説明

PEM燃料電池スタックのヘッダ用の水分除去チャネル

【課題】堆積する水分を流れ場チャネルから燃料電池スタックの出口に移送する水分除去機構を提供すること。
【解決手段】複数の流れ場チャネルが中に形成された活性面を有する第1のユニポーラ板を備える燃料電池用のバイポーラ板が開示される。第1のユニポーラ板は、活性面と連通するユニポーラ板の第1の端部に配置された入口ヘッダ、およびそこを通って形成される排出開口を有するユニポーラ板の第2の端部に配置された出口ヘッダをさらに有する。排出開口の周縁部は面取り加工され、同時に活性面と連通している。面取り加工された排出開口は、バイポーラ板に水分除去チャネルを形成する。バイポーラ板を備える燃料電池スタックも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関し、より詳細には燃料電池アセンブリ内のバイポーラ板から水分を除去する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気自動車や様々なその他の用途に対する、清浄な、効率的で環境に配慮した電源として提唱されてきた。燃料電池の1つの例は、固体高分子膜(PEM)燃料電池である。PEM燃料電池は、一般に、触媒および電極を電解質膜の両面に有する薄い、固体高分子電解質膜を備える膜電極接合体(MEA)を備える。
【0003】
MEAは一般に、アノードおよびカソードの電極層を形成するガス拡散媒体としても知られる多孔質の導電材料を備える。水素ガスなどの燃料がアノードで導入され、そこで触媒の存在の下で電気化学的に反応して電子および水素陽イオンを生成する。電子はアノードからカソードにそれらの間に連結された電子回路を通って伝導される。同時に、水素陽イオンは電解質を通過してカソードに達し、そこで酸素または空気などの酸化体が電解質と触媒の存在の下で電気化学的に反応して酸素陰イオンを生成する。酸素陰イオンは水素陽イオンと反応して、反応生成物として水分を形成する。
【0004】
MEAは一般に、一対の伝導性の接触要素またはバイポーラ板の間に挿入され、単一のPEM燃料電池が完成する。バイポーラ板は、アノードとカソードに対する集電子として機能し、それぞれの電極の表面全体にわたって、燃料電池のガス状反応物(すなわちHおよびO/空気など)を分配する、その中に形成された適切な流れチャネルおよび開口を有する。バイポーラ板は、その上に形成された流れ分配場を有する2つのユニポーラ板を共に接着することによって組み立てることができる。一般に、バイポーラ板は入口および出口ヘッダも備え、それは燃料電池スタックに整列されると、燃料電池のガス状反応物および冷却液をそれぞれ、複数のアノードおよびカソードへ送り、またそこから出す内部の供給および排出マニホルドを形成する。
【0005】
当分野で十分に理解されているように、燃料電池内の膜は、プロトンを効果的に透過するために所望の範囲内で膜全体にわたってあるイオン抵抗を維持するためにある程度の相対湿度を有する必要がある。燃料電池の動作中に、MEAからの湿分および外部の加湿がアノードとカソードの流れチャネルに入る可能性がある。湿分が流れチャネルに沿って反応性ガスの圧力によって押されると、最高濃度の水がバイポーラ板の出口領域に存在し、そこではガス流速が最低である。滞留として知られる現象で、これらの領域に水が堆積し、フィルムを形成するおそれがある。滞留した水は、流れチャネルを閉鎖し、燃料電池の全体の効率を低下させるおそれがある。高度の水分の堆積または滞留は燃料電池の故障を招くおそれがある。
【0006】
水分の滞留を最小限に抑えることは、これまで、たとえばより高い流量で反応性ガスによって定期的にチャネルをパージすることによって可能であった。しかし、カソード側では、これによって空気圧縮機に加えられる寄生電力が増加し、全体のシステム効率が低下する。さらに、パージガスとして水素を使用することは、経済性が低下し、システム効率が低下し、システムの複雑さが増すことを含む多くの理由により望ましくない。
【0007】
チャネル内に堆積する水は、入口の加湿を減らすことによって減少させることもできる。しかし、燃料電池の膜を水和するために、アノードおよびカソードの反応物内に少なくともある程度の相対湿度を与えることが望ましい。乾いた流入ガスは、電解質膜に対して乾燥効果を有し、燃料電池のイオン抵抗を増加させるおそれがある。この方法は電解質膜の長期間の耐用性にも悪影響を与える。
【非特許文献1】Rye等のLangmuir、12:555−565(1996年)
【特許文献1】米国特許出願第11/068,489号
