説明

PSA装置

【課題】温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備えたPSA装置において、マイクロカプセルからの相変化物質の漏出を防止して、吸着性能を長期間に亘って維持することができる技術を提供する。
【解決手段】温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質1がマイクロカプセル2に封入された蓄熱体4と吸着材とを吸着塔に充填して備え、前記吸着材の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して原料ガスに含まれる前記特定成分を前記吸着材に吸着させて分離するPSA装置であって、前記マイクロカプセル2の表面が、樹脂からなる外層3により被覆処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備え、前記吸着材の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して原料ガスに含まれる前記特定成分を前記吸着材に吸着させて分離するPSA装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着材の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して、原料ガスに含まれる特定成分を吸着材に吸着させて除去するPSA(圧力スイング吸着)装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
このようなPSA装置は、特定成分を選択的に吸着可能且つ当該特定成分に対する吸着量が圧力上昇に伴って増加する吸着材を吸着塔に充填して備え、原料ガスを高圧で吸着塔に通過させて当該原料ガスから特定成分を吸着材に吸着させて除去する吸着工程と、パージガスを低圧で吸着塔に通過させて吸着材から特定成分を脱離させて当該吸着材を再生する脱離工程とを、交互に繰り返し実行するように構成されている。そして、この種のPSA装置は、例えば、炭化水素、水素、有機化合物などの有価ガスを含む原料ガスから二酸化炭素などの不純物を吸着除去したり、工場等から排出される排ガスからVOC(揮発性有機化合物)などの有害物質を除去したりするものとして利用される。
【0003】
ここで、吸着材を用いたPSA装置においては、吸着材による吸着反応が発熱反応であるために、吸着材の温度が上昇し、吸着性能が低下するという問題がある。一方、吸着材による脱離反応が吸熱反応であるために、吸着材の温度が低下し、脱離性能が低下するという問題がある。
【0004】
そして、このような問題を解決するために、温度変化を抑制して吸着性能及び脱離性能を向上し得る吸着材として、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを熱的に接触した状態で備えた蓄熱機能付き吸着材が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−205030号公報
【特許文献2】特開2001―145832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記蓄熱機能付き吸着材を用いたPSA装置では、吸着工程と脱離工程とが交互に繰り返して実行されるので、マイクロカプセルは、内部の相変化物質の相変化による体積変動と外部の圧力変動とにより、繰り返し応力が生じ、疲労破壊しやすくなる。マイクロカプセルが破損した場合には、内部の相変化物質が漏れ出て吸着材の細孔を塞ぎ、吸着性能の低下を招くおそれがある。
【0007】
また、蓄熱体において、相変化物質として、ヘキサデカンやオクタデカンなどの直鎖の脂肪酸炭化水素、脂肪酸、高級アルコール、エステル化合物、及びそれらを含有する天然ワックスや石油ワックスなどを用い、その相変化物質を覆うマイクロカプセルとして、メラミン樹脂や尿素樹脂などの疎水性の熱硬化性樹脂を用いる場合がある。そして、このような蓄熱体を用い原料ガスに有機化合物が含まれるPSA装置では、そのマイクロカプセルが透過膜となって、内部の相変化物質と外部の有機化合物とが当該マイクロカプセルを透過する所謂透過現象(浸透現象)が発生しやすく、このような場合でも、吸着材の細孔が相変化物質に塞がれて吸着性能の低下を引き起こす虞がある。
【0008】
また、相変化物質の漏出により蓄熱体の大きさ(体積)が不用意に増減すると、吸着塔に充填されている蓄熱体と吸着材との摩擦や振動により、バインダー等で固められている蓄熱体が脱離して特定物質が除去された製品ガスと共に流出し、製品ガスの品質が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備えたPSA装置において、マイクロカプセルからの相変化物質の漏出を防止して、吸着性能を長期間に亘って維持することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るPSA装置は、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備え、前記吸着材の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して原料ガスに含まれる前記特定成分を前記吸着材に吸着させて分離するPSA装置であって、その第1特徴構成は、前記マイクロカプセルの表面が、樹脂からなる外層により被覆処理されている点にある。
