPARPの発現は、試験化合物に曝露された細胞における発現の約0%、約1%、約10%、約20%、約50%または約75%であり得る。
【0026】
評価に用いる細胞は、真核生物、好ましくは、脊椎動物、より好ましくは、哺乳類、さらに好ましくは、ヒトから直接得た細胞であり得る。あるいは、評価に用いる細胞は、培養細胞であり得る。
【0027】
評価に用いる細胞は、癌細胞であることが好ましい。本明細書において、「癌細胞」とは、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトから直接得た、原発性癌、転移性癌または血液由来癌に由来する細胞を指す。癌細胞は、限定されるものではないが、ほとんどの場合、いわゆる「癌化表現型」を示し、制限されない複製能をその細胞に付与する遺伝子欠損を有し、さらに、半固体組織培養培地(ソフトアガーなど)において足場独立的に増殖する能力を示すと特徴づけられ、免疫学的に易感染性または致死量以下の照射を受けた、げっ歯類またはその他の動物モデルに注入または移植された場合に皮下腫瘍を形成する能力を特徴とする。癌細胞は脊椎動物、哺乳類またはヒトから得られる癌中の細胞であり得る。癌細胞はまた、キメラ動物から得られる癌中の細胞、またはキメラ動物における癌に由来する細胞であり得る。キメラ動物の一例として、ヒト異種移殖片腫瘍を有するマウスがある(例えば、Calabrese et al., J. Natl. Cancer Inst. 96:56−67(2004)参照のこと。あるいは、癌細胞は、滅菌ポリスチレンプレートにおいて接着単層として無制限に増殖した培養癌細胞であり得る。培養癌細胞の例としては、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)が挙げられる。
【0028】
PARPアクチベーターは、正常細胞においてよりも癌細胞においてPARP活性を増大させるPARPの選択的アクチベーターであることが好ましい。PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングするためには、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、正常細胞ならびに癌細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含み得る。正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップは、正常細胞を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下でのPARPの活性を比較するステップとを含み得る。次いで、正常細胞においてよりも癌細胞においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。
【0029】
PARPアクチベーターの選択性は、癌細胞および正常細胞における試験化合物のPARP活性化効果の比によって測定できる。一実施形態では、癌細胞における試験化合物のPARP活性化効果は、癌細胞における試験化合物のPARP活性化効果の、約1.5倍、約2倍、約4倍、約10倍、約20倍、約40倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1,000倍または1,000倍を超える。
【0030】
本明細書において、「正常細胞」とは、癌細胞と比較して制限された複製能を有し、有限数の細胞分裂の後、培養において分裂を停止する細胞を指す。これらの正常細胞は、癌細胞のいわゆる「癌化表現型」を示さず、半固体組織培養培地(ソフトアガーなど)において足場独立的に増殖せず、免疫学的に易感染性または致死量以下の照射を受けた、げっ歯類またはその他の動物モデルに注入または移植された場合に皮下腫瘍を形成しない細胞を包含する。正常細胞は、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトの組織から直接単離した細胞、例えば、皮膚生検から得られるヒト皮膚線維芽細胞、全血から単離される増殖性末梢血単核細胞(PBMC)または乳房縮小術後に正常乳房組織から単離されるヒト上皮細胞であり得る。正常細胞は、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞であり得る。あるいは、正常細胞は、in vitroで増殖され、癌化表現型をとることなく複製能の増大を獲得した(「不死化」した)培養細胞株、例えば、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)であってもよい。
【0031】
PARPの選択的アクチベーターをスクリーニングする方法では、癌細胞および正常細胞は、いくつかの主な特徴を共有することが好ましい。例えば、Li, et al., PNAS 100:2674−2678(2003)参照のこと。
【0032】
(1.2.細胞溶解産物を用いる評価法)
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む。評価に用いる細胞は、PARPをコードするDNAを含んでいなくてはならない。PARP活性化効果を評価するステップは、細胞溶解産物を試験化合物に曝露するステップと、試験化合物の存在下および非存在下で細胞溶解産物におけるPARP活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下におけるPARP活性を比較するステップとを含み得る。次いで、PARP活性を増大させる化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0033】
細胞溶解産物は、当技術分野で公知の種々の方法によって作製できる。例えば、Current protocols in protein science, John E. Coligan et al., Publisher: New York: Wiley 1995−2002 Edition:(v. 1)参照のこと。
【0034】
評価法は、癌細胞の溶解産物を用いることが好ましい。癌細胞としては節1.1に記載されるものがある。
【0035】
同様に、癌細胞溶解産物におけるおよび正常細胞溶解産物における、試験化合物のPARP活性化効果を比較できる。次いで、正常細胞溶解産物においてよりも癌細胞溶解産物においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。PARPアクチベーターの選択性は節1.1においてと同様に調べることができる。
【0036】
(1.3.PARPを用いる評価法)
もう1つの実施形態では、PARPアクチベーターのスクリーニング方法は、PARPを試験化合物と接触させるステップと、試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、試験化合物の存在下および非存在下でのPARPの活性を比較するステップとを含む。次いで、PARP活性を増大させる試験化合物を、PARPアクチベーターとして選択できる。
【0037】
一実施形態では、試験化合物の評価に用いるPARPは、PARP−1である。好ましい実施形態では、PARP−1は単離PARP−1である。一実施形態では、PARP−1は、表1に示されるアミノ酸配列を有するヒトタンパク質である。活性は、ポリ(ADPリボース)基の量をモニターすることによって測定されるPARPの活性をモニターすることによって測定する。
【0038】
【表1】
試験化合物をPARPアクチベーターとして選択すると、PARP活性化におけるその選択性についてアクチベーターをさらに試験できる。さらなる試験は上記の手順に従うことができる。そのため、この方法は、PARPをコードするDNAを含有する癌細胞、または癌細胞の溶解産物においてアクチベーターのPARP活性化効果を評価するステップと、PARPをコードするDNAを含有する正常細胞、または正常細胞の溶解産物においてアクチベーターのPARP活性化効果を評価するステップと、癌細胞または溶解産物および正常細胞または溶解産物におけるアクチベーターのPARP活性化効果を比較するステップとをさらに含み得る。次いで、正常細胞または溶解産物においてよりも癌細胞または溶解産物においてPARP活性を増大させる試験化合物を、PARPの選択的アクチベーターとして選択できる。PARPアクチベーターの選択性は、節1.1においてと同様に調べることができる。
【0039】
(1.4.抗癌剤候補のスクリーニング方法)
本発明はまた、PARP活性化または発現に対して増強効果を有し、ひいては、癌細胞の細胞死を促進する、候補または試験化合物または薬剤を同定する方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物を含む。
【0040】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、前癌状態または癌の治療に使用するための可能性ある治療薬を同定する方法であって、細胞、組織または動物を提供するステップと、細胞、組織または動物を、PARP活性または発現を増強する試験化合物を含む組成物に曝露させるステップと、前癌状態または癌の進行をモニターし、前癌状態または癌の進行が低減される場合に候補化合物を可能性ある治療薬として同定するステップとを含む方法を対象とする。
【0041】
一実施形態では、アッセイは、細胞ベースのアッセイであり、これでは、癌細胞を試験化合物に曝露させ、試験化合物の、PARPの活性化または発現を直接的にまたは間接的に増強し、前癌状態または癌の進行を低減する能力を調べる。細胞は、例えば、哺乳類またはヒト起源のものであり得、前癌状態または癌の細胞であり得る。試験化合物の、前癌状態または癌の進行を低減する能力を調べるステップは、例えば、前癌状態または癌の進行をモニターすることによって達成できる。
【0042】
本発明はまた、(i)薬剤の投与に先立って被験体から投与前サンプルを採取ステップと、(ii)投与前サンプルにおいて、前癌状態または癌の細胞におけるPARPの発現または活性のレベルを検出するステップと、(iii)被験体から1以上の投与後サンプルを採取するステップと、(iv)投与後サンプルにおいて、前癌状態または癌の細胞のPARPの発現または活性のレベルを検出するステップと、(v)投与前サンプルにおける前癌状態または癌の細胞のPARPの発現または活性のレベルを、投与後サンプルまたはサンプル類における前癌状態または癌の細胞と比較するステップと、(vi)被験体への薬剤の投与をそれに沿って変更するステップとを含む、PARPの活性化または発現を直接的にまたは間接的に増強する試験化合物または薬剤を用いる被験体の治療の有効性をモニターする方法を提供する。
【0043】
適したin vitroまたはin vivoアッセイを実施してPARP活性または発現を増強する組成物の効果を、またその投与が前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するかどうかを調べることができる。種々の特定の実施形態では、代表的な前癌状態または癌の細胞を用いてin vitroアッセイを実施し、所与の治療薬が、その細胞種(類)に対して所望の効果を発揮するかどうかを調べることができる。治療に用いる化合物は、ヒト被験体における試験に先立って、適した動物モデル系、例えば、それだけには限らないが、ラット、マウス、ウシ、サル、ウサギなどで試験できる。同様に、in vivo試験については、ヒト被験体への投与に先立って当技術分野で公知の動物モデル系はいずれも使用できる。
【0044】
(2.試験化合物)