【特許文献2】米国特許出願第11/463,386号
【特許文献3】米国特許出願第11/463,384号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
堆積する水分を流れ場チャネルから燃料電池スタックの出口に移送する水分除去機構が絶えず求められている。機構はシステム効率を低下させず、ここの燃料電池の電解質膜に乾燥効果を与えないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によれば、驚くべきことに、流れ場チャネルから水分を移送し、システム効率を最大にし、個々のセルの電解質膜の乾燥を最小限に抑える、水分除去機構を有するバイポーラ板が発見された。
【0010】
1つの実施形態では、活性面を備える第1のユニポーラ板を有するバイポーラ板が設けられ、活性面はその中に形成された複数の流れ場チャネルを有する。第1のユニポーラ板の活性面は、入口領域および出口領域を有する。第1のユニポーラ板はさらに、ユニポーラ板の第1の端部に配置された入口ヘッダ、およびユニポーラ板の第2の端部に配置された出口ヘッダを備える。入口ヘッダは、活性面の入口領域と連通している。出口ヘッダはさらに、それを貫通して形成された排出開口を備える。排出開口の周縁部は面取り加工され、活性面の出口領域と連通している。
【0011】
一対のバイポーラ板の間に配置された膜電極アセンブリを有する少なくとも1つの燃料電池を備える燃料電池スタックがさらに設けられる。各バイポーラ板は、複数の流れ場チャネルが中に形成された活性面を有する。燃料電池スタックはさらに、各バイポーラ板の排出開口によって形成された排出マニホルドを備え、排出マニホルドはバイポーラ板の活性面と連通する水分除去チャネルを備える。水分除去チャネルは活性面からの毛細管現象によって動く液体の水の流れを誘発する。
【0012】
水分除去チャネルは、特定の実施形態では、三角形の形状である。燃料電池スタックはさらに、各バイポーラ板の排出開口によって形成された抜取り導管を備えることができる。抜取り導管は、水分除去チャネルと連通し、燃料電池スタックの動作中の流れ場チャネル内およびチャネルの出口での水分の堆積に対して作用する。抜取り導管は、無充填の、被覆された、または織物にされたものであることができ、また親水性材料の支柱を備えることができる。
【0013】
本開示の上記の並びにその他の利点は、特に下記に描かれる図面に照らして考慮すると、以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の説明は、単に例示の性質のものであり、本開示、適用、または用途を限定することを意図するものではない。図面を通して、一致する参照番号は、同じまたは対応する部品および特徴を示すことも理解されたい。
【0015】
図1は、以下にバイポーラ板8で示す導電流体分配要素8によって互いに分離された一対の膜電極アセンブリ(MEA)4、6を有する2つのPEM燃料電池スタック2を示す。MEA4、6およびバイポーラ板8は、端部板10、12と接触要素14、16との間に共に積み重ねられる。端部接触要素14、バイポーラ板8の両方の活性面、および端部接触要素16は、たとえばMEA4、6にHなどの燃料およびOなどの酸化体ガスを分配するための、それぞれ複数の流れ通路または流れチャネル18、20、22、24を備える。非導電性ガスケット26、28、30、32は、燃料電池スタック2の構成要素間に密封および電気的な絶縁をもたらす。
【0016】
MEA4、6の電極34、36、38、40は、一般にたとえば炭素/グラファイト拡散紙などのガス透過性の導電材料によって形成される。電極34、36、38、40は、MEA4、6の電極面に当接する。端部接触要素14、16は、それぞれ電極34、40に押し付けられ、バイポーラ板8は水素を含む反応物を受け入れるように構成されるMEA4のアノード面上で電極36に当接し、酸素を含む反応物を受け入れるように構成されるMEA6のカソード面上で電極38に当接する。酸素を含む反応物は、適切な供給導管42によって貯蔵タンク46から燃料電池スタック2のカソード側に供給され、水素を含む反応物は、適切な供給導管44によって貯蔵タンク48から燃料電池スタック2のアノード側に供給される。あるいは、周囲空気を酸素を含む反応物としてカソード側に供給し、水素をメタノールまたはガソリン改質器などからアノード側に供給することができる。MEA4、6のアノードおよびカソードの両側に対する排出導管(図示されない)も設けられる。