【0011】
上記第1特徴構成によれば、マイクロカプセルが樹脂からなる外層に被覆され、相変化物質の外郭体がマイクロカプセルと樹脂との二層で構成されるため、内部の相変化物質の体積変動と外部の圧力変動とによる繰り返し応力が生じても、上記外層が上記マイクロカプセルの外表面を拘束することにより、マイクロカプセルの膨張及び収縮が低減され、マイクロカプセルの疲労破壊が抑制されることになる。また、上記外層が緻密な状態で上記マイクロカプセルの外表面に被覆されていることで、マイクロカプセルの透過現象が抑制されることになる。従って、相変化物質がマイクロカプセルから漏れ出して吸着材の細孔に付着することを良好に抑制することができ、吸着材の吸着性能を長期間に亘って維持することができる。
【0012】
上記相変変化物質としては、所望の融点を有する有機化合物等の公知の種々のものを利用可能であるが、例えば、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンイコサン、ドコサンなどの直鎖の脂肪族炭化水素、天然ワックス、石油ワックス、カプリン酸、ラウリル酸などの脂肪酸、炭素数が12から15の高級アルコール、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチルなどのエステルなどが挙げられる。また、これらの中から選ばれる2種類以上の有機化合物を併用して上記相変化物質としてもよい。更に、相変化物質の過冷却を防止するために、その相変化物質の融点よりも高い融点の化合物を添加しても良い。
【0013】
また、上記相変化物質を上記マイクロカプセルに封入してなる蓄熱体の粒子径は、数μm〜数十μm程度が好ましい。蓄熱体が過度に小さい場合、マイクロカプセルとマイクロカプセルを被覆する外層とからなる外郭体の蓄熱体に対する割合が増加して、相変化物質の割合が減少するので、単位体積当たりの蓄熱量が低下する。逆に、蓄熱体が過度に大きい場合、マイクロカプセルの強度が必要となるため、外郭体の膜厚を増加させることとなる。この結果、蓄熱体に対する外郭体の割合が増加して相変化物質の割合が減少するので、単位体積当たりの蓄熱量が低下する。
【0014】
一方、上記吸着材としては、特定成分を選択的に吸着可能且つ当該特定成分に対する吸着量が圧力上昇に伴って増加するものであれば公知の種々のものを利用可能であるが、例えば、アルミナ、活性炭、ゼオライト等を用いることができる。吸着材の大きさとしては、個々に所定寸法に成形したものを用いてもよいし、活性炭などの吸着材を破砕し、例えば1mm程度のメッシュにより分類した所定の大きさのものを用いてもよい。
【0015】
本発明に係るPSA装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加え、前記マイクロカプセルが疎水性樹脂からなる点にある。
【0016】
上記第2特徴構成によれば、比較的機械的強度が高く、ガスバリア性の高い疎水性の樹脂をマイクロカプセルに適用することで、マイクロカプセルの破壊を一層抑制することができる。
【0017】
上記疎水性樹脂としては、メラミン樹脂や尿素樹脂などの熱硬化性樹脂、特に好ましくは機械的強度に優れたメラミン樹脂が用いられる。尚、相変化物質をマイクロカプセルに封入してなる蓄熱対は、コアセルベ−ション法、in−Situ法(界面反応法)などの公知のマイクロカプセル化の手法により形成することができる。
【0018】
本発明に係るPSA装置の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記マイクロカプセルが、前記疎水性樹脂を初期加熱温度により加熱してカプセル化する初期加熱処理を経た後、前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理されている点にある。
【0019】
上記第3特徴構成によれば、マイクロカプセルを構成する疎水性樹脂の重合反応を、再加熱処理により促進して樹脂の重合度を上げ(孔を減少させ)、マイクロカプセルの強度を上昇させることができる。この結果、内部の相変化物質の体積変動と外部の圧力変動とによる繰り返し応力が生じても、マイクロカプセルの膨張及び収縮が低減され、マイクロカプセルの疲労破壊が抑制されることになる。また、マイクロカプセルがより緻密な構造を有することとなるため、マイクロカプセルの透過現象がより効果的に抑制できる。
【0020】
本発明に係るPSA装置の第4特徴構成は、上記第1乃至上記第3の何れかの特徴構成に加えて、前記外層が親水性樹脂からなる点にある。
【0021】
上記第4特徴構成によれば、疎水性樹脂からなるマイクロカプセルと親水性樹脂からなる外層とで二層の外郭体を形成することにより、当該外郭体は疎水性樹脂の有する機械的強度などの優位性を確保したまま、外層を構成する親水性樹脂が有するガスバリア性、柔軟性及び成膜性により透過現象等による相変化物質の漏出を有効に抑制することができる。