試験化合物は、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸、低分子またはその他の薬物候補であり得る。好ましい実施形態では、試験化合物は低分子である。本明細書において「低分子」とは、分子量が約5kD未満である、最も好ましくは、約4kD未満である組成物を指すものとする。低分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、炭水化物、脂質またはその他の有機もしくは無機分子であり得る。化学的および/または生物学的混合物、例えば、真菌、細菌または藻類抽出物のライブラリーは当技術分野で公知であり、本発明のアッセイのいずれかを用いてスクリーニングできる。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明に用いる低分子は、β−ラパコンまたはその類似体、誘導体または代謝産物である。本発明のもう1つの実施形態では、候補化合物と接触させた細胞におけるPARPの活性を、β−ラパコンと接触させた細胞におけるPARPの活性と比較する。候補化合物の存在下でのPARPの活性が、β−ラパコンの存在下でのPARPの活性と同様である場合には、候補化合物はPARP活性を誘導または促進し、アポトーシスを誘導または促進し、細胞および組織におけるアポトーシスの調節において有用である。
【0046】
PARPの発現の増大はまた、その他のアプローチでも達成され得る。具体的には、この方法は、細胞においてPARPを異種発現させる方法とともに、アンチセンスおよびRNA干渉(RNAi)を含む。PARPの発現を調節するための特異的siRNAおよびアンチセンスヌクレオチドも本発明に含まれる。
【0047】
(2.1.試験化合物のライブラリー)
本発明の試験化合物は、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれか、例えば、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能なパラレル固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を用いて得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4種のアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子ライブラリーの化合物に適用できる。例えば、Lam, Anticancer Drug Design 12:145(1997)参照のこと。
【0048】
分子ライブラリーの合成法の例は、当技術分野において、例えば、DeWitt, et al., PNAS 90:6909(1993)、Erb, et al., PNAS 91:11422(1994)、Zuckermann, et al.,J. Med. Chem. 37:2678(1994)、Cho, et al., Science 261 :1303(1993)、Carrell, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059(1994)、Carell, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061(1994)およびGallop, et al., J. Med. Chem. 37:1233(1994)に見出すことができる。
【0049】
化合物のライブラリーは溶液中に(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412−421(1992))またはビーズ上に(Lam, Nature 354:82−84(1991))、チップ上に(Fodor, Nature 364:555−556(1993))、細菌で(Ladner,米国特許第5,223,409号)、胞子で(Ladner,米国特許第5,233,409号)、プラスミドで(Cull, et al., PNAS, 89:1865−1869(1992))またはファージ上に(Scott and Smith, Science 249:386−390(1990)、Devlin, Science 249:404−406(1990)、Cwirla, et al., PNAS 87:6378−6382(1990)、Felici, J. Mol. Biol. 222:301−310(1991)、Ladner, 米国特許第5,233,409号)提供できる。
【0050】
(2.2 β−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物)
実施例において示されるように、β−ラパコンはPARPアクチベーターである。PARP経路をβ−ラパコンによって誘導されるアポトーシスにおける主要な決定因子として、初めて証明した。さらに、β−ラパコンがPARP酵素を直接活性化することを発見した。
【0051】
実施例において示されるように、β−ラパコンは、細胞溶解産物(図9)および無傷の細胞(図4)の双方においてPARP活性を増強する。細胞および溶解産物をβ−ラパコンで処理し、PARP産物ポリ(ADP−リボース)の量を測定した。PARPによるポリ(ADP−リボース)の生成の増強に対するβ−ラパコンの効果は、既知のPARP阻害剤3−アミノベンズアミドの添加によって打ち消された(図5および6)。
【0052】
β−ラパコンはまた、HeLaおよびDLD1細胞において細胞傷害性を誘導する(図1〜3)。3−アミノベンズアミドは、HeLaおよびDLD1細胞における細胞傷害性の誘導を阻止する(図1〜3)。PARPは基質としてNAD+を用いてポリ(ADP)基を合成する。PARPの活性化は、NAD+の枯渇を引き起こし、これが細胞傷害性の増大をもたらす。
【0053】
β−ラパコンは、細胞において細胞NAD+レベルの迅速な枯渇を引き起こす(図7)。この枯渇は、3−アミノベンズアミドの添加によって阻害された。β−ラパコン投与に伴って起こる細胞傷害性の増大は、NAD+の投与によって元に戻すことができた(図8)。同様の結果が、MCF7、DLD1、HeLaおよびSW480細胞において見られた。このデータは、β−ラパコンはPARPと直接的に相互作用し、PARP活性の増強を介して細胞傷害性を引き起こすということを示す。
【0054】
β−ラパコンは、癌細胞ではE2F1を特異的に誘導し、それによって、癌細胞において細胞死を選択的に誘導する(Li, et al., PNAS 100:2674−2678(2003))。実施例において示されるように、β−ラパコンは、E2F1を介してPARP活性を活性化し、E2F1の阻害は、β−ラパコンによって誘導されるPARP活性化を抑制する。したがって、β−ラパコンはまた、癌細胞においてPARP活性を選択的に増大させるPARPの選択的アクチベーターである。
【0055】
一実施形態では、候補化合物はβ−ラパコン類似体、誘導体または代謝産物である。本明細書ではさらに、語句「β−ラパコン」とは、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフサ[1,2−b]ピラン−5,6−ジオンを指し、以下の化学構造を有する
【0056】
【化1】
本発明に従う、β−ラパコンまたはその類似体、誘導体または代謝産物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第6,458,974号に記載のとおり合成できる。好ましい誘導体および類似体は以下に論じる。
【0057】
もう1つの実施形態では、β−ラパコンの類似体として、還元β−ラパコン(式Ia、式中、R’およびR’’は各々水素である)ならびに還元β−ラパコンの誘導体(式Ia、式中、R’およびR’’は各々独立に水素、低級アルキルまたはアシルである)が挙げられる。
【0058】
さらにもう1つの実施形態では、β−ラパコン誘導体または類似体、例えば、ラパコールおよび、
【0059】
【化2】
その薬剤組成物および製剤が本発明に一部である。このようなβラパコン類似体としては、それだけには限らないが、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US93/07878(WO94/04145)において列挙されたものが挙げられ、これは次式の化合物を開示する:
【0060】
【化3】
[式中、R1およびR2は各々独立に、水素、置換および非置換アリール、置換および非置換アルケニル、置換および非置換アルキルならびに置換または非置換アルコキシである]。アルキル基は、1〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約10個の炭素原子がより好ましく、1〜約6個の炭素原子がさらにより好ましい。用語アルキルとは、別に修飾のない限り、環状および非環状基の双方を指し、ただし、もちろん環状基は少なくとも3個の炭素環員を含む。直鎖または分枝鎖非環状アルキル基は、通常、環状基よりもより好ましい。直鎖アルキル基は、通常、分枝よりもより好ましい。アルケニル基は、2〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、2〜約10個の炭素原子がより好ましく、2〜6個の炭素原子がさらにより好ましい。特に好ましくいアルケニル基は3個の炭素原子を有し(すなわち1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル部分を有することが特に好ましい。フェニルおよびナフチルは、通常、好ましいアリール基である。アルコキシ基は、1以上の酸素結合を有するアルコキシ基を含み、1〜15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約6個の炭素原子がより好ましい。置換R1およびR2基は、1以上の利用可能な位置で、1以上の適した基、例えば、アルキル基、例えば、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、例えば、2〜10個の炭素原子または2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロおよびブロモならびにN、OおよびSなどによって置換されていてもよく、ヘテロアルキル、例えば、1以上のヘテロ原子結合を有し(したがって、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するヘテロアルキルを含む。
【0061】
本発明に従って考慮されるその他のβ−ラパコン類似体としては、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第6,245,807号に記載されるものが挙げられ、これでは、以下の構造を有するβ−ラパコン類似体および誘導体を開示している
【0062】
【化4】
[式中、RおよびR1は各々独立に、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシおよびそれらの塩から選択され、環炭素間の点線の二重結合は、任意の環二重結合を表す]。
【0063】
さらなるβ−ラパコン類似体および誘導体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US00/10169(WO00/61142)に列挙されており、これでは以下の構造の化合物を開示している
【0064】
【化5】
[式中、R5およびR6は独立に、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−フェニルから選択されてよく、R7は水素、ヒドロキシル、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルであり、nは0〜10の整数である]。
【0065】