バイポーラ板8および端部接触要素14、16に冷媒を供給するために、追加の導管50、52、54が設けられる。バイポーラ板8および端部接触要素14、16から冷媒を排出する適切な導管(図示されない)も設けられる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態によって使用できる例示のバイポーラ板8の分解斜視図である。バイポーラ板8は、第1の外部の金属(または導電性のポリマー)シートまたはユニポーラ板200、および第2の外部の金属シートまたはユニポーラ板202を備える。ユニポーラ板200、202は一般に、たとえばフォトリソグラフィックマスクによるフォトエッチングなどのシートメタルを形成するための打抜きまたは任意のその他の従来のプロセスによって形成される。鋳造などの一般的なプロセスが、導電性のポリマー板を成形するのに使用される。シートメタルは、本発明のユニポーラ板200,202に適した、様々なゲージ(gauge)で入手可能であることを理解されたい。非限定的な例では、適切なシートメタルのゲージは、約30ゲージ(0.03988ミリ(0.0157インチ))未満から約8ゲージ(4.089ミリ(0.161インチ))の範囲であることができる。特定の実施形態では、メタルシートは約0.0508ミリ(0.002インチ)から約0.508ミリ(0.02インチ)の厚さであることができる。しかし、その他の厚さのシートメタルが所望されるように使用できることが理解される。その他の材料が使用できることがさらに理解される。非限定的な例では、バイポーラ板8はグラファイトまたはグラファイト充填ポリマーを含むことができる。
【0018】
第1のユニポーラ板200の内面224が図2に示される。複数の陵部226が、内面224に形成され、その間に複数のチャネル228を画定し、そこを通って冷媒がバイポーラ板の第1の側230から第2の側232に流れる。ユニポーラ板200の下側も、複数の陵部(図示されない)を備え、複数の陵部はその間に複数のチャネル(図示されない)を画定し、冷媒が燃料電池スタック2の動作中にそこを通過する。ユニポーラ板200の下側も平坦であることができることを理解されたい。したがって、チャネル228は、ユニポーラ板200、202によって画定される内側のボリューム内に冷媒の流れ場を形成する。
【0019】
第2のユニポーラ板202は、その外面に第1の活性面204を有し、それは膜電極アセンブリ(図示されない)に対面し、流れ場206をもたらすように形成される。流れ場206は、複数のランド208によって画定される。複数のランド208が、その間に「流れ場」を構成する複数の流れチャネル210を画定し、その流れ場を通って反応性ガスがバイポーラ板の第1の端部212からその第2の端部214へ曲がりくねった経路で流れる。燃料電池が完全に組み立てられると、ランド208は多孔質の材料、炭素/グラファイト紙36、38に当接し、それはMEA4、6に当接する。
【0020】
一般に、ランド208および流れチャネル210は、炭素/グラファイト紙36、38に当接するユニポーラ板200、202の外面を覆う。反応性ガスは、バイポーラ板8の第1の端部212に配置された入口ヘッダ218、219に形成された供給ポート216、217から流れチャネル210に供給され、バイポーラ板の第2の端部214に配置された出口ヘッダ222、223に形成された出口ポート220、221を介して流れチャネル210から出る。
【0021】
ユニポーラ板200の外側の構造は、ユニポーラ板202の外側に実質的に一致することを理解されたい。たとえば、ユニポーラ板202と同様に、ユニポーラ板200の外側は、活性面(図示されない)を有する。ユニポーラ板200は流れ場234を提供するように形成される。流れ場234は、その上に形成され、反応性ガスが通過する流れ場234を構成する複数の流れチャネル(図示されない)を画定する、複数のランド(図示されない)によって画定される。
【0022】
ユニポーラ板200、202はさらに、出口ヘッダ222、223に形成される排出開口236、237を有する。排出開口236、237は、整列されて組み立てられたバイポーラ板8で排出マニホルド402(図4に示される)を形成し、それはたとえば水および水蒸気などの排出する反応物および反応生成物が燃料電池スタック2から出る通路を提供する。
【0023】