尚、この外層は、液状の媒体中にて上記マイクロカプセルを含む蓄熱体を合成した後に、その蓄熱体のスラリーに上記親水性樹脂を加え、スプレードライなどの公知の乾燥方法によりマイクロカプセルを覆う被膜状に形成することができる。
【0022】
本発明に係るPSA装置の第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、前記親水性樹脂がポリビニルアルコールである点にある。
【0023】
上記第5特徴構成によれば、親水性樹脂の中でも特に水酸基を多く含み、且つ熱可塑性樹脂であるポリビニルアルコールからなる外層によってマイクロカプセルを被覆することにより、その外層の柔軟性及び成膜性を一層高いものとすることができる。また、温度上昇により相変化物質が膨張しても、ポリビニルアルコールが熱可塑性樹脂であることにより当該膨張に追従することができる。これにより、マイクロカプセル内部から相変化物質が漏れ出すことを抑制して、吸着材の吸着性能をより一層良好に維持することができる。
【0024】
上記親水性樹脂には、ポリビニルアルコール以外に、ポリアクリルアミド、エチレンビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体などに代表される親水基を有する親水性の熱可塑性樹脂も好適に用いられる。
【0025】
本発明に係るPSA装置の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、前記ポリビニルアルコールが架橋剤により架橋されている点にある。
【0026】
本発明に係るPSA装置の第7特徴構成は、上記第6特徴構成に加えて、前記架橋剤が、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、金属塩から選択されるいずれか一種類以上である点にある。
【0027】
上記第6特徴構成及び第7特徴構成によれば、外層を構成するポリビニルアルコールが有する水酸基が架橋剤により架橋されて、ポリビニルアルコールを構成する共有結合の数が増加するため、外層の強度を向上させることができる。この結果、マイクロカプセル内部の相変化物質の体積変動と外部の圧力変動とによる繰り返し応力が生じても、上記外層が上記マイクロカプセルの外表面を拘束することにより、マイクロカプセルの膨張及び収縮が低減され、マイクロカプセルの疲労破壊を抑制できる。また、外層を構成するポリビニルアルコールを構成する共有結合の数が増加すると、外層がより緻密な構造となるため、マイクロカプセルの透過現象がより効果的に抑制できる。
【0028】
本発明に係るPSA装置の第8特徴構成は、上記第1乃至上記第7の何れかの特徴構成に加えて、前記外層が前記マイクロカプセルを構成する高分子化合物の未反応基と反応する基を有する点にある。
【0029】
上記第8特徴構成によれば、マイクロカプセルとそれを被覆する外層とが化学的に結合することとなる。この結果、マイクロカプセルにクラックなどが生じている場合でも、上記外層が当該クラックを埋めるように、化学的に隙間なく結合することととなり、相変化物質がマイクロカプセルの外部に漏れ出すことを良好に抑制することができる。例えば、マイクロカプセルがメラミン樹脂からなる場合には、その未反応基と反応する基を有する樹脂としては、メチロール化合物、フェノール樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アクリル酸、アルデヒド化合物等を挙げることができる。
【0030】
本発明に係るPSA装置の第9特徴構成は、上記第1乃至上記第8の何れかの特徴構成に加えて、前記吸着塔内において、前記原料ガスの通過方向に沿って前記蓄熱体と前記吸着材との混合割合を変化させている点にある。
【0031】
上記第9特徴構成によれば、原料ガスの通過方向に沿って、特定成分の割合が多い原料ガスが通過する吸着塔の入口付近においては、吸着材に対する蓄熱体の割合を多くすることで、頻繁な吸熱・発熱反応による温度変化を良好に抑えることができ、特定成分の割合が少ない原料ガスが通過する吸着塔の出口付近においては、蓄熱体に対する吸着材の割合を多くすることで、単位体積当りの吸着量を増やして原料ガスから確実に特定成分を吸着分離することができる。
【0032】
本発明に係るPSA装置の第10特徴構成は、上記第1乃至上記第9のいずれかの特徴構成に加えて、前記吸着塔が断熱構造を有する点にある。
【0033】
上記第10特徴構成によれば、吸着塔を断熱構造を有するものとすることによって、吸着塔周囲の温度環境に変化が生じた場合でも、吸着塔内の温度を、相変化物質が吸着工程と脱離工程との間で好適に相変化するような温度付近に安定させることができ、吸着材の吸着性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係るPSA装置の実施の形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