その他のβ−ラパコン類似体および誘導体は、米国特許第5,763,625号、同5,824,700号および同5,969,163号に、ならびに、Sabba et al., J Med Chem 27:990−994(1984)などの科学論文に開示されており、これでは以下の位置のうち1以上に置換を有するβ−ラパコンを開示している:2−、8−および/または9−位。Portela et al., Biochem Pharm 51 :275−283(1996)(2−および9−位での置換)、Maruyama et al., Chem Lett 847−850(1977)、Sun et al., Tetrahedron Lett 39:8221−8224(1998)、Goncalves et al., Molecular and Biochemical Parasitology 1:167−176(1998)(2−および3−位での置換)、Gupta et al., Indian Journal of Chemistry 16B: 35−37(1978)、Gupta et al., Curr Sci 46:337(1977)(3−および4−位での置換)、DiChenna et al., J Med Chem 44: 2486−2489(2001)(モノアリールアミノ誘導体)も参照のこと。上記の参照文献の各々は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0066】
本願によって考慮されるβ−ラパコン類似体および誘導体は、以下の一般式IIおよびIIIを有する化合物を包含するよう意図されることがより好ましい:
【0067】
【化6】
[式中、環炭素間の点線の二重結合は、任意の環二重結合を表し、RおよびR1は各々独立に、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシおよびそれらの塩から選択される]。アルキル基は、1〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約10個の炭素原子がより好ましく、1〜約6個の炭素原子がさらにより好ましい。用語アルキルとは、環状および非環状基の双方を指す。直鎖または分枝鎖非環状アルキル基は、通常、環状基よりもより好ましい。直鎖アルキル基は、通常、分枝よりもより好ましい。アルケニル基は、2〜約15個の炭素原子を有することが好ましく、2〜約10個の炭素原子がより好ましく、2〜6個の炭素原子がさらにより好ましい。特に好ましくいアルケニル基は3個の炭素原子を有し(すなわち1−プロペニルまたは2−プロペニル)が、アリル部分を有することが特に好ましい。フェニルおよびナフチルは、通常、好ましいアリール基である。アルコキシ基は、1以上の酸素結合を有するアルコキシ基を含み、1〜15個の炭素原子を有することが好ましく、1〜約6個の炭素原子がより好ましい。置換RおよびR1基は、1以上の利用可能な位置で、1以上の適した基、例えば、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜10個の炭素原子または2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロおよびブロモならびにN、OおよびSなどによって置換されていてもよく、これとしては、ヘテロアルキル、例えば、1以上のヘテロ原子結合を有し(したがって、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するヘテロアルキルが挙げられる。また、式中、R5およびR6は独立に、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルから選択されてもよく、R7は水素、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルであり、nは0〜10の整数である。
【0068】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式IVの化合物が挙げられる
【0069】
【化7】
[式中、R1は(CH2)n−R2であり、nは0〜10の整数であり、R2は水素、アルキル、アリール、複素芳香族化合物、複素環式化合物、脂肪族化合物、アルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシル、アミン、チオール、アミドまたはハロゲンである。
【0070】
本発明によって同様に考慮される類似体および誘導体として、また、4−アセトキシ−β−ラパコン、4−アセトキシ−3−ブロモ−β−ラパコン、4−ケト−β−ラパコン、7−ヒドロキシ−β−ラパコン、7−メトキシ−β−ラパコン、8−ヒドロキシ−β−ラパコン、8−メトキシ−β−ラパコン、8−クロロ−β−ラパコン、9−クロロ−β−ラパコン、8−メチル−β−ラパコンおよび8,9−ジメトキシ−β−ラパコンが挙げられる。
【0071】
本発明によって同様に考慮されるその他のβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式Vの化合物が挙げられる:
【0072】
【化8】
[式中、R1〜R4は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−複素環または−−(CH2)n−フェニルからなる群から選択され、または合わせたR1およびR2が、上記の群から選択される単一の置換基であり、合わせたR3およびR4は、上記の群から選択される単一の置換基であり、この場合には−−−−は二重結合である。
【0073】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、ズンニオンおよび2−エチル−6−ヒドロキシナフサ[2,3−b]−フラン−4,5−ジオンが挙げられる。
【0074】
本発明によって同様に考慮される好ましいβ−ラパコン類似体および誘導体として、また、以下の一般式VIの化合物が挙げられる:
【0075】
【化9】
[式中、R1はH、CH3、OCH3およびNO2から選択される]。
【0076】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコン類似体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US03/37219(WO2004/045557)に列挙されており、これでは以下の式VIIによって表される化合物
【0077】
【化10】
またはその製薬上許容される塩またはその位置異性体混合物を開示している[式中、R1〜R6は各々独立に、H、OH、置換および非置換C1〜C6アルキル、置換および非置換C1〜C6アルケニル、置換および非置換C1〜C6アルコキシ、置換および非置換C1〜C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1〜C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−複素環および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか、またはR1もしくはR2の一方とR3もしくはR4の一方、またはR3もしくはR4の一方とR5もしくはR6の一方が縮合環を形成し、ここで、環は4〜8環員を有し、R7〜R10は各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり、nは0〜10の整数である]。
【0078】
好ましい実施形態では、R1およびR2はアルキルであり、R3〜R6は独立に、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換または非置換アシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、R7〜R10は水素である。もう1つの好ましい実施形態では、R1およびR2は各々メチルであり、R3〜R10は各々水素である。もう1つの好ましい実施形態では、R1〜R4は各々水素であり、R5およびR6は各々メチルであり、R7〜R10は各々水素である。
【0079】
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコン類似体は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるPCT国際出願PCT/US03/37219(WO2004/045557)に列挙されており、これでは次式VIIIによって表される化合物
【0080】
【化11】
またはその製薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物を開示している[式中、R1〜R4は各々独立に、H、OH、置換および非置換C1〜C6アルキル、置換および非置換C1〜C6アルケニル、置換および非置換C1〜C6アルコキシ、置換および非置換C1〜C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1〜C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−複素環および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか、またはR1もしくはR2の一方およびR3もしくはR4の一方が縮合環を形成し、ここで、環は4〜8環員を有し、R5〜R8は各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり、nは0〜10の整数である]。式VIIIの特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々同時にHではない。
【0081】
(3.哺乳類前癌状態、癌または過剰増殖性疾患を診断および治療する方法)
本発明によって提供されるPARPアクチベーターは、PARPの活性を増大させることによって癌細胞を死滅させる新規薬物として使用できる。この抗癌剤は、PARP関連障害の細胞、例えば、前癌状態または癌細胞、過剰増殖性細胞またはDNA損傷と関連している細胞において細胞死を促進する。
【0082】
治療される種々の癌としては、それだけには限らないが、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝細胞腫、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍およびリンパ腫瘍が挙げられる。過剰増殖性障害とは、細胞の調節されていないおよび/または異常な増殖が、癌性または非癌性の、例えば、乾癬状態であり得る、望まれていない状態または疾患の発生をもたらし得る状態を指す。本明細書において、用語「乾癬状態」とは、ケラチノサイト過剰増殖、炎症性細胞浸潤およびサイトカイン変更を含む障害を指す。治療される過剰増殖性疾患/障害として、それだけには限らないが、エピデルミック(epidermic)嚢胞および類皮嚢胞、脂肪腫、腺腫、毛細血管および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫瘍、筋線維腫症、骨形成腫瘍およびその他の形成異常腫瘤などが挙げられる。PARP関連障害は、DNA修復障害、例えば、それだけには限らないが、毛細血管拡張性運動失調症、早期老化症候群、リー・フラウメニ症候群および前癌状態、例えば、BRCA家系であり得る。本発明の組成物はまた、癌への進行の危険の増した、前癌状態、臨床状態にとっても有用であり得る。
【0083】
本発明はまた、癌細胞の細胞死を調節する候補化合物の使用のために広く描かれている。これらの試験化合物を用いるアポトーシスの調節は、in vitro、in vivoまたはex vivoで生じ得る。調節は、癌細胞、細胞株および原発性細胞において生じ得る。