図3および図4に示されるように、第1のユニポーラ板200の排出開口236は、外周の面取りされた縁部300を備えることができる。面取り加工された縁部300は活性面204と連通している。非限定的な例としては、面取り加工された縁部300は、ユニポーラ板200に形成され、出口ポート220と排出開口236の間に配置されたマイクロチャネル302を介して活性面204と連通できる。マイクロチャネル302は、反応性ガスからの圧力が低く、滞留する水分のフィルムが典型的に形成する特に第2の端部214付近の活性面204から、直接的に水分を移送するように機能する。
【0024】
一般に、ユニポーラ板200、202は、たとえば接着剤によって共に接着され、組み合わされたバイポーラ板8を形成する。接着は、当分野で知られた、たとえば蝋付け、拡散接合、レーザ溶接、または導電性接着剤による糊付けなどによって行うことができる。適切なバインダ400が当業者に知られ、所望されるように選択できる。
【0025】
接着時には、面取り加工された縁部300が水分除去チャネル405を形成することを理解されたい。たとえば、図4に示されるように、第1のユニポーラ板200がバインダ400によって第2のユニポーラ板202に接着される。バイポーラ板8は、ユニポーラ板200、202に配置された排出開口236、237によって形成された排出マニホルド402を備える。面取り加工された縁部300を有する第1のユニポーラ板200の排出開口236は、第2のユニポーラ板202の面取り加工されていない面404に接着されて、水分除去チャネル405を形成する。いくつかの実施形態では、特に第2のユニポーラ板202の面が面取り加工されていない場合には、水分除去チャネル405は実質的にV字形または三角形の溝である。
【0026】
その他の実施形態では、第1および第2のユニポーラ板200、202の両方が面取り加工された縁部300を備える排出開口236、237を有することができる。しかし、製造を簡単にするために、単一の面取り加工された排出開口236、237のみを有することが望ましいことを理解されたい。
【0027】
水分除去チャネル405の形状は活性面204からの毛細管現象によって動く水分の流れを誘発する。水分除去チャネル405内の水は、自発的なぬれ、または自発的な浸潤と呼ばれるプロセスで表面に沿って広がる。V形状または三角形の面の溝によって生成された開放毛細管に関連するこのプロセスが、たとえばRye等のLangmuir、12:555−565(1996年)に記載され、本明細書に参照によって組み込まれる。流れチャネルのコーナでの自発的なぬれを裏付ける物理的な要件は、コンカス−フィン条件(Concus−Finn condition)、β+α/2<90°によって特徴付けられ、ただし、βは液体面と固体面との間に形成される静止接触角である。αはチャネルのコーナ角406であり、特定の実施形態では、第1のユニポーラ板200の面取り加工された縁部300と第2のユニポーラ板202の面取り加工されていない面404の交差部によって形成される角度である。静止接触角は、たとえば液滴を表面に配置し、平衡条件、すなわち水滴の拡大がこれ以上起こらないことが満たされる場合を記録することによって、実験的に決定させる特定の表面および材料に特有の性質である。この条件によって決定され、特に液体、空気、および表面が交差する3相の境界で液滴によって形成される角度として一般的に幾何学的に画定される接触角の読取り値が静止接触角である。
【0028】
限定されない例では、長方形のチャネルが45°のα/2を有し、それは自発的なぬれが静止接触角が45°より少ない場合に起こることを決定する。本明細書に述べられる本発明の特定の実施形態では、水分除去チャネル405は三角形であり、β+α/2<90°であり、それによってコンカス−フィン条件を満たす。たとえば、水分除去チャネル405の三角形の形状は、鋭角を有することができる。したがって、水分除去チャネル405と連通する流れチャネル210に沿って移送される水は、毛細管現象による力によって、長手方向301に沿って、三角形の水分除去チャネル405の底部に移送される。
【0029】
水分除去チャネル405の毛細管作用に関して上記に与えられた理由により、ユニポーラ板200、202の接着によって形成される接合部は、実質的に鋭角であり、すなわち角度が個々の点で終端し、丸くなっていない必要があることを理解されたい。本明細書に述べられるように面取り加工されていない縁部404に対して面取り加工された縁部300を接着することにより、実質的に鋭角を作ることができる。そのような実質的に鋭角を作る別の方法も、用いることができる。
【0030】