図3及び図4に示すように、PSA装置100は、蓄熱体4と吸着材6とからなる潜熱蓄熱吸着材7を、吸着塔30内に充填して備え、その吸着材6の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して、例えば炭化水素、水素、有機化合物などの有価ガスを含む原料ガスから二酸化炭素などの特定成分を吸着材6に吸着させて分離して、有価ガスが濃縮された製品ガスを得るように構成されている。
また、上記蓄熱体4は、図1に示すように、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質1がマイクロカプセル2に封入されたものとして構成されており、かかる相変化物質1の相変化により温度変動を抑制しながら放熱及び吸熱を行うことができる。また、この蓄熱体4は、図2に示すように、適宜バインダーにより円柱状の成形蓄熱材5に成形された状態で、吸着材6と共に吸着塔30の中に充填されている。
【0035】
吸着塔30の上流側には、例えば原料ガス貯蔵タンク(図示せず)に通じるチャージライン21が接続され、吸着塔30の下流側には、製品ガス貯蔵タンク(図示せず)に通じる回収ライン22が接続されている。
即ち、原料ガスがチャージライン21を通じて吸着塔30に圧送されるとともに、当該吸着塔30から流出した製品ガスが回収ライン22を通じて払い出される。
また、上記回収ライン22には、上流側から順に、開閉弁26と、上流側に背圧を付加する背圧弁29とが配置されている。
また、上記回収ライン22における開閉弁26の上流側には、例えば他端側が大気開放された排気ライン24が開閉弁28を介して接続されている。
吸着力の強い物質を排気する場合は真空ポンプを使用して排気する構成としてもよい。
【0036】
吸着塔30の内部には、図4に示すように、蓄熱体4と吸着材6とからなる潜熱蓄熱吸着材7が充填された第1吸着室C1、第2吸着室C2、第3吸着室C3が上流側から順に連通して備えられる。
そして、第1吸着室C1に、チャージライン21が接続され、第3吸着室C3に回収ライン22が接続されている。
【0037】
吸着塔30は、鋼製、SUS、ナイロン樹脂などのケーシング11をガラス繊維、セメント、マイカなどを主成分とする断熱材12で覆われた断熱構造を有する。このような断熱構造により、吸着塔30内を外気の温度に左右されない恒温状態とすることができるため、常温近傍を融点とする相変化物質1の相変化を良好に起こさせることができる。
【0038】
第1吸着室C1、第2吸着室C2、第3吸着室C3は、略S字状となるように連結されており、通気性を有する不織布やウレタンなどのスクリーン13及び隔壁17によって区画形成されている。
【0039】
第1吸着室C1と第2吸着室C2と第3吸着室C3との内部には、蓄熱体4と吸着材6とが適宜潜熱蓄熱吸着材7として一体成形された状態で充填されている。尚、潜熱蓄熱吸着材7は、スクリーン13及び隔壁17によって、第1吸着室C1と第2吸着室C2と第3吸着室C3との間での移動、及び、チャージライン21や回収ライン22側への流出が防止されている。
【0040】
吸着塔30内においては、原料ガスの通過方向に沿って蓄熱体4と吸着材6との混合割合を変化させてある。
即ち、原料ガスの通過方向に沿って最も上流側にある第1吸着室C1には、吸着材6に対する蓄熱体4の混合割合を最も高くし、言い換えれば、吸着材6の混合割合を最も低くしてある。
また、原料ガスの通過方向に沿って上記第1吸着室C1よりも下流側にある第2吸着室C2には、上記第1吸着室C1よりも蓄熱体4の混合割合を低くし、言い換えれば、上記第1吸着室C1よりも吸着材6の混合割合を高くしてある。
更にまた、原料ガスの通過方向に沿って上記第2吸着室C2よりも下流側にある第3吸着室C3には、蓄熱体4の混合割合を最も低くし、言い換えれば、吸着材6の混合割合を最も高くしてある。尚、この第3吸着室C3において、吸着材6の吸熱及び発熱が許容範囲内であり温度変動が問題にならない場合などにおいて、蓄熱体4を充填することなく、吸着材6のみを充填するようにしても構わない。
【0041】
この結果、特定成分が比較的多く流通し吸着材6において吸熱・発熱反応が頻繁に起こる第1吸着室C1では、温度変化を良好に抑制して吸着・脱離性能を維持することとなり、特定成分が比較的少量しか流通せず吸着材6において吸熱・発熱反応が緩やかに起こる第3吸着室C3では、単位体積当りの吸着材6の混合量を多くして特定成分を確実に吸着することとなる。このようにして、吸着塔30全体としての吸着・脱離性能が最適化されることとなる。
【0042】
そして、上記のように構成されたPSA装置100では、特定成分を選択的に吸着可能且つ当該特定成分に対する吸着量が圧力上昇に伴って増加する吸着材6が吸着塔30内に充填されており、原料ガスを高圧で吸着塔30に通過させて当該原料ガスから特定成分を吸着材6に吸着させて除去して製品ガスを得る吸着工程と、パージガスとして例えば原料ガスを低圧で吸着塔30に通過させて吸着材6から特定成分を脱離させて当該吸着材6を再生する脱離工程とを、交互に繰り返し実行するように構成されている。
なお、上記吸着材6は、吸着対象の特定成分に応じて適宜選定することができる。
【0043】