【0084】
本発明のもう1つの実施形態は、前癌状態または癌の細胞の増殖を防ぐまたは阻害する方法であり、この方法は細胞に、細胞においてPARP活性または発現を増強する組成物を、前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で細胞に投与するステップを含む。この方法は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞で実施でき、またin vitroもしくはin vivoで実施できる。
【0085】
本発明のもう1つの実施形態は、被験体において哺乳類前癌状態または癌を診断および治療する方法であり、この方法は、被験体から前癌状態または癌細胞を得るステップと、被験体から得た前癌状態または癌細胞を、PARPの存在について試験するステップと、PARP活性または発現を増強する組成物を、前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で被験体に投与するステップとを含む。この方法に用いる組成物は、PARPの発現を増大させる、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物、またはmRNAであり得る。
【0086】
本発明のもう1つの実施形態は、哺乳類被験体において前癌状態または癌を治療する方法であり、この方法は、PARP活性または発現を増強する組成物を哺乳類に投与するステップと、前癌状態または癌の状態を調べるために哺乳類をモニターするステップとを含み、組成物は前癌状態または癌の細胞の増殖を阻害するのに十分な量で投与する。この方法に用いる組成物は、PARPの発現を増大させる、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物、またはmRNAであり得る。
【0087】
本発明のもう1つの実施形態は、前癌状態または癌を有する哺乳類被験体に投与されると、哺乳類被験体においてPARPの活性化または発現を選択的に増強し、腫瘍細胞増殖の退行をもたらす組成物を用いる治療に受容性である患者を診断する方法である。この方法は、患者から細胞を得るステップと、PARPの存在またはPARP活性の存在のいずれかについて細胞を試験するステップとを含み、細胞におけるPARPの存在またはPARP活性の存在のいずれかが、治療に受容性である患者を示す。
【0088】
この実施形態では、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物などの化合物を用いて癌を診断できる。被験体から単離された細胞を、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物の存在下または非存在下で培養できる。対照と比較して、β−ラパコン類似体、誘導体またはその代謝産物で処理された細胞においてその増殖速度が阻害された細胞は、前癌状態または癌の細胞である。次いで、この被験体を前癌状態または癌を有すると診断できる。
【0089】
本発明のPARPアクチベーターは、種々の形の組織損傷、例えば、虚血、再潅流傷害、機械的傷害、炎症または免疫学的損傷の際のアポトーシスを阻害する薬物の開発に役立ち得る。
【0090】
(3.1 試験化合物およびPARPアクチベーターの組成物)
上記で論じたように、一態様では、本発明は、前癌状態、癌または過剰増殖性障害を有する哺乳類被験体に投与されると、哺乳類細胞および被験体においてPARP活性を選択的に増強し、細胞増殖の退行をもたらす組成物を提供する。この組成物はまた、薬剤組成物またはキットの形であり得る。
【0091】
本発明の組成物は、投与に適した薬剤組成物に組み込むことができる。このような組成物は、通常、PARP活性または発現を増強する物質と製薬上許容される担体とを含む。本明細書において、「製薬上許容される担体」とは、薬剤投与に適した、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など含むものとする。適した担体は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版、この技術分野の標準的基準教本に記載されている。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、それだけには限らないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば、硬化油も使用できる。製薬上活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。従来の媒体または薬剤はいずれも、活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が考慮される。驚くべきことに、活性化合物もまた本組成物に組み込むことができる。
【0092】
本発明の薬剤組成物は、その意図される投与経路と適合するよう製剤される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内の、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈液、例えば、注射水、生理食塩水、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA); 酢酸、クエン酸またはリン酸などのバッファー、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張力を調整する薬剤。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整できる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数用量バイアルに封入できる。
【0093】
注射用使用に適した薬剤組成物は、滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散物と、滅菌散剤とを含む。静脈内投与には、適した担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなくてはならず、容易な注射針通過性が存在するという点で液体であるべきである。製造および保存条件下で安定でなくてはならず、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用から守られなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒または分散媒、ならびにそれらの適した混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、界面活性剤を用いることによって維持できる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マニトール(manirol)、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0094】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、必要な量の活性化合物(例えば、PARP活性または発現を増強する物質)を、上記で列挙された成分のうちの1種またはその組合せとともに適当な溶媒中に組み込むことと、それに続いて、滅菌濾過することによって調製できる。一般に、分散物は、活性化合物を、基礎分散媒と、上記で列挙されたものから必要なその他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合には、調製方法は、事前に滅菌濾過したその溶液から有効成分およびいずれかのさらなる所望の成分の散剤を生成する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0095】
経口組成物は、通常、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入でき、または錠剤に打錠できる。経口治療投与の目的で、活性化合物を腑形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形で使用できる。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして用いるために液体担体を用いて調製でき、これでは、液体担体中の化合物を経口的に適用し、局所使用し、吐き出すか飲み込む。製薬上適合する結合剤および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含み得る:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterote);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリンあるいは矯味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料。
【0096】
吸入による投与用には、本化合物は、適した噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧型容器またはディスペンサーからの、または噴霧器からのエアゾールスプレーの形で送達される。
【0097】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によってであり得る。経粘膜または経皮投与用には、通過しようとする障壁に対して適当な浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用によって達成できる。経皮投与用には、活性化合物は、一般に、当技術分野で知られるような、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤する。
【0098】
本化合物はまた、直腸送達用の坐剤(例えば、ココアバターおよびその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または保留浣腸の形で調製できる。
【0099】
一実施形態では、活性化合物は、身体からの迅速な排出から化合物を保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル型送達系をはじめとする放出制御製剤を用いて調製する。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用できる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得ることができる。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を含む感染細胞を標的とするリポソームを含む)を、製薬上許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0100】
投与が容易なようにおよび投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を、単位投与形に製剤することは特に有利である。本明細書において単位投与形とは、治療される被験体のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な薬剤担体と関連して所望の治療効果を生じるよう算出された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果および個体の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に特有の制限によって決定され、それらに応じて直接的に変わる。