再び図3を参照すると、水分除去チャネル405の断面積が、本質的に長手方向301に沿ってチャネル405の体積を変更することによって、面取り加工された縁部300によって形成されたチャネル405の長手方向301に沿って減少できる。一般に、チャネル405の体積は、抜取り部分304の方向に減少する。チャネル405の体積のそのような減少は、活性面204からの毛細管現象による流れの量を増加させるのに効果的であることができることを理解されたい。断面積の減少は、たとえばチャネルのコーナ角度406を低下させることによって行うことができる。減少は、水分除去チャネル405の長手方向に沿って連続的であることができ、または不連続であり、たとえばチャネル405の長手方向に沿った別個の段階を備えることができる。別の実施形態では、チャネル405の断面積は、たとえば角度を付けられた差込みによってチャネル405を浅くすることによって減少できる。しかし、コンカス−フィン条件によって決定される毛細管現象によって動く流れを促進するように、チャネル角度コーナ406は、実質的に鋭角のままである必要があることを理解されたい。
【0031】
本開示の水分除去チャネル405によって自発的に浸潤される水は、排出マニホルド402を介して燃料電池スタック2から移送される水滴を形成できる。図2および図3を再び参照すると、排出開口236、237は、面取り加工された縁部300と連通する抜取り部分304を備えることができる。第1のユニポーラ板200を第2のユニポーラ板202に整列および接着するとき、抜取り部分304は水分除去チャネル405と連通する抜取り導管306を形成する。抜取り導管306は、水分除去チャネル405への毛細管現象の流れによって動く水分の出口を提供し、それによって水分除去チャネル405が完全に満たされるのを防止し、活性面204の第2の端部214から水分を連続的に除去できるようにする。
【0032】
水分除去チャネル405および/または抜取り導管306は、その親水性を向上し、水分除去を容易にするように処理できる。そのような処理は親水性被覆を施すことを含むことができる。適切な親水性被覆が、たとえば本明細書に参照によって組み込まれる同時係属の米国特許出願第11/068,489号、米国特許出願第11/463,386号、および米国特許出願第11/463,384号に記載されている。
【0033】
非限定的な例としては、親水性被覆は、少なくとも1つのSi−O基、少なくとも1つの極性基、飽和または不飽和の炭素鎖を含む少なくとも1つの基を含むことができる。別の実施形態では、被覆は少なくとも1つのSi−O基およびSi−R基を含み、Rは飽和または不飽和の炭素鎖を含み、Si−R基のSi−O基に対するモル比は1/8から1/2の範囲にある。親水性被覆は、親水性被覆を施すのに十分な任意の手段によって行うこともできる。たとえば、被覆はたとえばシロキサンガスなどの前駆体ガス、およびさらに、たとえば酸素などの第2のガスを含むプラズマ支援化学堆積法を使用して堆積できる。適切な親水性被覆は、1から100ナノメータの範囲の寸法を有するナノ粒子を含むこともでき、ナノ粒子はSi−O基、飽和または不飽和炭素鎖、および極性基を含む化合物を含む。その他の親水性被覆も使用できることを理解されたい。
【0034】
水分除去チャネル405および/または抜取り導管306の表面は、親水性を向上させるように織り目を付けることができる。表面の織り目は、たとえばサンドブラスティングによって生成された艶消し仕上げを備えることができる。パターンは、たとえば所望の度合いの粗さを与えるため化学的にエッチングすることもできる。さらに、水分除去チャネル405および/または抜取り導管306の表面はマイクロコルゲーションまたはマイクロチャネルを備えることができる。当業者は、ここでも同様に親水性を向上させるその他の表面の織り目も使用できることを理解されたい。
【0035】
図5は、ユニポーラ板200に形成されたマイクロチャネル302を通り、水分除去チャネル405を形成する面取り加工された縁部300の長手方向301に沿った水分の流れ500の方向を示す。一般に、ユニポーラ板200に存在する液体の水は、面取り加工された縁部300によって形成された水分除去チャネル405内に毛細管作用によって運ばれる。次いで液体の水は、水分除去チャネル405内でその厚さに平衡し、抜取り導管306と最終的に接触し、水分除去チャネル405が満たされると重力の下で水が抜き取られる。
【0036】