即ち、上記吸着工程においては、開閉弁26を開状態とし開閉弁28を閉状態として、チャージライン21から原料ガスを吸着塔30内に圧送する。
すると、吸着塔30の下流側が背圧弁29側に接続されることから、吸着塔30内の圧力が1〜950KPa程度と高圧になる。すると、吸着塔30内では、原料ガスに含まれる二酸化炭素などの特定成分が吸着材6に吸着され、吸着塔30から回収ライン22を通じて高濃度の有価ガスからなる製品ガスが払い出されることになる。この時、蓄熱体4の相変化物質1の相変化により吸着材6の発熱反応により生じた熱量が吸収されるため、吸着塔30内の温度上昇を抑制し吸着材6の吸着性能が低下することを防止する。
【0044】
一方、上記脱離工程では、上記吸着工程とは逆に、開閉弁26を閉状態とし開閉弁28を開状態として、吸着塔30内のガスを排気ライン24を通じて排気することにより、吸着塔30内の圧力が大気圧程度と低圧になる。また、必要に応じて、真空ポンプにより更に低圧にし、吸着しているものをより完全に排気してもよい。すると、吸着塔30の下流側が排気ライン24側に接続されることから、吸着塔30内の圧力が大気圧程度と低圧になる。すると、吸着塔30内では、吸着材6に吸着されていた特定成分が、吸着材6から脱離し、原料ガスと共に排気ライン24側に払い出されることになって、吸着材6が再生される。この時、蓄熱体4の相変化物質1の相変化により吸着材6の吸熱反応により生じた熱量が放出されるため、吸着塔30内の温度低下を抑制し吸着材6の脱離性能が低下することを防止する。
【0045】
以上がPSA装置100の基本構成であるが、このPSA装置100においては、マイクロカプセル2からの相変化物質1の漏出を防止して、吸着性能を長期間に亘って維持するために、図1に示すように、上記蓄熱体4を構成するマイクロカプセル2の表面が、樹脂からなる外層3により被覆処理されている。
即ち、上述したPSA装置100では、吸着塔30内に充填された蓄熱体4に対して、内部の相変化物質1の相変化による体積変動と、外部の圧力変動とにより、繰り返し応力が生じる。そこで、上記蓄熱体4を構成するマイクロカプセル2の表面が上記外層3で被覆されているので、上記外層3がマイクロカプセル2の外表面を拘束し、マイクロカプセル2の膨張及び収縮が低減され、マイクロカプセル2の疲労破壊が抑制されることになる。
また、上記外層3が緻密な状態で上記マイクロカプセル2の外表面に被覆されていることで、マイクロカプセル2の透過現象が抑制されることになる。
従って、相変化物質1がマイクロカプセル2から漏れ出して吸着材6の細孔を閉塞することが良好に抑制され、吸着材6の吸着性能が長期間に亘って維持される。
【0046】
以下、上述したPSA装置100の吸着塔30の充填される蓄熱体4及び吸着材6からなる潜熱蓄熱吸着材7の詳細について、図1及び図2に基づいて説明する。
マイクロカプセル3の表面が外層3で被覆された蓄熱体4は、以下のように製造することができる。
先ず、メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加え、pHを8に調整した後、約70℃〜80℃までの温度で加熱し、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得る。
また、pHを4.5に調整したスチレン無水酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化物質1として、n−ヘキサデカン70gを溶解した混合液を激しく攪拌しながら添加し、粒径が約7μm程度になるまで乳化させる。
次に、この乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を加え、70℃で2時間攪拌した後、pHを9に調整してカプセル化を行う。この結果、メラミン樹脂からなるマイクロカプセル2内にn−ヘキサデカンの相変化物質1を封入してなる蓄熱体4のスラリーを得ることができる。
【0047】
更に、蓄熱体4の重量に対し2wt%となるように、5%のポリビニルアルコール水溶液を、上記蓄熱体4のスラリーに加え、再度攪拌を行った後、スプレードライ法にて乾燥することによって、マイクロカプセル2の表面をポリビニルアルコールからなる外層3により被覆して、直径が約7.2μmの樹脂により被覆された蓄熱体4を得ることができる。上記ポリビニルアルコール水溶液を添加したスラリーに、架橋剤8を蓄熱体4に対して0.1wt%〜3wt%の割合で混合し、そのスラリーをスプレードライ法により乾燥することにより架橋することができる。また、必要に応じてスプレードライ法により乾燥する前に室温から80℃の間で加熱攪拌して架橋してもよい。
【0048】
架橋剤としては、エチレンジアミン、尿素等のアミン化合物、グリオキサール、ホルマリン等のアルデヒド化合物、水溶性メラミン樹脂等のメチロール化合物、多官能エポキシ樹脂、多官能イソシアネート、硝酸ジルコニア、塩化ジルコニア、チタンアルコキシド等の金属塩等が使用できる。
【0049】
更に、重量95の蓄熱体4に対して、重量5のフェノ−ル樹脂を第1バインダーとして加え、混練した後、押出成形機を用いて直径約2mmの円柱状に押し出し成形し、当該成形物を長さ約5mmに切断し、130℃にて3時間加熱することで、図2に示すような形状の成形蓄熱材5を得ることができる。