【0101】
薬剤組成物は、投与のための使用説明書とともに容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【実施例】
【0102】
本発明の種々の特徴をさらに例示するために、実施例を以下に提供する。実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を例示する。これらの実施例は特許請求される本発明を制限するものではない。
【0103】
(実施例1:PARPスクリーニング)
(1.細胞死アッセイ)
示したように、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって、またはトリパンブルー排出によって細胞死を調べた。手短には、HeLaおよびDLD1細胞を、10,000個細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、完全増殖培地で24時間培養し、次いで、種々の濃度のβ−ラパコンで4時間処理した。MTTを終濃度0.5mg/mlに添加し、1時間インキュベートし、続いて、570nmでマイクロプレートリーダーを用いて細胞生存力を評価した。
【0104】
トリパンブルー排出アッセイには、HeLaおよびDLD1細胞を、6ウェルプレートにプレーティングし、同様に処理した。それらを回収し、細胞懸濁液にトリパンブルー色素溶液を添加した。血球計を用いて全細胞数および生存細胞数を調べた。PARP阻害研究のためには、細胞をPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB、5mM)で1時間前処理し、次いで、阻害剤およびβ−ラパコンでさらに4時間同時処理し、続いて、MTTアッセイまたはトリパンブルー染色を行った。
【0105】
NAD+補給実験のためには、MCF7細胞を、10,000個細胞/ウェルという密度で96ウェルプレートにプレーティングした。16〜18時間後、細胞を、5μMの3−アミノベンズアミド、10mM NAD+またはビヒクル対照を用い、37℃で1時間前処理した(すべての処理は増殖培地:10%ウシ胎児血清を含むDMEM中で策定された)。このインキュベーションの後、細胞(各プレインキュベーション処理下)を、示された濃度のβ−ラパコンを用いて、37℃で4時間処理した。次いで、MTTアッセイを上記の通り実施した。
【0106】
(2.免疫蛍光解析)
PARP活性実験のために、HeLaおよびDLD1細胞をカバースリップ上で増殖させた。種々の時点で4μMのβ−ラパコンで処理した細胞をメタノールアセトン(70/30、v/v)を用い、−20℃で10分間固定した。カバースリップを風乾し、PBS中、室温で10分間再水和した。次いで、サンプルを、加湿チャンバー中で、ブロッキングバッファー(PBS、5%PBS)中、室温で10分間インキュベートした。細胞をモノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体(10H、1:100希釈)とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、FITC結合抗マウス抗体の1:500希釈物とともに室温で1時間インキュベートした。PARP阻害研究のためには、細胞をPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB、5mM)とともに1時間前処理し、次いで、阻害剤およびβ−ラパコンでさらに10分間同時処理し、続いて、免疫蛍光染色を行った。免疫蛍光はCCDカメラを備えた免疫蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0107】
(3.NAD枯渇アッセイ)
HeLa細胞を6×105個細胞/ウェル(35mm、6ウェルディッシュ)でプレーティングした。プレーティングの18時間後、細胞を増殖培地(DMEM;10%FBS)においてβ−ラパコン(0、2、4または8μM)を用い、示した時間(15、30および60分)処理した。薬物処理した後、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、細胞を200μLのNAD溶解バッファー(61mM グリシル−グリシン、pH7.4、0.1% Triton−X−100)に溶解した。16,000gで10分間の遠心分離によって細胞溶解産物を清澄化した。清澄化した溶解産物のアリコートを96ウェルプレート(3連で25μLサンプル)に移し、NAD+濃度を調べた。
【0108】
溶解産物NADレベルの決定は、Ying et al(PNAS, 98(21):12227−32(2001))によって記載されたNAD再利用アッセイの改変を用いて実施した。手短には、NAD反応混合物は、61mM Gly−Glyバッファー(pH 7.4)中、0.1mM 3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)、0.9mM フェナジンメトスルファート、13ユニット/mlアルコール脱水素酵素(酵母抽出物由来、Sigma)、100mM ニコチンアミドおよび5.7%エタノールからなっていた。細胞溶解産物の各アリコートに、200μLの反応混合物を加えた。5分間の間、毎分、吸光度読み取り値(560nm)をとった。結果を、NAD+標準を用いて校正し、続いて、Bio−Radタンパク質アッセイを用いて調べられたタンパク質濃度に対して標準化した。最後に、このデータを対照処理した細胞(15分で0μM β−ラパコン)に対して標準化し、残存する細胞NAD+レベルパーセントをプロットした。
【0109】
(4.PARP活性測定法)
MCF7細胞の15cm(約80%コンフルエント)ディッシュを削り取り、プロテアーゼ阻害剤を含有するPARPバッファー(50mM Tris pH8.0、25mM MgCl2)1.5mlに入れることによって細胞抽出物を作製した。細胞懸濁液を、氷上で30%振幅で3×10秒バーストを用いて超音波処理した。続いて、4℃、16,000gで10分間遠心分離することによって、細胞溶解産物を清澄化した。清澄化した溶解産物を、コットンパッドフィルターを含む5mlのシリンジに通すことによって残存する不溶性の物質をいずれも除去した。抽出物のタンパク質濃度は、通常、0.6〜1.0μg/mlの間であった。
【0110】
TREVIGEN(商標)からのPARP in vitroアッセイの改変を用いてPARP in vitro活性を調べた。反応液は以下を含んでいた:約60μgの細胞タンパク質、100μM NAD、10μgのヒストンH1、β−ラパコン(種々の濃度で)またはDMSO対照、25mM MgCl2、50mM Tris−Cl pH8.0。反応液を室温で10分間インキュベートし、900μLの冷25%トリクロロ酢酸を添加することによって終結させた。終結させた反応液を氷上で10分間インキュベートした。反応液を真空下でガラス繊維フィルターを通すことによって、TCA沈殿させたタンパク質を単離した。続いて、フィルターを5mlの5% TCAで3回洗浄し、続いて冷エタノールで2回洗浄した。フィルターを乾燥させ、シンチレーションカクテルに移した。次いで、液体シンチレーション測定によって、ポリリボシル化タンパク質に組み込まれた32P標識NADの量を調べた。
【0111】
(実施例2:細胞死のβ−ラパコン誘導は、PARP阻害剤3−アミノベンズアミドによって阻害される)
MTTアッセイにより、β−ラパコン誘導細胞死はPARP阻害剤3−アミノベンズアミド(3−AB)によって阻止されることが示された。HeLaおよびDLD1細胞を、10,000個細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、完全増殖培地で24時間培養し、PARP阻害剤3−AB(5mM)または等容積のDMSOで1時間前処理し、次いで、さらに4時間種々の濃度のβ−ラパコンに曝露し、続いて、MTTアッセイを行った。
【0112】
図1に示されるように、HeLa細胞生存パーセントはHeLa細胞では約5%から60%に、DLD1細胞では約75%に上昇する。
【0113】
同様の結果が、トリパンブルー染色を用いて、HeLa細胞(図2)およびDLD1細胞(図3)において示された。
【0114】
(実施例3:β−ラパコンは、PARPの迅速な細胞性活性化を誘導し、これは3−アミノベンズアミドによって阻止される)
β−ラパコンは、HeLa細胞においてPARPの迅速な活性化を誘導する。HeLa細胞をカバースリップ上で24時間増殖させ、次いで、種々の時点で4μM β−ラパコンで処理し、メタノールアセトン(70/30、v/v)で10分間固定した。サンプルを、加湿チャンバー中、ブロッキングバッファー(PBS中5%FBS)中、室温で10分間インキュベートした。細胞を、モノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体(10H 1:100)とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、細胞をFITC結合抗マウス抗体(1:1,000)とともに室温で1時間インキュベートした。免疫蛍光をCCDカメラを備えた免疫蛍光顕微鏡を用いて評価した。
【0115】
図4に示されるように、β−ラパコンは、PARPの産物と結合しているモノクローナル抗ポリ(ADP−リボース)抗体の存在による蛍光を増大させ、このことは、β−ラパコンがPARPの活性化を誘導したことを示す。
【0116】
HeLa細胞におけるPARPのβ−ラパコン誘導性活性化は、3−ABによって阻止される。HeLa細胞をカバースリップ上で24時間増殖させ、5mMのPARP阻害剤3−ABまたはDMSOで1時間前処理し、次いで、4μM β−ラパコンに10分間曝露し、続いて、上記のように免疫蛍光染色を行った。
【0117】
図5に示されるように、HeLa細胞におけるPARPのβ−ラパコン誘導性活性化は、図4に見られたのと同様に、3−アミノベンズアミドによって阻害され、このことは、PARP産物、ポリ(ADP−リボース)が、PARPによって実際に生じ、その蓄積はPARP活性のβ−ラパコン活性化によって引き起こされるということを証明する。
【0118】
DLD1細胞において、図5についての上記の方法を用いて同様の結果が見られた。これらの結果は図6に示されている。
【0119】
(実施例4:β−ラパコンは、細胞においてNAD+枯渇を誘導し、これらの細胞へのNAD+の再構成はβ−ラパコン誘導性細胞傷害性を低減する)
図7に示されるように、β−ラパコンは、細胞NAD+レベルの迅速な枯渇を誘導する。8μMのβ−ラパコン処理は、NAD+レベルを15分以内に対照の約20%に低下させた。30分までに、IC50(約2.8μM)を超えるβ−ラパコン濃度は、細胞NAD+レベルを対照の50%未満に低下させた。β−ラパコン媒介性NAD+枯渇の迅速な動力学は、この現象が酵素プロセスによるということを示唆する。さらに、このプロセスは化合物3−アミノベンズアミドによって阻害される(データは示していない)。これらのデータは一緒になって、PARP活性がβ−ラパコン誘導性NAD+枯渇に関与していることを示唆する。
【0120】
図8に示されるように、細胞増殖培地へのNAD+の外からの添加は、β−ラパコン処理の細胞傷害性を低減し得る(MCF7細胞における、対照対NAD+補給の、それぞれ約2.7および約6.6μMというIC50値)。外からのNAD+の、β−ラパコン誘導性細胞傷害性から細胞を保護する能力は、この荷電分子の細胞取り込みによって制限される可能性が高い。同様の結果が、DLD1、HeLaおよびSW480細胞を用いる実験で観察された。これらの結果は、図7におけるものと一緒になって、細胞NAD+レベルの枯渇はβ−ラパコン誘導性細胞傷害性の寄与因子であるということを示唆する。