図5に、抜取り導管306内に配置された柱502がさらに示される。柱502は、バイポーラ板8の抜取り部分304に接触し、水分除去チャネル405からの水分除去を促進する親水性材料を含む。柱502は一般に、水と接触すると湿潤し、燃料電池スタック2から水分を抜き取る表面をもたらす。親水性材料は、燃料電池スタック2が短絡するのを防止するように、非導電性でもあることを理解されたい。適切な親水性材料の非限定の例は、プラスチック、エラストマー、セラミクス、およびガラスを含むことができる。特定の実施形態では、プラスチックおよびエラストマーなどの弾性材料が、通常の動作中に燃料電池スタック8で起こる可能性のある膨張および収縮を考慮して使用される。適切なプラスチックの1つの例は、デュポン社から市販されているアセタールポリオキシメチレン(POM)樹脂である、Delrin(登録商標)である。
【0037】
親水性材料は、たとえば焼結プラスチックまたは発泡エラストマーなどの多孔質のものであることもできる。親水性材料は繊維質のものであることもできる。特定の実施形態では、親水性材料は繊維の束を含み、それは編み、またはより合せられて、燃料電池スタック2から水分を引き離すのに使用される。
【0038】
当業者は、たとえば水分除去チャネル405および抜取り導管306などの説明された水分除去機構が、当分野で知られるように水分を除去するその他の手段と共に使用できることをさらに理解されたい。
【0039】
本開示のバイポーラ板8は、水分が燃料電池スタック2の出口領域から毛細管作用による力によって運ばれるので、燃料電池スタック2の効率を維持する。毛細管現象による力による水分除去は、燃料電池スタック2に寄生負荷として作用しない。そのような水分除去は、入口の加湿を減少させる必要もなく、個々のセルの電解質膜アセンブリ4、6に乾燥効果を有することも知られる。水分除去チャネル405が燃料電池スタック2の出口領域での水分の滞留に対して作用し、そうでない場合、水分が酷寒の条件の下で凍結する可能性があるので、燃料電池スタック2の凍結への耐性も最大になる。バイポーラ板8は、一般的に流れチャネル210の水分の滞留および閉鎖によって生じる燃料電池スタック2全体にわたる水分の配分の片寄りを最小限に抑える。そのような水分の分配の改善により、燃料電池スタック2の安定性を最大にし、全体の性能を最適にする。
【0040】
本発明を例示する目的でいくつかの代表的な実施形態および詳細を示してきたが、添付の特許請求の範囲に述べられる開示の範囲から逸脱せずに開示の様々な変更を行うことができることが当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】PEM燃料電池スタックの概略分解斜視図である(2つのセルのみが示される)。
【図2】PEM燃料電池スタックで使用する一対のユニポーラ板から組み立てられた例示のバイポーラ板の分解斜視図である。
【図3】図2に示されるユニポーラ板の分解図である。
【図4】図2に示されるバイポーラ板の排出マニホルドの分解断面図である。
【図5】線4−4に沿った、水分の流れおよび抜取り柱も示す、図2に示されるユニポーラ板の分解図である。
【符号の説明】
【0042】
2 燃料電池スタック
8 バイポーラ板
4 膜電極アセンブリ(MEA)
6 膜電極アセンブリ(MEA)
10 端部板
12 端部板
14 接触要素
16 接触要素
18 流れチャネル
20 流れチャネル
22 流れチャネル
24 流れチャネル
26 非導電性ガスケット
28 非導電性ガスケット
30 非導電性ガスケット
32 非導電性ガスケット
34 電極
36 電極
38 電極
40 電極
42 供給導管
44 供給導管
46 貯蔵タンク
48 貯蔵タンク
50 導管
52 導管
54 導管
200 ユニポーラ板
202 ユニポーラ板
204 第1の活性面
206 流れ場
208 ランド
210 流れチャネル
212 第1の端部
214 第2の端部
216 供給ポート
217 供給ポート
218 入口ヘッダ
219 入口ヘッダ
220 出口ポート
221 出口ポート
222 出口ヘッダ
223 出口ヘッダ
224 内面
226 陵部
228 チャネル
230 第1の側
232 第2の側
234 流れ場
236 排出開口
237 排出開口
300 縁部
301 長手方向
302 マイクロチャネル
304 抜取り部分
306 抜取り導管
400 バインダ
402 排出マニホルド
404 面取り加工されていない面
405 水分除去チャネル
406 コーナ角
500 流れ
502 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユニポーラ板および第2のユニポーラ板であって、前記第1と第2のユニポーラ板のうちの少なくとも1つが、その中に形成された流れ場を備える活性面を有する第1のユニポーラ板および第2のユニポーラ板と、