【0050】
上記第1バインダーとしては、種々のものを用いることができるが、PSA装置100において要求される温度や溶媒に対する強度及び安定性、更にはマイクロカプセル2の外部を被覆する親水性の熱可塑性樹脂との相性、更には耐水性、耐油性の面から、主成分がフェノール樹脂やアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、特に好ましくは単位鎖の短い(架橋結合の多い)フェノール樹脂が好適に用いられる。
【0051】
一方、吸着材6は、一般に使用されているガス分離用の活性炭(モレキュラーシーブカーボン)、ゼオライト、シリカゲルをアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、ラテックス、ベントナイト、アルミナなどの第2バインダーと混練した後、押出成形機により直径約2mmの円柱状に成形し、長さ約5mm程度に切断して焼成して得た成形体として利用することができる。
【0052】
粒状の成形蓄熱材5と吸着材6とは、両者の経時的な分離を抑制するとともにガスが流れる流路を適切に確保するために、なるべく同じ大きさもしくは近似した大きさであることが望ましい。具体的には、成形蓄熱材5の平均粒子径は、吸着材6の平均粒子径の10%〜300%、より好ましくは50%〜150%であり、例えば数百μm〜数mm程度とする。
このように粒状の成形蓄熱材5や吸着材6の大きさを適宜調節することによって、両者の間に適切な間隙が確保され、吸着・脱離性能の維持することができるとともに、PSA装置100において原料ガスが通過する際の圧力損失を低減できる。また、吸着材6の外表面が粉末状の蓄熱体4によって覆われることがなくなるため、原料ガスが吸着材6に触れる面積を適度に確保することができ、吸着材6の吸着・脱離性能をあますことなく発揮させることができる。
【0053】
粒状の成形蓄熱材5と吸着材6の好ましい実施態様は、それぞれが粒径1〜5mmであり、形状は、球状、円柱状、多角形状など、様々なものとする。さらに好ましい形状としては、成形蓄熱材5及び吸着材6が、それぞれ直径1〜3mmで、且つ長さ1〜5mmの円柱状をなしている。この円柱状の成形蓄熱材5及び吸着材6は、例えば連続的に押し出したものを切断又は破断することによって容易に得られる。このような円柱状のもの同士を組み合わせることによって、経時的な両者の分離を良好に抑制できる。
【0054】
成形蓄熱材5としては、所定の寸法に形成することができるほか、大きな寸法に形成したものを破砕して用いることも可能である。
【0055】
潜熱蓄熱吸着材7は、成形蓄熱材5、吸着材6、第3バインダー及び溶剤を混合してスラリーとし、これを攪拌造粒機、圧縮造粒機、押出し造粒機などの一般的な造粒機を用いて成形して得ることができる。
【0056】
第3バインダーとしては、一般的に使用されている熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などが用いられる。具体的には、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルなどを用いることができる。
【0057】
上記潜熱蓄熱吸着材7における蓄熱体4と吸着材6との混合割合は、蓄熱体4が、蓄熱体4と吸着材6との総量に対して、5〜40質量%の割合を有することが望ましく、より望ましくは、10〜35質量%の割合を有する。蓄熱体4の割合が過度に少ないと、蓄熱体4が吸着材6の吸着・脱離による吸熱・発熱反応による温度変化を十分に抑制することができないため、単位体積当りの吸着性能が低下する。一方、蓄熱体4の割合が過度に多いと、吸着材6の割合が相対的に減少することとなり、単位体積当たりの吸着性能が低下する。
【0058】
蓄熱体4の単位体積あたりの重さ、つまり充填密度は0.1〜1.5g/ccの範囲内であることが望ましく、吸着材6の充填密度も同じく、0.1〜1.5g/ccの範囲内であることが望ましい。さらに望ましくは、蓄熱体4及び吸着材6の充填密度が、0.2〜0.6g/ccの範囲内である。
【0059】
そして、吸着材6の充填密度に対して蓄熱体4の充填密度が0.3倍〜3倍であることが望ましい。さらに望ましくは0.5倍〜2倍である。両者の充填密度が大きく異なると、相対的に重い方がケーシング11内で下方に移動しようとし、両者の分離が促進されるため全体としての吸着性能が低下することとなる。
【0060】
次に、本実施形態におけるPSA装置の吸着性能の評価試験について述べる。
かかる評価試験では、PSA装置において、原料ガス(二酸化炭素:35%、メタン:65%)を用い、その原料ガスを、マスフローコントローラーにより一定の流量に調整した後に、二酸化炭素を選択的に吸着可能且つ当該二酸化炭素に対する吸着量が圧力上昇に伴って増加する吸着材である活性炭を充填した吸着塔に圧送する吸着工程を実行し、原料ガスから二酸化炭素を除去した製品ガスを取り出す形態で試験を行った。