【0121】
(実施例5:β−ラパコンは細胞溶解産物においてPARPの活性化を誘導する)
図9は、細胞溶解産物へのβ−ラパコンの添加が、基礎レベル(0μM β−ラパコン対照)を上回るPARP活性の増強を誘導することを示す。さらに、このβ−ラパコンによるPARP活性化の誘導は、β−ラパコン濃度に依存していた(用量依存性)。この観察結果は、PARPファミリーメンバーがβ−ラパコンの直接標的であることを示すという点で重大である。
【0122】
(実施例6:DLD1およびSW−480細胞において、E2F1発現の誘導はアポトーシスを促進する)
E2F1誘導性アポトーシスを調べるために、誘導可能な系を確立した。変異p53遺伝子を有するヒト結腸癌細胞株を用いて、E2F1誘導性細胞株を作製した(Rodrigues, et al., PNAS, 87:7555−9(1990))。E2F1発現は効果的に誘導され、テトラサイクリンの添加によってしっかりと制御された(図10A)。テトラサイクリン誘導条件下で、相当なパーセンテージの、アポトーシスを起こしているDLD1細胞が、所与の時点で検出されることが(3日目に10%、4日目に15%)、ヨウ化プロピジウム(PI)染色およびフローサイトメトリーによって調べられた(図10B)。アポトーシスは、E2F1の発現後の形態変化をアッセイすることによってさらに確認された(図10C)。同様のデータが、E2F1誘導性SW480ヒト結腸癌細胞において得られた。E2F1は、アポトーシス促進性機能に加え、細胞増殖にとって必須の転写因子である(Johnson, D. et al., Nature 365:349−52(1993)、Wu, L. et al. Nature 414:457−62(2001))。これらの実験条件下では、細胞周期分布全体では有意な変化は観察されなかった。癌細胞のコロニー形成は、E2F1誘導によって完全に取り除かれ(図10D)、このことは、E2F1のアポトーシス促進性機能および腫瘍サプレッサー機能と一致し(Yamasaki, L. et al., Cell 85:537−48(1996)、Field, S. J. et al., Cell 85:549−61(1996))、このことは、E2F1誘導性アポトーシスは癌遺伝子のアポトーシス促進性活性とは異なることを示唆する。
【0123】
(実施例7:E2F1はカスパーゼ依存性アポトーシスを活性化する)
E2F1誘導性アポトーシスの機構をさらに調べるために、カスパーゼ活性化の役割を調べた。2つの型のカスパーゼ−3、プロカスパーゼおよび切断されたカスパーゼをウエスタンブロット解析によって検出した。E2F1の発現後、細胞は明らかにアポトーシスを起こしたが、驚くべきことに、0〜72時間のテトラサイクリン誘導後、および24時間および48時間の対照で、カスパーゼ−3、カスパーゼ依存性アポトーシスの最終エフェクターの活性化はなかった(図10E)。さらに、E2F1誘導性の、p53非依存性アポトーシスが、パンカスパーゼ阻害剤を用いてカスパーゼ機能を阻害することによって影響を受けるかどうかを調べた。カンプトセシン、既知のカスパーゼ−3アクチベーターによって誘導されたアポトーシスを、陽性対照として用いた。50μMのパンカスパーゼ阻害剤Z−VADの添加は、カンプトセシン誘導性アポトーシスを阻止したが、E2F1誘導性アポトーシスは阻止できなかった(図10F)。Z−VAD添加単独には、細胞傷害性作用が全くなかった。これらの結果は、E2F1はp53変異癌細胞においてカスパーゼ非依存性細胞死経路を誘導するということを示唆する。
【0124】
PARP−1の活性化は、カスパーゼ非依存性アポトーシスと関係があるとされている。E2F1誘導性細胞死がPARP−1活性化を含むかどうかを調べた。ポリADPリボシル化(PAR)、PARP−1活性化の機能的指標を、特異的抗PAR抗体を用いてイムノブロットによって検出した。図11Aに示されるように、E2F1は、タンパク質のポリADPリボシル化を強力に活性化した。PARの免疫細胞化学的染色により、PARP−1の活性をさらに確認した(図11B)。核PAR染色は、E2F1の発現後、24時間増大し、48時間でプラトーに達した。ポリADPリボシル化が、E2F1誘導性アポトーシスにおいて因果的役割を果たすかどうかを調べるために、3’−アミノベンズアミド(3’−AB)、PARP活性の普遍的阻害剤を用いた。図11Cに示されるように、3’−ABは、5mMという濃度で、E2F1誘導性アポトーシスを70%より多く阻害した(P<0.0001)。3’−AB添加単独は、対照群全体でアポトーシスに対して効果を示さなかった。これらのデータは、E2F1が、カスパーゼ非依存性アポトーシスに寄与する、タンパク質ポリADPリボシル化を活性化することを示唆する。
【0125】
(実施例8:E2FはPARPのタンパク質発現に影響を及ぼす)
タンパク質ポリADPリボシル化は、18種の遺伝子からなるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼファミリーのメンバーによって触媒される(Ame, J. C, et al., Bioessays 26:882−93(2004))。PARP−1タンパク質は、ほとんどの細胞において優性のメンバーであり、DNA損傷によって誘導されるポリADPリボシル化全体の大部分を導く(Davidovic, L. et al., Exp Cell Res 268:7−13(2001))。PARPファミリーのどのメンバーがE2F1誘導性アポトーシスに関与したかを識別するために、siRNA技術を用いてPARP−1タンパク質レベルを低下させた。化学合成したPARP−1 siRNAプールをDLD1−E2F1誘導性細胞株にエレクトロポレーションした。PARP−1タンパク質は2日で減少し始め、4日で最低レベルに達し、6日から徐々に回復したことが、ウエスタンブロット(図12A)および免疫細胞化学的染色によって示された。E2F1の発現後、PARPの核蓄積は、siPARP−1のトランスフェクションによって抑制され(図12B)、このことはE2F1誘導性PARP活性はPARP−1によって媒介されるということを示唆する。E2F1誘導性アポトーシスは、PARP−1ノックダウン後に損なわれた(P<0.001)(図12C)。これらのデータは一緒になって、E2F1はカスパーゼ非依存性アポトーシス経路を活性化するのにPARP−1およびその活性を必要とするということを示唆する。
【0126】
E2F1は転写因子として知られている。しかし、いくつかの系列の証拠が、E2F1の転写活性はそのアポトーシス機能にとって重要でないということを示唆している(Phillips, A. C, et al., Genes Dev 11:1853−63(1997); Hsieh, J. K., et al., Genes Dev 11:1840−52(1997))。次に、E2F1がPARP−1の転写に影響を及ぼすかどうかを調べた。E2F1の発現は、PARP−1タンパク質レベルを大幅に増大させ(図12D)、このことは、E2F1は、PARP−1のトランス活性化によってPARP−1発現を誘導したという可能性を示唆する。しかし、RT−PCRおよびノーザンブロット解析は、E2Fl誘導性PARP−1タンパク質上昇は、mRNAレベルではなくタンパク質レベルで起こることを示した(図12E、図12F)。これらの結果は、E2F1は、PARP−1を非転写機構を介して誘導するということを示唆する。
【0127】
内因性E2F1がPARP−1タンパク質レベルに影響を及ぼすかどうかを調べるために、非誘導系においてE2F1をサイレンシングした。siRNAを用いたサイレンシングE2F1は、内因性PARP−1タンパク質レベルを低下させたが、サイレンシングPARP−1はE2F1タンパク質レベルに対して何の効果もなく(図13)、このことは、PARP−1タンパク質レベルの調節におけるE2F1の役割を示唆する。
【0128】
(実施例9:E2F1は、PARP依存的にAIFの転位置を誘導することによってアポトーシスを媒介する)
ミトコンドリアから核へのアポトーシス誘導因子(AIF)の転位置は、PARP−1によって誘導されるアポトーシスに関係があるとされている(Yu, S. W. et al., Science 297:259−63(2002)、Davidovic, L., et al., Exp Cell Res 268:7−13(2001))。次に、PARP−1タンパク質レベルのE2F1媒介性増大がAIF転位置の誘因となるかどうかを調べた。E2F1の発現は、ミトコンドリアからのAIFおよびシトクロムc放出およびAIFの核への転位置をもたらした(図14A、図14B)。E2F1誘導性AIF転位置がPARP−1によって主に媒介されるかどうかを調べるために、siRNAを用いてPARP−1タンパク質レベルを低下させた。E2F1誘導は、対照siRNAを用いてトランスフェクトされた細胞においてAIFの核転位置を駆動したが、特異的siRNAを用いたサイレンシングPARP−1はAIFのE2F1誘導性核転位置を阻止した(図14C、図14D)。これらの結果は、E2F1−PARP−1アポトーシス経路はAIF転位置を含むことを示唆する。
【0129】
E2F1は、E2F1の転写依存性アポトーシス経路に寄与するアポトーシス遺伝子、特に、p73およびapaf1を転写によって調節することがわかっている(Irwin, M. et al., Nature 407:645−8(2000)、Furukawa, Y. et al.,J Biol Chem 277:39760−8(2002))。p73は、p53非依存性アポトーシス経路におけるE2F1の標的遺伝子であることがわかった。p73 mRNAは、E2F1発現後にわずかに誘導されたことが、RT−PCRによって検出された(図15)が、siRNAによるp73の効果的なノックダウンは、E2F1誘導性アポトーシスに対して保護効果を全く示さなかった。E2F1は、apaf1の転写を誘導することもわかっている(Furukawa, Y. et al., J Biol Chem 277, 39760−8(2002))。しかし、RT−PCRデータは、E2F1誘導性細胞においてapaf1の発現変化を全く示さなかった(図15)。p73およびapaf1の大幅な誘導がない理由は明らかではないが、E2F1レベル、期間の相違、およびPARP−1誘導による相対的に迅速な細胞死による可能性がある。
【0130】
一実施形態では、PARP発現またはPARP活性の調節および結果として生じるアポトーシスの調節は、E2F発現または活性の調節を介して起こる。好ましい実施形態では、E2FはE2F1である。E2F1−PARP−1細胞死経路は、チェックポイントレギュレーターとアポトーシスの間のp53非依存性関連を提供する。E2F1はATMおよびChk2によってリン酸化され、これがE2F1の安定化を導く(Lin, W. C., et al., Genes Dev 15:1833−44(2001)、Bartek, J., et al., Nat Rev Mol Cell Biol 2:877−86(2001))。反対に、E2F1は、ATMおよびChk2キナーゼを活性化し、それによって正のフィードバックループを形成する(Rogoff, H. A. et al., Mol Cell Biol 24:2968−77(2004)、Berkovich, E. & Ginsberg, D., Oncogene 22:161−7(2003))。癌遺伝子シグナルまたはDNA損傷によるATM−Chk2活性化の存在が、侵襲の規模に応じて、E2F1−PARP−1経路の活性化を導く可能性があり、これがアポトーシス、DNA修復または細胞周期停止を導く場合があり、これが腫瘍形成の予防において重要な機能を果たす可能性があるということが推測される。この経路は、E2F1の観察されている腫瘍サプレッサー機能の根底にあるものであり得る(Yamasaki, L. et al., Cell 85:537−48(1996)、Field, S. J. et al., Cell 85:549−61(1996))。