前記第1のユニポーラ板の第1の端部に配置され、前記活性面と連通する入口ヘッダと、
前記第1のユニポーラ板の第2の端部に配置され、それを通って形成された排出開口を備える出口ヘッダであって、前記排出開口の周縁部が面取り加工され、前記活性面と連通する出口ヘッダとを備える燃料電池用のバイポーラ板。
【請求項2】
前記第1のユニポーラ板が前記第2のユニポーラ板に接着され、前記第2のユニポーラ板の表面が前記面取り加工された周縁部と協働して水分除去チャネルを形成する、請求項1に記載のバイポーラ板。
【請求項3】
前記水分除去チャネルが三角形の溝である、請求項2に記載のバイポーラ板。
【請求項4】
前記排出開口が、前記水分除去チャネルと連通する抜取り部分をさらに備える、請求項2に記載のバイポーラ板。
【請求項5】
前記水分除去チャネルが、その上に配置された親水性被覆を備える、請求項2に記載のバイポーラ板。
【請求項6】
前記水分除去チャネルの表面が織り目を付けられた、請求項2に記載のバイポーラ板。
【請求項7】
前記水分除去チャネルが鋭角のコーナ角度を有する、請求項2に記載のバイポーラ板。
【請求項8】
前記水分除去チャネルが静止接触角および面取り角を有し、前記静止接触角とチャネル角の半分との合計が90度未満である、請求項7に記載のバイポーラ板。
【請求項9】
前記水分除去チャネルの断面積が前記水分除去チャネルの長手方向に沿って減少する、請求項4に記載のバイポーラ板。
【請求項10】
前記断面積の減少が連続的である、請求項9に記載のバイポーラ板。
【請求項11】
一対のバイポーラ板の間に配置された膜電極アセンブリを有する少なくとも1つの燃料電池であって、各バイポーラ板が、その中に形成された流れ場を備える活性面を有する燃料電池と、
各バイポーラ板の排出開口によって形成され、水分除去チャネルを備える排出マニホルドとを備え、
前記水分除去チャネルが前記活性面と連通し、前記活性面からの毛細管現象によって動く水分の流れを誘発する燃料電池スタック。
【請求項12】
前記水分除去チャネルと連通する抜取り導管をさらに備える、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記抜取り導管が各バイポーラ板の排出開口によって形成される、請求項12に記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記抜取り導管が、その上に配置された親水性被覆を備える、請求項13に記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
前記抜取り導管の表面が織り目を付けられた、請求項13に記載の燃料電池スタック。
【請求項16】
前記抜取り導管が、親水性材料の柱を備える、請求項13に記載の燃料電池スタック。
【請求項17】
前記親水性材料が多孔質である、請求項16に記載の燃料電池スタック。
【請求項18】
前記親水性材料がプラスチック、エラストマー、セラミクス、およびガラスからなる群から選択される、請求項16に記載の燃料電池スタック。
【請求項19】
前記プラスチックがポリオキシメチレンを含む、請求項18に記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
一対のバイポーラ板の間に配置された膜電極アセンブリを有する少なくとも1つの燃料電池であって、各バイポーラ板が、その中に形成された流れ場を備える活性面を有する燃料電池と、
各バイポーラ板の排出開口によって形成され、三角形の水分除去チャネルを備える排出マニホルドと、
各バイポーラ板の前記排出開口によって形成され、前記水分除去チャネルと連通する、親水性材料の柱を有する抜取り導管とを備え、
前記水分除去チャネルが前記活性面と連通し、前記活性面から前記抜取り導管への毛細管現象によって動かされる水分の流れを誘起し、それによって前記燃料電池スタックの動作中に流れ場チャネルの水分の堆積に対して作用する燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−171822(P2008−171822A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−4360(P2008−4360)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(505212049)ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド (221)
【Fターム(参考)】