また、上記吸着塔内に上述したような吸着材の他に蓄熱材を10vol%充填した場合(実施例)と、上記吸着塔内に吸着材のみを充填した場合(比較例)とについて、吸着塔内の温度、及び、製品ガスにおける二酸化炭素濃度を計測し、それら計測結果の原料ガスの積算流量に増加に伴う変化状態を観察した。
尚、この吸着工程での吸着塔内の圧力は1〜950KPa程度である。
【0061】
結果、図5に示すように、PSA装置における二酸化炭素に対する吸着能力が飽和状態となって製品ガス中の二酸化炭素が検出され始める積算流量(以下、破過流量と呼ぶ)について実施例と比較例とを比較すると、吸着塔に活性炭のみを充填した比較例では、破過流量が約2.4リットルであるのに対して、吸着塔に活性炭と蓄熱体とを充填した実施例では、破過流量が約3.1リットルと大きいことが確認された。
即ち、上記実施例が、上記比較例と比較して、吸着塔に蓄熱体を充填していることで破過流量が約30%増加し、吸着性能が向上しているといえる。
【0062】
また、図6に示すように、上記実施例が、上記比較例と比較して、吸着塔内における温度上昇が抑制されていることがわかる。特に、積算流量が約1.0リットルに到達したときに、比較例での吸着塔内の温度が約46℃であるのに対して、実施例では、吸着塔内の温度を約30℃に抑制できており、このことから、原料ガス供給開始時の発熱が効果的に抑制され、吸着開始の吸着性能が良好に高められていることが推測される。
【0063】
図7に示すように、原料ガスとして二酸化炭素17.2%、メタン8.19%、水素バランスガスを用いて、蓄熱体の割合を、5.5%、8.3%、11.1%にした場合の破過流量はそれぞれ、6.30リットル、6.50リットル、6.30リットルとなる。よって、蓄熱体の割合を8.3%とした場合の吸着性能が最も高いことがわかる。
【実施例1】
【0064】
次に、PSA装置における蓄熱体の耐久性能評価試験について述べる。
まず、実施例としてマイクロカプセルの表面をポリビニルアルコール(以下、PVAと略称する)で被覆した蓄熱体を成形してなる成形蓄熱材を製作し、比較例としてマイクロカプセルの表面をPVAなどで被覆していない蓄熱体を成形してなる成形蓄熱材とを製作した。
そして、PVA装置での吸着工程と脱離工程とを繰り返して実行することを想定して、実施例及び比較例の夫々の成形蓄熱材に対して、温度を45℃から5℃まで低下させた後再度45℃に上昇させるという温度変化を繰り返し行い、このような温度変化を所定回数繰り返す毎に、実施例及び比較例の夫々の成形蓄熱材の蓄熱量を測定して、当該蓄熱量の繰り返し回数に対する変化状態を観察した。
【0065】
結果、図8に示すように、PVAで被覆した実施例の成形蓄熱材の蓄熱量は、上記温度変化の繰り返し回数が増加しても高く維持されているのに対して、PVAで被覆していない比較例の成形蓄熱材の蓄熱量は、上記温度変化の繰り返し回数が増加するに従って徐々に減少していることがわかる。
一般に、成形蓄熱材の蓄熱量は、温度変化の繰り返し回数の増加に伴うマイクロカプセルの破壊により相変化物質が外部へ漏れ出す虞があるため、熱履歴回数が増加するにつれて減少する場合がある。
即ち、実施例の成形蓄熱材では、マイクロカプセルを被覆するPVAが、マイクロカプセルの破壊による相変化物質の外部への漏れ出しを良好に抑制していることがわかる。
【実施例2】
【0066】
次に、PSA装置における耐久性能評価試験について述べる。
実施例としてマイクロカプセルの表面をPVAで被覆した蓄熱体を成形してなる成形蓄熱材と活性炭からなる吸着材とを混合した潜熱蓄熱吸着材を製作し、比較例としてマイクロカプセルの表面をPVAなどで被覆していない蓄熱体を成形してなる成形蓄熱材と同吸着材とを混合した潜熱蓄熱吸着材を製作した。
そして、PVA装置での吸着工程と脱離工程とを繰り返して実行することを想定して、実施例及び比較例の夫々の潜熱蓄熱吸着材に対して、温度を45℃から5℃まで低下させた後再度45℃に上昇させるという温度変化を繰り返し行い、このような温度変化を1000回繰り返して実行し、その後、PSA装置に夫々の潜熱蓄熱型吸着材を充填して、メタン65%と二酸化炭素35%の原料ガスを通気して、メタンの分離性能評価を行った。
【0067】
結果、実施例の潜熱蓄熱吸着材を用いたときの吸着性能は、比較例の潜熱蓄熱吸着材と比較して、21%向上することが確認できた。このことから、実施例の潜熱蓄熱吸着材を用いたPSA装置では、吸着性能が長期に渡って維持されることがわかる。
【0068】
〔別実施形態〕
(イ)上記実施形態では、PSA装置の吸着塔内に蓄熱体と吸着材とを一体成形した潜熱蓄熱吸着材を充填する構成を説明したが、別に、吸着塔内に蓄熱体と吸着材とを別体で充填しても構わない。
【0069】
(ロ)上記実施形態では、PSA装置の吸着塔内を3つの吸着室C1,C2,C3に区画する構成を説明したが、別に、吸着塔内を適宜区画しない又は3つ以外の吸着室に区画するように構成しても構わない。
【0070】
(ハ)上記実施形態における蓄熱体4の製造段階において、蓄熱体4の外層であるマイクロカプセル2を構成する疎水性樹脂の重合反応を促進する再加熱処理を施すことができる。再加熱処理としては、後加熱処理を例示することができる。