【0131】
E2F1とPARP−1間の相互作用は、細胞周期調節とゲノムサーベイランス間の新規関連を確立する。結果は、PARP−1タンパク質の内因性レベルは、E2F1に応じて変わることを示唆する。PARP−1はE2F1の転写活性を増強することが示唆されている(Simbulan−Rosenthal, C. M., et al., Oncogene 18:5015−23(1999)、Simbulan−Rosenthal, C. M. et al., Oncogene 22:8460−71(2003))。これらの観察結果は、ゲノムサーベイランスと細胞周期調節の間の正のフィードバックループを示唆する。これらのフィードバック相互作用は、回復不能なDNA損傷を有する細胞の増殖を阻止し、それらの排出を促進する高度に感受性の機構を提供し得る。
【0132】
ヒト癌においてE2F1およびPARP−1の変異がないことは、化学療法の抗癌活性の媒介におけるこのチェックポイント−アポトーシス経路の重要性を示唆し、このことは、癌、例えば、p53経路に変異を有するものに対する有効な新規治療を開発するためのこのチェックポイント経路の活性化の可能性を提供する。
【0133】
その他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。いくつかの実施形態が示され、説明されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1Aは、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるHeLa細胞の生存パーセントを示すグラフである。図1Bは、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるDLD1細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図2】図2は、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるHeLa細胞のトリパンブルー染色の一連の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】図3は、3−アミノベンズアミドを伴うか伴わない、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるDLD1細胞のトリパンブルー染色の一連の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】図4Aは、DMSOで処理した(対照)HeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Bは、4μMのβ−ラパコンで5分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Cは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Dは、4μMのβ−ラパコンで20分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Eは、4μMのβ−ラパコンで30分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Fは、4μMのβ−ラパコンで1時間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図4Gは、4μMのβ−ラパコンで2時間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図5】図5Aは、DMSOで処理した(対照)HeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図5Bは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図5Cは、4μMのβ−ラパコンおよび5mMの3−アミノベンズアミドで10分間処理したHeLa細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図6】図6Aは、DMSOで処理した(対照)DLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図6Bは、4μMのβ−ラパコンで10分間処理したDLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図6Cは、4μMのβ−ラパコンおよび5mMの3−アミノベンズアミドで10分間処理したDLD1細胞での抗ポリ(ADP−リボース)抗体の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図7】図7は、種々の濃度のβ−ラパコンで処理したDLD1細胞中に残存する細胞NAD+のパーセントを示すグラフである。
【図8】図8は、NAD+を外から添加したか添加していない、種々の濃度のβ−ラパコンで処理したDLD1細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図9】図9は、DLD1細胞から得た細胞溶解産物における、種々の濃度のβ−ラパコンにおけるPARP活性の活性化倍数を示すグラフである。
【図10A】図10Aは、p53欠損であり、外因性E2F1遺伝子と機能しうる形で連結されたテトラサイクリン誘導プロモーターでトランスフェクトされたヒト結腸癌細胞株(DLDl)におけるE2F1のウエスタンブロットを示す図である。
【図10B】図10Bは、テトラサイクリンとともに3日間および4日間インキュベートされたE2F1 tet誘導性DLD1細胞のフローサイトメトリーデータを示す図である。
【図10C】図10Cは、テトラサイクリンとともに3日間および4日間インキュベートされたE2F1 tet誘導性DLD1細胞の光学顕微鏡写真である。
【図10D】図10Dは、E2F1 tet誘導性DLD1細胞を用いたコロニー形成アッセイの写真である。
【図10E】図10Eは、種々の期間の間テトラサイクリンを用いた、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるカスパーゼ−3のウエスタンブロットを示す図である。
【図10F】図10Fは、50μMのパンカスパーゼ阻害剤Z−VADおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合のE2F1 tet誘導性DLD1細胞のアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図11A】図11Aは、テトラサイクリンのインキュベーションが異なる、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるPARのイムノブロット示す図である。
【図11B】図11Bは、PARおよびDAPIについて染色した、E2F1 tet誘導性DLD1細胞の光学顕微鏡写真である。
【図11C】図11Cは、3’−アミノベンズアミドおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合の、E2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図12A】図12Aは、PARP−1 siRNAに曝露されたE2F1 tet誘導性DLD1細胞におけるPARPのウエスタンブロットを示す図である。
【図12B】図12Bは、DAPI染色と比較したPARの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図12C】図12Cは、PARP siRNAおよびテトラサイクリンとともにインキュベートした場合の、E2F1 tet誘導性DLD1細胞のアポトーシスパーセントを示す棒グラフである。
【図12D】図12Dは、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのウエスタンブロットを示す図である。
【図12E】図12Eは、tet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのRT−PCRを示す図である。
【図12F】図12Fは、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのノーザンブロットを示す図である。
【図13】図13は、E2F1およびPARP1のsiRNAとともにインキュベートしたtet誘導性DLD1細胞における、PARP、E2F1およびアクチンのウエスタンブロットを示す図である。
【図14A】図14Aは、DAPI染色およびPARP−1活性化と比較した、シトクロムcの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14B】図14Bは、DAPI染色およびPARP−1活性化と比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14C】図14Cは、DAPI染色および対照siRNAと比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図14D】図14Dは、DAPI染色およびPARP−1 siRNAと比較した、AIFの免疫局在性を示すE2F1 tet誘導性DLD1細胞の一連の光学顕微鏡写真である。
【図15】図15は、テトラサイクリンとともに種々の期間インキュベートしたE2F1 tet誘導性DLD1細胞における、Atm、P73およびApaf−1のノーザンブロットを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、PARPをコードするDNAを含有する細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記PARPがPARP−1、PARP−2またはPARP−1とPARP−2との両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞においてPARP活性化効果を評価するステップが、
該細胞を試験化合物に曝露するステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下で該細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PARP活性化効果をポリ(ADPリボース)合成の増大によって決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞が脊椎動物、哺乳類またはヒトの癌中の細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌細胞が脊椎動物、哺乳類またはヒトの癌に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞が培養癌細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記培養癌細胞が、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験化合物が低分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試験化合物がβ−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞において前記試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップが、
該正常細胞を試験化合物を曝露するステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下で該正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記正常細胞が、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記正常細胞が、脊椎動物、哺乳類またはヒトに由来する正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記正常細胞が培養正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記培養正常細胞が、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)、PBMC(増殖性末梢血単核細胞)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記正常細胞においてよりも前記癌細胞においてより高いPARP活性化効果を有する試験化合物を選択するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、PARPをコードするDNAを含有する細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記細胞が癌細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
前記癌細胞溶解産物においてと該正常細胞溶解産物においてとで前記試験化合物のPARP活性化効果を比較するステップと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、
PARPを試験化合物と接触させるステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記PARPがPARP−1またはPARP−2である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
PARP活性を高める試験化合物を選択するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
PARPをコードするDNAを含有する癌細胞または該細胞の溶解産物において、前記選択された化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物または該溶解産物において、該選択された化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
該癌細胞または該溶解産物においてと該正常細胞または該溶解産物においてとで、該選択された化合物のPARP活性化効果を比較するステップと
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
被験体において癌を治療または予防する方法であって、該被験体の癌細胞においてPARP活性を高めるステップを含む、方法。
【請求項27】
前記被験体の癌細胞においてPARP活性を選択的に高めるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体に治療上有効量のPARPアクチベーターを投与するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体に治療上有効量のPARPの選択的アクチベーターを投与するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物がβ−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記被験体が脊椎動物、哺乳類またはヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、PARPをコードするDNAを含有する細胞において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記PARPがPARP−1、PARP−2またはPARP−1とPARP−2との両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞においてPARP活性化効果を評価するステップが、
該細胞を試験化合物に曝露するステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下で該細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PARP活性化効果をポリ(ADPリボース)合成の増大によって決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞が脊椎動物、哺乳類またはヒトの癌中の細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌細胞が脊椎動物、哺乳類またはヒトの癌に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞が培養癌細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記培養癌細胞が、MCF−7(ヒト乳癌細胞)、DLD1(ヒト結腸細胞)、SW480(ヒト結腸細胞)およびPaca−2(ヒト膵臓癌細胞)からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験化合物が低分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試験化合物がβ−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞において前記試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記正常細胞においてPARP活性化効果を評価するステップが、
該正常細胞を試験化合物を曝露するステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下で該正常細胞におけるPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記正常細胞が、脊椎動物、哺乳類またはヒト中の正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記正常細胞が、脊椎動物、哺乳類またはヒトに由来する正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記正常細胞が培養正常細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記培養正常細胞が、MCF−10A(非形質転換乳房上皮細胞)、NCM460(正常結腸上皮細胞)、PBMC(増殖性末梢血単核細胞)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記正常細胞においてよりも前記癌細胞においてより高いPARP活性化効果を有する試験化合物を選択するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、PARPをコードするDNAを含有する細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記細胞が癌細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物において試験化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
前記癌細胞溶解産物においてと該正常細胞溶解産物においてとで前記試験化合物のPARP活性化効果を比較するステップと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PARPアクチベーターのスクリーニング方法であって、
PARPを試験化合物と接触させるステップと、
該試験化合物の存在下および非存在下でPARPの活性を測定するステップと、
該試験化合物の存在下と非存在下とでPARPの活性を比較するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記PARPがPARP−1またはPARP−2である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
PARP活性を高める試験化合物を選択するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
PARPをコードするDNAを含有する癌細胞または該細胞の溶解産物において、前記選択された化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
PARPをコードするDNAを含有する正常細胞の溶解産物または該溶解産物において、該選択された化合物のPARP活性化効果を評価するステップと、
該癌細胞または該溶解産物においてと該正常細胞または該溶解産物においてとで、該選択された化合物のPARP活性化効果を比較するステップと
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
被験体において癌を治療または予防する方法であって、該被験体の癌細胞においてPARP活性を高めるステップを含む、方法。
【請求項27】
前記被験体の癌細胞においてPARP活性を選択的に高めるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体に治療上有効量のPARPアクチベーターを投与するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体に治療上有効量のPARPの選択的アクチベーターを投与するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物がβ−ラパコンの類似体、誘導体または代謝産物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記被験体が脊椎動物、哺乳類またはヒトである、請求項26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【公表番号】特表2008−526237(P2008−526237A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550550(P2007−550550)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000748
【国際公開番号】WO2006/078503
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(304059351)アーキュル, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000748
【国際公開番号】WO2006/078503
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(304059351)アーキュル, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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