後加熱処理は、蓄熱体4のカプセル化処理後、すなわち、相変化物質1を乳化して、所望の疎水性樹脂に対応する初期縮合物を添加し、形成中の蓄熱体4を初期加熱温度(通常70℃〜80℃以下の温度)で初期加熱処理し、乾燥して固体化して蓄熱体4を完成した後に、この完成した蓄熱体4に対して再加熱温度(通常100℃以上の温度で、具体的には100℃〜140℃)で再加熱する再加熱処理である。この再加熱処理と、本願にいう外層3による被覆に関しては、その前後関係を問うものではない。
この再加熱処理により、蓄熱体4の外層であるマイクロカプセル2を構成する疎水性樹脂の未反応基同士の重合反応がより進行し重合度が向上して、より緻密で、より強度の高いマイクロカプセル2を得ることができる。具体的には、完成した蓄熱体4のスラリーを乾燥させて粉末状の蓄熱体4を製造し、この粉末状の蓄熱体4に後加熱処理を施すことにより、緻密、且つ強度の高いマイクロカプセル2を有する蓄熱体4を得ることができる。また、粉末状の蓄熱体4を第1バインダーにより成形蓄熱材5として、この成形蓄熱材5に含まれる蓄熱体4を後加熱処理してもよく、また、成形蓄熱材5と吸着材6とを第2バインダーにより一体成形した潜熱蓄熱吸着材7に含まれる蓄熱体4を後加熱処理してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備えたPSA装置は、マイクロカプセルからの相変化物質の漏出を防止して、吸着性能を長期間に亘って維持することができる技術として有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るマイクロカプセルの概略図
【図2】円柱状に成形した蓄熱体(ペレット)の概略図
【図3】本発明に係る実施形態のPSA装置のブロック図
【図4】吸着塔の概略構成図
【図5】本発明のPSA装置に係る分離性能の評価試験結果を表すグラフ図
【図6】本発明のPSA装置に係る吸着塔内の温度変化を表すグラフ図
【図7】本発明のPSA装置に係る分離性能の評価試験結果を表すグラフ図
【図8】実施例1に係るマイクロカプセルの耐久性評価試験の結果を表すグラフ図
【符号の説明】
【0073】
1:相変化物質
2:マイクロカプセル
3:外層
4:蓄熱体
6:吸着材
7:潜熱蓄熱吸着材
8:架橋剤
11:ケーシング
12:断熱材
30:吸着塔
100:PSA装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質がマイクロカプセルに封入された蓄熱体と吸着材とを吸着塔に充填して備え、
前記吸着材の圧力増減に伴う特定成分に対する吸着量の変化を利用して原料ガスに含まれる前記特定成分を前記吸着材に吸着させて分離するPSA装置であって、
前記マイクロカプセルの表面が、樹脂からなる外層により被覆処理されていることを特徴とするPSA装置。
【請求項2】
前記マイクロカプセルが疎水性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のPSA装置。
【請求項3】
前記疎水性樹脂が初期加熱温度により加熱してカプセル化する初期加熱処理されることにより完成され、
前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理されていることを特徴とする請求項2に記載のPSA装置。
【請求項4】
前記外層が親水性樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のPSA装置。
【請求項5】
前記親水性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項4に記載のPSA装置。
【請求項6】
前記ポリビニルアルコールが架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項5に記載のPSA装置。
【請求項7】
前記架橋剤が、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、金属塩から選択されるいずれか一種類以上であることを特徴とする請求項6に記載のPSA装置。
【請求項8】
前記外層が前記マイクロカプセルを構成する高分子化合物の未反応基と反応する基を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のPSA装置。
【請求項9】
前記吸着塔内において、前記原料ガスの通過方向に沿って前記蓄熱体と前記吸着材との混合割合を変化させていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のPSA装置。
【請求項10】
前記吸着塔が断熱構造を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のPSA装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−132425(P2008−132425A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320236(P2006−320236)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】